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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ミッション01 『機動六課』



・・・この話は、まず2年前。新暦73年の10月から、話は始まる。





先日の復帰直後の余波もいい感じで収まってきた時、僕とアルトは、ある場所に来ていた。




















「・・・初めまして。聖王教会のカリム・グラシアです」

「こちらこそ初めまして。嘱託魔導師の蒼凪恭文です。こっちは・・・」

≪古き鉄、アルトアイゼンです。グラシア理事、よろしくお願いします≫





そう、ここはミッドのベルカ自治領にある聖王教会。

古代ベルカの英雄である『聖王』を信仰する宗教組織だ。



で、僕の目の前にいる金髪美人なおねーさんは、そこの理事さん。・・・で、あっているはず。





「はい、二人ともよろしくお願いしますね」





・・・うーん、素敵な笑顔だ。色々騙されてしまいそうだよ。



でも、騙されてはいけない。確認しなければいけないことがあるんだ。





「それで、さっそく質問なんですけど」

「はい?」

「・・・なんで僕とアルトを指名したんですか」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と古き鉄の戦い。


ミッション01 『機動六課』




















・・・数日前、クロノさんから聞かされた話はこうだ。





聖王教会のお偉方・・・カリムさんの護衛に付いて欲しいという、お仕事の依頼だった。





ただ、問題が一つ。





僕とアルトを、カリムさんが、直接指名してきたのだ。面識が無いのにも関わらず。




















「・・・まず、今回あなた達を指名したのは、ヒロリスからの推薦なの」

「ヒロさんのっ!?」



まてまて、なんでいきなり姉弟子の名前が出てくるっ!?



≪・・・クロスフォード財団関係ですか?≫

「正解よ」





あ、なるほど。あそこの財団は、確かここのスポンサーもしてるから。



分家の出のヒロさんも、当然関わりがあると・・・。





「まぁ、そういうのを抜きにしても、幼い頃から、妹のように可愛がってもらっていたの」



幼馴染みって感じだったのか。ヒロさん面倒見いいらしいし、納得した。



「それで、仕事の内容なんですけど・・・」

「内容は私の護衛です。数日後にある会議が開催されるの。・・・非公式にね」










・・・・・・・・その会議が非公式なのには理由がある。

近年、騒がれている陸の戦力強化・・・つまるところ、質量兵器の導入について、話し合うそうだ。





ただ、これには聖王教会としては、過去の事例を鑑みて、反対の姿勢を崩さないらしい。

このため、カリムさん・・・というより、聖王教会にたいして、ダーティな喧嘩の売り方をしてくるやつが出てくる可能性がある。





・・・だけならまだいい。何にしても、局の上層部の人間も、多数来る。

にも関わらず、会議が非公開なため、あまりに厳重な警備が出来ない。したら、パパラッチとかに勘繰られるらしい。





正直、そういうめんどいのは、通信とかで、パパっとやって欲しい。










『私もそう思う。だけど、残念ながらそういうわけにもいかないのが、世の中ってやつなんだよ』

「ヒロリスっ!!」

「また、突然ですね・・・」





僕の思考を読んだ上で、通信モニター越しに出て来たのは、頼れる友達、ヒロリス・クロスフォードだった。



つか、またいいタイミングで・・・。





『そこは狙ったのよ』



・・・いや、狙えないから。絶対無理だから。



『・・・で、私達も現場に行くから』





・・・仕事は? 僕、局長さんの愚痴酒に付き合わされるのは、嫌なんですけど。





『問題ない。局長も了承済みだよ。・・・つかさ、本家のやつや、パパンやママンが、こんな胡散臭い会議に出たくないって、私にサジ投げてきたんだよ。
お前ならミサイルが落ちてきても大丈夫だろ〜って』

≪それであなたが出席ですか≫

『そういうこと。私も嫌なんだけど、妹分の頼みもあったしね』

「・・・あなたもそうだけど、おじ様達も、相変わらずなのね」





ヒロさんの性格が家系だって言うのは、わかった。どんだけ強い人達の集まりですか、クロスフォード家。

つか、会議出席でサジを投げられるんかい。



とにかく、ヒロさんはスポンサー代理として、会議に出るわけか。納得した。

・・・でも、サリさんは?





『アイツは、変装した上で警備員その1って感じで、身元を隠した上で、さりげなく潜り込む。バレたらうるさいしね。つか、それっぽいでしょ?』

≪本人は、泣きますね≫



・・・だね。



『アンタもそうだけど? つか、警備員その2だよ』

「はいっ!?」

『それっぽいしね』

≪納得ですね。主役なのに影の薄い所とか≫

『でしょ? 影の薄い所とか』

「納得しないでっ! つーか、影薄いとか言うなっ!!」



・・・でも、それなら安心かな? ヒロさんサリさんが居て、アルトも一緒なら・・・。



≪大抵のことはなんとかなるでしょう≫

「そうだね。・・・カリムさん、この話、お引き受けします」

「・・・ありがとう。感謝します」





こうして、新しいミッションは決まった。ま、頑張るとしましょ。




















『・・・で、やっさん』

「はい?」

『ギンガちゃんは、どうよ?』

「あぁ、もう仕事は復帰して、元気にやってますよ」

≪・・・まぁ、色々と無理ですよ≫

『・・・みたいだね』

「いや、わけわからないから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして数日後。ここ、ミッドの郊外にある某こじんまりとした民間施設は、妙な緊張に包まれていた。





そりゃそうだ。非公式とは言え、局やら聖王教会やら、そのスポンサーやらが会議してるんだから。





なので、当然・・・。










「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」



あくびなど出て・・・まって?



「サリさん、緊張感無さすぎですよ」

「いや、だってさ・・・。今回のために、俺が何徹したと?」

≪・・・やっぱりですか≫





さて、僕はある人達と会場の警備中。で、今アクビをしたのは、ご存知長身痩躯の黒髪ザンバラ男。

なお、今回はオールバックでメガネ付けてます。つか、ガラ悪いです。



そう、僕の友達兼兄弟子の、サリエル・エグザである。





「サリエルさん、もう少し気を張ってください。・・・まぁ、ご苦労はわかりますが」



分かるんですね。



「あとで疲れのとれるハーブティーを淹れますので、頑張ってください」

「はい、お世話かけます。シスターシャッハ・・・」





そして、あと一人。紫髪のショートカットの女性。



シスター服に身を包んだこの女性は、シャッハ・ヌエラさん。カリムさんの付き人で、聖王教会のシスターさん。



そして、聖王教会の保有戦力である教会騎士で、陸戦AAAを保持する実力者だ。





「でも、順調でなによりですね」

「そうですね。会議は間違いなく順調じゃあないでしょうけど」





・・・確かになぁ。陸は戦力不足。だから、戦力が欲しい。だから、質量兵器・・・地球で言うところの銃器やミサイルの類を導入したい。



だけど、海・・・本局は、それが嫌だ。過去に、それが原因でいくつもの世界が消滅しているから。

そのおかげで、今の新暦になってから、基本的には厳重な審査をくぐり抜けた許可の下でしか、質量兵器は保有出来ないしね。

ただし、それはあくまでも拳銃とか、そんなレベルだ。バズーカやミサイルなんてもってのほか。



今回陸・・・ミッド地上の管理局が導入しようとしてるのは、そのバズーカやミサイルの類だ。そりゃあ揉める。



あと、そんな戦力強化をされて、これ以上発言力やらなんやらが強くなってもアレとか思ってるんでしょ。





「・・・だろうね。ぶっちゃけ、トップが凄まじく強硬だしね」

≪レジアス・ゲイズ中将ですか。確かにあの方はそうですね≫

「騎士カリムも、頭を痛めています。権力関係はともかく、過去の過ちを繰り返すことだけは、避けたいと・・・」





なるほど・・・。ぶっちゃけると、僕はこの話は賛成だったりする。まぁ、シャッハさんの前だから言わないけど。



とにかくだ。このまま





「あー、やっさん」

「なんですか?」

「よく似合ってるぞ」



・・・意味が分からない。



「その女性用の警備員服。あと、ロングのウィッグもだ。いや、スカートだから、もう女の子にしか見えな・・・ぐへぼっ!?」





サリさんがなんか吹っ飛んだけど、気にしてはいけない。

だって、僕の拳が入っただけだし。

・・・なんで・・・女装なんて・・・!

いや、アウトコース走るかもしれないから、バレないようにとは聞いてるけど・・・こんなのないよっ!!





「・・・神様、お願いします。一刻も早く終わって。こんな生き地獄、嫌なんです」










うん、それでこのまま何も起きないと・・・いいなぁ。




















≪主≫



その声は、サリさんの懐から。・・・まさかっ!!



「お客さんか」

≪正解です。すでに警備の人間が対処しているようです≫



なら、打ち合わせ通りだね。



「それではサリエルさん」

「こっちは任せてください。やっさん、気を付けていけよ」

「はいっ!!」



そして、僕とシャッハさんは



「あと」



駆け出そうとして、足を止めた。聞こえたのは、さっきとは違うサリさんの声。



「必要なら、躊躇うな」

「・・・はい」










それだけ答えると、僕は駆け出した。・・・そうだね、躊躇わない。絶対だ。

それが罪なら、背負ってやろうじゃないのさ。そして、ヘラヘラと楽しく生きてやる。傲慢にね。





「いきますよ」



走りながら懐から相棒を取り出す。



「はいっ! アルト、行くよっ!!」

≪了解しました。あと・・・≫

「言わないで」

≪その姿、似合ってますよ≫

「言わないでー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・打ち合わせはこうだ。





敵が来たら、やっさんとシスターシャッハで対処。というか、やっさんが対処。オールラウンダーで範囲攻撃持ちでもあるし。

で、俺は引き続き警備だ。外からの襲撃には、対処しない。



なぜなら・・・。





「出てきなよ」



・・・返事なしか。



「それならそれでいいさ。こっちは遠慮なく」



懐からあるものを取り出した。それは、十字の槍のペンダント。鈍く銀色に輝いている。



≪殺傷設定で撃ちます≫



声は、そのペンダントから。そして、その声に答えるように・・・影が現れた。

翡翠色の、ショートカットの女だ。ここの従業員の制服なんて着てるけど、違う。殺しのプロだ。うん、気配で分かる。



「よく分かったわね」

「鍛えてるんでね」



・・・響く鬼な方と同い年という事実は、忘れようと、思う。



「ま、そういうわけだから」

「どういうわけよ」





俺の手のひらのペンダントが、姿を変える。

十字の槍に。地球で言うところの宝蔵院槍と言えば分かるだろうか?

突く・薙ぐ・刈るの三拍子が揃った相棒。



その名は、インテリジェントデバイス・金剛。





「潰させてもらう」

「・・・ふふ、随分と積極的なのね」

「いい女には、目が無くてね」



女は、右の手に装着している爪の先を、俺に向ける。笑いながらだ。

・・・そのドSな笑みはやめてほしいね。昔の彼女を、思い出す。



「なら・・・楽しませてもらえるかしら」

「とーぜん」










俺も構える。そして・・・始まった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そうして、族が襲撃をかけてきたホールに着いた。なんか、分かり易すぎる気がするけど・・・まぁ、いいや。





出てきたのは、ホールの二階部分。そこから見えた族は多数。場を蹂躙しようと迫っている。つーか、こっちは圧されてる。



・・・打ち合わせ通りに決めないとアウトか。



右の手のひらに、カードが生まれる。数は、5枚。



「アルト」

≪連絡済みです≫





人命がかかっている以上、時間はかけられない。アイツら全員、一気に潰す。



左手のジガンから、カートリッジが3発消費される。そうして生まれるのは、凍れる息吹の砲弾。





≪Icicle Cannon≫

「ファイアっ!!」





近代戦闘の基本理念は、強力な攻撃を遠く、正確に飛ばし、即時鎮圧すること。なので、これ。



楽しそうに調子づきながら魔力弾をぶっぱなしてた連中に、これが反応出来るはずがない。

こっちは、発動スピードによる不意討ちが基本なのよっ!!



そうして、中心部に打ち込まれたキャノンが、その周りにいた奴等を飲み込む。



でも、これで終わらない。





「・・・いけっ!!」





僕は、カードを全て、族連中の真上に投げた。



そして、投げたカードを中心に、半径5メートルの絶対零度の氷山が、5つ生まれた。



全ての敵と、ホールの空気とアイシクルキャノンで撒き散らされた氷達を飲みこんだ上で・・・。





「・・・すごいですね」

「ま、雑魚に不意討ちですし」





マジックカードに入れていたのは、僕の十八番の氷結系魔法。

リインの使う魔法に、空気中の水分を操作・凍結させて、一定範囲を凍らせる魔法がある。それの効果範囲を強化した術だ。



まぁ、魔力消費が僕にとっては大きいから、こんなの乱発したらアウト。



・・・なんだけど、予めカードに入れておくなら別。こういう真似も出来るというわけ。





≪これで全滅のよう・・・では、ありませんね≫

「だね」





別のとこに第2波、来たみたいだし。連絡が入った。





「なら」

「いつも通り・・・ですね」

≪気を引き締めていきましょう≫










だね。





そして、僕とシャッハさんは、温度の下がったホールを駆け出した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



薄暗い通路で、銀の閃きが幾重も生まれる。





発生源は二つ。俺の槍と女の爪。しかし・・・やる。





俺は、金剛を突き立てる。だけど、それは空気を震わせただけ。





振り向く。居た。後ろに飛ぶ。

女が飛びかかる。煌めく爪の斬撃を、柄で受け止める。一度じゃない。何度もだ。

重い。だけど、魔力の反応は感じない。・・・元の身体能力でこれか?





着地した。女との距離は変わっていない。後ろにステップしながら、金剛の刃で、接近して、繰り出して来た女の爪をさばく。

それだけじゃない。俺も突く。払う。だけど、さばかれる。





・・・やっぱ、腕鈍ってるな。いや、コイツが強いのか。





そんなことを思いながら、踏み込んで突きを放つ。



だけど、女はそれを左に避けると、こちらへ踏み込もうとした。



だから、俺は槍を引く。女の方へと、振りながらだ。





金剛は十文字槍。こうするとどうなる?

簡単だ。横の刃が、女を刈り取ろうとする。



女は舌打ちしながら、大きく横に飛び、刃を避ける。そして、後ろに跳躍した。一瞬で、こちらの射程外だ。





・・・突こうとしたんだけど、読まれたか。



魔法使うのは、簡単だけど・・・野暮な感じがするね。





そして、俺達は再び対峙・・・あれ、構えを解いた?










「・・・一山いくらの連中って、ダメよね」

「・・・あぁ、同意見だわ」





つまり、やっさん達が襲撃してきた連中をノしたってわけか。



それを察知したってことは、あれは囮で、コイツが本命で間違いないね。しかし、また雑な手を・・・。







ま、コイツ以外のやつが居ても、会議に出席してるヒロが居る。問題ない。

・・・出席者だからアメイジアは持ち込め無かったけど、アレはそれでもなんとかする。





「残念だわ。もう少し遊びたかったのに」

「そりゃ嬉しいね。なら、プライベートで会わない?」

「また、こういう形で会えたらね。それじゃあ・・・」





女の姿が、どんどん闇に溶けていく。言葉も、遠くなっていく。





「また、会いましょう。サリエル・エグザ」





そして、女は存在の全てを、この場から消し去った。一応は、終幕か。



さて、金剛。





≪こちらは、名乗ってはいません≫

「だよな。そして、なにかある」

≪可能性は極めて高いと思われます≫










そう、なにかある。・・・管理局の上層部には、なにかね。





今回の会議は非公式かつ非公開。議題が議題だから、情報制限は半端じゃなくかかっている。にも関わらずこれだ。



俺としては、誰かがリークしたと考えるのが自然だと思う。にしちゃあ、やり口が本当に雑だけど。





で、誰かがリークしたかと仮定して、誰がそんな真似をと考えると、今回出席している局の関係者しか居ない。



聖王教会の騎士カリムや、スポンサーであるクロスフォード財団に、そんな事をする理由がない。





財団は、局の運営方針には、基本ノータッチだ。

戦うのは局員。だから、戦い方は局が決めればいいと言うのが理由。・・・ホントに自由だよ、あそこは。

そして聖王教会も、質量兵器どうこうのためにそこまでするとは、考えにくい。下手をすれば破滅だ。





しかし、ここ最近はおかしすぎるぞ。なんでこんなにゴタゴタしてくる。










≪もっと言うなら、あの・・・ガジェットと呼ばれる傀儡が出てきてからです≫

「あぁ。そこを境に、海と陸の関係が、さらに悪くなっている感じがする」





正直、俺はロートル。局の上が胡散臭いのなんて、この間のギンガちゃんの一件を挙げるまでもなく、いつものことだ。



ぶっちゃけ、どうなろうと知ったことじゃ・・・無いのになぁ。





「鉄は、引き合う・・・か」

≪主、どういたしますか?≫

「分かってるだろ」

≪・・・御意に≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・そうか』

「はい、申し訳ありませんでした」

『構わないさ。やることはやったんだ。スポンサーも納得するだろう』





・・・確かに・・・いや、さすがにこれはしないと思うんだけど、口には出さない。





「それと」

『どうだった』

「・・・ドクターのご推察の通りでした」





私がそう言うと、通信相手が笑う。満足げに笑う。

今回のミッションは、会議の襲撃に乗じての、質量兵器反対派の抹殺。



・・・まぁ、こちらは失敗しても構わなかった。少なくとも、私達にとっては。だからこその、あんな適当な作戦だ。



だって、私達が必要としていたのは、そんなものじゃないんだから。





『そうか、ならよかった。・・・くくく、やはり興味深いな』

「特に興味深いのは・・・」

『彼だな』





Fの遺産とタイプゼロ・ファーストの両名と、その出自を知った上で強い繋がりを持ち、かのヘイハチ・トウゴウと一番近いと思われるサンプル。



今回は交戦しなかったけど、この坊やも一筋縄では行きそうもないわね。



現に、この間は私達とは別口ではあったけど、行かなかったわけだし。





「ドクター、お望みであれば」

『いや、今はいい。我々にもやることがあるしな』

「・・・了解しました」










・・・サリエル・エグザ。





次に会う時は、いつかしら。まぁいいわ。その時が楽しみね。





その時は・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・こうして、無事に会議は終了した。





だけど・・・。










「ヒロさん。なんでそんなに不満顔なんですか」



帰りの車内の中。ヒロさんが不満顔だ。



「出番なかった。あれこれシュミレートしてたのに」

≪姉御、会議に出席してる人間に出番が有ったら、アウトだぜ?≫

「うっさい。わかってるよ」



・・・うん、アメイジアの言う通りだよ。出番が有ったらアウトだって。



「皆さん、本当にありがとうございました。恭文君とアルトアイゼンも、ありがとう」

「あー、いえいえ。無事に終わって何よりです」

≪今回は平和でしたしね。お説教もないし≫





そうだね。前回は、ひどかったからなぁ。いや、よかったよかった。





「やっさん」

「はい? なんすかサリさん」

「お前、こっちに引っ越してこい。で、仕事の量、少し減らしてもらうから」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?





「いきなりなんの話っ!?」

「お前にはこれから、俺とヒロとで稽古をつける。
で、そのためにも地球からっていうんじゃ効率悪いし、仕事ばっかされてても困る」

「いや、いきなり言われて僕が困ってるんですけどっ!!」





色んな要素が詰め込まれ過ぎててわけわからないしっ! どうなってんのこれっ!!





「あー、サリ。頼むから順立てて話して。やっさんだけじゃなくて、私もわけ分かんないし」

「・・・だな。ヒロ、今日の会議・・・どういう結果が出たんだ?」



え、なんでそこっ!?



「・・・カリム」

「私から言うわ。・・・質量兵器は引き続き検討となりました。
ですが、ミッド地上の戦力強化として、試作兵器の開発と導入が決定しました」

「原因は、地上の治安の悪さと戦力不足ですね。あと・・・」

「ガジェットだよ。そういうのが後押しになって、決定した」





どれもこれも、地上にとっては懸念事項だね。しかし、よくまぁ、今日一日でそこまで頑張れたね。





「あのヒゲが、やったらめったらと強硬だしね。本局の連中は苦い顔してたけど、普段が普段だもん」

≪反論出来る雰囲気じゃなかったってことか?≫

「そーだよ。ま、運用に関しては要徹底検討だけどね。これだけは、本局の連中や、カリムが納得させた」

「・・・やっぱりか」

「で、その話とやっさんが、どう繋がるのさ」



うん、そこが解らない。だって、僕は局のお偉方でもなんでもないし。



「今日のことで確信した。やっさんは、色んな意味でその波に巻き込まれ始めてる」

「はぁ? どういうことよそれ」

「・・・それって」



思い当たる節がある。そう、結構でかいのが。



「僕が、そのガジェットやらの対策のために奔走しているみんなと、繋がりがあるからですか?」

「正解だ」



ここ一年は子育てしてたけど、その前は、ガジェット捜査手伝ってたしなぁ。

うん、納得だ。



「やっさんが、その中で大事な人達の力になろうとするなら、自分を通そうとするなら、もっと強くなる必要がある。今のままじゃ足りないね。
・・・どうだ、やってみる気あるか?」

「あります」

≪即答ですか≫

「・・・俺もびっくりなんだけど」





だって、強くなれるならOKだし。・・・守りたいものは、変わってないから。



今という時間を。大事な人達を、守りたいから。





「あー、でも住む処はどうすれば?」

「それなら大丈夫だ。クロスフォード財団が利益ぶっちぎりで貸してくれるから」

「まてまてっ! あんた私の家にやっさんの住まいを提供させるつもりかいっ!!
つか、利益ぶっちぎりってどういうことっ!?」





・・・なるほど。その手があったか。





「ヒロさん、ありがとうございます」

≪感謝するほかありません≫

「アンタらも納得するなっ!!」

「ヒロリス、いいお家を提供しなきゃダメね」

「カリム、アンタもかっ!? ・・・やめて。そんな感謝の気持ちが詰まった瞳で、私を見るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・こうして、色んなものが決定した。





そして、それが爆発したのはこれから2年後。新暦75年に、はやてが新部隊・・・機動六課を立ち上げてからのことになる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「・・・よかった。つーか、爆発してたね」

≪感動しました・・・≫





・・・さて、新暦75年の4月。向こうは向こうでなんか始まった日。僕とアルトは、地球に来ていた。



理由は簡単。クライマックス刑○を見るためっ!!



だけど、僕達だけじゃない。





「私さ、ファイナルステージ見に行った時も思ったんだよ。凄いって。
でも、また改めて思った。やっぱり凄いよね。電王ってっ!!」



「・・・そうか? いつものノリってだけで、今回は正直イマイチじゃ」





そう、ヒロさんとサリさんです。まーそこはいい。





「なに言ってるんですかサリさんっ! いつものノリで、みんなにまた会えた事が素晴らしいんじゃないですかっ!!」

≪あなた、何を見てたんですか。
TVを飛び出したからというのを理由に、頑張り過ぎて失敗した作品が、どれだけあると? いつも通りだからこそ、素晴らしいんですよ≫

「そーだよっ! またいつも通りのモ○たん達に会えたっ!! 最終回の約束が果たされたっ!! これを喜ばずして、何を喜べとっ!?
サリ、アンタそんなんだから、5年ほど彼女無しなんだよ」

「お前ら人の意見は認めていこうぜマジでっ! そんなんだから(自主規制)はどーとかって言われるんだよっ!!
つか、彼女の話はやめてくれないかっ!?」





うーん、でも・・・それはちょこっと思った。





「なに、やっさんもダメだと思ったクチ?」

「いや、そうじゃないです。今回って、Vシネマとして作ってたのを、劇場公開じゃないですか」

「・・・なるほど。最初からそれ用で作られたのが見たいと。うん、それなら納得だよ」

「ジークとかも出てないしな。
こう、最後ならもっとドデカイ花火を揚げて欲しいってのは、当然の意見だろ」



そうです。なので・・・。



≪嘆願書でも書きますか? 署名を集めて、劇場第3段を作って欲しいと≫

「「「うんっ! やろうやろうっ!!」」」










・・・そして、この数ヶ月後。僕達にある一つの事件・・・いや、奇跡が舞い降りた。





そして、それが僕達四人を未だかつて無い最高のクライマックスへと導き、不可能を越える原動力になるとは、この時は誰も知らなかった。





そう、クライマックスは終わらない。続くのだ。僕達が望めば、どこまででも・・・。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、それはそれとして、そこから二ヶ月近くが経った。

世界は思いっきり平和。機動六課は、初出動があったりしたけど、僕は荒事もなく、暇。





まぁ、クロノさんに頼まれて、レリック関連で無限書庫に篭って調べものしてたくらいだね。あと、嘆願書集めたりとか。





で、今日はそういうこともなく、思いっきり暇。なので・・・!




















「やってきましたホテル・アグスタっ!!」

≪思いっきり飛びましたね。もう7話ってどういうことですか≫

「仕方ないでしょ。こういう時系列なんだから」





ここは、ミッドの郊外にあるホテル・アグスタ。辺りを山々と緑に囲まれた結構規模の大きいホテルだ。



僕がここに来た目的は二つ。



一つは、このホテルで現在開催されている時間無制限の豪華バイキングでの食事。



各世界での名物料理が多数出るそうだから、楽しみだったりする。・・・スターライト使ってから来ればよかったかな? いや、絶対怒られるけど。



で、もう一つは・・・。





「オークション、どんなのが出るんだろうね」

≪ユーノ先生の話では、面白いものばかりが目白押しということですが≫

「楽しみだね〜」





今日、ここでオークションが開かれるのだ。で、ユーノ先生からその話を聞いて、やってきたのである。



・・・そのオークションには、管理局印で市場取引が許されているロストロギアも、多数出品されるそうだ。



なので、コッソリ会場に紛れ込んで、それを拝ませてもらおうという魂胆である。



いや、楽しみだなぁ。そういうのって、四○元ポケットもどきとか、スライムもどきとか、面白いの多いしね〜。





「いいのがあれば・・・ゲットだぜ?」

≪金銭的なスーパーボールが必要ですよ≫





手持ちはノーマルボールだけだね。だめか。



ま、いいか。目の保養になるだけでも・・・。



なんて考えながら歩きつつ、曲がり角に差し掛かった瞬間、人影が飛び出してきた。



僕も、相手も、ビックリして足をとめる。





「あ、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ・・・」

「「え?」」





僕の思考が止まった。だって・・・えぇっ!?



肩出しの黒いドレスに半透明なストール。金色になびく腰より下まで伸びる艶やかな髪にルビー色の瞳。



・・・なんで?





「・・・フェイト?」

「・・・ヤスフミ?」

≪なにしてるんですか。あなた≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今回の六課のミッションは、ここ・・・ホテル・アグスタの警備。





私達が追っているガジェットには、レリックのみならず、ロストロギアを追跡する機能がある。

今回のオークションで出品される数々のロストロギアを狙って、ガジェットが出現する可能性がある。





そう読んだ本局の捜査部から、六課に出動依頼が来た。





私となのは、はやては・・・その、ちょっと恥ずかしいけど、ドレスアップして、会場の警備をすることになった。だけど・・・。





なんでヤスフミとアルトアイゼンが居るのっ!?








「・・・納得した」

「私も。でも、ビックリしたよ」



繰り返しになるけど、まさか、ヤスフミまで来ているなんて思わなかった。いや、さっき連絡したらみんなも驚いていたけど。



≪・・・なんのフラグでしょ≫

「楽しいことには、ならない感じがするんだよね」

「大丈夫だよ。みんなも居るし」



これだけ戦力があるわけだし、そうそう大変なことにはならない・・・はず。

うん、油断は禁物だね。



「・・・アルト、バイキングいつまでだっけ」

≪夜の9時までですね。途中休憩はありません≫



え?



「ヤスフミ?」

「ここで会ったのも縁ってやつでしょ。僕も手伝う」



・・・いいのかな。ヤスフミは完全なお休みだし、確かに外からの協力者ではあるけど、正式な六課メンバーというわけじゃないし。



「ドンパチされてる横で、ご飯なんて食べられないよ。いいから手伝わせて」

「・・・そうだね。それじゃあ、ヤスフミはこのまま私と中の警備をお願い。外は、シグナム達や新人のみんなが居るから」

「りょーかい」










・・・はやてにも許可を取った上で、二人で中を警備・・・散策する。

途中、雑談をしたりしながら。楽しく話しながら、警戒も忘れない。





なんだか、嬉しいな。





通信ではよくやりとりしているけど、こういうのは三ヶ月ぶりだから。元気そうでよかった。





このまま、何も起きないといいなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



このまま、何も起きないといいなぁ。




















「なんて考えてたでしょ?」

「はい、考えてました・・・」

≪見事にフラグを踏みましたね≫










・・・現在、フェイトの余計な思考のおかげで。










「私のせいなのっ!?」

「それがお約束ってやつでしょうがっ! 執務官なんだから、それくらいわかってっ!!」

「わからないよそんなのっ!!」










とにかく、ガジェットと外の警備メンバーが、ドンパチしている。状況は、劣勢。





最初は良かった。師匠とシグナムさんとザフィーラさんが、STGの雑魚よろしくどんどん倒していたから。

しかし、状況は一変した。・・・突然の乱入者。召喚師によって。





遠方で、強い召喚魔法の反応が観測された。

その後、どんな手を使ったのか、ガジェット達が、いきなり2レベルくらい上の動きに変わった。

師匠の射撃は避けるわ。シグナムさんの斬撃は受け止めるわ・・・。やりたい放題もいいところである。





そして、転送魔法を使って、そのハードレベルなガジェットを大量に、ホテル間近まで送ってきたのだ。





そのせいで苦戦中らしい。・・・さて、行きますか。










「うん、お願い。みんなの救援に」

「いかないよ」

「えっ!?」



当然だ。師匠が後ろに下がりはじめた。なら、補給戦力としては充分。

その上で僕が担当するのは・・・。



「がら空きのホテルの裏側・・・後ろだよ。念のために待機してる」

「・・・そうだね、悪いけどお願い。私もなのは達も、ここを動けないから」

「りょーかい」










振り返らずに、左手を振りながらそう答えて、僕は走り出す。さて、無駄足であって欲しいな。




















・・・駐車場に入る。最短距離で六課の交戦位置の裏に出れるのは、ここだ。










だから、薄暗く、少しひんやりとしたコンクリートの通路を、走る。










走る。










走る。










そして・・・前に飛ぶっ!!










感じたのは、右側面。僕の居た位置を、何かが通り過ぎる。いや、貫く。



前転しながら、足を止める。さっきまで居た位置を確認。そして、後ろに飛ぶ。










僕が居た位置を再び貫くのは、銀色の爪。それがコンクリートと穿つ。

それを生やしているのは・・・黒い巨体。










四つの瞳に紫のマフラー。なんというか・・・虫を思わせるフォルムだった。なんか、羽が生えてて、それっぽいし。

そいつは、左手にあるものを抱えていた。・・・まさか。










その思考は、最後まで到達出来なかった。

『敵』が、再び踏み込んで、右腕の爪を・・・僕に、突きつけてきたから。










・・・速い。こりゃ、避けられないな。










そして、衝撃が空気を震わせた。




















・・・見えたのは、驚きの表情。そりゃそうだ。










自分の爪が、真っ二つにされてるんだから。










避けられないなら・・・!










僕は先ほど一気に抜き放ったアルトの刃を返して、踏み込みつつ・・・上段から、一閃っ!!










斬るしか、無いでしょうがっ!!










その切っ先は、地面を抉った。そして、敵の左手を斬った。浅くだけど。

結構硬いね。つか、爪の手応えとおんなじだ。





後ろに飛び退きながら、敵は右手をかざす。手から生まれるのは、紫色の魔力。

それが数発、弾丸となって僕を襲う。だから・・・飛び込む。





空中に停止して撃ってきた敵に向かって。

弾丸? そんなもん、斬り払いながらだよ。





数発の弾丸を、飛びながらアルトを振るい、その刃で役目を終わらせていく。





敵を倒すという役割を、強制的につぶされた弾丸達は、全て爆発する。





突き抜けた。そう思った瞬間、敵が飛び込んできた。というか、蹴り。

避けられない。反撃・・・暇がない。





僕は、左手のジガンで、その蹴りを受け止める。

感じるのは、重い衝撃。腹に食らっていたら、吐いてたかも。

そして、そのまま蹴り飛ばされ、地面へと落とされる。





あー、くそ。結構やるなぁ。だけど・・・。





そのまま叩きつけられるような真似はしない。

体勢を飛行魔法と体重移動をあわせた受け身で、安全確実素早く着地。

そして、未だに止まぬ爆煙を突き破り、敵は来る。・・・なんか新しいの生えてるし。どういう仕組みですか。

だから飛び込み、一閃っ!!





・・・いや、空中で、爪と刃が、何度もぶつかり、交差した。




















・・・くそ。一発もらった。やっぱ速いわ。





左の上腕。骨までは行ってないけど、ちょっと深いな。ま、戦えないほどじゃないけど。





斬撃の交差の後、僕達は着地する。そして、再び対峙する。





ま、こっちはその分、深いの入れてやったけどね。





敵の右の腕の爪は・・・健在。しかし、その腕は動かない。だって、僕が深く斬ったし。

上腕の半分。内側の方から、血が流れ出している。うーん、真っ二つにするつもりだったのに・・・浅かった。

まぁ、そこはいいや。これで、追い詰めたし。





敵は、それでもなお左手にある荷物を離そうとしない。まるで、それが絶対に必要なものであるように抱えている。

放り出して左手を使う・・・そんな思考はないらしい。とは言えなぁ。魔力攻撃は怖くて出来ない。

あれが今回の本命なら、派手な攻撃なんてしたら、この場でドカンだ。





僕は、アルトを構える。魔力攻撃は出来ない。ちょっと面倒だけど、バインドで捕まえるか。

殺しても、胸くそ悪くなるのは決定だし、掴める情報は少なくなる。やるにしても、半殺し程度で・・・。










≪Protection Powered≫










それは、アルトの声。ジガンからカートリッジを1発消費した上で、生まれたのは、青い魔力の盾。





僕の左側面に生まれたそれは、何かを防いだ。1発じゃない。何発かだ。

これ・・・炎? まさか、援軍っ!?





そして次の瞬間、光がその場を支配した。




















「・・・アルト」

≪逃げられましたね≫



最後の1発は攻撃じゃない。ただの閃光弾。その光が止むと・・・虫っぽいやつの姿は消えていた。

アルトがカートリッジ使って防御したから、追撃を止めた?



「・・・アルト、ありがと」

≪構いませんよ。しかし、あれは・・・≫










うん、そうだね。あれは・・・一体、なんだったのさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・僕がドンパチやっている間に、全て終わっていた。もちろん、六課の勝ちである。、










まー、よかったよかった。これで万事解決・・・。




















「しないよっ!!」










やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁっ!!










「あぁ、動かないで・・・これでよしっと」

「・・・シャマルさん、ヤスフミはどうですか?」



そう呼ばれた女性は、僕から身体を離す。僕の左腕に巻かれた包帯に、みんなの視線が、集まる。



「大丈夫。傷は浅いから、もう塞がっているわ。今日一日は安静にしてれば、いつも通りよ」

「ほんまか。・・・恭文、よかったなぁ」

「うん。シャマルさん、ありがとうございます」



ここは、ホテルの医務室。先ほどの戦闘の傷の治療を受けていた。

ここには、僕だけじゃない。フェイトと、あと二人。



「ううん。でも・・・よかった。本当に無事で・・・!!」

≪・・・泣きますか≫



まず、シャマルさん。僕が負傷という話を聞いて、現場の後始末は抜きで、飛んで来てくれたのだ。

ただ、いきなり抱きつくのはやめてください。いや、お願いしますから。服が汚れますから。



「現地妻1号としては当然よっ!!」

「その呼称はやめてっ!!」

「というか・・・嬉しいわ」



はい? あの、どうしてそんなに顔を赤らめるんですか。



「だって、自分のことより、私の心配をしてくれるんですもの・・・」

「シャマルさんの心配はしていません。服の心配をしただけです」

「もう、照れなくていいのよ? 大丈夫。私はちゃんと分かっているから♪」

「違うからぁぁぁぁぁぁっ!!」



だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんだこの人っ!? なんでパワーアップしてるのさっ!!



「あの、ヤスフミ」

「応援しなくていいからっ!!」

「私、まだ何も言ってないよっ! というか、なんで分かったのっ!?」



やっぱりかいっ!!



≪・・・普通わかりますよ≫

「せやなぁ・・・。で、話を戻すけど」



そう、シャマルさんとフェイトともう一人。この方がいます。



「・・・で、その虫っぽいダークヒーローモドキは、ほんまになんか持ってなんやな」



あと一人は、はやてである。こっちも飛んで来てくれた。

・・・抱きついてきたシャマルさんを止めてくれなかったのは、恨んでいいと思う。



≪恐らくですが・・・レリックでしょう≫

「ガジェットが囮で、本命はそっち・・・だね」

「そこにたまたま運悪く、恭文が通りがかったいうわけか」





・・・うん、運悪くね。なんて引きだよ我ながら。





「つか、悪い。躊躇わずに首でも斬り落とせばよかった」





物が物だったとは言え、失敗だった。不覚も取ったしなぁ・・・。





「ヤスフミ、お願い」





・・・あれ、フェイトはまたなんで苦い顔してるのさ。





「そういうこと、言って欲しくない。というか、そんなこと、する必要ないよ。絶対に」

「・・・ごめん」





・・・やり辛い。うぅ、8年経ってもまだこれなんだ。





「まぁまぁ。どっちにしても、今後の捜査材料になるからなぁ。恭文、アルトアイゼン、感謝するわ」

「・・・あんまり嬉しくないのはどうして?」

≪気のせいですよ≫





そう思うことにした。うん、めんどくさいし。





「まぁとにかくや。恭文、お疲れさん。あとはうちらに任せてもらってかまわんよ」

「へ?」

「細かい検証や書類作りは、私とはやてでやっておくから、今日はもう休んで欲しいな」





・・・いいの? というか、当事者居なくちゃアウトじゃ。





「もちろん、その辺りはまた連絡取り合わなきゃいけないけどね。でも、アルトアイゼンの映像データもあるから、大丈夫だよ」

「つか、自分は今日はお休みな上にケガ人やで? ちったぁ養生せなあかんよ」

「・・・なら、そうする。フェイト、はやて、ありがと」










僕がそう言うと、二人とも笑顔で返事をしてくれた。





・・・なんか、いいなぁ。こういうの、ちょこっと久しぶりだから。










「つーわけで、シャマル。あとよろしくな」



え?



「はーい♪」

「シャマルさん、ヤスフミのこと、よろしくおねがいします」



えぇ?



「というわけで・・・私が責任を持って、家まで送るわね」










えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?





・・・うん、そうなった。そう・・・なちゃった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・結局この後、凄まじく楽しそうなシャマルさんとバイキングに行き、帰りがてらデートになりました。





うん、僕も楽しかったよ? いや、本当に。





だけど、問題が一つ。




















「・・・シャマルさん」

「なに?」



ローストビーフをつつきながら・・・聞いてみる。・・・ちょい考えてたことを。



「あのダークヒーローもどきのこと、ヒロさん達に相談したら・・・不味いですよね」

「・・・いいと思うの?」

「全く」







僕にも守秘義務ってあるしね。良くはないでしょ。



ただなぁ、さっそくこれでしょ? 六課でも解析作業はするだろうけど、それだけで足りるかどうか・・・。

僕、ワンマンアーミーだしね。つか、いきなりこんな関わりをするとは予想・・・すみませんしてました。





「そうね・・・。恭文くんだものね」



どーいう意味ですか。



「あ、それなら」

「それなら?」

「あくまでも、先輩魔導師のアドバイスが欲しい・・・なら、問題無いと思うわよ?」

≪・・・いいんですか?≫

「もちろん、映像や詳細データを渡すのはダメよ。あくまでもアドバイスに留めること」



僕は当然、そのシャマルさんの言葉に頷いた。うん、それでいこう。それなら波風立たないだろうし。



「でも、あまりお二人を巻き込んじゃダメよ? 最悪、六課に来たっていいんだから」

「・・・そうですね、危なくなったらそうします。素敵な主治医兼お姉さんも居ますし」

「・・・もう、そう言えばいいとか思ってるでしょ? でも、ありがとう。嬉しいわ」










・・・こんな感じで、舞台は始まった。実に平和だ。そして、この後に気付くのだ。





平和という言葉が、いかに危ういバランスで成り立っているかを。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・俺とヒロは仕事が終わったあと、一緒に居た。・・・そういうことじゃないぞ? つか、こいつとは弟子仲間ってだけだし。





原因は、やっさんだ。





先日、やっさんが運悪く遭遇した正体不明の敵。その対処法の検討を頼まれたからだ。

で、俺達は快くそれを引き受けた。





違法やらなんやらとは、言うことなかれ。シャマルさんからも、力になって欲しいと頼まれているしな。





・・・よし、その時のあの人の勢いは、忘れよう。完全にフラグ立ってる人だと思ったこともだ。





あと、全てが終わったあとに、なんで本命でアレが出来ないんだと二人で泣いて、やけ酒飲んだこともだ。





とにかく、ホテル・アグスタでの戦闘の検証としゃれこんでいるんだけど・・・。










「・・・また腕の立つ召喚師が付いてるな」

「・・・そうだね」





ガジェットの動きが良くなったのは、召喚技能だな。

小型の自立行動可能な何かを呼び出して、それを入り込ませたんだろ。また器用なことを。



で、やっさんが遭遇したのも・・・。





「召喚獣だな」

「・・・そうだね」





爆弾抱えてたせいでアルトアイゼンのみの戦闘を強いられたとはいえ、今のやっさんに手傷を負わせるか。

やっさんの動きだって、アルトアイゼンの話を聞く限り、悪くはない。それなのにこれだ。



あとは、乱入してきたKY。こっちは姿がわからなかったとは言え、火力は高いとみた。





「・・・これ、やっさん一人で相手はキツいだろ」

「・・・そうだね」





つか、アイツはドンだけ運がないんだっ!? ちょっと別行動しただけでこれなんて、おかしいだろっ!!



あぁ、俺達の危惧は正解だった。アレとかコレとかしてなかったら、胃に穴が空くとこだ。



・・・まぁいい。そこはいいさ。最悪、俺達が手伝う選択もあるしな。



問題は・・・。





「ヒロ」

「・・・そうだね」



うぉぉぉぉぉぉいっ!?



「お前、今の会話になってないだろっ! 一体どこに心置いてきてるんだよっ!!」

?」

「やっさんみたいなセリフを吐くなっ! ・・・つか、どうした」

「なんでも」

「ある。理由は、これだろ?」





俺は映像を指差す。ま、映像って言っても、やっさんが送ってきた文面だけの戦闘レポートだけどな。(それもかなり適当)





「・・・あー、分かった。ちゃんと説明するよ。私、この召喚師知ってるのよ」



・・・は?



「まてまて、知ってるってどういうことだよ」

「・・・教導隊に居た時に、出向で教えた女の子が居たのよ。で、これが同年代で面白い子でさ。友達になって、その後も付き合いの続いたの」

「・・・ヒロ、お前女友達居たんだな。てっきり男友達だけだと」



バキッ!!



「・・・で、その子のスキルとコレ。類似・・・てか、そのままなのよ。
ベルカ式ベースの召喚に魔力光の色。あと、従えてる召喚獣もね。あの子も虫タイプの子と契約してたから」

「な、なるほど・・・」



痛む人中を押さえつつ相づちを打つ。でも、納得した。やっさんが遭遇したのも、虫っぽいらしいし。



「・・・つまり、ヒロの見解としては、これはその子の仕業だと」



そう言った瞬間、ヒロが黙った。・・・え、なにっ!? このマジ地雷踏んだような空気はっ!!



「・・・わかんないのよ」

「はぁ? 分かんないってどういうことだよ」










そして俺は、次のヒロの一言に衝撃を受ける事になる。・・・これが俺達にとっての始まりだった。










「・・・あの子、8年前に死んでるのよ」










・・・そう、今やっさんとアルトアイゼンが立ち向かっている嵐は、二人や機動六課という部隊だけの問題じゃなかった。





俺達も、そこに関わるべき人間だったんだ




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夜、のんきにチキ○ラーメンの残り汁にご飯をぶちこんですすっていると・・・通信がかかった。





相手は、ヒロさんとサリさん。あ、もしかして解析結果が・・・。










『悪い、それはまだだ』



・・・こっちが許可していないのに、勝手に通信が開くのって、どうかと思う。あと、いきなり挨拶も無しで思考を読まないで。



『あー、つかやっさん』

「はい?」

『いきなりで悪いんだけど、頼みがある』




















「・・・いや、それは構わないですけど」



データ(かなり適当)は見せてるわけだしね。ただ・・・。



「なんで・・・召喚師の映像データが欲しいんですか」







ここで重要なのは、僕が二人に見せたではなく・・・『レリックの一件と関わりを持っていない二人が、事件の重要人物の情報を欲している』ということ。



まぁ、事情があるのは分かる。じゃなきゃ、僕には頼まないでしょ。・・・二人なら勝手に調べられそうだけど。





『俺達は基本ロートル。あんま派手に動きたくないんだよ。その点、お前は関係者だしな』

「・・・いや、分かりますよ? でも、それならそれで理由を教えてくださいよ」

『・・・やっさん』





その声は、今まで黙っていたヒロさんだった。というか、すごく真剣な顔で・・・。





『頼む、協力して』





画面の中で、ヒロさんが頭を下げた。それも・・・僕に対して。



・・・ヒロさんっ!?





「あなたなにやってるんですかっ!!」

『今、六課やらのデータを調べたりして、目をつけられるような危険は侵したくない。アンタ経由から入手するのが、一番波風が立たないんだ。
危ない橋だし、理由も言わずにやって欲しいなんて、勝手だと思う。でも・・・』

「・・・わかりました」

『え?』

「理由は、言えるようになったら教えてください。ただし、悪用しないでくださいね?」





それだけは切にお願いだから、約束して欲しい。いや、二人なら大丈夫だろうけど。





『あぁ。そこは俺が責任を持って・・・って、違法行動やるやつの台詞じゃないな』

「そうですね」

『なっ!? やっさんのクセに生意気なっ!!』

「どういう意味ですかそれっ!?」



『もちろんっ! 言葉通りの意味に決まってるだろうがっ!!』

「胸張って言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・いや、まぁ・・・あのヒロさんに頭下げられちゃ・・・ね。どーしようもないさ。





でも、一体何があった?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・で、ヒロ。これでやっさんはOKだが・・・さっき言ってたこと、間違いないんだな?」

「・・・うん、ないよ」



まさか、その友達がギンガちゃんのお母さんの一件で亡くなっている人とは。つか、パートナーだったらしい。



≪メガーヌ・アルピーノ女史でしたね≫

≪そうだ。いや、すっげーノリのいいねーちゃんでよ。プライベートで色々あったのに、無茶苦茶明るいんだわこれが≫





まさしく、ヒロの友達ってわけか。そりゃ気が合いそうだわ。で、その人が無くなった直後に、1歳の娘も消息不明と・・・。



こりゃ、ゼスト隊が潰れた一件、相当キナ臭いぞ。



遺族・・・例えば、ギンガちゃんやナカジマ三佐にも事故原因はおろか、任務内容も知らされていないって言うし。





「そう思ってね、私も調べたりしたんだけど・・・さっぱり」

「なんにも掴めないか」

「そうなのよ。・・・というか、ゲンヤさんも同じらしい」





ナカジマ三佐も? つまり・・・あの人、この一件について、あれこれ調べてんのか。



また危ない橋を。三佐権限持ってたって、こいつはキツいだろ。いや、奥さん絡んでるしな。仕方ないか。





「で、サッパリと」

「うん、悔しそうに言われたよ」

「・・・そうか」

「ただ、あの人は仕方ないんだよ。ギンガちゃんと、妹さんが居たから」





つまり、二人の子どもの子育ての合間に・・・だ。うん、そりゃ大変だ。

だって、やっさんの話だと、子育ては本当に大変で難しいらしいから。



・・・なお、なぜ俺の2分の1程度しか生きていないやっさんにそれが分かっているのかは、触れないでくれ。



俺はそこはサッパリなのにも関わらずだ。・・・アイツ、やっぱりおかしい。





「ま、万が一の時にはそうするってのが、奥さんとの約束でもあったそうだけどね。・・・でも、何にも掴めていないわけじゃない」

「というと?」


「アンタも知ってはいるとは思うけど、ゼスト隊は、戦闘機人についてかぎ回ってた」










クイントさんとメガーヌ・アルピーノの二人が属する部隊・・・ゼスト隊は、全滅するまで、戦闘機人の事件を追っていた。





暴走する試作機の鎮圧や、違法製造プラントの制圧などで、成果は出始めていたらしい。










「・・・そういや、ギンガちゃんと妹さんは」

「そーだよ。クイントさんが仕事中に保護した子達だしね。しかも・・・」



二人とも『ウィングロード』と呼ばれる先天性魔法を持っていたナカジマ三佐の奥さんの遺伝子から生み出された。もちろん、無許可で違法。



「で、今回のこれか。・・・つか、掴んだどころか、もうネタバレだろ」

「言わないでよ、それを」

≪なんにしても、絡んでいるというわけですね。メガーヌ女史のことや、ゼスト隊のこと≫

≪メガーヌのねーちゃんそっくりな正体不明の虫召喚師に、レリックやガジェット。これら全部に・・・≫










そう、奴が絡んでる。・・・ドクターなんてアホな名前で呼ばれて調子こいてる、あの陰険な顔した奴が。










「・・・サリ」

「一人で行かせないからな」

「え?」

「お前は前に出て、遠慮なく暴れて、戦ってろ。どーせそれしか能が無いんだ」



うん、何年の付き合いだと? もうやんなるくらい知ってるよ。



「だから・・・後ろのことは全部、俺がやる。それが俺の戦いだ。つか、今までだってそうしてきただろうが。なんにも変わんねぇよ」





フォワードとバックスは、一心同体。

信頼しあって、互いの領域でしっかりと仕事をするから、強くなれるし、どんな状況でも戦える。



ま、男女の関係どうこうより、俺達はこっちなんだよ。楽しめるしな。





「ま、お前の永久就職先が見つかるまでは俺が付き合わないと、お前のパパンやママンに、騎士カリムも安心できないしな」

「・・・ありがと」

「・・・おう」










・・・さて、やっさんの情報待ちってのも時間を無駄にしてるよな。やっぱここは、俺も動くか。











まずは、もう一回8年前の一件を洗い直すとするかな。




















(ミッション02へ続く)







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