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頂き物の小説
第35話「とある暴君と疾風の女神のひとつの節目」



「………………つまり、ジュンイチさんが最悪級のKYを発動させてギンガさんを泣かした、と。
 で、そのギンガさんはジュンイチさんをしばき倒して飛び出していっちゃった、と……」

『えぇ……』



 いきなり緊急で連絡してきたシャマルさんから話を聞いて……本気で頭を抱えたくなった。



 僕がいるのは隊舎のレクルーム。ここ最近の日課になってた、フェイトやイクトさんとのコミュニケーションをしてたとこに、この緊急連絡が来た。







 にしても……ジュンイチさん、一体ナニしてるのっ!?



 リンディさんとの……アレコレについてはもう何も言わないよ。家出したリンディさんを引き取ってからこっち、フラグ立ってるっぽい様子を聞かされてたし……そもそもツッコんだところであなたは気づかないだろうから。







 ただ……ギンガさんへの対応はどう考えてもアウトだ。

 ギンガさんの気持ちに気づいてないってこともあるんだろうけど、今回はあまりにも気持ちの食い違いがひどすぎる。



 好きな人に今の話の通りのことを言われたら、そりゃ凹む。僕だって、ノーダメバリア展開当時のフェイトを相手に同じことになったら間違いなく凹む。果てしなく凹む。







「それで……諸悪の元凶は?」

『ちょっと目を放したスキにいなくなっちゃったわ。
 ギンガを探しに行ったのは、間違いないと思うけど……』

「原因に気づいてない限りは、ギンガを見つけ出したとしても事態の解決は絶望的だろうな……」



 僕に答えたシャマルさんの言葉に、イクトさんがうめくように答える……うん。僕もそう思う。



『とりあえず、はやてちゃんにはもう話したわ。
 それで、オフシフトのみんなで探しに出てもらおうと思うんだけど……』

「そうですね。
 僕らもちょうどオフシフトだし、すぐに出ますよ」

『お願いね』



 言って、シャマルさんは通信を切った……最後、ちょっと怯えた表情だったのは気のせいじゃないと思う。



 だって……







「………………フェイト」

「何かな?」

「何つーか……うん、落ち着こうか。
 さっきから怒りのオーラが全身にみなぎってるんだけど」

「ダメ」



 ………………即答ですか。



「だって、これは許せないよ。
 いくら何でも、ギンガの気持ちを考えていなさすぎだもの」

「いや、あの人だって考えてると思う……考えてると思うよ?
 ただ、『ギンガさんが自分のことを好き』って可能性が根本から欠けてるのが問題なんだよ。だから考えていてもボタンを掛け違う」

《あの人、自分に向けられる「好き」の感情はすべて『Like』の「好き」だと思ってますからねー》



 うん。僕もそう思う……だからこそ、ここまですれ違って、こんがらがった。







 もっとも……ここまでの事態になっちゃった以上、もう放置はできないのも事実だ。



 あー、くそっ、なんですぐに動かなかったんだろ。

 少しでもギンガさんの話聞いておいて、フォローに回っていれば……いや、それでも防げなかっただろうけどさ。



「とにかく、今は探しに出るのが先決だろう?」

「そうだね……
 ジュンイチさん(の息の根)を止めるのが鮮血だよね」

「フェイト落ち着いてーっ!
 サラッと物騒な発言しないでーっ! 危険な誤字しないでーっ!」











 ………………ホント、さっさと動いておけばよかった。僕のバカ。











とある魔導師と機動六課の日常×魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜



とある魔導師と守護者と機動六課の日常



第35話「とある暴君と疾風の女神のひとつの節目」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………それ、本当?」

『はい』



 突然のヴィータからの通信。何事かと思ったら……あらあら、ジュンイチくんったら、とうとうやらかしちゃったのね。



『そもそも義母かあさんがジュンイチにちょっかいを出さなきゃ避けられた事態だと思うんですけどねぇ?』

「“ジュンイチくんがうまく立ち回ることを期待する”という選択肢はないのね」

『できると思います? あのバカに』

「ムリね」



 あぁ、素晴らしきは意見の一致ね。組織というものはこうでなくちゃ。



『そういう問題じゃないでしょうがっ!
 おかげで今こっちは大変なんですよっ!?』



 言い返した上で、ヴィータはため息……失礼しちゃうわね。



『あー、そろそろあたしもギンガを探しに出なきゃならないんで、これで。
 ただ……クロノが動けるようになったら、家族会議は覚悟してくださいね』

「それはもちろん」

『ただ……これだけは聞かせてください』



 あら……何かしら?











『本気……なんですか?』











 ………………難しい質問ね。







 正直、死んだあの人への……クライドへの想いが残っていないワケじゃない。



 でも、“闇の書事件”が終わりを迎えてもう10年になる。私の幸せを何よりも願ってくれていたあの人の想いに応えるためにも、新しい相手と……そう思ったことは一度や二度じゃない。







 ただ……今まで、あの人への想いを超えて好きになれる相手がいなかっただけ。



 そうしてズルズルと引きずって……やっと“そう”思えた相手が、今や旧知の間柄と言えないこともないジュンイチくんなんだから、我ながら笑っちゃうわね。







 とにかく、真剣な顔のヴィータに、私も真っ向から向き合って、答える。



「少なくとも……あの人にしか許してこなかった唇を許すくらいには……ね」



 その言葉に、ヴィータは一瞬キョトンとした顔をして……











 パシャッ。











 うん。貴重な表情ゲット♪



『って、何いきなり写メ撮ってんスかっ!』

「もちろん、義娘むすめのかわいらしい表情を後世に残すために♪」

『恥じらいながら言わんでくださいっ!』

「あぁ、またコレクションに貴重な一枚が♪」

『しかも初犯じゃないっ!?』



 だって、ヴィータってこういう素の表情っていうの? すごくかわいいじゃないの〜♪



「ちなみにはやてさんとベストショットコレクションは共有してるわよ。
 この写真も速やかにはやてさんに……」

『何してんのはやてぇぇぇぇぇっ!?』

「そしてはやてさんを経由してジュンイチくんに」

『しかも終着点が一番見られたくないヤツだぁぁぁぁぁっ!』



 よっぽど恥ずかしいのかしら、頭を抱えてゴロゴロと転がって……かわいいので写メに撮るのも忘れないけど。



『だから撮らないでっ!
 とにかくっ! ジュンイチとのことについては家族会議っ! これは決定ですからっ!』



 むー、ちょっとからかいすぎちゃったかしら。怒らせちゃったみたい。



 でも、ヴィータにとっては悪い話じゃないと思うのだけど。



 だって、今さらジュンイチくんが私と結婚して義理の父親、なんてことになっても困らないでしょう? 何しろ、前世では……



『だからこそ気まずいっていうのはわかってもらえませんかね!?
 何が哀しくてお互い転生した先でまた親子にならにゃならんのですかっ!』



 そういうものなのかしら?

 私には前世の記憶がないからどうとも言えないのだけれど。



『いや、前世の記憶持ちがゴロゴロしてるあたしらの周りが異常なんですからね、言っときますけど。
 とにかくっ! ギンガを探しに行くんで、これでっ!』



 あらあら、ヴィータったら真っ赤な顔で通信を切っちゃって……まだまだ挑発には弱いわね。



「えっと、そういう問題じゃないと思いますよ? 義母さん……」



 あら、エイミィはあの子の味方?



