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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第3話 『交わる過去と現在(いま)のウィングライナー』(加筆修正版)



激動と言っていい長い一日は、ようやく終わりを告げようとしていた。





僕達は隊舎の食堂でノンビリ。うん、楽しかったけど・・・・・・・ちかれた。











「はい、コーヒーどうぞ」



そう言って、机に突っ伏す僕に湯気の立つコーヒーカップを置いてくれたのは、白い袖無しの・・・・・・え?



「ナオミさんっ!?」

「はい。初めましてー。蒼凪恭文ちゃんに・・・・・・アルトアイゼンちゃんで大丈夫ですよね」

≪・・・・・・ちゃん付けですか≫



アルト、不満そうにしない。というか可愛らしくて・・・・・・よし、たまに呼んでからかってやろうっと。



「あのヤスフミ、この人は」

「あ、初めましてー。デンライナー食堂車乗務員のナオミです。あ、コーヒーどうぞ」

「は、はぁ・・・・・・え、あそこ乗務員さんなんて居たの?」





フェイトがナオミさんからコーヒー受け取りつつ、僕に疑問の視線を向けて来るのはどうしてだろ。

ギンガさんも同じ調子なのはどうして? いや、確かにさっきは姿が見えなかったけど。

でもさ、僕もこれ以上はナオミさんの事を説明しようがないよ? デカ長と同じく結構謎が多いの。



てか、この人も居たんだ。あ、じゃあもしかしてこれ・・・・・・あれ、普通のコーヒーだ。



それをちょっと不思議に思いつつも、僕達はコーヒーを一口。





『・・・・・・美味しい』

「良かったですー。きっと二人とも喜びますよ?」

『え、二人? どういう事ですかそれ』

「そのコーヒーは私が淹れたんじゃないんですよ。・・・・・・そろそろかなぁ」



ナオミさんがモモタロスさん達にもコーヒーを配りながら、食堂の入口を気にし始めた。

するとそこからとことこと入ってくるのが二人居た。



「フェイトママ、恭文ー。お仕事お疲れ様ー」

「ギンガもお疲れ様。コーヒーのお味はどうかな」

「「なのは。それにヴィヴィオも」」

「なのはさんっ! あ、じゃあこのコーヒーもしかして」



ギンガさんが驚いたようになのは達に視線を向けると、二人して楽しそうに笑い出した。

・・・・・・なるほど、なのはとヴィヴィオが淹れてくれたのか。何気にあの魔王は料理上手いしなぁ。



「えへへ、そうなんだー。ヴィヴィオも豆を挽いて・・・・・・わぁー! ホントに居るー!!」

「あぁ? なんだこのチ・・・・・・いや、小さくて可愛らしいお子さまは?」



モモタロスさん、そこなぜ言い直すんですか? いいじゃないですか、ヴィヴィオはチビで。



「多分、そうしなかったら恭文にぶっ飛ばされるとか思ったんじゃない?」

「リュウタ、僕はそこまで危険人物じゃない。そして地の文を読むな」

「いや、恭文。昼間のアレとかさっきのコレとかはそう思わせるに充分だから」



なぜか失礼な事を言うウラタロスさんは気にしない事にした。

ともかく、ヴィヴィオは早速デンライナーのメンバーと仲良くなり始めていた。



「・・・・・・ビビオ? なんか言いにくい名前だな」

「うー! 違うよー!! ヴィヴィオは『ヴィヴィオ』って言うのー!!」

「で、オビビ。お前なんでこんな時間まで起きてんだよ。
てーかアレだ、早く寝ろ。俺も・・・・・・ふぁぁぁぁぁぁ」

「モモタロス、だめだよ。ヴィヴィオちゃんやなのはさんがせっかくコーヒー淹れてくれたんだし、お礼くらいは」



・・・・・・いや、凄いね。もう我が六課のマスコットは、みんなの心を掴んでますよ。

でも大人陣は・・・・・・そんなに疑問かなぁ。こういう状況はワクワクとドキドキの塊だと思うのに。



「なぎ君、ヴィヴィオ凄いね。モモタロスさん達にも物怖じしてない」

「ま、僕がディスク貸してたから。原作知識はたっぷりなのよ」

「なのは共々ファンなんだって。特にモモタロスさんとリュウタロスさんがお気に入りみたい」

「あぁ、それで・・・・・・納得です」










次々とデンライナーの面々と仲良くなっていくヴィヴィオを見ながら、僕達三人はゆっくりコーヒータイム。





やっぱりこういうの、ドキドキでワクワクだなと思いつつ・・・・・・夜は更けていった。




















ー時の列車・デンライナー。次に向かうのは、過去か、未来かー





『とまとシリーズ』×『仮面ライダー電王』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間


第3話 『交わる過去と現在(いま)のウィングライナー』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、翌日。僕達は早速協力して事件捜査となった。ただ、問題がいくつかある。

まず一つは・・・・・・機動六課のメンバーが、デンライナー署のみんなと連携を取る事を拒んでるフシがある。

ここは僕にフェイトにギンガさん、それに元から電王を知っているメンバー以外だね。





ようするにまだみんなの存在に疑いを持ってるのよ。良太郎さん達に横槍入れられたくないと思っている。

昨日の一件もみんなはちゃんと認識出来てないみたいだし・・・・・・全く、純粋な気持ちを忘れた大人はこれだから。

少しはヴィヴィオもそうだしギンガさんも見習えっつーの。別にさ、仲間になれとは言わないよ?





会ってまだ24時間も経ってないわけだし、それで仲間になれたら奇跡だよ。当然の事ではないよ。

でも現に事件は起きて、昨日のおっちゃんズみたいな人達だって出てきてる。なのに未だにそれなのよ。

相手が疑わしくて信じられないならそれでもいい。でもそのために仕事が出来ないのはアウト。





今の僕達の仕事は? イマジンを止める事だよ。そのためには良太郎さん達の力は必要不可欠。

なのに未だに『自分達だけでやれる』って空気を出してるのよ。どんだけ認識甘いんだか。

最悪の場合は六課なんて捨てて、僕とアルトだけで協力する事も考えていたりする今日この頃である。





あ、もう既に捨ててるんだっけ。今の僕はデンライナー署のデカなわけだしさ。・・・・・・デカなわけだしさっ!!

それで次の問題。まぁこれも今の話に絡んでるところがあるんだけど・・・・・・六課は全戦力を前に出せない。

まず隊長陣は捜査関係で外回りが多いフェイト以外は捜査に加わる事そのものからNGとなっている。もち理由がある。





良太郎さん達の存在を気づかれないようにしなきゃいけないから、今まで以上の動きが出来ないのよ。

六課と隊長陣が色んな意味で有名過ぎて、局の中でも動きが注目されてきてる。だからみんな前に出れない。

ここで六課が派手に動いちゃうと、必然的に周囲に『何かが起きている』と掴まれちゃうわけだよ。





少なくとも僕達の方からアクションを起こして動くのはアウト。動くなら他と足並みを揃える形でちょろちょろという感じだね。

正直、今現場検証をスバル達に手伝わせてるのもアウトなんだよね。みんな基本隊舎から出ないし。

・・・・・・しかしめんどくさい。そんな状況もあるのにも関わらず『自分達でなんとか出来る』とか言ってやがるのがムカつくし。





まぁ誰がなんでそう言ってるのかはご想像にお任せしようと思う。ただ、それでも僕の方針は変わらない。

昨日の一件でよーく分かったもの。イマジンが何考えてるか分からないけど、止めなきゃこの世界の時間が壊される。

だから絶対に止めないと。そこはフェイトとギンガさんと改めて話して、納得してもらっている。





なのはやヴィヴィオも二人や僕と同じくなので、決して僕の仕事が通せない状況ではない。

とは言え、いつ僕の家を占拠してくれたあのクサレ提督からの横槍が入るとも限らない。

クロノさん曰く、あのバカには今回の事は教えていないそうだから。うん、それで正解だわ。





今度また仮面を送ってやろうと決意を固めつつ、僕はハードボイルドに・・・・・・右手で鼻を押さえた。










「アルト」

≪なんでしょう?≫

「僕達、何しに来たんだっけ?」

≪首都で聞き込みですよ。イマジン対策で≫



うん、そうだね。知ってた。聞き込みは刑事の基本だもんね。で、次の質問だよ。



「そうしたら、イマジン出てきたんだよね?」

≪出てきましたね。緑のカメレオンっぽいのが≫



うん、僕は直接エンゲージしてないけど出てきたっぽい。

というか、カメレオンイマジン・・・・・・放送初期に出てきたアレか。



≪で、現場に駆けつけてみるとどうしてか現場が・・・・・・まみれだったんですよ≫

「うん、そうだったからね」



イマジンの奴、運搬トラック強奪して、全部ぶちまけやがった。

おかげで現場は・・・・・・地獄だよ。で、最後の質問ね。



「・・・・・・なんでこんな臭いのかな」

≪それは当然、大量の納豆がぶちまかれたからに決まってるじゃないですか≫



・・・・・・そうです。クラナガンの公道の一角は、現在納豆塗れ。言うなら納豆地獄。

トラックは横転し、コンクリな道路には納豆やそのパックが大量に・・・・・・そして匂いも凄い。



「でもこれ、誰が処理するの?」

「ですです。それにもったいないですよ。食べ物を粗末にしちゃ、いけないです」



涙目なリインの意見には激しく同意。だって凄いよ? あっちでネバネバ。こっちでネバネバ。

これだけでも大犯罪だよ。こんな事のために納豆は、頑張って大豆から発酵してたんじゃないって言うのにさ。



「・・・・・・恭文君、リインちゃん」



良太郎さん、なんでそんな疲れ顔? いや、それはここに居る全員が同じだけど。

だって匂いで鼻が曲がりそうなの。一個ならともかく、100単位はキツいって。



「あのさ、一つ質問なんだけど・・・・・・例えばだよ?
嫌いな物を身体中にぶちまけられり口いっぱいに放り込まれたら、更に嫌いになるよね」

「「・・・・・・はい? どういう事ですか、それ」」

「あの契約者の女の人」



良太郎さんはそう言いながら、困った顔で納豆の中心で呆けてる女の人を見てる。

なお、全身ネバネバ。目が完全につや消しで、見る人が見たら腐った想像をすると思う。



「どうもイマジンに納豆嫌いを治して欲しいってお願いしたみたい」

「・・・・・・だからこれですか?」

「コレみたい。あの人のところまで納豆を運搬したトラックを持っていって、ぶちまけて・・・・・・食べさせた」



いや、それでよく契約成立出来たよね? 良太郎さんも全く同意見なのか、言いながら呆れてるし。



「良太郎さん、リインは電王は見てないので今一つ分からないのですけど、イマジンって毎回これなのですか?」

「これ・・・・・・だね。うん、かなり適当だよ。今回だって一口飲み込んだから契約成立って感じみたいだし」

「ホントに適当です」



まぁイマジンだしなぁ。基本そういうもんなんだよ。でもこれはない。もし僕なら。



「・・・・・・恭文君?」



身体中にぶちまけられ・・・・・・口イッパイに放り込まれ。



「あの、恭文さん。顔色悪いですよ? どうしたのですか」



・・・・・・キュウ。



「恭文さんっ!?」

「え、なんでいきなり倒れるのっ!? というか・・・・・・恭文君しっかりしてー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



結局恭文君はそのままダウン。寝言で『トマト・・・・・・とまと怖い』と呟きながら起きる事はなかった。

仕方ないからアルトアイゼンとリインちゃんにギンガさんとフェイトさん、あとハナさんと一緒にうなされながら隊舎に戻った。

それで僕達はデンライナーで過去に行って、いつも通りにイマジン退治をする事になった。





行き先は8年前のミッドみたい。でも・・・・・・そんなにダメなんだ、生のトマト。





同行してくれる事になったスバルちゃんとティアナちゃんから聞いて、ちょっと納得出来たよ。










「でも彼、僕達で言うところの先輩の位置だったんだね。色んな意味でキャラかぶってるよ」

「なんや、不憫な奴やな」

「そうだね。うん、リュウタロスだけじゃなくて、モモタロスとも気が合いそう」



・・・・・・あれ、そう言えばそのモモタロス・・・・・・またまた署のオフィスに改造された食堂車の中には居ない。

僕が軽く辺りを見回すけど、やっぱり姿は見えなくて・・・・・・どこ行ったんだろ。置いて行ったって事はないし。



「ねー、モモタロスー。なんでこっちに入って来ないのー」



リュウタロスが入り口の近くに蹲ってそんな事を言うからそちらを見てみる。

するとリュウタロスの背中越しに、赤い角や身体が見えた。でも食堂車には入ってきてない。



「一人で遊んでて楽しい? というか、モモタロスの寂しい奴ー」

「うっせぇっ! 俺は別に遊んでねぇよっ! お、俺は・・・・・・こっちが好きなんだよ」



いや、いつもは食堂車にいるじゃない。今回は刑事だからオフィスだけど、それでもこっち居るのに。

でも、どうしたんだろ。声がちょっと震えた感じだし、視線も極力こちらに向けないようにしてるし。



「・・・・・・ふむ」



ウラタロスもそんなモモタロスを見て、なにやら考え込んでる。

というか、スバルちゃんとモモタロスの居る方を見比べ出した。



「あ、なるほど。・・・・・・先輩、スバルちゃんが怖いんでしょ?」

『えぇっ!?』



え、なんでっ!? スバルちゃんがモモタロスを怖がるとかなら分かるけど。



「というわけでスバルちゃん、悪いんだけど先輩に近づいてみてくれる?」

「え、近づくって」

「ただちょっと先輩の方に歩いてくれるだけでいいから。ね、お願い?」

「あ、はい。じゃあ」



言われた通りにスバルちゃんが近づくと・・・・・・あ、逃げた。

それも凄い勢いで、隣の車両の壁とかにぶつかった。



「・・・・・・私、やっぱり嫌われてるんですか?」

「違う違う。先輩、どういうワケか犬がダメなんだよ」

「・・・・・・あぁ、そっか。スバルちゃん、犬っぽいしね」



そう言えばモモタロスは犬の人形でも怯えて・・・・・・え? 犬『っぽい』人もだめなのっ!?

もしかしてやたらとスバルちゃん達四人と距離取りがちだったの、そのせいなのかなっ!!



「あの、私は犬じゃないですよっ!?」

「・・・・・・分かってるよ」

「え?」

「というわけで良太郎、ちょっと借りるね」

「え?」










ウラタロスの身体は半透明になって、一気に僕の身体に吸い込まれるように入った。





僕の意識はちゃんとあるけど、身体は完全にウラタロスのものに・・・・・・アレ、どうしてここで憑依?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あのウラタロスって言う人が良太郎さんに吸い込まれたかと思うと、良太郎さんが変わった。

いや、そうとしか表現出来ない。髪型が変わった上に青いメッシュが入って、瞳も青になったの。

それで黒縁のメガネなんていつの間にか着用。というか、どこかナヨナヨとしていた動きも変わった。





急にあの・・・・・・大人っぽい感じって言うのかな。そういうの出し始めて、そのまま私に近づく。










「・・・・・・スバルちゃん、先輩が不愉快な思いさせちゃってゴメンね。
先輩はどうも、デリカシーって言葉とは縁遠いらしくてさ。僕達も困ってるんだよ」



え、これウラタロスさんの声? でもあの、顔は良太郎さんで・・・・・・アレ?



「アレ、なんなら海に放り投げて、魚の餌にしてくれちゃってかまわないから」

「いえ、さすがにその・・・・・・そこまでは」

「へぇ・・・・・・君、優しいんだね」



あの、そんな顔・・・・・・うぅ、恥ずかしいよ。なんで私ちょっとドキドキしてきてるんだろ。



「そうだね、君は犬じゃない。そんな優しい気持ちを持つか弱い一人の女の子だよ」

「え?」

「ただ・・・・・・そうだな」



良太郎さんは右手の指を軽く弄りながら、私の周りで歩き出した。



「先輩でも反応しちゃう、子犬のような可愛さを強く持っているとでも言えばいいのかな」



背中に回ったかと思うと、声は一気に耳元から聴こえた。

というか口、近づけられてる。自然と身体が震えてしまう。



「ようするに君はとてもチャーミングなんだよ」

「ちゃ、ちゃぁみんぐっ!?」

「君のその青い髪・・・・・・とても綺麗だね」



ひあ・・・・・・髪、触られてる。というか位置的に右手で撫でられてる。でもあの、息吹きかけるの・・・・・・だめぇ。



「なにか特別な手入れとかしてるの?」

「あの・・・・・・えっと」

「ごめんね、いきなりこんな事聞いて。ただこれだけは分かって欲しいな。
僕達は青物同士、出会い、惹かれ合う運命だったんだ。・・・・・・いや」



う、うぃすぱーぼいすが・・・・・・さらにつよくなった。あの、なんかゾクゾクしてきてるよ。



「そんなのとは関係なしで、僕は君に・・・・・・惹かれてる。恋しちゃってるんだ」

「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? こ、恋ってなんですかっ!!」

「そうだよ。どう? これが終ったら僕とゆっくりお茶でも飲んで、次元の海を越えて出会えた、僕達の運命について語り合わない?」



私だって子どもじゃない。これがその、口説かれてるのは分かるつもり。

だけど・・・・・・いきなり過ぎるよっ! コレなにっ!? どうしてこうなるのかなっ!!



もちろん・・・・・・朝まで

「あの、えっと・・・・・・その・・・・・・!!」

「・・・・・・アンタいい加減スバルから離れなさいよっ!!」





次の瞬間、私の後ろからとても鈍い音がした。それで咄嗟に振り返って後ろを見ると・・・・・・ティアが怒った顔でケンカキックしてた。

それで良太郎さんは脇腹を蹴られて吹き飛んで、車両の床に転がる。

その瞬間、良太郎さんの身体から青い半透明な何かが出てきた。というか、ウラタロスさんが出てきた。



ウラタロスさんはそのままデスクにお腹から叩きつけられるけど、ティアはそれに構わずに前進。





「痛た・・・・・・ウラタロス」

「あー、ごめんごめん。ちょっと調子乗り過ぎちゃったかなぁ」



ティアは良太郎さんの方にずかずかと近づいて、その胸ぐらを両手で掴んで引き上げる。



「まぁまぁ胡散臭いと思ってたらいきなりナンパっ!?
アンタどんだけ図々しいのよっ! てーか神経腐ってるでしょっ!!」

「あの、ちょっと待ってー! アレ僕じゃ」

「何言ってんのよっ! 最初から最後までアンタがやったんでしょうがっ!! しっかり見てたわよっ!?
・・・・・・もういいっ! そっちがその気ならやってやろうじゃないのよっ!! アンタ達の事はアテにしないからっ!!」



え、なんかとんでもない事言い出してるっ!? フェイトさんやギン姉から、みんなと協力して対処するようにって言われてるのにっ!!



「ティア、ちょっと待ってっ! さすがにそれはダメだよっ!! 隊長達から」

「うっさいっ!!」



キャー! ティア本気で怒ってるー!! というかどうしてっ!? やっぱり胡散臭い話だと思ってたからなのかなっ!!



「とにかくアンタ達はただ電車だけ貸してくれればいいのよっ! あとは私達だけ出来るし止められるっ!!
だから分かったっ!? これ以上私達に迷惑かけたり邪魔したりしたら・・・・・・本気でぶっ飛ばすからっ!!」

「ちょ、ティアナちゃん待って。話せば・・・・・・話せば分かるから」

嘘だッ!!

「どうして全否定っ!? というかつや消しの目は怖いからやめてー!!」










・・・・・・結局、ティアが相当お怒りモードだったので過去に跳んだイマジンは私達だけで倒す事になりました。





ただ一つ気になる事が。必死にティアを止めようとした他のイマジンの人達が『ハナが増えた』って言ってたの。





ハナってあの小さい女の子の事だよね? まぁ確かにしっかりした感じだけど・・・・・・ティアみたいに暴力的には見えなかったのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・トマト・・・・・・トマトの師団が・・・・・・!!」

「・・・・・・あの、一体何があったんですか? ここまでうなされるなんておかしいですよ」



六課隊舎の医務室のベッドでうなされるヤスフミを見て、ハナちゃんが呆れてるとも言える顔を私達に向ける。



「・・・・・・生トマト克服のために今まであれこれしてたけど、頑張り過ぎてたかな?」

「・・・・・・多分。恭文さん、そういうキャラなんでついつい」

「ホントに二人ともなにさせてたんですかっ! ・・・・・・なぎ君、大丈夫っ!? しっかりしてー!!」



そう言いながらギンガはより強く・・・・・・うん、より強くなんだよね。



「ねぇギンガ」

「なんでしょう」

「どうしてヤスフミの手をしっかりと握ってるの?」



ギンガはずっとベッドに寝かされ、うなされているヤスフミの手を握っていた。

それはここに運び込まれる前からずっとだよ。うん、なんでかな。



「うなされてる相手には、こういうのが一番ですから。
私も小さい時・・・・・・熱を出したりした時には、母さんによくしてもらいました」

「へぇ、そうなんだ。だったら・・・・・・よいしょっと」



私は改めて近くの椅子を出して、ギンガの向かい側に座る。その上でヤスフミの右手を取った。

それだけで私の目には、ヤスフミの苦しそうな表情が和らいだように見えた。



「ホントだ。効果あるね」

「・・・・・・そうですね」










・・・・・・え、火花走ってる? あの、これはいいの。だって・・・・・・負けたくないし。





こういう時に応援しちゃうのも逃げだと思うんだ。だから負けたくないの。うん、勝ちに行くんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私達が電車から降りると、そこは首都の一角。高層ビルが立ち並ぶ中の広場。なんて言うかさ・・・・・・まだ実感無いわ。

過去に来たなんてさ。ぶっちゃけこれは何かのトリックかなにかだと思ってたりする。

まぁその前に目の前の奴よ。緑色で適当に殴ったり蹴ったりして街を破壊している不届き者。





・・・・・・てーかムカつくのよ。アイツらが居なきゃ対処出来ない? ありえないでしょ。

なにより楽しそうなのは・・・・・・アイツがあっさりと鞍替えして無駄に楽しそうなのが非常に腹立つのよ。

ムカつく。ムカつくわ。こっちは距離感合わせてまぁまぁ良い感じかなと思ってたのにさ。





・・・・・・いいでしょっ! 別にさっ!! 理不尽なのは分かってるけど、なんかいらつくのよっ!!










「さぁて・・・・・・行くわよスバルっ!!」

「う、うん。でもティア、やっぱりあの人達に」

いいから行けっ!!

「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」



スバルの突撃に合わせて、私は周囲に弾丸を10数発生成。狙いを定めて、引き金を引く。



「クロスファイア・・・・・・シュウゥゥゥゥゥゥゥゥットッ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



マッハキャリバーで加速しながら接近すると、イマジンが口から炎を吐き出す。

というか、こんな事出来るんだね。私は驚きながらも冷静に対処を開始。

吐き出す炎を僅かに左に動く事で避けるけど、イマジンは頭を動かして炎を薙ぐように吐いて来た。





私は舌打ちしながらもその場で左足を踏ん張って一時停止。

その上で大きくジャンプ。赤い炎は私の居た箇所を通り過ぎて空気を熱した。

イマジンがこちらに向き直ってまた炎なんて吐く前に、私は攻撃。





そのままイマジンの頭頂部目がけて右足で飛び蹴り。










「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





イマジンは咄嗟に私の方に向いて炎を吐こうとするけど、それよりも私の接近の方が早い。

だからその緑色の両腕を動かしてクロスさせて、私の足を受け止めた。

私は力を入れるけど・・・・・・アレ、ビクともしない。私はその腕を蹴り上げて、地面に着地。



着地地点はイマジンの目の前で、すぐにマッハキャリバーで急加速。右拳をそのガードに叩きつけた。

だけどイマジンは足を少し滑らせた程度で耐えて・・・・・・そのまま突撃してくる。

私は慌てて右に身を逸らしてそれを回避。たたらを踏みながらイマジンと距離を取る。



イマジンが私の方に向き直ろうとした時に、上の方からオレンジ色の弾丸が襲ってくる。これはもちろんティアの援護攻撃。

その弾丸がイマジンの身体を叩くけど、軽く背中を曲げた程度でその動きまでは止められない。

改めて私の方に突撃してきて、まず右腕でのフック。私はしゃがんで避けつつ後ろに下がる。



身体を起こすと今度は左、右、左のストレートコンボの三連発。しかも意外と速くて鋭い。

それが終わった直後に右のフック。これは鼻先すれすれで通り過ぎた。

でも問題は次。そんな私のあご先を狙って、踏み込みながらの左でのアッパーが来た。



なので顔を右に動かしてすれすれで回避。耳元で拳が通り過ぎる音が聴こえた。





「捕まえたぜっ!!」



その腕は一瞬で引かれて私の右肩は掴まれる。それから改めて顔面に向かって右拳が鋭く叩き込まれた。



≪Round Shield≫





でも至近距離でベルカ式魔法陣のシールドを発生させて、その拳を防ぐ。というか何コレ。

めちゃくちゃ力強い。もしかしたら戦闘機人と同レベル・・・・・・ううん、それ以上かも。

何にしても掴まれるのはマズいと判断して、シールドが拳を防いでいる間に対処を開始。



まずリボルバーナックルのカートリッジを2発ロードした上で、私の右肩を掴んでいる腕を狙って一撃。





「リボルバー」



打ち上げるように拳を相手の肘に向かって叩きつける。この時僅かに後ろに下がって、相手の腕を伸ばす事も忘れない。

これにより相手の腕は折れて・・・・・・使い物にならなくなるはず。



「キャノンッ!!」



私の思惑通りに拳の衝撃で腕は上へと吹き飛び、その手は私の方から外れた。

でも腕が折れた感触はしない。やっぱりコイツ、硬いよ。いや、そこはいいか。



「・・・・・・痛ぁ」





右肩が軽く痛む方が問題だよ。でも危なかった。もうちょっとで肩砕かれてたかも知れない。

恭文はこんなの相手にしてほぼ一撃で倒したって言うの? さすがにそれは信じられないかも。

顔をしかめている間に、私は次の行動に移る。私は退避せずにそのままイマジンに接近。



なんとか攻撃に耐え切ってくれたシールドを解除すると、力を込め続けていたイマジンの拳が一気に振り抜かれる。

ただ、こちらのタイミングでシールドが壊れたので向こうの体勢は前のめりに崩れて・・・・・・そこを狙う。

身体を左に動かしつつ、またカートリッジを2発ロード。拳に残ってる硬さを思い出しつつ、加速して一気に踏み込む。



そうして相手の右ストレートを避けつつ、身体を伏せながらその腹にまた私の拳を叩き込んだ。





「リボルバァァァァァァァァァァッ!!」



次の瞬間、私の拳は振り抜かれ、拳とイマジンの肉体の間に衝撃が弾ける。



「キャノンッ!!」



衝撃と私の拳に圧されるようにイマジンは吹き飛んで、コンクリの地面を数メートル転がる。

その動きが止まって起き上がろうとしたところに、私は踏み込む。でも、それだけじゃない。



「この・・・・・・あたっ! あたあたあたあた・・・・・・こら、やめろっ!!」





上から降り注ぐようにティアの魔力弾が撃ち込まれて、相手に反撃の隙を与えないようにした。



その弾幕が途切れるのは、私が拳を打ち込む寸前。そこは分かってるから私は全力で突撃。



残り2発のカートリッジを使用して、軽く跳躍しつつイマジンに飛び込む。





「・・・・・・一撃」



左手で魔力スフィアを形成して、それをイマジンに向ける。

今までので生半可な攻撃じゃ倒せないのは分かったから、これで決める。



「必倒っ!!」

「ちょ、スバルっ! アンタこんなとこでそれは」



ティアが驚いてるけど、ティアだって気づいてる。この怪人はナメていい相手じゃないよ。

そのスフィアに向かって私は引いていた右拳を、全力で叩き込む。もう、弾幕は消えていた。



「ディバイン」



でも叩き込もうとした瞬間、膝立ちだったイマジンの姿が消えた。あのね、もうそうとしか言いようがないの。



「わわ・・・・・・・とっと」



その姿が消えて、私は咄嗟に詠唱していた術式をキャンセル。多少ふらつきながらも地面に着地。

しっかり足を踏みしめてそのふらつきを止めてから、私はティアと一緒に周囲を見渡す。でも、その場には誰も居ない。



「・・・・・・マッハキャリバー!!」

≪すみません。目標の位置は私では≫

≪Sir、私も同様です≫

「ちょっとちょっと、マジですか? じゃあつまり私達」

「逃し・・・・・・ちゃったんだね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『確かお前ら『アンタ達はただ電車だけ貸してくれればいいのよっ! あとは私達だけ出来るし止められるっ!!』つってたよなぁ?』



いや、私達っていうか・・・・・・ティアがですね。はい。あとモモタロス、声真似下手ですね。



「あと『これ以上私達に迷惑かけたり邪魔したりしたら・・・・・・本気でぶっ飛ばすからっ!!』とも言ってたよなぁ。
・・・・・・なのになにやってんだよテメェらっ! テメェらの方が俺達の邪魔してんじゃねぇかよっ!! このバカがっ!!』

「「・・・・・・ごめんなさい」」





仕方なくデンライナーに戻ってきて、私は・・・・・・というかティアもさすがに反省。

だってティア、良太郎さん達があのイマジンについてアドバイスしようとしても全部『嘘だッ!!』で済ませてたし。

あ、ちなみにみんなあのイマジンが姿を消したり炎を吐いたりするのは知ってたみたい。



あと舌を伸ばして鞭みたいに攻撃もするらしい。以前に出てきたから分かったとか。



うぅ、もうこれは本当に言い訳が出来ないよ。隊長達にも厳命されてたのになぁ。





「・・・・・・モモタロス」

『おう、なんだ良太郎。てーかお前もなんか言ってやれよ』

「ううん。正直六課のみんなが僕達の事疑うの、しょうがないんじゃないかな」



少し困ったように良太郎さんはそう言った。だから驚いて私達は良太郎さんの方を見た。



「そもそも僕達がちゃんとここに居るって言うのも、信じられない話ではあると思うしさ」

「それは確かになぁ。こっちの奴らからすると、テレビの中のヒーローな俺らが現実に居るっちゅう事やからな」

「普通は信じがたいよね。なにより良太郎や僕達の世界は・・・・・・ほら、平気な顔して宇宙人とか居るから」



・・・・・・え、宇宙人って何かな。私的にはその話は凄い聞きたいんですけど。



「そうでしょ? というか、そこを二人に言うならちゃんとこっちに入ってこようよ。なんでまた外なのかな」

「先輩、そんなにスバルちゃんが怖いわけ? いくらなんでも失礼だよ、それ」

『う、うるせぇっ!!』

「それ以前に桃の字、お前その拡声器、どこから持ってきたんや」



あ、そう言えば説明忘れてた。未だにこの車両の外に居るモモタロスさんは、拡声器でこちらに話しかけてます。

だからね、何気にうるさいの。というか私・・・・・・うぅ、そんなに犬っぽいのかなぁ。



「あ、もしかしてリュウタロス? 前に使ってた事あるし」

「えー、僕じゃないよ? というか、モモタロスの事はどうでもいいじゃん。良太郎、イマジンどうするのかな」

「当然探すよ。大丈夫、この時間に居るのは間違いないんだから。・・・・・・デカ長」

「仕方ありませんね。ただし、時間はかけられませんよ。それとスバルさんにティアナさん」



デカ長さんは車両真ん中の『チャーハン』と書かれた掛け軸の真下にある席に座って、厳しい視線を私達に向けてきた。



「良太郎くんの言う事も分かります。恭文くん達のようにすぐ我々の事を受け入れてくれる人の方が稀有なのも分かります。
そして協力してもらっている身の我々に言う権利が無いのも、よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉくっ!! ・・・・・・分かっています」



あ、えっと・・・・・・何気に怒ってます? うん、そうですよね。怒らない理由ありませんよね、はい。



「ですが、今回のような事は今後絶対に・・・・・・無いようにお願いしますね?」

「「・・・・・・はい。すみませんでした」」



あの、私は大丈夫なの。逃がしちゃった事もあれだし、昨日の事や隊長達の話もあるし。

でもティア・・・・・・悔しそうだなぁ。タンカ切った上でコレだから、余計にって感じかも。



「では・・・・・・ナオミ君」

「はーい♪」



それでナオミさんがどこからともなく大量の服を取り出して、私達の前に持ってくる。



「あの、これ一体」

「スバルちゃんとティアナちゃんの変装用です」

「私とティアのっ!?」

「あの、どういう事ですか。私達管理局員ですし、変装する必要なんて」

「・・・・・・当然でしょう。まさかあなた達、その格好でイマジンを探すつもりですか?
ここは過去で、あなた達はこの時間ではまだ子どもなはずでしょう」



オーナーにそう言われて、私はティアと顔を見合わせて軽く声を漏らした。



「だからコレなんですか? でも私やスバルのサイズとか」

「あ、それは大丈夫ですよ? 色々取り揃えてますし、まずは試着してみましょー」

「・・・・・・あ、これ可愛いかも。ねーティアー、これお揃いで着ようよ?」

「そしてアンタは順応するなっ! ね、もうちょっと疑い持っていかないっ!?
アイツもそうだけどなんでもかんでも鵜呑みにし過ぎっ! 常識大事にしなさいよっ!!」

「嫌だ。だってもう怒られたり逃したりしたくないし。・・・・・・街、壊されてるの見てちょっと考えたんだ」



私はナオミさんが持って来てくれた服を机の上に置いて、広げて・・・・・・それを見ながら少し漏らした。



「私達がここで止められなかった事で、また何か別のものが壊されるかも知れない。
誰か消えちゃうかも知れない。そういうのを止めるのが、私達の仕事のハズだよね?」



それから視線を向けて、戸惑ったような顔のティアを見た。



「だったら私達、もう良太郎さん達の事を疑ったり戸惑ったりしちゃいけないんだよ。
その分だけ、衝突する分だけ別の何かが壊される。私達の仕事を通せなくなる」

「・・・・・・だから受け入れるってわけ? 私達の仕事を通すために」

「そうだよ」





私達は局員で・・・・・・市民の平和と財産を守るのが基本理念になってる。JS事件で色々あったけど、そこは変わらない。

これだってちょっとイレギュラーなだけで、私達のお仕事の一環には充分入ると思うんだ。

それでね、実はちょっと思ったんだ。恭文がこの人達の事受け入れて一番に信じようとしてるの、そういうのもあるのかなって。



経緯や事情はどうあれイマジンが居るのは事実で、私達はそれを止めるために頑張らなくちゃいけない。

なのにゴタゴタと身内の中で争っててもしょうがない。それじゃあ仕事を通す事には絶対にならない。

だから・・・・・・ってさ。まぁその、知り合い以上友達未満な私から見た勝手な印象なんだけど、そう思うの。



その仕事をする相手が誰とかは、基本関係ないんだよ。大事なのはそれでも結果を出すべき。



それで私達局員が出すべき結果は、やっぱりどういう経緯であれ市民の事を守れたという事になるのかな。





「なにより私は、あんなの嫌だ。あんな怪物のせいで・・・・・・何かが壊れたり傷ついたりするのは嫌だ」



直接殴り合ったから分かるの。アレは人なんて簡単に殺せる。アリでも踏み潰すように殺せる。

それでそれを躊躇わない。だって話に聞いた通りなら・・・・・・時間そのものまで壊すんだから。



「だからティア」

「あぁもう、分かったから皆まで言うなっ!!」



ティアはそう声を荒らげてから、私の隣に来て服を選別し始めた。顔は赤くて怒った感じだけど、もう大丈夫みたい。



「全く、これじゃあ私がKYみたいじゃないのよっ! ホントアンタムカつくしっ!!」

「ごめん」

「謝るなっ! このバカっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、私とスバルはあの乗務員のナオミさんが用意してくれた服にチェンジ。





そのまま、もう一度8年前のミッドに繰り出した。で、今回は。










「・・・・・・いや、大漁大漁」

「あの、ウラタロスさん」

「なに?」

「なにじゃないわよ、このバカっ! なんでナンパしまくってるっ!?」





あの青い亀が良太郎さんの身体を借りて、私達について来た。

まぁ私達だけで不覚取ってるしね。ここはしょうがないわ。

でも行く先々でスバルに対してやったのと同じ勢いでナンパしまくってる。



どうやらさっきのアレは完全にコイツの仕業らしい。でも責めないで? 私は詳しく知らなかったの。

それでも後で良太郎さんにはめちゃくちゃ謝るとして・・・・・・どうなってんのよこれっ!!

コイツ仮にもテレビのヒーローよねっ!? 現時点でその片鱗が欠片程度にも見えないんだけどっ!!





「嫌だなぁティアナちゃん、これ・・・・・・僕のいつもの情報収集だよ?」

「でも情報集まってないですよね?」

「大丈夫だよ」



そしてこのアホは疑問の視線をぶつける私達の方を見て、自信満々に言い放った。



「この世界の女の子が大物揃いというのは分かったから。ミッドチルダ・・・・・・うん、いい釣り場だね」

「何の情報集めてんのよ、アンタはっ!?」

「あ、もちろんスバルちゃんとティアナちゃんもね。二人もフェイトさん達に負けないくらいに大物だよ。
いや、この世界に来てよかったなぁー。いっそ永住したいくらいだよ」



絶対やめてっ! いや、結構本気よっ!! アンタと同じ世界に暮らしたくないわっ!!



「でも・・・・・・やっぱ気になるなぁ」

「なにがよ」

「イマジンだよ。ね、良太郎」



苛立ち混じりに相づちを打つと、返ってきたのはさっきとは違う真剣な声だった。



【・・・・・・うん、僕も気になってた。おかしいもの】

「あの、二人ともどういう事ですか?」

「アイツらがわざわざこっちの世界に来る理由があるのかって事」

「私達はよく分からないけど・・・・・・アンタや良太郎さん的には、納得出来ないと」





そう聞くとナンパ亀は頷いた。多分中に居る良太郎さんも同じ感じっぽい。

でもイマジンがこっちの世界に来た理由かぁ。確かに疑問かも。今まで出現もしてないっぽいし。

少し少ない情報を元に色んな可能性を考えてみるけど・・・・・・うーん、やっぱ分かんないや。



アイツがダウンしてなければ、もっと考えられたのかも知れないけど。





「うーん、例えば『地球の方だと電王居るから、こっちで暴れちゃえー!!』・・・・・・とか?」

「あ、なるほど。そうかも知れないね。いや、スバルちゃんは中々冴えてるね」

「いや、あの・・・・・・それほどでも」



確かに今照れてる顔のスバルの言うような理由も考えられるわね。でも、そうなると。



「あらま、ティアナちゃんも気づいた?」



少し驚いたように亀が言って来たので、私も同じように亀の方を見る。



「そう言うって事はアンタもか。・・・・・・意外と頭の回り速いわね」

「当然。僕、先輩と違うし」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『どういう意味だこの野郎っ!!』

「桃の字、お前落ち着かんかいっ!!」

『バカ野朗っ! これが落ち着いていられるかっ!!』

「というかうるさいよー! 僕お耳キンキンするっ!!」

「ホンマやっ! その拡声器はうるさいからやめいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あの、どういう事ですか。というか二人ともどうして通じ合って」

「通じ合ってないから。・・・・・・まぁアレよ。アンタの言う通りだとすると疑問が出てくるの」

「疑問?」

「そうよ。ようするに連中はどうやってこっちの世界の事を知ったのかって事よ」



まずオーナーの話では、今までこっちの世界でイマジンの類が確認された事はマジでないらしい。

私はもちろんアイツでさえ、イマジンが創作の中にしか居ないと思ってたくらいだもの。ここは信じていいはず。



「そうでしょ、亀」

「そうだよ。釣り場を知らなきゃ、そこで釣りなんて出来ないじゃない?
現に僕や先輩達に良太郎はおじいさんから話を聞くまで知らなかった。そうなると・・・・・・って事」

「・・・・・・・・・あっ! そ、そうですよねっ!!
この世界の事を知らなかったら、来る事なんて出来ないっ!!」



ここの辺りは色々考えられる可能性があるわ。例えば良太郎さん達の世界の人がこっちに来た。

で、ソイツにイマジンが取り憑いてて・・・・・・とかさ。でもそれだと、なんで複数存在してるかが説明出来ない。



「一応ね、元々イマジンという種が知っていた・・・・・・・とかも考えたんだよ。
デンライナーだって時間の線路を通じてこっちに来てるわけだしさ。ありえない事じゃない」

「あー、それもあるか。ただ単にアンタ達が知らなかっただけってのも考えられるし。まぁ、なんにしても」

「居るね。この世界の存在をイマジン達に教えて、呼び込んだ奴が」



あくまでも仮説な段階だけど、そう考えると一応の辻褄は合うのよ。数が複数居るのもソイツが呼び込んだせい。

そしてこれが確定だった場合、その容疑者Xを止めない限りこの事件は起こり続ける可能性も。



「・・・・・・あなた達」



後ろから私達を呼び止める声がしたので振り返ると、二人の局員が居た。ただあの・・・・・・凄まじく驚いてしまった。



「ちょっと聞きたいんだけど、この近くで怪物を見たって言う情報があるの」



まずそう言ってきたのは、紫の二つ分けのロングヘアーの女性。やばい、すごく見覚えがある。



「かあ・・・・・・さん?」

「・・・・・・え?」





スバルがそう呟きながら見たのは、もう一人の局員。

薄めの青の髪をポニーテールにしている、年の頃なら20代後半の女性。

・・・・・・ヤバいヤバいヤバいっ! 確か8年前なら・・・・・・そうよっ!!



そうよ、なんでここに来るまで気付かなかったのよ私はっ! 8年前でこの日付なら・・・・・・!!





「えっと・・・・・・クイントちゃん、君の子どもいつからこんな大きくなった?」

「そんなわけないでしょ? うちの娘達はまだまだチビッ子よ」










スバルのお母さん・・・・・・生きてるじゃないのよ。うん、そうなの。





今私達の目の前に、驚いた顔のスバルの目の前に居るのは・・・・・・スバルのお母さんなの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”良太郎。今、スバルちゃんなんて言った?”

”あの、『母さん』って”



うん、そうだよね。僕にもそう聴こえた。というか、これ・・・・・・ヤバい感じだよ?

スバルちゃんが今にも抱きつきそうな勢いで震えてるもの。あの、これ何かあったのかな。



”ウラタロス”

”了解。んじゃ、ティアナちゃんの器量に期待かな”



まずはさりげなく間合いを計って・・・・・・よし。



「あの・・・・・・私、スバ」

「いや、すみません。いきなりでびっくりしたでしょう?」



ポニーテールの女性に踏み込もうとしたスバルちゃんを、制するように前に出る。



「彼女、大のお母さんっ子で・・・・・・ちょうどホームシックにかかってたんです」

「そうなんですか?」

「そうなんですよ。ほら、都会ってどこかそういうものを引き寄せる・・・・・・魔力みたいなものがあるじゃないですか」



うん、多分ね。僕にはよく分かんないけど。



「この子も、危うくその犠牲になりかけたんです。それで実はあなたと彼女のお母さん、大変似ているんですよ」



うん、多分ね。僕はまだスバルちゃんのご両親に挨拶させてもらった事はないけど。



「それはもう、生き写しと言わんばかりに」

「あぁ、それで」

「『お母さん』と。なるほどねぇ。寂しかったんだ」



僕がそこまで言うと、二人とも一応は納得してくれたらしい。

制服姿の二人の顔から、どこか怪しむような表情が消えた。・・・・・・ふう、これで一安心かな?



「というか、君?」

「はい?」



僕にちょっと嗜めるな顔で声をかけてきたのは、紫のロングヘアーが美しい女性。



「何かじゃないっ! 男の子なら、もうちょっとしっかりしなさいよっ!!
それならそれでちゃんとフォローしてあげなくちゃ、可哀想でしょっ!?」



・・・・・・僕が女の子の扱い方を教わるなんて・・・・・・屈辱だよ。

でもここはよしとする。スバルちゃんは、ティアナちゃんが押さえてくれてるしね。



「本当にすみません。おっしゃる通りです」

「・・・・・・メガーヌ、そこはいいから。あの、それで」

「怪物・・・・・・ですか? いえ、見覚えがないですね。
怪物どころか女神と言ってもいい素敵な女性二人なら今、僕の目の前に居ますけど」

「あら、お上手ですね。でも私は夫が居ますから」



あ、この人はかわし方を心得てるな。隙がないよ。



「・・・・・・シングルマザーだけどいい? あ、私は大丈夫よ。年下って嫌いじゃないし」



こっちはのってきたしっ! というかこの人、ニッコリ笑顔で何を言い出すのっ!? 仕事中ですよねっ!!

・・・・・・むむ、本当はもっと楽しみたいけど、ここまでにしておくか。



「いや、さすがに彼女達を放り出すわけには行きませんし」

「そうね。うん、男は初志貫徹が大事よ? 私の元旦那なんて」

「メガーヌ、その話はやめて。アンタの話は生々しいから」



うん、僕もそう感じるよ。というか、この人の心を釣り上げるってどんな人だろ。



「とにかくなにか目撃したら、近くの局員か警らの詰所に」

「えぇ、必ず伝えますよ」

「よろしくお願いします。・・・・・・あなたも、またね」

「あの、その・・・・・・はい」



ポニーテールの女性はスバルちゃんに優しく声をかけてから、相方の女性とどこかへと歩いていった。

さて、これからどうしようか。このまま釣りを続けたいけど、大しけな雲行きなんだよねぇ。



「ティア・・・・・・!!」

「気持ちは分かるけど、落ち着きなさい。8年後から来ましたなんて言ってどうするのよ」



うん、具体的にはスバルちゃんがね。



「どうする? 良太郎」

【デンライナーに戻ろうか。まずはスバルちゃんを落ち着かせないと】

「・・・・・・そうだね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はい、どうぞ。ナオミ特製のコーヒーでーす」

「ありがとう、ございます」



僕達はスバルちゃんを引っ張る形でデンライナーになんとか戻ってきた。

でもスバルちゃん・・・・・・沈んでる。まずは話を聞かなきゃ・・・・・・だよね。



「スバルちゃん、ティアナちゃん。まずあの人達は・・・・・・二人の知り合い?」

「・・・・・・私とギン姉のお母さんです」



じゃあさっきのは聞き間違いじゃなかったんだ。そうするとあのポニーテールの人かな?

スバルちゃんもそうだけど、ギンガちゃんの方にも印象が似てたとこあるし。



「なるほどね。じゃあ、あの妙にノリのいい女性は? 彼女とも顔見知りと見たけど」

「スバルのお母さん・・・・・・クイントさんの同僚で友達の、メガーヌ・アルピーノさんよ。
ついでにヒロリスさんとも友達。それでさ、メガーヌさんは健在だけどクイントさんは」

「・・・・・・ティアナちゃん、もしかして」

「えぇ、亡くなってるんです。ちょうど今来てる時間の・・・・・・ホント二〜三日後に」



・・・・・・そっか、だからなんだね。もう亡くなっている人だからあんなに・・・・・・恋しそうな目で見てたんだ。

きっと今だってそうだよ。ナオミさんから出されたコーヒーの中を見ながら、その中にあの人の事を描いてる。



「・・・・・・あの」

「ダメです」



スバルちゃんの言いかけた言葉を一蹴したのは、デカ長だった。

まさか言いかけの段階で止められるとは思って居なかったのか、スバルちゃんの表情が硬くなる。



「まだ、なにも言ってません」

「言わなくても分かりますよ。あなたは、これからその事故で亡くなるお母さんを助けたい。違いますか?」

「・・・・・そうです」



スバルちゃんはデカ長の目を見ながら、言い切った。

うん、そうだよね。僕もそうくると思った。でも・・・・・・なんだよ。



「あなたの気持ちは察するに余りあります。私達に言う権利はないでしょう。
ですが今ここでお母さんを助ける事は、間違いです」

「どうしてですかっ!?」

「今が・・・・・・壊れるからですよ」

「オーナー、あの・・・・・・どうしても無理ですか?」



その、ここでスバルちゃんをフルボッコなのは避けたくてついそう聞いてしまった。うぅ、視線が厳しい。



「良太郎くん」

「はい」

「デカ長です」

「え? ・・・・・・あ、はい。デカ長」

「よろしい。まぁ・・・・・・しょうがありませんね」



デカ長はため息を吐いて、スバルちゃんの方に視線を向けた。

スバルちゃんはやっぱり・・・・・・デカ長を真剣な目で見てた。




「スバルさん、お母さんが亡くなった状況を教えてもらえますか? 聞くだけは聞きましょう」

「え、あの・・・・・・・デカ長。それって」

「その上でなぜダメなのかを説明します。このまま何か起こっても困りますし。
ただ、あなたには私の言う事に納得していただくしか選択が無いわけですが」



スバルちゃんはまた視線をコーヒーに落として・・・・・・それでも頷いた。



「分かり、ました。でもあの、イマジンは」

「もちろんそちら優先です。そこはモモタロス君が察知してくれるでしょうし、それまでですね」

「・・・・・・はい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



結局お話は・・・・・・まぁその、一応は納得してくれた感じなんだ。

でもスバルちゃん、そのままデンライナーを飛び出した。

今は停車してる状態だから、電車の外に出て砂の上に座って考え込んでる。





でも、どうしよう。昨日会ったばかりの僕がアレコレ言うのも、きっと違うし・・・・・・でもなぁ。










「でもスバルちゃん、ちょっとかわいそうだよね。お母さんの事大好きっぽかったし」

「そやなぁ。しかもあないなきな臭い事件のせいで突然やったら・・・・・・ショックやろうしなぁ」

「というか、それはギンガさんに関してもだよね。
お父さんも居るから、もしかしたら家族のため・・・・・・とか考えたかも」





結論から言うと、この時間のクイントさんへの干渉はNGになった。

もうね、その影響がとんでもなく大きいんだ。僕も話を聞いててビックリしたくらい。

スバルちゃんのお母さん、管理局の悪い人達に部隊の仲間の人達ごと謀殺されたんだって。



でも・・・・・・そうなると分かっていても僕達はあの人を助けたりは出来ない。

当然だけど変わった歴史に基づいてみんなの記憶も書き変わるし、今も変わる。

それに変わった事で、今のスバルちゃんの大事なものが無くなる可能性だってある。



だけどそれは同時にスバルちゃんに今目の前に居るお母さんを、見殺しにしろと言ってるのと同じ。

正直ね、今の記憶が無くなる事とかも踏まえた上で変えちゃっていいんじゃないかってちょっと思ったりしたんだ。

だって事情が事情過ぎて、僕達には間違いなく止める権利なんてなくて・・・・・・だけど、だめなんだ。





『おい、良太郎。こっちこい』



モモタロス? もう、こんな時まで拡声器使って・・・・・・しょうがないなぁ。

とにかく僕はモモタロスに呼ばれるまま、部屋を出て乗り入れ口に行ってしゃがみ込む。



「どうしたの? というか、お願いだからこの状況で拡声器は」

「なぁ、お前・・・・・・つうかねーちゃんだな。
やっぱ父ちゃんと母ちゃんが・・・・・・その、死んだ時辛かったんだよな?」

「え? なに、いきなりどうしたの」

「いいから答えろ」



いきなりこんな話になるのが、訳が分からないけど・・・・・・でも、僕は頷いた。



「・・・・・・うん。辛かったし寂しかったって言ってた。お婆ちゃんは居たけど、それでもね。
もう会えないってさ、本当に・・・・・・本当にとても悲しい事だから」

「・・・・・・だよな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・あなたがここで過去の人達を選び、守る事は尊いかも知れません。
ですがその結果、今あなたの周りに居る人達が傷つきます。大事な今を失うかも知れません』




砂浜の上に膝を抱えながら座りながら・・・・・・頭の中にリフレインするのはデカ長の言葉。



『あなたが変えようとしている事はそれほどに大きく、根が深い。
まぁ・・・・・・あなたがそれでもいいと言うのであれば、止めませんが』






それを思い出して膝を抱きしめる力を強める。やっぱり私、バカみたい。

あ、この砂・・・・・・さっきミッドに出る前にナオミさんに聞いたら、一粒一粒が時間らしいの。

なんだろ。砂時計を考えた人もデンライナー乗った事があるのかな?



これからは砂時計見るとちょっと深く考えて・・・・・・なに言ってんだろ、私。

頭では納得はした。うん、納得は・・・・・・してる。というかね、分かってたよ?

何かの映画みたいに全部矛盾なくハッピーエンドでなんて思わなかった。



というか気づいた。もし私が介入してあの場でスカリエッティが捕まったりしたらどうなる?

もしかしたらノーヴェやウェンディ達も消えるかも知れない。私自身も、ティアも、みんな変わっちゃうかも知れない。

それを覚えておく事は私には無理かも知れなくて、消えちゃう今を悔いる事も出来無くて。



それで私、その時間の中で嫌な事があったら『こんなはずじゃなかった』って後悔するのかな? ・・・・・・最低だ。





「・・・・・・スバルちゃん」



後ろから声がかかったのでそちらの方を向くと、良太郎さんが居た。

良太郎さんはゆっくりと私の方に近づいてきてた。



「隣、いい?」

「・・・・・・はい」

「ありがと」



そう言って良太郎さんは私の隣に座る。座ってなにも言わずに、オーロラが常時発生し続けている空を見上げる。・・・・・・うん、そうだよね。



「あのね、スバルちゃん」

「分かってます」



良太郎さんきっと私を驚いたような顔で見てる。視線を向けてない分かる。

だから私はオーロラの空を見ながら、少し強がっちゃう。



「分かってます。というか、最初から分かってました。コレは無理だなーって。
でも、心が納得してくれないんです。私がさっき言った仕事を放棄する事になるのに」



うん、そうだよ。私はここに・・・・・・守るために来てるんだ。そのために戦おうってティアに言った。

でも母さんの事を見た時、それが全部吹き飛んじゃったの。もうね、派手にボーン・・・・・・だよ。



「そんなの、イマジンと同じだって分かってるのに・・・・・・納得、してくれない」

「・・・・・・そっか。うん、そうだよね。だって、お母さんなんだから」



私は少し驚きながら、良太郎さんの方を見る。良太郎さんは私に申し訳なさそうなかおを向けてくれていた。

本当に申し訳なさそうで・・・・・・見てる私の方が謝りたくなるくらいの顔だった。



「だって自分のお母さんが・・・・・・大事な家族がもうすぐ居なくなるのが分かってるのに。
しかも凄く苦しい思いをするのが分かってるのに助けちゃダメなんて言われて、納得出来るわけないよ」

「ホントに、そう思いますか?」

「うん」

「ありがとう、ございます。でも・・・・・・でもそれで、ワケ分かんないのは」



あれ、私どうしてちょっと涙声なんだろ。おかしいな、もうちょっとしっかりしていかなきゃだめだって。



「母さんを助けて・・・・・・みんなとの思い出、今私が知っているみんなが」



それだけじゃなくて涙まで出てくる。それでボヤけた視界の中にみんなの顔が映る。



「消えちゃうのは、嫌だなって思ってるんです。だったら、このまま・・・・・・って、考えるんです。
というか、今だって充分楽しいですし。こんなはずじゃなくても、今は一生懸命生きられるし」



デカ長の話を聞いてからずっと考えてる。そう考えて、思いとどまろうとしている。

私は今に不満が・・・・・・その、ないわけじゃない。でも嫌いでもないから。



「でも母さんを助けたくて・・・・・・・・・だけど助けたら、みんなとの大事な思い出も」



泣きたくないのに涙が零れる。零れて私、きっとグシャグシャな顔を良太郎さんに見せてる。

なんかダメだな。いや、ここはホントに・・・・・・ダメだと思う。



「今も、消えちゃって・・・・・・それは嫌で・・・・・・! でもでも、それでも納得出来ないんです・・・・・・!!」





悔しい。手を伸ばせない事が悔しい。それで怖い。私の知っているみんなが居なくなるのが怖い。

そして腹立たしい。分かってるのに、それでもみんなの今と母さんを天秤にかけている自分が腹立たしい。

決める事も出来ない。捨てる事も出来ない。二つの間で中途半端に迷ってしまう自分が腹立たしい。



そんな風に色んなものが混じって私の心を染め上げていく。もう・・・・・・もうね。私、バカだよ。





「もう、おかしいでしょ? 本当にワケ分かんないでしょ?」

「・・・・・・スバルちゃん」

「はい」

「おかしくないよ。それに、ワケ分かんなくもない」



その言語は今までよりずっと強い言語で・・・・・・だけど責めてるわけでもない。

ワケ分かんない私を責めてるわけでもない、強い・・・・・・ううん、違う。



「スバルちゃんはお母さんとの過去の記憶もみんなとの現在いまの時間も、両方とも本当に大事にしてるだけだよ」



これは優しい言葉だ。今の言葉もさっきの言葉も、それから続く言葉も・・・・・・信じられないくらいに優しいだけだ。




「だけど両方とも守れないから。両方とも同じくらい大事に出来ないから。それで今、凄く苦しい。
だからスバルちゃんの今の気持ちは、ちっともおかしくなんてない・・・・・・と思うよ?」



優しさが続いて、煮詰まって硬く閉ざされそうになった心が・・・・・・柔らかくなってるのを感じる。

なんでだろ。なんでこんなに優しいんだろ。ホントに、ズルしてるんじゃないかって言うくらいに優しい。



「うん、少なくとも僕はおかしいなんて思わない。絶対に」

「良太郎・・・・・・さん」

「というか・・・・・・おかしいのは僕達だよ。ごめん」



いきなり今までの弱気な声に戻った・・・・・・というか、なんで謝るんだろ。



「どうして、謝るんですか?」

「だって僕達が来たせいでスバルちゃんの事、思いっきり戸惑わせたから」

「だから・・・・・・ワケ分かんないですよ。それこそワケ分かんないです」





良太郎さん達は、イマジンからミッドを守るために・・・・・・それなのに。

それなのに、なんでこんなに優しくしてくれるの? おかしいよ、私の言う事なんて一蹴すればいいのに。

そんなのだめな事なんだから、絶対やるなって言って・・・・・・命令したっていいくらいなのに。



なのにどうして謝るのかな。私余計に・・・・・・なんかもう、恥ずかしいよ。





「うん、本当に僕達、ワケ分かんないよね。いきなり時の電車とか運行のルールとか言ってきて・・・・・・あの、スバルちゃん」

「は・・・・・・い」

「これ、良かったら使って?」



良太郎さんはそう言いながらハンカチを差し出して来た。青いチェックのハンカチを・・・・・・私はそっと受け取る。


「ありがとう・・・・・・ございます」

「ううん」

『・・・・・・おい、良太郎っ! 犬っ子っ!!』



私がハンカチで涙を拭いてると、電車の方から・・・・・・というか拡声器だね。

視線を向けるとモモタロスさんが慌てたようにこちらに来た。だけど私の方を見て軽く後ずさりした。



「モモタロス、イマジン?」

「あぁっ! 出てきやがったぜっ!!」

「分かった。えっと・・・・・・スバルちゃん」

「私も行きます。行かせて、ください」

「・・・・・・分かった。それじゃあ行こう?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうしてもう一度8年前のミッドへ来た。時刻はもう夕方。場所は市街地の公園。





僕とバリアジャケット姿なスバルちゃんとティアナちゃんの二人と一緒にそこに降りる。





目の前に居るのは・・・・・・うん、間違いない。あのイマジンだ。今度こそ止めないと。










「スバルちゃん」

「大丈夫です。うん、大丈夫」



ゴメン、全然大丈夫に見えない。やっぱり、僕達がその分頑張らないと。

・・・・・・戸惑わせたお詫びにもならないだろうけど、それくらいはね。



「ウラタロス、いくよ」



ベルトを右手に持ってから、それを腰に巻きつける。



”待ってました。それじゃあ”

”待て、亀公。・・・・・・俺が行く”



頭の中に聴こえてきたのは、ウラタロスを止めた声。というか・・・・・・え、ちょっと待ってっ!!



”良太郎、悪いがちっとばかし勝手させてもらうぜ”











次の瞬間、僕の中にはモモタロスが入ってきた。





スバルちゃんに近づけないはずのモモタロスが・・・・・・なんでっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おい、犬っ子」

「あの、モモタロスさんですよねっ! どうしてっ!?」



・・・・・・俺、我慢だ。大丈夫、これは犬じゃねぇ。ただの・・・・・・『犬っ子』だっ!!



「いいか、一度しか言わねぇ。だから、耳かっぽじってよく聞きやがれ」



言いながら俺はパスを右手に持って、左手でバックルの赤いスイッチを押す。



「時間の中ってやつは、案外めんどくさくてな。全部は守れねぇし、守っちゃいけねぇ。
テメェで何守りたいかちゃんと考えてないと、簡単に迷って迷子になっちまう。今のお前みたいにな」

「・・・・・・はい」

「でもな、それでも守れんだよ。それでも守りたいって思ってるもんは守れんだ」



犬っ子が俺を見てる感じがするが、気のせいだ。

俺、平常心だ。これはただの犬っ子ただの犬っ子・・・・・・!!



「だからせめて、今お前の母ちゃん達が笑ってるこの時間だけはお前が守れ」



・・・・・・アイツがここに居ると、母ちゃん達はおちおち飯も食えねぇし、寝てもいられないだろうしよ。



「どんなにめんどくさくても、それくらいは許されるだろうよっ!!」



だからとっとあのバカ倒すために、俺はそのままパスをセタッチ。



「・・・・・・変身っ!!」

≪Sword Form≫



俺・・・・・・っつーか良太郎の身体にスーツが纏われて、その周囲にお馴染みなアーマーが出てくる。

それを次々と装着して、最後に仮面を装着して・・・・・・変身完了だ。



「・・・・・・俺」



右の親指で自分を指差し、一気に腕を広げる。そうしたらあっという間に俺の時間の始まりだ。



「参上っ!!」

「モモタロスさん」

「なんだ」



それから腰のパーツを取って、どんどん組み立てて剣にした上で俺は肩から担ぐ。



「許され・・・・・・ますか? あの、私電王でもなんでもないし。時の運行とか実はまだサッパリだし」

「はぁ? バカかお前。お前の大事な母ちゃんなのに、お前がやんねぇでどうすんだ」

「・・・・・・・・・・はい」



俺の返事に満足したのか、犬っ子がイマジンを見据えて右の拳を顔の真横まで持っていく。



「いくよ、マッハキャリバー!!」

≪はい、相棒≫

「・・・・・・ギアッ! エクセリオンッ!!」



犬っ子がそう叫んだ瞬間、犬っ子のローラーブーツから・・・・・・えぇっ!!



「なんか生えたっ!?」

【あの、コレ何かなっ! いや、魔法なのは分かるけどっ!!】



いや、待て待てっ! なんでお前、俺より目立ってんだよっ!!

あー、羽根がたくさん・・・・・・って、お前もしかして、あの鳥野郎の親戚か何かかっ!?



行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!



俺が呆けている間に、犬っ子がダッシュしやがった。そして一瞬でカメレオン野郎を殴り飛ばした。

つか速ぇぞおいっ! なんだありゃっ!? くそ、俺も追いかけて。



「ちょっとアンタ、待ちなさい」

「かーもうっ! なんだハナクソ女2号がっ!! 俺にも暴れさせろよっ! てーかまた邪魔する気かよっ!!」

「悪いけど協力して」

「・・・・・・え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まずは顔面に一撃。ギアエクセリオンの加速力なら、100メートル程度の距離は無いに等しい。





そのまま吹き飛ばされたイマジンの後ろに急加速で回り込んで、左足で後ろ回し蹴り。











「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



それで背中を蹴り飛ばして、近くのジャングルジムにイマジンは叩きつけられた。

そこからまた駈け出すと、イマジンは口から炎・・・・・・ううん、火の玉を吐き出した。



「く・・・・・・!!」





何発もの火の玉を加速しつつも右から回り込むように回避して、一気に相手の左脇に接近。

相手が反応する前に左腕ごと殴り飛ばして、また吹き飛ばす。

でも、吹き飛ばされながらイマジンの口から赤い舌・・・・・・あ、これは聞いていた攻撃だ。



私は身を伏せてまず舌での刺突を回避。それから両手で舌を掴んで・・・・・・こうする。





「ちょうちょ結びに固結びー♪ 楽しく楽しく登山用のむすびーっと♪」



その結果、ジャングルジムに見事に舌は結びつけられてイマジンは動けなくなりました。

私は身体を前に伏せて、マッハキャリバーを走らせてまた加速。



「ちょ、なんじゃコレっ! もう全然外れないんですけどっ!! お前なにしてくれてんだっ!!」

「あ、それは」



加速して一気にイマジンに肉薄。懐に入り込んだ上で・・・・・・まず右拳で一撃。



「ごめんねっ!!」



腹を突き破る勢いで拳を叩きつけたら、今度は左拳。そこから左右を乱打。

もちろん全力全開で・・・・・・ただひたすらに私は両の拳をイマジンに叩きつけていく。



オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァァァァァァッ!!

「ガガガガガガガ・・・・・・舌ー! 舌がちぎれるー!!」



あ、よく考えたら舌が伸びてるのに喋ってる。また器用だなぁ。



”スバル、その調子で追い込んでてっ! で、加減しないで一撃で仕留めてっ!!”

”了解っ!!”





数十発目で、相手の右腕が動いて私の横っ面を叩くように拳が振るわれる。

私は咄嗟に後ろに下がるけど、続けて追い回すようにイマジンは拳を打ち込み続けていく。

掴まれるのが危険なのはさっき分かったから、冷静に下がりつつも拳を身を捻って回避。



数発目の右拳でのストレートを、左に身を捻って避けて・・・・・・その腕を取る。取って全力で一本背負い。

イマジンの身体はあっという間に宙に浮かんだ。私はその腕を離して一気に右手を引く。

そして頭から落下しようとしたイマジンの腹に向かって、拳を叩き込み・・・・・・そのま全力全開で加速。





「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



拳と突撃の勢いのみで空中のイマジンの身体を押し込んで、目指すは近くの木。



「あがががががががががが・・・・・・・し、舌が・・・・・・・舌がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「うぉりゃっ!!」





その巨木目がけてイマジンの身体を叩きつけると、轟音と衝撃が迸り辺りの木々から緑入りの葉が舞い散る。

イマジンが頭から地面に落ちるのを見ながら一気に下がって、カートリッジを3発ロード。

イマジンは立ち上がりながら足元から姿を消そうとして・・・・・・また逃げるつもりなんだ。でも無駄だよ。



だってそれを見てイマジンの右横から、赤い剣の切っ先が突き出されてきてるんだから。





「だからバレバレなんだよっ!!」

「ガァっ!!」



イマジンはその刺突を受けて、近くの別の木に叩きつけられて崩れ落ちる。なお、舌はやっぱり健在。

どこまで伸びるのかは気になるけど、でもその前に終わっちゃうから・・・・・・そこはちょっと残念?



「お前、バカだろ。こんな状態で逃げられるわけがないだろうが」

「そうよそうよ。てゆうか、私達が待機した意味ないし」



・・・・・・なんか今ちょっと突き刺さってけど、気のせいにしておく。私は一気にイマジンに向かって踏み込む。



「ま、待てっ! いくらなんでもこれは汚いだろっ!! もうちょっとフェアに」

「待たないっ!!」





・・・・・・もしかしたら本当にあとちょっとで母さんは死んじゃうかも知れない。

それをしょうがないなんて割り切る事は、やっぱり私には出来ない。そんなの無理に決まってる。

でも、だから・・・・・・だからこそこの時間は守りたい。今この瞬間だけでも守りたい。



同じだけ大事にする事が許されないなら、せめて母さんが今日帰って私やギン姉と父さんと笑って過ごせる時間を・・・・・・守るんだっ!!





「・・・・・・振動」



青い羽を撒き散らし、地面に加速の線を刻みながら私は再びイマジンに肉薄。

手首のタービンが激しく回る母さんから受け継いだこの拳を、私はど真ん中ストレートに叩きつけた。



「けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」



私の拳は的確にイマジンの胴を捕らえた。その衝撃で空気が震える。

震えて、イマジンの身体を粉砕しその背後にある巨木すらも打ち砕く。



「ぎ・・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





次の瞬間緑色の身体が爆発し、巨木も折れた先から倒れていく。

だけどその爆発はすぐに収まって・・・・・・私もなんとか無事。

私は荒く息を吐きながらこちらに近づいてきた二人を見ると、二人は私を見て笑ってた。



モモタロスさんは変身してるけど、声出してるから分かる。



だから私は少し下がってから、軽く右手でサムズアップ。





「そういや・・・・・・アンタ、スバルの近くで平気なの?」

「・・・・・・へ?」

「あ、そう言えば。だって私、今近いですよ?」



うん、半径1メートル以内だし。さっきまでは十メートル以上離れようとしてて・・・・・・ちょっと悲しかったなぁ。

でもモモタロスさんは平然としてて、私とティアの顔を見比べて・・・・・・驚いたように拍手を打った。



「あ、平気だ。てか、治ってるっ?」

「「えぇっ!?」」



驚きながら私は、試しに変身したままのモモタロスさんの手を取る。

でも、見事に無反応。さっきみたいに逃げてる感じはしない。



「あ、全然怖くねえっ! というか、普通だっ!!」

「ホントですかっ!? ・・・・・・良かったー!!」



どうしよう。なんか嬉しいっ! ずっとあのままなんて生理的に嫌だったもんっ!!



「あー、これで拡声器に頼らなくて済むな。・・・・・・でもよ、なんつうか」

「はい?」

「お前『振動拳』はねぇだろ『振動拳』は。もっとこう・・・・・・バシッとしたネーミングをよ」

「えー、そんな事ないですよ。カッコいいじゃないですか」

「・・・・・・ゴメン、私もちょっとそれ思ってた。うん、ダサいし安直だなって」



ティアがいきなり本音晒し出したっ!? ねぇ、ちょっとそれ酷くないかなっ! 一生懸命考えたのにっ!!



「じゃあ、どういうのならいいのっ!?」

「まぁ、アレだ。俺みたいに」

「『俺の必殺技・パートなんちゃら』以外ならいいんじゃないの?」

「え、それもダメなのっ!?」

「そんなのダメに決まっ・・・・・・ちょっと待ちなさいっ! アンタ、それどっから発想したっ!? ありえないしっ!!」



え、これもだめなのっ!? じゃあ技名ってどうすればいいのかなー! 私分からないよー!!



「つーか待て待てハナクソ女2号っ! どういう意味だそりゃっ!?
俺の必殺技は最高にカッコいいじゃねぇかっ! 俺が使ってるくらいなんだしよっ!!」

「誰がハナクソよっ! つーか2号ってなにっ!? それ以前に・・・・・・あぁそうよねっ! アンタやってたわよねっ!!
でも誰がなんと言おうとアレは絶対にかっこよくないからっ! つーか、ダサダサよっ!!」

【・・・・・・ねぇ、それなら電車突きとかはどうかな? エクセリオンナックルとか、マッハ】

「「「ごめん、それらだけは絶対に却下で」」」

【どうしてー!?】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・お待たせー!!」

「恭文さんとリインにナオミさん特製の、至高のアイスですよー♪」

「名付けて『量はともかく心はてんこ盛りアイス』でーす」

『おぉー!!』



そして一日は終わり、スバル達は無事に戻ってきた。それで当然食堂で大騒ぎですよ。

今回はリクエストを受けたので、あのアイスを頑張って作りました。



「こ、これが噂に聞くギン姉を色んな意味で骨抜きにしたという至高の・・・・・・!!」



待て待て、誰から・・・・・・やっぱギンガさんバラしたんかいっ!!



「スバル、その言い方は止めなさい。というか、どこで覚えたのそんな言葉」

「あぁ、見た目どころかオーラまで違うよー!!」



ギンガさんの話を全く聞いてないし。つか、アイスのオーラが見えるのかおのれは。



「スバル、お前分かるのか? なら、お前も立派なアイス好きだ。これからも精進しろよ」

「はいっ! ヴィータ副隊長っ!!」



いや、師匠。それもおかしいでしょ。つーか、アイスのオーラが分かんなきゃ立派なアイス好きじゃないってどんだけですか。



「ま、とにかく・・・・・・恭文やナオミに嬢ちゃん達が一生懸命作ってくれたんや。感謝して食わんとな」

「つかよ、早く食おうぜっ!? 俺はもう我慢が出来ねぇー!!」

「私もですー! 早く早くー!!」



・・・・・・でも不思議だなぁ。モモタロスさんとスバルの距離がかなり縮んだんですけど。

具体的にはメートル単位で。ねぇ、これはどうしてこうなったの? 誰か教えてよ。



”・・・・・・ヤスフミ”

”うん?”

”なんだか少しまとまってきてるね。今日の事スバル達に任せたの、正解だったかも”

”そうだね。全く、今更だっつーの”



最初からクライマックスじゃなきゃアレだっつーのに・・・・・・まぁいいか。

美味しいアイスとこの空気の前で、こんな考えは野暮もいいとこ。ここは空気読まないと。



「ほいじゃあ、溶けないうちに美味しく食べちゃいましょ。それではみなさんご一緒に」

『いただきまーすっ!!』



というわけで、空気を読んだ上でアイスをみんなと一緒に一口。・・・・・・・・・・・・うん。



『美味いっ!!』




















(第4話へ続く)





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