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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第30話 『今開放される、『魔法使い』の姿と真実』



さて、今更だけど一応説明。僕達が所属する機動六課という部隊は、本局所属の部隊である。

その設立意図は、第8話でお話した通り。こんな状況を止めるべく、設立された。

つまり・・・・・・ここからがこの部隊の本領発揮なのである。何も出来なければ、作った意味が無い。





ただし、六課だけで全部なんとかなんて、無理。もう事は既に、戦略レベルの戦いなんだから。

僕達が出来るのは、あくまでも現状維持が関の山。いや、それだって正直怪しい。

108や聖王教会、ミッドの地上部隊の協力があって初めて、僕達は仕事を成せると言っても、過言じゃない。





とにかく、はやてがミーティングルームの艦長用の席に座り、グリフィスさんがその左側に立つ。で、お話ですよ。










「・・・・・・まず、現状の報告やな。グリフィス君」

「はい。・・・・・・地上本部による事件への対策は、残念ながら、相変わらず後手に回っています。
地上本部だけでの事件調査の継続を強硬に主張し、本局の介入を固く拒んでいます」



画面が立ち上がる。そこに映ったのは、その首脳陣の会見現場。

普通に問題なしとしているところが、なかなかに図太い。



「よって、現時点で本局からの主力投入は、まだ行われません」





つまり、この状況になってもミッド地上は権利関係に拘ってるってことだね。

でも、ぶっちゃけ無理でしょ。こんな事してる間に、きっと詰みだ。

向こうに、『鍵』は奪われてる。正直、ここまで何も起きてなかったのは、奇跡だよ。



ゆりかごを動かそうと思えば、多分すぐにでも・・・・・・あれ、ちょっと待って?

だったら、なんで連中はここまで時間食ってるのさ。もうすぐ、1週間経とうとしてるのに。

連鎖的に中央本部潰して、その混乱を立て直す前にゆりかご上げて・・・・・・だったら、確実よ?



・・・・・・つまり、向こうも準備期間って感じなのかな。ゆりかごだったり、人員だったり。





「同様に、本局所属の機動六課に対しても、捜査情報は公開されません」



まぁ、そうだろうね。そうならない道理が、分からないもの。



「でもな、そこは安心してえぇよ」



もしかしたら、自分達は動く事が出来ないかも知れない。

漂い始めていたそんな空気を斬り裂くように、はやてが力強くそう言った。



「私達が追うんは、テロ事件の犯人でも、スカリエッティ一味でもない。
あくまで追うんは・・・・・・ロストロギア・レリック。これだけや」



それを聞いて、フェイトとなのはと顔を見合わせてしまう。

だってコレ、屁理屈だもの。それも、完全無欠にさ。



「その延長線上に、広域次元犯罪者のジェイル・スカリエッティが居るというだけの話。
そして、誘拐されたなのは隊長とフェイト隊長の保護児童、ヴィヴィオが居るいうだけの話」



六課は、表向きはロストロギア・レリックの確保を目的として、設立された部隊。

この『レリック? 何それ、美味しいの?』な状況で、それを持ち出して介入しようという腹である。



「・・・・・・まぁ、こういう方針で動く予定なんやけど、両隊長、なにか質問あるかな?」

「質問と言っても・・・・・・」



その両隊長は、いい感じで戸惑い気味ですよ。まさか、こう来るとは思わなかったらしい。



「確かに望ましい事だし、このまま動けないことだけは避けられそうだけど、それ・・・・・・相当無理矢理だよね」

「そやなぁ・・・・・・。まぁ、アレらが勝手に動いてた事に比べたら、まだ常識の範疇やと思うんよ」



ヒロさん達のことかい。まぁ、そこは否定しない。一応部隊の方針に乗っ取ってるわけだし。



「それはそうかも知れないけど・・・・・・。また、無茶とかしてないよね?」

「大丈夫。後見人の皆さんの了解と黙認は、取り付けてあるよ。
みんなが現場で困るような事態には、絶対せぇへん。なによりや」



続けて、はやては強く、本当に強く言い切った。



「こんな時のための部隊や。ここで何も出来んかったら、部隊を作った意味がない。そやから安心して」

「・・・・・・なら、フェイト隊長」

「うん」



二人は、顔を見合わせて力いっぱいに頷く。



「私達は、方針に異存はありません」

「ならよかった。ほな、皆忙しい思うけど、しっかり準備してな」



はやては言いながら、会議室を出た。・・・・・・これで、飛び出すような真似はしなくていいか。



「狸ですね」



シオン、開口一句それかい。いや、その通りだよ? 確かに狸だよ?



「シオン、そう言うな。この状況で動けるようになったのは、ありがたいことだ」



なお、普通にヒカリも事態を把握してた。・・・・・・しゅごキャラって、なんかすげー。



「確かにそうですね」

「・・・・・・んじゃ、僕達も準備しますか」

≪具体的には、仮眠ですね≫

「うん。さすがに・・・・・・眠いから」



とりあえず、あくびをして僕達は部屋に戻る。・・・・・・というか、眠い。

普通に眠い。ちくしょお、これで仮眠中に事件が進展したら、マジで殴る。



「そう言えば、ヴィータさんやシャマルさんは、どこでしょう?」

「医務室じゃない? ほら、師匠は怪我したばっかりだし」

「というわけで、探検だ。シオン、行くぞ」

「はい」

「だからやめんかいっ! お願い、まず寝させてっ!? 睡眠って、すごく大事なんだからっ!!」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第30話 『今開放される、『魔法使い』の姿と真実』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトさん」



お願い、ティア。言わないで? 分かってる。分かってるの。

私も見えないから、分かるの。だから、言わないでいいの。



「アイツのアレは、普通にあれは注意した方がいいですって」

「私達はいいよ? でも、恭文君が普通に変な人だもの」

「確かに・・・・・・そうなんですよね」

「今回はなのはさんとエリオ君に同意。まぁ、私は見えてるから大丈夫なんですけど」



そ、そうだよね。アルトやルキノが不思議そうな顔してたし、グリフィスも首をかしげてたし。

うぅ、やっぱり私も見えるようになりたいな。そうすれば、まだ何とかなるのに。



「そう言えば、スバルとギンガは?」

「あ、スバルさん達は午後には入るそうです」

「マリエルさんと定期健診だそうです。決戦前ですから」

「・・・・・・そうだね」










決戦・・・・・・前なんだよね。きっと、試される。

私が、ここ数ヶ月で成長してるかどうかが、きっとここで。

私が立ち向かうのは、きっと昔の私や、プレシア母さんと同じ人達。





でも、負けない。過去の自分になんて、拭えない傷になんて、絶対に負けない。負けたくないから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・なぁ、シャマル。





もういいか? アタシ、仕事あるんだけど。










「まだダメ」

「てーか、今更だろうが。傷が治りにくくなってるのとか、蓄積ダメージが抜け辛くなってるのとか、前々から分かってたことだろ?」



それも、何年か前から。具体的には、バカ弟子と会った時くらいか?

あれくらいから、アタシ達の身体に異常が出てきてる。



「それはそうだけど」



医務室。シャマルの定期健診を受け・・・・・・って、頼むからもう終わって欲しい。

中間管理職は、忙しいんだ。訓練データの移行とか、リミッター解除とかしなくちゃいけないしよ。



「再生機能だけじゃないのよ。守護騎士システムそのものの異常も、不安なの」



不安・・・・・・ねぇ。



「私達同士の相互リンクも弱くなってるし、緊急時のはやてちゃんからのシステム復旧とか、魔力供給も、段々出来なくなってる」





もちろん、こんなことになってる原因はある。・・・・・・リインフォースだ。

今シャマルが話してるシステムは、元々リインフォースが管理してた部分。

でも、アイツはもう居ねぇ。主であるはやても、そこまでしっかり出来てるわけでもねぇ。



だったら・・・・・・って、わけだ。徐々にだが、完璧だったはずのシステムに、綻びが出来始めてる。





「別に、そんなの日ごろからしっかりやってれば、何の支障もねぇ」



ベッドから起き上がって、降りる。降りて、近くのバスケットに入ってた制服の上着を羽織る。



「・・・・・・アタシ達の身体の異常さ」



まぁ、これだけってのもなんだから、一応フォローはする。



「多分これ、守護騎士システムの破損とか異変とか、そういうのじゃねぇよ。
・・・・・・アタシ達が闇の書の一部だった頃から、ずっと願ってた事」



それは・・・・・・死。ずっと願っていたことは、終焉。

死ぬ事も、終わる事も出来ずに、長い時間を生きてるだけの存在。それがアタシらだった。



「それが、叶い始めてるんだよ。アタシは、そう思ってる」



両手でネクタイをしっかりと締める。形を右手で整えたりする。



「最後の主の、はやての元で、限り有る命を大切に生きられるようにって」



そして、ネクタイを締め終わる。両手を、離す。



「初代リインフォースが、アタシらにくれた贈り物。それの続きさ」



そして、シャマルの方に振り返る。で、アタシは安心させるように笑ってやる。



「いいじゃねぇか。傷が治りにくいのも、やり直しが利かねぇのも。
なんかさ、本当の人間みたいでさ」

「・・・・・・ザフィーラもシグナムも、全く同じ事を言うのよね」

「シャマルは?」

「私も同じよ」



そして、こちらへと歩いてくる。



「危険は怖くないし、永遠になんて興味ない。もし人間みたいになれてるなら、すごく嬉しい」

「バカ弟子と同じだからか?」

「えぇ」



迷いなく言い切ったし。おいおい、フェイトと付き合ってるのに、いいのかそれ?



「私・・・・・・あの子を癒し、受け入れる存在でありたいの。あの子のこと、本気で好きみたいなんだ」



そして、思いっきり笑顔だし。あぁ、なんか心が痛い。バカ弟子、お前シャマルに謝った方がいいって。



「例え世界中が敵になっても、私だけは、味方で居たい。あの子を癒す風でありたい。
あの子は、私に一人だけでは見れない時間をくれたから。だから、気持ちは変えない」

「・・・・・・そういう部分をもっと出せば、バカ弟子だって考えただろうに」



いっつも『筆下ろししよう・デートしよう・現地妻にして欲しい』とか言いまくるから、ダメなんだよ。

お前なら、いくらでもチャンスはあっただろうが。なんにしても、アイツは頭上がらないんだしよ。



「いいの。私は、あの子の現地妻1号で充分。
恭文くんが笑ってくれる事が、私の幸せだから。それに」

「それに?」

「赤ちゃん・・・・・・産んで、あげられないしね」



少し悲しい顔で笑いながら、シャマルが右手でお腹をさする。



「あの子には、親になって欲しいの。好きな子と子どもを作って、育てて欲しい。
諦めないで、欲しいの。自分の親の事なんかで、それを諦めて欲しくない」



それをアタシは、ただ呆然と見てる事しか出来なかった。・・・・・・そういう、事か。



「きっと、恭文くんは全部受け入れてくれる。受け入れて、私と二人の時間を、選んでくれる。
『子どもは、養子でも作れる』って言って、私の手を握って、抱きしめてくれる。たくさん愛してくれる」



本気で好きになったら、アイツはそうするだろうな。そこでシャマルを否定するなんざ、するわけない。



「でも、それでも・・・・・・躊躇っちゃってたんだ。
私とそうなっちゃったら、恭文くん意識せずに、諦めちゃうんじゃないかって」





だから、今の今まで本気でアプローチしなかったと。・・・・・・バカだろ。

でも、あんま言えないよな。シャマルは、マジで考えてんだから。

それなら、フェイトとかを第三夫人にもらって・・・・・・無理だな。アイツ、心狭いし。



第一、子ども生ませるためだけに第三夫人なんて、やるわけがない。そんな奴じゃねぇよ。





「あ、これ恭文くんには内緒よ? もちろん、他のみんなにも」

「あぁ、分かってるよ」



そのまま、シャマルは左手を伸ばして、アタシの右肩に手を載せる。



「でも、それだけじゃない。はやてちゃんも好きだし、それと同じくらいに私はヴィータちゃんやザフィーラ、シグナムの事が大切」



そして、しゃがんでアタシを抱きしめる。・・・・・・てーか、泣いてる。



「みんなと同じ時間の中で、限りある命、たった一度の私達の時間。
大事に、だけど・・・・・・精一杯に、生きていたいの。だから」

「墜ちねぇよ」



だから、アタシはシャマルを思いっきり抱きしめる。普段やらないくらいに、力強く。



「アタシも、シグナムも、絶対墜ちねぇ。ザフィーラも、すぐに良くなる。
二代目祝福の風が、付いてくれてんだ。大丈夫、ちゃんと笑顔で帰ってくるさ」

「うん」

「バカ弟子だって同じくだ。こんなに想ってくれるお前の事、泣かせたりするわけがねぇ。
・・・・・・大丈夫だ。お前がそんな風に泣いたりしないように、ちゃんと帰ってくるから」

「うん・・・・・・!!」










・・・・・・負けねぇ。絶対にアタシは負けねぇ。





バカ弟子じゃねぇが、アタシ達の時間を壊そうとするなら、神様だろうが許さねぇ。





邪魔するなら、破壊する。そして、守る。アタシ達のわがままで、アタシ達の時間を。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



仮眠を取って、シオンとヒカリに付き合う形で艦内を探検。なお、リインも一緒。

こうしないと、また迷子になるかも知れない。・・・・・・やばい、色々トラウマかも。

二度目からは平気だったのに。でも、なんで誰からも発見されなかったんだろ。





エイミィさんによると、一時的にシステムがダウンしちゃったせいだって言ってたけど。










「というか、ヒカリ・・・・・・本当に、そっくりなのです」

「私はその人物については、本当に深くは知らないのだが、そうなのか?」

「はいです。うーん、普通にこれは生まれ変わりを疑ってしまうのです」



リインが、僕の横を飛びながら、唸る。ひたすらに唸る。まぁ、仕方ないと思う。

だって、普通にそっくりさんなんだしさ。そりゃあ、八神家的には色々あるさ。



≪・・・・・・マスター、リインさん。しばらくはやてさんには、黙っておいた方がいいんじゃないですか?≫

「そうだね」

「その方が、いいかも知れないですね。普通にヒカリを見たら、はやてちゃんは本当にビックリしちゃいますよ」



一応、フェイトとなのはには報告したのよ。でも、八神家には・・・・・・うむぅ、まずいな。

よし、はやてへは、時期を見て言おう。マジで気絶コースかも知れないし。



「・・・・・・あれ、フェイト」



考えをまとめて、視線を前に向ける。すると、艦内の訓練場の入り口にフェイトが居る。

どうやら空間モニターを開いて、それ越しに、中の様子を覗いているようだ。ぶっちゃけ、怪しい。



「フェイト、なにしてるのさ」



声をかけると、優しくいつも通りに微笑んでくれた。それが、かなり嬉しい。



「あぁ、ヤスフミ。もしかして、シオンとヒカリと、艦内の探検?」

「まぁね。・・・・・・迷子にならないように、リインに付き合ってもらってる」

「あの時は大変でしたしねー」

「あ、あははは・・・・・・そっか」



僕、もしかしたら特異点なのかな。だから、こんな形になるのよ。

・・・・・・ということは、普通に僕は電王になれるっ!?



「あー、それとフェイト。ヒカリのことは、しばらくはやてには黙ってることになったから」

「・・・・・・そうだね。話を聞く限り本当にそっくりって感じのようだし、それがいいかも。私となのはも、黙っておくよ」

「うん、お願い。・・・・・・で、何見てたの?」

「・・・・・・ほら」



で、背伸びをしてモニターを見せてもらう。・・・・・・シグナムさんと、エリオ?

なんか、派手にどんぱちしてるし。



「シグナム、乗艦してからエリオにちょくちょく稽古つけてるみたいなんだ」

「そうなのですか? リイン、知らなかったですけど」

「私も。まぁ、シグナムが引き受けて、エリオが望んだことだから、心配はしてないんだ」



画面の中のエリオを、ジッとフェイトが見てる。どこか寂しそうな、だけど嬉しそうな顔で。

エリオ・・・・・・動きが元に戻ってる? 襲撃前と後じゃ、まるで別人だよ。



「エリオ、話してたんだ」

「なんて?」

「襲撃の時、シオンにアドバイスされたこと、何度も心の中で復唱してたんだって。
自分から逃げない。もう逃げない。例え何が有っても、絶対に逃げない」



画面を見ながら、シオンが嬉しそうな顔をする。今のフェイトと、同じ顔。



「自分は弱いから、何度も復唱して、奮い立たせて、戦って。
・・・・・・それで、色々吹っ切れたんじゃないかな」

「・・・・・・そっか。フェイト的には、安心?」

「少しだけね。不安は、やっぱりあるよ。家族だから」

「それもそうだね」










画面の中の槍騎士は、弱い。確かに、弱い。迷って、間違えて、怯えてばかり。

でも、弱いからこそ分かる事が、守れるものがある。僕は、そう思う。

・・・・・・やなせたかしさんが、何かのインタビューでそう言ってたのよ。





人よりダメな部分が、弱い部分がある人間こそ、本当のヒーローになれると。

自分がそうだから、人の弱さを受け入れ、守る事が出来ると。強いだけのヒーローには、何も守れない。

その話を、今ふと思い出した。・・・・・・画面の中の槍騎士は、やっぱり弱い。





だからこそ、今ようやく、向き合って、立ち上がろうとしているんだ。それは、強さなんじゃないかな。





多分、今のエリオは生きてる。『エリオ・モンディアル』として、しっかりと。だから、少しだけ影が濃くなったのよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・相変わらず何を教えてやれるわけでもないが、大丈夫か?」

