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頂き物の小説
第七話  船上の大激突 ―ランブル・オン・ザ・シップス―






俺は通路を走る。未だに警報は鳴り続けている。

具体的には……半年ぐらい鳴ってるんじゃねえか?これなら、ステーキ食えたじゃねえかよ!?

《マスター、メタな発言過ぎるぞ?》
「うるせェ!お預け喰らった俺の気持ちに比べれば、そんなのは些細な事だッ!!」
あんなもんが普通に食堂で出るとか可笑し過ぎるだろ!?

しかも今回はタダで………
「あ〜ッ!!腹が立ってきた!!」
《……食い物の恨みは、かくも恐ろしいものか》

とかやってる内に、外へと続くドアが見えてきた。長かった……半年ぐらい走ってた気がするぜ?
《もう、そのネタはいいから!!》
「バルゴラ、お前は分かってないな。こう言うのを天丼って言ってな………?」
《その昔、天丼の海老が二匹乗っていた事にかけて、同じ笑いのネタを繰り返す事を言うのだろう!?》
「なんだ、知ってたのか?」
《古鉄殿に教えられた………というより、強制的にデータを入れられた。しかも消えないのだ》
「いやいや!普通にそれ、AIにハッキングされてんじゃねえか!?」
《機能自体に不具合は無い。大丈夫だろう》

……あぁ、何と言うか………良いのかそれで?



取り敢えず、これが終わったらメンテだな。AI系を重点的に。


そんな決心をしつつ、水密ドアを開けて外へと出る。


すると、そこにはまぁ居るわ居るわ。この船の戦闘可能な連中がゴロゴロ。
魔道師だけでなく、質量兵器で武装した奴も結構な数がいる。といっても大半は大口径の銃とかで、極一部だけがライフルっぽいのを持っている。

………う〜ん、何だこの流れは?
「バルゴラ……俺、すっげェ嫌な予感がするんだけど………」
《安心して欲しい。私もだ》
おっかしぃなぁ〜。こういうのって絶対にアイツの領分の筈なんだけど………?


あ〜、霧も出てきたし……………って、霧?

いつの間にか、周囲は薄い霧に覆われ始めていた。そして肌に刺さる感覚。こいつは………鉄火場の空気だ。
俺は懐から黒の十字架に似たアクセサリー 、相棒を取り出す。
「―――バルゴラ」
《Set up》
俺の意思を汲み取り、バルゴラが起動する。

俺の体が光に包まれ、一瞬でバリアジャケットを装着する。
そしてバルゴラが、大型のライフル――ヤスフミ曰く、ファイズブラスターのような形状 ――になって俺の腕に収まる。
更に、俺の両足にもデバイスが装備される。

名前はレオー。
脇にアンカージャッキの付いた、ムーヴサポートがメインのアームドデバイスだ。



「さ〜て、鬼が出るか蛇が出るか………どっちかなッ!?」

俺は思考を、一気に戦闘モードまで引き上げた。











     とある魔導師と古き鉄の物語 異伝


  ――― とある魔導師と竜魔の忍の共闘 ―――



  第七話  船上の大激突 ―ランブル・オン・ザ・シップス―











なのはの魔力が検知され、はやては慌てて窓から外を見た。
「―――なッ!?」
その瞬間、視界を襲った桜色の閃光。幸いにしてそれは、船の遥か上を通り過ぎていった。

「何だ、今のは………砲撃だと!?」
「ディバインバスター!?なのはちゃんの魔法……?でも、何で………?」
意味が分からずに混乱するはやて。

そんな彼女の頭の中に、突如として念話が届いた。
“こちら機動六課所属 シグナムだ!!誰でもいい、聞こえているかッ!?”
「ッ!?シグナム……ッ!?」
“主はやて……!?今どちらに!?”
「結界外で作戦行動中のグランダートVや!一体、何があったんや!?」
“申し訳ありあません……今は、説明をしている余裕が……っ!!”
「シグナムッ!?」
突如として念話が途切れ、はやては嫌な予感を覚えた。
「すみません、ちょっと失礼します!!」
はやてはモニター越しにボルドーに一礼すると、部屋を飛び出して甲板へと走った。


外へ出た途端、激しい海風に襲われてよろめくが、懸命に足を踏ん場って霧の壁を見遣る。
特殊型捕縛結界によって、霧はまるで発達した低気圧のように渦巻いている。
その一部、桜色の砲撃によって撃ち抜かれたそこからは、結界外に霧が漏れ始めていた。

「………あれは!?」
白い壁に混じって見える紫の光。それはシグナムの魔力光であった。
シグナムははやてに気付いたのか、真っ直ぐに彼女に向かって飛んできた。

そしてそのまま、滑り込むように甲板に降り立つと、振り返りざまに魔剣を構えた。
「シグナム、どうしたんや!?それに……ヴィータ!?何でこんな面白い格好に……?」
はやてはシグナムが脇に抱えているヴィータに気付き、驚きの声を上げた。それもそうだろう。彼女は見事なまでに、四肢を縛り上げられていたのだから。

「っ………」
「シグナム………?」
「……申し訳ありません。事が済むまでは、ヴィータはそのままにお願いします」
シグナムは厳しい表情を崩さず、はやてに背を向けたまま答えた。
その様子に、はやても大事が起こったのだと察した。
「…………ふぅ」
やがてシグナムは、深く溜め息を吐くとレヴァンティンを鞘に納めた。
一緒にはやても緊張から解放され、嘆息した、

「それで、何があったんや?ヴィータはこんなんなっとるし……正直、頭がおかしくなりそうやわ」
「私も……大分混乱しています。ハッキリと分かっているのは………」
「ん……?」
「なのはとテスタロッサが、敵になりました。現在、連音と恭文が戦闘を行っている筈です」
「なっ………何やて!?」
様々な事態を想定していたはやてだったが、流石にこれは予想外であったと、驚きの声を上げた。

「それはどういう事――!?」
はやてはその続きを口にする事が出来なかった。
それよりも早く、シグナムがレヴァンティンを抜き放ち、はやて目掛けて振り下ろしていたからだ。
ヒュン、という風切り音と共に、はやての前髪の数本が、風に乗って散っていく。

同時に、ポトリと何かが足元に落ちた。
「………ひっ!?」
それに視線を落とし、はやては思わず悲鳴を上げた。
魔剣の一撃で両断された真っ白いそれは、緑色の体液を流しながら足と羽根をバタつかせ、苦しみ悶えていた。
「やはりここまで追ってきていたか………それとも、この霧のせいか?」
「どういう事や?」
「この虫は、船内で我々が戦ったものです。ここまで撤退する間にも追撃に遭いました」
「これが……ティアナの報告にあったヤツか………ッ!?あかん!!」
はやては何かに気付き、通信を行う。

行った先は、グランダートV艦長室。
この船の艦長にして、部隊長である人物に、はやては連絡をとったのだ。
「すみません、ウェドナ一佐!」
『いきなりどうした、八神二佐!?』
「不躾なのは分かっています。大至急、戦闘配備をお願いします!!」
『何が起こっている!?現在、我が艦は魔導砲の発射準備体制に入っているのだぞ!?』
「セント・モーリアン号内で、うちの隊員が遭遇した生命体が、結界を抜けて出てきています!手遅れになる前に、迎撃体制を!!」
「横から失礼します。船内では大型も含め、数える事も出来ない程の数が蠢いています。あれが外へ出れば船の乗員が危険です。ご決断を」
『むぅ………分かった。これよりグランダートVは戦闘態勢に入る!!』
はやて、シグナムの必死な様子にウェドナーは決断する。そして船内全域に戦闘態勢を知らせる警報が鳴り響いた。








「―――ッ!?」
「これって………警報!?」
「何が起こったんでしょうか………?」
手当てを終え、休憩室で体を休めていたフォワードメンバーだったが、その警報にはっとする。
「もしかして、ヤスフミ達に何かが……!?」
「そんな……っ!」
「スバルッ!キャロも落ち着きなさい。そうと決まった訳じゃないでしょ?」
「でも、警報がなってるんだよ!?」
「この船は作戦行動中だから、警報が鳴ってもおかしくはないわ。大事なのはしっかりと事実を認識する事よ」
ティアナは自身の内心の不安を見せないように、二人を諌める。

「とにかく、八神部隊長に連絡しましょう」
ティアナが早速回線を開こうとするが、そこに丁度、エリオに付き添っていたシャマルとリインが急いだ様子で通り掛かった。
「シャマル先生!リイン曹長!!」
「あっ!皆、ここにいたですか!!」
「リイン曹長、何があったのか御存知ですか?」
「例の虫達がいよいよ、この船にも襲撃を掛けてきているです!!」
「「「―――ッ!!」」」
リインの言葉に全員が戦慄した。

ここに来るまで、全員がかなりの数と交戦してきたからこそ、その言葉の意味する所が理解できた。

「私達も迎撃任務に入ります!!」
「でも、体は大丈夫なの?」
「「「はい―――ッ!!」」」
シャマルが心配気に尋ねると、三人は力強く頷いた。
「―――分かったわ」
こうしてフォワードメンバーを加え、改めて甲板へと向かった。









「薄いとはいえ……霧が大分、広がってきたなぁ……」
小型の虫の幾つかを片付けつつ、はやてが呟く。
彼女の思った通り、薄霧は瞬く間に作戦海域全体にまで及んでしまっていた。

それと時を合わせるように、結界を抜ける虫が徐々にその数を増やし始めていた。
「しかし分からんな……何でこいつら、今まで結界越えて来なかったんやろ……?」
さっきと今とで状況がどう変わったのか、はやては思考する。
「―――まさかっ!?」
そして一つの事柄に気付き、ついで起こった閃きに戦慄した。

「どうしました、主はやて?」
「もしかしたらこの虫………この霧の中でしか、活動できないんやないか?」
「なるほど、それはあるかも知れませんね……」
「でもな、ティアナの報告やシグナムから聞いた話と合わせると………事態は最悪に向かっとるかも知れんのよ……」
「どういう事ですか?」
はやてはゴクリと固唾を飲み込み、続けた。

「あの船は……今は結界で止まっとるけど、クラナガンに向かって進行しているやろ?もしもこの霧が、クラナガンまで流れたとしたら……?」
「ッ!!この虫どもが、首都を襲うと……!?」
「それだけやったらまだ少しは対処しようもあるけど、もしもヴィータみたいに向こうに支配されたら……首都まるごとが人質になるかも知れん!」
はやてはすぐにロングアーチに連絡を取った。
若干のノイズが混じりつつ、通信が繋がる。
「こちら八神はやて。ロングアーチ、聞こえるか?」
『こちらロングアーチ。ご無事で何よりです、八神部隊長』
「グリフィス君。すまんけど、作戦海域に広がっている霧、今はどれ位の範囲まで言っとるか調べてくれる?」
『了解しました。少し待ってください…………これはッ!?』
「どないした、グリフィス君!?」
『作戦海域から湾岸部に掛けて、物凄い速さで広がっています!!このままの速度なら到達まで………』
『―――12分37秒後に湾岸部到達ですっ!!』
『早いな、シャーリー!?とにかく、こちらでカウントを送ります!!』
「了解。それと、もしもに備えて湾岸部の非戦闘員、一般市民の避難誘導……それと、ヘリの用意、しといてくれるか?」
『ヘリですか?』
「最悪………ヒロさん達にも、首突っ込んでもらわんとあかんかも知れんのよ。正直、それは避けたいんやけどね……」
『了解しました。いつでも動けるよう、手配しておきます』

通信が切れると、代わって空間モニターにカウントが現れた。

「はやてちゃん!!」
丁度そこに、シャマル達がやって来た。
「シャマル、リイン……とティアナ達も来たんか!?」
「すみません。足手まといにはなりませんから、状況を教えてください!!」
「……いや、今は人手が欲しいところや。状況は悪化の一途辿っとるしな……」
「どういう事ですか?」
スバルが尋ねると、代わって一歩、シグナムが前に出た。

「現在、内部からの砲撃によって捕縛用特殊結界の一部が破損。内部に抑えられていたきりが流出を開始した。
それと共に、例の虫どもが結界外に溢れ出している。我々はこの虫を排除、この艦の砲撃機能を守る為に動く」
「砲撃開始は、この状況では何時になるかも分からん。ギリギリまで引き伸ばしたいところやけど……もって7分かそこらが良ぇ所や」
はやての言葉に一同が驚き、ざわめく。
「ちょっと待って下さいです、はやてちゃん!まだ船には恭文さん達がいるんですよ!?」
リインは思わず、はやてに詰め寄った。
「砲撃までの間に、なのはちゃん達を助けて無事に脱出……今は、それを信じるしかないんよ」
魔導砲に巻き込まれれば、亡骸さえも消し飛ばされるだろう。
「信じるって……八神部隊長はこのまま、ここにいる気なんですかッ!?」
スバルが驚きと怒りで声を荒げた。
そんな状況にあって、はやては助けに行ないと言ったのだから、彼女からすれば信じられない事だった。

「私らがここを離れて、もしこの艦が落とされたりしたら……あの船に詰まれたロストロギアは間違いなくクラナガンを襲う。
間違えたらあかんよ。私らが守るのは一般市民の安全や。仲間を助けたい気持ちはわかるけど、それで町が守れんかったら本末転倒や」

本心をひた隠し、冷徹であろうとするはやて。だが、その悲痛すぎる表情にスバルたちはそれ以上何も言う事が出来なかった。


はやては、ギュッと拳を握り締める。

自分は、恭文のように飛び込むことは出来ない。
立場があり、しがらみがあり、だから飛び込めない。


いつもそうだ。本当にやりたい事があっても、それをまともに通す事が出来ない。
この状況を覆す為に戦う事が出来ない。


例えそこが死地であっても、恭文は躊躇無く飛び込めるし、飛び込む。

そして、そこにいるもう一人。
共に戦いたい人が、そこにいるのに、自分はここから動く事が出来ない。


(ほんま、恭文が羨ましいわ………)


そんな事を思う間にも、結界の壁を越えて迫る影が見えてきた。
「―――さぁ、ここが気合の入れ所や!!皆、抜かれたらあかんよっ!!」
思考を切り替え、はやては檄を飛ばした。


















霧深い海の上で、閃光が火花を散らす。
幾度もぶつかり合う二つの影は、互いに白いマントを翻した。

「ハァッ!!」
裂帛の気合と共に、恭文がアルトを振るう。触れれば全てを断ち斬らんばかりの一撃は、しかし虚しく霧のみを斬った。
「―――ッ!?」
すぐさま右に振り返り、返す刃で斬りつける。
それは甲高い金属音と共に火花を散らし、眼前に迫っていた金色の魔力刃を、ギリギリで抑える事に成功していた。

「………」
フェイトは無感動のまま、その上から強引に押し込んでいく。
「くっ……!なんて、バカ力………だよッ!!」
刀身の曲面を使ってバルディッシュを受け流すと、そのままがら空きとなった脇に滑り込む。
そのままアルトを振るうが、フェイトは躊躇無く、それを腕の装甲で受け止めた。
ギシギシと音が立つが、しかしフェイトは一切揺るがない。
「―――ッ!」
空いた手に握られたバルディッシュの柄が縮み、巨剣へと姿を変えた。
そのまま強引に、薙ぎ払うように刃を振るった。

恭文はブロックしている腕を蹴り、一気に間合いを離す。切っ先が胸元を僅かに触れ、バリアジャケットを切り裂いた。

「変形が早い……ッ!」
《通常に比べて、変形速度が117%ですね。色々とくっついているだけの事はあります》
「1.17倍とか、どんな改造だよ……!?」
恭文はデバイスマイスターの資格を持っている。だからこそ、その言葉の意味がとんでもないと分かった。

わずか一秒伸びるだけでも、事態がリアルタイムで動く戦場では命取りになりうるのだ。

しかしデバイスの変形とは、複雑であればあるほど、その時間が長くなってしまう。

変形時間を短くするには、基本となる形状から離れた形にならないようにするのが基本である。

六課のデバイスで、最も基本に基づいて造られたのが、クロスミラージュとストラーダである。
マッハキャリバーやケリュケイオンは、変形そのものが無い。

そして、その逆に居るのがバルディッシュである。
アサルトとハーケンは基本に則った変形であるが、後付されたザンバー、ライオットは違う。

シャーリーやマリーの手によって改良をされていたその速度を、更に上回る処理をされている。


どうやったのか、魔力もリミッターを解除されている上、デバイスも性能が上がっている。

「―――おっと!?」
思考している間に、フェイトが一気に間合いを詰める。
金色の巨剣が唐竹に振り下ろされるが、恭文はそれを横に回避。同時にアルトを逆袈裟に振り上げた。
が、フェイトの姿が一瞬で消える。次いで背後に生まれた気配に、即座にカートリッジを爆発。振り返りざまにシールドを展開させる。

ザンバーがシールドと激突し、強く軋む。
「ハッ!!」
それを左に受け流し、恭文は徹を込めた一撃を見舞う。

アルトはフェイトの脇腹に直撃。瞬間、衝撃が内部へと浸透する。
「ッ……!?」
襲う苦痛に、フェイトの表情がわずかに歪む。が、すぐに恭文の腕を掴み、片手でザンバーを切り返した。
恭文はとっさに距離を詰め、右腕を掴み返した。
そのまま力比べに入るかと思われたが、フェイトがすぐさま動いた。

「―――ッ!?」
反射的に掴んでいた腕を離して、恭文は体を仰け反らせた。と、前髪をフェイトの長い足が掠めた。
「フッ!」
「ぐっ!?」
フェイトは振り上げた足を真っ直ぐ、恭文の肩目掛けて振り下ろした。
それだけに留まらず、そのまま上を取ると、恭文を船の甲板目掛けて蹴り落とした。

恭文は苦痛に表情を歪めながらも、空中で静止。すぐさま上を見上げる。

既にフェイトは追撃を構えていた。
バルディッシュがカートリッジを爆発させ、持ち上げた掌に雷電を纏った金色の槍を生み出していく。
「スパークランサー……」

対する恭文もカートリッジを二発、爆発させる。そしてアルトの刀身を、蒼の魔力が包みこんでいく。
そうして打ち上げるのは、全てを斬り裂く必殺の刃。


「 シュートッ!」
フェイトがスパークランサーを投擲するように発射する。大気を穿ち、高速で迫り来る雷槍。
迎え撃つは、恭文が最も信頼する、切り札の一つ。
「鉄輝……」
迫る物をしっかりと見据え、恭文が動く。
「一閃ッ!!」

打ち出された刃と、雷槍が激突する。
勝負は一瞬の拮抗も無く、直ぐに着いた。

蒼き刃が、雷槍をバターのように容易に斬り捨てる。恭文の両サイドを抜けたランサーは、その背後で爆発した。




「流石、ヤスフミ………この程度は、どうという事もない」
フェイトは無表情のまま、呟いた。
「そりゃあね。この程度でどうにかされてたら……生き残れなかったし。そんな事、フェイトが一番知ってるでしょ?」
恭文は既に使い切ってしまったカートリッジをジガンスクードに装填しながら、不敵に笑う。

「確かに………なら、ここからは全力で行く。死なないように頑張って……?」
普段なら間違っても言わないような言葉を吐き、フェイトの手の中でバルディッシュが姿を変える。

ザンバーの刀身が縮み、刃は両刃から片刃へと変じる。柄も、両手で握る長さから、片手で収まる長さへと変わった。

ライオットフォーム。
恭文の鉄輝一閃の魔力圧縮を基に構築された、近接戦闘に重点を置いたフォーム。

本来なら魔力消費が大きく、そうそう切る事の出来ない手札であるが、今のフェイトは無尽蔵の魔力を供給されている。
更に身体能力と反応速度の底上げに加え、攻撃にも全く躊躇がない。

「やれやれ……親和力とは違った意味で、洗脳って厄介だね………!」
《洗脳というより、魔改造ですね》
「フェイトは違うでしょ?何て言うか、クール&スパイシーみたいな感じだし」

そう言った処で、背後で大きな爆発音が連続して響いた。

それの向こうで、高笑いが聞こえる。

「……魔改造って言うのはさ、あぁいうのを言うんだよ。ほら、『”魔”王に”改造”』って意味でさ」
《いえいえ。それなら、覚醒と言うのが正しいでしょう?》
「あ〜……うん、そうとも言えるか。ねぇ、フェイトはどっちだと思う?」
ダメもとで、フェイトにも意見を求めてみる。

「………いつも通りだと思う」
「なるほど………って、えぇっ!?」
《この人、普通に答えましたよ……》
「しかも、何という正論を………うわっ!?」
思い掛けない反応にビックリしていると、突如として桜色の閃光が二人に襲いかかった。


ギリギリで避けることに成功するも、恐らく斜線上にあったであろう船の操舵室の辺りが、抉り取られたように丸ごと無くなっていた。

「聞こえてたとは………うん、気を付けようか」
《全く、マスターのせいでとんだ目に遭いましたよ》
「ヤスフミ……気を付けてくれる?」
「何で揃って人のせいにしてるの!?おかしいでしょっ!?」
「―――さぁ、行くよ」
《来ます!!》
「お前ら、人の話を聞けぇええええええええっ!!」

恭文の叫びと共に、第二ラウンドが始まった。












「まったく……フェイトちゃんも恭文君も、人の事を好き勝手に言ってくれちゃって………」
「………随分と余裕だな?」
もうもうと上がる白煙の中で、連音はなのはを見上げた。
「余裕だよ?だって……連君じゃ、私には勝てないもの」
なのははそう言って、甲板にいる連音を見下す。

なのはのバリジャケットは無傷で、周囲にはブラスタービットが三機飛び交っている。更にアクセルシュータが二十発以上も浮遊した状態であった。

対する連音は、肩やマフラーの一部が吹き飛び、腕の装甲もひび割れている。
魔力量に任せた空間制圧攻撃に、連音は終始押されていた。

だが、無限にも近しい弾幕にも関わらず、直撃は一発もない。代わりに攻め手に回る事も出来なかったが。

「たかが魔力切れが無くなった程度で、もう勝ったつもりか?」
「うん。だって、これだけの弾幕……躱すだけで精一杯じゃない?」
なのはが片手を振るうと、シューターが一斉に動き出し、なのはの周囲を回り始めた。
「幾ら数が多くとも、一個一個のコントロールは低い。恐るるに足らんな」
連音は琥光を逆手に握り、深く身を屈める。

「圧倒的な数の魔力弾による空間制圧。近付く事も躱す事も出来ない。防げばすぐさま弾幕が潰す。
アハハハッ!これって完全無欠、最高の攻撃だと思わない!?」
シューターが更に回転を早めて行く。
「異な事を言う。戦場において、完全無欠の手など存在しないっ!!」
「―――じゃあ、これがその最初だよッ!!」

なのはが叫ぶや、シューターが嵐となって襲い掛かった。
それらは、連音が一瞬前までいた場所を一秒と経たずに残骸へと変える。
「今のを躱す……!?流石だね……でも!!」
放たれる度、シューターは新たに生み出されていく。なのはだけでなく。それに雑じってビットからもバレットが速射される。

眼下の全てを粉砕せしめんとする、魔力弾の暴風。
その嵐を抜けて、連音が姿を見せる。

「逃がさない!!」
甲板を駆け抜ける疾風に、なのはがレイジングハートを構える。
その姿を大砲へと変え、出現したグリップを握ってトリガーに指を掛ける。

その間も、ビットは三次元の動作から休む事無く弾丸を撃ち続け、絶妙に連音の進攻を食い止める。

なのはの高い空間把握能力が、無限に近しい魔力を経て最悪の姿となっていた。

「チッ!!」
連音は思わず足を止める。その瞬間、眼前を桜色の刃が切り裂いていた。
見れば、ブラスタービットから半実体型魔力刃―――ストライクフレームが展開されている。

自由なる移動砲台にして、自在なる突撃兵器。
ブラスタービットもまた、更なる力を与えられていた。



なのはの網膜に映し出されるターゲットスコープが、連音を捉えた。そして躊躇なく、トリガーが引かれた。
「ディバイン……バスターッ!!」

「―――ッ!!」
“瞬刹”
すぐさま瞬刹で後退する。が、甲板を穿った砲撃は、そのまま連音目掛けて迫ってきた。
「薙ぎ払えぇえええええええええええええええええええええッ!!」
バスターを放ちながら、強引にレイジングハートを振るう。

バスターはそのまま甲板を、文字通りに薙ぎ払い、爆砕せしめた。
それどころか海面も撃ち抜き、巨大な波が巻き起こる。


それによって船が大きく揺れ、戦闘で破損して脆くなった船体の一部が崩れ落ちていく。

巻き上げられた海水がスコールのように降り注ぐ中、なのはは周囲に意識を研ぎ澄ませる。
「―――ッ!?」
背後に動く気配。なのはが振り返るよりも早く、連音が刺突を繰り出した。


「―――チッ」
連音は舌打ちする。

これ以上無いというタイミングで繰り出した一撃は、しかし三角形をした障壁に阻まれていた。
三機のビットが、いつの間にかなのはの背後に回り、障壁を展開させていた。
切っ先と障壁が火花を散らすが、しかしその壁はビクともしない。


「―――ざ〜んねんでした♪」
「ぐぉ……っ!?」
なのはがしたり顔で振り返る。その瞬間、上空から無数の魔力弾が降り注ぎ、連音を襲った。
回避する間も無く、連音はスコールに呑み込まれ、吹き飛ばされた。
「背後から強襲……いつもワンパターンだね。だから、潰されるんだよ?」
そう言って、連音の消えた場所にレイジングハートを向ける。


その時、なのはの視界に映った物があった。それは、戦場には余りにも場違いな物だった。

「えっ……紙飛行機……?」

紙飛行機はゆっくりと旋回しながら、なのはの方へと飛んでくる。
「……?」
何の気なしに、なのはがそれに手を伸ばした時だった。
触れそうになった瞬間、紙飛行機が崩れた。一枚の紙となった時、そこには見慣れない文字が描かれていた。



「―――閃光符、爆ぜて奪えッ!」
「―――なッ!?キャアアアアッ!!」
聞こえた声に反応し、紙が光を放つ。至近距離で閃光を喰らい、なのはの視界が眩む。

「五行剣、玄水刀!!」
《神威如獄》
「っ!?レイジングハート!!」
なのはの声に宝石部が光り、防御壁が展開される。が、連音はそれに構わず、刃を振り上げる。
「玄水業刃ッ!!」
霧を裂いて振り上げられる、海水で作られた水の巨剣。ごぉ、という音を上げてなのはに襲いかかった。


刃がシールドと激突する。が、すぐに軋み始める。
「ブラスタービットッ!!」
なのはの命令に、ビットが動く。連音のいるであろうポイント目掛けて、三方からの砲撃正射を行った。


着弾と直撃、同時に爆発が巻き起こった。




「………くそ、あの魔力バカめ!」
連音が身に乗りかかる残骸を押し退けて立ち上がる。

砲撃を喰らい、連音は戦内まで叩き落されていた。

遥か前方には、大きく見事な緞帳。そしてそれを囲むような形で多くの豪華な装飾の座席が配置されている。

上を見れば、崩れた天井に危なげにぶら下がるシャンデリア。

そこは、船内の大ホール。
本来ならば、劇やコンサートなどの催し物が行われる場所であった。


「―――ッ!?」
突如として、緞帳が幕を開ける。そしてスポットライトが燈り、ステージの中央を照らし出した。

コツ、コツ、と板張りのステージに足音が響く。
「………来たか」
果たして、其処に白の衣を纏った者が現れた。
「船内の大ホールか……文字通り、『決戦の舞台』に相応しい………そう思わない?」
なのはのバリアジャケットがボロボロになり、僅かながら出血も見える。
「いい加減、お前の相手も飽きてきたしな……とっとと終わらせてもらうか」
そう言って、連音はボロボロになった覆面とマフラーを引き剥がす。

「レイジングハート、エクシードモード……ドライブッ!!」
その言葉にレイジングハートが姿を変える。
通常のエクシードに加え、更に外装パーツが正面から見てXを模した形を作り、トリガーとグリップガードが柄と一体化する。
「さぁ、終幕と行こうね……っ!」
なのはの足元に魔法陣が展開し、レイジングハートを突きつけた。
「……お前がな」
そして、連音も琥光を逆手に握った。




































「―――吹き飛ばせ、クラウ・ソナスッ!!」
シュベルトクロイツから放たれた白い砲撃が射線上の虫を打ち払い、更に爆発が烈風を巻き起こして吹き飛ばしていく。
“数が多いですから、飛ばし過ぎに注意して下さいです!!”
「それは分かっとるけど……出掛かりで潰しておかんと、すぐに溢れかえってまうで!?」
“っ!?はやてちゃん!!”
「おっと!?」
上空から襲い掛かってきた人ほどの大きさの虫避け、すぐさま魔法を構える。
「バルムンク・ブレイクッ!!」
生み出された三本の剣がその背に突き刺さり、そのまま爆発した。

「去年のヴェートルといい、今年のJS事件といい……あれかな?私ら皆、恭文の悪運に巻き込まれ始めとるんかな?」
“それを否定できないのが、リインも悲しいところです……”
「せやねぇ……そうでなかったら、こんな立て続けに世界の危機とか……うん、無いわ」
“おかしいですね……まだ、最悪ゾーンには入ってないと思うですけど……”
「もしかして……年々、最悪ゾーンが深くなってるとか?」
“うわっ!それは全く否定できないです……”
などとやっている二人の背後に、再び先程と同型の虫が現れた。
しかし気付いていないのか、はやては振り返らない。


なぜなら、振り返る必要がないのだから。



「――――ハァッ!!」
狂爪がはやてを引き裂こうとした瞬間、紅蓮の剣戟が閃く。
両断された体は轟々と燃え上がり、崩れ落ちていった。


「……ご無事ですか、主はやて?」
「うん。ありがとうな、シグナム。それで、状況は?」
「はい。流石に経験豊富な部隊だけあって、敵の進行を抑えてくれています。このままなら、砲撃までは乗り切れるでしょう」
「このままやったら……ね」
シグナムの報告に、はやては神妙な顔をした。
「報告にあった大型の敵……ですか?」
「あれに来られたら……ひっくり返されるかも知れん」

ティアナからの報告にあった、巨人の如き敵。
アリシアによって完全に撃破されたそれが、果たして一体だけであると言えるだろうか。


そして、はやての予感はすぐに的中する。


“ッ!?はやてちゃん!!下から、何か来るです!!”
「なっ……何や、あれは……!?」
リインの声に下を見れば、海中に蠢く巨大な何か。円状の大きな影から、三つの長い影が伸びている。
それは徐々に大きさを上げ、そして姿が見えてくる。

「な―――っ!」
海面が隆起し、それが姿を現した。



『グゥォオオオオオオオアアアアアアアアアアァァ………ッ!!』


鎌首をもたげて、それは薄白の空に吠え猛った。
白い体の―――三つ首のヒュドラ。




「………あかん。私らも、完璧に最悪ゾーンに巻き込まれとるわ」
飛び散る飛沫を浴びつつ、はやてがそう零した。















Side ジン・フレイホーク


「おい、バルゴラ……」
《何だ、マスター?》
「………これは『リリカルなのはSTS』の二次創作で合っていたよな?」
《間違いなく、その筈だ》
「じゃあ、何で俺達はこんな、メタ◯ラに出てきそうな奴らと戦わにゃならんのだ!?」
《それはあれだ。作者補正というやつだろう。これの作者はB級アクション映画が大好きらしからな》
「あぁ、確かにこのシチュはB級だな!?こなくそぉッ!!」
銃口を定めてトリガーを引く。いや訂正だ。狙いを定めなくても当たるからだ。
命中率? 100%だが何か?ま、それだけ数が多いって事だが。

とにかく手数だ。叩き落としまくる!!
弾幕を抜けてくるヤツには……こいつだ!!

《Edge Form》
「ジャック・カーパーッ!!」
銃身の下のボックスから実体剣が出現し、俺はそれを使って斬り捨てる。更に魔力波が他の虫どもも蹴散らした。

《上空から高速接近する反応あり。気を付けろ!》
「クソッ!!」
バルゴラの声に見上げるとデカいやつが、こっちに向かって飛んできていやがった。
つーか、速ぇッ!?
『グルァァァアアアアアッ!!』
そいつはでかい口を開けて、俺目掛けて飛び掛ってきた。
「チッ……!!」

俺はとっさにバルゴラを横に倒して正面に構える。同時にシールドを展開すると、すぐさまそいつが、シールドにめり込んだ。
《グォオオオオオオオオッ!?》
「うわぁああああっ!?」
だが、スピードに乗ったそれを受け止めるのは容易じゃなかった。俺はシールドごと後方に、滑るように押し込まれていく。

踏ん張っている足の接地面と甲板が擦れ、火花を散らしまくった。

つーかマズイ。シールドは破られないが、止められねぇ……っ!

「ッ………バルゴラッ!!」
《了解、カウントを開始する!3……2……1……0ッ!!》
その瞬間、俺はシールドを解除。敵の牙がバルゴラのフレームに食い込むと同時に、踏ん張るのを止める。

すると、どうなるか?

俺の体は背中から倒れる。そしてバルゴラに食いついているこいつは、俺の上に乗しかかってくる。
俺は倒れながらも膝を折り込み、その腹に足を掛ける。
この格好、管理外世界の格闘技『柔道』の技―――巴投げの型だ。

だが、そのまま投げてやる気はない。

俺は足が離れる直前に、レオーのジャッキを打ち込む。

ズドンッ!!という音と共に、緑色の体液が飛び散り、高々と上がった虫は奇声を上げて甲板に落ちた。

だが、まだだ。
俺は跳ね起きると、そのまま奴に向かって走る。助走を掛け、深く踏み込むために軽くジャンプ。
「おりゃあっ!!」
着地と同時に、両足のレオーを甲板に打ち込む。跳躍と合わせ、俺は一気に高く舞い上がった。

その間に、ヤツが起き上がった。が、もう遅い!!

俺は前宙回転を決め、急降下。そのまま両足を揃えて、ヤツにキックを叩き込む。

「喰らえ、レオー・インパクトッ!!」

そして、同時にレオーのアンカージャッキが同時にヤツに追撃を喰らわせた!!
『グギュァアアアアアアアア……ッ!』
ヤツは派手に吹っ飛び、土手っ腹に風穴を開けられ、断末魔の悲鳴を上げて崩れ落ちた。


「やったか……!?」
しっかりと着地を決めて、俺は呟く。
《そのセリフ、明らかな敵の復活フラグだが………どうやら、大丈夫のようだ》
「やれやれ……くそ、レオーがデロデロになっちまってる」
相棒の言葉に一息吐き、俺はレオーに付いた体液にウンザリする。あ〜あ、戦場が面倒臭いなぁ、これ。

《こちらもフレームに歯型が付いた。強度には自信があったのだが……うむ、フレーム系を強化するのも考えるか》

それも一考だな。だが、それもこれもここを乗り切ってからだ。
気付けば虫が減ってきている気がする。もう少しか?

「………しかし、あの青い道みたいなのは何だ?まるで遊園地のローラーコースターだな?」
《どうやら、限定的に空戦を行える魔法のようだ。羨ましいものだ》
「なぁ〜」

などと、俺達が呆れと羨望の混じった会話をしている時だった。

「―――何だッ!?」
いきなり船を襲った揺れ。うわ〜、嫌な予感しかしねぇよ!!

《マスター、あれを見ろ!!》
「やだっ!!」
《やだっ、じゃない!!あれはマズ過ぎるぞ!!》

渋々、俺がそっちを見ると、視界に映るのは三つの首………てーか、ドラゴンだな。

………ほら、やっぱり!見なけりゃ良かったじゃねぇかっ!!

《良いではないか。ドラゴンなら『リリカルなのは』的に有りだろう?》
「実際にやり合う身としては、完璧に無しだけどな!?」

クソッ、なんでだ!?
何で今日の俺は不幸なんだ!?

ケチの付き始めと言えば……去年のヴェートルの時もそうだ。
あいつが関わった事件に関係ない………いや、ちょっと違う気もするが。あれは相当にやばかったし。

とはいえ今回も、あんな風に容赦無く巻き込まれたりするのはおかしい。余りに理不尽だ!!