「もちろんですよ。あたしはクロノくんも好きだしヴィータちゃんも好きだから」



 その言葉には一切の迷いがない……いいわね、そういうの。



「とにかく……こうなっちゃった以上、原因に関わってる身としては動かないワケにはいかないわね。
 エイミィ、ここは任せてもいいかしら?」

「あ、はい。
 カレルとリエラ、万蟲姫ちゃんはブイリュウくんが見てくれてますし」



 それなら大丈夫ね……見た感じはちょっと何ができるのかと不安になるけど、あれであの子もけっこうしっかりしているし。



 じゃあ……責任、取りに行こうかしらね?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 廃棄エリアの一角……繁栄の面影などみじんも残していないその街角で、私はひとりガレキの上に腰を下ろした。







 とにかく……ひとりになりたかった。誰もいないところに行きたかった。



 だからだろう……どこをどう走ったかも覚えていないけれど、気がついたらここまで迷い込んでいた。







 正直……今でも頭がうまく回ってる自信がない。



 だって……とても悲しかったから。



 ジュンイチさんがリンディ提督とキスしたって聞いて……







 今までいろんな人を相手にフラグを立て続けてきたジュンイチさんだけど、唇を奪われたことなんて今までただの一度もなかったのに……その唇がリンディ提督に奪われた。



 その事実が、私にジュンイチさんがリンディ提督に取られたみたいに錯覚させる。







 それに……ジュンイチさんのあの言葉……



 『私とジュンイチさんがキスしたワケじゃないんだからいいだろう』って……それじゃ、私がジュンイチさんとキスするのを嫌がってるみたいで……だから、思い知る。



 ジュンイチさんは……私がジュンイチさんのことを好きなんだって、まったく気づいていないんだって……











 ………………ヤだ、また涙が……



 ぬぐってもぬぐっても涙が止まらない……







 もう…………ヤだよ……





















「…………ギン姉っ!」

「ギンガお姉ちゃんっ!」







 スバル……? シロくん……?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……わかったわ。
 私も探しに出るから」

『いえ、そこまでしていただかなくても……
 とりあえず、二人が帰ってきたらお説教してもらうくらいで……』

「何言ってるの。
 かわいい娘の一大事……黙っていられる親なんかいないわ」

『は、ははは……そうですね。
 じゃあ……せめて、やり過ぎないであげてくださいね』

「えぇ、そうね。善処するわ」



 答える私に苦笑して、なのはさんは通信を切った……さて、と。



「アイツ……ギンガを泣かすなんて許せねぇっ!」

「そうっスよっ! ノーヴェの言う通りっス!
 あたしというものがありながら、何やってるっスか、ジュンイチはっ!」

「ウェンディ、貴様もどさくさに紛れて何を好き勝手なことをぬかしているっ!
 まぁ……あの男の所業が許しがたいということは、姉も同意見だ」

「少し手合わせしない間に、ずいぶんと腑抜けたようだな……
 見損なったぞ、柾木ジュンイチ……っ!」



 ……うん。ナンバーズの子達がいい感じに荒れてる。



 特に、ウェンディやチンクみたいな、あの子に好意を持ってる子や、ノーヴェみたいにギンガを姉として慕っている子の勢いがすごい……トーレの動機はちょっと微妙だけど。



「そうだよっ!
 ギンガお姉ちゃんを泣かせるなんて、いくらパパでも許せないよっ!」



 そしてホクトも、今回のジュンイチの不手際には腹を立ててる……この子、ギンガもジュンイチも大好きだものね。



「……みんなの気持ちはわかったわ。
 クイントさん、みんなの外出許可、今からでも取れるかしら? 彼にはぜひ、私達からもキツく言っておかないと気がすまないわ」

「そうね。
 これはもうギンガひとりの問題じゃないわ。みんなで解決すべきよ」



 ………………ウーノ、マグナさん……あなた達まで。



 いや、私も頭に来てるんだけど。今回ばっかりはあまりにもひどい。



「わかったわ。
 どの道、ギンガを探さないといけないし……すぐに申請を上げるわ。みんなはその間に準備を」

「わかってますわ、クイントさん♪
 このクアットロに万事お任せ♪」











 ………………うん。











「………………意外な人が名乗りを上げたわね」

「クアットロのことだから、絶対何か企んでますよ、クイント殿」

「あのクア姉が、ギンガはともかく恨み重なるジュンイチのためにもなるようなことをしようなんて、絶対に考えるワケないもんな」

「ちょっとーっ!
 クイントさんもチンクちゃんもノーヴェちゃんもひどくないっ!?」



 いや……ごめんなさいね、クアットロ?

 なんていうか……あなたって、こういう話題に絡んでくるようなキャラクターにも見えないものだから。



「わ、私だって女の子なんですけどっ!?
 好きな子に振り向いてもらえなくて、それどころかぞんざいな仕打ちを受けて……そんな話を聞けば頭にだって来るんですよっ!」

「………………『女の子』?」

「マグナ陛下、どーしてそこにツッコむんですかっ!?
 それを言い出したら古代ベルカ時代生まれの陛下なんて私達の中じゃ一番年上じゃないであああああああアイアンクローは許していくら戦闘機人でも頭が割れるぅぅぅぅぅっ!」



 ………………うん。自業自得ね。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ギンガ……どこ行っちまったんだよ、アイツ……っ!」



 ギンガを探して、市街地に出てきてみたんだけど……くそっ、アイツの気配がつかめねぇ。



 もしかして、この辺は外れか……?

 ギンガのことだから、オレの気配探知をごまかすために人ごみに紛れると思ったんだけど……



 IDのGPS機能も切ってるみたいだし、“能力”で監視カメラにハッキングしても見つからない……







 ……くそっ、考えろ……考えろ……っ!

 ギンガならこういう時どうする……っ!?







 ………………って、「こういう時」も何も、アイツがどうして飛び出して行っちまったのかがわからなきゃ、思考なんて読みようがないじゃんか。

 くそっ、なんでか頭が回らない……今朝からどうしちまったってんだ……っ!







 それに、ギンガのあの泣き顔……



 アレを思い出しただけで感情が先走る……気ばかりが焦ってどうしようもない。







 くそっ、なんで、こんなに……





















 ――――――





















 ………………ギンガ!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「マスターコンボイ、本当にこっちなの?」

「あぁ、間違いない」



 ギンガさんを探しに出ることになって、僕とイクトさんとで手分けして探すことになって……とりあえず殺意の波動に取りつかれかかってるフェイトは隊舎でお留守番です。



 そしたら、マスターコンボイとバッタリ。どうもマスターコンボイもスバル達と手分けしてギンガさんを探し回ってるみたい。







 で、マスターコンボイの電波な感覚にギンガさんの“力”の気配が捉えられたのがついさっきのこと。その気配を追ってきたんだけど……気づけば市街地を離れて旧市街。



 なるほど。“木を隠すには森の中”と思って市街地を探してたけど……その裏をついてきたか。







「……あの角の向こうだな」







 どうやら、ギンガさんはこの先らしい。とりあえず話をして……











「それはお兄ちゃんが悪いよっ!」











 ………………へ?



 この声って……まさかっ!?







 イヤな予感がして、僕らは声のした方に駆け出して――











「お兄ちゃん、鈍い鈍いと思ってたけど、今度という今度は許せないよっ!
 ギン姉がどれだけお兄ちゃんのことが好きかも知らないでっ!」











 ………………やっぱりいたよKYがぁぁぁぁぁっ!











「ボクも頭に来た!
 いつまでも『気づいてないから』で許されると思ってたら大間違いだよ!」

「そ、そうかな……?」

「そうだよ、ギン姉っ!
 いい? 絶対ギン姉から許しちゃダメだからね? こうなったらてってーこうせんだよっ!」



 そう。ギンガさんと一緒にいたのはスバルとロードナックル……今の主人格はシロだね。



 で……ジュンイチさんに対して怒り心頭。二人してエキサイトしてる。







 さすがに、スバル達のこの勢いにはギンガさんもついてこれないでいるみたいだけど……







「だいたい、お兄ちゃんがいつまでもフラフラしてるのが悪いんだよっ!
 ギン姉にライ姉にジー姉になのはさんにアリシアさんにすずかさんにチンクさんにウェンディときて、それで今度はリンディ提督!?
 なんでいつもいつも女の人を引っかけちゃうのかなっ!? 最低だよっ!」

「……そう……だよね……?
 ジュンイチさんが、ハッキリしてくれないから悪いんだよね……」







 ………………って、アレ?







「ギンガお姉ちゃん。ボクらも力を貸すよっ!
 ギンガお姉ちゃんの純情を踏みにじるのがどれだけひどいことか、ボクらで思い知らせてあげようっ!」

「………………そうだね。
 ジュンイチさんがちゃんと私の気持ちをわかってくれれば、それで解決するんだよね……」







 ………………説得されかけてるぅぅぅぅぅっ!?







 ちょっ、ギンガさんっ! あなたの役目は暴走組のストッパーでしょ!? 何一緒になって暴走ルートに足を踏み入れてるのっ!?



 まさか……いつもの勢いがないから!? だからスバル達の勢いに引きずられちゃってるとか!?







「マテ待てまてぇぇぇぇぇいっ!」







 少なくとも、このままスバル達に好きに言わせていたらどんどん暴走していくのは目に見えてる。声を張り上げて、ギンガさん達の中に割って入る。



「あ、恭文」

「『あ、恭文』じゃないわボケっ!」



 がすっ!



「いったーいっ!」

「そんなの知るかっ!
 何ギンガさんに余計なこと吹き込んでるのさっ!?」



 スバルが頭を押さえて涙目だけど、容赦はしない――ここでこのバカを止めておかないと、話は間違いなくさらにややこしい方向に進んでいくことになる。



「頼むからスバルは余計なこと言わないでっ! あとシロもっ!
 このままぶつかってたってしょうがないでしょ! ちゃんと二人で話をさせなくちゃ!」



 あのままスバルの言う通りにやらせていたら、話し合いの前に拳が飛び交うハメになる。それじゃどこぞの魔王と変わらない。

 まずはきちんと話をさせる。それでも決裂したなら、その時は仕方ない。拳なり魔法なり精霊力なり、思う存分ぶつけ合えばいいよ。



 とにかく“言葉の前に拳”じゃなくて“拳の前に言葉”じゃないと。



 二代目魔王なんて生み出してたまるものか。きっちりと阻止して……







「………………そうだよね」







 ………………ギンガさん?







「ジュンイチさんにちゃんと反省してもらわないと、どうしようもないんだよね……」







 あの……どうしてギンガさんの身体からこう、近寄りがたいオーラが立ち上ってるのかな?



 どうして、握りしめた拳の周りで魔力が渦を巻いてるのかな?







 これって、ひょっとして……







「そのためにも……」





















「まずは、私の想いをきっちり叩き込まなくちゃっ!」





















 ……手遅れだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!











「見てて、スバル、シロくん! 私、がんばるからっ!
 私だけじゃない、みんなを悲しませるジュンイチさんのねじ曲がった根性、私が必ず叩きつぶしてみせるからっ!」

「ちょっ、落ち着いてギンガさんっ! 拳を開いて、魔力を引っ込めてっ!
 そして根性は叩きつぶすものじゃないからぁぁぁぁぁっ!」



 完全に暴走状態のギンガさんをなんとか止める……くっ、冷静で大人な人だと思ってたけど、やっぱりスバルのお姉さんだったかっ!



「恭文、それどういう意味っ!?
 あたしもギン姉も暴走なんかしてないよっ!」

「やかましいわこのKY豆芝っ!
 その自覚のなさの結果が今のギンガさんだっていい加減気づけっ!
 ほら、マスターコンボイもギンガさん止めるの手伝ってっ!」

「いいだろう。
 いくぞオメガっ! 総力をもってギンガ・ナカジマを(物理的に)止めるっ!」

《OK, My Boss!》



 ………………ゴメン、やっぱおとなしくしてて。







 正直……この状況はマズイ。



 いくら今日のジュンイチさんが本調子じゃなくても、ここまでギンガさんがエキサイトしてたら必ず気づいて駆けつけてくる。



 で……ギンガさんの気持ちやどうして飛び出していったか、その辺をまったくわかっていないジュンイチさんが、この臨戦態勢のギンガさんと対峙したりしようものならどうなるか?











 ………………間違いなく迎え撃つに決まってるでしょうがっ!











 そうならないためにも、ジュンイチさんが来ないうちにギンガさんを落ち着かせないと……





















「………………ギンガ?」





















 ………………来ちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!







「ったく……探したぞ。
 いきなり飛び出しやがって……」



 内心で悲鳴を上げる僕の戦慄なんて、この人が気づくはずもない――まったくの無警戒で、ジュンイチさんはギンガさんの前まで進み出て、



「とにかく帰るぞ。
 みんなだって心配して、探しに出てくれてるんだから……」











「放してっ!」











 はたかれた。







 ジュンイチさんの差しのべた手が……他ならぬギンガさん自身の手で。







「………………ギン、ガ……!?」

「私は……帰りません。
 ジュンイチさんが、ちゃんと謝ってくれるまで……ちゃんと、私のことをわかってくれるまで!」

「お、お前のことを、って……
 そりゃ、オレだって神様じゃない。お前のことを全部知ろうったって、どうしてもムリはある……
 けど、オレはそれでも、お前のことを……」

「わかってないっ!」



 反論しようとしたジュンイチさんに、ギンガさんはピシャリと言い放つ。



「わかってない……わかってないよ、ジュンイチさんは……
 私の気持ち……ちっともわかってない!」







 別に、今のギンガさんの暴走を肯定するワケじゃないけど……こればっかりはギンガさんが正しい。



 ジュンイチさん、ギンガさんだけじゃなくて、他にフラグ立ってる面々の気持ちにもまったく気づいてない。

 話を聞いた限り……キスなんていう直接的な手段に出たリンディさんの気持ちにすらも。



 それでいて、態度はただひたすらにフラグメイカー……そりゃギンガさんやスバルでなくても怒るわ。







《マスターも人のことは言えませんけど》

「うっさいよっ!
 僕はちゃんと気づいてるからねっ! 回避しようと努力してるからねっ! それでもフラグが立っちゃった子にはちゃんと断ってるしっ! 聞いてくれないけどっ!
 とにかく、何も気づいてない上にアフターケア皆無のジュンイチさんと一緒にするんじゃないよっ!」







 余計な茶々を入れてくれたアルトにツッコんで、僕はジュンイチさんへと視線を戻す。







「私は……もう、今のジュンイチさんと一緒にはいられない……
 ……私は、もう今までのままの関係はイヤなんですっ!」



 相変わらず、ジュンイチさんは困惑したままだ……そんなジュンイチさんに告げるギンガさんの声は、もう感情がこもりすぎてて悲鳴と何ら変わらない。



「私達は、変わらなきゃいけないんです。
 ジュンイチさんだって……わかってるはずでしょう?」

「………………そうだな」



 ジュンイチさんがうなずいて、二人はまったく同じタイミングでそれぞれかまえる……って、やっぱジュンイチさんもそう来たかっ!



