小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory18 『GEARS OF DESTINY/抗えぬもの』
前回のあらすじ――八神家は全滅しました。てーかザフィーラさんまでこれって。ああもう分かった。
奴らがなんで六課なんて作ったのか、よく分かったわ。あの不安――顕示欲を晴らす場を求めていたわけですか。
とにかく僕達はアースラに戻ってきて、八神家もシグナムさんとリイン以外は全員拘束。
そして……またまた会議です。あぁ、クロノさんの顔がどんどん曇る。
「みんな……またまたご苦労だった。トーマ、怪我の方は」
「あ、大丈夫です。俺、傷の治りは早い方なんで」
「わたしもです。それより」
わりと平気な二人が見るのは、部屋の隅で縛り上げられている王様。まだ中二病が抜けきっていないらしい。
「トーマ、わたし達……正しかったんだね」
「あぁ、そうだな。あれだからああなって……うぅ」
「おいヤスフミ、あの二人が」
「……そこはツッコまないであげようよ。ショウタロス」
抱き合う二人に僕達はなにも言えなくなってしまった。二年後、はやては一体なにをしたのよ。
あれで『正しかった』って結論を出す時点で、相当アレじゃないのさ。やばい、ここだけ記憶封鎖受けようかな。
「そういえばクロノさん、例のカートリッジは」
「……想像以上に状況が悪くなってるからな。でき上がった分を持って、ユーノがリーゼ達と本局のラボへ向かっている」
「そこでまた量産と」
「あぁ。済まないが三人が戻ってくるまで待ってくれ。マリエル技官も手伝ってくれているので、そう時間はかからない」
そのかからない時間で状況がどう動くか。それが焦れったいらしく、あむが頭をかいた。
「王様、とにかくボク達の気持ちは変わらないから」
「この世界へ戦乱を持ち込む意味などありません。王、ご決断を」
「だから……言っているではないか! 我はシステムU-Dを持って、世界に殺りくと破滅を」
「そんな事言わずに」
しょうがないのですっと近づき、王様の後頭部を掴む。そうして全力で床に叩きつけた。
「さぁ!」
その瞬間、王様の顔が床に埋まった。それじゃあ足りないので十回ほど連続で叩きつけた上で、腹を蹴飛ばす。
王様は天井に頭を突っ込み、そのまま動かなくなった。いやぁ、素晴らしい事だねぇ。
『こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
「これだけお願いしてるんだから、そろそろ認めてよ。王様ー」
「お願いしてる態度じゃないよ! 恭文君、とりあえず解除ー! 解除ー!」
「そうだよ蒼にぃ! それは死ぬ!」
「馬鹿は死ななきゃ治らないって言うけど」
「「本当に死んだら困るから!」」
しょうがないので足を掴んで。
「よっと」
引きぬいた上で時計回りに一回転。すると王様は机の角に叩きつけられ、めっちゃ痛そうに呻く。
「なにを解除したの!? 今の死んでるよね! 下手したら死んでるよね!」
「なに言ってるのよ、僕達がいなかったら死んでたのよ?」
「理由になってないー!」
「あぁ、やっぱり恭文さんは無茶苦茶だ! 元から知ってたけどやっぱりだー!」
「本当にごめんー! てーか恭文、マジで加減してよ!? やるなとは言わないけど!」
「き、さまぁ……!」
王様がカッと目を見開き、ロープを引きちぎる。そうして取り出したロッドを向けるも、そこにもう僕はいない。
……素早く右脇へ踏み込み、側頭部へ左フック。王様はまともに拳を食らい、壁へと叩きつけられた。
「頭も下げたし、もういいでしょー?」
「下げてないだろうが、馬鹿者! むしろ体ごと埋まってるぞ!」
「でもクロノさん、ここは無理やりにでも納得させないと……もうどうしようもありませんよ?」
痛いところを突かれたと言わんばかりに、クロノさんとなのはが唸る。……現状最悪そのものだしねぇ。
シグナムさんはしょうがないんで引っ張ってきたけど、レヴァンティンは行方不明だからぼう然自失状態だし。
八神家はアースラで拘束したものの、全員不満たらたら。闇の書事件について引きずり過ぎてる。
そしてみんなじゃ欠片やシステムU-Dに対応できない。つまり……未来組だけでなんとかしろって話よ!
くそ、どうしてこう管理局組は役に立ってくれないのよ! アテにしたくても尽く裏切っていくって斬新すぎるわ!
「ヴィヴィオも同感ー。まぁ力で押さえつけると反動が怖そうだけどさー」
「ですが本当に止められるのでしょうか。この戦力だけで……古代ベルカに残る伝説を」
やや不安げにアインハルトが、右拳を上げてぎゅっと握り締める。それでもやるしかないと、決意は固めてるっぽいけど。
「どうするのよ、古き鉄。さすがのあなたでもタイマン相手はキツいでしょ」
「……奥の手を幾つか使えば、できなくもないかも」
「マジ!?」
「恭文、アンタまさか!」
「まぁそれも状況次第でしょ」
慌てるあむは視線で制する。……実は危惧している『記憶』が幾つかある。欠片として再生されると困る強敵だよ。
現段階でもかなりアウトではあるんだけど、それ以上のものと僕達は遭遇している。
今までとは状況が変わってきている。システムU-Dを中心に、欠片の大群とかが動く可能性だってある。
しょうがないか、力はお守りじゃない。使える時に使わないで……どうするのよ。
「まぁそれはそれとして王様、起きてよ」
「起きてるっていうか埋まってるぞ、彼女は!」
しょうがないので右足でケンカキック。王様の右腕をへし折りながら、向かい側の会議室まで吹き飛んでもらう。
「更に埋めてどうするんだぁ! てーか壁が砕けたぞ!」
「じゃあちょうどいいですね。GTOでこういうシーンあったから」
「恭文君、それ違う! それで心を開いたりはしないよ!」
「あー、ちょっと邪魔だなぁ」
「話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
しょうがないから壁を蹴り飛ばし、粉砕しなら隣の部屋へ。
「なぜ、だぁ。我は……我らを生み出したのは、お前ら人間だろうが!
それがなぜお前達の都合で、今更生き方を変えねばならぬ!」
「知ったこっちゃないわ」
折った腕を蹴り飛ばし、もん絶してもらった上でまた腹を蹴る。
近くのテーブルに頭を叩きつけるけど、まぁ死にはしないでしょ。
「だって僕が作ったわけじゃないし。そういう文句は製作者に直接言ってよ」
「うわぁ、ぶった切ってきたよ! 蒼にぃ、もしかしなくても八神司令のあれでキレてるだろ!」
「そもそも僕達の都合じゃなくて」
顔面を蹴り飛ばした上で、レヴィ達を指差す。なぜかドン引きな二人はハッとしながら、自分を指差した。
「レヴィ達の都合だ」
「嘘をつけ……貴様ら、我が家臣達を騙しただろう! そうでなければ」
「違いますよ、王。……私達はこの目で、この心で見て、そうしたいと判断しました」
すっとこっちへ近づいてきた二人は、瓦れきを避けながら僕の両脇に立つ。
「ふざけるな! 我らマテリアルはこのために生まれたのだぞ! その意義を通すのが」
「じゃあレヴィ達の気持ちはどうでもいいと。……部下の気持ちを汲まないお前は、王様じゃないよ」
「な……!」
「もう一度言う、僕達は洗脳なんてしていない。そもそもできるタマじゃないのは、おのれが一番知ってるでしょ」
「二人はね、あたし達やみんなを見て――自分で決めたんだよ」
そこであむが呆れながら、壁の向こうから近づいてきた。そうしつつシュテルとレヴィを見やる。
「だよね」
「もちろんです、アム。……王、八神家の姿を見てなにも感じなかったんですか。
彼女達は自らの運命に、過去に縛られています。そうして今を知る事から逃げてしまっている。
今を知らずしてなにが変革できるのか。今の王は彼女達と同じ。自分の殻に閉じこもるだだっ子です」
「ボクのオリジナル――ヘイトも同じだった。みんな、困っている人を助けるって言いながら自分勝手な事ばっかり。
王様だって生まれた使命がなんだって言っても、結局自分の気持ちばっかり……カッコ悪いし、そんなの!」
「カッコ悪いぃ!? お前、またそんな軽い理由で」
「軽くない! だったらボクはもうそんなのいらない! そんな事しても楽しくないもん!
