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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
亜美・真美誕生日記念小説その2 『Aの翼/天使達の乱舞』



※TURN02→03

ゾルダー

ライフ×2 リザーブ×6 トラッシュ(コア)×4 コア総数×10

手札×4 デッキ×35

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN03メインステップ開始時

ライフ×2 リザーブ×11 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

手札×5 デッキ×34

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)


恭文(OOO)

ライフ×5 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×1 コア総数×5

バースト×1

手札×3 デッキ×32

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中) 天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中)

弓(きゅう)ピッド・レベル1(コア×1 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「それじゃあいくぜ。ディオ・マンティスをコスト1・レベル2で二体召喚」


リザーブのコア二個がトラッシュへ送られ、六個が三個ずつに分けられカード上へ。

そうして生まれたのは、エメラルドのコア。それが回転し弾け、体長三メートルほどのカマキリ型スピリットとなる。

ただしその両前足はハエトリソウのようになっていて、鎌というよりは口に見える。


「賢者の樹の実をレベル2へアップし」


リザーブの残り三個が賢者の樹の実上へ。……そうくるよねぇ。なので次の行動は。


「アタックステップッ! ディオ・マンティス、いけっ!」


ライフガン無視なアタックだ。ネクサスを破壊される危険だってあるのに、よくもまぁ。

かさかさとはい寄ってくるディオ・マンティスを見ながら、つい楽しくて笑ってしまった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ディオ・マンティス

スピリット

2(1)/緑/怪虫

<1>Lv1 3000 <3>Lv2 5000 

シンボル:緑

コンセプト:丸山浩
イラスト:斉藤コーキ

フレーバーテキスト:
誰が味方で、誰が敵なのかわからない。
お互いに共闘という命令が下されたはずが、
一緒に戦おうとするものもいれば、
誰彼かまわず鎌を振り上げるものもいる。混乱の極みだ。
共通点はただひとつ。あの龍たちは敵だということ。
―放浪者ロロ『異界見聞録』緑の章第10節より―


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ライフで受ける」


ディオ・マンティスは僕へ跳びかかり、右前脚で袈裟の打撃。

それを緑の障壁で受け止めると、予想以上に強い衝撃が走る。

なんとか踏ん張っている間にコアが砕け、胸元のライフも輝きを失う。


舞い散る粒子の中、更に笑いを深くしながら右手をスナップ。


「どうだ、痛ぇだろ。スピリットの攻撃をそのまま受けてるからなぁ」

「……一応バトルフィールド、こっちの世界にもあるのよ。ゲーム用だけどさ」

「お、そうなのか。じゃあ慣れっこか」

「いいや、こっちの方がずっと痛いわ。でも」


右手を胸元に伸ばし、砕けたライフを触る。この乾いた空気に走る痛み、スピリット達の声――やっぱりここはいい。

そうだね、バトルフィールドってところだけは変わらない。でもどこか鮮烈な印象もあって、胸が沸き立ってる。


「いいね、楽しいわこれ」

「そうか……だったらもういっちょ味わえっ! 二体目のディオ・マンティスでアタックッ!」

「ライフだっ!」


二体目のディオ・マンティスが、一体目と入れ替わりで飛んでくる。そのまま両手を振りかざし、僕の懐へ。

袈裟・逆袈裟と振るわれた左右の前足によって、二つ目のライフも粉砕。

再び走る衝撃に呻きながらも、なんとか踏ん張って耐える。その間にディオ・マンティスはゾルダーの陣地へ。


一体目と一緒に地面に崩れ落ちるけど。


「ターンエンドだ」


ゾルダーの宣言により、緑色の光が二体を包む。それで活力を得たのか、きぃきぃ泣きながら立ち上がった。


「エンドステップ、賢者の樹の実レベル2の効果発動。自分のスピリット全ては回復」

「そういえばさ」

「なんだ」

「コアブリッドとか使うバトルフィールドは、これの十倍痛いんだっけ」

「あぁそうだ。……だが最高だぞ」


めちゃくちゃ端的な答えが返ってきた。はっきり言えばドM発言だよ。ただしそれは表面を見ればの話。

この痛みは、魂をぶつけられた痛み。そうやって僕達は本気のバトルをしている。

それがたまらなく嬉しいし、楽しいのよ。そうして勝った時の喜びは、きっとどこでも変わらない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN03→04

ゾルダー

ライフ×2 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×2 コア総数×11

手札×3 デッキ×34

スピリット:ディオ・マンティス・レベル3(コア×3) ディオ・マンティス・レベル3(コア×3)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル2(コア×3)


恭文(OOO)

ライフ×3 リザーブ×2 トラッシュ(コア)×1 コア総数×7

バースト×1

手札×3 デッキ×32

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中) 天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中)

弓(きゅう)ピッド・レベル1(コア×1 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)
                 ↓
                 ↓
TURN04メインステップ開始時

ライフ×3 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×8

バースト×1

手札×4 デッキ×31

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1) 天使スピエル・レベル1(コア×1)

弓(きゅう)ピッド・レベル1(コア×1)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)





亜美・真美誕生日記念小説その2 『Aの翼/天使達の乱舞』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ドローステップ」


さて、そろそろ先手を……とか思っていると、早速来てくれた。ありがと、一緒に頑張ろうね。


「リフレッシュステップ、メインステップ。いくよ、キースピリットの一枚」


引いたばかりのカードを右手で持ち、時計回りに一回転しながら空へかざす。


「美しさと強さを兼ね備えた大天使、その手を伸ばし」


するとカードから金色の輝きが放たれ、空が薄紫・水色・若草色の三色に包まれる。

それらはまるでシルクのように艶やかで、揺らめきを生みながら僕の前へ集束。

中心部にトパーズのコアを置いた上で、螺旋を描きながら複雑に絡み合い、たまごのようになる。


「勝利へ誘う導となれっ! 大天使ガブリエレン、コスト3・レベル1で召喚っ!」


かざしたカードを右薙に振るい投てき――カードが置かれると、コストと維持コアがリザーブから支払われる。

すると光のたまごが、上からゆっくりと解けていく。そう、割れていくのではなく解けるの。

光は翼となり、まず上から紫の翼に変化。続けて水色・若草色の羽が広がり、左右合わせて六枚の羽となる。


それを背負うのは、銀髪ウェーブの女性。フワフワとしたロングスカートははためき、細腕を覆う紫の袖は輝く。

豊かな胸は谷間が見えていて、中程から白い布地が覆っていた。首には白花のついたカチューシャ。

揺らめく髪の先が翼と同じ色を宿し、揺らめくたびに主だった色を変える。


左側頭部と額には、やっぱり白花の髪飾り。紫色の瞳と、桃色の唇を恥じらいながら揺らす。

そうしてガブリエレンは、左手で持った樹木の杖をかざした。……どうしよう、予想以上に奇麗。

ていうかテンション上がってきたー! よし、これからのバトルは更に頑張れるっ!


それでガブリエレンはこっちに来て、身を乗り出しながら笑いかけてくる。……落ち着け僕。

でも可愛いよなぁ。ガブリエレンには軽く手を振って、僕は時計回りに一回転。


「さぁ、ショータイムだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――ショータイムキタァァァァァァァァァァァッ!」

「わぁっ! ダーグ、いきなりどうしたんですかっ!」

「いや、いつもなら処刑BGMが流れるところでな」

「あー、うん。流れるよね、いつものプロデューサーなら流す」


なのでどこからともなく、コンポを取り出す。それでえっと、今に合う曲は。


「……ってダーグ、そのコンポなにっ! 音楽流しちゃ駄目だからっ!」

「いや、あとで映像と合わせて編集しようかと。さすがにバトル中は流さないぞ」

「だったら今コンポ出す必要なくないっ!?」


真、なぜ苦笑い気味にする。俺はただ曲順を確かめたかっただけなんだが。


「アタックステップ――大天使ガブリエレンでアタックッ!」

「えっと」


剣蔵がこっちに出てきた、ガブリエレンのレベル・BPデータを確認。

しかしこれは……飛燕の奴か。さらっと新機能付け加えてやがる。


「BP5000。レベル2のディオ・マンティスと同じですね。相打ち狙いで、なにかやるんでしょうか」

「……ダーグ、あのカードは余っていないかい? ぜひとも僕にも一枚」


クラッキー、おのれは……そんな必死な顔をするな。確か予備があったはずだから、あとでやるよ。

それよりお前、アンジュをなんとかした方がいいぞ。軽く威圧感出してるしよ。


「そっちは後でなんとかする。だがやすっちもなんだかんだで考えてくれてるな。みんなに分かるようなバトルをしている」

「それじゃあガブリエレン、レベル1・2・3のバトル時効果発動だよっ!
このターンの間、相手スピリット二体をBP−3000!」


ガブリエレンがゾルダーの陣地へ飛び込みながら、左手の杖をかざす。

すると金色の光が重圧となり、二体にのしかかり力を奪う。


「BPマイナス効果っ!? そんなのあるんだっ!」

「あっちの環境だと、黄色と一部のカードが持っている効果だな。だがこれだけじゃない……来るぞ」

「更に黄色の強化(チャージ)発揮っ! スピエル、弓(きゅう)ピッドも力を借りるよっ!」


そこでスピエル姉妹と弓(きゅう)ピッドが、槍と弓の先をガブリエレンへと向ける。

それにより発生している光がより強くなり、ディオ・マンティスが苦しげにうめいた。


「スピエルと弓(きゅう)ピッドは、強化(チャージ)という効果を持っている」

「チャージ? なんだそりゃ」

「自分の『BPマイナス効果』を増加させるの。この場合一体につき、更に1000低くなる。
現在僕の場にチャージ持ちはさっき言った通り三体だから、3チャージ。よってBPマイナス6000」

「それが二体っつー事は……!」

「そう、ディオ・マンティス二体はBP0!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


強化(チャージ)――剣刃編から導入された、光のスピリットが持つ特殊効果。

その内訳は色ごとに変わり、黄色の場合はご覧の通り。BPをマイナスする事で、様々な状況を作り出せるのだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「な、なんという効果ですかっ! サポート効果持ちがいれば、数値がアップするなんてっ!」

「ここでフルアタックすれば、ゾルダー教官のライフは0だ。
最悪でもスピリットは全て破壊できる。まぁ」

「……フラッシュタイミングッ! バキュームシンボルをコスト4で発動っ!」

「それを許す人じゃないけど」


そこでゾルダーが出してきたカードには、巨大パイプにダイヤが吸い込まれる様子を描いていた。

そしてフィールドに風が吹き荒れ、その風がやすっちのスピリット全員の動きを止める。

すると全員の胸元から、トパーズが抜き出されるように出現。そのまま砕け、消え去ってしまう。


同時にやすっちのプレイ台――カード達にも変化。カードに描かれていたシンボルが消え去ってしまう。


「コストは賢者の樹の実から三個、ディオ・マンティス一体から一個確保し、レベルダウンッ!
黄色を指定っ! このターンの間、相手のスピリット全ては指定した色のシンボル一つを失うっ!」

「……シンボルから奪いにきましたね。これで恭文さんの天霊達はノーシンボル」

「真、覚えておけ。あれもサイレント、ブリザードなどのウォール系とはまた違うが、連続攻撃対策になる」

「う、うん」

「そのアタックはライフだっ!」


ガブリエレンは苦しげにしながらも右手をかざし、黄色の光弾を発射。

ゾルダーは障壁を展開し、それを受け止める。が……光弾は障壁に触れた途端霧散。

いつものように障壁――ライフが砕ける事はない。ゾルダーは不敵に笑って、前のめりになる。


「ターンエンド。いけるかと思ったんだけどねぇ」

「あぁ? 冗談言ってんじゃねぇよ。これで潰れたらつまんないとか、ざけた事考えてただろ」

「バレた? いやー、まだ切り札も出してないし、さすがにねー」


まぁこれで終わっても、正直つまらないだろうなぁ。やすっちも本気出してないし、そりゃあ二人揃って笑うさ。

……そうしてお互いを威嚇しあってるんだ。アイツら、ノーガードというか前のめりというか……心臓に悪いバトルをしやがる


「さて、流れは彼――ヤスフミに傾いてきているかな。
ここでキースピリットを引き寄せたのは、勝負に大きな変化をもたらす」

「あら、クラッキーはそう思うの? 私は少し違うわ」

「アンジュ?」

「引き寄せたんじゃなくて、カード達があの子のところに来ているの。それも自分から」


クラッキーは今ひとつ違いが分からないらしいが、俺と真は……あの神引き具合を見てるからなぁ。

アンジュの言いたい事が理解できてもう、苦笑いするしかないわ。


「あの子の背中を押して、一緒に戦おうとしている。
もちろんあの子もそれに応えている。そういう目をしている」

「……ダーグ、まさかさっき言ってたのって」

「残念ながら事実だ。そうじゃなきゃアンブロシアデッキなんてもう、なぁ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さて、オレやプリム、カザン長官達は残念ながら、バトルフィールドには行けなかった。

こっちへ急行しているバローネを待たなきゃいけないしさ。さすがに全員ってのは駄目なんだよ。

その代わり管制室で、バトルフィールドの様子は観戦。飛燕さんにも同席してもらっている。


だがここで見られて本当に良かった。確かにこっちとは環境が違う。強化(チャージ)なんて見た事ないしさ。でも面白いと思う。

一つの力を、みんなの後押しででもっと強くするんだ。他の色だとまた効果が違うのかなとか、いろいろ考えてしまう。


「へぇ、あの子凄い凄いー。さすがはダーグや飛燕さんが、あれだけ言う事はあるよねー。ユースも負けてられないよねー」

「そうだな」

「あ、なんか素直だー」

「オレも向こうの世界でバトルするかもしれないし、環境についてはしっかり勉強しておかないと」


もちろんここは知識だけじゃなくて、テストバトルも入っている。でもどのタイミングで申し込もう。

今はソフィア号の準備もあるし、さすがになぁ。ある程度落ち着いてからと言いたいけど、向こうの状況も読めない。

できるだけ早い内に……あれこれ考えていると、カザン長官やプリムがなぜか笑ってくる。


ていうか、ドクターまで……なんだろう、オレどっかおかしかったとかかな。


「あの、なにか」

「すまない。だが……やはり頼もしくなったと思ってな」

「頑張らなきゃいけませんから。……弾が戻ってきた時、バトルしますし。
それに変わり始めた世界の事も、胸を張って教えたい」

「そうだな」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN04→05

ゾルダー

ライフ×2 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×6 コア総数×11

手札×2 デッキ×34

スピリット:ディオ・マンティス・レベル3(コア×3) ディオ・マンティス・レベル1(コア×2)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN05メインステップ開始時

ライフ×2 リザーブ×7 トラッシュ(コア)×0 コア総数×12

手札×3 デッキ×33

スピリット:ディオ・マンティス・レベル3(コア×3) ディオ・マンティス・レベル1(コア×2)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)


恭文(OOO)

ライフ×3 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×3 コア総数×8

バースト×1

手札×3 デッキ×31


スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1) 天使スピエル・レベル1(コア×1)

弓(きゅう)ピッド・レベル1(コア×1) 大天使ガブリエレン・レベル1(コア×1 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「スタートステップ、コアステップ。……おい、お前名前なんていうんだ」

「火野恭文」

「そうか。てめぇはなんで、この件に首を突っ込む。
ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」


そう言ってゾルダーはステップを進め、場を軽く一瞥。それでも僕に対しての疑念は消えない。


「もしも興味本位で関わってるっていうなら……やめときな。
てーかこれは俺達の仕事だ。ポッと出のガキに奪われたくねぇ」

「理由は」

「俺達はアイツを、生けにえにしちまったからよ」


まぁそれしか考えられないよねぇ。そう、実質生けにえだよ。

この世界の未来は、馬神弾という存在の犠牲によって成り立った。

もちろん最初、みんなそうなる事は知らなかった。かなり土壇場で判明してね。


だからそのための対策を整え、万全を期した上で神々の砲台発動に望んだ。でも結果はご覧の有様。

対策は全て事故によりおじゃんとなり……みんなはただ、馬神弾が消えるのを見ている事しかできなかった。


「知らなかったなんて言い訳するつもりはねぇ。
可能性があると知って、それでもと勝手に信じたのは俺達だ」

「でも馬神弾と月光のバローネ、あの二人じゃなかったら、砲台へのエネルギーチャージはできなかった」

「ダーグから聞いてんのか」


本当は違うんだけどね。劇中でこの人自身が、あのピンク髪――フローラに言っていた事だ。

砲台発動のためにね、今言った二人は十二宮Xレアをフルに使ってバトルしたの。

それにより砲台へ十二宮Xレアのエネルギーが蓄積され、その力がリセット回避の一撃となる。


ただ十二宮Xレアはどれもこれも高コストかつ、それなりにクセの強いスピリット。

それを展開・運用しつつ、なおかつエネルギーチャージのためそれなりに長くバトルするのが最低条件。

それはカードバトラーとして高い実力を誇る二人にしかできなかった。


もちろん実力が拮抗しているのもあった。だって相手が弱いと、すぐバトルが終わるし。

とはいえ、これはきっと言い訳だ。それでしょうがなかったとするには、失われたものが大きすぎる。


「一応聞くけど、ダーグの力で過去へ移動ってのは駄目だったのかな。
その上で引き金にならないよう、改めて対策を」

「やっても無駄――そう結論が出た。ダーグがその辺りに詳しくて、かなり真剣に話してくれたさ」

「アトラクタフィールドの収束か」

「おう、それだ」


ようはあれだよ、馬神弾が最後に引き金となるのは決定。そこはどういうルートを進んでも、絶対に変えられない出来事。

できるとしたら、その事実を変えない上で生き残る道を模索する事だけ。

てーか仮にそれが避けられても、別の誰か――月光のバローネ辺りが引き金となる。


もしくはチャージに失敗し、地球がリセットされる。たったそれだけの話なんでしょ。

たったそれだけの事があまりに重く、苦しい。だから平然を装いながら、表情は悔恨に染まりつつある。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あのダーグ、アトラクタフィールドの収束って」

「Jud――世界線や時間に関する理論だ。例えばパラレルワールドっていうのは、ロープに例えられる」

「ロープ?」

「ロープは複数の糸が絡みついて構築されてるだろ。その一つ一つが世界だ。
そのロープに結び目ができると、どんな糸だろうと結び目を経た上でしか先へいけない。
その結び目を出来事と考えてくれ。結び目ができたら、普通のやり方ではその出来事を回避できない」


真は小首を傾げるが、少し考えたら理解できたらしい。それでやや困ったような顔をする。


「まさかその、馬神弾が引き金になるのは絶対に避けられない?」

「Jud.時間の中には時々だが、そういう不可避なものがある。
一定のフラグを踏んで、ルートが固定化されないと起こらない現象なんだが」

「結論から言うと弾くんが引き金にならないためには」


そこで剣蔵もゾルダーと同じ顔をしながら、愛用の丸眼鏡を正す。……まぁ、それは全員か。

あの時、消えていくアイツを見ている事しかできなかったからな。


「彼を最初から未来世界に呼ばない。あるいはグラン・ロロと関わらないようにする。
ようは結び目ができないよう、根っこからいじるしかないと。
ダーグやドクターはそれを、『別のロープに切り替える』とも例えてくれました」

「でもそうすると変えた事による修正が働いて、この世界は滅びるかもしれない。
例えば異界王の支配が成立するとか、地球リセットが発動するとか。
少なくとも現状そのままで、弾君も無事な形にはならない。そう言われたんだよ」

「そんな……ダーグ」

「時間ってのは、意外と面倒くさいんだよ。小さな事が後々大きな意味を持つ場合もある。
ほんと、腹立たしいくらいにな。……時の列車があっても、ダチは救えない」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ゾルダーはわなわなと震わせた右拳を、プレイ台のど真ん中に叩きつける。


「アイツには見る権利があるんだよっ! 自分が救った世界をなっ! それで俺達には義務があるっ!
これから俺達が作る世界を、アイツに見せる義務がなっ! 誰であろうと、それは邪魔させねぇっ!」

「そう。だったら余計に今回の事、関わらなきゃいけないね」

「ほう、だったらてめぇの行く道ってやつを教えてもらおうかっ! それはなんだっ!」

「聞いて、思っちゃったしね。困ってるなら助けたいってさ」


そこでゾルダーはどうしてか固まり、『はぁ?』と声を漏らす。

僕はまぁ、みんなの前でこれだから……ちょい照れくさくて空を見た。

空は夕焼けにも似ていて、そこに桃色や白、灰色が混ざった複雑な色味。


それを見ているだけで、ここが異世界だと感じさせる。

……ここでみんな、バトルしてきたんだなとちょっと感慨深くなった。


「きっかけはダーグだ。でも短い間にまゐさん達と会って、話して、それで決めた。
十二宮Xレアは必ずこの世界に戻して、馬神弾も助ける。
僕にできる事で手を伸ばして、今困っている人達をすくい上げる」

「馬神弾をか」

「いいや。向こうにいるであろう人達、みんなだ。それでお前やまゐさん達もだ。
……デジモンだってどんなものか分からないけど、本気で困っているなら助ける。
僕は手を伸ばさないで後悔するのなんて、絶対嫌だ。そんなのはもうたくさんだ」

「後悔した事がある、そう言いたげだな」

「あるよ。お兄ちゃんが少し前まで、絶賛失踪中だった」


空とは一端お別れして、視線をゾルダーへ。それでガブリエレンが膝をつきながら、こっちを心配そうに見ていた。

なんだろうこの子、他の子達とはまた違うような。まぁ今は、驚いた様子のゾルダーか。


「そのきっかけに僕は気づけなかった。それが僕の罪だ」

「そうか。だが馬神弾は、お前の兄貴でもなんでもねぇ」

「知ってるよ。でも止まったら、後悔する自分を知った。それじゃあただの『不幸』だもの。
……気づいたら踏み込む。そうしなきゃきっと、一歩だって前に進めない」

「よく分かった」


ゾルダーはそう言って、右手で軽く頭をかく。オールバック気味な黒髪を揺らし、奴は前のめりになる。

右手をプレイ台横のグリップへ戻し、強く握り締めた。それを見て、自然と頬が緩む。


「だが俺に勝てないようじゃあ、世界を救うなんざ夢のまた夢だっ! 負けた時はとっとと帰れっ!
覚えておくんだな、火野恭文っ! お前は……あの馬神弾と同じ道を進み始めてるんだぞっ!」

「全然違う。だって僕は引き金になんてならない。みんな助けて、自分の今と未来も守るもの」

「そんな甘い覚悟で飛び込むつもりか、てめぇはっ!」

「それを本気で言ってるとしたら底が見えたね、ゾルダー。
自分の時間と欲、その価値を知らない奴は誰も救えない」


奴の言葉を鼻で笑って、右手をスナップ。そうして思いっきり睨みつけてやる。


「現に……お前らは救われてないだろうがっ! 違うかっ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


またはっきり言い切ってくれる。だが否定はできない。俺達自身がそう思って後悔し、アイツを探していた。

さすがは欲深――だからこその、希望を届ける魔導師だ。俺達の希望になるって、喧嘩売ってきやがったよ。


「これがあの子の本気?」


まゐが興味深げにやすっちを見ていた。それが真への問いかけだと気づくのに、少しかかった。

だが当の真はすぐ気づいたらしく、やすっちとまゐを見比べて頷く。


「はい。彼女達に対しても、ぼく達に対しても同じなんです。もちろん今回みたいにその、事件的な事が起こっても。
プロデューサーは欲深なんです。だから自分にできる事をって言って、いつでも一生懸命。
それで……絶対に逃げないし、諦めないんです。そんなプロデューサーだから、ぼく達も信頼してて」

「そっか。……確かに弾とは違う。でも、同じところもある」

「弾君も同じ事、言ってたしね。必要とされたからここへ来た。
困っている人は放っておけないって。ダーグ」

「面白いだろ?」

「かなりね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ま、また凄い事を……ゾルダー教官、なんかキレ気味なんですけど」

「痛いところに直球ストレートって感じだもんねー。
でもあたし、結構好きかもー。一番好きなのは剣様だけどー♪」


プリム、もじもじするな。長官やドクターの前だっていうのに……つい頭を右手で抑える。


「でもダーグがあの子を呼んだ理由、少し分かった気がするわ。飛燕、あなたが評価している理由もね」

「Jud.長期間過ごしていた世界で、また別の恭文様と親しいせいもありますが。ダーグ様はこう仰っていました。
欲を大事にするからこそ、他者の欲――願いや希望を守るために全力であり続ける。それが」

「奴の強さであり、奴の道。そして覚悟か」


そこで後ろから声がかかる。慌てて振り返ると、管制室のドア前に金髪の男が立っていた。

細身な身体はゆったりとした執政服で隠されていて、頭部には白い二本角。知りからは尾も出ている。

金色の髪をポニテにし、長い耳を揺らしながらソイツはこっちに近づいてきた。


「その通りです。バローネ様」

「バローネっ! あの」

「大丈夫だ、大体の状況は飛燕から改めて聞いている。バトルの様子も見させてもらっていた」

「えー、いつの間にー!」


飛燕さん、幾らなんでも有能すぎるっ! ツッコミどころがないってなにっ! いや、前からだけどっ!


「では」

「馬神弾がどういう状況かも理解した。それで準備の方は」

「既に食料や整備物資の調達を進めているわ。
別世界での航行という事で、ソフィア号に隠密性を高めるよう改修予定よ」

「そちらは私の方でプランを構築しました。あとでプリム様にもご協力いただければと」

「もちろんー!」


……飛燕さんが万能すぎる。いつもの事ではあるんだけど、ちょっと頭が痛くなってしまう。

もしかすると飛燕さんだけでいいんじゃないだろうか。そんな事をまた考えてしまった。

それでバローネは満足そうに……いや、どうしてか攻撃的に笑って、画面内の火野さんを睨みつけた。


こ、この顔芸は……やばい、嫌な予感しかしないっ! もしかして火野さん、出発までいろいろ削られるんじゃっ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「そうかいそうかい。また派手に喧嘩売ってくれるなぁ。
俺達だけじゃなくて、さらっと弾の事までディスっただろ」

「別にディスってはないよ。そういう世界情勢じゃなかったのも知っている。
でもそれだけじゃあ駄目だった。これからやる旅は、そこを探すためのものじゃないの?」

「そうかもしれねぇな。……じゃあ見せてもらおうかっ! てめぇの覚悟をっ!」


ゾルダーは手札のうち一枚を取り出し、右へ振りかぶる。……あの白い鎧騎士は。


「そびえよ、美しき鋼の城っ! 鉄騎皇イグドラシル――コスト6・レベル1で召喚っ!」


コストが支払われると、ゾルダーの背後から鎧騎士が飛び出す。ただしそれは装着者がおらず、一部空洞。

白と黒、金の装飾に彩られたそれは、体長十メートルほど。地面に膝をつきながら着地し、ゆっくりと立ち上がる。


「イグドラシルの召喚時効果っ!」


鎧騎士――イグドラシルの瞳が白に輝き、背にしているマントが大きくはためく。

するとスピエル達と弓(きゅう)ピッド、ディオ・マンティス一体が白い螺旋に包まれ、フィールドから消失。


「BP3000以下のスピリット全てを、手札に戻すっ!」


そのままプレイ台のカードも、それぞれの手札へ戻る。白の得意技、バウンスだよ。

自分のもバウンスさせちゃうけど、これを利用してダンデラビットみたいな、優秀な召喚時効果持ちを再利用できる。

あとは……装甲赤白付与だね。自分のスピリット全てに付与するから、なかなか厄介。


とにかくこっちの手札は六枚……まぁそうくるよねー。でもイグドラシルとはまた、懐かしい。


「やっぱり奇麗なスピリットだ」

「褒めてもなにもでねぇぞっ! 続けてディオ・マンティスをコスト1・レベル1で再召喚っ!」


ゾルダーは手札に戻ったディオ・マンティスを召喚し、そのままカードを倒す。


「アタックステップッ! ディオ・マンティスでアタックッ!」


コアから出現したばかりのディオ・マンティスは、こちらへとかさかさ走り出してくる。


「ライフで受けるっ!」


ディオ・マンティスは跳びかかり、両手を唐竹に振るって一撃。展開した障壁が砕かれ、その粒子が舞い散る。

同時に走る衝撃をかみ締めながら、良い感じなので宣言。


「バースト発動っ!」

「……なるほど、ライフが削られると発動するってか」


浮かび上がった白のカードをかざすと、アーマーに輝きが生まれる。

それは先ほど消えたばかりの、ライフコアに新しい輝きを生む。

プレイ台のライフゾーンにも、新しいコアが置かれる。もちろんこれは。


「絶甲氷盾っ! バースト効果は、ボイドからコア一個をライフへ置くっ!
更にコスト4を支払い、フラッシュ効果発動っ!」

「ち……同時に二つの効果が使えるのかよっ!」

「アタックステップを終了させるっ!」


リザーブにはバウンスを受けた事で、みんなの維持コアが戻されている。

それを消費し、効果発動――イグドラシル達の前に、巨大な氷壁が生まれた。


「ライフ回復効果に加え、サイレントウォール保持か。なかなかぶっ飛んでやがるな」

「なんだよねぇ。いつか制限になると思う」

「そうか。ターンエンドだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN05→06

ゾルダー

ライフ×2 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×7 コア総数×12

手札×2 デッキ×34

スピリット:ディオ・マンティス・レベル3(コア×3) ディオ・マンティス・レベル1(コア×1 疲労中)

イグドラシル・レベル1(コア×1)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)


恭文(OOO)

ライフ×3 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×7 コア総数×9

手札×6 デッキ×31


大天使ガブリエレン・レベル1(コア×1 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)
                 ↓
                 ↓
TURN06メインステップ開始時

ライフ×3 リザーブ×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

手札×7 デッキ×30

スピリット:大天使ガブリエレン・レベル1(コア×1)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「メインステップ。天使スピエル二体をノーコスト・レベル1で再召喚」


さっきバウンスされたみんなを、すかさず再召喚。次々と出てくるトパーズは砕け、その粒子がみんなを形作る。


「更に天使マカエルをノーコスト・レベル2で召喚」


弓(きゅう)ピッドの代わりに出したのは、シミターを両手に持った天使で剣士……洒落じゃないよ?

オレンジのウェーブ髪をなびかせ、身を翻しながら場に出てきてくれた。

リザーブは残り四個で、手札も四枚。確かにイグドラシルは脅威だけど、レベル1じゃあまだまだ。


でもイグドラシルが出たって事は……期待もなくはないけど、やっぱり勝ちにいこうか。


「ガブリエレンにコア三個を載せレベル3へアップ」


コアが載せられたガブリエレンは、嬉しそうに翼をパタパタ。それでこっちへ振り向き、小さくお辞儀。

足が出ているタイプのスカートを、さっと広げもするので……やっぱりこの子だけなんか違う。

まぁそこは後で考えるか。なによりレベル3となった事で、ガブリエレンも本領発揮だ。


「アタックステップ、ガブリエレン・レベル3の効果発動。
系統:天霊を持つ自分スピリット全てはバトル解決時」


ガブリエレンが杖を突き出すと、みんなの身体が黄色の輝きに包まれる。

それが嬉しいのか、スピエル達やマカエルもはしゃいで手を取り合う。


「ブロックした相手スピリットがBP3000以下の時、BPを比べずブロックされなかったものとして扱うっ!」

「な……条件付きのアンブロッカブルかよっ!」

「ガブリエレンでアタック――レベル1・2・3、バトル時効果発動っ!
このターンの間、相手スピリット二体をBP−3000!」


ガブリエレンがくるりと時計回りに回転し、杖の先をイグドラシル達へかざす。

すると再び生まれた光のプレッシャーが、二体へのしかかり力も奪い去っていく。

スピエル達も得物をかざし加勢。更にプレッシャーは強まり、力を根こそぎ消し去った。


「更に3チャージ追加で、イグドラシルとディオ・マンティス・レベル2をBP-6000!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あれ、イグドラシルって装甲……赤白だから大丈夫かー。それ以前にレベル1だし」

「Jud.イグドラシルの装甲効果は、レベル2からだ」

「ああやって強化(チャージ)を絡める事で、より効果的になるのね。……面白いじゃない」


これで天霊達はアンブロッカブル。ガブリエレンは杖をぐるぐると回転させながら、ゾルダーへと迫っていく。


「更に天使マカエルのレベル2効果発動っ!」


マカエルが剣をかざすと、ゾルダーのプレイ台で変化が起こる。BPを下げられたスピリットカードが、全て疲労状態になった。


「相手スピリットがBP0になった時、そのスピリットすべてを疲労っ!」

「なんですってっ! じゃあイグドラシルとディオ・マンティスは」


当然疲労……がっくりと膝をついた。わぁ、これでノーガードかよ。やすっち容赦ねぇ。


「ライフで受けるっ!」


ガブリエレンは杖の先に光を生み出し、それを鞭のようにしならせる。

身体を反時計回りにひねりながら、その鞭で空間を薙いだ。

ゾルダーの障壁はその一撃によって砕かれ、ライフは残り一個。


だがそこでお互いのネクサスが共に輝き、効果を発揮する。


「賢者の樹の実、レベル1・2効果っ! 相手によってライフを減らされた時、ボイドからコア一個をリザーブへっ!」

「光射す丘の効果で一枚ドロー!」


落ちる樹の実と、増える手札。だがそれも無意味かもしれない。やすっちはスピエルに手をかけ、カードを倒す。

スピエルが槍を構えていると、こちらに戻ってきたガブリエレンが膝をつく。その時、やすっちへ軽くウィンク。


「さぁ決めろ、天使スピエル長女っ!」

「どっちがどっちか分からねぇよっ! ……フラッシュタイミング、バキュームシンボルをコスト3で発動っ!」


スピエルが踏み込もうとしたところで、再びシンボルが吸い上げられる。

それでもスピエルは苦しげに飛び出し、突風の中翼を必死に羽ばたかせた。


「やっぱ二枚目かっ!」

「……プロデューサー、見抜いてるね」

「通るとは最初から思ってなかったんだろうな」

「黄色を指定し、ソイツらのシンボル全てを奪うっ!
ディオ・マンティス上のコア二個を使い、レベル1へダウンッ! アタックはライフだっ!」


そして鋭い一撃が、ゾルダーの障壁を捉える。だがスピエル長女はそのまま吹き飛ばされ、フィールドへ滑り落ちる。

ゾルダーは得意げな顔で腕組みし、スピエル長女を見下ろしていた。……あ、やすっちがなんか、ブチって音を立てた。


「ターンエンド。……お前、バトル終わったら地獄へたたき落とす」

「はぁっ!? あなた、またゾルダー様にそんな口を」

「黙ってろ」


おいおい、本気でこっち睨みつけてきたぞっ! フローネがさっと引いたんだがっ! てーか目つきがやばいっ!


「うちのスピエルを地面にたたき落としおって……この外道がっ! 悪魔っ! 脳筋っ!」

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! バトルなんだからしょうがねぇだろっ!
あとお前、さっきと言ってた事違うだろうがっ! 俺達も助けるんじゃないのかっ!」

「お前は例外っ! てーか筋肉あるからなんとかなるでしょっ!」


凄い言い切り方をしてくれたので、俺達もついズッコける。てーか……アイツは馬鹿だっ!

なんでここで今までの流れ、台なしにしやがんだっ! どうすんだ、この空気っ!


「筋肉は理由にならねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! ち、やっぱダーグの知り合いだなっ!」


そうそう、俺の知り合い……ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!

アイツなにさらっとディスってくれやがんだっ! ふざけやがってー!


「ゾルダー教官、それは僕達にも跳ね返ってくるから、やめてほしいんですけど」

「すずりん、無駄よ。聞いてないし。でもあの子……重症ね」

「あははは……その、欲深なので」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


天使マカエル

スピリット(光)

2(2)/黄/天霊

<1>Lv1 1000 <2>Lv2 3000

Lv1・Lv2【強化】
自分の「BP-効果」を-1000する。

Lv2
相手のスピリットがBP0になったとき、BP0になったスピリットすべてを疲労させる。

シンボル:黄

イラスト:相沢美良

フレーバーテキスト:
黄天の国の天使が暮らしている天界へは、
地上から続く階段でないと行けない。
そして、この国の剣は天界に納められているとの事。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN06→07

ゾルダー

ライフ×1 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×10 コア総数×14

手札×1 デッキ×33

スピリット:ディオ・マンティス・レベル1(コア×1 疲労中) ディオ・マンティス・レベル1(コア×1 疲労中)

イグドラシル・レベル1(コア×1 疲労中)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN07メインステップ開始時

ライフ×1 リザーブ×12 トラッシュ(コア)×0 コア総数×15

手札×2 デッキ×32

スピリット:ディオ・マンティス・レベル1(コア×1) ディオ・マンティス・レベル1(コア×1)

イグドラシル・レベル1(コア×1)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル1(コア×0)


恭文(OOO)

ライフ×3 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

手札×5 デッキ×29

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中) 天使スピエル・レベル1(コア×1)

天使マカエル・レベル2(コア×2) 大天使ガブリエレン・レベル3(コア×4 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「メインステップッ! 賢者の樹の実をレベル2に上げ」


先のターンで下がったレベルを戻し、リザーブは残り九個……くる、それも相当でかいのが。

てーかイグドラシル出して、コア数バッチリ。しかもい手札からは嫌な予感ビンビン。自然と口元が緩んでいた。


「イグドラシルを転召っ!」


予想通りに奴は宣言。イグドラシルは膝をつき、地面に展開した陣と同化していく。

それは光り輝く線の集合体で、雪の結晶のようにも見える。


「緑と白の力――融け合い雄々しく奮い立てっ!」


そこから二色の極光が走り、金色の巨大騎士が出現。線状のパーツが組み合わさった、不思議なフォルムをしていた。

両手にはダイヤ型のシールドと、機械的な両刃剣。体長はイグドラシルよりも一回り大きい。

間違いない、感じていた予感の一つはこれだ。まさかゾルダーの操るコイツと出会えるなんて、幸運すぎる。


「終焉の機神ラグナ・ロックッ コスト5・レベル1で召喚っ! ……召喚時効果っ!」


そこでラグナ・ロックは背中から、蝶の翼を展開。その色合いは、例えるなら宇宙そのもの。

星がきらめき、銀河が翼の中でうねる。そうして生まれた緑の羽ばたきが、マカエルとスピエル次女に膝をつかせた。


「相手スピリット全てを疲労させるっ! 更に鉄騎皇イグドラシルで転召したので」


続けてラグナ・ロックのカード上に、次々とコアの輝きが生まれる。その合計は六個。


「ボイドからコア六個をこのスピリット上へっ! ラグナ・ロックはレベル3にアップッ!
続けてディオ・マンティス一体を、ラグナ・ロック上のコア二個でレベルアップっ!」

「相変わらず無茶苦茶な召喚時効果だ」


ラグナ・ロック上のコア二個が、ディオ・マンティス一体へ移動しレベルアップ。

続けて出してきたカードには、三枚のバトスピカードが燃えている様子が描かれている。

その上には白い光に包まれた、新しいカード……なるほど、手札補充か。


「更にマジック、ハンドリバースをコスト3で発動っ!
手札を全て破棄し、相手の手札と同じ枚数になるようドロー!」


ただし破棄する手札はないけど、それでも効果発動。ゾルダーは一気に五枚ドローした。

念押ししてくるのがまた凄いというか……さて、何回攻撃来るんだっけ。

これはラグナ・ロックの召喚方法としては、理想的なもの。言うなら正統進化。


六個ものコアブーストにより、一気に最大レベルへ持っていけるもの。

しかもラグナ・ロックはダブルシンボル。普通に出してもエンドカード足りえるのよ。


「アタックステップッ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ハンドリバース

マジック

5(2)/緑

メイン:
自分の手札すべてを破棄する。
その後、自分はデッキから相手の手札と同じ枚数ドローする。

フラッシュ:
このターンの間、スピリット1体をBP+3000する。

イラスト:高梨かりた(Xレアパック 【レジェンドエディション】)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN07 アタックステップ

ゾルダー

ライフ×1 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×8 コア総数×20

手札×5 デッキ×27

スピリット:ディオ・マンティス・レベル2(コア×3) ディオ・マンティス・レベル1(コア×1)

ラグナ・ロック・レベル3(コア×5)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル2(コア×3)


恭文(OOO)

ライフ×3 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

手札×5 デッキ×29

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中) 天使スピエル・レベル1(コア×1)

天使マカエル・レベル2(コア×2) 大天使ガブリエレン・レベル3(コア×4 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル2(コア×1)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ディオ・マンティス・レベル2でアタックッ!」


まずはラグナ・ロックではなく、ディオ・マンティスが突撃。僕のスピリットは疲労状態だし、ここは。


「ライフで受ける」


宣言し、障壁を展開。ディオ・マンティスの右腕がそこで鋭く動く。跳びかかりながら奴は、袈裟の打撃。

それにより障壁は砕かれ、僕の胸元にも衝撃が走る。さて、次はどうする。


「ディオ・マンティス・レベル1でアタックッ!」

「それもライフ」


そこでディオ・マンティス……これもライフで受けるしかない。

展開した障壁で、腕による噛みつき攻撃に受け止める。そして障壁は粉砕。

緑の粒子が舞い散る中、僕のライフは残り一つとなる。これでリザーブにはコア三個。


「どうしたぁっ! そんなんでみんなを助けるとか言ってんのかっ! やっぱお前は甘ちゃんだなっ!」

「だったらグダグダ言わずに撃てよ」

「そのつもりだっ! ラグナ・ロックでアタックッ!」


さて、ここでディオ・マンティスで連続攻撃したのには理由がある。

それはラグナ・ロックの効果を最大限使うためだ。ラグナ・ロックが再び翼を展開すると。


「ラグナ・ロックのレベル3バトル時効果だっ! コスト8以下の自分のスピリット三体を回復っ!」


そこから放たれた星の輝きを受け、伏せていたディオ・マンティス二体が再び立ち上がる。

でも二度目のアタックで、ラグナ・ロックを動かさなかった? なるほど、そういう事か。

だったらそれが事実だって教えてやろうか。僕は右手を手札にかける。


「フラッシュタイミング、マジカルドローをコスト2で発動。ディオ・マンティスレベル1を指定」


するとカードから黄色の風が放たれ、ディオ・マンティスへとまとわりつく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


マジカルドロー

マジック
5(3)/黄

メイン:
自分はデッキから1枚ドローする。
その後、自分のデッキを上から5枚オープンし、その中の【強化】を持つスピリットカードすべてを手札に加える。
残ったカードは好きな順番でデッキの上に戻す。

フラッシュ:
このターンの間、スピリット1体をBP-3000する。

イラスト:碧風羽


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「見た事のないマジックだっ!」

「このターンの間、スピリット一体をBP-3000。3チャージが追加され、BP-6000」


カードから放たれた風に押しつぶされ、ディオ・マンティスは強引に疲労状態となる。

……疲労状態? まさかと思いマカエルを見ると、あの天使はふらつきながら剣を振り上げていた。


「BP0になったため、マカエルのレベル2効果発動。ディオ・マンティスは疲労する」

「ちぃ、こっちのアタック時にも発動かよ」


うまい、強化(チャージ)をよく使っている。だがこれだけじゃあ足りないので、やすっちは更に動く。

次に出したカードには薄紫の空気に、象型スピリットが押しつぶされている様子が描かれていた。

これも俺が渡した新カードだ。やっぱり新効果が分かるようにバトルしてくれている。


「続けてマジック、エンジェリック・プレッシャーをコスト1で発動。
このターンの間、相手スピリット一体をBP-3000。回復状態のディオ・マンティスを指定。
ただし3チャージが追加されるので、BP-6000。マカエルの効果により、そのまま疲労」


残っていたディオ・マンティスの上に、見えないなにかがのしかかる。

そうして地面へめり込み、強引に動きを止められた。


「よし、これで追撃は防げたっ!」

「でもラグナ・ロックのアタックが残っています。これでは」

「三度目のフラッシュタイミングッ!」

「……やっぱりですか」


剣蔵がそう言うのは、ここまでやってなにもなしってわけがない。まぁそんな簡単な理由だからだ。

続いて取り出したカードは、二体の天霊が大型スピリットと戦っているイラスト。

ちなみに戦っているスピリットは、エンジェリックプレッシャーに描かれていた象型スピリットと似ている。


「マジック、スティールハートをコスト1で発動。
コストは光射す丘から使用し、光射す丘はレベルダウン」


トラッシュへコアが送られると、光射す丘の輝きがやや弱まる。やすっちはそれに構わず、カードをラグナ・ロックへ向けた。

ラグナ・ロックはしびれを切らせたかのように浮かび上がり、剣を振りあげながらやすっちへ迫っていた。


「このターンの間、相手スピリット一体のシンボルを0にする。
当然ラグナ・ロックを指定し、ダブルシンボルには消えてもらう」

「バキュームシンボルと同系統だとっ!」


驚くゾルダーがラグナ・ロックのカードを見ると、神々しく輝くシンボルは見事に奪われた。

まさか同系統のマジックで切り返されるとは思っていなかったらしく……だが実に楽しげな顔をしていた。


「そのアタックはライフで」


展開した二色の障壁が、ラグナ・ロックの唐竹一閃を受け止める。だがシンボルを奪われた以上、それは砕けない。

剣は弾かれ、ラグナ・ロックはその勢いに流される形で後退。ゾルダーの陣地へ戻り、膝をついた。


「ふん、やるじゃねぇか。ターンエンドだ。
エンドステップ、賢者の樹の実・レベル2の効果で俺のスピリットは全て回復」


だがそこで賢者の樹の実が輝き、三体を立ち上がらせる。

同時にディオ・マンティス達を、執拗に戒めていたプレッシャーが解除。

二体はそれを振り払うように、両腕を伸ばし鳴いた。相当キツいらしく、どこか嬉しそうだったぞ。


「あぁ惜しいっ! これがなければプロデューサー、次のターンで勝てたかもしれないのにっ!」

「やっぱりゾルダー教官は強いね。詰めの一撃をズラされても、隙がない」

「いやいや、恭文君もかなりやるよ。あれ、さっき組んだばっかりのデッキだよ? もちろんカードプールの差も大きいだろうけど」


すずりんは今の防御、それなりに驚いているようだ。まぁ調整っつっても、結構ぱぱっと済ませたからなぁ。

キーが決まったら低コストを揃え、新マジックを幾つか入れ、バーストもちょい組み込んで……だ。


「Jud――と言いたいが、さすがに俺も軽くビビってる。
あのデッキ、バースト関係以外はほぼ初見のはずなんだが」

「ラグナ・ロックの疲労と連撃コンボを、カード三枚で止めたものね。だけど恭文君のライフも残り一つ」

「このままだと次にアタックされたら、凌ぎきれないかもしれないわね。それでもあの子は楽しそう」


アンジュはじーっとやすっちの目を見て……あ、やすっちが気づいて顔を真っ赤に。

おいおい、ゆかなさんボイスだからか。幾らなんでも弱すぎだぞ。

……しかしここで全員、『フルアタックすれば』とか言わないのが、またなぁ。


ゾルダーが返しのマジックなり持ってるって思ってるんだろ。手札も増やしたしな。

実は俺も同感だ。恐らくフルアタックしても、どうにもならない。

だがそれを一番強く感じているのは、やすっちのはず。このドローが勝負を決めるな。


いや、もしかするともう……見られるぞ、アイドルマイスターの本領が。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


エンジェリックプレッシャー

マジック

3(2)/黄

フラッシュ:
このターンの間、相手のスピリット1体をBP-3000する。

イラスト:相沢美良
イラスト:SUNRISE D.I.D.(バトルスピリッツソードアイズウエハース)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


スティールハート

マジック

3(2)/黄

フラッシュ:
このターンの間、相手のスピリット1体のシンボルを0にする。
この効果は、メインステップで使えない。

イラスト:相沢美良


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN07→08

ゾルダー

ライフ×1 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×8 コア総数×20

手札×5 デッキ×27

スピリット:ディオ・マンティス・レベル2(コア×3) ディオ・マンティス・レベル1(コア×1)

ラグナ・ロック・レベル3(コア×5)

ネクサス:賢者の樹の実・レベル2(コア×3)


恭文(OOO)

ライフ×1 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×4 コア総数×12

手札×2 デッキ×29

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中) 天使スピエル・レベル1(コア×1 疲労中)

天使マカエル・レベル2(コア×2 疲労中) 大天使ガブリエレン・レベル3(コア×4 疲労中)

ネクサス:光射す丘・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN08メインステップ開始時

ライフ×1 リザーブ×5 トラッシュ(コア)×0 コア総数×13

手札×3 デッキ×28

スピリット:天使スピエル・レベル1(コア×1) 天使スピエル・レベル1(コア×1)

天使マカエル・レベル2(コア×2) 大天使ガブリエレン・レベル3(コア×4)

ネクサス:光射す丘・レベル1(コア×0)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ」


ゾクゾクしながらカードを引くと……来た。あとは手札のカード次第だけど、大丈夫だ。

既に勝利へのラインは見えている。あとはそれを実行するだけ。


「メインステップ。光射す丘をレベル2にアップ」


リザーブからコア一個が送られ、ネクサスレベルアップ。まぁ一応ねー。


「……ダーグ、もらった切り札を使わせてもらうよっ!」

「おうっ! やすっち、やっちまえっ!」


その返事に満足しながら、頷きを返す。それからさっき引いたばかりのカードを取り出し、前へかざす。


「響け、福音の翼っ!」


するとカードから羽のエフェクトが飛び出し、それがカードへまとわりついて光となる。

刃として構築されたそれを袈裟・逆袈裟に振るい、反時計回りに一回転。


「その輝き、未来斬り開く導となれっ!」


そのままプレイ台へ投てきすると、空が暗雲に包まれる。そこから黄金色の羽が、フィールド全体へ舞い落ちる。

そんな中黄色の閃光が走り、ガブリエレンの前へ深々と突き刺さった。地面を割ったそれは弾け、真の姿を現す。

それは天使と翼を意匠としてあしらった、銀色のレイピア。切っ先と刀身、そして鍔元にある装飾はまばゆい黄金色。


特に鍔元には天使の半身が彫刻のように存在し、息を漏らすほどに美しかった。


「ソードブレイヴ――光翼の神剣、エンジェリックフェザー!
コスト3で翔来っ! 大天使ガブリエレンに直接ブレイヴッ!」


コストが送られてから、カードを持ってガブリエレンに載せる。

するとカードから黄色の二重らせんが生まれ、ガブリエレンが軽く跳躍。


「光を超えろ」


そのままエンジェリックフェザーを右手で引き抜き、切っ先をしならせながらゾルダーへ向けた。


「ソードブレイヴスピリットッ!」

「ソードブレイヴ、だと」

「アタックステップッ! ガブリエレンのレベル3効果発動っ!
系統:天霊を持つスピリット全ては、バトル解決時」


ガブリエレンが杖を振り上げると、再びみんなに力が分け与えられる。

さて、このアタックは通るかな。正直嫌な予感はしてるけど、それがまた楽しい。

てーかこれを越えられなきゃ、確かに向こうへいっても意味がない。僕は試されているのよ。


言った事を通せるか、希望である事ができるか――最高のショータイムだねぇ。


「ブロックした相手スピリットがBP3000以下の時、BPを比べずブロックされなかったものとして扱うっ!
ソードブレイヴスピリットでアタックッ! ガブリエレン、お願いっ!」


ガブリエレンのカードを倒すと、まずガブリエレンはエンジェリックフェザーを左斜め上へ振りかぶる。

すると全体に刻まれた刃の意匠が輝き、そこにスピエル達が手をかざした。


「光翼の神剣エンジェリックフェザー、合体アタック時効果発動っ!
このターンの間、相手スピリット一体をBP3000――強化(チャージ)発動っ!
天使スピエル二体とマカエル、エンジェリック・フェザーの合体時効果をプラスし、4チャージッ!
ディオ・マンティス・レベル2を指定し、BP0とするっ! そしてマカエルの効果により疲労っ!」


ガブリエレンは刃が逆袈裟に振るい、強化(チャージ)によって強くなった輝きを剣閃として放つ。

迫る剣閃を前にディオ・マンティスはオロオロと逃げ惑うけど、結局は逃げきれず命中。

再び生まれた重圧に押しつぶされ、力を奪われる事になる。そこでブレイヴスピリットがプレイ台上で輝きだす。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あのブレイヴはアタックによるBP-の他に、個別に強化(チャージ)を持っているんですかっ!」

「つまり……合計-7000。中級スピリットも弱体化できる数値ですが、これだけでは」

「そしてその相手スピリットが、ターンで初めてBP0になった時、このスピリットは回復っ!」


光を宿したカード二枚が、自動的に回復状態へ移行。これによりガブリエレンは、もう一度アタックが可能になった。

つまりこうだ。何度もBP0にされているディオ・マンティスだが、このターンで削られるのは初めて。

そのため条件を満たし、ブレイヴスピリットが回復したってわけだ。


「そんな条件で回復効果っ!? ……これ、低BPのスピリットがたくさんいたら、ほぼ無限アタックじゃ」

「まさかこんな方法で流れを変えるなんて……ソードブレイヴ、その力は底知れませんね」

「更にガブリエレンのバトル時効果っ! このターンの間、相手スピリット二体をBP-3000!
もう一体のディオ・マンティスと、ラグナ・ロックを指定っ! 4チャージ追加し、二体のBPを-7000!」


今度は杖が振るわれ、ディオ・マンティス二体目とラグナ・ロックに重圧をかける。

これでBP15000を誇るラグナ・ロックも、BP8000に減少。やすっちのブレイヴスピリットを下回った。


「マカエルの効果により、ディオ・マンティスは疲労っ! さぁ、このアタックはどうするっ!」

「……ラグナ・ロックでブロックッ!」


ゾルダーはラグナ・ロックのカードを倒し、前進させる。翼を広げたラグナ・ロックは、意気揚々とガブリエレンへ迫る。

ガブリエレンは表情を引き締め、二回りほど大きい奴をきりっと睨みつける。

まずは更に飛翔し、右へ大回り。そうして盾から放たれたホーミングレーザー十数発を回避。


続けて飛んできた光も、きりもみ回転しながら左へ移動し避ける。そうして懐へ踏み込んだところに、ラグナ・ロックが刺突。

ガブリエレンはそこで急停止。素早く側転しながら……おぉ、なんと奇麗なおみ足。

ついでに胸も揺らしながらラグナ・ロックを飛び越え、その背後に着地。


ラグナ・ロックがすかさず振り返り右薙一閃するも、それを伏せて避けつつ腹へ刺突。

ただしその刺突は……瞬間的に十数撃打ち込まれる。黄金色の雨がラグナ・ロックの胴体を叩き、その巨体を大きく下がらせる。


「フラッシュタイミングッ! ソーンプリズンをコスト2で使用っ!」


だがそれに構わずゾルダーは、手札から疲労マジック発動。

すると更に戦い続ける二人はガン無視で、フィールドに緑の風が吹き荒れる。

ソーンプリズン……これはまた、厄介なもんを。


「コストはディオ・マンティス・レベル2から確保し、レベルダウンッ!」

「天使スピエル二体を疲労」


やすっちは特に表情を変えず、宣言通り二体疲労。スピエル達は残念そうに座り込む。

この流れは、マズいな。その予測は正しかったらしく、ゾルダーは二枚目を取り出す。


「更にフラッシュタイミング、ソーンプリズンを発動っ!
コストは賢者の樹の実より確保し、レベル1へダウンさせるっ!」

「……マカエルとソードブレイヴスピリットを疲労」


賢者の樹の実からコストが送られると、風が更に強くなる。やすっちは宣言通りにまた二体を疲労。

ガブリエレンはややふらついてしまい、そこでラグナ・ロックが再び飛び込む。

盾をかざした体当たりを受け、ガブリエレンは吹き飛び地面を滑る。


素早く起き上がり、踏み込んできたラグナ・ロックの刺突を回避。

地面に大穴が穿たれる中、ガブリエレンは大きく上昇。ラグナ・ロックもその後を追うように、羽を羽ばたかせた。


「うそ、切り返したっ!?」

「ハンドリバースでのドローが効いたか。これでやすっちはノーガードだ」

「ラグナ・ロックは倒されるが、これで俺の勝ちだっ!」

「おめでたい奴だねぇ、ショータイムっつったろうがっ! ――フラッシュタイミングッ!」


やすっちはカッと目を見開き、とどめの一枚を出す。だが一体なんのカードだ?

インビジブルクロークはNGだが、黄色ならいろいろある。ウィングブーツとか、ペガサスフラップとか。

だがそこで出してきたカードは、あまりにも予想外のものだった。


「マジック、エンジェリックプレッシャーをコスト1で発動っ!」

「二枚目だとっ!」

「4チャージ追加で、ラグナ・ロックをBP-7000!」


コストが送られると、崩れ落ちていたスピエル達が手を延ばす。

するとガブリエレンのエンジェリックフェザーに、黄色の輝きが少しずつ収束。

ガブリエレンはそれに気づきながらも、身を翻し再び放たれたレーザーを回避。


大きく宙返りしながらフィールドへ迫り、その行く手をラグナ・ロックが遮る。

そうして再び刃を振り上げ、唐竹の斬撃。ガブリエレンはそこで急停止し、スレスレで刃を回避。

そのまま再度踏み込むと、ラグナ・ロックは刃を引きながらシールドをかざす。


そのままシールドバッシュかと思うと、ラグナ・ロックが震えながら動きを止め、ゆっくりと落下し始めた。


「ゾルダー、詰んだな」

「これでゾルダーさんのラグナ・ロックはBP1000! ガブリエレンの効果が発動するっ!」

「そんなー! 兄様ー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「そしてバトル解決――ガブリエレンのレベル3効果発動っ!
ラグナ・ロックの合計BPは1000! よって」


ガブリエレンはガードを解いたラグナ・ロックへ、勇ましい声をあげながら刺突。

それはラグナ・ロックの腹を捉え、衝撃により剣とシールドを放棄させる。

ガブリエレンはそれに構わず翼を羽ばたかせ、ラグナ・ロックごとゾルダーへと急降下。


「BPを比べず、ブロックされなかったものとして扱うっ!」

「なんだよなんだよ」


ゾルダーは隕石のように迫る二人を見上げ、やっぱり楽しげに笑っていた。


「甘いくせに、随分と強ぇじゃねぇかっ! いいぜ、その覚悟」


ゾルダーは両腕を腰だめに構え、障壁展開。落下してくる二人を迎え入れた。


「ライフで受けてやるっ!」


そのままラグナ・ロックは障壁に衝突。走る火花に焼かれ、その巨体を悶えさせる。

ガブリエレンはそこで刃を引き、振り被りながら。


「さぁ、フィナーレだ」


とどめに逆袈裟の斬撃を打ち込んだ。それはラグナ・ロックをすり抜け、ゾルダーの障壁を両断する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


本日の一枚――大天使ガブリエレン。剣刃編に入って登場した、コスト5のXレアだ。

コストに対するBP効率は黄色としても、そして同コスト帯に置いても最高クラス。

今回は発動しなかったが、効果破壊された場合は回復状態でフィールドに残り、一枚ドローという効果もある。


こちらは血塗られた魔具に対し、強力なメタカードとなり得るそうだ。

その場合、レベル3のアンブロッカブル効果は使用できなくなるが。

そちらも強化によって強力になるのは、今回のバトルで分かるだろう。


名前の由来は聖書における大天使の一人、ガブリエル。これからの恭文を支える……ていうかヒロイン?



恭文(OOO)「ヒロインって言うなー! ていうかあの、段階を踏もうっ! 僕達はまずそこからだってっ!」

ガブリエレン(……こくん)


大変そうですが、ぜひ頑張っていただきたい。ナレーターは応援しております。


(その3へ続く)





あとがき


恭文「というわけで、これでバトル終了。いや、実に楽しかった。お相手は蒼凪恭文と」

リイン「リインなのですよー。ゆかなさんボイスなのですよー」

恭文「なに、そのアピールッ!」

リイン「恭文さんがゆかなさん好きすぎるからですー!」


(げきおこなんちゃらかんちゃら)


恭文「それじゃあ今回使用した、デッキレシピです。ちなみにゾルダーの方は、アニメHPで出されたものですね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文(OOO)デッキ・本気バージョン01


スピリット×18

天使スピエル×3

天使マカエル×3

弓(きゅう)ピッド×2

光盾の守護者イーディス×3

聖天使ミカリーン×2

大天使ガブリエレン×3

大天使ララファエル×1

命愛の覇王タマモ・イナリノ・ミョウジン×1


ブレイヴ×4

光翼の神剣エンジェリックフェザー×1

無幻の天剣トワイライト・ファンタジア×1

エンジェロイド×2


マジック×14

エンジェリックプレッシャー×2

スティールハート×1

マジカルドロー×3

絶甲氷盾×2

双光気弾×3

ストームアタック×2

インビジブルクローク×1



ネクサス×4

天の階×3

光射す丘×1


ゾルダーデッキ『http://batspi.com/index.php?%E3%80%90%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B4%E7%B7%A837%E8%A9%B1%20%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%80%91』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


リイン「あ、タマモが入ってるですね」

恭文「実はね。実際に組む場合は、ララファエルを入れてはどうでしょう」

リイン「ピン差しですしねー。あとは無幻の天剣」

恭文「Wikiに書いてた。基本は低コストスピリット中心で、ガブリエレンでアンブロッカブル発揮しつつ殴るデッキ?
それとゾルダーさんのデッキですけど、Wikiを見て分かるとおりストームドローが禁止カードになっています。
なのでその枠に、今回使ったハンドリバースが入っていると思っていただければ」


(よろしくお願いします)



恭文「それで本気デッキはあれだ、ガブリエレンとマカエルを絡ませて、疲労を敷いたり」

リイン「まぁ今回は相手が緑白デッキで、焼きとかバーストとかなかったから並べられたですけど」


(『そうじゃなかったら、コア外しとか怖いね』)


恭文「やかましいわっ! おのれどんだけあずささんにやられてたのっ!? 気にしすぎだからっ!
国内チャンピオンなんだから、紫デッキの相手くらいしてるでしょうがっ!」


(『いや、あずささんは強敵なんだよ。前のめりになるとこう、谷間とかくっきりで』)


恭文「それデッキの問題じゃないー! 単に煩悩の問題ー!」

リイン「それで恭文さん、確か天霊だとミランサループっていうのがあるんですよね」

恭文「あー、うん。天使ミランサっていうカード二枚と、A's・Remixで春香も使った天の階。
あとはオリンピアの天使オクを使ったループだよ。オクでミランサを軽減さえ満たせばノーコスト召喚できるようにして」

リイン「それで連続召喚とかですよね」

恭文「そうそう。天の階で回収しつつ、何度も召喚。それで相手スピリット全てをBP0にするの。
ただやるだけだとあんま意味ないかもだけど、今回みたいにアンブロッカブルも絡めるともう」


(黄色はちょっと悪い事が得意……そう思っていた時期が僕にもありました)


リイン「それでどうするですか、ここから」

恭文「まぁエピローグ的にあと一話やって、それで言った通りだね。
次やる時は、東京にいるみんなの話をやって」

リイン「通常営業になるわけですね。あと恭文さん、リインは話があるのです」

恭文「え、なに?」

リイン「……ゆかなさん好きすぎなのですー! ちょっとお説教なのですー!」


(ばたばたばた……別人だという言い訳は通用しなかった。
本日のED:スキマスイッチ『ゴールデンタイムラバー』)





ガブリエレン(「使って? 一緒にバトルして?」という顔をしている)

恭文「……こういうのが日常になってる僕って」

フェイト「まぁまぁ。私はみんな一緒で、楽しいよ?」

ガブリエレン(「それでいっぱいいっぱい……えへへー♪」という顔をしている)

フェイト「だ、駄目ー! いきなりいっぱいだなんて……確かにその、ヤスフミはいっぱいする方だけど」

恭文「なんの勘違いしたっ!? バトルの話だよね、これっ!」

ガブリエレン(「え、違うよ?」という顔をしている)

恭文「今回は勘違いじゃなかったっ!?」


(おしまい)






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