小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作) 西暦2008年・風都その19 『Vの蒼穹/RISE』 魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s 西暦2008年・風都その19 『Vの蒼穹/RISE』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 前回のあらすじ――スクラッチの人がきました。猫や恐竜っぽい人もきました。もうわけが分かりません。 それでまぁ、まずはスクラッチ社……真咲さん達の方からお話を聞くことになって。 「――我々は現代スポーツ科学も取り入れ、獣拳を発展・伝承していく活動を続けています。スクラッチもその目的から作られた会社と考えてもらえれば」 「では、真咲さん……あなたも」 「私は激獣レオパルド拳を修めています」 そう言って真咲さんも、右拳を平手に会わせて息吹……するとオレンジというか、黄色のオーラが放出。 それがうっすらと、本当に……動物のレオパルドになって……! 『――!』 実際に吠えたぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんか凄いことしているよ! 「ほう……!」 「ふぉふぉふぉふぉ……退いたと言っても、美希の腕は鈍っておらんがのう」 そのレオパルドが消えるのを見ながら、とりあえず……“そっち界隈”に関わる人達だったんだと勝手に納得する。 でも魔法魔術ならまだしも、拳法もありだなんて……。 「しかしミュージアム……よりにもよって、臨獣殿と近い行動を取ってくるとはのう」 「……りん、じゅうでん?」 「獣拳には二つの流派あり……じゃった。 一つ、正義の獣拳≪激獣拳ビーストアーツ≫……まぁワシらの流派じゃ。 一つ、悪の獣拳≪臨獣拳アクガタ≫。臨獣殿はその集まりじゃよ。 ……奴らは近年復活して、罪もない人々を傷つけ、苦しめておった。自らの強さを高めるためにのう」 「大暴れ……あの、もしかしてですが、一年くらい前から都内や各所で散見されていた、妙な怪物や不可思議現象らしき存在は」 「臨獣拳の仕業じゃよ。 ……とはいえ、それらはレツとケン……若き獣拳使い達の手によって打破され、二つの流派は再び一つとなり、今に至っておる」 「ただ、そう思っていたところで今回のことなんです。 もしかすると臨獣拳使いの生き残りがいるのではと、調査を進めていたところ……風都の状況に行き着いて」 「というか……うちの獣拳道場に通っている子なんっすよ! 例の、蒼凪恭文に助けられた一人が!」 「ケン……」 すると久津さんが許せないという様子でいら立って……鳴海さんが睨み付ける。 「アンタ、あの子や他の人達も罵ったんだってなぁ! そんなもんは甘ったれの言い訳だと! そんなものを我慢して戦う子どもがいるのに、言い訳して恥ずかしくないのかと! それであの子がどれだけ苦しんだか分かってんのか!」 「ケン……」 「……甘ったれを甘ったれと叱っただけだ……」 「それで攫われた人達が警察に知らせようとしたのも、殴って黙らせたのか!」 「そんな真似をすれば、坊主はこういう奴らに正義の味方気取りで裁かれる。 奴らには、あの子が見せた我慢を……他人のために振り絞った勇気を見習えと、そう言っただけのことだ。それは、嘘じゃない」 「てめぇ……どこまで腐ってやがんだぁ!」 「ケン!」 それだけでも察する。久津さんも職人とは言うけど、獣拳の関係者として見過ごせないレベルだったと。 というか……言い訳、甘ったれ……この人はやっぱり……! 「沙羅さん……」 「こちらも関係者への事情聴取で把握しています。 ……現場で彼が被害者を逃がしてから、“どうしてこうなった”という話になったそうです」 「鳴海さん、あなた……最初から全部知っていたんですか」 「だから、待ってくれよ! それも今言っただろ!? おやっさんはアイツのために」 「その結果、あと二日で……あなた達は十数人の医療関係者をえん罪にする」 「は……!?」 「蒼凪君という実験材料の絞り出しに際し、医療機関で働いていた人達が、ミュージアムとその関連組織に情報を流しています。 が……どうも彼らは事情を知らず、通常業務の上だと信じ込まされていたようでして。容疑を否認どころか錯乱しているんです」 「……では山仲君、あと二日というのは……あぁいや、彼らの身柄が検察当局に送られる日だね」 「罪状が罪状ゆえに、検察官によってはそのまま起訴されます」 ……だったら駄目だ。 「だからあと二日です。裁判に持ち込まれた時点で、彼らは友人も、家族も、信頼も、仕事も、その全てを失います。 その後で無実だと判明しても、なんの救いにもならないんです」 「やめてくれ……」 「あなたの薄っぺらい自己満足が……それをかばい立てするしかできない左さんの醜悪さが、彼らの人生も台なしにしたんです」 「そんなこと言わないでくれ! おやっさんは救われなきゃいけねぇんだ! だからそれも含めて全部目を」 「それが自己満足だと言っているでしょう――!」 「な……!」 「……これは想像以上じゃのう」 でもそれより……というか私が一番気になっているのは……。 「えっと、猫さん」 「わしはライオンじゃよ。お嬢ちゃん」 「ライオン!?」 「魔法使いの世界で言うなら、“召喚獣”――契約生物という感じじゃ」 私達は意味がさっぱりだったけど、グレアムさん達は分かるらしい。ハッとした様子で、あのライオンを名乗る猫に注視して。 「わしは獅子路(ししじ)。 戦神谷に生きる獅子一族……それを預かる一人じゃよ」 「では、もしやあなたは」 「お前さん方の魔法とは違う方式じゃが、御影ちゃんと契約しとった。 ……同時に、三尾にも縁ある存在じゃ」 「……三尾?」 「妖怪仙人≪三尾≫――神に等しき力を備えた妖怪≪仙狸≫の別名であり、ボンの先祖じゃよ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN13(ex2)→14 ガルドス ライフ×3 リザーブ(コア)×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×13 バースト×1 手札×4(スレイヴ・ガイアスラ×1 断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス×1) デッキ×19 トラッシュ(カード)×14 (ジャッジメントコール×1 スレイヴ・ガイアスラ×1 双光気弾×1。 フェーズチェンジ×1 ツインフレイム×1 ソウエン・ドラグーン×1 断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード×1 双翼乱舞×2 レイニードル×2 滅龍帝ジエンド・ドラゴニス×3) スピリット:焔竜魔皇マ・グー レベル3・BP10000(コア×5) ネクサス:破滅への序曲 レベル1(コア×0) 恭文 ライフ×1 リザーブ(コア)×0 トラッシュ(コア)×8 コア総数×14 バースト×1(アシュライド・マ・グーorジーク・ヤマト・フリード?) 手札×2(カグツチ・ドラグーン×1) デッキ×19 トラッシュ(カード)×11 (リザドエッジ×1 アルマジトカゲ×1 ヒノシシ×1 ワン・ケンゴー×1 救世神撃覇×1 デルタバリア×1 クヴェルドウールヴ×1 双光気弾×1 三札之術×3) スピリット:焔竜魔皇マ・グー(獣装甲メガバイソン:BP+3000×1) レベル1・合計BP8000(コア×1 疲労状態) ガーネットドラゴン レベル1・BP3000(コア×1) 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザー(ホーク・ブレイカー:BP+3000×1) レベル3・合計BP16000(コア×4 疲労状態) ネクサス:英雄皇の神剣 レベル1(コア×0) 彷徨う天空寺院 レベル1(コア×0) ↓ ↓ ※TURN14メインステップ開始時 ライフ×1 リザーブ(コア)×9 トラッシュ(コア)×0 コア総数×15 バースト×1(アシュライド・マ・グーorジーク・ヤマト・フリード?) 手札×3(カグツチ・ドラグーン×1) デッキ×18 トラッシュ(カード)×11 (リザドエッジ×1 アルマジトカゲ×1 ヒノシシ×1 ワン・ケンゴー×1 救世神撃覇×1 デルタバリア×1 クヴェルドウールヴ×1 双光気弾×1 三札之術×3) スピリット:焔竜魔皇マ・グー(獣装甲メガバイソン:BP+3000×1) レベル1・合計BP8000(コア×1) ガーネットドラゴン レベル1・BP3000(コア×1) 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザー(ホーク・ブレイカー:BP+3000×1) レベル3・合計BP16000(コア×4) ネクサス:英雄皇の神剣 レベル1(コア×0) 彷徨う天空寺院 レベル1(コア×0) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ さすがにキツかった……! でもなんとか詰みに持っていける状況だ。 ただ……問題があるとすれば。 「…………」 さっきの、隙だとは思ったけど……念のため想定しておいた方がいいかもしれない。 相手は僕よりずっと格上なんだ。念には念を入れて、きっちり詰めていく。 「――メインステップ! ガーネットドラゴンをレベル2にアップ!」 いくつかのコースを想定した上で、まずはコア一個をガーネットに載せて……グレイザーはこのままだ。 もしかしたら防がれて、次のターンジャッジメントが再臨するかもだし……ここは警戒! 「僕は龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードをレベル3で召喚するよ」 その瞬間、ボード上の天空寺院が疲労状態となり……手札から取り出した一枚が、赤い炎を放つ。 「――そこでネクサス≪彷徨える天空寺院≫の効果発動! 自分が本来コスト8以上のスピリットカードを召喚するとき、このネクサスを疲労させることで」 カードに描かれたコストが、一時的に二つ下がる……って、演出凄い! 「自分のリザーブから、2コストまで支払ったものとして扱う!」 「やはりバーストはアシュライド・マ・グーか……」 「さすがにリスキーだしねぇ。さて……」 そう言いながら、取り出すのは……奴も見抜いていた切り札。 「ここ(エクストリーム・ゾーン)では初陣だ」 そうして息吹――。 「――たぎれ! 太陽の覇竜!」 その瞬間、突然僕の場に赤く燃えたぎる太陽が生まれた。そして周囲がその炎で照らされ、赤色に染まる。 同時にジーク・ヤマト・フリードのカードにまた別の炎が宿り、手の中で燃えたぎる。 「駆けろ! 神速の焔(ほむら)!」 腕を左に引き、それからすぐに右薙に振るって……場に炎に包まれたカードを場に置く。 すると太陽が震えながら徐々に凝縮していく。 ううん、これは震えているんじゃない。言うなら脈打つ生命――鼓動だ。太陽は今、その鼓動を刻み始めている。 「輝き繋ぎ、勝利を掴む導となれ! ――コスト“3“・レベル3で召喚!」 そして太陽を中から打ち破るように、赤き鱗の鎧と灰色の体皮を持つ巨大な龍が現れた。 それはフィールドに降り立ち、自分が飛び出た事で弾けた太陽のかけらをその背に背負う。 かけら――炎は翼となり、身体に装着している水色の勾玉が一際強く輝く。 「爆現せよ! 龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード!」 右手を上に伸ばしてから右薙に振るうと、手の中に炎が生まれそれは一瞬で両刃の剣となる。 …………ジーク・ヤマト・フリード……バトルフィールドでもやっぱりかっこいい−! お小遣いやりくりして揃えた甲斐があったぁ! 「メガバイソンを、マ・グーからジーク・ヤマト・フリードに付け替えるよ!」 リスクはあるけど、今は攻撃役の強化優先。というわけで、カードをジーク・ヤマト・フリード上に付け替える。 マ・グーから分離したメガバイソンがそのままヤマトへ覆い被さり……その体色と白く染め上げながら、角付きの甲冑として変化。自身と同じ色の炎を各所から吹き上げた。 「もう一度吠えろ――ブレイヴスピリット!」 ……やっぱりブレイヴはかっこいいなぁ! アニメだよアニメ! アニメの世界そのままだよ! こうじゃなくっちゃ! うし、それじゃあアタックステップ! 「――アタックステップ! マ・グーの効果により、トラッシュのコア三個をマ・グー上へ! マ・グーはレベル2にアップし、各種効果発動!」 トラッシュからコアが移動し、マ・グーはそれを取り込みパワーアップ。それに合わせヤマトも吠えて――。 「マ・グーはBP10000のダブルシンボル! ブレイヴスピリットはBP19000のトリプルシンボルとなる!」 そうして手にかけるのは当然……。 「龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、いって!」 ヤマトのカード! 疲労状態とした上で、ヤマトを突撃させる。 「龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、レベル3・4アタック時効果発動! 自分のバーストをセットしているとき、このスピリットのBP以下の相手スピリット一体を破壊! マ・グーを指定!」 『ブレイヴした龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードは、マ・グーの効果も合わさってBP19000。 BP10000のマ・グーは余裕で破壊だぞ!』 向こうのマ・グーは警戒するけど、それも無駄……突撃しながら放たれたブレスによって、一瞬で焼き払われる。 うぅ、マ・グーを倒すのは心が痛む……しかしこれもバトルだ! 手を抜かない! というか、ここからが肝心だ……! 「現在ブレイヴスピリットはトリプルシンボル! なにもなければ全部のライフをもらうよ!」 「――フラッシュタイミング!」 そこで奴が出してきたのは、白のマジック……やっぱり持っていたか! 防御札! 「マジック≪フェーズチェンジ≫をコスト4で発動! そのアタックはライフで受ける!」 『――!』 ヤマトは奴に突撃し、展開した“二つ”のライフを右薙一閃で破壊。その粒子が舞い散る中、ガルドスが不敵に笑う。 「相手スピリットの効果と、コスト4以上のスピリットによるアタックでは……このターンの間、我のライフはゼロにならない――!」 「デルタバリアと同種のカード……!」 「そしてライフ減少時――バースト発動!」 赤い波紋が広がり、奴のバーストが浮かび上がる。そうしてキャッチされたカードは……これもやっぱりか! 「龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード――! BP15000以下のスピリット……貴様のマ・グーを破壊!」 そしてマ・グーの足下から爆炎が走り……僕のマ・グーも撃破。そのまま粉砕される。 「マ・グー……ごめん!」 「そしてレベル4・BP20000でバースト召喚!」 そうして入れ替わりに、空から奴のヤマトが舞い降りて……って、ほんと赤デッキだからか、キーカードやエンジンまで似ているとかさぁ! まぁだから手の内もある程度読めてきちゃうんだけど! とにかくこのターンでは仕留めきれない。僕の場に残っているのは、コスト4以上のガーネットとグレイザーだけだもの。 「惜しかったな……少年」 「最高過ぎて楽しいから問題なし! ターンエンド!」 ……さて、切り替えろ。 「でも、元神様も人に言えない程度にはしぶといじゃないのさ!」 「それがバトルスピリッツというものだからな。とはいえ、我も相応に追い込まれている」 「またまた……それをドローで何とかしちゃうのもまた、バトルの醍醐味ってやつでしょ」 「確かに。では次は……我が貴様を驚愕させる番だな。……その蒼穹の眼で刮目することだ」 「もちろん!」 ここで仕留められなかったのはかなり痛いけど、こっちも反撃の手がないわけじゃあない。 手札のうち二枚は高コストスピリットだし、ヤマトも残っている以上、向こうも不用意に展開はできない。向こうもマ・グーがいなくなったしね。 こっちもマ・グーは倒されちゃったけど、アシュライド・マ・グーがいるから代替はなんとかできる。しかもジャッジメントの効果を完全に使い切っているのが大きい。 もちろんジエンドもトラッシュに三枚落ちているし、あれが展開してくることも……ああもう、やっぱり油断禁止! ここまで想定外の手でやられまくっているんだもの! 有利な要素は大きいけど、それをドローだけで覆せる程度には強いんだ! だから次のターンで弾くカードと、今手元に残った一枚……それで全て決まる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN14→TURN15 ガルドス ライフ×1 リザーブ(コア)×3 トラッシュ(コア)×4 コア総数×15 手札×3(スレイヴ・ガイアスラ×1 断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス×1) デッキ×19 トラッシュ(カード)×16 (ジャッジメントコール×1 スレイヴ・ガイアスラ×1 双光気弾×1。 フェーズチェンジ×1 ツインフレイム×1 ソウエン・ドラグーン×1 断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード×1 焔竜魔皇マ・グー×1 フェーズチェンジ×1 双翼乱舞×2 レイニードル×2 滅龍帝ジエンド・ドラゴニス×3) スピリット:龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード レベル4・BP20000(コア×8) ネクサス:破滅への序曲 レベル1(コア×0) ↓ ↓ ※TURN15メインステップ開始時 ライフ×1 リザーブ(コア)×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×16 手札×4(スレイヴ・ガイアスラ×1 断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス×1) デッキ×18 トラッシュ(カード)×16 (ジャッジメントコール×1 スレイヴ・ガイアスラ×1 双光気弾×1。 フェーズチェンジ×1 ツインフレイム×1 ソウエン・ドラグーン×1 断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード×1 焔竜魔皇マ・グー×1 フェーズチェンジ×1 双翼乱舞×2 レイニードル×2 滅龍帝ジエンド・ドラゴニス×3) スピリット:龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード レベル4・BP20000(コア×8) ネクサス:破滅への序曲 レベル1(コア×0) 恭文 ライフ×1 リザーブ(コア)×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×15 バースト×1(アシュライド・マ・グー) 手札×2(カグツチ・ドラグーン×1) デッキ×18 トラッシュ(カード)×12 (リザドエッジ×1 アルマジトカゲ×1 ヒノシシ×1 ワン・ケンゴー×1 救世神撃覇×1 デルタバリア×1 クヴェルドウールヴ×1 双光気弾×1 焔竜魔皇マ・グー×1 三札之術×3) スピリット:龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード (獣装甲メガバイソン:BP+3000) レベル3・合計BP16000(コア×5 疲労状態) ガーネットドラゴン レベル2・BP4000(コア×2) 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザー(ホーク・ブレイカー:BP+3000) レベル3・BP16000(コア×4) ネクサス:英雄皇の神剣 レベル1(コア×0) 彷徨う天空寺院 レベル1(コア×0 疲労状態) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ さぁさぁ一体なにがくるかと思っていたら。 「メインステップ――リザーブのコアを全てジーク・ヤマト・フリード上に」 向こうのヤマトにリザーブのコアが全て載せられ、合計十六個のコアが置かれた。 ……それに、なんとなくだけど既視感があって。 「マジック≪ビッグバンエナジー≫をコスト2で発動」 「へ?」 「このターンの間、自分の手札にある系統:星竜を持つスピリットカード全てのコストを、自分のライフと同じ数にする」 奴が出してきたのは……燃ゆる何かが羽ばたこうとしている絵柄のマジック。 というか、それについては僕もよく知っているカードなんだけど……! (この状況で星竜!? しかもこの盤面を抜けそうなものって) そう考えて、頭の中で記憶をひっくり返し…………。 「……ぁ…………!」 一つ……そのカテゴライズで存在しているものがあったと、ぞっとさせられた。 既視感があったのは当然だった。 ヤマト上のコアは残り十四個。 それらが載せられているのは、奪うためだ。今その略取の主が現れる。 「降臨せよ! 命食らう幻羅の星!」 そうして奴が出したカードは……もう間違いなかった。 「幻羅星龍ガイ・アスラ――ノーコスト・レベル3で召喚!」 そうして流星がいくつも降り注ぐ。その中でひときわ巨大な焔が一回転し、その姿を現す。 フォルムだけならスレイヴ・ガイアスラと同じ。というか当然だ。スレイヴの方はマイナーチェンジって感じだから。 だから威圧感は段違いだった。一つ尾で地面を叩き、ふわふわと浮かび……こちらに吠えるそいつは、下手をすれば断罪の滅龍すら超越する。 「…………モノホンガイアスラァァァァァァァァァァ!?」 さすがに叫ぶしかなかった。 だって……滅龍とサポートかぶりそうもないもの! 少なくとも見えているカードは! 本来なら専用構築も必要なカードだよ! それを……それをこの土壇場で! コンボパーツも含めて揃えるってどういうことだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 幻羅星龍ガイ・アスラ……その名前を聞いて、一気に血の気が走った。 「……終わったかも……!」 終わる。 間違いなく終わる。 幸い今回はブレイヴする余裕もないだろうけど、それでもあのカードは十分に強烈。 ううん、今回については“ブレイヴしないから”余計に最悪だ! 恭文くんの手札に、なんらかの切り返しマジックがないと……完全に終わる! 「風花ちゃん? え、どうしたのかな。だってガイアスラって」 「アレとは全然違うんです! というか、さっきのも全然本領を発揮していません!」 「え」 『ではアタックステップ――幻羅星龍ガイ・アスラ、蹂躙せよ!』 あぁ……始まった! ついに始まったぁ! 『そしてフラッシュタイミング――超覚醒発動! ガイ・アスラ上に、ジーク・ヤマト・フリードからコア五個を移動! ヤマトはレベル3にダウン!』 そしてジーク・ヤマト・フリードからコアが、更に五個移動する。 ガイ・アスラ上のコアは合計十個……! 『ガイ・アスラは回復! レベル4・BP30000となる!』 「へ……!?」 カードが回復し、フィールドのガイ・アスラ本体が飛び上がる。 ――そうして姿を倍加……ううん、乗化させる。 紫色のヒキガエルと言うようなボディ。長い尾は揺らめき、折のように飛び出した針……骨が地面に突き刺さる。 その上部には、ハンマーや刃を持った人の姿……でも違う。乗っているわけじゃない。むしろ一体化していて……! 「なにあれぇ……!」 「と、というかあの、回復しなかった? コア載せて、回復ってことは」 「ガイ・アスラは、あと“五回”攻撃できます……!」 「なにそれ!」 「これが超覚醒の力なんです!」 今回復した分で一回。 そこから一回攻撃するごとに、残り四個のコアをガイ・アスラに移動していく。 それでBP30000による五回攻撃が可能……でもまずいまずいまずい! ガイ・アスラはまずい! 今の盤面だけじゃあどう足掻いても切り返せない! どうやっても無理だぁ! 詰んだぁ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ……ヤスフミがトドメをと思ったら、そこで更に切り返してきたガルドス・ランダル。 で、それで……ガイ・アスラかよ! この状況でそいつはヤバすぎるだろ! ヤスフミも想定外が過ぎてぽかーんとしちまっているぞ! 「……あのヒキガエルみたいなドラゴンは、相当強いのかな」 「まずは超覚醒……見てもらった通りだが、載せたコアはアレが破壊されるかバウンスなりされない限りは決してどかせない。自分のみならず相手の効果でも同じだ」 「リスクがある連続攻撃というわけか。だがそれなら防御していけば……二回足りないな……!」 「それだけじゃない。レベル4時には撃破したスピリットのコアを、ボイドに送る効果もある。ギリギリ耐えられたとしても、スピリットを撃破されたら大損害だ」 「ここにきてそれかぁ……!」 「やっぱり彼、運が悪いんじゃないかな。いや、ボクが言うのも大概だけど」 園咲来人……じゃなくてフィリップだったか!? ほんとそうだから黙っておけよ! 言いたくなる気持ちだけはよく分かるんだがな! 「あ、あの……ほら、さっきみたいにホーク・ブレイカーっっていうのは」 「駄目だ! ガイ・アスラのシンボルは一つ……効果でBPバンプしても三万は届かない!」 「やっぱり運勢最悪だぁ!」 イヅミも頭抱えちまったよ! まぁ抱えたくなるがな! まさしくラスボスとして出てきやがったし! 「ならベルベット君、この場の対処方としては」 「あの手札……カグツチ以外の一枚でなんとかするしかない!」 「なんとかできるカードが引けていなければ」 「終わりだ――!」 くそ、やっぱり無茶だったのか。アイツが非凡だったとしても若すぎる……小さすぎる。 こんな運命力全開な元神様相手にしておいて、連続EXターンを耐えただけでも十分と言うべきだが……本来なら、そう言うべきなんだが……。 「だったら、大丈夫かもしれん」 ……PSA会長の言う通りだった。 「彼の目は、まだ死んでいない――!」 ぽかーんとはした。していたが……アイツはまだ、全部諦めた顔も、目も、していなかったから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「さすがにこれは予想外のようだな」 「さすがにね……!」 ツッコむのも許してよ! デッキ構築にケチつけるのもあれだけど……さすがにガイ・アスラはビックリなんだよ! おのれ、仮にも世界を滅ぼしかけたラスボス神様でしょうが! それがここまで事故率高そうなデッキをぶん回す……いや、逆に納得かも! ラスボスだもんね! 神様だもんね! やっぱ運命力ってやつか! 「貴様にはない能力だ」 「やかましいわぁ! というか、心を読むなぁ!」 「たまにはらしくもなく、遊興にふけるのも悪くないな」 「なんだって!? ということはおのれ……三味線弾いたなぁ! それ、ソードアイズと戦ったデッキじゃないでしょ!」 「その改良版だ。問題はあるまい」 「論破されたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 「さぁ……どうする! ここで終わるか! それともまだ神に抗うか!」 「…………」 その言葉には、つい笑ってしまった。 そう、笑えてしまった。僕の“運命”はまだ抗えと叫んでくれたから。 「そうだった。驚かされた以上、僕もお返しできなきゃ……だよね」 「叱り!」 「――さぁ」 そうして、右指をパチンと鳴らす。 「ショウダウンだ」 「――――!」 「BP8000以上のスピリットがアタックしたので、バースト発動!」 盤面を叩くと、赤い波動を放ちながら、僕が伏せていたバーストは展開。 「焔竜魔神アシュライド・マ・グー!」 『バースト発動時にアタックしたスピリット……今回のガイ・アスラはレベル4・BP30000! 余裕で条件クリアだぞ!』 炎が宿ったカードを……アシュライド・マ・グーを掴んで振るい、前方に六芒星を描く! 「焔と修羅、今ここ交わる!」 頭上にカードをかざし、六芒星の中心へカードを投げ込む。そのまま時計回りに一回転して、炎に身を包む。 「荒ぶる魂、覇王を越えて」 すると炎は一瞬で黒く染まり、赤い紋様を刻まれた着物へと変化。 六芒星は回転しながらフィールドへ向かい、一気に大きさを増す。それが地面と並行になり。 「未来切り開く導となれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 巨大な赤コアへと変化した――。 それが回転しながら巨大な火柱となり、螺旋を描いてフィールドを蹂躙する。 その中から現れるのは、マ・グーの身体にアシュライガーの毛並みと甲冑を持つ魔神。 胸元にはライガーの顔を模したアーマーを装着し、その瞳が赤く輝く。 周囲の炎が背中へと収束し、焔の翼となる。それを広げ、両手に持った大太刀を赤く輝かせた。 「レベル3・バースト召喚! 生来せよ――焔竜魔神アシュライド・マ・グー! 不足コアはジーク・ヤマト・フリードから借りるよ! ヤマトはレベル2にダウン!」 膝を突いていたヤマトが、左拳をかざす。それに刀を持ったままの拳をぶつけると、アシュライド・マ・グーにコアが移動――その力強さが倍増しになる。 「アシュライド・マ・グーをバースト召喚した後、このターンの間、自分のスピリット全てをBP+3000!」 その上で咆哮……みんなの身体に赤い炎が宿り、その力を強めてくれる。 「アシュライド・マ・グーとジーク・ヤマト・フリードはBP16000! 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザーはBP19000! ガーネットドラゴンはBP7000!」 さて、初陣だ……アシュライド・マ・グー! 「ガイ・アスラは、アシュライド・マ・グーでブロック!」 アシュライド・マ・グーは太刀を振り上げ突撃――そうしてガイ・アスラの頭頂部めがけて唐竹一閃。 ハンマーや槍で武装した人型の部位が防御し、たやすくそれを払いのける。更にガイ・アスラの巨大な口から炎も吐き出され……アシュライド・マ・グーはそれをすれすれで回避していく。 このままじゃあBP14000の差は覆せない。普通のブーストでもこれを一発で超えることは無理。 そう……普通なら! 「ブロック時のフラッシュタイミング!」 優先権の関係から、僕の方からフラッシュタイミングに突入。 さっき手札に来てくれた、一枚のカードを……グレイザーが描かれたマジックを、奴に見せつける。 「マジック≪キズナブレード≫をコスト1で発動! コアはヤマトから支払う!」 ヤマトからコア一個がトラッシュに送られる。 「まずはバトルしていない自分のスピリットを好きなだけ疲労! ガーネットドラゴンとグレイザーを疲労させる!」 『『!』』 「ガーネット、グレイザー、力を貸して……ううん、合わせて!」 『『――――!』』 もちろんだと吠えて、二体は膝を突く。でも……その身体から、白いオーラが吹き出し始めて。 「そしてこのターンの間、自分のスピリット一体に」 追い立てられるアシュライド・マ・グーに、ガイ・アスラの吐き出した炎の奔流が突き刺さる。そうしてもがくアシュライド・マ・グーを、鋭く指差し。 「キズナブレードの効果で疲労させたスピリット全てのBPをプラスする! 僕はアシュライド・マ・グーを指定!」 「――!」 「なのでアシュライド・マ・グーにBP+26000! 合計BP42000だ!」 でも……そこでガーネットとグレイザーから送られた咆哮が……その波動がアシュライド・マ・グーに伝わり。 『――――!』 その力を強烈に高め、燃え上がらせ、赤と白が混じった二色の炎を吹き出し、ガイ・アスラの力を全て払いのける。 『――!』 ガイ・アスラはそれでも負けじと、周囲に誘導弾を展開し一斉発射。どう見積もっても百二百三百と突き抜けてくる光弾を、アシュライド・マ・グーは翼の羽ばたきだけで払いのけ……突撃! 「正面突破だ! アシュライド・マ・グー!」 『!』 そうしてアシュライド・マ・グーは大太刀を振り上げ、そこに炎を纏わせ……一気に凝縮。 赤熱化したそれで唐竹一閃――ガイ・アスラの巨体を一刀両断にし、突き抜けながら地面に着地。 ガイ・アスラはぐらりと崩れ落ち、爆散……その爆炎を背にしながら、アシュライド・マ・グーはまた眼光をたぎらせる。 「そしてアシュライド・マ・グーの、レベル3効果発動! お互いのアタックステップ時、系統:古竜・皇獣を持つスピリットがBPを比べ、相手スピリットを破壊したとき、相手のスピリット・ブレイヴ・ネクサスのどれか一つを破壊する! 僕はお前のジーク・ヤマト・フリードを破壊!」 向こうのヤマトを指差すと、ヤマトが身構えるも……既にアシュライド・マ・グーは踏み込み、右薙一閃。 その防御ごとヤマトを両断し、その膝を突かせる。ヤマトもまたガイ・アスラの後を追うように爆散。 「くくくくく……」 ……その炎を見て、奴は……ガルドスは楽しげに笑っていて。 「まさかこの矢も返されるとはな!」 「カード達に助けられっぱなしだ」 「それもまた実力よ! ターンエンド!」 ◆◆◆◆◆ キズナブレード マジック 5(4)/白 フラッシュ: バトルしていない自分のスピリットを好きなだけ疲労させる。 このターンの間、自分のスピリット1体をBP+(この効果で疲労させたスピリットすべてのBP合計)する。 この効果は、メインステップで使えない。 イラスト:船弥さ吉 イラスト:SUNRISE D.I.D.(バトルスピリッツ 覇王&ソードアイズオリジナルサウンドトラック) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN15→TURN16 ガルドス ライフ×1 リザーブ(コア)×14 トラッシュ(コア)×2 コア総数×16 手札×2(スレイヴ・ガイアスラ×1 断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス×1) デッキ×18 トラッシュ(カード)×19 (ジャッジメントコール×1 スレイヴ・ガイアスラ×1 双光気弾×1。 フェーズチェンジ×1 ツインフレイム×1 ソウエン・ドラグーン×1 断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード×1 焔竜魔皇マ・グー×1 フェーズチェンジ×1 龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード×1 ビッグバンエナジー×1 幻羅星龍ガイ・アスラ×1 双翼乱舞×2 レイニードル×2 滅龍帝ジエンド・ドラゴニス×3) ネクサス:破滅への序曲 レベル1(コア×0) 恭文 ライフ×1 リザーブ(コア)×0 トラッシュ(コア)×1 コア総数×15 手札×1(カグツチ・ドラグーン×1) デッキ×18 トラッシュ(カード)×13 (リザドエッジ×1 アルマジトカゲ×1 ヒノシシ×1 ワン・ケンゴー×1 救世神撃覇×1 デルタバリア×1 クヴェルドウールヴ×1 双光気弾×1 焔竜魔皇マ・グー×1 キズナブレード×1 三札之術×3) スピリット:龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード (獣装甲メガバイソン:BP+3000) レベル2・合計BP13000(コア×3 疲労状態) アシュライド・マ・グー レベル3・BP13000(コア×5 疲労状態) ガーネットドラゴン レベル2・BP4000(コア×2 疲労状態) 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザー(ホーク・ブレイカー:BP+3000) レベル3・BP16000(コア×4 疲労状態) ネクサス:英雄皇の神剣 レベル1(コア×0) 彷徨う天空寺院 レベル1(コア×0 疲労状態) ↓ ↓ ※TURN16メインステップ開始時 ライフ×1 リザーブ(コア)×2 トラッシュ(コア)×0 コア総数×16 手札×2(カグツチ・ドラグーン×1) デッキ×17 トラッシュ(カード)×13 (リザドエッジ×1 アルマジトカゲ×1 ヒノシシ×1 ワン・ケンゴー×1 救世神撃覇×1 デルタバリア×1 クヴェルドウールヴ×1 双光気弾×1 焔竜魔皇マ・グー×1 キズナブレード×1 三札之術×3) スピリット:龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード (獣装甲メガバイソン:BP+3000) レベル2・合計BP13000(コア×3) アシュライド・マ・グー レベル3・BP13000(コア×5) ガーネットドラゴン レベル2・BP4000(コア×2) 爆氷の覇王ロード・ドラゴン・グレイザー(ホーク・ブレイカー:BP+3000) レベル3・BP16000(コア×4) ネクサス:英雄皇の神剣 レベル1(コア×0) 彷徨う天空寺院 レベル1(コア×0 疲労状態) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 僕のターン……でも、決着ならもうさっきのターンでやってきていた。 ガルドスの手札は実質ゼロ。バーストもない。スピリットもない。ネクサスはあるけどダメージを防ぐものじゃあない。 だから、このターンはすぐに終わる。 「メインステップ! ジーク・ヤマト・フリードをレベル3にアップ!」 「……現代のバトスピ……そう甘く見たものではないということか」 「だったらまたやろうよ!」 「なに」 「バトルが終わっても、いいバトルだったと……またやろうって約束する! それもバトスピが遊びだからこそだもの!」 「ならば、それは我だけではなく……これから出会う者達にも伝えていくといい」 「……うん」 ガルドス……いや、その通りだ。ヤマトがコアを受け取り、力を増していく中で痛感する。 「忘れるな、少年。これは手本にすぎない」 「分かっている」 バトスピみたいな世界が欲しいけど、それは僕の伝え方じゃない。僕がちゃんと考えて、育てた伝え方……救い方じゃない。 司さんやギャラクシーさん達に、いっぱい助けてもらって、見せてもらったものなんだよ。こんなやり方もあるんだってさ。 だから、僕も僕の劇薬を探さなきゃいけないんだ。 「……劇薬じゃなきゃ誰にも届かないなら、僕なりの劇薬を用意しなきゃいけない」 「美澄苺花は、たとえミュージアムに依存していたとしてもそうした。そのミュージアムにしても同じだ」 「だから、ちゃんと伝えるよ。おじいさんにも、苺花ちゃんにも」 「……」 「僕は自分というカードには、救える未来があるって信じたい……ううん、疑わない。 でもそれだけじゃ足りない。お姉さんを……“知らない誰か”も守れない今も、全部壊す」 ガルドスが深く、何かを納得した様子で頷いたのを合図に。 「このままアタックステップに入って」 アシュライド・マ・グーのカードに手をかけ……疲労状態にする。 「――アシュライド・マ・グーでアタック!」 アシュライド・マ・グーはそのまま直進――。 「ライフで受けよう――!」 ガルドスが笑い、両手を広げて、アシュライド・マ・グーの唐竹一閃を受け止めた。 最後のライフ……とても遠かった五つ目のライフ。 それが、アシュライド・マ・グーの剣閃によって斬り裂かれて……ガルドスは吹き飛びながら消失。 「……届いた……」 やっと……一人の力じゃ無理だった。 やっぱり僕には足りないものばっかりだ。まだまだ選ぶというにはほど遠い。 でも信じたいって思った。その上で守って、壊して、繋げたらって……そう思ったのは嘘じゃない。 「……」 風のようにすれ違った人。 多分もう二度と会えない人。 「……!」 その人が……お姉さんが笑えない世界は、嫌だ。 だってもう僕には、誰がお姉さんかなんてきっと分からない。 あのときのお礼を伝えることも、好きって気持ちをぶつけることもできない。 だけど、それでも……すれ違うだけの誰かも助けられる可能性が守れたら。 そんな可能性をもっともっと大きくして、この世界を変えていけたら。 そうしたら、覚えていられない……それができない『普通じゃない自分』を憎み続けるより、ずっと楽しいかもしれない。 それでいつか、届くかもしれないって、希望を持ち続けられる。 それが僕のやりたいこと。我がままだよね。うん、身勝手もいいところだ。 だけど、それが僕だから。それでも前に……前にって、気持ちが燃え上がっているから……! 「――みんな…………」 だから今は笑って。 「僕達の! 勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 『『『『――――!』』』』 一緒に戦ってくれたみんなと、全力の勝ちどきを上げる――。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 小さなライオンさん……獅子路様は、顔の皺を寄せ、重たい口調でそう告げる。 それがあの子の運命。決して変えられはしない色だと。 「そもそも猫という存在は、陰陽の論理で言えば陰……マイナスの存在じゃ。 じゃから仙狸は人の精気を吸う。自分と相反するプラスのエネルギーを吸い取ることで、存在の均衡を取っておった」 「エネルギーを吸い取る……ちょっと獅子路様、それって!」 「……恭文君のザラキエルだね」 超能力だなんだっていうのも概要に過ぎなかったってことかぁ……! あれはあの子が三尾の末裔だからこそ得られた能力……自分の色を構築する一つだった。 「ですが獅子路様、三尾ということは……」 「ボンの尾は、今何本じゃ」 「……現在のところは一本です。 つまり彼の尾が増えたら、妖怪に近づくんですね」 「グレアムさん、それはもしや先ほど話していた」 「その目安が尾なんだよ。 尾は妖怪の位を示し、増えれば力が乗算するというのは……私も調べて知ったんだが」 そこでグレアム提督が、渋い様子で口元を撫で始めて……。 「図書館やネットなどの検索などで、すぐでてきた話なんだよ。恐らく彼ももう知っている」 「なんですって……!」 「蒼凪君は、国立国会図書館を遊び場兼学び場としていた子ですしね……」 「だからよぉ……いいから俺の話を聞けよ!」 「……そうそう、左さん」 「そんな危なっかしい尻尾も、耳も、全部切り取れば済むことだろうが! それを我慢できるのが、おやっさんの伝えた愛なんだ! それが起こす奇跡を、黙って信じてりゃあいいんだよ!」 「本条隼人さんはお元気ですか」 ……そこで沙羅さんは、平然としながら……見知らぬ名前を出して。 「………………は…………!?」 「本条隼人さんですよ。東風都大学の准教授になったばかりの、新進気鋭の天才。あなたとは高校時代の親友だとか。 当然ながら今度行われるあなたと鳴海早期tの裁判には、知人として証人喚問を受けてもらいます」 「………………!」 「でもスケジュールが取れるでしょうか。 イケメン若手な研究者ということで、大学の講義はもちろん、研究室やレギュラー番組まで獲得している凄い人ですし」 ……最悪だ。というか正気なの? 左さんがこのまま喚き続けるなら、裁判で“こんな凶悪犯の親友なんですよー”と触れ回って、人生を滅茶苦茶にしてやるって……脅している……! 「おい……お前は、何を考えている。翔太郎は俺を信じただけだ。だから」 「だから彼には、あなたとは違うという存在証明が必要なんです」 そう言って沙羅さんは、左さんに近づき……その頭を掴んで引き起こす。 「それができるよう、恩赦の提案をしているだけですよ? 私は」 「が……!」 「いいじゃないですか。あなたは望み通り、彼という弟子に託せる。彼はそれを受け取り、街を守れる。鳴海探偵事務所も存続して構いません。こちらも支援しましょう。 ……ただし、あなたがやったような非合法私刑は駄目です。ドーパントを倒すとしてもメモリは砕くだけ。生きた上で警察に突き出すんです。 そうして彼は、あなたを“永遠に”否定し続ける。こんなクズのようになってはならないと、意地を張り、その一生をそこに注ぎ続ける」 「なん、だって……」 「当然でしょう。本来ならあなたを信じ、片棒を担いだ時点で、こんな恩赦を許す理由もないのですから」 「沙羅さん、待ってください! それは、左さんにとってはあんまりにも!」 「……できないというのであれば、最終手段として本条さんにご登壇いただくしかありません」 それは左さんにとって、あまりに残酷だった。 いや、やって当然だ。恩赦というのなら当然だ。 でもそれを、ここまで慕っている師匠の否定……そのために費やすなんて……! 「彼は最近新しい研究などで忙しそうですが……友人の危機となれば駆けつけてくれるでしょう。 あなた、高校を卒業できたのも、親友だった彼の尽力があればこそでしたよね? だから鳴海探偵事務所での助手もスタートできた。高校卒業が助手になる最低条件だったから」 「やめてくれぇ! 隼人は、関係」 そう言って、左さんの頭を地面に投げつける。ごすんと音が響き……それを沙羅さんは冷徹に見下ろして。 「関係ありますよ。……あなたの大事な大事な友人なんですから」 「――――!」 「でもあなたがこんな頭のおかしい重犯罪者と暴れたと知れば、悲しむでしょうねぇ。 マスコミもきっと押し寄せますよ。彼が努力し、獲得してきた地位と名誉がそのまま、あなたの知人という汚名に早変わりする」 「やめて、くれ……」 「というか、あなた達は“これ”を蒼凪君に我慢して、受け入れろと……愛だと宣ったんですよ? だったら否定する理由がない」 「あ、ああ、あああああああ……」 「沙羅さん、ということは……」 「もちろん“彼の発案”です」 「………………」 「しゅごキャラのことで励ましてもらったし、このまま犯罪者となるのは忍びないと……私もその優しさに心打たれたんです」 絶対嘘だ。というか、その詳細まで知っているってことは……間違いない。恭文くんが共感力で読み取ったんだ。 その上で脅してきている。お前をそれくらいしても潰していいと……それが嫌なら、鳴海荘吉を一生否定し続けろと……! 「いいから、やめろ……。償えというのなら、翔太郎をウィザードとして戦わせろ。 そうして街を守る……それでいいじゃないか」 「さぁ、選択は一度だけです。 だんまりは許しません」 「俺はどうなってもいい! だから、翔太郎にそんな残酷なことをさせるな!」 「私が引いても、彼がやりますよ? “あなたにそそのかされた左さんを助けるため、手段を選ばず”」 「………………!」 「というか鳴海さん……これもあなたのせいですからね?」 沙羅さんは小首を傾げる。意味が分からないと。これは善意なのに、どうして否定するのかと。 「どういう、意味だ……!」 「それすら分からないのなら話にならないということです。 ……さぁ左さん、どうしますか。あなたが間違いを認めたと……償うと姿勢を示さなければ、本条さんは一体どうなるか」 「あぁあぁああぁあ……!」 「――――喚いてないで答えなさい!」 ――そして、左さんは頭を地面にすりつけ……こう言うしかなかった。 「分かった……言う、通りにする……」 「翔太郎……!」 「鳴海荘吉とその間違いを否定し続ける……が足りませんね」 「おやっさんを……おやっさんの間違いを、否定し続ける……だから、隼人にはなにも!」 「師匠を裏切って保身に走る……弟子の風上にもおけないクズですねぇ。あなたは」 「……!」 「あなたは、師匠を信じ続けて共に死ぬ……そんな覚悟もない卑怯者です。一生その罪は拭えない」 沙羅さん、それダブルバインド−! 心が壊れるやつ−! あ、でももう手遅れか……! 「あ――――あぁああぁああぁああぁああぁあぁああぁあぁあぁあぁあ!」 ……左さんは、絶叫する。首輪を付けられて、師匠を否定し続ける地獄に放り込まれて……苦しみもがき続ける。 私達はそれを見ているしかなかった。というより……今日顔を合わせたばかりだしね! さすがに何も言えないって! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ バトルは終わった。彼がちょっと……瞳に涙を浮かべていたのは、気にしないことにした。 とにかく二人とも、この場に戻ってきて……。 「ガルドス」 彼は改めて、笑って……ガルドスに両腕を差し出す。 「ありがとうございました。いいバトルでした」 「…………」 少し面食らった様子だったけど、ガルドスはすぐに笑って。 「……えぇ、こちらこそ」 しっかりと……彼の両手を取ってくれた。 「よいバトルでした、蒼凪恭文」 「恭文でいいよ。そっちの方がずっと年上なんだし」 「ではヤスフミ……またバトルしましょう。 今度は使命など関係なく、あなたが示した現代の流儀で」 「いいの!?」 「リベンジというものは必要ですから。……今のデッキに可能性は感じましたが、無茶も過ぎました。しっかり組み直してみたいんです」 「だったら大歓迎! 僕ももっと強くなるし!」 なんというか、そうして笑って、仲良しな様子を見て……私達も一気に気が抜けちゃう。 (――だが、これからだ) 彼はガルドス・ランドルとのバトルを遠し、一段階高い領域に登った。あの年にしてだ。 本当の試練はこれから……と言うべきなんだけど。 『『『――』』』 「君達……いや、今がそのときかもしれないね」 すっと……三つのたまごが、あの子を取り囲むように現れて。 ……星がまた動く。それはとても大きな動きだけど、きっと大丈夫。 あの子にはもう、変えたい世界が見えているんだから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そこで近づいてきたのは、僕のしゅごたま達だった。 『よく向き合ったな、ヤスフミ』 「え……」 『可能性には、世界を変えてやるっていうデカいものがあってもいいんだよ』 『お兄様こそが導であり引き金……お兄様が自分を信じ続けるのなら、私達も燃え上がるしかありません』 『つまるところ……』 そうして三つのたまごに、ぎざぎざのヒビが入り……パカリと二つに分かれて開く。 「ここからは私達全員でのバトルだ」 まずは流星のたまごから出てきた子。長い銀髪に、黒いインナーとスカート姿。赤い切れ長な瞳が……って、女の子!? 「僕の、しゅごキャラ達……」 「あぁ……ヒカリだ」 「そして私はシオン」 十字のたまごからは、シスター服に翡翠色の髪を靡かせ……それをさっとかき上げて笑う子だった。 「全てを照らす太陽であり、浄化の炎そのもの」 「で、オレがショウタロウだ」 旋風のたまごは、ソフト帽の子……ショウタロウ、ショウタロウ、ショウタロウ……あぁ、なるほど。 「……そっちは紛らわしいからショウタロスで」 「おい待てぇ!」 「それは素晴らしいですね。ではショウタロス先輩、焼きそばパンでも買ってきてください」 「そうだな。先輩なら当然だ」 「むしろ後輩が買いに行ってこいよ! あとさらっと認めるなぁ!」 「僕もお腹空いたから……あ、お金は渡すから、たまごサンドを」 「それはありがとうな! でも使いっ走りからやめるともっといいぞ!」 というか、みんな無事に……あぁ、そっか。そうだよね。 「……みなさん、早速ですが確認です。本当によいのですね」 やっぱりアレは、僕の夢だった。 「魔導師の記憶と深く繋がることは、人としての可能性……つまりあなた達の消滅にも繋がりかねません」 「そんなことはどうだっていいんだよ……」 「だな」 だからヒカリも、ショウタロスも、問題なしと頷いてくれて。 「ちょ、ちょっと待って! それは」 「それでも救える未来がある……そう信じて育てられるのは、お兄様だけなんです。そこに嘘を吐いても、私達はどうせ消えてしまいます」 「人間としての可能性も、妖怪としての可能性も、全部含めてヤスフミだしな。 ……俺達は、それを全部ひっくるめても進めるって可能性なんだ。だったら一緒に戦わないなんてあり得ない」 「ショウタロス……」 「なのでいらない気遣いだぞ、元神様」 みんなは揺らがず、ずっと一緒に……味方でいてくれる。そう断言して……ガルドスを見上げていて。 「言った通り“どうだっていいこと”だからな」 「そうですか。これはとんだ無礼を」 「いいさ。そう言ってくれる大人がいるだけでも、子どもは安心できる」 「……感謝します」 みんな……そうだ、だったら止まれない。 僕にはまだやることがある。もっと見たいものがある。だから……デッキケースを取り出して……! 「よし……次はアマレロさんだ! バトルするよ!」 『え……!』 アマレロさんに向けて宣戦布告…………というところで、なぜか身体がフラつく。 「恭文くん!」 「おっと……」 でも、すぐにガルドスが後ろから支えてくれて、倒れることはなくて……え、なにこれ。なんか、眠気も一気に……。 「さすがに負荷がかかりすぎています。今日のところはお開きにしましょう」 「そんなー!」 「安心しなさい。ガルドスよりは距離も近いし……また落ち着いたらバトルしてあげるから」 「ほんとに!? 約束だからね!」 「もちろん……!」 「では……そうしておねむにならないうちに、私も約束を果たすとしましょう」 ガルドスまでもが子ども扱い!? というか約束って。 「……ふん……!」 するとガルドスが両手で印を組み、脇にエネルギーを放出。 それは瞬く間に……巫女服姿の、あの女の子になって。 「………………」 「この私に打ち勝った……だけならまだよかった。ですが彼は、私の手を取って、“未来“を約束してくれました」 「私ともね」 「そしてこれから、彼はもっと違う誰かの手も取っていくでしょう。 ……あなたの力と想いを、そこに重ねてはいただけませんか」 「………………」 それでもあの子は止まっている。 こんなこと間違っているのにと、どうしてこうなるのかと……迷って、悩んで、閉じこもって。 ……だから。 「……蒼姫」 その……お姉さんによく似ているけど、全然似ていない子に、一つのワードを送ることにした。 「え」 「ずっとウィザードメモリは呼びにくいし、正体が露呈しても面倒だしね。だから蒼姫だよ」 「私の、名前……」 するとあの子はようやく、一歩踏み出してくれて。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ずっと迷っていた。こんなこと間違っているって。私の声なんて気にしなくていいって。 でも……それすら振り払われた。 「考えて、くれていたの?」 この子は名前を送ってくれた。私がここにいる意味を、たった今くれた。 なんの迷いもなく、疑いもなく、受け入れるからって……それでも拒絶しなきゃいけないんだと思う。そんなのいらないって……でも……。 「気に食わないなら、アオタロス、ゲロシャブ、バルバロビッチタロス十三世……どれでも好きなものを」 「蒼姫でお願いします! というか、それがいい……」 「バルバロビッチタロス十三世……」 「蒼姫−! というかそれが一押しだったの!? 寄りにも寄って!」 「でもほら、どの面下げてってタイミングでしょ? だったらそれに押し負けないインパクトは大事かなって」 「朗らかに笑いながらとんでもないこと言うなぁ!」 私は……その気持ちを、そうやって踏みにじることなんて絶対にできなかった。 だってそれは、きっと、私が……私という存在がここに生まれてから、ずっと欲しかったもので……! (……君と同じ、蒼……メモリと同じ、蒼……) 私達を繋いだ色。それが私の名前。この子と私を、ずっと結びつける……深くて奇麗な色。 「……覚悟してよね」 「ん」 「一生……死ぬまで一緒だから。私達はもう、その色で繋がっているの」 「ん……」 「私は、その色が好き。だから……もう絶対、離れようがないんだから――!」 もう戻れない。引き返せない。もしかしたらこの選択を一生……うん、一生後悔するかもしれない。 だけど、それも全部背負う。だって今もらったきらめきは、それだけの価値があるから。 それに、後悔したって……それすら希望に変えられるなら、きっと。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「……っと、そろそろ時間ですね」 するとガルドスの身体が、淡く輝き、半透明になっていって……その粒子が天上へと昇っては消えていく。 ……そっか。ガルドスもここまでくるのにいろいろ大変だから……それは、やっぱりちょっと寂しい。 『ですがヤスフミ、約束はしました……またいずれ』 「うん、絶対だから! それで……もっと、僕も生きている……いろんな人に手を伸ばす」 『えぇ』 「だから、またね!」 「……あの、いろいろ……ありがと」 『構いませんよ』 そうしてガルドスは、この場からすっと……消えていった。 『約束が守られる世界を……あなた達自身がその手で掴める未来を、楽しみにしています』 一生忘れられないバトルと、大事な約束だけを残し。……それを見送って、やっぱりまだ寝ていられないと……軽く目をこする。 「……ありがと、アマレロさん。ギャラクシーさんも」 「礼には及ばないさ。全ては君の力で勝ち取ったものだからね」 「ん……」 「だから坊や、手を出しなさい」 そうしてアマレロさんが渡してくれたのは……黄色いデッキと、鞘に納められた短剣。短剣の方は、黄金色の両刃だった。 「それは私のデッキ……そしてソードブレイヴの現し身。 光と魔法の象徴である黄のシンボルが、あなた達の“人としての可能性”を示し、守ってくれるわ」 「僕の……蒼姫の可能性……夢……」 「でも、そのために他の可能性を蔑ろにしてもいけないわ。もう分かるわね?」 「……うん」 それもヒカリ達が教えてくれたから……あれ、でも待って。 「え、だったらこのデッキでエクストリーム・ゾーンは……」 「また落ち着いたらね……!?」 「恭文くん、お願いだから倒れかけたことを忘れないで!?」 「だって、あそこでソードブレイヴーってやりたいし!」 「「落ち着いたらね!?」」 「……御影ぇ……やっぱお前、恐山で呼び出すからのう!? この戦闘狂はほんまどうにかならんかったんか!」 ≪無理ですねー。これぞ恭文さんですから≫ そこで出てきてくれたルビーが頭の上に乗り、なぜかため息。……戦闘狂はいいことなのでは……解せぬ。 「とにかく……坊や、忘れては駄目なこと……もっとあるわよ?」 「え」 「それはあなたにどれだけ大きく重たい運命がのしかかろうと、たった一つの命であり、可能性を持つということ」 そうしてアマレロさんが、すっとしゃがんで……僕と目を合わせ、ソードブレイヴと一緒に手も握ってくれる。 「夢を叶えるために、神様になる義務なんてどこにもないの。 世界を変えるために、神様のように振る舞う謂われもないの。 人を守るために、神様として痛みをこらえる必要もないの」 「……」 「できることとできないこと……その間で揉まれながら、それでも抗う子になりなさい。 ……人と違う感じ方も、捉え方も、あなただけが持つ可能性と愛していける……そんな子に」 「……愛……アイ……あい…………」 「愛することがよく分からないのなら、せめて許してあげなさい」 それで頭を撫でてくれる。考えすぎなくていいと、笑って……。 「あなたのような命がここにいることを……抗って、戦うことを。 そうすれば同じ痛みを抱えた誰かも、自分を許していいと思えるかもしれない」 「ん……それなら、分かるかも」 そうして立ち上がったアマレロさんも、ゆっくりと、光になっていって……。 『私も楽しみにしているわね。 あなた達がどんな夢をこの世界で描き、抗っていくか……楽しみにしている』 「ん……!」 それでまたねと……そう見送り、僕は託された輝きを、しっかりと抱きしめる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 再び別れた彼女。看取ったときよりはすんなりとだが……いや、違うか。 最後に彼女は、こちらを見て笑いかけてくれた。今までと変わらず元気でいてくれたなら嬉しいと。 その笑顔に私も返して……。 「アマレロ、ありがとう」 色あせないあの日々を思い出し、更に笑みを深くした。 「また会えて嬉しかったよ」 いろいろと数奇な命運を背負った身だが、それでも笑えるのは……やっぱり気持ちいた時間があればこそだよ。 それは決して消えない。やっぱり色あせることもない。それが……私にとっての希望だから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 神様になる必要はない。それで……愛、かぁ。 やっぱり私はそういうの、よく分からないけど……でも……もしそうなら……。 「……司さんも、ありがとうございました」 「いやいや……面白いものをたくさん見せてもらったしね。むしろ感謝するのはこちらだよ。 ……ただ」 「はい」 「君の予測が的中したそうだよ」 「やすっち、父様が上に来ているそうなんだよ。サリエル達もいる」 「…………」 恭文くんの表情が……お祝いムードだったのが、一気に張り詰めた。 そうだ、その話もあったんだ。だから恭文くんに、あれやこれやと説明したところ……。 「……へぇ……」 そこで恭文くんの尻尾が揺らめく。 そう、揺らめく……“二本”揺らめく。突然、前触れもなく、尻尾が増えて……というか、これって……! 「や、恭文くん、尻尾……!」 「奴らのせいだよ」 その端的な答えで、私もぞっとさせられる。でも納得するしかなかった。 「あの、確認だけど、恭文くん……鳴海さんの記憶を読んでいたよね。それで」 「なんにも引っかからなかった」 「攫われた人達を殴って黙らせておいて、特に気にしていなかったってこと……!?」 「とはいえ納得だ」 「その様子が気に食わなかったからこそ、やすっちや苺花ちゃんには『奴らのようになるな』と堂々と言えたわけだ。あそこまでさ」 「………………!」 なんなのあの人。だったら……あの人さえいなければ! 最初から全部すんなり解決していたってことだよね! 翔太郎さんも翔太郎さんだよ! その片棒を担いで、諫めることすらしないで……信じてくれ!? 馬鹿じゃないのかなぁ! 「なのでやすっち、悪いけど兵糧攻めは中止だ」 「その人達も守れなきゃ、正義の味方とは言えないわけですね」 「そうそう。それにほら、ショウダウンなんでしょ? だったら気張らなきゃ」 「もちろん私達も全力で力を貸すよ。なんとかハッピーエンド、ゲットしちゃおうか」 「……助かります」 それで恭文くんは……うん、見過ごせるわけがないよね。その人達が本当にえん罪なら、助けなきゃいけないし。 とすると、やっぱりテラーとアナザーウィザードの打破からだけど……そうだ、蒼姫ちゃん……この子に一つ確認したかったんだ。 「ねぇ……あなたの方で、恭文くんと苺花ちゃんのリンクを切ることは」 「それは……できる。 そもそも恭文君が変身したとき、私も絡んでいるし……なにより恭文君と苺花ちゃんの答えは“違う”から」 ≪そこんところで線引きすれば、苺花さんの巻き添えでこの人がーというコースは消えるんですね≫ 「それは大丈夫。というより、ガルドスもそれを……君の中でしっかり明文化させるために、立ちはだかってくれたし」 「……ガルドス……」 そっかぁ。最初からあの人、恭文くんのために……だから魂の闘争で、言葉と想いをぶつけ合ったんだ。 だったら、そこは大丈夫として……次だよ次! 「ならあなたの方で、苺花ちゃんの変身を止めるのは」 「……そっちは無理だよ」 そうしてあの子は、悲しげに瞳を落とす。 「答えが違うって言ったよね? あの子のそれが希望なのは変わらない」 「……希望……?」 「倒して止めるしかない。 でも幼い身体が、最上位ランクのメモリブレイクに耐えられるか!」 「結局奇跡の魔法でもない限りはってことかい……! 恭文、どうするんじゃ」 「実験しかないでしょ」 ――こうして私も、恭文くんも、改めて腹を括ることになった。 「いきなり苺花ちゃんでメモリブレイクを試すのは怖すぎる……。 苺花ちゃんと僕のハイドープ化は、鳴海荘吉のときと違って物質変換でも戻せない……。 だったら“類似例”で、安全なメモリブレイクができるかどうか試すのが適切です」 「言うとることは分かるが、そんなもんどこに」 「テラーがいるじゃないですか」 「…………はい……!?」 「いや、だから……テラーとアナザーウィザードを、同時に相手取るんですよ。 その上で、アナザーウィザードには“恐怖の記憶”を使ってもらいます。それでメモリブレイクできるかどうか試すんです」 苺花ちゃんを助けるために、苺花ちゃんを切り捨てる……その矛盾も成立させた上で、奇跡を起こすため、腹を括る。 「だから先生には囮になってもらうんですよ。 当然そっちに走りやすい布石として、鳴海荘吉を現場に放り込みますし」 「ちょ、まてい! つまり、お前さんが見込んだ奇跡の魔法は」 「テラーです」 「……」 「しかもテラーとミュージアムを潰せば、苺花ちゃんを“魔導書”からも切り離せる。実験結果は問わず一石二丁ですよ」 「い、一応……聞くぞい? もしそれで、実験結果駄目で、苺花ちゃんをこう、ぶち殺すしかないーってなったら」 「嫌だなぁ、先生は……。 僕、ちゃんと、苺花ちゃんの遺書は送りましたよ?」 そうしなきゃ私達は、まず落とし前を付けられない。 「僕の安全さえ確保できたのなら、苺花ちゃんは二の次……それは最初から想定していましたしね」 「えぇ…………!?」 「だから大丈夫です。僕は鳴海荘吉じゃない。 テロリストには譲歩しないし、苺花ちゃんには奴らと運命を共にしてくれと言い切れます」 「言い切るなぁ! というかそれ、多分お前が一番言っちゃ駄目なやつぅぅぅぅぅぅぅぅう!」 「まぁまぁ……蒼姫も一緒ですから」 「やめてぇ! 私を巻き込まないでぇ! というかなんで!? それでどうして答えが揺らがないのかなぁ!」 「苺花ちゃんを助けるのは、僕が個人的に、命を賭けてやる“我がまま”だからだよ」 そうしなきゃ私達は、まず落とし前を付けられない。 「ミュージアムの崩壊が“どう足掻いても覆しようがない決定事項”になった上で、私達が勝手にやることじゃなきゃいけないんだよ。それなら“誰も文句なんて付けようがない”」 「風花ちゃん……」 「なので……僕はやるよ、ふーちゃん」 「うん、分かっているよ」 こんな下らないことで、たくさんの人を傷つけた骸骨男とその金魚の糞に。 「でも約束したとおり……一緒に、だから」 「……」 「私達の願いだもの――!」 「うん……そうだね」 恐怖に縛られた博物館と、そこに匿われた魔導師に。 なにより……今まで私達を馬鹿にして、踏みつけてくれたこの世界に……私達は、ここで一つ落とし前を付ける。 (その20へ続く) あとがき 恭文「というわけで、ガルドスとのバトルも終わり、蒼姫も無事に登場」 (それでようやくアシュライド・マ・グーも本編に出せた。アイディア、ありがとうございます) 恭文「そして苺花ちゃんには……わたしのー♪ お墓の前でー♪ なかないでくださいー♪」 蒼姫「しゃらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぷ!」 フェイト「そうだよ! 台なし過ぎるよ! というか人の心をどこに置いてきたの!?」 恭文「あの辺」 フェイト「拾ってきてぇ!」 (蒼凪荘も大混乱です) 白ぱんにゃ「うりゅりゅりゅ……うりゅ♪」(蒼姫の肩にぴょーん) 蒼姫「ひゃあ!? あ、あの……あ、ふわふわで柔らかい……」 カルノリュータス「カルカルー♪」 カスモシールドン「カスカスー♪」 どらぐぶらっかー「くぅー♪」 蒼姫「わ、あの……みんな、ちょっとずつで! あの、慣れてなくて……うぅ……!」 ライガーゼロ『がおー』 蒼姫「さすがにサイズ差あるので丁寧に−!」 (蒼凪荘の動物さん、歓迎モードです) フェイト「うんうん、蒼姫ちゃんもよろしくね。えっと、キャラ設定がこんな感じで」 ◆◆◆◆◆ ・蒼姫(イメージCV:結城萌子さん) 恭文(Ver2020)がうちに宿している別人格。その正体は六才のとき、ミュージアムの実験により差し込まれたガイアメモリ≪ミュージアム製旧世代ウィザードメモリ≫の意識……と思わせて、実は地球のデータベースに存在している魔導師の記憶そのもの。 (そもそもウィザードメモリは、ドーパントに変身することでフィリップのような『地球の記憶にアクセスする能力』が本質であり、記憶のコピー能力はその表層をすくい取ったものにすぎない。 そのため記憶そのものに人格を持たせ、適合者やその行動にある程度の制限をかける形を取っている。言うなれば地球が生み出したデータベースの門番……その一人) 例外中の例外であり完全な想定外ではあるが、紆余曲折あって恭文にその意識を移し、共に世界と向き合うことを決める。 これにより恭文(Ver2020)は地球の記憶との完全適合を果たした、ミュージアムの想定すら超えた新人類第一号として覚醒した。 ただし蒼姫自身は恭文が人間としての枠を外れることはよしとしておらず(というより、ウィザードメモリ自体が生きた人間だからこそ使える能力)、六才当時の恭文に負担が大きすぎるとして、そのまま休眠を決断。 とはいえ寝ている間も恭文の様子は見られるし、限定的な形で起きることもできるので、そこまで悲壮感はなかった。そうして自分が恭文と一緒にいる時間を積みかさね、いつか共に歩く日々を楽しみに過ごしている。 (なお、恭文の体格が小さいのやらは蒼姫の生命維持分のエネルギーも分け与えているため。覚醒後は蒼姫自身の食事や睡眠でその辺りを賄えるようになったため、多少改善) ・蒼姫の性格 自身がガイアメモリの中でも枠から外れた化け物という自覚からか、内罰的で落ち込みやすい。結局恭文に助けを求めたことについても後悔気味。 が、自分を受け入れた恭文がどう考えても“まともではない”上、しゅごキャラ達も(というかヒカリとシオン)が同じくなために、へこんでばかりもいられないとツッコミ気質にシフトしていく。 なお、恭文には『自分を受け入れたからってなにかを諦めるのはなし』と厳命しており、それが初手でとんでもないルートを開くことに……。 ・蒼姫の姿見 蒼にも見える黒髪と動きやすい和服(というか巫女服)。華美な礼装というよりも、武術家のそれに近いシンプルな色合い。そしてどたぷ〜ん。 これは恭文の中にある御影や『お姉さん』の記憶を奪っていた関係から、そのイメージも……というかゆかなさんのイメージまでもフィードバックされたことによるもの。 そのため蒼姫自身も御影の使う技をある程度放つことが可能。 (本覚醒後は通常の衣服を着替える方向にシフトした) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ フェイト「……やっぱり声は違う……」 恭文「というかお姉さんの声がこっち……かもしれない」 フェイト「そうだった。それも、障害が絡んであやふやで……うぅ……!」 (閃光の女神、ぎゅー) 恭文「な、なぜぎゅー!?」 フェイト「いいの! いいから……うぅ……!」 優「ほんなら、うちも……ぎゅー♪」 恭文「優!?」 フェイト「ふぇ!?」 優「いやぁ、やっぱり恭文くんは抱き心地えぇなぁ。それにフェイトさんもえぇお山で……」 フェイト「ふぇ! す、すりすりは駄目−!」 優「うちも触ってえぇですよ? 触った以上触られる覚悟はありますし」 フェイト「はやて二号だー! ヤスフミ−!」 恭文「うん、知ってた」 蒼姫「……というか、私を無視しないでー!」 (こうして蒼姫も、シチューを食べながら蒼凪荘の仲間入りをしました。 本日のED:VESPERBELL『RISE』) 恭文「なお本条隼人さんについては、Wの正当続編である風都探偵を参照してください。 ……思えばこのとき裁判に引っ張り出しておけば楽だったかもしれない」 鷹山「言っていること非道だけど大丈夫か……!?」 恭文「大丈夫ですよ。(うったわれるーものー♪)ですから」 鷹山「なんだと!?」 大下「でもそれを潰しておけばって言ってのけるやっちゃんェ……!」 鷹山「人の心がないのかよ……!」 恭文「というかよく分からないんですけど。僕は苺花ちゃんに遺書も書いているし」 翔太郎「お前と一緒にするなぁ!」 恭文「それはこっちの台詞だよ」 翔太郎「うあぁあぁああぁぁあ……!」(頭を抱えて打ち震える) 恭文「というかね、おのれの知り合い(おっれたちうったわれるーものー♪)多すぎるから。 津村真里奈さんもそうだったし、鳴海荘吉もそうだし、そのうえ本条さんもだよ。ときめさんもときめさんでヤバい経歴だったし」 鷹山「駄目押しするなよ! え、というかときめって左の彼女だよな! それが」 恭文「それがですねぇ、実はときめさんって(へへいへーいー♪)だったんですよ」 鷹山「おいおいおいおいおいおい……!」 恭文「だから僕はときめさんの遺書もそのときしたためました」 鷹山「容赦なさすぎるだろ!」 翔太郎「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」 大下「よしよし! 左は悪くない! やっちゃんがその辺りシビアすぎるだけだからな!」 いちご「うん……そこはね、もうちょっと動揺しようか」(頭なでなで) (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |