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小説(とまとVer2020軸:劇場版リリカルなのは二次創作)
第57.5話 『日常は呆れるほど続く』




魔法少女リリカルなのはStrikerS・Remix

とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020

第57.5話 『日常は呆れるほどに続く』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


西暦二〇二〇年(新暦七十五年) 九月二十三日

都内某収録スタジオ



「……ほんと馬鹿ですよねぇ。内調や警察庁も敵に回すっていうのに」

「なに言ってんだか。ナギナギだって、こういう遊びはハマっているだろ?」

「お前も俺達と同じ。まともな刑事にはなれない奴だ。一目見て分かった」

「えぇ。知っています。
――――じゃあいきましょうか!」

「あぁ」

「オーライ――!」

『…………はい! OKです!』


音響監督さんの声に、張り詰めていた空気をふっと吐き出す……切り替えて、客観的な自分を取り戻していく。


――――日々は慌ただしく続く。

新曲の収録にー、プロモーションで番組出演とか取材にー、もちろんふだんの収録も頑張って−。

幸いというか、デビューしてから仕事もコンスタントにもらえていて……それも外画吹き替えやナレーション! 実は昔から憧れの一つだったお仕事が多くなってきてさー! 滅茶苦茶嬉しいの!


もちろん歌やアニメのアフレコとは違う難しさがあるし、失敗もしつつも試行錯誤する毎日だけど……でも、それがやっぱり楽しかったりして。

そうして気づくの。私の夢はやっぱり現在進行形。目指した頃とは超える壁の質も、高さも、数も、そうして出すべき答えの水準も変わっているけど、その根っこは変わらない。

私は結局好き勝手がしたいだけで……でもそれが、誰かの元気や笑顔に繋がったら嬉しいって、我がままに願い続けているだけで。


奇麗事でご都合主義。でも、そういうことがあるのが人生の面白いところで、難しいところで。

もしかしたら万が一もあるかもしれないけど、それも背負う覚悟を決めて、一歩一歩……そんな気持ちを支えてくれるのは、やっぱり青い空で。

この間まで違う世界の空を……その下で暮らすたくさんの人達を助けるために頑張っていた子。その子と、その子の大事な夢と見上げた空。


その夢達はもう帰っちゃったけど、でも思い出は、終わらせないと決めた時間は変わらない。この空がいつだって、私達を繋いでくれる。

…………まぁ、今はレギュラー番組の収録中だから、屋内なんだけどね!


「それじゃあお昼休憩に入ります! みなさん、午前の収録はありがとうございました! 午後もこの調子でいきましょう!』

『はい!』


そんな収録も一段落……劇場版アニメの出演だから長丁場! というか、侍少年ナギーの劇場版! 『あぶない侍編』……はい、恭文君と鷹山さん達の出会いが元ネタです。

まさか周り回って、間近で垣間見た事件のアニメ化に出演するなんて……さすがにこの好き勝手の影響、予想外です。

もちろんこれが恭文君の実体験で、その辺りでこう……いろいろ脚色されまくっているのとは言えず、なかなか微妙な立ち位置にいます。


いや、この居心地の悪さは、それだけじゃなくて……。


「いやぁ……でも舞宙さん、凄いですよ! 真下カスミ、滅茶苦茶合っています! もう生き生きしています!」

「うんうん……! もうね、はまり役。今までいろいろ見てきたけど、凄いぴったりきてるよ」

「あははは……ありがとうございます」


主演でもあるユキノ・カナメちゃんや、ベテランの速水さん達に褒められるのは嬉しい。

カナメちゃん、児童劇団出身だし……実は速水さんともども歴戦の勇士だよ。私より年下なのに、凄い気合いが入っている子だし。


でもまさか、言えない……本当になにも言えない……。


「でも、知り合いにわりかし近い人がいるので、参考にしているところも……大きいんですよ。私自身そこまできっちりしたキャラでもないですし」

「え……あの、妖怪具合の参考に?」

「いや、あそこまで極端ではないですけど、こう……お調子者だなーって人がいまして」


…………あの、真山カオルさんポジの役だから、実の本人を参考に好き勝手しているだけなんて、絶対言えない……!

やばい、心がめっちゃ痛い! アフレコへ望むとき、覚悟は決めたはずなのに! それでも胸に痛い! なに、この名前のない怪物的なサムシング!


「そうなんですね……。まぁでも、そういうのはありますよ。人間観察って言ったらあれだけど、いろいろ見ちゃうのは」

「カナメちゃんも?」

「えぇ、それはもう! …………素敵なお山がたくさんだし〜♪」

「……それ、違う観察だよね?」

「……君、それは駄目な癖だって叱られていたんじゃないっけ? 児童劇団時代から、いろんな人に」


そうそう、カナメちゃんはこう、すっごく……揉み魔です。というか、あたしの胸も触ってきます。いや、女の子だからまぁいいんだけど、凄く欲望に忠実です。

試しにオパーイに魂は現れるかと聞いたら……。


――現れるに決まっているじゃないですか! お山は……オパーイは、私達のすぐそこにある神秘なんです!――


スピリチュアルな表現を更に推し進めてきました。多分恭文君とは話が合うけど、会わせない方がいいと感じました。こう、世の中の平和的に。


「でもでも、舞宙さんの彼氏さんな忍者君も、お山に魂が現れるって開眼しているんですよ!? 私達は一人じゃないんです!」

「え……そう、なの?」

「その、純粋な気持ちで……そこから大人な秘め事に持ち込む余地などないほどに、目を輝かせます。
……でもそれ、誰から聞いた!? あたしは言ってないよね!」

「あ、才華さんです。きっと話が合うよーって」

「サイちゃんのアホがぁ!」

「……まぁ、仲良く……していこうね? うん、きっと誰も悪くないはずだから」


あたしが極力関わらせないようにと遠慮していたのに! その細心の注意を全て砕いてくれたよ!

やばい……世の中が荒れるかもしれない。そんな心配をしながらも、お昼のために外に出る。

さすがに劇場版収録レベルとなると、みんな一緒にご飯というのも難しい。それぞれ適当に過ごす感じなんだ。なので私も今日は一人飯。


ちょうど近くに、雰囲気がよさそうな洋食屋さんを見つけてね? テラス席もあるし、のんびり外で食べようと思う。

一番のおかずは、この青空ってわけだよ。でも……何がいいかなぁ。のどの調子も気をつけなきゃいけないから、あんまり濃いものや辛いものは避けなきゃいけないでしょ?

でもがっつりは食べたい……オムライス? いや、でもライブに飛び入りゲストする前だしなー。多少は節制しないと……。


≪〜♪≫


わくわくしながら初秋の空気を斬り裂き、歩いていると、懐からぴこんと着信音。

邪魔にならないよう脇に寄って、スマホをチェックすると……あぁ、やっぱりだ。


――お裾分けです――


白い雲がほどよくたゆたい、広がる蒼を彩っている画像……今、メッセージを送ってくれたあの子がいる場所。

しかも追加の画像が…………うわぁ、滅茶苦茶美味しそうなぶりの照り焼き定食! ちょっと、洋食から和食へ強引に方針転換させないで! こういうの弱いんだから!


でも……次の瞬間には笑っていて。


「……ちゃんと帰ってきたんだなぁ」


高校三年の大事な時期に、テロ事件に飛び込むとか言うから……本当に心配していたんだよ。

ちょいちょい連絡は取っていたし、夏には帰っていたけど……でも夏は、私のスケジュールが絡んでそんなに会えなかったしさ……!


「だから、うん……驚かせてあげるよ」


もう三日後だしね。今日のアフレコが終わったら、明日から最終リハの開始だもの。滅茶苦茶気合い入れて、めいっぱい届けてあげるから。


「私は相変わらず……ううん、現在進行形で、君のことが好きだってね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


西暦二〇二〇年(新暦七十五年) 九月二十三日

東京都内 たるきビル≪765プロ≫事務所



たるき亭でお昼もいただいてから、改めて765プロに挨拶へ……みんなにも心配はかけたから、まぁミッド土産もいくつか持った上でね。

それでかくかくしかじかと、僕がいかに活躍したかを説明したところ。


「――という感じで、無罪放免。無事に帰れたってわけよ」

「蒼凪くん……!」


あれ、社長……高木社長? なんで頭を抱えるんですか。喜びの涙なら分かるけど、どうして困惑しているんですか。


「プロデューサーさんは、悪魔なんですか?」

「春閣下に言われたくないわ」

「私は閣下じゃありませんよ! というか、言いたくなる気持ちを分かってくださいよ!
ウルトラCやK点越えってレベルじゃありませんよ! いいから自首してくださいよ!」

「だからぁ……台風のしでかしたことなら、誰がどう責任をーって話にはならないのよ?」

「台風じゃないでしょ! プロデューサーさんでしょ! ……もう嫌だこの人―!」


今日は心配をかけたみんなに、お土産片手に……というか、誕生日プレゼントも片手にやってきた。まぁ美味しいお酒なんだけどね?


「銘酒≪魔王≫…………これ、ヴァイスさんや大下さん達が言っていたのよね! 向こうの滅茶苦茶美味しいお酒!」

「えぇ。一緒に渡した缶詰も、おつまみ系としてはかなり美味しいので……試してみてください」

「早速社長や善澤さん達と一緒に楽しむわ! ほんとありがとう! ずっと気になっていたのー!」

「……春香、小鳥にはもう関係ないっぽいし、言っても無駄だと思うな」

「正義はどこにあるの!?」

「春香ぁ……正義は勝たなきゃ正義じゃないんだよ?」

「その弱肉強食理論は知りたくなかったぁ!」


あぁ、春香がまた絶望して……よしよし、閣下なのはおのれの特性だからねー。上手く付き合っていこうねー。


「でも、ひとまず無事で……怪我もなく終わったのは安心しましたぁ。……はい、お茶ですぅ」

「ん、ありがと。雪歩」


雪歩からお茶を受け取り、ずずずずず……はぁ、落ち着くねぇ。


「うん、美味しい……」

「よかったですぅ」

≪久々にほっこりしていますねぇ。いいことです≫

≪なのなの−。主様はもうすぐ修学旅行もあるし、文化祭もぎりぎりで参加できるの。ここから高校生活最後の一年を満喫なのー≫

「まぁでも、なのはちゃん達も上手く纏まって……というのが、私的には本当に安心よ」

「かなりぎりぎりでしたけど、まぁそこはなんとか……」


もう一口お茶をいただきながら、一安心な小鳥さんには首肯。


「そもそもの原因が管理局トップの暴走と不正……。
そこにゆりかごほどの規格外ロストロギアの隠匿が絡んでいたから、情報統制が徹底していたこと……。
加えて、六課の裏後見人だったミゼットさん達が近い“暴走”をしていたこと……。
これらを現場の……ただの一部隊だけで逆らって、全部覆すのは原理的に不可能ですからね。それで上手く纏められるラインまで目こぼしされた感じです」

「でも、そのミゼットさん達も謀殺されていたのよね……」

「というか、その最高評議会も裁判や懲役なんてできるの? 脳髄だけとか言うテンプレに則っていたのよね」

「それについては僕も意見書を出した。もう残しているだけで害悪だから、公的に処分した方がいいってね」

「……人間扱いすらためらわれるわけか」

「いや、ちょっと待って! プロデューサー、民間協力者ですよね! それで意見書って!」

「異能・オカルト事件の専門家として……魔法以外の異能に詳しい人間としてって感じ。正直管理局でも持てあましているんだよ」


真やみんなにはこれも仕事だと、肩をすくめるしかなかった……。


「そもそもオカルト的な定義で言えば、人間の体はそれ自体が一つの世界なんだよ」

「世界、ですか?」

「精神や魔力……そういうもの“物質として定義できない臓器や血液”を内包する、生命という名の世界。肉体はその世界が存在する土台であり、殻でもある。
……これ自体はスピリチュアルなものでもなんでもない。その特性を利用し、世界の修正力から逃れるため、体内のみで術式を発動……その恩恵を受けるってタイプのものもいくつか存在する」

≪たとえば私達が前に戦った異能力者だと、行動速度を二倍・三倍と跳ね上げる術式を使っていましたね。
ようは体内時間を術式で加速させて、そういう効果を発揮させているわけですけど……≫

「世界の、修正力……それがあると、術が使えないんですかぁ?」

「使えないというか、世界そのものが潰しにかかる」

「えぇ!?」

「そういう自分にとって都合のいい世界を一部と言えど展開する行為はね、テーブルクロスにできたシミみたいなものなんだよ。
存在することそのものが異常と見なされて、目に見えない修正力で洗い流される……結果、膨大な魔力がないと、短時間だろうと維持が難しくなるの」


まぁそのもっともたる例は、やっぱり固有結界……大禁呪とされている魔術だね。

今アルトが言ったのは、元々は衛宮って封印指定された家系が研究していたものだ。


「完全キャンセルに近い状態でも魔力が使えるのも、これに似た原理だ。体という殻の内側であれば、その中で魔力や術式の構築を行うのであれば、魔法効果は発揮できる。
もちろん使える術式の種類や、消耗なんかは相応に増えるし、体得自体が高等技術だけど」

「ん……でもそのお話、その脳髄には関係ないっぽいの」

「だからおのれはゆとりなんだよ……」

「なの!?」

「言ったでしょ? 精神や魔力……そういうものは、肉体という殻の中で動く物質的ではない臓器であり、血液だと。
……だったら、それを捨て去り、脳髄だけになった最高評議会は、そもそも生命として定義できるの?
そんな奴らが、人間の気持ちを理解し、正しい治世を行えると?」

「……!」


美希は察しが本当にいい。僕がなにを言っているか……どれほどおぞましく残酷な視点に触れているのか、すぐに理解し、顔を真っ青にしたから。


「内包された世界を……個としての我欲すらなくした結果、奴らは“人間とは解り合えない異性物”に成りはてたのよ。
だからこんな状況になっても、一切反省の弁がない。そもそも“なぜ悪いのかすら”理解できない。
同時に自分達は世界のためにそこまでしたのだから、他の連中もそういう覚悟が……そういう責務があると本気で思っている。そんな自分達が世界に、管理局に必要で、その判断は正義でしかないと」

「それ、すっごく怖いよ……!」

「まぁだからこそ、徹底的にさらし者になってもらった上で、諸悪の根源として処断されるだろうね。
そうして自分達が縋っていた……自分という世界より大事にしていた、時空管理局と次元世界そのものから、不要の存在だと突きつけられるわけだ」

「自業自得とはいえ、相当に無残ね」

「しかも肉体は、他者と繋がるためのツールでもある。それを失い、移動すら自分の意思でままならなくなったあいつらは……ポッドのネットワーク回線やら音声処理機能を切ってしまえば、正真正銘生きているだけの標本だ」