《マスター、あれを見ろ》
「なんだよ、これ以上何を見ろって…………あ?」
絶望に近い感情で見てみれば、そこには全ての答えがあった。


白のジャケットと黒のミニスカート。白い帽子を被り、金色十字の付いた杖。
その傍らには似た形のジャケットと腰巻のスカート。紅蓮に燃える剣を携えた騎士。

「あれって………」
《機動六課部隊長、八神はやて二佐と、同部隊のシグナム二尉だな》
「機動六課………あ〜、この前メール貰ってたなぁ〜………」
全てが繋がった。俺の不幸、去年をなぞったようなこの展開。その原因の全てが。


「あいつか……あいつが今回も関わっているのか………そうか、全部」

俺は天に向かって叫んだ。

「お前のせいか、ヤスフミィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」








SIDE OUT




「知らんわボケ!!何でもかんでも僕のせいにしないでくれる!?こっちだってビックリなんだからさ!!」
《何ですかいきなり?》
「なんか変な電波が来た。全てを僕の悪運のせいだって言われたような………うし、後でジンをしめよう」
《えらくピンポイントですね?》
「うん。でも、これで合ってる気がするのよ」
そんな呑気な会話をしている最中、しかし恭文に余裕は余り無かった。

アルトを左に担ぐように構える。瞬間、其処で火花が散った。
「―――よそ見してたら、すぐ終わっちゃうよ?」
「終わらないよ!!」
その刃を弾くと同時にアルトを振るう。が、それはフェイトに当たらない。
フェイトは高速で恭文の上段を取る。

「っ……!!」
真上から叩き込まれるライオットの斬撃。恭文がギリギリで受け止めると、フェイトはすぐさま蹴りを打ち込む。
恭文それを喰らうが、そのまま後ろに跳んで威力を殺し、逆に間合いを開ける。
そのまま指先をフェイトに向け、トリガーを引く。
《Stinger Ray》
指先から放たれる高速の魔力弾。予備動作もなく撃たれたそれは、さしものフェイトも回避できず、防御する。

自分よりも速く動くフェイトを捕らえる、一瞬の好機。
《Struggle Bind》
「……ッ!」
強化魔法を無力化するストラグルバインドを使い、フェイトを縛り上げる。

本来、発動に時間の掛かるストラグルバインドだが、恭文には瞬間詠唱能力がある。その為、実質タイムラグはゼロ。
足を止めさせればそこにチャンスは生まれ、それを恭文は活かし切った。

だが、捕縛が完了したとはいえ油断は禁物。
相手はフェイト・T・ハラオウンにして、そうではない存在。隠し玉の一つや二つ、持っている可能性がある。

恭文は太めの鋼糸を取り出し、フェイトに向かって振るって、そのまま縛り上げた。
物理と魔力の二重拘束。これで、最後の一手までの時間を稼げるだろう。

「取り敢えず、これで時間は稼げるかな……?」
《………そうも行かないようですが?》
「………あ〜、もしかしてフラグ踏んでた?」
《思いっきり》

思わず苦笑いする恭文の目の前で、膨れ上がるフェイトの魔力。
バインドにヒビが入り、更に骨の鎧から鋭い刃が生え、ギシギシと鋼糸を削っていく。


「――――フンッ!!」

気合一発、フェイトは己を縛る戒めを引き千切った。

「ウソッ!?」
驚く恭文を尻目に、フェイトは一瞬で間合いを詰める。
薙ぎ払うように振るわれた一撃を、アルトで受け止め、恭文はすぐに急降下する。
一瞬遅れて、恭文の頭のあった場所をフェイトの拳が通過した。しかも、電撃のオマケ付きでだ。

恭文は甲板に降り立つと、すぐに魔法を発動。
《Stinger Ray》
再び放つ魔力弾。しかし、フェイトは残像さえ残さず回避し、一気に甲板まで降りると、そのまま超低空飛行で反撃に転じた。


懐に飛び込んだフェイトが刃を振るう。が、恭文はあえて踏み込み、密着状態に持ち込んだ。
そのままバルディッシュを持つ腕を掴み、自分の腕を絡め付かせる。そしていつの間にか鞘に納めたアルトアイゼンを脇腹に叩き込んだ。
「グッ……!?」
「どりゃあッ!!」
わずかに表情が苦悶に歪む。恭文はそのままフェイトを投げ飛ばした。

「サンダーバレット……!」
フェイトは投げられながらも、しかし反撃の一手を講じる。掌に生まれた雷球をすぐさま発射した。

だが、恭文も既に切り札を切っていた。
その手の中には、大きめの魔力球。それを同時に撃ち放った。
「アヴァランチ・クレイモアッ!!」

雷球は恭文に当たると同時に爆発。その衝撃に吹き飛ばされる。

片やフェイトも、クレイモアの直撃を喰らっていた。

魔力弾ははじけ飛び、散弾となって襲いかかる。
放射型魔力弾攻撃。それがクレイモア。だが、それは普通とは違っていた。

「―――――ッ!?」
極小の魔力弾がフェイトの体に当たる度、それは極寒の冷気と共に氷へと変わる。


これが、アヴァランチ・クレイモア。


雷撃属性のエクレール・クレイモアに続く、第三のクレイモア。
喰らった者には、それが雪崩【アヴァランチ】の如く見える事と、喰らった相手が凍り漬けにされる事から名付けられた魔法。


「ッ………」
冷気の白煙から弾き飛ばされたフェイト。その体の大半が凍りついていた。


「―――幾ら何でも、低温状態じゃあ……普通には動けないでしょ?」

そして恭文は詰めの一手を打つ。
「ブレイク・ハウトッ!!」
術式を展開し、むき出しになっている鉄骨を叩く。

甲板の骨組みであるそれは、恭文の魔法を受けて姿を変える。
「なっ―――!?」
それはフェイトを押さえ付け、包み隠すように動いた。

あっという間にフェイトは即席の、光の一切入らない鳥かごの中に閉じ込められたのだった。
















「アクセル……」
劇場はその空間を、桜色の光に支配されていた。
浮かぶ無数のシューター。
「……シュートッ!!」
それらが、指揮者の命を受けて、たった一人に襲い掛かる。
「琥光ッ!!」
“六式 疾風 起動”
宝石部が翠に染まり、連音は座席の背凭れの上を走り抜け、弾幕を回避する。外れたシューターが座席を撃ち抜き、粉砕する。
連音はそのまま壁を駆け上がり、シューターの追撃を躱し続ける。
「五行、青風剣……!」
琥光の刃に青い光が生まれ、刀身を風が包む。
「何を……!?」
そのまま天井近くまで駆け上がると、壁を蹴り、その勢いで天井に張り付く。

その一瞬を逃さず、無数のシューターが一斉に飛び掛かる。だが、それこそが連音の狙いだった。
「青風飛刃!!」
琥光を振るった瞬間、大気が渦巻いて螺旋を生み出す。

そして、竜巻は襲ってきたシューターを巻き込み、爆散させていく。

「シューターが全部……!? くっ……!!」
竜巻はそのまま、なのはをも呑み込み、彼女は吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。
「―――言っただろう?」
「……ッ!?」
声は自分の下方から。
「完全無欠の手など存在しない、と……」
身を低く屈めた姿は、さながら跳びかかる直前の獰猛な肉食獣のよう。

「この―――!!」
なのはがレイジングハートを向けようとするが、それよりも早く琥光が柄を打ち、弾き飛ばす。

ヒュン、と琥光を順手に返して、柄頭を肩に打ち込む。
「ッ……!?」
肩に奔った苦痛に、なのはの顔が思わず歪む。
それもそうだ。この一撃には、本気ではないにしても徹を込めている。

その生まれた一瞬の隙。連音は拳をなのはの腹部に突き立てる。

刹那、ドンッ!という衝撃がなのはを貫いた。
「――――ッ!?!?」
今迄喰らった事の無い打撃が、肺から息を限界まで吐き出させ、その体をくの字に折り曲げさせる。
「ゴホッ……!容赦なく……こんなのを……酷くない……っ!?」
よろよろとしながら、なのはが後ろに下がる。ドン、と壁がその行く手を塞ぐ。

「俺は恭文ほど優しくはない。何より……良くも悪くも、俺は男女平等主義だ」
「それ、意味が違わないかな……?」
「……お喋りはおしまいだ」
「そうだね………おしまいだよッ!!」
なのはが叫んだ瞬間、レイジングハートの先端が開き、そこに桜色の半実体型の魔力刃と、サイドに桜色の翼が展開される。

それと同時に、連音の背後に回っていたブラスタービットも魔力刃を展開させていた。
「アサルトマニューバー……クロスレンジ・ストライクスッ!!」
なのはとビットが同時に動く。
“瞬刹”
なのはの急加速からの連続突撃に、連音は瞬刹を使って回避。
「ッ!!」
その回避地点目掛けて、ビットが矢継ぎ早に襲撃を掛ける。
身を捻り、後方に跳んで追撃を躱す。
僅かにバランスを崩した所に、シューターが追撃。それが爆発し、連音の視界を塞ぐ。
(これは布石………本命は……)

その白煙を貫いて、なのはが飛び込んできた。
「盾だっ!!」
“高速展開”
連音はとっさにシールドを展開し、それを正面から受け止める。
鬩ぎ合う二つの力が、バチバチとスパークを巻き起こす。

「クロスレンジで、俺とやり合う気か?舐めてくれたな……」
「舐めてなんかないよ……ほらっ!!」
「チッ……!」
背後から強襲するビットをシールドで受け止める。

「ほらほら、あと二つだよっ!!」
更に挟み込むようにして、二つのビットが襲い掛かった。

両手は塞がり、回避しようと動けば必ずどれかの攻撃を喰らう。
それ程に、攻撃が絶妙の角度で構成されている。

これを無傷で回避する事は―――不可能。


「……やれやれ」


―――此処にいるのが、連音以外の者であったならば。





集中力が高まり、脳内のスイッチが切り替わる。
瞬間、世界が色を失う。

神速。
なのはの実家に受け継がれている剣術、御神流。その奥義とも言える歩法。
時間間隔の延長を自分の意思で行い、かつその中で自在に動く。

そんな出鱈目な技を、連音は過去の戦いで会得していた。


神速に入ったと同時にシールドは解除。
両腕を目一杯開いた体勢から、連音は選んだ勝負札を切る。

過去に見た動きからトレースし、連音が動いた。

手刀でレイジングハートの先端を打ち、もう片方の手刀でビットを叩き落す。

そしてレイジングハートを打った手刀を返し、眼前に迫るビットを迎撃。そのまま身を翻し、背後のビットを撃墜した。


御神流奥義 薙旋。
それを徒手で模倣し、全てを打ち払った。







「―――キャアッ!?」
悲鳴を上げて、なのはが客席を転がる。

一体何があったのか分からずに混乱する頭のまま、立ち上がれば、ブラスタービットが連音を狙ったビットの全てが、あさっての方向に飛ばされているのが見えた。
「そ、そんな……何を………!?」
驚くなのはを尻目に、連音はビットに向かって札付きの棒手裏剣を投擲する。
「お前が砲撃、射撃魔法のスペシャリストであるように……」
幾つかの印を結ぶ。
「俺は戦闘全てのプロフェッショナルだ。この程度で俺を取れる気とはな……」
そしてパン、と両手を打った。刹那、札が光り、そして爆発した。

爆炎の中で、ブラスタービットが爆散して崩れていく。


「―――竜魔を甘く見てくれた報い、その魂にまで刻んでやろう」
紅蓮の炎をその背に纏い、黒煙をその腕に燻らせて、連音の瞳が真紅に染まる。
覆面に隠された口内では、犬歯がギシギシと音を立てて肥大化していく。

「―――ひッ!」
この時、なのはは初めて恐怖した。
模擬戦こそあれ、なのはと連音は本気で戦った事がない。あるのは、シグナムとヴィータだけだ。

恭文の修羅モードにも比肩するその圧力は、なのはの奥底にある根源的な恐怖を呼び起こす。
すなわち、捕食される者としての本能。


連音が一歩踏み出せば、なのはが二歩下がる。二歩踏み出せば四歩。
「ハァ…ハァ……く、来るな……バスターッ!」
かけられるプレッシャーに息を乱して、狙いも定めずに、なのははトリガーを引く。しかし、それは連音の脇へと逸れる。

何度もトリガーを引くが、その都度逸れていく。


「琥光 烈乃型……起動」
琥光のカートリッジシステムが起動し、炸裂する。
“機能解放”
琥珀色の魔力光の中で、琥光の姿が大きく変化する。引き抜けば、それは大太刀へと変じていた。

「当たれぇえええええええッ!!」

なのはが咆哮してトリガーを引く。それは今度こそ、連音目掛けて飛んだ。

それに気付いたなのはが、歓喜に口元を歪ませる。
“重山 起動”
宝石部が白く染まり、連音の全身に力が漲った。
「―――フッ!!」
そのまま、迫り繰る砲撃に向かって刃を振り下ろした。


果たして、斬撃は紙を切るかの如く砲撃を易々と両断した。切り裂かれた砲撃は、そのまま背後の座席を爆砕した。
「砲撃が……斬られた……ッ!?」
「驚く事でもない。こんな練り込みの甘い砲撃……豆腐の方が、まだ手応えがある」
その事実に愕然とするなのはに、連音は淡々と言い放って見せる。

実際、なのはの砲撃には今迄のような威力は無かった。それを斬る事は大した労力ではなかった。

宝石部が元の色に戻り、連音は琥光を返して刃先をなのはに向けた。
「さぁ………絶望の時間だ」
“瞬刹”
瞬刹でなのはの目前に踏み込むとレイジングハートを弾き飛ばし、柄頭でなのはの胸に強烈な一撃を叩き込む。
「―――あぐッ!!」
その衝撃になのはが吹っ飛び、ステージの壁に叩き付けられた。
連音は間髪入れずに、なのはの周りを狙って、呪符付の棒手裏剣を投擲する。
それらは四角を模る位置に刺さった。
「竜魔結界忍術……封魔乃陣!!」
連音が印を結び、最後に手を打つ。すると呪符が光を放ち、それが四角の陣を形成してなのはを閉じ込めた。

“四角”を以って、魔導の”死角”と成す。
封魔の名が示す通り、この術は相手を魔導の使えない領域―――魔法に当て嵌めるなら、極めて強力なAMF領域を生み出し閉じ込める、結界術である。

デバイスを失い、魔導を奪われた。この霧がどれ程、なのはに魔力を与えようとも意味は無い。

「―――行くぞっ」
連音の視界が一瞬でモノクロに変わり、神速の領域に飛び込む。同時に瞬刹を使い、行動そのものを加速させる。


竜魔絶技 無影。


神速、瞬刹という二つの術によって、認識する事も不可能な速度での自在な行動を行う、連音の切り札。

その中で連音の行動はとてもシンプルだった。

柄を両手で握り、腕を上段に振り上げ、そして踏み込む。


そのまま体を踏み足に預け、沈む勢いで垂直に刃を滑らせた。




正中線にそって、閃光が走る。

瞬間、なのはのバリアジャケットの上半身部分が、骨の鎧ごと砕け散り、鮮血が飛び散った。
「―――――ァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!?!?」

響く、断末魔の叫び。
そしてそのまま、なのはは崩れ落ちた。

「―――絶技 一割之絶」
連音は琥光を元の忍者刀に戻し、鞘に納めた。

足元には、崩れ落ちたなのはがある。
連音はしゃがむと、うつぶせの体をひっくり返した。

隠す物の無い身体は、その豊かな胸部を連音の視界に晒した。
「やれやれ、上手く行ったか……」
身体にあるのは幾つかの痣だけで、今しがた振るった刀傷は何処にもない。

一割之絶。

諺にある【鉛刀の一割】に由来する一刀必殺の極。弐の太刀要らず、では無く、弐の太刀無しの神業。




「情報通りだ、中々やるな……良い腕だ」
『お褒めの言葉、恐悦至極』
連音は通信越しに、エルザの腕前を褒めた。














「……さて、ここからどうしようか?」
フェイトを閉じ込めた檻を見遣りながら、恭文はアルトを鞘に納めた。
《どうしようも何も……ただ待っている訳にも行かないでしょう?》
「そうだね……幾つか仕掛けておこう…………ッ!?」
恭文が魔法を仕掛けようとした時、檻に異変が起きた。



金色の一閃が縦に煌き、女神を閉じ込めていた檻が切り裂かれ、崩れ落ちていく。
果たして、そこに現れたのはマントを脱ぎ捨て、代わりに二刀流となったフェイトだった。
全身にバチバチと、スパークまで走っている。

「これはちょっとまずいか………なッ!!」
恭文は言うよりも早く、ブレイクハウトを発動させる。再び閉じ込めようとするが、剣閃が走り、全て斬り捨てられる。

「―――とっ!?」
一瞬でフェイトは恭文の.眼前まで飛び込み、交差するように二刀を振るった。
恭文は鞘ごとアルトを構え、それをギリギリで受け止める。
「さすが。でも、どこまで持つ……?」
「クソ………馬鹿力が………っ!!」
フェイトの力に、徐々に刃が押し込まれていく。




『お待たせしました。解析完了です』




「―――ッ!!」
突如として届いた声に、恭文はハッとした。
《Sonic Move》
ソニックムーヴを使い、一気に間合いを離す。
フェイトもすぐに動こうとするが、その眼前には魔力弾が向かっていた。
「ブラストランサー・ブレイク!!」
「―――っ!?」
着弾の直前に爆発。フェイトは反射的に目を閉じた。

更にそこに、ブレイクハウトを使い、フェイトの全身をケーブルを再構成した金属ロープで縛り上げた。


僅かでも良いから、恭文が欲しかったのは――――時間。
「それで、どうすれば良い!?」
『白と黒のガーディアンは外郭に魔力循環ユニットを装備しています』
「あの骨みたいなヤツか……それで?」
『その中核……白のガーディアンは正面、黒のガーディアンは背面の、それぞれ心臓と同じ高さにある部分を破壊すれば………』
「フェイトもなのはも助けられる……!!」
『ですが、そこは最も重要な部分……当然、硬い外皮が守っています。中途半端な攻撃は通らないでしょう。文字通り………殺すつもりでやらなければ』
「……………」
一瞬の沈黙。そして恭文は不敵に笑った。

「ありがとう、エルザさん………お陰でどうすれば良いか、よく分かったよ」
《素晴らしい解析能力です。私も感服しました》
『賛辞はありがたく受け取っておきます。ですが、やれるのですか?』
「出来ます」
間髪入れず、恭文は言い切った。
「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは―――」
『―――それは、何もやらないことの言い訳にはならない……ですか?』
「えっ……!?」
『野上良太郎の言葉ですね。あなたが良く口にするとか………』
「………どっから流れてるんだ?とにかく、やるべき事が……やらなきゃいけない事がある以上、止まっている気はないですよ」
『元よりこちらは情報分析が主務。前線の貴方達に、何事かを言う必要などありませんでしたね………健闘を』
「ありがとう」

通信が切れ、同時にフェイトがケーブルを切り裂いた。
《Dark Mist》
先手を取って恭文が魔法を発動させる。あっという間に黒い霧が発生し、周囲の視界を埋め尽くす。
と同時に、ジガンスクードのカートリッジを爆発させ、駆け出した。
フェイトは二刀を合わせ、バルディッシュを巨大なザンバーへと変形させる。
「バーストザンバー……!」
刃に電光が走り、フェイトはそのまま一気に、甲板に叩きつける
電光が甲板を走り、次いで爆発を起こした。