「ジュンイチさんまで臨戦態勢とらないでっ!
 ぶつからないように説得してる僕の努力がパァじゃないのさっ!」

「………………ゴメン、恭文。
 パァにするわ、お前の努力」



 ………………むしろパァにする勢いですか。



「自分でもバカだと思うけどさ……結局、オレっていつもこうだからさ。
 お前とだってそうだったろうが……ガチンコでぶつからないと、わかってあげられないことがオレにはある」



 言って、ジュンイチさんがにらみつけるのは、もちろんギンガさん。



「それに、ここでアイツの拳から逃げたら、きっとアイツの気持ちを受け取ってやれないだろうし……オレの気持ちだって届かないっ!」











 ………………え?







 今、『オレの気持ちも』って……











「いくぞ、ギンガ!」

「はいっ!」







 けど……僕がそのことについて尋ねるよりも早く、始まってしまった。











 たぶん、この先絶対これ以上のものは見られないと思う、それほどまでに激しい……





















 痴話ゲンカが。











《マスター、いろいろと台無しです》

「仕方ないじゃないのさ、事実なんだから」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ブリッツキャリバーで一気にトップスピードまで加速。飛び込んできたギンガが身をひるがえして右の回し蹴りを放つ。



 かわすのはたやすいけど――受ける!



 すかさず左手でガード。強烈な衝撃に腕がしびれるけど――それにかまっていられない。

 繰り出されるのは、蹴りを止められた反動を活かしたギンガの左拳――さすがのオレもこれを受け止める勇気はない。軽く脇へ弾き、受け流す。



 ――って、さらに来るっ!?



 跳躍し、蹴りでこちらの顔面を狙ってくるギンガの攻撃を身を沈めて回避。着地を狙って足払い――って、ギンガのヤツ、わざと姿勢を崩しやがった。足払いを避けて左手で着地。そのまま手首のスナップだけで後方に跳んで仕切り直す。







 つか、今の足払いはけっこう捉える自信、あったんだけどな……ギンガも腕上げてやがる。



 こんな状況でも、やっぱアイツの成長はうれしいもんだ……ねっと!







 再び突っ込んできたギンガの拳をさばくと、さらにそのまま後退しながら追撃のラッシュをさばいていく――



「がっ!?」



 鼻っ柱に衝撃――くそっ、一発もらったか。



 もっとも――



「ぐぅ……っ!」



 カウンターを狙ったオレの蹴りも、ギンガの腹を捉えてるんだけど。ちょうど二人の本命の一撃のタイミングが重なった感じだ。







 お互いに一撃をもらって、体勢を崩しながら距離を取る――すぐに立て直して、追撃――ってギンガもう来てるしっ!



 とっさに上に跳んで、ギンガの上を跳び越す感じで回避。着地と同時にギンガに向けて地を蹴る。



 オレの繰り出す拳を、ギンガはガードを固めて受け止め――ようとするんだけど、甘いっ!



 こちとらお前のガードは予想済みっ! ステップに一工夫、微妙なブレーキで間合いに入るタイミングをわずかに遅らせて――







「だぁらぁっ!」

「きゃあっ!」







 予想していたタイミングで衝撃が来なくて、一瞬戸惑ったギンガに体当たり。さらに緩くなったとはいえ健在のガードに向けて蹴りを一発。防御の上からブッ飛ばすっ!



 もちろん、こんな程度で参るギンガじゃない。体勢を立て直して――そこを狙って体当たり、いきますっ!



 タイミングバッチリ。まだ立て直してないギンガを直撃――しないっ!?――がぁっ!







 いきなりの衝撃でブッ飛ばされる――空中で体勢を立て直して、オレは状況を理解した。







 ギンガのヤツ、オレの体当たりに気づいた瞬間、あえて立て直すのを放棄してやがったんだ――わざと崩れてオレの体当たりをやりすごして、こうして真上に向けて蹴り飛ばしてくれたってワケだ。



 やっぱ、ギンガのヤツそうとう強くなってやがる……オレが本調子じゃないって言っても、今までのアイツなら、それでもここまでもたなかった。



 技術的な向上か……それともオレとぶつかることに対する意気込みのなせる業か……











 ………………上等だ。











 ギンガの想い、全部受け止めてやるって決めたんだ。このくらいはやってくれなきゃ困る。







 さぁ……続きと行こうかっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 さすがに……強い……っ!







 私はもう全力なのに、それでもいなされる。攻めているのは私の方なのに、流れは完全にジュンイチさん側だ。







 やっぱり、ジュンイチさんの強さは別格だ……パワーはそんなに変わらないのに、積み重ねられた実戦経験が、私達との間に大きな差を生み出してる。











 けど……それでも、負けたくない。











 変えなくちゃ、いけないんだ……私達と、ジュンイチさんとの関係を。











 義妹としての私じゃない……ギンガ・ナカジマとしての私を、ジュンイチさんに見てもらいたい。



 そのためには、きっと……義妹、すなわち守るべき存在という、ジュンイチさんの中の私のイメージを変えなくちゃいけない。







 私だって……ジュンイチさんと一緒に戦える。ジュンイチさんの背中を守れる。











 ジュンイチさんのとなりに立てるんだって……証明してみせるっ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………正直……もったいないと思った。



 ジュンイチさんのレベルが高いのは、まぁ、わかってたけど……ギンガさん、そんなジュンイチさんにしっかり喰らいついてる。



 つか、ギンガさんはともかくジュンイチさんまでシューティングアーツの動きだ。まぁ、ナカジマ家と付き合い長いし、空戦機動にシューティングアーツを組み込んだ“フライング・シューティングアーツ”なんて編み出してる人だし、できて当然なんだけど。







 今も、ギンガさんからしかけて、ジュンイチさんが受ける――ハイスピードの攻防が繰り広げられてる。こんなレベルの高い戦い、戦技披露会でもそうそう見られるものじゃない。







 ………………某魔王と某ニート侍の対戦はカウントに入れない方向で。アレは見事に観客みんなを引かせたから。







 とにかく……もう一度言う。すごくもったいないと思う。



 こんなすごい戦いが……











「ただの痴話ゲンカだなんてねー」

《だからマスター、それはいろいろと台無しですから》







 などとボケツッコミを繰り広げている間にも戦いは続く。ギンガさんのラッシュをさばき続けるジュンイチさんだけど……あ、一発入った。

 そのスキを逃さず、ギンガさんのラッシュが次々にジュンイチさんに決まる――けど、大ダメージ狙いの大振りの一撃をかわされて、逆に蹴飛ばされる。



 今度はジュンイチさんの反撃の番だ。たたらを踏んだギンガさんの腹にヒザ蹴り。身体を折ったギンガさんに追撃の拳を振り下ろして――かわされた。直後、回り込んだギンガさんに殴り飛ばされる。







 ――――――つか、今のギンガさんの動きって!?







