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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Battle24 『Bによろしく/激震 ダブルブレイヴ』


――たーららーたららたーたらー♪ たーららーたららたーたらー♪
たーらーらーらーららーらー♪ らーららーらーーーーー♪


「みなさん、ゴンダラビッチ♪ キマリの部屋です。巽キマリと」

「ゴ、ゴンダラビッチ。シャルロット・デュノアです。……なにっ! この挨拶っ! てゆうか何語っ!?」

「黙れ花澤っ!」

「中の人で呼ばないでー! いきなりキレる理由も分からないしっ! ……それでその」

「今回はまだまだ継続している、赤ブロック決勝戦・第四試合」


後ろのミニターに映るのは、光龍騎神とブレイヴ中な焔竜魔皇。

そして楽しげに笑っている、ヤスフミと五反田くん……やっぱり雰囲気独特だよ。


「リアル弾こと五反田弾と、八神恭文の試合です。双方ともにキースピリットは出るものの」

「ヤスフミはジーク・ヤマト・フリードを召喚できず、五反田くんはバーストを踏んで手札が一気に半分以下。
ライフは共に並んでるけど、スピリットの数ではヤスフミの方が不利……しかもこれ、まだ途中なんだよね」

「えぇ。ですがバースト『秘剣燕返』によって、流れは確実にイーブン以上へ持ち込めたわ」


画面にちょうどその時の映像が出た。この時の盛り上がりと言ったらそれはもう……一気に力が抜けた感じだったなぁ。


「シャルロットはこの勝負、どう見る?」

「うーん、非公式部活メンバーとしてはヤスフミに勝ってほしいけど……でも五反田くんもかなり強いんだよね」

「あぁ、ボロ負けしたんだっけ」

「ぐ」


そこにあっさり触れるんだ、この子。めちゃくちゃぐさってきたんだけど。泣きたくなったんだけど。


「とにかく今言えるのは……どう転ぶか、ぼくには分からない。
最後の最後でどんでん返しも考えられるし、とにかくこの二人のバトルは予測が難しい」

「……ち」


え、ちょっと待って。今この子、舌打ちしたんだけど。それからため息吐いて、なんか冷たい視線を送ってきたんだけど。


「あのさぁ、せっかく呼んだんだから、もうちょっとちゃんとコメントしてくれない?」

「いやいや、それくらいに拮抗しているって話だからっ! そういうキマリちゃんはどうなのかなっ!」

「あたし? 当然」


そう聞き返すと、キマリちゃんは不敵に笑う。そうかと思うといきなり立ち上がって、高笑いを始めた。

あまりの行動に軽く驚いていると、キマリちゃんは大きく息を吸って。


そんなのどうでもいいわっ!

「はぁっ!?」


力いっぱいに司会者として、あるまじき叫びをあげてきた。


「だってあたし、覇王(ヒーロー)になって世界征服しちゃうんだものっ!
どっちが勝っても基本変わりないしー!? まぁ強いて言うならあれかしらっ!
あたしの手下になった時、勝った方が上の立場になるだけよっ! おーほほほほほほっ!」

「最悪だ、この子っ!」

――たーららーたららたーたらー♪ たーららーたららたーたらー♪
たーらーらーらーららーらー♪ らーららーらーーーーー♪






バトルスピリッツ――通称バトスピ。それは世界中を熱狂させているカードホビー。

バトスピは今、新時代を迎えようとしていた。世界中のカードバトラーが目指すのは、世界最強の覇王(ヒーロー)。

その称号を夢見たカードバトラー達が、今日もまたバトルフィールドで激闘を繰り広げる。


聴こえてこないか? 君を呼ぶスピリットの叫びが。見えてこないか? 君を待つ夢の輝きが。

この物語はバトスピで繋がった少年少女達が、それぞれの夢に向かって正面突破を続けていく一大叙事詩である。



『とまとシリーズ』×『バトルスピリッツ覇王』 クロス小説


とある魔導師と閃光の女神のえ〜すな日常/ひーろーず


Battle24 『Bによろしく/激震 ダブルブレイヴ』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『恭文選手、持ちこたえたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


先ほどの静寂が嘘のように、場が歓声に包まれます。その原因は、恭文さんが打ち込んだカウンター。

あの大攻勢をどうにか切り抜けて、五反田さんの手札と場に確かな傷跡を残しました。


『意表を突く青マジックで、迫るダブルブレイヴを跳ね返したっ!』

『ううん、それだけじゃないよっ! 恭文選手は五反田選手の手札を削ってるっ!』

『手札はそのまま選択肢であり、プレッシャー……よね。それがこの状況で削れたというのは、かなり痛いのかしら』


痛いどころの騒ぎではありませんわ。察するに残っているのは……あ、やっぱりマズいかも。

はしゃぐ他のみなさんとは違って、そこに気づいてやや苦笑いです。


「おっしゃー! さっすが教官っ!」

「うん、やっぱり恭文君だ。ちゃんと先の事を考えてプレイしてる」

「話通りなら恭文、絶対ジーク・ヤマト・フリードを召喚したかっただろうし。というか」


テイルモン達が呆れ気味に見るのは、画面の中の恭文さん。恭文さんは手札にすりすりしつつ、血の涙を流していた。


『うぅ、ごめんねっ! ジーク・ヤマト・フリードッ! せっかく来てくれたのにー! でも……でもー!』

「血の涙、流しているわね。やっぱり迷ってたんだ」

「アイツ、スピリットに愛情注ぎまくってるなぁ。でも……まだ油断はできない」

「大輔、どういう事ー?」

「サジット・アポロドラゴンを攻略しないうちは、どうにもならないって事だよ。
次のターンに回ったら、またジェミナイズであの展開が始まる」


でもチャンスもあります。手札に残っているのは、イグア・バギーとシャイン・ブレイザーですわ。

確かにイグア・バギーを召喚し、ジェミナイズの効果で手札補充、または追加スピリットを展開できます。

もちろんシャイン・ブレイザーでダブルブレイヴも可能……逆を言えば、向こうには防御マジックがない。


次のターンで攻め込めれば……ですがここで問題が一つ。恭文さん、今回はスピリットをあまり展開していないんです。

向こうが手札やコアを溜まらないようにしているせいもありますが、この陣形を次のターンで抜くのは……かなり難しいのでは。


「なのであくまでも八神は、弾の攻撃をやり返して止めただけ。そういう事か」

「あぁ。まずは次のターン、八神がどう動くかだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN07→08




ライフ×2 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×2 コア総数×10

手札:二枚 デッキ:20枚

スピリット:イグア・バギー・レベル1(コア×1) ジェミナイズ・レベル1(コア×1)

サジット・アポロドラゴン・レベル3(コア×5 ペンドラゴンとブレイヴ)

ネクサス:光り輝く大銀河・レベル1(コア×0)



恭文

ライフ×3 リザーブ×3 トラッシュ(コア)×4 コア総数×9

手札:三枚 デッキ:28枚

スピリット:マ・グー・レベル1(コア×2 メガバイソンとブレイヴ中 疲労中)

ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN08メインステップ開始時

ライフ×3 リザーブ×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

手札:四枚 デッキ:27枚

スピリット:マ・グー・レベル1(コア×2 メガバイソンとブレイヴ中 疲労中)

ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『メインステップ――バーストをセット』


恭文さんがバーストをセットした瞬間、神剣が輝きデッキトップに同じ赤光が宿ります。


『そして英雄皇の神剣、レベル1・2の効果発動。バーストセット時、デッキから一枚ドロー。マ・グーにコア三個を載せ、レベル3とした上でターンエンド』


四枚に戻った手札を見て、恭文さんはそのままターンエンド。攻撃はせず、レベル3になったマ・グー一体だけが残っています。

それを見て、焦りが募ります。やはり……手札にスピリットがいないのでは。


「ヤスフミ、アタックしないの?」

「次のターンの守りを優先かな。せめて恭文君の手札に、インビジブルクロークとかがあれば」

「恭文さん……!」

「……いいや、違う」


そこで織斑先生が唸るように声をあげ、恭文さんに厳しい視線を送ります。


「織斑先生、違うというのは」

「守りを優先したわけでもなんでもない。仮に有効な手札があったとしても、八神はあえてアタックしなかっただろう」

「えぇっ! いやいや、それはありえないわよっ! だって相手には防御用の手札がないのにっ!」

「凰、それでも八神の教え子か。よく見てみろ」


促されるままに改めて恭文さんを見て……わたくしも気づきました。

それは付き合いの長い本宮さん達も同じで、みなさんは呆れた顔でため息を吐きます。


「まさか教官の馬鹿……!」

「恭文くん、この状況でそれはないって」

「え、あの……どういう事ですか? 織斑先生も凰さんも、高石さん達も一体なにを」

「ヤスフミはもう一度、五反田君にダブルブレイヴをしてほしいんです」

「えぇっ!?」


というか、考えるまでもなかった。ついさっき、恭文さん自身が言っていた通り。

徹底的に楽しむ――だから相手の全力を、ダブルブレイヴを粉砕しなければ意味がない。

いつぞやの対マツリさんを思い出します。恭文さん……どこまでバトルに貪欲なんですか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


嬉しいねぇ――あぁ、嬉しいぜ。お前は俺とデッキの事、信じてくれてるんだなぁ。

でもそう来なくちゃ、双翼乱舞を捨てた意味がない。全てはこのチャンスを繋ぐため。

俺はさっき、ドローソースを捨てる事でお前を誘ったんだ。もっとやり合おうぜ……ってな。


お前はそれに応えてくれて、この状況から全力が出せると信じてくれている。それが堪らなく嬉しい。

……いくぞ、サジット・アポロドラゴン。お前の全力中の全力、ここで全て解き放つ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


”……なぁ恭文”

”お兄様”

”お願い、なにも言わないで”


どうしよう、スピリットが足りない。どう考えても陣形が抜けない。

手札にはジーク・ヤマト・フリードとマジック、それにさっき引いたあれしかない。

はい、手札事故起こしてます。どうしようか、これ。はったりかましてるけど、結構厳しい。


ヤバい、泣きたいかも。ここからはかなりギリギリ……でもそれが楽しいというか、なんというか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN08→09




ライフ×2 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×2 コア総数×10

手札:二枚 デッキ:20枚

スピリット:イグア・バギー・レベル1(コア×1) ジェミナイズ・レベル1(コア×1)

サジット・アポロドラゴン・レベル3(コア×5 ペンドラゴンとブレイヴ)

ネクサス:光り輝く大銀河・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN09メインステップ開始時

ライフ×2 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×11

手札:三枚 デッキ:19枚

スピリット:イグア・バギー・レベル1(コア×1) ジェミナイズ・レベル1(コア×1)

サジット・アポロドラゴン・レベル3(コア×5 ペンドラゴンとブレイヴ)

ネクサス:光り輝く大銀河・レベル1(コア×0)


恭文

ライフ×3 リザーブ×5 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10

バースト×1

手札:四枚 デッキ:27枚

スピリット:マ・グー・レベル3(コア×5 メガバイソンとブレイヴ中)

ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「メインステップ。……俺はイグア・バギーを召喚」


やっぱり来たか、イグア・バギー。ニクいアイツが現れた事で、ジェミナイズがフィールドで舞い始める。


「この瞬間、ジェミナイズの効果発動。オープンしたカードがスピリット、ブレイヴの場合ノーコストで召喚する」


そうしてオープンされたカードは、三つ首を携えた青い獣。頭部には金色の角が輝き、力を誇示する。


「出てきたのは、トレス・ベルーガッ! ブレイヴカードのため、そのまま召喚するっ!」


そうしてカードにトレス・ベルーガが重ねられ、サジットを赤・紫・青の輝きが包む。

その中から現れたのは、青い甲冑に身を包むサジット。翼の形は変わらず、全体の色が青に変化していた。


「更にマジック、ブレイヴドローを発動っ!」

「まだドローソースがっ!」

「デッキから二枚ドローし」


一枚まで減った手札が三枚に増え、次にデッキトップ三枚がオープン。そこには……赤くてでっかい牛さんが混ざってました。


「一枚目は金牛龍神ドラゴニック・タウラス、二枚目はヴェロキ・ハルパー、三枚目はブレイヴドロー。
ブレイヴカードがなかったため、これら全てを元の順番でデッキへ戻す」


展開されたカードが戻ったのを確認してから、五反田弾はペンドラゴンを取り外し。


「ペンドラゴンはジェミナイズへブレイヴしておくぞ」


ジェミナイズ上へ置く。するとダブルブレイヴは解除され、展開していた翼が元に戻る。

それと入れ替わりでジェミナイズの周囲を、ペンドラゴンがうねりながら舞う。

そうして二体をお互いの色が包み込み、それが薄い羽衣となる。


羽衣を纏ったジェミナイズは、喜びからか身体をくねらせ踊る。……ちょっと綺麗かも。

でもダブルブレイヴを解除した? どうしてなんて……考えるまでもないか。

やっぱりピンチは継続中なのに、自然と胸がわき立つ。手札の事故具合も、そのエッセンスになっている。


今目の前にあるのは、とんでもなく大きな壁。僕はそれを自分のために超える――それがとても楽しい。

そうだ、楽しいものだ。誰かのために頑張るのも楽しいけど、自分のために頑張るのも楽しい。

IS学園の事も、世界の事も、今この場では関係ない。僕は自分のためにバトルしていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


トレス・ベルーガ

ブレイヴ

5(青2赤2)/青/異合

<1>Lv1 6000 <0>合体+6000

合体条件:光導
【合体時】『このスピリットの合体アタック時』
自分のデッキを上から6枚破棄することで、このスピリットをBP+6000する。
この効果で自分のトラッシュに系統:「光導」を持つスピリットカードが1枚以上置かれたとき、このスピリットは回復する。

シンボル:青

コンセプト:丸山浩
イラスト:村瀬倫太郎

フレーバーテキスト:
コイツや戦艦ゴーレムは古代文明時代につくられた。―交渉人ミクスの手記―


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


金牛龍神ドラゴニック・タウラス

スピリット

7(4)/赤/光導・古竜

<1>Lv1 5000 <3>Lv2 8000 <5>Lv3 10000

Lv1・Lv2・Lv3【激突】『このスピリットのアタック時』
相手は可能ならば必ずブロックする。

Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
相手のスピリットがブロックしたとき、そのスピリットとシンボルの数を比べる。
そのスピリットより多いシンボル1つにつき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

Lv3『このスピリットのアタック時』
このスピリットの効果でシンボルの数を比べるとき、系統:「神星」/「光導」を持つ自分のスピリット1体につき、
このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

シンボル:赤

コンセプト:丸山浩
イラスト:安達洋介

フレーバーテキスト:
人智を超えた世界に彼はいる。 ―星文学者リリア『八十八星夜話』牡牛座―


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……アタックステップッ! サジット・アポロドラゴン、いけっ!」


サジットのカードが横に倒された瞬間、五反田弾のデッキが青に染まる。


「トレス・ベルーガの合体アタック時効果っ! デッキを六枚破棄し」


デッキからカードが六枚破棄され、あの赤い牛さんが光を放つ。


「このバトルの間ブレイヴスピリットをBP+6000! よってサジット・アポロドラゴンはBP25000となるっ!
更に破棄した中に系統:光導を持つスピリット――ドラゴニック・タウラスがいたので、ブレイヴスピリットは回復するっ!」


そのスピリットは……金牛龍神ドラゴニック・タウラス。ブレイヴドローは無駄打ちなんかじゃなかった。

前半三枚だけだけど、発動できるかどうか確認したのよ。やっぱり楽しいねぇ、五反田弾。

でも……トレス・ベルーガの効果を早々に使った? 手札にあれがあるなら、普通にブレイヴできるのに。


いや、考えるまでもない。双光気弾とかを警戒して、効果をフルに使ったんだ。

アタック時効果はこっちのフラッシュタイミング前に処理するから、双光気弾ではどうしようもない。

同時にデッキには、まだ他の系統:光導持ちがいるかも。だから早々に使っちゃったとか。


「それでこれが、メインのアタックだっ!」


そうしてようやくサジットが右手の弓を構え、こちらを狙う。僕は当然……こう宣言する。


「ライフで受けるっ!」

「ブレイヴスピリットはダブルシンボルッ! ライフを二つ頂くぞっ!」


放たれた矢は二本――それが螺旋を描きながらこちらへ飛び、一つの奔流となる。

巨大な赤の炎が迫る中、僕の前に障壁が展開。それで矢を受け止め……僕は後ろにはじき飛ばされた。

障壁は砕け散り、二本の矢は僕の両わきを掠める。その風圧に揺らめきつつも、なんとか倒れずに踏ん張る。


これでリザーブにコアは七個。合計コア数は12となり、残りライフは1――でもこのライフ、絶対に守り切る。


なおバトル終了時点で、トレス・ベルーガのBPアップ効果は解除。BPは19000へと戻る

「ライフ減少により、バースト発動っ!」

「ついに来たかっ! だがいくらジーク・ヤマト・フリードと言えど、サジット・アポロドラゴンは止まらねぇぜっ!」

「……なにを勘違いしてるの?」


胸元に未だ残る衝撃をかみ締めつつ、僕はトラッシュから飛び出た光に目を向ける。

それらは半透明のカードとしてフィールド上に展開し、すぐにトラッシュへ戻っていった。


「トラッシュに赤のカードが三枚以上あるので、このスピリットを召喚するっ!」

「なんだとっ!」


赤い光とともに浮かび上がったカードを、右手でしっかりキャッチ。するとカードが炎に包まれた。


「舞え、美しき暴君っ!」


炎に包まれたカードを右に振りかぶり、そのまま反時計回りに一回転。自分の周囲に赤い焔の陣を描く。


「鳴り響け、万雷の喝采っ!」


それから右腕を思いっきり振り上げると、炎は一気に弾けながら僕の身体を包み込む。


「紅と金色の焔とともに」


腕を右切上に振るいカードを投げつけると、炎が一気に振り払われる。それにより、姿を変えたアーマーが露出。

アーマーの代わりに赤い礼服を装着し、コートの裾が腰の後ろで激しく揺れる。


「愛輝かせる導となれっ! レベル3・バースト召喚っ!」


カード上にコアが載ると、五つのコアが現れ一つとなり、巨大なルビーに変化。ルビーは回転しながら空へと昇り、派手に砕け散った。

その赤い粒子が空いっぱいに広がり、青かった空を赤色のステンドグラスへと作り替えてしまう。

それから光が差すと、ステンドグラス中央から閃光が走る。それが僕の場に着弾すると、虹色の爆発が発生。


「颯爽登場っ! 美の覇王セイバー・ネロ・クラウディウスッ!」


そして中から、生まれた爆煙を袈裟に斬り裂く影が現れた。一瞬で散っていった爆煙の中から現れたのは、金色髪の少女。

赤い礼服は胸元が派手に開いていて、大きめの乳房には谷間も見えた。

アップにした髪をきらめかせながらあの子は、湾曲した刃を振り上げ逆手に持ち替える。


その切っ先を地面へ突き立て、女の子は不敵な笑みを浮かべた。


「ここでセイバー・ネロ・クラウディウスだとっ!」

「セイバー・ネロ・クラウディウスの召喚時効果、発動。
自分、または相手スピリット一体を指定――今回はサジット・アポロドラゴンを指定するよ」


……セイバーは再び剣を順手で持って、サジット・アポロドラゴンを指す。

それから切っ先を天へ向けると、赤かったシャンデリアが一瞬だけ強く輝き、そこにサジットの姿が描かれる。


「これにより次の自分ターンエンドフェイズ時まで、そのスピリットの効果をセイバーのものとして扱う。
次に相手、または自分のスピリット一体を指定し、そのスピリットの系統を加えられる。僕はサジット・アポロドラゴンを指定」


そのままサジットを指し続けると、セイバーの身体を赤い輝きが包む。一瞬だけの光に、セイバーは不敵に笑った。


「これでセイバーは系統『神聖・光導』持ちになる」

「なにを狙ってるかは知らねぇが」


だよねぇ。五反田弾は右手で重なったカード達を取り、一気に横へ傾ける。


「一気に行くぜっ! もう一度サジットでアタックッ!」


サジットは地面を踏み砕きながら駆け出し、こちらへ迫る。


「セイバーでブロックッ!」


それに対し僕はセイバーで迎え撃つ。ただしその体長さはあまりに大きく、まさに巨人と小人――見た目だけなら、セイバーに勝ち目はない。


「フラッシュタイミング」


やっぱり来たか。そう思っている間に、五反田弾はあのカードを前にかざす。


「バーニングサンをコスト1で発動っ!」

「二枚目……!」

「手札のシャイン・ブレイザーを、サジット・アポロドラゴンへ直接ブレイヴッ!」


取り出したシャイン・ブレイザーのカードが、赤の奔流となってサジットの背中へ放たれる。

それが命中した瞬間、赤と青の光がサジットを包み込んだ。その中から飛び出すのは、金色の甲冑を身につけた光龍騎神。

その翼は機械的で細身な六枚羽となり、それら一枚ずつが、真ん中から割れるように展開。


そこから虹色の光で構築された、刃のような羽が現れる。そしてサジットは弓の持ち手にある、狙いを定めるための突起を掴んだ。

右手で突起が保持された瞬間、弓は内側へと二つ折りに変形。弓の両端から炎が噴き出し、刃を構築する。


「もう一度羽ばたけっ! ダブルブレイヴスピリットッ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『圧倒的過ぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ! セイバーはBP12000だが、再びダブルブレイヴしたサジット・アポロドラゴンはその倍っ!』

「倍? えっと」

「サジットが13000、トレス・ベルーガが6000、シャイン・ブレイザーが5000――合計24000ですね」

「に……!」


織斑さんの補足に驚き、山田先生が再び駆け出したサジットを見ます。

その姿はまさに光る竜、まさに騎士の神――ある種の神々しさすら感じてしまう。


「そんなのどうやって勝つんですかっ! ジーク・ヤマト・フリードより上なんてっ!」

「それだけじゃないっ! 恭文さんがあれをなんとかしないと、シャイン・ブレイザーの効果で残りライフが削られるっ!」

『恭文選手、絶体絶命のピンチだっ! さぁ、どう切り抜けるっ! 再びカウンターは決まるのかっ!』


でもどうやって……そう思っていると、恭文さんは笑って一枚のカードを取り出す。


『ヒカリ、力を借りるよっ!』


それがなにを意味するか察したヒカリさんが、嬉しそうな顔で頷く。……その姿がちょっと羨ましくて、唸ってしまう。


「……うんっ!」

『フラッシュタイミング――神の光、世界を惑わす幻想となれっ!』


恭文さんがカードを掲げた瞬間、空に黒い暗雲が差す。

雲がステンドグラスを一旦覆い隠すと、その中でバチバチと光が瞬き始める。


『マジック、リバーシブルスパークをコスト4で発動っ!』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「コストはセイバー上より二個、マ・グー上より二個使用っ! マ・グーはレベル2・BP11000!
セイバーはレベル2・BP8000にダウン――このバトルの間、BPを比べる時」


暗雲から白と黒の雷撃が走り、それがセイバーとサジットを撃ち抜く。それを受けて……セイバーは駆け出した。

白い雷撃を纏いながら剣を右に振りかぶり、土煙をあげながらサジットを迎え撃つ。


「バトルしている自分と相手スピリットのBPを、入れ替えるっ!」

「な……つまり」

「バトル解決っ!」


そしてセイバーは地面を蹴り、剣を振りかざすサジットへ突撃――そしてあまりに大きな差を持つ二人が、同時に剣をぶつけた。


「サジット・アポロドラゴンのBPは8000、セイバーのBPは――24000となるっ!」


そこで白い雷撃は潰されるように両断されるはずだった。でも白い雷撃は尾を引きながらも、サジットの斬撃に耐える。

黒い雷撃に戒められるサジットは、それを振り払おうと更に力を込める。でもその拮抗も抵抗も、無意味だった。

白い雷撃は炎の剣を両断しながら、サジットの胸元へ迫る。両断された剣――サジットの弓は、破片となって二人の両わきへ落下。


それらが突き刺さり、刃となっていた炎が周囲にまき散らされていく。それにより暗かった世界が、炎の赤に染まる。

サジットはセイバーの突撃を左腕で受け止め、そのまま強引に振り払った。

セイバーはサジットの7時方向へはじき飛ばされるけど、雷撃を纏ったまま体勢を立て直す。


地面を滑りながら着地するセイバーへ向き直り、サジットは咆哮。すると翼の光が飛び出し、ビットのように複雑な軌道を描く。

迫るそれをセイバーはジグザグに移動し避け、同時に剣で斬り砕いて道を開く。

避けられてなお軌道修正し後ろに迫る光のビットへ振り返り、セイバーは右薙一閃――合計四つのそれを粉砕する。


そこを狙ってサジットが踏み込み、右前足でセイバーを踏みつぶそうとする。セイバーはサジットの足を剣で受け止めた。

その瞬間、セイバーを中心にクレーターができる。……でもセイバーは、圧倒的重量と力に耐えていた。

刃と足の接触点から激しく火花が走る中、更にクレーターが肥大化するのも構わず、セイバーは力を入れ続ける。


その様子を見守りながら、右手で持ち手を握り深呼吸。らしくはないと思うけど。


「セイバー」


抗い戦うセイバーを見て、黙っていられない。僕はフィールド全体に響くような声で、叫びをあげる。


「負けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


その瞬間、遠目からだけどセイバーが笑ったように見えた。そしてセイバーの身を包む雷光が、一気に迸る。

フィールド全体を舐めるように広がった雷光――それに合わせてセイバーは、刃を左薙に打ち込む。

そうしてサジットの足は振り払われ、サジット本人も勢いに押されたたらを踏む。そこでサジットは翼を羽ばたかせ、大きく後ろに跳躍。


顔を上へ背けたかと思うと、尖り気味な口を開いて炎の砲弾を形成。それを吐き出し、螺旋を描く奔流とする。

セイバーはそれに構わず地面を蹴り、空を飛びながらサジットへ突撃。燃え上がる炎を、白い雷光が斬り裂いていく。

そうしてセイバーは剣を唐竹に振りかぶり、雷光もろとも一つの斬撃と化す。それがサジットの胸元へ突き刺さり、そのまま貫通。


同時にサジットの巨体が両断され、光龍騎神は空中で体勢を崩してしまう。

雷撃を脱ぎ去り、そのまま安全確実に着地するセイバーの背後へ、音を立てながら墜落した。

そうして爆発――セイバーは燃え上がる炎を背に、僕へ向かって笑いかけ胸を張った。


「……マジ、かよ」

「残念ながら、事実だ」

「だが……まだだっ! ジェミナイズでアタックッ!」


五反田弾がカードを倒すと、ジェミナイズは反時計回りに一回転。

それからふわりと浮かび上がり、こちらへ飛んでくる。というわけで、更に切り札を切ろうか。


「ペンドラゴンの合体アタック時効果っ! セイバーからコア一個をリザーブへっ!」


あ、その前に効果があったか。セイバーが崩れ落ち、そのコアがリザーブへ置かれる。

これによりセイバー上のコアは二個となり、レベル1にダウンする。

リザーブのコアはさっき削られたライフ二個に、それがプラスされて合計三個。……それじゃあ改めて。


「フラッシュタイミング――絶甲氷盾っ! コスト3で発動っ!」

「く……!」


リザーブにあるコア三個がトラッシュへ送られ、シャイン・ブレイザー達の前に氷の壁が出現。

持っててよかったサイレントウォール的なカード。いや、実に素晴らしいねぇ。


「このバトルが終了した時、アタックステップを終了させるっ! ジェミナイズのアタックは、マ・グーでブロックッ!」


ジェミナイズが羽衣を揺らしながら、四手に虹色の球体を形成。光で構築されたそれは、連続で投げつけられる。

マ・グーは翼を羽ばたかせ飛び上がりながら、鎌を右薙一閃して炎を展開。

それで光の球体を防ぎ、一瞬で燃やし尽くす。そのまま突撃し、ジェミナイズと組み合った。


ジェミナイズは羽衣を、マ・グーは翼を広げ、そこから粒子を吐き出しながらお互いに押し込む。

その結果……マ・グーが徐々にジェミナイズを圧倒し始める。……ジェミナイズのBPはブレイヴ中なので9000。

レベル1がBP5000で、そこにBP4000のペンドラゴンがブレイヴしているから。でもマ・グーのBPは11000。


よって……マ・グーはそのままジェミナイズを突き飛ばし、左手で持ったツインランサーを逆風に振るう。

それは吹き飛ぶジェミナイズへ投擲され、その腹を射抜く。ジェミナイズはそのままプレイ台近くの外壁に激突。

その瞬間、プレイ台を激しく揺らしながらジェミナイズは爆発した。その爆炎から、素早くペンドラゴンが離脱。


「ブレイヴスピリットを分離し、場に残しておくっ! ……だがこれで、場はがら空きだっ!」

「ターンエンドだけどね」

「なんだよなぁ……ターンエンド」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


リバーシブルスパーク

マジック

4(1)/黄

フラッシュ:
このバトルの間、BPを比べるとき、
バトルしている自分のスピリットと相手のスピリットのBPを入れ替える。

イラスト:水無月徹


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN09→10




ライフ×2 リザーブ×2 トラッシュ(コア)×3 コア総数×11

手札:一枚 デッキ:10枚

スピリット:イグア・バギー・レベル1(コア×1) イグア・バギー・レベル1(コア×1)

シャイン・ブレイザー(コア×1) トレス・ベルーガ・(コア×1)

ペンドラゴン(コア×1 疲労中)

ネクサス:光り輝く大銀河・レベル1(コア×0)


恭文

ライフ×1 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×7 コア総数×12

手札:二枚 デッキ:27枚

スピリット:マ・グー・レベル2(コア×3 メガバイソンとブレイヴ中 疲労中)

セイバー・ネロ・クラウディウス・レベル1(コア×2 疲労中)

ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0)
                 ↓
                 ↓
TURN10メインステップ開始時

ライフ×1 リザーブ×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×13

手札:三枚 デッキ:26枚

スピリット:マ・グー・レベル2(コア×3 メガバイソンとブレイヴ中)

セイバー・ネロ・クラウディウス・レベル1(コア×2)

ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「メインステップ――バーストをセット」


ここでセットするのは、ジーク・ヤマト・フリード。正直もう使うチャンスがないし、それなら……そして神剣はまた輝く。


「英雄皇の神剣レベル1・2の効果により、デッキから一枚ドロー」


ジーク・ヤマト・フリードのおかげで、手札は三枚を維持する。

この状況だし、一枚でも多いと心強い。ドローって素晴らしいなぁ。


「コスト3を支払い、騎士王蛇ペンドラゴンを召喚。そのままセイバーへブレイヴ」


リザーブから三個のコアがトラッシュへ送られ、その残りは五個とする。

――セイバーのカードにペンドラゴンが重なり、赤と紫の螺旋が描かれる。

アメジストの輝きがフィールドに生まれ、それが砕け散った瞬間にペンドラゴンが出現。


ペンドラゴンはその場で円を描き、ウロボロスのように回転。

そうしてペンドラゴンはその身を光とし、そのままセイバーが掲げた剣へ吸い込まれる。

セイバーの赤い湾曲した剣が光の中、両刃で紫色の刃となる。


セイバーはそれを頭上で一回転させ、一気に振り下ろして構えを取る。


「舞え――ブレイヴスピリットッ! 騎士王者ペンドラゴンの召喚時効果っ! トレス・ベルーガのコア一個をリザーブへっ!」


トレス・ベルーガが紫の光に包まれ、うな垂れながらそのコアが抜かれる。……これで残りの障害は三体。


「そしてこの効果で、スピリットのコアを0にした時、デッキから一枚ドロー」


またまた補充できた三枚目の手札は……更に来た。これで万が一の時は、守りも攻めもなんとかなる。


「リザーブのコア三個をセイバー上に移動し、レベル3・BP16000にアップ。ここでセイバーの効果発動」


リザーブが残り二個となった中、セイバーが剣でステンドグラスを指してうたう。

その歌は赤い波動となって、残っているスピリット全員を包み込んだ。


「メインステップ時、ネクサスを配置している時は相手の全スピリットをBP−3000とする。
よってイグア・バギー二体はBP0、ペンドラゴンはBP1000、シャイン・ブレイザーはBP2000となる」

「ネクサスと連動した、BP−効果か。ホントやりたいようにやってくれるな、その暴君は」

「だからこその暴君だ。続けてマ・グー上に……ここはいいか」


リザーブは残り二個――ここをミスったら意味ないから、慎重にいく。……うし、次だ。


「メガバイソンをマ・グーから外し、セイバーにダブルブレイヴッ!」


マ・グーからメガバイソンを外すと、白い翼が離脱。それはフィールドへ降り立ち、メガバイソンへ変化。

そうしてすぐにマ・グーは元の姿を取り戻す。その様子を見つつ、マ・グーをセイバー上に移動。

上半分の右側はペンドラゴン、反対の左側にメガバイソンが置かれ、赤・白・紫の螺旋がカードから放たれる。


「……やっぱり、これが狙いかっ!」

「あぁそうだよ。ダブルブレイヴがサジットだけの特権なんて、誰が決めたのかな」


セイバーへと突撃するメガバイソンが、瞳を輝かせながら後ろ二足で立つ。

そうしてキャタピラ付きの前足を軽く動かすと、サイズがやや小さくなりセイバーサイズに変化。

それを見て取ったセイバーは跳躍し、大きく身を捻りながらメガバイソンの頭上を取る。


するとメガバイソンの直線的な背中が白い光を放ち、革製っぽい質感の鞍(くら)が現れる。

サドル付きのそれにセイバーはお尻から着地し、サドルにもしっかり両足を通す。

続けてメガバイソンの口元から手綱が光とともに現れ、たわむそれをセイバーの左手がしっかりと掴む。


セイバーがそれをくいっと引き上げると、再びメガバイソンは二足で立ち、キャタピラを全開稼働させながら雄々しく吠えた。


「雄々しく羽ばたけ」


でも変化はそれだけには止まらない。紫色の両刃剣に白いもやがかかり、それは一瞬でラインとして刻まれる。

同時に刃は更に大きさを増し、斬馬刀とも言うべき大きさとなる。

今度はメガバイソンに紫のもやが生まれ、それは甲冑としてメガバイソンに装着。


龍を示す兜と、翼付きの鎧、そして刃を持つ尾――それは白と紫の融合。

メガバイソンとペンドラゴンはお互いに影響し合い、その力を高め合っていた。

これはセイバーが持っている力であって、力ではない。あくまでも皇帝特権で得られたもの。


言うなら1ターンだけ見られる夢。でもその結果は確かな現実となる。

それを示すように、赤かった服が裾から黒に染まっていく。


「ダブルブレイヴスピリット……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『なんとなんとなんと……サジットを破っただけではなくっ!』

『十八番のダブルブレイヴまでコピーしちゃったっ! やっぱり出てきた、セイバー・ネロ・クラウディウスの皇帝特権っ!』

『もうやりたい放題ね、アイツ』

「す、すげぇ……すげぇすげぇすげぇっ!」


オレは興奮のあまり、手すりをバンバン叩いちまう。……ちょっと落ち着こうっと。

あ、でもすげぇってっ! 恭文さん、セイバーの効果を完全に使いこなしてるっ!


「これはなかなかだな」


でもわくわくしてて興奮してるのは、オレだけじゃない。織斑先生もなんか微笑ましそうに見ている。


「私にもアイツが、バトルの中で輝いているのが分かる。それだけでなく、あの小さな騎士もだ」

「当然っ! だってバトスピやってんだぜ、オレ達っ!」

「カードバトラーはスピリットと、そしてカード達と一緒に輝く。それで夢を掴んで」


キマリは不敵に笑って、右手で思いっきりガッツポーズを取る。


「世界征服よっ!」

「お姉ちゃん、それ違うっ! お願いだから元ブリュンヒルデさんにまで迷惑かけないでー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「アタックステップ――マ・グーの効果発動っ! トラッシュのコア三個を自身の上へ移動っ!」


フィールドに生まれたコア三個を吸収し、マ・グーが身体から赤い炎を噴き出す。


「これによりマ・グーはレベル2・BP11000のダブルシンボルとなるっ! ……が、ここは関係ない」

「だろうな」


そう、ここでのメインはセイバーだ。でもマ・グーはセイバーに確かなバトンを繋いでくれた。


「セイバーでダブルブレイヴアタックッ!」


それに感謝しつつ僕は、重なった三枚のカードに右手をかける。

カード達が横に倒された瞬間、メガバイソンのキャタピラが急速回転。

セイバーは土煙をあげながら駆け出した。……よく考えたら不思議だ。


このフィールドは地面って感じじゃないのに……まぁここはいいか。


「五反田弾、確か僕……本気中の本気って言ったよねっ!」

「言ってたなっ!」

「だから見せてあげるよ、その本気っ! セイバーの効果発動っ! デッキを六枚破棄し」


デッキに三色の光が灯ると、宣言通りに六枚のカードがトラッシュへ送られる。


「BPプラス6000され、ダブルブレイヴスピリットはBP25000! 破棄した中に系統:光導があれば、セイバーは回復するっ!」

「その効果は……おいおい、本気ってそれかよっ!」


そう、これが本気だ。ある種の運試しだけど……結果破棄された中に、あの赤い牛さんがいる。

それはサイドデッキに入れていた、どうしても使いたい一枚。召喚チャンスこそなかったけど、確かに力を注いでくれた。


「金牛龍神ドラゴニック・タウラス――略してドラタロス、チェックッ! セイバーは回復っ!」

「なんでじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 略する必要がねぇっ! 意味がねぇっ!」

「だってカッコいいし」

「むしろダセェだろっ!」


言っている間にセイバーは斬馬刀を振り上げ、頭上で回転させつつ逆袈裟一閃。


「ペンドラゴンのブレイヴ時効果っ! シャイン・ブレイザーのコアをリザーブへっ!」


刃から放たれたのは、白紫の斬撃波。それは時計回りに回転しながらも直進し、ブレイザーへ直撃。

その瞬間ブレイザーは吹き飛ばされながら、紫の粒子となって場から消え去る。


「そしてセイバーの合体・レベル3時効果っ!」


メガバイソンの角先から三色の光が生まれ、それは螺旋を描きダブルブレイヴスピリットを包む。

弾丸のようになったセイバー達は地面から離れ、空中から火花を走らせながら突撃する。


「ブレイヴしているスピリット一つに付き、BP10000以下のスピリット一体を破壊っ! イグア・バギー二体、吹きとばせっ!」


こちらを迎撃に出たイグア・バギー達は、背中のキャノン砲から白いビームを放ってくる。

でもそれらをはじき飛ばしながら、セイバー達はその合間を突き抜け交差。

イグア・バギー達は両わきへ吹き飛ばされながら、爆散した。……もう邪魔するものはない。


狙うはライフのみ……でも五反田弾はそこで、残っていた最後の手札をこちらへかざす。


「フラッシュタイミング、デルタバリアをコスト4で発動っ!」

「な……!」


弾の前に、白いベルカ式魔法陣みたいな障壁が展開。それは……大輔が初戦で使い、命を繋いだものと同じだった。


「悪いがここで終わりだ。……俺は先に行くぞ」

「――よ」

「え?」


その障壁を見て、僕の中に生まれた感情は……絶望でもなければ諦めでもなかった。

ただ笑みがこぼれ、ただ歓喜で胸が震える。それで僕は、改めて五反田弾の首元を――最後のライフを見据える。


「読んでいたよ、五反田弾」

「なん、だと」

「こう見えても僕、勘が良くてね。だから先へ行くのは」


三枚ある手札から一枚を取り、僕はそのカードをプレイ板へ投げつける。


「僕だ。フラッシュタイミング――コスト1・レベル1で神速召喚っ!」


突撃するセイバー達の後方――僕の目の前で生まれるのは、四角くカットされたエメラルドの輝き。

リザーブからコア一個がトラッシュへ送られ、二個目は置かれたカード上に移動。

エメラルドが砕け散ると、中から小さめな虫が出現。と言っても僕が乗れるサイズくらいはある。


全体的に緑のまだら模様で、鼻先が銛のように尖っている。そのスピリットの名は。


「マッハジー!」

「な……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『恭文選手、再び切り返したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
ダブルブレイヴをも封じられて、万事休すかと思われた先に差したのは――希望っ!』

『マッハジーはコスト1! デルタバリアの効果対象外だよっ!』


でもその前に、まずはセイバーのアタック処理から。五反田さんのところへ突撃するセイバーを。


『……ライフで受ける』


五反田さんは宣言し、展開しているシールドと赤い障壁で受け止める。

が……弾丸となったセイバーは四つ目のライフを砕くも、その障壁にはじき飛ばされてしまった。

そうして地面に着地し、勢いを殺すために回転しながらなんとか停止。


これは、仕方ありませんわね。今のセイバーは、コスト17ですから。でもマッハジーは違う。


『デルタバリアの効果で、俺のライフは0にはならない』


五反田さんもそれを分かっているから、ライフが守られても表情が明るくならない。

わたくしはその様子を、そして召喚されたマッハジーに手をかける恭文さんを見て、ぎゅっと両手を握り締めた。


「弾にはもう手札もないし、残りライフも1……これで決まったな」

「教官……そのままいけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「マッハジーでアタックッ!」


マッハジーは羽を羽ばたかせながら、一直線で五反田へ突撃。

僕は負けない……ううん、負けたくない。僕はこの先になにがあるか、まだ見ていないんだ。だから。


「だが忘れるなよ」

「なにをさ」

「俺はこのバトルをお前とできて、無茶苦茶嬉しかった。だからあえて言い切ってやる」


五反田弾は笑って両手を広げ、迫るマッハジーと僕へ最後のライフを捧げた。


「このバトルが今回の覇王チャンピオンシップにおける、ベストバトルだっ!
それを勝ち抜いたお前が覇王にならないなんざ……俺は許さねぇっ!」

「五反田弾」

「だから勝つなら覚悟を持って、俺を踏み越えてみせろっ!」

「……そうだね」


僕が笑いを返している間に、弾の前で緑の障壁が展開。そこにマッハジーが突撃し、ドリルのように回転しながら障壁を穿つ。


「楽しかったぜ……恭文っ! またやろうなっ!」

「うんっ! 僕も楽しかったよ、弾っ!」


激しく火花を散らしながら、障壁は数瞬突撃に耐える。でも……突然にそれは砕け散り、粒子となる。

胸元のライフに衝撃を受けた五反田弾はそのまま吹き飛び、プレイ台の上に倒れ込んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 10ターンにおける白熱した攻防っ!』


ステージ上に戻ってきた途端に、僕達を歓声とギャラクシーさんの叫びが出迎えてくれる。


『スピリット、マジック、ブレイヴ、ネクサス、運、戦術っ! 全ての力を引き出し抜いた、激戦中の激戦っ!
二人に差は決してありませんでしたっ! それでもほんの僅かに上回って、最終的に勝利を手にしたのは』


ギャラクシーさんが、右手を挙げて僕を指し示す。すると歓声がまた激しくなり、胸の中が熱くなるのを感じた。


『八神恭文選手ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ! 国内大会へ出場する、四人目の選手が決定したぞっ!』

『恭文選手、おめでとうっ! それじゃあ早速コメントを……あれ』


優亜とギャラクシーさん、それに歌唄が驚いた顔をする。というか、ショウタロスとシオンも、呆気に取られた様子だった。


「おいヤスフミ」

「お兄様」


二人だけじゃなくて会場も……あれ、なんだろう。なんでみんな、そんな驚いた顔で僕を見るの?

よく分からなくなっていると、セシルが僕の前へ来て嬉しそうな顔をする。


それではうたいます――流した涙の意味はなに?


そう言われて僕はハッとして、右手で頬に触れてみる。……確かに僕は泣いていた。


『あ、あれ……なんだろ。なんか、あれ』


自分でも意味が分からなくて、僕はその涙を右手で拭う。それでもなんか止まらなくて、またこするけど……全然駄目だった。


『な、なんだろ。なんかめちゃくちゃ嬉しいというか力が抜けたというか、楽しかったというか』

『……うっしっ!』


ワケ分からなくなっていると、弾がいきなり僕の背後に回り込む。

そうして頭を僕のまた下に入れたと思ったら、一気に持ち上げてきた。

慌ててバランスを取っている間に、僕の視界は一段も二段も高いところへ移動。


そこから見る景色は……いつもの僕なら魔法なしでは触れられない領域で、自然と笑みがこぼれてしまう。


『ちょ、弾っ!』

『せっかくだからそのうれし涙、会場中の奴に見てもらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』

『それは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

『俺は悔し涙だっ!』

『おのれも泣いてるんかいっ!』


でも景色が変わって、弾に持ち上げられて、一つ分かった事がある。僕はここで勝てて、先にいけて嬉しい。

新しい世界が広がった感じがして、見失いかけていた『キラキラ』にまた触れられた感じがして……凄く嬉しかったんだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文さんがステージ上から降ろされて……あぁ、降ろされてなんだよ。肩車されたまま、降りちゃったし。

でも二人とも、名前呼びになってたんだよなぁ。それが嬉しくて、でも同時に胸が強く締めつけられた。でも痛みは続く。


『――激戦を超えた後に生まれるのは、やはり友情――二人とも、バトル開始前より距離が縮んだように思うわ』

『うんうんー。でも優亜的には、お兄ちゃんのうれし涙を見られてラッキーって感じー?』

『これ以上のコメントはないと言ったところでしょうか。
……それでは全国大会へ進んだカードバトラー諸君、ステージ上へっ!』


その痛みはステージ上に現れた四人を見て、より強くなっていく。

キマリも会長も、テガマルも恭文さんも……みんな誇らしい顔をしていた。

妬んでいると言ったら、否定できない。それくらいに悔しくて、胸が震えている。


『まずは四人とも、おめでとうっ!』

『四人は赤ブロック5000人のカードバトラーから勝ち上がった、最強の四人だよー』

『そんなみんなに、あの人から祝福があるわ。……チャンピオンー!』


そこでステージ後ろに煌めきが生まれ……あれ、バトルフィールドへ出入りする時の光だ。

煌めきからチャンピオンが現れて、会場中が歓声に包まれる。オレはそれに乗る形で、思いっきり声をあげた。


『四人とも、いいバトルだったぜっ! この中の誰かが、俺とバトルするかもしれないなっ! その時は熱いバトルしようぜっ!
全国大会は、もっと凄いカードバトラーが待っているっ! 今以上に強くなって、勝ち上がってくれっ!』


チャンピオンはそう言いながら手を伸ばし、四人一人一人としっかり握手。それからステージ前で出て、こっちに手を振ってきた。


『覇王(ヒーロー)対決で待ってるからなっ!』

『――それでは、素晴らしいカードバトラー達に拍手ー♪』


桜井優亜の音頭で会場の皆が拍手する。それは感動や激励、いろんなものが詰まった拍手。

その音はとても温かいけど、やっぱり胸は苦しさで締めつけられる。


『次は全国大会ね。私もそれまでに……まずは自分のデッキ組むわ』

『お、歌唄さんが燃えていますねっ!』

『だってあんな熱いバトルをいくつも見せられたら、嫌でも興味が出るわ。それじゃあみんな』


チャンピオンも交えて司会者三人は、こっちに手を振って。


『『『『次は全国大会で会おうっ!』』』』


声を揃え、閉幕となった。オレはコウタやセシリアさん達と一緒に、みんなへ頑張れとエールを送る。

それが……オレの終わりだった。オレは歓声を、拍手を受ける側じゃなくて、送る側としてここにいる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


閉会式も無事に終わり、もうみんなで帰る時間。ただその前に僕は……外のフェンスに寄りかかって、暮れかかる空を見ていた。

あの興奮と勝利への感覚を思い出し、かみ締め、胸に刻みこみつつ夕方の風を思いっきり吸い込む。


「お兄様、楽しまれましたか?」

「うん、バッチリ。でも」

「でもなんだ?」

「……ジーク・ヤマト・フリードが出せなかった」

「……それはもう、諦めろ」


ショウタロス、涙ぐまないでよ。他にもドラタロスとかも出したかったのにさ。よし、次の時までにデッキ調整しておこうっと。

次の全国大会までにもっと腕を上げて……そう思っていると、後ろに人の気配が生まれる。


「八神」


振り返ると織斑先生が、穏やかな表情で立っていた。てゆうか、珍しいレベルで笑っている。


「織斑先生……わざわざありがとうございました」

「いや、いい。私としても、お前の涙という貴重なものが見られて」

「あれは内緒でっ!」


きゃー! 恥ずかしいー! 妙に穏やかっていうか微笑ましそうな顔してるの、そのせいかいっ!


「それで、どうする」


ただその表情が引き締まったので、自分で言い出した用件を思い出す。それで……困りながら、右手で頭をかく。


「聖夜学園に……戻ろうと思います」

「そうか」


織斑先生はそれを否定する事なく、静かに夕焼けへ目を向けた。


「確かにその方がいいだろう。お前がISに縛られない未来を選ぶなら、いる事は悪手となる」

「すみません、いろいろ世話になっているのに」

「構わんさ、お前にはお前の道がある。ただ」

「ただ?」

「後悔はないようにな。少なくとも、この瞬間だけは」


その言葉をしっかりとかみ締め、僕は織斑先生に頷いた。もちろんそのつもりだけど、それだけは……しっかりやる。


「あとそれと……まぁなんだ」

「あらま、また珍しい」

「なんだなんだ、いきなり歯切れ悪くなったぞ」


二人が言うように織斑先生には珍しく、歯切れ悪くそっぽを向いた。

いきなりな変化なので、首を傾げながら先生の顔をのぞき込む。

すると先生は更に顔を背け、なぜか嗚咽まで漏らし始めた。


「あちらの方々が、お前に言いたい事があるらしい」

「え」

「まぁファン心理というのも分かるんだが……もうちょっと自重しろ」


織斑先生が視線で示す方を見ると、そこにはフェイトとセシリア、リンとヒカリ……そしてあの二人が笑って立っていた。

ただそれはとても怖く、覇気に満ちあふれた笑顔だった。ショウタロス達と一緒に思わず後ずさると。


それではうたいます。ゆかなさんが好きでもあれは駄目


セシルの歌が聴こえてしまった。その瞬間、僕はなぜああなったかを察して……逃走開始。

でも逆方向へ走り去ろうとした瞬間、眼前にフェイトが現れる。そして……その場で僕の悲鳴が響いた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


コウタと二人反省会なんてしてると、夕方の空から悲鳴が響いた。この声は……あぁ、間違いない。


「あんちゃん、今」

「コウタ、なにも言うな。オレ達はなにも聴こえなかった……そうだろ?」

「そ、そうだね」

「その程度か」


いきなり背後から声がかかったので、驚きながら声の主へ振り向く。するとそこには、険しい表情のテガマルがいた。


「テガマル、その程度ってなんだよっ! お前はフェイトさん達がどんだけキレてたか、見てないからそんな事言えんだよっ!」

「そうだよっ! 下手したら命に関わるレベルだよっ!?」

「なんの話だ。……俺は先へ行くぞ」


そこでオレ達は息を飲み、勘違いを突きつけられる。『その程度』がなにを意味するか、ようやく理解した。

テガマルはそのままなにも言わずこの場から去って、ただただ無力感と悔しさを突きつけられる。


「あんちゃん」

「……く……りてぇ」


こっちを心配そうに見ているコウタに呟き、オレは呼吸を整えその場で叫ぶ。

そうしていら立ちや妬み、情けなさを一旦全部吐き出し、ハチマキを締め直した。


「これで終わったわけじゃないんだっ! もっともっと強くなるんだっ!」

「……うんっ!」


コウタの表情が明るくなったのに安心しつつ、オレはコウタと一緒に両手を天へ突き出す。


「さー! アゲてアゲてアゲまくるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「おー!」


そうだ、ここで終わりじゃない。悔しさで止まりそうになるけど、これも力に変えていけばいいんだ。

それでいつか、高く飛べるように……それで、絶対にそうなれる自分を諦めない。

オレ、今日ここに来てよかった。負けた事は悔しいけど、それでも知らなかった事にいっぱい気づけたから。


新しい一歩を踏み出したオレ達を、夕焼けの空と遠く響く悲鳴が見守ってくれていた。……あ、悲鳴は違うか。


(Battle25へ続く)










あとがき


恭文「というわけで、無事に地区予選終了。次回からは新展開……なぜこうなった」

フェイト「当然だよっ! ヤスフミはゆかなさん好きすぎっ!」

恭文「だってー」

フェイト「もうちょっと自重するのー! ……とにかく今回のお相手はフェイト・T・蒼凪と」

恭文「蒼凪恭文です。それで今回作ったデッキは、こちらとなりますー」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文デッキ Ver10


※スピリット×21

リザドエッジ×3

ブレイドラ×3

マッハジー×2

ワン・ケンゴー×2

ヒノシシ×2

カグツチドラグーン×3

皇牙獣キンタローグ・ベアー×1

焔竜魔皇マ・グー×2

龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード×1

金牛龍神ドラゴニック・タウラス×1

美の覇王セイバー・ネロ・クラウディウス×1(とまとオリカ)


※ブレイヴ×2

獣装甲メガバイソン×1

騎士王蛇ペンドラゴン×1


※マジック×15

三札之術×3

絶甲氷盾×2

双光気弾×2

秘剣燕返×2

ストームアタック×2

双翼乱舞×2

インビジブルクローク×1

リバーシブルスパーク×1


※ネクサス×2

英雄皇の真剣×2


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「それで弾のデッキは、馬神弾のブレイヴデッキが中心。ニジノコとか黄色スピリットを突っ込んでる感じですな」


(参考デッキ『http://batspi.com/index.php?%E3%80%90%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B4%E7%B7%A835%E8%A9%B1%20%E9%A6%AC%E7%A5%9E%E5%BC%BE%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%80%91』
『http://batspi.com/index.php?%E3%80%90%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B4%E7%B7%A847%E8%A9%B1%20%E9%A6%AC%E7%A5%9E%E5%BC%BE%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%80%91』)


フェイト「ここは拍手のアイディアもあるんだよね。黄色のカードを入れて、ジェミナイズでようやくって」

恭文「そうそう。というわけでアイディア、アドバイスを下さった方、ありがとうございました」


(ありがとうございました)


フェイト「でもヤスフミ、マジック多いね」

恭文「実質マジックデッキだね。そして今回やりたかった、ダブルブレイヴ」

フェイト「ここは前々から考えてたんだよね。まぁフィニッシャーにはならなかったけど」

恭文「さすがリアル弾、しぶとい。……それでこれも楽しんで書きつつ、同人版の方も仕上げてきています」

フェイト「少しずつだけどね」

恭文「今回はまぁ、軽くこんな感じですね」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あれは僕が忍者資格を無事に取得した直後――フェイトと一緒に、ミッド南方にある美術館へ行った。

クラリス美術館――ミッドの中でも有名な美術館。今日は休日という事もあって、来場客も多い。

やや無機質で無骨な印象を抱かせる館内は、ミッドでも若手な芸術家の作品が並べてある。


ただ若手と言っても50代〜60代の画家さんも珍しくないけど。だけど……まぁいいか。

薄暗い照明とか、絵と周囲の環境が合っていない事とか、気になる部分はあるけどそれでも足を進める。


「ヤスフミ、待ってっ! いくらなんでも早すぎるよー!」

「……しー」


フェイトがうるさいので人差し指を立て、『静かに』のポーズを取る。フェイト、慌てて口を押さえても遅い。

『美術館ではお静かに』が基本なのに。ギャラリーの目を集めるのは気にせず、僕はフェイトの手を引っ張って更に奥へ進む。

そうして目的の絵に到着――キンキラキンの額縁に納められているのは、それとは正反対に落ち着いた風景。


街角で雨が降る中、一人の少女が傘を差していた。雨は薄い青で描かれ、点描的に赤も混じっている。

街は灰色を基調として描かれ、窓や影などは紫・緑などで描かれていた。そんな中、少女は純白。


白でシルエットだけが描かれているんだけど、雨の中はしゃぐ少女のシルエットが際立っていた。

そこから引いて街全体を見ると各々の色使いが、不思議と調和が取れている事に気づく。

それだけじゃなく各所が点描で描かれているためか、雨で街全体がぼやけている様子が思い浮かんだ。……やっぱいいなぁ。


夜とも昼ともつかない世界で、雨の中楽しげに傘を差す少女。そこには確かにドラマが存在している。


「これが見たい絵?」

「うん」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


フェイト「え、これ書き下ろし?」

恭文「うん。以前読んだ漫画なんかにインスパイアされて、絵画関係のミステリーを描いてみました。
ここはもちろん拍手のアイディアが元になってるんだけど……まずはその一話目」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「おぉ、よく来てくださいましたっ!」


そう言ってこっちへ来るおじいさんが、この美術館の館長さん。結構ふとましい感じで、どすどすって音がしてる。

白いスーツに高そうな腕時計や指輪……気になるところはあるけど、頭の寂しい館長さんとしっかり握手。


「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」

「いえ。それでその」

「ご連絡した通りですっ! ……こちらを」


館長さんは私から手を離し、懐から白い封筒を取り出す。それを受け取り。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


フェイト「これで私が大活躍するんだね、分かります」

恭文「それは無理だよ。フェイトは天然エロ甘だし」

フェイト「エロ甘じゃないよー! ヤスフミの馬鹿ー!」


(ぽかぽかぽか)


恭文「まぁ実際フェイトがなにをやらかすかは」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


本来なら僕が干渉する理由など皆無。でもあの絵は、フェイトとの思い出でもある。それがいきなり偽物へ変化?

さすがに納得できないので、サリさんを呼び出してもう一度あの絵の前に立つ。……もう違和感とかじゃない。

この絵は真っ赤な偽物だ。この美術館はそれに胸を張って、いろんな人に公開している。


でもどうして誰も気づかないんだろう。僕もちょっと首を傾げたけど、一発で気づいたのに。


”――で、俺にそこを調べてほしいと?”

”えぇ”

”お前……そのためにここまで呼び出したのかよっ! こっちは仕事中だっつーのっ!”

”しょうがないでしょ? 生絵を見ないと分からないでしょうし”


こういうのはデータだけじゃあ、ちょい辛いところがあるもの。サリさんもそれが分かるから、腕を組んで軽く唸る。


”確かに。これ……元絵と全然違うぞ”

”分かります?”

”俺もこの絵、見に来た事があるしな。金剛”

”……おかしいですね、サーチの結果では問題なしと出るのですが”

”そうか。だがタッチの力強さや、絵の具の色が違うんだよ。よく見ると、最近描かれた絵だと分かる”


そう、そうなのよ。元の絵は繊細ながらも力強いものがこもっていた。でも今の絵はそれが弱くなっている。

あとは絵の具も若い……っていうのかな。元の絵はもっと静かな感じだったと思う。でもこっちはやや棘がある。

ここはいわゆる経年変化に近いところがあって、それが絵の味になるわけよ。もちろんそう見えるように偽装してはいる。


いるんだけど、門外漢なサリさんでも分かるレベル。つまり……これ、遅かれ早かれ騒ぎになるんじゃ。


”デバイスのサーチすらもかいくぐる贋作ですか、我が身を考えるとゾッとしませんね。
ですが蒼凪氏や主が気づいたという事は、芸術に造詣の深い人間――鑑定士などであれば”

”一発で分かるレベルだ”


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「あー、やっぱりかぁ」

フェイト「やっぱりってなにー! 私がなにしたっていうのかなっ!」

恭文「フェイト、認めようよ。フェイトのポンコツ具合は、みんな知っている」

フェイト「そんな事ないよー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


依頼主はヘンリー・シンプソン――性別は男性で、年は30歳。それが今回の依頼主。

現在売り出し中の画家で、実はクラリス美術館にも絵が飾られていた。……世の中って狭い。

そんな彼が探しているのは、彼が売れる要因となった女性の絵。でも盗まれたわけではないらしい。


あくまでも紛失届とか、そっち方向なのよ。だからこそ局もこれを事件にするつもりはない。

だけどその捜索担当となったギンガさんは、どうすればいいかと頭を悩ませている。

自分は絵画知識もさっぱりで、話を聞いても不明瞭なところが多い。……僕からすると、ギンガさんが不明瞭だよ。


どういう事かと聞いても、『自分が話すより本人から聞いた方が早い』って言うだけだし。

とにかく問題の絵はネットで調べたところ、意外と早く出てきた。タイトルは『愛する人』。

キャンバスの中で金髪ストレート髪の女性が、キンモクセイの樹の下で空を仰いでいた。


画像だけでも鮮やかさと儚げさ同居している色合いで、実に素敵だった。絵全体が、金のシャワーって感じかな。

改めてそこを携帯で確認しつつ、ギンガさんと二人住宅街の中を歩いていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「というわけで、こちらはまた別のお話です。こっちも書き下ろしで……というわけでみなさん、幕間第9巻をお楽しみに」

フェイト「もちろん本編の方も頑張ってるんだよね」

恭文「うん。こっちもびしっとかき上げるから」


(というわけで、またいそいそと……でもミステリーっぽい話も楽しいなぁ。
本日のED:カラス『free』)





セシリア「うぅ……分かりましたわっ! 今日はその、添い寝しましょうっ!」

恭文(A's・Remix)「全く意味が分からないっ!」

セシリア「いいんです。だって……これはあの、お祝いですから。その、添い寝くらいなら」

恭文(A's・Remix)「それは駄目っ!」

セシリア「どうしてですかっ!? わたくしとは、嫌なのでしょうか」(悲しげ)

恭文(A's・Remix)「だってその……ほら、僕は寝てる時に胸を」

セシリア「あ……!」(顔真っ赤)

リインフォース「……どうやら距離はまだまだ遠いみたいだな」

シャマル「確かに……小さい頃から一緒な私達はともかく、セシリアちゃんには難易度高いわよね。思春期だし」


(おしまい)




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あきゅろす。
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