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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
西暦2008年・風都その23 『Vの蒼穹/Blaze』




魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

西暦2008年・風都その23 『Vの蒼穹/Blaze』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


前回のあらすじ――翔太郎が出落ちでした。

というか馬鹿じゃないの!?


「ヒーローごっこがしたいのなら、空き地の土管でやっていりゃあいいのに……」


とか言いながらも、即座に念話。


“魔導師隊、僕がいる一帯に全力爆撃を要請します。僕は退避するので、容赦なく”

“え……”

“お願いします。ただしトリガーだけはこちらに”

“……了解!”


よし、話がつーかーで助かった。やっぱり善良な大人は違うなぁ。


≪鳴海荘吉の弟子ですからねぇ。これも当然ですよ≫

「いや、お前ら辛辣すぎるだろ! ちょっとは翔太郎の気持ちも」

≪「気持ちだけで誰かが守れるわけないでしょ」≫

「……!」

「はいはい、ショウタロス……邪魔なのでひっこんでいましょうね」

「ちょ、シオン……首をしめるな……ぐえぇえぇえぇえ……!」


そうしてショウタロスはシオンともども、不可思議空間に引っ込む。

不可思議空間とはなんぞや? なんかこう……安全な場所なんだよ。それでいいじゃないのさ。


≪あなたも甘い要素があるんですねぇ≫

「コメントに困るから触れないで。それより」


まぁそんなことはともかく……。


『降参するなら今のうち……本気で殺すから』


奴へと踏み込み……CCBの峰でその顔面を左薙一閃。

高速移動の回避……その出鼻すら押さえた一撃で奴は鼻っ柱を潰し、仰向けに倒れる。それを横目で見ながら、その二メートルほど後ろに着地。


『い、たぁあぁ……』

≪恭文さん≫

「大丈夫だよ、ルビー」

『このぉ!』

『舐めるなガキがぁ!』


刃を右に引き、左右から飛びかかってくるバイオレンスやコックローチに……その外側から固まるドーパント達に狙いを絞る。


「……もう抜いたから」


術式発動――まずは転送魔法で三十メートルほどの高さに急速転移。

そうして空振りで足を止めた連中に狙いを定めて、開いた手を向けて。


≪魔導師隊、撃ち方始め≫

“了解! 爆撃開始!”


物質変換で周囲の酸素濃度を調整。そのまま挙げた左指指をパチンと鳴らし、火花を走らせる。

その瞬間調節された酸素濃度により、火花が引火……虚空に突如爆炎が生まれ、僕達を取り囲むように渦巻いていく。

当然飛びかかってきたバイオレンスやコックローチを……その外側にいたドーパント達は、一瞬で飲まれて。


『え……』

『逃げ』


逃がすわけがない。火力を徹底調整されたそれは数百メートルに及ぶ範囲攻撃となり、ドーパント数十体を焼き払う。

とはいえそれだけでは終わらない。さすがに怪人相手だしね。……だからこその魔力砲撃だ。

正確な狙いで、僕の脇をすり抜けながらも飛んできた砲撃が、炎熱攻撃で足を止め、呻いていたドーパント達の肉体を穿ち、次々と爆散させていく。


マグマなどの炎熱系についてはもう潰しているから、それはもうよく燃えて……爆炎は芝生にも燃え移り、辺りは赤々とした焔の世界へと変化する。


『なに、これ……!』


そんな中、ホッパーは上空から着地……ギリギリで飛んで、回避したみたい。なかなかしぶとい。

……だったら。


「驚くことはない。周囲の酸素濃度を調整し、超高熱の爆炎を発生させただけだよ。ドーパントすら一瞬で焼き払える熱量のものをね」


さすがにあり得ないと驚くホッパーに……ただ一人残されたホッパーに、僕も着地しながら優しくそう告げる。ちょっとした時間稼ぎと威圧も兼ねてだ。


……炎が燃焼するのに一番必要なのはなにか。

燃料? 火種? いいや違う……酸素だ。

本当に原則的なことだけど、炎は酸素がないところでは生まれない。酸素という無尽蔵の燃料を糧に燃えている。


現に火災現場……閉所では注意が必要だ。鎮火状態でもそれは酸素がないゆえで、明けた途端流れ込んできた酸素に引火・爆発するバックドラフト現象もあるもの。

今のもそれと同じ。物質変換で酸素濃度の調整で導火線を作り、火花を走らせ、そこに引火させただけだ。

とはいえそれもただの足止めにすぎないのは、もう言うまでもないよね?


『だったら、なんであんな槍みたいなのを』


その疑問も真っ当だろう。ドーパントすら焼き払える広範囲高火力攻撃があるなら、それを連発していればいいだけ……なんだけど、それも素人丸出しのものだった。


「対処できないでしょ? 乱戦の中で突然ぶっ放せばさぁ」

『……!』

「その点をお前が分からなかったことでも、再証明された。
……お前達はメモリでいきっているだけの素人ども。きちんとした軍事的統率も、そのための教育も受けていない。
本部に集められたであろう“エリート様”がその程度で済んでいるなら、そこら辺のエージェント達も同様。
ドーパントに対抗しうる力さえあれば、お前達の行動を軍事的に押さえつけることは十二分に可能だ」

『馬鹿じゃ、ないの? それができないから』

「だからできる奴を連れてきている。
現に今のも、どこからともなく飛んできた砲撃が決め手だし……アルトアイゼンー」

≪映像、回します≫


そうして開く空間モニターは……あぁ、なんということでしょう。


『ふん――』


拳でバイオレンスドーパントの胴体を穿つ神父さんとか。


『はぁ!』

『やぁ!』


CCBでドーパントの急所を穿ち、切り裂き、潰していく恭也さん達とか……あっちこっちで跳梁跋扈されまくっている奴らの姿が映し出された。


『なぁ……!?』

「まぁそういうわけで、死んでよ」

『……!』

「お前達いきり素人がゴミみたいに殺されてくれれば、メモリの有用性を信じて手出しする馬鹿も少なくなるってもんでしょ。多少でもさぁ。
だから今の映像も、個人のプライバシーに配慮する形で流している」


抜く……刀を抜く。


「お前達ミュージアムが、警察やPSAに戦争を吹っかけて、公開処刑にした……しようとしたけど、情けなく返り討ちに遭っているって体でね」

『だから、アンタ、なに言って』

「お前達も、鳴海荘吉も、そういう愚か者でなければならない。
メモリなんておもちゃに囚われ、道を踏み誤った愚か者として、その存在を刻み込むんだ」

『なに言ってんの!?』

「――生けにえになれって話をしてんだよ。日本語通じている?」

『………………』


その意識で……そのワードで、自分の中にカチリとスイッチが入ったのに気づいた。

体に力が溢れる。感覚が研ぎ澄まされる。今までずっと……鞘に納められた自分が全て解放されて、頭も回転し続けている。


自然に出てきた猫耳尻尾と耳も揺れて、振るえて……あぁ、そっかぁ。これも御影先生が持たせてくれたんだ。


(刀を抜いたとき……ため込まれた力も解放される。
……こういうことだったんだね、先生)


……これなら、やれる。


(――炉を熾せ)


共感覚のチャンネルを限定展開。さすがに全展開はうるさすぎるので、相手の感情、色……その気配……生まれる“起こり”を色としてとらえ、見られるようにする。


(焦がれ、燃やし、打ち上げ、研ぎ澄まし、磨き上げろ)


自身と衣服へ強化魔術をかける。これで肉体と衣服の強度と能力が増強され、一撃で四肢が吹き飛ぶってこともなくなる。

魔法でも身体強化はあるけど、僕の出力だとこっちの方が上だから。それに紫激気も……さすがに慣れていないしね。ここは今まで教わったことの総動員で勝負だ。


(加減はいらない。遠慮もいらない)


更にCCBにも強化魔術を付与。その上で電撃を走らせ、ナノチューブカーボンの強度と切れ味を科学的にも強化。

なお刃に電撃は走っているけど、自分で感電するようなことはない。そこはしっかりしておくよ。


……こういう乱戦に備えて、クーガーやムラクモ、舞衣姫達の力を借りたしね。


「いいからとっとと来い」

(創り上げる。この状況を両断できる刃を――それを振るえる、僕自身を)

「削り殺してやる」


そうして構えたこの姿は、進退自在の位。


――実は私、これは使いこなせないんだよ。
だが、私より速く鋭い君なら、もしかしたら――


これこそが御影先生が見せてくれた技。憑依経験で、乞食清光からも読み取った……沖田総司の天然理心流。


――刮目するがいい、鴨よ。
これが私の理心流だ――


流派の中目録に記されているそれの名は、天地人の構え――。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なんだ、あの速さは……話が、違う……。


「が……あぁあぁあ……!」

【……ホッパーには、高速移動能力もある。追尾弾丸を振り切ってきたんだ】

「絶対、当たるんじゃないのかよ……!」

【メモリの使い方も分からない素人は、使い込んだ相手に勝てないということさ】

「………………!」


また、それかよ。能力が分からないから……ちゃんと使えないから、戦えない……子どもを戦わせないなんて当たり前のこともできない……!

超人になっても……メモリがあってもそれなのか!? 男の意地一つでそれは、乗り越えられないほどデカイ壁なのかよ!


【となれば、もう彼に任せるしかないね】

「だから、それは」

「……じゃったら踏み込んでみるか? アレに」


するとヘイハチのじいさんが脇に立つ。なんで助けねぇのかと見上げると……気づいた。


空気が揺れている……芝生が、空気が……びりびりって……!


『……こりゃ、本気でかからないと……死ぬ−?』


それでホッパーについては滅茶苦茶警戒していた。俺相手なんぞよりずっと……身構えて……。


「なんだ、ありゃ……まさかテラー」

「いいや。アイツの剣気……気迫じゃよ」

【それでドーパントが手出しを恐れていると? 不条理だ】

「そういうもんで痛感するんじゃよ。“桁”が違うと、本能的に」

「……なんで……おい、止めろよ! もう必要ねぇだろうが!」

「それをやったら、お前さんはまた逃げるじゃろうが。“自分が弱いから”こうなっていると」

「……!」


それでじいさんも、見ているだけのつもりだ。木刀を肩に構えて、のんきにしていやがる。

そうして俺に制裁してくるんだ。メモリがあっても、俺が弱いから……ただの素人だから、理想を貫けないと……その光景を見せようと……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……右に動く。


『ふん!』


奴の打ち込んだ蹴りを避け、次は下がりながら一回転。

背後に周り込んだ奴は、僕の背骨めがけてまた蹴り……その隙だらけな背中めがけて、右切上一閃。

速度と射程重視で振られた一撃は、確かにホッパーの背中を切り裂き、血肉を抉る。


でも……。


『……浅い!』


また下がって、すれすれで蹴りを回避……更に踏み込み、右切上一閃。

ホッパーは腕でそれをガード……その上からすかさず左掌底。更に術式発動……それが終わってからすぐに飛び退く。


『ガキの駄々なんざぁ……楽勝だし!』


ホッパーはこちらをあざ笑った上で、浅い傷など構わずに踏み込み右ミドルキック。

でも蹴りで穿ったのはただの虚空。しっかりリーチを見極めた上で……右切上一閃。


『……!』


アキレス腱狙いの斬撃は、足が伸びきったところできっちり命中。その強靱な体皮を……足首裏を深く切り裂く。

奴はすぐさま足を引いて、こちらに飛び込みながら脇腹めがけて一撃……骨と骨の間を深く抉る。


体格的にかなり踏み込まないと届かないけど、それでも小回りと速度は僕の方が上。余裕で対処可能だ。


『つ……!』


ホッパーは更に回し蹴り……その挙動が……気配の起こりを見て取った瞬間、下がって回避。

ホッパーの蹴りがその場に嵐を巻き起こすけど、それは僕の前髪を揺らすことすらできず、踊るように虚空を刻むだけだった。

すぐさま終わり際を見計らって踏み込み、一撃……ホッパーがガード体勢を取りかけたところで急停止。すぐに右脇を取って、右太ももめがけて一撃。


『……!?』


跳ねるように振り上げられ、打ち込まれた右足……アキレス腱も傷ついているのに、超人の能力で無理に振り回してきやがる。

だったらと七時方向に下がりながら避け、すねめがけて一撃。その足が引かれたところで再び踏み込み、胴体部に一撃……と思わせてまたも急停止。

ホッパーが面食らったところで右に周り込み、再び太ももに……さっきよりも深い一撃を打ち込む。


ホッパーはそこで僕を追い立てるように踏み込むけど、その途端に入れ替わるようにしながらターン。背後を取った上で、尻から背中中程まで切り上げる。

そのまま更に踏み込んで追撃……と思わせて休廷しから左に移動。大砲のように撃ち出された後ろ回し蹴りを避け、膝裏めがけて一撃。しっかりと筋肉の筋も立ちきるような一撃に、血肉が抉られ……。


『な……に……』


奴は体勢を崩し、地面を転がる。そうして素早く起きながら、構え直した僕を見やった。


『アンタ、なんで……こっちの動きが……』

「敵に教える馬鹿がどこにいる」

『ああもう、だったら……』


ホッパーが大きく後ろに振り返り、跳躍……姿を消そうとするので転送魔法発動。

……先ほどの掌打で刻み込んだ、転送用の目印……術式みたいなものだけどね? それを使い、ホッパーには地面めがけて突っ込んでも羅う。


『え……!?』


顔面から自ら地面に激突し、面食らうホッパー。すかさず刃を蜻蛉に持ち替え――。


「どこへいくつもりだ」

『……!』


あえて一声かけてからの袈裟斬り――。


「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえい!」


次の瞬間、刃は確かにホッパーを捉え、その肉体を両断する。


『あ、あぁああぁああぁ……!』


……断ち切ったのは左腕一本だけだった。ホッパーは赤い血を垂れ流しながら、飛び退いて地面を転がり、それでも起き上がって……。


『アンタ、許さない……絶対に』

「今まで散々、メモリの力で殺し回ってきたんだろうが」


CCBについた血を、もう一度左の袖で拭い、改めて天地人の構え――。


「だったら腕一本飛んだくらいでガタガタ喚くな」

『………………!』

「鳴海荘吉やそこの左翔太郎もそうだったけどさぁ」


本気で呆れながら、再び踏み込む――。

ホッパーは残った左腕と右足で、こちらの攻撃に備えて防御。

こちらの攻撃が浅いと践んで、反撃で仕留める手はずか。でもだからこそ“分かりやすい”。


≪Circle Slicer≫


だから急停止した上で、左手を開いて術式詠唱……瞬間発動。

素早く左側に周り込みながら、手の平の上で生まれた蒼い回転のこを射出する。


がら空きな左太ももを深く刻みつけると、強引に右足が振り回され、足払い。


「お前ら……」

『つぅ……!』


それを下がって避け、再び踏み込み……また止まると践んで、すぐさま足が返って襲いかかってくる。


……だから、射出した回転のこが……奴の再度から強襲する。


『ちぃ!』


咄嗟に左腕でそれを砕こうとする。振るわれる裏拳に対して……回転する魔力刃は、容赦なく肉と骨を抉り、断ち切る。

そうして奴の手首から下がはじけ飛び、失われた。


『…………あぁああぁああぁああぁああぁああぁああ1』


サークルスライサーは、ドラゴンボールの最強必殺技≪気円斬≫を参考に組み立てた攻撃魔法。

普通の射撃や砲撃は弱いから、ロッテさんから出されたオリジナル魔法構築の練習中、思いつきで作ったものだ。当然ドーパントの肉体も破壊できる強度にしてある。

それを不用意に受けるからこういうことになる。そして、その隙を逃すほど馬鹿じゃあない。


「――!」


跳躍し、振り乱される血肉を飛び越えながら……構えを平正眼に直し、ホッパーの顔面めがけて刺突。


『な……あぁあ……!?』


咄嗟に顔を逸らし、右目を頬ごと抉られながら、ホッパーはバランスを崩し、よろけて倒れる。

こちらも距離を取りながら着地し、反転して平正眼に構え直し。奴の見えなくなった右目……その視覚に入り込みながら、再び肉薄……右足の膝上をより深く抉る。


『……!』

「そんなおもちゃで超人気取りとか、頭おかしいんじゃないの?」

≪Circle Slicer≫


今度はノーモーションで、スライサーを生成・連続投射。

奴はさすがに怯え、竦み、後ろに飛び退き……斬り裂かれる地面を見てぞっとする。


……これで条件はクリアだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……ロイ・マスタング大佐ですか、あなたは。

しかも今やっている踏み込み……明らかに反射と速度が上がっていた。斬撃の精度も別人のようだ。

そうでなければあの高速型ドーパントに追いつけるはずがない。たとえ“後出しじゃんけん”を強いていたとしても。


(……ミカゲさん、これもあなたの仕込みですか)


気づくべきだった。気づいて然るべきだった。

刀を抜く意味、抜かない意味……それを教えたのであれば、平時のこの人は刃を鞘に収めている。言うなればその時点で“全力たり得ない”。

それを抜くことで……抜くというイメージで自身に暗示をかけていた。その力を……本性を、狂気をさらけ出せと。


そうして生まれた効果は、潜在能力の解放。この人にとって刀を抜くというのは比喩じゃあない。自分の全てをさらけ出すためのリミッター解除。


(自己暗示による潜在能力解放――今のこの人は、抜く前のそれじゃあない。
抜く前ならまだ人間の範疇だった。でも今は)


異能力込みでも、生身で怪人を追い詰めている。人であり、妖怪である素養全てを使い尽くしての……この人の全力。


(人の域じゃない。
たとえるなら鬼……いや、修羅)


これがこの人の本性だった。


(八面六臂の修羅――戦うために進み続ける、生粋の戦闘神――!)


人を超え、修羅となると、化物が宿るという。この人には確かに宿っていた。

そんな戦いの神が。そうたとえて差し支えない本能が……狂気が。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なに、コイツ……なんなの……。

なんでアタシの攻撃が当たらないの! ドーパントにもなっていない奴なのに! ただ刀で切り刻むことしかできないのに!

なのに的確に抉られる! 避けても、ツッコんでも、こっちの関節を、筋肉を……でもそれだけだと思って固まったら、あのとんでもない威力の打ち込みや突きが飛ぶ!


しかも逃げても妙な力で引き寄せられる! トドメにあの、変な……光の回転のこまで襲ってくる!


(このアタシが……たった一分足らずで、完全に攻め手をなくしている……!)


もう、全身刻まれ続けるしかない。致命傷を避けるように、下がりながら……いや、まだだ……まだだ……。


(攻撃の本質は分かった。コイツはアタシの攻撃を事前察知している。
多分ハイドープとしての能力だ。それでどういうわけか、こっちが防御しても急停止して、その隙をかいくぐってくる。
ようは後出しじゃんけん……それで自分が有利なように立ち居振る舞って……!)


それなら能力差もなんとかなる。こっちがグーを出すって分かった上で、安全な形でパーを出すんだ。

この浅いと思っていた斬撃も、その性質から違う。これは……毒だ。

ドーパントの肉体を確実に斬り避けると分かった上で、切っ先で切り刻み、血肉をそぎ落とし、こちらの余裕を削り取ってくる。


強烈な再生能力でもあればマシだけど、それもない……というか、悪質すぎる! コイツ、そういうフォローもないように、乱戦に持ち込んで、みんな焼き払って……その上で持ち出してきた!

このままじゃあ後出しじゃんけんで全ての猶予が奪われ続ける! しかもこの構えに対応しようとしても、別の攻撃が飛んで……。


(いや、まだだ……)


腹が、太ももが抉られる。潰れた右目……傷つけられた右足を重点的に、更に追い打ちをかけてくる。視界の半分が消えたことで、もう速度でどうこうはできなくなった。

片腕も根元から飛ばされた。左腕ももう、攻撃には使えない。血肉を飛ばしても、それで目つぶしすらできない……全て避けられる!


でも、でも……でも……!


『アンタ、こんな真似がいつまでも、続くと……すぐ殺してやる……!』

「やってみろよ」

『死ぬのが怖くないわけ……!?』

「負けたっていいからね」


……方法ならある。

だから肩が、胸が抉られても、守って、下がって……必死に追いすがって……!


「それが戦いだ」

(ようは、コイツの後に後出しできればいいんだ。
アタシがコイツの後出し攻撃……出先を読み取れば……!)


また一撃受けて、右足の太もも内側が太い血管もある部分が斬られる。


「だから、もっと楽しめ――!」


それでもまだだ。際の際を狙わないと、とてもじゃないけど捉えきれない。


また一撃……まだ。

もう一撃…………まだまだ……。

更に一撃…………まだ……!


全身あっちこっちから血が流れ、痛みが走り続ける。

ドーパントになってから、こんな派手な怪我は一度もなかった。腕を両断されるなんてこと、想像していなかった。

でも、意地がある。それでもこんな……変身もしていない子どもに負けることはできない。


もしそんな姿をさらせば……アタシだけの問題じゃない。この場は……いや、もしかたら外の連中だって……!

そうだ、実際コイツがドーパントを倒し回ることで、街の中でガイアメモリの評価も落ちていった。だから、だから……。


(……本当にそれが狙いか、このクソガキ……!)


駄目だ。

コイツに負けたら、駄目だ。

それだけで、アタシの全部が破壊される。


「……やめだ」


……するとアイツは、咄嗟に構えを解いて、そんなことを告げてくる。


『は……!?』

「お前はもう怯え竦み、僕から逃げることしか考えていない。
そんな弱い物いじめをしても僕が楽しくない……と、今唐突に気づいた」

『…………!』

「これ以上続けても意味がない。とっとと変身解除しろ」


全てを見抜いたような、あの蒼い瞳で……アタシの尊厳を、全て無駄だと、踏みにじる……。


『この…………』


だから、だから……必死に力を入れて、奴にズタボロな片足で蹴り……!


『ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


その蹴りは、命中した。

奴は左手で……それだけで、あたしの蹴りを受け止めた。

馬鹿だ。調子に乗るからだ。これであたしの勝ち…………そう、思っていたのに。


「アホが」


……奴は左手だけで……体から、変な紫オーラを放出しながら、アタシの足を、受け止めていた。

手は無事だった。傷一つ付いていない。足底から、あの小さな手でぎゅっと握って……。


アタシの右足を……足首から先を、文字通り粉砕した。


「じゃあもう殺すわ」

『あぁああぁあああ……』

「こんな弱い物いじめをしても、つまらないっていうのに……無駄なことをさせるなよ」

『あぁああぁあぁああぁあぁあぁあぁあぁ……!』

「虫けらが」

『あぁああぁあぁああぁああぁああぁああぁああぁああぁああぁあぁあ!』


解放された右足を引き、千切れ飛んだ先でなんどか地面を踏みしめる。

でもその途端に、あの構えからいくつもの斬撃が飛び、アタシは滅多斬りにされる。


『つぅ!』


下がりながら、左腕でガード体勢。

でも、そこで飛んでくる蒼い光……。


≪Circle Slicer≫


至近距離から飛んできたそれに対して、アタシは腕で受けてしまった。

だから肘から舌を切り裂かれ、完全に、腕は奪われてしまい……おののきながら下がる。

それでも近づくアイツを蹴り飛ばそうとするけど、やっぱり回避される……そうしてまた一撃加えられる。


『がぁ!』

「だから喚くなよ」


もう右足はほとんど言うことを聞かなかった。地面を踏みしめるというより、打ち込んで動かないようにする楔としてしか使えない。

だからもう、高速移動で対比することもできない。


「お前達が、この街の人達に対して……僕達に対して! 今までしてきたことだろうが――!」

『ひ……!』


それに伴って、こちらの反射も、対応も、精度が下がる。そのために浅いと思っていた斬撃が、どんどんその鋭さを増していく。

まるで真綿で首を絞められるみたいに、血肉を抉られるごとに、余力も削られていく。


それでも……それでもと、踏ん張り、次の一撃を……次の踏み込みを凝視する。


「――!」


……そうしてやっと見えた。

振るわれる瞬間に……目の端で、なんとか捉えられた。

振るうところで、ぎゅっと右手が柄頭を握っているところを。ひときわ強く、握るところを。


そこだと踏み込む。

次に襲う一撃……これは嘘じゃない。だから守りを固め、全力でコイツの土手っ腹を蹴り潰す。

一撃……体で受け止めれば、それで済む話だから。それが、神に等しいメモリの力を舐めた、クソガキへの仕置きだった。


そのはず、だったのに。


(あれ……)


待てど暮らせど、攻撃が来ない。

そのとき間抜けにも停止してしまっていた。でもそれすら気にならないほどの違和感。

おかしい。だって、あれは、ちゃんと攻撃するときの動きで…………あれ……?


なんでコイツ、アタシに対して……“右手だけ”振るっているの?

なんで左手は、刀を持ったまま……ぴくりとも動いていないの?

そんなことしても、アタシは、斬れないのに。だからこんなに近くても、なにも。


≪Circle Slicer≫


なのになんで、左足にあの、回転のこが飛んでくるの。

太ももから刃が食い込んで、一気に骨まで両断されて……なんで、なんで、なんで!

確かに見た! アイツの手が、ぎゅって……あの回転のこを出す様子がないのも見ていた!


それなのになんでぇ! なんでこんな…………ぁ…………!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


(そう、負けたっていい)


伸ばした右手を一気に引き戻し、柄頭を握って、すぐさま一閃。

こちらの初動を読み取った……そのために固まった行動……その隙をかいくぐるようにしながら、奴の右首筋に切っ先を打ち込み、深く切り裂く。

斬撃で一番インパクトが乗るのは、振るわれる切っ先。それゆえに切れ味と力の流れさえしっかりしていれば、怪人の肉体だろうと斬撃は通る……通していく。


『ぁ……』

(でも……)


鮮血が走る。太い血管を肉ごと抉られたことで、ホッパーの意識が一瞬遠のく。

更に“アルトアイゼンが発動した”サークルスライサーによって、奴の左足が両断。

攻撃も、守りも……全ての手をなくしたことで、奴が更に絶望と混乱に苛まれる。


……その隙を見逃さず、奴の右に周り込み……鮮血を避けながら、平正眼の構え。


(“ここで”踏み込まない奴には)


奴の視界外……意識の外に出た上で、素早く目を開く。

そうして見える未来……奴の記憶(メモリ)めがけて刺突。


(負けてやらない――!)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


引っかけだと気づいた瞬間には、また血肉が抉られる。

避ける暇もなかった。反撃する暇もなかった。

というより、もう全部の選択肢が奪われていた。


そこまでされて、ようやく気づいた。

全部“このため”なんだって。

腕を奪われ、足を奪われ、同情すらされたアタシが、最後に縋り付くもの……それはやっぱり、自分のメモリ。


ネタが割れた攻撃なんだから、耐えればいいんだ。逆に攻撃の気配を読み取って、受け止めれば終わるんだ。そういう『餌』に、アタシを食いつかせるためだった。

全部全部全部……それがクモの糸なんだと思わせるための、布石だった! メモリの力や、変な異能力どうこうじゃない!

たかだか六歳のガキが……アタシをはめてくれたんだ! アタシが誇っていた力なんざ、その程度の価値しかないって、知らしめてきたんだ!


(全部、アタシの全てを……破壊する、だめに……!)


アイツは刀を握り直して、素早く……アタシの右首筋を、喉元ごと切り裂いて…………そしてアイツの姿が消える。

首から吹き出す血……それにより意識が遠のいたところで、衝撃が走った。


『…………!』


そうして乱回転しながら、急激に断ち切れていく意識。


(目覚めたく、ない……)


意味が分からない……いや、アタシは分かっている。


(もう、死んで、いい……)


きっとアタシは、もう目覚められない。


(もしこれで、生きていたら……)


これが……死ぬってことな、ん……だ…………。


(こんな体にされて、生きていたら……もう、地獄と一緒だ……!)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――ドーパントだろうと、基本は人間の肉体が変質したもの。その肉体が物質や生物の理を飛び出ないものであるなら、刀一本で殺し斬れるわけじゃな。

じゃから最後の一撃も、死角に周り込んでの刺突……胴体めがけての刺突で腹を抉り、そのまま死に……いや。


「あ……がぁああぁあ……ああぁああああ、あああ、ああ……」


メモリだけを破砕した。ホッパーはゴスロリの女へと戻り、傷だらけな体を横たえる。


「アリアさん、転送準備を……え、もうやっている? ありがとうございます」


血を流し、ぴくぴく震えるそいつは、そのまま白い魔法陣に包まれて消失。


≪……お見事……ですが末恐ろしいですね。六歳でここまでやれるとは≫

「まだまだだよ」


まだあちらこちらで炎がくすぶる中、あやつは周囲の骸達にはさして興味も示さず、また袖で刃を拭う。


「ほんと、とんでもない奴じゃのう……!」


いや、いろいろ奇策も使っていたが……逆に言えば、そこまでしてようやくという話じゃよ。

まぁ年齢や能力差もあるからのう。それくらいやった方が安心とも言えるが。


「おい、じいさん……なんだよ、あれ」

【理解不可能だ。完全に人間の領域を超えている。
さっき……蹴りを受け止めたのは、例の紫激気による身体強化と分かるんだが】

「……そうじゃな」


うん、それはわしも分かった。基本的な扱いは教わったようじゃしのう。

じゃがそれだけでは説明できん。特にあの、天地人の構えから見せた動きは……いや、ワシには分かる。


(ミカゲ……おぬしか)


そりゃそうかぁ。専門じゃしなぁ。


「武術家として……戦う人間として、人を捨て去るほどに鍛え、抗い、そうしてたどり着ける神域じゃ」


じゃがなんちゅうもんをあの子に教えとるんじゃよ……! いや、それを使いこなせる素養と努力があればこそじゃが。


(未発の像をあそこまで読み取り、対処できる……ウィザードメモリや仙狸因子由来の共感力か?
機動力では完全に上を行かれとったのに、戦闘経験の密度と読みの深さで圧倒しおったわい)


未発の像……神道無念流という流派の言葉じゃが、行動の発生を先んじて読み取り、防御や攻撃に活かすのが基本となっておる。

まぁ似たような概念は他流派にも存在しておるんじゃよ。剣術に限らずどんな武術でも、相手の行動が分かった上で対処すれば強かろうって考え方じゃ。

とにかくあれはホッパーの行動……その気の起こりを読み取り、先んじて反応し、対処しているにすぎん。攻撃、防御、反撃……奴が取る選択肢の全てを読み取って、後出ししつつ潰したんじゃ。


ホッパーの奴、相当怖かったじゃろうなぁ。言うなら強制後出しじゃんけん。性質が分かっても、それを利用したフェイントで更に後出しできるわけじゃし。


(とはいえ、未完成とも言えるが……まぁそこは分かっておるじゃろうな)


本来は修行に修行を重ね、異能力なしでやることじゃからのう。

そう言う点でも、恭文が“まだまだ”と自重したのは正しい。正しいが……それでもとんでもない奴じゃよ。


これで、この場のみならず外の闘争も決したからのう。


「……さて、次はどいつだ」


いや、もういないからのう!? お前さんが派手に焼き払ったから……もうすっきりしとるし!


「どいつだと聞いているんだよ――!」


それで誰に聞いておるんじゃ! ワシらじゃないよな!


「……なんでだよ……。
なんで、俺は……こんなことを、止めたくて……なのに……」

【ヘイハチ・トウゴウ、それに対しての答えはないのかな。ボクの専門外っぽいんだよ】

「今も言った通りじゃよ。ただただ修練……人を捨て去るほどにな」

「………………そんなのは、間違っている……!」


そうして翔太郎は立ち上がり、フラフラと恭文に近づいて……なので顔面に一撃。すっころばせておく。


「あだ!?」

「……殺されるから、じっとしとれ」

「な……!」

【左翔太郎、君は彼の心証をどこまでも損ねているはずだよ? 忘れたのかな】

「…………」


これくらいは許してほしいわい。他に潜伏しとる奴がいたら、痴話げんかは命取り。それを一蹴するのは正しい。

とはいえ、その割り切りはマジで六歳児の仕事とちゃうんじゃが……あぁいや、それも含めて大人の罪じゃな。


ただそれより気になるのは……。


(翔太郎……こやつ、あれだけ叩きのめされたっちゅうんに)


これもメモリという優位性を獲得したことが原因かい。それで“また”恭文を下に見て、保護者面しとるんじゃよ。

メモリを憎んでいるだなんだと言っても、それゆえにメモリの力を高く見ている……評価しているっちゅうことじゃ。じゃからメモリを使えるようになっただけで『願いが叶う』と勘違いできる。


(……ヤバいのう……)


正直そのチンパンジー張りの行動がヤバい。というか、鳴海荘吉かてそうじゃったろ。

二人がただ馬鹿なだけじゃのうて、風都市民全体に染み込んだ『文化』だとしたら……。


(いや、必然じゃ。私ら次元世界かて、先進だなんだと見られがちじゃが、それかて相応の時間をかけて積みかさねた歴史の結果。
対して風都は、その積みかさねもなく、メモリという異能を手にした特異点。人の常識が、概念が、それに追いついておらん。
……十年にわたって刻まれたその『文化』を、おいそれと手放せるとは思えん。恐らくメモリ犯罪はこれからも……)

「……さて、次はどいつだ。
………………どいつだと聞いているんだよ――!」


……って、アイツリピートしおったぞ! どうしてそこまで……あ、やっぱメモリで潜伏しとるとかか! じゃったら警戒して……。


≪恭文さん、やっぱりもういませんー。死体だけですよ≫

≪あとは間抜けな金魚の糞だけですよ≫

「二人とも、油断は駄目だ。勝ったと思った瞬間こそが一番危うい」

≪それもそうですね! さすがは恭文さんです!≫

≪……それで調子づいていた方が、大人達はまだ救われていたんですけどねぇ≫


ただのハッタリかい! やっぱりミカゲに説教じゃあ! このままじゃとワシの胃が潰れる……間違いなく胃潰瘍で早死にする!


≪では念には念を入れて……この辺り一帯を焦土としましょう!≫

「うん」


仲良しで何よりじゃが、言っていることが物騒すぎて大人としてはビビるんじゃよ! あぁあ……早速胃がぁ……って、焦土?


「あ、先生……全力退避してくださいね。巻き込まないようにはしますけど」

「ちょ、待て! 落ち着け! 索敵は魔導師隊に任せて」

「ほいっと」


するとあやつは指を鳴らし、火花を走らせ…………その火花が渦を巻いて広がり、爆炎とかし……改めて焼き払う……一気に数百メートル規模を、ドガンと!


「「い……!?」」


それに背を向けながら、わしらも全力退避! なにせ追加の爆発が次々襲いかかってきとるからのう!


「おい、なんだよあれ……どうなってんだよあれぇ!」

「後じゃ後ぉ! 逃げろ逃げろ逃げろぉ!」


つーか……ミカゲェェェェェェェ! やっぱりお前、一度蘇ってこんかい! 翔太郎も悪いところはあったと思うが、それでも頭を砕きにかかるとか予測できんぞ!


≪いいですねー! 恭文さん、いい焼き畑農業っぷりですよー! もっともっとファイヤーですよー!≫

「OK−! ペチカ! ペチカ! ペチカ! ペチカ! ペチカ!」


アイツ、また狂ったペチカやっとるしのう! これはお前がなんとかせい! できれば今すぐに!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


というわけで、見事に雑魚掃除もできたし、外の制圧作戦も順調そのもの。


「アリアさん」

『……翔太郎君達は転送魔法で回収したよ。もう大丈夫』

「次からは入れないでくださいね? 邪魔だから」

『そうする。で、あとは本宅の結界を……』


そんな状況で、本宅を包んでいた結界は解いてもらい……。


『よし、解除完了だよ』

『――あーあー……園崎邸本宅にいる、全ての人間に告げる。
今から三十秒以内に、全ての武装を解除し、邸宅から脱出せよ。繰り返す、全ての武装を解除し、邸宅から脱出せよ。
もし脱出しない場合、その安全ついては一切を保障しかねる』

『……恭文君−?』

『メモリユーザー、非ユーザーを問わずだ。
お前達ミュージアム……園咲に関する人間は、既にテロリスト認定されている。
命に配慮する理由は何一つない。また武装解除しない場合も、殺害命令に従いこの場で処分する』

『恭文君−!?』


アリアさんがなぜか悲鳴を上げるけど、気にせず時計できっちり三十秒数えてから……。


「ほいっと」


指をパチンと鳴らし、本宅……その真正面、表玄関はあえて外し、爆炎を走らせる。

そうして一気呵成に火柱を立ち上げ、燃焼させて……おぉおぉ、派手に燃えているねー。


「やっぱり基本は火攻めですよね」

『ちょっとぉ!?』

「せーの……ペチカ! ペチカ! ペチカ! ペチカ!」

『またリズム間違っているから! というか、とんだサイコな放火魔ぁ!』

「えぇからスマホで調べろ! 本物のペチカはもっとえぇ曲じゃから!」

「まぁまぁ……それよりそろそろ」


ぞっとする……とても覚えのある気配が前方八十メートルのところに生まれた。


「……!」


それを感じ取った瞬間、隠していた猫耳と尻尾が出現して。


≪空間転移……? いえ、正体不明のフィールドが発生。注意を≫

「あ、あぁあぁあ……!」

≪マスター……あぁ、やっぱりこうなりますか≫


先生が後ずさり、尻餅を付く。その間に生まれた黒い歪みから出てきたのは……マントを羽織った怪人。ただ頭がロイヤルブルーの壁画を描き、異常に大きい。首が折れるんじゃないかってくらいだった。

その頭からも金色のケープが映えていて、腰にはあの……タブーと同じドライバー。顔は、仮面……古代の王を思わせるような威圧感があって。


見ているだけでゾクゾクする……耳が、尻尾が逆毛だって……!


『全く……無茶をしてくれるねぇ……』


それで、その歪みの中から、たくさんのメイドさん達が出てきた。

メイドさん達は怯えながらも、おじいさんから離れて……その脇に残ったのは、苦い顔のお姉さんと、その人に抱かれている猫だった。


「おぉ……そっちが若菜さんとミックですね。初めまして−。蒼凪恭文です」

「いや、あなた正気!? というか火の手ぇ! 屋敷が……というか屋敷の外もぉ! いったいどうしてぇ!」

「にゃあ!」

「さっきまで外にいた騒がしい奴らと遊んだ結果ですよ……。
奴ら、はしゃいでマグマとか出しまくるせいで、もうヒドいことに」

「嘘……うちの精鋭達を蹴散らしたの!?」

「次からはもっと強い奴らを雇うんですね。……まぁ、全員殺すから次はないんだけど」

「……!」

「で……おじいさんも、そっちの姿では初めましてだよね。最初のときは姿がなかったもの」


まぁ若菜さんとミックには挨拶を済ませたので、改めておじいさんと向き直る。


『ふむ……やはり君には恐怖は通じにくいようだね。
いや、感じてはいるが、耐えられる……その決して砕けぬ希望も、ウィザードメモリの力を引き出した要因か』

「く……わしが……足が、震えて……!?」


…………先生はやっぱり駄目か。

後ずさって、膝を突き、がたがたと震えていて……。


「アルトアイゼン」

≪この程度でくたばる人じゃありませんよ≫

「それはなにより」

『そちらの御仁も中々だ。≪テラークラウド≫の出力は全開……発狂すらあり得るレベルにしているのだが、その程度で済むとは』

≪うちのマスターがあなた相手にビビっているわけですか。笑えませんねぇ≫

『ガイアメモリの力を侮ってもらっては困るね。魔導師……次元世界……地球の記憶でも断片的に語られている次元の海。
それがどれだけ広大だろうと、抗いがたいものは存在するのだよ』


わぁ、やっぱり次元世界のことまでばっちり把握しているんだー! いや、当然だ! 僕がいるもの!


『君達には申し訳ないが、そのまま潰れてもらおう。
そうすれば我々を取り囲んでいる連中も、簡単に手出しはできまい』

「おじいさん……籠城戦なんてお勧めしないよ? 天草四郎だって失敗している」

『はははははは! それを言われると弱いところだが、こちらも勝利の女神がいるのでねぇ! 島原の乱の二の舞とはいかないさ!』


…………そこで思考が凍り付くのを感じる。分かっていたのに……あぁ、ぷちんといっちゃうかぁ……これは。


「あぁ……やっぱりなんだ」

『そう……やっぱりなんだよ』

「いや、こう言うことこそ狂人の証なんだけどさぁ。
……とっとと出てきなよ、苺花ちゃん」

≪私のサーチでも捉えていますよ? あなたが後ろにいることは≫

≪ルビーのサーチでもばっちりです! さぁさぁ、年貢の納め時ですよー!≫

「…………恭文くん」


それで……あの、テラーの影からひょっこりと……こちらに近づいていたであろう女の子が出てくる。

白髪に近いクリーム色の、ふわふわとした髪。人なつこい笑みも、くりくりとした瞳の輝きも変わらない。

服もあまり締め付けるのが苦手だから、緩いふわふわワンピースで……しかも、僕が知っているものより上等そうな生地に見えた。


「でも、運命ってあるのかな。恭文くんも……同じメモリと仲良しになれたんだから」

「ルビー」

≪了解です! 音楽スタート!≫

≪The song today is “only my railgun”≫


……次の瞬間、弾いたのはコイン。右指で上へと飛んだコインが落下する間に、右手に電撃を集束――。


「え」


そうした形成した電磁レールに、コインが落下した瞬間……もう一度弾く。

そうして放たれるのは音速域のプラズマビーム。半物質……いや、半分エネルギー化したコインの質量が閃光となって照射された。

そう、これはかの有名な超電磁砲。射撃武器は必要だと練習しておいたんだ。それが真っ直ぐに苺花ちゃんへと向かって……。


「Time!」


苺花ちゃんがそう叫んだ瞬間、その姿が一瞬でかき消え……あの子は脇へと転がっていた。

閃光は地面を切り裂きながら突き抜け、ソニックムーブを辺り一面にまき散らす。更に燃えさかる邸宅の一部に着弾し、貫通……大きな破砕を生み出していく。

そうして生まれる旋風の中、おじいさんは唖然とし、若菜さんは口をあんぐり。


『「…………」』

「はぁあぁ……あはあぁああ……!」


苺花ちゃんも顔面蒼白で切り裂かれた地面を見やって……特に苺花ちゃんは、ゼーゼーと息を吐くので……。


「決まった……とある魔導師のレールガン。略してとールガン」


顔で挨拶をしてあげる。


「でも避けるなよ。弾が外れるだろうが」

『「いやいやいやいやいや……!」』

「にゃああ……!?」

「ちょっと待って!?」


もう、なんでそんなみんな揃って慌てるんだろうなぁ。僕は意味が分からないよ。

……あ、そっか。ちゃんと念押しはしなきゃってことだね。うん、分かった。


「苺花ちゃん……死ぬときは一緒だ」

「それ多分ここで一番言っちゃ駄目な台詞ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
というかなに! この音楽は! どこから! どこからきているの!」

≪ふふふ……それはルビーちゃんの超技術なので、細かいところはトップシークレットです!≫

『……君は、なんというか……頭がおかしいのかね?』


……次の瞬間、弾いたのはコイン。右指で上へと飛んだコインが落下する間に、右手に電撃を集束――。


『え』


そうした形成した電磁レールに、コインが落下した瞬間……もう一度弾く。

そうして放たれるのは音速域のプラズマビーム。半物質……いや、半分エネルギー化したコインの質量が閃光となって照射された。

そう、これはかの有名な超電磁砲。射撃武器は必要だと練習しておいたんだ。それが真っ直ぐに苺花ちゃんへと向かって……。


「タイムゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


苺花ちゃんがそう叫んだ瞬間、その姿が一瞬でかき消え……あの子は脇へと転がっていた。

閃光は地面を切り裂きながら突き抜け、ソニックムーブを辺り一面にまき散らす。更に燃えさかる邸宅の一部に着弾し、貫通……大きな破砕を生み出していく。

そうして生まれる旋風の中、おじいさんは唖然とし、若菜さんは口をあんぐり。


『「…………」』

「はぁ、はぁあ、あ……はああああああああ……!」

「苺花ちゃん、どうして僕と一緒に死んでくれないの?」

「それも言っちゃいけない台詞ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
というかコピペ的に二発目ぶっ放さないでぇ!」

『いやいや……』

≪いやいや……じゃないですよ≫


もう、おじいさんはお茶目だなー。だからほら、アルトアイゼンも心底呆れちゃって。


≪その頭がおかしい人を、ここまで激怒させたのはあなた達と鳴海荘吉ですよ。
というか苺花さん、それを言わせているのもあなたですからね? 言う権利そのものがないです≫

「だとしても……これはさすがに想定の外でぇ!」

「そうよそうよ! 幾ら私達が悪人とはいえ、限度があるでしょ! というか、どうしてその頭がおかしいのを止めないのよ!」

≪毒をもって毒を制すって言葉、知らないんですか? あなた達には“これで”適切です≫

≪恨むならベストを尽くしてしまった自分の浅はかさを恨んでください。アーメンー≫

「ベストを尽くしておいて浅はかって理不尽過ぎるでしょ! あと……この音楽ちょっと止めなさい!
状況がわけ分からないのよ! お願いだからちょっと落ち着いて考えさせてよ!」


いやぁ、みんなとも楽しそうでなによりだねぇ。……だから自分達が、一つアドを手放したことも気づいていない。

なので早速念話……バックヤードのアリアさん達に念話!


“アリアさん”

“……確認、できたけどさぁ……!”

“僕にどん引きは後! それより報告!”

“ああもう、分かったよ! ……あれ、瞬間移動してた! そうとしか思えない!”

“でも苺花ちゃんははっきり言いました。『Time』と”

“やっぱり時間停止能力……!”


強いての救いは、今の様子から見るに停止時間は三秒から五秒程度。一度使用することで多量の体力を消耗することか。僕もそうだった。

あと、苺花ちゃんが生身で魔法を乱用できているのも、やっぱり僕とのリンクで負担を半減しているからだ。そこを切除すれば、この魔法も切り札たり得ない。

まずはこれで弾を一発使わせた。あのタイミングでぶっ放せば、確実にそうすると思っていたよ。僕がぶち切れているのに警戒しないわけもないしさぁ。


“……これなら、やっぱりプラン通りに進めないとですね”

“ん……でも、君一人じゃないから”

“当然です。最大戦力で暴れないと”

“ならいいよ”

「……もう、分かっているよ。恭文くんがこのメモリを壊しにきたのは」


苺花ちゃんがお腹に丸い……テラーも装備しているベルトを装着する。それで右手で取り出したのは、僕も挿された、あのメモリだった。


「私のこと、本気で怒っているのも……だけど」

「……苺花ちゃん、駄目−。やめてー。エッチー」

「…………もっと本気で止めてくれないかなぁ! ヒドい棒読みすぎて笑えないんだけど!」


とか抜かすので、もう一度コインを弾いて――。


「え」


三発目の電磁投射。半エネルギー化したコインが閃光となり、苺花ちゃんへと迫る。


「Time!」


まぁ苺花ちゃんは再びTimeを発動し、ギリギリで避けるんだけどね。……でも邸宅はどんどん燃えて、壊れていくなぁ。


「はぁはぁははぁあぁあ……!」

「早く変身しろ。殺すぞ」

「立場の違いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

「先生を」

「「とばっちりぃ!」」

「ちょっと、苺花……この子本当にヤバいんだけど! この子でいいの!? 本当にこの子じゃなきゃ駄目なの!?」


もう、若菜さんもまた……だからついはにかんでしまう。


「その表情がどうしてできるのよ!」

「それはこっちの台詞だ」

「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「……あぁもういいよ! 一度お仕置きだから! 徹底的にお仕置きだから!」

≪Wizard≫


それを苺花ちゃんはドライバーの中心に突き立てる。ドライバーにメモリが吸い込まれると、金色のドームが展開して……苺花ちゃんはそのドームがメモリの出入り口を守っている間に、あの……ウィザードドーパントになった。

でも僕が知るものとは違う。僕のときはケープとか出ていたし……あの、蒼の力も余り……あ、でも……!


『あぁああぁあ……!』

「う……!」


目が……未来を見据えられる蒼い眼が、勝手に開く……!


『ん……!』


だからだろうか。あのとき生えていたケープが翻り……あの蒼の力が、一気に高まって……!


(これも何度目かの“やっぱり”……!)

『うん、そうだよ。私達……二人で一人の魔導師ってことみたい。……それは、ちょっと嬉しいな』

「苺花ちゃん……」

『……おじいさん、やっぱり園咲来人さん、捕まっているよ。
それにウィザードメモリももう一本……それになに! メビウスメモリって! そんなの聞いていない!』

「メビウス……」

『ウィザードを強化するメモリだって! あの、エクストリームに近づくとか!』

『はははははは!
冴子……やってくれたなぁ!』


うわぁ、そこも丸見えかぁ。あはははは……予想していたとはいえ、もうちょっと隠しておきたかったなー。


『しかしまぁ、分かってはいたことだが……よくできたね。
来人がいる研究所は、特に守りが堅かったんだが』

「お茶菓子持って丁寧に挨拶したら、意外とすんなり歓迎してくれたよ。それで夜遅くまでマンカラ大会で楽しんだ」

『嘘だよ! HGS患者の人とか、超達人の人とか……いろんな人の力を使いまくって制圧したって! というか……生身でテラーの能力を使っているんだけどぉ!』

「まぁまぁそっちは気にしなくていいよ。 それよりほら、いろいろネタばらしがあるでしょ?」


そう吹っかけると、おじいさんは楽しげに笑う。……鳴海荘吉へのえん罪絡みのことだとすぐ気づいてくれたみたい。


「……苺花ちゃんが自殺未遂を起こしたのも、お前達の差し金だってこととかさぁ」

『…………ほう……』


でも、そんなことはどうだっていい。分かりきっていることだもの。


「苺花ちゃんも悪辣だねぇ。僕にそこんところを読み取られないよう、しっかりサイコバリアも張っているとか」

『恭文くん……!』

≪あなた達の計画では、自殺未遂で姿を眩ませて……そういう手はずだったんですね?
この人からも苺花さんを見つけた場所やその流れは確認していますけど、当時五歳の子どもがやるには手が込みすぎていた。
特に米沢敏樹さんへの告発ですよ。仕事絡みのトラブルなどなど……苺花さんでは触れられない情報も込みで発露されていましたし≫

「後の裁判でも、そこんところでが引っかかって有罪になったしねぇ。あの馬鹿は」

『なぜ分かったのかね』

「今回苺花ちゃんがこっちに来ていることを悟らせないために、わざわざ偽物まで用意した……そんな手間暇をかけるより楽だもの」


うん、そこをみんな勘違いしていたね。僕もまさかとは思っていたんだけどさ。

……苺花ちゃんが攫われて、実験台にされたのは自殺未遂の後じゃない。“その前”だ。


「お前達の下っ端に仕立てられた医療関係者の人達……逮捕されたのは僕の病院絡みだけじゃない。苺花ちゃんが通っていた病院の人達も同じくだ。
その人達の証言も取ったけど、実験台にされたのが自殺未遂の後じゃあつじつまが合わないところも多かった。沙羅さん達も疑問視していたよ」

『とはいえ、大した違いはないと思うが』

「大ありだよ。……苺花ちゃんについては更正の余地なしと、殺害命令も出ているからね」

『君は彼女を殺すつもりかね』

「安心していいよ。おのれらの遺書は僕が用意した。最悪でも僕もろとも心中だ。嬉しいでしょ」

「お、お父様……!」

『……確かに彼女は君を謀っ』

「あー、そういうのは興味ないから」


もうそこは、確認が取れれば問題ない……大局的には意味がないと、軽く手を振る。


「おのれらは揃いも揃ってただのテロリストだ。
そして国家社会は、テロリストに譲歩などしない。OK?」

『……あまりに乱暴ではないかね?』

「だから地球を救うだなんだと言いながら、無関係な人達の苦しみや絶望を当然としろと?」

『必要な犠牲もあるさ』

「……僕はそんなこと、おじいさんから教えてもらっていない」

『……なんだと』

「だからここに来た。おじいさんから教えてもらったこと、すっごくドキドキして、奇麗だと思ったから」


戦いで主義主張をぶつけるなんて意味がない。でも……ちょっとだけ時間を稼ぐために、種を撒いておく。

胸を張って……アレも希望なんだと、誇るように。


「夢と希望は伝え行くものだもの」

『君は、なにを言って』

“……恭文君、時間稼ぎありがと!”


お、ここでお開きか。うんうん、いいタイミング!


“準備完了……いくよ!”


そこで転送魔法発動――――僕達とおじいさん、苺花ちゃんは揃って人気のない工場地帯に飛ばされる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


お父様が教えた……お父様がこれを止めるようにと、教えた。

信じられなかった。でもあの子は誇っていた。それは夢で、希望なのだと……私達を止めなければ、それは守られないのだと。

意味が分からなくて、どういうことかと聞こうとしたら……そこであの子が……苺花とお父様が消えた。


「にゃあ!?」

「これは……」


転送ってやつ!? まさかあの子、最初からそうして……。


「ち……」


舌打ちして、まずはミックに……お父様から預かっていたメモリを差し込む。もうドライバーは装着済みだから、難なく装填完了。


≪Smilodon≫


そうしてあの子は、すっと腕から抜け出しながら変身……どう猛なサーベルタイガーのドーパントとなる。


「あのクソガキ……舐めてんじゃないわよ!」


私も装着済みのガイアドライバーに、自分のメモリを装填。


≪Claydoll≫


そうして石器のような風味を持つ、土人形のドーパントに変身。


『どこにいようと探し出して……おいたのお仕置きをしてあげる!』

『SYAAAAAAAAAAAAAAA!』

≪The song today is “only my railgun”≫


……相変わらず音楽は流れ続けているし!? きっとどこかにいるわよね! とにかくうるさいこれも止めなきゃ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なんなく僕だけ着地すると、空が幾何学色に包まれた。それも連続的に、この工場区画を覆うように。


『これは……』

≪えぇ。ご覧の通りトラップです。
……これでミュージアム最大の特記戦力であるあなた達は、私達と楽しくお遊戯するしかない≫

「若菜さんとミックは、適当に焦土の中三日三晩放置するよ。そうすればさすがに戦えなくなるでしょ」

『君は本当に正気』

≪Stinger Snipe≫


ノーモーションで放った光弾。それがおじいさんの頬をかすめる……ち、咄嗟に避けやがったか。その程度の反射神経はあると……でも残念。


『……!』


苺花ちゃんはぞっとした様子で振り返り……。


『ファイア!』

「ファイア」


左手から発生させた炎で光弾を消し去る……でもあまーい。

……既に足下から走る火花が、地面を分解・再構築……クーガーが生成されているから。


スティンガーは囮だ。途中から自動制御に切り替えて、こっちの方を優先した。だから……苺花ちゃんは放たれた砲弾を、その脇腹に食らうこととなる。

ドーパントの肉体すら貫く電磁投射砲だ。ただ済まない…………でも。


『Time!』


その瞬間、苺花ちゃんはもっと左に瞬間移動……ううん、また時を止めて回避してきた。

正解は静寂する。

停止する。

硬直する……その中を突き抜ける弾丸も、その理に逆らえない。


だけど苺花ちゃんだけは違った。砲弾を見切り、慌てて転がり……そして世界は再び動き出す。

通り過ぎた砲弾は、近くのコンテナに命中し……派手にそれを跳ね上げる。


『苺花!』

『大丈夫……でも、あの……』

「ねぇ苺花ちゃん」


そうして“後ろ”から声をかける。ザラキエルのフィンアームを展開し。


(ザラキエル、クローモード)


鋭い爪を持つ右拳として編み上げ、ぎゅっと握り……。


「僕のこころが読めるなら……分かっているって言わなかったっけ」

『――!』


振り返った苺花ちゃんの顔面を、そのまま右ストレートで殴り飛ばす。――それと同時に魔法を発動。


「Death――!」


ドーパントの肉体と、フィンアームによる拳がふれあい、苺花ちゃんの身体が派手に崩れ落ちる。


「蒼姫!」

“OK!”


それと同時に、苺花ちゃんから飛び出した青が、そのまま僕のザラキエルに吸い込まれて……苺花ちゃんは転がりながら、その体を白色へと変化させた。


『あ……がぁああ……』

『苺花!』


驚くおじいさんに踏み込み、その腹に左ストレート。ただし死の魔法は使わない。

その脇にあるものを形作るけど気にせず身を翻し、また腹を蹴り飛ばし……適当なコンテナに叩きつける。


『がぁああぁ……』

『や、恭文くん……!』

「喚くな、殺すぞ――――」

『ひ……!』

「先生を」

『だからとばっちりぃ!』


察したよ苺花ちゃん、そこで小さな悲鳴を上げるのもおかしいってー。

……僕がそれくらいにお怒りだって、ここまで何度も……何度も何度も何度も何度も何度も! 何度も触れてきたことだろうが!


あぁ……落ち着け……ここからが大事だ。冷静に詰めていかないと、さすがに手痛い反撃が飛ぶ。それは、ちゃんとしないとね。


『でも、これ……どうして……あぁああぁ……!』

「くくく……どうじゃあ。ワシの弟子……めっちゃ性格悪いじゃろ……!
ワシもちょお絶望する程度じゃからなぁ!」


ヘイハチ先生がうるさい。よし、後で絶対仕返しして…………ん?


「……アルトアイゼン」

≪おかしいですねぇ。作戦だとあの人は残すはずだったんですけど≫

「じゃあ幻聴か」

≪ですね≫

「待ってぇ! ワシはここ! ここにいるからぁ!」


だから恐る恐る振り返ると……先生まで飛ばされちゃってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! なんか生まれたての子鹿みたいにがくがく震えちゃっているよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


「……巻き添えの犠牲者!」

「即行で扱いを決めるなぁ! というか、ワシに聞かれても困るわぁ!
これであとお任せーって思うとったら……ちょ、どうなっとるんじゃあ!」

“ごめん……”


あ、アリアさんから念話だ! よかった! やっぱりイレギュラーだったんだ!


“こっちのミスだ! あの場所、思っていたより座標軸の固定が難しい! ヘイハチさんも巻き込んだ!”

「なぬ!?」

“ヤスフミ、ヘイハチ、聞こえるか”

“ウェイバー?”

“恐らく地球の泉……ガイアスポットの影響だ。以前行われた協会による霊脈調査……その結果によると、そのラインが一番太い箇所に、園咲邸が建っているようだ”

“……その影響を受けてってわけかぁ”

“うそじゃろぉ!”


くそ、これはさすがに想定外……まぁ実戦なんだしそれくらい当然だけどさぁ。……となれば……。


「先生……遺書は書いていますよね? なら大丈夫です」

「有言実行しようとするなぁ! 道徳どこに置いてきたんじゃ!」

「それも実家です。やっぱり使わないかと思って」

「やっぱり必要じゃったよ! あのとき蹴り飛ばした人の心と一緒に拾ってこんかい!」

「分かりました。じゃあこの場はお願いします」

「あ、やめて! そんな暇ないから! 字面通りに受け止めんでえぇから! 今は現場のこと最優先でー!」

“あの、ごめん! なんとか時間を稼いで! 上手く回収するから!”

≪一旦下がるしかないですね、これは……!≫


そんな暇は当然ないよ。さっきだってそのために時間稼ぎしていたし……ああもう! 言っても仕方ない! 今ある手札で回すのは決定だ!


「おいヤスフミ、それなら」

「キャラなりは却下」


ショウタロスが……シオンとヒカリが出てくるから即刻で告げると、ショウタロスががたりと崩れ落ちる。


「……なんでだよ!」

「当然ですよ、ショウタロス……キャラなり中は転送魔法も使えないのですから」

「それ以前に、非殺傷設定のメモリブレイクもできるかどうか分からない」

「……でしたね」


そう、これもおじさんとシュラウドさんの罪だよ。自分が背負えばと自己満足に浸って、それを当然としていたから……ないんだよ!

今更だけど、何度でも言っているかもだけど、ないんだよ! 現段階で、非殺傷設定のメモリブレイクをできるシステム的な手段が!

僕が野良ドーパントを狩っていったのも、その練習だよ! でも眼の力に頼っているから、他の人には参考にできないし!


一応ドライバーには、生命維持装置も付与されているそうだけど……それだって絶対ってわけじゃあない。だからキャラなりでの撃破は原則NGだ。少なくともこの場で試すことじゃあない。


「まずは撤退戦だ。それなら通常モードの方がやりやすい」

「ああもう……!」

「それにまぁ、手数なら確保できるじゃないのさ」


話している間に、二人は起き上がり、身を寄せ合うように近づき……さて、楽しむとするか。


「知っているでしょ?」

「……だったな」

「まぁ側にはついていてやる。ギリギリまで地力で頑張れ」

「ウルトラマンが欲しくなったらちゃんと言うよ」

「言ってやれ言ってやれ。きっと登場時の着地で奴らもぺちゃんこだ」


落とし前はまだ序盤だ。なんならここからがショータイム? やっぱ楽しむしかないでしょ。


『ここでしゅごキャラ……君達は、自分の消滅が怖くないのかね』

「その問答は先日やったからな。いちいち答える義理立てはない」

「えぇ、詳しくはその17か18辺りを見てください」

「意味分からねぇから黙っていろよ……!」

『確かに理解不能だね。……苺花』

『はい……恭文くん、小さな子達も……ごめんね。
本当に、できるだけ痛くしないようにするから……』


改めて計算……今の僕に、このドーパント達へ対抗することはできるか。


「苺花……お前にも伝わったはずだぞ! ヤスフミの気持ちが! コイツが踏ん張れた理由が!」

『それでも、諦め切れない……』

「こんなやり方が、お前の望んだ世界か!」

『それでも私は……おじいさんに、若菜さん達に……新しい夢を見せてもらったから!』

「……もう面倒だから殺そう」

『「ちょっと待って!?」』

「というかさ、戦いの場で主義主張をぶつけ合うとか……気持ち悪い」

『「気持ち悪い!?」』


やれる……やれるけど、ちょっと遠回り!


「――!」


ショウタロスともども苺花ちゃんを口撃している隙に、両手を叩き、地面に手を当て……術式を発動する。

分かる、分かる、分かる……苺花ちゃんがなにをするか分かる!


“恭文君!”

“大丈夫!”


心配してくれている蒼姫にも、きっちり答えられる程度には……先んじて手を打てる!


『サンダー!』


周囲から突如放たれた雷撃……などは生まれない。


『え……!』


そうして僕の周囲から放たれたのは、コンクリの拳達。それが苺花ちゃんに迫り……。


『ふん!』


おじいさんが拳をテラークラウドで飲み込み防御。それは分かっていたので、更に術式発動!


「クレイモア!」


そして……奴らの背後が炸裂。精製された特殊合金のベアリング弾が、ドーパントの肉体を撃ち抜く。


『があぁああぁあ!』

『んぬ……!?』


そう……殴り付けておいたとき、術式の遠隔設置用の触媒も作っておいた。

それで不意打ちは成功したので、あとは改めて……飛び出した拳達を破裂。そうして土煙を上げて……!


「よっし!」


それを目くらましにしながら、背を向けて走り……膝を突いていた先生の手を取る。


「先生!」

「恭文……すまん……」

「肉の盾にされたくないなら走って!」

「……頑張るからこの手を離すなよぉ! 絶対じゃ! 絶対じゃからなぁ!?」


左指を向けて、走りながら……術式を発動。ブレイクハウトの応用で……指を鳴らし、火花を走らせる。


「アルトアイゼン、先生にオートバリア! 耐熱セッティングも込みで……聞き返しはなし! 急いで!」

≪……了解です≫

『…………無駄だよ。こんなもので逃げ切れるわけが』

『……おじいさん、駄目!』


僕の思考から状況を読み取った苺花ちゃんが、前進していたであろうテラーを止める……が、もう遅い。

火花は操作した空気圧に引火。まるでガソリンに火が回るように虚空を燃やし、吹き上がり……テラーと苺花ちゃんを包んでいた土煙へと二次引火。


――その瞬間、二人を包む膨大な爆炎が生まれ……その衝撃から僕達も吹き飛び、地面を二百メートルほど派手に転がる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――これでアナザーウィザードは封殺です」

「どういうこと!?」

「そして先生は……まぁ遺書は書いていたので、問題ないんですけど」

「あっさり扱いを定めないで!? というか、アルトアイゼンは止めなかったの!? 元マスターなんだよね!」

≪止めようがない程度には末期的だったんですよ……。鳴海荘吉とシュラウドさんのせいで≫

「そっかぁ!」


蒼凪、師匠が巻き添えになったところで、とんでもないぶった切り方をするなよ! 雨宮がびびっているだろうが!

というかだな、全体的に行動が狂ってんだよ! なんだよ、レールガンって! 時間停止あるからって何してもいいわけじゃないだろ!


「でもほら、その前も……レールガンできるの凄いけど、行動が狂っているからね!」

「狂っていていいんですよ。苺花ちゃん達を混乱させ、トラップに引き込むための導線なんですから」

「そこも計算ずくかぁ!」

「だから言ったでしょ? 戦争に勝てない奴らは嫌がらせに走るって」


蒼凪、うるさいよ! そこがフラグというか伏線とは想定しないよ! というか、そうだとしてもこの状況は想定外なんだよ!

突如音楽鳴らしながら、幼なじみにもろとも覚悟でレールガンをぶっ放す!? そんな嫌がらせがこの世に存在していいのか!


「ならさ、Death……死の魔法ってなに!?」

「ガイアメモリを仮死状態にする能力だよ」


それを見かねて、フィリップから補足……って。


『仮死状態!?』

「メモリの機能を一定条件の上で吸収するんだよ。エターナルみたいに変身ができなくなるわけじゃないが、能力の行使はもちろん普通の運動もできなくなる。
……その性質上どうしても“運命の一本”に依存するしかないドーパント……そしてボク達仮面ライダ−にとっては、天敵と言うべき能力だよ。
ボク達も【街】……裏風都の殺し屋だった男には手を焼かされた」

「しかも左さん達も戦ってたの!?」

「ただ本来であれば、ウィザードでも発動できないワードだったんです。
まぁ基本はガイアメモリ限定の能力だとか、身体能力が特異能力特化型らしくさほど高くないとかはありますけど、重要なところは二つ。
まず死の記憶……デスドーパントの場合、霊体・エネルギー的な触手で相手を貫かなければ、能力的が発動できない点。これは同じエネルギーで防御されるというリスクに繋がります。
二つ目は、吸収した機構をストックする“器”が必要なこと」

「器?」

「デスドーパントだと、体に刻まれたどくろに閉じ込められる形となります。
でも当然ウィザードにも、生身のボクにもそれはない。だから吸収はできても保存できないという矛盾が成立しちゃう」

『なおこの条件、単なるやせ我慢じゃ足りないんだ。メモリの力……毒素たり得るものを受け止め、隔離するってことだから。
……デスドーパントもその概念ゆえに、生物ではない存在……死に神のイメージが含まれているからこそ、できる荒行だよ』


なるほど……一つ目は魔法やザラキエルでなんとかクリアしたわけか。だが二つ目については解決方法が……ほんと人体改造しかなさそうだなぁ……!


『だから恭文君も、ウィザードメモリ以外でこの能力を使うことはほとんどない。というか、それで正解だった』

「……多数のコネクタを自身に施し、様々なメモリを取り込んでいた井坂という前例もできたからな」

「照井さんの仇が?」

「奴はメモリブレイクされた途端、その副作用で肉体が崩壊……消滅することになった。
蒼凪も同じ状態になる可能性があるので、そのときに改めて……俺やシュラウド達から使用を禁じている」

「だから伊佐山さんのときも……他のところでも使わなかったの? いや、だったら苺花ちゃんだって」

「だが蒼凪には、蒼姫がいた」

「……あぁああぁあぁああぁ!」

「蒼姫ちゃんは大本でもあるから、末端のメモリ一本分くらいはってことかぁ……!」

「そりゃあ……“蒼凪にしか使えない魔法”だ」


それは盲点だったと、ユージともどもつい臍をかむ。

生身の蒼凪では本来存在しない器だが、蒼姫の出自と一体化した経緯を考えれば、そのまま押しつけて元サヤくらいはできるわけだ。


で、実際それは成功したと……!


「だが美澄苺花や左、鳴海荘吉達にとっては皮肉極まりないな。それは奴らが否定し、無視した絶望だぞ?」

『だからこれも、恭文君の魔法なんだよ。この子の魔法は、いつだって“創る魔法”なんだから』

「……天さんを助けてくれた魔法もそうだよね。
物質変換やヴァリアントだってそうだし、ゴーレムだって……だから……なんだけどなぁ」

『……そこははっきり言わなきゃ伝わらないから……! とにかく想定外に弱いし』

「ならそうする。
……でもそれなら、鳴海さんを捨て駒にしなくてもいいんじゃ。そのままメモリブレイクは」

『あぁ、その……その……うん……!』

「もう、麻倉さんはお茶目さんですねー。
苺花ちゃんへの嫌がらせには、最適な駒なのに」

「ん……!?」


……え、待って。蒼凪……なにを言っている? ちょっと意味分からないぞ。麻倉も首を傾げたしさ。


『……実はこの作戦、一つ問題があるんだ。
あくまで死の記憶で封じられるのはメモリだけ。苺花ちゃん自身のハイドープ能力は変えられない」

「え……!」

「そういや、さっきやっちゃんもメモリ限定って……おいおい、だったらリンク切断は」

『それでどこまで能力が抑えられるかは未知数だったから。
だから文字通りな肉の盾として、鳴海荘吉も配置するってさぁ……!』

「それで翔太郎と鳴海荘吉への嫌がらせにもなるし、一石十鳥です」

「「えぇ……!」」

『悪魔の発想だとも言ったはずだよねぇ! ほらぁ! またどん引きされているし!』


駄目だコイツ! ユージと麻倉が引いていてもお構いなしだ! なんの躊躇いもない!

また上がった株を自ら下げたし……この調子で本当に大丈夫なのか! テラーでなんとかなるのか! それが切り札なんだよな!


(その24へ続く)






あとがき


蒼姫(……なんだかんだで蒼凪荘でお世話になることとなった私こと蒼姫。
まぁイマジンやサーヴァント、擬人化ポケモンやデジモン、ちっちゃいモンハンモンスターやみらーもんすたぁもいるし、メモリの意識くらいはという感じだった。
それはいい……それは別にいいんだよ。嬉しいしさ。でも……問題があるとすれば……)

琴乃「……もきゅもきゅもきゅもきゅ……」

舞宙「もきゅもきゅもきゅもきゅ……」

恭文「もきゅもきゅもきゅ……」


(マンスリーバースデーな二人と一緒に、ケーキを食べまくる蒼い古き鉄がそこにいた……)


蒼姫「とりあえず……今回の話にも繋がる記念小説の方は、こちらになります」

ナレーター『まず解説するんですね』

蒼姫「誰もしないもの!」

サイト開設13周年記念小説その2 『ぐだぐだ修羅の刻・幕末編/沖田総司対芹沢鴨 第一編』

サイト開設13周年記念小説その3 『ぐだぐだ修羅の刻・幕末編/沖田総司対芹沢鴨 第二編』


蒼姫「でケーキ多すぎない!? もう何ホール食べているのかなぁ!」

恭文「仕方ないでしょうが……。
(佐竹)美奈子のバースデーでケーキを作り合った結果なんだし」

蒼姫「それがおかしいんだよ! この家何人住んでいるの!? それでお裾分けしてなおなくならないってさぁ!」

恭文「やよいの誕生日もあるからって、凄い頑張ったんだよ……」

琴乃「それも含めて、全部美奈子さんに言ってほしい……!
私達は美奈子さん一人が対象だったから、まだワンホールだったのに……」

恭文「あやつ、ウェディングケーキみたいな十段重ねのデカいやつを作ってきたしね。
さすがに僕だけじゃ処理しきれない。もちろんやよいがいても焼け石に水」

琴乃「もはや高槻さんと恭文の結婚祝いに作ったとしか思えないよ……」

恭文「全く否定できない!」

舞宙「いや、でもさすがに美味しいよ。美奈子ちゃんも腕を上げたけど……あれ、なんか眠気が」

蒼姫「糖分取り過ぎて血糖値がおかしくなっているんだよ! 止めて止めて! 一旦止めて! このままは命に関わる!」

童子ランゲツ「みぃ……ケーキ、いっぱいなのぉ……」

ちびアイルー「美奈子さん、さすがに作りすぎにゃ……!」

フェイト「……中華料理屋さんって、ケーキもテリトリーなのかなぁ……」


(佐竹さん、張り切ってご奉仕したようです)


蒼凪荘の動物ズ『zzzz…………zzzz………………』

ヒメラモン「げふ……」

ダガーレオモン「限度はあるだろ、限度は……!」

ヘイアグモン「俺はまだまだいけるぞ。もぐもぐもぐもぐ……」

カブタロス「そりゃあお前はよぉ……!」

シルフィー「わたし達は、やっぱり限界……」


(蒼凪荘の動物さん達も、デジモンも、イマジンも、限界みたいです)


恭文「とりあえずお金を払おう……」

蒼姫「確かにね! 誕生日なのにとんだ出資をさせているんだもの! というか……美奈子ちゃんって、え……これが」

恭文「デフォ」

舞宙「ビックリするよね……。いちさんとは相性いいけど」

琴乃「それ、食欲的な意味ですよね……!?」

舞宙「もちろん」

蒼姫「……なんでアイドルにそんな属性がぁ……!」


(いつものことです。
本日のED:MAN WITH A MISSION『Blaze』


志保「……私達の分も含めて作っちゃったから、偉いことになっていますよね。今年はひときわ」

静香「だからおもてなしって止めたのにね……!」

美奈子「でもでもほら……今日(3/25)はあれだよ!? やよいちゃんの誕生日でもあるし! そのお祝いも兼ねて!」

やよい(アイマス)「うっうー! ありがとうございますー!
プロデューサーさん、このケーキやっぱり美味しいです! プロデューサーさんのもすっごく美味しかったです!」

恭文「確かにねー。美奈子、ありがとう」

美奈子「ご主人様……でしたら、またいっぱいご奉仕させてください。ご主人様の幸せが、美奈子の幸せですから」

恭文「ケーキがまだ残っているから、食べ終わってからね……!」

美奈子「……ご飯以外にも……ご奉仕はできるんですよ?
では改めて……ご主人様にも、舞宙奥様と琴乃奥様にも、めいっぱいのご奉仕をお届けしますね♪」

恭文「あ、はい……」

やよい(アイマス)「お、大人ですー!」

蒼姫「やよいちゃんは、見ちゃだめ」


(おしまい)







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