《高町教導官のブリッツアクションですね。
 いつの間に習得していたんでしょうか……?》







 上空にはね飛ばされたジュンイチさんをウィングロードで追って、ギンガさんがジュンイチさんの顔面に追撃の蹴り――けど、ジュンイチさんも負けてない。すぐに立て直すとその一撃を回避。ギンガさんの頭上に回り込んで、体当たりでギンガさんを地上に向けて叩き落とすっ!







「がんばれーっ! ギン姉ぇーっ!」

「ジュンイチさんなんかギッタギタにしちゃえーっ!」







 ………………うん、ちっとも事の重大さに気づいてない豆芝とその相方については無視しておく。







 つか……アルト、マスターコンボイ、気づいた?



「まぁ……な。
 あのバカ……ギンガ・ナカジマの顔面を一切狙っていない。それどころかむしろ顔面への攻撃を避けている」

《何度かチャンスはあったはずなのに……それらをすべて放棄しています。
 殴ろうと思えば殴れるけど、女の子相手にそれはやらない。あの人らしいです》



 だよねー。ジュンイチさん、そういうところは本気になっても変わらないんですね。



 そのジュンイチさんは、再度のラッシュをかけてきたギンガさんの背後に回り込む――振り向きざまに放ったギンガさんの蹴りをガード。

 カウンターの拳はかわされて、左サイドに回り込んできたギンガさんの“打ち下ろしの左チョッピング・レフト”もステップだけで回避。逆にジュンイチさんがギンガさんの背後に回り込むけど、ジュンイチさんの蹴りと、その動きを読んでいたギンガさんのカウンターの蹴りが互いに命中。相打ちに終わる。



 互いにたたらを踏んで後退。立て直して仕切り直しだ。











「恭文くんっ!」











 ………………あ、なのはがようやく到着か。







「いったいどうなってるの!?
 どうして、ギンガがジュンイチさんと戦ってるの!?」

「そこの教え子に聞け」



 尋ねるなのにに答えて、マスターコンボイが指さしたのはもちろんギンガさんをけしかけた二人の張本人。



「とにかく止めなくちゃ!
 二人が戦うことなんてないよ!」



 そう。そうだよね。

 スバルがけしかけたせいでこうなっちゃったけど、やっぱりちゃんと二人で話さないと解決しないよね。



 まぁ、なのはが言えた義理ではまったくないと思うけど……とりあえず止めるのに賛成してくれる人が増えたのはありがt



「ジュンイチさんが悪いんだから、一方的に殴られるべきだよっ!」



 ………………そーきましたか。







「貴様ら、バカをやるのもそのくらいにしておけ。
 ………………続きが始まるぞ」



 そんな僕らをよそに、マスターコンボイがつぶやき――視線を戻した僕らの前で、再びジュンイチさんとギンガさんがぶつかり合う。



 ジュンイチさんの拳をギンガさんが受け止め、ギンガさんの拳もジュンイチさんがガードする――高速で辺りを駆け回りながら激しい打ち合いを繰り広げる。







「だぁっ!」







 打ち合いを制したのはギンガさんだった。ジュンイチさんを殴り飛ばし、地面に叩き込む。



 すぐに追撃に移ろうと地を蹴るけど――それよりも早くジュンイチさんが飛び出してきた。カウンターで放たれた炎がギンガさんを吹っ飛ばして――って!?



「ジュンイチさん……炎を!?」

「今まで、ギン姉のシューティングアーツ戦を受けて立ってたのに……」

「ギンガ……ジュンイチさんに炎を撃たせた……!?」







 今のギンガさんには、そこまでジュンイチさんを追い込むだけの力があるってことか……







 そのギンガさんは、ジュンイチさんに吹っ飛ばされはしたけど、それでも立ち上がって再度ジュンイチさんに向けて突撃。ジュンイチさんの放った炎をかいくぐって間合いを詰め、二人は再び激しい打ち合いを始める――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 みんなの外出許可を取りつけて、私達もギンガを探しに出たんだけど……激しくぶつかり合うエネルギー反応をウーノさんが捉えたのがついさっき。



 ひょっとしたらギンガやジュンイチに何かあったのかも……ということで、反応のあった場所に向かってる途中。ちょうど旧市街に入ったところなんだけど……あれって!?



「ヒロリスさん、ライカ、みんな!」

「クイントさん!?」

「それに、ナンバーズのみんなも……!」



 そう。マックスフリゲートで留守番している私の同僚、メガーヌの親友、ヒロリスさんだ。お仲間のサリエルさんやライカ……他の六課のメンバーも隊長陣やフォワード陣のほとんどメンツが勢ぞろい状態だ。



「ギンガを探し回ってたはずのあなた達がこうして集合して移動してるということは……私の捉えた反応は間違いなかったようね」

「えぇ……
 この“力”は、たぶんジュンイチとギンガです。
 ただ……」



 状況を察したウーノに答えるのはライカだけど……『ただ』、何?



「近くに恭文やなのは、スバル達の“力”も感じるんです。
 なのに、スバル達の“力”はどう探っても通常出力レベルで……ジュンイチ達がバリバリの戦闘出力だっていうのに、あの子達は何してるんだか……」

「とにかく、行ってみればわかるってね。
 急ぐよ、みんな!」



 ライカに続く形でヒロリスさんが先導。私達と一緒に反応のあった場所に向かう。











 そうして、現場に到着したワケだけど……えぇっ!?











「ずぁあぁぁぁぁぁっ!」

「たぁぁぁぁぁっ!」











 ど、どうして……ジュンイチとギンガが戦ってるの!?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 乱打戦の果て、ギンガが繰り出した大振りの蹴りをかわして上空に逃れる――くそっ、さっきから、打撃オンリーでしのぐのが厳しくなってきてる。炎も織り交ぜてやっとの状態だ。



 ウィングロードで追ってくるギンガに向けて炎でカウンターを狙う――けど、ウィングロードの軌道を巧みにそらして回避。その先に炎をぶち込む――って、いないっ!?



 直後、背後に気配――振り向こうとしたその横っ面を思いっきり殴られた。







 それでもすぐに離脱して追撃だけはなんとか回避。攻撃を空振りしたギンガを地上に向けて叩き落とす。











 ………………けど……







 痛みを覚えて、胸を押さえる……けど、ここはギンガに殴られてもいないし、蹴られてもいない。







 違う……痛いのは、内側だ……











 さっきからずっとだ……拳に、蹴りに乗って、ギンガの強い気持ちが流れ込んでくる。











 「気づいてほしい」「知ってほしい」……そんな想いが、一撃一撃に込められているのがわかる。







 きっと……ギンガはずっと、こんな想いをオレに対して抱き続けてたんだな……



 なのに、そんなことに気づけもしないで……本当にオレはバカだ。アイツが怒るはずだよ。







 だから……気づいてやらなくちゃいけない。知らなくちゃいけない。



 ギンガの言うとおりだ……変わらなきゃいけないんだ、オレも。







 地上で立て直したギンガが、再びウィングロードで突っ込んでくる――けん制で放たれるリボルバーシュートをかわして、間合いを詰めて蹴りを叩き込む。



 けど……ガードされた。反撃の拳を受け止めるけど、勢いに押されて吹っ飛ばされる。



 すぐに立て直して、追ってきたギンガの拳をかわし、逆にギンガを地上に向けて蹴り落とす。







 ギンガが、想いのすべてを込めてぶつかってきてるんだ……オレもそれに応えて、全力でぶつかってやるっ!







 それからだ……全部、それから。











 オレ達が変わっていくために……











 新しいオレ達を始めるために……





















 ケリつけようぜ! 最初で最後の、本気の勝負だ!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ジュンイチさんの周りで渦巻く“力”がその勢いを増していく……炎となって燃焼して、ジュンイチさんの周囲で荒れ狂う。



 必殺技の体勢、でもゴッドウィングに炎を集めてない……来るのはたぶん、ブレイジングスマッシュ。



 まともに受ければ、それで終わる……けど、逃げるワケにはいかない。







 私のすべてをぶつけるまで……倒れるワケにはいかない。







 それからだ……全部、それから。











 私達が変わっていくために……











 新しい私達を始めるために……





















 これで終わり! 最初で最後の、本気の勝負!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ギン姉……この一撃に、残ってる魔力を全部込めるつもりだ……」

「当然だ。
 柾木ジュンイチと違い、彼女は生身においては必殺技と呼べるようなフィニッシュホールドを持たない。
 そんな彼女が柾木ジュンイチのブレイジングスマッシュに対抗するには、渾身の拳に、極限まで高めた魔力を込めて、最高の形で叩き込むしかない」



 二人の戦いは、たぶん次の激突で終わる――互いにフィニッシュの体勢に入ったジュンイチさんとギンガの姿に、マスターコンボイさんがスバルに答える。



 えっと……恭文くんはどう思う?



「勝ち負けのことを言ってるなら……正直、わからない」

《正直なことを言えば、ギンガさんがここまでやるとは思ってませんでしたからね。
 当初の前提からしてすでにひっくり返された後なんです。これ以上を読むのは、私達でもちょっと厳しいですね》



 恭文くん達でも、この戦いの先は読めないか……



「もう僕らが外から口を出してどうこうできる話じゃないよ。
 この最後の激突の後、ジュンイチさんがどういう結論を出すか……」

「………………そう……だよね……」



 恭文くんの言葉に、私は上空のジュンイチさんを見上げる。







 この戦いが終わったら……きっと、ジュンイチさんとギンガの関係が変わる……







 なんでだろ……そのことが、すごく怖い……



 ギンガの悩みが解決するのは、二人が仲直りすることは、いいことのはずなのに……なんでかスッキリしない。







 これじゃあ、まるで……







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………ギンガのヤツ、受けて立つつもりだな。



 ブレイジングスマッシュの体勢に入ったまま、オレはギンガの様子をうかがってそう判断した。







 おもしれぇ。いくら魔力を高めてるからって、ただの魔力打撃でオレのブレイジングスマッシュとタメ張ろうってか。



 この戦いの意義とは別で、その挑戦、受けたっ!







「いくぜ、ギンガ!」







 周囲で荒れ狂うオレの“力”――燃え盛る炎をコントロール。オレの頭上に集まり、巨大なドラゴンを形作る。







 その中に飛び込み、炎の流れに身を任せる――炎のドラゴンは言わばカタパルト。その口から撃ち出され、オレは炎を全身にまとい、ギンガに向けて飛翔する!



 その中で繰り出すは必殺の一撃。対するギンガも左拳を大きく引いて――





















「ブレイジング、スマッシュ!」



「たぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」





















 拳と蹴りが――激突した。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「くぅ――――――っ!?」



 ジュンイチさんとギンガさん、二人の渾身の激突によって巻き起こった衝撃は僕らのところまで届いた。とっさに踏ん張って衝撃に耐えるけど……



「ぅひゃあっ!?」



 情けなくひっくり返ったバカが1名……それでいいのか教導官。



「ご、ゴメン……ちょっと気が散ってた」



 ………………ま、この横馬も自覚はないけどジュンイチさんのことが好きだしね。ジュンイチさんと体当たりでコミュニケーションしてるギンガさんの姿は正直複雑なんでしょ。







 それより、どうなった……?











「………………いた! あそこっ!」











 いつの間にか全員集合していたギンガさん捜索隊。その面々の中からノーヴェの声が上がる……うん。ナンバーズのみんなやクイントさんまでいたのはちょっとビックリした。マックスフリゲート組まで巻き込んだのか、この騒ぎは。

 とにかく、ノーヴェが指さした方を見ると、ジュンイチさんとギンガさん、二人が大きく肩で息をしながら向き合ってた。



 一応……引き分け、ってことでいいのかな? 二人とも、立ってるのがやっとって感じだし。











「………………頭……そろそろ冷えたかよ?」







 そんな二人の一方――ジュンイチさんがギンガさんに問いかける。







「だったらさ……謝っとく。ごめん」



「………………何に対してですか?」



「お前の気持ち……考えてなかった」







 静かに聞き返すギンガさんに対して、ジュンイチさんが答える。







「考えてみれば、勝手な話だよな……
 ずっと兄貴としてお前らを守ってきた……けど、それって、見方を変えればお前らを昔のままでしか見てなかったってことだもんな……
 フェイトのことをさんざん怒っておいて自分がコレだもんな。そりゃ傍から見ればムカつくよな」



「………………」



「そうだよな……オレ達だって、いつまでも昔のままじゃいられない。関係だって、少しずつ変わっていくのがむしろ普通なんだ。
 なのに、オレはそんなことも気づかず、わからず、変わってなかった……変わろうと、変えようとしていたお前が不満に思うのも当然だよ。
 けど……それを自分だけで抱え込むなよ! なんでもっと早くオレに話してくれなかったんだよ!
 オレ、人間関係とかの話になると鈍いから、話してくれても、お前らの言いたいことにはすぐには気づけなかったかもしれない……それでも、きっと何かには気づいてやれた!
 話してくれれば、オレも一緒に考えてやれる! 二人で考えていけばよかったんじゃねぇか!」







 ジュンイチさん……この調子なら、もう大丈夫かな……?







