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頂き物の小説
第31話「とある魔導師と神将と閃光の女神とその他数名の転換点」:2



 ………………というか、フェイト、大丈夫?







「うん、大丈夫……
 というか……おかしいなぁ。一杯くらいなら、平気だと思ったのに」

「昼間のプールで体力を使っていたからかもしれんな。
 疲れた身体が栄養を欲しがった結果、食事の栄養と一緒にアルコールまで急いで取り込んだとしたら……」



 いや、イクトさん、そんな学術的説明はいいですから。







 そう。さっき……ワイン開けました。いや、その場の勢いで。というか、フェイトはお酒弱くなってない? 前はまだ大丈夫だったのに。



 とにかく、少しだけふらふらしているフェイトを部屋に連れ帰って、ベッドに座らせる。

 うん、酔っ払ってるってほどじゃない。多分、悪酔いしただけだ。問題はないと思う。

 続いて、僕は水を……持ってくる。洗面所に、コップがあったので、それに水を汲んでだ。それをフェイトに渡す。





「あ、ありがと……」



 それを飲むと……楽になったみたい。少し息を吐いた……でもさ、色っぽいよ。

 いつもは真っ白な肌が、ほんのり赤く染まって、すごく綺麗。見ているだけで、ドキドキする。



「……ヤスフミ?」



 そのトローンとした目は凶器だと思う……まぁ、いいや。ここは落ち着いていこう。慎重に、的確にだ。



「……ううん、なんでもない。でも、大丈夫?」

「うん。少し身体が熱いけど、大丈夫。やっぱり、飲み慣れてないとダメなんだね」

「あははは……そうだね」



 僕は慣れてるからなぁ。一本開けたけど、まったく平気。



「…………そういえば、イクトさんも平気だね?」

「……まぁ、オレはそれほど飲んでないからな。
 というか、一口飲んで、その後食事に手を着けていたら例の“演奏会”だったからな」



 あー、そうだったね。







「あー、じゃあ僕お風呂入ってくるよ。
 イクトさん、行こうか?」

「そうだな」







 ……あの、フェイトさん。なんでいきなりそんな警戒心出してくるのさ。



 あ、まさかっ!





「違うっ! そういうことじゃないからっ! 普通に汗かいてるから、さっぱりしたいだけでっ!」

「『違う』…………?
 …………あっ! そ、そそそ、そうだぞ、テスタロッサ! オレ達は別に、そんなっ!」



 今度は、顔が真っ赤になった。いや、僕やイクトさんもなんだけど。

 なんていうか、ネジが抜けてるよ。今日のフェイトは。



「……なら、公共浴場の方に行くよ。
 それなら、フェイトも安心でしょ?」

「あ、うん……なら、私も行こうかな」

『それはダメ(却下だ)』



 うん、今はやめた方がいいと思う。お酒が入っているから、ちと危ない。入るなら、酔いを醒ましてからだよ。



「そうだね……なら、ちょっとお話しようか」

「え?」

「その、酔いが醒めるまでの間、少しだけ……いいよね」





 断る理由? ないでしょ。とにかく僕らもベッドにちょこんと座って、フェイトと話すことになった。





















 そして、いろいろと話す。六課のことやエリキャロのこと。リインのこととか。あと、僕やイクトさんの進路のこと。










「イクトさんは、六課が解散したら“Bネット”に戻るつもりなんですか?」

「どうだろうな。
 とりあえず、一度戻ることにはなるだろうが……基本、オレ達は名前だけの所属に近いからな」

「そうなんですか?」

「だから今だって簡単に六課に出向できているんだ。
 元々“Bネット”自体が他の組織への人材提供に開放的だということもあるが……その中でも、オレ達独立機動部隊のメンバーは各個の判断で他の組織への協力が可能な権限が認められている。
 ………………半分以上、柾木が好き勝手するために作られた制度だがな」



 あ、あの人わ……っ! 提唱者の権限思いっきり悪用してやがるっ!?



「とにかく、そういうワケだから、今回の出向についての報告さえ済ませてしまえば、またお前らと行動を共にすることも可能、ということだ。
 そういう蒼凪は、またフリーの魔導師として活動するつもりなのか?」

「そのつもりかな。あー、まだ本決まりじゃないけど」



 けっこう、迷っていた。いろんなこと、考え始めているから。



 ただ、変わらないものが……道を少しだけ示し始めているとは思う。



「そっか……
 ヤスフミは、部隊に入るのは、選択肢にはならないのかな」

「やっぱり、そこにいくんだ」

「それはそうだよ。
 ギンガやナカジマ三佐みたいに、ちゃんと能力を認めて、受け入れてくれる人達だっているワケだから……それだって、立派な選択のひとつだと思うな」



 ……なんだろう、性にあわないのかもしれない。どうも、辛い。



 組織ってヤツの中に入って戦うのは、考えても違和感しか感じないから。







 うん、確かに誘ってはくれてる。うれしくも思う。

 でも、組織としての戦いってヤツは、なんか違う気がする。



「……難しそうだね」

「うん、難しい。リアルに考えられないもの」

「ね、まずはやってみてからでもいいんじゃないかな。
 その、命令とかで戦うのが、どうしてもイヤなの、わかるよ?
 でも、108なら問題はないと思うし……」

「そう……かな」



 今ひとつ自信が持てないけど。それに……だ。やっぱり、助けには行けなくなるだろうしなぁ。



「私はね、その……部隊に入ってほしいなって、思う」



 うん、その話……されてるしね。わかってた。



「ヤスフミが、重いのをちゃんと自分のものとして背負いたい気持ち、知ってる。
 だけど、それでも……預けてほしい。ううん、管理局という組織に、一緒に背負ってもらったって、いいんじゃないかな?
 もう、いいと思う。少しだけ、楽な道を歩いたって……」

「……完全無欠に正しければ、信用してもいいけどね」





 “JS事件”もそうだし。つくづく思ったさ。この組織、あんままともじゃない。



 志のしっかりしている人間も多数いるから、なんとかなっているだけで……あ、だからなのかな。うん、きっとそうだ。





「あー、ゴメン。別にフェイトやみんなのことをどうこう言ってるワケじゃないの。
 ただ……組織は、信用できないかな。
 それは、管理局も“Bネット”も変わらない……そこにいる“人”は信用できるけど」



 それでも、イヤなのだ。どっかでまともじゃないと思っている組織に背中を預ける。その命令で動く。



 …………ダメだね、うん、やっぱりイヤだ。



 命令のためとか、それを理由に自分の力を振るうのは、イヤだな。

 自分で選びたい。戦う場を。力を振るう理由を。なんか、そっちの方がらしい……







 ……あ、それでひとつあったんだ。







「えっとね、フェイト」

「何かな?」



 うぅ、もしかして機嫌悪い? そりゃそうか。自分がいる組織の批判もいいところなんだから。



「……あのね、例えばの話だよ。僕が騎士って言ったら……変かな?」

「え?」

「いや、だから……僕が騎士の称号を取ったりしたら、変かな?」










「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」










 ……なぜ叫ぶ。



 そうですか。そんなに似合いませんか。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 き、騎士っ!? ヤスフミが……騎士っ!



 あまりの衝撃に、身体を支配していたお酒からくる倦怠感が一気に吹き飛ぶ。ついでに、さっきの管理局批判への憤りも。







「……わかった、もういい」

「テスタロッサ、今のはさすがに蒼凪に悪いぞ?」

「あぁ、ゴメン。悪かったよっ!
 ……でも、どうしていきなりそんなことを?」



 うん、理由がわからない。

 だって、ヤスフミは……



「まぁ……テスタロッサが驚くのもわからないでもないんだがな。。
 蒼凪。確か以前、『ガラじゃないから騎士の称号は取らない』と公言していなかったか?」



 そう。イクトさんの言うとおり、ヤスフミはずっと『ガラじゃない』と騎士の称号を取るのを断り続けていたんだから。



 私もそうだし、シグナムやヴィータが勧めてもだ。なのに、どうして……



「うーん、取ってみたくなったの。
 こう、師匠達みたいにはなれないだろうけど、それでもいいかなと」

「……そっか。
 あの、ゴメン。ちょっとびっくりしちゃって」



 ヤスフミ、今までは騎士になりたいとは、思ってなかったみたいだから。

 だから、本当にビックリした。重ね重ねになるけど、本当に。



「でも、どうしていきなり?」

「うーん、うまく言えない。
 ただ……ね。『ガラじゃない』じゃあ、騎士にならない理由にならないって、気づいたの」



 ……よくはわからない。だけど、ヤスフミにとっては、それで充分だと思う。 決めるのは、ヤスフミなんだし。



 ……そうだよね。



 決めるのは、ヤスフミなんだ。私、また忘れかけていたのかも。







「ヤスフミ」

「やっぱ、変かな?」

「変じゃないよ。
 あの、少しだけ話を戻すけど、聞いて?」



 ヤスフミは、私の言葉にうなずいてくれた。だから……言おう。私の気持ちを。



「……局員になるの、どうしてもためらう?」

「そうだね。ためらう。
 僕は、組織のためや、命令のために戦いたくない」







 うん、そう言ってる。

 自分のために戦いたい。自分のワガママと勝手のためにと。

 ……それだけじゃない。今まで背負ってきたものを。これから背負うものを、自分のものとして……背負いたいと思っている。







「確かに、命令のために、組織のために戦う部分は否定できない。
 逆にそういうのがないと、戦えないところがある」





 私だって、同じだ。

 私の目指す執務官だって、自由気ままなように見えるけど、局員であることには変わりない。



 上からの命令がなければ、動けないし、理不尽でも、聞かなきゃいけない時もある。



 だけど、それでも……知ってもらいたい。それだけじゃないことを。

 ううん、もう知っているかも知れない。だけど、もう少しだけ……



「それでも、信じてほしいな。
 ……局の事じゃないよ? ヤスフミが今まで一緒にやってきた、局の仲間の事を」



 ちゃんと、見てほしい。ナカジマ三佐やクロノ、はやてみたいな信頼できる上司だっている。

 そういう人達を信じて戦うこともできる。悪い事ばかりじゃないから。



「信じてないワケじゃないよ。ただ……」

「それでも……ためらう?」







 うなずいてほしく……なかった。だけど、うなずいた。







「守りたいのは……今だしね。それに、忘れたくない」

「組織の中にいたら、それはムリかな?
 繰り返しになるけど、預けて戦うことだって……間違ってはないと思う」

「それ、僕じゃない。
 経過や結果を局や部隊のせいにしたら……僕がウソになる。何より……」



 ヤスフミが自分の右手を見る。どこか、さびしげで……悲しそうに。



「僕ね、弱いんだ……
 忘れちゃいけないって思ってるのに、何度も……何度も、忘れそうになる」

「それが、許せないの?」

「うん、許せない。忘れて……なかった事にする自分が、許せないの……ゴメン、フェイト」



 どうして謝るの? ヤスフミ、何にも悪いことしてないよ。きっと……私が悪い。

 事実を背負う重さも、そうしたいという気持ちも、ちゃんとわかってあげられない私が。



「僕、フェイトの言うように……自分を大事にしてないのかも。だから、心配かけて、困らせてる。
 ……ゴメン、それでも……ダメなんだ。人や組織に預けたりなんて、できない」





 やっぱり、ダメなんだね……わかってる。ううん、わかった。

 仕方ない。ヤスフミが守りたいものは、私達と同じようで違うから。背負いたいものも、私達とは違う。

 なら、どうする? 私に何ができるの?







