小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) Battle19 『激突のQ/暴君見参』 『――たーららーたららたーたらー♪ たーららーたららたーたらー♪ たーらーらーらーららーらー♪ らーららーらーーーーー♪』 「……ナレーター、うるさい。てーか声が男臭い」 『えぇっ! こ、これでも頑張ったのにっ!』 あたしはそんなたわ言をせき払いで一蹴して、改めて9時半方向にあるカメラを見る。 どこかで見た事があるような気もしなくないスタジオで、ソファーに礼儀正しく座って笑顔。 「はい、みなさんわっしょい。キマリの部屋の時間です。今回のゲストは」 2時半方向にあるお客様用のソファー、そこで座っているツインテールの女を見た。 女は不敵な表情を浮かべながら、腕を組んでいた。 「ほしな歌唄よ。……ねぇ、なにこれ。アンタ、なんでそんなハート型の頭なのよ。 どう考えても髪の量が増してるじゃないのよ。これってアレよね、徹」 「キマリの部屋です。さて、覇王チャンピオンシップ・赤ブロック予選大会が始まったわけですけど、激戦続きですねぇ」 「そうね。私はバトスピの知識に関しては、優亜やギャラクシーさんには負けるわ。 ただ全員が覇王(ヒーロー)という夢に向かって、全力投球しているのは分かる」 「注目選手とかはいらっしゃいますか?」 「……そうね」 歌唄さんがテーブルに置いてある選手資料を手に取り、パラパラとめくる。 「さっきも言ったように、素人考えなのを承知した上で聞いてほしいんだけど」 「はい」 「仁霧コブシ選手、凄いと思ったわ。キースピリットを倒されても揺らがず、疾風怒濤の攻撃……見ててゾクゾクした」 「風の覇王ドルクス・ウシワカですね」 近くに置いてあるテレビで、その時の映像が再生される。 フィールドを縦横無尽に駆け抜けるウシワカは、確かに感じるものがある。 「もちろん他の選手も、それぞれ気合いも入っているしバトルも熱い。 どうしてバトスピが世界的ホビーになったのか、徐々に理解してきたわ」 「それはなによりです。……では、第一回戦もいよいよラスト。八神両選手の激闘がスタートです」 「恭文、負けたら……分かってるわよね。あと、その子との関係も聞かせてもらうから」 「頑張ってくださいねー。ではキマリの部屋、また次回ー」 『――たーららーたららたーたらー♪ たーららーたららたーたらー♪ たーらーらーらーららーらー♪ らーららーらーーーーー♪』 バトルスピリッツ――通称バトスピ。それは世界中を熱狂させているカードホビー。 バトスピは今、新時代を迎えようとしていた。世界中のカードバトラーが目指すのは、世界最強の覇王(ヒーロー)。 その称号を夢見たカードバトラー達が、今日もまたバトルフィールドで激闘を繰り広げる。 聴こえてこないか? 君を呼ぶスピリットの叫びが。見えてこないか? 君を待つ夢の輝きが。 この物語はバトスピで繋がった少年少女達が、それぞれの夢に向かって正面突破を続けていく一大叙事詩である。 『とまとシリーズ』×『バトルスピリッツ覇王』 クロス小説 とある魔導師と閃光の女神のえ〜すな日常/ひーろーず Battle19 『激突のQ/暴君見参』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 胃が痛い状況が続いたけど、それでもバトルフィールドに入れば全て吹き飛ぶ。 乾いた風と青い空、グリッドが刻まれたフィールドを見ると……なにも吹き飛ばないよっ! 「なに、あのアバンタイトルッ! キマリの部屋ってなにっ! てーか歌唄、殺し屋の目はやめてー!」 「恭文君、落ち着いてっ! ここには歌唄ちゃんもいないからっ! あんな不思議番組ないからっ!」 てーかあれって徹子の部屋だよねっ! なにやってんの、アニメスタッフッ! 「とにかくその……まさかこんな形で当たるなんて、思ってなかったなぁ」 「実はガンスリンガーでやり合うかと思ってたんだけど」 「私も。とにかくいっぱい楽しもうね」 「うん。さて、それじゃあ」 僕は右手をデッキにかけ、深呼吸。 「スタートステップ、ドローステップ」 そうしてデッキから手札を確保。中身を確認すると、予想通りだった。現在の手札は……事故ってるよっ! やっぱり事故ってるよっ! まぁ予想はしてたけどさっ! ……とにかくジタバタしても仕方がない。 既にデッキの順番は決まっている。どっしり構えて、今あるカードに応えていくしかない。 それに引いたカードは……僕はポーカーフェイスを装ってそれを一旦手札に加え。 「メインステップ。バーストセット」 さっき引いたばかりのカードをセット。……あとはもう、できる事はない。なのでこの宣言をするしかなかった。 「ターンエンド」 「手札事故っちゃった?」 「さぁね」 「……うん、事故ってるね」 なんでこの子は僕の話を聞いてないのっ!? あと納得した様子で笑うなっ! く……それなりに付き合いがあるせいか、こっちの癖とかを見抜いてきてるのか。またやりにくい。 「でも加減はしないよ。私だって覇王(ヒーロー)目指してるんだから」 「理由は?」 「うーん、面白そうだから? それにバトスピ強いと、高校受験も有利に」 「だからその設定はどこからっ!? マジで教えてよっ!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN01→02 恭文 ライフ×5 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×4 バースト×1 手札:四枚 デッキ:35枚 ヒカリ ライフ×5 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×4 手札:四枚 デッキ:36枚 ↓ ↓ ↓ TURN02メインステップ開始時 ライフ×5 リザーブ×5 トラッシュ(コア)×0 コア総数×5 手札:五枚 デッキ:35枚 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「メインステップ。まずはカピッパをコスト1・レベル1で召喚」 ヒカリが次のカードを場に置くと、やや細長い黄色の宝石がフィールド上に出現。 それが輝きを放ちながら砕け散ると、そこから白い甲冑を身に着けたカビバラが出てくる。 前足に蒼い流線形の手っ甲を装着し、四本の指はピンクと黒のラインが入った爪になっていた。 「次にカルミオン・キャットをコスト1・レベル2で召喚」 ヒカリが次のカードを場に置くと、やや細長い黄色の宝石がフィールド上に出現。 それが輝きを放ちながら砕け散ると、そこから白い袖なしドレスを着た獣人が現れる。 茶色の体毛とピンと立った耳、狼のような顔立ちが特徴的なそれは、地面にぺたんと着地。 服装は……なんかこう、クレオパトラに仕えていたお姉さんみたいな感じ。こう、古代エジプトっぽいの。 「それからバーストをセット。……アタックステップ」 手札を残り二枚としたヒカリは、カルミオン・キャットに右手をかける。 「カルミオン・キャットでアタック」 カルミオン・キャットは僕を威嚇するように吠えてから、体毛に覆われた足を動かし、こちらへ突撃。 「……ライフで受ける」 「まぁ、それしかないよね」 ヒカリが苦笑している間に、こちらの陣地へと踏み込んできたカルミオン・キャットが跳躍。 両手の指から白く細い爪を出し、右から袈裟・逆袈裟と交互に打ち込んでくる。 僕の眼前で展開した黄色の障壁が、それを受け止め一瞬で砕け散る。その粒子が舞い散る中、閃光が走る。 それが僕の右胸を撃ち抜き、ライフは残り4。……というわけで。 「バースト発動っ!」 赤い光を放ちながら、カードが浮かび上がる。それを右手でキャッチし、光へ見せつける。 「三札之術っ! BP4000以下のスピリット一体を破壊っ! カピッパを破壊させてもらうよっ!」 その瞬間カピッパは赤い炎によって燃え上がり、粒子となって消え去る。 「更にコスト5を支払って、フラッシュ効果を発動っ! デッキから二枚ドローしデッキトップをオープンッ! そのカードが赤のスピリットカードなら、手札に加えられるっ!」 まずはデッキから二枚ドローして……うん、良い感じ。それからデッキトップをオープン。出てきたのは。 「……マジック、三札之術。条件から外れるため、デッキトップへ戻す」 「残念だったね。それじゃあターンエンド」 「愛されてるって、辛いなぁ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ カピッパ スピリット 1(1)/黄/戯狩 <1>Lv1 1000 <2>Lv2 2000 Lv1・Lv2『このスピリットの破壊時』 【光芒】/【魔光芒】を持つ自分のスピリット1体を回復させる。 シンボル:黄 イラスト:中島鯛 フレーバーテキスト: 虚神の出現以降、光楯が戦場になることはなかった。 そのためか、戦争の結果がどうなろうと関係ない。 そう表明し、気楽に過ごす者も多かったという。 それこそが喜ばしいことなのだと皇帝になったケイは語ったという。 ―正史 覇王ケイ伝 帝期元年の章― ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ カルミオン・キャット スピリット 2(1)/黄/雄将・戯狩 <1>Lv1 2000 <2>Lv2 3000 <3>Lv3 4000 Lv2・Lv3 自分がマジックカードを使用したとき、その効果発揮後、このターンの間、このスピリットをBP+2000する。 シンボル:黄 コンセプト:及川ひろし イラスト:相沢美良 フレーバーテキスト: 出陣前、魔術の奥義を天使たちが授かりたいと出向いた先は、 召使さえも優雅な身のこなしの覇王の宮殿だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN02→03 恭文 ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×5 コア総数×5 手札:六枚 デッキ:33枚 ↓ ↓ ↓ TURN03メインステップ開始時 ライフ×4 リザーブ×6 トラッシュ(コア)×0 コア総数×6 手札:七枚 デッキ:32枚 ヒカリ ライフ×5 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×2 コア総数×5 バースト×1 手札:二枚 デッキ:35枚 スピリット:カルミオン・キャット・レベル2(コア×2 疲労中) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「メインステップ。まずはサラマントルをコスト2・レベル2で召喚」 さっきは召喚できなかったサブサブエースを場に出すと、いつも通り赤のコアからサラマントルが出現。 くるりと一回転した上で着地したサラマントルは、こっちを見て甲高く鳴いてくれる。それが嬉しくてもうニコニコ。 「続けてネクサス・英雄皇の神剣をコスト2・レベル1で配置」 僕の背後に巨大な剣が生まれ、赤の輝きとともにその存在を知らしめる。すかさず五枚ある手札のうち一枚を、伏せる。 「バーストセット。……英雄皇の神剣レベル1・2の効果発動。バーストをセットした時、デッキから一枚ドローできる」 「赤デッキなんだね。てっきり青だと思ってたよ」 「いつもならねぇ。でも、ドロー加速で手札事故も回避できるから」 「そ、そっか。でもその……真顔はやめない? いや、分かるんだけど」 このドローによって、手札は五枚に戻る。忙しなく入れ替わった手札は……うん、大分取り戻せた。 だけど問題は、あのバーストだな。……嫌な予感がしてるんだよ。まぁツツいてから考えるか。 「アタックステップ……サラマントル、行ってっ!」 カードを横に倒すと、サラマントルはまた鳴きながら突撃。のしのしとフィールドを踏み締め、光へと迫っていく。 「サラマントルのレベル2・3アタック時効果により、デッキから一枚ドロー!」 手札は六枚となって、良い感じ。やっぱり頼れる子だよね、サラマントルちゃん。 「手札戻っちゃったかー。ならライフで受けるね」 サラマントルは跳躍し、縦に回転しながらヒカリへ突撃。尾から放たれた炎が身体を包み、サラマントルは弾丸となる。 それがヒカリの前に展開した赤い障壁を打ち砕き、そのライフを消滅させる。 サラマントルはそのまま着地し、こっちへ戻ってくる。それで白い息を吐きながら、地面に伏せた。 「ターンエンド」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN03→04 恭文 ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×4 コア総数×6 バースト×1 手札:六枚 デッキ:30枚 スピリット:サラマントル・レベル2(コア×2 疲労中) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×4 リザーブ×2 トラッシュ(コア)×2 コア総数×6 バースト×1 手札:二枚 デッキ:35枚 スピリット:カルミオン・キャット・レベル2(コア×2 疲労中) ↓ ↓ ↓ TURN04メインステップ開始時 ライフ×4 リザーブ×5 トラッシュ(コア)×0 コア総数×7 バースト×1 手札:三枚 デッキ:34枚 スピリット:カルミオン・キャット・レベル2(コア×2) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「メインステップ……うーん、しょうがないか。私はマジック」 ヒカリが見せたカードには、銀色の騎士が描かれていた。丸っこい体型のそれは、輝く剣の切っ先を突き出していた。 あと、その周囲に舞い散る三枚のバトスピカード……手札交換とかそっち系? 「マジック・オブ・オズをコスト3で発動するね、使うのはメイン効果。 自分の手札を全て破棄する事で、デッキから三枚ドローできる。私は手札二枚を全て破棄」 ヒカリが黄色と白のカードをトラッシュに置くと、それらは姿を消す。……改めて見ると、凄い技術だよなぁ。 それでカードが三枚ドローされると、カルミオン・キャットが毛を逆立てて唸り声をあげた。 「デッキから三枚ドロー。カルミオン・キャットのレベル2・3効果発動。 マジックを使用したターン、終了時までBP+2000となるけど……このままターンエンド」 「アタックしないんだ、ノーガードなのに」 「私は大輔君とかと違って、のんびり行く派なんだ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ マジック・オブ・オズ マジック 4(1)/黄 メイン: 自分の手札すべてを破棄することで、自分はデッキから3枚ドローする。 フラッシュ: このターンの間、スピリット1体をBP+3000する。 イラスト:斉藤コーキ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN04→05 恭文 ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×4 コア総数×6 バースト×1 手札:六枚 デッキ:30枚 スピリット:サラマントル・レベル2(コア×2 疲労中) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ↓ ↓ ↓ TURN05メインステップ開始時 ライフ×4 リザーブ×5 トラッシュ(コア)×0 コア総数×7 バースト×1 手札:七枚 デッキ:29枚 スピリット:サラマントル・レベル2(コア×2) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×4 リザーブ×2 トラッシュ(コア)×3 コア総数×7 バースト×1 手札:三枚 デッキ:31枚 スピリット:カルミオン・キャット・レベル2(コア×2) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ この状況でアタックしないか。こっちにバーストの発動条件を読ませないため? ……うん、鍵はバーストにある。 さっき捨てたカードもちょっと気になるし、ここは慎重に動くべきか。とりあえずノーガードにはしない。 まずはしっかり場を固めて、その上で相手の手を引き出していくか。 「メインステップ――ワン・ケンゴーをコスト1・レベル1で召喚」 赤のコアが出現し、砕け散ったその粒子がワン・ケンゴーに変化。地面に着地しながらワン・ケンゴーは、刃から赤い輝きを放つ。 「ワン・ケンゴーは効果により、バーストセット中はレベル3として扱う。 サラマントルにリザーブのコア三個を載せ、レベル3にアップ」 コアが移動した事で、サラマントルが歓喜の声をあげる。それが微笑ましくてニコニコしていると、ヒカリがクスリと笑った。 「その子、お気に入りなんだ」 「可愛いしね」 「……相変わらずセンスが独特だね」 「そう?」 「そうだよ」 ヒカリの言っている意味が分からなくて首を傾げるけど、プレイを続行する。 さて、ここはワン・ケンゴーでもいいけど……バーストを引き出す意味でも、サラマントルでいく。 「アタックステップ……サラマントルでアタックッ! レベル2・3アタック時効果により、一枚ドロー!」 これで手札は元の七枚になって、もうほくほく。さて、どう出る? ライフ減少時か、それとも。 「カルミオン・キャットでブロックするよ」 ヒカリがカードを動かすと、ノシノシと突撃するサラマントルをカルミオン・キャットが迎え撃つ。 カルミオン・キャットはまた白い爪を出して飛びかかろうとするけど、サラマントルは身を反時計回りに捻る。 そうして振るわれた尻尾は、炎に包まれながら左薙に振るわれ、カルミオン・キャットの胴体を薙ぐ。 カルミオン・キャットは白目を開いてフィールドを転がり、そのまま爆散。サラマントルはまた鳴いた。 「……スピリット破壊により、バースト発動だよっ!」 「来たか」 ヒカリが伏せてあったバーストが、黄色の輝きを放ちながら浮かび上がる。 「輝く女帝、光の道を示せっ! レベル2でバースト召喚っ!」 髪をなびかせながらヒカリは、プレイ板にカードを置く。それにより黄色のコアが場に生まれた。 そうして生まれた粒子が空へと昇り、雷撃が走る。それが地面を叩き、爆炎を生む。 その中からややピンクがかった白い……ううん、あかね色の空を映した翼が大きく広げられる。 機械的なそれを羽ばたかせるのは蒼色の肌と赤い瞳を持つ、ビキニ姿の女性。 ボブロングの髪も同じで、長い金色の髪飾りを装着していた。それでスタイルはフェイト張りに良い。 右手にはツタが絡んだようなロッドがあり、その先に青い宝玉が輝いていた。 体長は3メートル前後な女帝の、なんとも言えない美しさに目を奪われていた。 てーかシャルロット……どこが想獣っ!? これ思いっきり天霊とか導魔とか、そっち系等じゃないのさっ! 「アマゾネス・クイーンッ! ……見とれてるでしょ」 「はい?」 「美人でスタイル良いから。やっぱり恭文君、巨乳が好きなんだね」 「なんの話っ!? 違うからっ! そんな事ないからっ!」 「怪しい……まぁいいか。それじゃあアマゾネス・クイーンの召喚時効果、発動するよ」 ヒカリが右手をトラッシュへかざすと、そこから黄色の光が溢れ出す。 「バースト効果で召喚された時、光芒を持つスピリットカード一枚をノーコスト召喚できるの」 「光芒……まさかさっきのマジック・オブ・オズは」 「うん、正解。というわけで」 トラッシュから浮かび上がったカードを――さっきカード効果で捨てた一枚を、ヒカリはプレイ板に置く。 「黄玉(トパーズ)の女王フェルネイトを、ノーコスト召喚だよっ! レベル3!」 アマゾネス・クイーンはそれに反応したのか、ロッドを上へ突き出す。それから自身の左横へ向けた。 すると黄色のコアが出現し、それが眩い光を放つ。……そこから現れたのは、下半身が獣の女性。 青白い肌に金色の衣装を纏い、背中から青白い半透明な翼を生やしていた。 肌は女帝と同じ感じで、やや挑発的なポーズを取る。てゆうか、下半身のせいもあって四つ足だった。 「フェルネイトはレベル3・BP7000……どうする?」 「ターンエンド」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『わわ、一気に高コストスピリットが揃っちゃったっ!』 『これも黄色の特徴っ! セメタリーデッキは紫の本領だが、黄色も負けていないっ! しかもフェルネイトはダブルシンボル持ちっ! 恭文選手、これは厳しいかっ!』 「セメ……はい?」 山田先生、意味が分からないらしく首を傾げていますわね。それはフェイトさんも同様で。 「簡単に言えば効果を用い、トラッシュからスピリットを復活させるデッキです」 紫使いなボーデヴィッヒさんが見かねて、補足を加えます。 「今のようにトラッシュへ強力なスピリットを落とし、効果を用いてアタックステップなどで召喚するんです。 すると突然手数が増えるために対処が難しいし、場合によってはそれで勝負も決められる」 「研究所の花形さんが、ちょうどそのデッキでしたわ。ほら、シュテン・ドーガ」 「そう言えば……え、でもあの時はあんなに強いスピリット、出ませんでしたよね」 「それもカードの活用次第という事ですわ。トラッシュも含めての盤上ですし」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ アマゾネス・クイーン スピリット 6(3)/黄/覇皇・導魔 <1>Lv1 4000 <2>Lv2 5000 <3>Lv3 7000 【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】 このスピリットカードを召喚する。 Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットの召喚時』 バースト効果で召喚されたとき、自分のトラッシュにある 【光芒】を持つスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。 Lv2・Lv3『自分のエンドステップ』 【光芒】/【魔光芒】を持つ自分のスピリット3体を回復させる。 シンボル:黄 イラスト:四季童子 フレーバーテキスト: ケイを説得することが戦争終結の近道だという僕のまっとうな意見に、 黄金の密林の女王は「わがまま言うな」とそっぽを向いた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 黄玉(トパーズ)の女王フェルネイト スピリット 7(3)/黄/導魔 <1>Lv1 4000 <2>Lv2 6000 <3>Lv3 7000 Lv1・Lv2・Lv3【光芒】『このスピリットのアタック時』 バトル終了時、自分がこのバトルで使用したマジックカードすべては手札に戻る。 シンボル:黄黄 イラスト:末弥純 フレーバーテキスト: 急激に辺りの魔力濃度が上昇した。 その者が宙を舞う時、周囲の魔力の濃度が7倍になるという。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN05→06 恭文 ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×1 コア総数×7 バースト×1 手札:七枚 デッキ:28枚 スピリット:サラマントル・レベル3(コア×5 疲労中) ワン・ケンゴー・レベル3(コア×1 効果によりレベル3扱い) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×3 コア総数×7 手札:三枚 デッキ:31枚 スピリット:アマゾネス・クイーン・レベル1(コア×1) フェルネイト・レベル3(コア×3) ↓ ↓ ↓ TURN06メインステップ開始時 ライフ×4 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×0 コア総数×8 手札:四枚 デッキ:30枚 スピリット:アマゾネス・クイーン・レベル1(コア×1) フェルネイト・レベル3(コア×3) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「メインステップ――まずはバーストをセット」 ヒカリはついさっき引いたばかりのカードを、バーストとしてセット。……あれ、なにこれ。 なんかめっちゃ嫌な予感がしてくるんですけど。それも、アマゾネスクイーン以上。 「アマゾネス・クイーンをレベル3にアップ。……アタックステップ」 アマゾネス・クイーンは黄色の輝きを宿し、力を高める。それでヒカリは不敵に笑いながら、フェルネイトに手をかける。 「フェルネイトでアタックッ!」 フェルネイトは鋭角的な翼を羽ばたかせ、少しだけ宙に浮かび上がる。それから地面すれすれを滑空し、突撃。 「私のフラッシュタイミング、いくよっ! マジック」 ヒカリが場に出したカードは緑色で……げ。 「ストームアタックをコスト4で使用っ! コアはリザーブから二個、アマゾネスとフェルネイトから一個ずつ使用っ!」 カードから吹き荒れた緑色の風がワン・ケンゴーを包み、その力を奪って地に伏せる。 同時に風はネフェルネイトも包み込み、その速度を後押しした。もちろんカードも回復状態に移行。 「これにより二体はレベル2にダウンッ! ワン・ケンゴーを疲労させ、フェルネイトを回復っ!」 「……ライフで受けるっ!」 「フェルネイトはダブルシンボルッ! ライフを二つもらうよっ!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ちょ、これヤバいじゃないのよっ! このままフルアタック受けちゃったらっ!」 「ヤスフミのライフは0……だね。え、もしかしなくてもここで敗退?」 「あははは、ごめんなさい。ヒカリちゃん、意外と容赦なくて」 「結構エグい手使うよねー」 フェイトさんが困った顔をしている間に、ネフェルネイトは恭文さんの前へ飛翔。 そうして翼を羽ばたかせると、そこから光の雨が降り注ぐ。その雨を黄色の障壁が受け止め、粉砕。 走る二つの閃光で、右胸下と左胸下のライフが撃ち砕かれた。 恭文さんは障壁の破片が舞い散る中、両足をぎゅっと踏み締め衝撃に耐える。 『もう一度アタック……の前に、ネフェルネイトのキーワード効果『光芒』が発動だよ』 「……光芒持ちですのっ!? こ、これはマズいですっ!」 「光芒? なんだそれは」 「篠ノ之、私から説明する。光芒というのは黄色特有の効果――激突などと同じだ。そして」 『このバトルで使用したマジックは、全て手札へ戻る』 使用してトラッシュへ送られたはずのストームアタックが、浮かび上がってヒカリさんの手へ戻った。 「今回の場合、ストームアタックの再利用が可能となる」 「ではまたスピリットを疲労させられ、連続攻撃が来るのかっ!」 「それだけじゃないよ。光芒はアタック時だけだからアレとしても、防御に使われる危険もある」 『それじゃあ処理も終わったところで』 『バースト発動っ!』 バーストが白の輝きを放ち、恭文さんの手へ収まる。それを前にかざすと、雪の結晶にも似た障壁が展開。 『絶甲氷盾っ! ボイドからコア一個をライフへ置き、フラッシュ効果を発動っ!』 障壁が光の粒子となって恭文さんの胸元へ吸い込まれ、左胸下のライフに輝きを再度宿す。 『コストはリザーブから一個、サラマントルから三個使用っ! サラマントルはレベル2にダウンッ! アタックステップを強制終了させるっ!』 宣言通りにコアが送られると、恭文さんの場を守るように突如吹雪が吹き荒れる。 それは一瞬で氷の障壁となり、二人の場を遮った。でもすぐに砕け散り、白の粒子となる。 『うーん、いけると思ったんだけどなぁ、それじゃあターンエンド。あ、それと』 「え、なに? まだなにかあるの?」 『アマゾネス・クイーンのレベル2・3効果、発動だよ。 系統:光芒、または魔光芒を持つスピリットはエンドステップ時に回復させる。 まぁネフェルネイトはもう回復してるから、意味ないんだけど』 「なんだとっ!」 「なによそれっ!」 あまりの能力に、篠ノ之さんと鈴さんは信じられないご様子。 恭文さんはまぁ、ポーカーフェイスです。ただ衝撃はあると思います。 「光芒を中心とした、マジックデッキですのね。これはキツいですわね」 「できれば両方とも、次のターンで潰しておきたいところだね。幸いな事にヤスフミは赤デッキ。 破壊による場のコントロールは十八番だもの。やりようはあるはず。 ……というかおかしいよっ! ぼくとバトルした時と、デッキ構成全然違うんだけどっ!」 「ガンスリンガー用とは違っていて、当然だろう。さて、恭文はどう出る」 「現実的なのは、カグツチを出してダブル激突とか? それならコアもあるし、BPでも勝てる」 「だが別のマジックがある可能性も捨て切れん。黄色はそういう色だしな」 状況は芳しくないですわね。でも……恭文さんは楽しそうでもあります。もちろん勝ってほしいけど、それが一番嬉しい。 自分のためにバトルをして、それが楽しいものなら……わたくしは十分です。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN06→07 恭文 ライフ×3 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×5 コア総数×9 手札:七枚 デッキ:28枚 スピリット:サラマントル・レベル2(コア×2 疲労中) ワン・ケンゴー・レベル1(コア×1 疲労中) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ↓ ↓ ↓ TURN07メインステップ開始時 ライフ×3 リザーブ×7 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10 手札:八枚 デッキ:27枚 スピリット:サラマントル・レベル2(コア×2) ワン・ケンゴー・レベル1(コア×1) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×4 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×4 コア総数×8 バースト×1 手札:三枚 デッキ:30枚 スピリット:アマゾネス・クイーン・レベル2(コア×2) フェルネイト・レベル2(コア×2) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「スタートステップ」 くそ、結構マズいぞ。いつバッサリやられるか分かったもんじゃない。 もちろん打開できるカードは、幾つかある。あとはそれが引けるかどうかだ。……頼むよ、僕のデッキ。 「コアステップ、ドローステップ」 デッキからドローしたカードは……バッチリ過ぎる。あとはトラッシュ肥やしも必要か。 あのバーストがどんなカードであれ、条件さえ揃えばこっちのものだ。 「リフレッシュステップ、メインステップ。……まずはバーストセット。 英雄皇の神剣レベル1・2効果により、デッキから一枚ドロー」 背後で輝く神剣のおかげで、手札を八枚へ戻す。続けてその中から二枚をプレイ板に置き、おなじみな可愛い二人を召喚。 「ブレイドラとカキューソを、それぞれノーコスト・レベル1で召喚」 場に現れた二人を見て少し迷うけど、ここは条件をきっちりクリアする事に専念。僕は涙を飲んで、二人をトラッシュへ送る事にした。 「ブレイドラ、カキューソ、ごめん」 つぶらな瞳を向けてくる二人に謝りつつ、僕は一枚のカードを右手で取り出す。 「ヒカリ、まずはその場……壊滅させてもらうよっ!」 カードを前にかざすと、そこから赤い炎が生まれる。それに構わず右薙に振るい。 「優しき鬼神、剛腕振るいて敵を討つっ!」 時計回りに一回転。そうしながらプレイ板へカードを載せる。 「焔の絆、未来切り開く導となれっ! コスト3・レベル3で召喚っ!」 僕の眼前にコアが生まれ、赤い輝きの代わりに荒ぶる炎を放つ。それが柱となって周囲を赤く照らす中、一つの影が生まれる。 柱の中で影は足を踏み出すそれは、黒い毛並みを揺らし、円輪をカラカラと回しながら外へと飛び出す。 鈍く輝く斧と爪に赤い炎の色を映し、優しき鬼神は鈍い咆哮を場に響かせた。 「荒ぶれっ! 皇牙獣キンタローグ・ベアー!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『恭文選手、キンタローグ・ベアーを出したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』 『えっと、テガマル選手のキースピリットだったわよね』 『これも良いスピリットだよねー。優亜も可愛いから好きー』 「あれは」 「……不愉快だ」 チヒロは恭文に厳しい視線を送るが、兄ぃは驚きながらも不敵な笑みを浮かべた。 自分のキースピリットを使われてるのが、いかにも面白いって顔してんだよ。 「コブシ、お前は知っていたのか」 「あぁ。ここ最近、アイツと調整してたからな。まぁその……な?」 「その関係か。だが古竜デッキはどうした」 「いや、古竜デッキだ」 チヒロに答えながら、俺は画面の中で荒ぶるキンタローグを見る。 テガマル兄が使っているわけじゃないが、いつ見ても雄々しく美しい獣だ。 「ただマ・グーが制限になったりで、それ以外のギミックも組み込んだんだ。 それがキンタローグ・ベアー……皇獣デッキだ。皇獣もデッキには入ってるしな」 ワン・ケンゴーにカキューソ――主要となるスピリットは皇獣だ。あとはまぁ、兄ぃ対策だな。 俺が兄ぃと対戦した時のためっつって、使ってたら気に入ったらしい。現金な奴だと、笑ったもんだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「おー! 恭文さんがキンタローグかっ! てーか入れてたんだっ!」 「アッと驚く為五郎ー!」 お姉ちゃん、それ古いよ。でもみんな、驚いてるなぁ。確かにぼくも最初見た時、同じ反応だった。 キンタローグ・ベアーって言ったら、やっぱりテガマルって印象が強いから。しかも恭文さんは古竜デッキだし。 「コウタ、お前知ってたかっ!?」 「うん、一応。コブシさんとの特訓で使ってたから」 「だったらなんで言わない……って、当たり前か」 「特訓だしねー。……それよりあんちゃん、お姉ちゃん」 ぼくは左の方で、顔を真っ青にして震え始めているマナブさんを見た。 「マナブさん、凄い事になってるんだけど」 「「え?」」 「兄ちゃん、しっかりー! 大丈夫、もう負けないからー!」 「ボクが……飛ばされ」 大泉マナブ――あんちゃん達の生徒会長さんは、カタルさんになだめられながらも遠い目をしていた。 でも怯えているとか、そういう様子じゃない。こう、震えながら気合い入れてるって感じ? いや、入れすぎてるけど。 「……あー、生徒会長はライジング焼かれたからなぁ」 「トラウマになってるのね」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「あれは……テガマルってのが使ってたやつじゃないっ! 教官、あんなの入れてたんだっ!」 『コアはリザーブから四個、ブレイドラとカキューソ、サラマントルから一個ずつ確保っ! サラマントルはレベル1へダウンッ! ブレイドラ、カキューソ、トラッシュへ行ってっ!』 二体はそのままコアをキンタローグに捧げ、トラッシュへ……って、なにしてますのっ!? あれではスピリットを無駄に消費しただけではありませんかっ! てっきり壁役にすると思ったのにっ! 『そして召喚時効果発揮っ!』 『BP4000以下のスピリット、二体を破壊……だよね。でも私の場に、対象となるスピリットはいない』 『うん。空撃ちだね』 『しかもブレイドラとカキューソまで無駄消費。なにを狙ってるのかな』 ヒカリさんはアレがミスだとは思っていない様子。確かに恭文さんらしくはないですね。 恭文さんはよく低コストスピリットを犠牲に、大型を出したりはします。でもそれとて必要があるからこそ。 あんな形で無駄に消費するような事は、絶対にしない人です。では、一体どうして。 『アタックステップッ! ワン・ケンゴー、行ってっ!』 そこを考える前に、恭文さんが動いた。ワン・ケンゴーが一声鳴いて、ヒカリさんの場へと突撃していく。 『皇牙獣キンタローグ・ベアーのレベル2・3アタック時効果発動っ! 系統:皇獣を持つスピリットは、自身のBP以下の相手スピリット一体を破壊できるっ! ワン・ケンゴーはバーストセット中のため、BP6000! まずはフェルネイトを破壊っ!』 宣言通りにフェルネイトへと接近し、そのまま頭部の刀で刺突を繰り出す。フェルネイトは翼を広げ、蒼い障壁を全面に展開。 ドーム状のそれとワン・ケンゴーの切っ先が正面衝突し、激しい火花を走らせる。 貫けないと判断したのか、ワン・ケンゴーは一旦後ろへ大きく跳躍。それから再度疾走し、跳躍しながら縦に回転。 回転ノコのようなワン・ケンゴーと障壁が再度衝突し、数瞬の間拮抗――でもその均衡はすぐ崩れ去る。 障壁は両断され粒子となり、フェルネイトは頭部に刀を喰らい、そのまま両断された。 ワン・ケンゴーは爆散するフェルネイトの背後へ立ち、勝利の雄叫びをあげる。 『そして激突っ!』 『……アマゾネスクイーンでブロック』 ワン・ケンゴーそのまま、フェルネイトの右側にいたアマゾネスクイーンへ突撃。 アマゾネスクイーンもそれを迎え撃とうと、右手に持ったロッドを構える。 「……上手いっ! 今のアマゾネス・クイーンはBP5000ですわっ!」 「キンタローグの焼き効果とワン・ケンゴーの激突で、二体を同時にか。 ……なるほど、これもヒーローを助けるヒーローというわけか。奴らしい」 ボーデヴィッヒさんが納得している間に、アマゾネス・クイーンが動く。 ロッドを天へ突き出すと、空に暗雲が差しかかり幾つもの雷撃が降り注ぐ。 雲を突き抜け落ちるそれら、ワン・ケンゴーはジグザグに走って回避。 フィールドに雷撃と同じ数の爆発が生まれる中、ワン・ケンゴーは跳躍。アマゾネス・クイーンの懐へ入りこもうとする。 『……フラッシュタイミングッ! マジック・オブ・オズのフラッシュ効果をコスト3で発動っ! アマゾネス・クイーンはレベル1へダウンッ!』 そうして袈裟の一閃が打ち込まれたけど、アマゾネス・クイーンはそれをロッドで受け止めた。 ロッドをそのまま突き出すと、ワン・ケンゴーは吹き飛ばされて地面を転がる。 『このターンの間、スピリット一体をBP+3000とするっ! アマゾネス・クイーンを指定――アマゾネス・クイーンはBP7000になるよっ!』 「ワン・ケンゴーより上っ!? じゃ、じゃあ教官のアタックは」 「返り討ち」 それでも起き上がって突撃しようとしたワン・ケンゴーに向かって、ロッドが振り下ろされる。 その動きに合わせ、空からも雷撃が降り注ぎ……それらはワン・ケンゴーに命中・爆散した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ち……やっぱ黄色のマジックが飛んできたか。でもこのターンはもう、マジックを恐れる心配はない。 あとはアマゾネス・クイーンには、退場してもらうとしよう。少しでもライフを削っておかないと、後が続かない。 「皇牙獣キンタローグ・ベアーでアタックッ!」 カードを横に倒すと、キンタローグは駆け出し右手の斧を振りかぶる。 「キンタローグ・レベル3のBPは9000! アタック時効果により、BP7000のアマゾネス・クイーンを破壊っ!」 「まぁ、これはしょうがないか」 それを全力で投擲――回転しながら空間を突き抜けるそれは、アマゾネス・クイーンの胸元へ命中。 厄介そうなスタイル抜群お姉さんを、見事に爆散させる。その間もキンタローグは全力疾走。 「メインのアタックはライフで受けるよ」 ヒカリの宣言を合図に跳躍し、左腕を大きく振りかぶり――手っ甲についている爪で逆袈裟一閃。 発生した障壁を斬撃が捉え、粉々に斬り砕く。同時にヒカリのライフを残り3とした。 「……バースト発動っ!」 伏せられていたバーストが、黄色の輝きを放ち浮かび上がる。ヒカリはそれを右手でキャッチして、頭上高く掲げた。 「光を統べる太古の女王――その美しさに万民よ、ひれ伏せっ! バースト召喚っ!」 フィールド上にトパーズが生まれ、それが砕け散り光の泉を作る。金色のそれは宙に浮かび、巨大な円を描いていた。 そこから粒子が降り注ぐ中、泉からひし形の黒い石が四つ降りてくる。それはひと固まりになっていて、なにかの台座のようにも見えた。 その石が全て泉から抜け出すと、また別のものが現れる。それは緑色の衣を身に着け、金色の翼と兜、装飾をまとった美しき女王だった。 獣顔で灰色のカラを持つ女王。金色のハープを右手に持ち、左手には同じ色の盾を保持。 色とりどりのきらびやかなドレスをまとうそれの下半身は足がなく、前述の石四つに支えられていた。 「魅惑の覇王クレオパトラス、降臨っ! ……召喚時効果発動」 ヒカリが右手をかざすと、トラッシュから半透明のカードが数枚浮かび上がる。 ヒカリはそのうちの一つをキャッチ。するとカードは途端に実体化して、ヒカリの手札に加わった。 「召喚時効果で、自分のトラッシュにあるスピリットカード一枚を手札に戻すよ。ドリームリボンを戻すね」 いつの間に……いや、当然か。最初のマジック・オブ・オズで捨てたカード、もう一枚があれだよ。 「ターンエンド。……ヒカリ」 「なにかな……え、なんでそんな引いた顔してるの?」 「まさかそんな、女王様気質に目覚めているとは。やっぱりドSだったんだ」 「目覚めてないよっ! あと、ドSでもないよっ!? 恭文君とは違うのっ!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 魅惑の覇王クレオパトラス スピリット 7(3)/黄/覇皇・導魔 <1>Lv1 5000 <2>Lv2 7000 <4>Lv3 11000 【バースト:自分のライフ減少後】 自分のライフが3以下のとき、このスピリットカードを召喚する。 Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットの召喚時』 自分のトラッシュにあるマジックカード1枚を手札に戻す。 Lv2・Lv3【魔光芒】『このスピリットのアタック時』 自分がマジックカードを使用したとき、その効果発揮後、同じ効果をもう1度、コストを支払わずに発揮できる。 バトル終了時、自分がこのバトルで使用したマジックカードすべては手札に戻る。 シンボル:黄 コンセプト:及川ひろし イラスト:斉藤コーキ フレーバーテキスト: 一目見てしまったが最後、自分のすべてを捧げずにはいられない覇王がいる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ドリームリボン マジック 4(3)/白 フラッシュ: 相手のスピリット1体を相手の手札に戻す。 イラスト:安達洋介 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN07→08 恭文 ライフ×3 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×3 コア総数×10 バースト×1 手札:五枚 デッキ:26枚 スピリット:サラマントル・レベル1(コア×1) キンタローグ・ベアー・レベル3(コア×5 疲労中) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×3 リザーブ×0 トラッシュ(コア)×7 コア総数×9 バースト×1 手札:三枚 デッキ:30枚 スピリット:クレオパトラス・レベル2(コア×2) ↓ ↓ ↓ TURN08メインステップ開始時 ライフ×3 リザーブ×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×10 バースト×1 手札:四枚 デッキ:30枚 スピリット:クレオパトラス・レベル2(コア×2) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「それじゃあメインステップ――カピッパをノーコスト召喚」 クレオパトラスがいるせいか、今度はノーコストでカビバラさんが出てきた。 「続けてポッポールをコスト2で召喚して、クレオパトラスに直接ブレイヴ」 黄色の輝きから、白い鳩みたいなスピリットが現れる。それは翼を羽ばたかせながら、クレオパトラスへ接近。 クレオパトラスの翼にポッポールが触れたと思った瞬間、極光が走る。そうしてクレオパトラスは、金色の翼を広げた。 「羽ばたいて、ブレイヴスピリットッ!」 光が消える頃、その翼が既に金色でない事が分かった。先ほどの黄金そのものと言った形から、白い天使の翼となっていた。 ……というかこれ、ネフェルティモンじゃ。なんか見ていて、そっくりなとこ多いんですけど。 「アタックステップ――クレオパトラスでアタックッ!」 でも気にしている場合じゃない。クレオパトラスはその翼を羽ばたかせ、こちらへ接近。 足の代わりになっている石も一緒についてきて、何気に大きい身体で僕を威圧してくる。 「フラッシュタイミング、マジック・ドリームリボンをコスト4で発動っ! キンタローグ・ベアーを手札へっ!」 白いリボンが描かれたカードをかざすと、そこから波打つ光の線……ううん、絵柄通りのリボンが放たれる。 クレオパトラスの脇を抜けてそれは、キンタローグ・ベアーに巻きつき粒子へと返す。 同時にプレイ板上のキンタローグも浮かび上がって、僕の手札へと戻る。……ち、厄介な。 でも……キンタローグ? サラマントルをバウンスすれば、こっちはノーガードなのに。 「そしてクレオパトラスの効果――魔光芒発動っ!」 僕の疑問に答えるように、クレオパトラスが翼を羽ばたかせ浮かび上がる。それで右手のハープをかき鳴らした。 「このスピリットのアタック時、使用したマジックの効果を、ノーコストでもう一度発動できるっ!」 「な……!」 「今使用したドリームリボンの効果を、もう一度発動っ! サラマントルを手札へっ!」 そこから先ほどと同じリボンが生まれ、それは波打ちながらサラマントルへと接近。 一気に巻きついてバウンス……なんつう効果だよ、これっ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 魔光芒――光芒・聖命に続く、黄色のキーワード能力。この効果を持つスピリットがアタックした時、効果発動。 フラッシュタイミングで使用したマジックの効果を、もう一度発動。そしてバトル終了時、使用したマジックカードを手札に戻せるのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『なんという効果だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 魔光芒により、恭文選手の場ががら空きになってしまったっ!』 『ちょっとちょっと、これなにっ!? 優亜、こんなカード知らないっ!』 『……これは、フルアタック受けたら』 『今度こそおしまいだっ!』 いえ、まだです。恭文さんの手札は多くて……なにを使えばOKですのっ!? ライフは残り3で、ストームアタックもあるのにっ! 絶甲氷盾がなかったら詰みですっ! この状況で場がまっさらはキツいですっ! 『……ライフで受けるっ!』 『ブレイヴスピリットはダブルシンボルッ! ライフを二つもらうよっ!』 クレオパトラスは恭文さんの眼前へ迫り、再びハープをかき鳴らす。 すると優しい音を響かせながら、揺れるハープの弦から光が生まれる。 幾重もの光は尾を引く矢となって、恭文さんへと密集する。 展開した黄色い障壁でそれらは全て受け止められるも、一瞬で砕け散る。 そうして走る閃光が、恭文さんの左胸にあるライフ二つを一瞬で撃ち砕いた。 「えっと、このままカビバラさんが攻撃したら」 「ギャラクシーが言っていた通り、恭文くんの負けです」 「そんな……恭文くん、ここまできたのにっ!」 もうこれで……ううん、違う。恭文さんはそんな顔をしていない。 恭文さんは負ける焦りなどは、表情に浮かべていない。ただただ強気な顔をしながら、右手を前にかざす。 『バースト発動っ!』 するとバーストは……赤い光? 絶甲氷盾かと思ったら、違うみたいです。 もしやジーク・ヤマト・フリードとも思っていると、トラッシュから今まで送られた赤のカード三枚が浮かび上がる。 でも半透明なそれらは、恭文さんの前で並んだと思ったらすぐ姿を消した。 『自分のトラッシュに赤のカードが『三枚以上』ある時、このスピリットを召喚できるっ!』 「バーストスピリットか。……ちょっと待て。三枚以上?」 「まさか……恭文さんっ!」 「教官がさっき無駄召喚したの、これを見越してっ!? ブレイドラもカキューソも、赤のカードよねっ!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「舞え、美しき暴君っ!」 炎に包まれたカードを右に振りかぶり、そのまま反時計回りに一回転。自分の周囲に赤い焔の陣を描く。 「鳴り響け、万雷の喝采っ!」 それから右腕を思いっきり振り上げると、炎は一気に弾けながら僕の身体を包み込む。 「紅と金色の焔とともに」 腕を右切上に振るいカードを投げつけると、炎が一気に振り払われる。それにより、姿を変えたアーマーが露出する。 今までのアーマーの代わりに、裾が長い赤い礼服を装着。胸元の輝きは、服の中に埋め込まれる形となった。 「愛輝かせる導となれっ! レベル3でバースト召喚っ!」 カードの上にコアが乗ると、場に赤いコアが現れる。それは回転しながら空へと昇り、派手に砕け散った。 その赤い粒子が空いっぱいに広がり、青かった空を赤色のステンドグラスへと作り替えてしまう。 それから光が差すと、ステンドグラス中央から閃光が走る。それが僕の場に着弾すると、虹色の爆発が発生。 「颯爽登場っ! 美の覇王セイバー・ネロ・クラウディウスッ!」 そして中から、生まれた爆煙を袈裟に斬り裂く影が現れた。一瞬で散っていった爆煙の中から現れたのは、金色髪の少女。 赤い礼服は胸元が派手に開いていて、大きめの乳房には谷間も見えた。 アップにした髪をきらめかせながらあの子は、湾曲した刃を振り上げ逆手に持ち替える。 その切っ先を地面へ突き立て、女の子は不敵な笑みを浮かべた。……なお、体長は大分小さい。 具体的には僕と同じくらい。てーかブレイドラに乗れそうなくらい。これは、どういう事だろう。 「なな……なにそれっ! なに、その銀河美少年的なのっ!」 「知らない。なんか衣装変わるのよ。とにかくセイバー・ネロ・クラウディウスの召喚時効果、発動。 自分、または相手スピリット一体を指定――今回はクレオパトラスを指定するよ」 セイバーは再び剣を順手で持って、クレオパトラスを指す。それから切っ先を天へ向けた。 すると赤かったシャンデリアが黄色に変わって、そこにクレオパトラスの姿が描かれる。 「これにより次の自分ターンエンドフェイズ時まで、そのスピリットの効果をこのスピリットのものとして扱う。 次に相手、または自分のスピリット一体を指定し、そのスピリットの系統を加えられる。 僕はまたクレオパトラス指定。クレオパトラスの系統をそのまま加えるよ。……さぁ、どうする」 「……ターンエンド」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 美の覇王 セイバー・ネロ・クラウディウス スピリット 7(3)/赤/覇王・暴君 <1>Lv1 6000 <3>Lv2 8000 <5>Lv3 12000 【バースト:自分のライフ減少後】 バースト発動時:自分のトラッシュに赤のカードが三枚以上ある時、このスピリットカードを召喚する。 Lv1・2・3『このスピリットの召喚時』 自分、または相手のスピリット一体を指定し、次の自分ターンのエンドフェイズ時までそのスピリットの効果をこのスピリットのものとして扱う。 指定したスピリットが合体している、またはマジックやネクサスで効果が追加されている場合、その効果も含めて扱う。 Lv1・2・3『このスピリットの召喚時』 自分、または相手スピリット一体を指定し、そのスピリットの系統をこのスピリットに加える事ができる。 Lv3:『お互いのメインステップ時』 自分の場にネクサスが配置されている時、相手の全てのスピリットのBPは-3000される。 この効果はエンドステップ終了時まで続く。 シンボル:赤 フレーバーテキスト:余は! 今、最高に! 楽しい! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ポッポール ブレイヴ 4(2)/黄/歌鳥・星魂 <1>Lv1 4000 <0>合体+2000 合体条件:コスト4以上 【合体時】『このスピリットの破壊時』 この合体スピリットのブレイヴを回復状態で自分のフィールドに残し、スピリットだけを手札に戻す。 シンボル:黄 イラスト:ぽぽるちゃ フレーバーテキスト: 見事な鳩胸に備える格納庫。しかし中身は空っぽという驚愕の真実。 ―星文学者リリア『八十八星夜話』鳩座― ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※TURN08→09 恭文 ライフ×1 リザーブ×4 トラッシュ(コア)×3 コア総数×12 手札:七枚 デッキ:26枚 スピリット:セイバー・ネロ・クラウディウス・レベル3(コア×5) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ↓ ↓ ↓ TURN09メインステップ開始時 恭文 ライフ×1 リザーブ×8 トラッシュ(コア)×0 コア総数×13 手札:八枚 デッキ:25枚 スピリット:セイバー・ネロ・クラウディウス・レベル3(コア×5) ネクサス:英雄皇の神剣・レベル1(コア×0) ヒカリ ライフ×3 リザーブ×1 トラッシュ(コア)×6 コア総数×10 手札:二枚 デッキ:29枚 スピリット:クレオパトラス・レベル2(コア×2 ポッポールとブレイヴ 疲労中) カピッパ・レベル1(コア×1) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「メインステップ――ここでセイバーのレベル3効果発動」 「え、まだなにかあるのっ!?」 「自分の場にネクサスが配置されている時、エンドステップ時まで相手スピリット全てのBPは-3000。 今の場だとカピッパはBP0で、クレオパトラスはBP6000として扱う」 クレオパトラスとカピパラの身体を、赤い輝きが包み込む。 それを受けて二体は、力なくうなだれながら震え始めた。 「な、なんて無茶苦茶な。というか、BP0って既に消滅状態じゃ」 「そう思ってバンナムに問い合わせたら、裁定中という返事が来た」 「問い合わせたのっ!?」 「まずはサラマントルをコスト1・レベル2で召喚」 さっきバウンスされたそれを召喚してから、ついさっき来たばっかのキーカードを出す。 「古竜を統べる皇よっ!」 カードをかざすと、台座の周囲に赤く燃えたぎる炎が発生。 炎が渦を巻き、天へ昇る螺旋となりながら僕の頭上へ球体状に集束していく。 それは言うならば太陽。でもそれにしては荒々し過ぎるのかもしれない。 だって炎は怒りをまき散らすが如く、激しく燃えているんだから。 「焔を光に変え、未来斬り開く導となれっ!」 そして集束した炎が弾け、僕の周囲に炎の雨が降り注ぐ。そんな中、黒い両手鎌を持った魔皇が降臨。 腕は左右三本ずつで、右の腕の一つが黒く刃が分厚いツインセイバーを持っている。 顔に装着している白仮面の双眸から赤い輝きを放ち、僕のキースピリットは雄々しく叫ぶ。 「焔竜魔皇マ・グー、コスト4・レベル1で召喚っ!」 ヒカリ、頬を引きつらせなくていいんだよ? これが僕のデフォだから。とにかく手札をセットっと。 「バーストをセット。英雄皇の神剣レベル1・2の効果で、デッキから一枚ドロー」 神剣が輝く事で、再び手札補充。手札は六枚……うし、いけるいける。 「アタックステップ――マ・グーの各種効果発動っ! トラッシュのコア五個をマ・グー上にっ!」 トラッシュのコア五個がマ・グー上へ移動すると、フィールドにも同じ数のコアが出現。 マ・グーはそれを胸で受け止め吸収し、身体の各所から炎を吹き上げる。 「マ・グーはレベル3・BP13000のダブルシンボルとなるっ! マ・グーでアタックッ!」 マ・グーは複数枚ある翼を羽ばたかせ、ヒカリへと迫る。ここは当然。 「……ライフで受けるよっ!」 そう来るよね。マ・グーはヒカリの前に展開した、黄色の障壁目がけて右手の鎌で袈裟に一閃。 それからツインランサーを右薙に打ち込み、障壁共々ライフを二つ撃ち砕いた。ヒカリは衝撃に押され、苦い顔で後ずさる。 ヒカリのリザーブにはコアが三個、手札にはコスト4のストームアタックとドリームリボン。 このままじゃアタックは通用しない。でも、たった一つだけそうならないための道がある。 「続けてセイバーでアタックッ!」 マ・グーは翼を羽ばたかせ、こちらへ戻って膝をつく。その様子を横目に見ながら、セイバーのカードを左に倒す。 セイバーは剣を右へ振りかぶり、そのままフィールドを蹴って突撃。 小さな身体からは信じられないような速度で、地をかける。……さて、ここからが賭けだ。 「フラッシュタイミング、ストームアタックッ!」 ヒカリはストームアタックのカードをかざし、再びフィールドに緑の風を生み出した。 「不足分のコストはクレオパトラスから確保するよっ! よってクレオパトラスはレベル1にダウンッ!」 リザーブからコアが三個、クレオパトラスから一個送られ、コスト支払いは完了。 風はサラマントルを包み込み、地に伏せさせてしまう。 「サラマントルを疲労させて、クレオパトラスを回復っ!」 そして風はクレオパトラスも包み込み、浮いたまま肩を落としていたクレオパトラスが力を取り戻す。 これでクレオパトラスとカピッパはブロックとして使える。僕のアタックは、通用しない。 「そのアタックはカピッパで」 「ちょい待った。もう一度フラッシュタイミングが発生だよ。……ヒカリなら絶対にストームアタックだと思ってたよ」 ヒカリが首を傾げるけど、次の瞬間には『まさか』という顔をする。僕はここまで温存していた、切り札のカードを取り出した。 カードには三角錐の結界が描かれ、それが小さな虫達の動きを戒めていた。 「フラッシュタイミング、トライアングルトラップを発動っ!」 「疲労マジックッ!?」 「コストはマ・グーからっ! マ・グーはレベル2にダウンッ! 僕はコスト1のカピッパを疲労っ!」 コアが送られると、三角錐の結界が発生。カピッパを包み込んで力を奪い、倒してしまう。 普通ならこれで終わりなんだろうけど、今回は少し違う。セイバーは更に剣を振りかぶり、赤い刃に黄色の光を灯した。 「更に――魔光芒発動っ!」 「ま……えぇっ! そんな、どうしてっ!」 「ヒカリ、さっき説明した事忘れた?」 ヒカリはそこでハッとした表情を浮かべ、セイバーを凝視する。でも、もう遅い。 「魔光芒の効果により、もう一度トライアングルトラップの効果が発動っ! コスト7のクレオパトラスを疲労させるっ!」 そのまま刃が袈裟に振るわれると、宿っていた黄色の光がクレオパトラスへと放たれる。 それは途中で緑色へと変わり、クレオパトラスへ着弾する前に大きく弾けた。 光は瞬間的にトライアングルトラップの結界となって、クレオパトラスの巨体を包み込む。 その中でクレオパトラスはもがき苦しみながら、音を立てて地面に倒れた。……ヒカリのコア総数は12。 そのうち10をポッポールの召喚とドリームリボン、ストームアタックに使った。 つまり今残っているコアは、クレオパトラスとカピッパ上にある二個だけ。当然ドリームリボンは使えない。 「……いけると思ったんだけどなぁ。ここまでか」 ヒカリもそれを察して、笑顔を浮かべながら両手を広げた。 「ライフで受けるよ。恭文君、楽しかった。またやろうね」 「もちろん。つーわけで挨拶には一人で行ってきて」 「それはひどくないっ!?」 セイバーは再び駆け出し、大きく跳躍。刃を振りかぶって、ヒカリに向かって袈裟の一閃。 それは展開した赤の障壁を、最後のライフ共々斬り裂いたのだった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 勝者、八神恭文選手っ!』 バトルフィールドから戻ってきた僕達を迎えたのは、盛大な歓声だった。それを受けて、つい隣のヒカリと微笑み合う。 『まさしく皇帝権限とでも言うべきだろうかっ! まさに暴君っ! 恭文選手、クレオパトラスの効果を用い、道をこじ開けたっ!』 『あ、相手スピリットの効果をコピーって、そんなのアリなの?』 『優亜もびっくりだよー。でもでもヒカリ選手、あれってドリームリボンを撃ってれば、全部止められたんじゃ。 フラッシュタイミングは防御側からが基本。セイバーをバウンスさせちゃえば、魔光芒の効果は出せなくなっちゃうもの』 優亜が首を傾げるのも仕方ない。でも……ちょっと読みが甘い。ヒカリも苦笑してるし。 『えっと、それも考えたんですけど』 『そこは私が解説しよう。おそらくヒカリ選手は、神速スピリットが出る事を警戒したのだろう。そうですよね』 『あ、はい』 『ここは先ほどの盤面を見てもらった方が分かりやすいだろう。スタッフー、ちょっと出してみてー』 ギャラクシーさんが声をかけると、最終局面の盤面が画面に出てきた。……早いなぁ。10秒かかってなかったよ。 『ありがとうー。……あそこでドリームリボンを使うのは、確かに優亜ちゃんが言うように効果的だったろう。 だがそれによるバウンスの結果、リザーブにコアが移動する』 実際に画面内でセイバーがバウンスされ、コアはリザーブに移動した。 『あの状況だとサラマントルもセイバーも、コアは二個以上。マッハジー辺りなら出せるコア数だ。 もし恭文選手の手札にそのような神速スピリットがあった場合、それによる追撃を許してしまう。 もちろん最終局面を見て分かる通り、そこからストームアタックを使う事もできない。 マ・グーのアタックをバウンスでかわす事も不可能。スピリットがいなくなってしまうからだ』 『あとは実際やられたように、疲労マジックによる壁突破もあるわよね。だからストームアタックだった。 あれなら相手の攻撃チャンスを削る上に、壁の調達もできる』 『あぁそっか。優亜、神速や疲労マジックまでは考えてなかったよー。さっすがギャラクシーさんー』 『いえいえー。もちろんこれはケース・バイ・ケースなので、必ずしも正しい行動とは限らない。 会場のみんなも覚えておいてくれ。……ちなみに』 ギャラクシーさんがこっちを見てくる。なにを言いたいかはすぐ分かったので、軽くお手上げポーズを取った。 『まぁまだ試合も残ってるので、そこは内緒で。ただ、ヒカリがストームアタックを撃ってくるのは、確信してました。 もちろんマ・グーのアタックをライフで受けるのも、バウンスされないのも。そうじゃないと、後続のアタックが止められませんし』 『完全に読まれてたんだ。……でも、次は負けないから。それで挨拶だよ?』 満面の笑みを浮かべ、とんでもない事を言ってきた。僕は思わずずっこけるけど、すぐ起き上がってヒカリを睨みつける。 『なんでまたそれを引っ張るのっ!?』 『というわけで、仲睦まじい二人に盛大な拍手をっ! 恭文選手、挨拶はしっかり行ってくださいねっ!』 『待ちなさいよ。その前にうちの両親へ挨拶しなさい』 『だからなんでじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーかやめてっ! 殺気を感じるのっ! フォークの気配を感じるのっ!』 『お兄ちゃん、もっと欲望を解放しようよ。もうそれしかないと思うな』 欲望を解放などできない。僕はそう思いながら、ステージ上で頭を抱える事になった。 ね、ねぇ……僕はどうしてこうなるの? どうして勝利の喜びを噛み締めていけないの? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今日の一枚――美の覇王セイバー・ネロ・クラウディウス。いがしょう様から頂いた、アイディアカードだ。 最大の特徴は召喚時に発生する、二つのコピー効果。特に効果コピーは、場に強力なスピリットが入れば輝くだろう。 だが効果コピーのターン制限、バーストの召喚条件もあるため、やや癖の強いカードとなっている。 ちなみにモチーフはローマの悪名高き暴君、ネロクラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。 史実では男性となっているが、なぜかカードは女性……はいそこ、Fate/EXTRAの話はしない。 (Battle20へ続く) あとがき 恭文(A's・Remix)「というわけで、ついに登場したセイバー・エクストラ」 フェイト(A's・Remix)「違うよっ!? ……いがしょう様、アイディアありがとうございました」 (ありがとうございました) 恭文(A's・Remix)「本日のお相手は八神恭文と」 フェイト(A's・Remix)「フェイト・テスタロッサです。えっと、今回はヒカリとA's・Remixな恭文とのBattleだね。……1話で収められてよかったね」 恭文(A's・Remix)「だねぇ。あと、みなさまお気づきでしょう。実はフラッシュタイミング確認がすっ飛ばしております」 フェイト(A's・Remix)「小説でやるとテンポ悪いから、アニメ的に必要がある時だけって感じになってるんだよね」 (……ちゃんとやりたいけど、やっぱり気になった。でも前提は変わらず) 恭文(A's・Remix)「それで今回僕が使ったデッキは、こちらとなります」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※恭文デッキ スピリット×22 美の覇王セイバー・ネロ・クラウディウス×1(とまとオリカ)×1 龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード×1 焔竜魔皇マ・グー×2 皇牙獣キンタローグ・ベアー×2 カグツチドラグーン×3 ワン・ケンゴー×3 サラマントル×2 カキューソ×3 ブレイドラ×3 マッハジー×2 ブレイヴ×4 騎士王蛇ペンドラゴン×2 刃狼ベオ・ウルフ×2 マジック×12 三札之術×3 トライアングルトラップ×3 絶甲氷盾×2 双光気弾×2 ウィングブーツ×1 インビジブルクローク×1 ネクサス×2 英雄王の神剣×2 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 恭文(A's・Remix)「こんな感じでなっております。それでヒカリデッキはこれ」 (『http://batspi.com/index.php?%E3%80%90%E8%A6%87%E7%8E%8B%E7%B7%A833%E8%A9%B1%20%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%80%91』) フェイト(A's・Remix)「あれ、これだとクレオパトラスがピン差しじゃ」 恭文(A's・Remix)「その分ドリームリボンを入れてたりする。なお、一人だけ第四弾環境です」 フェイト(A's・Remix)「ここはやっぱり、ネフェルティモン絡み?」 恭文(A's・Remix)「そうそう。それで僕の方は、セイバーの効果を活用するためにネクサスが」 フェイト(A's・Remix)「本家だと固有結界になっているアレだね」 恭文(A's・Remix)「あとはキンタローグの焼き効果を強化するためでもある」 フェイト(A's・Remix)「というと?」 恭文(A's・Remix)「英雄皇の神剣はレベル2から、BPパンプの効果があるのよ。 系統:覇王持ちをBP+3000とする。バーストをセットしてたら、更にBP+5000」 フェイト(A's・Remix)「じゃあえっと、バーストをセットしてたら合計8000のアップ?」 恭文(A's・Remix)「うん。だからキンタローグの焼き効果を上げる事ができるの」 (レベル3なら、ジーク・ヤマト・フリードだって焼けます) 恭文(A's・Remix)「とにかく目指したのは、古竜と皇獣の両立。ハイビートでも攻められるし、焼きに移行もOKなデッキ」 フェイト(A's・Remix)「今回は後者の方が発揮されたんだね」 恭文(A's・Remix)「バウンスされたから、あんま目立ってないけど」 (それが残念) 恭文(A's・Remix)「というわけで、次回からは二回戦突入。いよいよハジメがあれとバトルです」 フェイト(A's・Remix)「誰とバトル? やっぱりテガマル君かな」 恭文(A's・Remix)「そこはまた次回に。それじゃあみんな、またねー。お相手は八神恭文と」 フェイト(A's・Remix)「フェイト・テスタロッサでした。……ヤスフミ、ちょっとお話だから。うん、お話」 ヤスフミ、「やめてー!」 (でも閃光の女神とフォークは止まらない。 本日のED:上木彩矢『Secret Code』) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あむ「えっと、あのクレオパトラスってなにモチーフなの?」 恭文「あれはクレオパトラだよ。あむも名前くらいは聞いた事あるでしょ。古代エジプトのファラオだよ」 あむ「あ、うん。めちゃくちゃ美人だってのは……え、ファラオッ!? それって男じゃんっ!」 恭文「作者もそう思っていたそうなんだけど、違う。Wikipediaによると、ファラオは古代エジプトの君主の称号。 古代エジプトで王様は、性別問わずファラオと呼んでたわけだよ。クレオパトラは最後のファラオとされている」 あむ「そうだったんだ。……でも恭文、ヒカリはなんでこんなカード持ってたの? みんな知らないって言ってたし」 ヒカリ(デジモン02)「えっと、前に家族でイタリアへ行った時、迷子になっちゃって」 あむ「え、マジッ!? 危ないじゃんっ!」 ヒカリ(デジモン02)「でもテイルモンと一緒だったから、不安はなかったんだけど。 それで道を聞くために大きな洋館へ入ったら、とても綺麗な女の人とその旦那さんが出てきたの。 道に迷った事を話したら、そこからちょっとだけお茶を御馳走になって……そうしたらおみやげでこのカードをくれて」 あむ「……おみやげでバトスピカード?」 ヒカリ(デジモン02)「うん。私にぴったりだからって……ちょっと不思議な感じがしたけど、綺麗だったからそのまま」 あむ「なんだろう、なにか引っかかるような」 恭文「まぁ不思議な話ではあるよね。どうしてバトスピカードなのかーってところとか」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |