小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 幕間そのなな 『すうぃと・そんぐす・ふぉえばぁ 年上で大人の女性は素敵なんだ編』 古鉄≪さて、今回は海外ロケ・・・少しだけです。そして、私の出番も少しだけです。・・・そんなちょっとがっかりな私、古き鉄・アルトアイゼンです≫ 美由希「あはは・・・。まぁ、ずっとじゃないからロケなんだしね。あ、どうも。高町美由希です」 古鉄≪ま、それもそうですよね。・・・さて、今回は前回の続き。全くリリカルなのはではないお話です。フィアッセさん相手にマスターが無駄にアプローチしていく話でもあります≫ 美由希「・・・してたね。うん、よく覚えてる。恭文、フェイトちゃんと喧嘩中でヤケになってたのかな?」 古鉄≪かも知れませんね・・・。ま、その辺りも是非見てください。それでは、幕間そのなな、スタートしますっ!!≫ 美由希「どうぞー!!」 魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 とある魔導師と機動六課の日常 幕間そのなな 『すうぃと・そんぐす・ふぉえばぁ 年上で大人の女性は素敵なんだ編』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・さて、何だかんだで海鳴を出てから1ヶ月以上。時の経つのは早いものである。 なので・・・当然、未だ異国の地でフィッシュアンドチップスやら、ヨークシャ・プディングやらをほうばっている僕には、こんなシーンもあったりするのだ。 『・・・・・・で、結局また事件に巻き込まれたのね。それも大事』 「い、いやだなぁ。またなんて人聞きの悪い」 『じゃあ、あなたはどうして数ヶ月前に私を深夜遅く呼び出したのかしら?』 「ごめんなさい。またです。性懲りも無くジョーカー引きました」 そう、シャマルさんです。スクールのご厚意で借りている部屋の中で通信中です。 うん、それで全部吐かされた。・・・なーんで僕はこの人に隠し事が出来ないんだろ。 いや、色々心配かけまくって、泣かせてるからだけど。あと、弱みを・・・。 『・・・バカ弟子、お前はどうしてまた』 「・・・師匠、頭抱えないでください。僕が悪いみたいじゃないですか」 『抱えるに決まってんだろうがバカタレっ! お前、どんだけ運が無いんだよっ!!』 「それを言わないでー!!」 ・・・そう、この通信はシャマルさんだけじゃない。師匠も居る。というか、途中から乱入してきた。 で、乱入者は師匠だけじゃない。 『・・・蒼凪、帰って来たらもう一度お祓いに行くか』 『もし状況が悪化するようなら、我もそちらへ行くが? ちょうど主もシャマルも暇だ。問題はない』 ・・・そう、シグナムさんにザフィーラさんも乱入してきた。 「ま、まぁ、前回みたいな事にはならないと思いますし、大丈夫ですよ。えぇ、本当に」 ・・・はい、そこっ! 『んなわけないだろ』とか言わないっ!! 僕は無駄でもそう思いたいのよっ!! ≪マスター、世の中、無駄なことは本当に無駄だったりしますよ?≫ 「ちょっとそれどういう意味っ!?」 『・・・恭文くん、分かってるとは思うけど』 「・・・はい。五体満足無事に帰れるように頑張ります」 真面目に無茶はやめよう。今回はそれで大怪我とかしたら、洒落が効かない。 『あと、テスタロッサの事だが』 シグナムさんが通信越しに僕を真っ直ぐに見ながら、そう切り出してきた。・・・やっぱりきたか。 『まぁ、アレだ。お前の言いたい事は分かる。・・・だが、ちゃんと謝っておけ』 「そのつもりありません。つーか、悪いのはフェイトじゃないですか」 『・・・もちろん、フェイトちゃんが悪いわ』 引き継ぐように言ってきたのはシャマルさん。 ・・・でしょ? なのになんで僕が・・・。 『でも、あなただってやり過ぎている部分が無いわけじゃないもの。いきなりイギリスに滞在したりとかね』 う。 『その上、実戦参加間違い無し・・・つーか、銃器持った奴とマジでドンパチする事態になってるじゃねーか』 う・・・。 『しかも、お前はそれに最後まで関わる気だろう? だから、謝っておけと言ってるんだ』 『シグナムの言う通りだ。・・・リンディ提督達に全ての事情が話せないなら、余計にだ』 ・・・なるほど、納得しました。 「そこも含めて・・・ってことですか」 『そういうこと。男の子は、こういう所で器量が決まるんだから。少しくらいは頑張らないとね。・・・気持ち、変わってないんでしょ?』 「・・・一応」 『なら、そこはちゃんとすること。いい?』 僕はシャマルさんの言葉に頷いた。 ま、そういう事ならね。うん、頑張りますか。とりあえず、対処は考えておこう。 『ただ、私もフェイトちゃんと同意見ではあるの』 『それは我々もだな』 ・・・シャマルさん? つーか、皆々様? 『そんなに苦い顔をするな。我らは別に、恭也殿達との訓練が必要じゃないとは思わん』 「じゃあ、どうしてですか」 僕がそう聞いた途端に、シャマルさんの表情が変わる。何かを思い出していて、辛そうな表情に。 『・・・また、出会った時みたいにすごく後悔してる姿なんて、私は見たくないから』 それだけで、何が言いたいか分かってしまった。そう、シャマルさんは心配してくれている。僕がまた、同じことを繰り返すのではないかと。 いや、皆も同じか。フェイトはたしょー過剰反応だけど。 『それはフェイトちゃんや私だけじゃなくて・・・皆も同じ。恭文くんには、笑顔で居て欲しいの。私達と一緒の時間で、いつまでもね』 ・・・その言葉で、また実感する。もう、僕の時間は、僕一人の物じゃないと。皆と繋がっていると。 やっぱり、僕は矛盾しているらしい。いや、していないはずがないか。 「・・・すみません」 『謝らなくても大丈夫よ。・・・大切なものが、手を伸ばして変えていきたい事が、覆していきたい事が、沢山出来たのよね。だから、戦いたい』 「はい」 『あと・・・罪滅ぼし?』 「かも・・・しんないです」 ・・・めんどくさいから、口には出さないけど。誰かを助ければ、守れば、少しは・・・軽くなるのかなって。 『・・・蒼凪』 「分かってます。変わるわけ、ないですよね」 『そうだな。こう言ってはアレだが・・・何人助けようが、何も変わらん』 『お前はやっぱ、キッチリしっかり、背負ってくしかねーんだ。自分で選んだ通り、忘れず、下ろさず・・・な』 ま、あり得ないよね。うん、分かってた。 『・・・ただ、その気持ちは分かる。アタシ達も、はやてと暮らすようになって、その時間が大事で、なにがあっても守りたいものになったからな。 それを守るためなら、アタシは・・・アタシ達は、誰が相手だろうと、飛び込んで、戦う』 「師匠・・・」 『ま、お前は止めて聞く奴じゃねーってのは、もう嫌になるくらい知ってるし、アタシらはこれ以上言わねーよ。 ・・・でもよ、無事に帰ってこい。本当に・・・それだけは頼むぞ』 「・・・はい。必ず」 ・・・約束は、継続中だしね。うん、破れないわ。 『蒼凪』 「はい、なんすか。ザフィーラさん」 『それだけは我らからも本当に頼む。そうでなければ、お前が居なくて寂しそうにしているヴィータの相手を続けなければならなくなる』 『バカっ! 誰が寂しそうにしてるってっ!?』 『お前だ。聞く所によると、デスクワーク中ずっと、蒼凪からの連絡を端末片手にため息を吐きつつ憂いの表情を浮かべて待っていたそうじゃないか。 いや、私は話を聞いて感心してしまったぞ。まさかそこまで蒼凪を思っていたとは・・・』 『んなことしてねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! つーか、誰だよっ!? そんなデマ流したのはっ!!』 ・・・とにかく、無茶だけはしないようにと念入りに釘を刺された。 で、まだまだ連絡する人はいる。次は・・・こちらの方です。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『・・・リインも行きたかったです』 「いや、はやてと仕事だったじゃないのさ」 『うー、でもでもっ! 行きたかったんですっ!! リインは恭文さんのヒロインなんですよっ!? 離ればなれなんて、おかしいですよっ!!』 「待て待てっ! ヒロインってなにっ!!」 そう、リインです。ま、師匠達とは別口でね。 『それにそれに、リインも本格中華やイギリス料理、食べたかったです・・・』 「・・・やっぱりそこかい」 ≪リインさん、よく食べますしね≫ 『育ち盛りですから♪』 ・・・いや、2歳とかで育ち盛りって。間違ってはないけどさ。 「まぁ、帰って来たら作ってあげるから。中華も、イギリス料理もね」 『ホントですかっ!?』 「うん、本場でリサーチしたしね。楽しみにしてて」 『ありがとうです〜!!』 リインの今の表情は、まさに笑顔。その明るさは、言うなら花。見ているだけで、元気が出てくる。 ・・・うん、元気出てくる。それに再認識する。守りたいもの、なにも変わってないってさ。 『あ、でもでも、それよりもして欲しい事があるです』 「なに?」 『いっぱいギュってして欲しいです』 そうリインは口にした。真っ直ぐに僕を見て、寂しそうな表情を浮かべながら。 『いっぱいギュってしながら、一緒のお布団で寝て、一緒にお風呂に入って、一緒にご飯を食べて、一緒に遊びたいです』 「いや、リイン? それって、いつものお泊まりコースじゃ」 『いいんです。私は恭文さんと一緒に居たいんです。今は・・・居られてないですし』 確かにその通りだ。片やイギリス。片や日本だもん。 「・・・だったら、戻ったら沢山一緒に居ないとね」 『・・・はいっ! あの、いっぱいいぃぃぃぃぃぃぃっぱいっ!! ラブラブしましょうね♪』 そうだね。いっぱいラブラブ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラブラブっ!? 「待ってっ! ラブラブってなにっ!?」 『シャマルが教えてくれたですよ? 恭文さんとリインは、一言で言えばラブラブだそうです』 「あの人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 ≪いや、事実でしょ≫ 『そうですよ〜』 「違うからねっ!?」 ・・・・・・とにかく、帰ってシャマルさんには色々お礼をすることが決定した。 でもまぁ・・・ラブラブしますか。リインのことが好きなのは、間違いないし。 さて、まだまだ連絡は続きます。次は・・・この人です。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『・・・なぎ君、私寂しいよ』 「いや・・・ごめん。色々ありまして」 ・・・すずかさんです。そうとう考えたけど。 でも、しないわけにもねぇ。うん、きっと心配かけてるし。 『そっちには、まだ居るの?』 「うん。・・・でも、コンサートもあるし、もうすぐ帰れる」 『そっか。なら、もうすぐ顔を見てお話出来るね』 「そうだね」 ・・・でも、ハグは止めて欲しい。あのノエルさんとかファリンさんとか、フェイトの応援オーラは辛いから。 『あ、もちろんハグはするよ? うん、寂しかったから』 「もちろんってなにっ!?」 コンコン。 「・・・ごめん、すずかさん。ちょちお客様みたい」 『そっか。・・・なら、また後で電話していいかな』 「いや、僕が電話するよ。国際電話、高いんだし」 こっちは費用は局持ち。問題は無いのだ。 『・・・分かった。それじゃあ、また後でね』 「うん」 そうして、携帯端末の通話を終える。さて・・・どちら様かな? そんな気持ちを抱いて、スクールに借りている自室のドアを開ける。 するとそこに居たのは、ピシッとしたスーツにスカートを身に纏い、金色の長い髪をポニーテールにしている女性。 あー、該当者が一人しか居ないや。 「エリスさん、どうしたんですか?」 「ヤスフミ・アオナギ、君に話がある。少しいいか?」 ・・・まぁ、今さらだけどこの人はエリス・マクガーレン。 恭也さんと美由希さん、フィアッセさん達の幼なじみで、フィアッセさん・・・クリステラ・ソング・スクールの警護担当者だ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・スクールの中庭をエリスさんと歩きながら、お話となった。 時刻は夕方。もうすぐ夕飯。・・・今日のご飯はなんだろうな。うん、楽しみだ。 「・・・単刀直入に言う」 「嫌です」 こうして、話し合いは見事にものの数秒で終わった。 いや、荒れることなく無事に済んでよかったよ。さて、夕飯だ夕飯だ〜♪ 「終わるわけがないだろっ!!」 「・・・あ、やっぱりですか」 「当たり前だっ!!」 なぜか髪を振り乱して怒りの表情を浮かべるエリスさん。 ・・・なんと言うか、もうちょっと落ち着いて欲しい。というか、せっかくの美人が台無しである。 「・・・君は本当にキョウヤの言うようにふざけた性格のようだな」 恭也さん、あなたは僕を一体なんだと思ってる? つーか、そんな話を触れ回らないで欲しい。 「そもそも君は、私が何を言いたいか分かっているのかっ!?」 「悪い事は言わない。今回の件から今すぐ手を引け」 僕がそう言うと、エリスさんが固まった。 「・・・違いますか?」 僕は、ニッコリと笑いながらエリスさんに言う。 ・・・このシチュで分からないわけがないでしょうが。つーか、こっちはいつ言ってくるかと待ってたくらいだ。 「その通りだ。なら話は・・・って、君はもう返事をしているな」 「えぇ。残念ながら、引くつもりはありません」 「どうしてもか」 「どうしてもです」 フィアッセさんほっぽりだしてさようならってのも、したくないのよ。それであの素敵なお姉さんに何かあっても、嫌だし。 「だが、君は今回の件では巻き込まれただけだ。それで命を危険に晒すこともないだろう」 「命かかった厄介事に巻き込まれるのは、いつもの事です」 ・・・泣かない。本気でいつもの事な事実が悲しくても、絶対泣かない・・・!! 「・・・あぁ、そうらしいな。それもキョウヤから聞いている。運が凄まじく悪いとか」 だから・・・恭也さんは一体何をペラペラ話してるっ!? あのおにーさんは、何時からそんなお喋りになったのさっ!! 「ただ、それでもご家族は心配なさっているのではないか?」 「・・・でしょうね。つか、心配してますよ」 いや、僕が長期留守にしてる事に対してなんだけど。 「なら、なぜそれで関わろうとする」 「僕がそうしたいからです」 夕日に染まる中庭を歩きながら、エリスさんを見上げ、その瞳を見ながら答える。 「・・・それだけか?」 「それだけですね」 ・・・うん、ただそれだけ。細かい理由なんてない。 「自分が守りたいものを守り、壊したいものを壊す。それが僕の戦う理由ですから。・・・それに嘘ついて背中向けたら、僕の全部が嘘になるんです」 「・・・なら、聞こう。君はこの状況でなにを守り、何を壊すつもりだ」 「守りたいのはフィアッセさんの命と想い」 お母さんから受け継いだもの、通そうとしている。綺麗事かも知れない。でも、本当に素敵で、凄い事だって思う。 だって、歌で世界中に居る沢山の人を助けるんだもの。やっぱ凄いよ。 「壊したいのは、許せないのは、それを勝手な都合で踏みにじろうとする理不尽です。そのために戦います。そうしてフィアッセさんの今を、守ります。 フィアッセさんの歌声が、沢山の人に届いて、その命と想いを守るのなら、僕はその歌声を・・・フィアッセさんの想いを守ります。だから、ここに居ます」 僕の力は、壊し、奪い、殺す力。でも、それでも・・・守れるものがあるから。 ううん、ちょっと違うか。それでも、守りたいものがある。あの妙にノリのいい歌姫の笑顔・・・とか。 ま、ご飯や宿泊先も世話になってるし、その辺りのお礼もしないとね。僕は今のところ、戦う事しか出来ないし。 「・・・君は、ミユキと同じ事を言うんだな」 「そうなんですか?」 「あぁ。自分達は、力の無い人達が、戦う術を知らない人達が、そんな理不尽に屈しないために居る。そう言っていた。 ・・・ただ、君のように軟派なことは言ってないがな」 そりゃそうだ、言ってたらおかしいでしょ。どんな百合な人かと思う。 「・・・恭也と私の指示には従ってもらう。君は戦闘能力はともかく、警護に関しては素人だ。ここは絶対に守ってもらう」 「へ?」 「なんだ、また面白い顔をするな」 誰が面白い顔だよっ!! 「いや、いいんですか? プロは素人と同じステージには立たないでしょうに」 「だが、一緒に歌うのも楽しいもの・・・だそうだ」 「なるほど・・・。なら、歌います? 派手に、僕達なりの平和の歌を」 「そうだな、歌うとしよう。・・・ただし」 「分かってます」 僕はやっぱり素人。もし、フィアッセさんの警護のメンバーの中で一番迷惑をかけるとしたら、間違いなく僕だ。 だから、場数を踏んでるエリスさんや恭也さんの指示を仰ぐのは必須だ。僕だけで勝手な行動は絶対にアウト。 「分かっているなら、それでいい」 「・・・エリスさん」 「なんだ」 「ありがとうございます」 「構わないさ」 ・・・・・・なんで急にこんな事を言い出してきたのかは分かんない。 でもま、いいか。今は、関われる事を喜ぼう。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・エリス」 「キョウヤか。盗み聞きは感心しないぞ?」 「すまない、気になってな。それで、感触はどうだ?」 「・・・あの子も、キョウヤとミユキと気持ちは同じだ。もちろん、私とも。それに、自分に出来ないこともちゃんと分かっているようだしな」 だろうな。話を聞いていて俺も思った。まさかあそこまで腹が座っているとは・・・。 なのはが言っていたな。アイツは、こうと決めたらテコでも動かないと。 「まぁ、初恋の相手の危機というのもあるんだろ。発言に似合わず、一途な子だ。私はああいうのは、嫌いではない」 「・・・いや、エリス。アイツには別に、片思いをしている相手がいるんだ」 「・・・はぁっ!? なら、なんなんだっ! あの妙に手練れなアプローチの数々はっ!!」 「俺に聞かれても困る」 やはり、フェイトちゃんと喧嘩中なのが原因か? しかし、あれは・・・うむぅ。 戻ったら一度、リンディさんに相談した方がいいかも知れんな。どうもアイツにはそういう部分があるようだ。 「それでキョウヤ」 「恭文は俺と一緒に行動してもらう。そちらに迷惑はかけんさ」 「そうか・・・。頼む」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ それから数日後。 ようやく、チャリティー・コンサート参加者一団は、日本に向けて出発することになった。 なお、安全に考慮して、日本までは専用旅客機をチャーター。それで日本までの空の旅を楽しむ事になった。 ただ・・・あの、なんと言いますか。 あの、あなた? なんで僕の手を繋ぐっ!? 「だって、飛行機苦手で・・・」 そうおっしゃって僕の右手を占領するのは、皆様ご存知美由希さん。 そう、美由希さんは飛行機がダメ。だから、緊張しまくってる。 「それに、恭ちゃんは繋いでくれないしさ・・・」 「当然だ。というか、いい加減お前は慣れろ。美沙斗さんの所に何回行き来してるんだ」 「だって〜」 恭也さんがこういうって事は、相当回数か。それでもこれって事は本当にダメなんだね。 「まぁ、恭也さんの代わりってのが不満ですけど・・・繋いでましょ」 「うん、ありがと。そうしてくれると助かるよ」 ・・・あの、涙目はやめてくれます? つーか、そんなにダメですか。 そして、思った。御神の剣士も決して無敵では無いと。これで襲われたりしたら、美由希さんは大丈夫なの? いや、大丈夫そうではあるけど。 「ダメなの。でもね、この恭文の手が私の命を繋ぎ止めてくれてる。私、今それがとても嬉しくて・・・」 「ちょっと大袈裟過ぎませんっ!? つーか、愛おしそうに頬擦りはやめてっ!!」 「・・・平和だな」 「恭也さんも、僕達から逃避しないでー! つーか、こっちを見てこっちをっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そうして、イギリスを出発して数時間。 僕達は、ようやく日本の地を踏んだ。 「・・・フィアッセさん、足元気をつけてくださいね」 「うん、大丈夫」 ・・・あ、一つ思い付いた。 「僕、なんなら手を引きますよ?」 「エスコートしてくれるの?」 「いえ、転ばないようにです」 「・・・あの、私は恭文くんと違って子どもじゃないんだけどな」 「なにを言いますか。私はちゃんと覚えていますよ? 初っぱなで何もない所でコテンと・・・」 「それを言わないでー!!」 飛行機を降り、空港のロビーに、恭也さんやエリスさんの同僚に囲まれながら向かう途中、こんな話をフィアッセさんとしていた。 なお、周囲から漂う『こいつら、マジで緊張感ねぇ』というオーラはガン無視で行きます。 さて、これから・・・ですな。 「ね、恭文くん」 「はい?」 「日本に帰ってきたけど、今の心境は?」 「とりあえず・・・和食が食べたいですね」 スクールのご飯も美味しかったけど、やっぱり母国のご飯が恋しいのですよ。もっと言うと、リンディさんと桃子さんのご飯が。 ・・・変なの。なんか、お袋の味ってちょっと考えちゃった。 「あ、私もっ!!」 「そうなんですか?」 「うん。・・・前にも話したけど、私高町家でお世話になってたりしてたから」 ・・・らしい。つい3、4年くらい前の話。その頃、病気療養でフィアッセさんは日本に暮らしていて、翠屋のウェイトレスのチーフだったとか。 ここ数日でそんなことも話せるくらいにフィアッセさんと親交を深めていた。普通に一緒に紅茶淹れるし、ご飯も食べるし。 つか、僕は世間様みたいに、フィアッセさんに対して世界の歌姫って印象が無いんだよね。こう、普通に話しやすい綺麗なお姉さんって感じ。 「だから、家で食べるような和食も大好きだよ。小さい頃にも、こっちに居たことがあるしね」 「なるほど・・・。納得です」 だって、なんか思考がやたらと庶民的だし。でも・・・こういう人だから、スクールの方々も揃ってフィアッセさんを慕っているのかも。 「それで、何を食べたいの?」 「・・・とにかく真っ白いご飯が。炊きたてで、お米の粒がピンと立ってて・・・それに例えば、鯖の味噌煮なんかをおかずにするわけですよ。 ご飯にちょんちょんって乗せて、一口食べて、ご飯をかきこんで・・・」 「あー、いいよねいいよねっ! それで、噛んでいくと口の中で鯖とご飯がいい感じで混ざり合って・・・」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・キョウヤ」 「頼む、聞かないでくれ。というより、聞かれても答えられないんだ」 「恭文、フェイトちゃんどうしたんだろ。本格的に乗り換え?」 「フィアッセにか? いくらなんでも、年齢が離れ過ぎだろ」 「14、5歳差だもんね・・・」 「まぁ、彼のおかげで護衛対象のメンタルケアが出来ているのは大きいが・・・いつもこうなのか?」 「いや、そんなことはないんですけど・・・。恭ちゃん、どうしよ」 「だから、俺に聞くな」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・気のせいかな。恭文君、フィアッセと距離近くない?」 「お姉ちゃん、気のせいじゃないよ。・・・うん、近いね」 「というか、フィアッセさんもなんか楽しそうですよっ!? 今、目が合って笑いあったしっ!!」 「何があったのよ、アレ」 さて、私達・・・フェイトちゃんにはやてちゃん、アリサちゃんにすずかちゃん、忍さんは現在翠屋でテレビを見てます。 テレビの内容は、フィアッセ・クリステラさんの来日速報。当然、フィアッセさんのことは、私と忍さんにアリサちゃんとすずかちゃんはよく知っています。 だから、気付いてしまった。・・・テレビに映るフィアッセさん、その隣に居る恭文君との距離が近い感じがするのに。 いや、普通の友達的な距離だし、フィアッセさんはすごくフレンドリーな人だから、あれくらいは問題は無いんだけど・・・。 それでも、少しおかしいと感じてしまうのは、どうして? 「・・・なぎ君、大人の女性がいいのかな。私、子どもだからダメなのかな」 「すずか、とりあえずフォークは放しなさい。つか、そんなに握り締めるんじゃないわよ。拳震えてるから。怖いから」 す、すずかちゃん・・・恭文君絡みだと最近距離・・・じゃなかった、キャラが変わるなぁ。 「・・・なぁ、なのはちゃん」 「なに、はやてちゃん」 「アイツ、イギリスまで行って、なにしてるんやっ!?」 「ゴメン、私にも分からない」 「・・・これ、恭也に要連絡ね」 同じく、私も恭文君に要連絡です。さて、あとは・・・だよね。 「フェイトちゃん」 「なのは・・・」 そう、フェイトちゃん。恭文君との膠着状態は継続中。おかげで、最近元気が無い。恭文君もフェイトちゃんには連絡してないって言うし。 うぅ、恭文君は強情だしなぁ。フェイトちゃんが折れないと、きっとこのまま。・・・ただ、問題が。 「恭文君に連絡する気、ない?」 「・・・うん」 そう、フェイトちゃんも意固地になってるのです。うぅ、頑固対頑固な図式だよ。 「だって、あんな危ないことして欲しくないよ。私は納得出来ない」 ・・・ずっとこの調子。恭文君が折れるまで連絡しないって断言してるし。 「・・・あー、フェイト。アタシ前から思ってたんだけどさ」 アリサちゃん? 「うん?」 「アンタ、ナギに対してちょっと過保護過ぎない?」 アリサちゃんが真っ直ぐにフェイトちゃんを射抜くような視線をぶつけながら、そう口にした。 「・・・そんなことないよ」 「そんなことあるわよ。・・・まぁ、話を聞く限り、ナギはなのはと同じく相当無茶するタイプみたいだし」 にゃにゃっ!? 「心配する気持ちは分かるわ。私とすずかだって経験あるもの」 「うん、そうだね。・・・なのはちゃん、一人で抱え込むとこあるから」 ・・・耳が痛い。うぅ、事実なだけに心苦しいよ。 「ただ、それでもアンタは心配し過ぎ。見てて、どこのお母さんかと思うもの」 「それは・・・ヤスフミとは家族だから」 「アンタの場合、それだけじゃ説明出来ない。アイツの嘱託試験の時だって、それで揉めたじゃないのよ。 ・・・なんかあるの? ナギをそこまで心配する理由」 アリサちゃんがそう言った瞬間、フェイトちゃんが固まった。というか、私とはやてちゃんも。 そう、アリサちゃんの言うようにある。その理由が。また、同じ後悔を背負って欲しくないから。それは・・・私も同じ。 あの時の恭文君、表面には出してなかったけど、本当に苦しくて、壊れそうだったから。もう、あんなの見たくない。 そんな私達の様子を見て、アリサちゃんがため息を一つ吐いた。そして、言葉を続ける。 「とにかく、気持ちの整理がついてからでいいから、連絡はアンタからしなさい」 「アリサ・・・。でも」 「でもじゃない。・・・いいわね?」 「・・・うん」 これで・・・なんとかなるかな。 うん、なんとかなるよね。だって、恭文君はもうこっちに帰ってきてるし、話し合えればそれでハッピーエンドだよ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・そっか、喧嘩しちゃったんだ」 「しちゃい・・・ましたねぇ」 なぜだかロビーに出た瞬間から、寒気を感じたりはしたけど、僕達は無事に空港から出立。宿泊予定のホテルへと到着した。 それで、夜。就寝時間なフィアッセさんに付き添いで警護・・・って、僕男なんですが。 「恭文くんはまだ子どもだもん。大丈夫だと思われてるんだよ」 「・・・いや、男は何歳でも狼なんですよ? 油断しちゃいけないでしょ」 「なら、私は今、危ないのかな?」 「さぁ、どうでしょ」 ・・・まぁ、警護しつつフィアッセさんとお話です。いつも通りの、楽しいお遊び。 こういう時間は嫌いじゃない。だから・・・自分の事もべらべら喋ったりするんだ。 「私は、その子の気持ちが分かるな」 「そうですか?」 「うん。・・・きっと、恭文くんの事が大好きなんだよ。 それで、危ない目にもあって欲しくないし、誰も傷つけて欲しくないと思っている。そういうのは、本当に重いことだから」 ベッドに横になりながら、僕を見るフィアッセさんの瞳に、影が差す。何かを思い出しているような、そんな影。 フィアッセさんの言っていることは分かる。僕がどれだけ覚悟を決めても、きっと変わらない。戦い続ける以上、きっと変わらないこと。 「なんつうか・・・難しいです」 海鳴で暮らすようになって数ヶ月。もうすぐ暦も変わる。 暮らし始めて、色々考えてしまった。繋がった時間の中で勝手を通すって、本当に難しいんだと。 「でも、大事にしなきゃいけないよ? それは、守る事にもなるから」 「そうですね。うん、きっとそうです」 「なら、その子・・・フェイトちゃん・・・だったよね」 僕は、部屋の隅の椅子に座りながら、フィアッセさんの言葉に頷く。 「ちゃんと仲直りしないとダメだよ。それで、折れる所は折れて、通す所は通す」 「・・・はい」 「でも・・・」 ・・・・・・でも? 「私が『折れる』って言っても、説得力ないね。私、折れてないもの」 「・・・あぁ、そういや折れてませんよね」 「うん。私はわがまま通してばかりだよ。今回だってそう」 「まぁ、それは僕もですよ。折れずに通してばっかりです」 ・・・どうやら、僕達は大事にしていないらしい。つまり、アレなのですよ。 「僕達、どうもダメみたいですね」 「そうだね。うん、二人で反省しようか」 二人で顔を見合わせて、そう言いながら苦笑する。 「・・・ね、恭文くん」 「はい」 「どうして、ここまでしてくれるの? 恭也達と一緒に戦ったり、私の側に居てくれたり」 ・・・いや、なんつうか・・・自分の都合? モヤモヤも払拭したいし、フィアッセさんの事、放置なんて出来ないし。 あと・・・内緒。なので、僕はこう答える。 「自分のためです。僕もさっき言った通り、わがままなんです」 「でも、君は子どもだよ? ・・・あのね、本当に危ないことになるかも知れない。気持ちは嬉しいけど・・・これ以上は巻き込めないよ」 「それなら、エリスさんにも言いました。・・・なんつうか、アレですよ。僕も恭也さん達と同じです。フィアッセさんの事、守りたいんです」 ・・・フィアッセさんだけの話じゃない。スクールの人達も同じくだ。 イギリスを出発する前、コンサートの準備をしているスクールの人達を見てると、皆輝いてた。 コンサートには、スクール出身のシンガーも出演する。そんな方々を見て、現在の在校生も夢を広げるのだ。いつかは・・・自分も・・・と。 このコンサートには、フィアッセさんだけじゃない。色んな人の、色んな形での夢も詰まってる。それも見ちゃったら・・・ね。 「・・・確かに、恭也さん達が居るから、僕が居ても邪魔なだけかも知れないです」 いや、きっと邪魔だ。経験も、能力も、無い。やっぱり子どもだと、恭也さん達だけじゃなくてエリスさん達を見ていても思った。 でも・・・それでも・・・守りたいもの、壊したいものは、確かにあるのだ。ここに。 「無力な事も、子どもな事も、ここで何もしない事への言い訳にはならないんです。止まらず、迷わず、戦えって、心が言ってるんです」 「だから・・・なんだね」 「だから・・・です。あと・・・」 「あと?」 「・・・フィアッセさんの歌、聴きたいんです。関係者だけの特等席で」 フィアッセさんが、一瞬ポカーンとした表情をした。その次の瞬間・・・クスクス笑い出したし。 うぅ、絶対こうなると思った。だからエリスさんにも言わなかったのに。 「そう言えば、私の事もスクールの事も、知らなかったんだよね」 「うぅ、すみません・・・」 「謝らなくてもいいよ。・・・なら、今歌おうか?」 「・・・はい?」 「時間も時間だし、子守唄とか」 あぁ、そりゃいいアイディア・・・って、ダメでしょうが、それはっ!! 「それで僕が寝ちゃったら、どうするんですかっ!?」 「大丈夫だよ。私と一緒に寝て、一緒に護衛してもらえば・・・」 「どこが大丈夫っ!? そんなことしたら、今度こそエリスさん達に怒られますよっ! つーか、僕だっていちおう護衛なんですよっ!!」 「あ、それもそうだね」 そうでしょ? でも、まだツッコむ所がある。 「あと、一緒に寝るってなんですかっ!?」 「あ、私は大丈夫だよ?」 「僕が大丈夫じゃないですからっ!!」 そう言って、さらにクスクスとフィアッセさんが笑う。うぅ、素敵な笑顔だけど、ちょっと複雑・・・。 でも、フィアッセさんの子守唄か。・・・すごい豪華じゃない? それは。 「・・・恭文くん」 「はい」 「一つだけ約束」 ・・・なんだろ。フィアッセさん、急に目が真剣なものになったし。 「そのために、ここから居なくなるのは、絶対に無しだよ? 約束、してくれるかな」 「・・・はい、約束します」 「ならいいよ。・・・恭文くん」 「はい」 そして、フィアッセさんは僕を見ながら、微笑みを浮かべて・・・こう言った。 「私、歌うから。私自身のためにも。守ってくれる恭也にエリス達のためにも。そして・・・恭文くんのためにも。だから、ちゃんと聴いてね」 「楽しみにしてます」 「・・・ありがと」 ・・・それから少し経って、フィアッセさんは寝付いた。 それから1時間経つか経たないかで、交代の護衛・・・美由希さんが来たので、後をお願いして、その場を後にした。 ≪・・・やっぱり資質ありですか≫ 「いきなり何の話よ」 すっかり静まり返り、人の気配のない夜のホテルの廊下を歩きながら、僕に声をかけてきたのは、アルトだった。 ≪気にしないでください。ただ・・・≫ 「ただ?」 ≪フィアッセさんも、約束も、どちらも絶対に守りましょう。じゃなきゃ、あなたは地獄行きですよ≫ 「・・・もちろん」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・いよいよ明日ですね」 「そうだな」 時刻は午前0時少し前。夜の戸張はとうに落ち、空は真っ暗。僕は恭也さんと警備任務の最中。 ここ数日、フィアッセさんは色々なVIPな方々とコンサート関連でお話をしたり、会場でリハをしたりと忙しい日々を繰り返していた。 でも、それも明日で一応の終わりを迎える。・・・そう、明日はコンサート本番である。 「しかし、お前はすっかりフィアッセの付き人になってるな。フィアッセの横に居るのが、様になってきている」 「・・・言わないでください」 どこへ行くのも一緒だしね。おかげで、あらかたの雑用は覚えてしまいましたよ。 「だが、俺もエリスも感謝してる」 「・・・はい?」 僕、適当にしてるだけなんですが。感謝されるような事をしている覚えが・・・。 「フィアッセは、お前との会話で精神的にも大分落ち着けるようだ。エリスが感心していたくらいだぞ?」 「あはは・・・。なら、嬉しいです」 「・・・恭文」 「ほい?」 二人で辺りを警戒しながら、会場の周りを歩く。歩きながら、恭也さんが僕を見ずに言葉を続ける。 さっきまでの会話とは違う、どこか真剣な色を音に含めながら。 「今ならまだ、引き返せるぞ」 「・・・そのつもりはありません」 「下手をすれば、お前はまた背負う。それでもか?」 「それでもです。守りたいものも、壊したいものも、ここにありますから。退くことなんて、出来ません」 「・・・そうか」 それだけ言うと、恭也さんは黙った。 「そう言えば」 ・・・いや、黙らなかった。 「お前、フィアッセが・・・好き、なのか?」 「はいっ!?」 「いや、やたらと親しくなったようだしな」 「・・・違いますよ。なんつうか、フィアッセさんはフレンドリーですし、ついつい話してしまうだけです」 ・・・驚いた。端から見るとそう見えるんだ。 でも・・・やめられないよなぁ。フィアッセさんと話すの、楽しいし。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・忍お嬢様、このままでいいのですか?」 「うん・・・」 私とノエルは、コソッと車の中から覗き見中。対象は・・・恭也。ついでに、恭文君。 本当は声でもかけようかとか考えてたんだけど、やめにした。頑張ってるみたいだし、お仕事邪魔するのもアレだしね。 「・・・忍お嬢様」 「なに?」 「恭也様なら、大丈夫ですよ」 我がメイドは、やっぱりすごい。色々見抜かれているらしい。 「それはノエルの・・・勘?」 「いえ。・・・経験から来る、確証です」 「そっか。なら、安心だ」 さて、私の方は大丈夫。『最高のメイドさん』のお墨付きももらえたしね。 「・・・君は、どうする?」 「・・・・・・このまま、戻るです」 聞こえてきた声の発生源は、後部座席から。 そこに居るのは、空色の長い髪と瞳の女の子。 「リインさん、いいのですか?」 そう、はやてちゃんの家の末っ子であるリインちゃんも車の中に居る。せっかくだから、私が声をかけた。 恭文君のこと、心配にならないわけないしね。フェイトちゃんも考えたけど、止めにした。なんというか、揉めそうだし。 「大丈夫です。恭文さんも元気そうですし、充分です」 「リインちゃん、本当にいいの?」 「いいんです。・・・リイン、恭文さんは大丈夫だって思ってますから」 「それは、どうしてかな」 「うーん・・・」 そして、次にリインちゃんから飛び出た一言に、私もノエルも納得せざるをえなかった。 「経験からくる確証です♪」 「「・・・なるほど」」 ・・・恭文君。君、本当にリインちゃんは大事にしないとダメだよ? 私もノエルも、この子の今の笑顔を見て、心から思ったよ。これを粗末にしたら、地獄に落ちるね。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・そうして、やってきた。運命の日が。 で、開場された会場を・・・ダジャレじゃないよ? とにかく、恭也さんと美由希さんと一緒に練り歩く。 でも・・・ねぇ。 「・・・犯人に心当たりがある?」 「恭ちゃん、それ本当なの?」 「・・・あぁ」 警戒しながら恭也さんから出された話はそんなビックリな話題だった。 「やり口が似ているんだ。・・・アルバート・クリステラと、父さんが巻き込まれた爆破テロの犯人とな」 歩きながら、気付いた。美由希さんの表情が重くなったと。つか、士郎さんに、アルバート・クリステラ? クリステラって、まさか・・・。 「そうだ、フィアッセの父親だ」 ・・・なんでも、士郎さんはその昔に護衛の仕事中に瀕死の重傷を負ったそうだ。 で、その護衛対象が件のアルバート・クリステラ議員・・・フィアッセさんの父親だったらしい。 アルバートさんと士郎さんは昔からの親友同士で、その関係で護衛していたんだけど、そこを・・・だ。 「・・・で、とにかくですよ? 恭也さんの見立てでは、その時の犯人と今回の一件が同一人物と」 「正解だ」 またまた因縁めいてるね。父に続いて娘ですか。・・・って、関係ないか。 「僕達は、フィアッセさん達を守るだけですしね」 「その通りだ。あと・・・美由希、恭文、気付いているか?」 「・・・うん」 「僕でも気付くってどんだけですか。おかしいでしょ」 まー、アレですよ。こんな話をしながらも警戒していた甲斐はあったのです。 ・・・どうやって紛れ混んだかは知らないけど、よく見るとカタギには見えないのがいらっしゃるわけですよ。それも大量。 懐になんか固くて黒いの仕込んでたり、出してる空気が、これから素敵な歌姫達の歌を楽しもうって空気じゃなかったり・・・とかさ。 「美由希、お前はフィアッセに」 「分かった。恭ちゃん達は?」 「俺達は目ぼしいのを片付ける。・・・恭文、いけるな?」 「はい」 フィアッセさんは美由希さんにエリスさんが居るなら、大丈夫だ。 僕は僕で、しっかりやりましょ。恭也さんの指示を聞きつつね。 「分かった。恭ちゃん、恭文、気をつけてね」 「はい。・・・美由希さんも、気をつけてくださいね」 「・・・ありがと。フィアッセは私達に任せて」 「お願いします」 僕達はそれだけ言うと、逆方向に走り出した。 ・・・今度顔を合わせるのは、全部終わった時かな。 ≪マスター≫ 「うん。・・・いくよ、アルト」 ≪はい≫ こうして、時は来た。 互いの手札を見せあい、勝負を決する時が。 「・・・あれ?」 「どないしたん、フェイトちゃん」 「今、ヤスフミが・・・」 「あ、本当だ。というか、お兄ちゃんも居るっ!! あんなに慌てて・・・どうしたんだろ」 (幕間そのはちへ続く) あとがき 古鉄≪さて、結局また続きました。皆さん、幕間そのなな、いかがだったでしょうか? 私は古き鉄・アルトアイゼンです。そして・・・≫ アリサ「どうも、アリサ・バニングスです。・・・つかさ、アイツはフィアッセさんとどうしたいわけっ!?」 (燃える女、なんだか不満そう。・・・炎道だから?) アリサ「違うわよバカっ! アイツ、マジで落とそうとか考えてたわけじゃないでしょうねっ!?」 古鉄≪・・・それはないですけど、フェイトさんと膠着状態だった分、余計に出てたようです。天然ジゴロ分が≫ アリサ「アイツは・・・! とにかくよ、次回こそは決着?」 古鉄≪そうですね。OVAをもう一度見直しつつ書いていたら、予定より長くなりました≫ (見ていて、書きたいシーンが増えたのです) アリサ「忍さん達や、ナギとフィアッセさんの夜のシーンとかね。・・・これ、当然次回もあるわよね」 古鉄≪もちろんです。結構頑張る予定だそうですよ≫ アリサ「ということで・・・次回はいよいよ決着っ! 犯人と直接対決ねっ!!」 古鉄≪そうです。そして、フィアッセさんとマスターの運命は如何に? それでは、今日はここまでっ! お相手は古き鉄・アルトアイゼンと・・・≫ アリサ「アリサ・バニングスでしたっ! それじゃあ、また次回っ!!」 (二人、カメラに手を振りながらフェードアウト。 本日のED:リイン『小さな誓い アコースティックVer』) フィアッセ「・・・そう言えば、恭文くん」 恭文「はい」 フィアッセ「恭也のシスコンって、まだ治ってないの?」 恭文「・・・ないですね。僕は初対面で飛針を投げつけられました」 フィアッセ「やっぱりなんだ・・・」 恭文「・・・フィアッセさん、紅茶飲みません? 思い出すと、辛くなってきました」 フィアッセ「そうだね、次回まで一息入れようか。私淹れるよ」 恭文「あ、ありがとうございます」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |