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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
その2.5 『断章2017/改造人間』



魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s

その2.5 『断章2017/改造人間』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


全ては計画通りだった。そこでお父さん達と仲直りして、あとはヒーローな探偵にお任せして、全部解決―なんてコースはあり得なかった。


「……でもほんと、つまらなかった。あんなクソ弱いなんて……」

「あ、蒼凪くん……!?」

「違うんだよ。僕が求めているのは、もっと骨身を……命を削り合うような戦いなんだ。そういう戦いなら本気で楽しめる。怖さの半分くらいは、徹底的に笑って戦える。
だから奴はいらない。薄っぺらい……紙一枚の虚勢。無頼を気取っているだけの偽(にせ)。狂気の沙汰に踏み込める度量もない。そんな奴になぜ僕が譲らなくちゃいけない。
――僕はあの怖い奴と……テラーっていう帝王を、そいつが作った博物館と楽しく戦いたいんだからさぁ――!」

「言っていること相当クレイジーだけど大丈夫!? そんなの異常だからね!?」

「田所さん……そういう話をするなら、僕はこう返すしかありませんよ?」

「なに!? この状況で論破できる手段があると!?」

「――田所さんがそう言い切る良識や常識が“正常”で絶対的なものだと、一体どこの誰が保証しているんですか」

「え……」

「……ヘルシングかな?」


あ、山崎さんは知っているのか! それはなにより……いや、ここはいいか。今重要なのはたった一点。


「まぁ言い切ってしまうのも仕方ないでしょう。だって田所さんが所属しているホリプロ、凄い事務所だし。大手だし。なんなら神だし」

「事務所を巻き込まないで!? そこ一般常識…………話がどう答えても戻るぅ!」

「え、ちょい待った……田所、ホリプロにいるのか!?」

「それ、和田アキ子とかがいる事務所だよね。あの頃はーって」

「ホリプロのタレントスカウトキャラバンですよ。実は二〇一一年に、次世代声優アーティストオーディションっていうのもやっていまして」

「……あれでか!」

「あれでです。で、田所さんはそのオーディションを突破して、グランプリに輝いた凄い人なんです」

「「なんだとぉ!」」

「ちょ、蒼凪くん!」


まぁまぁ田所さん……事実なんですから。ググればすぐ出てくることなんですから。問題ありませんって。


「だがホリプロ、そんなことしていたのかよ……!」

「していたんです。というか、そのファイナリストとも鷹山さん達は会っていますよ?」

「なんだと」

「ほら、僕が一度寝込んだ後、雨宮さん達を心配して顔を見せた人達がいましたよね。まちこさんと木戸さん」

「あぁうん。あの……凄い声が可愛らしい子と、やっちゃんと同い年くらいに見えた子か」


うん、実は僕がアントラインを倒した後……ホテルのベッドに運び込まれてすぐにね、やってきたんだよ。ちょうど二人ほどの……ビリオンの出演者さん二人が。

あのときのライブに出演はしていなかったんだけど、核爆破未遂事件のことで心配してね。激励ってことで雨宮さん達にお土産を持ってきてくれたんだよ。

ただ、早めに本日の仕事が終わり、その移動中に……ホテル移動やら、アントライオンの襲撃やらが立て続けに起こったので、向こうも大混乱。


なんとか港署……水嶋さん達に保護を受けて、それで一度合流して……その後は暗くならないうちに、警察のエスコートを受けながら自宅に戻ったんだ。


「あの子達も優しい子達だったなぁ。……翌日も朝早くから、撮影やらアフレコやらで立て込んでいたっていうのにさぁ。ほんと合間を縫う形で、プライベートでだもんなぁ」

「それは他の出演者も同じだったんだが……蒼凪、あの二人がそうなのか!」

「グランプリは田所さんですけど、ファイナリストに残ったメンバーのほとんどは事務所所属を決めているんです」

「おいおいおいおい……!」

「ヤバ、俺達は普通に和田アキ子の後輩と話していたのか!」

「井森美幸さんもいますよ? 榊原郁恵さんだって」

『お料理BAN!BAN!』

「ちょ、盛り上げないで! ヤバい……視線が痛い! 滅茶苦茶私のこと見てくる!」


まぁまぁ先輩。いいじゃないですか。凄いことなんですから。もう本当に凄すぎることなんですから。それで一線で活躍しているんですし。

……あ、一つ訂正しておかないと。


「あと大下さん、木戸さんはもう二十歳ですからね? 僕と同い年っていうのは失礼です」

「マジか!」

「え、じゃあ蒼凪……まちこって子は」

「以前二人に教えたプリキュアシリーズの最新作≪キラキラ☆プリキュアアラモード≫の挿入歌をうたっています。というかキャラクターソングです」

「「すご!」」


鷹山さんと大下さんですら戦々恐々とするホリプロの力。そりゃあビビるだろうさ。僕も知らない立場だったらびくりとするよ。


「それは本当に凄いですね……。いや、うちの娘……美雪も好きで見ているので、よく分かります」

「赤坂さん、俺も分かったよ! 確かに神だ!」

「田所もいずれ、あの頃はーって言うんだな! あの頃はありがサンキューってうたうんだな! ピーターパンになるんだな!」

「プリキュアみたいな超国民的タイトルに出るかもしれません。
主題歌とかうたっちゃうかもしれません。
キュアありがサンキューになるかもしれません」

「「「おぉ……!」」」

「そんなのなるかぁ! いや、プリキュアに出られたらそれは光栄だよ!? 主題歌担当も!
でもキュアありがサンキューってなんだよ! なんでビリオンでのやらかしとコラボしてんだよ!」

『…………ありだ……!』

「ありなわけあるかぁ! お前ら業界人としてツッコめよ! この非常識に! 鷹山さん達が本気で信じるだろうがぁ! 赤坂さんですらこれだぞ!」


なお大下さんと鷹山さん、この一か月で……まずは≪ふたりはプリキュア≫を履修した。そのため大下さん、着メロが初代のOPになっていて、周囲をビビらせているそうで。

それを鷹山さんは呆れ気味に見ているけど、僕は知っている。購入したばかりのスマホ……待ち受けが美墨なぎさになっているのをね!


「というかね、そこじゃないんだよ! 話の主軸は! 君のクレイジーさだよ!」

「なんでしょうか、神の眷属」

「ホリプロが神って流れからちょっと外れてくれる!? というか……あの、恩人だって聞いていたんだけど……」

「恩人ですよ? この後徹底的に破滅して、風都市民に“こんな奴にはなりたくねぇわ”と唾棄される絶対悪……その見本に立候補してくれたんですから」

「えぇ……!?」

「……そう……鳴海荘吉が恩人だと言うのは表面上の話。もっと言えば反面教師という意味でだ」


そう、一応は感謝している。恩人だとは思っている。

でもそれは言った通りの流れ。それ以上でもそれ以下でもないし、僕の戦いを邪魔するなら殺す……その程度の存在だ。


「彼の“甘さ”がそれだけの状況を呼び起こしていることに、蒼凪恭文は……相当にキレていた。
母さんが早々に折れなければ、間違いなくその場で、誰がどう止めても、鳴海荘吉を殺していただろう」

「でも……お父さん達も、本当にそんなことしたかどうかも分からないし」

「田所さん、安心してください。
……だったら裁判で無罪を勝ち取ればいいんですよ。ミュージアムの一員ではないと。
通報しなかったのも、僕が確保していた証拠品のメモリを勝手に奪ったのも、隠蔽工作ではないと」

「それ、まさか言ってはいないよね……!」

「それが嫌そうだったので、僕が両目を抉り、腕を根元から引き裂くので、笑って許せと……それができるならOKとも言いました。なぜか半狂乱になりましたけど」

「なんで代案を出した!? あとそれ拷問だよ! どん引きな違法行為だよ!」

「だからきっちり縁切りした上で電車に飛び込めとも提案しましたってー。先輩はお茶目さんですねー」

「その三択は余りにヒドすぎるって気づいて!? あとこの至極当然なツッコミがお茶目に聞こえているのはおかしいからな! お前は根っこから狂っているからな!」


田所先輩が心配してくれるのはまぁ嬉しいし、申し訳なくもある。だけど……そこだけは譲れないと、また塩キャベツを放り込んでがりがり食べる。


「んぐ……だから先輩、裁判に持ち込むぞーってことが前提の三択ですよ。
それにほら、もうそうでもしないと、お父さん達やおじさんが、本当に無罪かどうかも分かりませんし」

「そこまで進退窮まって……ちょっと待って! 今更だけど先輩ってなんだ! 私はお前みたいなクレイジーな後輩を持った覚えはないからな!?」

「というか、ほら……そうじゃないと公共機関の通行を止めたことへの慰謝料とか、僕に請求が回るじゃないですか。大迷惑でしょ?
まぁ僕は“子どもだからよく分かんないー“で逃げるつもりでしたけど」

「手厳しいってレベルじゃないよ! というか……それだと、あの……!」

「……苺花ちゃんは、その請求がお父さんにのしかかることも計算した上で、飛び込もうとしていたんです」

「………………」

「だから僕も見習いました」

「そこ見習うなぁ! というか君達、全体的にヤバい! 私、六歳のときそこまでじゃなかったよ!? なかったはずだよ!?」


田所先輩も頭を抱えるかぁ。

まぁ苺花ちゃんも苺花ちゃんで、キレると怖いタイプだから……まぁそれくらい腹に据えかねたってことなんだけど。


そう、据えかねていた。据えかねていたんだ。


あの段階で気づいていたのに……できることは、ほんと少なくて。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


後悔は消えない。できることは、やり方はもっとあったのに……あったはずなのにって。

それも今という未来への反省材料として、やっていくしかないんだけどさ。いつもその繰り返しだ。


だけど……このときは、余計にそういうものが強くて。


「でも……そこで“あんな子”呼ばわりって……もしかして嫌われていたの?」

≪苺花さんも事情が結構込み入った人なので、面倒には感じていたようです。この人が患っていたHGSやら発達障害の絡みもあって、なんとか“普通の枠”に押し込もうとしていたからよけいに≫

「……それ、あんまりいい意味に聞こえないなぁ。ようするにそういう普通じゃない人とは付き合うなーってことだよね」

≪だからご母堂様達はタカをくくっていた。それにこの人や苺花さんが気づくこともないし、大人な自分達には逆らえない。犯罪になるようなこともしていないのだから、悪く言われる心配もないと……≫

「……おじさん達がこの件を心から反省し、恭文くんと苺花ちゃんに土下座していなかったら……本当に家庭崩壊もあり得ました。私達も助けるつもりはなかったし」


そしてふーちゃんもお怒りだった。というか、ふーちゃんが特にお怒りだった。だからもうほら、髪がメドゥーサみたいに揺れて……リインじゃあるまいし。


「……蒼凪くん、助けるつもりがなかったって……」

「……ふーちゃんのお姉さん……風海さんって言うんですけどね? その風海さんや豊川のお父さん達……あと近所に住んでいた日高舞さんっていう人も、いろいろ相談に乗ってくれていたんです。
ふーちゃんもその辺りは知っていましたし、お父さん達にも“それはどうなのか”って散々忠告してご覧の有様だったので」

「自業自得だと見捨てられたわけかぁ」

「で、同時に鳴海荘吉ともどもミュージアムと共謀している可能性もあるので、どう足掻いても拘束されることは免れませんでした。当然それまでの職にも影響が出る」

「それはさすがにこじつけじゃ」

「ミュージアムは僕がHGS患者であることも、発達障害を患っていることも知っていました。その段階だと発達障害の認知度もそこまで高くないのにです。
しかも今話した通りの状況なので……被害者を装い、僕をミュージアムに売り飛ばしたのではーってことは、十二分に考えられた。最低でも情報を漏らした可能性は高かった。で、僕も同意見でした」

≪ただ、それは半分以上“保護”目的です。事件の中心が風都である以上、私立探偵で一階の個人である鳴海荘吉に、ご母堂様達の身辺保護はできませんし?
……この人がミュージアムにとってそこまで重大なアイテムを使いこなした以上、さすがに放ってもおけませんでした≫

「まぁ、そっかぁ。相手はそんな事件を起こす犯罪組織だし……でもなぁぁぁぁぁ……!」


まぁまぁ先輩、そんなに頭を抱えないでください。世の中なんて救いのない方が多いんですから。


「でも日高舞……え、待って。まさかあの、伝説的なアイドルの」

「その人です。実は引退後、旦那さんと娘さん……愛ちゃんともども引っ越してきたのが、うちの近所で……」

「やっくんの突っ走りや激しいところって、その舞さんの影響が大きいみたいなんだ。
やっくん、どちらかというと大人しくて物静かな子だったそうだから」

「このときもいろいろ相談に乗ってくれましたし、最悪“うちの子になればいいから”とも言ってくれたんです。それはほんと、感謝していて」

「そうだったんだ……。でもそうすると、余計に鳴海さんは……火に油を注いでいるような」

「むしろ笑いながら注ぎにいっているとしか思えませんでしたよ……。
元はといえばおじさんの対処が原因で起こった巻き込まれ事故なのに、それに対しての法的責任も放り投げて、正義面でお父さん達の無実を訴え、劉さん達に人道を説くんですよ?
もうはっきり言いますけど頭がおかしいです。狂っています。あんなのに関わりたくない」

「言いぐさがヒドすぎる……!」

「まぁそこは君がいろいろ特殊なせいもあるよ?
……とはいえ恭文くんにとっては、そこが根っこだったんだよね」


するといちごさんが、落ち着かせるように僕の頭を撫でてくる……う、うにゃあ……気持ちいい……。


「見過ごして……見捨てることは、自分がいつかそうされるリスクも背負うし、どんな理由があっても見捨てたものが生み出す可能性ごと潰すことになるから」

「……だから、いちごさんのお母さんも随分驚かせちゃいましたよね」

「私も驚いたよ? でも……実際鳴海荘吉さんだけの対処は、無理だったのかな」

「結論から言えば無理だ。数的にも、対処の内容としても……。
なにせ園咲家は冴子姉さんと若菜姉さん……飼い猫のミックに至るまで、強力なメモリで武装していたしね」

「…………おい、待て……猫がか!?」

「それがホッパーと並ぶミュージアムの殺し屋だったんですよ……。
スミロドンメモリっていう超スピードで動ける虎型怪人になって、ぐさりと」


鷹山さんに答えながら、伊藤さんをちらり。すると伊藤さんが、ボブロングの髪を揺らして首を傾げてきて。


「……もしかして、気にしてくれている? というか、結構やらかして……いるよね! ツートップの殺し屋だしね!
というか……え、猫でメモリ使えるの!?」

「スミロドン……虎のメモリだからこそですよ。……もちろん例外中の例外ですけど」

「蒼凪、どうした」

「伊藤さん、ファンや同業者からそう呼ばれているんです。名前からもじったあだ名で」

「あ、そういうことか。……ちなみにその猫、今は」

「鳴海探偵事務所の守護神が如く、のんびり暮らしています。……さすがに裁判へかけようもありませんでしたし」

「むしろ動物虐待で飼い主を裁く案件だろうしな……」


今ミックは鳴海探偵事務所で、威風堂々と暮らしている。メモリさえ使わなければ、翔太郎よりハードボイルドに見える猫だしね。実際ハードボイルドだし。

……でも猫の寿命としてはとっくに限界値を迎えているのに、全然衰えないんだよなぁ。メモリの影響では……まぁそれはそれとして。


≪しかもその狂った一家が使うメモリは、ゴールドメモリと呼ばれる最上級クラス。
ドライバーがなければ……伊佐山さんのように直指ししていれば、死亡すらあり得る危険物ですよ。ウィザードメモリもそうですけど≫

「だから赤坂警部だけでなく、お前も『東京』の出資増額に絡んでいる……その点は疑いがないわけか」

「あのときもおじいさん、アピールって言っていましたからね。……休養期間中に、土産片手に確認してきましたよ」

「土産だと?」

「えぇ。お兄様、琉兵衛おじいさまには今もとても気に入られていますし、仲良しなんです」

「収監されて久しいが、美咲涼子の件もあって改めての保護なども必要になったからな……。その担当としては適任なわけだ」

『えぇ……!?』


シオンとヒカリが補足すると、みんなぎょっとして……まぁそれはそうかぁ。加害者の大本と、被害者が仲良しさんってかなり異例だし。


「まぁそこはまた、話の流れに沿って説明します」

「その方がよさそうだな。
だが蒼凪、それなら……お前の前に直差しされた被害者は、なんで生きているんだ」

「だよね。やっちゃんは過剰適合者でなんとかなったとしても、その人は違ったわけでしょ?」

「そこも“コピー能力が大嘘“って点に絡むところなんです」

「話せることかな」

「えぇ。というか……そのときシュラウドさんも触れてくれたことなので」

「それが、改造人間……」

「……えぇ」


――というところで、突如音が響く


≪〜〜〜〜♪≫

「……なんだ、この笑点のテーマは」

「すみません、僕です」

「お前かよ!」


スマホを取りだし、メッセをチェック…………ん……!?


「恭文くん」

「……ウェイバーから、魔術での探査依頼が来ている」

「ウェイバーさんから? え、でもLINEのメッセージって……あ、ウェイバーさんっていうのは、恭文くんに魔術を教えてくれた先生です。今は魔術協会の総本山である時計塔で、講師としても活動しているんですけど」

「ちょっと待て、風花。そこを説明していいのか?」

「そうそう。俺達、やっちゃんのプライベートには配慮するよ?」

「大丈夫です。……この話の中でも、すぐ登場しますから」

「するのかよ!」

「でも、魔術の仕事を依頼って……こんな気軽にメッセなんて、普通は」

「ないね……」


いや、有効ではあるんだよ。魔術師って現代機器を忌避するところがあるから、逆に探知されにくいとか、調べにくいとかはさ。

でも……問題はメッセの内容だった。


「え、なにこれ……」

――今回は魔術協会からの依頼だ。私は仲介役に過ぎない。……報酬は暫定のものとなるが、三億用意している――

「……依頼料三億ぅ!?」

『ぶぅ!?』


ちょ、ふーちゃん、声が大きい! さすがにみんな驚くから!


≪しかもきな臭くありませんか?≫

――話はイギリスの時計塔に来てからだ。それまで詳細は説明できない……なので、三日以内にこちらへ来てほしい。便についても帰りのものを含めてチャーターする。なお報酬は成功時に限りではなく……全額前払いで現金支払いだ――

「全額前払いの現金一括……!? しかもイギリスの行き帰りはチャーター便!?」

「え、なにそれ! 魔術師さんってそんな稼げるの!?」

「まぁ、物によっては金額ではお話できないようなアイテムを扱う場合もありますから……でもこれは」


雨宮さんに答えながら、一応返信を打っておく。


――療養中ということは知っているよね? 戦闘はまたいちごさんが泣くから、しばらく無理だよ……!?――

「しかもウェイバーには、僕が療養中だって話もしていたのに……あ、もう返信来た」

――承知している。なので魔術による探査のみだ。今のところはお前に戦ってもらう必要もない――

――それ、状況が悪化すれば引っ張り出してドンパチする可能性があるってこと?――

――それも、現地で話す。これ以上は説明できない――

≪一体なにがあったって言うんですか。しかも魔術協会から直々の依頼ですよ?≫

「……嫌な予感しかしない」

≪よかったですね、他国の美女とふれあいまくりですよ≫

「さすがにそこで全力はない!」


まぁ、こっちはもう……そうだよね、やるしかないよね。なので素早く返信して……っと。


――分かった。ひとまず明後日の朝一番には出発できるよう、準備しておく。
今は例の話を改めてしている最中だから、それで最短。チャーター便の詳細くらいは早めに送って――

――了解した。そのスケジュールに合わせて調整し、改めて連絡する。……では、現地で待っている――

「……これでよしっと。
すみませんでした。話を続けましょう」

「……恭文くん?」


あ、ヤバい。いちごさんがまた神刀を抜いて……!


「いちごさん、分かっています! ちゃんとあの、戦闘NGっていうのは念押ししていますから!
というか、知っているでしょ!? ウェイバーの周囲なら僕より強いのがごろごろしているし!」

「え、蒼凪……そうなの? 強いのがそんなにいるの? 魔術師って」

「僕の資質が平均的というのもありますけど……まぁ、ドーパント程度には尖ったやつらなら、ごろごろ」

「……ごろごろ……」

「ごろごろ、ですね。というわけで、イギリス土産もまた買ってきますよ」

「だったら私も行く」

「いちごさん!?」


いやいや、待って! 眼が本気すぎる! というかお仕事……駄目だ、それすらすっ飛ばす勢いで心配されている!

袖口をクイクイ引っ張って、絶対行くって顔だし! これは話し合わないと……話し合わないと!


(本編へ続く)






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