 ……それしか、ないよね。迷惑? そんなワケない。



 それを言えば、私の方がたくさん迷惑をかけてきた。だから……大丈夫。







「……なら、私の所に来ない?」

「え?」

「私の……補佐官に、なってみないかな」

「えぇぇぇぇぇっ!?」





 驚くよね。うん、私、一回ヤスフミから提案されたの、断っているから。



 断ったのは、ヤスフミがダメとか……思ってた。今なら、わかる。

 子供扱いして、遠ざけていたんだ。でも、今は違う。

 ちゃんと、見える。今のヤスフミの姿。





「あのね、局員としてじゃなくていい……やっぱりね、そう言うのは、もう少しだけ局の事……ちょっと違うかな。
 今までとは違う物を知ってから、考えてほしい」

「だから、補佐官?」





 私はその言葉にうなずく。今よりも中に入って、実際に見て、それから考えてほしい。

 本当に、局の中で生きられないのかどうかを。何より……



「……僕は、そういうのはムリだよ」



 ……わかってる。だけど、今までと同じは、ダメなんだ。

 あぁもう、私、本当にうまく話せない。自分でイライラする。



「……わかってる。
 でも、悩むなら、迷うなら、今見ているものが全部じゃないことは、知っていかなきゃ、いけないと思う」



 私だって、そうだった。ちゃんと知っていると思っていた。でも、カン違いだった。



「繰り返しになるけど、局のこと、局員のこと、今までより知っていこうよ。
 それから、考えよう。一緒に」

「一緒に?」

「私も、考える。きっと、イクトさんも考えてくれる。
 側にいれば、それもできると思うから」

「いいの?
 僕、絶対に迷惑かける。きっと、暴走する……やっぱり、合わないよ。
 僕は、自由に戦ってる方が、性に合ってる」




 そうだね。きっと、ヤスフミは局の規律なんて、関係なしで進んでいく。



 自分の守りたいもののために。壊したいもののために。

 ヤスフミが守りたいのは、今だから。世界でもなければ、人でも、組織でもない。

 きっと、あの人と同じように、必要だと思ったらどこまででも進んでいく。だけど……







「でもね、暴走しなくても……そうできる道、あるかもしれないから。
 一緒に、探そう? 私、手伝う」

「……僕、フェイトの望む通りには、きっとなれないよ」







 『やっぱり、局に入ってほしいから、そう言う』。そう言いたげなヤスフミの表情が突き刺さる。

 ……当然だよね。私、何度も押しつけてきた。ここに来るまで、なんにもわかってなかった。

 だけど、違う。その、結局押しつけてる……と、思う。

 でも、そうじゃない。それだけじゃない。







 私は、そんな気持ちを込めて、言葉を紡ぐ。







「……ならなくていい。なる必要なんて、ない」



 戦うのは、守りたいものを守るため。壊したいものを壊すため。それがヤスフミであり、“古き鉄”。

 誰にもしばられない、理不尽を覆し、不可能を超え、今を守る砕けない鉄。それで、いいんだよね。



「あのね、知らなかったことを知っていくのって、やっぱり楽しいんだ」



 今日、それを改めて実感した。私の知らなかったヤスフミやイクトさんを知っていくのが、すごく。



「今までとは違う、新しい自分を始めるなら、まず、違うものを知っていくこと。絶対に必要だと思うから」

「新しい自分……うん、そうだね。
 きっと、始めたいんだ」



 ヤスフミが迷っているのは、そういうことだと思う。新しい自分の形、まだ見えないんだ。

 今見えているものだけでは、未来を決めるのには、足りないんだ。



「それを見つける事を、手伝わせてほしいの。
 …………ううん、手伝いたい。
 局に入るか……補佐官になるかどうかも、約束しなくていい」



 というか、ムリな感じがするしね。それでも、まずは……なんだ。



「ただひとつだけ、お願い。
 これから一緒に考えたい。変わる事を……違うものに触れる事を、怖がらないで?」



 本当に、それだけでいいから。



「私もそばにいる。だから、一緒に探していこうよ。
 ヤスフミの荷物は背負えないかも知れないけど、辛いなら、怖いなら、寄りかかって?
 それだけでいい。それだけ、させてほしいの……どうかな?」









 ……少しだけ、苦い顔で、うなずいてくれた。





 これから……だよね。うん、これから。一緒に考えていこう。

 ……局に入る必要ないんだよね。私は私で、ヤスフミはヤスフミだから。うん、考えていこう。一緒に。





 あ、ヤスフミだけじゃなくて、私もだね。





 私も知って、考えていかなきゃいけない。

 違うものに、知らないものに触れていくことを、恐れずに……新しい私達、始めていこう。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 新しい自分……か。なんだか、思考になかった。





 でも……本当にいいの? 僕はきっと、フェイトの望む姿になんて……





 とにかく、話している間にフェイトの酔いも冷めてきたので、イクトさんも含めた三人でお風呂タイムとなった。





 ……当然、別々にね?





 海鳴のスパラクーアみたいな所があったので、寝間着と肌着を用意した上で、一緒に向かった。





 一応外の風景も見れたけど、この天候である。結果は、推して知るべし。











「……ヤスフミ、イクトさん。
 ゴメン。待たせちゃった」



 お風呂を堪能した後、寝間着(というか、浴衣)を着て待ち合わせ場所に立つ。

 すると、フェイトが少しだけ小走りで来た。来ているのは、寝間着にも使える浴衣。



「ううん、今上がった所だから」

「……ウソ」



 いや、ウソじゃないから。つか、その疑いの眼差しはやめて。根拠を示してよ根拠を。



「根拠ならあるよ」



 そう言いながら、フェイトが、髪に触ってきた……しまった。



「やっぱり、完全に乾いてる」

「うぅ……」

「10分以上待ってたよね」



 だから、なんでそこまでわかるっ!?



「ヤスフミ、待たせるより、待つ方が楽だって考えてるから。
 ……というか、ゴメンね。寒かったよね」

「大丈夫だよ。
 この人がいるんだから」



 言って指さしたのはイクトさん……うん。“炎”属性なところを存分に活用していただきました。



「フェイトも、大丈夫?」



 お、即答でうなずいた。まぁ、そうだよね。頬や肌が、紅く染まっているし。



「なら、早く戻ろう?」

「うん」










 そうして、部屋に戻……あの、フェイト。










「何?」

「……僕ら、やっぱネットカフェ行くわ」

「そうだな。
 蒼凪、案内を頼めるか?」

「どうして?」





 ……すみません。いろんなものがレッドゾーンなんです。こう、フェイトから漂ってくる匂いとかで……



 その、身体が熱い。顔、きっと真っ赤だ。



 つか、イクトさんの鼻がまたヤバそうだし。





「……あのね」

「うん……」

「その、男の子だから……わかるよ? それだけじゃなくて、私の事も気遣ってくれている」



 ……本能は強いのさ。どうしようもないくらいに。

 この間みたいなことになったら、マジメにヤバいのですよ。



「でもね、大丈夫だから。だって、私……」



 ――家族だから――



「二人のこと、信じてるから」



 ……へ?



「二人とも……ムリヤリ、そんなことを迫ったりしない」



 えっ!?



「もしそうなっても……ちゃんと私の声を聞いてくれる。私の気持ち、見てくれる。
 自分の欲望を満たすために、そんなことは絶対にしない。そう信じてるから」



 あれ、いつもと違う。だって、何時もなら『家族だから』とかっ! 『弟だから』とかっ!



「……今日はデートだよ? そういうのはなしにしたんだ」

「そ、そうだったんだ……」



 いや、そんな裏テーマがあるなんて、知らなかったけど。



「あの、勝手なこと言ってるけど、一緒に寝たいな……ダメ?」

「あの……ダメじゃない。というか、がんばる」

「………………」

「イクトさん、無言でどこ行くのさ?」

「鼻に詰めるティッシュの買い足しだ」







 ………………うん、その覚悟の仕方はいろいろと台無しだと思うんだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 そうして、がんばることになった。当然ベッドは別々で。

 それぞれ布団に入る。照明は、すぐ近くのライトだけ。



 ……フェイト。





「うん」

「僕らがいて、イヤじゃない? 本当に本当に……怖く、ない?」

「イヤじゃないよ……あ、でも」



 でも?



「少しだけ、ドキドキしてる。
 怖いとかじゃない。お泊まりデートなんて、初めてだから」



 ……うん、僕もドキドキしてる。おかしいくらいに。



 ………………イクトさんが布団の中で震えてるのは意識の中から外しておく。がんばって耐えてるんだろうから。



「とにかく、私……大丈夫だから」

「……わかった。あの、それじゃあ、おやすみ。フェイト」

「うん、おやすみ。ヤスフミ」










 フェイトがにっこりと笑ってくれたのがうれしかった。

 僕は電気を消して、目を閉じた。





 緊張……してる。だけど、大丈夫。





 やましい気持ちより、強い気持ち、ちゃんとあるから。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………現在、消灯後二時間経過。







 眠れません。うぅ、ダメだよ私。なんでこんなにドキドキしてるの?







 恐怖……じゃない。ただ、その……うぅ、わからないよ。





 前は、こんなにならなかった。ヤスフミやイクトさんと手をつなぎながら寝ても……





 心臓の鼓動、速くなった。苦しいくらい。





 思い出したのは、あの時の言葉と温もり。胸が、切なくなる。

 ……私、何考えてる? そうかなんて、わからないし。

 でも……そうなのかな。もし、そうだとしたら……





 いろんな事が頭の中で、ジグソーパズルのように繋がっていく。そうだ、もしそうなら……





 私は、ちゃんと応えないといけない。

 だって私、うれしいから。そして、このままなんて、絶対に、イヤだから。





 うん、私も、がんばらないといけない。





















 でもその前に……このドキドキを何とかしたい。

 母さん、アリシア、アルフっ! 助けてー!