その爆風が霧を吹き飛ばし、フェイトの視界の端に白い、動く物を見つけさせた。
「残念、ここまでだ………!」
フェイトは躊躇なく、ザンバーをそれ目掛けて振るった。


剣閃が走り、マントは両断された。
「―――なっ!?」
フェイトの瞳が驚きに染まる。そこにあったのは、マントを着た恭文のダミーだったからだ。

本物がどこへ消えたかと探ろうとするよりも早く、バインドがフェイトを縛り上げた。
「しまっ……っ!?」
その後ろに生まれた気配に、戦慄を覚える。




最大で唯一のチャンス。
恭文は全身全霊を込める。

刃は打ち上がっている。スターライトではないが、威力は充分。
あとは本人だけ。


心の奥―――暗く深い場所に、獣が眠っている。
それはゆっくりと瞳を開き………己を縛る鎖にゆっくりと牙を立てた。

ガシガシと力を込める度、鎖が軋み、亀裂を走らせる。

獣がいよいよと吼え猛り、最後の一撃を加えた。




砕け散った鎖。開放された獣が、表へと浮上した。







「いい加減………返してもらう」

全身に漲る力。
隠すことの出来ない殺気。
「僕はフェイトを守る騎士だ。だから、世界中がフェイトの敵になっても、フェイトの味方だ」
怒りを隠すことも無く吐き出し、恭文はアルトアイゼンを抜き打ちに構える。

「―――氷花」

目にも映らぬ剣戟は、美しい蒼白の軌跡を残す。


ヒュン、と刃を返して、アルトが鞘に静かに納められた。


「――― 一閃」



―――ピシリッ。

フェイトの背中の外郭、細い線が走った箇所から徐々に凍りつき、そして亀裂が走っていく。

それは背部のバリアジャケット全域に広がり、そして、ついに砕け散った。

氷の花が散る中、フェイトの体がグラリと揺れる。
恭文は手を差し込み、その体を支えて、ゆっくりと降ろした。

大きく開かれた背中には、少しだけ赤みがあるだけで、傷はついていない。
それを確認し、恭文はようやくの溜め息を吐いた。
「何とか、今を覆せたかな……?」
《まだ本命が残っていますが……取り敢えず、そうじゃないですか?》
「………そっか」

恭文は気を失っているフェイトの顔に、そっと触れる。



守りたい人を守り抜いた。
今はその身に掛かる重さと温もりに、恭文は浸るのだった。




















後書きという名の三次創作。






(薄暗い室内。いつもと違い若干の緊張感が漂っている。と、一箇所にスポットライト。現れたのは金髪に白衣の女性)


助手A「皆様、ようこそお集まり下さいました。これより、我が研究班リーダーであらせられますアルトアイゼン博士より、発表させていただきます」


(助手の女性が横にずれると、壇上に設置された台の上にノロウサが飛び乗った)


古鉄博士《どうも私です。今回、私達は「とまと」における最大の謎の解明に努めて来ました。
そして今回、ついにその謎を解明するに至ったのです》


(その言葉に、明かりの当たっていない所からどよめきが起こる)


古鉄博士《とまと最大の謎……それは勿論、マス……じゃなくて、一応主人公の『蒼凪恭文』です。まずは、こちらを見てください》


(助手A、手馴れた手つきでコンソールを操作。後ろに巨大なスクリーンが降りてきて、何かのグラフが映し出される)


古鉄博士《このグラフはマスt……もとい、蒼凪氏の悪運レベルを実数化したものです。個々に更にあるデータを加えます》


(みゅい〜ん♪)


古鉄博士《こちらのグラフは、蒼凪氏が女性にフラグを立てた数です。御覧の通り、悪運レベルの上昇と共に、こちらも上昇しています》

助手A「このように、蒼凪氏の悪運と女性へのフラグ成立には密接な関係があると分かります」

記者S「ただの偶然、という線は無いのですか?」

古鉄博士《検証データとして、悪運とフラグ成立力を持つ、他の被験者のデータも参照します》


(更にグラフが追加される。幻想殺しとか、下がる男とか色々書いてある)


記者S「他の被験者も、彼のように女性に対してフラグを立てて……現地妻とかいるんですか?」

古鉄博士《その通りです。が、蒼凪氏のような人数には至っていません。勿論、現地妻なんて存在していません》

記者M「では、他よりも蒼凪は、女性にフラグを立てる力が強いという事か?」

古鉄博士《他の被験者と比べ、その力は3倍以上です。同姓にもフラグ程ではないにしろ、影響を強く与えていますから》

助手A「年齢差…上は二十以上、下は生まれたての子供まで。最短9,8秒でフラグレベル3を建設した記録があります」


(ざわざわ………!)


助手A「悪運が最悪に近づいていく度、あらゆる女性にフラグを立てる力が増す………」

古鉄博士《昨年、ヴェートルで起きた親和力による洗脳のように、蒼凪氏と接触した相手はフラグを立てられてしまいます。
これは最早、レアスキルの領域としか言いようがありません》

記者A「レアスキルって、そこまで凄いのだ……じゃなかった……ですか、なのだ?」

記者J「つーか、どんだけなんだよ……いや、シルビィの件で分かってはいたけどさ……」


(記者J、資料を見ながらウンザリとした表情)


記者N「本人の気付かないまま、相手の思考に侵入、フラグをこっそりと建設し、品印がそれに気付くと発動……まるで、性質の悪い寄生虫ね」

記者S’「その言い方はどうかと思うのですけど……?」

記者N「じゃあ、そんな事無いって否定できる?気付いたら、あたし達にも立てられているかも知れないのよ?」


(もう手遅れじゃね?というのは言わないお約束)


記者S’「………」

記者N「………」

記者S’「………」


(記者S’、無言で神に祈りを捧げ始めた)


記者S「ちょっとちょっと!二人とも酷くない!?ヤスフミが可哀想じゃない!!」

記者M「流石、既にEXフラグが立っているだけあるな」

記者A「もう、手の打ち様がないのだ。新・現地妻は違うのだ」


(何か、グダグダになりつつあるので、助手Aが仕切り直す)


助手A「我々研究チームはこれらの結果を踏まえ、これをレアスキルと認め、こう名付けました」


(デケデケデケデケデケデケデケ………デ〜ン♪)


古鉄博士《能力名『フラグファンタジスタ Lv,6』です》


(おぉ〜〜〜〜〜〜〜っ!!)


???「ちょっと待てーーーーーーいッ!!」


(突如として会場が明るくなり、ドアが破られる。現れたのは一体何者?)


古鉄博士《あぁ、すみませんがここは一般の方は遠慮してください》

???「やかましいわ!前と同じフリ方をするなッ!!そして何時まで名前が『???』なのさ!?」


(乱入者、訳の分からない事を言う。一体何者?)


???「そのネタふりはもう良いから!!とまとの主人公、蒼凪恭文ですっ!!」

古鉄博士《あ〜あ、言っちゃった………これだからKYは》

恭文「だれがKY!?スバルと一緒にしないでくれる!?」


(『ヤスフミ酷いよ〜っ!あたし、KYじゃないのにーっ!!』)


助手A「―――ということで影とまと第7話、如何だったでしょうか?改めまして、助手Aこと、アリシア・テスタロッサです」

古鉄博士《古鉄博士こと、真・主人公のアルトアイゼンです》

記者S「記者Sこと、シルビア・ニムロッドです」

記者S’「記者S’ こと、サクヤ・ランサイワです」

記者A 「記者Aは、アンジェラのAなのだー!!」

記者J「えーっと……記者Jのジュン・カミシロです」

記者N「記者Nは私、ナナイ・ナタレシオン・ナインハルテン。そして……」

記者M「最後は私……メルビナ・マクガーレンだ」


(影とまと史上最多の人数が自己紹介を終える。ちなみに、藤田さんとパティはお留守番。連音は裏方をやっていたので、現在移動中です)


恭文「普通に仕切り直すな!!ていうか、何でおのれらがここにいるのッ!?」

シルビィ「何か可笑しいの?」

恭文「可笑しいでしょう!?これは『影とまと』よ!?普通にシルビィ達は出てないじゃない!!」

シルビィ「え?アタシ達も登場するわよ?」


(え…………?)


恭文「………今、何と仰りやがりますですか?」

古鉄《マスター、動揺のあまり言葉がおかしくなってますよ?》

恭文「おかしくもなるわ!!滅茶苦茶もいいとこじゃない!?」

アリシア「何かね、間が空いている間に色々進んだから、じゃあ出す方向で考えてみようかって作者が」

恭文「バカじゃないの!?改めて言うけど、犬吉ってバカじゃないの!?じゃあ、で出して良い話でもないでしょう!?」


(取り敢えずどんな形かは別として、出演の方向です。予定が変わる事もあるでしょう)


メルビナ「ということでだ、我々としてもどんな登場をするのか気になる所なのだが………」

ジュン「そりゃあ、あれだ……何か色々あって、恭文が大ピンチになるだろ?」

サクヤ「それで、私達がそこに颯爽と駆けつけるのですね?」

アンジェラ「それでそれで!アンジェラの、キラキラのラブマジックが炸裂するのだーっ!!」

ナナ「アンジェラ、それはプロミスランドの近衛隊長にして、元祖魔法少女たる私の役目よ?」

恭文「何、さりげなく言ってんの!?それが許されるのは現・魔法少女だけだから!!」


(『だから、魔法少女って言うなーっ!!』)


シルビィ「そして驚く敵がこう言うの。『おまえたちは何者だ!?』って感じに」

古鉄《ほうほう、それで?》

シルビィ「私はそいつを指差して言ってやるの!『私達は、ヤスフミの現地妻よ!!』って!!」

GPO「はぁああああああああああああああああああッ!?」


(ランサーズ、一斉にブーイング)


シルビィ「えーっ!?なんでブーイングなの!?」

ジュン「アホかぁあああああああっ!!「達」ってなんだよ、「達」って!!」

サクヤ「それだと……私達全員が、現地妻になっちゃいますよ?」

シルビィ「………あ」

サクヤ「素でしたか………」

ジュン「相変わらずだな〜」

アンジェラ「結局、現地妻って何なのだ?ひつまぶしにちょっと似てるから、美味しいのか?」

ナナ「美味しくないし、似てもないから」

メルビナ「第一、こちらでは蒼凪はフリーなんだぞ?わざわざ、現地妻を名乗る必要は無いだろう?」

シルビィ「なるほど……じゃあ、改めて『ヤスフミの第一夫人よ!!』で」

恭文「改めるなぁあああああああああっ!!」

シルビィ「良いじゃない。どうせこっちでも、無数のフラグを立ててるんでしょう?それらに勝つには、やっぱり第一夫人しかないわよ」

恭文「無数のフラグなんて、どっちでも立ててないよ!?どこでも僕は、本命に一途なんだからーーーっ!!」


(せやけど、それは只の夢や)






連音「………やはり、想像通りのカオスっぷりだな」

アリシア「あ、お帰り」

古鉄《では……マスターはほっといて、いつものように続けますか》


(蒼き古き鉄、GPOの面々と喧々囂々とやり合っている)


連音「第7話、暴走フェイトと魔王なのはとの戦い、如何でしたか?」

アリシア「強力な力を持つと逆に瞬殺フラグ、今回も立ったわね?」

連音「フェイトはともかく、なのはは自分の強さを無くしていたからな」


(本来、なのはの強さは類稀なる空間把握能力と、精密な魔力コントロール。それが砲撃を最大限に生かしているのです)


連音「まして、インドアで俺に勝とうとか………本当、舐めてくれたものだ」


(龍馬の忍、異様に低い声で笑う。というか、目が全く笑っていない)


アリシア「あ〜あ、なのはちゃんのトラウマにならなきゃ良いけど……」

古鉄《良いんじゃないですか?それぐらいしないと、あの性格は修正出来ませんって》


(後は、シャチでしばく位しか思いつきませんね……)


古鉄《そして我が下僕達の活躍………色々と不服があるんですが?》

アリシア「ちょっとカッコいい活躍してたしね〜」

古鉄《ちょっと所じゃないですよ? 人に断りもなく、レオーで必殺技とか使ってるし、許されませんよ?》


( 《別に断る必要はないだろう!? というか、下僕ではないと何度言えば分かるっ!?》 )


連音「そして次回、いよいよメノスとの最終決戦だな」

アリシア「予定だと次回でラストになる筈なんだけど………大丈夫なのかしら?まとめられるの?」

連音「纏まらなかったその時は、更に一話、追加させるだけだ。決戦自体はちゃんと終わらせられる予定らしいしな」

古鉄《………あれも、ですか?》


(ノロウサの指す方向を見る二人)




サクヤ「では、私のIFエンドもやって頂けるということですね?」

恭文「だから、何でそうなるの!?誰もそんな事言ってないでしょ!?」

アンジェラ「あーっ!なんかズルイのだ!!なら、アンジェラもスーパーIFエンドなのだ!!」

恭文「意味分かってないでしょ!?なのに乗ってこないで!?」

ナナ「そうよ、アンジェラ。そういうのは大人に変身できる私の役目よ?」

恭文「だから乗ってこないでくれる!?」

アンジェラ「う〜っ!!ナナはズルイのだ!!」

ナナ「そんなアンジェラに……はい、これ」


(元祖魔法少女、何かを差し出す。それは『V』の文字の入った、腕時計のような物)


ナナ「ちょっとした伝手で手に入れたの。これを使えば、アンジェラも大人に変われるわよ」

アンジェラ「これを使えば、アンジェラもスーパーIFエンドになれるの?」

ナナ「えぇ。これで私と一緒にIFを目指しましょう?」

アンジェラ「よーし、頑張るのだーッ!」


(獣耳少女、ブレスを付けて気合い十分)


恭文「メタ◯ルV!?それ、大紋字長官に返してきなさい!?」


(天使の〜羽を広げて舞〜い〜上がる〜♪)


メルビナ「―――ということは、やはり私のIFになるのか?」

ジュン「いやいや、どうなってそうなった!?」

恭文「ありがとう、ジュン。ジュンだけが僕の味方だよ」

ジュン「ほら、こいつだってアタシとのIFがいいって」

恭文「前言撤回!!お前ら全員帰れっ!!」







連音「なぁ、あいつら出さなくても良いんじゃないか?」

アリシア「まぁ、出ても本編に絡まないって話だしねぇ……」

古鉄《では、今回はここまでという事で。お相手はアルトアイゼンと》

アリシア「アリシア・テスタロッサと」

連音「辰守連音でした。じゃあ、帰るか」


(三人は残る面々を残してスタジオを後にする。それにも気付かず、更にエキサイトしていく蒼き古き鉄達)





シルビィ「だから、第一夫人がダメなら第二夫人でもいいわよ?」

恭文「僕が良くないっての!!」

シルビィ「何でよ!?地球に婚約者とかいるくせに!!」

恭文「誰から聞いた!?」




???「―――ここに来れば、第一夫人になれるって聞いてきたんだけど?」

???「ややもIFエンド、してもらいに来たよー」

恭文「ドキたまに帰ってくれない!?つーか、誰か収拾してくれーっ!!」


(もうグダグダ過ぎるので、ここでフェードアウト)



















おまけ1



例の相性占いの結果







辰守連音−フェイト・テスタロッサ

相性8%

・相手の心がつかめず、気持ちが通じません。
・自分の気持ちをしっかり見つめつづけることが大切です。
・あなたは、相手の気持ちに気付くことができません。




連音「この頃はそうだな、確かに。敵同士だったからな……」

アリシア(いや、A’sの時もこんなだったでしょ?)

連音「……何だ、アリシア?」

アリシア「べっつに〜」





辰守連音−月村すずか

相性20%

・なかなか、自分の思い通りにはなりません。
・良い関係になるには時間と努力が必要です。
・ケンカをすると、なかなか仲直りできません。




すずか「―――うん。これはきっと、此処が影とまとだからね」

連音「そうだな、きっとそうだ」

すずか「という事で、月村すずかは第一婦人を目指します!!」

恭文「止めてーッ!!」

すずか「誰のって、言ってないよ……?」

恭文「………え?」





辰守連音−フェイト・T・ハラオウン

相性26%

・相手の好きなことには自分も関心を持ちましょう。
・二人の関係は緊張したままの状態です
・会話が噛み合いません。




フェイト「うぅ……」

連音「俺というか、フェイトが緊張しっぱなしだが……」

アリシア「話、かみ合わないよね〜」






辰守連音−アリシア・テスタロッサ

相性26%

・あなたの努力次第でなんとかなるかも。
・相手の心がつかめず、気持ちが通じません
・あなたが支配される側なら、もしかすると・・・




アリシア「相性なんてただの飾りよ!!」

連音「俺はお前が、いまいち分からん」

アリシア「よし。今からあなたを支配するわ」

連音「怖いわッ!!」





辰守連音−高町なのは

相性40%

・献身的な愛を捧げることで、相手との関係が強固なものになります。
・お互いに分かり合うまで時間がかかります。
・相手の好きなことには自分も関心を持ちましょう。




連音「ないな、献身とか」

恭文「ないですね。魔王の好きなものって砲撃ですし」

なのは「二人が酷いよーっ!!」





辰守連音−リインフォースU

相性57%

・相手の好きなことには自分も関心を持ちましょう。
・気安く接してみると良いでしょう。
・じっくり時間をかけて愛をはぐくむ関係です。




リイン「う〜ん……リインには、ヤスフミさんがいるですから……ごめんなさいです」

連音「お前は何を言っている!?」

リイン「リインはヤスフミさんの一部ですから、見も心もヤスフミさんの物なんです!!」

恭文「そんな事を声高らかに叫ばないでーッ!!」





辰守連音−八神はやて

相性66%

・お互いの存在は、なくてはならないほど重要です。
・自分が望むことを、相手にしてあげましょう。
・気安く接してみると良いでしょう。




はやて「うんうん。これはやっぱりあれやな。シャドウシリーズのヒロインは、やっぱり私って事やな」

アリシア「ちなみに、ギンガちゃんはこれを上回る75%だったわよ?」

はやて「ギンガーッ!!今すぐ、ここに来いやーッ!!」





辰守連音−プレシア・テスタロッサ

相性88%

・じっくり時間をかけて愛をはぐくむ関係です。
・自分の気持ちを受け取ってもらえます。
・相手に期待する前に、まず自分の内面を探る必要がありそう。




連音「さてと―――」

アリシア「どこに行く気?(ガシッ)」

連音「いや、そろそろ良い子は帰る時間だからな……」

アリシア「……何か言い訳は?」

連音「言いようが無いだろ!?」










おまけ2







ヒロリス「ちょっとちょっと!現場にはまだ着かないの?」

アルト「そんな事言われても……これでも精一杯なんです!!」

サリエル「少しは落ち着けって。やっさん達ならきっと無事だ」

ヒロリス「そんな事は分かってるのよ!アタシが言ってるのはそういう事じゃないの!!」

サリエル「じゃあ、どんな事だよ?」

ヒロリス「急がないと、この鼻歌混じりに作った新型デバイスの試し撃ちが出来ないかも知れないからよ!!」


(最強の姉弟子、脇に置いてあったケースを持ち上げ見せる)


サリエル「お前なぁ……」

ヒロリス「いや〜、実戦楽しみだなぁ〜♪」


(最強の姉弟子鼻歌歌って超ご機嫌。最強の兄弟子、思わず顔を伏せる)


サリエル「つーか、それ……誰が使えんだよ?」

ヒロリス「……何とかなるんじゃない?」

サリエル「適当にも程があるだろ!?」














おしまい





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あきゅろす。
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