「一緒に変えていこうじゃねぇか――“これからのオレ達”ってヤツをさ。
 だから……」





















「絶対、もっといい形の兄妹になろうな?」



『ちっ、がぁぁぁぁぁうっ!』





















 僕ら全員からブッ飛ばされた。











「何しやがる、てめぇら!」

「うっさい、このバカ!
 これだけ盛り上げておいて、オチがそれってどーゆーことよ!?」



 頭から地面に“車田落ち”。脳天からダクダクと流血しながら抗議の声を上げるジュンイチさんを、ヒロさんが力いっぱい叱り飛ばす。



 僕もヒロさんと同じ気持ちだ……ダメだこの人。ちっとも大丈夫じゃなかった。つか、ギンガさんに“伝えたかった気持ち”がコレかい。



 確かにギンガさんの「変えたい、変わっていきたい」って気持ちには気づいてあげられたみたいだけど、一番肝心なその“理由”にまったく気づけてない。



 進展は確かにあったけど、これだけの騒ぎの成果としてはあまりにも実入りが少なくない?



「あんたねぇ、ギンガのことをどう思ってんの!?」

「どう……って、とびっきり最高の女の子じゃねぇか」



 ………………迷うことなく言い切ったよこの人。



「頭はキレるし強いし物覚えもいいし細かいところまで気がつくしセンスはいいし金銭感覚しっかりしてるし要領いいし字はきれいだし。
 しかも家事全般バッチリで美人ときた……逆に文句の付け所が見つからねぇだろ」



 ………………うん。まさにべた褒めだ。ぶっちぎりで褒められたギンガさんの顔が真っ赤になって――











「もう、ギンガに惚れられた男がいたら殴ってやりたいね、オレは。
 つーか兄貴権限でオレが許す! 死ぬ一歩手前までぶちのめせ!」



『それじゃあ遠慮なくっ!』











 僕ら全員からブッ飛ばされた。











「…………ぷっ」











 ………………『ぷっ』?











「…………フフフ……あははははっ!」







 僕らがジュンイチさんをしばき倒すその光景に、なぜだかギンガさんが笑い出す……えっと、今のどこがツボだったのかな?



「うん、なんていうか……安心しちゃって」



 ………………え、今ので!?



「結局、ジュンイチさんが私を“義妹”としてしか見てないのは変わってない……本当なら、悲しいことのはずなんだけどね……
 でも……そっちの方がジュンイチさんらしいかな、って思ったら、なんかね……」

「ギンガさんはそれでいいの?
 だって、ジュンイチさんにとってギンガさんは妹のままなんだよ? 恋愛対象としては見てくれてないんだよ?」

「それでも、ジュンイチさんは私とちゃんと向き合おうとして、ぶつかっていく私に、応えてくれた……
 私としては、それでもう、満足かな、って……」



 それで満足しちゃえるんですか、ギンガさんは……



「だって、『一緒に変わっていこう』って言ってくれたから……
 この人の“コレ”は筋金入りだもの。昨日の今日で治るとは思えないし……変えていく下地ができただけでも上出来だと思わない?」

「それは……まぁ……」



 僕も、その……フェイトのノーダメバリアが解除された時は本当にうれしかったから、それはまぁ、なんとなくわかる。



「それに……今回の一件で凹んで、思い切りケンカして、スッキリして……なんとなくわかったの。
 私……ジュンイチさんの鈍さにヤキモキさせられたりとかも、なんだかんだで楽しんでたみたい。
 結局……ジュンイチさんのそういうところも、全部ひっくるめて好きなんだね、私……」



 えっと……そうなの? なのは。



「どうしてそこで私に振るのかなっ!?
 私とジュンイチさんは……その……そんなんじゃないもんっ!」



 そうなんですか? チンクさん。



「私も違うっ!
 私と柾木は……その……ライバルだっ!」



 ………………ギンガさんのとは違うだろうけど、これはこれで確かにおもしろいかも。だってリアクション似たり寄ったりなんだもん。







 ただ……僕の欲しい答えはあてにできないので別の人に聞いてみることにする。

 その辺、アリシアはどう思うワケ?



「んー、あたしもアリだと思うよ?
 ジュンイチ自身に悪気とか浮気癖とかがあるってワケじゃないんだし……だったら、そういうところもドーンと受け止めてあげるが良妻の条件ってもんかなー、と」



 ………………さりげに妻宣言しちゃったよこの人。











「そうね。アリシアさんの言うとおりだわ」











 ………………現れやがりましたか事態の元凶。







「あら、失礼しちゃうわね。
 一応、責任を感じてるからこうして出てきたんだけど」



 冷たい視線を向ける僕もなんのその。やってきたリンディさんはノーヴェのアッパーカットで宙を舞い、ホクトに追撃をもらうジュンイチさんへと視線を向けて、



「あの子は確かにあなたやギンガさん達より年上で、しっかりしたところがある……けど、事この分野においてはむしろあなた達よりも下、子供同然の感覚みたいだもの。
 だったら、今彼が知らないことをこれから教えていけばいい……これから先、じっくり時間をかけてそういうことをわからせてあげればいい。違うかしら?」

「果たしてあの人の頭で理解できるのか、って問題はありますけどね」

「そうね。
 私がキスまでしてアレとなると、ちょっと、ね……」



 返す僕の言葉にリンディさんが苦笑して――







「リンディ提督」







 ギンガさんが、そこにいた。



 なんつーか……ただならぬオーラを身にまとって。







 えっと……これって、ひょっとして修羅b











 心の中の言葉が形になるよりも先に衝撃音――ギンガさんの拳が、リンディさんの展開したシールドに止められた音だ。







「………………止めるんですね」

「えぇ、止めるわよ。
 だって……責任は感じていても、悪いことをしたとは思っていないもの」



 冷たい目をしたギンガさんにリンディさんが答える。僕らがすっかりドン引きした中で、二人の視線がぶつかり合って……



「………………負けませんから」

「その意気よ」







 ………………えっと……何? この宣戦布告。



 とりあえず、ギンガさんとリンディさんが「強敵」と書いて「とも」と読む間柄になった……ってことでいいのかな?







 これは……ヤバイんじゃないの? なのは。完全に取り残されてるよ?



「だからなんで私に振るのっ!?」



 チンクさん。



「私にも振るなっ!」



「なんであたしには話振らないんスか!?」



 うん、ウェンディうるさい。



「あたしは……まぁ、いざとなったら一夫多妻婚に持ち込むだけだし」



 アリシアはアリシアで悟ってるねオイ。











 ただ…………ね、みんな。







「ジュンイチさんのアレをどーにかしない限り、全員敗者になるってオチが待ってるだけだと思うんだけど」

「…………そうだよね」

「ジュンイチくんのアレが一番の問題なのよね」

「アレ、なんとかしようと思ったらそうとう苦労しそうだよね……」

「恋敵よりも恋の相手の方が強敵って何なんスかね?」

「姉に聞くな」

「ま、気長にやろうよ、みんな」











 …………まぁ、いずれにせよ……無事解決、ってことでいいのかな?



《そうですね。
 ………………おや?》

「どしたの? アルト」

《いえ……
 誰か忘れているような気が……》



 誰か……?





















 …………………………あ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………なぜだ。



「あら、イクトさん。
 こんな時間に、何か緊急の御用ですか?」

「まさか、ロッサが何かしましたか?
 最近様子がおかしいのですけど……何かしたのであれば、私が責任をもって折檻しますので!」



 目の前には良く知る友人が二人……ただ、オレ自身ワケがわからん。



 確か、オレはギンガを探してクラナガンの上空を飛び回っていたはずなのに……











 どうして、聖王教会まで来てるんだろうな?











 ………………いや、いつものように方向音痴が発動した結果ここにたどり着いたというだけの話なんだが。



 とりあえず、戻らなければならないのは確かなんだが……











 果たして……無事に六課まで帰り着けるんだろうか?





















(第36話へ続く)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



おまけ







「あー、一時はどうなることかと思ったけど」

「無事解決してよかったですね」



 とりあえず、何とかジュンイチとギンガのアレコレが決着して、隊舎に戻ってきたところ。

 なお、大騒ぎをした上にハデにケンカしたジュンイチとギンガは部隊長室でビッグコンボイとクイントさんからお説教。ま、事が事だし、反省文くらいですむでしょ。



 あと……フェイトと恭文はカリムから連絡をもらって、聖王教会までイクトを迎えに行った。この分だと、帰ってくる頃には日付変わってるんじぉないかしら。

 なんでも、いつものように遭難した結果向こうにたどり着いてたらしい。なんで地上の見える高度を飛んでて道に迷うのか、未だに不思議なんたけど。







 ところでさぁ……ジーナ。



「はい?」

「いや……マズくない?
 なのは達、なんかジュンイチの朴念仁を治そうと考えてるみたいだけど」



 あたしの問いに、ジーナが渋い顔をする……言いたいこと、察してくれたみたいだ。



「あの様子だと、たぶん恭文やクイントさんですら知らないわよ……あの二人くらいには、とっくにジュンイチが教えてると思ってたんだけど」

「私も……そう思って安心してたんですけど。
 ジュンイチさんの、あの二人への信頼はハンパなものじゃないですから……」



 そう。あたしの懸念は、あたし達の共通の想い人のダメダメな一面について。

 それが原因で今回の騒ぎが起きて、なのは達はそれを今後なんとかしていこうと思ってる。







 ただ……あたし達はそれを手放しで賛同できない。



 だって……知ってるから。







 ジュンイチが、どうして恋愛関係があぁもダメダメなのか。







「正直……ジーナはどう思う?
 あたしは……なのは達も知っとくべきだと思うんだけど」

「それは、私も同じですよ。
 何も知らないままその辺をつついたりしたら、大変なことになりますし……
 ただ……」

「そう簡単に教えていいような話じゃないから、ためらわれる……と」







 ………………いたんですか。今回まったく出番のなかった啓二さん。







「うるさいよっ!
 ………………で、ジュンイチのことだけど……どうするんだよ?」

「う゛っ………………
 あたし達だって、このままジュンイチがあんな状態のままでいいとは思ってないわよ。
 ただ……アイツの朴念仁の原因に触れるってことは、アイツの中の最大のトラウマへの直撃コースじゃない」

「他の人なら、いこうと思えばそれでも突っ込んでいけると思いますけど、相手がジュンイチさんじゃ……」

「だよなぁ……」



 そう。ジュンイチが相手となると問題は一気に厄介になる。

 理由は簡単。

 アイツのトラウマに触れるっていうことは……







「ヘタにつつけば、アイツの“暴走”を招きかねないからな」







 冗談でもなんでもなく、あたし達の命の危険に直結するから。







「10年前ですら、オレ達全員が束になってかかってもアイツの暴走態には歯が立たなかった……オレや橋本は“精霊獣融合インストール”までしてたっていうのに。
 今のジュンイチの実力で“暴走”なんかされたら……」

「たまったもんじゃないわよね……
 二人だって……たとえば、アイツの暴走態とユニクロン、どっちか相手をしろって言われたら、二人だったらどっちを選ぶ?」



 啓二さんに返したあたしの問いに、ジーナと啓二さんは顔を見合わせて、せーので答える。







『ユニクロン』







「当然よねー。
 同じ勝てないにしても、アイツと違って、まだ逃げられる余地があるだけユニクロンの方がマシってもんだわ」



 考えれば考えるほど、悪い方向にしかシミュレーションが進まない……あー、もう、頭痛いわ。



「とりあえず……今度鷲悟に相談してみるわ。
 8年間ジュンイチに身体を預けていたアイツなら、何か思いつくかもしれない」

「そうですね……それしかないですね」

「だな。
 ………………それはそうと、お前ら」



 ん? どうしたの? 啓二さん。



「いや……お前ら、ジュンイチから“頼みごと”されて六課に来てるんだろ?
 そっちの方はどうなんだよ?」

「あぁ、そっちの話?
 ジーナ」

「あ、はい。
 今日の昼間、だいたいの調査が終わったところなんですけど……これ、見てください」



 言って、ジーナは調査結果のデータを自分のブレイカーブレスからあたし達のブレイカーブレスに転送してくれた。それぞれにウィンドウを立ち上げて確認して……って、これ……?



「………………ジーナ、このことをジュンイチには話したのか?」

「今日一日、話せるような状態じゃなかったじゃないですか。
 とりあえず、報告として上げられる形にして、その上で見てもらおうと思ってるんですけど……」

「慎重に動いた方がいいわね……
 日頃見てる限り気にしてる様子もないし、“あの子”がこのことを知ってるとは思えない。
 ヘタしたら……」











「また“家出人”が増える事態にもなりかねないわよ」











 まったく……なんでこうも次々に問題が起きてくれるのかしらね?



 ホント、頭が痛いわ、もう……





















(本当におしまい)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!

ジュンイチ「しっかし、ギンガも腕上げたなー。ビックリしたぞ。
 本調子じゃなかったとはいえ、今回は正直危なかったし」

ギンガ「え、えっと……そうですか?」

なのは「わ、私だって腕上げてるんですけどっ!」

ウェンディ「あたしだって負けてないっスよ!」

チンク「姉とて、今度こそ貴様を超えてみせるっ!」

ジュンイチ「へぇ、おもしれぇ。
 3人とも相手してやる! かかってこいっ!」

なのは達『おーっ!』

恭文「………………何? この『オレより強いヤツに会いにいく』状態」





第36話「一難去ってまた一難……せめて間は開けてほしい」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



オメガ《これだけ大騒ぎしておいて、結局元のサヤに収まっただけ……いろんな意味で拍子抜けな第35話でした》

Mコンボイ「まったく、はた迷惑な男だ」

オメガ《ですよねー。
 いつもいつも、トラブル巻き起こしてばっかりなんですから》

Mコンボイ「天性のトラブルメーカー、というヤツなんだろうな、きっと」

オメガ《ミスタ・恭文といい彼といい、厄介なことこの上ないですね》

Mコンボイ「とりあえず、自分達で収拾をつけているだけまだマシなんだろうが……」

オメガ《収拾……つきましたか? 今回》

Mコンボイ「………………ついたということにしておこう、うん。
 これを引きずったまま次回になんか進みたくないぞ、オレは」

オメガ《サブタイトルからして次の騒動を宣言してるようなものですからねー。
 はてさて、今回の騒動こそ私達が目立てるものだといいんですけど》

Mコンボイ「貴様の気にするところはそこなんだな……」

オメガ《当然ですよ。ただでさえ最近傍観者枠に押し込められたままなんですから。
 ……と、いうワケで、次回に期待しながら今回はお開きとさせていただきます》

Mコンボイ「次回も必ず読むがいい」





(おしまい)








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