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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
2013年初笑い記念小説その4 『とまと芸能人格付けチェック2013 〜お前ら本当は何流だ?〜』

前回のあらすじ――そっくりさんと三流が負けないでーってうたってました。

……ふざけんなー!? お前らが負けてんじゃねぇかよー! 新年早々縁起悪いわっ!



※第三チェック終了時点


春香:普通芸能人

マダマ:一流芸能人

律子:そっくりさん

銀さん:一流芸能人

ティアナ:三流芸能人

はやて:一流芸能人


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――はい、それでは三流とそっくりさんの歌の事などスパっと忘れて」

「「ちょっとっ!?」」

「次のテストは……こちらよ」


りまが右手で背後のモニターを指すと、そこにでかでかと漢字二文字が表示される。


「今回のテスト……最後はやっぱり牛肉だ。一つは牛肉の生産量が国内一とまで言われる、鹿児島産のテンダーロイン」

「テンダーロイン? なぁ、それなんだ。俺には聞き覚えがないんだが」

「簡単に言えばヒレだ。ヒレは英語でテンダーロインとも言われていて……これ凄いぞ。
テンダーロインは希少部位で、一頭の牛から3%しか取れない」

「つまりその、ヒレの凄いやつって感じか」

「そういう事だ」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


最終チェック――牛肉。鹿児島は日本一の和牛生産地。

テンダーロインは一本の牛から、僅か3%しか取れない希少部位です。その価格は150g・12000円。

それを今回調理していただくのは、グランドハイアット東京にある、ステーキハウス・オークドア。


ここは新鮮な牛肉をダイナミックに焼きあげ、有名ハリウッド・スターも訪れる名店です。

この店で最高級のテンダーロインを、ウッドバーニングオーブンで焼いていただきます。

日本一の和牛生産地・鹿児島で育った牛肉は、きめ細かで柔らかい肉質が特徴。


適度な霜降りととろけるような食感を、口いっぱいにたん能できる至高の逸品です

それと比べるのはスーパーで買った、100g・800円の牛肉。さぁそれではみなさん、最後のチェックへ行ってみましょう。






2013年初笑い記念小説その4 『とまと芸能人格付けチェック2013 〜お前ら本当は何流だ?〜』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それではみなさんにはチェックルームへ移動していただき……最後のおもてなしです。

一流の皆様には、ホット一息緑茶と小梅。一件質素に見えますが、どちらもこだわって作られたものです。

お酒なども入っておりますので、口の中をこちらで一旦リフレッシュしていただければと思います。


普通の春香くんにはペットボトルのお茶を。三流には……まぁ塩でいいんじゃないの?

それでそっくりさん、喜べ。お前には豪華なまぐろの漬け丼を用意してやったよ。ありがたく食せ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


一流のもてなし……私はいつになったら、何回も受けられるようになるんだろう。

マジで塩しか置いてない小皿を見て、本気で疑問を抱くしかなかった。


「お、このお茶うめぇな」

「うむ。まろやかさと苦味が見事に調和している。それにこの小梅も」

「酸味がとんがってないで、なんかホッとする味やなぁ」


小梅ポリポリ食べてるところ恐縮ですけど、こっちを見てもらえませんか? ほら、私は塩と対峙してるんですけど。

いや、それより悲惨な人がいる。……律子さんの前には今、漆喰塗りのお盆と空の丼が置かれている。

えぇ、ただそれだけなのよ。まぐろの漬け丼なんてどこにもないの。


「あ、あの……なにこれ。いや、割と本気で疑問なんだけど」

最近土山しげる先生が、闘飯(とうはん)というマンガを連載し始めました

「え……は、はぁ。それがなにか」

それがエア飯――ようはエアギターなどと同じように、ご飯を食べている振りをするマンガなんですよ。
その仕草でご飯のイメージを、美味しさを表現する対決が描かれるわけです。なので


「ま、まさか……!」


まさかこれで、エア飯やれとっ!? 律子さんが本当に漬け丼食べているように、見せろとっ!?

なに、この無茶ぶりっ! 既におもてなしでもなんでもないじゃないっ! ていうかそのマンガ成り立つのっ!?


ささ、どうぞ。まぐろの漬け丼ですので、じっくり味わってください

「ふざけないでー! そんなのできるわけないでしょっ!? せめて水とか出してよっ!」

知っていますか? 真のデュエリストはドローするカードすら創造します。
ならばエア飯から本物の漬け丼を創造する事も決して不可能ではないでしょう。さ、どうぞ


「あ、なるほど。そりゃ道理だわ。俺ジャンプ主人公だから分かるわ」

「そんなのできないからっ! く、屈辱よ……屈辱よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


そう言いながらも律子さんは、涙目で左手を伸ばす。そうしてお盆の脇――虚空を掴み、反対側の小皿へ近づける。

虚空を少しだけ傾けると、すぐにそれを元の場所へ戻す。あれは……醤油かっ!

醤油の小瓶を持って、小皿に垂らしたんだっ! この人、罰ゲーム同然なのにマジでやってるっ!


小瓶を置いてからさっと箸を取り、まずは……丼の中央に箸をつけた?

それでなにかをつまんで、丼の脇に載せる。そうかと思うと、また箸を動かす。

まるでそこになにかこう、平べったい形のものがあるように。あれはマグロとわさびね。


わさびをマグロに載せて、切り身を小皿の醤油につける。

それを口でほうばり、しっかりもぐもぐ……あ、やばい。美味しそうだわ。


「なんか凄い。律子さん、漬け丼見えるで。それもめっちゃ豪華なやつ」

「わ、私もです」


とか言っている間に律子さんはマグロを味わい、次にご飯を一口。……微妙に口の動きが違う。

マグロをかみ締め味わうのとはまた違う、やや小ぶりで細かい動き。本当に再現してるんだ。


「……なぁ、彼女はここまでの事が即興でできるのに、どうしてそっくりさんなんだ?」

「俺にも分からねぇや。本番に弱いタイプなんじゃ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そっくりさんじゃあエア飯ができても意味がない。そんなわけで、チェックスタートです。

みなさんには目隠しをしていただいた上で、AとBを一切れずつ味わっていただきます。

こちらのチェックはいつも通り一人ずつ行いますので、あしからず。さて、最初のチェックは天海春香くん。


最初のチェックでも少し触れましたが、彼女の味覚自体はかなりしっかりしている。

そんな彼女が間違えた事から、前回のチェックが高難易度だった事は伺えるが……さて、今回はどうなる。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「春香くん、最後のチェックだけど……どうよ。とりあえず間違えても、そっくりさんで一歩前進だよ?」

『ま、間違えませんよっ! 響ちゃんには普通な私を見てもらうんですっ!』

「じゃあ自信の程は」

『うぅ……前回間違えているので、実はあまりありません。とにかくその、自分の感覚を信じてみます』


まぁそれが妥当だろうなぁ。春香の味覚自体はしっかりしてるはずだし、なんとかなるかも。

というわけで目隠しをしてもらった上で、AとBそれぞれの牛肉を頂く。

ここは焼き色云々でバレる危険を避けるため。まずAは……お、なんか表情がほころんだ。


次にBのステーキを食べると、春香が首を傾げる。それでもしっかり咀嚼して、目隠しを外した。


『これは……Aですよ、A!』


それで外した途端に即答かいっ! あと、こっちを指さしはしなくていいからっ! なんの意味があるの、それっ!


「即答だな。あの様子から、もうちょい迷うと思ったんだが」

『あのですね、プロデューサーさん達が言うようにすぐ分かりました。まずその、歯ごたえが違うんです。
硬いのと、食べごたえがある――その違いですか? Bの肉も柔らかいと思うんですけど、Aはそれ以上。
硬いわけじゃないけど、噛みしめる最後の最後で抵抗があるんです。その感触がとても楽しい』

「ふむ……春香ちゃん、やっぱり食べ物のコメントはいいよなぁ」

「ですねぇ。でも今のままだとこう、普通すぎて全然目立ってないですけど」

間違えた方が美味しいと思われている普通アイドル・春香、足取り軽くAの部屋へ


最終問題が解けたおかげか、はたまた回答に自信があるためか。なんにしても春香は自信いっぱいにAの部屋へ入る。

そうしてソファーに座り、ニコニコしながらおせんべいにかじりつく。いやぁ、こういう姿は愛らしいねぇ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


というわけで、次の挑戦者です。次は一流街道爆進中のはやて様。

はやて様も春香くんと同じく料理関係は得意な上に、舌も確か。恐らくこのテストもクリアしてくれる事でしょう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「はやて様、最後のテストですけど……ぶっちゃけかなり勉強してきたでしょ」

『いや、そうでもないよ? 少なくともこのテストのためにって感じではない』

「そうなの? さっきのテストとか見て、そうかと思ってたんだけど」

『最近は仕事セーブして、主婦業しつつ勉強時間も設けとるから。華道もまぁ、その一環?
いやな、最近秘書的に手伝ってくれた子に、めっちゃ感銘を受けてもうてなぁ』


はやて様は謙遜していた様子だけど、そこで感慨深そうに瞳を閉じた。恐らく思い出しているのは、その子の事だね。


『その子は花が職場に一輪あるだけで、どこか気持ちが優しくなれる……って言うてなぁ。
もう毎日お花飾ってくれてたんよ。まさかそんなと思うとったら、なんか癒されるというかなんというか』

「あー、それで改めてと」

『そうそう。こうな、人生一生勉強やと思うたわけよ。仕事も大事やけど、人間性を膨らませる生き方もしたいなと』

「それは大事だな。ちなみにその台詞を一番誰に言ってやりたい?」


サリさんがそう聞いた瞬間、はやての表情が強張った。それでわなわなと震えながら。


『……昔の自分に決まっとるでしょっ! あの中二病たぬき、マジお尻ペンペンしたいわっ!』


ありったけを吐き出し、崩れ落ちるようにして号泣。そこにはもう、一流のアレとかは一切なかった。


「……サリさん、分かってて質問したでしょ」

「まぁな」

「やっぱり青春って、大事なのね。私ははやてさんの姿から学んでいきたいと思うわ」

というわけで、涙を拭いてチャレンジしていただきましょう。果たしてはやて様は正解のお肉を当てられるのか


はやてはまず目隠しをし、その上でスタッフにAのお肉を食べさせてもらう。


『ふほ……へはいへはひっ!』

「ごめん、なに言っているか分からないわ」

「とりあえず大きさに驚いているのはよく分かった」


肉の大きさに驚きつつも、AとBの両方をしっかり頂く。

なにか納得しているかのように何度も頷いてるけど、結果はどうか。


『これはな……Aしかないって』

「お、言い切った」

『やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


Aの部屋では様子を見ていた春香が、立ち上がってジャンプ。もうはやては一流として信頼されているなぁ。

昔からはやてをよく知っている僕達的にも、今回のこれは妥当って感じなんだけど。


『あんな、これほんまやばいって。もうお肉一切れとか、豪華な形で食べさせてくれたせいもあるけど。
こう、Aの肉は油の味わいや肉のキメからなにもかもちゃうもん。
これ一発で分からんのは、確かにちょお恥ずかしいな。せめて違うって事は認識せんと』

「かなり強く言い切ったなぁ。さて、これが誰にぶつかっていくか」

「せめて律子だったなにかがいる時、それを言ってほしかったかも」

この強めな言葉がブーメランになるか? はやて様、一流の貫禄を見せつけつつAの部屋へ


Aの部屋へ移動し、はやては恐る恐るドアを開ける。それで中に春香がいたのを見て、安心した表情を浮かべ。


『普通アイドルおめでとうっ!』

『ありがとうございますー!』

「春香ー、それは皮肉だよー。絶対褒めてないよー」

「普通アイドル……なんてぴったりなのかしら。違和感がないわ」


確かに……はやてと一緒に座り直し、談笑している春香が普通なのに納得してしまう。

でも春香、それでいいの? ほら、普通であるが故に面白いとこがあんまないけど。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


続いての挑戦者は、律子もどき。まぁ既に未来は決定しているけど、頑張ればいいんじゃないの?

あ、でもツンデレかましてくれた方が番組的には面白いから、頑張ってほしいなー。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ねぇ律子っぽいパイナップル、ここまで全問不正解だけど……どうよ。
765プロの刺客どころか、765プロの恥さらし決定だけど」

『だ、大丈夫……次こそは、絶対に当てるから』

「それ、説得力ないわよ。既にあなたの味覚・音感・芸術性が駄目なのは証明されているのよ?」


そう、律子だったはずの誰かさんが、苦しげに呻くのも当然の事。このテスト、期待できるところは全くない。

だって正解者が必ず言及していたトマトジュースの違和感に、ただ一人気づかなかったもの。

ほんともう、涼が泣いているよ。これから秋月家では親族会議が行われると思う。


「まぁそっくりさんには聞いて無駄かもしれないけど、テンダーロインは」

『……さすがに食べた事がないわ。でも、明確に違いがあるというのなら必ず見抜いてみせるわ』

「それで間違えるんですね、分かります」

『だから間違えないわよっ! これ以上は……これ以上は絶対にっ!』

もうなにを言ってもフラグにしか聴こえない。そんな律子ウィズパイナップルのチャレンジです


律子に似た粗忽者は目隠しをし、スタッフに促されるまま口を開く。それで肉を食べるかとおもいきや。


『すみません。これって焼いてからどれくらい経ってるんですか?』


なにやら質問をしてきた。それでスタッフ、やや困惑した顔になってしまう。


「なに聞いてんのっ!」

『というか、落としてから何日くらい経ってるんでしょう』

「いいから食べろってっ! その間に冷めるからっ!」


とにかくAの肉をほうり込み、律子がしっかり味わって食べたところにBの肉を投入。

Bの肉をかみ締め飲み込んだ途端、律子がハッとした顔でキョロキョロし始めた。


『味が違うっ! よし、これはもらったわっ!』

「だからいちいちうるさいっ! それを当てるんだから、違いは当然なのっ!」

『どうかこっちへ来ませんように』

『ほんまもう、ここから三流とかありえんからやめてください』


うわぁ、Aの部屋は神に祈りまくってるよ。どうすんの、これ。

番組的にはAへ行ってくれた方が面白いんだけど……律子さんの結果は?


『これはもう間違いないわね、Bがテンダーロインよ』

『『よっしっ! これで正解間違いなしっ! いぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!』』


もうそこで僕達は大笑いするしかなかった。律子さんがどうというより、春香達の反応だよ。

特に春香は律子さんを既に先輩とは認識していないもの。これはひどい……ひどすぎる。


『いい肉というのは、適度な霜と硬さが必要なの。その点Bの歯ごたえは凄かったわ。
噛む毎に迸る肉の味――それに引き換え、Aは駄目ね。安っぽい肉だからか、ゴムみたいな感触すらしてきたわ。
Bには雄大な自然で育った牛の力が、存分に詰め込まれている。これは間違いない』

「うん、間違いなく不正解だと思われてるよ。少なくとも春香とはやてには」

「だよなぁ。見ろよ二人を、もう安心しきって談笑してるし」

そっくりさんなのに、どうしてここまで自信が持てるんだろう。ツンデレ二号、Bの部屋へ


ツンデレりっちゃんもどきはさっきまでのあれらが嘘みたいに、自信を持った足取りで部屋の前へ行く。

それでそのまま入るかと思いきや、なぜか近くに設置してあるカメラへと向き直る。


『えー、いろいろと醜態を晒してしまいましたが、今回は大丈夫です』

「大丈夫じゃないぞっ! お前そっくりさんだからなっ!? もう秋月家も大変だからなっ!?」

「というか、今更一流顔ってなに。恥の上塗りどころの騒ぎじゃないわよ」

『今回は確実に当たっていると思います。きっと先に出た二人もここにいるでしょうし……では』


確実になにかを勘違いしている律子じゃないツンデレは、Bのドアを開いて愕然とした表情を浮かべる。


『え……あれ? え、なんで誰もいないの』

『律子さん……アンタほんま、恥さらしってレベルとちゃうで』


うわぁ、はやてがめっちゃ冷たい言葉をぶつけてきてる。

部屋へ入りながら律子さんは、やっぱり信じられないようすで辺りをキョロキョロ。


『肉の弾力は確かに違ったけど、Aがゴムみたいって』

『いや、でもそうじゃないですかっ! 最後でかみ切れない感じが気持ち悪いでしょっ!?
一瞬食べて吐き出しそうになりましたもんっ! あれ絶対安っぽい肉使ってますってっ!』

『そんな事ありませんよっ! 柔らかい中の硬さですよっ!? ……まぁでもいいか。
よく考えたら、この人律子さんじゃないもの。いちいち相手にする必要もないか』

『春香ー!?』

『春香ちゃん、とりあえずそれはやめとこうか。ほら、アイドルがしていい目やないもん』


確かに春香の目は、現在閣下状態。そりゃあランゲツとかも閣下って言いたくなる。

しかしあれが気持ち悪いし吐きそうって……僕達は律子さんに対し、静かに合掌した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さて、ここで正解を発表しましょう。正解は……A! Aがテンダーロインですっ!

春香くん、はやて様、見事正解ですっ! そして映す価値なしとなった律子……ホントなにしに来たんだ、コイツ。

新年早々恥さらしに来ただけだし。前回のリベンジは春香くん本人がやったし。


ちなみにBの肉との違いは、まず弾力。基本同じ焼き方なので、明確に違いが出ます。

Aは柔らかさの中にも肉独特の噛みごたえが存在し、食べる者に満足感を与えます。

次に油の質。噛む事であふれ出る肉汁の味わいは、Aの方が圧倒的に軽く風味も強い。


それこそ司会者三人が正解するほどに。つまり間違えたりっちゃんコピーは……うわ、恥ずかしいっ!

というわけで、恥ずかしい律子はさておく形で次の挑戦者――銀時様です。

前回銀時様はそっくりさんという結果に終わりましたが、そこで踏みとどまったのがこのチェック。


なんだかんだで味覚はしっかりしているのか? 今回は間違えれば三流となりますので、きばってほしいところです。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「銀時様は確か、前回のチェックでここだけは正解しているのよね」

『まぁなぁ。でもよ、あれだって適当に答えてこれだから……いや、マジで自信ないんだわ』

「謙虚ね。どっかの腐ったパイナップルとは偉い違いだわ」

『当たり前だろっ! 今回は劇場版のあれこれがかかってるんだぞっ!? いやもう、ほんとマジでやってんだよっ!
しかも神楽の奴も来るし、新八達も見てるし……なぁ、正解ってどっちだっ!?』

「馬鹿かアンタっ! それを当てるんでしょうがっ! 僕達に聞いてどうすんのっ!」

一流の威厳とかそういうのをすっ飛ばす勢いで、銀時様がチェックに挑みます


銀時様、やっぱりプレッシャーかかってるなぁ。でもそれも一流ゆえの試練と思って、頑張ってほしい。

特に劇場版もあるし、今は新シリーズ始まった三期だって……そう思いながら見守っていると、Aの肉が運ばれる。

それはやや焦り気味な銀時様の口へ入れられ、しっかりかみ締められる。すると銀時様が頬を緩める。

咀嚼した上で肉を飲み込んだ銀時様は、満足そうな息を吐く。それから両手をそっと頬へ添えた。


『うわ……この肉やばすぎ』

「私の年収みたいに言うな馬鹿っ! しかもポーズもあのままだしっ!」

『なぁ、これもう食べる必要ないか? 前に食べた肉と同じオーラ感じたんだけど。
こう、凄いよこれ。なんかさ、こう……ゴン君からゴンさんへ進化したような』

「なにから進化したんだよっ! いいからBの肉も食べろっ!」


とりあえずあの勢いの上手さなのは理解した。それで銀時様はBの肉を食べ、しっかり味わってからあのポーズを取る。



『うわ、この肉やばすぎ』

「だからそれもういいってっ! ……でもこれだと」

「迷ってる感じ? 三流でお出迎えかしら」

『これは……あぁ、Aの肉だな』


おぉ、なんだかんだでしっかり当てたしっ! それで各部屋は……律子さんがまさかという顔をしていた。

それで春香とはやては手を取り合って喜び、銀時様が来るのを心待ちにしている様子だった。

まぁ今回の銀時様、かなりきちんとしてるしなぁ。前回のあれが嘘みたいだよ。


『もうな、はっきり言うわ。俺にはテンダーロインのあれこれなんて分からないわ。
だから食べてみて、本気で美味いと思ったもんを選ぶわけよ。まぁ……あれだな』


銀時様は右手を顎に当て、カメラに向かって歯を見せながらどや顔。

それが軽くムカついて、僕とりまはこめかみをひくひくさせてしまった。


『ジャンプ主人公足る俺にとっては、本質を見抜く事などお茶の子さいさいってか?』

「この期に及んで調子乗ってるよっ!」

「正解を確信してか、余裕が出てきたわね。もうBの肉なんて鼻で笑い飛ばす勢いだもの」

コイツにはぜひとも落ちてほしかった。そんな願いはもはやむなしく……銀時様、Aの部屋へ


今回の問題、本当に簡単らしい。まさか一番不安だった銀時様がバッチリとは。

まぁこの反動で次回はやばくなりそうだけど、それでも銀時様はAの部屋へ。

入った途端二人は熱烈に銀時様を歓迎し、あの天パーはまたどや顔を決めた。


『よっしゃー! あのパイナップルはいないなっ!』

『えぇ、いませんよっ! 銀さん、アンタ今回マジ凄いなっ!』

『これも劇場版パワーですかっ!?』

『たりめぇだっ! もう去年みたいな事だけは避けるぜっ!』

『い、いや……三人とも駄目ね』


そんな中、敗北を決して認めない映す価値なし。足を組んで、震える手で眼鏡を正した。


『あの味わいを理解できないなんて、味覚をもっと磨いた方がいいわ』

『やかましいわっ! 砂糖と野菜の甘さの違いも分からないような奴に、そんな事言われたくねぇんだよっ!
てーかあれか、その頭のパイナップルも人工甘味料たっぷりかっ!』

『腹立つわねっ! こっちが正解だって言ってるでしょっ!?
これで外れてたら私、もうなんでもやってやるわよっ!』

「やめてー! そんな事言ってももう不正解だから、意味がないのー!」

「せめてそっくりさんの時に言ってくれー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


映す価値なしはほっといて、次の挑戦者にいきましょう。

次は映す価値なしにリーチがかかっているティアナ……前回もこのテストを外しているわけで、プレッシャーは相当です。

しかもあの分かりやすいジュースのテストにも失敗しているので、更にのしかかるものがある彼女。


果たしてなんとか踏ん張り、神楽達を迎える事ができるのか。それとも不名誉なワースト二連覇を達成するのか。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ティアナ、最後のチャレンジだけど……どうよ。前回のテストからいろいろあったよね」

『……あったわね。リンディさんが本当にその、お肉食べに連れていってくれたり。
というか、フェイトさんへのお説教込みだったからアレなんだけど』

「……そういえば前回のあれこれを見て、リンディさんが軽くお冠だったわよね」

「あー、それは違うね。お冠なのはフェイトに対してだけで、ティアナへは心から申し訳なさげだったよ」


この辺り、フェイトがティアナに対してなにを教えていたのかって話になってねぇ。

前回も話したけど、上司として仕事以外の事もさり気なく教えるべきだからなぁ。

なのでフェイトは本気で叱られ、ティアナはヘコみ……もう凄い有様だったよ。


「じゃああれだ、今回は勉強の成果が試されるわけだな。
もうここで踏ん張ればほれ、まず二歩は前進してるから」

『そ、そうですよね。だからあの……絶対当ててやるっ!』

その心がけを、どうして最初から出せなかったのか。
そんな疑問を抱えつつ、ティアナが最後のチェックへ挑みます



その心がけが最初から出ていれば……そう思わずにいられない。

なんか胸が痛くなっている間に、ティアナは二つの肉を味わう。

かなり難しい顔をしたまま唸り、腕組みしてしばし固まる。


「考えてるな」

「かえって煮詰まりそうな感じですけど」

『これは……Bよっ!』

「考えた結果外したしっ!」

「リンディさん、見てる? この子はまだ勉強不足みたいよ」


あぁ、これはまた勉強会が開かれるな。フェイトが涙目でティアナに肉をおごるな。

しかも神楽が……あぁ、駄目だ。僕はティアナをちゃんと見られない。


『とにかくこう……Bはね、噛みごたえがあるわけよ。
やっぱり肉って、噛みごたえ大事じゃない? 肉ーって感じがするし。
Aはなんか肉がグニュグニュしてて、腐ってるみたい』


サリさんもりまも、もちろん僕達も笑えなかった。だってリンディさんの気遣いとか、尽く無駄にしてくれてるし。

しかも腐ってるって……そんなわけないって。あとBのパイナップルは嬉しそうに頷いてんじゃないよ、今までの事をもう忘れたか。


『……そうそう、そうなのよっ! いや、やっぱこの子分かってるわ』

「分かってない……アンタ達は何一つ分かってないよ。自分が何者かすらきっと分かってないよ」

「ティアナちゃん、前回もそれで間違えてるってのに。あぁ、リンディさんやフェイトちゃんが泣いてるな」

でもきっと、その涙に気づく事もないのだろう。
だってコイツは映す価値なしだし。というわけでツンデレその1、Bの部屋へ



ほんとリンディさんとかはどうしよう。というか、フェイトをどうしよう。

頭を抱えている間に、ティアナはBの部屋へ入る。


『ようこそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』


律子さんが立ち上がり、嬉しそうな表情で歓迎すると……ティアナはなにも言わずにドアを閉じた。


『……すみません、やっぱAでした』

「こらこらっ! さっきおのれそれを止めただろうがっ! なに言い出してんのっ!」

『ちょっとっ! 今のなにっ!』


あ、律子さんが出てきた。それでティアナの手を引っ張って、中へ入れようとする。


『私の顔見て決めたでしょっ! 私の顔を見て決めたでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

『当たり前じゃないですかっ! 嫌なんですよっ! 今回はほんと映す価値なしとか嫌なんですよっ!』

『だったら自信を持ちなさいっ! 私もあれが美味しいって思ったからっ!』

『それは間違いだったんですっ!』

『なんでっ!?』


まぁ当然ティアナは抵抗するわけで……無駄な抵抗なのに。

それでツンデレ二人が揉みあって、ちょっとしたキャットファイト勃発。

なんて醜い争いなんだ。まさにこれが映す価値なしだわ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さて、それでは本日最後の挑戦者は……やはりこの方、ジェイル様。

ここまで連続正解記録を更新し続け、真の一流と呼ぶにふさわしいジェイル様。

前回の牛肉テストでも自信がないながら、見事正解を言い当てました。今回も期待できるのではないでしょうか。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ジェイル様、いよいよ大取りですが……どうですか、今の心境は」

『そうだな、正直緊張している。娘達も来るとなると、それはもう……だが精一杯やるつもりだ。
ここまできたら、腹をくくるしかあるまい。娘達にはありのままの私を見てもらう』

「……どうしよう。マダマに感動してしまったわ」

「この潔さがティアナ達に見られないのは、どうしてだろう」


恐らくこれが一流とそうじゃない者の差なんだろうなぁ。

なんだかんだで銀時様も、普通に割りきって挑んでたし。僕も見習おう。

それではチェック開始――今回最後のチェックという事もあり、全員が静かに見守る。


しかもジェイル様はミスター格付け。答え次第で今の立場が逆転する可能性だってある。

……まぁ僕達は正解を知っているので、そういう希望はないけど。ただ参加者は当然違うわけで。

こうやって注目を浴び、場の流れを掴むのも一流ゆえだろうか。


まずはAの肉を食べ、ジェイル様は納得した表情を浮かべる。次にBの肉を一口。

これなら安定かなと思っていると、アイマスク装着なジェイル様が小首を傾げた。


「……おい、やっさん」

「えぇ」

「今マダマ、迷ったわよね」

『まず……とても美味しいものを頂き、感謝する。それでこれは……どちらだろうなぁ』


やっぱり迷ってるっ!? え、マジですかっ! やっぱりプレッシャーかかってたとかかな。


『ちょっとちょっと、マジかいなっ! 頼む、ほんまこっち来てっ!』

『よし、Aだな』


正解メンバーが両手を合わせ祈った瞬間、迷ったのが嘘のように即決。それで全員がズッコけた。


『そこでさらっと言うんかいっ!』

『なんだアイツ、気を持たせやがってっ! ミスター格付けだから調子乗ってんじゃねぇだろうなっ!』

「おー、迷っても最後は当てますか」

「この安定感はさすがだな」

『いやな、一瞬Bかと思ったんだ。違いはあるが、どちらがテンダーロインの味かと思ってしまって。
ほら、私ミッド暮らしだから。その上鹿児島産テンダーロインなんて食べた事もないから』


あぁ、それでか。つまりマダマ様にとっては未体験の味で、別のを食べたらちょっと考えてしまったと。

確かに同じ肉と言っても、育て方や産地によって味わいって変わってくるものだしなぁ。


『なので純粋な味などで決めさせてもらった。Aの方がしっとりとしていて、肉汁のうま味も格別。なにより柔らかさだな』

「やっぱりそこなのよね。私もびっくりしたからよく分かるわ」

『ただ柔らかいだけの肉じゃないんだ。霜が入りすぎらず、肉本来の噛みごたえも楽しめる。
そうだな、美味いというよりは食べていて、心から楽しかったのはどちらかという話かもしれない。
食事が単なる栄養補給ではなく、心を躍らせるものだと改めて教えてくれた。いや、いい出会いをありがとう』

「……なんだ、この心洗われるコメント。なんだ、この余裕な風格。奴は本当にマダマか?」

最後は一流としての威厳――格の違いを見せつけたマダマ、背筋を伸ばしAの部屋へ


マダマはそのまますたすたとドアの前へ移動。それから深呼吸して、Aの部屋を開けて。


『やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


一流二人と普通がいるのを見て、喜びの絶叫――両手を天に突き出しながら、自らの勝利を確信する。


『アンタほんま最高やわっ!』

『ありがとうっ! 本当にありがとうっ!』


そんなマダマにはやて達は駆け寄り、それぞれしっかりと握手。その上でハイタッチなどかます。

まぁ当然ながらBの二人は……その様子を見てなにも言えず、せんべいにかじりついていた。


『なんだよなんだよ、最後は結局美味しいとこ持ってきやがってっ!
マダマのくせにー! お前あれかっ! ジャンプ主人公狙ってるかっ!』

『ははは、すまないなっ! 私、これでも本気でおごろうと思っているのでなっ!』

『もうこれは決まりですよ、決まりっ!』

『ま……まだ分からないわよ。これでも味覚には自信あるんだから』


うわ、消えるツンデレその2がまだ無駄な希望にすがってるよ。まだ負け惜しみ吐く力があるよ。

どんだけしぶといんだよ、この人。あれですか、律子さんの生命力はゴキブリ並みですか。


『律子さん、なにを言ってもフラグですよ。ていうか、トマトジュース間違えた時点でもう』

『あんなので私の価値を決めないでもらえるかしらっ! もうね、これだけは正解してるからっ!』

「……ついにセレブ・デ・トマトをディスりにきたわね」

「最後の最後で……どうしようもないな、これ」

「まぁ後の事は火野の僕に任せましょう。大丈夫、遠慮なく躾けてくれるはずです」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


これにて全てのチェックが終了――みなさん、長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

例によって支配人の入った部屋が正解となりますので、少々お待ちください



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「いやー、これが最後かと思うと……感慨深いですね」

「今回は凄い事になったしなぁ。こう、明暗がくっきり分かれたというか」

「それじゃあ恭文、いつも通りに」


りまに頷き、ドアノブを両手にかける。さて、今回は……最後だしストレートに行ってみよう。

少し間を持たせ、中のみんなをやきもきさせておく。その上でAのドアを開き。


「おめでとうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

「「おめでとうー!」」


三人で拍手しながら突入。それで場は歓声に包まれ、僕達はみんなと一人ずつハイタッチ。

そしてBの部屋には、もう誰もいなくなった。いやー、相変わらず凄い技術で消えるねー。


『え……う、嘘。あの、冗談よね。だってあの、絶対Bの方が美味しかったのに』

「律子さん、これで律子さんの味音痴が証明されたわけですけど……あー、でも意味ないですね。もう消えてますから」

「……本当に奇麗サッパリだな。君達、完全に消えているぞ」

『嘘っ! 嘘嘘嘘……嘘よこんなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

『ど、どうしよう。どんな顔して神楽に会えば……って会えないしっ! もう消えてるんだったー!』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


いやー、簡単にしすぎたかなーと思うけど、新年一発目だからこれくらいでちょうどいいねー。

ていうかさ……おい、映す価値なし。こっちの気遣いとか全部無駄にしてくれてよ。お前らは来年までそのまま消えてろー。



※格付けチェック2013――結果発表


春香:普通芸能人

マダマ:一流芸能人

律子:映す価値なし

銀さん:一流芸能人

ティアナ:映す価値なし

はやて:一流芸能人


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「というわけで、チェックは全て終了っ! みなさん、改めてお疲れ様でしたっ!」


再びスタジオへ戻ってきたので、しっかりと拍手。

しかし参加者四人全員が普通以上っていうのは、ほんと素晴らしいと思うわ。

こうさ、見てて気分いいもの。番組としては正しい形だよね。


「しかも今回は一流が三人に、普通が一人っ! 参加者全員が生き残るという素晴らしい結果になりましたっ!」

『ぜ、全員っ!? ちょっとちょっと、私達がいるわよっ! どうして自然と省くのよっ!』

『……律子さん、これがこの番組のルールなんです。私も前回消えたら、全く触れられませんでした』

「本当に新年早々おめでたいわね。それでは……まずジェイル様。さすがはミスター格付けです。
ただ正解するだけではなく、食事が楽しいものだと私達に思い起こさせていただきました。
あれこそが真の一流だと、テレビの前のみなさんにも伝わったはずです。一流、おめでとうございます」

「ありがとうっ! いや、これもみんなのおかげだっ! 今年一年、またよろしく頼むっ!」


ジェイル様はすっと立ち上がり、スタッフや僕達も含めてしっかりお辞儀。

それに返してから、改めて拍手。……いやー、マダマは今後とも番組の顔として活動してほしいね、うん。


「はやて様、おめでとうございます。やっぱり人間、省みる気持ちは大事なのですね。
その気持ちが今回の結果に繋がったと思います。この調子で、今年も頑張ってください」

「ありがとなぁ。でも……なんかこの番組えぇなっ! ハートフルエピソード最高やしっ!」

「それで春香くん」

「え、私っ!? 銀さんじゃなくてっ!」

「三重奏は残念でしたが、全体的にバランスの良い回答だったと思います。ですが……普通すぎっ!」


りまがカッと目を見開き、春香をどう喝するかのように指差し。それに驚いたのか、春香は思わず身を引いた。

それでもりまの勢いは決して止まる事なく、ただただ睨みを利かせ続ける。


「なにこれっ! 見どころもなにもなく普通に普通芸能人じゃないっ!
あなた言っておくけど、今回一番目立ってないからっ! ほんと普通がぴったりな女ねっ!」

「凄い駄目だしきたっ!? えっとその……ご、ごめんなさい。もっと面白いコメントができるようになります」

「最後に銀時様」

『だから私達っ! 私達を無視しないでっ! 扱い散々すぎじゃないっ!』


りまはにっこり笑顔を浮かべてから、一枚の用紙をテーブルの上から取り出す。

それはかなり大事なもので……僕達は思わず、銀さんから顔を背けてしまった。


「一流、おめでとうございます。前回がそっくりさんだったので見ていて不安でしたが……さすがはジャンプ主人公です」

「へ、そうだろ? 今年の俺は」


銀さん、それでどや顔しようとするのはやめてください。それでカメラ目線とかは、ほんとうざいのでやめてください。


「一味違うんだよ。劇場版があるしな」

「……ただ非常に残念ながら」

「はい?」

「銀時様に悲しいお知らせをしなければなりません。その劇場版ですが」


りまは改めて持っていた資料に目を通し、ハンカチで涙を拭いながら、そこに書かれているある事実を銀さんへ告げる。


「春公開予定だったのが、夏に延期しました」

「あぁ、なんだそれくらい……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? なんでだよっ!」

「制作上の都合ってやつだ。いや、俺達もついさっき聞かされてさ、もうびっくりしたんだよ。
でも銀さん、お前正解してよかったぞ。もしこれで不正解だったら、新八君達がどうなる事か」


銀さんもなぜこの場でこの話をしたか……理解したらしい。

そう、このタイムリーな話は、今なら『そっかー』で済ませられる。

でも万が一銀さんが不正解で三流落ちし、その上で延期話が報告されていたら?


間違いなく銀さんが不正解だったためにそうなったと、一騎当千の馬鹿どもが暴れだす。

その場合どうなるかは、StS・Remix第5巻書き下ろしで嫌になるくらい描かれている。

そう、銀さんは一流となる事で、自分の命をも繋いだ。その事実が、銀さんに安堵の表情を与える。


「俺、もしかしなくてもかなりやばかったのかよっ!」

「やばかったわね。まぁ一流になってこれだし、気を取り直してって感じで頑張ればいいでしょ」

「あぁ、そうするわ。……よし、今年の俺はやっぱひと味違うなっ!」

「銀時様、頑張ってくださいね。それでは……中継を繋いでみましょうか。スバルー!」

『――はい、中継のスバル・ナカジマですっ!』


展開した通信モニターには……あ、建物の中だね。しかもこれ、テレビ局の中だ。僕も通った場所だからよく分かる。


「そっちはもう」

『テレビ朝日についてるよっ! もうすぐスタジオへも入れるっ!』

「ならここはあの歌だね。それじゃあみんなで一緒に」


そこでテントモン率いるスタッフが、素早く四人へ歌詞表を渡す。

それによりもう準備は完了。あとはうたってお出迎えするだけである。

みんなはも理解しているらしく、顔を見合わせやってやろうという体で頷き合う。


「あの歌やな」

「あの歌しかないなぁ」

「それじゃあみんなで一緒にですよっ! 一緒にっ!」

「えっと……私はちょっと疎いんだが、頑張るよ」

「それではいきましょうっ! ――サライッ!」


――流れ始めた音楽に乗せ、全員で合掌。その間にも通信モニターは、走る三人の姿を映し出す。

もちろんその周囲にはスバルやディード達もいて、みんなはここを目指して全力疾走。

流れる汗を拭う事もなく、ただただ大事な人の力になればと……それだけを願って進んでいた。


そしてその思いに応えるべく、僕達はうたう。この歌声がみんなへ届くように、そして世界を救えるようにと信じて。


さて、新年一発目の特別企画――みなさんお楽しみいただけたでしょうか。
……みなさん、見てください。難易度どうこうは抜きにしても、前回から前進した二人がいます。
一流とはなにかを見せつけた二人がいます。今回の参加者四人全員がここにいる事、それこそが全てではないでしょうか


『だから私達をスルーってどういう事っ!? 六人よねっ! 六人だったわよねっ!』

『律子さん……もういいんですっ! もういいんですからっ!』

でもやっぱり簡単すぎたと思うので、スタッフはこれから反省会議です。
それではみなさん、よい一年にしていきましょう。今年もとまとをよろしくお願いします


「――春香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


うたっていると、三人がスタジオへと飛び込んできた。それでみんなは思い思いの相手へと飛び込んでいく。

響は当然春香へと飛び込み、シグナムさんはややフラつきながらもはやてのところへ。


「響ちゃんー!」

「主はやて、おまたせしましたっ!」

「シグナム……アンタよく来てくれたなっ!」


二人は歌を中断し、素早く駆け寄って響達を抱きとめる。

さすがに長距離走ったせいか、体力には自信のある二人もおつかれな様子。

春香達の抱擁にしっかりと甘え、自分だけのゴールラインを切った。


「うぅ、普通アイドルだけど大丈夫?」

「もちろんさっ! 春香、前回よりも成長したって事だぞっ! もっと喜んでいいぞっ!」

「響ちゃん……!」

「主はやて……私は、信じておりましたっ!」

「うん、ありがとうなぁ」


そんな二人に少し遅れて、神楽が右足を引きずりながら……ちょっと待てっ! 飛び込んできた時すっごい普通だったよっ!?

なのにこの子、なんでいきなり疲労困ぱいって体を装うのっ!? もう遅いっちゅうのっ!


「銀ちゃんっ!」

「神楽ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


それでも銀さんは気にならないようで、こちらも歌を中断して全力ダッシュ。慌てて神楽へ駆け寄り。


「このボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「どげしっ!?」


神楽の右ストレートで思いっきりぶん殴られた。

あまりの事にうたう事もやめ唖然としていると、神楽が銀さんをけり飛ばす。


「お、おいおい……あのチャイナ娘、遠慮なく彼を殴ったぞっ! 一体なんだっ! 彼女には触れないのかっ!」

「神楽ちゃん、アンタどないしたんよっ! 銀さん今回、かなり頑張ってたでっ!」

「外野は黙ってるネっ! 銀ちゃん、なに新年早々運を使ってるアルかっ! おかげで劇場版が」


神楽はマダマやはやての制止を振り切り、銀さんの胸ぐらを掴んでぐいぐい揺らしてくる。


「延期になっただろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「なんでお前そこ知ってんだぁっ!?」


ま、まさか……劇場版延期でこれっ!? 一流とかすっ飛ばして、ひたすらに怒っているんかいっ!


「待て待て、それ理不尽っ! スペランカーの耐久力くらいにすっごい理不尽っ!
俺むしろ頑張ったよっ!? 映画の宣伝になればと思って、相当頑張ったよっ!?」

「うるさいネっ! そっくりさんがいきなり一流になんてなれるわけねぇだろうがっ!
どうせ運とか勘とかフル活用でやったんだろっ! だから劇場が……ほら吐けっ! とっとと吐けっ!」

「ふざけんなー! そんな事にならないようにお前走ってたんだよねっ! 俺を助けるために走ってたんだよねっ!」

「馬鹿言うなアルっ! わたしはお前がダメダメなところを一番に見て、嘲笑ってやるために乗ったネっ!」

「最悪だよこの子っ! 新年早々最悪すぎるよっ!」


……結論として僕達は、神楽に触れない事にした。その辺りはほら、アイサインとかでね?

まぁみんな大変そうなので、僕達三人で代わりにうたっておこう。みんなはその代わり、神楽を止める仕事についてもらう。


『ねぇ……ねぇっ! お願いだからこっちを見てっ! 見えているわよね、当然見えているはずよねっ! 無視しないでー!』

『律子さん、もう諦めてくださいっ! これが現実……現実なんですっ!』

『嘘よそんなのっ! お願いだから誰か、これが初夢って言ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』


スタジオの照明がやや暗くなるので、さっとペンライトを取り出しへし折る。

そうして発光させた上で白・蒼・赤のペンライトを静かに振り、更に大きな声でうたう。


「お前ら待てっ! まず俺を助けろっ! このチャイナ娘を止めろっ! なに平然と締めに入ってんだっ!」

「君、やめるんだっ! 彼は本当に頑張ってたんだぞっ! 特に第三チェックなど」

「そやそやっ! もう良い感じやったんやからっ!」

「黙れマダマとえろだぬきっ! 気安くわたしに触るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


神楽は荒ぶり、春香と響はお互いの健闘を讃え合う。そしてディード達は、なぜかポカーンとしていた。

でもそんな中、僕達だけはうたい続ける。だってこれも……ハートフルエピソードだから。


(とまと芸能人格付けチェック2013――おしまい)






あとがき


恭文「はい、長らくお付き合いいただいた格付けチェックも、今回で最後。
まぁまた暇なときにやりましょう。お相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。みなさん、雪などは大丈夫でしょうか。転倒などには十分気をつけてくださいね」

恭文「こっちもかなり凄い事になってるしねー。てーか最低気温がマイナス五度とか出てるんだけど」

フェイト「既に冷蔵庫の中だよね」

(ひゅー)

恭文「あと雪にも関係しますが、気温もかなり低めです。そちらもお気をつけください」

フェイト「特に今は危ないからなぁ。アイスバーンとか……うぅ、迂闊に散歩とか出られないよ」

恭文「実際拍手で、危うく車が事故を起こしそうになったという報告も受けています。
なのでみなさん、安全に行きましょう。いやもう、ここは本当に。……それで今回は一流が三人という」

フェイト「本編ではまぁまぁない方向だね」

恭文「ないねぇ。多分こんな結果で終わるのは、今回くらい。
ただあれだよ、正解者が多いと円満に終わるのは理解してもらえたかと」

フェイト「だからってハートフルエピソードにはならないよっ!?」

(えー)

恭文「それで同人版の方ですが、ドキたま第2巻――書きあがりましたっ!」

フェイト「あ、できたんだ」

恭文「うん。まぁ構成とかも余裕開けて、明後日には出せればいいなぁと。もちサンプルもだね。
まぁ……Wの絵を書いたりしてて忙しかったけど、そこはなんとか」


(絵はリンク集からいける支部にて掲載しております。いや、ブログは便利だわ。少なくともこっちでアップするより見やすい)

恭文「画像つきリストを出せたりもするしねぇ。ちなみに今回は」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

いつものようにロイヤルガーデンに集まり、会議中の事――仕事が多い最中にも関わらず。

「――蒼凪君、実は相談があるんだけど」
「相談?」
「うん。蒼凪君、前に退魔師の人達と知り合いだって言ってたよね。ちょっと相談してもらえないかな」

唯世がこんな事を言い出した。ただ問題は、唯世が相談したい相手が……退魔師という事。
さすがに即答でOKは出せないので、前かがみで唯世に質問。

「唯世、どういう事。なんで退魔師? あれかな、うちになにか出たとかかな」
「うちというか、この近所にだね。今日山吹さんがその、唇がたらこになっていたのは」
「それは見たけど」
「どうもね、幽霊屋敷に入り込んでアレらしいんだ。
話によると飾ってた人形が動き出したとか、触ってもないのに皿が割れたとか」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「改行があれですが、気にしないでください。いや、わりと本気で。
PDF上では、HPで見るのとさほど変わらないフォントと段落になっています」

フェイト「えっと、これはりまのお話だね」

恭文「うん。当然……全修正だったよ。戦闘シーンも基本同じで書き直したし」

フェイト「ま、まぁいつもの事だよね」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ねぇねぇ伊織、そのガーディアンの子ってどんな感じなのかなー。ミキの宿主なんだよねー」
「そのミキは見てないけど……まぁ私には負けるけど、そこそこイケてたわね。
それで律子と同じく意地っ張りで、結構衝動で動くタイプ?」
「誰が意地っ張りよっ! ていうか、私をいちいち引き合いに出さないでもらえるっ!?」
「――みんな、ただいまっ!」

いつ話せるかなと思っていると、事務所のドアが開く。というかこの声は……ハッとしながら全員立ち上がり、玄関を見る。
すると包帯だらけのプロデューサーと、それを支える小鳥が入ってきてた。
ぶっちゃけ夫婦にしか見えない二人に、私達は慌てて駆け寄る。さすがに予想外すぎて、私も驚いてしまう。

だってコイツ、あれで死にかけてるのよ? なのになんで普通に歩いてるのよ。

「プロデューサーさんっ!? なにやってるんですかっ! 病院はどうしたんですか、病院っ!」
「まさか兄ちゃん、抜け出してきちゃったのー!?」
「そんな事はしてないよ。ちゃんと退院許可をもらってきた」
「いやいや、あの怪我がたった二週間程度で、治るわけがありませんよねっ!」
「……本当よ」

小鳥が静かにそう告げると、どういう事かとざわざわしていたみんなが一気に静まり返る。
いやいや、そんなまさか……と思ったけど、小鳥はマジだった。小鳥自身も信じられないらしく、顔が真っ青だったけど。

「本気で驚いたけど、普通に動く程度はOKだそうなの。職場復帰はもうしばらく後だけど」
「あがっ! 怪我治ってるのは嬉しいが……マジかっ!」
「担当医も相当驚いていらっしゃったわ。この回復力は、もはや人類じゃないとまで言ってたもの」
『人間扱いされていないっ!?』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「そして同人版では先攻登場している赤羽根P。まだまだアイマス勢の出番もあります」

フェイト「ミッドチルダ・X編へ入る前に、もう一つイベントって感じだね。ちょうど1クールの締めになるし」

恭文「ただしそこはしゅごキャラの本題と絡めつつだね。そのためのイベントでもあるから」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ううん。それで美希ちゃんは」
「ここへ来る途中にしっかり聴いてきたよ。恋の歌だよねー」
「うん。それでね、みんなでどうしようかって話してて」
「ぼく達、改めて考えると……恋ってした事なくて」

まぁ確かに困った笑いを浮かべる真くんは……あ、駄目なの。元プロデューサーとの約束で、こういう事は言っちゃ駄目なの。
それに真くん、1年前に比べたら随分マシになってるの。それは認めないといけないの。
でも雪歩や貴音は元からポイント結構高いし、告白とかもない感じなのは以外……あ、違うか。

この場合美希達が恋焦がれてる感じが必要だから、告白されたとかは違うの。というか、貴音が謎すぎるの。
貴音はどういう人を好きになるの? 未だに自宅や家族とかも不明だから、本当に謎なの。

「以前元プロデューサーが恋愛関係の話をなさっていましたが、わたくし達はあいどる。
基本恋愛というものは厳禁な存在です。その点から、一体どうしたものかと」
「うーん、でも今までの曲にもそれっぽいのがあったような」
「でもそういうのうたうの、どっちかっていうとあずささんとかが多かったから。
それに今回うたう『edeN』はド直球だし……ちゃんと考えないと」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「次、俺達のリハだから……とりあえずどけ」
「馬鹿じゃん?」

これは……きゃー! やっぱりあむだー! あむがまた、またクール&スパイシーをっ!
腕組みして呆れた様子なあむに、アマタロス君が厳しい視線を送る。

「おい、今なんっつった」
「そんなに先急ぐんなら、とっとと脇通っていけばいいじゃん。
いちいち人をどかせて王様気取りじゃなきゃ、満足できないわけ?」
「なんだと。おい、誰に向かってそんな事言ってるのか……分かってんだろうな。
汚い手しか使えない奴らが、図に乗ってんじゃねぇよ」

汚い手? いきなり妙な話になったので、私達は自然と律子さんを見てしまう。
そこで律子さんなのは、やっぱり律子さんが社員として765プロの運営に関わっているから。
でも律子さんも覚えがないらしく、必死に首を振っていた。……確かに、そうだよね。

765プロの事はよく知ってるけど、そういう手を使うタイプの人はいない。
それどころか使われても応戦する人も……だったらこの子、どうしてこんな事を。

「冬馬くん、駄目だってー! それ違うんだからっ!」
「なにが違うんだ。黒井のおっさんから所属アイドルかっさらって、人気取りしたのは事実じゃねぇか」
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

私と律子さん、それに春香ちゃん達の声が一斉にはもって、青空の下を響き渡る。
ちょ、ちょっと待って。所属アイドルって……響ちゃん達の事だっ!
そうだそうだ、この子とんでもない勘違いしてるっ! あれ、黒井社長の暴走が原因なのにっ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「というわけで、馬鹿ことアマタロスも参加します」


(『おい待てっ! 何一つ正確な事を映してねぇじゃないかよっ!』)


恭文「それが事実かどうかも、同人版を見ていただいて……しかしジュピター、2軸じゃないのに因縁できるか」

フェイト「まぁ男キャラが基本少ないうちでは、実に貴重な戦力だよね。
あ、そういえばヤスフミ、先日成人式があったけど」

恭文「やってたねー。毎年通り大荒れだったけど」

フェイト「う、うん。……毎年同じ感じの人がいるのはなに? やらせ?」

恭文「恒例行事ってあるんだよ」


(乗るしかない、このビッグウェーブに。
本日のED:谷村新司『サライ』)





恭文(OOO)「というわけで、ようやく通常運行スタートだよ。まずは……美希のあれをなんとかしないと」

千早「どうにかなるんですか? 彼女にすると逆効果のような」

恭文(OOO)「……千早、どうしてそう言いながらどす黒い瘴気を出すの?」

千早「いえ、プロデューサーはやっぱり大きい方が好きなのかと思いまして」

恭文(OOO)「そんな事ないからっ! ていうか千早は、その」

千早「……お願いですからなにも言わず、そのまま受け止めてください。今の私にはこれが、精一杯なんですから」(腕組み)


(おしまい)




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