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……目覚めはそうか……なんか、目が重い。





 昨日、泣いたりしたからかな? まぁ、それ以外は、OKだけど。

 お酒の入っていたせいか、結構すぐに眠れた。それに今回は、抱きしめられてもいないしね。





 僕は、ゆっくりとベッドから抜け出す。暖房は切っていたから、少し寒い。





 フェイトは、眠っている。うん、起こすのが忍びないほど……よだれ垂らしてるし。

 起こさないように、少しだけ口元から出ている唾液を拭う。しかし、何の夢をみればこうなるのさ。

 なお、ちらっと見えた胸元は、気にしない方針で。





 ……ガマンだ、僕。





 とにかく、窓の近くへ行く。カーテンは閉めきられてなお、何かを遮ることができずにいた。

 なので、フェイトを起こさないように、ちょこっと開けて……







「………………?
 蒼凪……?」







 昨日は天気が天気だったから出られなかったベランダには、イクトさんがいた。



 そういえば、さっき見たらベッドから毛布もろとも姿を消してたけど……まさか。







「………………弱いオレを笑うがいいさ」







 ……いや、笑いませんから。







「中に戻ってこなかったのは……僕らを起こさないように、ですか?」

「それもあったが……少し、考えたいことがあって、な」



 考えたい、こと……?



「あぁ……
 オレも、進路のことについて、少しな……
 正直、明確なところは一度“Bネット”に戻るところまでしか考えていなかった」



 いや、それはどうなのさ、三十路前のいい大人が。



「わかっている。
 だからこそ、考えていた」



 ………………あれ?

 けど、昨夜は僕らのところに戻ってくるのも……って……



「あくまで選択肢のひとつ……ということだ。
 だが……」

「そのまま“Bネット”に留まるのもアリ……ですか?」

「オレ達の世界の瘴魔を同僚に任せきりにもしているからな。心苦しい部分は、やはりある。
 それに……」







「僕らと距離をおきたいって気持ちもある……でしょ?」







 僕の言葉に、イクトさんが目を丸くする……うん。気づいてた。







「イクトさん……どっかで僕らに対して線を引いてる。
 ラインを引いて、溝を作って、そこからこっちに入ってこないように、僕らが入っていかないようにしてる」



 ちょっとだけ……僕もそういうところ、あるから。だから、わかった。



「イクトさん、自分のことが、僕らの重荷になってる……とか思ってるんじゃない?
 だから、僕らに対して踏み込めない」



「………………否定は、できんな」



 観念したらしい。イクトさんは軽く肩をすくめて降参のポーズ。



 けど……その表情は、なんつーか重い。



「やっぱ……自分も瘴魔だから?」

「………………そんなに思考がタダモレか? オレは」







 そんな売られた子羊みたいな悲しい顔をしないでください。ホントに三十路前ですかアナタ。







「けど、そんなのある意味『今さら』でしょ?
 その辺の気遣いが24時間365日フルナッシングなジュンイチさんと10年もつるんできたんだし」

「確かに、ヤツらはそんなことは気にしない……そしてそれはテスタロッサ達も同様だ。
 六課では本当によくしてもらっている。オレの過去など、誰も問題にしたりはしない……」







「……だが、それは“アイツらが問題にしない”というだけの話だ」







 静かに、だけど一言一言、イクトさんは僕にしっかりと伝わるように言葉を紡ぐ。



「貴様も知っているだろう。
 “JS事件”で六課が敵対した瘴魔のことは」

「記録だけだけど、一応」







 うん。知ってる。

 “JS事件”の中、最高評議会にくっついてフェイト達、すなわち六課と敵対した瘴魔のこと。

 10年前、ジュンイチさんやイクトさんが戦った“瘴魔大戦”で戦死し、最高評議会によって復活させられた“水”の瘴魔神将……ザイン。



 衛星軌道上に廃棄されていた軌道ステーションをミッドに落とそうとしたのを始め、なかなか好き勝手してくれたけど……結局ソイツも“ゆりかご”決戦の中で倒されたはず……

 けど、ソイツがどうかしたの?







「10年前、ヤツを瘴魔に害となる者として討ったのが……オレだ」

「え………………?」

「だが、最高評議会の手によってヤツはよみがえり、機動六課の敵となった。
 復活、それ自体に責はなくとも……ヤツの手口を知りながら、その後のヤツの好き勝手を許したのは、オレの落ち度と言ってもいい。
 防げなくても、被害は確実に減らせたはずなのに……っ!」



 本当に悔しいんだろう。イクトさんの握りしめた拳がなんかうっ血してる。



「それに……だ。
 ザインによって瘴魔の因子がこのミッドチルダに持ち込まれた……それはつまり、この世界にも瘴魔獣が生まれる土壌が成り立ち、ひいてはそれがこの世界に転生しているであろう、未覚醒の瘴魔神将の覚醒を促してしまうということ。
 しかし、その事実まで頭が回らなかった……その結果が万蟲姫とホーネット……“蝿蜘苑ようちえん”の台頭だ」



 あー、あのバカ姫達か。

 アレも、元を追っかけてくとザインにたどりつく……と、そういうことか。イクトさんはそれを自分のせいだって、自分に責任があるって……背負ってるんだ。



「瘴魔神将は瘴魔を束ね、守り、導く者……そのはずなのに、オレはその役目を何ひとつ果たせていない。
 その結果、このミッドチルダを危険にさらし、テスタロッサ達に負担を強いた……その罪は、これから生涯をかけて償っていかなければならない。
 そんなオレが、お前らの輪の中で笑っていることが、果たして許されるのか……」



 正直な話、「そんなことない」って否定することは簡単だった。

 だって、今の話を聞く限り、イクトさん自身は何もしてないんだもの。



 万蟲姫達が出てきたのだって、イクトさんの認識の外での話……うん、イクトさんには責任ないじゃないのさ。







 ………………けど。



「………………よく、わかった」



 僕は、そんなイクトさんの独白にうなずいていた。



 だって……



「うん。わかった。
 道理でイクトさんのことをどうにも突き放せないはずだよ……だって、僕と同じなんだもの」



 イクトさんの気持ちが、よくわかるから。



「蒼凪と、同じ……?
 どういうことだ? それは」

「だって……僕も……背負ってるものがある。
 イクトさんとは形も、中身も、きっと重さも違うけど……僕も、背負ってるから。
 だから、イクトさんの気持ち……完全じゃないだろうけど、少しはわかる」



 ………………うん。話そう。



 僕が……“古き鉄”である、その根源。



「僕……何度か言ってるよね?
 自分は、壊すために戦ってる……って」



 言いたいことは、きっとあったと思う……けど、イクトさんは口をはさまないでくれた。うなずいて、僕に先を促してくる。



「……正直ね、壊すためだけに戦ってるワケじゃないよ?
 守りたいものがある。それを守るためにも戦ってる。
 ……だけどね、それだけじゃダメなんだ。忘れたくないことがあるから」

