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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース02 『ギンガ・ナカジマとの場合 その2』



・・・洗い物をしながら、色々考えてた。それが終わって、リビングでボーっとしながらも、考えてた。





これから先の事とか、色々。





やりたいことか。やっぱ強くなりたいってのが、大きいよなぁ。





僕は・・・ギンガさんが望んでいるようには、きっとなれない。





局員になりたいとも、役職に付きたいとも、やっぱり思えない。





世界や不特定多数の人間、組織のためになんて、命は張れない。





もっと言うと・・・どうでもいい。





僕の手はそれが出来るほど綺麗じゃないし、大きくもないから。





・・・ちょっとだけ、それは嘘かな。組織や世界はともかく、人をどうでもいいで済ませてたら、きっとここに居ない。





でも・・・。うーん、やっぱ一度別の人に相談した方がいいのかも。





うし、後で連絡してみるかな。その、連絡取れなくて心配もかけてるし。










≪マスター≫

「なに?」

≪ギンガさん、遅くないですか?≫





そう言えば・・・入浴開始から既に1時間以上。いや、女の人は長風呂だとやんなるくらい知ってるけど。



・・・よし。





「ちょっと見てくる」

≪襲わないでくださいよ?≫

「んなことするかボケっ!!」










リビングでお笑い番組をプカプカ浮きながら見ているアルトは気にせず、お風呂場へと急ぐ。





・・・そして、思い出す。昼間のことを。





でも、それでもギンガさんの事を振り切れない。原因は分かってる。





『これも忘れないで。・・・私は、同じ手で守られたの。
あなたが、私に今をくれた。守ってくれた。だから・・・私はここに居るの』





そう言って、僕の手を強く握ってくれた。それが、すごく嬉しかったから。





振り切ろうとすると、あの時の言葉と、手の温もりが、それを許さない。





ギンガさんの言うような生き方もある。もういいんじゃないか。そう言ってくる。










「だけど・・・なんだよ」










・・・ギンガさん、確かに僕の手は、ギンガさんを守ったかも知れない。





でもね、壊して、奪った手なのも、変わらないんだ。絶対に。





それは、どこかでちゃんと背負わなきゃいけないんだよ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース02 『ギンガ・ナカジマとの場合 その2』




















・・・とにかく・・・アレだ。お風呂場に着た・・・もとい、来た。現在、脱衣場です。





ギンガさんの服とかは気にしない方向で。見えてしまった白の下着も同じく。





いや、一応ノックしたよ? 反応なかったけど。





とにかく、もういっちょだ。今度はお風呂場の仕切りをノックする。ここをいきなり開けたら、本当に犯罪だしね。










「ギンガさーん」










・・・返事がない。よし、もういっちょ。










「・・・ギンガさーん、まだお風呂中?」










・・・・・・返事、なし。よし、もう一回。










「・・・・・・・・・ギンガさん、ねぇ・・・大丈夫?」










・・・やっぱり返事なし。なので、僕は。










「ギンガさん・・・」










左拳で殴られることを覚悟しつつ。










「ゴメンっ!!」










お風呂場へ突入。そして、僕が見たのは・・・。










「ギンガさんっ!?」










お風呂に浸かって、顔や身体を真っ赤に・・・要するに、のぼせた状態のギンガさんだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・あ、気持ちいい。





おでこがひんやりして、それだけで身体の熱さが沈んでいくみたい。





というか、私・・・あれ?





目をゆっくりと開ける。そして見えたのは部屋の天井。というか、私の部屋。ベッドの上で横になってる。





あれ? 私・・・あれっ!?










「・・・お風呂でのぼせてたんだよ」





右横から声がした。そこを見ると・・・なぎ君が居た。少し、心配そうな顔で私を見ている。



あ、そうだ。ゆっくり・・・ゆっくり考えてたら、つい・・・。





「・・・なぎ君が、運んでくれたの?」

「・・・まぁ、一応」





顔、すごく赤くなった。その意味を、ボンヤリとした頭で考える。

今の私・・・バスタオル一枚。一応、タオルケットが肩までかけられているけど。

髪や身体が、どこか濡れたままということも・・・ない。



・・・そっか。見られたんだ。なぎ君に、私の裸。





「・・・ありがと」

「え?」

「だって、また助けてくれた」





・・・いいか。他の人なら嫌だけど・・・なぎ君なら。私、嫌じゃない。



それに、想像出来るもの。必死に私を浴槽から出して、顔、真っ赤にしながら、風邪引かないように一生懸命にフォローしてくれて・・・。

現に、よくなぎ君の身体や服を見ると、あっちこっち濡れてるから。



その、なぎ君も男の子だから、多少はやましい気持ち、あったかも知れない。けど・・・。

私の知ってるなぎ君は、それよりも私を助ける事を優先してくれたはずだから。





「・・・怒らないの?」

「助けてくれたのに、怒る必要なんてないよ」





その、少しは・・・出てきてるよ? 恥ずかしくて恥ずかしくて、その・・・。





「ありがと」

「・・・うん。あの、僕は部屋に戻るから」

「・・・嫌」



口を突いた言葉は、そんなものだった。自分でも驚く。でも、止まらない。



「もう少し、側に居てくれないかな。その・・・なぎ君が居ると、安心するから」

「ギンガさん・・・。あの、でも」

「・・・お願い」

「・・・分かった。なら、もう少しだけね」










私は、やっぱりおかしい。





うん、おかしいよね。きっと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・それでも、きっちりと朝はやってくるのです。本当にきっちりと。





なーんとなく、こう・・・一緒に朝ごはんの仕度をしながら思う。





もっと言うと、大量のだし巻き卵を生成しながら思う。空気が微妙だと。





いや、僕の心情だけが微妙なんだけどさ。だって、ギンガさんは制服に青いエプロンを着けて、お味噌汁の味見してるし。





様子は、至っていつも通り。昨日のことを気にする様子もない。こっちは大変だったというのに。





・・・うん、見た。すごいしっかりと。エリオじゃないけど、上から下までクッキリと。




なんというか、理性が吹き飛びかけた。だって、すごく・・・綺麗で。





なんというか、女の子って・・・よく分からない。










「なぎ君、味見お願い」



ギンガさんが、小皿を差し出してくる。その中には、白味噌仕立てのお味噌汁。

僕は、それを受け取り、口をつける。・・・うん、さすがギンガさん。いいお味だよ〜。



「・・・どうかな?」

「・・・バッチリ」

「よかった」



そう言って、ギンガさんは笑う。優しく、明るく、いつもの笑顔を、僕に向けてくれる。

・・・本当に気にしてないのかな。笑顔、いつもと変わんないし。



「・・・ギンガさん」

「うん?」



僕は、すでに焼き終えて切り分けていた卵焼きをつまむ。



「あーん」

「・・・あ、あーん」



そのまま、ギンガさんの口の中に放り込んだ。

というか、なぜこれで赤くなるのかがわからない。アレはセーフでこれがアウトの理由を教えて欲しい。



「・・・どう?」

「・・・バッチリ」

「なら、良かった」





さて、これで卵焼きは大丈夫。あとは・・・。





「魚ももうそろそろかな?」





ナカジマ家のキッチンは、どこのレストランの厨房かと思うくらいに設備が整っている。もうね、一気に十数人分のご飯が作れるの。

・・・なぜそんな立派な設備かという理由は、言わなくても分かるよね?



そして、そんなキッチンにある大型グリルで焼かれているのは・・・シャケ。



卵焼きに、焼きシャケに、ジャガイモと玉ねぎがたくさん入ったお味噌汁。あと、ほうれん草のおひたしに、炊きたての白いご飯。

そこにそこに、卵と納豆とノリがついてくる。なおかつ、量はナカジマ家サイズ。



・・・すごいなこれ。いや、改めて考えると、スゴすぎる。料理好きとしては、夢のような贅沢空間だ。





「ね、なぎ君」

「なに?」

「あの、今日なんだけど・・・」



あぁ、そう言えば今日は・・・。



「隔離施設に行くんだよね?」

「うん。一緒で大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。皆にも会いたいしさ〜」





ここ最近、ゴタゴタしてたしなぁ。うし、ウェンディでもからかって、ストレス解消するか。





「そ、それは困るんだけど・・・」

「冗談だよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・でもね、この間の調理実習がよっぽど楽しかったのか、みんな会いたがったよ」

≪特にディードさんとルーテシアさんですか?≫

「・・・正解」





朝食は完成。そして僕は卵かけご飯をかきこみながら思う。いや、なんでその二人?



・・・あぁ、すみません。分かります分かります。僕が原因です、はい。

というか、今度こそルーテシアの『お父さん』は修正しないと。アレは危険だ。





「・・・なぎ君」

「・・・なに?」

「諦めることって、大事だよ?」

「ちょっとまってっ! それどういう意味っ!?」





そしてギンガさんは、僕から目を背けた。なんだか、心なしか申し訳なさそうなオーラが見えるのは、気のせいじゃない。



つまり、修正は無理だと。うぅ、カレルとリエラの再来ですか? ありえないでしょこれ。

メガーヌさん、恨みますよ?





「・・・そうだ」

「なに?」

「解散後、更生プログラムに本格的に協力してくれると嬉しいな」



本格的・・・か。



「僕、先生やれるほど人間出来てないよ?」

「そんなことないよ。この間だって、ちゃんと出来てた。というか・・・」



ギンガさんの表情が、少しだけ暗い物になる。うん、そう見えた。



「それを言えば私もだよ」

「・・・んなことはないでしょ」



この間のを見るに、そうとうちゃんとしてたし。うん、ギンガ先生だった。



「あるよ。教えながらね、これでいいのかな、大丈夫かなって、すごく不安になる時がある。私、先生やれてるのかなって」

「・・・そっか」

「そうだよ。・・・ね、なぎ君。そういうの無し」



・・・無しってなにがよ。



「もしかしたら、昔のことを理由に先生は出来ないって考えるのかも知れない。でも、これからはそういうの無し。
・・・ディードに言ったこと、嘘になっちゃうよ?」





その言葉が胸に突き刺さった。だって、僕は以前ディードに言ってるから。



『過去を理由に諦めたりしたらダメ』・・・と。



そして気付く。僕は、自分で言ってて、それを出来てないと。





「・・・ギンガさん」

「うん」

「ズルいよ」

「そうだよ、私・・・今ズルいことしてる。でも、それでも、なぎ君に諦めて欲しくなんてないから。今までとは違ってもいいんだって、知って欲しいから」

「・・・左様で」










・・・それだけ言うと、お碗を取って味噌汁を一口。





なんだろ、少ししょっぱい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ということで、特別講師のどうも僕です」

「せんせー! 今日は調理実習じゃないっスよ〜!?」

「うっさいボケっ! そんなの分かってるわっ!!」





うぅ・・・。結局ギンガさんとペアで更正プログラムの講師やることになりました。うん、調理じゃないのね?



どうしよ、やっぱ先生はガラじゃない・・・。うん、騎士以上だ。





「恭文先生、質問があるっス」

「うん、なにかな」

「フェイトお嬢さんからディードには何時乗り換え予定っスか?」



ゴスっ!!



「・・・さて、授業を始めたいと思います。なお、そこでなぜだか頭頂部を抱えているアホの子ナンバーワンなウェンディは放置で」

「・・・恭文、体罰はマズいんじゃないかな? ほら、受刑者への暴力行為って厳罰だし」

「嫌だなぁセイン、人聞きの悪いこと言わないでよ。これは・・・『愛の鞭』なの。教育なの。それに殴られるより、殴った方が痛いのよ?」

「お父さん、それ無茶苦茶だよ・・・」

「・・・お前、やっぱおかしいぞ?」




ルーテシアとアギトのツッコミはスルーです。つか、そういうのは2世代前のスポコン物に出てる方々に言って欲しい。



・・・あ、大事なこと忘れてた。





「ギンガさん、今日の授業ってなにやるの?」

「・・・恭文、さすがに先生でそれはどうかと姉は思うぞ?」

「あぁ、いいのよチンク。私も言ってなかったから。えっと、性教育よ」



・・・は?



「性教育?」

「うん」

「僕と、ギンガさんで?」

「・・・うん」











・・・・・・はぁっ!? つーか、あなたはどうして顔を赤らめるっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・えー、要するにね。男の子は興奮すると、血液が集まって・・・」

「そう・・・なるの?」

「そう・・・なるらしいの」



なるのよ。お見せすることは出来ないけど。



「恭文はフェイトお嬢様でそうなるんだよね」

≪なりますね≫

「恭文、ケダモノだね」



オットーもなに言ってるっ!? つーか、それ普通っ! 男の子が好きな子でそうなるのは、普通だからっ!!



「恭文さん、そうなんですか?」

「お父さん、お母さんが居るのにダメだよ」

「お前は女なら誰でもいいのか?」

「いいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



あぁ、なんでまたこれっ!? つーか、遊ばれてるのか、僕はっ!!



「ねね、恭文。一つ質問っス」

「なに?」

「私見てもそうなるっスか?」

「ウェンディが、もうちょい大人で素敵なレディに育ってくれれば、なるかもね」



僕がそう言うと、ウェンディがとても不満そうな顔をする。

というか、膨れっ面になった。



「・・・なにかご不満ですか?」

「恭文はあれっスよ、私に優しく無いっスっ! もっと優しさぷりぃずっスっ!!」

「嫌だなぁ、ウェンディ。僕は充分優しいよ? ね、ギンガさん」



僕がそう言うと、ギンガさんが僕から目を逸らした。・・・おーいっ!?



≪・・・ふっかつのじゅもんがちがいます≫

「意味わかんないよバカっ!!」



・・・と、言う感じで、授業はとても・・・微妙な感じで進行している。それも当然。だって、僕もギンガさんもそういう経験無いし。



「で、とにかくアレ・・・なのよ」

「恭文、姉は今一つ分からないのだが・・・」

「奇遇ですね、チンクさん。僕もサッパリなんです」

「まさか、これは実習するわけにはいかないしね・・・」



そう、セインの言うようにこれはそんな真似出来ない。

つーか、出来ても嫌なんだよっ! いったいどこのR18小説っ!?



「・・・よし、ここからは授業内容を変更しますっ!!」

「ちょっとなぎ君っ!?」

「反論は認めない。つーか、なんで誰も教材ビデオとか用意してないのっ! おかしいでしょうがっ!!」

「その、用意していたのが、施設の規約に引っ掛かっちゃって」



いったいどんなの持ち込もうとしてたっ!? 規約に引っ掛かるっておかしいでしょうがっ! ・・・おかしいでしょうがっ!!



「なんで二度言うのっ!?」

「大事な事だからだよ。・・・というか、ギンガさん」

「なに?」

「やるなら、メガーヌさん先生にしなさい。あの人ならいけるから」



ノリもいいし、経験者だし、マジな話も出来るだろうしね。・・・さて、内容変更は決定として、なにするかな?



「ボクとしては、延々恭文をいじめる授業がいいな」

「こらオットーっ! 授業じゃないからそれっ!!」

「あ、じゃあ・・・恭文は私に優しくないっスから、優しくなるように私が恭文を再教育」

「よし、授業はやめて、部活にしようか」

「やっぱり優しく無いっスー!!」



・・・気にしないで欲しい。あ、そう言えばノーヴェ、ディエチ。



「・・・なんだ?」

「・・・なにかな」

「二人して顔真っ赤にして、ずっと黙ってたけど・・・もしかして」

「それ以上言ったら、マジでぶっ飛ばすっ!!」

「恭文、狙い撃たれたいの?」

「ごめんなさい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ということで、部活です。今回は・・・ちょっとだけ、お話です。










「・・・恭文」

「なに?」

「・・・恭文は、どうして嘱託魔導師やってるっスか?」

「・・・ウェンディ、また突然だね」

「いいんっスよ。なんと言うか、気になったんっス。ギンガやスバルにティアナ。六課の人達は局員じゃないっスか」

「・・・そう言えば、お父さんだけ嘱託だよね。どうして?」



ルーテシアがウェンディの発言に乗っていく。・・・あ、良い機会だし、こういう話、少ししてもらおうかな。



「どうして・・・か」

「・・・恭文?」

「うーん・・・自由に動けるのが大きいかな」



オットーが、なぎ君を凝視する。・・・いつに無い位真剣。興味、あるみたい。



「局員だと、命令ないと動けないし、海やら陸やらの縄張り意識に巻き込まれるしね。めんどいのよ」

「あー、そう言えば管理局って、そういうの有ったっスよね。ドクターのとこに居た時に、基礎教育で教わったっス」

「でしょ? ・・・つか、あなた方のお父さんはまたいい教育するね」

「そこが管理局のつつき所で愚かなとこって言ってたっスよ。ね、みんなもそうっスよね?」



そのウェンディの言葉に、全員が頷く。・・・ゴメン、そこは知りたくなかった。



「・・・ギンガ、すまん。姉もそれは教わった」

「ううん、大丈夫だから。事実だし」



・・・命令が無いと・・・縄張り意識・・・か。やっぱりなぎ君には、上司を信頼してって感覚が無いのかな。



「それに、僕は結局飛び込んでいくしね。部隊入って、周りの人達にそれで迷惑とか、かけたくない」

「でも、お前、今は六課に居るじゃねぇか。スバルやティアナ達とも、上手くやってんだろ?」

「・・・そだね。でも、基本は変わらずよ? 迷わず、躊躇わず・・・だよ」



そうだね。なぎ君は結局飛び込む。昨日の会話じゃないけど、やらなきゃいけないと思ったら・・・。



「恭文」

「うん?」

「どうして、そんな風に考えて飛び込むの? ボク、少し興味がある。事件に関わるなら、局員でもいいと思うんだけど」



私も、前に同じ事を言った事がある。飛び込む必要なんて、無い。皆と一緒に・・・と。そうしたら、苦い顔で無理だと言われた。



「・・・昔ね、地球の方で有名な歌手の人を護衛したことがあるんだ」

「護衛? ということは、その方は狙われていたのか」

「チンクさん、正解です。まぁ、その一件自体は無事に解決したんですけど・・・」










・・・そして、なぎ君は話してくれた。





その一件に関わることで出会った人達のことや、その歌手の方のこと。

法律無視上等で、悪意を潰していく警備部隊の方々と話して、とても感銘を受けたことや、銃器を持った相手と魔法無しでやり合ったり・・・。





・・・って、なにそれっ! 銃器と言うことは、質量兵器っ!?










「その歌手の人を狙ってた奴が、マフィアの末端の奴やらを引っ張ってきて、銃器持ってコンサート会場で大暴れかまそうとしたの。
でも、地球は管理外世界だから、当然派手な魔法は使えない。相手もこっちの世界を知ってる人とかじゃないから」

「当然、魔導師の恭文も魔法は使えないというわけだよね。ね、それっていくつの話なの?」



セインがそう聞くと、なぎ君から答えが帰ってきた。でも、それに私も皆も驚くばかりだった。



「11歳だね」

『まだ子どもの時の話なのっ!?』

≪おかしいでしょ? 色々と≫










・・・とにかく、話は続く。




その狙われた歌手の方と色々話して、仲良くなったこと。その中でこれからの事をあれこれ考えた事。簡単にではあるけど、話してくれた。




チンク達はもちろん、私も知らなかった話を。










「・・・そうして、気付いたの。その歌手さんみたいに、認める事も出来ない理不尽に晒されて、泣くことしか出来ない人を守る。
それが、僕のやりたい事の一つだって。だから、もっと強くなりたんだって。・・・それでね、実はその直後に局入りも少しだけ考えたんだよ」

『えぇっ!?』





これには、私も驚いた。だって、今までそんな話一度も・・・。





「オットーが言ったように、局員でもそれは出来るしね。ううん、むしろそれでも良いかなって考えてた。ただ・・・」



そこまで言って、なぎ君の表情に少しだけ影が差した。



「少し後に局の不正と言うか、暗部関連で事件に関わってね。それで局入りする気が無くなったの」

「で、恭文は今日までずっとそのまま。今は私達の1日先生してると」



セイン、その言い方はやめない? 色々台無しだよ。



「・・・正解。ま、皆もご存知の通り、局って暗いとこは思いっきり暗いしさ。それに背中預けるのも、関わって振り回されるのも、嫌だった。
管理局という居場所は、局員と言う立場は、僕の理想や意地を通せるものじゃ無いのかなと。それなら、皆の1日先生してる方が楽しいでしょ」





・・・やっぱり、嫌いなんだね。局の事。



本当は好きになって欲しい。その中でやりたい事、見つけて欲しい。なのに・・・上手く、いかないな。





「・・・恭文さん」

「どったのディード。・・・いや、何でそんな感心顔?」



そう、ディードは妙に感心顔だった。あと・・・ルーテシアとチンクもだね。



「その時のお話、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?」

「・・・聞きたいの?」

「はい」



ディードは即答した。・・・やっぱり、なぎ君と絡むと何時もと違う。楽しそうで、嬉しそう。



「私も子どもの頃のお父さんの話、聞きたい。お父さん、話して?」

「姉も頼む。まさか魔法無しで質量兵器の相手をした事があるとは思わなかった。不都合なければ、是非聞かせてくれ」

「・・・分かりました。なら、もうちょい詳しく」



そうして、話し始めたなぎ君に私は、念話を繋ぐ。



"・・・なぎ君"

"なに?"

"どうして、話してくれなかったの?"



私、何回も話をしてる。どうして・・・かな。今まで、全然話してくれなかった。



"・・・口に出すの、恥ずかしかった。なんつうか、アレだよ。見せたくなくて、他人から見えないように、蓋してた"



・・・そっか、蓋を外してくれたんだね。だから、話してくれたんだ。



"それにさ、こういう話して、ギンガさんに期待持たせたくなかったから"

"なら、今は期待して、いいのかな"

"それはやめて。・・・僕、やっぱり局入りとか考えられないから"

"あのね、局員としてやっていくの、本当に無理かな? その気持ちがあるなら、きっと・・・"





きっと出来る。信頼出来る上司と仲間と一緒に、世界やそこに住む人のために。なぎ君一人だけで飛び込まなくても、きっと・・・。





"・・・そういうの、好きじゃない"

"なぎ君"

"諦めてるとかじゃない。組織の都合で振り回されて、躊躇いたくも、迷いたくも無いの。それで取りこぼすのは、守りたいものを守れないのは、嫌"

"なぎ君、昨日も言ったけど、そうやって全部一人で背負わなくていいんだよ? それに、取りこぼしても・・・ううん、取りこぼしたりなんて"










しない。そう言おうとして、言葉が止まった。だって、それは嘘だから。

優秀で信頼出来る上司ばかりじゃない。局がなんにも取りこぼして無いなんて、嘘だ。





違う。私がなぎ君に伝えたいことは、こんな事じゃない。嘘なんて伝えたいわけじゃない。もっと・・・違うもののはず。





・・・私、どうすればいいんだろう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして夜。僕とギンガさんは、皆にまたねと別れを告げて、ナカジマ家に・・・そう、ナカジマ家なの。





僕は108の隊舎で大丈夫って言ったんだけど、ダメだった。うぅ、今日もゲンヤさん居ないのに。





とにかく、借りてる客間で僕は電話をかける。





ま、なんと言うか・・・相談事?










『・・・はい』

「あの、突然すみません。というか、お久しぶりです」



声は男性のもの。僕のよく知る人の声。



『あぁ、久しぶりだな。しかし、いきなりどうした』

「いえ、ちょっと恭也さんにご相談がありまして・・・」



そう、今はドイツで暮らしている高町・・・いや、月村恭也さんだ。

なお、名字が変わったのは、忍さんと結婚して、月村家に婿入りしているから。今もなお、僕の優秀な師匠達の一人である。



『相談? ・・・またフェイトちゃんとなにか有ったのか』

「またって言うのはやめてください」



いや、色々あったけどさ。



「とにかく、今回は違うんですよ。実はですね・・・」





・・・・・・そうして、現状を話した。色々と迷っていることも。





『諦めている・・・か。またその子は痛い所を突いてくるな』

「・・・そうですね、痛かったです」



自分の事、どっかで諦めてたのかなって、あれで気付いた。



「ただ」

『それと局入りすることが、お前の中では結び付いていかないか』

「はい」



その、昨日アレコレ話したけどさ、どうしても無理なの。今まで見てきた局と、僕のやりたいこと。どうしても結び付かない。

ぶっちゃけると、局に入って明るい未来、想像出来ないの。



『だが、お前は迷っている。それも事実だ。俺が思うに、現状見ているものだけでは足りないからだろう』

「そう・・・ですね」



分からない。忘れないで、変わって、どうしたいのか。どこに行きたいのか、ちっとも分かんない。



『焦らず、もう少しだけその子と考えてみろ。お前もいい年齢だ。今ここで、将来のことを真剣に考えても、損はないだろ』



僕は、恭也さんの言葉に頷いた。まぁ、間違いじゃないから。胸に感じる苦い物は、それが良薬だからだと、納得することにする。



『まぁ、お前の場合はフェイトちゃんの事が第一なんだろうがな』

「・・・そうですね」



やっぱり、好きだしね。気持ち、変わってない。・・・そっか。



「恭也さん」

『なんだ』

「距離って、大きいですよね。離れてたら、ダメなこともある」

『・・・そうだな』










・・・少しだけ、ギンガさんの言葉に素直に頷けない理由、分かった。





僕、フェイトを助けに行けないのが、嫌なんだ。一つ所・・・108に居たら、なんか有った時でも、すぐに動いたり出来ない。





この間の一件では、それで後悔したしね。・・・どうしよ、ホントにさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・そやから言うたやろ? アイツは手強いって』

「はい。知ってはいましたけど、改めて実感しました」



現在私は、八神部隊長に相談中。・・・どうしよ。やっぱりなぎ君、強い分頑なだよ。



『つか、ギンガ。マジでなんでそこまでするんや。ぶっちゃけ、局員だけが生き方ちゃうやろ』

「・・・それは、わかってます」



自分でも、よく分からない。私、なぎ君にどうして欲しいんだろ。



『なんかあるん? アンタ自身の理由で、局入りして欲しいとか、前に言うたみたいな危ないの放っておけないとか以外で』



私自身の理由・・・。



「その、なんて言うかこう・・・嫌なんです」

『・・・はい?』

「すみません、上手く言えないです。ただ、なぎ君と離れてると、不安で、苦しくて・・・」





・・・私は、なぎ君に今みたいに一人で飛び込んで欲しく無い。だから、出来るなら部隊に入って欲しい。



でも、それだけじゃ無くて、こう・・・嫌だ。

なぎ君と距離が離れてると、不安になる。また無茶してないかなとか、元気してるかなとか。

逆に、一緒に居ると安心する。楽しくて、幸せで。なぎ君が笑ってると、私もなんだか嬉しくて・・・。



私、段々となぎ君のことを考える時間、増えてる。ある時を境に、今まで以上に。



JS事件の時、私達はケンカをした。あの時、ケンカした直後は、後悔した。

なんであんなに感情的に責めたのかと。なぎ君は無茶する時は何時だって理由がある。なのに、私・・・全く聞く耳持たなかった。

・・・今も、そうだね。私、無茶するなぎ君を理解しようとしてない。見ようともしてないかも知れない。学習してないな。



とにかく、話を戻す。・・・明日、メールしよう。ううん、ちゃんと通信でもいいから、顔を見て話そう。

それで、ちゃんと話して、またいつもみたいに・・・って、そんなことばかり考えてた。

でも、なぎ君が行方知れずになって、連絡も取れなくなって、それで・・・更に後悔したっけ。なんでこのタイミングでケンカしたんだろうって。



もし、このまま会えなくなったら。仲直り出来なくなったら・・・。

仲直りするまで、そんな気持ちで胸がいっぱいで、苦しくて、悲しくて、誰かに見られないように泣いたりもして。





『・・・なぁ、ギンガ』

「はい」

『それ、恋や』










・・・・・・・・・・・・はい?










『いや、せやから、それ恋やて。それもぶっちぎりや』

「・・・魚ですか?」



なんで、今魚の話になるんだろう。うーん・・・。



『全然ちゃう。つーか、その返しは使い古されとるから。要するに、アンタは恭文に恋しとるんよ』

「・・・え?」

『アンタ、マジで自覚無いんか・・・。ほな、一つずつ確認してこか。まず、恭文のこと、心配なんやろ?』



・・・はい。



『で、無茶して欲しくなくて、局入り進めとる。でもな、そこから間違いや』

「間違いって、どういうことですかっ!?」

『局入りどうこうなんて関係無い言うことや。・・・いや、全く関係無いわけやないやろうけど。とにかく、気持ちはきっとシンプルや。
恭文に自分の側に居て欲しい。もしくは、アンタが恭文の側に居たいんよ』



そんなことはない。私は、なぎ君の将来のことが心配で・・・そう言おうとした。

でも、言えなかった。身体が、心が言ってる。それは嘘だと。全部じゃない。でも、それだけと言うのは、嘘だと。



『なにより、ギンガ』

「・・・はい」

『うちの知る限り、離れてると不安で寂しくて、側に居ると幸せで、相手も笑ってると嬉しいは、典型的な恋の病よ?』










・・・つまり、私は、なぎ君を・・・好き?










「・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・ギンガさん、またなんかあったのか? 今、叫びが聞こえたぞ。










『・・・なにかあったのか?』

「あー、大丈夫ですよ。・・・多分」



後で様子を見に行こう。うん、絶対だ。



『・・・そうだ、恭文』

「はい?」

『フィアッセにももう一度連絡しておけ。どうも相当心配しているらしい』



・・・メールはしてるのにな。でも、しゃあないか。向こうからすると、急に連絡取れなくなったのと同じだし。



「分かりました。なら、今すぐに・・・」

『そうだな、そうしておけ』

「そうします。あと、恭也さん。・・・ありがとうございました」

『・・・問題ない』










ということで、僕は恭也さんとの通話を終えると、また電話をかける。





ベルが数回鳴る。・・・今は出れないのかなと思い始めた時、電話が繋がった。










『・・・はい』



声は、女性のもの。というか・・・なんで怒ってるっ!?



『当然だよ。婚約者の私に対して、今までメールだけしか』

「それはもうやめてー!!」

『やめないよ。・・・でも、久しぶり。元気してる?』

「・・はい」





声の主は、当然フィアッセさん。今もなお、スクールの校長として、歌手として、歌い続けている歌姫。





≪そして、真・現地妻です≫

「その呼称はマジでやめてっ!!」

『あ、私は大丈夫だよ? 欲を言えば、婚約者って言って欲しいけど』



どんな要求っ!?



≪フィアッセさん、声だけで失礼します。お久しぶりです≫

『うん、お久しぶり。アルトアイゼン。
・・・ね、そっちの世界で色々あったんだよね。ケガとかしてないかな』





・・・なお、フィアッセさんに魔法のこと、バレました。だから、当然アルトの事も知ってる。



ちょっとね、あの一件から一年経たないうちに、、またイギリスで魔法絡みでゴタゴタして・・・ね。





「ケガは大丈夫です。別に今入院してるとかではありませんし」

≪私もマスターも、元気にやっています≫

『そっか、良かった。・・・ね、なにかあった? 事件とかとは別に』



フィアッセさんの声が、心配そうなものにいきなり変わった。



「またいきなりですね」

『声がいつもと違う』



即答でそんな答えが帰ってきた。見抜かれてるって、どういうことだろ。



『ね、話してくれる?』

「・・・分かりました。実は・・・かくかくしかじか・・・ということなんです」

『・・・そっか、悩んでるんだ。恭文くんも、そういう年齢なんだね』



らしいですよ。こういうの、めんどいんだけどなぁ。でも・・・しゃあないか。きっと必要なんだろうから。



『そうだね。いっぱい悩んでいかないと』

「やっぱ、そういうものですか」

『そういうものだよ、私もそうだったから。・・・そうだ。恭文くん、こっち来れないかな』

「・・・え?」



こっちって・・・イギリス?



『そうだよ。もうすぐ、スクールの子達が出るコンサートがあるんだけど・・・聴きに来ない? 良ければ、その子も連れて』

「・・・はいっ!?」










・・・きっかけなんて、きっと本当に些細なもの。





だから、気付き難い。だから、気付いた時には、もうそれは終わっている。





そう、僕とギンガさんの繋がりも変化の時は、もうすぐそこまで来ていた。




















(その3へ続く)




















あとがき



古鉄≪さて、色々な意味で展開が読めなくなってきた今回のお話、皆さん、どうだったでしょうか。本日のあとがきのお相手は、古き鉄・アルトアイゼンと≫

ヒロリス「あー、ヒロリス・クロスフォードだよ。・・・つかさ、マジでこれ、どこ行くの?」





(・・・・・・さぁ)





ヒロリス「やる気ないナレーションだねっ! ホントさっ!!
つか、またここでフィアッセさん再登場って・・・」

古鉄≪ドラマティックでしょ?≫

ヒロリス「ドラマティック過ぎて。展開予測不能だけどね」

古鉄≪なお、話に出た暗部絡みの事件や、フィアッセさんに魔法や私のことがバレる話は、次回の幕間となります≫

ヒロリス「・・・なぜにここで予告?
でもさ、色々変化出てきたじゃないのさ。特にギンガちゃん」

古鉄≪今さら自覚してるって感じが強いですけどね。ただ、必要な過程ですから≫

ヒロリス「さて、ここからまた面白くなるかねぇ・・・」





(最強の姉弟子、妙にニヤニヤ顔)





古鉄≪デレたギンガさんが出るかどうかは次回のお話でご期待と言うことで。・・・というわけで、次回はまたまた海外ロケですっ!!≫

ヒロリス「作者、気張っていきなよっ!? それでは、今回はここまでっ!!
お相手は、ヒロリス・クロスフォードと」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでしたっ! それでは・・・またっ!!≫










(手を振る二人を映しつつ、カメラはフェードアウト。
本日のED:『Sky chord』)




















恭文「・・・フィアッセさん」

フィアッセ『なに?』

恭文「本気ですか?」

フィアッセ『本気だよ。とにかく、都合付けて来て欲しいな。きっと、悩んでることのヒントがあると思うから』

恭文「・・・分かりました。でも、なんでギンガさんも?」

フィアッセ『うーん、私の興味?』

恭文「意味分かりませんよっ! それっ!!」










(おしまい)






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