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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第33話 『NEXTの世界/第三の男』

恭文「前回のディケイドクロスは……火野恭文ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

ユウスケ「お前怒り燃やしすぎだってっ! ……なぁ、恋愛って人それぞれだし」

恭文「それぞれってレベルッ!? もはや帝国作る勢いでしょうが、あれはっ! 何度も言ってるけどっ!
ていうか違うっ! あれは僕の知る恋愛じゃないっ! 恋愛ってのはあれだよ、幼なじみに帰ろうと誘ったら」

ユウスケ「誘ったら?」

恭文「クラスメートに見られると恥ずかしいしーとか言っちゃう奴を、攻略する事だよっ!」

ユウスケ「それ限定的すぎるだろうがっ! てーかそんなヒロイン、今どきいるかっ!?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「フェイト、入るよ―」


二階へ到着したので、ドアを蹴り破る。するとベッドでしくしく言ってたフェイトが、慌てて起き上がった。


「え……な、なにしてるのっ!」

「フェイトを笑いに来た。……馬鹿ばーか♪ モノホンライダーに説教されてヘコんでやんのー♪ ばーか♪」

「ぐす……ぐぅ」


あーあ、また泣きだしたし。本気でメンタル弱いねぇ。いや、弱いのは頭か。その様に、僕はため息しか出なかった。


「じゃあ仮面ライダーって、なんなのかな。正義の味方じゃないなら、なんなのかな」

「お休み」

「え……あの、ヤスフミっ!?」


そのままドアを閉じて、物質変換発動。ドアを接着し、フェイトを閉じ込めておく。

そうそう、ついでに結界も張って……と。これで夜中でも迷惑にはならないでしょ。

フェイト、そのまま泣きまくってね。その先にはきっと、成長したフェイトがあるはずだから……あれ、ダブタロスがこっちに来た。


それでなんか角をブンブンと振ってくる。えっと……なにこれ。


≪ふむふむ……ダブタロスはこう言いたいみたいですね、『鬼ー♪』と≫

「なんでっ!? てーか分かるんかいっ!」

≪なんとなく表情で≫

「表情っ!?」


改めてダブタロスを見ると……あ、分かる。僕にもダブタロスの言いたい事が分かる。

そうか、ダブタロス……いい子いい子してあげると、ダブタロスは嬉しそうにきりもみ回転する。それはそれとして。


「ユウスケ、なんの用よ」


僕の方へ近づいてくる、パジャマ姿のユウスケへ声をかける。姿も見ずに声かけされたせいか、ユウスケがぎょっとした。


「おま……せめて声かけるまで待てよ。……なぁ、少し焦りすぎじゃないか?
士や俺もいるし、もうちょっと二人に構ってやっても」

「ユウスケ、なに甘い事言ってんの。これからは僕達も自分の身だけで手一杯になるよ」

「スーパー大ショッカーか? それなら天道さんやヒビキさん達も協力してくれるし」

「いや、ZECTの事。それとツツかれる前に言っておくと、大和鉄騎じゃない」


ダブタロスを撫でながら思い出すのは、大和鉄騎。そして……あの男の事。

前の世界ではありえない僕がいたりですっ飛ばしてたけど、ここに来て予感が強まってる。

てーか今日ワームを出してきたのが、なにかの暗示みたいに感じてしまう。


ユウスケも僕がマジで言っているのは分かったらしく、目を細めた。


「どういう事だよ。ZECTは潰れてるし、大和鉄騎以外って」

「もう一人……下手すると、大和鉄騎以上に厄介な奴が出てくるかもしれない。
ソイツは天道以外で唯一、ハイパークロックアップができる」

「……それってハイパーダブトってやつかっ!」

「違う」


それならまだ良かった。ハイパーダークカブトなら、僕である可能性もあるから。

でも……それだけじゃないから、自然と不安が強まる。


「もう一人、別にいるの。ソイツも大和鉄騎と同じで、劇場版カブトに出てた。敵側として」

「な……!」


もちろん原典と違う部分はあると思う。でもカブトの世界に関しては、ほぼそのままだった。

だから……そうだ、奴が出てくる可能性は高い。そんな事はないと思いたいけど、こういう時の勘は外れた覚えがない。





世界の破壊者・ディケイド――幾つもの世界を巡り、その先になにを見る。

『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説

とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路

第33話 『NEXTの世界/第三の男』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


翌日――フェイトを解放し、頭を踏んづけて一文字さん達に土下座させた上で、僕達は軽井沢を目指す。

ただ朝のニュースでは……昨日の転落死事件がどこにも載っていなかった。

風見ちはるって、かなりの人気アイドルらしいのに。いや、察してはいたのよ。


……駄目だな、現段階だとなにも言えない。とにかくこう、あむにとっても辛い事実が待ってるかも。

それはそれとして、早速作戦会議です。写真室で朝食の巣ごもりスープを頂きながら、物騒なお話。

巣ごもりスープというのは、コンソメスープに穴を開けたトーストを浮かべ、その穴に黄身を置いたもの。


心地良い風味とやわらかな味。それを吸い込んだトーストがまた幸せで……やっぱり栄次郎さんは凄い。


「それで蒼チビ、お前の予測では」

「間違いなく風見志郎は、ショッカーの改造人間だね。チェーンソー女の事もあるしさ」

「確かに俺も、デストロンなんて聞いた事ないしな。一文字も」

「さっぱりだな。それより……そろそろ解け」

「大丈夫です、後で栄次郎さんがフーフーしながら食べさせてくれるそうですし」

「いらねぇよ、そんなサービスッ! てーか拷問かっ!」


失礼な。ほら、栄次郎さんがサムズアップで気合い入れてるし。問題なしなし。

なおフェイトには『邪魔だから口を挟むな。挟んだら縛り上げて、結界の中に置き去り』と宣告している。

いちいち口出しされるのは面倒だもの。こっちはぽんぽん話を進めたいのよ。


「じゃあ弱点とか分かるか? まぁないとは思いたいけど、敵だった場合もありえるし」

「……V3には一応四つの死の弱点ってのがあるけど」

「それいいじゃないか。どんなのだ」

「一つしか正式に決まってない」


スープを頂きながらそう言うと、当然みんなは呆けた顔をするわけで。それは近くをパタパタと飛んでいた、キバーラも同じ。


「ごめん蒼凪君、その……決まってないってどういう事かな」

「確かにV3放映当時、そういう設定はあったんです。でもその中身は、一つしか確定していません。
あとは雑誌設定やらなんやらで、劇中には出てなくて。総集編ビデオでも『残り三つは明らかではない』とあって。
……その一つも逆ダブルタイフーンという技を使ったら、三時間変身できないってもので」

「……参考になりそうもないな。まずこっちの風見志郎が、それを使えるかどうかって段階だし。残り三つは」

「V3バリヤーで耐えられる電圧は、百万ボルトまで。砂地での戦いが苦手。
深海一万m級の高圧力には耐えられない……です」

「駄目だな」


もやしが一刀両断するので、その通りと頷く。そもそもそれだけの攻撃を、どうやってやるのかって問題もあるしなぁ。

だって軽井沢だよ? 三つ目なんてどうするのよ。そう考えると弱点ないよなぁ、V3。


「そっちのコウモリは」

「残念ながら管轄外だからぁ。ここの情報は、又聞きの又聞きなのよねぇ。
でもまさか、ナノマシンなんて持ち出しているとは思わなかったけどぉ」


嘘を言っている様子はないので、そこは軽く流す。しかし……やっぱりやばい事になってるな、この世界は。

エクサストリーム社の事件も気になるし、そこも聞き出していかないと。何気にやる事は多い。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


朝食を頂き、後片付けを手伝ってから僕達は外へ。これからバイクで、軽井沢へツーリング。

それで本郷さんが持ち出してきたのは、白いスポーツバイク。これは……おー!


「生サイクロン号だー! この子は無事なんですねっ!」

「あはは、やっぱり知ってたんだ。もう大事に乗らせてもらってるよ」


CBR1000と類似したこの白いバイクは、サイクロン号――仮面ライダー1号の愛車だよ。

生で見られたのに感動しながら、僕ともやし達もそれぞれのバイクへ乗る。


「あの、待ってっ!」


それで出発と思っていると、慌ててギンガさん達が外へ出てきた。そこには見送りにきたあむも混じってる。


「なに、おのれらも来るとかなの?」

「いや、私は……やめとく。今回は本気で足でまといになりそうだし」

「よく分かってるじゃない。そう、ギンガさんがいても邪魔なのよ。今回に限らず全てにおいて」

「はっきり言うのってどうなのっ!? いや、けが人だからしょうがないけどっ! その代わり、その」


そこでおずおずと出てくるのは……なんで学習能力ないのっ!? なんでそこフェイト出しちゃうのっ!


「……駄目。おのれらは言った通り、これからは一歩も外へ出るな。ヒビキさんも同じくです」

「蒼チビだけじゃなく、俺やユウスケも同意見だ。特にこっちだと、ナノマシンなんて飛び出してるしな」

「下手に出たら、みんなまで巻き込まれるかもしれない。まぁあれだ、俺達は大丈夫だから」

「それは、分かりますけど……いや、実は」


夏みかんがやや困った顔をしながら、僕へ近づいてくる。それで一枚のメモを渡してきた。


「なにこれ」

「火野のあなたからもらった、フェイトさんとギンガさんの改善策です」

「改善策っ!?」

「あなたはその、女性全てに責任を取らないヘタレだから、絶対二人の事も顧みない。
だからそういう馬鹿行動をやらかした時、これを見るようにと」

「殺すっ!」

「いや、私じゃありませんからっ! あの人がですからっ!」


それでも殺すっ! なにあのありえないのが常識みたいに言ってるのっ!? ていうか、おかしいのっ!

アイツがアイドル事務所勤めてるって段階でなんかおかしいのっ! ほんとありえないのっ!


「それでこれは、その写しです」

「なんで写し? そのまま渡してくれれば」


とか言いながら受け取って、中身確認。それでもやし達もなぜかのぞき込んでくる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――やぁ、もう一人の僕。これを読んでいるという事は、相変わらず情けない道を進んでいるんだね。

全く……しょうがないので僕からアドバイスを授けよう。二人はあれだ、愛情不足だよ。

ようはおのれがヘタれてるせいで、信頼関係を築けてないんだよ。なのでここを改善しよう。


まずは二人と一緒に添い寝。それからバストタッチとキスも交えつつ、軽めのコミュニケーション。

これだけでも大分安定するはずだよ。二人とも自分の事を見て、気にかけてくれてるって思うはずだから。

というか、好きだって思ってくれてるんだから全員面倒見ようか。それが男の甲斐性だよ。


それで……流れによってはエッチ? おそらくこれで二人は良妻化するはず。おっと、みなまで言うな。

言いたい事は分かる、それで安定しても意味ないとか。でもね、それは違うよ。エッチも幸せなんだから。

肉体的なコミュニケーションも、愛情を送る行動なんだから。千の言葉より、一度の添い寝で人は分かり合えるのよ。


まぁさすがにキスやエッチは勧め辛いから、まずは添い寝から頑張ってみようか。

いい、おのれが突っ走ってる事で二人とも不安になってるの。力になれてるって実感が欲しいの。

鞭でしつけるのもいいけど、時として飴という優しさも必要。てーか惚れてくれた二人を救えず、世界を救えるわけがない。


そうそう、それと……インジャリ―対策で僕もツテやら使いまくってねぇ。請求させてもらうから。

おっと、みなまで言うな。一応ね、僕はプロなのよ。プロが無償で動くってのはありえないの。

それなりの報酬を頂くのは当然の事。今回はおのれらの代わりに頑張ったわけだしさ。


まぁスーパー大ショッカー倒した後でいいから、払いに来てね。それじゃあ頑張ってねー。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


僕はそれをビリビリに破いて、手の中で物質分解――粒子に変換した。な、な……なに考えてんだボケがっ!

そんな事できるわけないでしょうがっ! ふざけんじゃないよっ! アイツ、やっぱ殺すっ!

あと請求ってなにっ! そういう事は直に言えっ! なに世界離れてから戻るフラグ立ててるのっ!?


「……それ、破いても無駄ですから。写し、三百枚くらい渡されてて。あと電子データも携帯に」

「全部渡せっ! ぶち壊してやるっ! スーパー大ショッカーの前にぶち壊してやるっ!
てーか戻るよっ! まずアイツを殺してやるっ! 殺す殺す殺すー!」

「と、とにかく落ち着いてください。それでその、もう一度読んでほしいんです。その後を」

「その前に殺すっ!」

「落ち着け恭文っ! まずは読もうっ! なっ!?」


とか言ってまたメモを差し出してくるので、ひったくるように受け取って確認。

ありえないところは省き……あれ、なんか『追伸……ただし実行する場合は要注意』とか書いてるんですけど。


「要注意……一緒に渡したフォークを、フェイトに持たせるっ!?
使い方は順手で持って武器にするって、意味が分からないっ!」

「ですよねー。それでその、チート化すると書いてるんですよ。自分でも勝てなくなるし、落ち着くはずだって。
フォークを持っているうちは天然ドジもなくなるから、なんとかなるって」

「うん、書いてるねっ! でも本気で意味が分からないわっ!」

「よかった、私と同じだー。あの、夏海さんからメモ見せられて……一応試してるんだけど」


確かにフェイトの両手には、なぜかフォーク。それでフェイトはフォークを持ったまま、オロオロしていた。


「あの、これどうするの? どうすればいいの? フォークって食器だよね」

「……少年」

「ヒビキさん、僕を見ないでください。僕はただ、アイツを殺したいって事しか言えない」

「殺意しか感情がないっておかしいだろっ! それはそれで駄目だぞっ!?」

「うふふ、お笑いよねー」


あ、沢城みゆきも出てきた。それでフェイトの周囲をくるくると回って笑ってくる。


「RPGだってひのきの棒とかあるのに、あなたはフォークがお似合いなんですものぉ」

「は? 沢城みゆき、なに言ってるの。PRGの基本は銅の剣でしょうが。
素手でスライムを叩き、必死に300Gとか貯めて銅の剣を買う。
そこからRPGは始まっていくのよ。ひのきの棒なんて装備する必要……なしっ!」

「そういうこだわりの話はしてないわよぉっ! あとそれ、どんなマゾプレイッ!?」

「馬鹿じゃないのっ! 僕はドSだっ! ドSだからこそ銅の剣を欲するのよっ!」

「恭文ちゃん、ほんとイミフよねっ!」

「む……うるさいっ! というかうっとおしいっ!」


フェイトがそう言って、フォークを唐竹に振り下ろす。沢城みゆきは右へすっと避けるけど……その瞬間、嫌な予感が身体を走る。

それが事実だと示すように、空気を斬り裂く音が響く。そしてフェイトの真向かいにあった外壁が、真っ二つに両断された。


『……え?』


それで全員がそのブロック塀を見て、声をあげて硬直。
次にフェイトを見ると、フェイト自身も戸惑った様子でオロオロしていた。


「え、あの……なに。私、魔法もなにも使ってないのに」


そう言ってフェイトがキバーラを見て、フォークで刺突。

慌ててキバーラが上昇すると、その下をまた不可視の衝撃波が通り過ぎる。

うん、今度は気配察知で『観えた』。フェイトの刺突に合わせ、フォークから衝撃波が発生してる。


それはそのまま空へ突き抜け、進行方向上にあった電線へ衝突。その中ほどを粉砕し、消失させた。

切れ端は繋がっている電柱から垂れ下がり、バチバチと火花を走らせる。その音を聴きながら僕達は、ぼう然としていた。


「な、なによこれぇっ!」

「まさか、本当にっ!?」

「いや、でもただのフォークだよねっ! ブリッツキャリバーのサーチでもそう出たし……なぎ君っ!」


僕達は揃ってヘルメットのバイザーを下ろし、バイクのアクセルを揃って捻る。

そうしてそのままみんなを置いてけぼりにして、走り出した。


「夏みかん、後は任せたぞっ!」

「「大丈夫、みんなならなんとかなるっ!」」

「いや、ほんとごめんっ! でも……俺にはどうしようもないっ! 一文字に言ってくれっ!」

『待ってー! みんな逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


逃げるとは失礼な、僕には目的があるから頑張りたいだけだよ。そうだ、あれは幻覚だ。

お願い、そうと言わせて。ていうかアイツ……やっぱ殺すっ! 一体なにしてくれてんのっ!?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「い、行っちゃったし……夏海さんー!」

「とりあえずその……フェイトさん、ここでそれ使うのやめましょう。ほら、周りに迷惑かけちゃいますし」

「うん……でも、なんでだろう」


フェイトさんもぼう然とした様子で、フォークを見つめていた。それでその先を、左手の指で軽く撫でる。


「これを持っていると、今までもやもやしてた気持ちが自然とスッキリしてくる。
なんかもう、ライダーのあれこれとかどうでもいいというか、私馬鹿だったというか。
キバーラの事もちょっとしたツンデレに見えて、むしろツンツンしたいというか」

「ちょっと、それでツンツンはやめてよぉっ! あたし死んじゃうじゃないっ!」

「フェイトさんが覚醒してるっ!? 火野のなぎ君、本当に一体なにしたのっ!」

「私が聞きたいですよっ! それよりその……あむちゃん」


とりあえずみんなで写真館へ戻りつつ、夏海さんがあむちゃんに声をかける。

それでもなにも言わないあむちゃんを写真室へ連れていき、椅子へ座らせた。


「私達もその、朝のニュース見ました。ちはるちゃんの事」

「うん……ネットのニュースとかにも、その話載ってなかった。
おかしいよ。ちはる、めちゃくちゃ人気アイドルなのに」

「……あぁ、そうだな。しかも少年と本郷が、ちゃんと警察が来るまで待って、その上だしなぁ」

「……そうか、分かった。ちはるちゃんは替え玉だ。本物は今」

「フェイトさん、しっかりしてくださいっ! どこからそんな話が出てきたんですかっ!?
フォークですかっ! やっぱりフォークからなんですかっ!」


電波をもらって、フォークに取りつかれ始めたフェイトさんを必死に揺らす。

あぁ、よく分かった。確かに要注意だ。こうなるって知ってたら警告するよ。

とにかく……ちはるちゃんの事だね。ニュースなどでは類似するような、飛び降り事件の話も出ていない。


結構騒ぎになっていたそうなのに、やっぱりおかしいよ。事件性がないと判断されたから?

いや、それでもアイドル――公人なわけだしなぁ。あ、だからこそとか?

葬儀やらなんやらの問題があるから、落ち着くまで発表を控えている。それなら分かる。


ただお兄さんが失踪状態で、なぜか軽井沢だよね。しかもそれがV3らしいし。うーん。


「――おぉ、可愛いねぇこの子」


栄次郎さんがはしゃいだ様子で、テレビを見ていた。……電線切れたのに、停電とかしてないんだ。まぁいつもの様子なのに安心。


「へぇ、Chiharuちゃんって言うのかぁ。いい歌だねぇ」


安心なんてできなかった。私達はハッとしながら、慌ててキッチンへ。栄次郎さんの脇を取り、テレビを確認。

そこに映っていたのは、黒髪ボブロングの女の子。やや儚げなイメージで、うたっていた。

その映像がパッと切り替わり、フレッシュグリーンを基調としたスタジオの風景へ切り替わる。


そこにはさっきのイメージとは違い、明るい印象のあの子が出ていた。私達は思わずあむちゃんを見る。

だってテレビに映っている子、昨日私達が見た飛び降り死体と……全く同じ顔なの。


「嘘、ちは……なんでっ!? ねぇ、これなんなのっ!」

「いや、なんなのって……生放送だよ。人気歌手らしいんだけど、凄いねぇ」

「そんなわけないっ! だって、ちはるは」


崩れ落ちかけたあむちゃんを、すぐに支える。マズい、本気で動揺してる。まずは椅子に座らせて……と。


「ど、どういう事ですかっ! しかも生放送って事は」

「少なくとも同じ顔の子が、ちゃんとあそこにいる。そういう事よねぇ」

「ワーム? もしくは双子? それなら……ああもう、せめてなぎ君達がいる時に見てればっ!」


またオロオロしてるフェイトさんはそれとして、私達は混乱の極みへたたき込まれる。

どういう、事なの。まさか本当に……ちょっと待って。あの、もしかしたら考えて然るべきだったのかも。

風見志郎という人もライダーで、ちはるちゃんはその妹。それで改造したのは、恐らくショッカー……だよね。


もしかしてちはるちゃん、ショッカーになにかされてるのっ!? だからこれとかっ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


軽井沢というのは、長野県佐久地方にある地域。元々は五街道の一つ、中山道の難所西側にある宿場町だった。

ただそれも江戸時代までのお話。明治時代へ入ると、文明開化の流れから街道を通る客は激減。

例えば蒸気船や機関車などでの旅が流行り、そのために宿場町としての機能を失い没落した。


ところがその状況は、明治十九年に変わる。その年、カナダ人宣教師がたまたま訪問し、一か月ほど滞在。

その宣教師は二年後に別荘を設け、避暑地・軽井沢としての歴史を切り開いたとされる。

ようは街道を通る旅人を受け入れる街から、別荘を建てられるような人達相手の街へシフトしたのよ。


転送も考えたけど、現地でなにが起こるか分からない以上、地道に距離を縮める計画。

高速に乗って、途中休憩も挟みつつ安全運転で巡航。なんだかんだでこういうのは新鮮で、ちょっとワクワクしてくる。

旅と冒険はやっぱり僕の夢みたい。だからまぁ、それをフェイト達と楽しめないのは残念でもあって。


それでも……今はこうするしかない。二人になにかあっても、駄目だもの。いろいろ自問自答しながら、軽井沢へ到着。

高速を降り、心地良い木々の木漏れ日を浴びながら山道を走る。

いわゆるワインディング・ロードに心躍らせながら、山上の方へ。そうして到着したのは、古めかしい一軒家。


広さはそこそこで、小高い丘の上に立っていた。住所は……うん、間違いない。

僕達はバイクから降り、ヘルメットを抜いて静かに息を吐く。


「ここか、蒼チビ」

「うん。……確かに人の気配がするね。てーか辺りに何人か潜んでる」

「分かるのかい?」

「コイツはどこぞの野獣並みに勘が働くからな」


気配には気をつけつつ、僕達はそのまま広い石階段を上がる。それから表玄関のブザーを押すけど……誰も出てこない。

気配は確かにあるのに。なので慎重にドアノブを捻り、ドアを押すと……あらま、鍵かかってない。


「失礼しますー」


一応そう言いながら入ると、目に入ったのはシックな玄関フロア。調度品もかなり高そうで、左脇には上階へ続く階段。

そして絵画が立てかけられているフロア奥に、テーブル前で立っている男がいた。

男は真剣な様子で、赤ワインをボトルからガラス製の容器へ写していた。あれ、デキャンタだよね。


デキャンタというのは、そういう名前のガラス製容器。デキャンタージュと呼ばれる作業の時に使うんだ。

ワインをボトルからデキャンタへ移し、空気に触れさせる事で味をいい方向へ変える……まぁそういう作業だと思って。

でもそれよりも驚きがある。男はくり色の髪を肩まで伸ばし、目はやや切れ長。いわゆる甘いマスクだと思う。


ネクタイにノースリーブベスト、ピンとした白Yシャツ――全体的に紳士と言う他ない男の顔を、僕は知っている。

そいつは風間大介――カブトに出てくる、ライダーの一人。もっと言うと、俳優の加藤和樹さんそっくりだった。


「まさか、お前」

「恭文、どうした」

「風間、大介?」

「おい蒼チビ、誰だそれ。コイツは風見だろ」

「し」


僕の動揺とか吹き飛ばすように、ソイツは小さく呟く。

右手の指をピンと立てるだけで、奴は場の空気を再び静寂へ戻した。


「せっかくワインのデキャンタージュ中だというのに……邪魔しないでください。あと私は、風間大介とやらではありません」

「そうか。じゃあお前は風見志郎、だよな」


……そこで気配達がこっちに近づいてくるのを察知。即座に結界を展開し、逃げ道を塞ぐ。
とにかくこの場では風見志郎を、絶対に逃がさない事が重要。邪魔する奴は……一番に始末すべきは、右側の奴か。


「俺達は風見ちはるを探している。俺の生徒――日奈森あむに頼まれて」

「……また会えたわね、ホッパー1」


予測通りに右側の大窓から、猫なで声で女が出現。ソイツは昨日会ったばかりの、チェンソーリザードだった。

当然もやし達は奴と風見志郎、両方に警戒の視線を向ける。


「お前」

「お前との戦いは」


チェンソーリザードは右手で腹から胸元をなぞり、甘い吐息を吐く。

それでユウスケがちょっとくらっと……なにしてんの、おのれっ!


「エクスタシーを感じさせる。さぁ、今度こそ私を絶頂へ導いてくれ」

「おい、お前……なにした」

「いや、戦っただけなんだけど」


戸惑う本郷さんの前に出て、すっと左手をかざす。それから女を見て、獰猛に笑う。


「もやし達は打ち合わせ通り、本郷さんと風見志郎を。コイツは僕が相手をする」

「おいおい、お前一人だけでやるつもりかっ!」

「当然でしょ」


というわけで、もやし達の返事は聞かずに結界展開。風見志郎ともやし達を、一緒の空間へ閉じ込める。

女はそれを見て、またあのマスクを装着。そして背後から、ぞろぞろとショッカーライダー達がやってきた。


「坊や、あなたはお呼びじゃないの。どいてくれる?」

「そういうセリフは、僕に勝ててから言うんだね。あー、そうそう。
そこらで潜んでたワーム達、揃って全員隔離したから」


そこでこちらへ迫ろうとしていた女の動きが止まる。……僕が一体なにを狙っているか、よく分かったらしい。


「じゃあしばらくの間、僕と遊んでもらおうか。その後で……楽に殺してやる」

「まさか坊や一人でなんとかするとでも? ワームもいるのに」

「できない理由がない」


そして広いホール上空に、にじ色の歪みが出現。そこから飛び出したダブタロスを右手でキャッチし。


「変身」


そのままベルトに装着し、ダブトへと姿を変える。


≪HENSIN≫


とりあえずあれだ、いろいろ聞き出したい事もあるし、適度に暴れさせてもらおうか。

僕は姿を変えながら、奴らへと重い一歩を踏み出した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


これは……蒼チビの奴か。まぁ打ち合わせしてた通り、俺達がコイツに負けなきゃ三人目は確保だ。

ユウスケも腹を決めたらしく構えを取り、俺もディケイドライバーを腰にセット。カードを取り出し挿入。


≪KAMEN RIDE≫

「「変身っ!」」

≪DECADE!≫


俺はバックルの両スライドを押しこみ、ユウスケもベルトのスイッチを押して変身。

本郷は羽織っていた上着をパッとなびかせ、腰にベルトを出現。内蔵されている風車を回転させ、一瞬でスーツ姿になる。


「とりあえず逃げ場はないぞ。蒼チビをなんとかしない限り、ここからは出られない」

「いえ、方法はもうひとつあります」


風見志郎は容器からワインを注ぎ、その香りをたん能。ただそこで表情を険しくし、ワイングラスをこっちに投げつけてきた。

まき散らされる赤い液体とグラスを、俺達はすっと左へ避ける。だがその間に奴は跳躍し、テーブルを飛び越える。

グラスが割れる音が響いてる間に着地し、まずは俺へ右ボディブロー。続けてユウスケへ左ミドルキック。


普通の人間に見える奴から、いきなり食らった攻撃で俺達は床に転がる。そこで風見はすっと近づき、右フック。

本郷がそれを左手でガードすると、その動きが止まる。


「……私の機嫌は非常に悪い」


かと思うと目にも留まらぬ左右の連打。それで本郷の特殊スーツを叩き、後ろへ下がらせる。

頭も落ちたところで左ハイキック――本郷は側頭部をけり飛ばされ、俺達と同じように床へ転がった。


「まだワインが若かった」

「それは、俺達のせいじゃないだろ」


立ち上がっている間に、奴の腰にベルトが出現。二つの風車に、『Version3』というロゴ付き。

その風車が回転すると、奴の姿は一瞬で変化。絵に描かれていた、緑も混じった戦闘スーツとなる。

どこからともなく取り出したヘルメットを被り、口の下半分に別パーツを装着。……確かに今までの世界と違うな。


だが……こう言うとあれだが、『似すぎている』んだ。このV3とチェーンソーリザードに限った話だがな。

今までは怪人とライダーは、嫌でも区別がついていた。違いはあれど、それは確かだ。

だが外見や姿の変え方――マスク装着する辺りとか考えると、全くの同一存在に見える。


同時に蒼チビとキバーラがしつこく、『同族殺し』って言ったのも理解できる。

どうやら仮面ライダーと怪人ってのは、どこまでも等しい存在らしい。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


こちらへ袈裟に振り下ろされるチェーンソーを、伏せて回避。

そのまま駆け抜けながら、ショッカーライダーその一へ右ストレート。

その一は左腕でガードし、左ローキック。それを同じローで返してから、左右の連打をスウェーで回避。


ただ二発目の右で関節を極め、そのまま一本背負い。その一の腕をへし折り、改めて右ロー。

徹も込めた上で首の後ろを蹴り、骨をへし折っておく。――陸奥圓明流、雷。

背後から迫ってきたその二の胸元へ右エルボー。そのまま身を時計回りに回転。


左へ移動し、同時にその二の背中へ左回しげり。その二は向き直りながら両腕でガードするけど、勢いに押されて下がる。

そこで唐竹に打ち込まれたチェーンソーが走り、その二の首元へ打ち込まれた。スーツに火花が走り、同時に血がほとばしる。

やや下がりながら、その三が左側から打ち込んできた左ハイキックを掌底で払い、右側にきたその四の拳を掴む。


そのまま関節をひねりあげ、右ローキックで膝をついてもらう。

それから身体を時計回りに捻り、こっちに迫ってきたチェーンソーリザードへほうり投げる。

チェンソーリザードがそれをうっとおしげに払っている間に、その五とその六が僕へ回しげり。


両腕でガードしながら下がると、その背後からその七が跳躍しながら右フック。

左に避けながら拳を払うと、その八が左わきへ回ってローキック。左かかとでローを止めている間に、その九が迫る。


僕の右腕を取ってアームロックを決めたかと思うと、ヘッドバット。

軽くよろめいている間にローを打ち込まれ、膝をついてしまう。そこでチェーンソーが迫る。

唐竹に打ち込まれたチェーンソーを、身を後ろにそらして回避。


その八の右回しげりを左腕でガードしたら、アームロックを解除。

素早く下がりながら刺突・左切上・袈裟の斬撃を左・右と回避。三撃目で踏み込み、右アッパーで腕を打ち上げる。

それからリザードの腹をけり飛ばすと、脇からその三とその四がミドルキック。


咄嗟に両腕でガードするも吹き飛ばされ、僕はワインの載ったテーブルへ衝突。そのまま転がる。

壁際に追い込まれ、迫るその五と六のジャブを払う。すると二人はすっと下がり、そこでリザード突撃。

壁へ向き直り跳躍――袈裟の斬撃を避けながら、壁を蹴ってそのままバク転。


リザードの背後に着地し、下がりながら頭を下げその七と八の回しげりを回避。すかさずその九が突撃。

左ストレートを右腕でガードし、弾いてからしゃがみ込んで懐へ右エルボー。

首に腕を回してくるので、そのまま起き上がりつつ前へほうり投げる。そうしてまた打ち込まれたリザードの刺突をガード。


激しい火花が走る中、その九が呻く。それに構わず一瞬動きが止まったソイツの腹へ右ストレート。

火花がより激しくなり、ソイツの身体越しにリザードへ衝撃が伝わる。そのまま二人はあお向けに倒れた。

……やっぱこの形態じゃあ重いか。それに……そろそろ来る感じもしてる。そう思っていると、壁をぶち破りワーム出現。


でもまだ脱皮前のが十数体だから、まだなんとかなる。その三からその八までの全員が僕を囲み、右足を上げる。


「キャストオフ」

≪CAST OFF≫


すかさずゼクターホーンを折り、装甲をパージ。周囲を囲んでいた連中は、装甲の直撃を受け大きく吹き飛ぶ。

それだけじゃなくてこちらへ迫ってきたワームにも、装甲が砲弾の如く直撃。全てが爆散していく。

チェンソーリザードも直撃は避けるものの、同じように動きを止められてしまう。


連中の動きが止まっている間に、胸元に仕込まれていた大角がマスクへ装着。瞳が黄色く輝いた。


≪CHANGE――DARK BEETLE!≫

「クロックアップ」

≪CLOCK UP≫


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


本郷が踏み込み、まずは左右の連打。俺から見ても決して軽くはない拳を掌底で払い、右ひざを腹へ打ち込む。

そうして怯んだところで、ボディにお返しの連打。とどめの右アッパーで本郷の顎を打ち抜いた。

本郷の身体は縦に回転しながら吹き飛び、柱へと叩きつけられる。すかさずユウスケが背後へ回り、羽交い締めにしようとする。


俺も前から迫り、ブッカーをソードモードにした上で袈裟に打ち込んだ。

だが奴は左手で俺の刃を掴みつつ、ユウスケの腹へ右エルボー。ユウスケが怯んだところで、追撃の右ミドルキック。

胸元にそれを受け、ユウスケは部屋奥にある暖炉へ叩きつけられた。


その衝撃で、暖炉内に溜まっていた火の粉や灰がまき散らされる。だが……おい、コイツなんなんだ。

ユウスケに構ってる暇が全くねぇ。刃を押し込んでんのに、全く動かないんだよ。


「世界の破壊者も、所せんこの程度ですか」

「ぬか」


最後まで言わせてもらえず、右ローを受け俺の膝が崩れる。すかさずローはミドルキックに変わり、連続で腹へたたき込まれる。

半端ない衝撃に呻いていると、顔面へ右フックを食らい床に転がる。

すぐにユウスケが起き上がり、再び奴へ組み付こうとするが……振り返りながらの左回しげりでまた倒れた。


「やめろってっ!」


本郷が駆け出し奴に組み付こうとするが、余裕の右エルボー。

本郷がそれを両腕で受け止めている間に、俺も起き上がり奴へ刺突。

それは奴が後ろに下がって避けられたので、刃を返し右薙一閃。


本郷が伏せて回避したかと思うと、また足に衝撃。足元へ回しげりを受けながらまた転がる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


門矢君が倒れているのをつい横目で見てしまうと、その間に脅威が迫る。

打ち込まれる左右の連打をガードしながら下がり、右ローも左足でなんとか止める。

だが足が返り、腹へミドルキック。すかさず腕を下げてガードすると、足が上がり顎へ迫る。


慌てて後へ下げている間に、小野寺君が奴へ組み付き動きを止める。俺はその間に数歩下がり、息を整えた。


「俺達は戦いに来たんじゃないっ! お前に話を」

「暑苦しいですよ」


その一言とともに、奴の左エルボーが小野寺君の腹へ入る。その一撃で身体が離れたところで、奴は振り返り右フック。

そうして伏せ、門矢君の袈裟一閃を回避。それと同時に右足を上げ、わき腹へミドルキック。

俺の脇を通り過ぎ、床を転がる門矢君には構わず突撃。というか、構っている余裕がない。


だが勢いをつけて打ち込んだ右フックは、奴の手にあっさり受け止められる。

すかさず奴は拳を掴み、こちらを引き寄せながら左ボディブロー。

咄嗟に左手でその拳を止め、俺達は組み合う形となる。お互いに押し込みつつ、床を踏みしめる。


そのために床がバキッと音を立てて砕け散り、俺達は僅かに沈み込んだ。……当然の事か。

俺達の力は人間のそれを超えている。それがぶつかればまぁ、こうなるのも当然で。


「ホッパー1、偉大なるショッカーに逆らう愚か者――さぁ、粛清の時です」

「話を聞けっ! 俺達はお前の妹――ちはるちゃんの事を聞きにきただけだっ!」

「黙りなさい」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


奴が腕を上げ、本郷の両手を払う。すかさず左右の連続ボディブロー。咄嗟に腕を戻しガードするが、衝撃で後ろに下がる。

……ち、どんだけ強いんだよ、アイツは。ブッカーからカードを取り出し、ドライバーへ挿入。すぐにサイドのスイッチを動かす。


≪KAMEN RIDE――KABUTO!≫


立ち上がりながらカブトへ変身し、二枚目のカードを挿入して使用。


「いくらお前でも」

≪ATTACK RIDE――CLOCK UP≫

「これならなんとかなるだろっ!」


クロックアップへ突入――すると全ての景色が変化する。

しつこく伸びるユウスケの両手も、それを避ける奴の動きも、一気に速度を落とした。

奴は右へユウスケの突撃を避け、素早く身を翻し左回しげり。


ユウスケの後頭部をけり飛ばし、本郷の方へと飛ばす。男二人揉み合って大変だが、それに構っている余裕はない。

そのまま走り出し、ブッカーを振り上げながら迫る。だが奴はゆっくりとした動きのまま、両拳を腹へ持っていく。

拳と拳を打ち合わせたかと思うと、ベルトの風車が回転。その途端に、風が生まれた。


その風は袈裟に刃を打ち込んだ俺や、起き上がった二人に衝突……なんだ、これは。

ベルトから風が出ているのは分かるが、全く動けない。クロックアップ中だってのに、なんなんだ。

そんな疑問も吹き飛ばす勢いで、俺達は揃って吹き飛び床を滑る。


同時に奴の周囲にある破片達も舞い上がり、ゆっくりと天井へ迫る。


≪CLOCK OVER≫


だがそれは、クロックアップの解除で停止。まるで高速巻き戻ししているかのように、破片達が奴の周囲へ降り注ぐ。

そんな中で奴は腕を下ろし、余裕しゃくしゃくと言った様子でこちらを一瞥。おい、まさか今のが逆なんちゃらか。

だが変身が解けている様子はない。やっぱり蒼チビの情報だけじゃどうにもならないか。


「分かったでしょう、あなた達では私に――ショッカーには勝てない。あなた達は、もう古い」

「うるせぇよ」


クロックアップ対策もバッチリなのは、ほんと恐れいった。ワームとも絡んでいるようだし、そのせいって事か。

普通にやり合っても無理と判断し、またカードを取り出し挿入。すぐさま使用。


≪KAMEN RIDE――KIVA!≫

「あいにく俺は、破壊者だ」


カブトからキバへ変化しながら、二枚目のカードを使用。入れるのは、ワーム戦でも役にたってくれたあれだ。


≪FORM RIDE――BASSHAA!≫


キバ状態である俺の右腕に鎖が巻きつき、それが光沢のある鎧に変化。

緑色に輝く腕でライドブッカーを銃形態に戻すと、銃身中央にプロペラがついた円筒形の銃――バッシャーマグナムへと変化。

ついでに黄色がかった目も、緑の複眼へ変化だ。奴はそんな姿を見て、まだ諦めないのかと鼻で笑う。


「そんな常識も壊してやる」

「あなたでは無理ですよ、私は強い」

「いいや、お前は弱い。二言目にはショッカーショッカー……ショッカーがないとなにもできないんだからな、お前は」

「意味が分かりませんね。それは当然の事でしょう、ショッカーは至高なのですから」


三枚目のカードを挿入し、すぐさま使用。さて、これも駄目となると……まぁその時はその時で考えるか。


≪ATTACK RIDE――BASSHAA BITE!≫


俺の足元から水が生まれ、汚い床一面を覆うように展開。それは奴の足元にも迫る。

奴はそれに構わず駆け出し、右拳を握った。そんな奴へマグナムの銃口を向け、トリガーを引く。

するとマグナムのプロペラが回転し、渦を巻く水の砲弾が発射。それが奴へと迫る。


そんな奴はやや戸惑った様子で、水を跳ね上げながら駆け出す。……どうやらあの逆タイフーンは出さないらしい。

それで戸惑うのも当然だ。前にも説明したが、この水はバッシャーが強くなるフィールド。

相手の力を奪い、こちらの力を強める。下手な力押しは通用しないようだし、これが得策だろう。


だが奴は右手刀で迫る砲弾を払い、そのまま俺へと肉薄――跳躍。そのまま右飛びげりを放つ。

俺はすかさず左腕で、打ち込まれたキックを受け止める。凄まじい衝撃で、装甲から激しく火花が走る。

それに必死に堪え、奴をはじき飛ばす。俺の腕は外側へとはねられるが、奴が着地するまでには……いや、違う。


奴は自分から俺の腕を蹴って、離れていきやがった。すると驚く事に、そのまま宙返り。

また俺へ向き直りながら、がら空きな胴体へ右足を突き出してくる。……そう言えば、蒼チビが言ってたか。

V3は死の弱点とやら以外に、二十六の秘密がある。その中の一つに……反転キックがある。


二発目のキックで相手のガードなどを崩し、空中反転。それからノーガードのところに二発目の飛びげりだそうだ。


「死になさい、悪魔っ!」


そうだな、このままじゃあ俺は死ぬかもしれない。本郷達も間に合わないだろう。だが……俺は蒼チビと違って、運がいい。


「――がぁっ!」


そこでこちらへ迫ろうとしていた奴の左脇から、鋭く砲弾が着弾。

水で構築されたそれは体勢の崩れた奴を押しこみ、そのまま壁へ叩きつける。

あぁ、俺がさっき撃ったバッシャーバイトだよ。前にも言ったが、あれは誘導弾でな。


弾丸をただ弾いただけじゃ意味がない。奴が飛び上がって反転している間に、Uターンして攻撃ってわけだ。

V3は身体を壁に埋めるが、勢い良くはい出て着地。そこで本郷が走る。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ふらふらと起き上がり、それでも抵抗する奴の左拳をガードし、続く連打も脇へ弾く。それからまずは胸元へ右ストレート。

やや下がった風見の右ハイキックを左掌底で弾き、左フックもガードしてからカウンター。

左フックでまた壁際へ吹き飛ばしてから、奴へ迫る。カウンターの右ミドルキックをガードし、その足を掴んでほうり投げる。


暖炉近くへ衝突した奴を見ながら、そのまま駆け出し跳躍。奴もそれに合わせ、起き上がった跳ぶ。

そのまま俺達は右足を突き出し、飛びげり。――もう普通に止めようとは考えない。

死なない程度にダメージを与え、動けなくなってもらう。話はそれからだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ふんっ!」


胸元へ打ち込まれた奴の蹴りを、空いている左腕でガード。そのまま脇へ流し、更に踏み込む。

対して俺の蹴りは奴の顔面へ命中し、そのマスクに亀裂と火花を走らせる。

そして衝撃により、風見の身体はまた宙を舞う。今度は頭から壁に埋まり、派手な破砕音を立てる。


そして俺が着地すると同時に、奴は床へ墜落。その衝撃でヘルメットが頭から外れた。


「なぜ、ですか。お前みたいな旧型に、なぜ私が」

「俺一人ってわけじゃないしな。なにより」


起き上がって膝立ち体勢を解除。それでしびれが残っている、左腕をスナップさせる。


「新型のお前よりは、戦いってやつをやってきたから」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


≪――CLOCK UP≫


ゼクトクナイを逆手に取り出し、そのまま全力疾走。

僕は光を超える速さとなり、ショッカーライダー達の首を次々と落とす。


≪CLOCK OVER≫


そのまま爆散する奴らには構わず、僕はそのままリザードへ迫る。

袈裟に打ち込まれるチェーンソーを飛び上がりながら回避し、奴の背後を取る。

振り返りながら打ち込まれた右薙一閃を伏せて避け、懐へ踏み込みワンツーパンチ。


それと同時に、念のためにブレイクハウト発動――相手の身体構造を理解。それでやっぱりかと舌打ち。

リザードが下がったかと思うと、右後ろ回しげり。そこから跳躍して左回しげりが飛ぶ。

それを下がって避けると、奴はチェーンソーを振り回しながら着地。その先で地面を軽く斬りつつ、また迫る。


左切上の斬撃を後ろへ下がりつつ回避し、一気に踏み込む。続けてくる逆袈裟一閃を伏せて避け、身を翻しながらクナイで刺突。

リザードは腹への一撃を左腕で止め、こちらの手を掴んだ上でチェーンソーを振りかぶる。

すかさず右ローで動きを止め、一旦クナイを手放す。それから相手の腕を締めあげ腹へ右ミドルキック。


足で受け止められたのは気にせず、左腕で襲ってくるチェーンソーの根本を掴む。

相手が反応する前に足を引き、棒立ち状態の右ひざを踏み抜く。そこでリザードが呻き、その身体が崩れ落ちる。

身を時計回りに捻り、リザードを投てき。背後にあった階段の手すりへと叩きつける。


リザードは呻きながら手すりをへし折り、そのまま階段を転がる。でもすぐに起き上がった。

うん、起き上がったの。逆方向に曲がったはずの右ひざが元通り、地面を踏みしめていた。

クナイを拾い上げ、そのまままた奴へ踏み込む。左薙に打ち込まれるチェーンソーを飛び越え、身を捻って右回しげり。


リザードはすっと下がって蹴りを避けつつ、反時計回りに回転。僕に向かってチェーンソーを再び打ち込む。

……狙うはチェーンの接続部分。神経を集中し、神速発動――それで世界から色が消え、全ての動きがスローリーとなる。

チェーンから走る火花も、その動きも捉えられるものとなり、僕は更に身をひねる。


そうして打ち込んだ唐竹一閃がチェーンの接続部を断ち切り、ソー本体も中ほどまでを両断。

その衝撃により奴は腕を外側に弾かれ、動きが止まる。その間に着地すると、奴はゆっくりとした動きで左回しげり。

神速の中では改造人間と言えど、決して速くは動けない。例外があるとすればクロックアップくらいだろう。


僕は振り返りながら、足へ切っ先を突き立てるように右薙一閃。それが左足首を両断し、リザードの足先が脇へ飛ぶ。

そのまま踏み込み、今度は袈裟の斬撃。それで首元から両断しようとするけど、奴はそこで左手をかざす。

手は僕の斬撃を受け止め、中ほどから斬り裂かれる。それで奴は残った足で後ろへ跳び、床を転がる。


……神速終了。軽い疲労感と同時に、世界に色が戻っていく。同時に切られたチェーンが玄関の方へ飛び、ドアを粉砕。

僕に斬られた身体のパーツも音を立てながら、床へと落ちる。

でも奴は起き上がり、器用に片足だけで直立。すると切断された足や手、チェーンソーから火花を走らせる。


すると傷口から、細い触手が何本も出現。それが複雑に絡み合い、元の形に戻ってしまう。

そう、奴は斬られた箇所をあっさり再生した。……ナノマシンって言うから、気にはなってた。

はっきり言おう、奴らはアイアンサイズとかと同類だ。物質変換が通用しないから、魔導師として戦って倒すのも難しいかも。


「私とVersion3の身体は、新型ナノマシンの試作品でできていてな。この程度では死なない」

「そう」


でもVersion3……それがこの世界でのV3か。察するに本郷さんと一文字さんに続く、三人目のホッパーって意味かな。

しかし新型? それってショッカーライダーとはまた別系統って事だよね。現に奴らの傷は再生とかしてないし。


「そうそう。首や心臓、頭などの重要器官までは再生できない。なのでそこを潰せば、私達は死ぬ」

「そんな弱点を教えていいわけ?」

「当然だ、お前とは今……愛し合っているのだからな。お互いに気持ちいい場所を知らないなんて、寂しすぎる」


リザードは再生した左手で、胸をもみあげる。豊かな胸とレザー風味のスーツが、その圧力によって大きく歪む。


「お前の戦いも、エクスタシーを感じさせる。ホッパー1とは違う快楽――さぁ、もっと愛し合おう」

「そういうセリフは、ベッドの中で吐いてほしいねぇ」

「ふふ、お前とならばそれも悪くないかもしれない。だがそれよりも鮮烈なのは、今だ。
だからお前もクロックアップせず、私に付き合ってくれるのだろう?」


その言葉に軽くお手上げポーズを取り、その場で数度跳躍。僕の様子にリザードは、また切なげに胸を揉みあげる。

これが普通の状況で、相手が健康な青少年なら、一発でKOだと思う。でも……僕は不健康だしねっ!

未だにあれだし、ありえない僕は妙な事してくれるしさっ! ほんとどうしてくれようかっ!


「私はお前に感謝している。絶頂を迎える時、相手の顔を知らないままなど……嫌だからな」

「そう。負ける事は分かってるんだ」

「いや、それは違う。どちらかが絶頂を迎える――勝ち負けの問題ではない」


……またふざけた事を言ってくれるので、また踏み込む。でもその瞬間、僕の左側から強烈な衝撃が加わる。

咄嗟にガードしたものの、腕から激しい火花が走り、僕はそのまま外まで吹き飛ぶ。

窓を粉砕し、石を積み上げて作られた塀を砕き、庭を転がる。痛みに呻きながら起き上がると……めまいがした。


そこにいたのは蒼いバラを持った、金色のライダー。胴体はカブトとほぼ同形状で、右肩に角を模したアーマー。

瞳は青く、頭頂部と両頬に三本の角。そして左腰には、ハイパーゼクター。これも、やっぱりだよね。

コイツは仮面ライダーコーカサス――黒崎一誠。大和鉄騎と同じく、劇場版仮面ライダーカブトに出てきた敵キャラ。


そしてハイパーゼクターを用い、ハイパークロックアップを行える殺し屋。

ちなみに演者は、元K-1ファイターである武蔵さん。出番こそ少ないけど、異様な存在感が印象的だった。

でも今敵に回したくなかったけど。いずれ来るかもとは予測していた。だって大和鉄騎がいるもの。


なお結界とか無視で来たのは実に簡単。ハイパークロックアップは、前に説明した通り時間や空間を自由に越えられるから。

クロックアップだけなら、まだよかったのに。やばい、このままだと全滅かも。

それくらいハイパークロックアップは強い。いや、落ち着け。これじゃあ太陽なんてほど遠い。


それにもしかしたら……希望はある。神経を研ぎ澄ませ。もう気配察知は無理なんだ。

攻撃を受ける事は決定済み。見据えるのは、その先――死を越えた先にある活路。

そうだ、僕は負けない。そういう気持ちを持てってたたき込まれた。だから、絶対に勝つ。


「お前が言っていたのは、こういう事か」

「……いや、違う」


てっきり黒崎一誠がいるからと思ってたけど、リザードは首を横に振った。それで明らかな不快感を出して、奴を見る。


「なんだ、お前は。私達が愛し合うのを邪魔する気か」

「このままではあなた、死にますよ」

「構わない」


リザードはマスクを脱ぎ捨て、心地よさそうに僕を見つめる。


「コイツのような男にだったらな。だから邪魔をするな」

「目的を忘れてもらっては困ります。……ダークカブト、まずはあなたから」


来る……奴はバラを離し、左手でハイパーゼクターのスイッチを叩く。


「死になさい」

≪HYPER CLOCK UP≫


奴の姿が電子音声とともに消え去る。咄嗟に感覚を研ぎ澄まし周囲を探るけど、察知……無理だよねっ!

うん、知ってた。それでも嫌な予感に苛まれながら、ガード体勢を取る。今狙うべきは、ただ一つ。

それでもう一度神速を発動。気配が無理でも、直感でなんとかする。この一撃を耐えて、奴の。


≪≪HYPER CLOCK OVER≫≫


でもそこで電子音声が重なり、僕の前にコーカサスが出現。

そしてその拳を……ハイパーカブトが受け止めていた。ハイパーカブト……天道っ!?


「あなたは」

「死ぬのはお前だ」


咄嗟にコーカサス――黒崎一誠が下がるけど、それよりも速く踏み込み、天道の右拳が打ち込まれる。

それがコーカサスの胸元を穿ち、激しく火花を走らせる。コーカサスはなんとか倒れずに済んだものの、僕から距離を取った。


「俺が言った事、忘れてはいないようだな。まぁ当然だが」

「おのれ、なんでここに」

「ヒビキの奴に届け物があった。……それでどうする、黒崎一誠。このまま俺と戦って死ぬか? 言っておくが」


天道は拳を引き、そのまま天を指差す。すると結界内にも関わらず、太陽が天道を照らした。


「俺は知っての通り、全次元で一番強い。もちろんディケイド達にも手出しはさせん」


それでコーカサスは右手で胸元を抑えながら、苦々しい顔でリザードの腕を掴む。それからハイパーゼクターのホーンを倒し。


≪HYPER CLOCK UP≫


ハイパークロックアップ発動。この場から姿を消した。……とりあえずもやし達も安心らしいし、ホット一息。

それで僕は、天道共々変身を解除。一応助けてくれたお礼も言っておく。


「……ありがと」

「お前も学習能力がないな」

「なに、いきなりっ!」

「もう答えは出ているはずだろう。お前は未来を手にしている」


……そう言われると、どうしようもない。実は対抗策は、もう一つあった。

それは……僕が今この場で、ハイパーゼクターを呼ぶ事。天道もこれ、やったんだ。

カブト本編でハイパーゼクターを手に入れようとしたんだけど、それは本編の三島によって破壊。


でも天道はその前からハイパー化したカブトを何度も目撃していて、それが未来の自分だと察知。

だからその自分が使っているハイパーゼクターを召喚して、ハイパーカブトへ変身した。

ここはあれだね。多分本編終わってから、ハイパーゼクター作ったりしたんだよ。


言うならドラえもん劇場版の第三作。そう、天道はドラえもんと同じ事をしたのよ。

なのであれが僕なら……同じようにハイパーゼクターを召喚して、僕もハイパー化できるのよ。ただ。


「……実は迷っていた」

「なぜだ」

「だって……劇場版だと、黒崎一誠からハイパーゼクター奪うしっ!」


そこで軽く頭を抱えてしまう。そう、劇場版では入手経緯が違った。今回僕がやろうとしていたのはこっち。

劇場版の天道は黒崎一誠の隙をついて、ハイパーゼクターを強奪。そのまま変身するの。


正直あれが未来の僕かどうか分からなかったし、弱体化も狙ってこっちに……ちょっと待って。


「おい、コイツは馬鹿か」

≪知らなかったんですか?≫

「いや、確認しただけだ」


僕はそこで顔を上げ、改めて天道を見上げる。あんな風に言うって事はやっぱり……いや、聞いても無駄か。

きっと答えは、自分で見つけるものなんだ。聞いたところでそう言うに違いない。

でも黒崎一誠か。ハイパークロックアップによる空間転移とかできるなら、過去に戻って攻撃ってのもできそうなのに。


初期の頃に攻撃を仕掛けられたら、僕達はどうしようもできずに全滅する。クロックアップの上だもの。

……もしかして、そこまでハイパークロックアップを使いこなせていないとか? なんにしても油断禁物。

ここからは外に出るだけでも命がけだ。いつハイパークロックアップで首折られるか、分かったもんじゃないし。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


一応の危機は去ったので、もやし達を閉じ込めていた結界は解除。ただし最初に張った結界はそのまま。

天道がいるとはいえ、襲撃の危険は拭えないしね。それじゃあまずは、縛り上げた風見志郎を尋問だ。


「これでようやく落ち着いたな。で……なんでお前がまた来てるんだ」

「ヒビキの馬鹿が、音叉を壊されたと聞いてな。代わりを渡してきた。それと馬鹿二人が成長していないらしいな」

「マジですかっ! ていうか、どうやってそこ知ったんだっ!?」


ユウスケ、こっちを見ないで。僕に言われても本気で困る。この人なんでもありなんだから。


「えっと、こちらの方は」

「僕達の知り合いです。仲間かどうかは微妙ですけど。それより本郷さん」

「あぁ。……お前に聞きたい事がある。風見ちはるの事についてなにか知ってるか」

「ちはる……そう言えば先ほど、あむちゃんの名前を出していましたね」


さすがに観念はしているらしく、風見志郎は憎々しげにしながらもそう答えた。

……やっぱりあむの事は知っていたのか。妹から聞いたって事?


「日奈森が連絡しても、ちはるちゃんと連絡が取れないそうだ。だから質問させてくれ。
お前の妹は同じように、ショッカーに改造されたのか? あの日、なにがあった」

「なにを言っているんですか、あなた達は。ちはるならちゃんと活動しているでしょう」


馬鹿な事をと言いたげな表情で、言い切ってくれたし。疑いなど微塵もない様子を怪訝に思っていると。


「……まさか、ショッカーはちはるに手を出したんですかっ! 私との約束を破ってっ!」


いきなり慌てだしたし。どうやら妹の事では、普通みたい。いや、それくらい絆が強いと言うべきか。


「ちょっと待ってくれ。ちはるちゃんとはその、連絡は」

「取れる状態だとお思いですか? 今連絡すれば、ちはるまでこんな事に巻き込む。それより一体、なにがあったんですか」

「……まず俺達は昨日、ちはるちゃんの死体を見た。住んでいたマンションから、転落したらしくてな」

「な……!」

「だがおかしいんだ。ちはるちゃんが死んだ事は報道されていないし、朝の生放送で出演もしていた。
しかも転落直後に、あのチェーンソー女や俺の同型までいた。だからショッカー絡みじゃないかと思っていたんだが」

「そんなはずはないっ! 私はショッカーに忠誠を誓う際、ただ一つだけ条件をつけたっ! それを破るはずが……!」


それがなにかなんて、もう言うまでもないか。ようは従う代わりに、妹を巻き込むなって話だよ。

ただ甘いなぁ。悪の組織がそんな約束、律儀に守るわけがないでしょうが。メリットがあるならともかくさ。

なにより自分でも疑ってるでしょ。じゃなきゃ、さっき慌てた事と繋がらない。


ショッカーなら、それくらいの事やりかねないって……洗脳されてるはずなのにねぇ。


「とにかくだ、おのれの妹がエクサストリーム社の事件と同時に、おかしい事になっているのは違いない。
だから僕から質問。エクサストリーム社であの日、なにがあった。その場に風見ちはるは」

「……いました。だがちはるは関係ない。巻き込まれているはずがないんです」

「どうしてそう言い切れる」

「ショッカーの崇高な実験が始まる前に、ちはるは帰ったからです」


やっぱりエクサストリーム社の事は、ショッカー絡みか。しかも崇高な実験とか言って、自慢げに言ってきたし。


「突然黄色い防護服を着た集団が入ってきて、『このビルは未知のウィルスに侵されている』と言ってきましてね。
それで私達は全員、会議室へ集められました。いわゆる隔離のためと言われまして」

「でもそれは違った。察するにショッカーは、アンタ達のビルにナノマシンをまき散らした」

「えぇ。それでしばらくすると……社員達が次々と倒れて、塵みたいに消えていくんです。
そんな中私や彼女だけが普通だった。手の中で何かが蠢き、元に戻り、また蠢き……それだけを繰り返していた」

「あのリザード女か。アイツ、何者よ」

「私の秘書ですよ」


やっぱりか。『私達』とか言ってたから、もしかしたらって思ってたんだけど。

それがどうしたら、あんな青少年キラーな性格になってしまうのか。


「ただ苦楽を共にした仲間達が死んでいくのに、妙に嬉しかった」


ただおかしくなっているのは、リザードだけじゃない。コイツも同じだ。光悦とした表情で、悪夢を思い出している。

仲間が死んでいく光景を目に浮かべながら、明らかな快楽を得ていた。その表情に、ユウスケや本郷さんが顔をしかめた。


「それで彼らは防護服を脱ぎ捨てて、私達に花束を渡してくれたんです。
おめでとう、君達は選ばれた……そう言われて私は気づきました。
私は、直感していたんだと。私は大いなるショッカーに選ばれ、進化したのだと」

「進化? アンタ、なに言ってんだっ! それは違うだろっ!
アンタは仲間を殺され、自分の身体も勝手な都合でめちゃくちゃにされたんだぞっ!」

「ユウスケ」


今はなにを言っても無駄なので、噛みついたユウスケを抑える。……ナノマシンは改造だけじゃなく、洗脳処置も行うそうだしね。

妹の事を気にしながらも、ショッカーへ依存するように調整されてる。理屈じゃ止まらないよ、コイツ。


「凡人には分からないでしょう。……私は今、満たされているんです。IT企業を立ち上げて成功しても、どこか虚しかった。
でも今は違うっ! 私は幸せだっ! ショッカーに選ばれ、力を手にした事が私の全てっ!」

「ふざけんなっ! そんなもの幸せじゃないっ! しっかりしろよっ! お前は結局」

「――アンタは結局、自分の力じゃなにもできなかったって事じゃんっ!」


そこで後ろから、ドタドタと足音が響く。そちらを見ると……ここにはいないはずのあむがいた。

あむは怒りの表情を浮かべたまま僕達を押しのけ、両手で風見の首根っこを掴む。

……なぜおのれがいるっ! ほら、風見もポカーンとしてるしっ! 一体どうなってるのっ!


(第34話へ続く)






あとがき


恭文「……みんな、やばいっ! スカイリムは時間泥棒だっ!」

フェイト「いきなりなにっ!?」

恭文「いや、興味があったゲームを買ったんだけど……もう楽しくて。MODの入れ方分からないけど」


(まずはバニラを楽しみましょう)


恭文「というわけでスカイリムは来月まで封印。本日のお相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……今回はバトルバトルだったね」

恭文「うん。そして出てきたリメイク版V3。風見志郎はカブトにも出演していた、加藤和樹さん。
奇しくもその時演じたドレイクと同じ、トンボモチーフの仮面ライダーとなっています」

フェイト「あ、だからヤスフミが間違えたんだ」

恭文「そういう事。そして劇場版カブトで猛威を振るった黒崎一誠――コーカサス。
大和鉄騎を出すなら、やっぱりコイツも出さないと駄目なわけで」


(実は鬼ヶ島編でコーカサスからケタロスに変更したのは、ここがあったからです)


フェイト「元々出そうと思っていたからと」

恭文「そうそう。好きなキャラだし、ちょい役でも本人出せたらなーと。そしてやっぱりチートなハイパークロックアップ。
性能は以前説明した通りで、予算の問題が片付けばまさしく最強。……多分」

フェイト「多分ってなにっ!?」

恭文「いや、劇中だとそれより速いフリーズって能力もあったし、これがなかなか。チートクラスなのは確かなんだけど」


(世の中は広いです)


フェイト「でもハイパークロックアップはかなり強いけど、V3も」

恭文「うん、かなり強い感じになってる。そしてクロックアップ攻略――範囲攻撃だね。
広範囲に展開する攻撃なら、タイミング次第で必中になるし。逃げ場あったらアウトだけど」

フェイト「逃げる方が早そうだしね」


(ここは映画でも強かったので。クロックアップ使えば負けるとかそんな事は嫌だった)


恭文「そして……アイツはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

フェイト「ヤスフミ、落ち着いてっ! もう大丈夫だからっ! そこは認めてるからっ!」

恭文「どうにかしてアイツの存在を消し去れないものかっ!」

フェイト「だから駄目ー!」

(予想外に根強い火野恭文の存在……どうしてこうなった。
本日のED:RIDER CHIPS『孤独をふみつぶせ』)





あむ「でもなんで、あたしあそこにいるっ!?」

恭文「そこも次回だよ。ところであむ、またまた学園都市で大暴れするらしいね」

あむ「あ、うん。二期始まったから。それで早速……肩外れるかと思いました」

シャル「助けられたぼくも驚きでした」

恭文「だよねー。……じゃあさ、今度あのビリビリ中学生に会ったら言っといてよ」

あむ「なに?」

恭文「僕を追い回すのはやめてって。空海だけでいいはずだし」

あむ「……ごめん、あたしには無理。ていうか」

???「くぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 誰がビリビリだー!」

恭文「ち、また来たかっ! てーかなんでっ!? 性懲りもなくっ!」


(おしまい)






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あきゅろす。
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