「………………お前が、背負っているもののことか」

「うん。
 戦うことが、守るって言葉だけで片づけられない……それを、忘れたくない。
 間違えた事を、忘れたくないの。
 イクトさんと違って……僕は、そうしてないと忘れそうだから。
 まぁ、その……ハッキリ言っちゃうと……」



 そして……僕はイクトさんと真っ向から向き合って、言った。











「僕、魔法の力で……」





















「人を殺したことがあるんだ」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……それから、蒼凪は話してくれた。どうして、そうなったのかを。



 8年前。リインフォースUと会った蒼凪は、ある事件に巻き込まれた。



 その事件の黒幕連中の差し金で、偶発的に、蒼凪の住む街に飛ばされてきた彼女を追って、暗殺者の類が小隊を組んで、襲撃をかけてきた。



 そして、その時、リインフォースUと友達になって、仲良くなっていた蒼凪は、どうしても彼女を守りたかった。







 だから……殺した。







 その時の蒼凪には、アルトアイゼンのような信頼の置けるデバイスも、魔法の知識も、戦闘の訓練の経験すらなかった。



 それでも、リインフォースUを引き渡して見捨てるなんていう選択肢は取れなかった。そんなこと、できなかった。

 だから……戦うと決めた。







 だが……







「……他にね、方法が思いつかなかった。他に……考えつかなかった」

「…………そうか」



 正直……簡単な相槌しか打てなかった。



 本当に……それしか選択肢はなかったのだろう。



 明確な意思の元に“殺す”のとは、偶発的な事故によって“殺してしまう”のとはワケが違う。

 “殺すしかなかった”というのは……苦悩の末の決断だから。



「だが……なぜそこまでして、リインフォースUを守ろうとした?
 仲良くなっていたとはいえ、知り合ったばかりでそこまで……命を賭けるほどの関係になれるものなのか?」



 柾木などはそれができるクチだが……いや、ヤツは例外か。ヤツのアレは、れっきとしたヤツのトラウマの産物だからな。

 だが……蒼凪は柾木ではない。アイツのように、出会ったばかりの相手を守るために命がけで戦うようなことが、当時はまだ戦う力を持たなかった蒼凪にできたというのか……?



 だとしたら、その決意を支えた根源は、何だ……?



「僕の親ね、最低だったんだ」

「何………………?」

「互いに別に相手がいてさ。お金は送ってくるけど、ずーっとその相手の所に入り浸ってるの。
 だからね、家族の記憶っていうのが、ないんだ。親のご飯を食べたりとか、そういうのもなかった」



 そんな時に、リインフォースUが現れた……か。



「うん。
 僕さ……リインと会う10歳くらいまでの記憶って、一色だけなんだ」

「一色?」

「うん……同じ景色と、同じ時間と、同じ生活。
 ひとりだけの、灰色の世界。
 意味の無い記憶と時間。
 同い年の友達作るのも、イヤだと思ってたから……」

「……もしかして、リインフォースUが、蒼凪にとって初めての友達だったのか?」



 なるほど、合点がいった。

 思えば、オレが出会ったばかりの頃のリインフォースUは、「仲間内以外で初めての友達ができたばかり」と浮かれていたな……あの時言っていた「友達」というのが、蒼凪だったワケだ。



「それでね、リインと会って、その一色だけの世界に、見ているだけで元気になれるような、青い空の色が刻まれたんだ。
 そこから僕の時間は、思い出して、意味のあるものに変わった。
 僕の記憶……過去は、存在する意味を得たの」

「だから、守りたかった……」

「……うん。
 出会ってから、襲撃されるまでね。たったの一週間だった。
 だけど、そのたった一週間が、それまでの10年よりずっと幸せで、大事な時間になったから」



 その時間をくれたのが、リインフォースU……だから、守りたかった。







 守って……その結果、殺した。







 その時の蒼凪では、そうする以外に、彼女を守りきる手段がなかったから……だが、オレにはわかる。



 そうすることで守れるのは、ただ表面的な……強引な表現をするなら、物理的な意味で「守る」ということ、それだけだということが。







 そのことに、その時の蒼凪も気づいたのだろう。だから……背負っている。



「うん。
 ……殺した後にね、気づいた。間違いだって。そんな結果でも、リインの事は、本当の意味で守れていないってことに。
 リインに重荷を背負わせただけで、守るって約束、破ったってことに、気づいたの。壊しちゃいけないものまで、壊したんだ」



 おそらく、だが……誰かに指摘されて気づいたものではないだろう。八神もリインフォースUもそういったことで相手をなじるタイプではないから。

 ビッグコンボイ達やシグナム達も対象外だ。ヤツらはむしろオレ達側……そういった殺し合いの世界で生きてきたクチだ。“殺す”ことの重さなど……すでに当たり前のものとして背負っているだろう。だからこそ、この手の感傷には気づきにくいはずだ。



「リインは、大丈夫だって言ってくれた。
 ちゃんと、守るという約束を護ってくれた。そう言ってくれた。
 だけど……なんだ」

「そうは……思えなかったか」



 蒼凪は静かにうなずいた。

 静かに、何かを思い出しているような表情で。



「だけど、そうだなって思った。それが、悔しくてさ。
 力がなくて、最悪手しか打てなかったこと……大事な友達との約束、本当の意味で守れなかったこと……全部が悔しかった」

「だからこそ……背負うか。
 その時の悔しさを、忘れないために」

「うん。
 殺すっていう手を使っても、守れないものがある……それを、忘れたくないの」



 殺しまでしても、守れないもの、か……



「……あのね、さっきも言ったけど、守りたいものが出来たんだ」

「記憶……か」

「うん。さっきはリインを挙げたけど、リインだけじゃない。フェイトやはやて、師匠達になのは、ジュンイチさん……もちろん、イクトさんも。
 みんなと出会って、僕の記憶と時間は、思い出して楽しいものに変わった。
 持っていて、よかったと思えるものになったんだ。だから、守りたい」



 静かに、しかし強い意志を言葉に込める……そんな蒼凪の姿が、オレにはどこか他人事とは思えなかった。



「みんなからもらった今を、守りたい。そう思うようになった……
 だけどね、その楽しい時間の中で、忘れそうになるんだ」

「……殺したことを、か?」

「うん。その選択肢を取って、すごく後悔したこと。それしか取れなくて悔しかったこと。楽しい時間の中で、少しずつ、忘れていくんだ。
 だけど、忘れたくない」





 ………………他人事と思えなくて当然だ。



 人を殺した“罪”を背負う蒼凪の姿は……神将としての“罪”を背負う、オレそのものじゃないか。





「殺すという手段……というより、守りたいものを守れない、壊したくないものまで壊すような最悪手を取らないために、あの時の悔しさ、絶対に忘れたくないんだ。
 忘れたら、同じことを繰り返しそうで、怖い。だから……戒めるの」

「戦いとは、すなわち破壊……そう言い続けることでか。
 他にも、戒めようはあるだろうに……」

「そうだね……うん、確かに下手くそだけどさ、そう戒めていたいの。
 ごめんだしね。大事な約束、本当の意味で守りきれないのは、絶対に」

「まったく、不器用なことだ」

「うん、不器用だね。イクトさんと同じ。
 だからさ……」











「イクトさんが六課を離れるなら、僕も六課を離れるしかないワケで」











 ………………はぁっ!?



「ちょっと待てっ! なんでそうなるっ!?
 貴様はテスタロッサから補佐官として誘われているだろうっ!?」

「だってそうでしょ?
 イクトさんが“背負って”るように、僕だって“背負って”る……条件が同じなのに、イクトさんは出ていって僕はお咎めなしなんてありえないでしょ?」



 むぅ、確かに……って、待て待て。納得してどうするオレっ!



「あぁ〜あ、せっかくフェイトが補佐官として誘ってくれたのに、これで全部パアかぁ」



 二の句がつなげないオレの目の前で、蒼凪はあきらさまな棒読みのセリフと共に大げさに肩をすくめてため息をつく……こいつ、もしかしなくても自分を人質にしているっ!?



「でも仕方ないよね。
 イクトさんが出ていくって言ってるのに、僕だけ六課に残るワケにもいかないしねー」

「あー、わかったわかったっ!
 もういいっ、やめろっ!」



 なおも続ける蒼凪をあわてて止める……くそっ、やられた。



「残ればいいんだろ、オレも……」

「最初からそうすればよかったんだよ」



 この男はやると言ったら本当にやる。蒼凪とテスタロッサ、双方を立てるにはもはやオレが折れるしかあるまい。



「まったく……オレを引き止めるためにそこまでやるか」

「僕は別に、イクトさんの自由にしてもいいと思うんだけどね」



 そうオレに答えて……蒼凪は続けた。



「うん、自由にしてくれていいと思う。
 …………正直に言うとね、僕……イクトさんに嫉妬してるから」







 ………………嫉妬?







「そう。嫉妬。
 イクトさんがフェイトと一緒にいると……話してると、ちょっとイラっとくる。
 僕はフェイトが好きだから……うん。イクトさんがフェイトに近づくのって、いい気分しなかったの」



 そうか……すまない。

 貴様がテスタロッサを好いているのは日頃から公言していたことだというのに……配慮が足りなかったか。



「いや、そこは配慮しなくていいところでしょ。
 僕が勝手にヤキモチ妬いてただけなんだからさ」

「……過去を明かしたかと思いきや、嫉妬していたことを告白したりオレへの責を否定したり、一体さっきから何が言いたいんだ?」



 そう。本気でワケがわからなくなってきた。

 蒼凪の真意が、正直オレにはよくわからない。



「簡単な話だよ。
 まず……僕の嫉妬はともかく、フェイトはイクトさんを必要としてる」



 オレの鼻先を指さし、蒼凪が告げる……ちょうどそれは、オレの前で人さし指を立てている形だ。



「二つ目。
 イクトさんがどう思ってるかどうかはわからないけど……少なくとも僕は、イクトさんを恋敵として認識してる」



 そこから中指を立て、右手はVサインを描く……いや、この会話の流れからしてカウントの「2」か。



「恋敵……つまりはライバルなワケだね。
 で、ライバルだからこそ……僕はちゃんとイクトさんとフェイトを取り合って、勝ちたい」

「取り合う、と言われてもなぁ……」



 オレは、テスタロッサを愛しているワケでは……





















 …………………………





















 …………おい、なぜオレは否定を止めた?



 テスタロッサを仲間としてしか見ていないのであれば、そこは迷うことなく否定できるところだろう……











 …………まさか、蒼凪の仮定が外れていないというのかっ!?



 オレは、テスタロッサのことを……えっ!? ちょっと待てっ!







「ていっ!」



 痛っ!







 後頭部に衝撃が走り、思考が再起動する……蒼凪の手刀か。



「少し落ち着け、このバカ神将。
 話が進まないじゃないのさ」







 …………すまん。







「ったく、『そんなんじゃない』とか言いながら、しっかり意識してるじゃないの……
 とにかく、僕がイクトさんに六課の解散後も戻ってきてほしい理由はそんなトコ。
 僕もそうだから、背負うことは別に悪いとは言わないけどさ……勝ちたいもん。競う前に勝手にドロップアウトされてもヤなのよ」

「むぅ…………」



 イマイチ納得できないが……このテの話は蒼凪の方が見る目がある。その蒼凪がそう言っている以上、そういうことなのだろう。



「そういうワケなので、イクトさんには六課が解散した後も、ちゃんと僕らのところに戻ってきてもらう。
 なお、答えは聞いてないので、そのつもりで」



 いや、聞けよそこは。







 ………………だが……







「…………いいだろう。
 ここは貴様の思惑に乗ってやる」



 そちらの方が、オレとしても都合が良さそうだ。



 蒼凪の指摘によって気づいたこの感情の正体を見極める意味でも……な。











 ……だがな、蒼凪。



「はい?」



「オレも男だ。人並みに異性に対する興味はある。
 もし、オレの抱いている感情が貴様の危惧の通りなら……容赦はしないぞ?」

「上等だよ」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「う……ん……」







 声は後ろから。振り向いて、部屋の中をのぞくと、寝ぼけ眼な女神がいた。

 女神は目を眠たそうにこすりながら、僕とイクトさんの方を見る。



 というか、胸元が危険です。





「やすふみ……いくとさん……おはよう。はやおひはへ」

「おはよ……フェイト、呂律が回ってないから。というか、遅いくらいだよ?」



 時刻は午前7時。フェイトだって、いつもはもうちょい早起きなはずである。



「……そうだね。私達、お寝坊さんだね」

「まぁ、休みは取っているんだし、OKでしょ」

「だな」



 事態が事態なので、僕もフェイト、そしてイクトさんも、追加で休みを取っている。もんだ……ないといいなぁ。

 まぁ、グリフィスさんなら、なんとかしてくれるでしょ。うん。



「そうだね。あとはてんきだけど……」



 まだ半覚醒かい。ひらがなになってるし。

 とにかく僕は、返事の代わりに部屋に戻るとカーテンを開ける。



 その結果、さっきまで僕らが見ていた光景がフェイトの目の前に広がるワケで……



「……きれい」





 フェイトが思わずつぶやいたのもムリはない。眼前に広がる景色は、本当に素晴らしかったから。



 まさに、それは台風一過。



 太陽は昇り、海はその輝きを受け止めてなお、青く澄んでいた。

 そして空は、心まで晴れるような青。昨日の曇天が、まるでウソのように感じる。



 その景色に、フェイトは少しだけ言葉を失っていた。だって、本当に綺麗だから。僕もさっき、ちょっとだけ見とれた。







「……これなら、ちゃんと帰れるね」

「そうだね。でも、そう言うと……」

「何?」

「ちょっと雰囲気壊れるね」





 ………………フェイト、寝起きなのにツッコミ上手だね。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 三人でゆったりと朝食を食べた後、ホテルをチェックアウト。そのまま、ラトゥーアのある人工島を出た。





 レールウェイも、普通に再開されていて、よかったよかった。





 ……あ、そうだ。







「……フェイト」



 レールウェイの車内の中、となり同士に座ったフェイトの顔を見上げる。

 少しだけ、真剣モードで。



「補佐官の話なんだけど……」

「あの、返事なら今すぐじゃなくていいよ? ヤスフミが他にしたいことがあるなら、そっちでもいいから」

「……いいの?」



 昨日も言ったけど、絶対に迷惑かける。フェイトが望む通りの答えなんて、きっと出せない。



「そんなこと、言わないでほしい。
 ……あの、局員になってほしいとかじゃない。それはゼッタイっ!
 ヤスフミと一緒に、イクトさんとも一緒に、これからのことを考えていきたい。ただそれだけだから」

「……そうだよね。考えて、始めないといけないんだよね。新しい僕を」

「ヤスフミだけじゃないよ?」

「え?」



 フェイトが、真っ直ぐに僕を見る。そして、言葉にした。

 いろんな意味でターニングポイントになった言葉を。



「私も、始めたくなった。新しい私を。
 だから……一緒に、がんばりたい。誰でもない。二人と一緒に。私も、今までとは違う事に触れていきたいの。
 それで、その中には、二人のこと、弟や家族としてじゃない。つまり……その……」



 フェイトの言葉が詰まる。だけど、それは一瞬。すぐに、続きは音となって、僕に告げられた。











「男の子として、見ていくことも……入っているから」











 あれ……僕、なんで涙が……



 あれ、止まらない。どんどん、あふれ出してくる。





「……ごめん」



 フェイトは、そんな僕の事を、優しく抱きしめてくれた。

 なんで……謝るかな。



「私、ヤスフミのこと、ずっと傷つけていたから。でもね、もうそんなことない」



 力が強くなる。だけど、それによって生まれた息苦しさが、心地いい。



「あの、ごめん。今はこんな言い方しか出来ないけど……ちゃんと、応えていきたい。
 今のヤスフミのこと、もっと知りたい。そう思っているから」



 よくわからないよ。それ……!



「うん、そうだね。私も同じ。
 だから……変わっていこう? みんなで。ひとりじゃないから……きっと、できるよ」





 返事の代わりに、フェイトを強く抱きしめた。







 フェイトは、そのまま、受け入れてくれた。すごく、うれしかった。







「………………今のところは、譲ってやる」







 ………………うん、ありがと、イクトさん。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それじゃあ……フェイト、イクトさん、また明日ね」

「あぁ」

「うん、また明日。
 あの……また、たくさん話そうね」

「うん」







 そうして、僕はフェイトやイクトさんと別れて、レールウェイを降りた。



 手を降って、見送った。フェイトも、手を振り返してくれたのがうれしかった。







 ……なんか、スッキリした。うん、いろいろと。







 ………………イクトさんとフェイトが最後まで一緒だったのは、とりあえず不問。



 だってあの人、きっとナビ役がいないと六課まで帰れないだろうし。



 さっきフェイトを譲ってくれた借りもあるし、このくらいはいいでしょ、うん。







 でも、フェイトどうしたんだろ。こう、またネジが外れてない?

 ま、いいか。あ、ただ……気になることがある。







 ホテルのロビーで、緑でロングヘアーな人を見た。あと、栗色ショートカットの女の子を見た。しかも……オーラが微妙だった。

 で、黒ずくめのツンツン頭と、紺色のロングヘアーの女の子も見た……こっちは、女の子の方だけオーラが微妙だった。







 ……よし、幻覚だ。あれは、見間違いだ。うんうん。











 ……とにかく、家に帰ってきた。







 そして、僕は中に入る。











 パパーンっ!





















 ………………………………………………………………え?





















『おめでとー!』











 ………………え?







 あー、何だろうな。また幻覚?

 何でいきなりクラッカー?(Notジオン) そして、なんでパーティーな装い?











「……え?」



 意味はないが声に出してみる。



「おかえりー!
 ……恭文くん、おめでとう っ!」

「あなたのために、腕によりをかけて……お赤飯、炊いたのよ。うぅ……長かったわね」

『パパ、おめでとー! ……なにが?』







 うん、ここまではいい。合鍵持ってるんだもの。襲来くらい、予測してはいた。で、問題は次っ!







「おう、邪魔してるぞ。まぁ……アレだ。よかったな」

「……よかったな。我は……我は……!」

「本当に、本当に……よかったわねっ!」

「リインは……リインはぁぁぁぁぁぁっ!」

「あぁ、ヴィータちゃんもザフィーラさんもシャマルさんもリインちゃんも泣かないで……
 今日は、めでたい……ごめん、オレも泣いていいかな? やっさん、お前、次元世界の恋の勝利者だよっ!」



 …………よし。



 なんで、兄弟子とか、主治医とか、守護獣とか、師匠とか、パートナーとかがいるのっ!?



 つか、また勝手に人の家に上がり込んでっ!







「問題ないよ。やっさんの家はオレ達みんなのセカンドハウスなんだから」

「んなワケあるかこのぼけぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「まぁまぁ。ほら、一緒にお赤飯、食べましょ?」



 なんで炊いてるっ!? ……だから、そのお祝いモードはやめてっ!



「リイン手伝ったですよ〜」

「カレルとリエラも手伝ってくれたんだよね」

『うんっ!』

「あ、オレは味見ねっ!」

「一番どうでもいい人でしゃばらないでっ! サムズアップしなくていいからっ!」



 つか、なんでここにっ!? まだ出向予定じゃ……あぁ、ムダだよね。わかってた。



「サリエルさん」

「あ、はい」

「いつもうちの恭文がお世話になっているそうで……ありがとうございます」

「あぁ、そんな頭下げないでください。
 オレもヒロも、やっさんと絡むのは、楽しんでいますから」







 ……そう言って、楽しそうに談笑するのは、僕の保護責任者と兄弟子。



 ヤバイ、なんか頭痛が……







「なぎさん、おめでとうっ!」

「お祝い持ってきたよっ! というか……よかったね。本当に」







 ……………………………………………………………………



 お前らもかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!







「エリオお兄ちゃんに、キャロさんだー!」



 ……キャロはさん付けなんだね。



「お兄ちゃん達も、パパのお祝い?」

「そうだよ。シャープエッジやアイゼンアンカーも来たがってたけど……アイゼンアンカーはともかく、シャープエッジはここに入れないし。
 ……なぎさん、年貢の納め時ですね。ハーレムなんて、しょせん夢なんですよっ!」

「その言い方やめてっ!
 つーか何を勘違いしているかなっ! そんな夢見てないからねっ!?」

「恭文、その……お父さんになるのかな?」











 エリオ、涙目でそんなことを言うな。お、お願い。お願いだから……!











「みんな落ち着けぇぇぇぇぇぇぇっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………え?



「イクトさん……とうとう、なんですね……」

「いやー、その辺に何の免疫もなかったアンタがねー」



 ………………おい、ハイングラムに光凰院。

 何を目にハンカチなどあてて感涙している?



「イクトさん、本当にがんばったんだね……っ!
 これはあたしも負けてられないかなっ!?」



 そしてあずさ。何をそんなにやる気になっている?



「またまた。とぼけちゃって。
 フェイトと朝帰りなんてしておいて、何もなかったとは言わせないわよ?」



 ………………っ、ちょっと待てっ!

 まさか貴様ら……テスタロッサとオレが、その……ってことかっ!?



 待て待て、貴様ら。蒼凪のことを忘れてるだろうっ!?



「え? 何?
 ひょっとして、恭文に負けたワケ?」



 「負けた」とか言うな光凰院っ! 勝負はむしろこれからだっ!







 ………………勝負とか言ってるぞオレっ!







 まさか蒼凪の言ってるとおり、オレはテスタロッサのことを……そういうことなのかっ!?





「大丈夫よ、イクト!
 愛は奪うもので、勝ち取るものなんだからっ!」

「あなたとあずささんは私達独身組の希望の星なんですからっ! 目指せゴールインっ!」

「うんっ! がんばるね、あたしっ!」



 えぇい、光凰院にハイングラムっ! 自分達が絶望的だからってオレ達に期待を寄せるんじゃないっ! そしてあずさ、貴様もノるなっ!



「………………よくはわからんが、まぁ……がんばれ?」

《男として、責任取れよ?
 とりあえずその辺に詳しい弁護士はリストアップしておいたから……あ、それとも産婦人科医の方がいいか?》



 マスターコンボイっ! よくわからんのならしばらく黙ってろっ! 貴様までそっち側に回ったら誰がコイツらを止めるんだっ! オレしかいないじゃないかっ!

 最低限でもオメガは黙らせろっ! そいつの発言が一番アウトだろうがっ!



 お前ら、人で遊んでないで……







「オレの話を、聞けぇぇぇぇぇっ!」







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 え、えぇぇぇぇぇぇぇっ!?







 なんでそんなことにっ!?











「……あのね、フェイトちゃん。
 うん、状況はわかるよ? でも、何があったのっ! いきなりこれはないよねっ!?
 というか、どっちとそういうことになっちゃったのっ!?」

「二股とか朝帰りとか……いきなりすぎませんか?」

「出かける前と状況が180度反転しているのではないか?」



 な、なのは、ティアっ!? ジェットガンナーまで、そんな微妙な目を私に向けないでっ!



「まぁまぁ……でも、どんな感じだったんですかっ!?」

「やっぱり……痛いんですか?」



 スバル、シャーリーも、お願いだからそんなに興味ありげに聞かないでっ!

 というか、そんなの私が聞きたいよっ! ……やっぱり、痛いのかな?



「え? 痛いって、何が?」

「えっと、それはね……」



 そしてシロくんはコメントに困る質問をぶつけないでっ! アリシアは答えないでっ!



「こらこら、そういうのは聞かないのが大人ってもんよ?
 ……何も言わなくていい。とりあえずこれ、使いな? というか、使わせな」



 ヒロさん、お願いですから目をそらしながら……その、『明るい家族計画』なんて差し出してこないでくださいっ!

 というか、なんでいるんですかっ!?



「フェイトママ……おめでとう♪ 恭文、ずーっとフェイトママのこと好きだったんだよ?
 だから、大事にしてあげてね」

「それとも……イクトさんとなの?
 うん、それでも、恭文のことは大事にしてあげよう? オイラはよく知らないけど……ずっと、がんばってきたんだからさ」



 ヴィヴィオ、ブイリュウも、お願いだからそんなこと言わないでっ! というか、ヒロさんとサムズアップで意志疎通しないでっ! 二人ともいつの間に仲良くなったのっ!?

 というか、やっぱりなんだ……って、そうじゃないからっ!







「あの……みんな、違うからっ! 私と二人は……その……」







 確かに、お泊まりデートをした。その、異性として……過ごした。

 たくさん気づいたことがあった。変えていきたいこと。変わりたいと思うことが、できた。



 だけど……そんなことはしてないからっ! 本当にしてないからっ!



 ヤスフミもイクトさんも、私が不安にならないように、すごく気を使ってくれて……

 私、それがうれしくて。自分の今までの視点が、本当にダメだって気づいて。だから、もっと……!







「……テスタロッサ」

「フェイト」

「あぁ、シグナム。ジャックプライム」



 よかった。二人ならまともに……



「よく決心したな」



 え? あの、どうして私の肩をつかむんですか。なんでジャックプライムまで涙目なのっ!?



「あのさ、ボク……心配だったんだよ?
 ボクがなのはと付き合おうとするのを片っ端からジャマするクセして、自分は生まれの事とかを理由に、こういうの、あきらめてるんじゃないかってさ。
 でも……そうじゃなかった。よかった。
 あの二人、やっぱりすごいよ。捨てられた方も選ばれた方もよくやったよ。
 アルフから連絡があって、フェイトのドキドキしてうれしい気持ち……伝わってきたって」



 ……精神リンクっ! 私あの時……リンク強化しちゃったんだっ! もしかして、それでみんなカン違いしてるのっ!?



「テスタロッサ、アイツらはああいう連中だが、どちらもお前への気持ちは本物だ。アイツらなら、お前に何があろうと、必ず力になり、越えていける。
 だから……見捨てて……やるなよ……!」










 ジャックプライムが泣いた。シグナムまで泣き出した。それに釣られて、みんなも涙目に……





 あの……お願い。お願いですから……!










「私の……話を、聞いてぇぇぇぇぇっ!」





















(第32話へ続く)







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



次回予告っ!

恭文「やった……やったよっ!
 ついにフェイトが僕のことを見てくれるってっ!」

ヴィータ「イクトも一緒に、だけどな」

ジュンイチ「つか、三角関係でもホントもめないよな、お前ら。
 ヴィータとエイミィとクロノの時なんか、そりゃもう大モメしたのに」

ヴィータ「あの時はホントにご迷惑をおかけしましたぁーっ!」

恭文「迷わず土下座っ!?」

ヴィータ「うちのはやてがっ!」

恭文「しかも迷惑かけたのあのタヌキかいっ!」





第32話「とある魔導師達のそれぞれの答え探し」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あとがき



オメガ《ども。あの三人のいろいろと奇跡的なバランスにはもはや感服するしかないと思う第32話でした》

Mコンボイ「恭文とフェイト・T・高町、炎皇寺往人とフェイト・T・高町、といった形で結ばれていたつながりが、恭文と炎皇寺往人の間でもつながりが生まれてしまったからな……」

オメガ《まぁ、似た者同士、思うところがあったということですね。
 とりあえず、ミス・はやてがまた大喜びで本を作りそうですね。そしてミスタ・恭文達にブッ飛ばされる、と》

Mコンボイ「かぎりなくありえそうな未来だな、オイ……」

オメガ《しかし……ボスとしても気が気ではないのでは?》

Mコンボイ「………………?
 なぜそこでオレの名前が挙がる?」

オメガ《だって、ミスタ・イクトがミスタ・恭文の友達になってしまうと、先に友達になったボスの立場が危うくなるのでは……》

Mコンボイ「………………炎皇寺往人とは、一度サシでやり合う必要がありそうだな」

オメガ《そういう思考回路だからミス・はやてに本を作られるんだってわかってるんですかね? この人は。
 …………と、ボスがまた変なライバル意識を芽生えさせたところで、今週はお開きです。
 また次回お会いしましょう》

Mコンボイ「あの男には……負けんっ!」





(おしまい)






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