小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作) 西暦2017年6月・神奈川県横浜市その4 『Wの約束/融合対傷』 魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020・Episode 0s 西暦2017年・神奈川県横浜市その4 『Wの約束/融合対傷』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ……風花ちゃん、完全にお怒りだなぁ。いや、ヒカリちゃん達もだけどさ。 でもそれは当然だよ。わたし達だって……ああもう、駄目駄目! こういうときこそわたしがしっかりしないと! 「……とはいえ、それについては今どうこうできる問題ではない……よね。うん、一旦置いておこう」 「才華ちゃん……」 「わたし、やっくんに“力になる”って約束しましたから」 「……そうだったね」 不安げなフィアッセさんには、大丈夫だと笑って胸を張る。 ……確かにわたし……やっくんのことは好きだけど、そういうお付き合いって感じじゃない。可愛い弟って感じだね。 でもまいさんを助けてくれて、いちさんも助けてくれて……わたしだって、見返りを求めず助けてくれたことがあってさ。とても信頼はしているし、やっくんが困っているなら力になりたい。 だから頭をクールに……伊佐山さんが犯人ってことで、みんな冷静さを失いやすくなっている。こういうときこそ情に流されたら駄目なんだ。 「話を聞いた印象だけど……伊佐山さんも伊佐山さんで、ただ利用されたって感じじゃないよね」 「そこは俺とタカも……まぁ同じ印象だよ。実際ほとんどの事件は猪熊修也に押しつけて、自分はなにもしていなかったわけだし? 察するに最初から猪熊の単独犯に仕立て上げるつもりだった……でも、誤算が生じたわけだ」 「ドーパント事件にも精通したやっくん達が……フィリップ君達が絡んだこと」 『自分達の能力を考えれば、普通の人間には対処できない。しかし向こうはそれを知った上で、対処できると自信たっぷり それに天原舞宙……君や絹盾いちご、春山才華から、異能事件が専門の忍者だとも聞いていたからね。余計に警戒したわけだ』 前々からそういう話はしていたし、まいさんも気軽にみんなへ話していたからなぁ。まさかそれがこう尾を引くとは……そこで一つ引っかかって、拍手を打つ。 「フィリップ君、伊佐山さん達は水橋参事官の身分とかは」 『その辺りはロックがかかっていて、閲覧できなかった。そちらの……伝説の刑事はどうかな?』 「水橋達の自宅やら内調の資料やらは確保して、調査しているが……今のところそれらしいものは出ていない。 が……それが答えと言えるかもしれない」 「美咲涼子さんと同じですね。“記録に残らない司法取引“なりで、やらかしたことが無罪放免になるよう調整する……そういう約束をしていた。 なら、もしかしてその約束が今も有用だと思っている……!?」 『なんにせよ彼女はまず彼らを猪熊に襲わせ、その印象を植え付けた上で、本牧支店襲撃を示唆。 そのままなし崩し的に、猪熊がメモリブレイクされ、抵抗できなくなったところを狙い、始末した』 「同時に、やっくん達の能力も確かめたわけだ。本当に対処できるかどうかを……」 それで本当に対処したから、殺しにかかった……まぁみんな手慣れているから、針をひょいひょい飛ばす程度じゃあ潰せなかったわけだけど。 あとは猪熊さんへの口封じを優先したっていうのもある。もし本当に、咄嗟に……戦闘中のちょっとした隙を突かれていたら……! 「それに伴って彼女のアリバイも調べてみたが……猪熊が本牧支店を襲撃した前後、彼女を見た人間はいない。ホテルも裏口から抜け出していた。そこは映像で確認できている」 「そこからの行方は」 「水嶋達が確認中だ。彼女についても内密に見張っている……っと、そこで検索小僧に聞きたかった。 メモリの毒素が精神を化け物に変えていくというのなら、今の伊佐山奈津子は」 『人の心を失いかけている。それも現在進行形で』 「……そうか」 「ならさ、変身前に俺達でぐいっと捕まえちゃうのはどうかな。ファンタジーに頼らなくても済むし」 そう、それが現実的な提案だった。 確かに伊佐山さんは凶悪なドーパントかもしれないけど、変身さえしなければ普通の人間。メモリを使う前に取り押さえれば決着できる。 そうすればやっくんも無茶はしなくて済む……そういう易しい提案なのは、分かるんだけど。 『それも甘い考えさ、大下勇次』 「……どういうこと?」 「もう、変身しなくても能力の一端が使えるんだね」 『……君は蒼凪恭文とも親しいし、思考の流れはむしろ彼やボクに近い。気づいて当然だ』 「今回ばかりはきついけどね……!」 褒めてくれるのは嬉しいんだけど、正直苦笑いしか返せなかった。 ただやっくんが、私達の衝撃も……最悪の可能性として予測した上で、対応を考えていた。だから飲み込めるだけでさ。 でもまさか……いいや、そういう話はついさっきしていた。だからわたしも気づいたんだけど……ああもう! 「フィリップ君、メモリの概要を……改めて説明して」 『インジャリー……損傷の記憶。 それに傷つけられた存在は、“傷の治療そのものを阻害し、停滞させられる”』 「最大HPをがりがり削っていくわけかぁ……」 地味に見えるかもだけど、かなり怖い能力だよ? 傷ってだけでも相当幅広く定義できるもの。 たとえば目が抉られたら? 骨が折られたら? 動脈とかの重要な血管・臓器が潰されたら? それがインジャリードーパントによるものなら、どれだけ手当てしようと絶対治らないってことだもの。止血すらもできないのは、対生物戦では驚異的だと思う。 ただ、これだけだと納得できない部分ができる。だから大下さんも眉をひそめて。 「ちょい待った。あれ、傷を止めるっていうか広げる感じだったよ? 俺とタカも記録映像は見たけど……だよな、タカ」 「……ここまでが概要ということか」 『彼女が受けた屈辱……“傷”とメモリの記憶が共鳴して、その能力はレベル3へと昇格。ハイドープとして覚醒している』 「やっぱり……!」 インジャリーって聞いた辺りから……碇専務達とのいざこざが引っかかった辺りから、予想はしていたけど……つい熱くなる目頭を押さえる。 ≪……ハイドープは、メモリの長期使用……または一定以上の相性を持つ人間が、ある種の超能力を獲得した状態です。 実際ミュージアムの首魁≪園咲琉兵衛≫も、テラーメモリの能力を変身しなくても引き出せました≫ 「それにやっくんも……ウィザードメモリと過剰適合したから、魔法とか魔術回路とかが一気に覚醒したんです。 だから本当に、生身であの人を捕まえるのは危険です! 引き出せる程度によっては、殺すことだってできない!」 「マジかよ……!」 「……そういえばインジャリーは『無礼、侮辱、名誉毀損、権利侵害』……そういう精神的な傷を意味する言葉としても使われていたな」 ……これはきっと、わたし達の罪だ。 「彼女は碇専務達から付けられた“傷”により、その力を強めたわけか」 『見晴らせている人員についても、強引なことはしないよう徹底した方がいい』 「そこは言い聞かせているが……改めて通達しておくか」 「なら俺は水嶋に連絡するから、タカは鹿沼達の方よろしく」 「あぁ」 伊佐山さんがそれだけ怒りを……傷を抉られたことで憎悪をたぎらせたのも、わたし達のためだ。 でもわたし達はそれに気づけなかった。ここにいたる段階まで、そんなことはあり得ないと油断していた……! やっぱりわたし的にも、もう引き返せない。それは……この絶望を察して、それでも頑張ってくれたやっくんへの侮辱だ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ……左さん達はエクストリームになれない。 照井さんも能力的に、一撃で仕留めなければ極めて危うい。お兄様はあの有様。 例えエクストリームになれたとしても、どこまで対抗できるか……正直引き際を弁える状況だった。 「…………伊佐山さん」 だけど、彼女は涙をこぼす。どうにもならないのかと……もう救われないのかと。 「どうして、こんな……」 「天ちゃん……」 「素敵な衣装を作って、みんなが喜ぶのが好きって……それで凄く楽しそうにしていたのに」 このまま悪意に振り回され、利用され、自分もその悪意の一部に成りはて死ぬしかないのかと。 その叫びが誰の胸にも突き刺さっていたとき……。 「…………この先の展開を」 「この先の展開を当ててあげようか……ショウタロス」 ショウタロスが一人飛び出そうとしていたので、そう声をかけ引き留めておく。 ……私ではなく、お兄様が。 ふらりとベッドから身体を起こし、のびをするお兄様が。 「おのれが決めろっつったのに……それをすっ飛ばし、また甘い考えを実行しようとしている。 伊佐山奈津子は自分達が見えるからと、無謀に近づき、危険にさらされる」 「恭文君!」 「おはようございます。……あー、よく寝た」 「ヤスフミ……!」 「それと一応言っておくよ? エクストリームやキャラなりを切り札にしているならやめて」 「あが!?」 ショウタロスがまたあごを外しかけたので、近づいて軽く左アッパー……強引にはめておく。 「げほ!?」 「能力の内容……それが拡大した場合の被害も考えると、エクストリームでもきちんとした対応が取れないかもしれない」 「だから、このまま諦めるのかよ……」 「だからっておのれみたいに甘ったるく流されても、なにもできない。……昨日もどうせ会っていたんだろ」 「昨日……ショウタロスくん、伊佐山さんと会っていたの!?」 「……デザインの勉強、していたんだよ。 もう寝る時間で、今日もリハがあるかもしれなかったのに……一生懸命、楽しそうによ」 でしょうね。きっとあなたが気づいたのも、そのときの様子でそれらしいことが漏れたのかもしれません。 そこをツツくことはあえてしません。それをあなたは言わなかった……それが彼女との約束かなにかなのであれば、触れるのは野暮というものです。 「アイツは……お前達との仕事が、夢みたいな時間を作る手伝いが楽しくて仕方ないって、笑っていた」 「……ここまで追い込まれた以上、彼女は始末するしかありません。しかもお兄様当人もキャラなりは無理だと言っている」 「だからオレが始末を付ける。話して、止めて……人の心を取り戻す……!」 「……あたしだって、できるって信じたいよ」 「天ちゃん……」 「でも…………でも、それで……こんなことが続いたら! 蒼凪くんだってこの調子なのに!」 「だから殺す覚悟もした上で対応するんですよ」 …………その言葉に、私も、お姉様も、ついため息を漏らす。私については右手で髪をかき上げ、笑ってしまった。 「まぁ、そうくるよな……もぐもぐ」 「お兄様がまだ勝負できる札が……勝ちの目があるというのであれば、聞くだけでも聞きましょうか」 「ヤスフミ! つーかお前ら!」 「先輩一人で、助けることも、殺すことも選ばず……というより“選べないことを当然としたまま”どうにかなるほど、伊佐山奈津子は軽いのか?」 お姉様がまた蒸しパンにかぶりつき……どうもお気に入りのようです。 とにかく蒸しパンをしっかり味わって問いかけると、ショウタロスが分かりやすくフリーズする。 ≪あなたが恐れているのは分かりますよ。雨宮さんにとってはでかいツケになるかもしれませんし? ……でも、あなたも、シオンさんとヒカリさんも、それじゃあなにも変えられないと知っているでしょ≫ 「…………」 「えぇ、知っています。“あのとき”私達が言ったことですから。 ――今ここで、一緒に戦わないのなんてあり得ない」 それは本来なら、私達の……ダブルの誓いであり約束。でも、今回はそれだけでは足りない。 強い思いを撃ち砕くなら、同じだけの思いが必要になる。だから……。 「というわけで雨宮さん、もし伊佐山さんへの気持ちが本気なら……よっと」 お兄様はベッドから立ち上がって、右手をスナップ。更に乱れたシーツを、桜守さんにかけ直す。 更に左手で十字型ウォッチ……に見えるデバイス≪ヴァリアントコア≫を取りだし、部分的にセットアップ。 両手をロイヤルブルーに包まれたガントレットで包み、更に羽織っていたパジャマや包帯を全て分解・再構築。 蒼い光に包まれたそれは、一瞬で同じ色の袴となって装着される。その姿に雨宮さんも、鷹山さん達も驚いて……。 「え、あの……今なに!? どうやって着替えた!?」 「忘れました? 僕はフリーの忍者……そして魔導師。ならこの程度は楽勝です」 『忍者と魔導師凄!』 「お兄様……」 「なので“伊佐山奈津子の暴挙を止めて、できる限り生かして捕まえる”……そう依頼してください。 ――これでもあの人を助けたい……そう思っている人達との折半で」 「依頼って、それでいいの!? だってあたし……」 「大丈夫です。諸経費と今後の治療費込みで……」 お兄様はヴァリアントコアを仕舞い、代わりに取り出した電卓をぽちぽちとたたく。 「こんな感じで」 それからぐいっと、その中の数字を雨宮さんに見せた。するとまぁ、数字とお兄様を分かりやすく見比べて……。 「…………結構、するね……!」 「内訳としてはですね、危険手当がこれくらいで、リクエスト料がこれくらい。 で、これから注文する食事の代金が大体これくらい……ある程度前後します」 「食事!? え、数万とか出ているんだけど!」 「ふーちゃん、悪いけど早急に……ルームサービスのメニュー、メインを上から下までずらっと注文して」 「え……わ、分かった!」 中に数字に雨宮さんが……のぞき込んできた鷹山さん達がぎょっとしている間に、豊川さんが急ぎ注文を走らせ……。 「ちょっとやっちゃん……どうするのこれ」 「食べて治すんですよ。 ……アルト」 ≪……ナノマシンの再生産は手間ですし、あんまりやりたくないんですけどねぇ≫ アルトアイゼンも携帯注射器≪アンプル≫が入った箱を取りだし、中を開く。お兄様はそのうちの一本を取りだし……。 「ん……!」 袖を捲って……眼を逸らしながら、肘裏にそれを突き刺し、中身を注入する。……それもぷるぷると、小動物のように震えながら……。 「えっと……」 ≪ナノマシン入りの注射器です≫ 「ナノマシン!?」 ≪これも次元世界の産物ですよ≫ ナノマシン……ヴァリアントシステムと同様に、エルトリアという世界の人達によってもたらされた技術の一つ。 体内に入ったナノマシンは、身体機能の健全化や治癒能力の加速……更に生体エネルギーを利用した独自のエネルギー運用術≪フォーミュラ≫の発生源にもなります。……これは違いますけど。 フォーミュラの発生源というか、その機構を持ち込むことは現在の管理局砲的にも問題があり、難しい部分があったんです。ただ、緊急治療・回復促進用に用途を限定すれば話は別。 再生治療の新世代技術として注目を集め、実用段階にあるのですが……そのサンプルをとある縁でいただき、いざというときの常備薬として持っていたんです。 ≪あとはこれでしっかり食事を取れば、ひとまず戦える身体にはなるでしょ≫ 「なになに……そんなのがあるなら、それでエクストリームとかは」 ≪いちごさんと舞宙さんとの約束を、揃って破らせるわけにもいかないでしょ≫ 「その約束も守って、本当の意味で解決だし…………ね……!」 「恭文君……いや、それより、あの……」 「んぅ……!」 「ああもう……注射怖いのに無理しないの」 天原さんが後ろからぎゅっと受け止めると、お兄様の震えがゆっくりと停止していく。……その間にナノマシンは注入完了。 使用済みのアンプルを引き抜き、ティッシュで刺し傷を押さえる。そうしつつ器用に空いた手でアンプルを箱に戻した。さすがに、この場には捨てられませんしね。 「アルト……シャマルさんには」 ≪もう連絡していますよ。悲鳴みたいな念話が届きましたけど、押し切ってリインさんを引っ張ってもらうことに≫ 「上出来……で、どうしますか? 雨宮さん」 「し、新情報が出まくって混乱しているんだけど……」 「仕事を通すための必要処置です。で、その諸経費も一応ここに含まれていまして……」 「食事以外も含まれているの!?」 「いやいや……状況分かっているのか!? つーかなんでいきなり金の算段が始まっているんだよ!」 「僕がお金大好きだからに決まっているでしょ!」 『……!?』 ……お兄様、そこで断言するのはどうかと。というかその金額、七桁くらいあるように見えたのですけど……まぁいいでしょう。 お兄様がなぜ金の話をし出したか、その意図は……クリステラさんも、鷹山さん達も気づき、笑っているのだから。 「ローンは今回認めません。成功報酬で、にこにこ現金払い。 そうして雨宮さん達は僕を金で雇い、個人的な我がままを通していく……。 僕はもらった金の分くらいは働いて、できるだけ要望に応えていく……」 お兄様は電卓を仕舞い、驚く雨宮さんにお手上げポーズ。 「もう面倒だから、そういう方向でいきましょ」 ……そう……お兄様は、雨宮さんの気持ちが本気なら、形あるもので対価を払えと言っている。 雨宮さん達は相応の対価を払った。その上で助けを求めて、お兄様に下駄を預けた。お兄様はプロとしてできるだけのことはすると約束した。 そういう契約なのだから……その成否は約束できずとも、それで対等なのだとお兄様は笑う。 「……君は、それでいいの?」 「えぇ」 「だって、あんな……滅茶苦茶な能力で! それに対抗手段だって……キャラなりなりできないと、助ける手がないって!」 「昨日も言ったでしょ? 手ならあります」 「あるの!?」 「ギャンブルなのは確かですけどね。 まぁ悔いがあるとすれば、いいかっこができなくなることだけですよ。ヒーローのやることじゃあないし」 「蒼凪くん……」 「というか、おのれらもちょっと頭を冷やそうか……。忘れた? こういうときのために、リーゼさん達から封印術を教えられていたのを」 そして、お兄様は更にこう告げる。封印…………あ。 「「「それがあったかぁ!」」」 「封印……?」 ≪その説明もあとですね。 ……フィリップさん、頼んでいた“サイモードにも対応している増設ソケット”、もうできていますか?≫ 『そうか……それがあった』 ……サイモードというのは、アルトアイゼンが保有する形状変換の一つ。 でもそれの増設ソケット? それをフィリップさんに……なるほど。こういう状況に備えて、水面下で準備していると。 『ただできたのは設計図だけだ。パーツの精製はこれから始めるところだったから……』 ≪ならその設計図を今すぐ送ってください。“現場で作って組み上げます”≫ 『分かった。ただ二時間くれ。母さんの方で、改めてメモリの濾過機能を確認する。 僕はその間に、エクストリームメモリでそちらに向かっておこう』 ≪だったらちょうどいいですね。リインさんの到着もそれくらいかかりそうですし……その確認も、私がリモートでお手伝いします。 雨宮さんの返答もそれが終わるまでに≫・ 「そんなに必要ないよ」 雨宮さんは呆れるやらなんとやらという様子で、目元を右手でごしごしと拭う。 「お金は払う……ううん、払わせて!」 「おい、そりゃ」 「……あたしはちゃんと、我がままの責任を取りたい。 だから……お願い。本当に……どうしても無理なら、そのときは好きなようにしてくれていい。 だけど、もし……もしも助けられるなら……伊佐山さんに、別の道を示してほしい」 「分かりました。その依頼……承ります」 「……」 「だからあなたは半熟たまごだと言うんです」 そんなのは甘い……甘すぎると、ショウタロスの肩を叩いて諫めておく。 ショウタロスもそれで反省して、ソフト帽を目深にかぶり直した。 「あぁ、そうだな。だが……オレは、どうやって払えば……!」 「刺身にタンポポをのせるバイト、紹介してあげるよ」 「そんなものが実在していたのかよ!」 ショウタロス、存在していたようですよ? ほら……お兄様がとてもいい笑顔で。 「蒼凪、それ俺達も聞きたい。え、違法じゃないの? 都市伝説を語った裏商売じゃないの? というかお前……まさかとは思うけど、借金のカタになにか狙っていないよな! そんなことないよな!」 「そんなことするわけないでしょ! そういうのはあの、ちゃんと信頼関係を結び合うことが大事なので……つまりあの、伝書鳩を行き来させるところから始めて」 「えぇ……!?」 「君、さすがにそれはない! というかまずあたしが伝書鳩を受け入れるところからやらないと駄目なんだよ!? というか……いいかっこしてフラグ立てるんでしょ!? そこは頑張れよ!」 「……なら伝書鳩に頼らないよう、依頼料は私も払うよ」 「わたしとまいさんもね!」 絹盾さんが、春山さんと天原さんが……それぞれ挙手。それも笑顔です。 「いいよね、恭文君。なにせ助けたい人みんなでって君が言ったことだもの」 「お願いします。……ただし条件が一つ。 説得場所は横浜アリーナの中で」 「……ライブ会場で?」 「壊れても僕が直します。ライブが予定通り開催されるとしても、絶対支障は来しません。 ……鷹山さん、大下さん、手伝ってください」 「説得は私も協力します。二人だけに危ないことはさせません」 「いちご……」 「お願いします」 「「「お願いします」」」 天原さん達も意思を固め、お兄様ともども鷹山さん達に協力を仰ぐ。それでお二人とも……まぁまぁ困った顔をし始めて。 「……どうする、タカ」 「まぁ説得でどうにかなるなら、こっちは楽だからな」 「やっちゃんも秘策ありだし……最悪の場合には、照井警視もいるし?」 「なので俺達もいざというときは手を出す……もちろん彼女を殺すことも視野にいれたものだ。 それに対してとやかく言わせない。それでいいな、蒼凪」 「問題ありません。契約要項に書き加えておきますし」 「後から作ったら、それはもう好きなようにできるだろうが……」 どこか明るい空気を放ちながらも、鷹山さん達が、雨宮さんが、絹盾さんが、ショウタロスが出て行って……。 「あ、ちょっと待ってください」 するとお兄様が赤い宝玉の指輪を取り出し、雨宮さんに渡す。 「……これなに?」 「ちょっと特別なお守りです。……それを、できれば、左の薬指に付けてください」 「え」 ある程度指示を出した上で、みなさんを見送り……あちらもあちらでアリーナでの説得に伴う準備開始です。 あとは……肩を鳴らし、屈伸など始めたお兄様でしょう。 「……しかしお兄様も人が悪い。そのソケットとやらは聞き覚えがなかったのですけど」 「おのれらとのキャラなりができない場合に備えて、フィリップとシュラウドさんに頼んでいたものだよ。メモリについては二人が専門だしね」 『君もデバイスマイスターの資格は獲得したが、ウィザードメモリの毒素除去も絡めると……まだまだ“たまご”というわけだ。 だがあえてエクストリームではなく、異世界エルトリアから持ち帰った技術を使うということは……』 「当然……いやがらせ♪」 『だと思ったよ』 「…………恭文くん、ご飯大至急持ってきてくれるって! お腹は大丈夫!?」 「五人前でもお残しなしでいけるよ。……その上で勝負だ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 二時間後……本当にヤスフミは大丈夫なのかと不安になりながらも、オレ達といちごはここ、横浜アリーナにやってきた。 一階席、二階席……そしてそこから見上げるステージ。もうあらかたのセッティングはできている。今はただ、最低限の照明で照らされているが、ここももうすぐまばゆい夢の舞台へ早変わりする。 そんな場所を見上げながら……呼び出していた奈津子は、どこか楽しげに笑っていて。 「――――でかいもんだなぁ」 素直に来てくれたことには感謝しつつ、後ろから近づくと……その笑みをオレ達に向け、アイツは髪を揺らす。 「ショウタロス君……」 「ごめんね、伊佐山さん……急に呼び出しちゃって」 「いえ。……それで、大事な話というのは」 「このステージで、お前が作った衣装を着て……みんなパフォーマンスしていくんだよな。……どんな気持ちだ」 あえて本題には触れず……いや、匂わせながらも問いかけると、奈津子は笑みを深くし、また広いステージを見上げた。 「……もう最高って感じ。もちろん縁者さんが輝いてくれるのが一番だけど」 「そうだな。服は人の魅力を引き出すものだ」 「うん……」 「……だから、悔しかったんだよな」 想像する……市販品のメモリを、あそこまで凶悪に使いこなした意味を。 「そんな夢が汚い大人に利用されて、踏みにじられて……笑われながら、フライリースケールから追い出されたのが」 「……ショウタロス、君?」 「碇専務達が性懲りもなく、お前どころか……舞宙達の身体まで要求してきたのが」 想定する……奈津子が受けた屈辱を。もはや実際に“そういうこと”があったかどうかなんて関係なかった。 奈津子も夢と希望を持って頑張ってきた場所が……描ける場所だと信じていたものが、嘘っぱちだったと裏切られたんだ。 「あの、ちょっと待って。なんの話を」 「伊佐山さん……!」 「……もうネタはあがっているんだよ」 また涙が溢れる雨宮を制しながら、いちごが厳しい表情で詰める。 「警察も気づいている。あなたがフライリーの社員だったことも……碇専務達と一悶着あったことも、あなたが本牧支店襲撃のとき、行方とかさっぱりだったのもね」 「……インジャリーの魔人……猪熊修也殺しと、フライリースケールを対象とした連続殺人とテロの主犯は」 ……やり切れない気持ちをまたぐっと飲み声ながら、鋭く奴を指差す。 「お前だ、伊佐山奈津子――!」 「ちょっと待って。なんの話を……私は」 「……伊佐山さん」 「いや、本当になにも知りません! 一体どういうことですか!」 「伊佐山さん!」 雨宮の必死な叫びで、半笑いだった奴の顔が凍り付く。 その瞳に溜まった雫が……オレ達の視線が、奴に全ての言い逃れを潰してしまって。 「…………ただ私は、素敵な服が作りたかった。誰かを輝かせるような、そんなものが作っていたかった」 そうしてぽつりと……一言、罪を独白する。 「なのにアイツらは……もちろん、仕事だから駄目なものは駄目で、通す努力も必要だって分かっている。それなら私も納得できた。 でも違った。アイツらは……私の手柄を、私の夢を利用して、金を得ていた! それを盾に、私やみんなのことまではけ口にしようとした! それで家族や周囲に正しい大人だと誇り続けて、笑って!」 「…………」 「そんなの絶対に許せなかった! そんな奴らの手柄として……金の種として、私が作った服やアクセサリーが……天原さん達の笑顔が壊されることは、絶対に許せなかった!」 「だから、それらが売っている限定店舗を中心に襲って、評価や利益も得ていた専務達も殺した……」 そう言いかけて、軽く首を振る。 「いや、限定店舗襲撃は目くらましだったんだな。そうすれば碇専務を恨んでいる奴ら全員が容疑者候補……お前や猪熊も候補には入るが、それでも怪物の仕業となればまた面倒になる」 「…………」 「でもよ……お前は……お前の夢を正しく評価して、受け入れてくれた場所に出会えたじゃねぇか……! 舞宙も、いちごも、才華も……他のみんなだって、スタッフだって、お前のことを信じていたんだぞ! コイツだって、命賭けて……お前を説得するって言ってくれたんだ!」 「そこまで、立派なことをしているつもりはないけどね。……蒼凪くんにも、それは伊佐山さんと同じ間違いだって叱られたし」 「間違い……!?」 「そうだよ、間違いなんだよ」 「……お願い、見逃して」 奈津子は雨宮の声を止めて、そう縋るように声を荒げる。 「アイツは死んで当然のクズよ。だから……私は、間違ったことはしていない!」 「……あたしだって女だからさ。凄くよく分かるよ。 今掴んでいるチャンスが全部、“そういうこと”で得られたって言われたら……決めつけられたら、かちんってくるし」 「でしょう!? だから」 「でも、こんな解決方法は間違っている」 ――――それを示すように、サイレンが鳴り響く。 このでかいアリーナを取り囲むように、いくつも、いくつも、いくつも、いくつも……それで奈津子がおののき、数歩下がる。 「…………これは……」 「あたしね、伊佐山さんを説得したら……みんな我がままで危険にさらすって……それにビビって、声が出なくなりかけてた」 そうだ、オレはそういう意味でも半熟たまごだった。ヤスフミは気づいていたのに……オレは、オレの始末を付ければと、その嘆きを放置しかけた。 「でも蒼凪くん、そうしたら……すっごい額を請求してきたの。とやかく言わず自分を金で雇え……依頼しろってさ。 ほんと呆れたよ。金でなんとかしろとか、普通この状況で言わないよ? うん、言わない……だから……それで気づいた」 「雨宮さん……?」 「……困って、悩んで……どうしようもないと思ったら、助けてほしいって……相談していいんだって」 本当に金の問題じゃないんだ。ただ、そのキッカケが……その割り切りが必要だった。誰にも、そういうものが必要だったんだ。 「そんな、ことで……」 「なんとかなるんだよ、奈津子。フライリースケールでのことは、オレにはどうこう言えない。だが……ここでのことならまた違った! 舞宙達がいる! その舞宙達と親しいオレ達もいる! お前は、そんなみんなに頼ってよかったんだ!」 「…………力に、なってくれたっていうの?」 「あのぼんぼんなら、核爆弾を持ってくる奴よりは小物だろ……!」 「あははは……そりゃ凄い説得力だよねー。なにせ向こうは国家的陰謀だもの」 「……私的には全く笑えないけどね。 その核爆弾を落とす肩の人とか、ラムアタックを仕掛けるしゅごキャラとかいるし」 「…………悪い」 やべ、そうだそうだ……いちごがあの件、滅茶苦茶怒らないはずがなかった! なのにすっかりフォローをすっ飛ばしていたし! 「ねぇ伊佐山さん、もう……あんな人達は哀れむだけでいいんだよ」 「……」 「人の人生を食い物にして、笑うことしかできない奴らなんて、哀れむだけでいい」 「……絹盾、さん…………」 「……お願いだから、ここにきた二人の気持ちは……分かってあげてほしい」 いちごの言葉で、奈津子は懐から……一つのメモリを取り出す。 インジャリーメモリ……白いそれは、紛れもなく奈津子を蝕むもので。 「…………ごめん、なさい」 「伊佐山さん……」 だから奈津子は、それを手放し。 ≪Injury≫ ……いや……スイッチを押して、ガイアウィスパーを響かせた。 「……なーんて……」 「やめろ、奈津子!」 「言うと思ったぁ――!?」 そのとき、銃声が響く――それは奈津子の頭を軽く跳ね上げる。が、傷はない……ただ皮膚が軽くえぐれただけ。 その瞬間、命中したはずの弾丸が塵に還った。そうして奈津子は胸元に現れたコネクタに、メモリを装填――! 『――私にはこれがある』 言葉は、通じていた。気持ちは、通じていたんだ。 『これさえあれば私はもう、誰にも媚びへつらう必要がない!』 「伊佐山さん……!」 『これは、私を神に変えてくれる力だぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 だがそれよりも、メモリで加速した欲望が……悪意が勝っていて。 この瞬間奈津子は、人としての全てを捨て去った。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ もう無理だった……彼女がメモリを取り出した時点で、躊躇う理由がなかった。 だから潜んでいた状態から、ライフルを構え……スコープ越しにヘッドショット。それは二人をかすめない形で彼女へと迫り、その頭を貫通する。 が…………彼女は頭を軽く振り乱しただけで、すぐに笑って復帰。あの……歪な怪物に成り下がる……! 「マジかよ……!」 くそ、まさか音速越えのライフル弾すら見切って……いや、接触した瞬間に“自分を傷つける存在”として壊したのか! それで平気な顔ができるとかやばすぎるだろ! 弾丸を受けた衝撃……その運動エネルギーすらかき消したのなら、本当にこっちの領域ではなにもできない! 「ユージ、二人のカバーに入れ! 水嶋、鹿沼、安全確実に援護射撃だ! 足止めしろ!」 『分かった!』 『『了解!』』 慌てて控えていたユージが走り込み、水嶋達と援護射撃。そうして二人に近づこうとしていたアイツを足止めするが……それだけだ。 もう、俺達にできるのはそれだけなんだ! あのまま外に出ても、うちの警官隊じゃあどうやっても止めきれない! 『でも鷹山さん、今の……』 「変身前……手応えもあった。だが“その瞬間にかき消された”……!」 『専門家の調査通りってことですね』 「だからお前達も気をつけろ! 掠りでもしたらその瞬間ドガンだ!」 『それじゃあひまわりのような女性達もどん引きだなぁ!』 『頑張るしかないってわけだ!』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「……よっと!」 そこで放り投げられるグレネード……その爆発により白煙が生まれて、オレ達と奈津子を遮る。 「みんな、こっちだ!」 大下がカバーし、慌てて下がりながら……適当な影に入り込む。そうして放ってきた針をなんとか避けるが……くそ、あの能力だとやっぱり手出しが! 『ごめん……ごめんね。せっかく友達になれたのに、認めてくれたのに、あなた達を殺すしかなくて』 「伊佐山さん、駄目!」 『でも、大丈夫。せめて……優しく、苦しまないように引き裂いてあげるから』 「そんなことしなくていい! ううん、しちゃ駄目だよ! 伊佐山さんは悪い人達に利用されていて……ああもう違う! それじゃあ碇専務達と」 『だから、逃げないで……♪ このままじゃあなたも汚れる……ううん、汚されているんだよね。知っているよ』 汚されている? その言葉は雨宮に向けたもの……おい、まさか……! 『だから、これ以上汚れないうちに……壊されないうちに、苦しまないうちに……』 「奈津子、落ち着け! それは」 『私が殺してやるんだぁ!』 「奈津子……!」 あぁ、間違いない。碇専務達に吹き込まれているんだ。雨宮が奴らの側だと……そんな嘘を信じちまっている。 嘆きながらも大下に引っ張られ、また別の影に……俺達が隠れていたフェンスが砕かれ、アイツはこっちにじりじりとにじり寄っていた。 「なにそれ……」 「伊佐山さん……!」 「ねぇ、これ見てよ!」 だから雨宮は左手を出す。薬指に付けた指輪を……“神剣パラディオン”を。 「そんなの誤解だよ! あたし、そういう人がいるの! あたしよりちっちゃくて、意地っ張りで……でもすっごく優しい男の子がいるの!」 『………………え……』 それを見て、伊佐山の動きが止まる。そう……ヤスフミは念のため、保険を持たせていたんだよ! 伊佐山がそういう疑いを持っている場合、釈明すればいいと! それで時間が稼げるかもしれないと! 「この指輪も、その子からもらった! なのに、あたし……そんなことで裏切れないよ!」 『……嘘だ……』 「それじゃあ駄目かな! 信じてもらえないかな!」 そうして身を乗り出す雨宮……慌てていちごと大下が引き下げようとするが。 「あたしのこと……信じ、られないかな……」 『嘘を吐くな……』 「嘘かどうか、ちゃんと話し合って」 『嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 そして、感情任せに針が投射されて……! ≪Connect≫ ≪Frigid Dagger≫ だが雨宮めがけて飛んできた針が……彼女の涙ごとその命を潰しかけたその瞬間、蒼い歪みが生まれる。 オレ達を守るように広がったそれが、そのまま飛んできた針を吸い込み、反射――奈津子の身体を次々と射貫く。 更に空色の短剣が次々と奈津子に突き立てられ、破裂。ドーパントとなって重量化した身体を浮かび上がらせて……。 『いたああぁああ……!?』 「これ……」 「この魔法は……」 「「フリーレンフェッセルン!」」 落下し始めた奈津子の足下に、空色と蒼色のベルカ式魔法陣が展開。周囲に渦をまき散らし、凍れる息吹となって奈津子を凍り付かせた。 「全く……五分前行動も考え物だね」 「ですです。ギリギリだったのですよ?」 オレ達の後ろから声が響く。 そちらに振り返ると、蒼い袴姿で……片手でフェンスを跳び越えながら、こちらに近づく影がいた。それに寄り添う妖精が……男がいた。 「ヤスフミ! リイン!」 「ショウタロス……相変わらず馬鹿やっているですね」 「早速うるせぇなぁ、お前!」 「蒼凪くん……」 「すみません。時間稼ぎにもならなかった」 指輪のことだと気づいた雨宮は、必死に首を振る。 「そんなことない! それに、謝るなら……全然、説得できなかった」 「だったらまずは力で止めます。それで、もし僕がちゃんと依頼を達成できたら」 「うん……」 「改めてお返ししますから、お話してください」 「……うん、お願い……!」 「ショウタロス、おのれもだ。散々宣ったんだから、伊佐山さんの反省くらい引き出せ」 「……あぁ」 そう……オレの相棒だった。その隣にはフルサイズのリインが、照井がいた。 「照井さん、大下さん、みんなをお願いします。うちのきかん坊どもも一緒で」 「分かった」 「こっちも了解……で、その子が例のリインちゃん?」 「初めましてですー♪ まぁ……挨拶は後なのですよ」 だよなぁ……! 奈津子の奴、氷を傷つけたものと定義して、破壊してやがるし。……ただ、それはあくまでも一層目。奈津子のみを包んでいた僅かな部分だけだった。 だから奈津子はいら立ちながら体当たり……そうして一層、また一層と砕くハメになって。 「術式アレンジで多層式にしたとはいえ、長くは持たないのです」 「システムサポートも含めて、いろいろ頼らせてもらうよ」 「はいです♪」 それであとは……あぁ、そうだ。 後やるべきことは、アイツをどう……立ち上がらせるかだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ たっぷり食べて、ナノマシンも全開稼働。ぎしぎしだった身体も急速回復して、もう全開だ。 “全く……リインを置いてけぼりで焼き肉旅行とかしているから、こういうことになるですよ” “おのれ、はやてと出張中だったでしょうが……” “だとしてもです!” “理不尽か! ……それより大丈夫だよね” “はい。ただフォーミュラシステムが使えない以上、ヴァリアントも限定運用が限界……って、耳タコですね” “いつものことだ” 本来ならナノマシンと連動したフォーミュラと、物質のリサイクルを根幹とするヴァリアントシステムは一揃えの能力。対応ナノマシンがない僕では使えない。 でもね、伊達に物質変換に精通した魔導師じゃないんだよ。僕なら……僕に限れば、フォーミュラがなくてもヴァリアントシステムを運用できる。 そこにリインのサポートもあるなら――! 『あなた達は……また、どうして!』 伊佐山さんがようやく多層的氷檻から抜け出したので、笑いながら右指を振ってあげる。 「僕、実は雨宮さんにはちょっと恩がありまして。というか、一度会ったことがあります」 「え……」 「そのとき、雨宮さんのおかげで……大事な子をなんとか助けることができた」 ここはまぁ……いいか。相手にプレッシャーをかけられるのならなによりってやつだ。 「だからこれを機械に、雨宮さんにもいいかっこして、フラグを立てようってわけだ。 おのれも生かさず殺さずで捕まえれば倍プッシュだよ」 『なんて、自分勝手な……!』 「碇専務達よりマシでしょ」 『……』 うんうん、反論できなくなるよねー。それが気に食わなくて、ここまでの事件を起こしたんだもの。 「まぁそれがたとえ無理でも……“依頼“は受けたからね。 僕達の依頼人に手出しなんざさせないよ」 『だから、私を踏みつけるのか……アイツらのように!』 「お前が水橋達の口車に乗って、メモリを選んだようにね」 『――!』 ≪Connect≫ 放たれた針が展開した術式によって吸い込まれ……伊佐山さんの背中へと飛び出し、射貫く。 走る火花と衝撃によろめく伊佐山さんは、混乱しながら周囲を見渡す。 そうして鹿沼さんや水嶋さんを見つけ、攻撃しようとするけど……。 「ヴァリアント・ザッパー!」 ≪Sniper mode≫ 周囲の物質……適当な椅子や床がパリンパリンと弾け、僕の右手に収束。ヴァリアントコアを起点として再構築されたそれは、ロイヤルブルーの大型ライフルとなる。 それを立ったまま、両手で構え連射――雷撃に包まれた弾丸に伊佐山さんは右手をかざし、その力で破砕しようとする……が、弾丸は的確に伊佐山さんの……ドーパントの強化された肉体を穿つ。 『あが……!?』 火花が走り、腹が、胴が貫かれる。さすがに驚き、伊佐山さんがおののく。 ……さっきの多層的物理拘束で、改めて確かめさせてもらったよ。 その能力は触れたものを傷つけた……傷つけられたと定義し、その傷を抉ることはできる。だけどあくまでも表層的だ。 深く破砕するのなら、針やドーパントの肉体を使い、深い部分にまで穿っていく必要がある。それができない場合……多層的構造の物体を破壊する場合、もう一手間かかるんだ。 今放った電磁レール弾だって同じだ。弾丸の周囲に纏わせ、半プラズマ化した弾丸……伊佐山さんは触れた周囲の雷撃だけを消せた。 でもそれとて変容する雷撃の一部分。それゆえに傷つけたと定義できる個体すらそのときには姿を失い、攻撃が通用したってわけだ。 改めてもう一つフェンスを跳び越え、伊佐山さん……インジャリーの前へ。 『……無駄だ! このインジャリーは最強のメモリ! あなた達に勝ち目なんて……ない!』 とか抜かすので左指を鳴らし、術式発動――。 物質変換の応用で生まれた火花。それが操作された酸素と絡み合って、一瞬でインジャリーを包み、焼き払う爆炎となる。 ふふふふ……鋼の錬金術師を見て、練習しておいた応用技だよ! 実は最初から使えた得意技でねぇ! 『ちょ、あぢ……あぢあぢあぢあぢ! あぢぃぃぃぃ!?』 「ご心配なく。リイン達はその最強を……下らない妄想を砕きに来たのですよ」 ≪たとえ世界が止まったとしても、動き出せるのは私達だけ……みたいですからねぇ≫ それで更にチェック……やっぱりだ。この手の炎熱攻撃も、破砕の対象にならない。というより、刻一刻と変化する熱量や、そもそも形がないことで破壊対象として定義できないと言うべきか。 ……これなら僕達にもやりようはある。通常ならともかく、リインがいる今なら……。 「リイン、行くよ!」 「はいです!」 右手でヴァリアントコアを取りだし、頭上へ放り投げる。それからリインと呼吸を合わせ、声を張り上げ――。 「「変身!」」 右指を鳴らしながら、変身開始――! 空色の光となって、僕の胸元に吸い込まれるリイン。それを受け止め、脈打つ鼓動とともにヴァリアントコアをセットアップ。 空中に浮かんだコアは回転し、折り重なるように僕の胸元で停止。ロイヤルブルーの輝きを放つ。 ≪Valiant System――Drive Ignition≫ 周囲の物質を……後で修理する予定の床や座席などをいくつも破裂させ、その質量を、そこから生まれた粒子エネルギーを取り込み、全身を包むロイヤルブルーの装甲服≪プロテクトスーツ≫とする。 稼働に伴うエネルギーも粒子力学に乗っ取り周囲の物質から大きく賄い、それがライトブルーのストリームとして羽織ったジャケットや和風の袴に走っていく。 ≪Vestige Form――Freedom PackVer1.5≫ 更に背中には無線接続式スラスターと機動兵装ウィング。翼と翼の間には長砲身のアグニ砲。 両腕にはバリアシールド発生装置が上乗せされ、両腰には折りたたみ式レールガン。 レールガン基部横のアタッチメントには、いつもより機械的な鞘を……そこに納められたアルトをセット。 上部には流線型のライトセーバー……というか、そういう形に生成したザッパーを装備。 ≪Psy Mode Set Up≫ 身体に溢れる戦い力……それが僕の髪と瞳をリインと同じ色に染める。 その目を見開いた瞬間、機動兵装ウィングVer1.5が大きく展開。ストフリのものが最新式だけど、今回はこれでOK。 右手には高出力ライフル、左手にはシールドビットを装備。 それらをしっかり握った途端、二色の魔力が全身から弾け、羽根のように舞い散る。 更にウィングからも推力混じりの熱が、羽根と混じり合い、粒子を思わせる輝きで放射される。 ――これにて変身完了。 ヴァリアントコアによるエルトリア式プロテクトスーツも絡めた、僕とリイン、アルトの変身形態! 本当の古き鉄その二くらいだ! 【ユニゾン成功……とはいえ油断は禁物なのですよ!】 「それでもやる」 そうだ、躊躇う理由がない。 「ずっと憧れて、見上げていた人が……歌が好きだって、そう言える人が泣いていたんだ」 そうだ……一生引きずるような怪我も、痛みもごめんだけど、それでも助けたいって思った。 「一緒に頑張ってきた一人を……すれ違うだけで済まなくなった誰かを助けたいって、これ以上化け物にしたくないって、泣いていたんだ」 助けられたら……泣いているのを止められたらって、そう願った。 「ライブのことで……自分のことで怖がって、逃げたってよかったのに……なのに……!」 あの人は逃げなかった。 自分には関係がない。仕事にも支障を来しそうで迷惑。だからどうなっても知らない……そう見捨てたってよかった。 それを悪いなんて責められる人は、多分いない。グッズ開発に携わった人が、こんな事件を起こしたんだもの。相応にプロモーションとか、いろんな計画もごたごたする。 ……人間としてはどうかと思うけど、仕事が……生活がかかっているのなら、強く否定することも躊躇われる。それくらいには重たいことだ。 でもそれもせずに、助けられたら……止められたらって願ったんだ。それに嘘を吐かず、真っ直ぐに踏み込んだ。ううん、踏み込めたらって迷っていた。 だから……見ていられなかった。だってそれは、伊佐山さんが犯した間違いと同じだもの。たとえ水橋達に煽られたとしても、間違いになるんだ。 だったら……。 「嫌だよ。あの人を泣かせたままなんて」 【……ヤキモチ焼きまくりなのですよ、リインは】 「だったら一緒にライブ、楽しもうか。もう最高だもの」 【ですね】 まだ僕とリインの魔力が……その風が止まぬ中。 【「――さぁ」】 右手でライフルを一回転させて、伊佐山さんを狙い、そのまま傷に囚われた女にトリガーを引く。 ≪The song today is “Reborn”≫ 【「ショウダウンだ」】 ≪ついでに言いましょう。――私達はかーなーり……強いです≫ トリガーを引くと、ビーム……もといライフルのAECシステムにより、非殺傷設定の物理衝撃として弾丸が飛ぶ。 ただし弾丸の周囲にバリアがコーティングされている多重弾核射撃。 伊佐山さんは反応できず、肩を穿たれ……そしてよろめく。鷹山さんの弾丸と違い、ダメージをかき消されることなく一撃を入れられる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 無理か無理かと思ったら……おいおいおいおい……なんだよあれは! この薄暗い会場の中で、めっちゃくちゃキラキラしているんだけど! なんか光が走ってないか!? 電飾!? 電飾なのか!? しかも翼! 翼ぁ! なんか羽根がある! ライフル持ってんだけど! 「……やっぱりそこで、踏ん張れるんだね。君は」 いちごちゃん、不安げに両手を握っているところ悪いが、俺達の衝撃を受け止めてくれるか!? だって、だって……あれぇ! 「やっちゃんが……」 「ちっちゃい子が……」 「「合体したぁ!?」」 『ユージ……あの、やばい……目、やられた。あの、なにが……どうなっているんだ……!』 「タカァ!」 そっかそっか……スナイパーしていたから! スコープ見ていたから! そりゃやばいな! あとで病院に連れて行く! ……って、それは本当に後で! 「あの、俺もよく分からないんだけど……やっちゃんがあの、例のリインちゃんと合体した! なんかぬるっと入れられた! それで羽根広げた!」 『この状況でなに言ってんだお前!』 「そう言うしかないんだよ!」 『鷹山さん、嘘みたいですけど……マジです……!』 『蒼凪さん、やっぱただの忍者じゃなかったかぁ!』 『……あ、マジで翼だ。え、なにあれ……?』 ほらほら! 水嶋と鹿沼も同意見だよ! 俺は嘘言ってないよ!? タカもチェックできたっぽいしさぁ! 「というか照井、あれでいいのか!?」 「えぇ。問題ありません」 「で、でも奇麗……というかあれ、メカ少女!? いや、男の子だけど!」 ……彼女が言う通りだった。やっちゃんは確かに、滅茶苦茶輝いていた。いつもと全然雰囲気違うしさ。 「いちさん、ショウタロス君、本当にあれが」 「あぁ。ヤスフミとリインの切り札……融合≪ユニゾン≫だ」 「そしてヴァリアントによる追加装備……フリーダムパック」 「フリーダム?」 「機動戦士ガンダムSEEDに登場する後半主役機体だよ。 そしてリインちゃんはユニゾンデバイス……ああいう合体でパートナーを強くして、一緒に戦う力があるんだ」 不安げな声に力強く応えたのは、迷いや心配を飲み込み、じっと見守り始めたいちごちゃんだった。 「だけど、これは……」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『え……』 「今すぐに変身を解除して、両手に頭を載せて、地面に伏せろ」 肩を撃たれた……致命傷ではないとしても……それも至極当然。 『え……!?』 「従わない場合、死んだ方が楽ってレベルで赤っ恥をかいてもらう」 多重弾核射撃は、相手のバリアやシールドをコーティングで相殺し、すり抜け、本命弾丸を届かせる。 伊佐山さんのオートバリアがどれだけタイムラグがないものだろうと、そこに対応できないレベルなら、問題ない……全く以て問題ない。 それに衝撃を受けている伊佐山さんへ、地面すれすれにホバリング。 『く……近づくなぁ!』 伊佐山さんは右手を地面に叩きつけ、傷を広げる……傷を生み出す。それが地割れとなり、振動となり、こちらを飲み込むように雪崩込んでくる。 だから同じように右手を当てて、ヴァリアントシステムを稼働……傷を刻まれ、壊れるしかなかったそれを理解・分解・再構築……生まれた傷の津波を、僕達を傷つけるはずだった力の余波を、丸々修復する。 『……はぁ!?』 その間に両腰のレールガンを展開。砲身が伸張し、連続発射。 伊佐山さんが胸元と腰を打ち抜かれよろめいている間に、左手のシールドブーメラン……ビットを投擲。 ビット先端部から魔力刃が、両側から翼のようにアームが展開し、またも魔力刃が展開。 それはよろめく伊佐山さんを右左と切り刻む。それを見ながら、こちらもアグニ砲を展開。 これも最新……とは行かなくても、僕が触れられる範囲でのAEC装備として調整している。通常の魔力運用とは違う、無効化耐性を持ったシステムだ。 魔力を物理的衝撃として制御・発射するシステム。それゆえにこんな真似もできる。 ≪発射タイミング調整完了……いってください≫ 「――フルバースト!」 ライフルも含めて一斉掃射。 赤色の高出力砲撃が伊佐山さんを襲い、直撃……が、それらはオートカウンターによってかき消される。 ただしそのかき消した直後、半プラズマ化したレールガンが次々と着弾。更にライフル弾、再び発射されたアグニ砲の直撃を受け、伊佐山さんは大きく吹き飛ぶ。 『ぐああぁあ……だったら!』 伊佐山さんは転がりながら、針の傷を次々連射。それも素早く視線でロックオンをして、各武装で次々撃ち落とす。 針は虚空で消滅し、伊佐山さんは更にフルバーストを暗い、全身から火花を走らせ転がり……また慌てて起き上がり、左へと走る。 「リイン!」 【運転、代わるですよ!】 身体の感覚を一瞬でリインにスイッチ……瞬間的に腰まで伸びる髪。リインはためらいなく左手で蒼天の書を取りだし、右手をかざす。 「バインド連続展開!」 僕の……瞬間詠唱・処理能力の恩恵を受けたリインが、連続敵にバインドを連続展開。 ただし肉体に直接接触はしない。空間に作用し、対象を固定・捕縛するタイプのバインドだ。それで伊佐山さんは虚空でその動きを停止する。 『なに……!』 【人質なんて取らせるわけないでしょ……】 「遠き地にて、闇に沈め……光より速く!」 更に術式発動――はやてが使うものよりも小規模・高速化したそれは、リインの……右手の動きに応じて空色と蒼が混じり合ったマーブル状の魔力を形成。それが伊佐山さんの周囲をバインドごと包む。 「デアボリック・エミッション・クイック!」 そのままリインが右手を握り込むと、展開していた純粋魔力スフィアが凝縮。その圧力そのものが攻撃となり、伊佐山さんを締め上げ、爆発させる。 『あぁあぁあぁあぁああぁあぁ!?』 「フリジットダガー、フルバースト!」 更に多重展開したフリジットダガーを連射。伊佐山さんの身体をその衝撃で更に打ち上げてから……。 「運転、戻すですよ!」 【OK!】 リインに主導権を返してもらい、戻ってくる感覚と同時にヴァリアントシステムを再起動――! リインはこっちのスキル、さすがに僕ほど特化していないしね。でもロングレンジでの魔法戦ならやっぱり心強い。 「ランチャーモード」 ≪Launcher Mode.Ver1.0≫ ライフルの構成物質も巻き添えにして、周囲を分解・再構築するシークエンスが開始……。そうして作り出すのは、僕の身の丈はあるマルチランチャー。 四連装ガトリング三門、下部に連射型ミサイルユニットを同時搭載した大型ランチャー。それを、右手でメイングリップを、左手でサブグリップを付かんで……トリガーを引く! ただしいくら後で治すとはいえ、破砕が過ぎても毒。ガトリングから放たれる弾丸は全て非殺傷・非破砕の閃光弾。 伊佐山さんは身を翻してそれを避けようとするも、進行方向に撒かれるように放たれた弾丸に、自ら突撃し、小さな光に次々と包まれていく。 【もう一つなのです!】 更にリインが展開した非接触・空間固定型バインドでまた身体を縛り上げられ……数旬遅れて放たれたミサイル五発とアグニ砲が次々と命中。 伊佐山さんは爆炎に包まれながら数メートル下の客席をなぎ倒し、落下する。 それに合わせて、両手を地面に当てて……リインの術式サポートを受けて、広範囲に物質干渉。 「リイン!」 【ヴァリアントシステム、広範囲展開……セッティング完了! せーの!】 【「リメイクバースト!」】 放り投げたランチャーを分解し、僕が破砕した箇所を……今壊れた箇所を瞬間修復。足りない部分は他の箇所から補填するけど、それでも強度的に不足分などは生まれない! 『これは……』 「伊佐山さん、それは伊佐山さんの傷そのもの……傷つけられたから、傷つけ返したいって描いた『なりたい自分』そのものなんだよね」 動揺する伊佐山さんが咄嗟に針を飛ばしてくるので、左腕からバリアシールドを展開。 発生装置を中心に広がる波紋をそのまま針にぶつけ、その出力も相まって針を消失させる。 『爆ぜろ!』 同時にバリアを消すと……はい、やっぱりなにも起こらない。その有り様があり得ないと、伊佐山さんが打ち震えていて。 「でも僕達の力は違う……壊して別のものに作り変えることもできるけど、こうやって癒やすこともできる! この世でもっとも優しい力だ! その傷すらも包み込む!」 『な……!』 “…………よくもまぁ滑るようにでまかせが出るものですよ” “こういうのはハッタリだよ、ハッタリ” そう、嘘半分だよ。でもそれで十分……伊佐山さんは異能力戦闘に慣れているプロじゃない。 加えてインジャリーが余りに殺傷力が高すぎるせいで、ほぼ一方的な蹂躙が基本となっている。ドーパントとして戦うのは恐らくこれが初めてだ。 だから恐れる、疑う……自分もこういう能力が使えるなら、“その真逆な能力”があってもおかしくはないと。 しかも目の前でユニゾンした……リインという女の子が僕に吸い込まれてもいる。キャラなりとも様子が違う。だから余計に混乱する……このためにあえてリインを呼び出したんだ。 雨宮さんやほかのみなさんが、自覚なしで情報を漏らしていた可能性もあったからね。大事なのはその状況で、いかに伊佐山さんへ疑いをまき散らせるか――! 『く…………このぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』 伊佐山さんは結局僕へ突撃するしかない。というか思えばこうやって走ってくることも疑問符を付けるべき状況だ。 触れたものを傷つける能力であれば、そもそも伊佐山さんは立ち上がって走ることすらできない。つまりその能力は常時発動していない。 ただある種のオートカウンター的に、尋常じゃないレベルで発動するだけ。そこから意識的な発動も可能になるというだけ。 