「え、待ってください。プロデューサー……ということは、もしかしてぇ……!」

「もうてんで話にならないから、裁判のとき以外は生命維持機能以外OFFにしたそうだよ」

「奴らは妄言を吐き出すことさえできない……かぁ」


伊織がやりきれないと首を振る。でも、致し方ない……当然の結末だとも思っているようで、シャルル(うさぎのぬいぐるみ)を険しい表情で撫でた。


「でもそっちの調査も年単位の仕事になりそうだよ。ヴェロッサさんがぼやいていた」

「まぁそうよね。ミゼット提督みたいな謀殺事件が一度だけとは思えないし……そういう余罪を、数十年単位で洗い出そうとするなら」

「しかも被害者と加害者の境界線がかなり繊細だ。核ミサイルやSAWシステム乗っ取りによる大量虐殺もあったから、余計にナーバスだよ……。
クアットロ辺りは相当やらかしているし、多分軌道拘置所への収監コースだ」

≪他のメンバーも似たり寄ったり。先日も更正プログラムの絡みでゲンヤさん達と揉めて、派手に喧嘩したそうですし≫

「ディードやウェンディ、オットー……それにボルトが面倒を見ていたセッテくらいかぁ。今のところ更生の見込みアリと判断されているのは」


他はもう、まだ状況に納得しきれていないことを加味しても……かなりやばい状況だよ。クアットロも心が完全にへし折れているけど、それでもさぁ。

さすがにそっちは反省もなしじゃあフォローしきれないし…………はぁぁぁぁ、仕方ないか。スバル達を引っ張った手前、きちんとしないと。


≪また説得なりしないと駄目ですねぇ……。このままそれならいっそと、拘置所への収監を希望しそうですし≫

「まぁね。ディードとセッテについては、僕が面倒を見る方向で決まりそうだし」

「決まりそうって……引き取るのか!? 恭文が! というか更正の説得までするのか!」

「それも課長の仕事ってことだ。とにかくゲンヤさんもそうだし、そのゲンヤさんのそばにいるカルタスさんも……他の局員も、事件が尾を引いていろいろ引きずっているから」

「いや、それは当たり前でしょ! というか、被害者遺族に更正プログラムを手伝えとか、どんな拷問よ!」

「遺族でもなんでもない奴らは拒否反応丸出しで、それを見ていられなかった……それに組織的に甘えてしまったってのも付け加えて」

「でも、プロデューサーが……二人も引き取るなんて……」

「ディードについてはむしろ歓迎だよ。それにセッテも……さすがに首輪付きのボルトに、保護者になれってのは難しいしね」


……今度こそ決着をつける。事件中は仕事優先で、あの一度しか本気でやり合えなかったしね。

僕もあのままは気持ち悪いし、ちょっと鍛えておかないと……!


「この流れだと、ウェンディとオットーもって感じになりそうだと思っていたんだけど……ゲンヤさんやカリムさんが、自分達で預かれないかって話をしてきてね」

「被害者であり遺族なのよ!? それはどうなのよ!」

「だから年単位で相談するところ。というか、なんにしても一般人の身元引受人は見つけられないもの」

「あぁ……普通にサイボーグって感じだものね。力で来られると抑えられないか」

「まぁ大丈夫だよ。いざとなったら全員模擬戦でたたき伏せて、言うことを聞かせるし」

「やっていることが完全に蛮族じゃない!」

「いや、部活ではよくあること」

「部活じゃないのよ! 更正なのよ! その前提をまず理解しなさい!」


伊織がまた、ティアナみたいなことを……やはり広めなきゃいけないね。この世界に……我が栄光の部活を!


「でもでも、兄ちゃんもやっぱ悪党だよー」


決意を固めていると、ソファーの後ろから亜美と真美が脇を撮り、こっちの顔をのぞき込んでくる。

こやつら、そういえば知り合った頃よりずっと大きくなって……僕より背も大きくなって……! 一体どうなっているんだよ! 双子パワーなのかな!


「ティアナお姉ちゃん達には言ってなかったんでしょ? 自分達が解決したって広まったら、管理局ちょーやばいぞーって話」

「そうだよー。みんな首覚悟だったろうにさー」

「実際にきちんと制圧できるかどうかも未知数だったし、取らぬ狸の皮算用すぎたもの。僕も上手くギャンブルに勝てただけ」

≪最悪の場合はオーリス三佐が再編成していた首都航空隊や他の部隊と協力して、数に任せて叩くつもりでしたし……とはいえ、こちらも釘は刺されました。
今後管理世界内での原子鳴動破砕砲≪プロトンサンダー≫とEMP攻撃は原則禁止。確認できた場合は相応の処罰も考えると≫

「しばらくはいろいろ目をつけられるだろうしねぇ。まぁ、自粛期間はちょうどいい目くらましになるよ」

「その釘刺し程度で済ませるってどうなのかなー!」

≪この人の魔力じゃ、その手の攻撃を連発なんて無理……その上他の人が術式を使えないというのもありますから。まぁ仕方ありませんよ≫


真美や亜美には、そこも上手く考えているからとお手上げポーズを返す。……多少の自重は込みで。


……なにせ瞬間詠唱・処理能力を生かして、膨大なプログラムを瞬間処理して放つものだもの。あ、EMP攻撃は違うけどね? あっちはシルビィにぶっ放してもらった実体弾だし。

こういう非常事態でもなければ……いや、結界の中といえど、やっぱり都市部でほいほい使うのは完全にアウトだ。そこはきっちり刻み込まないとね。

そういう手段を取った時点で、僕もスカリエッティやらクアットロ達と大して変わらない。どこかで街に住む人達を二の次にもしている……そういう敗北を喫したんだと。


うん、やっぱり反省して、また考えていくことばっかりだ。さすがに勝てば何でもOKって感じにするには、事件の規模がでかすぎる。


「でもそうなるとこれから……管理局? どんな感じになっちゃうのかな。がたがたーって潰れるのは避けられるんだよね」

「ひとまず最高評議会制度や、ミゼットさん達のような相談役的役職は撤廃。ハラオウン一派のような家族的コミュニティが幅を効かせないよう、縁故採用にはある程度制限をかけてって感じだろうね。
……あとはまぁ、ほんと数年単位での組織改革だよ。できた穴は適当な資本や人員によって埋められるし、本局も今までよりも発言力が弱くなる」

≪特に言われているのが、やっぱり地上からの予算や人員の吸い上げなの。
ミッドの廃棄都市・再開発区域からも、前からちょこちょこツツかれているところだったけど、今回のことで本格的にてこ入れが入ると思うの≫

「……廃棄都市って、あれだよね。プロデューサーが試験を受けた……魔法の練習場みたいな場所」

≪そういう“再利用”や“再開発予定”も進行中……という感じでごまかしているのが、実情だったの。
実際にはそういうところを崩して、新しい街を作るお金にも事欠く有様だったの≫

「シムシティでお金がかつかつの状態かぁ……!」


小鳥さん、そこでシムシティを持ち出しますか。いや、まぁ近いところではありますけど。


「というか、だからこそのラプターリース計画だったのね……」

「もちろんレジアス中将が、あそこまで本局を嫌い、豪腕だったのもですよ。
しかもその本局の発言力なんかも、最高評議会の後押しがあればこそ。ようは奴ら、自分のテリトリーを増やし、支配するために本局をせっせと働かせていたんです。
……自粛期間という意味なら、多分本局の方がずっと意味は重たいですよ」

「なのはちゃん達もこれからが正念場かしら」

「なのはとシグナムさん、シャマルさん、ザフィーラさんはまだ大丈夫ですよ。なのはとシャマルさんはそれぞれ政治が絡まない仕事ですし、ザフィーラさんは局員でもない固有戦力。
シグナムさんについては、ミッド地上部隊での勤務が主でしたし……ただ、はやてはそれなりに針のむしろですよ。今回のことで、一部隊を率いる適正に欠けていると証明されましたから」

「偉くなって組織改革って夢も弾けちゃった感じ?」

「ポップコーンみたいにです」

「……それでも上手く纏まったんだ」

「そうだよ。組織や部署の長ってのは、こういうこともお仕事だからね」


だから、この点では一切同情しない。犯罪者扱いにならなかったんだから、むしろ喜んで笑えとすら言える。

理由はどうあれ、SAWシステム導入を……部隊員を同調圧力で黙らせ、危険にさらしたのは事実だったから。


複雑そうな美希には、そういうものだと肩をすくめて続ける。


「それにまぁ、六課が設立された目的は一部といえど達したし……本望でしょ」

「でもプロデューサー、予言対策という意味では失敗では……」

「それも必要なデータってこと」


隣に座る千早も見えるように、空間モニターを展開。

今のミッドの状況を知らせるニュースやら、六課の様子などを映し出して……みんなも軽くのぞき込む。


「千早が言うように、六課がスカリエッティ一味を止める……予言成就を阻止するという意味では大失敗だ。でもその運用で得られたもの全てが駄目ってわけじゃない。
まずは部隊内での独自教導や装備開発の重要性や、その有用性……最後スバル達を連れて行けたのだって、その辺りできっちり成果があればこそだし」

≪盗用こそされましたけど、トイフェルライズキー……新しい側面でのAMC装備が有用なのも証明されました。こっちは私達も絡んでいる部分ですけど≫

≪あと失敗面もやっぱり必要で大事なの。
家族的な……身内ばっかりが固まった部隊だと、トラブルが重なったときに深刻化しやすいとか……。
後見人からそういう姿勢だと、余計にそれが加速しちゃうとか……もしまた機動六課みたいな部隊ができるときは、そういうことがないよう調整されるはずなの≫

「……それは、いろいろ安心できない感じだけど」

「でも必要なことだとも思う……というか、“うち”も気をつけないと駄目な話よ、それは」

「デコちゃん?」


向かい側に座る伊織が、優しくシャルルを撫でて、軽く呆れ気味に呟く。


「そっか……おのれにはわりと近い話か」

「というか、アンタなら分かるでしょ? 家族的なのがブラック企業の常套句だって」

「えー! それ、おかしくないかな! だって家族だったら、みんな仲良しだし……ほら、私達765プロだって!」

「美希もそう思うな。ブラック企業って、こう……このクズがーとか、馬鹿がーとか怒鳴って、言うこと聞かせる感じ」

「「んなわけないない……」」

「「えぇ!?」」

「美希、やよい、二人の言う通りよ。家族だから無茶ぶりしてもいい……法律を無視した無償の奉仕も許される。そういう意識で過剰労働を強いることの方が多いの」

「家族に従わない……仲間にたてつくのが悪と、そう知らしめることで精神を縛るわけだ。
なので機動六課や最高評議会などの顛末については、私にも耳が痛い話だよ……」


あぁ、社長と律子さんが反省気味に……やっぱり経営サイドから考えると、問題に感じるところがあるんだね。なにせ美希ややよい……所属アイドルがこの意識だもの。


「それにそもそもの話を言えば、組織のトップが部下を守る……守ってやらなくてはいけない。生活や人生に責任を持たなくてはいけない……そういう意識から邪魔なのだよ」

「ど、どうしてですかー!? だって、家族で……お父さんみたいな感じなら、そう考えても当然かなーって! 現にうちのお父さんは」

「それは逆に言えば、自分の部下が……家族でも何でもない一人の人間が、自分の庇護なしではマトモに生活もできないし、守る必要があるほど弱い。そう見下していることになるからだ」

「ぇ……!」

「そういう感情が……無意識にでも突きつける“情に訴えた上下関係”が、今あげたようなパワハラ行為に転換されやすいんですよね……。
だから経営サイドとしては、忘れちゃいけない。社長も、社員も……アルバイトも、もちろん個人事業主なアイドルも、労働を対価に給与を得る“対等な存在”だということを」

「でも、美希達は上手くやっているよね」

「リスクを孕んでいるけど、ただ運良く爆発していないだけかもしれないわ。そこは絶対忘れちゃいけないと思う」

「「…………」」


美希は納得しきれない様子。でも……安易にはねのけるのも違うと感じたのか、神妙な顔で押し黙る。

それはやよいも同じだった。やよいにとって家族は幸せで、大事なものの象徴だから……その空気が漂う765プロの有り様が、危ないものだという自覚はなかったようで。衝撃で瞳が揺れていた。


「そういう意味では、はやてさんやミゼット提督達の判断は完全にアウトよ。その結果SAWシステムで部隊員の命すら危険にさらしたわけだし……」

「確かに……自分達が元いた961プロみたいな規模だったら、また違うよな。みんなこうやって顔を付きあわせるのも難しいし」

「だから、組織の規模に合わせたやり方を、その都度模索していく姿勢……柔軟さは必要になるの。
……もし765プロがより大きな会社になるのなら、多分今みたいにはいかないでしょうね」

「そうしたら私達の関係も、変わっちゃうんでしょうか……」

「あのね、春香……大事に思うものや、みんなを大切な仲間だと感じる気持ちを放り投げることはないと思うの」


春香の不安を……ほの暗いなにかを察し、律子さんは告げる。

変わらないものはあってもいい。だけど、それだけにしがみつくのもまた愚かなのだと。


「でも、そこに“仲間じゃない人達”が入ってきたとき、どうするかって考えは今のうちから持っておいてほしい」

「律子さん……」

「その人達も仲間で、新しい家族だって言うのは簡単よ? でも、その人は私達とはとは違う働き方がしたいかもしれない……。
もしかしたら何らかの障害があって、そもそもそういう動き方を強いられているかもしれない……」

「障害!?」

「規模を拡大すると、アイドルやスタッフにもそういう人が出てくるかもしれないってこと。今は発達障害や境界領域知能の問題もあるから……」

「あぁ……そこを言われると辛いですね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


みんな混乱する話なのは当然だ。少なくとも今の765プロには、関係がない……はず。

だけどこれも、将来に備えた布石としよう。みんなが夢を大きくするのなら、必要な礎としよう。


だから僕も……スケッチブックを取り出し、丸い縁をいくつか書く。


「律子……さん、その境界知能ってなにかな。はったつしょーがいは、最近いろいろやっているし……美希にも分かるけど」

「……美希、今恭文君が書いた丸……それをケーキとするわよ? そのケーキを三等分しろって言われたら、どう線を入れる?」

「それなら、こう……Yの字でいいんじゃないかな。なにかの高い車みたいに」

「はい! 私もそうしますー!」

「自分も、そうするな。な、貴音」

「えぇ。前にいただいたけぇきを、響と美希の三人で分けたときは、そのように……」


律子さんが意図を察してくれて大助かり。だからスケッチブックに、別の三等分を……等分にならない分け方を次々書き込んでっと。


「ですが、その問題は……」

「この問題はね、ある精神医さんが、少年院に入所していた子達に出していた問題なの。知能や精神状態を図るためのテストとしてね。
……それで、決して少数とは言えない人数が、この問題を解けないという事実が分かったの」

「こういう形でね」


というわけで、みんなに分けたものを見せる……。

ただ三つに線を入れたものや、Yの字にならない滅茶苦茶な入れ方……そもそもTとなっているのもある。それを見て、みんなが目を見張って。


「えー! これ、三等分じゃないですよー!」

「そうじゃんー! 亜美だって分かるよ!? ね、真美!」

「これが解けないっていうのは、ちょーっと駄目じゃないかなー」

「年少組は今の台詞を覚えておいた方がいいねぇ。思いっきり差別発言に該当するから」

「「「えぇ!?」」」

「一般的に知能障害とされているのは、今の定義だとIQ六十九以下。境界知能は七十から八十四の人を指すんだ。……昔なら、知的障害だと定義されていた人達をね」

「それ、今は違うってことなの?」

「違う。……それでね、この問題を解けなかった非行少年達は……そのほとんどが境界知能に位置するの。
そもそも三人やみんなのように、“これが間違い”だということすら認識できない場合も多い」


知的障害者とは言えないし、かと言って一般レベルとも言えない。定義が変更されたことにより生まれたグレーゾーン……取りこぼし。

それが、この二一世紀に入って二十年も経とうとしていた中で、かなり話題になっている。そのキッカケの一つが、件の精神医さんだ。


「知能境界に属する子達には、適切なサポートがないと自立そのものが難しい。でもぱっと見じゃ分からないし、普通の応対はできるから、その境界にいることそのものが気づかれにくい。
問題が起きても、周囲もやる気がなくてサボりがちな、ただの駄目な奴だと認識されて、本人も余計に追い詰められる。
……その結果犯罪などを起こして、少年院や刑務所に入っても……そこでも適切にサポートされず、ただ無為に懲役を食らうだけで、再犯に繋がる」

≪実際にその精神医さんが診ていた一人が、再犯から重刑を食らったそうですからねぇ……。
それも少年院での行いもよく、関係者一同もこれならと安心していた人が≫

「その点が今、かなり問題視されているの。ようはその適切なサポートが行き届いていないって話。
発達障害……目には見えない障害が、世間に認知されてきているから、余計によ」

「でもほら……悪いことしたら、反省しなきゃいけないよね! それでちゃんとできないのは、自己責任だって美希は思うな!」

「その自己責任で、おのれもそういう誰かを追い込んでいるかもしれない。もちろん僕もだよ」

「なの……!?」

「三十五名一クラスの教室があったとしよう。……そのうち五人が知能境界に属するそうだよ」


律子さんと僕の言葉で、やよいも、亜美も、真美も……他のみんなも察する。


「待ってください、あなた様……それでは」

「七人に一人……結構な確率なんだよ。しかもグラデーション的で、画一的な症状がない。
ここは発達障害もだけど……そのために専門のお医者さんでも、対応には四苦八苦しているのが現状だよ」

「何かの病気みたいに、薬や手術で治療できるものでもないものね……。
美希、恭文君が言ったことは……今の社会なら、本当にあり得ることなの」

「律子……さん……」

「というより、起こっていたことが……それまではその人の“自己責任”で済ませていたことが、そうじゃなかった。手助けが必要なのに、それを放棄していたんだと判明している最中。
そもそも一度罪を犯した人に世間が……社会があまりに厳しすぎて、自立や更生すら認めない風潮も強いから、余計にね」

「前に……鷹山さん達の後輩でもある水嶋さんが、似たようなことを言っていました。誰でも犯罪を起こしうるから、余計に目立つ醜悪な部分……日本社会の闇だと」


水嶋さんは海外でNPO活動もしていたことがあるから、あの言葉は重たかった。それは今、ディード達が向き合っている現実とも近い。実際カルタスさん、相当ぶち切れたようだしさぁ。


「たとえばよ、おのれらが自転車に乗っていて……たまたま脇道からおばあさんが飛び出して、轢いてしまった。おばあさんはそのまま死んでしまった。
状況的におのれらに全く非がなくても、前方不注意だったとか、そういうことを言われて起訴され、殺人犯として裁かれる……そういうことなら、あり得そうでしょ」

「でも、それでも……みんな、許してくれないんですか?」

「犯罪者だから。自分達とは違う怪物みたいなものだから……関わりたくないし、そのまま死んでくれればいい。
そういうことを宣うわけだよ。“自分は絶対、そんな怪物にならない”という根拠のない自信を誇りながらだ」

「だから……私だって同じ。もしかしたら今までの人生で、そういうふうに理不尽な傷つけ方をしたかもしれない。その人は、今も私の言葉で苦しんでいるかもしれない。
……もしかしたらみんなの中に、発達障害や知能境界に属する子がいたら……その子に通じず、追い込むような叱り方をしたら……その子がもし、犯罪を起こしたら」

「……それも、律子……さんの……美希の、せいになるの……? 何も知らなくても」

「それを自己責任とか、知らなかったから悪くない……そんな言い訳にするのは最低だって……そう言える自分でありたい。
……まぁ、我がままだけどね」


律子さんはそれも傲慢と自嘲。でも、その決意に……戒めに、美希はなにか感じ入るものがあったのか、胸が震えて。


「でもまずそこが……働く上での対等さとか、765プロの先を見据えるために必要だと、そう思うの」

「ん……」


ぱっと見で分からない障害……仮に目の前に“駄目な子”がいたとしたら、その子はそういう障害を……障害と定義するのも難しいグレーゾーンを持っているかもしれない。

そんな人を正そうと、奮い立たせようとした言葉で、追い詰め、苦しめ、何らかの犯罪に発展するかもしれない。

で……どうしてそんな小難しい話になってしまうかというと……。


「だけど律子がそんなことを考えていたなんて……ぼく達の前ではそういう話」

「ん、私も……聞いたことがないから、ちょっと驚きですぅ」

「企業的に言えば、障害者雇用枠を設ける……そういうタイミングも来るかもしれないでしょ?
その辺りでうちの実家≪秋月商店≫もちょっと四苦八苦していたから、考えちゃうのよ」

≪なの……?≫

「律子さんの実家、大きめの商店なんだよ。だから律子さん、そういう経営側に回る勉強も兼ねて、765プロに入ったら……一時期アイドルをやって、今でもちょいちょい復帰して」

「してないわよ! 今はプロデューサー一本だから!」

「だが律子くん、期間限定復帰の要望は……実は山のように」

「社長!?」


律子さんはやっぱりプロデューサー一本でいきたいみたい。まぁ元々アイドル関係に興味があって、そこからスタートした人だし、これは仕方ない。

……でも、だからこそなんだよ。世情や流行にもきっちり目を向けているからこそ、先の先を見据えて、考えるところもあるわけで。それは立派な資質だった。


そんな資質に……その有り様に影響されたのは、美希やみんなだけじゃなくて。


「そう言われると俺も……引っかかるところは結構あるな」


赤羽根さんも、ちょっと考えが甘かったかと……軽く口元をなぞる。


「たとえば春香達の後輩で、第二期765PRO ALLSTARSみたいなのを作るとするだろ? それが三十五人としてさ。
その中にそういう障害を抱えている子がいて、でも適切なサポートを今まで受けられなかった……ここでも受けられなかったら……」

≪もちろんスタッフ側に入っても同じですよねぇ。
検査なども受けていない場合、上手くご家族と相談する必要も出てくるかもしれませんし≫

「勤務態勢の調整だって必要だよな」

「絶対に必要ですよ。発達障害で言うなら……そもそも感覚過敏によって、健常者より刺激を受けやすく、疲れやすい……ようはフルタイムで働けない人もいますから。
そうじゃなくても、残業みたいにルーティーンから外れた行動に過度なストレスを感じるとか……それが目に見える障害と違って分かりにくいから、悪意がなくても追い込むこともあり得る」

「サボっているとか、やる気がないとか、もっと頑張れとか……話に出た通りか」

「それによる精神病……鬱などの二次障害を引き起こす場合もありますし、かなり繊細な問題です」


言うならそこら中に、自分以外の誰かを殺す地雷が埋め込まれているようなものだよ。

だから僕も傷つける側にいつ回るか分からない。ううん、もう回っているって考えるくらいがちょうどいいかも。


「そのとき先輩として、社のスタッフとして、何ができるんだろうとは、やっぱり考えちゃうときはあるのよね。でもこれがなかなか……」

「それなら美希も分かるの。いきなり指差しして、君ははったつしょーがいだから、病院に行った方がいいのーとかは……言いにくいよね。美希達は専門家でもないし」

「……うちのお母さん達も、それなりに戸惑いがあったそうだしね」

「そうだったわね。特にあなたは、魔法のこともあるから……」

「美希のど直球はアレとしても、障害者手帳の申請も視野に入る話ですからね。下手したら“私達の家族を障害者扱いするのか”―って訴訟ですよ」

「……たとえ本当に障害を患って、困っていたとしても……ってのが、また難しいところね」

「この手の問題で一番大変なのは、家族の不理解ということかしら」


千早の言う通りなので、律子さんともども首肯。


「事例としても出ているそうなのよ。誰にでもあることだから、気持ちやら慣れ、やる気の問題だとか……そういうので人を追い詰めるケースが。
それも乱暴とかじゃないの。励ますつもりで言っていて、そういう弱音や疑問を吐き出すことから封じてしまう。受診で傾向を確認することすら、甘えや逃避だと刻み込んでしまうの」

「家族的に言えば、自分の身内が障害者だっていう事実を受け入れきれない……そんなわけがないって気持ちもあるそうだけどね。ただ、それが善意としてもやっぱり傲慢だ」

「……厳しいんですね、プロデューサー」

「美希も触れていたでしょ。専門家じゃないって。
……その専門家ですらまだまだ正体不明なところがあって、判断が分かれる部分もあるんだ。
……それを、なんの専門知識もない素人が十全に分かって、ばっちり適切なアドバイスやサポートを送れるっていうのは……さすがにねぇ」

「そういうお話ですか……! いえ、でもそう言われたら、私も……」

「……それで美希も……そうやって、誰かを傷つけるかもしれない。ううん、傷つけたかもしれなくて」


美希は衝撃と恐怖で打ち震えながらも……それでもと、一歩踏み出す。


「プロデューサー……律子、さん! 美希、そのこともっと勉強したい! どうすればいいかな!」

「美希……」

「やっぱりよく分かんない! でも、それは嫌だって思ったの! だから……」

「……そうね。アンタもそういう先輩になるかもしれないんだし……じゃあ、いくつか資料や参考になるサイトも教えるから、ちょっとずつ見てみましょうか」

「うん!」

「しゃあないね。僕もそれなりに持っているから、今度貸してあげる」

「二人とも、ありがとうなの!」


美希はまぁ、わりとずばずばと歯に衣着せないタイプだから……余計に考えたんだろうなぁ。というか、律子さんもそこが狙いだったんだろうな。

それでちらりと、律子さんを見上げると。


――ごめんね。付き合ってもらっちゃって――

――いえいえ――


すぐさまアイサインが返ってきたし!

……美希は言った通りの性格だけど、誰かを傷つけて、それで平然としていられるほど無神経な子じゃない。むしろ悪意を振りかざすタイプじゃないからこそ、そのしっぺ返しを恐れ、嫌い、戒める。

だから会社内の話を通して、外で……そういう、美希から見て駄目な子を、無意識に追い詰めないように。そういうくさびを打ち込みたかったんだよ、律子さんは。


それがなにかの事情が絡んだものかもしれない……障害とまでいかなくても、体調不良とか、生活の上でのトラブルは疑えるしね。

それは他のみんなについても同じ釘刺しだ。みんなが人気アイドルとして台頭してきて、これからいろんな現場で仕事をしていくから……そんな中、必要な視点だとも感じていた。

というか……もしかしたら仕事先で、そういう障害絡みでコメントを求められる可能性もあるだろうしなぁ。ほら、最近問題視されているから。


それで差別に繋がるようなことを言ったら、大ダメージ。だからちょうどよかったってところだよ。


「でも、本当に難しいですね……。そういうものを繊細に受け入れて、新しい人達とも有り様について答えを出していくって」

「春香ちゃん……」

「大丈夫だよ、雪歩。
それでも……それでも、変わっていくなら…………かぁ」


このままではいられない。変わらないものもあっていい。だけど、変わるもの……その中で関わる人達に対して、初心を忘れない精神で、積み上げていく気持ちは持っていなくちゃいけない。

今はなかなかに……想像するのも難しい話だけど、春香は何かを噛みしめるように頷いていて。


「だが……今更話の腰を折るようで恐縮だが」


そこで赤羽根さんが、さっと事務所を見渡す。……変わらない、こぢんまりとした事務所を。


「まだまだ、そこまでの規模になるっていのは、想像がつかないな……」

「まぁ、ぼく達で手一杯な事務所ですしね。ここに三十五人仮に入るってのは、ちょーっと想像が……」

≪ん……なら、本社は本社で残して、また別の活動拠点を外に作るっていうのならどうなの? 他のアイドルさんがやっているシアターみたいな感じならいけそうなの≫

「あ、それいいかも! ね、現プロデューサー!」

「だな! ジガン、ありがとう! なんだか……一気に未来が見えてきたよ!」

≪なのなのー♪≫

「……同時に、壁の大きさも実感として迫ってくるが」


赤羽根さん……そんな、びくつかなくていいですよ。ほら、まだまだ先の話。今は足場固めの最中なんですから。


「その場合、当然俺だけでプロデュースできるわけがない。プロデューサーも七〜八人は欲しい。
ステージセッティングや雑務などで常駐するスタッフも必要だし……やっぱり、そんな中だと障害者雇用とかもあり得そうだよなぁ」

「私達が先輩として、そういう新人組を押さえつけてもアウトですしね。
春香達が出ずっぱりだと、新人が目立たないって問題もあるし……うん、確かに壁は大きいです。
多分少しずつ……企業的にも、アイドル的にも、更に高い段階へ進まないとクリアできない」

「でもそう遠くない未来ではありますよ。ファンが増えていけば、もしかしたら……」


やっぱりまだまだ取らぬ狸の皮算用かもしれないけど、でも……希望はあるのだと、みんなを見て笑う。


「みんなを見上げていた誰かがアイドルに憧れて、以前のみんなと同じようにここの門を叩くかもしれませんし」

「私達に、ですかぁ!?」

「現にエリオとか凄いよー。……貴音のCDや写真集、内緒で買いあさっているようだし」

「エリオ君が!? ……あ、そういえば貴音、あの子と雛見沢でも仲良くなって……」

「それです」

「エリオとは、食の趣味も近いので……それに故郷の妹を思い出してしまうのです」

「あぁ……姉的に可愛がっちゃうと」


律子さんがこちらを見るけど、曖昧に笑うことしかできなかった。

多分ね、貴音……エリオは、その…………いや、なんでもない。僕が勝手にまき散らすことじゃなかったわ。ごめん。


「でもでも、ちょっと複雑―。この流れじゃなければ、亜美達がいたずらして可愛がるーとか言うところだけど」

「さすがにそんなムードじゃないよねー。というか、真美も家族だからブラックになりやすいってのは衝撃だよー。それに見えない障害に気づかず、いじめちゃう側に回るかもーっていうのは」

「だったら一般常識として覚えておくべきね。さしあたっては……やっぱり家族経営の危うさよ。そっちは見えない障害問題を抜いても、いじめる側に回る話だし」

「そういえば、いおりんもいろいろ気にしているって……」

「うちも関連会社のいくつかは親族を経営から外して、社員で優秀な人を社長にしよう……とか、そういう話も出ているし」

「いおりんの家が!?」

「最高評議会じゃないけど、長く同じトップが居座ると……組織的には風通しが悪いってこと。それは一族単位でも同じよ」


それはまた勇気がいる決断を……やっぱり水瀬さんや伊織のお兄さん達、できる人なんだなぁ。

どうしても自分の手でって思いがちなのに……僕も見習わなきゃいけない強さだった。


「だから機動六課のことも……まぁ失敗例としてかもしれないけど、今後に備えたテストケースとして扱われるはずよ」

「まぁ、それもここの拡大と同じく遠い未来の話だ。本当に数年経って、それでっていう話」

「そうね……」


今は六課という糧が、新しい何かを作ることを祈ろう。

それより、一つ気になることがあって……。


「……っと、そういや今更だけどあずささんは」

「三浦くんなら今日はオフだよ。……先日保護した子どもに、会いに行っているそうだ」

「子ども……あぁ、人身売買組織から逃げ出してきたっていう」

「あずさ、あれからしばらく気落ちしておりましたので……あなた様も顔を見せていただきたいのですが」

「もちろんそのつもりだよ。ただ、今日はやめた方がよさそうだね」

「そうだな。あずささんもあれから、自分なりの関わり方を探しているようだし……俺達も最低限見守る形にしているから、合わせてもらえると」

「ならそれで」


でも子どもに会うわけかぁ。なかなか勇気がいるだろうに……まぁあずささんなら、なんだかんだで上手くやっていくよ。そう信じて、僕も見守っていこう。


「それに僕も、まずは自分のこと……というかTrySailさんのライブがあるしー♪」

「そ、そうだったな……!」

「プロデューサー……それ、あずささんも言っていて、相当呆れていましたよ? ぼく達の心配とかすっ飛ばす勢いで……逃亡犯同然なのに行くつもりだっていうのがもう」

「いや、もう追われる身とか慣れているし。鷹山さんと大下さんも日常茶飯事」

「普通は慣れないんですよ! 少なくともぼく達は慣れていませんからね!?」

「というか、あの二人もなにしているのよ……! もう孫とかがいていい年なのに、落ち着きがなさすぎるでしょ! あいつらこそそろそろ譲る側に回りなさいよ!」

≪定年までは無理だと思いますよ? まだまだ遊び足りないそうですから≫


アルトが失礼な……いや、でもそうかも。結局今回だって、損な戦いなのは分かって飛び込んでいったしさ。

やっぱり……こういう遊びにはハマって、離れられないのかも。


≪〜♪≫


そこでスマホに着信音。


「……ちょっとごめん」


それにちょっとときめきながら、スマホを手に取り確認……。


――お返し♪――


LINEのメッセージで送られてきた青空。それと、美味しそうなデミグラスのオムライス。その取り合わせを見て、つい頬が緩む。


――美味しかったし、景色もよかったから……今度一緒に行こうね。あたしも今週末で、仕事が一旦落ち着くしさ――


だから自然と、すぐにメッセージを返していて……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


お昼休憩も中程が過ぎたところで……恭文君から返信。

しっかりオムライスを食べて、食後のお茶を楽しんでいたところに、笑顔が思い浮かぶような言葉が届く。


――はい! すっごく楽しみです!――


うんうん、あたしが指定した猫ちゃんキャラ、ちゃんと使い続けているね。いいことだー。


――でもそれなら、渡したいものがあって……

――え、なに!? 頼んでいた銘酒≪魔王≫かな!――

――……いや、そっちじゃなくて……舞宙さんが食べたがっていた、砂鯨の甘露煮ですよ。話していた砂漠世界に行って、買ってきたんです――

――マジ!? わぁ、それは絶対ほしい! ありがとー! 愛しているよー!――

――そ、そういうのはあの、もっと真剣な感じでー!――


……戸惑っている顔が思い浮かんで、つい笑っちゃう。だから……ぽちぽちと電話。

もうテラスでの電話禁止とかがないのは確認しているから、ここからはいたずらです。


電話はすぐに繋がって……あの子の優しい吐息が、いつものように耳をくすぐる。


『もしもし、舞宙さん? どうしたんですか』

「……愛しているよ、恭文君」

『ひゃあ!?』

「何度でも言えるよ? 真剣でも、冗談でも、こんなこと君にしか言わない……愛している。すっごく……世界一愛している。
だから、また君のことをぎゅーってしながら……可愛い耳に、いっぱいささやいていくね」


とびっきりの声で……言葉で、想いで伝える。だからね、次はこう返ってくるの。


『……僕も、愛しています』

「ん……」

『僕も、負けないくらい伝えますから! 覚悟しておいてくださいね!』

「するよ。というか、ずっとしている」


一杯の勇気と、少しの怯えも見せながら……慣れることなんてない。いっつも、いっつも、たくさん頑張って伝えてくれる気持ち。

それが嬉しくて、変わらないけど……深くなっていく気持ちが温かくて、私は笑う。


「あ、でもちゃんと風花ちゃんやフィアッセさん達も、同じように伝えていかなきゃ駄目だよ?
そう言うならそろそろ恥ずかしがらず、自分から言えるようになること」

『が、頑張ります……!』

「ん、頑張ろうね。これからも、ずっと一緒に」


冬に起きた、切ない事件が繋いでくれた縁は……あの夏の日に、望んで伸ばした手は、離れていても何一つ揺らがない。

そばにいないけど、そばにいる。空が……青が、やっぱり私達を繋いでくれていた。


……だから私達、自分の好き勝手を……戦いを、全力全開で続けていけるんだ。限りはあるけど、呆れるほど続く時間の中で。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


都内にある児童保護施設……警察が管理しているものだけど、そこにお邪魔させてもらった。

そこに結構大きな荷物を持ってやってきて……通されたのはレクリエーションルーム。

開放的で、日の光も十分取り込めるそこは、それだけで一つの公園。暖かなぬくもりに目を細めながらも、そっとその中へ……そこで遊ぶ一人に近づいていく。


「……こんにちは、朋香ちゃん」


あのときと違って、ショートの髪はきちんと整えられて、服も愛らしいワンピース。その子は私の声にはっとして、笑顔で見上げてきて……。


「……アイドルの、お姉さん!」

「えぇ。……よかった、少しふっくらとして……元気そう」

「うん!」


その笑顔もあのときと違うと、つい頬を撫でてあげる。ふふ、すべすべぷにぷに……可愛いなぁ。

……私も、娘ができたら……こんな感じになるのかしら。


そのとき想像したいろんなことはさて置き……脇の大きな包みを、朋香ちゃんに見せてあげる。


「これ、あなたに……というか、ここのみんなに差し入れ。
ここの先生に渡しておくから、後で仲良く分けて食べてね」

「あの、ありがと!」

「ふふ、どういたしましてー」


――――挨拶だけ済ませて、朋香ちゃんには……あのとき、私が助けた誘拐児童だった子とは、一旦お別れ。

みんなと遊んでいるのを邪魔してもアレだし、楽しんでねーっと送り出す。それからレクリエーションルームを抜けると……待ち構えていたように、一人の刑事さんが現れる。


それはあの事件の……人身売買組織の摘発にも動いていた、女性警官の二見さん。きりっとした顔立ちに、肩甲骨までの黒髪がよく似合う。千早ちゃんと印象は近いかしら。

それで二見さんから、あの子の近況も……改めて聞いて……。


「……そうですか。彼女……お父さんとお母さんが見つかって」

「既に面通しも終わり、もうすぐ迎えに来られる予定です。
三浦さんがご協力いただいたおかげです。ありがとうございます」

「いえ」


ルームの外……廊下側の窓越しに、あの子を見やる。

同じような境遇で一緒にいる子達と、遊んで、楽しく笑っているあの子を……あのときとは大違いだった。それが本当に嬉しくて。


「ですが、大変なのはこれからです」


だけど二間さんはほほえんでいた私と違い、表情を引き締める。


「子どもをさらわれた……その事実そのものが、家庭を砕きかねない楔になるんです。
実際あの子のご家庭も、もちろん他の子のご家庭も、それなりに……責任問題の追及などで揉めていて」

「……それは、よく分かります。私の知っている人も、小さい頃に誘拐されて……すぐに助け出されたんですけど、それでそういう時期があって」

「そうでしたか……。では、単刀直入に申し上げます。あなたとあの子のご家族を会わせることはできません」


そうして私を……それだけはできないと、強く見据えていた。

どこかで私が持っていた期待……願望……増長……そういうものを見抜き、戒めるように。


だから、私も当然のことだと、それを受け止める。


「……えぇ。分かっています」

「だから、できればあの子に会うのも、今日を最後にしてもらえると……」

「それも、分かっています」


そこは納得している。私はきっと、辛い時間の象徴でもあるから。それに……会ってどうするのかという気持ちもある。

ただお礼を言われたいの? 感謝されて、それでずっと……そういう感謝の上で付き合いが続いて。それが正しいことなのかどうか、私には分からない。

そうならない可能性もあるけど、そうなっていく可能性もある。それを制御できない私には、手に余ることだとも……今は、言い切れる。


だけど……そんな私だけど……。


「でも……一つだけ、我がままを言っていいでしょうか」

「内容によりますが」

「あの子のお父さん達に、伝えてほしいんです。
…………このことで家庭が壊れてしまったら、一番傷つくのはあの子で、自分を責め抜いていく。
もしそういう状況になったら、あなた達がどう思うかは関係ない。私が、あの子を助けるし、守ります」


……掴んだ手は離さない。

あのとき抱き留めたことは、嘘にはしない。

それだけは絶対に譲れない……睨みつけるように鋭くなった二間さんを受け止めても、私は揺らがない。そう叫び続けられた。


そうして数秒……数十秒そんな時間が続き、二間さんは根負けしたように息を吐く。


「……それは、お知り合いの話ゆえでしょうか」

「その人は幸い、それも強い人達に救ってもらいました。でもそうじゃなかったら……だから、私もここだけは譲れません」


……もう一度あの子を見やる。あの子が気づいて、こちらに手を振って……だから私も、笑って手を振り返す。そうしたらあの子は安心して、また遊びだして……。


「それが、あのときあの子の手を取った……私の責任です」

「……分かりました。必ず伝えます」

「すみません」

「まぁ、散々ご迷惑をおかけしているのはこちらも同じですし……上手くお互い様と思ってもらえれば」

「ふふ……では、そんな感じでいきましょうー」


二間さんも今度は一緒に笑って、あの日だまりを……暖かな日常を見やる。

もうすぐそれぞれの場所に帰っていく子ども達。私はもちろん、二間さんとも……それぞれの子達とも会うことはないかもしれない。

だけどそれでも、暖かな時間が続いていくことを祈りたい。それで……私の歌が、私がアイドルであることが、少しだけでも、そんな時間の助けになるのなら。


あの子達だけじゃなくて、私が知らないたくさんの人達を支えるものになれたら……難しい道だけど、少しずつ……そう、少しずつ考えて、形にしていこうと思う。


(――本編へ続く)







あとがき


恭文「というわけで……地球に戻って、TrySailさんのライブが始まる前の隙間話。
作者が去年ASDとADHDで発達障害の診断が降りて、精神障害者保健福祉手帳三級も取得したことから、ちょーっと触れた未来のお話です」

美奈子「この辺りも、実はここ最近でまた認知が広がってって感じだよね……」


(少なくともとまとをやり始めた当初は知らなかった)


恭文「そういえば作者、障害者手帳で近隣の健康施設利用が無料になるから、ちょいちょい広いお風呂に行っているけど……それ以外に手帳を利用していないんだよね。映画とかも千円で見られるのに」


(時期的にどうしてもね! ちょっと気をつけた方がいいかなーって思ったら……この緊急事態宣言だよ! またいろんなライブやイベントが吹き飛ぶー!)


美奈子「現に765プロシアターも……エミリーちゃんのお誕生会も吹き飛んじゃいましたし。オンラインで身内だけでわいわいに……」

恭文「…………Ver2020世界線は平和だけどね。でもこれでコロナ騒ぎが起きていたら、ほんととんでもないことに……」

美奈子「ライブとかも現実通り吹き飛んでいたしね……」

恭文「それもあるけどさ。その影響かも残る中でドキたまVer2022って感じでスタートしたら……歌唄達とかどうするんだろうね。ライブできないのに」

美奈子「あ…………」


(そんな大変な時期ですが、それでもなんとか生きています)


恭文「でさ、その状況だけど…………どうして美奈子は、ここにいるの……!?」

美奈子「佐竹飯店は上手い感じで回しているので……私はご主人様にご奉仕しにきちゃいました♪」

恭文「ソーシャルディスタンス!」

美奈子「私のご奉仕に密はありません!」

恭文「それ孤独のグルメでしょうが! 去年の年末分の!」

美奈子「それに……やっぱり、寂しかったんだ。だから、受け取ってほしいな。今年初めての、いっぱいのご奉仕」

恭文「う、うん……」

美奈子「ありがと、恭文くん♪」


(大盛りアイドルに密はない……つまりはそういうことなのです。
本日のED:Abingdon boys school『PINEAPPLE ARMY』)


美奈子「でも舞宙さんが、カオルさん枠で出演しているとか……」

恭文「元々の下地がカオルさんだもの。まだマトモだった頃のカオルさんだもの。浅野温子さんよりだもの」

舞宙「なにそれ! あたし、アレなの!? アレになっていくってことなの!?」

古鉄≪そりゃあ鶏肉も腐らせますよ……≫

ヒカリ(しゅごキャラ)「まぁお似合いだな」

舞宙「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ! もっとこう、ヒロイン的なのがいいー!」

美奈子「なら料理道がでも出しませんか? そうしたらヒロイン力もアップですよー」

舞宙「それだ! いや、それだとかぶるから……屈服力なんてとんでもない! 料理は……愛だよね、愛」

恭文「……前に美味しければなんでもいいって言ってませんでした?」

舞宙「し!」


(おしまい)





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