「はい。色々、盗ませてもらってます」



ふん、生意気な。だが、それは事実か。襲撃前とでは、動きのキレが全く違う。

かと言って、蒼凪に叩き潰される前とも違う。私の知る中で一番、エリオは強くなってる。



「しかし、急に動きがよくなったようだが、どうしたんだ?」

「そう、なんですか? 自分ではよく分からないんですけど」



惚けた顔でそう聞くので、内心ビックリした。・・・・・・どういうことだ、これは。



「そうなんだ。エリオ、何か襲撃前と今とでは、違う部分でもあるのではないか?」

「・・・・・・逃げないって、決めたからでしょうか。というか、そうアドバイスされました」



そう言えば、シオンにアドバイスされていたな。なるほど、あれがきっかけか。



「あと・・・・・・」

「なんだ」

「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても」



エリオが、右手でストラーダを握り締めながら、真っ直ぐに私を見る。



「・・・・・・それは、何もやらないことの言い訳にはならない。ザフィーラが、教えてくれました」

「なるほど、だから言い訳はしないということか」



戦いへの恐れも、自身が犯した間違いも、何もしない言い訳にはならない。だから、強くなった。

・・・・・・いや、強くなろうとしている。必死に、それらと向き合い、今も戦っているのか。



「はい。・・・・・・だから、あまり変わってないと思います。戦いながら何度も復唱しまくっていますし」



未だ、未完成ではある。まだまだ不安要素もある。だが、これなら・・・・・・いけるだろう。



「とにかくあれだ、テスタロッサに心配をかけてもいかん。あまり無茶はするなよ?」

「はい。あの、ありがとうございました」





私は、制服の上着を羽織り、外に出た。・・・・・・小さな騎士見習いの成長を、嬉しく思いながら。





「お疲れ様でした」



そして、普通に声をかけられた。すると、ニヤニヤ顔の三人が居た。



「シグナム師範代?」



とりあえず、一番ニヤニヤしていてそう言ってきたテスタロッサには、デコピンしてやった。

痛がっていたが、気にしてはいかん。普通にちょっと腹が立ったんだ。



「いやぁ、『人に教えるのはガラじゃない』とか言ってたのに、どうしたんですか?」

「シグナム、ツンデレですか?」

「お前ら・・・・・・ずっと見ていたのか」

「はい。見てましたよ? シグナムさんの背後からずっと」

「その言い方は、普通に怖いからやめろっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・すまんな、お前の判断を仰がなかった」



シグナムさんも加えて、とりあえずご飯の時間と相成った。

僕達は、アースラの艦内を歩く。普通に歩く。迷わないように、しっかりと。



「いいえ、あなたが今のエリオを見た上で、引き受けてくれたんですから。・・・・・・ちょっと、寂しいですけどね」



それに対し、シグナムさんは苦笑い。で、僕達はそれがおかしくてニコニコする。

でも、エリオ・・・・・・いい感じだったよね。しかし、ザフィーラさんがあんなこと言ってたとか。



「しかし、ザフィーラの奴。なかなか良い事を言うものだ。私は感心したぞ」

「シグナム、それ多分違います」

「なんだと?」



フェイトが僕を見て、クスリと笑う。笑って、僕はそれにお手上げポーズで返す。



「エリオが言ったの、『仮面ライダー電王』って特撮作品の台詞なんですよ。
ザフィーラさん、ヴィヴィオと一緒に見てたそうだから、多分それで」

「そうなのか?」

「あと、ヤスフミも同じ事言ってたんですよ? 言い訳なんて出来ないから、飛び込むって」

「・・・・・・普通に名言だと思って、感心していたんだが」



いやいや、名言でしょ。やっぱり、野上良太郎は偉大なのよ。桜井侑斗も偉大なのよ。



「まぁ、なんにしても変わるキッカケにはなっているわけだ」

「そうですね。・・・・・・あの調子なら」

「不安要素は当然、ある。だが、大丈夫だと私は思う」










そしてその後、六人でご飯を食べつつエリオの話。

まぁ、僕も参加ってのが疑問だってけど、ここは気にしない。

シグナムさんが、ヒカリとシオンが見えなくてやっぱり怪訝そうだったけど、気にしない。





そして、時間はゆっくりと過ぎていく。最終決戦の火蓋が落とされるのは、もうすぐだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そう言えば蒼凪」



シグナムさんが、ポテトサラダをつまみつつ、なんか聞いてきた。



「なんでしょ」

「テスタロッサから聞いたが、リインフォースそっくりのしゅごキャラが生まれたそうだな」



口止めは、遅かったらしい。フェイトが『ごめん』と頭を下げた。

まぁ、シグナムさんもはやてには話ていない様子なので、口止めさせてもらった。で、話は進む。



「えぇ。・・・・・・ビックリですけど。そして、大変ですけど」



シグナムさんは、分かっていたのか何も言わずに僕の肩を叩いた。



「そう言えば、ヒカリ・・・・・・だったな。その子とは、例のものは出来るのか?」

「例のもの? ・・・・・・あ、キャラチェンジですか」

「そうだ」



そう言えば、時間なくて試してなかったな。でも、怖いな。シオンの例があるから、余計に。



「まだ試してないんですよね。というか、試すのが若干怖くて」

「でもヤスフミ、一度試してみたら? ほら、今回はあんな事にはならないかも知れないし」

「そうだな。シオンの性格が若干アレなせいかも知れんし、やってみたらどうだ?」

「まぁ、確かに。それなら・・・・・・やってみます」










というわけで、ご飯を食べた後、別室で実験と相成った。





つーわけで、キャラチェンジッ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・私とシグナムとリインは、何も言えなくなった。ううん、言えるはずがない。

アースラの部屋の一つ。ロックもしっかりかけた上で、ヤスフミはキャラチェンジを実行した。

左の髪に、あのたまごの柄を象ったアクセサリーが付いたかと思うと、キャラが変わった。





黒いノースリーブの上着に、ミニスカート。片方だけのニーソックスに、黒いブーツ。

何故か大きく盛り上がった胸に、銀色の髪に赤い瞳。それを見て、私達は驚愕した。

だ、だって・・・・・・私達が知っている、リインフォースそのままの姿だったから。




というか、あの、これって・・・・・・また身体を、乗っとられたのっ!?










「・・・・・・あの、恭文。なんというかすまない。どうやら、私もシオンと同じようだ」



ヤスフミの身体を乗っとっていると思われる女の子が、喋った。

身体はヤスフミのままだけど、口調と声と外見は・・・・・・あの人のまま。



【いや、いいよ。うん、分かってた。大丈夫、予想してたから。・・・・・・ぐす】

「出来れば、泣かないでもらえると助かるのだが」



自分の中に話しかけて、オロオロしているのは女の子。

だけど、身体はヤスフミ。な、なんだろ。頭痛くなってきた。



「というか、ヒカリ・・・・・・なの?」

「あぁ」

「いや、それにしてはあまりに」

「シグナム、一応言っておくが、私はあなたやフェイトの知っているリインフォースの生まれ変わりなどではない。私は、私だ」



言いかけたシグナムの言葉を、ヒカリは止めた。いや、私にも言っている。

だって、あまりにもそっくり過ぎて、正直戸惑っている。



【というかさ、ヒカリ。この胸はなにっ!?】



ドーンッ!!



「というか、ボインボインのゆさゆさなのです。シオンはそれほどじゃないのに、ゆさゆさなのです」

≪そう言えば、しゅごキャラ状態でもこれでしたよね。普通に巨乳キャラじゃないですか≫



リインが、自分の胸を触る。そして、落ち込んで、床に崩れ落ちた。



「あ、蒼凪。それはなんだ? そういう手術をしたわけでもないだろうに」

【してませんよっ! てーか、僕が聞いてるんですけどっ!?】

「・・・・・・私と同じくらい、かな。というかヒカリ、ちょっとごめんね」



色々気になって、私はヒカリに近づき、両手で胸を触ってみる。・・・・・・あれ?



「温かく、ない」



ヒカリは、結構薄着。だから、他の箇所を触ると、体温が伝わる。

でも、胸だけはそれがない。というか、柔らかいのは柔らかいけど、感触も少しおかしい。



「ヒカリ、私が触ってるのって分かる?」

「いや。・・・・・・どうやら、パットの類のようだな」



パッドッ!? え、キャラチェンジでそんなのまで装着するんだっ!!



【いやいや、どんだけ念入りなのさっ! ・・・・・・え、シオンの時も装備してるのっ!?】





どうやら、私とシグナムには見えないシオンと話してるらしい。

というか、シオンの時もパッド・・・・・・あぁ、装着してるよね。

ヒカリ程じゃないけど胸のふくらみ、確かにあったもの。お仕事中だから、気にしてなかったけど。



じゃあ、完璧な女装なんだ。これは、ヤスフミのダメージが大きいなぁ。





「なんというかすまない。私もまさか、本当にこうなるとは思っていなくて」

【そっか。でも、僕は結構思ってた。・・・・・・うぅ、キャラなりも出来ないし、これは大変だ】

「いや、出来るぞ」



そう、ヤスフミはキャラなり・・・・・・しゅごキャラと一体化しての変身能力に、まだ目覚めてない。

その上、キャラチェンジがこれだから、ヒカリとシオンは完全なマスコットキャラ・・・・・・え?



『えぇっ!?』



ヒカリが、変わらない調子で言った言葉に、私達全員が驚愕する。

というか、あの・・・・・・どうしてっ!? 普通にビックリだよっ!!



「お前なら、出来るはずだ。いや、今まで出来なかった方がおかしい。・・・・・・自分を、強く信じろ」

【・・・・・・信じる】

「全部、そこからだ。お前は、私達の存在を信じてくれた。こんなムチャクチャな状況であってもだ」



シオンやヒカリに、完全に身体を乗っとられて、女装状態になってる。

それでも、ヤスフミは二人を否定なんてしてない。信じて、受け入れてる。



「必要なのは、お前が強く信じることだ。お前の未来の可能性を、『なりたい自分』を」



ヒカリが、左手を胸元に当てる。そして、ゆっくりと優しく、語りかける。



「そもそもキャラなりは、ただの変身能力などではない。まず、そこから勘違いだ」



え? ちょ、ちょっと待って。シオンの話だと、単なる変身能力という風にしか聞こえなかったんだけど。



「ヒカリ、どういうこと? あの、私達にも分かるように話してくれないかな」

「キャラなり時の姿は、宿主の未来への可能性やなりたい自分が、そのまま形になる。
使える能力も、然り。ただ、そのためには恭文がそれを信じることが必要なんだ」



胸元に手を当てながら、ヒカリは瞳を閉じる。その姿は、やっぱり彼女に被る。



「変わりたいと、そう強く願う心。そして、それが出来る自分の可能性を信じる事。そこで初めて、鍵は開かれる」

≪・・・・・・なるほど。あなた達の存在を受け入れ、信じるだけでは、足りなかったということですね≫

「恭文さんが、今よりももっと強く自分を、変われる可能性を信じないと、ダメなのですか」

「そういうことだ」



なら、話は簡単だよ。・・・・・・私は、ヒカリの左手に、自分の右手を重ねる。

重ねて、中に居るヤスフミに伝わるように、言葉を、想いを届けていく。



「ヤスフミ、聞こえるよね」

【・・・・・・うん】

「多分、キャラなり出来なかったのは、ヤスフミの中に少しだけ疑いがあったからだよ。まぁ、仕方の無いことなんだろうけど」



私達の仕事を考えれば、ここは当然とも言える。

特にヤスフミは、実体験でそんな『魔法』は使えないと、突きつけられているわけだし。



「でも、それが全部じゃないはずだよね? だから、シオン達が生まれた。・・・・・・私は、信じるよ」



そのまま、笑いかける。ヒカリにじゃない。私の、大事な恋人に。

私に変わるための勇気を、きっかけをくれたから、今度は私の番。



「ヤスフミの夢を、未来への可能性を、変わりたいと思う気持ちを、信じる。もう、疑ったりなんてしない」



あなたは、私を信じてくれた。信じて、ずっと想ってくれていた。だから、私もそうするよ。

私も、あなたを信じる。あなたは、変われる。あなたが望むままに、どこまでも進化出来る。



「だから、本当にもう少しだけ勇気を出して・・・・・・自分を、信じて。そうして、鍵を開けよう?」

【・・・・・・フェイト】

「でもね、ヤスフミだけじゃないよ。私も、自分の鍵を開け続ける。私も、もっと自分を信じる。
それで私は、もう絶対に諦めたりなんてしない。だから・・・・・・一緒に、進もう」

【・・・・・・・・・・・・うん】





右手が、私の手の上に重なった。そして、スターライトの髪飾りが消えた。

スターライトの髪飾りが消えると、『ポン』と音を立てて、元のヤスフミに戻った。

そのまま、ヤスフミは目を開く。開いて、私を見てくれる。



それが、嬉しくて・・・・・・涙が溢れて来た。





「僕のこころ」



そしてそのまま、ヤスフミは言葉を紡ぐ。

自分のこころを開けるための、鍵を取り出す。



「・・・・・・アン、ロック」










そして、鍵は開かれた。今まで苦労していたのがバカらしくなるくらいに、呆気無く。





でも、嬉しい。ヤスフミが、自分の可能性をちゃんと信じてくれた事が、本当に。





私も、負けていられないよね。うん、負けていられないんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・中々の能力だな。変身と言っても、大したものではないと思っていたのだが」



訓練場で、ヤスフミのキャラなりの能力を、実験した。そして、予想以上の成果が得られた。

でも・・・・・・うーん。その、色々と問題がありまして。



「もちろん、宿主であるヤスフミの経験というのも、あるんでしょうけど・・・・・・シグナム」

「あぁ。普通に対魔導師・戦闘機人戦で使えるレベルだぞ。
いや、魔法に頼った能力でないことを加味すれば、十分に切り札だ」

「AMF完全キャンセル化でも、遜色なく能力を発揮出来るみたいですし。
シオンとのキャラなり時は、どういうわけか飛べないみたいですけど」



あぁ、飛べなかったよね。普通に陸戦主体だった。

シオンに聞いたら、『無理』だって即答されたもの。



「だが、ヒカリとのキャラなり時は、飛べるようになる。・・・・・・これは、予想外だった」

「でも・・・・・・ダメですよ。だって、シオンとのキャラなりも、ヒカリとのキャラなりも、反動が大き過ぎるのです」



そして、リインが見る。アースラ内部にある訓練スペースの隅っこで、膝を抱えている男の子を。

両肩にシオンとヒカリが乗って、結構必死にフォローしてる。それでもヤスフミは、泣いてる。



「そうなんだよね。精神的反動が、大きいんだよね」

「しかし、キャラなりまで女装状態とは。
・・・・・・テスタロッサ、私はどう声をかけていいか、分からなかった」

「リインもです。というか、普通に恭文さん、最初気絶しましたし」



キャラなりしても、身体を乗っとっている状態は、変わらなかった。

シオンやヒカリが、表に出て戦う感じだね。だから、アレなの。



「うーん、私もフォローに回った方が良さそうだなぁ。
シオンとヒカリだけじゃ、足りないよ。ヤスフミの両肩の上で、困ってるし」

「そうだな、お前もやっておいてくれ。あとリイン、お前も頼む」

「はいです」



とりあえず、どうフォローしよう。うーん、普通にハグかな。

私は気にしてないってとこを、見せる必要があるよね。うんうん。



「・・・・・・というか、フェイトさん」

「うん、なにかな」

「二人の位置、どうして分かるですか? リイン、その話してないですけど」

「え、そんなの決まってるよ。見えてるんだし」



私がそう言うと、シグナムとリインが固まった。・・・・・・あれ?



「・・・・・・テスタロッサ」

「はい、なんでしょう」

「お前、さっきまでシオン達が見えてなかったのではないか?」



・・・・・・あぁ、そう言えばそうだった。私、大人になっているせいなのか、全く見えなくて・・・・・・え?

ちょ、ちょっと待って。なんだかおかしいな。



「・・・・・・私、どうしてシオンとヒカリが見えてるのっ!?」

「「気づいてなかったのか気づいてなかったですかっ!?」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・お姉様」

「あぁ、なんだ」





夜、お兄様はフルサイズなリインさんと、ハグしつつ睡眠中。

なお、たまに寝言で『フェイト』と言うのは、聞かない事にします。

私は、宛てがわれた部屋のテーブルの上。



クッション入りのバスケットの中で、たまごを寝床に睡眠中です。





「キャラなり、楽しいですね。私、もっとしてみたいです」

「・・・・・・お前、あの恭文の崩れようを見て、なぜそう言える」

「大丈夫ですわ。お兄様、なんだかんだで私達の事を信じてくださっていますし」



気絶しても、二人揃ってあの状態でも、お兄様は私達の事を、否定しなかった。

それで、お兄様への愛が、また深くなってしまった。・・・・・・ぽ。



「わざとらしく頬を赤らめるな。・・・・・・だがシオン」

「えぇ」



とりあえず、顔を赤らめるのはやめて、私はお姉様と一緒にお兄様を見る。・・・・・・熟睡してるのに、二人とも器用です。

睡眠中のリインさんに、別の女の名前を呼んだお仕置きとして、ほっぺたを引っ張られながらも眠っている。



「私もお姉様も、やはり完全ではありませんでしたね。
キャラチェンジの時点で、予測はしていたのですが」

「原因は、私達それぞれにあるということだな」

「その通りです。私とお姉様にもありますし、お兄様にもあります」





・・・・・・実は、お兄様のキャラチェンジやキャラなりがあんな形になるのは、原因がある。

今までは、確信が持てなかった。だから、お兄様もそうだし、リインさんやアルトアイゼンにも話してない。

でも、今日お姉様と一緒にキャラチェンジやキャラなりをして、やっと確信が持てた。



その原因は、簡単。私達とのキャラチェンジもキャラなりも、言うなれば不完全な形になっているから。

私やお姉様が単独でお兄様と一つになっても、お兄様の本当に『なりたい自分』の形を、ちゃんと引き出せていない。

だからその反動で、私達が身体を乗っ取ることになる。そうしなければ、バランスが取れないから。



壊したいものを壊す『魔法』を使える魔法使い。・・・・・・それが、私。

守りたいものを守る『魔法』を使える魔法使い。・・・・・・それが、お姉様。

確かに、それぞれに一つの形。それぞれに、お兄様の夢と願いがしっかりと詰まっている。



だから、力を発揮出来る。キャラなりも出来た。一つ一つが、ちゃんとした夢だから。

でも、これだけでは足りない。お兄様だけが妙なことになっているのは、そのせい。

あと一つだけ、パズルのピースが足りない。そのパズルのピースに、まだお兄様は気づいてない。



お兄様の描く『魔法使い』の姿は、そのピースをお兄様が見つける事で、ようやく完全な形になれる。

私は、これを確かめたかった。だから、お姉様に早く目覚めて欲しかった。

そして今日、やっと確かめられた。壊すだけでも、守るだけでも・・・・・・ダメなんだと。



だって、それらは実は一つなんだから。





「・・・・・・壊す事と守る事は、実は一つです。だからこそ、道は険しい。
だからこそ・・・・・・私だけでも、お姉様だけでも、もちろんお兄様だけでも届かない」

「その通りだ。まぁ、現段階でも十分とは言えるがな」

「お姉様も、私の予測よりずっと早く目覚めましたしね。ですが、それでもです」

「あぁ。・・・・・・恭文、私達はお前の味方だ。だから、ずっと待っている。お前が、答えに気づくのをだ」










例え気づかなくても、私達は側に居ます。だって、私達はもう一人のあなたなんですから。





それになにより、私のフラグは立ちまくりです。簡単には離れませんよ? ・・・・・・ぽ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・潰された? それも、こんなアッサリと。

全く、相当に厳重なセキュリティだね。でも、これでビンゴだ。

僕の『猟犬』を発見し、一発で潰した。ここがアジトで、間違いない。





目の前にあるのは、何の変哲も無い洞窟の入り口。だけど、僕達の目指すべき場所。





その場所の名は、城。そしてこの城の主の名は・・・・・・ジェイル・スカリエッティ。










「・・・・・・しかしロッサ、こんなところを良く見つけましたね」



山間で、見渡す限り木々しか存在しない世界。その中に、僕とシャッハは居た。

六課隊舎と、中央本部襲撃からちょうど一週間、僕達はここに居た。



「全部、フェイト執務官や108部隊の方々の日ごろの努力のおかげだよ」



シャッハが感心した顔で僕を見てるけど、僕は大したことはしてない。

うん、本当に大したことはしてないよ? 最後の美味しいところを持っていって、申し訳ないとすら思ってる。



「それが無かったら、こんなところ見つけられなかった。だから、みんなのおかげ」

「・・・・・・納得です。ロッサ、成長しましたね。そんなに謙虚になれるなんて」

「おいおい、それはないなぁ。僕は常日頃謙虚」



・・・・・・謙虚で居たいけど、その前に自己主張かな。具体的には、生存権の主張。

だって、周りに大量に俵型のおにぎり(恭文談)が出てきたんだから。



「これは・・・・・・黙って帰してくれる気は、ないようですね」

「出来れば、ここはおもてなしは必要なかったんだけどなぁ。
どうもジェイル・スカリエッティという人物は、相当にKYらしいね」

「ロッサ、それは当然です。恭文さんが言っていましたよ? 犯罪者というのは、基本KYだと」

「なるほど、それは納得だ」



実は、戦闘は苦手。それもかなりだ。だけど、逃げるにも数を片す必要がある。



「ロッサ、いけますね」

「いくしか、ないでしょ。シャッハは?」

「同じくです。というより、ずっとあなたの護衛で、退屈していたんです」










そう言って、シャッハがヴィンデルシャフトを構える。・・・・・・今、とても危ない発言しなかった?

まぁ、いいや。じゃあ、おにぎりを僕の猟犬の餌にしつつ、六課とカリム、クロノに連絡かな。

いや、あと一人にもだね。猟犬が撃墜される前に、あるものを見つけたから。





とりあえず、シャッハにバレるとうるさいから、バレないように処置して・・・・・・と。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・で、アンタは何してんのよ?』

「実は、ちょっと妙な動きしてるのを見つけた。それを追ってる」

『分かった。まぁ・・・・・・あれだ、無茶しないでよ? アンタに貸した金、まだ返してもらってないし』



・・・・・・ヒロ、お前。



「俺は、お前から金を借りた覚えはないぞ。なに勝手に、人を借金大王にしてんだ」

『いや、借金帝王だから』

「んなことは聞いてないんだよっ!  俺は、普通に金回りは相当頑張ってるってーのっ!!」





結局この馬鹿はスカリエッティの所に突っ込むと決めた。

まぁ、しゃあないか。あの子はきっと六課が保護してくれる。なにより・・・・・・なぁ。

真龍クラスとか召還されたら、コイツは踏みつけられて終わりだろ。



いや、もしかしたらコイツのことだからそれすら踏みつけて・・・・・・あ、ちょっと絵で考えたら面白いかも。





『サリ。アンタ今、凄まじく失礼なこと考えなかった?』

「いや、考えて無いぞ?」



あぶねー! 思考読まれてたっ!? お、女ってやっぱ怖いなぁ・・・・・・!!



「とりあえず、フェイトちゃんなりやっさんに見つからないように気をつけろよ? 絶対うるさくなるから」

『分かってるよ。んじゃ、行って・・・・・・あれ、通信?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ヒロリス、今どこかな』



あらま、ロッサだ。またどうしたのよ、サウンドオンリーで通信なんて。

てか、なんかドンパチと音が聞こえるんだけど、これはなに?



『いや、色々あってね。・・・・・・それでヒロリス』

「今は本局だよ。そろそろ出ようとしてたとこ。
アインへリアルも、あんなことになってるしね」



・・・・・・レジアス中将が指揮して作った防衛兵器・アインへリアル。

それが今現在、戦闘機人達の襲撃を受けている。多分、もうすぐ陥落するね。



『なら、ベストタイミングだね。・・・・・・いい、よく聞いて?
今僕は、シャッハとスカリエッティのアジトらしき洞穴を発見して、猟犬で探索してたんだけど』

「当たり、引いたんだね」

『そうだよ。いやぁ、大変だよ。戦闘は苦手なのに、もうドンパチしまくりでさぁ』



あぁ、だからこのドンパチと。・・・・・・色々と納得したわ。



『それで、内部探索中に偶然、眠り姫を見つけたんだよ』

「眠り姫?」

『もし予定に変更が無いなら、今すぐ起こしに来るといい。多分、君が一番助けたい相手だからさ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・アインへリアルが」

「見事に墜とされとるな」



はやてに、シャマルさんから栄養ドリンクを預かって届けに行った。

で、アースラのブリッジに居ると、緊急連絡が届く。



「恐らく、ゆりかごへの対抗策を潰すためですね」

「アインへリアルのスペックであれば、浮上前に足止めくらいは出来るだろう」

≪その通りです≫

「・・・・・・待って。シオンとヒカリはなんで、アインへリアルのスペックなんて知ってるの?」

「アルトアイゼンに、データを見せていただきました。一応、学習は必要かと思いまして」



・・・・・・うん、納得したよ。てーか、いつの間にそんなことしてたのさ。



「ですけど、動きが早いですね。目的地は・・・・・・中央本部でしょうか」

「ミッドでの司令塔を陥落して、中央を完全に手中に収めるつもりだろう。
これでもし、ゆりかごを持ち出されれば・・・・・・完全に手の出しようがなくなる」

「もしやお姉様、賊がここまで動かなかったのは」

「この作戦のための準備を、していたのかも知れないな。現に、相当数のガジェットまで持ち出している」



シオンとヒカリが、アインへリアル三機をぶっ潰した戦闘機人達の動きを、画面で見ながら呟く。

というか、動きが早い。このままだと、それほど時間が経たずに中央本部と、周辺の市街地に到着する。



「あかんな、中央本部狙いや。てーか、その途中に市街地もあるし。
でも、連中の進行方向がバラけてて、対処しにくいわ」

「隊長達の投入は、難しそうですね」










はやてとグリフィスさんが、どうしたものかと頭を捻っている。





でも、事態は待ってくれない。・・・・・・遠慮なく、色々動き出した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そういやドクター、私疑問なんだけど」



アインへリアルを見事にぶっ潰して、私達は次の作戦行動に向かう途中。

ふと気になって、ドクターに聞いてみた。



『あぁ、なんだい。セイン』

「いやさ、今ゆりかごの中に居る聖王の器って・・・・・・ぶっちゃけ、なに?
てーか、私らこんなことして、大丈夫なの?」

「あー、そこは私も疑問っス。あの子、なんなんっスか?」

『簡単に言えば、聖王のクローンだよ。まぁ、遺伝子の入手には苦労したがね』



あー、そういやそこが疑問なんだよね。だって、聖王って300年前の人間でしょ?

そんな人間の遺伝子が、どうして今残ってるのかな。それも、モノホンが。



「はーい、その疑問にこのクアットロが答えてあげましょう」



ガジェットU型に座りながら、飛行感覚を楽しんでいる私の隣で、クア姉が楽しそうに言ってきた。

なお、私は飛べないから、この対処ね? うぅ、みんな羨ましいなぁ。



「聖該布というものが有ってねぇ? そこから、遺伝子を入手したのよぉ」

「・・・・・・なんっスか、それ」

「簡単に言えばぁ、聖王の遺物。その布には、聖王の血液が付着していたの。
ただぁ、そういう遺物は、聖王教会が厳重に管理してたのぉ」

『これに関しては、教会の司祭だ。だが、その司祭も人の子だった。ある女性に、恋をしたんだよ。
そしてその女性に頼まれ、その女性への恋しさ故に、遺物を外に流失させてしまった』



あ、分かった。その遺物から血液データを入手して、あの子を生み出したってことか。

でも、なんつうか・・・・・・男って、バカだよね。それ、間違いなく利用されてるでしょ。



「でさ、ドクター。あの子を造ったのって、ぶっちゃけ最高評議会のリクエストっスよね?」

『そうだね。あの子は数々の失敗を経て、ようやく完成した金のたまごだ』

「で、私らはゆりかご飛ばそうとしたり、アインへリアル潰したりしてるっスよね?
まぁ、レジアス中将はいいんっスよ。でも・・・・・・ぶっちゃけ、こんなことしてていいんっスか?」





ウェンディがそう聞くと、ドクターは笑った。笑って、『問題ない』と言い切った。

・・・・・・まぁ、そうだよね。ドクターの目的の一つは、最高評議会の抹殺なんだから。

自分を利用した連中へ、復讐する。それが、ドクターが気づいた自分自身の『欲望』の一つ。



そして、もう一つは・・・・・・戦う事。自分として、戦って答えを出す事。

今までの自分が間違っているのか、新しい本当の道があるのか、探す事。

もし間違っているなら、私らは全員否定される。きっと、負けてしまう。そうして見極める。



チンク姉が見極めたように、ドクターは賭けている。自分を賭けて、答えを探そうとしている。





『君達は、気にすることなく思う存分遊ぶといい』





そこまで言って、ドクターは通信を切った。しかし、どうしたもんかなぁ。

私は、まぁいいのよ? ドクターは生みの親だし、要望は聞かないと。

でも、絶対他は怒るだろうなぁ。うぅ、私が知ってるってことは、内緒にしておこう。



だって、姉妹を騙してるのと同じだもの。・・・・・・ドクター、恨むよ?





「しかし、よくわかんない話だったっスねぇ」

「問題あるまい。我らは、ドクターの夢を叶えるために動けばいい」



私の左で飛んでいるトーレ姉が、平然と言い切った。

・・・・・いや、その夢自体が変化してるんですけど。



「そうすれば、手に入る。我々が認められる、『すばらしい世界』がな」

「そうっスね。ぶっちゃけ、夢とか未来とかってよく分からないっス。
けど、自分の思い通りになる世界が手に入るなら、否定する必要ないっスよね」

「そういうことだ」





・・・・・・トーレ姉は、疑問を持たずと。それは、他のみんなも同じか。

でもさ、正直私も色々考えて『すばらしい世界』ってやつに疑問が出てきたんだよねぇ。

あの小難しい話を、私の頭で必死で考えたわけですよ。そうすると・・・・・・『うーん』って感じ?



全部が思い通りになって、なんでもやりたい放題に出来る世界。それが、私達の目指す世界。

でもそれって、本当に楽しいのか、私は分からなくなってきたのよ。ここは、ドクターやチンク姉と同じ。

まぁ、だから戦いたいのかな。戦って、私達が負ければ答えが出る。これは、そのための儀式だもの。



逆に勝てば、私達の『すばらしい世界』が正しいって、証明されるんだから。





「・・・・・・あれ?」



でも、そうすると・・・・・・あれあれ?



「ドクターの話に出てきた、司祭をハニートラップを仕掛けた女って・・・・・・誰?」

『2番ドゥーエだよ。彼女のISで聖王教会に潜入してもらったのさ』

「ちょっとドクターッ!? いきなり通信復活するのはビックリするから、やめてっ!!」

『・・・・・・す、すまん』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『はやて、失礼するよ』

「ロッサ、どないしたんや?」

『スカリエッティのアジト、発見したよ』

「ホンマかっ!?」



どうやら、ホンマらしい。ヴェロッサさんが、力いっぱいに頷いたから。

まぁ、なんでシャッハさんをお姫様抱っこしてるのかが、気になるけど。



『ただ、遅かったみたいなんだ』










・・・・・・でしょうね。僕はもう、見て一発で気づきましたよ。





背後に、凄まじくデカイ船がある。僕が、無限書庫で見た通りの巨大船。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・止められ、なかった」



腕の中でシャッハが、巨大な絶望を見上げながらそう呟く。

確かに、浮上・発進前に止められなかった。僕達は、遅かったらしい。



「でも、まだだよ。まだ・・・・・・終わってない」










見上げる空を覆うのは、ゆりかご。そう、無限書庫のデータ通りの外観の船だった。





でも、大きい。既存の次元航行艦よりも、ずっとだ。・・・・・・僕達は、圧倒されていた。





まさしく、あれは巨大な絶望。世界を好き勝手に弄ぼうとする、悪意の詰まった船だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪ゆりかご、浮上したんですね≫

『あぁ。例の召喚師のものと思しき巨大召喚獣が地震を起こして、そこから一気にだよ』

「でも、アジトの位置は割れてるんですよね」

『そこはばっちり。ゆりかごとは別構造になってるらしいから・・・・・・君も暴れられるよ?』



・・・・・・やっとだ。この時を、どれほど待ち望んでいたことか。

あのアダルトチルドレンを、徹底的にぶちのめせるチャンスが、ようやく来た。



『はやて、失礼する』



・・・・・・って、今度はクロノさんかい。また今日は色々動くなぁ。



「うん、どないしたんや?」

『本局上層部は、ゆりかごを極めて危険度の高いロストロギアと認定した。
今、次元航行艦隊の主力が、そちらへ向かっている。・・・・・・機動六課、動けるか?』



はやては、クロノさんの言葉に力いっぱいに頷いた。



「もちろんや」

『なら、頼む。・・・・・・あぁ、それと』

「なんや?」

『恭文』



え、いきなり僕? またまたどうしたんですか、そんな苦い顔で。



『サリエルさんに伝えておいてくれ。礼は今度、たっぷりするからと。あと、これは出来ればになるな。
今回のようなぶっちぎりの無茶は、もうやめてくれると助かるとも、言っておいてくれ』

「・・・・・・はぁ?」

『理由は、これだ』



はやてのデスクに、データが送られてきた。はやてが画面の中のクロノさんを見る。

そして、クロノさんが頷くと、はやてがそれを開いた。開いて・・・・・・びっくりした。



「これはまた・・・・・・随分とすごいですね」

「なんやこれ。レリックでの蘇生実験のデータ? ゼスト・グランガイツや、ルーテシア・アルピーノのまである。クロノ君、これ・・・・・・まさか」

『そのまさかだ。サリエルさんが、データを送ってきてくれた』

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・旧暦の時代、バラバラだった世界を平定したのは、最高評議会の三人』





はやてに通信をかけてから、僕と母さんは通信越しにある人と話していた。

画面に映る、薄い青色の髪を後ろで結わえた妙齢の女性は、ミゼット提督。

六課の非公式の後見人で、伝説の三提督だ。なお、原因は実に簡単。



サリエルさんが送ってきた、今回の事件の真相を記したデータ達だ。





『現役を引いてから、私達や時空管理局ってシステムに世界を任せ、評議会制を作った』

『だけど、このデータ通りであれば・・・・・・その功労者が、今回の事件の黒幕になります』

『そうなんだよねぇ。というか、ヘイハチの弟子はあの子もそうだけど、みんな無茶するねぇ』



ミゼット提督が、呆れてるとも、感心しているとも言える顔で、笑う。

それを見て、僕と母さんはまぁ・・・・・・苦笑いだ。



『・・・・・・一応、止めたんですよ? サリエルさん達は、現役を引いている方々ですし』

『あぁ、分かってるよ。でも、聞かなかったんだろう?』

「その通りです」

『まぁ、そこはいいさ。・・・・・・それで、レジィ坊や』



僕と母さんが首をかしげると、ミゼット提督は気づいたように笑って、訂正する。



『レジアス中将の事だよ。結構前から、知ってる子だからねぇ。・・・・・・まぁ、あの子もあれだよ?
時々やり方が乱暴ではあったけど、それでもミッド地上の平和を守ってきた功労者さ』

『そうですね、そこは間違いないと思います。私やクロノも、見習うべき点は多いでしょう』

『あのハングリーさだけで言うなら、私もさ。だからこそ・・・・・・』

「信じられないんですね」



ミゼット提督は、沈痛な面持ちで頷いた。どうやら、本当にショックを受けているらしい。

恭文と、同じだな。あの人の牽引力というか、カリスマ性は、本当に見習わないといけない。



『そこは、最高評議会に関してもだよ。正直、信じたくはないけど・・・・・・事実なんだよねぇ』

「間違いなくそうでしょう。そして、ジェイル・スカリエッティさえも、その手ごまです」

『スカリエッティは最高評議会が生み出した人工生命体。
そしてそのコードネームは・・・・・・アンリミテッド・デザイア』





意味は、『無限の欲望』。というより、そういう調整を誕生段階から受けているらしい。

そうして科学的な項目・・・・・・特に生命技術関連に対して、強い興味を刷り込まれている。

まさしく、無限の欲望と言うべき純粋な願いが、彼の中にある。



そんな彼を生み出したのは恐らく、管理局のために色々な技術を開発させるためだな。

自分の意思なら、効率が落ちる心配もない。彼は、生まれながらにして解けない鎖を持っていた。

つまり、スカリエッティは最強評議会の・・・・・・いや、管理局の人形として、飼い犬として、生み出された。



なんというか、やり切れないな。決してスカリエッティの行動を、認めるつもりなどはない。

だが、僕達の身内が今回の一連の状況を引き起こしたのは、事実だ。

これは、フェイトでなくてもダメージを受ける。現に、僕と母さんはかなりキツい。





『なんというか・・・・・・まさしく、その通りなネーミングね』

「そうですね、現に欲望のままに現状を引き起こしていますし。
ですが、最高評議会はこうまでして、世界を守りたかったんでしょうか」

『そうだろうねぇ。。でも、決して許されることではない。そこは、事実だよ。
その責はしっかりと払って・・・・・・いいや。もう、払わされてるんだろうね』

「恐らくは」





・・・・・・不幸はたった一つ、あの方の弟子を敵に回したことだ。

あの遺伝子を縛る鎖など、どの世界だろうと存在しない。

よし、僕は気をつけよう。人の振り見て我が振り直せだ。



だが、これは後処理が大変だぞ? 結局、内乱とさほど変わりないじゃないか。





『また、ヘイハチさんのお弟子さんは・・・・・・ぶっ飛んだ事をするわね。
これ、どう考えても、完全な違法捜査よね』



母さん、今更それを言うんですか? というより、それを言えば恭文もそうでしょう。



『リンディ提督、これくらいならまだ、ヘイハチには負けるよ。
アイツのバカと無茶苦茶に比べたら、まだまだ可愛いもんさ』

『・・・・・・そ、そうですか』





なんでなんでしょうか。あの方でもこうするのが、目に浮かびますよ。

・・・・・・僕もお二人と酒を飲み交わしたことがある。その印象は、まさしくあの方の弟子だった。

だが・・・・・・美味く酒を飲みつつ、色々と話が出来たのはいい思い出だ。



僕個人で言うなら、ヒロリスさんもサリエルさんも好きな人間と言える。





「・・・・・・それで、どうします?」

『どうするもなにも、出来る範囲で公表するしかないでしょ。そうしないと、間違いなく市民にリークするわよ?』



そうでしょうね、PSでそう書かれていますから。

しかし、文面の一番最初に『PS』が付いた報告書なんて、僕は初めて見た。



『とにかく、対処の方向は一つだけ。公表して、絶対に同じ事を繰り返さない。これだけよ』

『そうだね。それで、本局の方だけど』

「大騒ぎですか」



ミゼット提督は、少し困ったように頷いた。いや、実際困っているんだろう。



『あぁ。今更だけどね』



仕方あるまい、予言の事を知っていたとしても、これはありえない。いくらなんでもぶっ飛び過ぎだ。



『ただ、レティやミゼット提督達が取りまとめてくれてるから、大きな混乱は無いわ。
遅延せずに、こっちからも増援を出せそう。そこは心配しないでいいわ。あとは』

「やはり、ゆりかごですね」

『そうね。そっちの方は、ユーノさんや恭文君に調べてもらってたのよね』

「えぇ。・・・・・・というわけで、通信ですね」



無限書庫に通信を繋ぐ。そして、出てきたのはユーノ。

・・・・・・顔色、悪いな。すまん、これが無事に片付いたら、ご飯でも休暇でもなんでもやるから。



『・・・・・・すみません、興奮剤を支給してもらえませんか? もう戦場とかで旧時代の兵士が使うやつ』



お前はいきなりだなっ! あと、それはダメだぞっ!? 普通に麻薬物質込みだろうがっ!!

見ろっ! ミゼット提督が申し訳なさそうに両手を合わせているぞっ!? お前、相当大物だなっ!!



『いや、なんというかすまないね。後で好きなだけ休暇をあげるから、頑張ってくれないかい?』

『ユーノさん、早速なんだけど』

『えぇ、分かってます。・・・・・・お休みは、お願いしますよ?』



あぁ、分かってる。ちゃんと僕の方でも手を回すから、頑張ってくれ。

突然の資料請求も、自粛していく。恭文に一昨日メールで、釘を刺されてしまったからな。



『まず、ゆりかごに関してですが』



情報が、リアルタイムで送られてきた。母さんも同じくらしい。

画面の外に目を向けて、確認している。



『性能は、以前お話した通りです。相当に無茶苦茶ですよ。
クロノ、軌道上に着くまでには、どれくらいかかりそう?』

「今から、ちょうど3時間半後だ」

『・・・・・・かなり厳しいな』

『それで、停止させる方法はあるのかねぇ』



ミゼット提督がそう聞くと、更に情報が送られてきた。

・・・・・・これは、ゆりかご内部の図面?



『ついさっき、ようやく見つけたんだ。・・・・・・まず、船の一番先にあるのが王の間。
ここに聖王を配置して、ゆりかごは動き出す。それで、なのはの保護児童のヴィヴィオも、多分ここ』

「聖王・・・・・・ヴィヴィオをここから引き剥がせば、止まるということか」

『可能性はある。それで。次にこれを見て?』



船の後部に、赤い光点が付く。これは・・・・・・なんだ?



『そこは、ゆりかごの動力炉。狙うなら、この二つのどちらか。
いや、確実に行くなら、両方潰すべきだと思う』

『動力炉を壊して、聖王・・・・・・いや、ヴィヴィオという女の子を、無事に保護と』

『はい。だけど、船の中は敵でうじゃうじゃだろうし、戦闘機人達も待ち構えてると考えると』

「簡単では、ないか」










そうすると、主力艦隊による一斉砲撃で潰すのが早いか。それが、安全確実だ。

だが・・・・・・主力艦隊は、ゆりかごが軌道ポイントに到着する前に、ミッドに着けない。

現在、残り時間は3時間29分。そして、こちらの到着予想時刻は、あと3時間36分。





7分という時間があれば、確実に撃てる。いや、ミッドの住人全てが人質に取られる。





やはりここは、現場任せになるということか。なんというか、とても歯がゆい。




















(第31話へ続く)




















おまけ:劇場公開記念CM:恭文&リイン・空海&ダイチ

(現在、2010年・1月17日です)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



リイン「なのはさんとフェイトさんの、始まりの物語。リインと恭文さんが出会う前のお話」

恭文「キーワードは『ジュエルシード』・『不屈の心』・『手を伸ばし、ぶつかり、伝えること』」

リイン「青い宝石をきっかけに交わる人と人、運命と心、物語は誰にも予測出来ない方向に進んでいきます」

恭文「その中で、二人の少女は翻弄され、だけど想いを貫くために戦います」





(テロップ:これは、生まれ変わった始まりの物語です)




恭文「そして、はやては・・・・・・出ないんだよねー」

リイン「でもでも、もしかしたらエンディングテロップの後に、ちょこっと登場かも知れませんよ?」

恭文「あ、Cパート出演だね」

リイン「はいです。それで、『2nd・近日公開予定』とか、出るかも知れないです」





(テロップ:その辺りも、是非劇場でお確かめください)





恭文「あとは、魔王のあれとかこれとかが、どうなってるかだよね」

リイン「ついに、トリガー付いちゃいましたしね」

恭文「もう、あれは魔法少女じゃないよ。機動少女だよ」





(テロップ『劇場版 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』)





恭文・リイン「「『劇場版 機動少女リリカルなのは The MOVIE 1st』! 2010年・1月23日、全国ロードショー!!」」

リイン「恭文さん、この調子でセカンド・サードにいくといいですね」

恭文「そうだね。そうしたらリインも出られるし、僕も登場出来る」

リイン「そうですね。それでそれで、いっぱいラブラブするのです♪」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



空海「ダイチ、ついにフェイトさんなのはさんの映画が、公開だってよ」

ダイチ「なんか、スゲーよな。・・・・・・でもよ、これってどういう映画なんだ?」

空海「えっと・・・・・・なんか、二人の子ども時代の話らしいぞ?」





(テロップ:そう、二人とも9歳なのです)





空海「で、なんか恭文が『トリガーが付いた』とかなんとかって、騒いでたな」

ダイチ「トリガー? あれだよな、引き金でボーンってやつだよな」

空海「多分、それだな。・・・・・・あれ? 確かこの話って、魔法少女の話だったよな?」





(テロップ:トリガーがあっても、魔法少女です)





空海「それで、トリガーを引くと、ピンク色のぶっといのが出てくるとか」

ダイチ「トリガー引いて、ピンク色のぶっといの? ・・・・・・ところてんとかかな」

空海「いやいや、トリガー引いて出てくるピンク色のところてんって、なんだよっ! それ、マジ怖いしっ!!」





(テロップ『劇場版 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』!)





ダイチ「でよ、結局これはどういう映画なんだっ!? 俺、マジ分からねぇしっ!!」

空海「落ち着けダイチっ! 大丈夫、こういう事もあろうかと、台本を用意してあるっ!!」

ダイチ「だったら、それを最初から読めよっ!! ・・・・・・で、なんて書いてんだ?」

空海「・・・・・・すっげー! なんか、なのはさんが『あたしのこころ、アンロック』でセットアップするって書いてるぞっ!!」

ダイチ「マジかよっ!!」




















(本当に続く)




















あとがき



恭文「みんな、ゆかなさんは僕の嫁っ! 蒼凪恭文ですっ!!」

あむ「アンタ、マジで自由過ぎないっ!? ・・・・・・日奈森あむです」

恭文「まぁ、そこは本気だけどさ」

あむ「本気なのっ!?」

恭文「とにかく、ようやっと最終決戦だよ。ようやっと、TV版の20話だよ」





(そう、長かった。途中参加のはずなのに)





恭文「というわけで、本日はあとがきらしく、現状整理ね?
まず、隊舎が焼かれて危うく部隊員達がバーベキューだよ」

あむ「TVだと、ここでギンガさんが攫われて、洗脳される。
この後の廃棄都市部戦で、向こうの戦闘要員になるんだよね」

恭文「だね」

あむ「でも、ここだと攫われてないから、まずここが変わってることの一つ。
で、アンタがスカリエッティ戦に参加ってのも変化の一つだね」

恭文「そうだね。そして、ヴィヴィオがチートキャラ化だよ。
というか、もうそうなる。それくらいした方が、楽しいから」

あむ「てゆうかさ、なんか拍手で来たんでしょ? なのはさんはもう一回落ちた方がいいって。
力押しでどうにかならない相手に負ければ、普通にスペック勝負やめる・・・・・・って感じの」

恭文「あったねぇ」

あむ「じゃあ、あれ? 拍手でもらったみたいに、そのチートヴィヴィオとなのはさんとアンタとフェイトさんでバトル?」

恭文「まだ未定。でもさ、普通になのは一人で死にかけながらもそれをなんとかする方が、いいのよ。
僕とかフェイトが途中参加して、三人で・・・・・・って流れよりは、ずっとさ」





(この辺り、前回のあれこれが関係しています)





恭文「やばいな、なのはが普通に主役みたいだ。なのはは、ラスボス女なのに」

あむ「いやいや、なのはさんは主役じゃんっ! アンタ、マジでなのはさんをどう思ってるっ!?」

恭文「某アレみたいに、スバルから主役の座を奪ったKYだと、思っていますけど・・・・・・何か?」





(空はー♪ 飛べないけどー♪)





あむ「・・・・・・ま、まぁ間違っては・・・・・・ないよね。
でもさ、プロデューサーさんが、なのはさんがシリーズの主役って言ってるんでしょ?」

恭文「らしいね。でもさ、完璧な人間は主人公になれないのよ?
だけど、足りないものがある子は、誰だって主人公になれるのよ?」

あむ「あ、司さんのセリフだね」

恭文「そう考えるとだよ。・・・・・・あれ? もしかしてRemixって、スバルの話をもっと書くべきだった?」





(あれれ?)





恭文「やばい、改めて考えるとなのはが主役になってしまっている。
スバルが脇役になっている。これはやばい。普通にスバルをRemixしてない」

あむ「・・・・・・確かに、マズい・・・・・・のかなぁ。だって、スバルさんは、三期の主役だしさ」

恭文「てーか、魔王が魔王じゃなくなってる。ハードボイルドじゃなくなってる。
これはだめだ。これでは、魔王が本当に主役になってしまう」

あむ「いや、それじゃあアンタだめじゃん。ハードボイルドって言われてるし」

恭文「僕はいいのよ。だって、僕はハードボイルドだろうと・・・・・・身長、足りないもの。顔立ちだって、女の子」

あむ「・・・・・・そ、そっか。でも、泣くのやめない? ほら、みんな困ってるしさ」





(それでも、青い古き鉄は泣く。RemixされてないKY犬っ子の事とかも含めて)





あむ「とにかく、次回からはいよいよ最終決戦です。でも、ミッション話のあれも多いんだよね?」

恭文「なんか、TV版の如く全部書く感じだしね。ぶっちゃけ、フェイトと僕がバトる話は書き終わってるのよ。
だから、それだけ出してあとはみんな適当に頑張りましたーって感じで、終わることも可能なのよ」

あむ「でも、それだと味気なくない? ほら、Remixなんだしさ」

恭文「だから、全員のあれこれを書く感じなのよ。・・・・・・さて、またまたハードルを上げてしまった作者がどうなるかとか期待しつつ、本日はここまで」

あむ「お相手は、日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。それでは、また次回にー」










(次回からどうなるか、色々楽しみになりつつ、二人はカメラに向かって手を振る。
本日のED:伊藤かな恵『ユメ・ミル・ココロ』)




















ヒカリ「というわけで」

シオン「次回からは、私達が大活躍です」

恭文「しないよっ!? てゆうか、ついて来る気満々かいっ!!」

ヒカリ「だが、私達が居れば、AMF戦闘での切り札がもう一つ出来る。決して損はない」

恭文「いや、そういうことじゃなくて」

ヒカリ「・・・・・・なら、言い方を変えよう。私達も、戦いたいんだ。
お前の戦いの道具となるためではなく、私達の勝手で、自由でだ」

シオン「私も同じくです。私達は、お兄様のもう一人の自分です。だから、出来ないんです。
弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても・・・・・・何もやらない言いわけなど、出来ません」

ヒカリ「だが、私達が戦うためには、お前の力が必要なんだ。私達だけでは、無理だ。
・・・・・・だから、頼む。私達に、想いを通させてくれ。私達は、お前と一緒に戦いたい」

恭文「ヒカリ・・・・・・シオン」

はやて「・・・・・・よし、そっちの妖精見えてるんは無視や。
グリフィス君、前線メンバーを全員ミーティングルームに集めて」

グリフィス「分かりました。ですが、振り分けは」

はやて「全部止めなあかんしなぁ。こりゃ、また戦力を分担せなあかんで」










(おしまい)





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あきゅろす。
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