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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第68話 『Start preparing for battle/とある魔導師とガーディアンのこんな会議の様子・パートU』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「ドキッとスタートドキたまタイムー♪ さぁ、事件も解決して日常編に戻るよー」

ミキ「ちょっとだけ寂しいお別れを乗り越えた恭文とあむちゃん達、なんかすっごく嬉しいことがあったみたい」

スゥ「というかというか、普通にお祝いですねぇ。スゥがこれからご馳走を沢山作るですよぉ」





(立ち上がる画面に映るのは、両手を上げて大喜びする現・魔法少女)





ラン「というわけで、今日も張り切っていってみよー! せーのっ!!」





(そしてあのポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



やっぱり、宿題は大変だ。というか、宿題が終わらないと中々気楽には出かけられない。

でも、そんなとはもうおさらば。現在、イクスが眠りについてから二日経過。何気に夏休みも折り返し地点を超えそう。

みんなはいつもの調子をちょっとずつ取り戻しつつ、やっぱり宿題を頑張った。これが僕達の夏休みの日常。





でも、そんな日常におさらばする時が来た。そう、ついに・・・・・・ついにだ。










『宿題、全部終わったー!!』



現在午前10時。そんな中途半端な時間に、僕達ガーディアンとヴィヴィオの宿題が無事に終わりを告げた。

あとは自由研究が残ってるけど、こっちはちょこちょこやってもう出来上がってるので僕は問題無し。みんなも同じく。



「みんな、お疲れ様。というかヤスフミおめでと」

「うんうん、ありがとー。・・・・・・え、なんで僕だけ『おめでと』?」



白いエプロン姿のフェイトが、嬉しそうにそんな事を言うので僕は首を傾げる。



「だってほら。初めての夏休みの宿題、ちゃんと終わらせたもの」

「・・・・・・あ」



あー、確かにそうだ。僕、学校通ってなかったしね。で、そんな事を言いながらも僕の頭をフェイトが撫でる。

伸ばした左手の薬指には鈍く輝く銀色の指輪。・・・・・・えへへ、なんか嬉しいなぁ。



「おめでと、ヤスフミ」

「あの、ありがと。その・・・・・・フェイト」



フェイトが嬉しそうなのはいい。でも、あむ達までニコニコしてるのが非常に居心地が悪い。

だから僕はちょっと意地悪をして、フェイトをいじめたりしちゃうのだ。



「良かったよ。フェイトやそこの魔王みたいに宿題を忘れたりとかしなくて」

「うん、そうだね。私やなのはみたいに・・・・・・ちょっと待ってっ!? お願いだからそこは言わないでー!!」

「・・・・・・えー、フェイトさん宿題忘れた事あるんですかっ!? やや意外ー!!」

「それがあるのよ。局の仕事や先日会ったエリオの世話にかまける余りにあっさりと」

「だからやめてっ!?」



あむ達も『へぇ、フェイトさんが・・・・・・へぇ』という顔で見ている。なので、もうちょっと説明を続けよう。



「はやてとかはちゃんとしてたのに、二人はよっぽどお仕事が楽しいらしくてねぇ。
夏休みも末になると、普通に僕にまで『手伝ってー』って泣きついてきたものですよ」

≪それで手伝うんですよね。でも何の対価も無くて割りに合わないから見捨てようとすると、更に泣かれるわけですよ≫

『・・・・・・なるほど。いや、それはそれは』

「みんなそんな鬼の首を取ったような顔をしないでっ!? そんな目で私を見ないでっ!!
うぅ、ヤスフミのバカっ! あの時の事は色々反省してるのにっ!!」



頬を膨らませてるフェイトを、右手を伸ばしてそっと撫でてあげる。でも、フェイトは恨めしそうに僕を見るだけ。

いやぁ、フェイトをいじめるのは楽しいなぁ。フェイト、すっごく可愛いんだもの。



「・・・・・・ちょっと待ってっ!?」

「なのは、どうしたのかな」



お昼を作っていたなのはが、キッチンから不満そうに出てきた。なお、白のエプロン姿。



「なのは、どうしたのかな」

「どうして二回言うのっ!? というか、『どうしたのかな』じゃないよっ!!
フェイトちゃんっ! どうして私が『魔王』って所を否定しないのかなっ!?」

「・・・・・・うん、どうしてかな」



あ、あれ。なんかフェイトが微笑み始めたけど・・・・・・こう、オーラがとっても黒くて怖いぞ。



「でも私も逆に聞きたいんだ。どうしてジガンのAI制作になのはが首をツッコむのかなぁ」

「え、今更そこっ!? いや、だから前にも説明したけど」

「というか、今までも良くヤスフミのアレコレに凄く真剣になってたよね。
ね、もしかして・・・・・・やっぱりそうなのかな」

「フェ、フェイトちゃんっ!?」



言いながらもフェイトがなのはに近づいていく。なのははそれに圧されつつもジリジリと下がっていく。

なお、僕達も普通に圧されて何も言えなくなる。というか僕は怖いです。



「なのは、ちょっと真剣にお話しようか。私、やっぱり色々と気になる事があるんだ」



そしてフェイトは一気に踏み込んで、なのはの左手を掴む。そのまま歩き出した。

なお、その方向はなのはとヴィヴィオの部屋がある方である。



「え、あの・・・・・・・フェイトちゃんっ!? どうして私の手をそんなに強く掴むのかなっ!!
あの、お願いだからそんな一気に引っ張らないでー! 怖いのっ!! 普通にすっごく怖いのー!!」

「大丈夫だよ。なのはが正直に答えてくれればいいだけだから」

「何に対してっ!?」



そのまま、二人は去っていった。・・・・・・とりあえず、僕達は全員揃ってなのはに向かって敬礼しか出来なかった。



「・・・・・・恭文、あなたフェイトさんに謝った方がいいわよ」

「僕もりまちゃんに同感。アレは恭文君が悪いって」

「りま、なぎひこ、何の話かな。僕は真面目に何もしてないんだけど」

≪いや、してるでしょ。それも相当にですよ≫

≪なのなの≫










とにもかくにも、こうして夏休みはフリーになった。だって宿題という魔物を退治したんだから。





言うならば僕達は勇者なのよ。そう、勇者・ガーディアンズですよ。




あー、でもこれで完全フリーかぁ。・・・・・・うふふ、やりたい事沢山あるんだよねー。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第68話 『Start preparing for battle/とある魔導師とガーディアンのこんな会議の様子・パートU』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえずお昼にはまだ早い。なので僕達は宿題の見直しなんて軽くやりつつも、今後の事についてお話。





言うなら、ガーディアン会議in夏休みである。みんなで輪になって話すのも、ある意味恒例なんだよね。










「とりあえずアレだな。マリアージュの一件でちょっと予定より遅くなったが、俺達の宿題も終わった」

「後は三条君の自主勉強のノルマ分もだね」

「えぇ。ここからは基本一日中俺達は自由行動可です」



それから思わず頬が緩んでいるあむとかややを見ながら海里は『・・・・・・ですが』と続ける。



「ダラダラと過ごしていては、夏休みは簡単に終わってしまう。
現に色々あったとは言え、もう半分近くが過ぎています」

「そうするとここはやっぱり・・・・・・僕達で大体でも予定表を作るとかかな。
それぞれにやりたい事もあるだろうし、そこも鑑みた上で」

「いいんじゃない? せっかくの異世界での夏休みですもの。楽しく過ごしたいわよね」



各々色々希望があるらしい。宿題という戒めから解放されたみんなは、とっても楽しそう。

・・・・・・やっぱり戒めから逃げちゃだめなんだよね。ほら、今会議してる二人は過去に逃げちゃってるから。



「あー、それなら僕はちょっと明日地球行ってくるわ」

「リインもなのですね。というか、フェイトさんもですよ」

「地球って・・・・・・恭文もリインちゃんも、何かやることあるの?」

「うん。・・・・・・もう仮面ライダーWとゴセイジャーの映画やってるから、見に行ってくる」

『はぁっ!?』



あれですよ、夏休みの恒例のライダーと戦隊物のセット上映だね。既に公開は始まってるのよ。

楽しみだなー。というか、W・・・・・・フィリップさんと会うという約束を守るためにも、ここは頑張らないと。



「アンタ達バカじゃんっ!? みんなで過ごそうって話をしてるのに、なんでいきなりそうなんのよっ!!」

「そうだぞっ! 恭文、お前・・・・・・行くなら俺も連れてけっ!!
お前のおかげで最近の俺のライダー熱は相当高まってんだよっ! 行くなら一緒だっ!!」

「あ、そうだね。じゃあ空海も入れて四人で」



空海、デンライナー乗ったからその関係でライダー関係のアレコレが好きになってるんだよね。

確かにそんな空海を置いてけぼりはアウトだった。うん、ダメだね。



「ちょっと空海、あたしはそういう事言ってるんじゃないんだけどっ!? てゆうか、劇場だったらこっちで見ればいいじゃんっ!!」

≪それがダメなんですよ。地球の映画は基本上映開始から1ヶ月とか2ヶ月とかしないと見られないんです≫

「はぁっ!?」



つまりよ、ミッドチルダで見ようと思ったらもう向こうの上映終了を待たないといけないわけですよ。

基本フィルムデータを借りる形で上映してるしねぇ。その辺りで色々バレないように手間がかかるらしい。



「・・・・・・都市の発展具合を見ていると、俺には今ひとつアルトアイゼンの言った事が信じられませんが」

「でも三条君、ミッドチルダは異世界なんだしそこは普通なんじゃないかな。
それに僕達が暮らす地球は、まだこっちの世界の事を知らないわけだしさ」

「えっとえっと、つまり唯世の言ってる事は・・・・・・あ、やや分かった。
地球で暮らしてるみんなに次元世界の事がバレないように、物を仕入れてるんだよね」

「そう言えばそういう話してたわよね。でも・・・・・・どんだけ地球の文化が入り込んでるのよ。
普通にありえないでしょ。そうなってるのは私達的にはありがたいけど、これはおかしいわよ」



確かにりまの言う事も分かる。でも、そのおかげで普通に日本語で話せたりするのは非常に大きい。

地球圏からミッドに来ると日常会話は苦労しないのは、中々いい利点だと思う。



「とにかく恭文もリインちゃんも空海も却下だから。せっかくみんなと居るんだし、みんなと出来る事やろうよ」

「「「えー、そんなー」」」

「そんなもカカシもないからっ! てゆうか、どうせ恭文はフェイトさんとイチャラブするのが目的でしょっ!?
そんなの普段からしてるんだし今くらいは自重しろー! てゆうか普段から自重してくんないっ!? お願いだからさっ!!」

「あむ、失礼なこと言わないでよ。僕とフェイトはあくまでも普通のお付き合いをしているから。その上で婚約だし」



・・・・・・あれ、なんか全員揃って僕を呆れた目で見出したぞ? というか全員揃ってため息吐いたぞ。

しかもリインも一緒にだよ。あれ、おかしいなぁ。なんで僕はこんな居心地悪くなってるんだろ。



「じゃあ分かった。映画は自重しようじゃないのさ」



向こう帰ってからすぐに行くのも可能だしね。まぁまぁあむの言っている事も分かるのよ。

せっかくのお休みなんだし、みんなと出来る事を重視するのも大事でしょ。



「うん、分かればよろしい。じゃあとりあえず」

「じゃあとりあえず、PS3買ってくるわ」

「うんうん、PS3買って・・・・・・はぁっ!? なにそれっ!!」

「あむ、PS3知らないの? PS3はPLAYSTATION3の略語で」





なお、PLAYSTATION3はゲーム機器である。ブルーレイディスクを使った次世代ゲーム機。

最近は値下がりもかなりしたり、面白いゲームもかなり出揃って来ているのだけど、今の今まで持ってなかった。

あのね、フェイトから止められてたの。『PS2にDSにPSPにWiiがあるからいいよね』って言われたの。



でも、今はもう違う。というか無理にでも押し切る。だって・・・・・・だって・・・・・・あのゲームが出るんだから。





「8月の19日に『Another Century's Episode:R』が出るから、そのためにね。
それでこっちに居る間に遊び倒して、隠し機体とかも出して」

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



あむがそう叫びながら、丸いテーブルをドンと両手で叩く。・・・・・・どうしたんだろうか。

僕は首を傾げてあむを見てしまう。それで少し考えて・・・・・・僕は自分の過ちに気づいた。



「あ、そうだよね。あむごめん。・・・・・・大丈夫。みんなで楽しめるパーティーゲームもちゃんと買うから」

「あ、そうなの? まぁそれなら・・・・・・いやいやっ! そういう事じゃないしっ!!」



きゃー! なんかまた視線が厳しくなったしっ!! てゆうか、なんでっ!? これは別にいいじゃんっ!!

みんなで遊べるものも仕入れるんだし、何の問題もないじゃんっ!! ・・・・・・あ、いけないいけない。あむの口調うつってるし。



「だからアンタはどうしてそう個人的な趣味に動くのっ!? 普通にゲームとか映画から離れろー!!」

「おい恭文、俺にもやらせろよ? てーか元々購入予定でな」

「だから空海も自重しろっ! アンタ、さっきからのあたしの話を理解してないでしょっ!!」



まぁあむが言っている事も分かる。だからここはみんなには秘密の内に、深夜にやっておく事にしよう。



「そしてそこもあたし達が寝静まった深夜にやるとか考えないっ!!」



あむが僕の方を睨み気味に見てそう言って・・・・・・ちょっと待ってっ! なんか普通に思考読まれたんですけどっ!?

ちょっと怖いわボケっ! てゆうかあむはなぜそんな・・・・・・まさか、魔法少女だから出来るんかいっ!!



「・・・・・・てゆうか恭文、アンタ何か重要な事忘れてない?」

「忘れてるって何を? ・・・・・・あ、あむが魔法少女だって言う初期設定かな。
うん、大丈夫。そこは忘れてないよ。だから安心して欲しいな、魔法少女」

「魔法少女って言うのはやめろって言ってるじゃんっ! てゆうか、全然的外れだしっ!!」

「的外れって何っ!? むしろどんぴしゃでしょうがっ! 主に能力とか年齢とか、特にその平原な体型とかっ!!」



その瞬間、僕の顔面に国語辞典が命中した。そして僕は後ろ向きに倒れる。



「ごふっ!!」



なお、あむが投擲しました。というか、遠慮なく投げやがったから・・・・・・痛い。



「・・・・・・恭文、アンタが妙なセクハラ癖があるのはこの半年でよーく分かったけど、いい加減やめない?
てゆうか、あたしはまだ成長期真っ盛りだっつーのっ! 1年後にはフェイトさん張りになるに決まってるしっ!!」

「あむ・・・・・・多分、それ無理」

「なんだとー!?」



いや、当たり前でしょうが。フェイトだって中学卒業後から急激に大きくなり始めた感じよ?

それまでははやてにも負けてたくらいだけど、当然その分の蓄積も少なからずあったから・・・・・・ねぇ?



「・・・・・・恭文、今のはあなたが悪いわよ」

「そうだよー。あむちーにセクハラ禁止ー。
・・・・・・でもでも、魔法少女って大体ぺたんこだからいいのかな」

「あ、それもそうね。というわけであむ、あなたが悪いみたいだから謝った方がいいわよ」

「あむちん、恭文は心が広いから許してくれるよ? ほら、ややも一緒に謝ってあげるから」

「いや、なんでっ!? てゆうかアンタ達変わり身早過ぎだからっ!!」



とりあえず、僕は右手で鼻を押さえながら起き上がる。それで・・・・・・よし、ヤンデレコンビは気にしない事にする。

あと、それが誰かとかは絶対聞かないでね? 気にしてもダメだから。お兄さんとの約束ですよ。



「恭文君、君・・・・・・いつか刺されると思うな」

「俺も同感だ。マジ気をつけた方がいいって」

「大丈夫。刺された事も斬られた事も撃たれた事も、今までの中で散々あるから」

「ナギナギ、多分ナギーや空海はそういう意味では言ってないと思うぞ?」

「てゆうか、全部経験済みってのも凄いよな。俺達のツッコミ、全部無しに出来るぞ」



リズム、ダイチ、気にしてはいけません。てゆうか、あむをからかうのも命懸けになってきたなぁ。

前はあんなに純真ピンクな子だったのに・・・・・・どこで道を間違えたんだろう。



「とにかく・・・・・・アンタ、なんでミッドチルダに帰って来たっ!?」

「夏休みだから」

「うん、そうだねっ!? でも、そういう事聞いてないからっ!!
主要目的は、戦技披露会に出るためだよねっ! なのになんでそこ抜かすっ!?」

『・・・・・・あ』



あむの叫びに、全員が『そう言えば・・・・・・』と言いたげな顔で僕を見る。・・・・・・ち、そこ忘れてなかったか。

というか、そうなんだよね。戦技披露会までもう1週間切っちゃったし、普通に準備しておかないとマズい。



「そう言えば・・・・・・ついつい宿題やマリアージュ事件のあれこれで僕達も忘れがちだったけど」

「恭文君、普通に戦技披露会もうすぐなんだよね。というか、4日後」

「恭文、お前・・・・・・マジでゲームしたりWの映画見に行ってる場合じゃないだろ。余裕0だぞ?
なのになんだっ! お前はゲームするとか映画見るとか・・・・・・そんなんでいいのか、お前はっ!!」

「やかましいわボケがっ! てゆうか、普通にそこ空海に言われたくないしっ!!」



おのれも乗ったよねっ! 普通に乗って来たくせに言う権利があるとでもっ!? あるわけないでしょうがっ!!



「空海、乗りかけたあなたがそんな事言っても、全く意味ないわよ」

「りまたんの言う通りだよ。空海自重しろー。・・・・・・でもでも、それなら当面の方向性は決まったよね」

「そうだね。・・・・・・僕達ガーディアンで、蒼凪君の戦技披露会の準備の手伝いかな」



え? いやいやあの・・・・・・唯世? というかみんな? なんで普通に話がそんな一気に広がるのさ。

そして気合いを入れるなー! てゆうか抵抗は・・・・・・うん、無駄だったよねっ!? 分かってたわっ!!



「ではお昼までまだ時間もありますし、そこの辺りについての協議という事で異論はないでしょうか」

『さんせーい』

「いや、あの・・・・・・ちょっと? ・・・・・・リインー」

「恭文さん、諦めるですよ。もうどうしようもないのです」

「そんなー」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、急遽あたし達は恭文の戦技披露会のアレコレについて協議する事になった。

とは言え、恭文も唯世君との訓練の中で調整は少しずつやってたりしていたらしい。

最近ではキャラなりして唯世君のパワーアップの具合を確かめる意味合いでガチにやるとか。





・・・・・・一応は考えてたんだよね。でも、だからって人のために動き過ぎ。もうちょい自分中心でいいのに。










「じゃあじゃあ、ここは4日で新技を開発して一気にバーンと」

「やや、それ却下」

「えー、どうしてー! だって戦技披露会で戦うあのおじさんって、すっごく強いんでしょっ!?
だったらパワーアップだよっ! キャラなりみたいに、恭文もすっごいパワーアップしちゃうのっ!!」

「バカじゃないのっ!? 前にも言ったけど、普通は急激なパワーアップなんて無理なのっ!!
・・・・・・てゆうか、それならもうとっくにみんなと過ごしてた中で色々試してるから」



恭文がそう言うと、不満そうだったややが目を軽く見開いた。



「ほえ、そうなの?」

「そうなの」



そしてその目のまま恭文を見るので、恭文は頷いた。



「ほら。ジガンもパワーアップしたから、その関係でね」

「あ、そっか。ジガンちゃんの新機能に慣れておくため・・・・・・なんだね」

≪なのなの。だから基本的に戦技披露会の準備は、各スキルの錬度向上が目的なの≫



練度向上・・・・・・えっと、つまり技を上手く使えるようにするって事かな。うん、それなら分かる。

確かに前のジガンはワイヤー出したり、ダガー出したりとかはなかったしなぁ。練習しないとダメって事か。



「なら恭文君の方向性としては、今ある技を一度見直して、その上でって感じかな。
あとは体調だったりメンタル面から調整していって、当日に臨む」

「まぁそんなとこだね。それに」

「それに?」

「多分レイオさん相手だと、真正面からのガチの殴り合いでしか決着はつけられないだろうから」



言いながらも恭文が目の前に空間モニターを出す。というか、あたし達にも見えるようにしてくれた。

そこに映るのはあのおじさん。それが・・・・・・あれ、なんかでっかい斧持ってぶん回してる。



「レイオさんの戦闘スタイルは、僕やフェイト、ティアナとは全く違う。言うなればどこぞのプロレスラーだよ。
どんな攻撃も分厚い防御魔法とバリアジャケットで受け切って、相手に渾身の一撃を叩き込んで一気に沈める」

≪簡単に言えば攻撃力と防御力を徹底特化した戦闘スタイルなの≫

≪なお、この映像は以前見学させてもらった教導風景です≫



教導・・・・・・あ、ホントだ。こう、同じようなジャケットやデバイス持った人がおじさんに魔力弾叩き込んでる。

それこそ掃射って言われるようなレベルで。でも、ジャケットに傷ひとつ付かない。



≪・・・・・・普通に見ておいて正解でしたね。おかげで対策が整えられますよ≫

「だね」



斧を振るっただけで・・・・・・え、全員吹き飛んだっ!?



「多分この装甲の前だと、クレイモアやアイシクルキャノン・・・・・・僕の魔法関係の攻撃は、相当上手くやらないと突き抜けられない」

≪そしてバインド系での捕縛も恐らく無理でしょう。パワー重視ですから、簡単に引きちぎります≫

「・・・・・・あの、聞いてるだけでもう対処出来ないっぽいんだけど。あたしの気のせいなのかな」



てゆうか、バインドもだめでクレイモアでもだめって・・・・・・ありえないじゃん。



「普通に見てる分には脳筋っぽいけど・・・・・・相当な強敵なのね。でも、それならどうするのよ。
ガチな殴り合いなんてしても、絶対叩き潰されるわよ? 体格もパワーも相手の方が上なんだから」

「だからこそ唯世との訓練なんだよ」

「え、僕?」

「いや、偶発的にだし喜べない状況だったとは言え、プラチナロワイヤルがパワーアップしてくれて良かったよ。
唯世のホーリークラウン、以前よりもずっと強度が上がってる。だから僕も遠慮なく色々試したりも出来る」



そう言った恭文の言葉の意味を考えて・・・・・・全員気づいた。そしてハッとした顔で恭文を見る。

恭文は自信満々と言った顔で頷いた。えっと、つまりそういう事だよね?



「・・・・・・なるほど。キングのパワーアップしたホーリークラウンを、この方の装甲に見立てていたわけですか」

「それで唯世との訓練しつつ、このおっさんを叩き潰す手段を考えていたと」

「そうだよ」

「そう言えば・・・・・・能力実験の時に以前にも増して色々やられてたけど、まさか全部そのためっ!?」

「・・・・・・いや、唯世。それだったらお前は気づいとけよ。お前だけは気づいていいだろ」



・・・・・・あたし、恭文のこういう所はマジ凄いと思う。ボケて何も考えてないように見せても、全然そんな事ないの。

ちゃんと先の事とか考えて、その上で色々知らない内に試してて・・・・・・あたし達はみんな今みたいにびっくりさせられてばかり。



≪もちろん初っ端からそんな事はしませんよ。体力面での問題もありますし、こちらが不利なのは決定です≫

「このおじさん、恭文より30センチくらい大きいもんねー。
それに筋肉ムキムキで・・・・・・ちょっとややの趣味じゃないかも」

「だから方向性としては、序盤は様子見しつつも相手の体力や神経を削る。ようするに・・・・・・嫌がらせ?」



あ、あれ? なんか恭文がすっごく悪い顔に・・・・・・あぁ、普通になんかまたやらかすつもりなんだっ!!

うん、そうだよねっ! こういう顔する時は大抵それだもんっ!! あたしすっごい分かってたしっ!!



「あとは蒼凪君のマジックカードで体力を回復しつつ、状況に応じていけそうなら近接戦闘で・・・・・・かな」

「そうだね。場合によってはスターライトを使うのも考えないと。・・・・・・あー、でもやりたくないんだよなぁ。
戦技披露会って不特定多数の人間も見るから、あんま派手な手を使いたくないんだよ」

「でもアンタ、それで負けるのも嫌なんでしょ?」

「まぁそれはね?」



恭文、困った顔しつつも楽しそうだな。・・・・・・これも恭文のキャラなんだよね。

『戦う』のが楽しいって思っちゃうちょっと危険なキャラ。まぁ不安が無いわけじゃないけど、これはいいか。



「ただ、それも一応の方向性って感じなんだよね。相手は歴戦の魔導師だもの。
あとは相手の出方次第で色々やり方はその場で考えて・・・・・・だね」

「でも、それなら何にしても相手の装甲を貫けなきゃ意味がないだろ。ダメージも出せないしよ。
それで唯世のホーリークラウンがそこの辺りを考えるのに適してるなら・・・・・・唯世」

「うん、大丈夫。というか蒼凪君水臭いよ。それならそれで言ってくれれば、僕も力になるのに」



唯世くんがそう言うと、恭文が軽く呆れた表情を唯世くんに向ける。



「何言ってるの。唯世が強くなるための訓練なのに、どうして僕の方をメインにしなきゃいけないのさ」

「そ、それは確かに。なら・・・・・・今までの方向性で大丈夫?」

「うん、大丈夫。唯世のおかげで、必要なものも見えてきてるから。あとは」



恭文が軽く右手を上げる。そしてその手の平に・・・・・・な、何コレっ!?

蒼い風が部屋の中に吹き抜けて・・・・・・そうだよっ! これ恭文の魔法じゃんっ!!



「わわ、なんか凄いっ! 恭文、コレってなにっ!?」



ややが軽く身を乗り出して聞いてくる。というか、全員同様にしている。それで恭文はとっても楽しそうに答えてくれた。



「風属性の魔力変換だよ。今のところ、リースだけが使える変換技術」

≪というか、リースさんのオリジナルなんですよ≫



・・・・・・まぁそうだよね。というか、そう言うしかないんだよね。唯世くんとかはデンライナーの事知らないしさ。

とにかく恭文が手を閉じると、蒼い風も辺りに粒子を撒き散らしながら消えた。



「この間リースと変身した時に、サポート付けてもらって使ったしね。それで色々研究して組んだ」

≪というか、こっちに来る前から元々研究してて、それで最近完成出来たの。
これをそのまま戦技披露会で使うのはちょっと難しいけど、他の術式と組み合わせれば無敵なのー≫

≪地味に陰湿に・・・・・・そして狡猾に使うのであれば、この人の右に出る者は居ませんから≫

「そうそう。・・・・・・って、ちょっと待ってっ! それじゃあ僕が性格悪いみたいに聞こえるからやめてっ!!」



いや、間違ってないから。アンタ性格悪いじゃん。その上ヘタレじゃん。

ほら、だからみんなだって力強く頷くわけだよ。なお、あたしも同じく。



「・・・・・・あ、そう言えば」

「恭文、どうしたの?」

「僕もそうだけど、なのはも準備大丈夫なのかな」

≪そう言えばそうなの。お母さん、ずーっとバスケの練習しかしてないの≫

≪仕事は仕事できっちりやってるでしょうし、準備時間取れてるんでしょうか≫



言いながら、恭文がフェイトさん達が消えた方向を見る。でもあたし達は、みんなで顔を見合わせて首を傾げる。



「恭文、なのはさんの準備って何?」



ミキがそう聞くのも、当然。だってそこはあたし達みんなの疑問だから。



「あ、そういやみんなには言ってなかったっけ。なのは、僕と同じく戦技披露会に出るのよ」



・・・・・・・・・・・・え?



『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



あたし達は恭文とリインちゃん以外、全員が声を揃えて叫んだ。

ど、どういう事っ!? なんでなのはさんが・・・・・・えぇっ!!



「蒼凪君、それどういう事っ!? どうして高町さんがっ!!」

「・・・・・・まず、戦技披露会ってのは前にも話したけど、局の優秀な魔導師の公開模擬戦。
その趣旨は基本的には、魔導戦の技術追求と後進の育成を促すため」

≪分かりやすく言うと、『凄い魔導戦が出来る魔導師が居ます』と知らしめる事がこの会の意義なの。
そういう魔導師を目標に、まだ若い魔導師が頑張ろうって思うの。あとは≫

≪局がその内外に対する圧力をかけるためにですね≫

「・・・・・・圧力?」



・・・・・・ようするに、『自分達の組織にはこんなに凄い戦力が居るんだ』と広めるために行う部分があるとか。

そんな魔導師が、自分達の理念に共感している。それで管理局が凄い組織だというのを、市民だったり犯罪者だったりに知らしめる。



「実際、戦技披露会の定期的な開催により、局の諸々の活動が円滑になったってデータもあるしね。
というか、これで有名で有能な魔導師を作っておくと、その魔導師が一種の広告塔や顔になるから」

「その点から言っても、戦技披露会の開催は局にとってはメリットが大きいのですね。
管理局が次元世界の平和と安定を預かる組織だからこそ、そういうプロパガンダが必要だと」

「そういう事」

「・・・・・・でも、あたしはなんかそういうの気に食わないな」



まぁ・・・・・・今言ってもアレだけどさ。うん、気に食わない。

そりゃあ大人の世界の事だし、仕方ない部分があるのも分かるけどさ。



「だってそれじゃあ、この会に出るのって単純に局の都合に利用されてる部分があるって事じゃん」

「あー、そう言えばそうだね。ねね、恭文的にはそれでいいの? 恭文、こういうの嫌いっぽいなのに」

「まぁぶっちゃけちゃうと嫌だね。でもまぁ、別にいいかなと。戦技披露会に出るのは僕の都合だもの。
それに・・・・・・さっきも言ったけど、戦技披露会の意義はそれだけじゃないから。夢が輝く場でもある」

「え?」

「ほら、さっき『後進の育成』って言ったでしょ?」



恭文が右手を上げて、人差し指を立てた。それでそのまま話を続ける。



「つまりよ、まだ経験が浅い魔導師がなのは辺りを見て思うわけよ。
『あぁ、いつか自分もこんな風に空を飛びたい』・・・・・・とかさ」

「・・・・・・なるほど、恭文君が言いたい事は分かったよ。
そういう憧れや夢を育てて産み出す場でもあるという事だね」

「そうなるね。僕はそういうのとは関係なしに大暴れしたいだけだけど。でもだから・・・・・・戦技披露会って好きなんだ。
趣旨どうこうじゃなくて、その場の空気が。ダイヤじゃないけど、キラキラしたものがそこら中に散らばってる感じがするの」



楽しげに話す恭文の顔を見て、あたしも少し考えてみる。それで・・・・・・うん、理解出来た。

それは他のみんなも同じだから、想像してどこか楽しげな顔になってる。



「だったら・・・・・・ちょっと楽しみかな。てゆうか、他にもいっぱい魔導師出るんでしょ?」

「うん。・・・・・・あ、確かなのはの相手ももう決まってたな」

「え、誰々? やや興味あるー」

「あのね」



恭文が右手を胸元まで上げると、空間モニターが出てきた。

それで人差し指を画面の真ん中に当てて、軽く下に動かす。



「・・・・・・あ、あったあった。シグナムさんだって」

「あの方がですかっ!?」



いいんちょが驚いた声をあげた。というか、他のみんなも声こそ出さなかったけど、驚いた表情になる。

シグナムさん・・・・・・はやてさんの家族で、ピンク色のポニーテールのお姉さん。



「あ、リインも聞いてるですよ。それで今準備に大忙し・・・・・・アレ?」

「リインちゃん、というか恭文君・・・・・・なのはさん、大丈夫なの?」



なぎひこが心配そうに恭文にそう聞くけど、恭文はただ黙って首を傾げるだけだった。



「・・・・・・僕もちょっと心配になってきたよ。蒼凪君は自主的にアレコレやってたからまだいいとして」

「なのはさん、魔法訓練とかしてる様子なかったわよね? ・・・・・・夜中にこっそりとかしら」

「あー、クスクス分かるー。アレだよねー秘密特訓ー」



・・・・・・なるほど、あたし達に心配かけたりしたらダメだから、誰にも気付かれないようにか。



「いや、ヴィヴィオの話だとそれはない」

≪あぁ、ありませんね。というか、昨日訓練した時に言ってましたよね≫

「毎日『なぎひこ君とバスケの練習するから早めに寝るね』って言って朝までぐっすりだから」



・・・・・・なのはさん、それはその・・・・・・あたしが言うのもアレですけど、いいんですか? 主に大人として。



≪そもそも、公共の魔法練習場は深夜は閉鎖されちゃうの。
それに局関係も、ちゃんと申請しないと使えないの≫

「それならミッド地上の部隊は? ほら、この間会ったギンガさんやスバルさんの所みたいにさ」

「それもだめ。基本本局と地上部隊って別組織な上に、ちと仲もよろしくないのよ」



そこの辺り、なにやら色々難しい問題が沢山あるらしい。

前に話してくれた大規模テロも、そこ絡みで起きたとかなんとか。



「だから何かしらの事件のために協力を結んでるとかならともかく、なのは個人のために訓練場貸出しは」

「基本ありえない・・・・・・ですかぁ。むむむ、これは由々しき事態かも知れないですねぇ」

「というかナギー、オレ達知らなかったとはいえ」

「うん。僕達、なのはさんの練習の邪魔・・・・・・しちゃってたのかも」










そして、あたし達は顔を見合わせて・・・・・・全員で頷き合った。





色々お世話になってる以上、無関係ではいられないじゃん。ここは行動開始だよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、お昼を食べてからみんなで公共の魔法練習場に来ました。
で、なのは・・・・・・大体の事情はこういう感じだから、理解してくれた?」

「出来ないよっ! あんまりにいきなり過ぎて、私ビックリなんだけどっ!?」



全く、小うるさい女である。そんな細かい事を気にしていたら、このままIKIOKUREだと言う事になぜ気づかないのか。



「でもなのは、ヤスフミ達の言う事も分かるよ? ・・・・・・準備、してるのかな」

「だ、大丈夫だよ? 職場の方でそこはばっちり」



ガッツポーズで苦笑し気味に言うなのはを見て、僕達は顔を見合わせる。

なのは・・・・・・ごめんね? 僕達はもう真実を知ってしまっているのよ。



「・・・・・・海里」

「はい。・・・・・・高町さん、失礼かとは思いましたが職場の方に話を伺わせていただきました」



なのはの表情が引きつる。というか、フェイトやリース達も海里の方を驚いた顔で見る。



「それによれば新装備開発といった本来の仕事ばかりで、そこの辺りの準備を職場ではしていないとか」

「・・・・・・え?」

「そして職場の方曰く『練習や準備はプライベートな時間でしている』とか。
・・・・・・おかしいですね、先程の話と色々と食い違いが見られますが」

「ど、どうしてそれをっ!? ・・・・・・あ」



なのはが口を両手で閉ざすけど、もう遅い。

フェイトや僕は視線を厳しくしてなのはを見てるんだから。



「と、というかどうやって調べたのっ!? みんなが教導隊にかけても答えるわけ・・・・・・あ、まさか恭文君っ!!」

「違うよ。うぅ・・・・・・ごめんね、なのはママ。
ヴィヴィオもちょっと気になって、第五班の人達に確認したんだ」

「・・・・・・・・・・・・ヴィヴィオー!!」



なお、さすがに僕は止めた。あむ達も止めた。でも、ヴィヴィオがどうしても気になって実行しちゃったのよ。

だからなのは、僕達をそんな恨めしそうな目で見られても困るわけですよ。だって僕達は止めた側だし。



「というかなのは、なんで準備とか全くしてないのよ。普段の教導や訓練だけってのもまた違うでしょ」

「そうですよ。なのはさん、僕に付き合ってくれるのは嬉しいですけど、ここは一端止めて魔法訓練の方に比重を置いて」

「それはだめっ! だ、だって・・・・・・だって・・・・・・!!」

「だって・・・・・・なによ」

「だって、これでまたバスケ出来なくなったら嫌だもんっ! やっとコツが掴めてきたんだよっ!?
それなのにまた忘れてヴィヴィオに『ママ、バスケ出来ないの?』とか言われるのはもう嫌なのー!!」



涙目になったなのはの必死な叫びが、練習場に響いた。なお、ちょっとエコーかかってます。

それで僕達は・・・・・・ただ俯いて、自分の手で目元を押さえるしかなかった。



「・・・・・・とにかくなのは、逆になぎひこ君が気を使っちゃうから、ここはバスケ・・・・・・ちょっとストップだね」



フェイトが右手の人差し指で涙を拭いながら、なのはにそう言う。でも、なのはは不満そうに首を横に振る。



「でも・・・・・フェイトちゃんー! あのね、本当に色々掴めてきてるのっ!!
なぎひこ君とのバスケの中で、私の基本というか根っこというのを思い出してきて」

「ママ、大丈夫だよ。出来なくなったらなぎひこさんにバスケを教わりに行けばいいんだから」

「そうそう。僕にバスケを教わりに・・・・・・えぇっ!?」



ヴィヴィオのナイス過ぎる提案に、なぎひこが驚愕の表情を浮かべる。というか、僕達もだよ。

・・・・・・ヴィヴィオ、何気に『なぎひこ×なのは』推進派ですか? なんというか、恐ろしい子。



「ちょ、ちょっと待とうよっ! ヴィヴィオちゃん、さすがにそれは」

「・・・・・・あ、そっか。そうだよね、フェイトちゃんや恭文君にも会いに行きたいし、それでいいかも」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



コ、コイツアホかっ!? 疑問も持たずにあっさり納得したしっ! てゆうか、マジで落ち着けー!!



「なら、今は魔法訓練だね。よし、戦技披露会頑張るぞー」



そして普通に切り替え早いしっ! どうしてさっきの涙目がコンマ何秒かで振り切れるっ!?



「あ、あの・・・・・・なのはさんっ!? お願いだから冷静になってくださいっ!!
なにかこう、色々間違ってますからっ!!」

「ナギー、諦めろ。なのははもう乗り気だしよ」

「リズムー!!」










僕達は、とりあえず動揺しまくるなぎひこに向かって手を合わせた。・・・・・・なぎひこ、頑張ってね。





とにかく、なぎひこの尊い犠牲で話は纏まった。ここからはなのはも本気モードで訓練開始だね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それで高町さん、訓練なのですが・・・・・・俺達に出来る事があるなら、全力で手助けさせていただきたいんです」

「なのはさんにはご飯とかもお世話になってるし、それくらいはしたいの。いいかしら」

「え? ・・・・・・でも、みんなは魔導師じゃないし」

「そこは心配なしなしっ! やや達にはキャラなりがあるんだからっ!!」

「キャラなり・・・・・・あ、恭文君やあむさんがしてた変身」



なのはが合点がいったように呟くと、唯世達が頷いた。



「というか、みんなもアレ出来るの?」

「はい。・・・・・・それじゃあみんな、行くよ」



唯世の言葉にガーディアンメンバーは全員顔を見合わせて頷き合う。それから僕達は、胸元まで両手を上げる。

なお、練習場の一角に陣取って、そこに結界を張ってある。なので、人に見られる心配は今のところ無しである。



「あたしのこころ」

「「「僕のこころ」」」

「ややのこころ」

「私のこころ」

「「俺のこころ」」



そのまま両手の指を動かして、僕達は自分の心の鍵を開け放った。



『アン』



『解錠』アンロック



『ロックッ!!』





ミキとラン、キセキとリズムにペペにクスクス、ダイチとムサシがたまごに包まれる。

それぞれのパートナーの元に向かい、僕達はたまご達を右の手の平に乗せる。なお、僕はミキ。

右手を胸元に持っていくと、ゆっくりとたまごがそこに吸い込まれた。



そして、足元から粒子の螺旋が渦巻いて僕達の身体を包み込む。その回転が徐々に早まる。



そしてその粒子が弾けた時、僕達のそれまで来ていた服は消え去り、各々の姿が変わっていた。





『キャラなりっ!!』



僕は白いマフラーをなびかせた蒼い剣士の姿になる。

ミキが力を貸してくれてるおかげでなれる、魔法使いの形の一つ。



【「アルカイックブレードっ!!」】



そしてあむはもうお馴染みとなった、ピンク色のチアガール。



【「アミュレットハートっ!!」】



唯世は白くてフリフリな王子様ルック。そして金色の王冠ロッドを右手に携えている。



【「プラチナロワイヤルっ!!」】



なぎひこはヒップホップスタイルで、足から翼を生やしたダンサーな格好。



【「ビートジャンパー!!」】



りまは赤とピンクの色合いとピエロ的なスカートが特徴的な・・・・・・てーか、まんまピエロだよね。



【「クラウンドロップっ!!」】



ややはピンク色の赤ちゃん服。なお、パワーアップしたけど、ウサギ耳な赤ちゃん服は変わらなかった。



【「ディアベイビー!!」】



海里は紫色の着物に二振りの日本刀を両手に携え、透明な羽衣を頭からかぶる。

メガネは外れ、髪型は頭頂部を結わえたちょんまげになっている。



【「サムライソウルっ!!」】



そして最後は空海。ブースター付きのボードに乗っている空海は、フライトジャケットとゴーグル装着。



【「スカイジャックっ!!」】



さて、なのはがなんかポカーンとしてるところで・・・・・・もういっちょいってみよー。



我ら・・・・・・!!



左から空海・やや・りま・僕・あむ・唯世・なぎひこ・海里と並び・・・・・・決めポーズと色つきの爆発っ!!

なお、後ろで8色の爆発が起こったのは・・・・・・演出です。



たまご戦隊っ! ガーディアン5!!



・・・・・・・・・・・・その瞬間、空気が固まった。というか、フェイトとなのはとヴィヴィオとリースが固まってる。

アレ、なんでだろう。まるで僕達がKYみたい。ほら、楽しいでしょ? 



「・・・・・・ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



中心で僕と一緒にポーズ決めてたあむが、両手で頭を抱えてなんか叫び出した。



「あむちー、どうしたの?」

「そうよ。あむ、ちょっとうるさい」

「そういう事じゃないからっ! てゆうか、何これっ!? 何この爆発っ!!
てゆうか、八人なのに5は意味分からないからっ!!」

「あむ、大丈夫だよ。戦隊物では昨今追加戦士というのが定石でね?」



八人だったらまだ良識的だって。マジレンジャーとかデカレンジャーとかそれくらい居るから。



「確かに・・・・・・蒼凪さんの言うように戦隊物では新戦士が加入するのが当たり前ですし、そこは気にしなくていいかと」

「そうだよー。恭文といいんちょとなぎーが追加戦士って事でいいじゃん。あむちー頭固過ぎ」

「そんなんで納得出来るわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうかマジ恥ずかしいんですけどっ!?
あたしマジ恥ずかしいんだけどっ! こんなど真ん中でなんでポーズとっちゃったんだろうって、後悔してるしっ!!」

「ぼ、僕も・・・・・・その、これは恥ずかしいかも」

「辺里君、僕もだよ。・・・・・・てゆうか、なんでこれっ!?」



む、唯世となぎひこも不満なのか。うーん、別にいいと思うのになぁ。楽しいしさ。



「まぁまぁ、いいじゃないかよ。な、恭文」

「そうそう。いやぁ、こういうのやりたかったんだよねー」



というわけで、空海と右手を伸ばしてハイタッチし合うわけですよ。



『いえーいっ!!』

【い、いいのかなぁ。というかこれは・・・・・・うーん】

【ミキ、悩むだけ無駄だからやめとこうぜ? どっちにしろ空海も恭文も止めらんねぇよ】

【でも、こういうのは楽しいよな。よしナギー、これ毎回やろうぜ】

「絶対に嫌だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・えっと、フェイトちゃん」

「な、なにかな」

「これは・・・・・・どう反応すれば」

「ごめん、私もちょっと困ってる」



と、というかあの・・・・・・ガーディアン5って。たまご戦隊って。あぁ、やっぱりなんだ。

やっぱりこの子達も恭文君のセンスの無さに影響・・・・・・可哀想に。これから先、きっと大変だよ。



「・・・・・・かっこいい」



私とフェイトちゃんは、そう言った女の子の方を見た。

その子はディード・・・・・・恭文君のセンスの無さに毒された子。



「ですです。というかというか、リインを除け者はダメですー。リインだってガーディアンですよ?」

「あ、そうだよね。というか、ヴィヴィオも混ざりたいなぁ。
九人目と十人目の追加戦士って、有りだと思うし」

「リイン姉様っ!? というか、ヴィヴィオさんも落ち着いてくださいっ! アレはないですからっ!!」

「そうだよヴィヴィオっ! お願いだから、センスだけは継承しないでー!!」

「ヤスフミ・・・・・・うぅ、どうしよう。ヤスフミのセンスは直したいけど、でもそれもヤスフミ自身で・・・・・・うぅ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、あむ魔神のお怒りが鎮火したところで本題に戻る。





我らガーディアン5と追加戦士は、別に名乗るためだけに爆発まで起こしたわけじゃないのだ。










「とりあえず・・・・・・ヤスフミ、どうするつもりなの?」

「当然」



フェイトの声に応えながらも、僕はアルトを抜き放つ。そしてその刃は、虹色に輝いていた。

それを見て、なのはが軽く目を見張る。・・・・・・ふ、どうよ。このカッコ良さは。



「みんな、この魔王をシバキ倒すよ。それで徹底フルボッコだ」

『了解っ!!』

「だからちょっと待ってー! どうしてそこでみんな『了解』しちゃうのっ!? それは絶対おかしいからー!!
というか恭文君っ! なんでいきなり暴力行動に走るのかなっ! 実戦形式の訓練だと言うのは分かるけど、さすがに無茶だよっ!!」

【まぁ、魔導師のプロであるなのはさん相手だとボク達はちょっと無茶だよね】

「分かってるよ。・・・・・・まず、なのはとガチにやり合ったらみんなの方が持たない」



ここは決定でしょ。やるにしても、僕とミキだけだね。あとは唯世が的役やるとか、そういう方向性で動く。



「だから各々のキャラなりの能力を活かして、なのはの基礎訓練の相手をするの」



僕は振り返りつつ、後ろで笑うみんなの方を見る。



「どっちにしても、まずは基礎的なとこからの煮詰め直しでしょ」



というか・・・・・・マジで時間がないので、なのはに関してはもうこれくらいしか出来ないと言った方が正解。

それになのはには新技とか必要ないんだよね。だって、何にしても砲撃・誘導弾・バインドの三点突破しか出来ないんだし。



「これだけ居れば、それなりの事は出来るしさ」

「えっと・・・・・・例えば?」

「はいはーいっ! トップバッターはややがいきまーすっ!!」



そう言って右手を元気よく上げて、ややが小走りに僕の左隣を取る。てゆうか、すっごいニコニコ。



「あの、シグナムさんって確か恭文と同じで斬ったり殴ったりが得意なんですよね?」



ややがフェイトの方を見ながら聞くので、フェイトがそのまま頷いた。



「そうだよ。シグナムは近接寄りだから・・・・・・でも、ややがそれをやるの?
それならヤスフミだったり、海里君に任せた方が」

「ふふふ・・・・・・フェイトさん、ややを昨日までのややと思ってもらっちゃあ困りますねぇ」



そしてややは胸元まで両手を上げて、軽く構える。



「そう、今のややは進化した赤ちゃんキャラっ! だからだから、そういう事も出来ちゃうのー!!」

【そうでちっ! ややちゃん、アレを出してやるでちよー!!】

「了解っ!!」



両手の平の間に、白い光の球体が生まれる。ややは時計回りに身を捻って、腕を引いて振りかぶる。



「ゴーゴー!!」



そのままかめはめ波的な感じで、両手の平を前に突き出す。すると、光もそのまま前方に放たれた。



「ノロウサアルトちゃんっ!!」



・・・・・・あ、なるほど。あの巨大ノロウサになのはの相手をしてもらおうと。そりゃいいアイディアかも。

なのは、運動神経はさっぱりだし、いつもより近接戦闘に対する心構えを強くするのにはもってこい・・・・・・あれ?



『・・・・・・ウサァ』



白い光が弾けて、あの巨大ノロウサは確かに出てきた。でも、なんかおかしい。・・・・・・寝転がってるの。

右手を枕がわりにして、左でお腹の方をかいて、足なんて軽く組んであくびっぽい声出してる。



「・・・・・・・・・・・・あ、あれ?」

【なんかすっごいくつろいでるでちね】



呼び出したややと中のペペ自身も普通に驚いてて、軽く引いてる。引きつつも首を傾げて、ノロウサを見ている。



「というかやや、これ・・・・・・なに? ノロウサみたいだけど」

「あ、フェイトは知らなかったね。ややの新能力で、アヒルみたいに呼び出したんだよ」

「そうなんだ。納得・・・・・・ごめん、出来ない。ヤスフミ、コレなにかな。
もうすごいやる気なさそうなんだけど。思いっきりダラケてるんだけど」

「ごめん、僕に聞かないで。でも・・・・・・マジでどうなってる?」



言ってる間に、なんか寝返りを打った。というか、僕達の方にお尻向けて・・・・・・うわ、最低だ。



≪主様、なんか右手でお尻かき出したの。その手をクンカクンカして・・・・・・最低なの≫

≪完全に休日のお父さんじゃないですか。お掃除の時に邪魔なアレじゃないですか。
あの、真面目にどうなってるんですか? コレ、あの時のアレと違うやつでしょ≫

「そ、そうだよね。てーかこれは・・・・・・あれ?」



ちょっと待って。確か2話前では相当活躍してなかった? マリアージュ投げ飛ばしたり、イクス抱きかかえたりさ。

なのに、なんでこれですか。なんでアレが休日のだめなお父さん状態になっちゃってるのさ。



「もー! どうしちゃったのー!? ほら、そんなところで寝転がってたら汚れちゃうよー!!」



そう言って、ややがノロウサアルトの右肩を掴んで揺らす。

でも、向こうの質量の方がずっと大きいから、全く動かない。



「こらー! 動けー!! どうしてややを無視するのー!?」



・・・・・・待て待て、いくらなんでもおかしいでしょ。ほら、全員見てみて? すっごいポカーンとしてるし。

でも、あの様子を見ると呼び出した本人であるややの言葉を全く聞いてないし・・・・・・どういう事?



「・・・・・・もしかしたら」



僕の後ろから、唯世がそう言いながら近づいてきた。僕とフェイトは唯世の方を見る。



「あのウサギ・・・・・・ノロウサアルトは、これまで結木さんが呼び出していたゴーゴーアヒルちゃんとは全く違うのかも」

「唯世君、それどういう事?」

「僕にも良く分からないんですけど、あの時・・・・・・マリアージュと対峙した時」










・・・・・・あぁ、僕達が到着する前に色々ピンチだったって時ね。





その時にパワーアップして、ノロウサ呼び出したとか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・やや、こんなのキャラじゃないけど・・・・・・本気で怒ってるの』



そう呟いたのはやや。でも、同じ事を言ったのはややだけじゃない。



『君達を・・・・・・いいや、君達の操手の行動を、僕は認めない。僕も未熟だけど・・・・・・王様だから』



唯世くんも同じく。そして二人は視線を落としながら言葉を続ける。



『イクスちゃんの・・・・・・赤ちゃんの眠りを勝手な理由で、勝手な理屈で起こして泣かせて傷つけるのなんて。
そのために沢山の人を怖がらせて、泣かせて、悲しませるのなんて。こんな想いでみんなの心を染め上げるのなんて』

『どんな理由があるかは分からないけど、誰も・・・・・・陛下すら望んでいない闘争を強いる『王』なんて』



そして二人は目を見開いて、普段とは全然違うシリアスなキャラでマリアージュに向かって全力で叫んだ。



『そんなの、ややは絶対に許さないんだからっ!!』

『そんな王、僕は絶対に認めないっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・唯世、回想にさり気なく唯世がカッコつけてるとこも入ってるんだけど」

「そ、そこは気にしないで欲しいな? ほら、あの・・・・・・ね?」

【僕達のカッコ良いシーンを外すわけがないだろうが。というより、シーン的にそこだけ削除もおかしいだろ】

「あ、それもそうか」



とにかく、こんな事があってパワーアップと。

パワーアップしてマリアージュを軽く退けた所で、僕達登場ってわけですよ。



「・・・・・・あの時の結木さんは、いつもの赤ちゃんキャラとは違う、とても強い意志の元で動いてました。
その感情に日奈森さんのロックが反応。それでキャラなりもパワーアップしたし、あの子も出てきた」

【ハンプティ・ロックの影響もあるだろうが、その1番の原因はやや自身の気持ちだ。
イクスの涙を、悲しみを止めたいという強いこころがあって、初めてそれが成立した】



言いながら唯世は全然動かないダメお父さんなウサギと、それに絡んでる子どもウサギを見ている。



「ねーねー! どうしてなのー!? どうしてややの事無視するのかなー!!」

『・・・・・・ウサ』

【ややちゃん、『お前、ウザい』って言ってるでち】

「どうしてー!? てゆうか、ヒドいよー!!」



・・・・・・体型的な問題で、マジでそういう絵に見えるから不思議だよね。



「・・・・・・つまり、ややがその時のように気持ちを強く持たないと、あの子もややの言う事をちゃんと聞いてくれない」



フェイトはややの方を見ながら、軽く首を横に振った。振りつつ、今言った事を訂正する。



「・・・・・・ううん、協力してくれないという事なのかな」

【恐らくそうだろう。自己の意志を持つ存在だからこそ、操り手となるややの事を良く見ているんだ】

≪結果、ややさんがダメだと思ったら・・・・・・自分もダメなお父さんになっちゃうと。
というか、軽く見られてるんですね。もうあからさまにバカにしくさった態度を取ってますし≫

【あそこまで来ると、僕にはもうそうとしか考えられんぞ。
これは余りにも極端過ぎるだろ。僕だって一瞬別ものと思ったぞ】

「・・・・・・確かになぁ。あの時は凄いカッコ良いキャラやってたのに」



なんて言ってる間に、ややがノロウサの右手で軽く払われた。

それでペタンと尻餅をついて、ややの動きが止まる。



「・・・・・・ふぇ」



ややが小さく声を漏らした瞬間、ウサギが消えた。というか、キャラなりが解除された。



「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ヒドい・・・・・・ヒドいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
やや・・・・・・ややの事・・・・・・うぅ、ぶぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「や、ややちゃん落ち着くでちっ! あぁ、大丈夫でちからっ!!」



・・・・・・とりあえず、訓練の前にややを落ち着かせる所から始める事になった。じゃないと、話にならない。

まぁショック・・・・・・だろうなぁ。あんな形で振り払われたら、そりゃあショックだって。だって赤ちゃんキャラだし。



「・・・・・・あの、恭文君。フェイトちゃん、私の訓練は」

「なのは、空気読んでよ。今この状況でそんな事言ってる場合じゃないでしょ」

「そうだよなのは、まずは空気を読む事から始めて」

「二人ともひどいよっ! というか、目的そのものを忘れるってどうなのかなっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ぐす。アルトちゃん・・・・・・ややの事、嫌いなのかなぁ」

「そ、そんな事ないよ。その・・・・・・今日はたまたま機嫌が悪かったと思うな」

「ホントですか? ・・・・・・うぅ、フェイトさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

「あ、あの・・・・・・ややっ!? お願いだからここで抱きつくのはちょっとストップっ! その、歩きにくいよっ!!」

「フェイトさん、泣かせてあげてくださいでち。というか、ペペもアレは泣きたいんでち」





とにかく、その日の夕方。訓練はまぁまぁ・・・・・・無事に終了。

あたしや唯世くんに空海が的役になって、誘導弾の射撃訓練なんか軽くした。

あとはりまのジャグリング・パーティーだね。なのはさん、驚いてたなぁ。



『まさかキャラなりの能力がこんなに高いとは思ってなかった』って、ずっと言ってたもの。



あたし達は夕方の街を、ゆっくりと家に向かって歩く。というか・・・・・・あー、なんか自由だなぁ。





「・・・・・・恭文」

「ん、なに?」



左隣を歩く恭文の方を見ながら、まぁ・・・・・・軽くお話。

婚約者のフェイトさんには悪いけど、友達同士の繋がりも大切にしたいわけですよ。



「あたしさ、こんな気分がいい夏休みは初めてかも」



そう言った瞬間、恭文が呆れた目であたしを見出した。



「・・・・・・あむ」

「ん、なにかな」

「あむも宿題が出来ない子だったんだね」

「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



うん、そうだよっ!? あたしが気分良いのは、宿題終わったからだけど何か問題あるかなっ!!

でもいいじゃんっ! 今年はようやく終了直前のあの地獄を味わう必要がないんだしさっ!!



「てゆうか、宿題の事アンタに言われたくないしっ!?」

「なんでよ」

「だってアンタだって、戦技披露会抜きでゲームとか映画とかっ!!」

「僕は僕で準備してたよ。そんな夏休みのダメな子の典型なあむと一緒にされてもねぇ」

「う、うっさいっ!!」



そうだったー! くぅ、あたしコイツのこういう所がムカつくんですけどっ!!

普段ヘタレなのが演技かって思うくらいにちゃっかりしてるって、マジどういう事かなっ!!



「てーかあむ、それ以外はどうなのよ」

「え?」



恭文が後ろのみんなに聞こえないような声で、そっとあたしに聞いてきた。

あたしは軽く顔を近づけて、恭文の距離感に合わせる。・・・・・・あ。



「・・・・・・あむ、どうした?」

「あ、ううん。なんでもない」



あたし今、ちょっとだけしゃがんだ。本当にちょっとだけなんだけど・・・・・・そっか。

あたし、少し背が伸びてるんだ。前まではほんのちょっとだけ負けてたのに。



「で、どういう意味かな。それ」

「まぁストレッチとかストライクアーツはヴィヴィオから教わってるみたいだけど」



・・・・・・情けない事にね。とは言え、宿題もあったから基本の基本を教われる相手は他に居なかったわけだしさ。



「問題は他だよ。・・・・・・唯世との距離感とか」

「・・・・・・恭文、お願い。そこはマジ触れないで」



夏休みも半分過ぎたという所で、あたしと唯世くんの距離感・・・・・・今のところ、進展無し。

まぁそれどころじゃない事ばかりありまくったのは事実だけど、さすがにこれはなぁ。



「てゆうか、みんな居るしさ。中々二人でアレコレは難しいよ。特にここは異世界だし」

「確かに他のも居るしなぁ」



恭文は後ろを見て・・・・・・その『他の』を見る。それからまた前を向いた。



「僕も周りが邪魔で距離感詰められないと思った事は何度もあるから、そこは分かる。特になのはが邪魔だった」

「・・・・・・そっか。うん、その理由はなんとなく分かるわ。でもそうすると、夏休み中は難しいかな」

「かも知れないね。てゆうかアレだよ、普通に共通の話題作りが出来るだけでも良しって感じ?
ここの事とか、夏休みの間の事とか・・・・・・色々さ。うん、貴重な繋がりですよ」

「あ、そういう方向ならそこはかなり有意義に過ごせてるかな。現段階で色々濃い休みにはなったし」



イクスの事とかもそうだし、軽く観光した事とか、はやてさんの家の事とか、キャラなりがパワーアップした事とかさ。



「あとは・・・・・・ストライクアーツとかか」

「え、なんで?」

「いやね、唯世にもフィジカル的な格闘術教えてるでしょ? 一応ストライクアーツを基本にしてるのよ」

「あ、そうなんだ」



この辺り、基本というか本流がしっかりあった方がいいからという事らしい。何にしても、唯世くんは初心者だから。

恭文のは人から盗んだ技や動きをミックスした我流になってて、ちょっとそこが危ないとか。



「・・・・・・じゃあ、今度ちょっと話してみようかなぁ」



それでこう・・・・・・一緒に訓練とかするようになって、それでその・・・・・・きゃー! どうしようー!!



「・・・・・・まぁアレだよ、頑張ってね? 普通に大変だと思うけど」

「うん、そうする。てゆうか・・・・・・やっぱ8年かな」

「そこまでじゃない事を祈るよ。てゆうか、そうなりそうだったらさすがに口出ししたくなるかも」










恭文は・・・・・・なんというか、優しいところがある。基本バカで性悪でいい加減でセクハラ魔だけどさ。

でも、こういう時はお兄ちゃんみたいに普通に心配してくれて、色々話を聞いてくれる。

同級生だけど年上で、なんだか不思議な関係だけど・・・・・・それでもあたしは、そんな恭文の事が好き。





だから今だって、一緒に隣同士で歩いていける。友達として、仲間として・・・・・・真っ直ぐに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・日奈森さん、蒼凪君と仲・・・・・・良いね」

「ジョーカー・・・・・・やはり、なのでしょうか。だがそうなると、俺やハラオウンさんは」

「・・・・・・いや、お前ら落ち着けって。てーかそのつや消しの目はやめろ。俺、すげー怖ぇし」

「空海、無駄よ。二人とも聞いてないんだから。・・・・・・なぎひこ、あなたはやっちゃだめよ?
やったら殴るから。問答無用で殴るから。それでなぎひこ終了のお知らせよ」

「いや、それはどういう意味っ!? というか、やらないから今から拳握り締めるのはやめてっ!!」




















(第69話へ続く)




















おまけ:バナナ羊羹




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・やっさんが例のイクスヴェリアとアレコレあってさほど経っていない頃。

私は一人、やっさん達が暮らしてる街・・・・・・というか、地球に来ていた。もちろん目的はある。

別にやっさんに会いに行くとかそういうんじゃない。だってやっさん、今はミッドなんだし。





真夏日が差し込む中で私が黒いサングラスなんてかけて、珍しく髪をストレートにおろしながら歩いているのには理由がある。










”・・・・・・姉御、普通にバナナ羊羹って美味しいのか?”

”いや、美味しいんだって。普通に私はあの一回でファンになったね”



白のノースリーブのシャツにGパンを身に纏った私は、街の中心からやや南に外れたあるお店を目指している。

そのお店は、公園近くにある和菓子屋さん。なお、茶屋も兼ねていてそこでお茶をいただく事も出来る。



”でもよ、サリは今ひとつって顔してたじゃねぇかよ”

”そりゃあサリはおっさんだもの。あの濃厚な甘さと風味は、女性向けぶっちぎりなんだからいいのよ”





やっさんにジガンを渡しに行った日、実はサリと二人で軽く街を散策していて、その時にそこを見つけた。

その茶屋にはお店の和菓子も当然出されているんだけど、ちょうど私らが来た時に新メニューが出たばかりだった。

それがバナナ羊羹。ご想像の通り、羊羹の中にバナナが入っている。なお、ドライフルーツ的なのだね。



中々に癖のある味でサリ的にはNGだったんだけど、私的にはドンピシャだった。

なお、サリがお土産に一本買ってて、それを食べたドゥーエさんも同じく。さっきの私の発言は、そこから来てる。

アレから大体1ヶ月弱・・・・・・生ものなので、お土産に買った分はもう全部食べ尽くしてる。



だけど、家庭で再現ってのも中々に難しい。だから私はここに来た。当然、バナナ羊羹を買うために。

・・・・・・え、仕事? そんなもんきっちり休み取って来たに決まってるじゃないのさ。

仕事とバナナ羊羹のどっちが大事か。そんなもの、もはや考えるまでもない事だと思うね。





”あー、それならボーイ達にもおすそ分けってどうだ? ほら、マジックガール達も色々災難だったしよ”



あー、そういや火災に巻き込まれたりしてたんだよね。でも・・・・・・トレディア・グラーゼ、死んでたんだ。

・・・・・・なんつうか、私もフェイトちゃんのアレコレを言えた義理じゃなかったね。うん、今更ながら反省したよ。



”却下。私が家庭で再現するために頑張るのに、なーんでそんな事しなきゃいけないのか”

”姉御、色々最低だな”

”うっさい。私は利己的に生きるのが好きなだけだよ”





なんて言っている間に、木々が生い茂る遊歩道の中を歩いて・・・・・・あ、見えた見えた。

瓦屋根で木造りで、ちょうど木陰に佇む落ち着いた店構え。あそこが目当てのお店。

私はあの癖になる甘さと味わいに胸を踊らせつつも、少し思った。・・・・・・やっぱお土産にいくつか買って帰ろうと。



やっさん達にもそうだし、シャナにも食べさせてあげたいんだよね。きっと気に入るよ。



とにかく、お店の中に入ってショーウィンドウに居る緑の和服を着たお姉さんに迷わずに注文する。





「「すみません、バナナ羊羹ください」」





・・・・・・ただ、その声がハモった。普通にハモった。というか、その声にすっごい聞き覚えがあった。

なので私は慌てて右の方を見る。そこに居たのは、金色の髪をツインテールにした女の子。

身長は160前後で、紫のパンクなデザインのシャツに白のスカート。腰にはチェーン型のアクセサリー。



それで1番気になったのは、その子の隣に居る小さな赤い子と白い子。てゆうか・・・・・・アレ?

・・・・・・あ、そっか。この子私より前に来てたんだ。それで注文が重なった。

いやぁ、普通にバナナ羊羹の事しか頭になかったから、気づいてなかったよ。失敗失敗。



でも、またフェイトちゃんとそっくりだなぁ。ほら、声がもうクリソツ。まるで・・・・・・アレ?





「あの、注文お先にどうぞ」



その子は検挙に私を見ながら少し下がった。どうやら譲ってくれるらしい。

ただ、さすがにそれで納得ってのも問題でしょ。だから私は首を横に振る。



「いや、先に来てたのはそっちなんだし、私は後でいいって」

「でも」

「歌唄ー、せっかくなんだしそうしようぜー?」

「そうなのです。ここは先約優先、レディステディゴーなのです」

「そうそう。その子達もそう言ってる事だし、早くしなって。私は問題ないからさ」



私が軽く微笑みながらそう言うと、その子達が驚いた顔をしながら私を見る。

まぁ当然だよね。普通に私、小さな子達・・・・・・しゅごキャラが見えてるんだから。



「え、あの・・・・・・おばさ」

「ア?」

「いえ、なんでもありませんっ! お姉さんっ!!」



赤い子が敬礼しながらもそう言って来たので、にっこり笑ってあげた。

うんうん、良い子だね。そうだよね、私はおばさんじゃないしね。それで正解だよ。



「というかあの、もしかしてエル達の事」

「うん、見えてるよ。で、アンタの事もやっさんやサリから聞いて知ってる」

「・・・・・・・え?」

「もうね、一目見て声を聞いて分かったよ。ほしな・・・・・・じゃなかった、月詠歌唄ちゃんでしょ?」










・・・・・・これが、まさかあんな事態を呼び起こす事になるとは・・・・・・と、軽くネタ振りしたりしてみる。





とにかくこの子もバナナ羊羹が好きだと言う事で、私らは二人色々話して意気投合。





そして相当にやっさんLOVEだと分かったので、私が一肌脱ぐ事になってしまった。




















(本当に続く)




















あとがき



恭文「というわけで、日常編にようやく戻って来ましたよ。
でも、すぐに戦技披露会に突入してしまうのであんまり意味がなかったり」

はやて「確かになぁ。えー、とにもかくにもだっしゅになってからは19話な今回のお話、いかがだったでしょうか。お相手は八神はやてと」

恭文「拍手で『A's・Remixでははやてと姉と弟の禁断プレイフラグが立った』と来てびっくりな蒼凪恭文です」

はやて「あぁ、立ったなぁ。てゆうかアレよ、こういう事なんよな」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



はやて(A's・Remix)「・・・・・・あ、あかん。だめや・・・・・・・だめやから。うちら、姉弟なんよ?」

恭文(A's・Remix)「だめ、我慢できない。お姉ちゃん、このまま・・・・・・いくね。
お姉ちゃん、僕・・・・・・お姉ちゃんが好き。お姉ちゃんをこのまま僕だけのお姉ちゃんにしたい」

はやて(A's・Remix)「あかんっ! あかんからっ!! 恭文、言う事聞いてっ!? それはあかんからっ!!」

恭文(A's・Remix)「どうして? 僕達、本当の姉弟じゃない。お姉ちゃんも僕の事好きだって言ってくれたよね?」

はやて(A's・Remix)「それでも・・・・・・んっ! こんな・・・・・・こんなん、あかんよぉ・・・・・・!!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




はやて「・・・・・・という感じやな。拒みつつも内心では受け入れて・・・・・・漫画とかでよくある展開や」

恭文「・・・・・・はやて、女性としてそれを自分から言うっていいの? ほら、『ふざけんなっ!!』とか無いわけですか」

はやて「いや、この手のなし崩し的な展開でくっつくってようあるやんか。二次商業に限らず色々と」

恭文「あー、あるね。それでアレだよ、相当無茶苦茶な理論展開でなんとなくハッピーエンド的に終わるのもあるよね」

はやて「あるなぁ。もうアレよ、それこそ女性から見たら『ふざけんなっ!!』やと思うんよ。
うちもそうやけど、少女漫画とか女性向けのもんは自己投影しながら読む部分があるから」





(もうちょっと言うと、主人公の女の子に自分を・・・・・・という意味です)





はやて「そやからしゅごキャラもそうやけど、少女漫画の主人公はどっか平凡というか垢抜けてない部分があるやろ?
もうちょい言うと普通な部分や。読者が自己投影し易いようにそういう作りにしとる部分はある。でも」

恭文「そこで余りに理不尽というか、自己投影してるが故に自分が納得出来ないと『ふざけんなっ!!』になりやすいと」

はやて「そうやそうや」





(というか最近、リアル友人とそういう話をしました。その友人もなのはの二次を書いてたりします。
ちなみにヒロインははやてで、そのはやてが深く理解し愛する無茶苦茶強いカッコ良い男が主役です)






恭文「例えば・・・・・・アレだ。お」





(子どものこーろの夢ーはー♪)





はやて「うちやったら殴るな。てーか最低やろ。そないな男に再アタックの権利はないわ」

恭文「その通りだよね。・・・・・・で、またまた規制音が飛び出た所で今回の話ですよ。
今回は戦技披露会の準備のお話。というか、なのはとシグナムさんも出ます」

はやて「元ネタは1年くらい前のメガミマガジンに付属したStrikerSの漫画でやっとったアレです。
で、なんかまた次回になぎひこ君となのはちゃんの濃厚な絡みがある聞いたんやけど」





(そう、言うなら次回は『なぎひこ×なのは』話の第三弾)





恭文「あぁ、あくまでもワンシーン的にだけどあるらしいよ? もうR21行きそうな感じで」





(『無いからっ! もう台本もらってるけど、そんなシーンはかけらもなかったよっ!?』)





はやて「なんや、あの二人も仲えぇよなぁ。作者、書きやすいんやろうか」

恭文「みたい。少なくともユーノ先生やジン絡ませるよりは遥かに書きやすいって。
なんかもうこのままの勢いでカップル化させようか本気で考えてるとかなんとか」

はやて「・・・・・・そりゃあ書きやすいんやったら当然やろうなぁ」

恭文「それではやて、なのははまぁバカだから良いとして、シグナムさんの調子はどう?」

はやて「うん、万全よ? こういう決闘趣味が全開に出来るんは元々趣味やしなぁ。
・・・・・・で、アンタはどうすんよ? 普通にアンタの場合やとNGな手札が多いやろ」

恭文「まぁね」





(例:スターライト・マジックカード・ヒーリング結界・形状変換・対人対物に強いブレイクインパルスのような破砕攻撃・その他諸々)





恭文「そこの辺りは上手くやるよ。何にしても方針はもう決まってるし、唯世の協力もあるから」

はやて「そっかぁ。なら、そこは期待しとこうか。・・・・・・では、本日はこれまで。
お相手は姉弟の禁断の愛プレイも楽しそうやと思う八神はやてと」

恭文「というか、楽しいよと言っておく蒼凪恭文でした」

はやて「・・・・・・アンタ、フェイトちゃんとやったんか」

恭文「・・・・・・うん。あの、モノは試しって事で・・・・・・あのね、すごかった」










(その話を聞いて、A's・Remixは自分ENDでもいいんじゃないかと思った狸であった。
本日のED:UVERworld『CHANGE』)




















フェイト(深夜)「・・・・・・なのは、どうして魔法訓練してなかったの? というか、どうしてバスケばかりしてたのかな」

なのは「うーん、別にサボってたとかじゃないよ? 私なりの最終調整だったんだ」

フェイト「バスケをするのが?」

なのは「うん。・・・・・・私ね、なぎひこ君とアレコレ話して、仲良くなって・・・・・・少し思ったんだ。
私、教導官とか局員とか役職とか、そういうのに甘えて依存して見失いかけてたんじゃないかって」

フェイト「何をかな」

なのは「私なりの飛びたいと思う理由。本当に最初の時に感じた強い気持ち・・・・・・うん、忘れかけてた。
それは今もずっと胸の中にある気持ちで、大切に育てていかなきゃいけないはずなのに、置いてけぼりにしてたんだって」

フェイト「なのは・・・・・・なるほど、そういう事だったんだね。それは・・・・・・うん、私も少し分かるよ」

なのは「フェイトちゃんも?」

フェイト「私もヤスフミと付き合うようになって、あむ達と一緒に事件に対処する中で同じ事を思ったの。
私の夢、私の『なりたい自分』、私は今までちゃんと大事にして育てていく事をしてきたのかなって・・・・・・かなりね」

なのは「にゃはは、そっか。まぁ・・・・・・私もそんな感じなんだ。だからね、なぎひこ君に手伝ってもらって考えてたんだ。
一緒にバスケしてもらって、何度もボールを追いかけて、『とんで』・・・・・・空に手を伸ばして、私の中の答えを再確認する」

フェイト「それがなのはの『最終調整』?」

なのは「うん。今度の戦技披露会には、最初の頃の気持ちを思い出して・・・・・・新しい一歩を踏み出したいの。
空が大好きで、いつだってどこまでも空を『とんで』行きたいと思ったあの時の自分を・・・・・・ここからまた、始めたい」

フェイト「・・・・・・そっか」










(おしまい)






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あきゅろす。
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