そして……なによりこの能力が持つ最大の弱点は――。 「サイブレード!」 懸架していたサイブレードを抜刀……というより、スイッチを入れて、蒼いエネルギー刃を展開。 魔力刃とは違う。僕の精神力そのものを吸い上げ、刃とすることも……できるけど、今回は念のため魔力刃だ。 本来であれば実体剣……刀の方が使いやすくはあるけど、なんでも備えはしておくものだと僕も駆け出す。 放たれる針をアグニ砲で全てかき消し、それでもしつこく飛んでくるものは弾道を全て見切り、袈裟・逆袈裟・右切上・左薙……跳躍も交えて、刃を振るい続ける。 光の刃は薄暗い中、結界のように展開し、放たれた針を全て斬り裂き、消滅させる。……着地してから右親指で、サイブレードアルトのスイッチをオフ。 『はぜろ!』 そこで刃が破裂………………するはずもない。 『は……!?』 伊佐山さんに接近したところで急停止……からのレールガン連取。伊佐山さんの胴体を次々撃ち抜きながら上昇。 「リイン、スイッチ」 【はいです!】 リインとスイッチ……髪をまた鋭く伸ばしながら、リインは蒼天の書を脇に浮かべ、左手をかざす。 ≪Icicle Cannon≫ 左手の平で瞬間生成された魔力スフィアが、速射砲として発射……レールガンによって足が止まっていた伊佐山さんを襲う。砲撃はその腹を撃ち抜き、爆発を起こす。 その間にリインはサイブレードを頭上にかざし、切っ先を一回転。魔法の杖が如き動作で、更なる術式を瞬間発動。 ≪Sacred Cluster≫ 「それ!」 そのままブレードを振り下ろし、構築された魔力スフィアを射出。それはひるんだ伊佐山さんの頭上へと跳ね上がり……そして破裂。 ショットガンがごとき小型爆殻が次々と降り注ぎ、伊佐山さんの身体を叩いていく。 ……なお、周囲のものを破砕しないよう、非物理破壊モードでの発射だ。派手に見えるけど実際は純粋な魔力ダメージしか与えていない。 それでも鎮圧しきれないっていうんだから、ほんと……ドーパントも大したものだけどさぁ! いや、当然なのかな! 神秘の概念で言えば、記憶そのものが時間をかけて構築された神秘……刻印と言えるものだもの! むしろオカルトアイテムなんだよ、ガイアメモリって! 【リイン、反撃くるよ!】 『こんな……ものぉ!』 「ならこれで!」 ≪Weichstütze≫ 伊佐山さんが振り返って、反撃と言わんばかりに針を大量発射。でもそれはリインが発動した術式により、たやすく阻止される。 そう……地面に多数展開した古代ベルカ式魔法陣。そこから発生した、ピンク色のぷるぷるとしたクッションによって! 『い!?』 それは傷つける針すら柔らかく受け止め、はじき返し、その全てを地面に転がす。余りに非現実的な様子に、伊佐山さんもぎょっとして停止する。 この魔法は柔らかき支柱≪ヴァイヒ・スツーツ≫。古代ベルカ式の補助魔法で、不定形の緩衝材を多数発生させる魔法だよ。ようはこういうクッションで、衝突してくる相手を受け止める安全確保用の魔法。 リインはそこに、また別の緩衝魔法を加えて、針の速度そのものを殺している。だからいくら能力で作り出したものだろうと、これについては“傷つけられない”。 【さっすがー】 「シャマルとアルトアイゼンが、データをくれたおかげ」 伊佐山さんはそれにも懲りず、走ってクッションを飛び越え……僕達に殴りかかる。それでも直接接触してしまえばという寸法らしい……けどねぇ! 「……スイッチ!」 【ほいきた!】 リインと運転を代わり、サイブレード再展開。打ち込まれる拳そのものをすり抜け、伊佐山さんの腹を左薙に切り裂く。 火花を走らせながら交差する伊佐山さんは、衝撃からよろめき……そこへ振り返り左後ろ蹴り……ただし、リインの術式を借りて発動した上で! ≪Impact Canon≫ 拳を使って発射する、ベルカ式の高速大威力射撃。それは伊佐山さんへ接触することなく、その背中を撃ち抜き……爆発を上げながら吹き飛ばす。 「もういっちょスイッチ!」 【はいです!】 リインとまた入れ替わり……僕が苦手な多重弾幕形成・平行術式処理を任せる。リインはサイブレードの刃を仕舞いながら、再びフリジットダガーを連射。 それが転がり、起き上がろうとした伊佐山さんの全身を次々と撃ち抜いていく。 『あぁああぁあぁああぁ!?』 リインと“運転を代わり合う”ことで、伊佐山さんの能力に上手く対応し、対処する……これが用意した切り札の一つ。というか、アルトが僕のプランにアレンジをかけて、準備してくれていたものの一つ。 『そんな、私の……力が……!』 伊佐山さんが右手をかざすけど、なにも起きない……それは当然だ。 蹴りはしたけど、そこから放った射撃……砲撃レベルのそれにより、そもそも伊佐山さんの身体にはびた一文触れていない。 サイブレードの刃も、刃が再展開したことで能力の対象からは消えている。……そもそも伊佐山さんを傷つけたと定義された刃は、消失したわけだ。 このように“傷つけた存在”が壊れるなり消えている場合も、能力は完全に無効化……とはちょっと違うけど、スルーできる。 これもまた傷の定義が表層的なせいだ。傷つけた弾丸や刃の破砕で収まらないのなら、サイブレードも、鷹山さんが狙撃に使った銃も、僕のランチャーも砕けている。 その辺りも確かめたかったから、今アルトは控えに回ってもらって、サイモードもヴァリアントシステムによる模倣品≪再現≫で使っていたけど。 あとは半端に追い詰めて、新しい能力が覚醒しないように……レベルアップしないように生殺しにしていけば……! 『いくら、異能力者だからって……私が……ドーパントが、こんな!』 「触れれば傷つける力……傷を抉り、広げるだけの力。 だから誰も自分からは“あなたに触れようがない”……“助けようがない”のです」 『――!』 「あなたは神様の力を得たんじゃない。神と同じくらい、みんなから……あなたが笑っていた場所から隔絶されただけなのです」 リインの言葉に伊佐山さんが打ち震える。その側面を知らなかった……いや、見ない振りをしていたのだろう。 現に力を得てから、復讐はできても……共犯という形で理解者だった猪熊も、誰もかれも離れていく……近づくことすらできないんだから。 逆を言えば、それは伊佐山さん自身が抱える周囲や人間への不信……拒絶を指す。だから能力がここまで攻撃的で、殺害すら厭わないものになったんだよ。 今のインジャリーは、伊佐山さんが描いた『なりたい自分』そのものだ。誰にも侮られず、見下されず、自分の力だけでそれを打ち砕ける……そんな強さがそこにある。 …………だけど……。 【――それだけじゃ到達できない場所もあるんだよ、伊佐山さん】 『嘘だ……』 【だから止めるよ。僕達が】 『嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 【……嘘じゃないんだよ!】 僕は、僕達は知っている。それだけじゃ届かないものもあるって。それを届かせるためには……怖いけど、一歩踏み出す勇気が必要だって。 今だって圧倒しているように見えて、僕だけの力じゃない。この人は一人だけど、僕はリインとアルトがいてくれる。キャラなりしていないけど、ショウタロス達だっている。 信じてくれた舞宙さん達だって……大下さん達だっている。だから、僕達のやることはただ一つ。 依頼を果たす……伊佐山さんを、メモリに魅入られてあんな寂しい場所に追い込まれた人を、この手で止める! (その5へ続く) あとがき 恭文「というわけで、キャラなりも難しく、翔太郎達も動けない……このときだと翔太郎ももう三十路くらいだからね。仕方ないね」 (そこに触れるな!) 恭文「そんな中、切り札として出してきたのはフォーミュラ……というよりヴァリアントシステム! Ver2020本編への布石と言えるものだね」 古鉄≪どうしてアミタさん達と絡んだかも、また描きたいですね。あなたもディアーチェさんとそれはもう密に……≫ 恭文「そこは決定なの!?」 古鉄≪というわけで、こちらがアイディアというか草案になります。リインさんとのユニゾンもちょっと変更が入りましたしね≫ ◆◆◆◆◆ ※ヴェステージフォーム(≪Vestige Form≫) エルトリア出自のヴァリアントシステムを用いて構築した、恭文用のプロテクトスーツ。形状はアミタ・キリエと違い袴姿という和装に寄せてある。 本来なら稼働用ナノマシンの出力も必要だが、恭文は物質変換を修得している関係から、ヴァリアントシステムを応用。周囲の物質エレメントそのものを素材や稼働エネルギーに変換し、スーツを構築するという方式を取っている。 エルトリアの厳しい環境に対応するための生命保護機能や魔法・異能への解析能力などはそのままだが、稼働方式が変則的なためそもそもの活動限界時間は原典のものより短く、また特徴の一つと言えるアクセラレイターも使えない。 ただしそれは劇場版でなのはが受けたような、フォーミュラと魔導の融合による自傷も起こりにくいという利点にも繋がっている。 スーツ由来の防御能力や強度も、恭文が自前で発生させるものよりも遙かに強固であるため、恭文も安全性を優先し、ナノマシンに頼らないこちらの方式を採用している。 なお稼働方式の元ネタはスクライドのアルター能力。 (これがもしもの日常Ver2020本編で登場する、トイフェルライズキーによる各種ジャケットのベース……プラットフォームと言える存在。なので多分、出番は今回だけ……または過去編だけ) ◆◆◆◆◆ ※ヴァリアントシステム&ヴァリアント・ザッパー とある縁から手に入れたヴァリアントコアを通し、周囲の物質エレメントに干渉。物質の理解・分解・再構築を行い構築する武装。 恭文の物質変換より高度な点は、コアにあらかじめ設計図を登録さえしておけば、銃器のような複雑なものでも精製可能となる点にある。 こちらの稼働・精製もプロテクトスーツ同様、物質をエネルギー化させて確保している。 そのため壊れても破片などから再精製も可能で、今回は見せなかったが劇場版なのはでイリスがやったように、適当な銃器をゴーレムとして再構築・操作することなどもできる。 元々物質への干渉・操作・変換を得意技とする恭文だからこその裏技だが、これで悪のりして作った“とあるもの”があり……。 ・スナイパーモード 半プラズマ化した電磁レール弾を打ち出すスナイパーライフル。弾丸も含めてヴァリアントシステムにより生成される。 ・ガンモード 高速度パルス弾を放つ拳銃。銃身下部がブレードとなっており、咄嗟の防御も可能。 ・ランチャーモード(Ver1.0&Ver2.0) アミタも劇場版で使っていた大型ランチャー。四連装ガトリング三門に、ミサイルポッドを搭載したVer1.0と、ミサイルの代わりに電磁射出式のパイルバンカーを搭載したVer2.0がある。 ・サイモード≪Psy Mode≫ とある魔導師と古き鉄の戦いVer2016にて登場した新形態。こちらのアルトアイゼンにも搭載されている。 魔力の刃……または精神エネルギーをライトセーバーのように展開するのみならず、通常形態でも発動するため、形状変換というよりは魔導殺しに対応した第五世代デバイスに相当する機構と言える。 今回はヴァリアントコアでレプリカを生成し、それをメイン武装として使用している。出力も相応にあるため、ドーパントの攻撃だろうと、対物ライフルだろうと、魔力砲撃だろうとたやすく両断する。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※武神≪鉄輝≫ 恭文がヴァリアントコアを参考に作った、小刀型デバイス≪召来刃≫。それを用いて周囲の物質を分解・再構築することで作り出す大型機動外殻。 全長十五メートルほどで、鎧に袴型アーマーを纏った武神……というか武者ガンダム。武器は腰に差した≪武神刀・古鉄≫ これだけの大型機動外殻を作るのは相応の手間が必要となるが、恭文はそれ専用のデバイスを作り、カートリッジの魔力を用い、自分の瞬間詠唱・処理能力もフル活用することで、自分が乗り込める武者ガンダムを作った……作ってしまった。 可動域から構築されるシャフト、ネジ、パイプの一本一本までこだわり抜いたため、機動性と出力は一級品。操作方法はGガンダムのモビルトレースシステムで、恭文の戦闘能力を存分に発揮できる。 しかし弱点というか致命的な欠点があり……まず通常の魔導師なら、それくらいの機動外殻は普通に魔法で叩きつぶせる。(劇場版でもヴィータやシャマル達が暴れまくっていたし) あくまでも純粋な質量兵器に属するので、対英霊戦などで神秘の格が絡む場合、これまた無駄に壊される可能性が高い。 ようするに『これを出すくらいなら魔導師戦で戦った方が楽だし、対人戦では出せないし、とびきりチートな奴を相手にするのも辛い』という結論に至ってしまった。 ちなみに風花と舞宙、いちご、才華に見せたところ、才華以外の全員から『馬鹿なの!?』と本気で呆れられた。(逆に才華は目を輝かせて喜んでいた) (『やっくん……これはいいものだよ! ロマンだよ! ロマンがあるよ! よくやった! 感動したー!』 『ありがとうございます! 才華さんは喜んでくれるって信じていました!』 『いや……春山、落ち着こうよ。これ作るのに……というか作るための刀を作るのに、二千万とかかけたんだよ? どうするの? いつ使うの?』 『……いちさん、だから今の今まで彼氏ができないんじゃないかな』 『なにその新手のマウント! え、引くの!? 私が引かれているの!?』 『だからやっくんとも油揚げ状態なんだよ!』 『どういう状態!?』 『いや、まぁ……動く実物大ガンダムって考えれば、まぁ安いものかもしれないけどさぁ! でもさ、これならあたしをそろそろ……ね!? これ作れるなら、あたしモデルのブルーウィザードも実現化できるよね!』 『あ、そちらは着々と進行中です! こちらがサンプルとなります!』 『作っていたの!?』 『いたんですよ……。これを実現化させるために、いろいろ設計図とか引いたら……自然と関節機構とか作れるようになりまして。努力って大事ですねぇ』 『あぁ、うんうん……いい感じだよ! あ、でも胸はやっぱりほら……Hカップくらいに』 『舞宙さんも願望をさらけ出さないで……というか、私の胸を見ないでくださいー!』 『だってあたし、成長しない……揉むと大きくなるっていうのに……風花ちゃんはぐんぐんなのに……もういちさんくらいなのに……!』 『落ち着いてください! というか……恭文くん、これは本当にいつ使うの!? 使うタイミング絶対ないよ!? ガンダムファイトは現実にないんだよ!?』 『ふーちゃん……いつかスパロボ世界に転移するかもしれないでしょ?』 『そうですよ。だからサイブレードの機構を使って、サーヴァントやら宝具相手でも通用する方法はないかと探っているところですし……いずれは石破天驚拳くらいは撃てますよ』 『さすがに中二病がすぎるよ!』 『実際エルトリアには転移したし! リインだって事故で転移してきたでしょ!』 『そうだったぁ! そもそも実体験だったんだ!』 『……恭文くん、だから……夏には気をつけよう? 絶対ね、この調子だとまた偉いことになるから。こういうものを使わないで済むように、ね?』 『大丈夫ですよ。この間街で手相を見てもらったとき、今年は運勢最高……特にいちごさん達がサードアニバーサリーライブに出るころは最高過ぎて、運命の出会いもあるって言われましたから。いや、ふーちゃんと舞宙さんもいるけど』 『すっごく気を遣われたんだよ。だから……ね? まず私と一緒に、お祓いに行こうよ』 『なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 『でもやっくん、デートってことならいいんじゃないかな』 『あ、そうだね。ならあたしも行くし……美容整形外科に』 『『『『胸から離れて!』』』』) ◆◆◆◆◆ ※アイゼンフォーム(Ver2020) おなじみリインとのユニゾン。想定されているはやて以上の適合率を叩き出し、アルトアイゼンも交えて三人で古き鉄と言わしめるだけの能力は本編通り。 ただし、ショウタロス達とのキャラなりで“命と身体を信頼できる誰かに預けて戦う”ということに幼少期から慣れていた関係で、リインに身体の主導権を預け、戦闘を任せることも可能となっている。 (原理的に言えば、アニメ本編でも出てきた融合事故。それを意図的に……制御できる範囲で起こし、お互いによどみなく主導権を預け合える状態となる。それも含めて想定外すぎるとはシャマルの談) 恭文が表に出た状態では、基礎スペック向上とリインの的確なサポートにより、変則的ガードウイングおよびフロントアタッカーとしてより研ぎ澄まされる。(元祖本編通りと言える) リインが表に出た状態では髪型も寄せられ、恭文が苦手とする多弾生成・平行術式処理も難なくこなすフルバックとなる。 また恭文ほどではないにしても、小柄さゆえに不得手としていた近接戦闘にもある程度対応可能。(こちらはリイン自身の技術も絡んで本当に“ある程度”止まりだが。というより、そうなった場合は恭文とスイッチした方が早い) 使用できる能力の幅、戦闘スタイルそのものが格段に広がることもあり、定義的にはマスター級に属するスーパーオールラウンダーと言える。 ただしお互いに共有できる技能にも資質差から限界はあり、恭文自身もリインほど内側からのサポートは手慣れていない。 そのため安全かつ十全に能力を扱うのであれば、その齟齬を上手く埋め合い、相互理解を怠らない連携と鍛錬が必須課題となっている。 元ネタは仮面ライダードライブのタイプトライドロン。 なお本編軸でもショウタロス達とのキャラなり経験と、恭文とリイン自身の成長を生かしてこの領域に到達できる模様。 ◆◆◆◆◆ 古鉄≪能力が凶悪といえど、それはネタが割れていなければの話。更にいかにインジャリーの力を引き出していたとしても、伊佐山さん自身は戦闘の素人。 それに対応する幅広い能力と生かす経験があるなら、実質的に無力化するくらいは楽勝というわけです≫ 恭文「でもこれすらやっぱり時間稼ぎ。……切り札はウィザードメモリだもの」 古鉄≪もたもたしていたらレベル5となり、学園都市最強ですからね≫ 恭文「それは違う!」 (そう、違うのです。というわけで次回こそ決着……決着! 本日のED:玉置成実『Reborn』) 恭文「……実はね、エクストリームで決着するルートも書いているんだ。戦闘シーンは全部、最初にばっちり書いたの。 お蔵入りするのはもったいないから、それもまたこっちが片付いたら出そうと思います。こう、IF的に」 古鉄≪あちらはどちらかというと王道展開ですよね。こちらは極力キャラなりに頼らずに……ある意味大人への一歩を踏み出したルートです≫ シオン「そうですね。お兄様はもう、私達だけのお兄様ではない。それは少し寂しいけど……でも」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |