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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory03 『もう取り戻せない過去の誇りと願い』



スバルさんの家の近くの警防署――管理局の施設の中、長椅子に座りながらややは感心した声を出していた。



昨日見たスバルさんのとこの隊舎とは違う感じ。てゆうか、普通の警察署みたいな感じかな。





「管理局って、部隊隊舎みたいなとこだけじゃないんだね」

「部隊は訓練とかもやる関係上、街中にホイホイ作れないしね。だからその分」

「街中にはこういうところを作ってるって事?」

「私やギン姉の居る部隊――あ、もちろん他の部隊も、こういう施設の局員さんのサポートがあるから動けるんだ」



ややは納得しつつ、辺りをもう一度見回す。地球でもよく見る白い清潔な壁に廊下が目立つ施設はとっても綺麗。

でもその綺麗さを気にする前に、ややはちょっと恭文に質問したいと思うの。



「でも恭文、アインハルトちゃんってどうしてあんな事になってるの? ほら、さっきはお話してくれなかったし」

「あ、それ私も気になるかも。専門家の力が必要とも言ってたよね」

「だよなぁ。ヤスフミ、どういう事だよ。てーかお前いきなり優しくなり過ぎじゃね?」



気になるのはショウタロウ達も同じくらしく、恭文の事ジッと見てる。それで恭文は大きく息を吐いた。



「……まぁアインハルトをあんまりかわいそうな子扱いも嫌だし、あくまでも僕の予測って事は踏まえてね。外れてる可能性もあるから」



それでも話してくれるみたい。というか、恭文はとっても困った顔をしてた。よく分からないけど、ややとぺぺちゃんは頷いた。



「アインハルトのご先祖様――つまり覇王は、自分に特殊な生体改造を施していた可能性がある」

「「生体、改造?」」

「その原因は当時はまだ終わりが見えなかった戦乱を勝ち抜いて、覇王家を存続させるため。
現にそれに類似した技術はあるんだ。自分のクローンを母体に予め埋め込んで、自分が死亡したら」

「そのクローンがお母さんから生まれてくるでちか」

「うん。死亡した時点での記憶や経験を引き継いだ上でね。成長速度も死亡時点の年齢になるまでは倍化する。
古代ベルカの王家ではどこでもやってたっていう保険らしい。いつどこで自分が死ぬか分からないって事でね」



ややはそういうのよく分からないけど、でも……なんか気持ち悪い。スバルさんとぺぺちゃん達も同じみたいで、顔が怖くなってる。



「でね、僕アインハルトの話を聞いてた時にそこを思い出してたんだ。もちろんフェイトもだね。
クローンに引き継がれる記憶は経験とも取れるし、思考や性格はその積み重ねの結果。技能や身体・魔力資質も同じくだもの。
古代ベルカ時代にはそういうものをデータ化して別の個体に引き継がせる技術が、確かに存在していた」

「なら覇王はそういう技術を使ったって事でちか。クローンじゃなくて、自分の子どもにそういうデータが入り込むようにした」

「多分だけどね。話から想像するに、覇王の子どもやその孫は今のアインハルトと同じ状態だったんじゃないかな。
こうすれば人道的かどうかって事を抜きにすれば、自分の技能を1から教えて子どもに継がせる手間は半分以下になる。
でも長い時間の中で他者と交わって子孫を残していく度に覇王の血は薄れ、戦争もとっくに過去のものになった」

「でもでも、アインハルトちゃんみたいにそういうの引き継いで辛い思いしちゃう子も……そんな」





あぁ、でもそっか。だからアインハルトちゃん、あんなに必死だったんだ。

アインハルトちゃんにとって覇王って人の記憶は、自分のものでもあるから。

だから強い王様になろうとして、でもそれがなれる場がなくて……苦しいよね。



だってそれだと、自分が誰かも分からなくなっちゃいそうだもの。アインハルトちゃん、そんな気持ちと戦ってたんだ。





「いい迷惑でちよね。戦争が終わった後の子孫にまで辛い思いさせるなんてありえないでち」

「とは言え、当時は先も見えないほど混迷した戦乱期だったのでしょう。マリアージュやゆりかごなども生まれるほどですし」

「それほどの事をしなければいつ滅亡するかも分からなかったという事か。
……そう言えば恭文、古代ベルカ時代に関しては今なお謎が多いんだったよな」

「うん。まぁアインハルトの記憶がマジモンなら確定だけど、オリヴィエとイングヴァルトの関係も諸説数あったしね。
でもだからってアインハルトをかわいそうな子扱いも絶対違う。過去の記憶に引っ張られてこんな事されても困るし」

「でもでも、アインハルトちゃんの中ではまだそういう戦争が続いてるのもホントの事だよね」



その覇王さんの記憶もアインハルトちゃんなら、そういう事になっちゃうもん。それで恭文は困りながらも頷いた。



「なら、戦争が終わったーってアインハルトちゃんに教えるのはダメなのかな」

「ややちゃん、それってどういう事?」

「アインハルトちゃんがこんな事するようになったのって、ゆりかごって言うのやマリアージュ事件のせいでしょ?
それで復活してる王様達を倒せばそういう後悔した事とか……うん、後悔したって言ってたよね」



守れなくて悔しくて、だから強くなりたくてーって……それっぽい事言ってたもん。

だからつまりその……うぅ、ややうまく言えないー! このままアインハルトちゃんを全否定は違うのにー!



≪つまり知識的な事だけではなく、実際に戦争が過去のものになっている事を体感させようという事ですか。
それもあの人の中に居る『覇王』も納得させられるくらいに強い形で。そうすればその辺りの衝動も抑えられる≫

「そうそうそれっ! さっすがこてつちゃん、話が早いー!」

≪あなたのバカとの付き合いももう2年ですしね。そりゃあ慣れますよ≫



ちょ、バカってなにー! ややバカじゃないもんっ! ちゃんと勉強とか頑張ってるのにー!



「……なるほど。それは手か。確かに今のままだとアインハルトの感情の行き場がないしなぁ。
特に聖王に関しては強いこだわりがあるっぽいし、ずっと気になったままになりそう」

「それなら……でも恭文、さすがにこれは危険なんじゃ。
なにより本物なイクスはともかく、ヴィヴィオに悪いよ」

「そこなんだよねぇ。ヴィヴィオは確かに聖王の血筋だけど、聖王じゃあないしなぁ。
てーか絶対キレると思う。それも……さっきのあむレベルで」

「……うん、ありえるね。それにそうしてアインハルトの情熱というか感情のぶつけどころもなくなるでしょ?
だけどこのままはアウトだろうし――うーん、これは困っちゃったなぁ」





うー、ややの提案失敗だったかなぁ。なんか二人とも困り顔だもの。だけど……このままはダメだと思う。

何がダメかというと、やっぱりアインハルトちゃんの事をちゃんと知らない事とか? うん、まだややは何も知らない。

ややは覇王さんの事とか、それに引っ張られて辛そうなアインハルトちゃんしか知らないんだもの。



だから……戻ってきたらもっとお話してみようっと。まずはそこからだよね。



それで覇王さんの事とかも、どうして聖王さんにこだわるのかも教えてもらえたら嬉しいかも。










魔法少女リリカルなのはVivid・Remix


とある魔導師と彼女の鮮烈な日常


Memory03 『もう取り戻せない過去の誇りと願い』










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まずアインハルトの事は厳しい説論の末無罪放免となった。ここはフェイトに本当に感謝。

それでそんなカリムさんとついでにサリさんとも連絡を取って相談した上で、僕達は一つの強硬手段に出る事になった。

アインハルトとそのご家族にもその趣旨を説明して――それから1週間後。



僕達はまたまたミッドに来て、市街のオープンカフェでのんきにお茶をしていた。



そんなわけで僕が主導でアインハルトに質問をしていく。内容は……カイザーアーツの事。





「――本当に驚きです。断空の技法の極意を初見で見抜く人は初めて見ました」

「私の旦那様、目がいいんだ。基本的に一度見た技はちょっと練習しちゃうとコピー出来ちゃう。分析力と解析力なら超一流だもの」



フェイトは微笑みながら、自信満々に笑いながら胸を張る。それを見てちょっとおかしくて、僕はくすりと笑ってしまう。



「納得です。つまり……あぁ、そうなんですね。あなたが打ち立てた数々の武勇は、その力があってこそのもの」

「武勇なんかじゃないよ」



まぁ場の空気を壊してもあれなので、僕は紅茶を飲みながら苦笑しつつアインハルトの言葉に少し訂正を加える。



「ただ人を殴って傷つけて来ただけ。自慢に思った事なんて一度もないよ」

「そう、ですか」

「そうだよ。……でも驚きって言ったら僕もだよ。
アインハルト、そんなぺらぺら自分の流派の技について教えていいの?」



僕、概要だけでも聞ければいいなーって思ったのに……奥義っぽい断空に関しても教えてくれたんだもの。

そこが本当に疑問なのでアインハルトをジッと見ると、アインハルトは両手で紅茶カップを持ちながらなぜか顔を赤くする。



「構いません。あなたのような人にでしたら」



それを見て、なんとなく嫌な予感がした。てゆうかこのパターンは……いや、違う。絶対違う。

てーかそれが成り立つような事を僕は何一つしてない。バストタッチもなければ危険から助けたとかもないし。



「恭文、もしかしてまたなの?」

「アンタ……さすがにフェイトさん居るんだから自重しなよ。てーか歌唄とかに知れたらキレるって」

「恭文、ややは恭文の味方だよ? でもそろそろ考えた方がいいんじゃないかな」

「いや、そこはマジアタシも頼むわ。大体ギンガがお前の事引きずってて父さんが苦労して」

「はいそこうっさいっ! てーか昨日からずっと一緒に居たんだからそんなの成立しないって知ってるよねっ!
あとノーヴェ、そこに関しては後で詳しく教えてっ! さすがに気になるからっ! 申し訳なくなってくるからっ!」



四人と同じく呆れ気味に僕を見るしゅごキャラーズの視線はそれとして、僕も紅茶を飲みながらフェイトを横目で見る。

フェイトは『大丈夫』と言いたげに、僕の頭を左手で撫でてくれて……それがとっても幸せで笑顔になっちゃう。



「あー、でもあたしもアンタがそんなペラペラ技能について喋るの疑問かも。
だってほら、技パクられるかも知れないし、対策取られるかも知れないし」

「うんうん、ややも同感ー。てゆうか、恭文はそうだよ? そういうのが嫌だから自分の技能の事内緒にしてるもん」

「それなら問題はありません」



僕達の方を見ていたアインハルトは、視線を疑問顔な二人に向ける。



「まず恭文さんは覇王流の基本技法を既に理解していますから。
そんな人間に技能を語る事で生まれる不利益などありません」

「でもほら、アンタの武術とあたし達のストライクアーツって違うじゃん。そういうので警戒とか」



あむがそう言うと、アインハルトは本当に驚いたという目であむを見始めた。あむはそれが疑問なのか首を傾げる。



「日奈森さん、失礼ですが……もし本気でそう仰っているのなら、勉強不足です。
その意味で警戒する事は現代の格闘事情を鑑みればナンセンスと言えます」

「はぁっ!? アンタいきなりなにっ! だってストライクアーツに断空なんちゃらとかないじゃんっ!」

「それでもです。単純な格闘戦技で言うなら、もはやストライクアーツもカイザーアーツも変わりがないというのに」

「……あー、そりゃ言えるな」



あむは不満そうだったけど、ノーヴェが腕を組みながら納得しつつそう言うと驚きつつそちらを見た。



「てーかそこはうちの姉貴共のシューティングアーツも同じか」

「え、ノーヴェそれどういう事? ストライクアーツも私とギン姉のシューティングアーツも変わらないって」

「あ、それややも疑問ー。だってカイザーアーツもなんか特殊っぽいし、シューティングアーツもローラーブーツ使ったりするし」

「それでもなんだよ。いいか、ここで変わりないっていうのは」



ノーヴェは右手で指をビッと指して、全員の注目をそこに集める。



「それぞれのスキルの中身や戦闘スタイルじゃねぇ。どの戦技も画一化してる部分があるんだよ。
いや、ここは格闘技そのものの没個性化と言ってもいいな。そうだよな、アインハルト」

「はい。なのでむしろ知られる事前提で考えた方が良いと思っています。
……時に日奈森さん、ストライクアーツでは立ち技・投げ技・寝技がありますよね」

「へ?」



いきなりアインハルトにそう問われて、あむは困った顔で僕を見る。でもすぐにアインハルトの方に向き直って頷いた。



「うん、それは……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「あむちー、どうしたのー? いきなり叫んで」

「あの、私なにか変な事を」

「いやいや、違うしっ! てゆうか思い出したの! あたしそれ」



あむはそこで慌てたように僕の方に視線を向ける。



「恭文から教わってるっ!」

「ようやく思い出したか、ボケが。僕はいつ思い出すかと冷や冷やものだったし」

「あははは……ごめん」



正確にはドキたま/じゃんぷの第128話冒頭――大体1年と3ヶ月ほど前に教えたんだ。

でもあむ、それを今まで忘れて……これは鍛え直す必要があるかも知れないと思い、苦笑いのあむをジト目で見てしまう。



「では話は早い。とにかくそこはカイザーアーツも同じです。そしておそらく、先ほど話に出たシューティングアーツも」

「まぁ私とギン姉のシューティングアーツは寝技――サブミッション系は苦手だけど、一応あるよ」

「つまりはそういう事です」



アインハルトがそう言っても、あむはともかくフェイトもややもスバルも疑問顔。……しょうがないので話に加わる事にする。



「ようするにどの流派の格闘技も、その三揃えで技を構築してるって事だよ。
現在総合格闘術のカテゴリに入る武術は基本そう。まぁ武器を使うのはまた違うけどね」



ちなみに僕が盗んでる御神流も同じく。御神流も刃物を併用する形での投げ技や関節技があるんだ。

今の原則に当てはめると御神流も少し変則的ではあるけど、立派な歴史ある総合格闘術の流派なんだよ。



「でもヤスフミ、スキル内容が違うよね? だったら」

「フェイト、問題はそこじゃないの。大事なのは、なんのためにその三つを基本にしてるかってとこ。
……その三つを備えた総合格闘を習得すれば、どんな武術が相手でもそれなりに相手が出来るの」



そこまで言ってノーヴェとアインハルトの方を見ると、二人も同意らしく頷いた。

なので改めてフェイトの方を見ると、フェイトはやっぱり首を傾げていた。



「例えば地球の武術で言うなら、空手は立ち技には強いけどサブミッションや投げ技はない。
柔道ならその逆。もしこれらの武術とやり合う場合、相手の使わない技能で戦うとやりやすい」

「そういう技がないって事は、当然ながらかけられた時の防御法も構築してない場合が多いんだよね。
同一競技の中でなら……例えば空手とかなら、相手が投げ技使ってくる事なんてあるはずがないから」

「あむ、正解。思い出して来たみたいだね」

「あははは、そこはなんとか」





フェイトは少し考えるように視線を落としたけど、自分の経験に置き換えたら分かったらしく頷いてくれた。

そういう異種格闘技戦で分かりやすい例だと……あー、アントニオ猪木とモハメド・アリの対戦が分かりやすいかも。

あれで猪木さんはいわゆるアリキック(寝ながらの足への蹴り)を連発して、アリにダメージを与えていった。



アリはボクシングのルールで戦ってたから当然足元にキックなんて出来ない。その結果が当時は酷評された引き分けだよ。

まぁこれは試合のマッチングの際の交渉でルールが錯綜した結果だから例としては少し違うけど、基本はこういう事なのよ。

自分とは別種の格闘技なり戦技と対する場合、自分にあって相手にはない技能で対するのは基本中の基本。



魔導戦技で言うなら、遠距離攻撃が少し苦手な僕になのはやフェイトが射撃・砲撃戦を挑んでくるのと同じ事。





「まぁそれは私にも……あれ」



フェイトはようやく気づいたらしく、ハっとした表情を浮かべた。



「分かった?」

「ヤスフミ、もしかして」

「そうだよ。だからどこの流派も総合格闘の技術の研鑚に比重が傾きがちなの。アインハルトが同じと言い切ったのもそこが理由。
異なる流派や競技の相手と戦う異種格闘技戦の場合、全ての技能をオールマイティーに出来る方が戦いやすい」





フェイトやスバル達が言ってるのは、そこから一歩進んだ先の話――個人個人の特性の違いに過ぎない。

今アインハルトが『警戒は無意味』って言ったのは、その前の話だよ。ここは僕も同感。

まずフィジカルな戦闘の場合、先天資質より後天的な鍛錬次第でスタイルは自分の意志で決められる。



自分の当然弱点となる部分の補填も同じく。先天資質で大半が決まってしまう魔法とはその根底から違う。



でもその補填をしてくと……あら不思議。空手出身だろうが柔道出身だろうが、みんな総合格闘技のスタイルに近くなってしまうのよ。





「フェイト達でも分かるとこで言うと、IMCSでもそうなんだよ。
現に世界大会優勝者は、総合的な格闘技能に長けた奴ばかり」

≪そう言えばIMCSは異種格闘技戦の場でもありましたよね≫

「あぁ。……一撃必殺且つ一点突破な技能だけを持っていると、その穴を突かれちまう。なによりトーナメントもあるだろ?
どうしても規定数戦う必要があるし、どんな相手と戦うかも分からない。その中で勝ち進めば当然自分の技能がどんどん裸にされてく」



それがトーナメント戦の怖さなんだよね。正直勝ち抜くのには運も必要だと思う。

理想は最終戦まで手札は一切晒さない事。一日に何試合かするなら、負傷しない事も大事だね。



「だから全員まずは弱点を補おうと――トーナメントに勝ち抜けるだけの技術や手札を蓄積しようとする。でもその結果」

「異種格闘技っていうのだと、みんな大まかには同じような戦い方になっちゃうの?」



ややの方を見てノーヴェとアインハルトが頷く。



「別に色んな流派や格闘競技が無くなって全部総合って一つの枠に収まるような事はないと思う。
問題は異種格闘技戦。別の流派や格闘技同士が戦う場合、根っこの方でその現象が起こりやすい」

「それに関してはストライクアーツの普及でより加速化してるとこではあるね。あむはもう分かるよね」

「うん、思い出してる。ストライクアーツなら投げが出来ない人を投げたりするのも楽だし、関節技ダメな人にかけたりも出来る。
ストライクアーツやってる人がたくさん居ると、当然大会なんかの出場者の割合もそれに傾く」

「そうだよ。総合格闘技に対抗するには、やっぱり総合格闘技のノウハウを覚えるのが一番。だからってわけ」





IMCSの試合とか見てても思うけど、どんな選手でも総合格闘に対しての防御の練習はしてるんだよ。

ここも没個性化の要因の一つだね。得物や得意技や流派がなんであれ、みんな総合格闘技をやろうとしてきてる。

それでスバルは……一応納得したみたい。ちなみにこの現象、地球でも起きてる事なんだ。



ほら、なんだかんだでK-1みたいな総合格闘技流行ってるじゃない? 団体も世界各国に多数存在してるしさ。

個人個人の得意とするプレイは違っても、防御の面からある程度のオールマイティーさは求められる。

だからそのために立ち技も投げ技も寝技も勉強する必要があって、結果没個性化が起きちゃうのよ。



ただ魔法戦技の場合、そこに魔法という能力が絡むからまた変わってくる部分があるんだけどね。

例えばスバルのシューティングアーツがそれ。あれはウィングロードやブーツでの加速も込みだしなぁ。

そういう特殊技能を除くと、現状で通用する格闘戦技のスタイルというのは大体形が決まっている。



すなわちオールマイティー。もうね、一言で言うとこれなのよ。全ての技能のレベルが高い事が理想的な目標。

最悪でも攻防共に苦手項目をなくす事かな。もちろん今まで僕やフェイトがやってるような純粋な魔法戦闘ならこうはならないんだよ。

ぶっちゃけ投げたり関節技はいらない技法とも言える。魔法ぶっ放した方がよっぽど威力あるもの。



だけどストライクアーツやIMCSのようにそこの辺りで制限がかかっている場で戦う場合は話が違う。



関節技に持っていってギブアップも有効な手だし、他の攻撃の基点とするために投げ技を使う場合もあるから。





「ぶっちゃけ異種格闘技戦は、実質総合格闘ってジャンルに入ってる。『〇〇流VS〇〇流』って扱いじゃないんだよ。
どんな流派でどんな戦闘スタイル取ってようと、みんな総合格闘家だ。これが今のミッドの格闘競技の実情」

「……ねぇノーヴェ。これってかなり有名というか、広まってる話? 私初めて聞いたんだけど」

「あぁ。そこらで売ってる格闘マガジンとかでも話題が載るくらいにな。スバル、知らなかったならマジ勉強不足だぞ。
局員として救助現場以外で模擬戦したりする事もあるだろうに……お前なに鍛えてんだ」



……局の中にもそういう没個性化の煽りを食らってるのが居るのね。だからノーヴェはスバルを呆れ気味に見てると。

まぁIMCSの影響で、大分フィジカルな格闘が見直されてるとこはあるしなぁ。そのせいか。



「でもほら、それって格闘競技や民間の大会だけの話だし」

「バカ。さっきあむも言ってただろうが。みんなそこ勉強してると自然と比重がそちらに傾くってよ。
魔導師戦だってそこ勉強してる奴が増えて来て様変わりしてんだ。アタシやあむもその一人って言える。
仮にもプロの魔導師が、その流れに取り残されてどうすんだ。災害担当だからって言い訳は立たねぇぞ」

「うぅ……そう言われちゃうと反論出来ません」



反省気味なスバルの方を気にしつつ、アインハルトがまた僕の方を見てまた顔を……あれ、どうしてこうなった。



「だからあむ、もしIMCSに出るならそれなりに覚悟しといた方がいいよ?
そういう関係もあって、ここ2年で次元世界の『総合格闘』のレベルはかなり上がってるから」

「でも空海は去年かなりさくさく勝ち抜けたけど。ほら、もうちょいで都市本戦抜けたし」

「空海はノーマークな選手な上に、選抜とトーナメントの組み合わせに恵まれたもの」



なんだかんだで都市本戦の準々決勝まではいわゆるシード組な前年度までの上位入賞者に当たらなかったしなぁ。

でもシード組――雷帝ってのにぶつかったら見事に負けた。まぁいい勝負してたけどね。



「それに空海だって今年は厳しいよ。さっきのノーヴェのトーナメントの話がここで適用される」

「えっとえっと、空海が戦ってるビデオとか見てとかかな」

「そうだよ。もちろん今年一度でも試合したなら、もちろんその映像も参考にした上で研究される。
それでも同じくらいに勝ち抜けて、初めて空海の実力は本物と認められるわけよ」



でも空海、今年も出る気……うん、満々なんだよなぁ。あのバカ今年受験なのにだよ?

もちろんエスカレーター式に高等部に上がるなら勉強は多少楽になるけど……やっぱ不安だ。フェイトも苦笑い気味だし。



「恭文ー、フェイトママー」



一応でも大人として空海の将来が不安になっていると、後ろから声がかかった。

振り向いてそちらを見ると……あー、ヴィヴィオとリインだ。ようやく来たか。



「あ、スバルさんお久しぶりですー」

「ヴィヴィオ、お久しぶりー。リインさんもお久しぶりです」

「お久しぶりなのですよー。それで恭文さん……ちょっと後でお話するですよ」

「なんでっ!?」



リイン、なぜアインハルトを見てニコニコと威圧してくるのっ! アインハルトが怯えてるからやめてっ!



「ママ……では彼女は奥様と恭文さんのお子さん」

「あ、違うの。私が局員時代に一時的にこの子の後見人を勤めていて、その関係でママって呼ばれてて」

「今はもう違うけど、呼び方はそのままなんだよね。今更『フェイトさん』もおかしい話だけどさ」

「そう、ですか」



アインハルトは僕達に生返事を返しながら、ジッとヴィヴィオの事を見ていた。

ヴィヴィオのオッドアイに惹かれているようで、どこか熱に浮かされた顔をしている。



「それで恭文、フェイトママ、ヴィヴィオに会わせたい人って」

「あー、うん。この子なんだ」



フェイトが紹介する前にアインハルトは立ち上がって、ヴィヴィオの傍らまで近づいてお辞儀。



「ヴィヴィオ、こちらは」

「奥様、大丈夫です。……初めまして、高町ヴィヴィオさんでよろしいでしょうか」

「あ、はい」

「私はアインハルト・ストラトス。日奈森さんと同じクラスで、ベルカ古流武術です」

「えっと、高町ヴィヴィオです。ミッド式のストライクアーツに地球の剣術とか色々やってます」



二人はそう言って右手を差し出しながら握手。それでアインハルトは、やっぱりまじまじとヴィヴィオを見る。

でもそんなヴィヴィオは少し怪訝そうな顔をして、なぜか僕の方を見た。



「恭文、なにをしたの? 歌唄さんが怖いからヴィヴィオ以外で嫁を増やすのは」

「違うわボケっ! お願いだからどいつもこいつも僕がフラグ立てた事前提で話進めないでっ!
あとおのれを嫁にする予定はないって何度言ったら分かってくれるのかなっ!」

「そうだよっ! というかあの……だめっ! ヤスフミは私とリインと歌唄の旦那様なんだからっ!」

「そう言いながらフェイトも涙目だめー!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



小さな手に脆そうな身体だ。でもかなり鍛えているのは見て取れる。

それでこの紅(ロート)と翠(グリューン)の鮮やかな瞳は……間違いない。

覇王(私)の記憶に焼きついた、間違うはずもない聖王の証だ。



言いようのない充足感に胸を締めつけられつつ、私は彼女の手を離せ……って、ダメだ。



彼女が怪訝そうな表情を私にも向けて来る。私はここに来た趣旨を思い出しつつ彼女の手を離した。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



1週間前――恭文さんは管轄署を出てから腕を組みつつ私に背中を向けて歩いて行く。



私はみなさん共々その背中とその傍らに居る奥様について行きながら、ある一つの提案を受けていた。





「――聖王に、会わせていただけるのですか」

「こっちやおのれの関係者と相談の上だけどね。一応は無罪放免とは言え、おのれは犯罪者だし。
僕達は基本赤の他人だし、やっぱり家族に話通さないと勝手は出来ない」



その言葉に胸を高鳴らせてしまうのは、やはり……私の中に覇王が居るせい。

過去の記憶が一気に走馬灯の様に流れ、その高鳴りをどんどん早めていく。



「まぁはっきり言うけど、聖王と思って会うとめちゃくちゃ落胆するよ?
結果、おのれは嫌でも絶望と向き合う事になるだろうね。もう、取り戻せないってさ。
過去を変えるなんて事、普通は出来ない。だからおのれには取り戻せない」



その言葉はとても厳しく、私は自然と視線を落としてた。胸の高鳴りは厳しさによって、一気に吹き飛ぶ。



「失ったものを、守れなかったものを取り戻す事なんて出来ないって突きつけられる。
おのれが守りたかったものは、とうの昔に全部灰になってる。それが現実だ」

「恭文、さすがにそれどうなの? 確かにその」



日奈森さんは少し困った顔で、傍らを歩く私に視線を向けて来る。ううん、それは他のみなさんも同じ。



「アインハルトが探してる相手はもう居ないけどさ」

「事実だもの。だから今言ってる。……聖王やアインハルトの中の覇王を追いかけるってのは、そういう事なのよ」



恭文さんはそこで足を止め私の方へ身体ごと振り返り、腕を組みつつ声通りの厳しい表情を私に向けた。



「だから僕はおのれに『絶望と向き合う覚悟はあるか』と聞くしかない。
そこに希望があるとしたら、その絶望と向き合った先にしか存在しない。
おのれは覇王の記憶の中に埋もれてる自分を見つける必要がある」

「……なぜでしょうか」

「だって覇王は覇王であっておのれじゃない。イングヴェルトの記憶を持ってようが、アインハルト・ストラトスは一人だけでしょ」



その言葉は素直には受け入れたがった。でも……事実ではあった。だからこそ胸に強烈な痛みが走る。



「その記憶がおのれにとって大切なものなら捨てなくてもいい。忘れる必要なんてどこにもない。
でも線引きは必要なんだよ。お前は自分に、自分は『アインハルト・ストラトス』だと刻みつけるんだ。
……まぁ返事はいつでもいいから、まずはご両親とも相談して」

「会わせてください」



私は自然と足を止めて、右手を胸元まで上げて……握り締めていた。



「例えそこに絶望しかなかったとしても、抑えられないんです。
あの日――4年前、ゆりかごがこの空を飛んだあの日から。
そして2年前にマリアージュがこの世界に再び現れたあの日から」



厳しい表情の恭文さんに一歩踏み出し、私は自然と瞳から涙を零していた。



「私は……自分の中の衝動に嘘はつけない」

「絶望と向き合った結果、その衝動ごと壊れる可能性もあるよ。
お前の中の『覇王』が最初に望んだ形そのままの答えは、どこにもない」

「それでも、構いません。このままで居るよりはずっと……幸せなはずです」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――それじゃあヴィヴィオ、連絡した通りに」

「うんうん。早速アインハルトさんと手合わせで修行だよね」

「そうだよ。ぶっちゃけ今のおのれより格上だから、胸を借りるつもりでどーんといこうか」



色々思い出している間に話が進んで、私はハッとして恭文さんの方を見る。恭文さんも私の方を見ていた。

記憶の中の厳しい表情ではなく、優しく穏やかな大人の男性としての顔がそこにあった。



「というわけでアインハルト、悪いんだけどヴィヴィオの相手お願いね。
どうもこのチートは最近調子こいてるから、鼻っ柱へし折って欲しいのよ」

「むー、恭文ひどいー! ヴィヴィオの事が好きだからってそんなにいじめないでよー!」

「やかましいわボケっ! あとそんな意図は……フェイトも抱きつくのだめー!」





性格的には……あぁ、これも絶望か。私の知るオリヴィエはこんな発言はしない。

胸の痛みに耐えつつ、私は改めてヴィヴィオさんにお辞儀をする。それで……気持ちを固める。

そうだ、私はここに絶望を知りに来たんだ。それを望んだのは私自身のはずだ。



昨日今日と多大な迷惑をかけた私にその機会をくれた恭文さん達に感謝しつつ、私達は喫茶店を出る。



そうして近くの区民センターへ移動して、ウェアとグローブとシューズを借りた上で……更に絶望を知る道を進む。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



区民センターのような専用施設のない場所でも、一応の試合というのは出来る。ただ魔法関係は使えない。

いや、まぁ……当然だけどね。壊れたら大変だしさ。でもそれを抜いた練習場として利用する市民も多い。

ここの辺りは専用施設がどこも埋まってるとか、近場で練習したいという人が大半だったりする。



僕達が手続きをした上で借りた場所は学校の体育館のような場所で、ストライクアーツだけじゃなく各種スポーツも出来る。



だから両端に合計六つのバスケットゴールがあったりするわけですよ。木の床に天井もほぼそれな感じ。





「あむ、これも一応見取り稽古だかね? ヴィヴィオとアインハルトの技を見てしっかり勉強するように」

「分かってるって。それで恭文、恭文の予想的にはやっぱアインハルト優勢?」

「あ、そう言えばそうだね。さっきそれっぽい事言ってたし。
ヴィヴィオもかなり鍛えてるけど、ヤスフミ的にはそれでもって感じかな」

「うん。というか」



僕達の左側にある更衣室から二人揃って出てくるヴィヴィオとアインハルトは、既に着替え完了。

白の半袖シャツに紺のスパッツで、フィンガーグローブと底抜きで足の前面だけをガードしたシューズを装着している。



「アインハルト相手だと、ヴィヴィオは格闘戦だけじゃ相性が悪い」

「特に防御がやたらしっかりしてるからな。
アタシがどんだけ打ち込んでも全部余裕で捌きやがったし。
あれもカイ――アインハルトの古流武術の特徴だよな」



いきなり覇王どうこうって話をするとマズいから、アインハルトの武術は古流武術って事にしてある。

まぁここはヴィヴィオにそこを意識させないで、アインハルトにしっかり絶望してもらう意図もあるけど。



「しっかり地面を使って、攻撃・防御・移動の全てにおいて素の身体能力以上の事を出来るようにしてる。
線こそ細いが、ありゃ相当なパワーファイターだぞ。機動力はともかく、打ち合いだけならアタシやスバルより上だ」

「そう言えばさっきも喫茶店でそれっぽいお話してたような……うー、ややはそこさっぱりだよー」

「ややちゃん、頑張るでち。きっと分かるようになるでちよ」



ぺぺがややを慰めている間に、二人はある程度距離を取って対峙する。

特にラインとかが張られてないのに試合の時の指定距離(5メートル前後)を保っているのが中々。



「んじゃ、スパーリングいくぞー」



ノーヴェの声に二人は半身になり、ほぼ同じように拳を構える。



「魔法は原則厳禁でフィジカルな格闘オンリー。目突きや金的は禁止。
あとダウンしてからの加撃も同じだ。二人とも、いいな」

「問題ありません」

「りょうかーい」

「うし、それじゃあ……レディ」



ノーヴェは声をあげながら、右手を平手にした状態でゆっくりと上げる。



「ゴー!」





その腕が振り下ろされた瞬間、ヴィヴィオは一気にアインハルトに向かって突撃。



まずは初撃を取って流れを作ろうと考えたのか、アインハルトの胸元目がけて右ストレートを打ち込む。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヴィヴィオの打ち込んだ拳は、アインハルトさんの左の掌底によって簡単に払われて左に流された。

反撃が来るかと思ったけど、その様子はない。続けてヴィヴィオはその距離を維持したままで両拳を打ち込む。

でもそれはアインハルトさんの掌底で全部外側に逸らされて外れていく。でもこれ……よし。



試しに軽く踏み込みながら右フックを脇腹目がけて打ち込むと、アインハルトさんは右足を引きながら左手で掌底。

その掌底はヴィヴィオの手首近くに命中して、ヴィヴィオの身体は軽く後ろにのけぞってしまう。

……というかこれ、凄い。見た目以上にパワーがある。だからヴィヴィオの拳、ちょっと押されただけで簡単に避けられちゃう。



でも攻撃してこないのはどうして? というかというか、なんか悲しそうな顔してる。

その意味が分からなくて、ヴィヴィオは体勢を整えながら首を傾げる。でも、すぐに踏み込んだ。

また先ほどと同じよに拳を数度打ち込みながら意識を上に逸らしつつ、右足でロー。



そのローはアインハルトさんの左太ももに入るけど……あの、だから待って。なんでこんな硬いの。

まるで地面に足がそのまま生えてるみたいに全然動かないんだけど。というかあの、手応えが重過ぎる。

でもなんとなく分かって来て、ヴィヴィオはその足を素早く下げて次はハイでアインハルトさんの顔を狙う。



アインハルトさんはその蹴りを左手で受け止めるけど、やっぱり手応えが重い。ヴィヴィオは足を引きつつ後ろに跳ぶ。

……なるほど。大体分かった。さっきのガードの時、瞬間的に右足を踏み締めてた。それはさっきのローも同じかな?

乱打戦の時にガードが硬いのも、多分……ヴィヴィオはそこを確かめるためにもう一度踏み込む。



そして打ち込む拳が払われるのは気にせずに、アインハルトさんの腰の動きを見て確信した。

この人、攻撃や防御の時に地面をしっかりと噛んでる。それで力を増強。

地面を噛む――踏み締めて蹴る事で、掌底やガードにその勢いが加味されているんだ。



つまりその、ただ払ったり受けたりしてるんじゃないんだよ。むしろ自分から受けに行ってると言ってもいい。



だからこんなに硬いんだ。うぅ、これは恭文がヴィヴィオの鼻っぱしらをへし折る相手に選んだのも納得かも。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「恭文さん、あの子何者ですかっ!? ヴィヴィオの攻撃食らっても全然ですっ!」

「というかというか、魔法使ってないのに防御がやたらと硬いんだけどっ!」

「ですで……スバル、なんで驚いてるですかっ!」

「私もあの子が戦うの、初めて見たからですっ!」



目の前で続く打ち合いを見て、リインもスバルも――フェイト達も改めて驚いて見てる。

唯一冷静なのは僕とノーヴェくらいだね。僕は前に出てるノーヴェの傍らまで足を進める。



「お前の予想通りだな」

「だね。てーかノーヴェだってここは予想してたでしょ」

「まぁな。ただ気になるとこがないわけじゃないが」

「確かにね」



アインハルトが戸惑った表情浮かべっ放しなのと、攻撃に回ってないとこが……ねぇ。

ここはしょうがないけど、ちょっとショック療法過ぎたのかもと思って反省はしてたり。



「ノーヴェ、ノーヴェならどう崩す?」

「負けた事を反省した上で言わせてもらうなら」



乱打戦の中、ヴィヴィオが右足を動かし顎目がけて叩き込んだ蹴りを、アインハルトは上体逸らしで回避。



「防御に回ったアインハルトをクロスレンジの打撃オンリーで崩すのは正直キツいな。
お前みたいにエグい内部浸透系攻撃するならともかく」

「まだヒドい事を」

「事実だろうが」



続けてくるかかと落としをアインハルトは両足を僅かに広げ直してしっかりと床を踏み締めた上で、左の掌底で払う。



「時間をかけるなら手はいくつかあるが、速攻でいくならカウンターだ。
攻撃に回ったその瞬間だけは防御が薄くなるから、そこを狙う」



ヴィヴィオの体勢はその一撃で崩れるけど、アインハルトは攻めない。

その様子にヴィヴィオが表情を険しくしながらも左拳を振るう。



「でもそこはアインハルトだって分かってる。だから」



アインハルトはまた迎撃しようとするけど、今度は拳が伸び切る直前にヴィヴィオが身体ごと踏み込む。

そうしてエルボーを下から上に打ち込み、逆にアインハルトの掌底を払った。



「あぁ、簡単にはいかねぇ」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私の掌底を払いつつ懐に踏み込んだこの子の拳はとても真っ直ぐで綺麗。きっとそれは、心も同じ。

でも違う。私の記憶の中にあるオリヴィエとは明らかに違う。覚悟していたのに、どんどん戸惑いが深くなる。

その間にあの子は身体を捻りながらも右拳を私の腹目がけてアッパーで打ち込んでくる。



私は……咄嗟に両足を大きく広げてしゃがみ込み、すれすれでその拳を避ける。



そしてあの子のがら空きの胴体に向かって、縮めた身体を伸び上がらせながら右の掌底を打ち込んだ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヴィヴィオは咄嗟に左腕でその掌底を受け止め、床を踏み締めつつ右拳を引く。それでカウンターを取ろうとした。

この人のガードは本当に硬いから、距離を詰めてどうこうしかないって……でも、ダメ。

ヴィヴィオは次の瞬間、伸び上がったあの人の身体と腕に圧されるようにして空中へと吹き飛ばされた。



地面をしっかりと踏み締めて全身の力を無駄なく打ち込まれたその掌底に驚きつつも、空中で身体を縦に回転。

それでなんとか着地して、痺れる左腕を振るいながら改めてあの人を見る。……どうしよ、感動しちゃった。

こんな打ち方があって、こんな防御の仕方があって……わくわくが全然止まらないよ。



ヴィヴィオは軽く跳躍して身体の調子を確かめてから、10数メートルに開いたあの人との距離を詰めるために踏み込む。



でもその途端にあの人はツインテールの髪を揺らして振り返り、ヴィヴィオの方に背を向けた。





「お手合わせ、ありがとうございました」



ヴィヴィオはその言葉でコートを滑りながら停止して、つい呆けた顔を見せちゃう。



「……はい? あの、えっと……ヴィヴィオ、なにか失礼な事しちゃったとか」

「いえ」

「あ、弱過ぎて相手にならないからつまらないーとか。
もしくはアインハルトさんから見ると不真面目に見えたとか」



それなら分かるの。ほら、ヴィヴィオ全然攻め切れなかったし……悲しそうな顔してたのもそれかなーと。



「……正直、あなたの武技は趣味と遊びの範囲内の事だと考えていました」



その言葉が胸を貫いて、右手でつい……シャツの胸元を強く掴んじゃう。



「ですが今はもう違います」



でも胸の中に渦巻いてた悔しかったり悲しい思いは、その言葉で一気に吹き飛んだ。その言葉の中には確かに、悲しさ以外のものがあった。



「先ほどの一撃、防がれるとは思いませんでした。ですから、違うんです。
あれを防げたあなたに対して、そんな考えを持っていた事自体を恥じています」

「なら……どうしてっ!? さすがにヴィヴィオ、それでいきなりこれは意味分かんないよっ!」

「……ごめん、なさい」



次に聴こえた声は、どこかクールだった今までのあの人の声じゃなかった。

あの人は拳を握り締めながら、嗚咽を……そうだ。嗚咽を漏らしてた。だからヴィヴィオ、なにも言えなくなった。



「私の、身勝手なんです。ごめん……なさい。ですから」

「もう一度、やってみるか」



そう言いながらこちらに近づく恭文とノーヴェの方をヴィヴィオとアインハルトさんは視線を向けて、二人揃って驚きの表情を浮かべた。



「今度はスパーリングじゃなくて、本格的な練習試合でよ」

「このままじゃさすがにお互い遺恨残りまくりでしょ。それで発散って事で……どう?」



ヴィヴィオは改めてアインハルトさんの方を見る。アインハルトさんは……やっぱり戸惑った顔を見せてた。



「うん、それでいいよ。というか……それならそれで事情を話して欲しいんだけどなぁ。これ、どういう事かな」

「……気づいてた?」

「さすがに気づくよ」





先週のいきなりお泊りもそうだし、新キャラ登場な上にスバルさんやノーヴェまで居るもん。これどう考えてもおかしいよ。



察するにこの人絡みでなにかあって、それの解決のためにヴィヴィオが必要だからーって感じかな。



なのでジト目で恭文とノーヴェを見ると、ノーヴェは苦笑いし出して恭文はなんかお手上げポーズを取り始めた。





「そこについては、まぁ……アインハルトに許可取ってからかな。悪いけどちょっと付き合って」

「……まぁなにがあるか分からないけど、ヴィヴィオは問題ないよ。あとはアインハルトさん次第」

「やります――いえ、やらせてください」



それでアインハルトさんは恭文とノーヴェ、それにヴィヴィオに向かってぺこりと頭を下げた。



「もう今日のような事にはしません。日にちと時間はお任せしますので、ぜひよろしくお願いします」





こうしてよく分かんない事態に巻き込まれたっぽいヴィヴィオは極々普通に1週間後のお昼に練習試合となった。



まぁ学生なので、休日に頑張るのは基本だよねー。よし、それじゃあこの間に対策整えておかないと。



今日の事でアインハルトさんの基本戦法の一つは分かったし、最低でもそれだけはしっかりとだよー。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして僕達はその場で解散して、アインハルトも自宅に車で送った。ヴィヴィオはあむ共々先に帰ってもらった。

あとは……1週間後の試合かぁ。これがアウトだったら、もうこの手は使えないなぁ。

普通車タイプのレンタカーの助手席でまた来週こっちに来る事になるなぁと思いつつ、僕はため息を吐く。



というかヴィヴィオ、ホントごめんね? もうね、カウンセリングの専門家のサリさんにも相談したけどこれしかなかったのよ。

覇王の記憶があんまりにも強いから、下手に抑え込むような処置をするとかえって暴走するかもーって言われてさ。

というか、詳しく話を聞くとアインハルトはとっくに両親が手を回してカウンセリング関係を受けてたって言うのよ。



それでもこれな時点で、アインハルトの中の覇王の記憶が相当なのは……もう言うまでもない。

まずアインハルト自体は、聖王や他の王家のほとんど――イクスのような例外以外はほとんど滅びてる事は自覚している。

そこは覇王の記憶や感情の残滓以外に、ちゃんと『アインハルト・ストラトス』という人格が育っているせい。



それが現代に置いて聖王が居ない事をちゃんと知っている……はずだった。そう、はずだった。



なのに今こういう行動を取っちゃうのは、やっぱり4年前のゆりかごの事が原因なんだよ。





「ヤスフミ」

「今更たられば言ってもしょうがないよ」



隣のフェイトの言いたい事が分かって、窓の外の流れる景色に目を向けながらそう言う。



「それにフェイトが今思ってるみたいにさ、仮にゆりかご浮上前に事件解決出来たとしても……同じ事だよ。
あんな無茶苦茶なものを局は放置なんてしないだろうし、どっちにしても飛ばして破壊するなりしてたよ」

「そうなったらゆりかごの事は嫌でも市民に――アインハルトにバレていただろう。そこに責任を感じてもしょうがない」

≪あの状況で隠し通すという選択もないですしね。局はそれをやった上で相当ヒドい汚職をしていたんですから≫

「……確かにね。でもね、やっぱり反省はするんだ」



フェイトの方を見ると、フェイトは車を飛ばしながらも悔し気な表情を浮かべていた。



「結果どうこうよりも、過去の私を振り返るとどうしてもね。あの時の私はホント馬鹿だったなって思う。
こういう……事件に関わった人達が別の事で苦しむ可能性、考えてなかった。
ただ自分の事ばかりで、そういうの分かってた振りしていただけだった。私、凄く身勝手だった」



フェイトはあの時、ただ自分や六課の都合ばかりを考えて……自分の夢に嘘をついたと後悔していた。

改めてそういう後悔を感じているみたい。それに関してはまぁ、僕も似たようなもの。だから次の瞬間、二人して苦笑を浮かべる。



「だからアインハルトの事、放置出来ないんだよね」

「だね。出来る限りアインハルトにとっていい落とし所を見つけたいとか……考えちゃう」





……それで今アインハルトの記憶は、もしかしたら聖王オリヴィエが生きているんじゃないかと疼いている状態。

だからその疼きを収めるためには、もういっそあの時ゆりかごが動いた原因を見せつけるしかないんじゃないかーと。

しかし……あぁ、聖夜市に居るからあんまり面倒見られないのが不安でしょうがない。これ今後も関わるよね?



だってここまで来たらもう……だしなぁ。窓から見える夜の景色を見ながら、僕は頬を引きつらせる。



一応アインハルトのご両親の許可を取っているとは言え、さすがに不安が強くて……僕達も人の親ですから。





「ねぇ恭文」



声がかかったので後部座席を見ると、ややとリインが困った顔で僕の方を見ていた。



「来週の試合大丈夫なの? また同じ事になったら」

「万が一に備えてサリさんは招集する。ちょうどドゥーエさんと暇してるって言ってたし」

「あはは、サリエルさんかわいそー。でもでも……うぅ、責任感じてるかも。ややのアイディアでコレだし」

「その、大丈夫だよ? それを言えば同意している私とヤスフミにも責任はあるし」

「そうだよ。だから責任があるなら全員だ。それに……なぁ」



どっちにしてもこのままアインハルトを放置も出来ない理由がある。だからまぁ、頭の痛さが増すわけですよ。



「いやさ、ややのアイディアに乗っかった一番の原因は――学校なんだよ。
アインハルトとヴィヴィオは同じ学校で、しかもあむと同じクラスでしょ?」

「……あぁ、それでなんでちか。ぺぺはどうも話が急ぎ過ぎと思ってたんでちが」

「いつ鉢合わせするか分からないんだね。
というかというか、アインハルトちゃんはヴィヴィオちゃんの上級生だもん。
むしろ今まで遭遇しなかった事が凄いというかなんというか」

「なんだよねぇ。学部違うって言っても、それだってここ1〜2年の話だしさ。同じ敷地内なのに」





現にアインハルトは今日、ヴィヴィオを見てその姿に聖王のそれを感じ取ってたっぽい。

つまり一目見ればヴィヴィオがそれだって気づくだけのものが、アインハルトの中にはあるのよ。

それはヴィヴィオのオッドアイや髪の色が聖王様譲りからかも知れないし……うん、ヤバいよね。



そんなヴィヴィオと偶発的に会って、アインハルトが自分の中の『覇王』を抑えられる? 答えはノーだとサリさんも言ってたよ。

一応なのはにも話は通してて――うん、反対してたよ。ヴィヴィオは聖王じゃないんだからーってさ。

ただそこを防ぐなら、アインハルトを捕まえるか別世界に転校してもらうしかない。でもそれだけじゃあ安心出来ない。



悲しいかな二人は武技という共通の要素を持っている。それきっかけで二人が偶発的に会う可能性もある。

そうならなくても、旅行やちょっとしたお出かけの時とかに鉢合わせしてしまう可能性もある。

なによりヴィヴィオの事を優先して、今記憶に引きずられて苦しんでるあの子を放置は出来ない。



だから二人にとっていい方向を探すためと説明したら……一応納得してくれた。



もちろんここはヴィヴィオが聖王でもなんでもない事を見せつけるためという趣旨があったからこそだよ。





「どっちにしても、来週かぁ」

「ヴィヴィオにもちゃんと説明しないといけないね。もうバレてる感じだし」

「だよね」

「……あとリインにも説明お願いなのですっ! というかというか、みんなリイン放置でシリアスするなですー!」

『あ、ごめん』





この後僕達はすぐ聖夜市に戻らないといけないけど、一応ヴィヴィオに通信でもいいから事情説明しとかないとなぁ。



さすがにこれ以上黙ってるのはアウトだし、アインハルトにも許可を取ってるから……あとはうまくいく事を祈るだけだ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文とフェイトママとややさんとリインさんは聖夜市に帰ってった。その後もヴィヴィオとあむさんはミッドで学業を頑張ってる。

あむさんは異世界生活で苦戦はしてるけど、それでも必死に勉強についていってる。基本頑張り屋さんだからねー

あと、アインハルトさんともちょくちょく話してるっぽい。ヴィヴィオは学部が違うからスルー気味だけどね。



それでヴィヴィオはヴィヴィオで対策を整えるために、庭先で自主訓練。

ジャージ姿なヴィヴィオは夜だから暗い家の庭で呼吸を整えつつ、腰を落とす。

まずヴィヴィオの今の力量じゃあ、アインハルトさんのガードは普通には崩せない。



機動力で圧そうにも、ヴィヴィオが回り込むのとアインハルトさんがヴィヴィオの方を向くのとじゃあ明らかに速度に差がある。

実際の機動力は未知数だけど、足を止めての打ち合いだと本当に強いと思う。

関節技も考えたけど、魔法使うのに比べると1テンポ遅れちゃうのが難点の一つなんだよねぇ。



まぁだからこそ、DSAAとかの公式試合で関節技を決めた時の取得ポイントが多いんだけど。

ただ今回はそういうの無し。それやるなら折るくらいの勢いが必要になっちゃう。

あー、つまりそれくらい確実な関節技を使わないと、対応されちゃうって事かな。アインハルトさんなら出来ると思う。



というか、そもそもかけられるのかーって問題もあるんだ。防御が硬いからこかすのも一苦労だろうし。

あれがアインハルトさんのやってる古流武術の技法の一つなんだと思うの。まぁ言い方は悪いけど、地面ありき?

攻撃と防御……多分移動とかも、両足で地面を上手く噛みつつ行うんだよね。でも逆に空中戦は苦手そう。



飛行魔法とか使えるならそこは関係なくなっちゃうけど。というか、このタイプは新しいかも。

ヴィヴィオの知っている格闘タイプの中に、アインハルトさんみたいな方向性のパワータイプは居ないし。

とにかくこの方法への対処はいくつかある。例えばさっきも言ったみたいに速度で圧す。



でもアインハルトさん、相当訓練してるっぽくて今日の乱打戦でも見切りがしっかりしてた。

両足で地面を噛んでこっちの攻撃に合わせて対処なんて、大変なのに……うぅ、凄い。

だったらヴィヴィオもアインハルトさんに負けないようにパワーで圧す?



ううん、だめだ。恭文みたいに出来るならそれもありだけど、今のヴィヴィオは大人モードでもそこまで出来ない。



でもでも、それだって――ヴィヴィオは両足で地面を踏み締めながら、右ストレートで虚空を貫く。





「……これで良いはずだけど、なんか違う」





右拳をゆっくり引きつつ、思考を戻していく。あとはやっぱり……カウンターかぁ。

多分この技法は、攻撃と防御の切り替えが咄嗟には出来ないと思うんだよね。

攻撃のための地面の噛み方と、防御のための地面の噛み方が違うって感じかな。



だからカウンター。防御をまともに破るのは難しいっぽいし、それくらいしかないかなーと。

さっき言った関節技のあれこれも、基本的には立ち技でやる事になるだろうし……うん、これもやるならカウンターだね。

でもそれは、ヴィヴィオが向こうに手を出させるだけのものを見せつけないと無理だよね。



今日だって防御技能の差だろうけど、全然だったしさぁ。というか、こういう相手には出来れば射砲撃で挑みたい。

でもでも、それもなんか悔しい。だったら……ヴィヴィオは一つ思いついて、右足でローを打ち込む。

ローはもちろん何かに当たったりはしないけど、そこにアインハルトさんの足を打ち抜いた時の手応えを思い出して重ねていく。





「よし、これでいこう」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ねぇあむさん、ヴィヴィオかなりエンジンかかってるっぽいけどどうしたのかな」

「あー、その……あたしと同じクラスの子と練習試合する事になって。それがやたらと強い人で」



リビングからなのはさんが首を傾げながら、真剣な顔でローを打ち続けてるヴィヴィオちゃんを……うん、見るよねぇ。

だってヴィヴィオちゃん、今日帰ってからも口数少なめであの調子だし。



「……例の覇王?」

「そ、そうです。というかなのはさん」

「もちろん恭文君とフェイトちゃんから。でもヴィヴィオ……ちょっと楽しそうだし、そこは安心かな」

「楽しそう?」



改めてラン達とヴィヴィオちゃんを見てみる。するとヴィヴィオちゃんの口元が僅かに歪んでいたのに気づいた。



「あ、笑ってる」

「でしょ?」



なのはさんの方を見ると、嬉しそうに笑ってた。やっぱりお母さんだから、あたしがついさっき気づいたアレをすぐに分かったっぽい。



「その覇王さんも、そんな悪い子じゃないんだよね」

「えぇ。あたしもこの1週間挨拶程度にちょくちょく話してますけど、イースターとかに比べたら」

「そっか。まぁヴィヴィオがあの調子なら……うん、やっぱり安心かな」



改めてなのはさんは、やっぱり楽しそうなヴィヴィオちゃんを見てクスリと笑う。



「好きこそものの上手なれって言うけど、ヴィヴィオの場合もそうなの。
魔法戦技や格闘、読書が好きで……だからそっち系統だと頑張っちゃう。
きっと覇王さんとの練習試合、楽しみなんだよ。そこはよく伝わった」

「なるほど。あたしもそこは分かるかも」

「あむさんも、格闘好き?」

「まぁ、それなりに。ガチに人を殴るのはやっぱり慣れないし嫌だけど」



苦笑しつつあたしは、右手を上げて……色々な事を思い出しながら拳を握る。



「でも、そういうぶつかり合いの中でなにか生まれてるのは……あたしにも最近ようやく分かって来たから。それで」

「なにかな」

「覇王の子も、きっと同じです。あの子もそういう記憶どうこうは抜きに、武術が好き」



よく分かんないけど、それだけは確信を持ってる。それでなのはさんはそんなワケ分かんない事言ってるあたしを見て、優しく笑った。



「なら、余計に安心かも。……よし、それじゃあ今日も訓練開始だね。課題は……そうだな。まだ苦手な魔力圧縮からかな」

「はい、お願いします」





あたしはあたしで勉強してる感じ。レベルの高いあの二人や周囲の人達に比べたら全然だけどね。



ただそれでも、あたしはあたしなりのペースで魔法が使える自分ってキャラを追いかけている。



この後ラン達共々なのはさんと星と二つの月が輝く空の下に飛び出して、笑顔で練習を開始した。





(Memory04へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、第三話です。……これだけでまたひと月分が消費された」

フェイト「どうしよう、もう第一巻の収録分が次回で終わるよ」

恭文「まぁここは序盤だししょうがない。というわけで本日のお相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。それで今回はヴィヴィオとアインハルトの初手合わせだね。でも原作とちょこっと変わってたり」

恭文「最後の一撃防いでるとことかだね。あそこは原作との経験さという事で」



(『えへへー♪』)



恭文「あと、なんであんな先祖帰り状態になってるかの説明はとまとオリジナル解釈ですので」

フェイト「ここはStSの第24話で……あう」

恭文「フェイト、ヘコまなくていいから。あの作画の酷さに頭抱えたくなる気持ちは分かるけど違うから」

フェイト「それこそ違うよー!」



(閃光の女神、机をばんばんと叩く)



フェイト「とにかくテレビの24話でマダマが言っていた『王族クローン』の話が元なんだよね」

恭文「うん。てゆうか、出ている設定でアインハルトの現状を説明出来るのはあれしかなかった。
まぁ原作でそこの説明出てきて食い違ってももうどうしようもないけどね。大丈夫、推測って逃げ道は作ったから」

フェイト「そ、そっか。それで次回はいよいよリベンジだね。でも……改めて思ったけど、やり方が私達ヘタだよね」

恭文「かなりね。でもあんまり時間をかけるのもだめなんだよね。それやると……鉢合わせが」

フェイト「……そうだった」



(てゆうか、4年もあって一度も鉢合わせしていない奇跡が凄い)



恭文「それでは次回はいよいよ再戦。ヴィヴィオもなにか対策立てたっぽいし、今日みたいにはならないでしょ」

フェイト「でも、なんだか魔法戦要素少なめだよね」

恭文「今回のテーマの一つは『スポーツとしての魔法戦技・格闘』だしね。今までで言うところの魔法戦の要素は少なめかな。
ただ、その分それに関わるあむやヴィヴィオにコロナ達が活躍するようにしていくつもりだけど」

フェイト「私達はそこには加わらない方向?」

恭文「IMCSの事もあるからそうなるね。そこでバランス取って、あむ達にしっかり主役シフトしないと。というわけで、本日のお相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪でした。それではみなさん、また次回に」





(そう、IMCSの設定をうまく使って主役をシフトするのだ。何気に作者、種死とかなのはの悲劇を見てるのでかなり緊張。
本日のED:Prague『バランスドール』)










恭文「とにかく序盤とオフトレ編はまぁしょうがない。でもそれ以後は完全にヴィヴィオとあむの話にシフトするようにしなくちゃ」

あむ「アンタ、気にし過ぎじゃない? もうちょっと気楽にしてもいいのに」

恭文「いや、ダメだっ! そんな風に油断して世代交代に失敗した話はいくらでもあるんだよっ!?
とまとが今後も続いていくコンテンツとするためには、まず世代交代をしっかり出来るようにしなきゃいけないのっ!」

あむ「だから気合い入り過ぎだってっ! アンタなんでそんな目がマジなのかなっ!」

古鉄≪しょうがないんですよ。リアルタイムでクレジットの一番上を旧主人公に取られた新主人公とか見てたらそれはもう≫

ジガン≪なのなの。だからここは大事にいくの≫





(おしまい)





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