ボクはマテリアルだけど、ヤスフミやアムみたいに楽しく生きるんだい!」
……そこでぼくの腕に抱きつくのはやめてもらえませんか。またみんなの視線が厳しくなるので。
とにかく二人にはっきり『これじゃあ駄目だ』と言われ、王様は床に座りながら。
「な、なんだお前ら」
瞳に涙を溜め、ひくひくと言い出す。その上でボロボロと泣き出した。
「我だって……我だってなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「わぁ、泣きだしたよ。外見大人なのに、子どもみたいに泣きだしたよ」
「お前が言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぶぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
……なんとなく、これなら大丈夫かなとは思った。二人の言葉が通用してないわけじゃないっぽい。
そういう意味ではフェイトや八神家は、一応役に立ってくれたのだろう。絶対感謝しないけど。
魔法少女リリカルなのはVivid・Remix
とある魔導師と彼女の鮮烈な日常
Memory18 『GEARS OF DESTINY/抗えぬもの』
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「――えー、よく分からない流れだが、ディアーチェが協力してくれる事になった」
クロノさん、なぜこめかみを引くつかせてるんだろう。壊した壁や天井はすぐ直したのに。おかしいねぇ、ほんと。
そして僕以外のみんなが、微妙な表情で僕と包帯だらけな王様を見る。
「このチビ悪魔がぁ……覚えておけよ! この仕返しは必ず」
とか言うので、向かい側の王様へワイヤー投てき――先のカラビナを折れた腕にぶつけられ、王様は椅子から転げ落ちながらもん絶。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「恭文君ー!? もう笑えないレベルにきてるから、そろそろやめようよ!」
「ディアーチェ、ごめんなさい……は?」
「聞いてくれないー!」
「駄目だ、こうなったら蒼にぃは止まらない! てーか目が怖いし!」
「と、とにかくだ。システムU-Dに痛手は与えた……はずだ」
確定的な事が言えないのって、ほんと悲しいよね。相手が規格外すぎるせいだけど。
言うなら僕達はフリーザ相手に四苦八苦する、ベジータとクリリン達だよ。
そして悲しいかな、孫悟空はどこにも存在しない。その上でフリーザ様を倒すんだよ。
「とにかく王、作戦は説明した通りです。死にたくなければシステムU-Dを制御し、きっちり止めていただきます」
「ぐ……!」
「とはいえ、スクライア司書達がカートリッジを持って帰ってくるまでは待機……なのですけど。
そして悪い事ばかりではありません。勝手していたと思われる、フォン・レイメイの欠片もヤスフミによって瞬殺」
「王様もわたし達のところへやってきた。あとは……最終決戦あるのみかぁ。分が悪いわねぇ、ほんと」
「心配ありません!」
そこでドアを蹴破る勢いで飛び込み、Vサインをかます青い影――はい、アミタでした。
「アミタ! もう修復完了したの!?」
「シャマル医務官とマリエル技官のおかげで! これでシステムU-Dだろうと恐るるに足らず!
……というわけでみなさん、お世話になりました! あとはこの私、アミティエ・フローリアンにお任せ」
とか抜かすのでワイヤー投てき。首根っこを縛った上で一気に引き倒す。
「ぐべぶ!」
「蒼にぃー!? 幾らなんでも手段が……いや、今回はよくやった!」
「君、そこを褒めるのか!」
「褒めますよ! クロノさん、今アミタがなんて言ってたか思い出してください!」
「思い出すって……あぁ、そういう事か」
そこで全員が苦しげなアミタを呆れ気味に見る。……コイツ、やっぱり一人でなんとかしようとしたし!
「お姉ちゃん……言ったじゃないのよ。わたし達だけじゃもう無理だって」
「だ、だから魂を燃やし、根性で」
「魂燃やさなくていいから、手を取り合ってもらえます!? おのれ、ほんとふざけんな!
どいつもこいつも単独で飛び出しては馬鹿やらかして、もう僕達の戦力ガタガタなのよ!」
「アミタ、僕からも頼む。信用してほしいとは言わない、ただ利用しあうだけでもいいんだ」
クロノさんがそう言っても、アミタは渋い顔で唸るのみ。コイツ……やっぱこっちサイドは信用し切れないか。
とりあえずアミタは勝手されてもあれなので、バインドでふんじばった上で寝かせておく。
”恭文さん、少しよろしいでしょうか”
今度はアインハルト……お願い、厄介事は持ち込まないで。さすがに泣きたくなるの。
”どうしてその、彼女はここまで”
”……この事、ヴィヴィオには内緒にしてて。約束できるなら説明する”
”分かりました”
”機動六課、及び最高評議会の事が原因だよ。機動六課は単独の動きじゃ、最高評議会へ到達できなかった。
その存在と汚職を暴いたのは、僕の兄弟子――サリエルさんなのよ”
”なるほど、システムU-Dほどの『ロストロギア』なら、この時間に健在な彼らが動く可能性も”
”でもそれだけじゃない。最高評議会はね、機動六課をスカリエッティの始末屋として設立させたのよ”
みんなの話はシステムU-Dと対じした時、どう戦うかというシミュに突入。
そんな中でとんでもない話が出たから、アインハルトが心底驚いた顔をする。
てーか僕も驚いたよ。あむ達とミッドで夏休みを過ごした年、起きた事件がなかったら……もうねぇ。
あの時ヴェロッサさんにさらっと突っ込んだら、教えてくれたよ。もちろんはやて達は知らないけど。
まぁ前々からもしかしたらとは思ってたけどね。ギンガさんルートな機動六課も同じコースだったし。
”スカリエッティの動きを六課が追えていたのは、最高評議会が裏で手を回したからなの。
更に言うとフェイトやその被保護者、スバルなんかもスカリエッティと因縁がある。
それこそ憎しみを持ってもおかしくないレベルで。本来なら全員、動きを制限されておかしくないんだけど”
”でも実際そうはならなかった。最高評議会は、機動六課がやり過ぎる事を望んでいたんですね。
……それをアミティエさん達も知っている。だからクロノ提督達を信用できない”
”例外があるとすれば僕達だけだ。それでも信じ切れないんだろうけど”
”我々が、未来を知っているからですね”
アインハルトは思い当たるフシがあるのか、暗い顔をする。
……クロノさんの前では言わなかったけど、僕達も信頼度は最低レベル。
未来を知っているからこそ、時を変えるために動くかもしれない。
そうして『今』をぶち壊しにするかもしれない。そういう危惧がどうしても拭えない。
もちろん背中を預ける事も怖い。自分や妹を利用するだけ利用して、捨てるかもしれない。
アミタやキリエにとってこの世界は、怖いものだらけだよ。正直キリエがついてくれたのはもう、奇跡なレベルだ。
はっきり言えばアミタやキリエは、僕達とは全然違う視点で現状を見てる。まぁ普通なら……でも今回は困る。
”恭文さん、もう一つだけ。……どうしてそれでもなお、時を変えてはいけないと思うんですか。
ここで最高評議会の悪事を止めれば、救われる人達がたくさん出るかもしれません”
”……解決する事で消える命があるかもしれない。解決した事で全く別の、大きな問題が起こるかもしれない。でも一番は”
そこで強い悪寒が走り、念話を止めてぱっと立ち上がる。なに、この気配……めちゃくちゃ近い!
「恭文、どうしたのかな」
「めちゃくちゃ嫌な予感がする」
「……マジですかぁ!」
「ていうかここから!?」
あむとヴィヴィオが絶望したと言った表情で、頭を抱える。狙いは……くそ、まさかこう来るとは!
「恭文さんがそう言うって事はぁ」
「くるわね、ここに。というか……私も感じてる。欠片と似たような気配が近くにあるわ」
「ランもー!」
「……ここまで潰しにかかるとはねぇ」
「クロノ君!」
「落ち着け。仮に来るとしても、場所が細かく分からなければ……ん?」
そこでクロノさんがモニターを展開。通信らしいんだけど、それを見て頬が引きつった。
「リンディ、提督……!」
『クロノ、現時点を持ってシステムU-D対策は私が引き継ぐわ。お疲れ様』
「なにを言っているんですか、こんな時に!」
『あなたには任せておけないわ。……一体どういう事かしら。フェイトやはやてさん達を現場から外すなんて』
「当然です! 彼女達はマテリアルとの協力関係を妨害した!」
『協力する必要がないでしょう、あんな不必要なプログラム――即刻破壊すべきよ。もちろんシステムU-Dもね』
ち、アホな事言い切りやがった。あんまりな行動に全員がざわざわとする。
てーか……ちょっとだけ移動し、向こうから見えないように画面をチェック。
……やばい、あそこアースラのブリッジじゃないのさ! くそ、やっぱりこういう手に出たか!
”クロノさん、できたらやってますとか言ったら駄目ですよ!”
念のため念話で警告。クロノさんはハッとしながらこっちを見て、すぐに頷く。
「提督、聞いてください! 彼女達は説得の結果、破壊活動に従事しないと約束してくれました!
そもそもどうやって破壊などするつもりですか! 相手は圧倒的な能力を持っている!」
『アルカンシェルを使えばいいわ。足止めに彼女達を使い、衛星軌道上で照射する――過去にやった作戦よ、クロノ』
「馬鹿げている! それに闇の書の闇と違い、あれは人型だ!」
『できるわ。あなた達が大人として私を――組織を、そして仲間を信じればね。そうすれば』
『無理だな』
その瞬間、聞き覚えのある声が響く。てーかこのふてぶてしい態度は……ちぃ、今度は奴かい!
モニターから響く銃声は気にせず、会議室を慌てて飛び出す。さて、どうする。
この状況で死人は出してほしくないけど、優先順位はある。……リンディさんには対価を払ってもらう。
状況を見ず、自分の常識を押し付ける対処しか選べなかった。なので死ぬほど苦しい目に遭ってもらう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
提督の言葉を止めたのは、銃声と恭也さんに似た声。慌ててコンソールを操作し、ブリッジの様子を通信画面とは別に映し出す。
すると艦長席の下――ブリッジの中央に、怪人物がいた。紫のアーマーを装備し、丸っこい複眼を身に着けた存在。
それは黒い銃を周囲に向け、提督も威圧する。なんだ、あれは。まさか恭文が感じた嫌な予感は。
みんなが脇によって、画面と怪人物をチェック。あむとヴィヴィオが、信じられないと言った様子で声を漏らした。
「嘘……ネガタロス!?」
「最悪じゃん!」
「二人とも、知っているのか。というか、タロスって」
「え、えっと……未来に出てきた怪人なんです! あれはその怪人がこう、仮面ライダーみたいに変身しててー!」
「それもめちゃくちゃ強いの! 恭文も一人じゃ勝てなかったって言うくらいに!」
またそんな相手……えぇい、もう慣れた! だが幸いな事にここは一人じゃない。そう思っていると、会議室のドアが粉砕される。
驚き目を見開くと、発生していた土煙を払いなにかが入ってきた。いや、それはなにかじゃない。
嘘、だろ。あれだけの大爆発を受けて……そうか。だからここに欠片が現れたのか。
「システム」
「U-D……!」
なのはとシュテルが焦りの声を漏らす。こんな位置で、こんな場所で……彼女は血の翼を広げ、そこに光弾を生み出す。
「……馬鹿な人達。私は警告したのに、まだ闇の深さを知らないなんて」
それが発射されると思った直前、蒼い光が彼女を包む。するとこの場から姿を消してくれた。
次の瞬間、船体が激しく揺れる。まさか、今のは……!
「恭文! アイツ、戻ってきたんだ!」
「あれ、それならリンディさんは」
マズい、ブリッジの様子は……駄目だ。相手に管制システムを乗っ取られている。
こちらからの操作は受け付けない。焦りばかり募るが、ここは冷静に。
「二手に分かれるぞ! キリエとレヴィ、あむとヴィヴィオ、アインハルトにトーマとリリィはブリッジを!
他のメンバーは僕と一緒に外でシステムU-Dの相手だ! あむ達は」
「アイツの情報をみんなに……だよね! 分かってる!」
「では全員、死ぬなよ! 行動開始!」
全員ではないが、一応宣言して即行動開始……急いで外にでなくては。
恭文は外に出て、システムU-Dを一人で相手取っている。幾らアイツでも、あれは……!
対じしてよく分かった。あれは提督が言うような戦い方では絶対勝てない。ここで頼れるのは、やはり。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
突然ブリッジを制圧しようと、現れた妙なパワードスーツ……すかさず術式を詠唱し、不審者を縛り上げる。
翡翠色のバインドでそれは動きを止め、全員に『落ち着け』と一喝。
「抵抗は無意味よ。あなたは管理局法、第」
何者かは分からないけど、まずは警告――私はあの子やトウゴウ先生とは違う。
クライドのため、仲間のため、法を守る。大人として正しい道を進む。胸を張り誇っていた。
でも次の瞬間、右肩に鋭い熱が走る。そちらを見ると、なぜだろう……右肩が中程から抉れていた。
血が噴き出し、一気に痛みが襲ってくる。感じた事のないような衝撃に震え、絶叫してしまう。
そうして床に倒れ、血まみれになりながらもだえ苦しむ。
痛い……痛いなんて済まされないほどの苦痛が襲ってくる。なに、これ。一体なにが。
「くだらねぇ。てめぇらの法なんざ知ったこっちゃねぇんだよ」
そして不審者はまた銃声を……まさか、撃たれた? そんな馬鹿な、私は警告した。
バインドだってかけた。ここまでしたらもう……そんなはずはない。私は、正しい事をしている。なのに……!
「てめぇら管理局とやらは馬鹿だ。てめぇのルールを語れば、疑いなく誰もが信じると思ってやがる。
引きこもった、一歩も前進しない思考――押し付けがましい偽善と悪意、それがてめぇらの正義だ」
怪人物は私の前に着地し、馬鹿にした様子で見下ろす。やめて、そんな行動はやめて。
私は正しい事をするの。もうこんな事を止めたいだけなの。それなのに……!
「お前は特にそうらしいなぁ。さぁ、命乞いをしてみろ。そうしたら助けてやる」
「やめ、なさい。愚かな、事は。私達を、信じればいいの。罪を償い、世界と向き合い」
そこでまた銃声が響く。左足が撃ち抜かれたのだと気づいて、情けなく泣き叫んでしまう。
足を見ると中程がほとんど抉れ、もうすぐ千切れそうなレベルだった。更に不審者は私の左腕を踏む。
あっさりと骨が潰され、接触箇所から血が迸る。なに、この力……普通の強化魔法じゃない。
「向き合ってねぇのはてめぇだろ。……お前は今日、ここで苦しんで死ぬ。それが答えだ」
銃口が頭に……いいえ、まだ無事な右足へ向けられる。じわじわとなぶり殺される……でも、誰も助けてくれない。
私を信じ、行動してくれない。なぜなの、なぜこんな……私は、ただ。
「右足、もらうぜ」
その言葉で恐怖し、私は意識を手放す。こんなのは夢だと、何度も呪いながら。
だって現実の私はフェイトやなのはさん、はやてさん達――そんな希望に未来を、生き方を預けて幸せに生きているんですもの。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
女は白目を剥き、血と同じ量漏らしやがった。くせぇなぁ、目つきや性根と同じくくせぇくせぇ。
もう興味もないので足をどけ、ついている血は床にこすりつけ拭う。とりあえずここへ座れば、この船は俺様のもの。
なんでこんなとこにいるかは分からないが、これで十分らしい。ほんじゃあまぁ……まだか。
出口へ振り返り、デンガッシャーの銃を数発連射。ドアを穴だらけにして吹き飛ばす。
だがなにもいない。さっきまで気配は感じてたんだが。
「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そこで後ろにその気配。左腕で咄嗟にガード体勢を取ると、白い気配は俺様へドロップキック。
なんとかガードするも、耐え切れずに廊下へと飛び出ちまう。それでも踏ん張り停止すると、今度は青い影。
イマジンらしいソイツは俺へ体当たりをかまし、でかいずう体で数メートル押し込んでくる。
更に俺へ連続ボディブロー。そんな奴をなんとか受け止められたので、右膝蹴りで腹を蹴りよろめかせる。
右肘打ちで後頭部打撃――離れたので右足でケンカキック。顔面を蹴り飛ばして廊下へ転がしておく。
奴は口元を拭い、さっと立ち上がった。更に左手から蒼いデンオウベルトを取り出し、さっと装着。
……なるほど、特異点と契約してるわけか。だが見た事のない面だなぁ。
「てめぇ、見た事がないイマジンだな。だが」
ブリッジから白い影が飛び出してくる。あのハリネズミイマジンは、蒼いカブトムシと違って見覚えがある。
「そっちのハリネズミもどきはよく知ってるぜ。てめぇ、どこに行ってやがった」
「へーんだ! お前の言う事なんて聞く気なかったから、フェイトちゃんの中でずーっと寝てたんだよー!」
「……なるほどな、だからあの女の記憶が蘇ったわけか」
フェイト……あの金髪女だな。記憶を食らい尽くしたはずが、どうしてか復活した。
疑問に思ってたが、あれは奇跡でもなんでもねぇ。イマジンに憑かれていた事が原因だ。
イマジンは使用者の記憶――イメージに基づいて肉体が作られる。同時に契約者との繋がりもそこで形成だ。
それは未契約状態でも変わらず。恐らくだがその繋がりを通し、契約者の記憶や時間もある程度保全されてるんだろ。
ようは本人が記憶すっ飛ばしても、俺達が覚えてるって話だ。俺達はバックアップ用のサーバーでもある。
普通の記憶喪失ならともかく、能力関係でそこがすっ飛んだらそれが起動・補する仕組みってわけだ。
ようやく理解できたぜ、ハリネズミ……お前のせいで奴らは折れなかったわけか。コイツは殺さないとなぁ。
勝てる悪の組織を作る俺様は、この程度の事実は軽く導き出せる。つまり……コイツを殺すのは正解ってわけだ。
「それより……お前、ネガタロスじゃない」
「なにを言ってやがる。俺様は俺様だ」
「欠片ってやつか。汁粉、ちょい下がってろ」
「汁粉って言うなー! でも了解ー!」
おかしい事を言う奴らだ。だがまぁいい、弱い人間どもを踏みつけるよりは楽しめそうだ。
デンガッシャーを放り投げ、パーツを自動分割――ソードモードになったそれを掴むと、紫の刃が生成される。
「お前、悪の組織目指してたんだってなぁ」
「よく知ってるな。そう、俺様は勝てる悪の組織を目指している」
「だったらオレは、それをぶっ潰す正義の味方だ。――変身!」
カブトムシはバックルにセタッチ――蒼いミラー状の光がバックルから展開し、奴の体へ集束。
≪Joker Form≫
それは俺様のものとよく似た、丸みを帯びたアーマーとなった。兜は丸い複眼で角つき。……あれも電王か。
「正義の花道」
右手で天を指差ししてから、カブトムシは時計回りに一回転。俺様をビシッと指差す。
「推して参る!」
「ほう、いい名乗りだ。ならば」
俺も勝てる悪の組織(仮)首領として、応えなければならないだろう。デンガッシャーの刃を右肩に担ぎ。
「悪の花道」
左手で奴をクイクイと挑発する。
「オンステージ」
「……やるな」
「お前もな」
どうやらお互い通じるところがあるようだ。自然と俺様達は笑いを上げていた。
だがそれも少しして終わり。奴はデンガッシャーをソードモードにし、右に振りかぶりながら俺様へと踏み込んできた。
だがその足が止まる。そうして驚いた様子で、俺の足先を見た。
「おい、どうした。おじ気づいたのか」
「お前、足」
「足がどう」
そうして足先を見て、つい寒気が走った。足は既になくなり、俺様の体は徐々に崩壊し始めていた。
「……なんじゃこりゃあ!」
「もしかしてカブちゃんがボディブローしまくったから、クリーンヒットしたんじゃー」
「マジかよ!」
「おい、お前ら、これはなんだ! 俺様は一体」
そうして伸ばした左手も、まるでガラスのようにひび割れていく。
言いようのない恐怖で苦しみながら、俺様を包む世界は黒へ染まった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
カブタロスがネガタロス相手に奮戦しているであろう頃……大丈夫かな、汁粉も一緒だけど。
とにかく僕はアースラから二百メートルほど離れた上で、システムU-Dと対じしていた。
あのめちゃんこ強いっていう赤いのじゃない。それが今は救いだ、全力を出されたらアースラが沈む。
「あなた、どうして」
「本当に陳腐な作戦だよ、システムU-D」
「……母親を見捨てたの? ならあなたは歴代闇の書の主と同じ。とても冷酷で、人を人とも思わない悪魔」
「悪魔はお前だろ、それが分かっててあれを仕掛けてきたんだからな」
コイツはネガタロスの欠片を囮とし、自分はレヴィ達のところへ乗り込む。
そうしてマテリアル達を消し去り、もう僕達が抵抗できないよう叩きのめす。
でもねぇ……気配くらいは消しておこうか。ジャミングしてても丸わかりだったよ、乗り込んできたのはさ。
なのでカブタロスと白子を呼んで、リンディさんとブリッジメンバー救出に向かってもらった。
ネガタロスで時間がかかると、コイツが大暴れして船ごと爆発だろうしねぇ。でも油断はできない。
欠片があれだけとは限らないし、あれだけとしても追加が出ない理由もない。さて、踏ん張りますか。
「無駄なのに、みんな死ぬしかないのに……どうして」
そこでシステムU-Dが翼を広げ、僕へ突撃。左へ回り込み、翼拳での右ストレートを回避。
システムU-Dはすかさず振り返り、左の翼を手に変えて逆袈裟の引っかき。
アルトを右切上に打ち込み、拳を払った上で肉薄……でも足を止め、すぐに上昇。
僕の周囲を赤いバインドが囲んでいた。なお退避する時、クレイモアのスフィアを設置しているのでファイア。
顔面と胸元に散弾を食らったシステムU-Dは、よろめきながら爆煙に包まれる。
でもすぐにこちらへ雨のような弾丸達。それを右に避けると、爆煙からなにかが突き抜けてくる。
システムU-Dの突撃――からの至近距離砲撃を飛び越え回避し、その背を取りながら右薙一閃。
逆立ち状態で放った斬撃により、魔力翼の根本が深く断ち切られる。でもすぐに右翼での裏拳。
鋭く回転しながら、斬撃をアルトで払う。更に回転し、背を蹴飛ばし十数メートル吹き飛ばす。
すかさず向こうはノーモーションで砲撃。背から放たれた赤い砲撃へは、逆立ち状態を解除した上で逆袈裟一閃。
砲撃が蒼い剣閃で斬り裂かれ、膨れ上がりながら爆散。……そこで赤い影が僕の背後へ回り込む。
掲げた右手から赤黒いヒカリが生まれ、二メートルほどの剣が飛び出る。時計回りに一回転し、刃は回避。奴の背後を取り。
「飛天御剣流」
カウンターの右薙一閃。蒼い剣閃がシステムU-Dへ迫る。
「龍巻閃!」
斬撃は展開した赤いシールドによって防がれるも、それは一瞬。アルトの刃は、シールドごと首を両断する。
システムU-Dの体は前のめりに倒れかける。……が、そこで踏ん張って、出しっぱにしていた巨剣を右薙に振るう。
バク転で斬撃を飛び越えると、すかさず刃が返って刺突。すかさず刺突を打ち込み、巨剣の侵攻を止める。
二つの切っ先が衝突し合い、ぎりぎりと火花を走らせる。なかなかの圧力だ。だが……この程度じゃあねぇ。
力を更に込めて押し込むと、刃が弾かれる。いや、赤いそれがひび割れて一気に砕けた。
……舞い散る破片に嫌な予感がして、空中を素早く蹴って奴の左サイドへ移動。破片は一瞬で僕のいた場所へと打ち出された。
それが虚空を貫く中、システムU-Dが赤い魔力を体に纏う。転送魔法を発動し、二百メートルほど後退。
次の瞬間、魔力弾がオールレンジで放たれた。やっぱりそういう攻撃か。
全方位に放たれた高密度の魔力弾は空を突き抜け、海面を叩き、更に僕へも数発迫る。
それをアルトの乱撃で斬り払い、攻撃が終了したところでアルトを一回転。
≪な、なんなのアイツ……! 動きは主様でもついていけてるけど、全然効いてないの!≫
≪これはスタミナ負けしますね≫
「同感」
動きは問題なく対応できる。僕にはバインド関係が通用しないし、アイツも戦い方を考える必要がある。
でも攻撃が通用しない。やっぱ例の魔力カートリッジを使わないと駄目か。……いや、今は駄目だ。
奇襲されている時点で、計画していた通りな連係攻撃はできない。しかも今戦力はガタガタ。
下手に使って倒しきれなかったら、次は対策される。やるなら一発勝負――今はコイツをどう撤退させるか。
それもかなり早めじゃないと困る。あの赤いモードになるのだけは避けないと。
”お兄様、どうします? リインフォース・ライナーで”
”駄目。アースラが近いし、キャラなりするのは”
”異能力を完全キャンセルされるからな。ここは応用力の勝利か……もぐ”
”くそ、これで本気じゃないんだよな! どこまで底が深いんだよ、このレディは!”
「宿命は歯車と似ている。そして歪んだ宿命は、その人の形も歪める」
うちのしゅごキャラ三人が苦々しく会話していると、アースラ各部から爆発が起こる。
爆発が起こるたび、船のバランスが崩れ……ち、他の欠片か! 気配が増えてきてる!
「歪んだ人は過去に捕らわれ、都合のいい『真実』に逃げる。彼女達のように」
≪……フェイトさん達ですか≫
「彼女達も宿命に従っている。そうして逃げ、間違え続けるという宿命を。
誰も真実など、救いなど欲していない。欲しいのは依存できるなにか」
そこまで言って、システムU-Dはまた涙を流す。その姿が余りに腹立たしい。
でもコイツの言っている事、そこまで間違ってはいない。フェイト達はこの問題を解決しようなんて考えてない。
自分にとって都合のいい形を得るため、みんなを利用しているにすぎない。
フェイトは問題を解決し、更に僕やあむの『レアスキル』について理解・修得。そうして組織やリンディさんに褒められる事。
アルフさんもさほど変わらない。あの人、基本家長に尻尾振ってるだけの人だから。
はやて達八神家は言うまでもなく、闇の書事件という負の遺産。リンディさんもここへ入る。
だから馬鹿どもは都合のいい事ばかりを抜かす。自分達が思う通りにするため、他者を平然と利用する。
ここは機動六課そのものだ。嫌だねぇ、みんな元々とんでもない馬鹿だったんじゃないのさ。
「あなたも抗わず、私達と同じようにすればいい。そうすれば、絶望せずに済む」
「笑わせるねぇ」
すっと右に移動し、発生していた空間固定型のバインドを回避。笑いながら左親指で胸元を差す。
「絶望なんざ、向こうから逃げてくに決まってるじゃない。僕を誰だと思ってんのよ」
「……どうして、なの。もうどうしようもないのに。止められないのに」
更に左斜め下から、炎を伴った砲撃が発射される。システムU-Dは右の翼を羽ばたかせ、裏拳として砲撃を払う。
爆煙すらも爪で斬り裂きながら、奴は発射の根本を見る。……そこには当然、みんながいるわけで。
今のはシュテルの砲撃か。とりあえず中の混乱でやられてなくて安心した。
「なのにシュテル、ディアーチェ、なぜあなた達も抗うの」
「システムU-D……我の言う事を聞け! 我と一緒にこの世界を制」
≪Connect≫
変な事を言おうとしたので、魔法発動。アルトの切っ先を奴の頬に突きつける。するとディアーチェは笑顔で方向転換。
「……平和的に世界で暮らそう! うむ、その方がいい!」
「あなた達はもう、なにもできない。あなた達の城は崩れ落ちた」
そこでシステムU-Dの姿がかき消える。転送魔法……目的は達成したってわけか。
その目的は墜落しつつあるアースラ。これは……慌ててあむとみんなに念話を送る。
『もう諦めて。運命を受け入れて――この世界は死で満ちるしかないのだから』
”あむ、みんな、すぐ脱出して! アースラは墜落する!”
”はい!? でも他の人達が……それならリメイクハニー!”
”……できるの!? 戦艦だけど!”
”できる! てーかやる!”
中の方はとりあえず安心っぽい。あとはカブタロス達が上手くやってくれる事を願うのみ。
「システムU-D、待て! ……なぜだ、なぜ我の言う事を聞いてくれない!」
「当然でしょうが。あれはもう、お前の望みを叶えている」
まだ分かっていない王様に冷たく言い放つと、王様は信じられない様子で首を振る。
「嘘だ! 我はあれとコンタクトできていない! ちゃんと制御できていない! なのに叶えられるわけがない!」
「叶えてるでしょ? みんなが死ぬ世界――お前も、レヴィ達もだ」
理屈じゃない、結果の話をしている。それは王様も分かったらしく、悔しげに俯いた。
……さて、中へ突入したいとこだけどそれは……マズいよなぁ。長距離砲撃とかくるかもだし、備えは作っておきたい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ポップしていた欠片も、レヴィ達が暴れてくれたおかげでなんとか退治できた。
もうね、ここは幸運だったよ。今まで出てきたなぞキャラなりだったんだから。
みんな要領は掴んでいたから、説得&パンチで次々と潰せていった。
その上ネガタロスも予想に反し、拳の連打で……欠片だから耐久力、低かったよね。忘れてたわ。
カブタロスと白子は残念そうだったけど、面倒が起こる前にデンライナーへ戻ってもらった。
アースラ本体とけが人も、あむのリメイクハニーでなんとかお直し完了。
なおリンディさんは……目を覚ましても恐怖は拭えず、発狂状態で医務室へ幽閉された。
なお本局へは送れない。そうなると記憶封鎖の手間が更に広がる。まぁしばらく苦しんでもらおう。
アースラは曲折あり、次元空間で身動き一つせず停泊。フェイトや八神家達もそこへ置き去り状態。
もちろん拘束してるし、船は完全停止状態だから抜け出す事もできない。まぁゴーストタウン化してるけど頑張ってほしい。
僕達は海上近くの岸辺へ降り立ち、私服姿で頭を悩ませるわけで。
なお別行動していたロッテさん達からお願いされて、シグナムさんは引っ張ってきてる。未だに引きこもり状態だけど。
「……みんな、またまたご苦労だった。だが」
「クロノ、君」
「状況は考えうる限り、最悪だ……!」
「みなさんが知っての通り、アースラはシステムU-Dの襲撃を受けました」
シュテルの説明にも、『知ってるっていうか経験した』なんて誰もツッコめない。それだけで状況の悪さは察してほしい。
「システムU-Dが直接乗り込んできて、大暴れした。その上リンディ提督へのリンチです。
あの様子はシステムU-Dのコントロールにより、艦内の至るところで流されていました。
……結果主要スタッフは二の舞いを恐れ、提督の制止も無視して艦から脱出」
「……恭文さん、これは」
「リンディさんってところがみそだね」
発狂したリンディさんを殴り飛ばした時、回収した携帯を取り出す。そこに記録されていた通信を再生。
それはフェイトとのもので、リンディさんはフェイトに助けを求められていた。
なおフェイトはバリアジャケット姿で、背景は外。リンディさんの姿は映っているわけもなく。
「これは」
「見ての通り、親子の通信です。なお着信時刻は……あー、僕達がディアーチェを回収してる時ですね」
『――母さん、お願いします。ヤスフミやクロノ達は勝手な事ばかりするんです。
マテリアル達と協力し、闇の書の闇を生かそうとしている。こんなの、間違っているのに』
『その通りよフェイト、あなたは正しい。分かったわ、なら私に任せて。
私が艦長として事態を必ず解決へ導くわ。だから私を、仲間を信じて』
「フェイト……! アイツの」
怒りに震え始めたクロノさんだけど、違和感に気づいて顔を真っ青にする。
ヴィヴィオやアインハルトもぎょっとする中、あむが首を傾げた。
「みんなどうしたの? ていうか、これならフェイトさんを問い詰めて」
「あむさん、なに言ってるんですか! 時刻を考えてー!」
「時刻って……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! そ、そうじゃん!
フェイトさん、アースラにいたんだよね! 自室待機だったんだよね!」
「……そうだ。もちろん出たというわけでもない。見張りもつけていたしな。
部屋には通信機器もないし、バルディッシュも恭文の協力で預かっていた。つまりこれは」
「システムU-D……あの子」
キリエが険しい表情で舌打ち。そうしている間に通信が終わったので、画面を閉じる。
「あの馬鹿提督、まんまとアースラへ引きずり出されたのね。リンチするために」
「リンディさんは元々アースラの艦長。今いるスタッフもその時代から継続してって人も多い。
……そんなリンディさんが虫けらの如く蹂躙され、結果お漏らしだよ。衝撃的すぎるでしょ」
「それじゃあ……恭文君、あの子はこうなるのを予測して、あんな襲撃を仕掛けたっていうの?」
「そうだよ。じゃなかったら、このフェイトが説明できないでしょ」
「そういう人達の心をへし折るには、十分って感じかな。でも、悪質すぎるじゃん!」
「システムU-Dは我々に知らしめたのかもしれません。
人は自分の宿命――傷や痛み、恐怖という歯車には逆らえないと」
シュテルの締めで、場の空気が暗くなる。……本当に見せしめなんだよ、リンディさんは。
局員としての使命感で突っ込んだら、ああなるという見せしめ。運命には抗えないという見せしめ。
そのために自らが乗り込んできた。これ自体もとても意味が大きいのよ、安全圏なアースラも射程内って知らしめたんだから。
その事実で大半の人間が心をへし折られた。古参もそうだし、割りと新しい人達も。
一応艦長なクロノさんへ、大多数の人間が『退艦させてくれ』と殺到。
クロノさんは宥めるものの、次は転送装置へ殺到する。……そうしてアースラには、誰もいなくなった。
いや、エイミィさんみたいな、キモの据わった人達はいる。でもね……数人じゃああの船は動かないから。
結局僕達は手分けして、安全と思われる次元空間内へ船を転移。その上で放棄するしかなかった。
「クロノ提督が仰ったように、状況は最悪そのもの。本拠地を奪われた以上、取れる手は一つしかありません。
もたもたしていればまた同じ形で、今度は我々が誘導されかねない」
「シュテるん、つまりどうするのかなー」
「わたし達でシステムU-Dと、真正面から激突するのよね」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
でもキリエとシュテルの言葉に、驚いたレヴィはすぐ納得。
「……って、もうそれしかないかー。じっとしてたらジリ貧だしねー」
「ただそのためにはキーが足りません。まずは戦力」
そこでシュテルがちらっと、困り気味に唸っているアミタを見る。
「アミタ、あなたも力を貸してください」
「で、でも」
「というか、はっきり言えばいいではありませんか。あなたは私やクロノ提督達だけでなく」
次にシュテルが見るのは、当然僕達未来組。
「未来組も同じくだと。……ヤスフミ達が自分の都合で過去を変えるのではないか。そうあなたは危惧している。だから関わらせたくない」
「な……! アミタ、アンタそうなの!? だったらマジあり得ないじゃん!」
「いえ、断じてそんな事は! これは……あれです! ギアーズとしての使命で、燃え上がる心のエンジンが」
「エンジンが燃え上がったら駄目でしょうが。おのれはポンコツか」
冷たくツッコむと、なぜかアミタが吐血。岩場に崩れ落ちてしまった。
「わーお、さすがわたしの旦那様♪ お姉ちゃんの暑苦しい熱血をツッコミ一つで潰せるなんてー」
「誰が旦那じゃボケがぁ! ……アミタ、安心していい。もしあむ達の誰かが過去を変えようとしたら、僕はソイツをぶちのめす」
もう面倒なので宣言すると、アミタがハッとしながら顔を上げた。
「なにがあろうと絶対に止める。過去は変えさせたりなんてしない」
「どうして、なんですか。あなたは……あなたにとって変えたいものが、ここにはないんですか!」
「ない」
「嘘です! この時間のあなたは後悔します! 提督達の、執務官達の愚かな行動を止められない事に!
でも今そのチャンスがあるんです! そんな誘惑にどうしてそう、平然と打ち勝てるんですか!」
「つまらないじゃないのさ、そんなの」
スパッと言い切ってから、また左親指で胸元を指す。
「それは逃げだ。今の自分と戦って、勝ち取った答えじゃない。悩んで迷って、それでも選んだ覚悟がない。
だからそんなのはつまらない。僕が変えたいのは、守りたいのは過去じゃない。ここにある今と、可能性という名の希望だ」
アミタは僕の答えにあ然とする。対して妹のキリエは、やっぱりおかしそうに笑うわけで。
「どうお姉ちゃん? 凄いでしょー。わたし、こういう男だから妾になってもいいって思ったのよ」
「だからそれやめてもらえます!?」
「恭文、フェイトママには報告しておくねー」
「やかましいわ!」
「ああもう……分かりました! 協力します! もう一人で戦うなんて言いません!」
とりあえずアミタが納得してくれたので、馬鹿なキリエはしっかり絞め上げておく。
てーか……ほんとやめて! 僕が妾を募集してるみたいだから! そんな事ないから!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文はキリエさんを絞め上げぶんぶん揺らしてるけど、キリエさんはおかしそうに笑うばっかり。
まぁ恭文も分かってるよね。場が暗くなってるから、キリエさんがおどけてるだけだーって。
クロノさんやママ達もしょうがないなーって感じになってるし、これはいい感じで肩の力抜けたかなー。
”ヴィヴィオさん”
そこでアインハルトさんから念話。頭の上に乗ったクリスは一旦下ろし、ちらっと左となりのアインハルトさんを見る。
”はいはいー”
”また分かった気がします”
”なにがでしょう”
”どうして恭文さんが古き鉄と呼ばれているのか。どうして会って間もないキリエさんや、シュテルさん達に信頼されているのか”
アインハルトさんは納得した様子で、静かに目を閉じた。
”選んだ選択を背負う覚悟――そして選び続けるという戦いへの覚悟、そこから逃げないから強いのですね”
”はい。だからヴィヴィオ的には、ハーレムからも逃げずに頑張ってほしいなーと”
”そ、それはまた別問題では”
まぁアインハルトさんも納得してくれたようで安心安心。……実はちょっと不安だったから。
やっぱりアインハルトさんにとって、過去は特別なものだろうし。だから今の答えには安心してる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ではヤスフミ、あなたの言葉を信じさせてもらっていいでしょうか」
「なによ」
「できなくもない、です」
そこであむやヴィヴィオ、アインハルトにトーマ達の表情が険しくなる。ようは全力でやれと。
まぁ、キャラなりを除いたら奥の手ってやつは一応ある。多分あれにもダメージを与えられる。
ていうか……この調子だと絶対必要になる。なのでシュテルのメッセージには、しっかりと頷いた。
「大丈夫だよ。こういう状況だし、腹は据わった。ただし細かいところは伏せるけど」
「それで構いません。感謝します」
「シュテル、それなら蒼にぃだけじゃなくて俺達もだ」
そこでさっと挙手してきたのはトーマ。リリィもガッツポーズ……つまり。
「つまり、あなた達は」
「システムU-Dに叩きのめされたのが、逆によかったのかも。……わたしたちのエンゲージ、もう本調子だよ!」
「今なら魔法戦だろうとあれに対抗できる! 壁役は任せてくれ!」
「心強いです。では」
「――ごめん、遅くなった!」
そこでリーゼさん達が、ユーノ先生と一緒にこちらへ飛んできた。そのまま僕達の脇へ降りてくる。
「ユーノ君! あの、あのあの!」
「なのは、落ち着いて! さすがにそれだけじゃあ分からないから! ……シグナム」
慌てるなのはを落ち着かせた上で、ユーノ先生はシグナムさんへ右手を差し出す。
そこには……やや汚れたレヴァンティンがあった。
「レヴァンティン!」
「アタシ達で探したんだ。もう苦労したよー」
「でもごめんね、肝心な時留守にしちゃって。だけどシグナム、これは」
アリアさんの言葉を、シグナムさんは右手を挙げて止める。そうしてなぜか僕を見上げてきた。
「蒼凪、システムU-Dは言っていたのだったな。私達は……真実から逃げていると」
「聞いてたんですか、ひきこもり状態だったのに」
「がはぁ!」
「蒼にぃ、やっぱり鬼だ……!」
吐血するシグナムさんを見て、なぜかみんなで力いっぱい頷く。おかしいなぁ、事実なのに。
「と、とにかくそれは間違いなかった。私はあれやマテリアルを完全破壊する事が、過去を払拭する道だと考えていた。
主達も同じだ。そうすれば局でより認められ、罪の償いに拍車がかかる。……だが」
シグナムさんは口元の血を拭い、バッと立ち上がる。そうして全員に頭を下げてきた。
「その言葉で目が覚めた! 頼む――お前達と戦わせてくれ! 過去ではなく、今を守るために!」
面食らったアリアさんやロッテさんが、僕やクロノさんを見る。
クロノさんが頷いたので、ユーノ先生がレヴァンティンを渡した。
シグナムさんはそれを受け取り、もう一度深々とお辞儀。レヴァンティンを首にかけ直した。
「例のカートリッジも相当数準備できてるよ。クロノ、本局の設備を使わせてくれてありがと。かなり助かったよ」
「じゃあえっと、例のカートリッジは無事なんだよね! 恭文やなのはさんもガチで戦える!」
「もちろん。……現状だと、それでもかなり厳しいと思うけど」
「安心しろ、これ以上厳しくなりようはない。あとはシステムU-Dの居場所だが」
クロノさんは苦笑しながら、海上沖を見る。……姿は見えないけど、魔力による圧力はビシビシきてる。
もう存在を隠そうともしない。欠片もほとんど吸収されつくしてるし、どちらにしてもタイムアップだったよ。
放置すれば海鳴や他の世界もやばい。なのでディアーチェの頭を掴んで、ガシガシ揺らしてあげる。
「考えるまでもないか。あの圧力がここまで響いている」
「システムU-D、周辺の魔力をかき集めて、あのあかモードになろうとしてるっぽい! あとはそこへ行くだけだね! ……王様」
「分かっておる。もう……ぐだぐだ言わん! お前達に合わせてやる! だから離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「信用できない奴に自由を与えてどうするの?」
「貴様悪魔だろ! と、とにかく行くぞ! 最終決戦だ!」
こうして僕達は岸から飛び立ち、最終決戦の地へ。戦力は予定の半分以下だけど、なんとかするしかない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
沖合三百キロ――システムU-Dは目と鼻の先と言ったところ。ほぼ特攻に近い僕達は二チームに分かれていた。
僕とシュテル、あむ・アインハルト・キリエ・ロッテ・シグナムの第一チーム。
恭文とトーマ、レヴィ・ディアーチェ・なのは・ヴィヴィオ・アミタ・アリア・ユーノの第二チームとなっている。
ようは波状攻撃だ。第一チームで相手を弱らせ、第二チームで仕留める。更に言うと、第二チームはガード役だ。
ディアーチェは最後の最後、システムU-Dを制御する役割もある。その警護も兼ねた布陣となっている。
第二チームの人数が多いのも、あの赤いシステムU-Dを相手取ると考えた上で。
ユーノとリーゼ達が頑張ってくれたおかげで、カートリッジも相当数ある。
更にシュテルにもなのはと同型のものを持たせている。ほれ、彼女の使うデバイスはなのはと同型だからな。
まさかなのは達の姿を取っているのが、こういうところで役に立つとは……なにがあるか分からないものだ。
そこは予定よりもよくなっている点。第一チームの攻撃起点はシュテルとシグナムになる。
僕のシステムは事前に言われていた通り、一度切りだ。使いどころを間違えないよう、注意しなければ。
とはいえ、それで使う魔法はもう決まっている。僕の最大火力で、彼女の力を削り取る。
「提督」
「あぁ」
見えてきた……システムU-D。彼女は周辺の欠片をも吸い込んでいるようで、欠片と結界反応は既に大半が消失。
彼女はやはりあの姿となって、大暴れしようとしている。やはり迷っている時間はないか。
「シグナム、アインハルト、シュテル、君達がフロントだ! しっかり頼むぞ!」
「「「心得ました」」」
「他のみんなは逐一指示を飛ばす! それまで警戒!」
『了解!』
シグナムが先頭となり、アインハルトとシュテルがそれに続く。安全距離は確保した上で、あむと一緒に待機。
なおアインハルトはカートリッジなど使えないが、一つ試したい事があるそうだ。
それが通用するなら、彼女は継続して戦ってもらう事になる。さて、どう転ぶ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
シュテルさんは私達の少し後方で停止。前線はシグナムさんと二人……正直緊張する。
でも迷いはない。私も今を選んで、戦いたい。そのためにまず一歩を踏み出す。今も泣いているあの子へ、手を伸ばす。
「あなた、達は」
「……お前を待っている子達がいる。その物騒な力は一旦収めて、ついてきてくれまいか」
「どうして、なの。私は誰も」
彼女は泣きながら、血の翼を広げる。その内に無数の魔力弾を展開……すっとシグナムさんの前へ出た。
「殺したくない。なのにどうして、きてしまうの。諦めてしまえばいいのに……全部終わると、受け入れてしまえばいいのに」
「そんな事はできません」
空中を踏み締め、腰を落とす。深く呼吸した上で左半身を突き出し、右拳を引いた。
相手との距離は百メートルほど……でも一瞬で踏み込まれる。そして一撃食らえば終わる。
膨大な魔力とは裏腹に、彼女はまだ泣き続けていた。
「あなたは、覇王」
「いいえ、私はアインハルト・ストラトスです」
「そんなはずはない。あなたは苦しんでいた。過去に――仕込まれた歯車に苦しんで」
彼女は知っている? いえ、恭文さんやトーマさんの事も事前に知っていたご様子……それくらいは楽勝というところですか。
「それでも私として向き合わなければならないものが、行かなければいけない場所があります。引くわけにはいきません」
「烈火の騎士……彼女達と一緒に、消えて。私の手が届かないところへ。
どこかにあるかもしれない。私が私じゃなくなる前に、逃げ切れる場所が」
「無理だ」
「あなたも宿命に抗うというの? 壊されて、消えるだけなのに」
「抗わせてもらう。……私は愚かだった。お前達を消しても過去は変わらないというのに」
シグナムさんが居合いの構えを取った瞬間、無数の弾丸が撃ち出される。……まずは深呼吸。
その上で右拳を掌底に変え、前へと突き出した。その瞬間、衝撃波が渦を巻き展開。
放たれた百発以上の弾丸を受け止め、一気に反射――数十メートルという距離を、弾丸達は跳ね返っていく。
この反撃は予想していなかったらしく、その全てをシステムU-Dは食らう。
でもすかさずシグナムさんが踏み込み、カートリッジロード。刃に炎を纏わせ、袈裟の斬撃。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
用意してもらったカートリッジは危険もなく、安全に稼働してくれる。
力の出方が少々おかしいが、これもワクチンゆえだろう。きっちり制御した上で袈裟の斬撃。
システムU-Dはそれを食らい、平然とした顔で左手をかざす。だがその動きが僅かに止まる。
効いている――直感的に判断し、伸びた腕を右足で蹴り上げた。
「変えられるのは」
その手の平から構築された魔力は、歪みと化して刃を吐き出す。
すかさず振り下ろされる巨剣は右にかわし、すぐさま逆袈裟・左薙・逆袈裟と連撃。
「今だけだ!」
彼女が展開したシールドに防がれたので、素早く斜め上へ退避。右へと大回りに回避行動を取り、流れた巨剣をなんとかかわす。
すかさず私の反対方向から、シュテルによる炎の砲撃が襲う。それを背に食らい、システムU-Dがよろめいた。
さらには次々と短剣が射出され……あれは日奈森か。魔法戦は慣れていないとの事だが、果敢に援護してくれる。
システムU-Dが振り向いて、右手をかざしシールド展開。突き刺さりは爆発する短剣が爆破したところで踏み込む。
だがすぐさま足を止め、左薙一閃。裏拳の如く打ち込まれた刃レヴァンティンで払う。……いや、押し込まれた。
「無駄な事」
やはりパワーは向こうの方が上。思いっきり吹き飛ばされながらも刃を振るい、レヴァンティンはシュランゲフォルムへ変化。
柄を逆袈裟に振るうと、切っ先がヘビの如くうねる。そうして五十メートル以上離れたシステムU-Dへと迫る。
「私の前では全てが無力。抗ってもあなたの心が壊れるだけ」
「残念だが」
今度はノーモーションで障壁展開……いや、一瞬だけ水色のバインドがかかった。
それに驚いたのか、障壁の展開速度が僅かに緩んだ。右手首を捻り、蛇腹剣の軌道を変える。
「それが性分だ!」
渦巻くようにして障壁の脇をすり抜け、レヴァンティンの切っ先は彼女の胸元へと突き立てられる。
そこで爆発発生。好機とばかりにバックの全員が砲撃や短剣を打ち込み続ける。
レヴァンティンを引き戻し、再び片刃剣へ変更。だがそこで全員の射撃や爆煙を払うように、赤い衝撃波が走る。
咄嗟にシールドを展開し、空間いっぱいに広がる衝撃波をなんとか防御。だが……とても重い。
歯を食いしばりながら障壁に耐えると、やはりシステムU-Dは無傷だった。しかも戦闘スタイルは合理的だ。
ダメージにならないのなら、避ける必要もない。ただ受け止め、攻撃直後の隙を狙うだけでいい。
あの小柄で戦い方は超重量級。しかもあれでは大技が出しにくい。それで隙だらけなところを突かれたら……!
そんな彼女の背後からアインハルト・ストラトスが突撃。……そうだったな、我々は一人ではない。
一人では、自分の考えに閉じこもっているだけでは宿命に抗えない。だが間違いを正し、引き戻してくれる仲間がいる。
そして私も引き戻そう。間違いに深く踏み込んだからこそ、分かる境界線もある。
前衛はストラトスに譲り、左手でレヴァンティンの鞘を抜く。柄尻に鯉口を合わせ、鞘とレヴァンティンと一体化。
その間にシステムU-Dの翼から、次々と杭が放たれる。それをジグザグ走法ですり抜け、彼女はシステムU-Dの懐へと入った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
なんという圧力――そして小柄なのに、超重量級の戦闘スタイル。さらには攻撃がどれもこれも正確。
ちょっと油断すればすぐに死が待っている。これが実戦……記憶の中のみで存在していた世界。
でも彼女は少々正確すぎる。狙いがはっきりしているなら、感情さえ乱されなければ対処は可能。
滑りこむようにシステムU-Dへ肉薄し、まずは左ストレート。彼女はそれに対し、ノーモーションでシールド展開。
赤黒い障壁で私の拳を受けとめてか、すかさずバインドを展開する。そうして私の四肢は戒められてしまう。
「……私の防御障壁を砕く、特殊プログラム。作ったのはシュテル? どちらでもいい」
そんなたわ言に構わず、腰に力を入れる。脱力、捻り、そして無心……!
彼女は右手をかざし、そこに魔力を集束。その背後をクロノ提督やキリエさんの砲撃、日奈森さんのダガーが襲う。
でも別の障壁がすぐ展開され、それらは防がれた。次の瞬間、私の胸元に巨剣が射出される。
右拳を振るい、バインドを砕きながら身を撚る。赤黒い破片が舞い散ると、彼女は驚きながら目を開いた。
縦に突き出された刃は私のすれすれを通り過ぎ、私の拳は巨剣から発生する圧力に構わず彼女の胸元へ。
拳を受けた事で彼女はよろめき、巨剣を手放しながら後ずさる。すかさず踏み込むと、またバインド。
それを打ち砕きながら左ボディブロー。その手応えはやはり重いけど、絶対ではない。
バインドがいい証拠だ。彼女の戦い方は余りに正確――それがこう答えを出している。
現在のまま攻撃を受け続けたら、『万が一』が起きると。だから言葉とは裏腹にこんな技を使う。
ならばプログラムが効いているうちに攻め込む……! 爪となり、両翼が私の頭上から襲う。
空中を蹴って、その引っかきを左回りに回避。すかさず足を止め、左右の連打――合計三発。
全て障壁に遮られるものの、追撃はせずすぐさま後ろへ跳ぶ。右裏拳での引っかきを回避すると、彼女の背に黒い影が入った。
「おりゃあ!」
それは斜め下から飛び込んだロッテさん。彼女のドロップキックを食らい、システムU-Dは一拍置いた上で吹き飛ぶ。
「そんな、これは……!」
「覇王」
私は既にその射線上へ移動し、右拳を振りかぶっている。驚く彼女を見下ろしながら、両足で空中を踏み込む。
――覇王にとって飛行魔法は翼にあらず。カイザー・アーツに必要な大地を召喚する術。
両足が虚空を踏み締めた瞬間、パンと弾けた音が響く。その力を拳に乗せ、一気に打ち下ろす。
「断空拳!」
その時、オートバリアが発生――でも本来なら砕けるはずがないそれは、私の拳で砕かれる。
そのまま彼女の左頬を捉え、今度は海面へと吹き飛ばす。数十メートル下の水面へ叩きつけられ、大きな水しぶきがあがった。
「――凍てつけ!」
その言葉で私とロッテさんはその場から離れる。そうして生まれたのは白い冷気。
それが瞬間的に海面をシステムU-Dごと凍りつかせ、凍結魔力によるダメージを与える。
……凄い。百メートル以上に及ぶ、氷の花が咲いている。離れてなければこちらも巻き込まれていた。
提督が前線に出ないのは、局にとって損失に思える。そう思うほどに見事な魔法使用だった。更に。
「これが我らの意志だ」
シグナムさんがロングボウに変形したレヴァンティンを構え、炎の矢を射る。
放たれたそれは不死鳥のように羽ばたき、氷の中心部にいるシステムU-Dへ。
「受け取れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
不死鳥は氷を捉え、溶かす……いや、その前に燃やし尽くして大爆発。更にキリエさんが飛び込む。
銃剣からエネルギーワイヤーが発生しており、十メートル以上ある先には桜色のスフィア。
魔力とはまた違う、重力のように空間を歪めるそれを、キリエさんは体で振り回す。
「おまけよ!」
そうして頭上にスフィアを振り上げると、ワイヤーを通じて更に力が迸る。
五メートルほどだったスフィアは十メートルとなり、一気に打ち下ろされた。
それが炎を抉り、その中でもがいていたシステムU-Dを捉える。彼女の体を押しつぶすように収束し、そして爆発。
水と炎、冷気すらもその歪みで弾けさせ、一時的なクレーターを作る。……これも凄い。
いや、感心している場合じゃない。私達は咄嗟に上へと飛び、回避行動に移る。
爆発の中から全方位で放たれる、砲撃十数発をそれでなんとか回避。爆発を突き抜け、彼女はまた姿を現す。
そうして今度は私に……まぁ、そうくるのは分かっていた。この中だと私が一番弱いだろうから。
「無駄なのに……どうして分かってくれないの!」
でも王、あなたは正確すぎる。彼女が翼の爪を振りかぶったところで、バインドが展開。
白いそれは王の動きを引き止め、私から寸前のところで停止させる。
私もすかさず後ろへ飛び、距離を取った。でもあれでは強度が足りない。だから。
「ホーリークラウン!」
日奈森さんが右手で持ったロッドを振るい、金色の奔流を放つ。白いバインドが砕けた瞬間、彼女が金色の檻に戒められる。
それは白いバインドよりもずっと強度があるようで、システムU-Dが明らかに焦った顔をする。
……そして彼女の頭上に、朱色の炎が走る。その熱が生み出す光を見上げ、システムU-Dが目を見開いた。
「ロッテ、アム、いいタイミングです」
≪Shin Luciferion Breaker≫
それはシュテルさん。持っている特殊カートリッジを全て使い、チャージした最大火力。
炎のスフィアが彼女の前面に展開され、真上からシステムU-Dを狙っている。
「シュテル、なぜ。分かっているはずなのに。あなたは『理』のマテリアル、それなのに」
「この短い間に、あなたが言う無力な存在から」
シュテルさんがデバイス――ルシフェリオンを振り上げる。それにより炎の勢いが増す。
「教わった事を一言で表現しましょう。……そんなの、知った事ではありません」
とても端的で、分かりやすい表現。つい吹き出しそうになると、シュテルさんがルシフェリオンを振り下ろす。
その瞬間炎は手の平サイズへ収束し、そこから一気に噴き出す。空間そのものを朱色に染める砲撃。
それがシステムU-Dを飲み込み、海面を穿ち、蒸発させ、海底へと到達する。
膨大な熱量の中、発生し続ける白いスチームから全員退避。巻き込まれて不意打ちを受けては意味がない。
消えるとは思えなかった炎が消え、海面が失われた空間を埋めるように流れ込む。
そうして荒れ狂う波を見下ろしていると、熱の残滓によって肌がちりつく。
その全てが勝利の確信を抱かせる。これが、普通の相手ならそれで止まれる。
でも違うと、体に悪寒が走る。海の中から、とんでもない量の魔力が生まれる。
その影響を受けてか空がざわつき、あれほど晴れていたのにくもり空へと変化。雷撃も走る。
『やめてって、言ったのに』
悲しみと憎悪に満ちた声――その主が海面から飛び出る。彼女の姿はボロボロで、でもそれが黒い輝きで修復される。
いや、あれは進化だ。白かった服が赤へ染まり、翼が禍々しく歪んで数も増える。
体に赤の紋様を刻み、彼女は私達全員を見上げて睨みつける。それだけで魂が凍りつきそうになる。
「完成、してしまった」
彼女は翼を羽ばたかせ、海に波紋を生み出しながら一気に加速――私達の中央へ飛び上がり、赤い波動を周囲へ放つ。
全員それぞれが防御障壁を展開するも、それは一瞬で砕かれる。魔力の波を受け、みんなは吹き飛ばされ海面へと墜落。
私も焼けつくような痛みに苛まれながら、海水へ叩きつけられた。でもすぐに飛び上がり、彼女を見上げる。
「一人でいられる強さを、得てしまった」
彼女は翼を広げ、無数の魔力スフィアを展開――それは稲妻のような軌道を描き、私達へ迫る。
すぐさまジグザグに下がり、不規則な軌道をなんとか見切ってすれすれで回避。
魔力弾は海面を叩き、派手に水しぶきをあげる。圧倒的、すぎる……あれが本気のシステムU-D
『くそ、全員無事か!』
『な、なんとか……! でもキリエが!』
『あむ、心配いらないわよ。それよりあのだだっ子を』
くそ、状況を確かめる余裕もない。下手に動いたら……!
「私はもう、なにも恐れずに済む。この世界を死と殺りくで満たす事ができる。
あなた達がそうさせた。もうこんな事は嫌なのに……宿命は」
でも状況は更に悪くなった。彼女の零す涙が黒い歪みとなり、更に見慣れたプリズムへ変化。
いや、違う。プリズムはまた黒い歪みとなる。それは見る見るうちに大きくなり、五十メートル以上はある人型となった。
でもこれはなに。古代ベルカに存在していた、巨大兵器? それにしては余りに可愛すぎる。
デフォルメされた体型で、額には白い×印。更に瞳は丸っこくて、やっぱり愛らしい。
ただそんな大きな子は涙ぐんでいて、白い涙のエフェクトを瞳からこぼし始めていた。それが少し切ない。
『そ、そんな……! 嘘、でしょ!』
『アム、どうしたのですか。あれがなにか』
『みんな、心を強く持って! 悲しい事に負けちゃ駄目!』
「やはり拭えない」
『――ムリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!』
まさか未来の……でもなにかを聞く前に、あの黒い子が泣き出した。赤ん坊のように声を張り上げ、空間いっぱいに泣き叫ぶ。
涙も大量にこぼし、ただ泣き続ける。ただ悲しみを……そこで胸の奥が痛くなってきた。
そうして思い出すのは、覇王としての記憶。決して変えてはいけない、過去の過ち。
それだけじゃなく、ストリートファイター達をつじ斬りしていた時の事も思い出す。
自分の衝動に流されていた私を、結木さんがしかった姿も……その全てが胸を貫き、力を奪い去る。
海面に体を叩きつけ、浮かびながらも胸を押さえもがき続ける。なに、これ……! これは、なんなの!
(Memory19へ続く)
あとがき
恭文「というわけで、かなり久々なVivid・Remixです。お相手は蒼凪恭文と」
フェイト「フェイト・T・蒼凪です」
恭文「早速今回のお話……と言いたいけど、実はこんな文字化け拍手が」
(『????????GET????!! ??????????!!!?? ???????』)
恭文「二〇一四年三月十四日、午前八時十三分頃に届いた拍手です。……えー、覚えのある方は再送してもらえると」
フェイト「お手数おかけいたしますが、よろしくお願いいたします」
(よろしくお願いいたします)
恭文「それで今回は……いろいろ悩んだけど最終決戦突入。まずアースラで……この時点でアイツ、殺る気満々なんだけど!」
フェイト「ホントだよね! 言ってる事とやってる事が真逆すぎるよね!」
(そしてやり口もエグい罠)
恭文「主要メンバーを大きく欠く形ですが、それでも奮起したシグナムさんやアインハルト、クロノさん達が活躍」
フェイト「ゲームでも二陣攻勢なんだよね。第一陣に守護騎士達やキリエ、アインハルトがいて」
恭文「第二陣は主役組だね。ちなみに第一形態はHPダメージをMPダメージに変換。更にのけぞり無効というスーパーアーマー状態」
(なのであの戦闘スタイルです。……動かしにくくてしょうがないわ!)
恭文「とにかくダメージを与えて、一度魔力を空にすると普通の攻撃が通るようになります。
戦闘描写もこの辺りを再現するため……これが一番面倒くさかったんだけど」
フェイト「それでシステムU-D第二形態へ突入……確かこれは」
恭文「普通にダメージが通るけど、HPを0にするとそこ全快・フルドライブとスーパーアーマーの発動。
ただ調べたところによると、防御力自体は低いんだって。なのでこちらの超必殺技一発で倒せたりするとか」
(それでもゲームのシステムU-Dは高性能なので、油断するとやられます)
恭文「それでもぎりぎりなのに、欠片で再現された巨大×キャラ登場」
(とまと史上最大最強のボスキャラです)
フェイト「……あれはズルくないかな! ていうか世界大丈夫なの!? 普通に記憶消去は無理じゃ!」
恭文「これが原因でアリアンとのゲートが開き、ガンダムビルドファイターズへ繋がります」
フェイト「そうなの!?」
(どうだろうー)
フェイト「そう言えばこれ終わったとはビルドファイターズ編だよね」
恭文「なんだけど……どうしようか、時間改変絡みはやめようと思っている」
フェイト「え、どうして!?」
恭文「拍手でも言ったけど、改変された要素を入れるとこう……重い話になって。
ビルドファイターズはカラッとしたいから。バトルの楽しさ中心でやりたいから」
(例えば765プロ倒産――アイディアがあったのでプロットを書いたら、ヘビーすぎました。
ボツにしたいです。てーかどうしてプラフスキー粒子で倒産したんだろう)
恭文「あれじゃない? 順一朗社長がハマって、バトルしまくってたら寿命縮まってさ。
順二朗社長になってすぐ春香の事件が起きて、取りまとめできずに765プロ倒産」
フェイト「……やめようか」
恭文「だねぇ」
(なのでプラフスキーはリリカルなのはVivid・Forceを見習って、元からあったという話に)
フェイト「IMCSの事かな! IMCSの事を言っているのかな、もしかしなくても! ……でもそれならヤスフミが出ない理由は」
恭文「空海達の面倒見てるから、除外してたーとかでいいでしょ。ほら、大会時期かぶってるし」
フェイト「あ、そっか。これなら春香ちゃん達も出せそうだよね」
恭文「大会参加者とかで?」
フェイト「そうそう。ほら、ガンプラアイドルじゃないけど、オオゴシトモエさんみたいな人もいるし」
(久々にお名前を検索したら、今でもプラモ関係のお仕事で活躍してらっしゃったんですね。正直とても感慨深いです)
恭文「作者はホビージャパンの雑誌企画時代から知ってるしねー。声優さんでもナナ(メルティランサー)の声やってる、池澤春菜さんとか」
(参考URL『http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/35689346.html』)
フェイト「あとはえっと、中村桜さんって人もそうだよね。それに関智一さんとか」
恭文「声優さん以外で言うと、ガンダムビルドファイターズ第22話のジュリアン役な人だよ」
(本郷奏多さんですな)
恭文「ちなみにこちらの方、声優業もやっていますがメインは俳優さん。……この人も相当ガチだって評判になってるし」
フェイト「キララさんって、別に突飛なキャラじゃなかったんだね」
恭文「ホントだよね」
(世界の広さを知った瞬間でした。
本日のED:CLUTCHO『Billy Billy』)
恭文「そういえばレイジノヨメヤネンさん」
アイラ「誰が嫁よ! ていうかまた名前間違えてるし!」
恭文「まぁまぁ。二郎、行ったんだって?」
アイラ「えぇ。あなたのしゅごキャラ……っていうの? その子と四条貴音の三人で。
あれも美味しいわよねー。量と濃さにベクトル向きまくってるけど、その突き抜け具合が心地いいわ」
恭文「……そっかぁ。てーかアイツら、まだ出禁になってなかったんだ」
アイラ「出禁? いやいや、私達三人でお店のラーメン食べ尽くした程度でそんな」
恭文「十分過ぎるわ!」
(おしまい)
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