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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory20 『ガンプラバトル』


暗い宇宙で幾つもの炎が生まれ、閃光が走り、命が撃ち抜かれていく。そんな中進んでいくのはペガサス級戦艦であるアルビオン。

ガンダム0083に出てくる戦艦で、一部では悲運とも……空気を読まない戦艦クルーとも言われていたりする。

とにかく昇降機に機体を載せ、折りたたみ式のカタパルトへ出る。既に戦況は不利で、簡単には覆せない。


だけどそこでこの機体だ。僕が作った、僕だけのガンダム。ストライクガンダムをベースにした専用機体。

両サイドアーマーは流線型のものとし、ストライクフリーダム的にビームサーベルを装備。

両肩アーマーや腕アーマーも形状変更。なお両肩アーマーは横に張り出し、サイドブースターを内蔵。


頭部のバルカン『イーゲルシュテルン』も二門から四門へ増設し、迎撃能力を高めている。

後はビームライフルが一丁……これは元のストライクが持ってたのそのままだけど、また後で改良するからいいんだ。

もちろんアンテナに頭部形状も新規で作り直し。そんなガンダムのコクピットで僕は、操縦かんを握り締め深呼吸。


『イオリ、いけるのか!』


そこで不安げな艦長が、通信を送ってくる。なので笑って。


「任せてくださいよ」


断言する。そうして僕は操縦かんを前へ倒す。


「イオリ・セイ――ビルドストライクガンダム、行きます!」


カタパルトを滑るようにして、ビルドストライクが射出――両足を伸ばし、背部のメインブースターを吹かせ飛んでいく。

そんな僕とビルドストライクに目をつけたのか、一小隊がこちらへ接近。距離は五百メートルほどか。


「ザクが来る」


先頭のザクをターゲットサイトに入れ、ライフルを構える。


「それでも、僕が作ったガンダムなら!」

『セイ、それでは駄目だ!』


そこで響いたのは父さんの声。顔は見えないけど……通信越しなのは分かってるのに、ついキョロキョロとしてしまう。


「この声、父さん!?」

『それでは駄目だ!』

「どうして!」

『お前が作ったガンプラは――腕がちゃんとはまっていない!』


右腕は素晴らしい音を立てながらすっぽ抜け、宇宙空間を漂う。あまりの事に硬直していると、前面モニターに赤いモノアイが現れる。

緑色のボディに左右非対称な肩アーマーは、見るだけで名前を連想させる。

そしてそのモビルスーツ――ザクは僕のビルドストライクへ銃口を向けた。


次の瞬間放たれる弾丸に恐怖し、僕は叫ぶ。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そうして背中に衝撃。思いっきり床に叩きつけられたと理解したのは、知っている天井を見上げてから。

痛みに呻きながら起き上がり、辺りを見る。左側にはベッド、目の前には作業用も兼ねた勉強机と窓。

右側にはガンダム関係の書籍……あれ、もしかしなくても今のって夢? ……そこでまさかと思い、慌てて立ち上がる。


机の上には長方形型の箱が置かれていて、その中には僕のガンプラ。

夢でも出てきたビルドストライクガンダム……右腕はないけど。あぁ、そうか。

作ってる途中で眠ったんだと思いだし、軽くため息。でも僕、夢の中までアレって。


早めに作らないと、本番でもやっちゃうって話なのかなぁ。そういう話かな、もしかしなくても。


「――セイー!」


そこで一階から母さんの声。確か今はお店で店番中……あ、うちは一回が模型店なんだ。


「店番手伝ってー!」

「あ、はーい!」


もう一度机の上をチェック。ガンプラ、工具は配置よし。刃物もあるし、こういうところはちゃんとしないと。

問題ないので椅子を立て直してから、一人だけの部屋を慌てて出ていく。季節は春……を通り越してゴールデンウィーク。

僕はまだ、世界を変えられずにいた。好きなのに、それだけじゃ変えられない事を抱えていた。





魔法少女リリカルなのはVivid・Remix

とある魔導師と彼女の鮮烈な日常

Memory20 『ガンプラバトル』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


前回のあらすじ――ようやく現代に戻ってきました。そうしたらなんか、また時間の異変が絡みそうで疲れました。


「今回の件が明確化した事で、ターミナルとして気になるところが出た。
やすっち、ちょうど十年前、地球で生まれた新しい遊びがあるだろ」


十年前……その遊びが時間運行に関わっている? 一体なんだろうと考えたけど、すぐに気づく。


「――ガンプラバトル!」

「それだ」

≪あなた、前に『粒子』を調べた事がありますよね。確かあれって≫

「うん!」


そうか、確かに……十年前なら一番に調べなくちゃいけないところだ。納得すると同時に予感がしていた。

ここからまた戦いが始まると。それも今までにない、新しい戦いが。


「しかし戻ってきた早々、またこれか……もぐ」

「そうだな、お前も平然と食事してるしよ」

「ショウタロス先輩、成長がありませんね」

「なんでオレが悪いって話になんだぁ!?」

「えっと、ガンプラバトルってなにかな」


そこでとんでもない事を言い出したのはフェイト。思わずぎょっとすると、ディアーチェが離してくれない双子達は。


「あ……う」

「うぅー」


とても悲しげに唸る。あぁ、残念そうな目で見てる。ガンプラバトルなんてまだ分からないだろうに。


「フェイトちゃん、さすがにそれはあり得ないよ!? 恭文君や私も話したよね! 実際バトルも見たよね!」

「そうだよー! アインハルトさんみたいにミッド暮らしならともかく、フェイトママは地球暮らしなのにー!」

「あの、ヴィヴィオさん……私もその、なんでしょうか。ガンプラバトルというのは」

「まずミッドでは流行ってないから、アインハルトさんが知らなくても大丈夫なんですよー」


ヴィヴィオ、そこで念押しって……まぁそうだけどさ。自分が世間知らずなのではって戸惑ってるっぽいし。


「地球だと世界大会も開かれるホビースポーツなんです。アインハルトさん、『機動戦士ガンダム』ってアニメは」

「一応、名前だけは。ロボットが出てくる作品ですよね」

「はい。そういうロボット――モビルスーツがある世界観で起きた、戦いを描くアニメなんです。
世界観そのものから違う作品とかもあって、シリーズブランドとしては三十年以上続いてます」

「それでね、プラモデルがバンダイという会社さんから出てるんだよ。ガンダムシリーズのプラモ――略してガンプラ。
ガンプラバトルはそのガンプラを実際に動かして、アニメさながらのバトルをする」

「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! し、知ってるよ!? うん、知ってる! 私知ってたから!」

「フェイト、今更遅い」


フェイトは胸に突き刺さったらしく、唸りながら机に突っ伏す。……やっぱりフェイトは天然だ。


「プラモを、動かす? それは魔法では」

「違うよ。プラフスキー粒子っていう、ガンプラのプラスチックのみに反応する粒子が十年前発見されたんだ」

「ちなみにあの事件が起きて、一月ちょいだよ。もうなのは達、大興奮でした」


だからこそフェイトがど忘れしてるってのは、更にあり得ないわけで……その時にあれこれ話もしてるのに。


「その粒子を流体的に操作する事で、ガンプラを意のままに操れる。
更にビームや爆発などのエフェクトも粒子で再現可能。
結果バトルシステムは急速に広まって、世界大会も毎年開催されている」

「なおミッドにきてない理由は簡単なんだ。プラフスキー粒子はPPSE社って会社の独占技術なの。
だからそれを使用するバトルシステムも、そこの内部工場でしか作られていない。
それどころか工場の場所すら極秘で……ミッドにほいほい輸入できるものじゃないの」

「PPSE社の方達が、次元世界について知っていなければ無理だと」

「そうそう」


だからこそミッド暮らし中心なアインハルトが知らなくても、それは不思議じゃないわけで。

……だからこそフェイトが忘れてるのは、やっぱりあり得ないわけで。去年も大会、一緒に見ていたはずなのに。


「ですが疑問です。なぜその……プラモを動かすものが、アミタさん達の時間移動や我々に絡むのですか」

「だよねー。話聞くだけだと、なんかちょー楽しそうだしー。ねーねーヤスフミー」

「さっきも言ったけど、プラフスキー粒子は開発経緯からトップシークレットなんだ。
一応PPSE社の創設メンバーとは聞いてるけど、そのトップも表に出ないから」

「ヤスフミの物質変換でも無理なのー? もっと言うと魔法技術」

「無理だった。ただ反粒子同士の結合によってできているのは分かるんだけど」


そこでシュテルとディアーチェがガタっと立ち上がる。少し遅れてアインハルトも続く。

なおフェイトはきょとんとしてる。あむも同じくだけど、中学生だからしょうがないかぁ。


「反粒子の、結合だと!」

「ヤスフミ、それは確かなのですか。しかもそれが世界的に、どこでもゲームとして遊べるとなると」

「あ、あの……どうしたのかな。その反粒子って凄いのかな」

「おい小僧、貴様の嫁が馬鹿だぞ! コイツ、本当にエースと呼ばれた魔導師か!」

「持ち上げられた末での話だからねぇ、実際のフェイトはこんな感じだよ」

「ひどいよー! ば、馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!? うんうん!」


フェイト、そこで僕に抱きつかなくていいの。涙目にならなくていいの、だって事実だもの。


「あの、フェイトさんじゃないけど、あたしにも教えてもらえると」

「あむちゃんー。……って、これはしょうがないかー」

「ボク達もさっぱりだしねぇ」

「お料理にも使えるんでしょうかぁ」

「というわけで恭文君、お願い」

「分かった。……まず粒子は世界を構築する基本構造。それらにはね、全て対になる反粒子が存在する。
粒子と反粒子をぶつけたら、対消滅という現象が起きて消えてしまう。ここまではいい?」


両手の人差し指を軽くぶつけながら、二人に確認。二人とも、粒子という概念があるのは理解できたようで頷く。


「対消滅は単純に消えるだけじゃなくて、質量がエネルギーに変換されるのよ。
このエネルギー変換効率は圧倒的でね。核エネルギーの百倍以上とされている」

「核の百倍!? それ凄いじゃん! できたらあの、電力問題とかも解決する……の?」

「するする」

「ただ問題が一つ。現在この世界には……もちろん私達がいるエルトリアにも、反粒子そのものがほとんど残っていません。
まぁもし反粒子がこの世界に存在する質量――粒子と同じ数だった場合、対消滅により宇宙全てが消え去るのですが」

「えぇー! ヤ、ヤスフミー!」


フェイトが僕の肩を掴み、ゆさゆさ……ちょっと待てい!


「フェイト、さすがにそれはあり得ないよ! なに、頭にスライムでも詰まってるの!?」

「わ、私はそんなガウリィみたいなのじゃないよー! だってだって、本当に知らないし」

「そんなわけないでしょうが! これ、次元航行艦のエンジンにも使われている理論なんだから!」

「えぇー!」

「恭文、それマジ!?」

「マジ。ただし」


二人が勘違いしないように念押し――右手人差し指をビシッと立てる。


「粒子自体を生成できているわけじゃない。魔力による相互反応を起こしてるのよ」

「ようはあれ? そういう理論を元にした『魔法』で、エネルギーを確保してる」

「現行型から導入されている、新システムだけどね。 僕達が過去で乗り込んだ、アースラはまた違うんだけど」


一見面倒そうだけど、さっきも言ったように対消滅のエネルギー効率は圧倒的。

ほぼ百パーセントと言っていいのよ。それに魔力自体は基本クリーンなエネルギーだしさ。

制御さえできれば、安全性も確保できるってわけ。決して二度手間とかではないのよ。


……だからこそプラフスキー粒子の凄さが際立つわけで。

現行艦の動力炉に使われている理論は、対消滅と比べた場合エネルギー効率で差をつけられている。

大体四割から五割くらい違うのよ。うん、次元世界でも完全な粒子生成と対消滅は生まれていないんだ。


「ヤスフミの話通りならプラフスキー粒子は、地球と次元世界、双方の技術を百年単位で超えている。
そしてPPSE社は、オーパーツ同然な粒子生産・操作技術を有しています。どれほど驚異的かはお分かりいただけたかと」

「あの、次元世界から持ち込まれたとかじゃないのかな。
だってほら、魔法でも似たような事はできるんだし、実は魔力とか」

「フェイトちゃん、それはないよ。なのはとはやてちゃん、それに恭文君で前に調べたんだから」


フェイトはまだ納得いかない様子でこっちを見てくるので、僕は揃って頷く。


「とにかくえっと、あれだよね。粒子同士が結びついて、対消滅に近い事が起こってる。
それでガンプラを動かしてる……なんか、これだけ考えるとめちゃくちゃもったいないような」

「でもあむちゃんー、核の百倍だから、安全ならこれでよくないかなー」

「暴走した時の影響も百倍かもだし。だって同じ量存在してたら、宇宙が消えるんだよ?」

「……そ、それは確かに」


ランとミキの言葉で、あむが頬を引きつらせる。……まぁ粒子操作・生成技術はそういう危険もあるからなぁ。

安全性も含めての百年超えなのは承知してほしい。僕やなのはも、そういう観点から黙っていたわけで。

もちろん宇宙が消えるような粒子量が、ぽんと生まれるわけじゃないけどさ。ほら、ほぼ同質量じゃないと駄目だし。


「まぁ今もなのはが言ったけど、粒子を調べた事があってさ」

「恭文君が主導でね。恭文君のブレイクハウト、こういう時にはとっても便利だから。
……そうしたら結果がこれで、とても驚いた記憶が」

≪まぁ次元世界の技術力も超えている超テクノロジーですからねぇ。安全なようですし、特に問題はないと思いまして≫

「それなのはさん達もなんだよね。局に報告とか」

「これに関してはしなかったよ。ほら、さっきあむさん達も言ってたよね。影響が怖いーって」

「だからフェイトさんも対消滅の事、知らなかったんだ」


過去の様子を見ているせいか、あむとキャンディーズはやたらと力強く納得。それでフェイトが涙目になる。

てーか僕、その超テクノロジーにはいろいろ触れてるからなぁ。ノエルさん達然り、イースターのあれこれ然り。

こういう事もあるだろうと自然と受け入れてたのよ。ガンプラバトルが楽しいってのもあるけどね。


「確かにそれは、ダーグさんが目をつけるのも無理ありません。しかもその、プラモを動かすためだけですよね。
対消滅によるエネルギー生成が事実なら、それは多分野にも応用できるのに……日奈森さん」

「アインハルト、お願い。そこであたしに振らないで。と、とりあえず凄いのは分かったよ。でも本当に危なくないのかな」

「俺が調べたところによると、事故が起きないようかなり調整されてるみたいだな。ただ……そうなると余りに高度過ぎる」


プラフスキー粒子自体には、毒性や危険性などはないのよ。そこはブレイクハウトで調べたから、間違いない。

なので警察権力や忍者権力でっていうのは無理。もちろん忍び込むのもアウト。内部情報がさっぱりだしさ。

どっかのロストロギアとかならまだ分かるけど、それにしても生成量も含めて安定しすぎている。


改めて考えると謎だらけな粒子……でもその謎を追うと考えると、ワクワクもしてくるわけで。


「なので駅長や飛燕からしても、『クサい』そうなんだよ。それがあの事件と同時期って時点で、もうなぁ」

「うーん、じゃあ……過去に戻ればいいじゃん。見つかった時の事を直接調べれば」

「駄目だ。チケットがあれば別だが」

「……そうだった。あたし達、わりと異変絡みで過去行ったりしてるけど」

≪デンライナーじゃあチケットがないと移動できないの。もちろん勝手に移動するのも駄目なの。オーナーに怒られるの≫


あぁ、ほぼ詰んでるわ。あむもそこをツツかれたら弱くて、つい黙ってしまう。とはいえ、なぁ。


「じゃああの、その粒子を作ってるところを見学させてもらえばいいんじゃないかな。お願いすれば」

「無理だよ、フェイトちゃん。さっきも言ったけど、PPSE社は工場の所在から秘密にしてるから」

「え、そうなの!?」

「駄目だー! 話聞いてなかったー!」


当然聞いても教えてくれるわけがない。そもそも工場の場所をどうやって突き止めたものか……あ、待って。


「一つ方法があるかも」

「やすっち、マジか!」

「マジです。お兄様はこういう時、ひらめくのが得意ですから」

「旦那様、どうするの? わたし達のせいかもだし、協力できるところは頑張るけど」

「……とか言いながらデバイス出すの、待ってもらえます?」


てーかシュテル達も同じって……おのれら殺る気出しすぎだから!

なんで楽しいプラモのバトルに、攻撃的なオーラを出せるの!? 理解に苦しむわ!


「あれか、お前が忍者になって……もぐ。調べると……もぐ」


ヒカリェ……喋る前にまず、食事をなんとかしてほしいんだけど。

てーかおのれが今手に持ってるせんべい、どっから持ってきた。いつもの事だけど。


「ヤスフミ、この馬鹿は気にしなくていいぜ。で、どうすんだ」

「こうする。……ダーグ」


そこで手首をスナップさせ、ダーグを指差す。


「おのれがガンプラバトル選手権に出場するのよ。そうして世界大会まで進む」

『はい!?』

「あ……それいいかも!」


おぉ、横馬が乗っかってきた。そういやおのれ、ホビー関係も大好きだったよね。基本凝り性だから。


「あのねあのね、世界大会ならレセプションとかもあるし、そこへPPSE社の創設メンバーもくるらしいの!
上手く探れば、誰がプラフスキー粒子を見つけたとか分かるんじゃないかな!」

「上手く探るって……ママ、具体的には」

「大会で活躍するんだよ! ヴィヴィオも知っている通り、ガンプラバトルは今や世界的興行に発展してる!
PPSE社は独自のワークスチームを作っているくらいだし、声をかけられたらもしかしたら!」

「更に言うと世界大会優勝者は、ガンプラ関係のCMなどにも出られたりする。
ようは広報活動にも多少絡めて、年単位の付き合いができるのよ」

「……確かにまともな手段となると、それしかないか。
工場を捜すのと同時進行にすれば……だが俺、こっちに住んでないしなぁ。
てーかガンプラもほとんど作った事がないんだけど」

「それならチームを組んだらどうかな」


そこでなのはがチラリと僕を見るので、なんだか嫌な予感がしてくる。まさか、コイツは……!


「ガンプラ作る人と操縦する人って感じで、分かれてる人も多いし。恭文君だったら」

「はぁ!? いや、僕は」

「空海君の事だったら、私達でしっかりフォローするよ」


考え読まれてるー! なのはは分かっていると言わんばかりに、腕組みして笑う。


「あの、すみません。どうしてそこで相馬さん達の事が」

「ガンプラバトル選手権の世界大会、IMCSと日程がかぶってるんだよ。
仮に恭文君が勝ち抜いたとしても、今まで出られなかった。
……空海君のセコンドしてたから。又は夏に狙った形でトラブル発生」

「な、なにを言ってるのよ。僕は」

「なぎひこ君とあむさんから聞いたよー? 恭文君、聖夜小の模型部に出入りする事が多いって」


なんか見抜かれてるー! てーかアイツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! そしてあむはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「あむぅ……!」

「だ、だってバトルシステムとか、楽しそうにやってたじゃん! 出たいのかなーって見てたら思うよ、マジで!」

「日奈森さん、それは私達も思っていました」

「コイツ、夢中になってたからなぁ……もぐ」

「だからお前は食べるのをやめろよ!」


そして僕のしゅごキャラ達も余計な事を……やめてー! なんか恥ずかしいのー!


「ヤスフミ、そうなの? うちではプラモとか作ってなかったけど」

「フェイトママ、しょうがないよー。ほら、塗料とか接着剤も使うしー」


ヴィヴィオからツッコまれて、フェイトがハッとする。それから僕の顔をのぞき込んできた。


「ヤスフミ」

「……IMCS、出られなくなったでしょ?」

「うん」

「でもガンプラバトルならなんとかなるし、やってみたいなとは……だって世界一だよ!」


ついガッツポーズで力説してしまう。みんなが目を丸くするのは気にせず、更に力を入れる。


「世界一強いガンプラを作って、戦ってそれが本当だって証明する! 燃えるじゃない!」

「でも空海さん達の事もあるし、今まではこっそりやるレベルだったとー」


ヴィヴィオにツッコまれてハッとして、取り直すようにせき払い。

……笑うなぁぁぁぁぁぁぁ! お前ら笑うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「もう、それならどうして話してくれなかったのかな。というか、それはヤスフミの新しい夢なんだよね。だったら」

「別に夢を偽ってたとかじゃないから。ちょっと疑問にぶち当たってて」

「疑問?」

「後で話す。……なのでその答えを出すためにも、今年はチャレンジしてもいいかもね」


両手に腰を当て言い切ってから、なのはにお願い。


「みんな、悪いけど」

「大丈夫だよ。みんなしっかりしてきてるしね」

「恭文、あたしも大丈夫だから。ていうか」


そこであむはルティをぬいぐるみ状態でセットアップ。ルティは僕の頭に乗って、全身ですりすりしてくる。

それだけじゃなくて、しゅごキャラーズも揃って僕の前に並ぶ。そうして笑顔で頷いてきた。


「ルティやラン達も、頑張れってさ」

「ありがと。なら……目指してみるか! 世界一!」

≪まぁ最強は私ですけどね≫

≪なのなのー♪≫

「「きゃっきゃー!」」

「やすっち、助かるぞ! 俺も手伝えるところは手伝うので、よろしく頼む!」


ダーグとしっかり握手した上で、出場決定――裏の目的はあるけど、世界一を目指す事になりました。


「よし、サポートなら奥さんな私が」

「へいとは駄目ー! ドジだから!」

「そんなー! ヤスフミー!」

「それでやすっち、ガンプラはどうする」

「元々作っていたものがあるから、それを再調整する。でもその前に大会へエントリーしないと」

「無視しないでー!」


フェイト、僕を掴んで揺らさないで。あのね、否定できないでしょ。フェイトのドジは否定できないでしょ。


「妥当な判断だと思われます。では……王」

「ふん、仕方あるまい。我らのせいでそのプラフスキーなんちゃらが出たかもしれんのだしな」

「ディアーチェ、アンタどうして粒子をなんちゃらって言っちゃったの。あとちょっとじゃん」

「そのガンプラバトルとやら、我らも参戦しようではないか!」

『はぁ!?』


な、なんかとんでもない決意してる! やばい、全員やるつもりだー!


「それに勝ったら世界一なんだよね! だったらボクもやりたいやりたいー!」

「わ、私も頑張ります! みなさんにはご迷惑をおかけしましたし、罪滅ぼしになるのなら!」

「ダーグ、任せた」

「俺に任せられても困るぞ! てーかどうやってエントリーす……ちなみに今年の大会、参加締め切りは」

「一週間後」


ハンパに開いているため、みんなが『なんとかなるのでは』と希望を持つ。ほんと、どうしようか。

とりあえず大会のシステムとか、そっちを説明した上で? じゃないと駄目だよね、これ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


その日の夜――恭文は大会エントリーとガンプラ・道具調達のため一旦地球へ戻った。

レヴィ達もエルトリアへ……すっごい気軽に行き来してるのは驚き。

とにかく博士に話をして、滞在できるよう準備するって言ってた。あの様子だと、アミタやキリエは無理っぽいなぁ。


博士の寿命もあるし……あれ、でも出ていって、すぐ戻ってきたーとかならOKじゃない? 今回みたいに。

そして午後九時――恭文はようやく戻ってきた。しかもやったら荷物いっぱい。


「ただいまー!」

『おかえりー!』


みんなに出迎えられ、恭文は荷物をテーブルに置いて突っ伏す。


「疲れたー」

「お疲れ様。でも恭文くん、大丈夫なの? 締め切りはともかく、ガンプラが」

「元々作っていたものがありますし、それを元に調整です。……でも時間はないから急がないと。というわけで」

「ん、大丈夫だよ。私の作業場を使ってもらっていいし」

「ありがと、ルー」


恭文はパッと顔を起こし、メガーヌさんが出してきたお茶を受け取る。それをぐいっと飲み、ホッと一息。


「そういや男連中とりま達は」

「今日の模擬戦が堪えたみたいで、みんなでのんびりお風呂よー。私達ももうすぐって感じ。
……あ、空海くんとりまちゃんは問題ないわよ。むしろダブルベルトを狙おうって息巻いてたから」

「そりゃあよかった。後でゴウラス達とも話しないとなぁ。メンテの問題も絡むし……分身の術、覚えといてよかった」

「アンタ、あれ使うつもりなの!? 作業に!」


どんだけ無駄使いしてるのかな、忍術! しかも目がわりとマジだし! そんな恭文へ、メガーヌさんがアイリ達を連れてくる。

恭文は二人を器用に抱き締め、伸びる手を優しく受け止めた。その表情がまた幸せそうだよ。


「ヤスフミ、急がないと間に合わないの? あの、だったら私も手伝うよ」


フェイトさんがそこでガッツポーズ……それははやめて。

フェイトさん、それやると大体失敗するじゃん。フラグだって自覚を持って。


「ただの素組みじゃあさすがに勝ち抜けないよ。うちの地区だと、世界大会の常連も出るし」

「マジですか!」

「あの、だから私も手伝うよ。よく分からないけど、パーツをはめ込めばいいんだよね」

「よく分かってないのに手伝ったら駄目だよ!? ……この子だよ」


恭文が空間モニターを展開。そこに映るのは……あれ、青髪のスレンダー女性?

でもこの人、すっごく見覚えがあるんだけど。確かほら、ちょっと前までテレビとか出てたし。


「……恭文、この人って如月千早さんじゃ。765プロオールスターズの一人」

「うん」

「細い子ねー。というか、有名な子なの?」

「超実力派なアイドル歌手だったんです。一年ほど前に歌手活動自体は引退してるんですけど。
……ただ歌手活動をしている最中、たまたまやる事になったガンプラ作りにハマって。自分でもバトルするようになった結果」

「世界大会の常連と」

「正直僕も驚きましたよ。千早がハマるタイプなのは知ってましたけど」


確かに……ややとかも連日話してた時があるもの。ガチで作ってるらしいし、言うならガンプラアイドルだよ。

でも歌手活動は引退しているだけで、ガンプラは作ってるって事なのか。

そう言えば模型誌の仕事もきてるとかって聞いた事が……これが手に職って事なんだね。あれ、でも待って。


「恭文君、どうしてこの子を呼び捨てなの?」

「……あー、言ってなかったね。僕、千早及び765プロ所属のアイドル達とは親しいのよ」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

「あの、本当なの。ヤスフミ、ヴェートルの件が片付いてから一か月だけプロデューサーをしたらしくて」


マジですか! てーかコイツがプロデューサー!? そ、想像できない……! メカニックだけでも意外なのに!


「あの、それじゃあ私も奥さんとして」

「フェイト、フェイトはただ応援してくれるだけでいいの。ガッツポーズしちゃったんだから」

「どういう事ー!?」

「「うー」」


ほら、アイリ達も不安げに手を振ってる。でもフェイトさんは納得してくれず、涙目で首をふりふり。


「そんなー! だ、大丈夫だよ! プラモって組み合わせればいいんだよね! それくらいならできるよ!」

「そう、だったら」


恭文はため息を吐いて、袋の中からガンダムを出した。……どのガンダムとかは、あたしにはよく分からない。

だってほら、ガンダムってたくさん種類あるじゃん。名前知ってるような感じだしさ。


「これを明日までに作ってみようか。FG(ファーストグレード)の初代ガンダムだよ」

「ふぁすと……え?」

「色分けとかもされてない、最初に出たガンプラとほぼ同じ構成なんだ。いいキットだよ」

「よく分からないけど、これが作れれば手伝わせてくれるんだよね。うん、私頑張るよ」


そこでフェイトさんは力いっぱいガッツポーズ。……これで二回目。絶対に失敗するな。


「……うぅー」

「あうー」

「おー、よしよし。アイリ、恭介も心配ないよ。その不安は的中する」

「「あう!?」」

「わ、私が駄目な子みたいに言わないでー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ガンプラ作り……というかプラモ作り? その基本は説明書をよく読んで、組み立てる事にある。

ここは改造するにしても同じ。まず組み立てて、全体のフォルムを出すのよ。そうじゃないと改造点が見えてこない。

なのではめ込む穴や棒などを、短めに切り飛ばすなどして外しやすく処置。……まぁなにが言いたいかと言うと。


「あ、あれ……なにこれー! 足の位置がおかしいー!」


フェイトはやっぱりドジだったって話だよ。フェイトのFGガンダムは、どういうわけか肘から先が足になった。


「いや、おかしいっていうか、そこ腕がつくとこじゃん! なんで基本的なとこ間違えるの!?」

「だ、大丈夫。外せば……あれ、外れない! なんで、どうしてー!」

「なぁヤスフミ、あれなんでだ? お前は組む時、外す事も多いだろ」


ショウタロス先輩はそんなフェイトが疑問らしく、首を傾げっぱなし。


「仮組み用の処置、してないからだよ。ピンをカットしたりさ」

「……あー、そういえばやってたな。あれ、外しやすくするためなのか」

「そうそう」


騒がしいフェイトには構わず、分身も活用して再調整は完了。X字型スラスターを見て、ついニコニコしてしまう。

これはクロスボーン・ガンダムX0。またの名をゴーストとも呼ぶ。

頭と胸元には海賊マークのレリーフが刻まれ、全体的にがっしりとしたボディライン……やっぱいいなぁ。


なお調整はバトルで消耗している関節部のフォロー、及び塗装のリペイントが中心。

最後は特製のABC――アンチビームコーティングマントを羽織らせ、一応完成です。


「お父さん、それクロスボーン・ガンダムだよね」

「そうだよー」

「でも色や武器が」


ルーが見ているのは、クロスボーン・ガンダムの両手に持っている上下二連装のライフル。


「あれ、本貸してなかったっけ。これは続編の『クロスボーン・ガンダムゴースト』に出てくる、四体目のクロスボーンだよ」

「……鋼鉄の七人からどう続いたの」

「ザンスカール戦争時代で、無印時に事故で漂流したクロスボーンが見つかってさ。それがこれよ」

「蛇足じゃ」

「ルー、よく知ってるね。どういうわけか蛇の足って組織が出てるんだよ」

「ネタにしてる?」


漫画で見て、最近作ったんだよねー、これ。なお元はHGUCクロスボーンガンダムX1。

機動戦士クロスボーン・ガンダムという漫画作品に出てくる、外惑星対応型モビルスーツ。

背部のX型フレキシブルスラスターが特徴で、角ばったボディラインは丸みも感じさせ、それがまた気持ちを高ぶらせる。


武装は両手に装備した、上下二連装ライフル『バタフライバスター』。ただしこれ、中折れしてビームサーベルにもなる。

バタフライナイフがモチーフっぽいのよ。あとはお決まりな頭部バルカンと、両肩根本にはビームガン。

でもビームガンは砲身を取り出し、サーベルとしても使える優れもの。よくお世話になります。


フロントスカートはシザーアンカーを装備し、リアスカートにはスクリューウィップも再現。

両太ももにはヒートダガーも装備……ここもHGUCだと、内蔵機構がオミットされてたんだけどねぇ。

でも僕、こういうのが得意なキャラだから。きっちり強度確保もした上で再現しました。


「でも恭文くん、これでも世界大会は足りないのよね」


そこでメガーヌさんが後ろからくっつき……あの、胸が。言っても駄目なんですね、分かります。


「私から見てもよーくできてる感じだけど……出るまでがやっぱり大変?」

「大変ですけど、世界大会までの道のりはわりと短いんですよ」


そんなメガーヌさんから軽く離れ、さっとモニター展開。選手権の公式HPを開いて、大会スケジュールを表示。


「まずは各国で地区ごとに分かれて、国の代表を決めます。その地区予選は一週間に一回ずつ試合。
トーナメント形式なんですけど、全六戦――勝ち抜けば世界大会です」

「割りと短いのね。そういうのってもっと手間がかかるんじゃ」

「問題は夏休みの世界大会ですね。まず定められた競技数種で、ポイントレースを行います。
最終的にポイントの多い選手が決勝戦のトーナメントへ進み、あとは……戦って勝てばいい」

「ふーん、そこでふるい落としと。でも面白そう」


そこでメガーヌさんがまたくっついてくる。だ、だからあの……なんで!? 僕、お断りは入れたはずなのにー!


「ヤスフミー!」


頭を抱えたくなっていると、フェイトがキメラ状態なガンダムを……あれ、左腕の肘関節が砕けてる。


「ど、どうしよう! 壊れちゃったよ! なんでー!?」

「フェイトさんが力入れるから、折れちゃっただけじゃん! 悪いのフェイトさんじゃん!」

「だ、だって外れなくてー!」


これは明日までというの、どう考えても無理そうだねぇ。

まぁこういう事もあろうかと予備は十個ほど買ってるし、それでなんとかなるでしょ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なるわけがありませんでした。フェイトの馬鹿……十個ともスクラップにしてくれたよ!

さすがにもったいないから物質変換で直したよ! というわけで翌日――しょうがないので早起きして、フェイトに作り方を伝授。

と言っても基本的なところ。説明書をよく読み、そのとおりにはめ合わせるだけ。それがなぜ十個壊すまでできなかったのか。


というわけで朝食の場――新鮮な野菜でのサラダや、目玉焼きにトーストというシンプルなもの。

だけどそのシンプルさも素材を引き立てるエッセンス。ここは食に関して困る理由が見つからない。ただ。


「ほら、どうかな。私、初めてプラモを作ったけど、よくできてると思うんだ」

「そ、そうですね。でもあの、フェイトさん……もう十回目」

「なぎさん、ちょっと」


フェイトが嬉しさの余り、みんなに絡んでいました。なお現在はエリキャロ……でも困惑してるなぁ。

キャロが手招きする理由もよく分かる。色も塗っているわけじゃないし、合わせ目を消しているわけじゃない。

ただ自分の力で作ったものだから、嬉しくなるのもよく分かるよ。最初はここからだし、あれこれ言うつもりもない。


「なによ。僕はなにも答えられないよ? 最初は誰でもこういうものだとしか」

「さすがにみんなに十回近くはおかしいと思うんだけど! ていうか、これ真っ白だよ!?」

「あ、それは僕も気になってたんだ。プラモってほら、色がついてて」

「それは多色成形で作られたものじゃないしね。……最初に出た、ガンダムのプラモはそのフォーマットだったんだ」


FGはそのフォーマットを再現したものだからなぁ。まぁエリキャロだけじゃなく、唯世達が驚くのもよく分かる。


「当時の人達はそこから合わせ目を消し、自分なりの形を求めて工作し、色を塗った。それがスタートなんだよ」

「そうなんだ。じゃあなぎさん、フェイトさんのこれはそこをツツけば止まるかな」

「止まるだろうけど、その場合キャロはとてつもないひとでなしになるよ」

「どうしてー!?」


どうしてもなにも、そういうものだから諦めてほしい。僕はトーストをシオン達と一緒に食べ、そのままニコニコ。

ちなみにガンプラだと多色成形が基本だけど、戦車や飛行機などのスケールモデルはそうじゃなかったりする。

そういうキットも増えているけど、基本は単色成形。色塗りや接着が前提だったりするわけで。


しかもデフォ。そこからガンプラの特異性は理解してもらえると思う。


「でも蒼凪君、また急に大会出場って……いや、事情は聞いてるけど」

「ヴィヴィオもIMCSに日程かぶってなかったら、応援に行くのになー」

「それは世界大会に出られた時言ってよ。日程かぶるのそこなんだから」


実はガンプラバトル選手権・予選が終わってから、すぐIMCSの予選が開始されるコース。

なので本当に世界大会だけ……まぁそこまで行けるかどうかが難関だけどさー。


「あの、ヴィヴィオさん」


そこでアインハルトが挙手し、隣のヴィヴィオを……隣にいるなら挙手はいらないからね?

いや、やりたくなる気持ちは分かるけどさ。フェイト、今度はコロナ達に絡み出したし。


「なんですか、アインハルトさんー。あ、ガンプラバトルに興味があるとかー」

「いえ、そうではなく……IMCS、延期になったそうですが」

『……えぇ!』


ついヴィヴィオやみんなと一緒に声を上げる。またどうして……あ、公式HPに発表があったとか?

……そう考えて少し違和感が。アインハルトがなぜ、そんなのを見ていたか、だけどさ。


「今朝、IMCSの公式HPを見ていたら……今年は試験的に十月頃大会をするとか」

「またどうしてー!」

「さぁ、そこは私にもよく……会場の問題が絡んでいるようですが」

「でもヴィヴィオ、それなら恭文さんの応援行けるじゃん」


そこでリオがとんでもない事を言い出した。いや、応援が嫌とかじゃないのよ。

……僕が世界大会、勝ち残るってのが前提になっているのよ! それはやめてよ! まだ確定してないのに!

しかもコロナも頷き、ヴィヴィオも『そっかー』という感じでこっちを見てくる。


いや……だから視線でプレッシャーかけるのはやめて!? 僕はまだなにもしてないの! エントリーしただけなの!


「じゃあみんなで応援に行かなきゃねー」

「はいー♪」

「おい豆芝! おのれ相変わらず空気読めないね! あのね、世界大会に勝ち残らないと駄目なの! 日程かぶるのそこなの!」

「ティアー! 恭文がひどいよー!」

「まぁまぁ。スバルが空気読めないのはともかく」


ティアナが半笑いで辛辣な事を言うと、スバルがテーブルに突っ伏し吐血。それでノーヴェが軽くため息。


「みんなそれくらい応援してるのよ。アイリ達の事はあったけど、ここ一年アンタは大人しかったし。……二割くらい」

「こら待て、最後になにを付け足した」

「ランスターさん、×たま狩りに関しては変わらずです。なにせ、蒼凪さんは運が悪く……!」


海里も涙ぐまないでよ! 僕がなにしたっていうの!? 僕はただ普通に生きているだけだよ!


「でもアンタ、例の子達とチーム組む感じ?」

「まぁ同じ予選に何人も出たところで、同士討ちになりそうだしねぇ」

≪とはいえ一応目的がありますし、三チームくらいに分かれるんじゃないんですか?
あなた一人に任せて負けたら、来年まで待たなきゃいけなくなりますし≫

「そこもまたダーグが来たら決めないとねぇ。……そういえばアインハルト」


ヨーグルトドリンクを飲み干し、気になるところをツツいてみる。

ティアナもなにか引っかかっていたらしく、そういえばと笑っていた。


「なんでまたIMCSのHPを見てたの?」

「え、えっと……それは」

「昨日の模擬戦で勉強した事の復習かしら。それとも」

「……あー! もしかしてアインハルトさん、IMCSに出たいんですかー!?」


そこで全員が一気にざわめく。それでアインハルトはやや困りながら、小さく頷いた。


「昨日、とても貴重な体験をさせてもらって……考えたんです。
『覇王』に引きずられないためには、私の今を充実させるべきだと。
覇王ではなく、アインハルトとしてやってみたい事をやる」

「だからIMCSなんですかー?」

「今までは、覇王の拳は現代武術に合わない。行く道が違うと考えていました。
……だけど、それでいいのかと疑問があって。それで、少し」


その言葉で一番嬉しそうだったのは、ノーヴェだった。それでこっちを見て、なぜか『ありがとう』とサイン。

大した事はしてないので、静かに首を振る。なおあむとキャンディーズも同じ感じで、ほほ笑ましそうな視線を向けていた。


「だからあの、恭文さんに少しご相談が……恭文さんはデバイスマイスターの資格もお持ちですよね」

「うん……あ、デバイスか」

「はい。私は今まで、デバイスを使っていなかったので」


実はIMCS参加には、条件としてデバイスを使用する事ってのがある。それもクラスが定められたもの。

ここは安全性確保と、公平な競技進行のためなんだ。……ご飯を食べた後は、そこの解決かな。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


IMCSの出場規約――安全のため、クラス3以上のデバイスを所有・装備する事。これがアインハルト最大の障害。

朝食を食べた後、リビングでノーヴェ・あむ・ティアナ・スバル・アインハルト・ヴィヴィオが集合。

更に興味があるらしく、元ガーディアンメンバーやアギトも……他はみんな訓練しているというのに。


まぁ空海はいい傾向だよ。おさらいもしつつ頑張ろうって話だしさ。


「それじゃあ早速、デバイスのクラスについて説明するね」

「うん、お願い。でも蒼凪君、そこって今まで聞いた事がないんだけど」

「そりゃそうだよ。クラスなんて、基本分類に使われるだけだし。まず覚えておいてほしいのが」


左手の指を鳴らし、空間モニター展開。そこにざっとした表が現れる。これはデバイスのクラス分けだよ。


「クラス3以上は一般的な安全基準をクリアした、標準的なデバイスであるという証明。
あとはカートリッジ装備型とか、そういうのに合わせて数字が変わるだけ。
だからね、市販されている量産型デバイスでもいいの。それを買って腰につけるだけでも問題ない」

「ならストラトスさんがその条件をクリアする事は、決して難しくないんだね」

「デバイスを用意するだけならね。ただその中で例外的なのが、クラス1と2。
これがあるから、規約文面でもクラスがレベル扱いっぽくなっている。
ここは自作なデバイスを使うヴィヴィオや空海達も関係あるから、ちゃんと聞いててね」

『はーい!』


みんなが元気よく返事をしてくれたので、表の下――黄色や赤で色分けされている箇所を指差す。


「クラス2は審査基準を通していないもので、作ったばかりのデバイスなどはここからスタート。
ようはそういう安全テストをクリアすると、問題ありませんよーって証明される」

「そこでクラス3なんだよな、ゴウラス」

≪えぇ。あとマイスターの作ったフォルティアや≫

≪わたし、クロスクラウンも基準はクリアしていますー。もちろんルーテシアさんのブランゼルも≫

「だけどクラス1は準備段階じゃなくて……ガチ違法物」


そう前置きした上で、赤い部分を二度叩く。そうして軽く念押し。


「審査も通さず、そういうのガン無視な改造をしたデバイスがここに入る。
局が違法デバイスとか言って取り締まる場合のほとんどは、このクラスに属してるんだ。
又はちゃんとした審査を通さず、クラス2のまま扱っているかのどちらか」

「では先ほどお話されたように、量産型でもデバイスを揃えれば」

「出場は可能だよ。ようは未審査や、違法な改造デバイスはやめようって話だね」


みんな納得してくれたので、モニターはさっと閉じる。


「アインハルト、実際の試合では使える魔法に制限があるの、もう知ってるよね。
これはその管理ができるようにって意味合いもあるの。だからそこまで気構える必要はないよ。
クラス3以上だとタグとのリンクも、まんべんなくできるからって考えればいい」

「はい。それを聞いて……少し安心しました。ただ」

「ただ?」

「その、私は術式が真正古代ベルカなので、通常のストレージデバイスでは」


……ですよねー。デバイスって個々の仕様術式に合わせて、調整されるものだからなぁ。

疑問は解けたけど、問題は自分に合うデバイスをどう用意するか。そこで困っているらしく、アインハルトは目を細めた。


「じゃあえっと、普通のデバイスとか買ってOKにはならないのかなー。恭文も空海やあむちー達に合わせて作ってたしー」

「恭文、アンタでも無理なの? ほら、アンタも一応ベルカ式だし」


そこであむが目を閉じ、いきなり自分のおでこを叩く。


「駄目かー。確か古代ベルカ式って、一種のレアスキル化してるんだよね」

「だからこそ師匠の教導が重宝されるわけだしね。……ただ、アギト」

「あぁ! うちならできなくはないぞ! シャマルもいるしな!」

「……そっか。八神さん達はその古代ベルカ式が使えるから、デバイス開発も」

「そういうこったっ! というわけで……早速司令に連絡だな」


そうしてアギトはパチポチ……でもなぜだろう、やたらと鼻歌状態なのは。


「アギトさん、今電話してもはやてさん達、仕事とかじゃ……ていうか、仕事どうしたのかな! アギトさんも一応局員じゃん!」

「だろうからまずメールしとくわ。こっち来た関係で、心配もかけてるしなー」

「また軽いし! え、これいいのかな! またシグナムさん、荒ぶってるんじゃ!」

「あ、あの……ありがとうございます!」


そこでアインハルトが慌ててお辞儀。それに対しアギトは、『大丈夫だ』と手を挙げ笑う。

……まぁデバイス開発も余裕ができたし、なんとかなりそうでよかったわ。僕も自分の事に集中できるし。


「でもIMCSかぁ。出られるなら出たかったわよね」

「だよねー。ていうか、ティアは出ればよかったのにー」


そこでスバルがティアナを肘でつんつん。……確かにティアナ、休職状態だったからなぁ。出られない事もなかったのよ。

まぁスバルは無理だけどさ。局員として、バリバリ活動しちゃってるし。


「それより花嫁修業が大事だったのよ。でも……世界一を目指したい気持ちならあるわよ?」


ティアナはそう前置きした上で立ち上がり、僕に笑顔で近づいてくる。あれ、なんだか嫌な予感が。


「ね、そのガンプラバトルって私にもできるかな」

「……へ?」

「ようはあれよ、アンタと私でチーム組むのよ。私、オペレーターね」

「はぁ!?」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


みんなで驚いていると、また別の声……そう思って左側を見ると、部屋の入り口からレヴィ達がぞろぞろと入ってくる。

その後にダーグが続いた……どうやら準備関係は終わったらしい。


「ヤスフミ、そこのオレンジと組むの!? 嫌だ嫌だー! ボクと一緒じゃなきゃ嫌だー!」

「誰がオレンジよ! ていうか、アンタだってそれ言ったら水色でしょ!」

「うっさい! 水色は正義なんだ! オレンジは敵だー!」

「はいはいやめやめ!」


面倒くさくなりそうだったので、ヒートアップしている二人の間に入る。


「てーかこの場合、僕はダーグと組むんじゃ」

「それなんだがやすっち、俺は俺でガンプラ作って頑張る事にした」

「デカブツと相談したが、複数のチームに分かれてた方が効率的だと考えてな。我もシュテル達とガンプラを作り戦う事にした」

「わたしはお姉ちゃんと……まぁ不満だけどねー」

「な、どうしてですかー! 姉妹仲良く、新しい戦いに飛び込めと博士だって言ってたのにー!」


同じ事考えてたかー! まぁそうだよね、たった一つの椅子を取りに行くなら……あれ、それならシュテルは?

見上げてもシュテルは、鼻息を荒くしてやると言うだけ。僕が頑張らないと駄目なんですね、分かります。


「ていうかティアー、それならティアもガンプラ作って出ればいいのにー」

「そうだそうだー! オレンジは一人で出ろー! ヤスフミはボクと出るんだい!」


レヴィが僕の左側に思いっきりハグ……愛が重いって、こういう事を言うんだと思う。具体的には二週間溜まった愛が。


「なるほど、じゃあ私も」


ティアナも右側にハグ……なんでそうなった!? 待て待て! おのれちょっと待て!


「ねぇ、意味分かんない! なんでティアナがくっつくの!?」

「IKIOKUREないためよ!」

「わけ分からんわ! ガンプラバトルどうした!」

「蒼凪君、また……!」

「フェイトさんにご報告せねば……って、その必要はありませんでしたね。蒼凪さん、すみません」


なぜ謝る!? 海里、唯世……てーかみんな! おのれらなに勘違いしてるの! 僕はなにもしてないー!」


「日奈森、答えは」

「思いっきりフラグ立てまくってた」

『ですよねー』

「ちくしょー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


とりあえず話はまとまってるっぽいので、ダーグ達も着席。その辺りどうなのかと確認する事にした。

あとレヴィには『僕とやると、ガンプラをメイン操縦できないけど』と付け加える。……本人、かなり悩んでます。


「とにかくあれだ、やすっち」

「うん」

「プラスキー粒子やらその関連を調べるために協力してもらうが……まずは紫天組の戸籍だな。準備はできてるが」

「できてるの!?」

「飛燕や駅長も手伝ってくれたからな。あとアミキリ虫」


そこでダーグがアミタとキリエを見ながら、虫呼ばわり……二人はぎょっとして自分を指差す。


「もしかしなくても私達ですか!」

「ちょっと、やめてよ! お姉ちゃんと一緒なのは嫌!」

「こらー! それはお姉ちゃんとして聞き捨てなりませんよ!」

「とにかくお前ら、一度ターミナルにきてくれ。免許取ってもらうから」

「「免許!?」」


一体なんの免許なの! 聞きたくなったけど……やめた。なんかこう、触れたくないのよ。


「あと協力費として、ガンプラ関係での資金に月一人当たり十万が支給される」

『十万!?』

「流石にガンプラや工具関係は現地調達になるしな、支給資金で買ってくれ。あと……悪いがやすっち」

「うん」

「こっちにいる間、やすっちの家に居候させてもらっていいか? 現地住所がないとキツくてな」


そこでダーグが出してきたのは数枚の書類。それを受け取り……これ、ディアーチェ達の戸籍書類じゃないのさ!

丸一日で用意したの、これ! 一体どれだけ手回しが上手なのよ!


「代わりに生活費として、月五十万振り込むから」

「まぁそれなら……でも本気すぎじゃない?」

「そ、そうじゃん! 生活費五十万で、一人一人に十万ずつで……月に百万超えてるんですけど! その費用で工場探した方が早そうなんですけど!」

「まぁ否定はしない。だが」


そこでダーグは困り気味に唸り、右手で頭をかき始める。


「PPSE社のガードが思ったよりも厳重でな。俺や飛燕でもちょい無理なんだよ」

「……そこまでなんだ」

「まぁオーパーツ同然な粒子だからな。だがこれで一つはっきりしたぞ。
PPSE社上層部はその重要性を知っている。だから極秘にしてるんだよ」


単純にガンプラバトルの市場独占が理由じゃないと。まぁそれだけじゃあ説明できないような厳重さだしなぁ。


「あ、あの……プラモを作るのって、そんなにお金がかかるんですか?」


そこでユーリがオロオロしながら挙手してくる。


「基本はプラモ代だけだし、月に十万もいらないよ。ただ先行投資が必要な場合もあるから」

「例えばなんでしょう」

「機材関係だね。エアブラシとかはプラモ用だと、コンプレッサーも込みで数万いくし。
あー、でもここは僕の機材もあるし、使っていいよ。デバイス用のだけど、塗料さえ合わせれば問題ないし」

「おぉ、ヤスフミ太っ腹ー」

「ただし後片付けはちゃんとしてよ? 塗料関係は使ったらすぐ掃除しないと、故障の原因になりやすいんだから」

『はーい』


レヴィが目をキラキラさせてるけど、そこまで太っ腹ってわけでもない。

下手にこっちの機材を買って使うより、次元世界的な方が壊れにくいと考えてさ。

あと修理する場合も、実はこっちの方が楽なんだよねぇ。メンテナンス性重視のものを使ってるせいだけど。


「しかし、それではヤスフミの作業が進まないのでは」

「あぁ、僕は筆塗り基本だから。塗装に機材使わないのよ」

「マジかよ!」


ダーグが驚きながら、僕のクロスボーン・ガンダムゴーストをガン見。


「元々の作り方がスケールモデル準拠だし、その関係からね」

「ねーねー恭文ー、塗装って絵の具でペタペタじゃないのー? それならややもできるよー」

「結木さん、さすがに絵の具は……ないよね」

「あるよ」

『えぇ!』

「使える場合もあるってだけで、基本塗装からは外れてるけどね。そもそも普通の絵の具じゃ、プラスチックに定着しない」


驚くあむ達は気にしない。これについてもまた説明する事があるだろう。


「とにかく塗装の基本は二種――筆塗りとスプレーだよ。一応筆塗りが基本……なんだけど」

「筆塗りはうまく塗らないと、ムラ出まくったりするんだよなぁ」


そこで空海が腕組みして、分かる分かると頷いてくる。おのれも男の子だから、ガンプラは当然触れてるよねぇ。


「模型で理想的な塗装って、『塗膜の厚さにムラがなく、なおかつ薄く』と言われているしね。
筆塗装だとやり方を考えないと、そこが少々難しい。なのでプロのモデラーさんとかは、スプレーで塗料を吹き付けて塗っていく」

「そちらでは機材を使うのですね。ですがヤスフミは筆塗りと」

「僕はやり方を考えてるから。……ただスプレー塗装はこう、缶スプレーを買うとかならすぐできるのよ。
コストパフォーマンスは悪いけど。かと言って機材を買うと、さっき言った数万円コースになる。
あとは広範囲に吹き付けるのが基本だから、細かい塗り分けが苦手だったり、後片付けが面倒だったり」

「な、なんだか大変そうです……ディアーチェ」

「落ち着け、ようは一長一短という話だ。そうだろう、小僧」

「そうそう」


まぁ個人的見解だけどエアブラシなどは、『やるぞー!』って踏ん切りが必要になる。

ここが最大の問題になるのかな。例えば機材購入もそうだし、使用・後片付けも同じ。

フットワークが重いと言うべきか……もちろんそこも、事前の準備や使い方次第で変わるんだけど。


しかし二週間の間になにがあったのだろう。あの無口クールなユーリが、やたらと可愛くなっている。

更にディアーチェと距離が近い。今だって……あむも気になるらしく、首を傾げていた。


「ただ僕の心配はそこじゃなくて……アミタ、キリエ、おのれら活動時間は」

「あ、それなら大丈夫よ。ユーリのおかげで、こっちでも補給関係はできそう」

「ターミナルのご協力もあるので」

「マジですか! エグザミア凄すぎじゃん! いや、知ってたけど!」

「でもプラモでバトル」


どうやらアミタ達はピンとコないらしく、僕のゴーストを見て唸っていた。これは……よし。


「じゃあこれからガンプラバトルを観戦しよう」

「え、ここで見られるんですか!」

「ネットにアップされている動画だけどね」


モニターをどっかのスクリーンレベルで大きく展開。その上で離れ、りまの横に座る。

するとりまは嬉しそうに笑って、僕のひざ上に……もう慣れちゃったよ。クスクスも楽しそうに笑っていく。


「世界大会は中継もされてるけど、ショップが開いてる大会なんかも、探すとちょいちょいアップされてるんだ」

「確かに実際を知らないと、ちゃんとしたものも作れないわよねー。さっすが旦那様♪」

「……蒼凪さん」

「蒼凪君、その、過去でなにが」

「さぁさぁ、バトル映像を見るぞー! みんな注目ー!」


海里や唯世の視線が厳しいけど、僕は一切気にしない。まずは……去年の世界大会、序盤の方からかな。

一応ガンダムにも明るい僕と空海が解説役って感じ。なおりまはやっぱりごきげんでした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


いやさ、一応知ってはいたんだよ。ガンプラバトルの事もそうだし、大会映像も見た事あるしさ。

だけど画面の中で次々と現れ、戦っていくガンプラを見てると……やっぱ凄いなぁと。

具体的には粒子が? 爆発やエフェクトまできっちり再現するってのは、もうなぁ。


「わぁ……凄いですよこれ! 燃えてきます! MAMですよ、MAM!」

「お姉ちゃん、うるさい。あと興奮しすぎてキャラがおかしい」


そのせいか、アミタも興奮しきりでキリエを揺らす。なおキリエ、すっごくウザそうです。


「そこだー! いけー! あの……なんかでっかくて闇の書っぽいの!」

「あれはα(アルパ)・アジールね、操作してるのは世界大会優勝者の」


そうしてレヴィが振り上げた拳は、恭文の顎へ直撃。


「……危ないわボケが!」


すかさず恭文がハリセンで後頭部に反撃……どうやらすれすれで避けたっぽい。


「おもちゃのバトルと思ったら……い、意外と本格的なのだな。
というか、バトルでプラモも壊れてるぞ」

「えぇ。関節部などへの一撃は、ただ外れるだけで済んでいますが」

「なんだか、心が痛みます」


ディアーチェやシュテル、ユーリもバトルの凄さに圧倒されてるけど、そこで気になる点を見つけたみたい。

……そう、ガンプラバトルで使ったガンプラは、壊れる事がある。穴が空いたり、パーツが砕けたり。

実際にガンプラ同士がぶつかったり、粒子再現でビームや爆発にさらされるせいみたい。


その様子を見て、海里が軽く眼鏡を正す。


「世界大会で進むためには、ガンプラのコンディション維持も必要不可欠と聞いております」

「拙者もだ。ようはあれだな、F1などと同じだ」

「PPSE社だけの話じゃないんだよねぇ。優勝する事での経済利益もあるから、無駄に力を入れる馬鹿もいる」

「だから大の大人がこれのために、ワークスチームなど作るわけだ。我は少々不思議だったが」


うわ、馬鹿って言い切っちゃったよ。まぁ確かに……これ、遊びの大会だもんなぁ。

そこに大人の力全開ってのも、なんだかあれなわけで。……そうなると恭文達はどうなんだって話だけど。

自分で言ってて突き刺さったのか、軽く頭を抱えた。あ、これ自分の分だけ協力費は断る流れかも。


「例えば……あ、今出てるデビルガンダム」


体のあっちこっちからボルトみたいなパーツが飛び出している、モンスターみたいなガンプラがいる。

ガンダムなんだけど、名前がデビルって……あれかな、悪魔みたいに強いとかそういう方向かな。どの作品で出たんだろう。


「あれもワークスチームのお手製なんだ。ネメシスっていう、フィンランドのプライベートチームなんだけど」

「あ、ややも聞いた事あるよー。オーナーがメタンハイドレートの発掘王で、ちょーお金持ちなんだよねー」

「金に任せて押し切ってるわけでちか」

「みたいだねぇ」

「ですがヤスフミ、お金の力というのはどこまで大会に作用しているのですか。
制作・操縦に適した人材を発掘する辺りしか、私には考えられないのですが」

「いや、ガンプラ開発にもかなりベクトルが向けられてる」


ガンプラ開発? 気になる言い方だったのでつい前のめり。恭文の目はモニターに向きっぱなしだけど。

……なおデビルガンダムはこう、赤い羽・袖付きなガンプラが撃ってくるビームを受け止め、次々と弾いていた。


「……うぅー!」


そこでレヴィがジタバタしながらすっと立ち上がる。


「なんかじっとしてられない! ヤスフミ、ボクもすぐあれ作りたい!」

「てーか俺もだ! その辺りの話は後でいいだろ!」


更にダーグも続き、画面を指差す。……コイツらはぁ。合宿はどうなったんだと、唯世くん達と……いや、これも合宿?


「だったら聖夜市の模型店へ行ってみる? ダーグ、お願いー」

「おっしゃー!」

「え、待って! 蒼凪君、そこでダーグさんにお願いするという事は」

「移動に時の電車を使うかよ! うわ、すっげー豪華じゃね!?」

「豪華っていうか無駄遣いじゃん! アンタ達、ちょっと落ち着けー!」


そうツッコんでも落ち着くはずがなく……みんな、子どもみたいだった。いや、あたしも子どもだけど。


(Memory21へ続く)








あとがき


恭文「というわけで……みんな、更新止まってごめんね。支部でも言ったけど、ガンプラ作ってました」

フェイト「そうしてできたのがクロスボーンガンダム魔王……でもあれ、背中のリフレクターパーツや胸元のフィンが」

恭文「塗装予定な関係で、外しにくそうなパーツはまだ付けてないんだ。
だけどね、あれで一日かかってないのよ。作りながらヤスリで表面磨きしてたけど、一日経ってないし」


(半分以上は調整・合わせ目消し用の接着剤が固まるのを待つ時間でした)


恭文「これでX1が出たら、F91と対決できるってワクワクしてる蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……それで今回は本格的に導入編。というか準備?」

恭文「話自体もあまり進んでないしね。そして冒頭はガンダムビルドファイターズの第一話……なにもかも懐かしい」

フェイト「そこまで経ってないよ!?」


(でも作者はお台場行って、試写会に参加したので)


恭文「大画面で見たし、ライブもあったから余計に印象深いんだよねぇ。そして……人海戦術が」

フェイト「あとはガンプラバトルの現状だったりだね。でもワークスチームってのもまた凄い話で」

恭文「ネメシスは事情が違うけどさ。金持ちの道楽って言われてたし」


(どういう事かは本編でチェック)


恭文「そしてフェイトが」

フェイト「だ、だってー! だってー!」

恭文「お仕置きだから。今日はいっぱいお仕置きだね」

フェイト「う、うん。でもあの、優しく……してね」


(なにを期待しているのか、もじもし)


恭文「今度は難易度上げて、HGのサイコザクを組んでもらうから」

フェイト「そっちー!?」

恭文「失敗し続けるたびに難易度が上がって、最終的に本物を作るはめになるから」

フェイト「む、無理だよ! それは無理ー! ……でもサイコザクってその、簡単なのかな」

恭文「そうだね、きっと簡単じゃないかな」


(そんなわけがない。ボリュームたっぷりだし。
本日のED:BACK-ON『INFINITY』)





一夏「でも本編のガンプラバトルでは、まずクロスボーン・ガンダムゴーストか」

箒「確か最新版の漫画で出ている機体……だったな。蒼凪のF91と因縁があるとか」

一夏「というか兄弟機体なんだよ、コンセプトや開発時期は大分違うが。
クロスボーン・ガンダムの正式コードはF97だしな」

箒「そうなのか!」

一夏「宇宙海賊って、やっぱガンダム劇中内でも違法だからな。ようは隠してるわけだ。
だがデータ取りなんかを理由に、裏取引で機体を手に入れてるんだよ。
開発元のサナリィって会社は、取れた運用データを元に新型量産機を開発。
それを連邦軍に売り込む予定だった。実際劇中にも量産型クロスボーンは出ている」

箒「そんなバックボーンがあるとは……一夏、その漫画は持っているか。少し興味が出てきた」

一夏「後で貸すよ。しかしまた、なぜクロスボーン……最新のHGで出たからか? 改造機体だけど」

作者「身長にかけて」

一夏「あぁなるほど。クロスボーン・ガンダムも他の機体と比べると小さめ」


(ちゅどーん♪)


箒「……なんか吹き飛んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

古鉄≪……そろそろ受け入れましょうよ、自分が小柄だって≫


(おしまい)




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