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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第6話 『決戦は火曜日?』



足りない。










「はぁっ!!」










・・・足りない。





すっかり日が沈んで、夜の闇に包まれた隊舎の中庭で、ストラーダを振るう。何度も・・・何度も・・・。





その度に思い起こすのは、あのイマジン。





硬く、力強く、荒ぶる金色の獅子。その姿を眼前に置き、打ち込む。





でも、足りない。アレを貫くのには、今の僕の力じゃ・・・足りない。





・・・方法が無い訳じゃない。





ただ・・・今、それが僕に出来るかどうか、自信がない。










「・・・エリオ」





聞こえてきたのは、僕のよく知る声。そこを見ると・・・居た。



いつも通りの緩くて、ヘラヘラした空気の恭文が。そして傍らには、リインさんが。





「・・・いきなりヒドイね」

「気のせいだよ。それで、恭文。フェイトさんは・・・」

「・・・友達になってきたよ」





やっぱり・・・なんだね。完全に、忘れてるんだ。





「・・・エリオ」

「謝るのなら、聞かないよ?」



そんなの聞いたって、何も変わらない。そう、なにかが変わるわけじゃないから。

でも・・・。



「違うよ」



恭文は、首を横に振って、僕の言葉を否定した。



「・・・全部取り戻すよ。で、僕達をナメてくれた礼もキッチリしていく。いいね?」

「絶対絶対っ! 勝ちに行くですよっ!!」

「・・・もちろん」





その言葉に、僕は少し安心した。だって、これで落ち込むなんて、恭文らしくないし。

どんな時でも、いつも通りの、いつものノリで戦うのが、古き鉄なんだから。



・・・そうだ。せっかくだし、手伝ってもらおうかな。





「恭文、ちょっと頼みがあるんだ」

「なに?」



えっと、かくかくしかじか・・・というわけなんだけど。



「・・・エリオ、そんなこと考えていたですか」



あはは・・・。もう、それしかないかなと。



「いいよ。ただし、一合だけの真剣勝負ね」

「・・・一合だけ?」

「グダグダやるより、集中力高めて、一気に決めるんだよ。エリオなら、きっとそっちの方が速い」

「あ、なるほど」





と言うわけで、僕達は互いに100メートルほど距離を取って・・・構えた。リインさんは、それを安全圏から見守る。



もちろん、互いに相棒を手にして。



僕はストラーダの柄の中程を右手で持ち、柄尻の近くを左手で持つ。そう、いつもの槍術の基本の構え。



そして恭文は・・・腰を静め、鞘に納めたままのアルトアイゼンの柄に右手をかける。

こちらは、恭文の得意技でもある居合いの構えだ。





「・・・でも、ありがと。付き合ってくれて」

「いいよ。・・・僕もちょい、吹っ切りたかったしね」

「そっか」

「そうだよ」










それだけ言うと、互いに黙った。





そうして、場が静まり返り、張りつめる。心臓の音がやけに大きく聞こえる。





でも、ゆっくりと呼吸をしていくと、それも静まった。





一瞬とも、永遠とも取れる時間。全ては、僕達の間に流れる空気が原因。





・・・一瞬だ。





今から触れる刹那の間に、僕の求める答えがある。





だから、それを手にする。





恭文は、フェイトさんの騎士として、まだ戦っていこうとしてる。取り戻せるって、信じてる。





だから、僕も・・・一人の騎士として、あの獅子を、貫くっ!!





そして、僕達はほぼ同時に踏み込み・・・。





互いに抱えていた迷いと憂いを、斬り裂いた。




















ー時の列車・デンライナー。次に向かうのは、過去か、未来かー




















『とある魔導師と機動六課の日常』×『仮面ライダー電王』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間




















第6話 『決戦は火曜日?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それで、あの電王の偽物は一体なんなんですか?」



・・・私達全員が思っている疑問を、キャロがぶつけた。



「ネガタロス・・・という名の、イマジンです」





その疑問に答えたのは、デカ長だった。そうして、話してくれた。



以前、良太郎さんが使ってるライダーパスの予備が盗まれる事件があった。

そして、その時の実行犯が・・・今回出てきたネガタロスらしい。



で、当然良太郎さん達で苦戦しつつも倒したそうなんだけど・・・。





「その時に、こちらの世界に飛ばされて来たと考えるのが、妥当でしょう」

「一種の次元漂流者になっていたと言うわけですか」

「で、パスもちゃっかり持ったままと・・・」

「いや、あの様子ではパスもダメになったと思っていたんですけどね。思い違いでしたか」





・・・おかげでこっちはとんでもないことになってますけどね。



でもそうすると、私達的には疑問が出てくる。



ただのイマジンのはずなのに、アイツ主導でここまで出来るのかという点だ。・・・こっちにイマジン呼び込んだりとか。





「出来ると思うよ?」

「・・・青亀、どういうことよ」

「イマジンって言うのは、色々な要因で力を持ってるのもいるってこと。あ、この場合の力っていうのは、戦闘能力の事じゃないから。
フェイトさんの記憶をどうこうしちゃったイマジンもそうだけど、そういう・・・いわゆる特殊能力を持った連中は、確かに存在してる」

「現にリュウタもそれやし、もう一人、俺らの知ってるやつにもおる。考えられん話やない」



つまり・・・ネガタロスは、色々な要因ってやつのせいで、ここまでの事を起こす力がある?



「ウラタロス君の言うように、その可能性は高いでしょう。現に、キャロさんが見たように、どういうわけか電王の偽物に変身したりも出来ますし」



なるほど・・・って、ちょっと待ったっ!!



「・・・あの、電王って、ベルトとパスがあれば、誰でも変身出来るわけじゃないんですか?」



その言い方だと、アレが変身出来る事自体が不思議と言う風に聞こえる。



「その通りです。良太郎君は特異点だからこそ、変身出来るのです」

「あのデカ長、特異点・・・って、なんですか?」

「そう言えば、みんなには説明してなかったね。えっと、良太郎や私は・・・」





何でも、スバルの一件で話に出た歴史の改変などで起こる、記憶の書き換えと言った現象の影響を受けない存在を、特異点と言うらしい。

そして、ここに居る人間で言うと良太郎さんとハナさんがそれに当たる。

特異点は、何があっても忘れないし、歴史が変わって存在が消えるということも無い。



例え・・・イマジンによって、自分の住む時間が無くなっても。



そして、良太郎さんはその特異点だからこそ、電王にもなれるし、モモタロス達が憑依しても、完全には支配されないとか。

あと、ハナさんもさっき言ったように特異点ではあるけど、変身は無理らしい。





「なんというか・・・良太郎さん、凄い人だったんですね」

「あの、スバルちゃん。そんなことないから。というかお願い、その感心した顔はやめて・・・」

「・・・とにかく、話を戻そう? その上あのイマジン、前回はデンライナーの偽物まで用意してたの」



ハナさんがどこか呆れてるとも、感心しているとも取れる顔でそう言う。・・・ちょっと待ってっ!!



「・・・デンライナーの偽物っ!?」

「それって、えっと、つまり・・・」

「そのネガタロスってイマジン、電車一両丸々用意したんですかっ!? それもデンライナーをっ!!」



スバルの驚きの声と、私達の驚愕の表情に、デカ長とデンライナー署一同は頷いた。



「・・・あぁ、やってたな。バカ弟子に借りたディスクで見たよ」

「我もヴィヴィオと共に見た。平然と時の間を走っていたな」





・・・マジですか。



じゃあなに・・・そんなチート能力持ちのジョーカーがミッドに迷い込んでたって言うのっ!? ・・・怖っ! 今さらだけど怖いわよそれっ!!





「・・・ホンマにすまん。完全に俺らの落ち度や。あの時、アイツをちゃんと倒しとれば、こないな事には・・・」

「バカ、謝る必要ないわよ。つか、こうなっちゃった以上、そこを言っても仕方ないでしょ」





つーか、私はその場に居なかった戦いに関して、あーだこーだと言いたくない。そんなの、めんどいだけだもの。



・・・あれ? なんか私、アイツみたいだ。





「キンタロスさん、ティアナの言う通りです。そこはいいでしょう。とにかく、当面の問題をどうするかを、考えていきましょう」



そう、シグナム副隊長が今言ったように、問題はこれからどうするか。いや、選択肢なんて一つしか無いんだけどさ。



「だな。あのパチもん野郎がまた出てきたら・・・」

「最初からクライマックスで、叩き伏せるっ!! ・・・ですよね?」

「そういうこったっ! 今度こそ引導渡してやるぜっ!!
・・・つか、犬っ子。お前、大分俺達の事解ってきてるじゃねぇか」

「いや、それほどでも〜」



・・・本当に距離近くなったわね。ま、そこも大事だけど、もう一つある。



「先輩、スバルちゃん。もう一つあるよ? ・・・フェイトさんを襲ったあのイマジンを早急に釣り上げて倒す。
じゃないと、危ないんだよね? その使い魔・・・の人が」

「・・・かなりな」



サリエルさんの話だと、アルフさんは本当にヤバいらしい。解決策が他にない以上、あのKYの発言が真実でも・・・やるしかない。



「ま、アタシが思うに、ここは多分問題ねーよ」

「そうですね、問題無いと思います。もしかしたら、秒殺かも知れません」

「・・・また自信ありげだな、おい」





モモタロスはなんか戸惑ってるけど、これは当然だと思う。だって・・・連中は一つミスを犯したから。



それも、重大なミスを。





「連中は、決して怒らせてはいけない奴を怒らせました。そして、敵に回しました。・・・今の蒼凪を相手にするのは、我々でも躊躇います」

「だな。アレは完全にキレてる。バカ弟子はもう連中を細切れにするまでは止まらねぇし、誰にも止めらんねぇよ」

「・・・納得したよ。そりゃ自信も持てるよね」

「昼間を見るに、相当なキレっぷりやったしな・・・」





・・・うん、ヤバいかも。つか、私は出会ってからまだ数ヶ月だけど、今ほどアイツを怖いと思った事は無い。



こっちに戻って来てから、思いっきし普通通りにしてる。もう、おかしいくらい。だけど、その溜め込んだ分の爆発力が怖い。

そう、アイツは溜め込んでる。そして・・・ぶつけようとしてる。全部を、一瞬で。



なんつうか・・・同情するわ。アレと真正面からやり合うなんてさ。





「・・・というわけなので、リュウタロスさん」



スバルが、話し合いの最中、隅っこで座り込んでいたリュウタロスさんに声をかける。



「あの人はあぁ言ってましたけど、きっと大丈夫です」

「・・・でも、フェイトお姉ちゃん。それに、恭文も・・・。僕、なんて謝ったらいいか」

「謝る必要、ないです」

「え?」

「だって、リュウタロスさんは全然悪く無いじゃないですか」



そう、リュウタロスはフェイトさんの記憶が戻らないかも知れないって聞いてから、ずっと落ち込んでいた。

『自分達がちゃんと倒せていれば・・・』というオーラを出しながら。



「・・・信じてくれませんか? フェイトさんの記憶は、必ず戻るって。それに、恭文はそう思ってます」

「恭文も?」

「はいっ!!」



スバルはそうハッキリと言い切った。迷いも、躊躇いもなく。



「きっと、今だって口に出さないだけで、本当はすごく不安で、悔しくて・・・。ううん、悔しくないはず、ないです。
でも、それでも信じてるはずです。絶対に、大丈夫だって。なんとかなるって。だから、私も・・・信じています」










・・・とにかく、ここからだ。





アイツら、このままじゃ済まさないわよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・あの、デネブさん」

「ん? えっと、高町さん・・・でいいんですよね」

「はい。それで・・・」

「あの君は・・・」

「あの、初めましてっ! 高町ヴィヴィオですっ!!」



・・・私は、ヴィヴィオを連れてある人を探していた。そして・・・見つけた。その人の相棒を。



「ヴィヴィオちゃんって言うんだ。あの、初めまして。えっと・・・俺の事も知っててくれたんだ。嬉しいな。あ、これあげるね」



そう言って、私達に手渡してくれたのは・・・デネブキャンディっ! ほ、本物だよー!!



「「ありがとうございますっ!!」」

「いや、そんなに頭を下げなくても・・・。なんだか、照れちゃうなぁ」



でも、嬉しいんですっ! こう、状況を弁えていないのを承知で・・・って、そうだ。一つ聞きたい事があったんだ。



「・・・あの、デネブさん」



ヴィヴィオが、デネブさんからもらったキャンディを大事そうに抱えて、そう口にする。

デネブさんは、雰囲気を柔らかくして、それに答えてくれた。



「うん、なにかな」

「侑斗さん、カードを使っても大丈夫なんですか?」



・・・ヴィヴィオがそう聞いた瞬間、デネブさんの動きが止まった。



「・・・あまりよくはない。ヴィヴィオちゃんは、知ってるんだ?」

「はい。恭文から借りたディスクで・・・」

「私も同じくです。それで、気になって・・・」



・・・ギンガの話だと、カードは粒子化して消えたらしい。TVと同じように。そして、変身したのは赤いゼロノス。

これが意味している所は、多分・・・。



「つまり・・・そうなんですね?」

「・・・そうです」



やっぱり・・・。



「俺は止めたんだけど、侑斗は、やると聞かなくて・・・」

「・・・私達が止めても」

「同じだと思います。今居ないのも、カードを取り上げられるような事を避けるためだから」



そこまでなんだ。だったら・・・止まらないよね。何を言っても、きっと。



「・・・なのはママ」

「・・・大丈夫だよ、カードをもう何枚も使わせないように、次で終わらせちゃうから」

「・・・どういうことですか、それは?」





聞こえたのは後ろから。私達がそちらを見ると・・・ギンガっ!?





「・・・デネブさん」

「は、はいっ!?」

「なのはさん、ヴィヴィオ」

「「はいっ!?」」

「まず、盗み聞きしてしまった事は、謝ります。でも」



そして、ギンガは鋭く、真剣な眼差しを・・・私達に向けた。



「あの人が使ったカード、一体なんなのか・・・教えていただけますね?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・と、言うわけなんだよ。










『・・・なんつうか、すごい事に関わってたんだな。アタシはビックリだよ』

「・・・俺達もビックリした」










会議が終わった俺とヒロ、ヴィータちゃんにシグナムさんにリュウタは、すぐさまある場所の、ある人物に通信をかけていた。





それは・・・現在海上隔離施設で更正プログラム受講中の、アギト。





ちょっと今回の事件の解決のために、動いてもらおうかなと。










「すまんがアギト、協力してもらえるか?」

『いや、事情は分かったよ。協力も構わねぇぞ? アイツには、旦那の仇を討ってもらった借りがあるし、色々世話にもなってるしな』

「・・・そうか、助かる」

『ただよ、一つ聞かせてくれよ』





そして、空間モニターに映るアギトは、結構真剣な顔で、ある疑問を俺達にぶつけた。





『でも、なんでアタシとなんだ? アイツにはバッテンチビが居るし、アタシなら、シグナムが・・・』

「私は、主とヴィータと共に、別口で準備がある。言い方は悪いが・・・それ以外で消耗は出来ん。テスタロッサの事は、なのはと蒼凪に任せるしかない」





シグナムさんが、悔しそうに言葉を紡いだように見えたのは、気のせいじゃない。でも、ここは我慢してもらう。

フェイトちゃんはアレだし、高町教導官はやっさんと一緒にやる気満々だ。これ以上人員は崩せない。



そして、俺らもそれに参加予定だ。



で、皆様疑問のリインちゃんも、シャーリーちゃんと最終調整が済むまでは動けない。



つまり・・・場合によっては、やっさんはユニゾン出来ないということになる。



デカ長もこれはマズいと感じたらしくて、なにやら援軍を呼ぶとも言ってる。けど、それでも・・・。





「・・・相手は記憶を喰えるトンデモ野郎な上に、相当強い。それだけじゃなくて、ネガタロスを筆頭に、他のイマジンも居る」

『なぁ、ヒロリスの姉御。そのネガなんたらとか、他のイマジンも、相当なのか?』

「相当だよ」



あの場では全体の士気の低下を防ぐためにも『大丈夫』なんて言ったが、実は結構マズい。

電王の事を局に知られるわけにはいかないから、基本俺らだけで対処していく。つまり・・・他の部隊やらなんやらはアテに出来ない。



「正直、現状の私らの戦力だけでどうなるのか、予測がつかないのよ」



あと、あの『悪の組織』がどんだけ戦力溜め込んでいるかだな。下手すりゃ、それらと六課メンバーだけで真正面から戦争だ。

くそ、まさかマジで俺とヒロまで出張る事態になるとは思わなかったぞ。見通し甘かったな。



『それでアタシの出番ってわけか』

「そうだよ。アンタ、単体でも強いし、本当ならそこに居なくても問題ない人間だ。増援として呼び易いのよ」



それにアギトは局に恭順して、シグナムさんの副官になる予定だしな。その辺りで名目付ければ、呼ぶのは容易いってわけだ。



『納得した。・・・でもよ、アタシとアイツ、前に検査で無理ってでたじゃねぇか』

「大丈夫、そこも解決出来るよ」

『はぁっ!?』



そう、俺らだってバカじゃない。そこはちゃんと考えている。やっさんには負担かけるし、多少無茶ではあるけど。

ただし・・・。



「・・・デカ長が協力してくれれば、だけどね」

「・・・仕方ないでしょう。今回だけですよ?」

「助かります。あと、リュウタもちょい手伝ってくれ」

「・・・僕も?」



疑問顔なリュウタの言葉に、俺達は頷く。そう、アギトの件とは別口でも、リュウタとデカ長の力が必要不可欠。

こっちはもっと時間があれば、俺らだけでも問題はなかったんだけどな・・・。ま、そこはいいか。



「頼むわリュウタ。やっさんの・・・俺達のバカに、付き合ってくれないか?
アイツの大事なお姫様を起こすには、リュウタのカードが必要なんだよ」





そして、火が灯された。





「・・・僕、なにをすればいいの?」





小さいかもしれない。だけど・・・確かに未来を示す、力強い火が。





「リュウタ・・・。ありがとな」

「いいよ、お礼なんて。恭文は・・・みんなの友達だもん。フェイトお姉ちゃんだって、そうでしょ?
だったら、絶対助けなきゃっ!!」

「あー、リュウタ。それはちょい違うぞ」



今まで黙って話を聞いていたヴィータちゃんが、一つだけ訂正を入れた。



「アタシらだけの話じゃねぇよ。・・・お前も、もうバカ弟子と友達だろ? もちろん、アタシ達ともだ」

「・・・うんっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・どうやら、大丈夫そうだよ?」

「せやな。リュウタ、いい顔しとるわ」

「ここに来て、恭文と仲良くなったの、リュウタにとってはいい影響与えてるみたいだね」

「えぇ友達持つのも、男の勲章やで」



・・・つか、アンタら。覗き見は趣味悪いから。



「それ、一緒に覗いてるティアナちゃんに言われたくないんだけど?」

「そうやで嬢ちゃん。俺ら・・・言うなら共犯や。逮捕されるで〜」

「・・・うっさい」





フェイトさんの記憶が無くなったのに、責任感じてたように見えた。だから、アイツにも申し訳なくて・・・。





「ま、大丈夫やろ。きっと嬢ちゃんの記憶は取り戻せる」

「そうだね。というか、いくらなんでもこれは無いって。せっかく8年かけて網に入れるところまで来たって言うのに・・・」

「せやな、泣けるで・・・」

「・・・いや、それはそうだけど、気にする所はそこっ!?」



こいつら・・・やっぱり緊張感無いわっ! いや、マジでっ!!



「というかさ、アンタらやけに自信有りげね。・・・こう言ったらアレだけど、アンタ達もアイツと同意見だと思ってた」

「アイツ? ・・・あぁ、ボクちゃん」



・・・多分、そのボクちゃんよ。つか、アンタはアレをそう呼べるのね。私も見習いたいわ。



「まぁ、彼はああいうキャラだからね。ティアナちゃんも、あんまり気にしなくていいよ」



いや、気にするから。アレは気にするから。



「そうやな、嬢ちゃんと似とるだけや。気にすることあらへん」

「似てないわよっ! つーか、私はまだ空気読めるわよっ!!」

「・・・いや、今そっくりやで?」

「ボクちゃんのオデブちゃんへのキレ方そのままだったね。うん、影が見えたよ」



・・・今、どっかから『ツンデレ仲間だから当然でしょ』って電波が来たけど、流していく。

うん、全力全開でスルーよっ!!



「それに僕達はイマジンだけどさ。あるもの。自信有りげに言えるだけのものが」

「・・・なにがよ?」

「時間や。何があっても消えたりなんかせぇへん、俺らが・・・良太郎からもらった、大事な時間がな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・おう、犬っ子に桃っ子。なにしてんだ」





なんとなく、夜空を見てました。うん、キャロと二人で、なんとなく・・・。



というか、キャロが落ち込んでいたから、付き添ってました。





「モモタロスさん」

「なんだ」

「フェイトさん・・・本当に大丈夫なんですか?」



キャロが不安げに呟く。ううん、不安なんだ。だって、本当に全部忘れて・・・。



「バカ、あたり前だろ」

「・・・どうして、そんな簡単に言い切れるんですか」



キャロが、苛立ちも混じったような声をいつもの調子で即答したモモタロスさんにぶつけた。



「簡単だ」



モモタロスさんが、キャロの隣に座りながら言葉を続ける。そして私達は、その言葉に驚くしかなかった。



「実はな・・・俺もよ、一度だけあんだよ。良太郎の事やらなんやら、全部忘れちまった事がな」

「・・・え」



忘れたって・・・フェイトさんと同じようにってことですかっ!?



「そうだよ。で、それは俺だけじゃねぇ。亀に熊、はな垂れ小僧も揃ってだ。あー、良太郎も一回あったな」

「良太郎さんもですかっ!?」

「おう。牙王ってやつに蹴られて、頭打って俺達のことを綺麗さっぱりな。いや、あの時は大変だったぜ・・・」



そんなことがあったんだ・・・。

私もキャロも、モモタロスさんのあっけらかんとした言葉の数々に、驚くしかなかった。



「けどな、俺達も良太郎も、すぐに思い出せたぜ?」

「どうして・・・ですか?」

「さぁな。・・・まぁ、アレだ。消えねぇからじゃねぇのか?」



消えない?



「俺達が一緒に居て、戦ってきた時間・・・過去ってやつはよ。だから、桃っ子」

「・・・はい」

「金髪ねーちゃんも同じだ。・・・ドシっと構えて、信じてろ。お前らの過去ってやつをな」



モモタロスさんが、黒い瞳を・・・どこか優しい何かを感じさせる眼差しを、私の横に居るキャロに向けてくれる。

だから、キャロもそれに答える。



「・・・モモタロスさん」

「なんだ?」

「ごめんなさい。私・・・」

「バカ、なに謝ってんだ」










・・・そうだよね。うん、大丈夫。





私は、そっぽを向いたモモタロスさんを見ながら、確信した。そして、心を決めた。多分、キャロも同じ。





私達の今やるべきこと。まず、それをしっかりやる。全部は、きっとそこからなんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・朝になった。ここまでは、なんとか無事に過ごせた。





さて、連中はどうくる? このタイミングで正体バラしたんだ。そうとう派手に動くとは思うが・・・。










「・・・やっと見つけました」



・・・くそ、やっぱコイツとは色々相性悪いのかも知れないな。

俺は、その声の方へと視線を向ける。そこに居たのは・・・ギンガだった。



「・・・よく分かったな」



念のために、場所は定期的に変えてたってのに。



「これでも捜査官ですから。探すのは得意なんです。・・・渡してください」



そう言って、ギンガは左手を俺に向けてくる。



「何をだ」

「ベルトと、カードです」

「何のために?」



いちおうトボけることにした。まぁ・・・。



「トボけないでください。デネブさんから聞きました」



無駄だったけどな。つか、デネブのやつ、ペラペラと・・・!!



「侑斗さん、あなたを戦わせるわけにはいきません」

「なんでだ?」

「それは、あなた自身が一番分かっているはずです」










ギンガが、昨日とは違う色合いの、真剣な眼差しを俺に向けてくる。そして、俺にこう言ってきた。










「・・・あなた、カードを使って変身する度に、周りの人達の記憶から・・・消えていくそうですね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それは、昨日なのはさんとヴィヴィオ、デネブさんから聞いたこと。





そして、とても衝撃的だったこと。










「・・・記憶がなくなるっ!?」

「・・・そうだよ。桜井侑斗さんがゼロノスに変身する度に、カードを使う度に、記憶が無くなっていくの」



そんな・・・。じゃあ、戦う度にあの人は色んなことを忘れていくのっ!?




「いや、ギンガさん。それは少しだけ違う」

「違う? どういうことですか」

「忘れるのは、侑斗自身じゃないんだ。忘れていくのは、例えばギンガさんや高町さん。そう言った侑斗の周りに居る人達なんです」



その言葉を聞いて、私は更に混乱した。だって、意味がよく分からないから。



「・・・侑斗という存在・・・それに関する記憶が、侑斗を知っている人達の中から、消えていくんです」










つまり・・・あの人は、戦う度に、変身する度に、周りの人達から忘れられていくっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・そんな人を、戦わせるわけにはいきません。ここで待機しててください」

「嫌だね」



そう言って、侑斗さんはどこかへとまた行こうと・・・待ってっ!!

私は、咄嗟に距離を詰めてこの人の左手を掴む。すると、侑斗さんが顔を私の方へと向けてきた。



「・・・離せ」

「離しません。・・・お願いです。隊舎で待機していてください」

「ネガタロスはかなり強い。あのフェイトって姉ちゃんを襲ったやつもだ。・・・総掛かりじゃねぇと、勝てないんだよ」

「あなたが行かなくても、六課には優秀な魔導師が大勢います。問題ありません」



事態が事態だから、隊長陣も動く用意が出来てる。この人一人居なくても問題は・・・ない。



「なにより、どうしてそこまでするんですか? あなたはミッドの生まれでもないし、もう戦う必要なんてないはずです」

「・・・そこも聞いたのか」

「聞きました」



デネブさんが教えてくれたから、多少の事情はわかってるつもり。なのに、どうして・・・。



「どうして・・・自分を犠牲にしてまで、戦おうとするんですか。今まで縁も所縁も無かった世界のために、どうしてそこまで・・・」

「イマジン相手なんざ、この世界の人間には出来ないだろうが」

「そんなの、理由になりません。それに、良太郎さん達が居るじゃないですか」

「それこそ理由になんねぇよ」

「なりますっ!!」



誰かの記憶から自分のことがどんどん消えていって、本当に一人ぼっちになっていって・・・。

未だにイマジンとの戦いが継続中とかなら分かる。でも、そうじゃない。なのに・・・どうしてっ!?



「ならねぇよ。つか・・・知ってるか?」

「何ですか」



侑斗さんは私を真っ直ぐに見返す。瞳から感じ取れたのは、強い決意の色。



「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても・・・それは、なにもやらない事の言い訳にはならない。
・・・未来の俺が、そう言ってたらしい」

「・・・だからなんですか。そんなの、あなたが戦う理由には」

「なるさ。俺は事情も知ってて、力もある。ついでに、少なくとも野上の奴よりは運もある。
なのに・・・なにもせずに指をくわえて見てることなんざ、出来ねぇよ」



迷いなく、揺らぎもない。そう感じさせる言葉だった。私は、言葉を無くす。

どうして・・・こんな風に迷い無く言えるの? この人は、怖くないの?



「あと、別に俺は自分を犠牲になんてしてない」

「え?」



侑斗さんが、私の手を優しくほどきながら、言葉を続ける。表情と、瞳の強さは変えないまま。



「ただ、未来を消さないためにやってる。お前や、あのチビと同じだよ」



未来を・・・。



「でも、ここは・・・」

「別の世界とか、そんなのは関係ない」



侑斗さんが、私に背を向けて歩き出す。私はそれを、止めることが出来なかった。



「・・・まだ、こっちの世界の星のこと、勉強してないからな」

「・・・え?」

「月が二つあるってのも、見てて飽きないんだよ。消えてもらっちゃあ、困る」










・・・そしてこの直後、鐘が鳴った。





全てに決着をつける時間が来たと、私達に知らせる鐘が。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・昨日とは打って変わって、ここはとても静か。





なんだか、すごく慌てた感じでヤスフミさんもここの人達も出て行ったけど、どうしたんだろ?





うーん、よく分からない。・・・ダメだな、私。本当に分からないことだらけだ。





そんな軽い自己嫌悪・・・で、合ってるのかな? とにかく、それを感じていると、私の居る医務室のドアが開いた。

そこから入ってきたのは、6歳くらいの女の子。紅と翠の瞳をした子。










「・・・フェイトママ、気分はどう?」

「あ、はい。大丈夫です」

「うー、敬語禁止。ヴィヴィオの方が年下だよ?」



そう言って、ヴィヴィオちゃんは私のベッドの近くの椅子にちょこんと座る。顔は、どこか不満そう。



「あの、ゴメン。よく分からなくて・・・」

「いや、ヴィヴィオより自分が大人っていうのは分かって? 身長とか体型とか、全然違うし」

「・・・ごもっともです」



ごめんなさい。そこは考えてませんでした。うぅ、ダメだな・・・。

でもそうすると、あのヴィータって子はどうなるんだろ。うーん・・・やっぱりよく分からない。



「・・・ね、フェイトママ」



・・・どうやら私は、この子のお母さん的な存在だったらしい。その、少し・・・考えちゃうけど、納得した。



「うん、なにかな?」

「あのね、無理に思い出そうとしなくていいよ?」



・・・え?



「フェイトママ、頑張り過ぎるとこあるから。昨日から思い出そう思い出そうって、頑張ってるでしょ?」

「・・・ううん、そんなことないよ」





それは、本当のこと。その、全く普通にしてるわけじゃない。でも、妙な気負いがあるわけでもない。



こう、不思議。まだ・・・残ってる。昨日手に感じたあの子の温もりが。あのアイスの優しい味が。

それが、不安でつぶれそうな心を、支えてくれる。焦りを、どこかへと吹き飛ばしてくれる。

・・・あれ? 私、どうしたんだろ。なんだか、胸が苦しい。





「なら、いいんだ。うん、私達みんな、ちょっと心配だったから」

「そっか。・・・ごめんね」

「フェイトママ、それちょっと違う。こういう時は」

「ありがとう・・・だよね」



・・・・・・あれ?



「そうだよ。こういう時は・・・フェイトママ?」



私、どうして今、この子の言う事が分かったの?



「・・・ね、ヴィヴィオちゃん」

「なに?」

「今の、ごめんじゃなくてありがとうって・・・誰かに教えてもらったのかな。もしかして、私?」










私が身を乗り出してそう聞くと、ヴィヴィオちゃんは驚きながらも頷いてくれた。やっぱり・・・なんだ。





でも、どうして? 私、何もかも忘れて・・・。





・・・違う。私、知ってる。誰かにそう言った。





そうだ。その時・・・その子、誉めてくれた。フェイト・・・私の名前が、綺麗な響きの、素敵な名前だって。





私、その時すごく嬉しかった。泣きたくなるくらいに。





でも、誰なの? あの子は・・・だめ、モヤがかかってる。思い出せない。





でも、私は知ってる。・・・消えてない。私の・・・『フェイト』としての時間は、まだ、私の中にある。




・・・そうだ、フェイト。そう呼んでくれて、嬉しかった。私、やっぱり知ってる。










「あの時・・・出会ったのは・・・私の、大事な・・・」










フェイト。そう呼んでくれて嬉しかった。二人の・・・大事な。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・俺様はずっと考えていた。





この世界に来てから、ずっとだ。





なぜ、俺様はあの時負けたのかと。





そして、気付いた。





俺様は、悪の組織の首領になっていなかった。そう、俺様は悪の組織の首領を務めるには、まだまだ力量不足だった。





戦力やどうこうの問題ではない。俺様自身の未熟さが、敗北を招いた原因だった。





だからこそ、俺様は努力した。





あの男の真似事も、幼稚園バスを襲撃したのも、全ては夢のため。





・・・らしくない。こそこそと、本当に負けてきた悪の組織の真似事に過ぎないとも思う。





しかし、それでも俺様は・・・造りあげたい。





俺様の夢・・・本当に勝てる悪の組織をだ。





さて、機動六課の連中はどう出る?





・・・いや、考えるまでもないか。





電王やゼロノスと行動を共にしているなら、女の記憶を餌にしても、食いつくとは思えん。





ならば、やるしかあるまい。





ミッドチルダ・・・この世界を、そろそろ頂くとしよう。





前回の反省も生かして、戦力は十二分に整えている。本当にこそこそしていたのも、このためだ。





さぁ・・・夢の始まりだっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そうして、俺様達は歩く。堂々と、道を踏み締める。この世界で廃棄都市部と呼ばれているその場所を、力強く、しっかりとだ。





やはり、緩いか? 結局は正面突破しか思い付かなかった。





いや、譲れなかったと言うべきか。俺様の美学は、筋金入りらしい。





まぁいい。この戦力ならば、充分潰せるだろう。





この世界の人間のトップが居るという・・・中央本部とやらをな。





いや、あそこはもうそんなセンスの無いネーミングの場所ではない。





あそこは・・・。










「『生まれ変わった勝利する悪の組織・新生ネガタロス軍団アジト(仮)「かっこ・かり・かっことじ」』・・・だな」

「・・・それは長すぎやしないか?」










隣を歩く金色の獅子の言うことは、気にせずいく。そう、なにも問題などないのだから。










「・・・いや、問題ありでしょうが」

≪途中で舌を噛みそうですよね≫

「あのさ・・・お前らツッコむとこが違くないか? いや、解るけどよ」










声は正面から聞こえてきた。俺様達は当然、そちらを見る。





そこに居たのは、数人の人間と、イマジン達。





・・・やはり来たか。










「電王にゼロノス。そして・・・機動六課」

「あぁ、来たよ。まさかまーた正面突破かまそうとするとは思わなかったけどね。・・・バカでしょ?」

「コイツの言う通りだ。お前、学習能力無いだろ。前回それで負けてるくせによ」



チビとゼロノスがなにやら失礼な事を言っているが・・・まぁいい。奴らには、俺様の崇高な美学など、理解出来ないのだからな。

・・・そうそう、これは聞いておかなくては。



「どうだ、俺様達の仲間になるか?」

≪Stinger Rey≫



チビの左の指先から放たれたのは、青い光弾。それが、俺様の頭目掛けて飛ぶ。

俺様は、それを頭をひょいっと動かして避けてみせる。



「・・・昨日もそうだが、随分と乱暴だな」

「気にするな。これがミッドの魔導師の常識なんだよ」

「そうか・・・。では、これがお前達の返答か?」

「そうだよ。恭文君の・・・私達、機動六課の答え」



チビの後ろに居たサイドポニーの女が、そう言ってきた。



「私達は誰一人、あなた達の仲間になんてならない。そして、フェイトちゃんにした事を、絶対に・・・許さない」

「だから、お前ら全員・・・潰してやるよ。今、この場で、一人残らずな」










・・・ほう、こいつらいい殺気を放つ。人間にしておくのがもったいないくらいだ。





まぁいい。どうせこうなることは分かっていた。邪魔立てするなら・・・逆に叩き潰すだけだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文」

「行ってきなよ。ただし・・・」



後ろで控えていた我が弟分・・・いや、若き槍騎士は、僕の言葉に頷きながら前へ歩み出る。



「わかってる。絶対に、勝つから」



振り返りもせずに、前へと歩きながらそう答えた。うん、ならいい。

で・・・アレがエリオのご執心な相手ですか。



「・・・来い」

「今度は、負けません」





それだけ言うと、エリオと金色の獅子は、にらみ合いながらどこかへと走り去っていった。



んじゃ、僕達もだね。





「アギト、頼むね」

「おうっ!!」



傍らで浮いているアギトにそう言いつつ、僕は左手にベルトを持つ。ただし、サウンドベルトじゃない。

紅く・・・鈍く輝く、デンオウベルトを。



「モモタロス、侑斗・・・いくよ」

「おうっ!!」

「ここで勝負つけるぞ」



僕の右に並んでいた良太郎さんと侑斗さんも、ベルトを取り出す。



「・・・というか、侑斗さん」

「なんだ?」

「いいんですか?」



だって、ゼロノスに変身したら、侑斗さんは・・・。



「・・・バーカ、昨日今日会ったばかりのくせに、妙な心配してんじゃねぇよ。ここで終わらせりゃあ済む話だ」

「・・・侑斗さん」

「・・・つーか」



・・・つーか?



「あの姉ちゃんの記憶、取り返すぞ。・・・少し手伝ってやる」

「え?」

「ま、俺もデネブを道案内してくれた借りがあるしな」

「・・・はいっ!!」





止められない・・・よね。きっと、同じだから。だから、終わらせよう。全部を、ここで。

僕はそう思い立つと、良太郎さん達と同じように、ベルトを腰に巻く。そして、バックルの紅いボタンを押す。右手には、当然パス。

良太郎さんも侑斗さんも、準備を終える。だから・・・あとはこう口にするだけ。



そう、あの言葉だ。





『変身』





僕と良太郎さんは、パスをベルトにセタッチする。侑斗さんは、赤いラインのカードをベルトに差し込む。





≪Sword Form≫





良太郎さんにモモタロスさんが憑依。そこから、赤いアーマーが装着されていく。





≪Change and Up≫





侑斗さんも同じく。ただし・・・こちらは憑依なしで、アーマーの赤は、どこか鈍く、錆びた色を連想させる。



そして、僕も・・・。





≪Blaze Form≫








光が・・・いや、炎が身体を包む。僕の傍らに居たアギトが、僕に吸い込まれるようにして消える。

それから、次々と変化が起こる。





赤い分厚いジャンパーを羽織る。下は黒のジーンズ。

装着されたジガンスクードと、右のガントレット、そして具足が一瞬炎に包まれて、金色に色を変える。

いや、それだけじゃない。ジャンパーの肩に・・・厚い板状の装甲が追加される。





僕の髪と瞳が、綺麗な赤に染まる。熱く、強い炎の色に。





そして、炎が弾けた。僕達の周囲に、羽のような炎が舞い散る。










「・・・アギト、そっちは大丈夫?」

【問題ねぇ。いい感じに安定してる。お前はどうだ?】

「同じく。うん、いい感じだよ」



ヒロさん達から話を聞いて、ちょい不安ではあったけど・・・この調子なら、問題ない。



【つか、すげーよな。あのデカ長って。ベルト1つでアタシらユニゾン出来るようにしちまったし】

≪そういう人なんですよ、アギトさん≫





そう、これは僕とアギトのユニゾン形態。本当なら、出来るはずが無いんだけど・・・。

いや、前に物は試しでやった時、無反応だったのよ。うん、比喩無しで本当に不可能だった。



でも、デカ長がデンオウベルトを弄って僕達に貸してくれたおかげで、これです。僕はどうやったかとかは、さっぱりなんだけどね。





「・・・俺、参上っ!!」

「・・・最初に言っておくっ! 俺はかーなーり・・・やる気だっ!!」



モモタロスさんと侑斗さんも、OKみたい。うし、んじゃ・・・!!



「二人とも、いくよっ!!」

【おうっ!!】

≪バシッと決めていきましょうっ!!≫




















(第7話へ続く)




















『次回予告だっ!!』





「これは・・・ちょっとヤバいかもね」

「どうした、もう終わりか?」

「くそ、調子に乗りやがって・・・!!」


「なにも変わらない。記憶が、時間が本当に大事なものだってことは」

「だから消させない。悪いけど、君達の好きにはさせない」





第7話 『アップデート・エンドレス・チェイン』





「・・・さぁ、ここからは全員まとめてクライマックスだっ! ぶっちぎっていくよっ!!」




















あとがき



古鉄≪さて、最終決戦突入な装いだった第7話。皆さんいかがだったでしょうか?
本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「ちょっとばっかしマジモード入ってる蒼凪恭文です。ま、ここではいつも通りですけど。・・・さて、皆さんの大事なお知らせがあります。それも二つ」

古鉄≪・・・電王劇場版第4段っ! 『超・仮面ライダー電王&ディケイド』が、2009年5月に劇場公開されることが決定しましたっ!!≫





(どこからか盛大なファンファーレ。古き鉄コンビ、凄く嬉しそう)





恭文「いや、これでクロス第2段も書けるね。これと話絡めてさ」

古鉄≪お孫さんやディケイドな方も出る様子ですから、色々出来ますね。ただ・・・≫

恭文「書いてもすぐ公開は無理だけど。だって、劇場のネタバレになるし」

古鉄≪ここ、結構重要ですよね≫





(さしもの二人も、さすがに色々触れてしまいそうなので、躊躇うらしい)





古鉄≪さて、もう一つは・・・なんとっ! リリカルなのはの四期が決定しましたっ!!≫

恭文「今回はコミックだそうですが、4月発売の商業紙で連載スタートだそうですっ! タイトルは・・・『魔法戦記リリカルなのはForce』っ!!」





(またまた盛大なファンファーレが鳴り響く。というか、古き鉄コンビ、どこか嬉しそう)





恭文「いや、これで僕達もまだまだ暴れられるわけですよ。ただ・・・」

古鉄≪お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、今回は『少女』ではありません。これには当然理由があります。・・・原因は高町教導官やフェイトさんにはやてさんの年齢です≫

恭文「どうやらこのコミック版はStSの6年後のお話らしいんです。つまり・・・なのはもはやても、フェイトも・・・25歳。なお、僕も23歳です」





(どこか空気が沈む。そう、さすがにこれは少女じゃないから)





恭文「まぁ、話どうこうは・・・いいでしょ。情報これだけだし、これネタに書くにしても、『とまと』ベースなのは間違いないし」

古鉄≪それもそうですね。超・仮面ライダー電王の方はどうしましょ≫

恭文「プロットだけ見て、作者案を考えたらしいよ? なんか、事件の影響で良太郎さんが子どもの姿になるんだって。
それに巻き込まれる形で、たまたまデンライナーに居た僕とフェイトになのはが10歳前後の体型になるの」

古鉄≪・・・高町教導官やフェイトさんはともかく、あなたは変わりないですよね。10歳前後で身長140ですし≫

恭文「うっさいっ! ・・・で、あとはいつも通りに大暴れだよ」

古鉄≪まぁ、メンバーがメンバーですしね≫

恭文「それで、ちっちゃくなったなのはとフェイトのジャケットに、バルディッシュとレイジングハートが、リリカルなのは劇場版仕様だったりするのよ」

古鉄≪・・・そこで持っていきますか。では、私達は?≫

恭文「そのまま」

古鉄≪・・・は?≫

恭文「二人はともかく・・・僕はほとんど変わりないから、そのまま・・・」





(青い古き鉄、涙目。なんというか、見ていて痛々しい)





古鉄≪・・・今回の話、振り替えっていきましょうか≫

恭文「そうだね・・・」

古鉄≪今回は、言うなら決戦前夜でしたね。あと・・・色々お話が出てきました≫

恭文「電王劇場版第2段の敵であるネガタロスの事や、侑斗さんのこととかだね。あと、モモタロスさんの記憶がなくなった話って、電王のファイナルステージ」

古鉄≪そうです。TVの後日談として、電王のメインライターさんが書いたお話ですので、盛り込んでいきました。
そして・・・マスターとアギトさんのユニゾンですよっ!!≫

恭文「劇場版のみのオリジナルフォームだね。・・・というわけで、簡単にですが、僕とアギトのユニゾン形態の説明ですっ!!」




















アギトとのユニゾン形態 『Blaze Form』(ブレイズフォーム)





デカ長の協力のおかげで恭文とアギトがユニゾン出来た姿。

基本攻撃はアギトのサポートにより、炎熱系魔法を用いる。

ただし、通常の恭文よりもパワーアップしているものの、能力は本来のパートナーであるリインとユニゾンした時よりも落ちる。

これは、アギトではなく、魔力光や質、炎熱系技能を保持していない恭文に原因がある。

なお、ブレイズは、英語で炎の意。










恭文「・・・まぁ、これでリインレベルだったらビックリだよね」

古鉄≪たしかにそうなんですよね。なお、ブレイズフォーム、次回で活躍予定です≫

恭文「ということで、そんな次回はいよいよクライマックスバトルが始まります。果たして・・・!?
それでは、ここまでのお相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでしたっ! それでは、また次回にっ!!≫










(二人、手を振りながら笑顔。カメラ、それを映しつつフェードアウト。
本日のED:『俺、参上っ!!』)




















アギト「いや、ついに出たなっ! アタシらのユニゾン形態っ!!」

恭文「アギト・・・また燃えてるね」

アギト「とーぜんっ! お前やバッテンチビはともかく、アタシはここまで本当に出番なかったんだぞっ!? さー、今までの憂さ晴らしといくかー!!」

恭文(・・・どうしよう。これじゃあ、次回の台本渡しにくいよ。見たら絶対・・・怒るよなぁ)

アギト「なんか言ったか?」

恭文「ううん、なんにも」










(おしまい)







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