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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第26話 『響鬼の世界/決める道』



恭文「前回のディケイドクロスは」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……あ」


フェイトさんが手に持っていた音叉は、中ほどから真っ二つにへし折れていた。

それを見て私も、なぎ君も、ヒビキさんも、イブキさんですら立ち上がって大声で叫ぶ。


『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


実を言うと私は、さっきの話を全く信じていなかった。だって私はフェイトさんに助けられ、憧れていたわけで。

でも信じるしかなかった。ライダーの変身アイテムを壊したフェイトさんと、真っ二つに折れた音叉を見たら……信じるしか、なかったんだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「……ご覧の有様だよっ! フェイト、どうすんのこれっ!」

フェイト「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

恭文「とりあえずアレだ、もう余計な事はしないように。修行は全部終わってからやるように。
この調子でやってくと本当に駄目だから。カブトの世界のあれこれがパーになるから」

フェイト「そ、それは駄目っ! ヤスフミ、やっぱり私も頑張りたいのっ!」

恭文「カブトの世界でのあれこれはどうしたっ!?」

フェイト「でもその……それはそれ、これはこれだよっ!」

恭文「黙れボケがっ! 手足へし折られて納屋に突っ込まれたいかっ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「フェイト……どうすんのこれっ! 予想通りにやらかしちゃってっ!」

「ご、ごめんなさいっ!」


前回のあらすじ――ご覧の有様だよっ! いや、マジでどうするのっ!? ヒビキさん泣きかけてるしっ!


「あー、うん。いいっていいって。ちょっと戻れば予備もあるし」


とか言いながら、ヒビキさんは必死に折れた音叉をくっつけようとしている。

あぁ、胸に痛い。ガシャガシャという音が胸に痛くて、僕まで泣きたくなってくる。


「くっつかないな、これ。いや、ここをこうやってはめ込めば」

「……僕やフェイトの魔法でも、修理無理だったしなぁ」

≪特殊な音波を出す器具ですし、作りが複雑なんでしょ。どうするんですか、そんなものを壊して≫

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」


謝っても既に遅いので、フェイトの頭を叩いておく。


「とりあえず僕は、あれですね。どうしてあなたがあそこまで言ったのかよく分かりました」

「私も……でもどうしてこの調子で、フェイトさんはクビにならなかったんだろ。というか、JS事件の時はしっかりしてたのに」

「なんでだろうねぇ。多分リンディさんがフォローしてたんじゃないの? 権力で」

「あ、それなら納得……しちゃ駄目だよねっ! 権力でフォローって、完全にアウトだよねっ!」

「イブキさんっ!」


施設の方から慌てた様子で、着物姿のあきらが駆け寄ってくる。全員一旦痛みとか悲しみとか振り払って、そちらを見た。


「あきら、どうしたの。慌ててるみたいだけど」

「すみません、お客様達の前で……これ」


あきらがイブキさんへ差し出してきたのは、白い長方形の封筒。

なにかを察したらしいイブキさんは、それを神妙な顔で受け取る。


「これは……果たし状っ!?」

「斬鬼流の方が、先ほどこちらへ来て」


イブキさんは慌てて封筒を開け、中に入っていた手紙を確認。


「明日10時、下記の場所にて決闘を申し込む。勝った方が巻物を……ついに来たか」

「イブキ、巻物ってなんだ」

「音撃道の三流派に伝わるもので、それを三つ揃えると大師匠が残した宝が手に入ると言われているんです。
同時にその宝を手にしたものは、音撃道を誠に引き継ぐ者となれる。だからなんですよ」

「なるほど、それ絡みで仲が悪いと」

「お恥ずかしい話ですが……斬鬼流のやり方では音撃道が衰退するだけですし、話し合いで済ませようとしたのですけど」

「ふむ」


ヒビキさんは納得した様子で腕を組むけど、すぐに左手で僕の背中を叩く。


「じゃあこうしよう。少年とディケイドが、その巻物を全部手に入れるんだよ」

「……というと、どういう事でしょう」

「いや、だってさ。今の二人はその大師匠なわけだろ? だったらまず大師匠の元に返すのが筋じゃないかな。
それぞれの流派に事情はあるけど、これで無駄な衝突してもアレだろ。全部大師匠の判断に任せるってのはどうだ?」

「それは分かりますが」


さすがにないよなーと思っていたけど、イブキさんが急に僕を真剣な目で見出した。


「恭文君……いえ、大師匠。我が威吹鬼流とともに戦ってはくれないでしょうか」

「僕がっ!?」

「ヒビキさんが仰った通り、巻物を一つに集める時だと思うんです。おそらくみなさんが来たのは、そのため。
そのために例え他の流派が潰れるとしても、それはしょうがない事です。もちろん威吹鬼流が潰れても同じ」

「それでもこんな争いを続けるよりは……と。例えここが潰れても、そうするべきだと」

「えぇ。というか」


まだなにかあるらしく、イブキさんは困り顔でまた手紙を見た。


「手紙によるとあなたのお仲間が斬鬼流に味方し、聞き分けのない他の流派を潰すそうです。
それでやる気満々だとか。大師匠が味方するこちらに正義があると……かなり調子に乗ってるようで」

「はぁっ!? あのバカなにやってんのっ!」

「ヤスフミ、それ駄目だよっ! そんな事したら士さんと戦う事になるよっ!?」


確かにこれは……でもその場合、どうなるかを考えてみる。まずもやしはバカだから、一切加減しない。

クロックアップもあるし、威吹鬼流は全滅必至。ここで僕が出ない理由は……ない。


「……いや、やろうか」

「「えぇっ!」」


なのでそう答えると、イブキさんは深々とお辞儀してくる。


「ありがとうございます」

「ただしイブキさん、幾つか頼みが」


それに恐縮しつつ、お願いをしておく。このまま正面衝突しちゃうとアレだしね。


「こちらが無茶な頼みをするわけですし、聞ける事であれば幾らでもお聞きしますが」


即座にそう答えてくれて一安心。やっぱり根は良識的なんだなぁと、改めて感じた瞬間だった。


「なんでしょうか」

「最初は……こっちからも手紙を送りつけてください。決闘にルールを追加です。いや」


右の指を鳴らしつつ、人差し指をビッと立てる。


「二流派の決闘という形からなくしちゃいましょうか」

「……どういう事でしょうか」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「威吹鬼流から手紙だとぉっ!?」

「はいっすっ! 今届けられたもので」


血気盛んな奴らに乗せられ、手紙を送ってからピッタリ2時間後――奴らからの返答が来た。

トドロキってのが差し出した手紙を、ザンキが鼻で笑いながら受け取る。


「ふん、命ごいでもしてきたか。まぁ軟弱な奴らだし、それも仕方あるまい」

「いや……なんで殺し合いするみたいな話になってんだよ。おかしいだろうが」


俺のツッコミは、当然奴に無視される。だが手紙を開いた途端、奴の表情が一変した。


「……なんだとっ!」

「どうした」

「これを見ろっ!」


相当な事が書かれているんだと思い、受け取った手紙に目を通す。えっと……やるのはOKと。

だがそこに条件を幾つかつけてるな。どうやらこれが、ザンキを怒らせた原因らしい。


「決闘は大師匠のみで行う事。鬼、またはライダーへの変身は不可。相手を必要以上に叩きのめす事も不可。
増援や大師匠以外の闘争も不可。決闘方法は暴力以外の方法で行う事。種目は両大師匠が競技した上で決める。
これに対し、他者は一切介入しない事。……鬼の力は魔化魍を打ち倒し、世の平和を守るためのもの。
それを流派同士の闘争に使うなど、言語道断。音撃道を進みし者として、恥ずかしくない振る舞いをすべし」


もっともらしい言い方をしてるが、こっちの戦力削りに来てるな。だがそれじゃあこの脳筋は納得しないだろ。

なので最後になにかしら付け加えてるだろうなと思い、更に読み進めていく。


「以下の条件が飲めなければ、こちらの巻物は問答無用で焼却処分する。
なお、そちらからの追加要求は一切認めない。返答は熟考した上でされたし」

「卑怯な……これが威吹鬼流の手だっ! 自分達が勝てないと分かって、巻物を人質に取ってきたっ!」

「いや」


誰がこんな面倒くさい事をと考えて、つい口元が緩んでしまう。


「考えたのは蒼チビだな。まぁ面白いから乗ってやるか」

「おい、ふざけるなっ! 我が流派の命運をお前みたいな奴に預けられるかっ!
こんな条件は飲めんっ! 奴らは我が斬鬼流の総力で叩き潰すっ!」

「言っておくが、余計な事をしたら蒼チビは本気でやるぞ」


本気で出られても面倒そうなので、しっかり釘を刺しておく。

最初は鼻で笑おうとしたザンキは、俺が真顔なので言葉を失った。


「争いの根っこは分かってるからな」

「バカな……奴も大師匠だろうがっ!」

「大師匠だからこそ、こんなバカな喧嘩を見過ごせないんだよ。
俺はともかく、奴はやるぞ。そこだけは保証できる」


それで奴はなにも言わず、舌打ちしながら顔を背けた。……それに少し安心してしまった。

ザンキもこれが『バカな喧嘩』って分かってるんだよ。それなりに良識があるらしい。


「まぁ任せろって」


俺は右手で奴の背中をポンと叩き、不敵に笑ってやる。


「悪いようにはしないさ。蒼チビもそのつもりで、条件を出したはずだ」





世界の破壊者・ディケイド――いくつもの世界を巡り、その先になにを見る。



『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路


第26話 『響鬼の世界/決める道』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――イブキさん、また斬鬼流の使いが」

「ありがとう」


いっそ電話でやり取りするべきかと思った僕は、決して間違っていないと思う。

手紙を届けてぴったり1時間後――返しの手紙をイブキさんが受け取り、読み始める。


「大師匠の提案には乗るそうです」

「追加条件は」

「ありません。ですがもし約束を破るようなら、こちらの巻物も燃やすと……ここは予想通りですね。
やはり最後の一文が効いているようです。あなたの狙い通り、二流派で潰し合う事はせずに済む」

「なら良かった」


まず避けなきゃいけないのは、互いの流派が潰し合って共倒れになる事。

その問題は、僕ともやしが矢面に立つ事で避けられた。なのにフェイトとギンガさんは、なぜか不満そう。


「あの、待って。ヤスフミ……本気なの? 駄目だよ、士さんと戦うなんて」

「そうだよっ! なぎ君、なに考えてるのっ!?」

「あのねぇ二人とも、忘れた? 大和鉄騎が――スーパー大ショッカーの人間が、この世界に来てる」

「知ってるよっ! だからこそなぎ君と士さんが、戦っちゃ駄目だって言ってるのっ!」

「だからこそ僕達以上にイブキさん達が戦って、共倒れになったら駄目だって言ってるの。
二人とも、なんのために僕がわざわざ、ライダーへの変身禁止って条件を出したと思ってるの」


しかも普通に戦うのもアウトとしている。もちろんここも理由があって、僕達が共倒れにならないようにするため。

二人の指摘はあまりに筋違いで勘違いと言える。どうしてそれで不満そうにできるのか、理解できないよ。


「僕ともやしなら幾らでも手の抜きようはあるけど、イブキさん達は違うでしょうが。
今までの遺恨がある分、ガチにぶつかったら正真正銘のつぶし合いになる。
これで全員戦えないようになって、その隙に侵略されたらどうするのよ」

「いや、手を抜かれるのは僕的に困ってしまうんですが」

「大丈夫ですよ、勝負自体に手を抜くつもりはありませんから。
それでもっと困ってもらいます。イブキさん、ここでもう一つの頼みです。
実はアスムと会う直前に童子と姫に遭遇してまして」

「それらが育てていた魔化魍がいるかもと」


さすがに察しがいいので、見習おうと思いながらうなずきを返す。


「もしかしたらですけど、魔化魍はスーパー大ショッカーに」

「それはないでしょう。人間と魔化魍が手を組むわけが」

「えぇ、普通ならそうですね。だからスーパー大ショッカーが利用しようとしていたらどうでしょう」

「利用」


イブキさんは腕を組んで軽く唸る。そうして少し考えてから、僕に前のめりの姿勢を取る。


「ありえない話ではないですね。魔化魍自体はある程度出現・行動パターンが決まっています。
もちろん例外もあったりはしますが、そこを用いた上で……だから僕達はそこを追ってほしいと」

「えぇ。僕達でスーパー大ショッカーや周囲の目は引きますから、その間にお願いします」

「ですがそれだと、斬鬼流が妨害する可能性も」

「その場合は巻物を燃やします」


イブキさんの視線が厳しくなるけど、僕はそれを受けても決して揺らがない。

まるで見定めるような眼光が走り続ける事数秒――イブキさんは表情を緩めた。


「分かりました、ならそれで」

「待ってっ! なぎ君、士さんと争うなんて駄目だよっ!
二人が矢面に立つ事で、一気に狙われる危険だってあるのにっ!」

「そうだよっ! ……だったらこうしよう? 私が戦う。私相手なら士さんも手を抜くだろうし」

「あ、それいいですね。それで……斬鬼流のところへは私が行って、私が戦うよ。
そうすれば問題ないよね、ライダー同士でバカな真似する必要もないし」

「いや、そりゃ駄目でしょ」


ヒビキさんがやや呆れながらツッコむと、二人が信じられないと言いたげな顔をする。


「ヒビキさん、どうしてですかっ!?」

「まずギンガちゃんは、怪我してるだろ。それもかなりヒドい怪我だ。そんなので戦ったら、歩く事すら辛くなるぞ」

「……どうしてそれを」

「鍛えてますから」


敬礼っぽいポーズを取って笑ってからヒビキさんは、両腕をテーブルに載せてイブキさんを見る。


「あと、斬鬼流の血気盛ん振りは見てただろ? 手なんて抜いてぐだぐだしたら、向こうがしびれを切らす。
というか、元から許可をするはずがない。これは少年とディケイドが、大師匠だからこそできる事だ。
向こうもこっちも、音撃道の始祖に命運を預けている。誰でもいいわけじゃない……だよな、イブキ」

「その通りです。そういう事をやるのであれば、僕も引くわけにはいきません。
これは流派全体……いえ、音撃道全体の問題なんですから」

「でもこのままじゃなぎ君と士さんが戦う事になるのにっ!」

「ないない。条件に出してるんだから」

「それを向こうが守るとは限らないじゃないですかっ!
夏海さん達が人質に取られてるかもだし、私は絶対に反対ですっ!」


だったらすぐに電話して確認しろと言ってやりたい。あとギンガさん、それは失言だよ。

ほら、イブキさんが不愉快そうな顔を……なんだかんだで喧嘩してるから、相手の事はよく知ってるんだよ。

衝突する事で理解してる部分があって、だから言い切れる。ザンキさん達はそんな事をしない。


やるなら自分達を直接的に叩き潰してくる。そういう確信が、イブキさんにはある。


「ヤスフミ、お願いだから私達の言う通りにして。ヤスフミは戦っちゃ駄目」

「士さんにもそうお願いするし、なんとかなるよ。ここは任せてほしいんだ。
あのね、この争いを止めるのが、この世界でやるべき事なんだよ。
だったらみんなにそんな事しないでってお願いして……そうすればきっと」

「無理だよ。てーか任せられるわけないでしょうが。ヒビキさんをこき使おうにも、フェイトが変身アイテム壊したし」

「がふっ!」


あ、フェイトが吐血した。いやぁ、しばらくコレで黙らせられるな。良い事だ。


「え、こき使うってなにっ!? 俺は変身できてたら、なにか派手に動かされてたわけですかっ!」

「当たり前でしょ。残念ながら僕は、使えるものは親だろうと使う主義なんですよ。
親いないけど。……あーあー、フェイトがあんな事しなきゃそれもできたのに。
魔化魍は鬼じゃないと浄化できないから、僕達が矢面に立つしかないのに」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」

「フェイト、分かった? 僕達が前に出るのは、主にフェイトのせいなんだよ」

「うぅ……ごめんなさい」


紅茶をまた飲みながら、唖然とするヒビキさんは無視。僕は不満そうなギンガさんを見た。


「あとギンガさんは……もう面倒くさいから喋るな」

「私だけ雑すぎないかなっ!」

「でもギンガさんはドMだから、雑な扱い好きでしょ?」

「そんな性癖を披露した覚えがないんだけどっ!」


あの『大体分かった』が、実に素晴らしい人間だと理解できた。だってこの二人、バカ過ぎるもの。

僕の目的は戦う事ではなく、巻物を三本集めてお宝を探す事なのに。……二人は放置で、僕はイブキさんを見た。


「ギンガ、そうなの? つ、つまりその……ヤスフミとそういう関係に」

「なってませんよっ! 未だになぎ君EDなのにっ!」

「それよりもイブキさん」

「なぎ君も無視しないでー!」

「……なんでしょうか」


涙目なギンガさんは完全スルーで、重要なところを釘刺ししておく。


「僕が協力するのは、イブキさんが自分の流派が潰れてもいいって言い切ったから……それは忘れないでくださいね」

「もちろんです」


やっぱりイブキさんも良い人だなぁ。笑顔で言い切ってくれるのが心強い。お陰でやりたいようにできるわ。


「ですが、いいんですか? その、彼女は」

「いいんですよ。ギンガさんはドMなので、こういうプレイは大好物なんです。
前にもお風呂で茹だるというプレイが嬉しくて、気を失っていました」

「それは単にのぼせただけではっ!」

「その話はやめてー! あの、恥ずかしいのっ! やっぱり恥ずかしいのっ!」


とはいうものの、ちゃんと説明しないと……駄目だよなぁ。本当に面倒くさいけど、念話を繋ぐ。


”ギンガさん……本気で分かってないの? だとしたらバカ過ぎでしょ”

”なにがっ!?”

”例の宝、スーパー大ショッカーも狙っている可能性がある”


ギンガさんの表情を見るに、マジで気づいてなかったっぽい。……本当に捜査官? 幾らなんでも鈍い。


”いやね、ちょっと考えたのよ。スーパー大ショッカーは、もしかしたら宝が侵略に役立つ兵器かなにかと考えてるのかなって。
そうだとしたら、お互いの流派がバラバラな現状はマズいでしょ。各個撃破で巻物が奪われる危険もある”
しかもここへ来たのは大和鉄騎――クロックアップがある。二人に任せてたら、無意識のうちに殺されるよ”

”つ、つまり?”

”僕ともやしならクロックアップはできるし、大和鉄騎にも対抗できる。
僕達が矢面に立って、一時的にでも流派のいがみ合いを止めるのよ。
それで……介入してきた奴らを、流派の宝を狙う共通の敵として倒す”


そうしたら奴らはどうする? 当然僕達を襲ってくるよ。僕達の存在は、明らかに邪魔だもの。

でもそれこそが狙い。そうなったら響鬼流を除いた二流派は、巻物を守ろうとする。

大師匠な僕達が音頭を取れば、総力戦に持ち込める。各個撃破されるよりは危険度が少ないでしょ。


お宝を見つけるのはその後の話だけど……とにかくやるべき事は、二流派の衝突を止める事。

スーパー大ショッカーという第三勢力に脇を取られないよう、僕達が主導で動いて二流派をまとめる事。

これはそのための足がかり。正直完璧な作戦とは言いがたいけど、それでもやるしかない。


初対面な僕を信じてくれたイブキさんやあきらのためにも、ここは気張るところでしょ。


”で、でもそれならみんなに話して”

”無理だよ。今までの遺恨もあるから、きっかけがないと多分結びつかない。
イブキさんは大分信じてくれた様子だけど、斬鬼流の方はなぁ。だからこれでいく”

”……なぎ君、いろいろ考えてたんだ。あの、ごめん。私”

”大丈夫、ギンガさんはドMだもんね。叩かれて罵られると感じちゃうもんね。
だから自分から前に出て、バカをやって叩かれがってるだけだよね”

”そんな性癖はないよっ! 本当だよっ!? 私、まだバージンだしっ!
確かになぎ君のお手伝いしたり、私がされたりしたけど……それ以上はないんだからー!”


それで僕は、いつの間にかすり寄ってきたダブタロスを左手で撫でる。……やっぱり可愛いなー。


”じゃ、じゃあいいよ”

”え?”

”なぎ君のED、治すって約束したものね。私を叩いていじめて……治るなら、それでいいよ。
よく考えたら今までそういうの止まってたし、今日は……どうかな”


いきなり顔を赤らめてそんな事を言うので、僕は素晴らしい笑顔をギンガさんへ向けながら。


”バカ言ってんじゃないよっ! そんな余裕ないっつーのっ!”

”です……よねー”


一刀両断するのだった。……そういや、そんな設定もあったなぁ。すっかり忘れちゃってたよ。

とにかくもうちょっと煮詰めるか。途中でどんな妨害が入るか、分かったもんじゃないし。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それから少しして――現在俺はフェイトちゃんとギンガちゃんを連れて、写真館へ移動中。

少年はイブキとなにやら煮詰めるらしく、今日はあのまま泊まりだとか。

で、俺が写真館まで送っていく事に……本気でこき使ってくれる感じだよなぁ。容赦がない。


「……どうしたらいいんだ」


それでたまたま通りがかった小さな神社で、二つの人影を見つけた。

その一つに見覚えがあるので、ちょっと近づいてみる。……あぁ、やっぱり。こっちの世界のアスムだ。

だが隣にいる男は誰だ? いや、待てよ。確か紅から見せられたな。えっと……ヤバい、ど忘れしてる。


「フェイトさん、アレ」

「アスム君? というか……海東大樹っ!」


海東大樹……あ、なるほど。ディエンドってやつか。その左隣で少年は落ち込みながら、賽銭箱手前の階段へ座り込んでいる。

ディエンドはそれを意に介さず、地図かなにかを見ていた。一緒にいるのに、見事なバラバラ具合だな。


「とりあえず巻物かなぁ。ここはやっぱり他の流派を狙うべきかな」

「巻物なんてどうでもいいんです。それより僕は、ずっとヒビキさんの弟子でいたかった。
なにをやっても駄目な僕に、ヒビキさんだけは『才能がある』って言ってくれたんです。……鬼になる才能が」

「それは良かったね」

「――フェイトさん、破門って」

「そんな……あの子、あんなにあの人を慕っていたのに。酷いよ」


フェイトちゃん、落ち着けって。そんな拳ギリギリ握っても駄目だって。結構激情家なんだなぁ。


「でも、破門されてそれも不可能になりました」

「とりあえず僕は、斬鬼龍と威吹鬼流の巻物を奪ってくるよ」

「……話聞いてましたっ!? てゆうか、そんなの不可能に決まってるじゃないですかっ!」

「どうかな」


ディエンドは立ち上がって数歩進み。


「やる気さえあれば、不可能な事なんてこの世にはないと思うけど」


少年へと振り向いた。それで少年は、ハッとした顔をし始める。


「そう言えば、ヒビキさんも同じような事を」

「まずは動かないとね。動けばなにかが始まるさ」


そんな少年に笑いかけながら、ディエンドは左手で銃を撃つ仕草をする。


「少年君」

「……はい」

「「『はい』じゃないよっ!」」


そこでフェイトちゃん達は声を揃えて、二人へと駆け足で迫っていく。


「あなた達は」

「おや、これはこれは……フェイタロスとギンガウーマン、奇遇だね」

「私、いつの間にそんなあだ名にっ!? ……って、そうじゃないっ!
海東大樹、あなたまた泥棒なんてしてるのっ! いい加減にしてっ!」

「そうですっ! 人から大事なものを奪って、心が痛まないんですかっ!?」

「なぜだい?」


うわ、そこでそれ聞いちゃうのか。みんなの方へ走りながら、軽く苦笑いしてしまった。


「なぜだいって……もういいっ! あなたが仮面ライダーなんて、認めないっ!」

「意味が分からないよ。仮面ライダーに基準なんてあるのかな」

「ありますっ! 仮面ライダーはみんなのために戦う、正義の味方ですっ!
細かい理屈なんてどうでもいいっ! それが私達にとって当然なんですっ!
そうだ……あなたが持っているあの銃、渡してくださいっ! それで私が」

「変身する? 残念だけどそれは無理だよ。君は弱いんだから」

「……バカにするなっ!」


フェイトちゃんが懐に手を伸ばし、金色三角形のアクセサリーを取り出す。

それが輝き始めた瞬間、ディエンドの右手が動いて長方形型の銃を掴む。

どこからともなく現れたそれから、弾丸が放たれてフェイトちゃんのアクセサリーを撃ち抜く。


手元で激しく火花が走ったと思うと、アクセサリーは高くはじき飛ばされた。フェイトちゃんは右手を押さえ、その場で尻もちをつく。


「フェイトさんっ!」


ギンガちゃんがフェイトちゃんへ駆け寄っている間に、ディエンドは銃を持ち上げながらくるりと一回転させる。


「フェイタロス、身のほどは弁えるべきだよ。君じゃあお宝は使いこなせない。
というか、こんな場所で戦うつもりかい? 少年もいるのに、不用意だねぇ」

「そんな……事ないっ! その銃は私達が使った方が、いろんな人を守れるっ!」

「……海東さん、お願いですからそれを渡してくださいっ! フェイトさんならきっと使いこなせますっ!
フェイトさんは局に認められたオーバーSで、10年以上も前線で戦ってきたんですっ!
そうすればきっと、なぎ君のかわりに大和鉄騎と戦う事だってできるっ!」

「大和鉄騎? ふふふ……ふははははははははははははっ!」


ディエンドはアイツの名前を聞いた途端、腹を抱えて大笑いし始めた。それでフェイトちゃんの表情が、一気に険しくなる。


「君が、アイツとっ!? それはどんなジョークだいっ! あははははははははっ!」

「なにがおかしいんですかっ! ヤスフミがアイツと戦ってる時、どんな状態だったか知らないくせにっ!」

「なら今ここで戦った結果、どういう状態になるのか君は知っていたのかい? よく周りを見たまえ」

「話を逸らすなっ! いいからそれを渡せっ! 私がそれを使えば、もっとたくさんの人を守れるっ!
大和鉄騎だって必ず倒せるようになるんだっ! そうしなきゃ……またヤスフミがあんな顔をするっ!」

「そこにいる彼を、巻き添えにしてもかな」


ディエンドが目を細めて固い声を出すと、フェイトちゃんが顔を青くして辺りを見回す。

……そうだ、あのまま攻撃していたら、アスムも巻き添えにしていた。ディエンドはそれを『不愉快』だと感じている。


「もう一度言う、君では無理だ。欲しいものを手にするための努力もせず、ただわめき立てればいいと思っている。
君は相当甘やかされてたんだねぇ。自分が正しくて凄いと誰もから認められていなかったら、そこまで歪まない」

「私が、歪んでいる?」

「君は欲しいものを前に、駄々をこねる子どもと同じなんだから。そんな君に、僕を批判する権利はない。
少なくとも僕は君達のように、お宝を手に入れるための努力を惜しんだ覚えはない」

「二人とも、そこまでだ」


完全に論破されているのに掴みかかろうとした二人を右手で制し、俺が代わりに奴へ近づく。


「あー、ディエンド……だよな」

「……へぇ、驚いた。別世界の響鬼まで来ていたとは。てっきり士や少年君を見殺しにすると思っていたのに」

「その罪滅ぼしとしてな? まぁこっちの事とか分かってるなら、話が早い。
……お前はやっぱスーパー大ショッカーについて、かなり詳しいわけか」

「さぁ、どうだろうね」

「知らないはずがないだろー。そのディエンドライバー、元々誰の物だ?」


今まで飄々としていたディエンド――海東の表情が、そこでやや険しくなった。

だがすぐに元の表情へ戻って、そのまま俺達の脇を抜けていく。


「できればそこも、心開いて話してくれると嬉しいんだがなぁ」

「知っているのなら、必要ないだろう? ……少年君、邪魔は入ったが僕は行くよ」

「は、はい。ありがとうございます」


少年は慌てて、立ち去っていくディエンドへお辞儀。……このわけ分かんない状況で、よくやるよ。良い子なんだろうなぁ。


「そうそうフェイタロス、君のお宝の心配、しなくていいのかな」


そう言われてフェイトちゃんはハッとした顔をして、あのアクセサリーがはじき飛ばされた方を見る。


「……バルディッシュッ!」


そこには黒い煙をあげ、中心部に大きめの穴が開いたアクセサリーがあった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


海東が元座っていた場所へ腰を下ろし、フェイトちゃんが今にも泣きそうな表情でアクセサリーを握り締める。

どうもこれがその、デバイスってやつらしい。海東はそれをねらい撃ちして、壊したってわけだ。


≪……申し訳ありません、中枢基部と基礎フレームをやられました。
セットアップ不能――自動修復も、このままではひと月近くかかります≫

「そんな……!」

「じゃあフェイトさん、魔法を使っても戦えないのっ!? バルディッシュ、なんとかならないかなっ!
例えば……あ、なぎ君に修理部品作ってもらうとか。そうすれば」

≪無理です。部品があっても技術者がいません。別世界の彼がいれば、まだよかったのですが≫


あー、あっちは放置でいいか。俺はまぁ、な? 機械とか基本苦手だから。それよりも、申し訳なさげにしてるアスムだ。


「あの、もしかしてご迷惑を」

「あー、いや。少年……てゆうか、アスムは気にしなくていいから。な?」

「は、はぁ」

「それより、破門されたんだってな」


これで気に病まれてもあれなので、話を逸らす。それでアスムは、やや困り気味に頷いた。


「そうか。まぁ少しキツい事を言うが、俺も海東――アイツと同じだ」

「え」

「少年が師匠を慕っているのは、よく分かる。だが弟子ってのは、いずれ師匠を超えて独り立ちするもんだろ。
もちろん今がその時かどうかは別だが、それでも前提は変わらない。
なにより……自分の道を自分で決められない奴が、どうして人の道を守れる」

「人の、道」

「あぁ。俺達の仕事は、みんなが自分で自分の道をこう」


上手く説明できないのに苦笑しつつ、俺は右拳を前に突き出す。


「堂々と進めるように? そのために頑張るんじゃないかな。
だから俺達は鍛えて鍛えて鍛え抜いて……自分の道も、堂々と進んでいくんだ」

「ヒビキさん」


アスムは階段から立ち上がって、俺へと向き直って頭を下げてくる。


「ありがとうございます」

「あー、そういうのはいいって。なんかほら、説教臭かったしさ。だが……やってみたい事は、あるのか?」

「はい。そのためにもまずは、動いてみます」

「おう、頑張れよ」


いつもの敬礼ポーズをやると、アスムは笑いながらそれを不器用に返してきた。

それがまたなんか可愛くて、右手で頭を思いっきり撫でてやる。……さて、やっぱ放置も無理か。


「なぁ二人とも」

「は、はい。あのヒビキさん、ヒビキさんからも海東さんを説得してもらえませんか?
泥棒のためにライダーの力を使うなんて、やっぱり」

「そりゃ無理だろ。……確かに少年の空気は普通じゃなかった。だが二人がその間に割って入る事は、無理だ。
もちろんあんな凡ミスやるような奴に、ディエンドの力は使いこなせない。二人だって本当は、そこ分かってるんだろう?」

「そんなの……分かってます」


分かっているけど……そう言いたげにフェイトちゃんは俯き、涙をボロボロと零し始める。


「でも駄目なんですっ! ユウスケさんもおかしな事になってて、その上あんな人まで出てきたら、やるしかないんですっ!
無理でもなんでも、今すぐ戦えるようにならなきゃいけないんですっ!
私、怖いんですっ! このままだとヤスフミもユウスケさんも、戦いの中へどんどん引きずられそうでっ!」

「ユウスケ――クウガの事もあったか。だからそんなに焦っていたと。じゃあもしかして」

「……はい。昨日の話だと戦う事そのものが、究極の闇になるトリガーかもと言ってたので」


つまり小野寺ユウスケを下がらせて、自分が戦えるようになろうとしたわけか。それで前の世界で見つけた答えが吹き飛んだ。

いや、そもそも答えそのものを出した前提が、大きく変わったからなぁ。改めて考えたらそうなったと。


「でもなぁ、やめといた方がいいと思うぞ? ほれ、それやってまた壊してもアレだし」

「はうっ!」

「確かにフェイトさんには……フェイトさん、本当にどうやって仕事できてたんですか。普通クビですよ、クビ」

「う、うぅ」


軽い冗談のつもりだったんだが、そんなヘコむか。まぁその分気にしてくれているから、悪い気持ちはしない。

……意地悪してるみたいで辛いが。その様子を見て、妙な安心を覚えつつ立ち上がる。


「よし、やっぱ鍛えてみるか」

「え?」


それで両手を胸元でパンと合わせてから、腰に当てて軽く伸びをする。


「まぁほら、俺も変身できなくなっちゃったし? 少年は忙しそうだし、ちょっと訓練するくらいならいいだろ。
……鍛え足りないのなら、もっと鍛える。過去の栄光云々は抜きに、今の自分ときっちり向き合ってな。まずそこからだろ」

「……はい。でも、なにをすれば」

「俺の日課メニュー、一緒にやってみるか。なので明日は早起きだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


夏海ちゃんにはああ言われたが、やっぱり気になってもう一度ヒビキさんのところへ行く。

すっかり暗くなった夜道が若干怖くあるが、それでも懐中電灯片手に河原へとたどり着いた。

するとそこから良い匂いが……おいおい、ホントにラーメン作ってんのかよっ! これ、とんこつの匂いだよなっ!


こっちのヒビキさんは、ずん胴鍋の前で難しい顔をしていた。懐中電灯のスイッチを消して、そのまま近づいていく。


「なんだ、まだラーメンはできてないぞ。これから夜通し煮込まないとなぁ」


それでこっちも見ずに、近づいているのに気づきやがったし。やっぱこの人、ただ者じゃない。


「随分と慌てん坊な二人だ、そんなんじゃ女の子にモテないぞ」

「ほっといてくださいっ! てゆうか、これでも学生時代はモテモテ……二人?」


俺はハッとして、後ろへ振り返った。すると木の陰から昼間と同じように、海東さんが出てくる。


「海東さんっ!」

「やぁ、おのD君」

「なんか変な略され方してるっ!? てゆうか、なにしに来たんですかっ!」

「もちろん、巻物をもらいにね。あとはそろそろラーメンができてるかなと」


そこ目当てっ!? ……相変わらず考えが読めない。なんだかんだで悪い人じゃないと思うんだが。


「で、なんの用だ。ラーメンだったらできてないが……あー、そっちのおのD君の方な?」

「それ定着させないでくださいよっ! ……アスムの事、どうして突き放したんですか」

「なに、破門にしたかっただけだ。アイツはなにかっていうと俺の後ばっかり追い回してたからなぁ」

「そんな言い方ないじゃないですかっ! アスムはあなたの事を」


そこまで言いかけて、もう一度あの人を見る。あの人は遠い目をしながら、鍋の中をずっとかき混ぜていた。

その瞳は昼間に、少しだけ見た色を含んでいた。なにを考えているか、それですぐ分かった。


「……もしかして、それが原因ですか? アスムはもしかして、あなたに対して甘えているとか……依存しているとか」


そう聞いてもあの人はなにも答えず、ただ鍋をかき回す。だが否定しないところを見るに、冷たいどうこうじゃないらしい。

まぁ今日会ったばかりだから、あんま断定的な事も言えない。だけどこれくらいしか思いつかない。

ヒビキさんが冷たい人なら、俺達と会う前にアスムを切り捨てているはず。いや、そもそもそうするかどうかも怪しい。


あれだけ献身的な弟子なら、利用する手段は幾らでもあるんじゃないかな。でもそうしなかった。

この場合考えられるのは、アスムがよっぽど使えないか重大なミスをした。まずここが一つ。

もしくは……破門する事で距離を取り、成長を促している。ようは自立とかそっちの問題か?


俺には鬼における師匠と弟子が、どういうものか今ひとつ分からない。分からないこそ考えるんだ。

俺達からすれば微笑ましいアスムの状態は、ヒビキさんから見るとまた違うのかなと。


「それだけじゃないよ。彼はもう鬼に変身できない」

「え……はぁっ!?」


やっぱり根は悪い人じゃないんだと確信していると、海東さんから予想外の爆弾が投げられた。


「少年君から聞いていないのかい? 鬼になるためには、科学的とは真逆な訓練が必要になる。
鍛え抜くっていうのは、身体も心も徹底的に叩いて叩いて叩きまくる事だからね。
彼らの『変身』は僕や士、他のライダー達とはまた違う。どちらかと言えばおのD君、君に近い」

「人じゃなくなる、そういう事ですか」

「いや、そういう土台を鍛えて作る。彼らの音叉や笛は、その土台がある上で効力を発揮するんだ」


でもそこで恭文の話をするって事は、アイツなら分かる事……なのか?

察するにテレビの響鬼でも、そこの話をしていると。海東さんは俺へ頷いてから、もう一度ヒビキさんを見た。


「ただその分、身体への負担も大きい。一度の変身でも、かなり体力を消耗するらしいんだよ。
だから鬼としての活動期間は、長くて10年前後。大体30代を超えたら、鬼としては賞味期限切れだ。
普通はその前に弟子を見つけ、技を伝えた上で引退。鬼としての名前も弟子へ渡す」

「で、でもそれならもう一人のヒビキさんはっ! あの人だって同じくらいでしょっ!」

「アレは特殊例だよ。もしかしたら賞味期限切れなのに、無理をしているだけかもしれない」

「その通りだ」


ヒビキさんは鍋から目を離し、満天の星空を見上げ寂しげに笑った。


「俺はもう鬼として戦えない。変身、できなくなってる」

「じゃあそれで……ならアスムにちゃんと話せばっ!」

「そんな事をしたらアイツは結局、俺の後を追う。
それじゃあ駄目なんだよ。……アスムは、どうしている」

「心配ない。彼にもちゃんと、自分だけの譲れないお宝があるみたいだからね」

「そうか」


海東さんの言葉に、安心した表情を浮かべてヒビキさんが動く。

一旦テントへ戻ったと思うと、そこから海東さんへなにかを投げてきた。

海東さんが慌ててキャッチしたそれを見ると、巻物に音叉……巻物っ!?


ま、まさかこの古そうな巻物は、例の宝が書いてるってやつかっ!


「ヒビキさん、なにやってるんですかっ!」

「見ての通り、巻物と変身音叉だ。海東、アスムなら大丈夫と思ったら、音叉を渡してくれ。
今日からお前が響鬼だと言ってな。巻物はお前の好きにしていい。そんなものがあっても、流派同士が争うだけだ」

「いいのかい? 物凄いお宝かもしれないのに」

「そうですよっ! コイツ泥棒ですよっ!?」

「若者達、一つ良い事を教えてやろう、宝の価値は人それぞれだ。
例えばここに、物凄く高額な古い壺があるとしよう」


鍋の前に戻りながらヒビキさんは、両手を動かしてここにはない壺のサイズを示してくる。


「それは壺を大事にしている人間からしたら、生命よりも大事なものだ。
だが人によってはただの古臭い壺――つまりはそういう事だ。
それはあるだけで争いを生み、若者達の未来を奪う。だからそんなもの、俺にはいらん」

「ならアンタにとってのお宝はなんだい? 僕にこれを渡したら、それを壊すかもしれない」

「お前さんはそんな事、しやしないよ」

「どうしてそう言い切れるのさ」

「価値が分かるって事は、なにが本当のお宝か知っているって事だ。だからお前は追い求めている。そうだろう?」


海東さんはその言葉に曖昧な笑みを返し、そのまま森の中へ消えていった。

辺りには一瞬静けさが戻り、鳥や虫の鳴き声、川のせせらぎが響いている。


「あの」

「いいか悪いかで言えば、いいんだ。俺達はもうそろそろ、若い連中に譲らなきゃいけない」

「音撃道を、でしょうか」

「いいや、違う。奴らが自分の道を歩くために、一歩横にずれるだけだ。……俺達の師匠が、そうしてくれたようにな」

「なら」


なぁ士、恭文、俺達がこの世界でできる事は……ほとんどないみたいだぞ?

みんなそれぞれに道を決めていく、強さを持っているらしい。アスムもヒビキさんも……きっと他の人達も。

そんな中で俺ができる事はなにかと、やっぱり無駄でも考えてしまう。そうして出た結論は、一つしかなかった。


「ラーメン、作っててください」

「無論そのつもりだが、どうしてだ」

「アスムを連れてきます。今のアスムじゃなくて、鬼になって自分の道を進み始めたアスムを……必ず」

「そうか。まぁ、気長に待ってるよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


その後俺は家に戻って、士と恭文に相談。なんだかんだで俺達は三方に分かれて、それぞれの陣営を見ている。

その上で情報交換をしようと思ったんだが、それは正解だった。……あー、恭文は泊まりなので電話越しだ。


『アスムが自立するために……ねぇ。まぁそれは成功っぽいけど』

「だな。それで恭文、イブキさんも同じ感じなのか」

『うん。この機会に巻物を集めて、今までの遺恨とかをきっちり終わらせようって事みたい。
その結果自分の流派が潰れてもかまわないって、言い切ってたよ。もやし、そっちは』

「二つの流派を叩き潰す感じだ」


つまり自分達が宝を手にして、真の後継者に……もし説得するとしたら、斬鬼流が優先か?


「だが向こうは向こうで、やり方はともかく決着つけたいってのは同じらしい。それに意外と悪い奴でもなさそうだしな」

「そうか。……話し合いじゃあ、無理なんだよな」

『無理だろうね。まぁ当然だけど、僕達が来てから喧嘩していたわけじゃないでしょ?
積み重ねがあるし。しかもそれは、流派全体の話。決して個人個人じゃない』

「そんな中で争いを終わらせるって事は、全員にそういう納得をさせるって事だ。
大将が話して問題なしじゃあ、それはできない。だから俺達が動くしかないってわけだ」


大将ならとも思うが、士の言いたい事も分かる。例えば現場に出ないサポーターが、別流派に嫌がらせを受けたとする。

ここはあれだ、道を譲らないとか因縁つけられたとか、なんでもいい。そうしたらその人はどう思う?

当然その流派に恨みや怒りを持つ。あとは話が広まって、仲間も感情を共有するかもしれない。それが積み重ねだ。


流派全体が別流派を、例外なく敵と見なしているのが現状。それを変えるなら、やっぱりみんなを納得させなきゃいけない。

……だから士達が大師匠になってるんだな。大師匠の判断なら、各流派に対して説得も可能。

同時にそういう怒りの共有ができるほどに、流派やそこにいる人達へ愛着が持てるなら……と。


なんにしてもどでかいイベントを起こして、それでなんとかしないと駄目って事か。それで三師匠も、そこは一致している。

ヒビキさんはアスムを破門し、今後の方針やらなんやらを自分で考えさせようとしている。……多分。

ザンキさんは各流派へ喧嘩を売る形で、イベントを勃発させる。イブキさんはそれを受けて立った感じか。でも……面倒だなぁ。


「ただまぁ」


士はため息を吐きながら、テーブルに頬杖をつく。


「ギンガマンや夏みかんは、理解できないらしいが。蒼チビ、どうにかならないのか。
話し合いでどうにかしろって言いまくってたんだぞ。てーかこれからも言われるぞ」

『女性だからなのかねぇ。女性は現実主義者であり理想主義者って、どっかの誰かが言ってたよ』

「なんだそれ。とにかくまぁ、そういう事なら話は早い。俺達がそのケジメになりつつ」

「流派同士のいがみ合いを、終息させる方向で動くんだな」

「そういう事だ。あとは海東がどう動くかだな。これで下手に巻物奪われたりしたら、それをきっかけにバトル再開だぞ」


とにかく俺達の目的は、巻物を一つところに集める事。それは海東さんも変わらない。

だがその所在がどう動くかで、この緊張状態が悪い方向へ動く事も考えられる。……明日が正念場ってやつか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


翌日――俺は朝早くに斬鬼流の道場へ向かい、来るべき決闘に備える。……が。


「士くん、彼と戦うなんて絶対にいけません。何度言えば分かってくれるんですか」


余計なのが来ていて、朝練している奴らを横目にぎゃーぎゃー騒いでいる。


「お前しつこいんだよ。あと変身しないって、何度言ったら納得するんだ。
俺も蒼チビも、そういう形では決着つけたりはしないよ」

「そんなのどうなるか分からないじゃないですかっ!
とにかく仲間同士で別の立場に立つというのが、ありえないんですっ!」


それで空気の読めないバカみかんは、ザンキの奴に詰め寄っていく。

ザンキは正拳突きを繰り返す門下生に、厳しい視線を向け続けていた。


「あの、お願いですからこんな事はやめてくださいっ! ライダー同士で争っている場合じゃないんですっ!
スーパー大ショッカーが迫ってるのに、そんなヒマはありませんっ! お願いですから私達の言う事、聞いてくださいっ!」

「女は黙ってろっ! これは音撃道の行く末を決める、大事な試合だっ!」

「女性差別ですよ、それっ! というか、あなた達は仲間なんですよねっ!
同じライダー同士なのに、どうして仲良くできないんですかっ! そんなのおかしいですっ!」

「えぇい、やかましいっ! いいから引っ込んでろっ!」

「そうだぞ夏みかん、空気を読め。もうここはこうするしかないんだよ」


おいおい、なんで首を横に振るんだよ。なんでそこで更に詰め寄るんだよ。ザンキがうざったそうにしてるぞ。


「引っ込んでいるわけにはいきませんっ! それなら私が戦いますっ!
士くんがOKなんですから、問題ありませんよねっ!
向こうもきっと、ギンガさんが動いてくれていますっ!」

「そんな真似できるかっ! 貴様は大師匠でもなんでもないだろうがっ!」

「なんて聞き分けのない……!」

「いや、そりゃお前だろ」


俺のツッコミ無視で夏みかんは、右手を挙げて親指を立てる。それをザンキの首すじへ突き立てた。


「きゃあっ!」


……かに思われたが、ザンキは夏みかんの手を取って思いっきり投げ飛ばした。

夏みかんは背中から道場の床へ叩きつけられ、呻きながら身体を起こす。


「なに、するんですかっ!」

「いや、そりゃコイツのセリフだろ。いきなり実力行使に出る奴がいるか」

「その通りだ。……もう俺は年だ。偏屈に喧嘩してるのも疲れた。だがアイツらは若いし、未来がある」


そう言ってザンキは夏みかんを一瞥。懸命に突きを続ける門下生達を、もう一度穏やかな瞳で見た。


「今の勢いで喧嘩していたら、時間を無駄に食いつぶす事間違いなしだ。だからここでケジメをつけたいんだよ」

「そう思うんなら、話せばいいじゃないですかっ! なんでそんな簡単な事ができないんですかっ!」

「それも無理だ。いや……俺達が無理にしちまった。お前には分からないだろうが、三流派の争いはもう何代も続いている。
話し合いどうこうで止まるほど、浅い因縁じゃないんだよ。だから全部をぶち壊さないといけない。
……俺は勝負の結果を問わず、鬼を引退するつもりだ。三つに分かれた流派を、一つにまとめ上げた上でな」


それは予想外の答えで、俺も思わず驚いてしまう。夏みかんも立ち上がりながら、意外そうな顔でザンキを見始めた。


「これはそのために必要な事だ。最後にお互い遺恨がないよう、徹底的にぶつかる。
大師匠がこっちへ来て、最初は半信半疑だったが……これが一番だと、一晩かけて考えた」

「一番なわけありませんっ! どうして……どうしてなんですかっ! こんなの無駄ですっ!
そういう気持ちなら、相手と話せば全部解決するはずですっ! それなのにどうしてっ!」

「何度も言わせるな、積み重ねがあるんだよ」

「それだって話せば解決しますっ! その気持ちがあるのに、どうしてこだわるんですかっ!
くだらない事は水に流して、仲良くすればいいじゃないですかっ! これが本当の一番ですっ!
お願いですから、士くん達を道具にしないでくださいっ! あなた達は卑怯ですっ!」

「夏みかん」


また詰め寄ろうとした夏みかんを後ろから掴み、ザンキから離していく。

てーかザンキの空気が、一瞬で変わった。これ以上続けさせたら、投げられるだけじゃすまない。


「士くん、離してくださいっ! 私には分かりませんっ! ライダー同士が戦うんですよっ!?
それを止めるのが私達のやるべき事ですっ! そうじゃないですかっ!」

「分からないなら、もう黙ってろ。……俺達は所詮通りすがりだ。
コイツや他の連中の積み重ねを否定する権利なんて、基本的には持ちあわせてない。
お前はコイツらの間でなにがあったか、何一つ知らないだろうが。いい加減にしとけ」


夏みかんは不満そうにしているが、それでも黙って引き下がってくれた。

ザンキもそれを感じて、怒気を収める。それに一安心したが、安心するところはもう一つある。


「……だがそのために、斬鬼流がなくなってもいいってか」

「構わんさ」

「お前、意外とまともだったんだな」

「うるさい」


このおっさん、やっぱそこまで悪い奴じゃないみたいだな。ここがもう一つの安心だ。これなら。


「邪魔するよ」


だがその安心をぶち壊す奴が、土足で道場内に上がり込んできた。

そいつ――海東は飄々とした顔のまま、門下生の間をすり抜けこちらへ来る。


「海東、お前なにしに……聞くまでもないか」

「あぁ。音撃道の宝――そのありかを示す巻物、僕に渡してくれないかな」

「……なに」

「あなた、まだそんな事してたんですかっ!」


おいおい夏みかん、復活するのかよ。もうお前、面倒くさいから黙っててくれよ。


「人の物を奪ってどうこうなんて、駄目ってどうして分からないんですかっ!」

「残念ながら、お宝を守るのが僕の使命なんでね」

「意味が分かりませんっ! あなたは人から大事なものを奪って、壊してるだけですっ! ……えいっ!」


また夏みかんは親指を立てて、海東の首筋へ突き立てようとする。だが海東は反時計回りに回転しながら、それをひらりと避けた。


「士じゃあるまいし、そんなの通用するわけない」

「避けないでくださいっ!」


再度首筋に指を打ち込もうとした夏みかんだが、その眉間に銃口が突きつけられた。

海東はいつの間にかディエンドライバーを抜き、夏みかんを狙っていた。それで全員の動きが停止してしまう。


「邪魔しないでくれたまえ。こっちには時間がないんだ」

「おい海東、夏みかんがKYでイラつくのはよく分かるが……そりゃやり過ぎだろ。てーか時間がないってなんだ」

「ヒビキという人は、もう鬼になれない」


そこは昨日、ユウスケから聞いていた話だ。なので俺はあまり驚かなかったが、他は違う。

風呂に入っていた夏みかんや、ヒビキとそれなりに付き合いがあるザンキ達は驚いていた。

それで道場内がざわつき、全員がどういう事かと海東を見る。


「向こうもアンタと同じ事を考えて、少年――アスムを僕に預けてきた。それで」


海東は左手で懐から、古びた巻物を取り出し見せつけてくる。


「それは……まさか、ヒビキがお前に預けたのか」

「そうだ。少年は自分の道を決めた。巻物はそのために必要なもの――だから渡してくれ」

「では一つ聞かせろ。お前はなぜアスムのために、巻物を欲する」

「決まっている」


海東は銃口を下げ、ディエンドライバーを懐へしまう。それから右手を挙げ、銃を撃つ仕草を取る。


「お宝を手に入れ、守るためだ。お宝は……決して失われてはいけない」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まだ朝も早いこんな時間から、川辺で鍋と向かい合っている男がいる。

しかもなかなかに良い匂いが、あそこから漂ってくる。……不覚にも腹が減ってしまった。


「昨日に続いて、千客万来ってやつか?」


それで奴は後ろから近づいてくる俺は見ず、そう言ってきた。

……一応気配は消していたのに、気づくか。さすがに油断ならんな。


「なんの用だ、ラーメン目当てなら待っていてくれ。もうすぐできあがる」

「ヒビキ……だな。すまんがお前の持っている巻物、俺達に渡してくれ」

「それは無理だなぁ」

「ほう」


まぁそう来るだろうとは思っていた。しょうがないので暴れようかと思うと、奴は俺へ左手をかざす。


「おっと、暴力はよしてくれ。無理なのは、『渡せない』という意味じゃない。
……持っていないんだよ、音叉は海東とか言う奴にあげた」

「あげた? バカを言うな、アレはお前達の師匠が残した大事な宝だろう」


海東ならば盗まれる……いや、それはないか。奴は生身でも相当な実力者だ。

海東も腕が立つ方だとは思うが、それでも奴から盗めるものはない。あげたのは事実だろう。


「そうだな。だが俺にとっては、なんの価値もない紙切れだ。だから奴に渡して、流派同士の闘争を止めてもらう」

「なるほどなぁ」


普通の奴なら『ふざけるな』と言うところだが、俺は不覚にも納得してしまった。奴が嘘を言っているようには思えん。

なによりこちらへ顔すら向けてはいないが、そういうハッタリをする奴ではない。それは立ち居振る舞いを見てなんとなく気づいた。


「確かに物の価値というのは、人それぞれだ。そんな変わり者がいたとしても、不思議ではない」

「分かってくれて嬉しいよ。というわけで」

「すまないなぁ」


納得はしたが、それは些細な事。20メートルほどの距離を埋めるため、構わずに前進する。


「俺達はそれで納得するわけには、いかないんだよ。
お前が本当に巻物を持っていないか、確かめなくてはいけない」

「おいおい、やめてくれよ。俺はもう鬼じゃない、ラーメン屋志望の親父だぞ」

「更にすまないが、それは開店前に潰れる。お前達ライダーは、抹殺しなければならない」


左手を挙げ、どこからともなく飛んできたカブティックゼクターをキャッチ。それを右のリストバンドに当て。


「そうそう、名乗るのが遅れたな。俺の名は大和鉄騎」

≪HENSIN≫


回転させながら一気にはめ込む。そうして俺は銅色の装甲を纏い、笑みを浮かべる。


「またの名を――仮面ライダーケタロス。スーパー大ショッカーの鬼だ」

≪CHANGE――BEETLE!≫


(第27話へ続く)










あとがき


恭文「というわけで、途中で止まっていたディケイドクロス――僕の誕生日記念小説もあるのに、どうした」

フェイト「ま、まぁそこは気にせず。お相手はフェイト・T・蒼凪と」

恭文「蒼凪恭文です。というわけで牛鬼とかそんな設定をすっ飛ばし、こういう形になりました」


(なんでだろーなんでだろー♪)


恭文「まぁ次回には大暴れしておしまいだよ。でもフェイト、バカだねー。フェイトがディエンドライバー使っても、壊すだけじゃないのさ」

フェイト「そんな言い方ないよー! 私だって一生懸命なのにー!」

恭文「……そんな言い方するしかないだろうがっ! 今まで散々アイテム壊してきて、なにを言ってるのっ!
てーか下ごしらえも抜きに強くなれるわけないしっ! 一生懸命のベクトル間違ってるのよっ!」

フェイト「更に一刀両断されたっ!? 壊したのは事実だけど……うぅ」


(閃光の女神、反論不可能)


恭文「とにかくフェイトが余計な事をしないよう、注意に注意を重ねて」

フェイト「既に足手まとい扱いっ!?」

恭文「とにかく次回を超えたら、あとは自由気ままな旅生活だよ。どこへ行ってもいいし」

やよい(スマプリ)「なら、私達のところへっ!」


(突然出てきた)


フェイト「やよいちゃんっ!?」

恭文「……帰れ」

やよい(スマプリ)「いきなり拒絶されたー!」

フェイト「ヤスフミ、駄目だよ。せっかくお誘いしてくれてるのに」

恭文「だって嫌な予感しかしないしっ! おのれ、絶対プリキュアやろうとか考えてるだろっ!」

やよい(スマプリ)「大丈夫ですっ! 先輩達と読者の許可はゲットしていますっ!」

恭文「答えになってないんですけどっ! なに、この子っ!
なんでこんな目を輝かせてるのっ!? ちょっと怖いんですけどっ!」

フェイト「というか、許可取れたのっ!? そんな恐ろしい事を許可しちゃったの、みんなっ!」


(……されてしまいました)


恭文「てーか時系列的に違くねっ!? フレッシュとかそっちじゃねっ!?」

やよい(スマプリ)「大丈夫、そこは説明しなければ問題なしですっ!」

恭文「メタい言い訳してんじゃないよっ! おのれはゲソゲソ言ってろっつーのっ!」

やよい(スマプリ)「お願いでゲソっ! 私達とプリキュアやってでゲソっ!」

恭文「ほんとに言いやがったしっ!」

やよい(スマプリ)「来てくれたらお礼として、HEROカテゴリーのエクシーズモンスターを差し上げるでゲソっ!」

恭文「……え、そんなのがあるのっ!? 忍者どうこうじゃなくてっ!」

やよい(スマプリ)「はい。最近こっちで売ってるんです。どうです、欲しくありません?」

恭文「――」


(蒼い古き鉄、熟考)


恭文「そう言えば拍手でさ、セーラースターズに出てきた戦士は男だってアドバイス……もらったなぁ」

フェイト「折れかけてるっ!? ヤスフミ、落ち着いてっ! さすがにそれは駄目だよっ!
アウト過ぎるよっ! なのはが魔法少女って言うくらい駄目だよっ! やよいちゃんも買収しないっ!」

やよい(スマプリ)「買収じゃありませんっ! 取引ですっ! ヒロリスさん達がこれが一番って教えてくれて」

フェイト「あの二人はなにしてるのー!」


(実ははやても乗っている。……内緒だよ?
本日のED:池田彩『Let's go! スマイルプリキュア!』)




恭文「E・HEROのエクシーズか、楽しみだな」

あむ「アンタ落ち着けっ! なに誘惑に負けてるのっ!?」

恭文「……はっ! 僕は一体なにをっ!」

あむ「自覚なかったんかいっ!」

ラン「でも恭文、セーラースターズってセーラームーンのアニメだよね。それで男の人が変身してたのー?」

恭文「……してたのよ。男性アイドルなんだけど、バトルになると戦士に変身」

スゥ「な、なんで画期的なんでしょう」

ミキ「ねぇ、それはもう逃げ場なくない?」

恭文「いや、あれって確か男装だったはず。目的のためには男性の方が楽って事でさ。だから元から男じゃなかったはず。
……あれ、記憶あやふやで分からないや。いや、でもそうであって。お願いだからそうであって」

あむ「……まぁその、頑張って」

恭文「助けて」

あむ「無理だしっ! アンタ乗っかったじゃんっ!」


(おしまい)



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