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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory01 『新生魔法変身ヒーロー……現わる?』



新暦79年の4月。ミッドチルダはとってもいいお天気。だって、今は春だから。

春……それは始まりの季節。あたし、日奈森あむにとっても今日は一つの始まり。

黒のロングスカートに白の半袖のシャツという制服を小奇麗に纏めて、二階建ての家の一室で準備完了。



あの日一人の男の子と出会った事で知った世界の広さ。そして自分の中の可能性。



それを追いかけるためにあたし、ミッドチルダに留学を決めた。





「……うん、これで良しっと」

「うわぁ、あむちゃん決めてるねー」

「今日は学校初日ですからねぇ」





そう、今日が初日。あたしは聖王教会系列の学校である、ザンクト・ヒルデ魔法学院の中等科2年に転入した。

ちなみにここはあのなのはさんとヴィヴィオちゃんの自宅。でも恭文とフェイトさんは聖夜市で子育て中だったり。

二人は恭文とあたしが聖夜小を卒業し後、子育て期間も兼ねてそのまま聖夜市に居る。



うん、産まれたんだ。恭介くんとアイリちゃんって双子の男の子と女の子。もうすぐ1歳の誕生日を迎えるの。

もうややなんてヤキモチ焼きまくりでさぁ。『ややの方が可愛いー』なんて本当に言いまくってた。

ちなみに生活に関しては以前恭文が言ってた通りに局に育児休暇を申請して、手当てをもらいつつだね。



嘱託に対する保証もしっかりしてるし後はアレなんだよね。恭文が今までもらいにもらいまくった賞金。

その関係でお金に困るような事はないし、一生このままでも問題ないとか。アイツどんだけ金持ちなんだろう。

もちろんここは二人が前々から貯金をちゃんとしていたりした故だというのは、留意しておいて欲しかったり。



賞金だってアイツが無駄遣いしまくってたらあっという間に無くなるだろうし……一応しっかりはしてるんだよ。

それでその、あたしはそんな二人の代わりというのも違うけど、とにかく居候させてもらう事になった。

それとあとプラス四人だね。窓から差し込む陽の光に照らされてる小さな子達がそれ。





「気合いが入ってるのなんて当然じゃん。……今回はもう絶対失敗するわけにはいかないし」

「あぁ、転校初日の外キャラ大暴走ね」

「あむちゃん、本当に大丈夫? なんならボクとかダイヤがキャラなりした方が」





そんな事を言うのは、あたしのしゅごキャラのランとミキとスゥとダイヤ。まぁ、もうお馴染みだけど一応説明。

しゅごキャラはこころのたまごから産まれたもう一人の自分。そのたまごには、夢や未来への可能性が詰まった不思議なたまご。

普段は人のこころの中にあるんだけど、それがたまに突然こころから出てきちゃう事があるんだ。



それがしゅごたま。こころのたまごが変化したもので、そのたまごから産まれたのがしゅごキャラ。



ランもミキもスゥもダイヤも、あたしの『なりたい自分』。みんなあたしの……大事な一部。





「大丈夫だって。てゆうかミキ、キャラチェンジにそんなほいほい頼っちゃだめじゃん。
ミキがそう言ってたのに。キャラチェンジもキャラなりも、まだ形になってないあたしの可能性だって」

「いや、それはそうなんだけど」



ミキがそう言いながら、あたしから目を逸らして軽くため息を吐く。



「あむちゃんの場合、またなんかやらかしそうで非常に怖いから」

「あぁ、それは言えるね。私も同感」

「あむちゃん、ここは無理しないでミキ達に頼ってもいいと思いますよぉ」

「あむちゃん、時として自分のダメさ加減を認めるのも勇気じゃないかしら。
いっそ恭文君に今すぐに来てもらう? ヒカリはともかくシオンにキャラチェンジすれば」

「なんですとー!? アンタ達、いくらなんでも好き勝手言い過ぎだからっ!
あとダイヤ、シオンとのキャラチェンジは危険じゃんっ! なんかみんなあたしの信者にするしっ!」





あ、それで今名前が出たシオンとヒカリもしゅごキャラなんだ。二人は恭文のしゅごキャラ。

後一人ショウタロウっていうしゅごキャラも居るんだ。恭文もたくさん『なりたい自分』がある。

こころのたまごは大人に――描いていた『なりたい自分』になれると、宿主と一体化していく。



でも大人でも夢を、『なりたい自分』を描いている人にはたまごがある。



だから恭文もたまごを持ってて、それが縁でまぁ……深い付き合いになった感じだね。





「てゆうか、全然そんな事ないし」



あたしは腕を組みながら、軽くふてくされるようにして右側を向く。



「あたしだってもう中学生で今年で14なんだから。ちゃんと大人なの」





そうだよ、マジで大人なんだから。まず、胸がこの1年ちょっとで急激に大きくなった。

まぁ6年生の2学期辺りから成長は始まってたんだけどさ。だからあたし、今Cくらいはあるし。

うん、これは嬉しいね。おかげで恭文から『平原』とか『ぺったんこ』なんてもう言われなくなったし。



……そうだそうだ、あたしだって将来的にはフェイトさんレベルで巨乳キャラなんだから。簡単には負け。





あむー、朝ご飯出来たよー? ……もしかしてまだ寝てるのかなー



あたしが色々気合いを入れていると、下から声がした。これは……フェイトさんだ。

あたしは実家の内装そのままな部屋のドアを開けて、階段下に向かって返事をする。



「あ、はいー。今降りますー。ちょうど準備してたところだったんでー」

あ、起きてたんだね。分かったー



……ちょっと待って。なんでフェイトさんの声がする?

ここあたしとヴィヴィオちゃんとなのはさんとラン達七人だけしか居ないはずなのに。



ならよかったよー。てーか、早くしないと初日から遅れるよー?
あ、ちなみに『外キャラ全開で失敗して大変だったね会』の準備はしてるから






この性格の悪い発言は恭文だね。うん、声がなかったとしても話してる内容で丸わかりだよ。



……だから待ってっ! なんで恭文の声がっ!? なんかすっごいおかしいしっ!



とりあえず、カバンも持った上であたしは下に降りる。そこには朝食を食卓に並べるなのはさんとヴィヴィオちゃんが居た。





「あ、あむさんおはよう。……ヴィヴィオ、本当に効果的だね」

「でしょでしょ?」



ブレザーな制服姿のヴィヴィオちゃんとエプロン姿のなのはさんが、少しおかしそうに笑う。

それに構わずあたしはリビングを見渡すけど……居ない。



「あの、今二人の声がっ!」

「あ、それヴィヴィオの声帯模写」

「なんか早速覚えのない設定出してるっ!? ヴィヴィオちゃん、いきなり何してるわけっ!」

「嫌だなぁあむさん。前シリーズから間が開いたらそういう設定つけ放題じゃないですか」



ヴィヴィオちゃんは呆れ気味な表情をあたしに向けてきた。



「それはパワーバランス調整したり新要素付け加えたりしてリニューアルのための期間なんですから、もっと活用しないと。
あむさんだってすごいパワーアップして一人で巨大×キャラ浄化出来ちゃうようになっててもおかしくないですよ」

「おかしいからっ! ヴィヴィオちゃん、マジそういう恭文みたいな事言うのやめよっ!?
あのね、まだやり直せるっ! まだ人生やり直していけるからっ!」

「そう考えるとママは10年もあったのに成長してないよね。設定つけ放題なの遠慮しちゃったの?」

「ヴィヴィオやめてー! ママの心を抉らないでー! というかその考え方は間違ってるからー!」





あたしは朝ご飯と思われるオムライスが乗っているテーブルに着席。でも頭が痛い。



あたしの新生活はまぁ、こんな感じ。色々不安もあるけど、変化もあるけど、それでもいつも通り。



いつも通りなみんなの助けも借りて、あたしはミッドでもあたしのキャラ……通していく。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私、高町ヴィヴィオ。今年で初等科4年生で10歳な女の子。職業は今説明した通りの学生。

なお、去年学校の中の○等部の名称や年度分けが変わりました。

えっと、初等科は6年生で中等科は3年……日本の学校と割合近い形になったんだ。



法改正に合わせた感じなんだけど、それでも基本今まで通りにしていくとは理事長の談。

勉強する内容も変わらないそうだし、ヴィヴィオ達的にも普通なんだ。

現在ヴィヴィオは朝ご飯をママとあむさんと一緒に食べて、玄関から出たところ。あー、今日も良い天気だなぁ。



良い天気だけど……なんだか心配なんですけど。もっと言うと、あむさんが色々と。





”それじゃあヴィヴィオ”





ママはこれから本局に向かって、教導隊でお仕事。というか、ママはこの1年で随分綺麗になりました。

それはきっと恋をしてるせいだね。なお、お相手は……藤咲なぎひこさん。

10歳程年齢差があるし、ママは『仲良しなボーイフレンドなだけ』って言ってるけど違うよね。



だって今までユーノ君やジンさんや他の男の人に対して『お友達』を使ってたママが『ボーイフレンド』だもの。

ちなみにボーイフレンドの意味は『男の子の友達』ではなく『恋愛関係にある男性の恋人』という意味なので、あしからず。

まぁそこはともかく、ヴィヴィオは心配そうな顔のママを見上げる。その原因はあむさん。



先月の中ほどからこっちに来て、今日から魔法学院の生徒になった元ガーディアンのジョーカー。





”うん。任せて。あむさんはまだこっちに慣れてないだろうし、ヴィヴィオがフォローするよ”

”お願いね。……うぅ、私もかなり心配なんだ。だってだって、ランちゃん達の話を聞くと相当でしょ?”

”相当だよねー”



確か確か、聖夜小に転校した初日に『……ま、よろしく』ってぶっきらぼうに挨拶したんだよね。

その結果、口下手で引っ込み思案なのをクールでスパイシーでかっこいいって取られて大変だったとか。



”ただ、そもそも科が違うからどこまで出来るか分かんないよー”

”まぁそれはね? ……あ、それと”

”何?”

「ヴィヴィオもあむさんも今日は始業式だけでしょ?」



あ、念話じゃなくて普通の会話になった。つまりあむさんにも言っておきたい事になったんだ。



「ママも早く帰って来れるし……夕飯、今日はちょっと豪勢にしようか。
4年生進級とあむちゃんの編入のお祝いモードにするの」

「あ、それいいなー。ヴィヴィオ賛成ー」

「あの、ありがとうございます。もうお世話になりっ放しで」

「もう、そんなにペコペコしなくていいのに。むしろヴィヴィオの面倒とか見てくれてありがたいくらいだし」



ママが嬉しそうな顔でしゃがんで、ヴィヴィオとあむさんを見る。それで軽く両手をあげた。



「さて、それじゃあ」

「うん」

「……はい」



ヴィヴィオとあむさんも左手を上げて、ポンとタッチ。



『行ってきまーす』





それであむさんとヴィヴィオは四角い学校用のカバンを背負い直して、全速力でダッシュ。

いつも通りな風景にいつも通りな穏やかな時間。ここに来るまでには色々あったけど、それでもいつも通り。

……ううん、ちょっと違うか。例えば隣であむさんと同じ学校を目指して走ってたりするもん。



新暦79年の4月。まぁ細々と事件が起こってはいるけど……それでもびっくりするくらいに平和。

恭文とあむさん達ガーディアンが関わった大事件の余波で、世界は少しだけ優しい形に変わったせいかな。

そんな形が続いていく平和な時間の中で、ヴィヴィオとあむさんの新しい時間と日常が始まる。



穏やかでありながらも鮮烈な日常、ここからスタートです。さぁ、最初からクライマックスでいくよー! おー!










魔法少女リリカルなのはVivid・Remix


とある魔導師と彼女の鮮烈な日常


Memory01 『新生魔法変身ヒーロー……現わる?』










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、あむが転校初日を迎えて色々心配ではあるけど……僕とフェイトは早速行動開始。

現在、時空管理局・本局にてなのはから頼まれたお使いの最中だったりします。

子育てのためにボブロングくらいまで髪を切ったフェイトと一緒に歩いて……フェイト、可愛いなぁ。



でもでも、体型が若干丸みを帯びていて……あ、太ってるとかそういう事じゃないんだ。

むしろ胸が大きくなっていて、凄い色気たっぷりな体型になったの。でも本人的には早く痩せたいらしい。

そんなわけで子育ても落ち着いて来ているので、日常の中で出来る範囲で訓練も再開してる。



例えば両手両足に一つ10キロ程のおもり付きバンドを装備してたりとか? ……あ、これは僕だった。

フェイトも筋力が衰えないためにおもり付けてるけど、それも軽めのとこから始めてるから問題ない。

というかこれ、魔力による負荷もかかってるからうまく運用しないと全然動けないのよ。これで日常生活を送るから修行だね。



暮らしの中に修行あり。学び鍛え変わろうとする気持ちがあれば、修行はどんな状況でも出来るのよ。



でもそれが出来たり今日もこっちに来られるのは、シャーリーとディード達のおかげだったり……ホントみんなには感謝だよ。





「うー、あむは大丈夫かなぁ。もうかなり心配だし」

「そうなんだよね。初日から仲良くは無理でも……『ま、よろしく』は無しだといいよね」



僕は久々に来る本局の廊下を歩きながら、フェイトと二人あむの心配ばっかりしてる。

……普通さ、恭介達の事心配しない? いくらディード達に任せて安心と言ってもこれはさぁ。



≪主様、大丈夫なの。あむちゃんはきっとジガン達の期待に応えてくれるの≫

≪そうですよ。期待に応えて外キャラを発揮してくれますよ≫

「やかましいわボケっ! てーか、それには出来る事なら応えて欲しくないんだけどっ!?」

「そうだよっ! そうしたらまた噂に聞くクール&スパイシーの再臨だよっ!? 絶対だめっ!」



まぁ、ここはもう仕方ない。あむがこっちに留学決めた時点で通らなくちゃいけない壁なのは決定したんだし。

もう賽は投げられた。僕達に出来るのは、その目があむにとってできるだけいい目であるようにと祈る事だけだよ。



「でもフェイト」

「ん、なにかな」

「なんというか、ごめんね。ほら、僕って空海やりま達の訓練に付き合ったりが多いし」



こんな話を歩きながらするのも、そこの辺りが色々絡んでる部分があるから。

それで結構言ってる。だからフェイトも、軽く呆れ気味に苦笑したりするの。



「もう……ヤスフミ、前にも言ったけど私は大丈夫だよ?
それにヤスフミ、普段からちゃんと子育てに協力してくれてるし」

「それでも、『ごめん』と『ありがとう』の気持ちはちゃんと持っておきたいの」



うん、やっぱり申し訳ないしさ。フェイトも訓練に付き合ったりするけど、それだってたまにだし。

僕はその……どうしても出番が多くなりがちで、子育てに余り参加出来てないかなーって。



「だって僕達……夫婦だもの。『ありがとう』と『ごめん』をちゃんと言うのは、大事な事だよ。
だから、これは『ありがとう』も込みかな。うん、そう言ってくれてありがたいから」

「……そっか。うん、確かにそうだね。ただね、ヤスフミ。私はその」



フェイトが頬を染めて、右側にいる僕を見る。それで優しく笑ってくれる。



「あなたの奥さんとして……いっつもあなたに『ありがとう』の気持ちを持ってるよ?
あ、もちろん『ごめん』の気持ちもある。うん、ここも確かに大事だから」



言いながら、右手を伸ばしてそっと僕の左手を繋いでくれる。僕はそれを恋人繋ぎで握り返す。



「あなたが居てくれて、ずっと一緒に居てくれたから……私、胸を張ってお母さんになれたから。
あなたと一緒に過ごして、こうやって愛し合うようになって……私、本当に幸せなんだ」



……アレ、なぜここで急に黙る? そしてなぜ顔を真っ赤にする? というか、なぜもじもじする?



”そ、その……あのね? 今のはそういう意味じゃないよ?”



え、フェイト? なんで念話に切り替えるんですか。というか、なんで更にもじもじするんですか。



”確かに私達はその、恭介とアイリが産まれてもいっぱいコミュニケーションしてるよ? でも、違うの。
今言ったのはあくまでもこう……精神的な『愛し合う』なんだ。決して肉体的じゃなくて”

”その勘違いはどっから出てきたっ!? てーかそれくらい分かってるからー!
……フェイト、エッチだね。どうしてまたいやらしくなっちゃうんだろ”

”どうしてそうなるのっ!? と、というかそれはヤスフミのせいなんだからっ!
私、ヤスフミとこうなる前はその……普通だったんだからっ!”

”僕のせいにしないでもらえるっ!? てゆうか、フェイトは付き合う前から暴走してたしっ!”

”してないよっ!”



歩きながら、互いに顔を赤くして頬を膨らませる。それで……僕達は頷き合った。



”ヤスフミ、これはまた勝負かな。私達二人ともエッチだけど、どっちがエッチかをもう一度ちゃんと決める必要があると思うんだ”

”そうだね。なら……お使い終えてから、ちょっと寄り道しようか。夜までに向こうにつけばいいんだし”

”分かった。じゃああの……あそこ、だよね”



うん、あそこだよ。『ご宿泊・ご休憩』なところに行くの。……あ、でもちょっと待てよ。



”フェイト、体調はいいの?”



何分、まだ出産して1年経ってないし。ようやく離乳は出来てきたけど、それでもそこは心配。

コミュニケーションも再開してはいるけど、基本ゆっくりペースだから……うん、ここはちゃんと気遣っていくの。



”あ、そこは大丈夫だよ? 私の身体、ほとんどと元の状態に戻ってきてるから。ただその”

”何?”

”……ちょっと太ったから、それでもヤスフミが大丈夫なら……なんだけど。
というかあの、本当に大丈夫かな。ちょっとお腹にお肉ついたりしてるし”



あ、またもじもじし出した。……というか、このお姉さんは何を言ってるんだろ。

確かに全体的に丸みは帯びてるけど、それでも充分許容範囲内だって。



”大丈夫だよ。というか、それこそいつも言ってるよ。……今のフェイト、凄く綺麗。
こう、体型的な事じゃなくて……なんだろ、雰囲気かな”

”ヤスフミ……あの、ありがと。それなら、大丈夫だね。うん、遠慮なく勝負出来るよ”

”自分から勝負したがるなんて……やっぱりエッチだ。
フェイト、子作りしてる間にすっかりエッチな事が癖になっちゃったんだね”

”違うよっ! 私はその……バトルマニアなだけなんだからっ!”

”その表現もどうなのっ!?”



そんな風に話している内に、もうすぐ目的地に到着。それで……だね。

フェイトの体調を鑑みつつ、いっぱいラブラブしたいなぁ。



≪……お姉様、主様とフェイトさんの空気が甘いの。また濃縮甘味なの≫

≪いつもの事でしょ。何を今更≫

「そうか、お前達は慣れているのか。私は……ザザザザザザ」

「おいおい、コイツ砂糖吐きやがったぞっ! ヒカリ、しっかりしろっ! 気を確かに持てっ!」

「いいではありませんか。食べ過ぎなクッキーのカロリー分が減ると思えば」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、突然ですけどヴィヴィオには二人程仲のいいお友達が居ます。

一人はコロナ・ティミル。キャンディー型のアクセサリーでロングの髪をツーテールにしてるの。

コロナはヴィヴィオの1年生の頃からのお友達で、恭文やあむさん達とも仲良し。



2年前の夏休みにストライクアーツを一緒にやったりしてからのお付き合いだね。

おとなしい穏やかな子で、ヴィヴィオと同じく文系。よく一緒に無限書庫に行くの。

それで空海さんとの関係は……まぁ魔法絡みでなんとかメル友にはなれました。




お友達のもう一人は、リオ・ウェズリー。明るい元気いっぱいなキャラ。

八重歯と黒髪のショートヘアーからも、そういう風に見られがちだったりするの。

リオとは無限書庫でコロナ共々たまたま会って仲良くなったんだ。



まだ会って3ヶ月経ってないけど、コロナ共々仲良しさん。一気に仲良くなった感じかも。

春休みも一緒に遊んだりしたんだー。あ、あむさんのミッド案内も兼ねてだね。

ちなみに二人とも今年度はヴィヴィオの同級生で、リオはどういうわけか普通にしゅごキャラが見えてた。



だから説明するのがちょっと大変だったりしたんだ。リオ、本当にビックリしてたから。

ヴィヴィオの日常は、そんな仲良しの友達と結構ハイレベルだけど楽しい授業とのお付き合いがメイン。

ちょっとおとぼけなママにツッコミつつ、地球に居るもう一人のママと大事な友達と遊んだり。



それでそれで、たまに時間を超えちゃうようなドキドキワクワクな大冒険をしたり……結構色々あったりする。

でも、今日はとりあえず穏やかな日常。だから何事もなく始業式は終了した。

新しいクラス分けや担任の先生との顔合わせも無事に済んだし、良かった良かった。



……まぁ、あの調子ならあむさんも大丈夫だよね? ほら、教壇に立って自己紹介とかするわけじゃないし。





「あー、終わった終わったー。てゆうか、疲れたー」



コロナが両腕を上げて、気持ちよさそうに背伸び。……確かにちょっと疲れた。

だって先生達のお話長いんだもの。普通に一人頭30分くらい使って喋りまくってたし。



「そうだね。なら……寄り道してく?」

「あ、さんせーいっ! また図書館寄ってこうよー!」



コロナの提案に、リオが即座に乗る。……これがヴィヴィオ達のいつもの日常。

授業が終わって余裕のある時は、図書館に寄って本を読み漁るの。文系ですから。



「あ、でもヴィヴィオ、その前に教室で写真撮りたいな」

「写真?」

「うん。お世話になってるみんなに送るのー」



教室に向かいながら、ヴィヴィオは両手で指折り数えていく。

ヴィヴィオの大切で大好きな人達……あはは、両手じゃ数え切れないや。



「桃子ママ達にママの教え子さん達、ヴィヴィオの友達に元ガーディアンのみんなでしょ? それにそれに、りっかとひかるにもメールして」



コロナ達には言えないけど、良太郎さんとモモタロス達にも送らないと。

みんなも遠い世界で暮らしてるけど、ヴィヴィオの大事なお友達で仲間だもん。



「忙しいなぁ。でも、幸せだなぁ」

「それはそれは、確かに」

「忙しいよね。そして幸せよね」





あ、ちなみにりっかとひかるというのは、恭文とあむさんの聖夜小での後輩。

ヴィヴィオ達と同い年なんだー。それでそれで、2年来の親友なのー。

りっかは聖夜小の4年生で、ひかるはその一つ下のキャラ持ちなんだ。りっかのしゅごキャラがほたる。



ほんわかしてて落ち着いてて、それでとっても温かいの。特にしっぽの辺りが熱量的に。



冬にあの尻尾に手をかざすとぽかぽかして癒されるのー。あ、もちろんひかるにも。





「……ヴィヴィオー、何してんのー?」



リオの声にハッとして周りを見ると……アレ、なんか二人とも居ない。

というか、100メートル近く置いていかれちゃってるよ。



「あー、ごめんー。ほたるの事思い出してたらなんかこう……ほわーっとしちゃってたー」

「……いや、それ意味分からないって。てゆうか、ほたるってなに」

「あ、リオは知らないよね。ほたるってヴィヴィオちゃんと私の友達のしゅごキャラなんだ。
もうほんわかしてて、しっぽの辺りが熱量的に温かいから幸せになれるの」

「うんうん。コロナの言うように、しっぽの辺りが熱量的に幸せゾーンなんだよねー」

「いやいや、それ意味分からないってっ! てゆうか、しゅごキャラにしっぽなんてあるのっ!?」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



リオに熱量的に幸せなほたるのしっぽについて説明しつつも、写真を撮ってメールに転送。

なお、そこであむさんとも合流。学校案内自体はちょっと前に受けてるから、そのまま直で来た。

ただ……非常に疲れた顔だった。そしてラン達も『……やっぱりでした』という顔だった。



ヴィヴィオ達とやってる事はほぼ変わらないはずなのにどうしてそうなるのか、ヴィヴィオはとても疑問だよ。





「あたし、聖夜学園に戻っていいかな。ほら、あそこならまだなんとかなるし」

「あむさん、何弱気な事言ってるんですかっ!?」

「そうですよ。というか、何があったんですか」

「いや、あの……思い出したくないっ! あぁ、どうしてっ!?
あたしまた外キャラ全開で見られるのなんて嫌なのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」



そのままリオとコロナの問いかけに答える事もなく、あむさんは机の上に突っ伏して泣き出した。

とりあえずあむさん、声出すのやめてください。ここ、図書館ですから。



「ねぇみんな、あむさん一体どうしたの?」



コロナの疑問が強くなるのも当然だよ。ヴィヴィオだってどうしてコレなのか疑問だから。



「えっと、それが……そのね?」

「始業式直前のクラスでの顔合わせの時に、男子生徒が軽く騒いでたんだ」

「というか、くだらない理由でケンカが勃発したんですぅ。
そうしたらあむちゃんが立ち上がって、『バカじゃん?』ってそれを一刀両断して」



スゥがモーション付きであむさんの真似をしつつそう言った。それでまぁ、大体の展開は予測出来たよ。



「あむちゃん、ストライクアーツそれなりにやってるでしょ? こっちに来るまで恭文君に鍛えられてもいるし」



うん、鍛えてるって言ってたよね。なんだかんだで恭文、元々教えてた唯世さんも含めて五人くらい弟子持ったしなぁ。

まぁそのうちの一人はヴィヴィオなんだけどね。恭文はヴィヴィオの魔法と剣術の先生なんだー。



「それで逆ギレしてきた男子達を投げて即座に鎮圧。そのままいつも通りに話術サイドで……コレなの」

「最悪な事に、クラス全員だけではなくそこにちょうど先生も入ってきたんですぅ。
先生が止めようとした所にそれでしたからぁ、もうあとはご想像の通りなのですよぉ」

「颯爽と事態を鎮圧し、カッコ良い所を見せた地球出身の留学生という認識が既に広まっちゃってるんだ。
現に中等科の始業式におけるあむちゃんに対する注目度は半端じゃなかったよ。もう周りがざわざわしてたし」



キャンディーズが未だに泣いて落ち込んでいるあむさんを見ながら説明してくれた。

……まぁ、予想通りだよね。というか、あむさんももしかして恭文レベルで運悪かったりするのかな。



「もう、みんなだめじゃん。あむさんのフォローちゃんとしなくちゃ」

「リオ、そう言われてもボク達も困るって。止める間もなかったし、キャラチェンジでどうこうしても問題だし」

「それはまぁ確かに。……ヴィヴィオ、どうする?」

「あ、メール返ってきた」

『なんか無視して別の話に移行しかけてるっ!?』



むー、失礼な事言わないで欲しいなぁ。普通にもうどうしようもないって思ってるだけなのに。

あ、でもそうでもないのかな。最初の印象がアレなだけで、後から変えていく事は可能だろうし。つまり……あむさんがんばー。



「あ、そう言えばヴィヴィオちゃん」

「何、コロナ」

「ヴィヴィオ、自分専用のデバイス持ってないのよね。それ、普通の端末でしょ?」

「……そうなんだよねぇ。ヴィヴィオの師匠達は色々厳しくて」





SEI-Oベルトも未だにママの許可がないと封印状態だしなぁ。



ちなみに、ヴィヴィオのママと師匠はこんな事を言っています。またまた突然だけど再現VTRスタート。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ヴィヴィオ、基礎を勉強し終えるまでは自分専用のデバイスとかはいりません」

≪それまでは私が代役を。SEI-Oベルトも封印継続で問題ないでしょう≫



そんな理不尽な事を言うのはなのはママ。なので、私は軽くこう反論してみる。



「むー、でもママは基礎も何も無しでレイジングハートとパートナーになったって聞いたよ?
ヴィヴィオみたいに魔法学院に通ってないのに、砲撃バーンって」

≪あぁ、そう言えばそうですね。だったらもうSEI-Oベルトの封印は解除で≫

「ちょっと待ってー! レイジングハート、普通に意見を変えるのやめないっ!?
それもすっごい急転換だからっ! ……そ、それはそれ。これはこれだよ」

「なのは、それは大人の最低な言い訳だと思うな」



同席している恭文の鋭いツッコミによって、ママが軽く唸る。……おぉ、さすが恭文。

ヴィヴィオがツッコむ前に言ったよ。うーん、やっぱりツッコミマスターなだけの事はあるよね。



「つまり、なのはは最低なIKIOKUREなんだよ。『なのは、最低なIKIOKUREだよなのは』なんだよ。分かった?」

「分からないよっ! てゆうか、私IKIOKUREじゃないもんっ! ちゃんとボーイフレンド居るんだからっ!」



うん、そこはそうだよね。なぎひこさんと本当に仲良しだし。ちょくちょくデートもしてるしね。

なぎひこさんも悪い風には思ってない感じだし、まぁ問題はないよね。



「……なのは、本気? え、本気でなぎひことそんな関係?」

「……うん。あの、年齢差があるのは分かるけど……友達とはまた違うなって思ってる。
それでなぎひこ君ともそういう話してて、私みたいなダメな大人でもいいかなーとか」

「それで?」

「い、一応OKはもらってるよ。将来的にだし、互いに色々な選択肢を考えた上でだけどね?」

「「えぇっ!?」」



ヴィヴィオ的にも恭文的にも衝撃だった。だ、だってあの難攻不落のママがこんな簡単に落ちるなんて。

どうしてなんだろ、何があったんだろ。もしかして、ヴィヴィオの知らない間にこう……あったのかな?



「そうじゃなかったらボーイフレンドなんて言わないよ。なぎひこ君にも迷惑だし。あの、ヴィヴィオ」

「あ、ヴィヴィオは大丈夫だよ? なぎひこさんの事大好きだし、ママにボーイフレンドが出来て嬉しいもの」



なお、この発言のために後に二人の周囲が色々と大荒れしたのは……気にしないでね?

特にドイツとか海鳴とかが大変だったけど、そこはもういいから。



「ヴィヴィオ……あの、ありがと。じゃあママ、受験勉強頑張るよ」

「「は?」」

「ママ、聖夜学園の高等部に入学する事にしたんだ。あ、その間仕事は休業だね。
もちろん学校は次元転送を覚えてここから通うよ。それでなぎひこ君と一緒に……えへへ」

「「なんかバカな野望考え始めてるっ!?」」



ママ、さすがにそれ無理じゃないかなっ! というかその幸せそうな顔やめてー!

なによりなぎひこさん留学中なのに、それ可能なのっ!? あ、そこも聞いてるとかなのかなっ!



「まぁ話は分かったよ。それならSEI-Oベルトの封印は解除でいいよね。ママ、ヴィヴィオは応援してるよ」

「うん、ありが……ちょっと待ってっ! ヴィヴィオ、それとこれとは関係ないよっ!」



……ち、言質は取れなかったか。ここで何とか出来ると思ったのに。ママ、意外とちょろくないね。



「でもなのはは最もな理由を何一つ提示出来ないんだし、しょうがないんじゃないかな」

「でもそれはダメェェェェェェェェェェェェェッ!」



ママが叫ぶのを見て、ヴィヴィオはちょっと安心した。だって、ママはママだったから。

ママは弄られたりツッコんだりしてる時、とても輝いてると思うの。だから……うん、素敵。



「なのは、大丈夫。その代わりに僕が反対するから」

「そうだよ、なのはママ。ママの代わりに恭文が……え?」



ちょ、ちょっと待ってっ! どうして恭文がっ!? というか、なんでそうなるのかなっ!



「ヴィヴィオ、どうしたの? ……あ、そっか」



……そのサムズアップはいらないよっ! ヴィヴィオ、そんなサインは求めてないからっ!



「恭文、どうしてっ!? 今の話の流れだと恭文は賛成の立ち位置だよねっ! ちゃんと空気読んでいこうよっ!
ううん、むしろ台本をちゃんと読まなきゃダメっ! ほら、このページに『僕はヴィヴィオの意志を尊重した』ってっ!」

「やかましいわっ! てーか僕が空気読めてないみたいな言い方するなっ!
それにその台本どっから出したっ!? さっきまで持ってなかったでしょうがっ!」

「そこは気にしなくていいよっ! 今はヴィヴィオが捏造した台本通りに」

「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ……とにかく、反対するのには理由がある」



恭文が咳払いしつつ、ヴィヴィオを少し厳しい視線で見る。というか、真剣な視線し出した。

その視線を受け止めつつ、恭文がこうなる理由を考える。考えて……あ、やっぱり分からないや。



「ヴィヴィオ、アレを今装備したらチートって言われるよ? 最強物って言われるよ?」

「「……え?」」



そんな事をいきなり言い出すので、普通にママと二人呆けてしまった。……いや、どういう事?



「あのねヴィヴィオ、チートって言われるのは非常に辛いの。最強物って言われるのも辛いの。
そういう要素があるってだけの理由で『ダメなSSだ』とか言われると、普通に殺意が湧いてくるの」

「い、いや……恭文君? 話が少しおかしいような」

「ヴィヴィオ、ネットは怖いの。まだヴィヴィオをあの理不尽な世界に飛び込ませたくはない」



言いながら恭文がヴィヴィオの頭を右手で撫でてくれる。でも、なんでだろ。あんまり嬉しくない。



「だから、もうちょっと成長して耐性をつけてからSEI-Oベルトは装備しようか。あのね、マジメに辛いの」

「恭文、ちょっと待とうよっ! 話おかしいからっ! ヴィヴィオもママも、一言としてネットの話してないんだけどっ!」

「おかしくないでしょうがっ! ネットの中には鬼(子どものこーろの夢ーはー♪)なのが居るって話をしてるだけでっ!
そういう鬼(色褪せないー落書きでー♪)はしつこいという事なんだよっ! 分かったっ!? だからSEI-Oベルトはしばらく封印っ!」

「「そんなの分からないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――それで結局、『恭文レベルで運が悪いとかならともかくそうじゃないから大丈夫』というワケの分からない結論に」

「そ、それはまた……恭文さんって凄いよね」

「コロナ、そこには触れないであげて? ボクも常々恭文はバカだバカだと罵り続けているんだ」

「「罵ってるのっ!?」」



なので、ヴィヴィオは普通に羨ましいの。例えば机の上にある八角形で手鏡サイズのデバイスとか?

なお、この子はリオのデバイス。リオはヴィヴィオやコロナと違って、デバイス持ち……あ、メールだ。



「ママから?」



端末をちょちょいと操作してメールを展開。えっと、なになに?



「帰って来たら良い事があるかも知れない? なんだろ。あー、それとあむさん」

「な、何かな」

「まぁその、ヴィヴィオは黙ってますね? ママが心配してるけどそこはごまかしておくので」

「やめてー! その慰めるような声と顔はマジやめてー!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



マリエルさんから荷物を引き取った僕達は、まぁその……なのは達のところに向かう前に休憩しました。

でもフェイト、太ったって思ってるけどそんな事ないよね? むしろ前がスタイル良過ぎなだけで。

それにそのスタイルもしっかり戻ってきてるわけだし。まぁ子育てって重労働だし、それもあるんだと思う。



あとはあのリストバンドだね。何気にあれによるカロリー消費と鍛えが入ってるんだと思う。



とにかく今は添い寝中。とりあえず最初の勝負は、僕の負けを認めようじゃないのさ。





「でもあの、どうしよう」

「どうしたの?」

「僕、フェイトの事どんどん好きになってるのかも。なんかね、全然飽きないしくっついてるの嬉しい」

「そう言ってもらえると嬉しいな」



フェイトは少し身体を起こして、そっと僕の唇に自分の唇を重ねる。……うぅ、やっぱり幸せ。



「私も同じなんだ。お母さんになってもヤスフミの事どんどん大好きになってる。
特に子育てしてる時はそうかな。いっぱい手伝って、気遣ってくれるの分かるから」



フェイトが右手を伸ばして、そっと頭を撫でてくれる。その感触がまた幸せで嬉しい。



「私が授乳で2時間置きに起きるの見て、本気で『替われればいいのに』って言ってくれたりするしね」

「うー、笑わないでよ。ほら、双子で起きるタイミングがバラバラの時もあるから大変だし」

「いいの。私本当に嬉しかったんだから。……ヤスフミ、愛してる。すっごく……愛してる」

「うん、僕もフェイトの事……愛してるよ」




二人でそう言うのはやっぱり気恥ずかしくて、僕は顔を見合わせてクスリと笑う。



それから僕達はまた唇を重ねて、もう一回勝負する事にした。うん、今度は負けないんだから。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



コロナとリオと学校で別れて、落ち込むあむさんを引っ張って家に帰ってきた。もうね、時間かかっちゃったよー。

だってあむさん、本当に明日からどうしようって考えてこの世の終わりみたいな顔しちゃってるもの。

でもでも、家に帰って来たら恭文とフェイトママがおやつ作りながらキスしてたからもうビックリ。特にあむさんがビックリ。



それもかなりディープな感じで……この二人は子どもが生まれたのに糖分出し過ぎてる気がする。

なおキスしてた原因は、『ヤスフミの口元にクリームがついてたから』らしい。味見した時についたっぽい。

というか、二人が奇数日の朝と同じ空気出してるんだ。それでヴィヴィオは色々と察した。



あむさんもそういうのは2年前の夏休みや一時期家出してた時なんかで知っていたのか、顔を赤くしていた。

とにかくおやつ(レアチーズケーキ)を頂いて、その後帰って来たなのはママと一緒に夕飯。

でもヤスフミとフェイトママ、恭介とアイリ放置した上でどうしたんだろう。なんか三日くらいこっち泊まるらしいし。



夕飯を食べながらヘコむあむさんをフォローしているエロ甘夫婦を見ながらヴィヴィオは軽く首を傾げていた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でも二人とも、本当にどうしたの? それも恭介達放置で」



夕飯が終わってから、あむさんと魔法の訓練でもしようと思った。でもその前に気になったので確認。



「あ、それあたしも気になってた。ほら、アンタだって新学期で学校もあるし」

「まぁその」



二人は顔を見合わせて、苦笑する。それになのはママも乗っかっていたのが更に気になる。



「ディード達が気遣ってくれたんだ。たまには二人でデートして来いって。
二人は奏子さんもうちに来て見てくれる事になったから」

「そうなの。だからあの、たまにはヤスフミとラブラブしたいなーって」





あ、奏子さんっていうのは恭文の三人目のお嫁さんの歌唄さんのお母さん。

ヴィヴィオもお話した事あるけど、メガーヌさんレベルではっちゃけてる人だったなぁ。

でもフェイトママ、そういう普段ラブラブしてないみたいな言い方は本当にやめようよ。



私ティアナさんやシャーリーさんにりっかから聞いてるけど、子育てしながらもイチャついてるよね?





「あとほら、明後日聖王教会行くんでしょ?」

「うん、その予定……あ、それでって事かな」

「そういう事。というか、ややも来る予定なんだ。ここの辺りはシャーリーとリインに任せてるんだけど」



あー、それなら一応納得かも。ややさん、あの子とも仲良しだしなぁ。月一だけどよくこっちにも来てるし。



「でも……なのは、もうヴィヴィオに話していいかな」

「うん、大丈夫だよ」



フェイトママはニコニコしながらなのはママの方を見た。それでママは、笑顔で頷きつつテーブルから立ち上がる。



「ヴィヴィオ」

「うん?」

「まぁまぁ不安なところもあるけど、ヴィヴィオも基礎的なところはちゃんと出来てきてはいる。
4年生に進級したら勉強のレベルも少し上がるし、そろそろ自分用のデバイスを持ってもいいかなって」

「ホントっ!?」



じゃあじゃあ……私は自然と隣のあむさんと笑いながら顔を見合わせた。



「ヴィヴィオちゃん、よかったじゃんっ! これでSEI-Oベルト使用解禁だしっ!」

「うんっ!」

「あむ、何他人事みたいに言ってるのよ」



恭文がそう言いながらフェイトママ共々立ち上がった。



「あむ用のデバイスも、僕の方で作ってる」

「マジっ!? ……あ、でもお金」

「いいよ。空海の時と同じで余ってるジャンク品で組んだものだし、転入祝いって事でさ」

「いやいや、そう言いながらアンタ無茶苦茶手加えるじゃん。アレだってジャンク品レベルじゃないし」





確かになぁ。空海さんのデバイスもかなりぶっ飛んだ性能してるし。

何気に恭文のデバイスマイスターとしての実力は高い。ほら、恭文はブレイクハウト使えるから。

例え元がジャンク品でも、物質変換で部品関係も新規作成出来るのがかなりの強み。



恭文が元々持ってる能力自体はそういう後方支援向きなものの方が多いと思うんだ。

ただ恭文の戦闘センスが半端ないから、それを戦闘に非常に恐ろしい形で転用出来るってだけで。

だけど恭文の作るデバイス、癖が強いんだよねぇ。空海さんのもだけど、りまさんのもだよ。



自分がアルトアイゼンやジガン使ってるせいか、単一機能に特化したタイプのものばかり作るんだ。

その分デバイス単体としては応用力に欠けるところがあって、そこを術者のスキルでカバーする必要がある。

正直アレらを使いこなせている空海さん達はかなり凄いと思う。特に空海さんのはイチバチレベルだし。





「でもごめん。ヴィヴィオの方はともかく、こっちはまだ作成中でさぁ。出来るのもうひと月くらいかかるかも」

「あー、いいっていいって。そうやって力貸してくれるだけで充分だし。恭文、マジありがと」

「ううん」



あむさん、嬉しそうだなぁ。なんだかんだでデバイス憧れてたっぽいし、そういうのもあるのかな。



「それで実は、今日私とヤスフミがこっちに来るついでに」



フェイトママはどこからともなく赤いリボンがかかった白い四角の箱を両手で取り出した。

サイズ的には人の頭くらい? でも深さがかなり浅い。10センチもないかもしれない。



「マリーさんから預かって来たんだ」



フェイトママはその箱を持ったまま両手を伸ばす。ヴィヴィオはそれをしっかりと受け取った。

でもそこでまた疑問が強くなる。というかあの、軽いの。ヴィヴィオの知ってる重さじゃない。



「ねぇ三人とも、コレおかしくないかな。SEI-Oベルトならサイズが」

「ヴィヴィオ、いいから開けてみて? きっと驚いちゃうから」





首を傾げながらもママに促されるままに、ヴィヴィオは箱を開いた。

するとそこには……白くて赤目で青いリボン付きのふさふさなうさぎのぬいぐるみがあった。

口は×印で、頬がピンク色に染まっていてとってもファンシー。



ノロウサみたいにふてぶてしい顔つきじゃなくて、可愛い感じだ。





「……恭文、スゥとキャラなりしたの?」

「違う違う。レンゲルシロップで実体化させたわけじゃないって」



そっかぁ。ならこの中の子が箱の中で起き上がってふわふわと浮き上がってるのはどうしてかなぁ。

それで右手ビッと上げてきたし。とりあえず挨拶がてらにヴィヴィオも左手を軽くあげる。



「そのうさぎはヤスフミが作ったアルトアイゼンのストフリノロウサボディや」

≪ジガンのガンドロボディを参考にしたおまけ機能なの。中身は普通のクリスタルタイプなの≫

≪SEI-Oベルトもその下僕2号の中に搭載しているそうです≫



アルトアイゼンの言葉に、この子が驚きながらアルトアイゼンの方を見る。

というか、アルトアイゼンとジガンがいつの間にかストフリノロウサとガンドロになってた。



≪まぁ下僕2号はサポート専門という事ですね≫

≪そうなの。だから下僕2号、まずは初仕事としてジガン達の肩を揉むの≫

「はいはいおのれら黙れっ! てーかいきなり下僕扱いして新人イビリするのはやめんかいっ!
……とにかく、その子は今のヴィヴィオのデータに合わせた最新型」

「名前もまだないから、ヴィヴィオがつけてあげてってマリーさんが言ってたんだ」

「……そっかぁ」



ヴィヴィオはヴィヴィオの肩に隠れて怯えたように先輩二人を見ていたうさぎを撫でる。

するとうさぎはマジマジとヴィヴィオの方を見るので、安心させるように笑いかけた。



「ならママ、アレって出来たりする? というか初起動とか名称決めとか」

「うん、大丈夫だよ。それじゃあえっと……まずは初期設定だけだね」

「はーい」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、ヴィヴィオは庭先に降りて早速この子の初期設定を開始。

まずは足元に魔法陣展開。ヴィヴィオの使用術式はベルカ式主体のミッドとのハイブリッド。

ここはヴィヴィオが聖王だった時の影響なんだよね。ママ達の術式を吸収しちゃってたから。



聖王としての力の証明でもあるベルカ式と、ママ達から勝手に盗んじゃったミッド式の両方の力がヴィヴィオにはある。



とは言え基本そういうのは興味がないので、とにかく足元に大きく展開した虹色の魔法陣を見て気持ちを固める。





「――マスター認証、高町ヴィヴィオ」



あの子もヴィヴィオの隣に来て、意識を瞳を閉じてる。その仕草が可愛くてついニコニコしちゃった。



「術式はベルカ主体のミッド混合ハイブリッド。使用デバイスに個体名称を登録」



ここも前々から考えてたから、迷いなくサクサク進めていく。



「まずマスコットネーム愛称はクリス。正式名称は『セイクリッド・ハート』」



縁側の上でこっちを見てるなのはママが驚きつつも顔を赤くする。それを見てヴィヴィオはクスリと笑いつつ、左手を前にかざす。



「いくよ、クリス」





クリスがまた右手をビッと立てると、ヴィヴィオの手の中に光に包まれながらベルトが出てきた。

そのベルトは色はデンオウベルトを模していて、New電王と同じシャンパンゴールド。

だけどバックルのクリスタル部分は丸じゃなくて星型になってる。その星型の中に、時計をモチーフとしたデンオウベルトと同じ装飾がある。



バックルの左横には、青・金・紫・オレンジのボタン。これがヴィヴィオのSEI-Oベルト。

うー、SEI-Oベルト握るのも久しぶりだなぁ。でもでも、楽しくなってくるよー。

ヴィヴィオは笑いながらもベルトを一気に腰に巻きつけ、右手で蒼いボタンを押す。



だけど……アレ、おかしい。いつも練習する時みたいに音楽が鳴らない。試しにもう一回押す。



てゆうか、他のボタンも押してみる。何回も押してみる。でもあの、なんかさっぱりなんですけど。





「あー、ヴィヴィオごめんっ! 各フォームはまだ使えないからっ!」



慌てたようにそう言ってきたなのはママの言葉に驚きつつ、ヴィヴィオは一気に後ろに振り向く。



「はぁっ!? それどういう事かなっ! あ、まさか制限」

「違うの。装備関係もヴィヴィオの今の状態に合わせてバージョンアップ中なんだ」



申し訳なさそうにママが両手を合わせてごめんのポーズをしてくる。



「だからしばらくはプラットフォームでお願い。ホントごめんー。予想以上に時間かかるっぽくて」

「あー、謝らなくていいよー。というか、それでいっか。クリスの慣らしや学習もあるし」



というわけで、出鼻をくじかれたけどそれでも初セットアップを続行。

ヴィヴィオはいつの間にか右手の中に現れている黒いパスケースを握って、やっぱり楽しくて笑った。



「……変身っ!」



そのままパスをバックルに向かってセタッチ。



≪Plat Form≫





ヴィヴィオの身体はその瞬間虹色の光に包まれ、ノースリーブな上着とオレンジのチェックのスカートは消える。

というか、光に包まれながら裸になる。そんなヴィヴィオの身体はどんどん大きくなっていく。

身長はフェイトママより上で、胸はフェイトママより上。そんな素敵ボディのまま両手を広げて身体を一回転。



するとヴィヴィオの身体に紺色のタイツスーツが装着される。それから各所にそれより明るい色の青のラインが入る。

両足は金属製のブーツになって、前面に空色の宝石を装着。それから腰の後ろに長いタイツと同じ色のフードが生まれる。

フードは何箇所か大きな切れ目が入っていて、下の方にはブーツに装着されているのと同じ宝石がついている。



それから胸の下に肋を守るような金属製の青色のアーマーを装着。そしてその上から白のジャケットを羽織る。

形状的にはスバルさんのバリアジャケットのものと同一。ただし入っているラインがスバルさんのものと比べて深めの青色。

両手は指先までを包むフルグローブで、手の甲には宝石付きな装甲が装着されている。



そしてヴィヴィオの長い髪は紺色のリボンでひとまとめにされて、なのはママと同じサイドポニーになる。

まぁまぁ予想より違う形だけど、変身を完了した私を包んでいた虹色の光が弾けた。

そんなヴィヴィオの隣でファイティングポーズを取ってるクリスが可愛くて、ヴィヴィオはついニコニコしちゃう。





「……初期設定と初起動完了。クリス、調子はどう?」





クリスはまた右手をビッと上げた。というか、喋れないの? また小説向きじゃない子だなぁ。でも生まれたばかりだもんね。

……あ、説明遅れたかも。これはプラットフォームと言って、SEI-Oベルトの本当に基本的なフォームになるんだ。

まぁ武装関係は一切使用しない純粋な格闘仕様という感じ? というか、聖王なヴィヴィオのジャケットの色違いだね。



でも単純な劣化フォームではなくて、同じスタイルのナックルフォームとはまた違う立ち回り方も出来る。

まぁ他のフォームも出したかったけど……しょうがないかぁ。多分クリスとの兼ね合いもあるから大変なんだよ。

あ、それなら後でマリエルさんにお礼メール送ろうっと。お仕事あるのにやってくれてるんだから、それくらいは。





何これぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!



いきなり後ろから周囲に響き渡るようなとんでもない声がして、ヴィヴィオは驚いて後ろに振り向く。

すると後ろであむさんが震えながらヴィヴィオを指差してた。てゆうか、しゅごキャラーズも同じ。



「ヴィ、ヴィヴィオちゃん……それ何っ! てゆうかなんかもう、でっかくなってるんですけどっ!」



あむさんがヴィヴィオの以前恭文を虜にしてしまった胸を見て、顔を赤くして……きゃー、恥ずかしいよー。



「てゆうかてゆうか、胸だけじゃなくてっ!」

「全体的におっきくなってるよねっ!」

「いきなり大人になっちゃいましたぁっ!」

「ヴィヴィオちゃん……その胸をあむちゃんに分けてあげて?
それできっとあむちゃんは幸せになれるから」



五人はそれぞれ好き勝手に驚いて唖然としながらヴィヴィオを見ていた。てゆうか、これどういう事?

だってママ達と恭文は普通で……あ、そっか。ヴィヴィオは右手を拳にして左手の平手をぽんと叩いた。



「そっか。あむさんに大人モード見せるの初めてでしたよね」



それなら驚いてもしょうがないかー。恭文とフェイトママはデスティニーヴィヴィオ作った時にこの姿になったの見てるしさ。

ううん、それ以前にヴィヴィオがママやノーヴェさんとの訓練でこの姿になってたの知ってるもん。そりゃあ驚かないよー。



「……大人、モード?」

「はい」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかくめちゃくちゃ動揺していたあむさんを落ち着かせつつ、ヴィヴィオ達は家のリビングに戻る。

それでソファーに座って、ヴィヴィオはバリアジャケット解除で大人モードのままクリーム色のセーターに身を包む。

あ、下はジーンズだね。今日はこのまま夜の訓練出るから、それが終わるまではずーっとこの状態。



それで一応でも説明していくと、段々とあむさんの瞳が輝いてくるのが分かった。





「えっと、じゃあヴィヴィオちゃんの大人モードはー」

「変身魔法と強化魔法を組み合わせた状態って事なのかな」

「だから大人になっちゃったですかぁ」

「そうだよー。魔力資質とかは変わってないんだけど、魔法戦や格闘戦の練習するならこっちの方がやりやすいから」



そのためになのはママやノーヴェと訓練する時はいつもコレなんだ。

一応強化魔法や変身魔法のコントロールの練習っていう目的もあるんだけどね。



「じゃあ恭文君達が驚かなかったのは……って、当然よね」

「ヴィヴィオちゃんとの付き合い、あたしより長いしね。うん、納得した」

「なら良かったです」

「それで……ヴィヴィオちゃん、それあたしにも使える?」

『はい?』



あぁ、あむさんの瞳の輝きが強まった。てゆうか、なんかあたしを憧れの目で見てくる。



「えっと……あむさん、もしかしてヴィヴィオみたいに大人モード使いたいのかな?」

「もちろんじゃないですかっ! だってこんな……もう夢みたいだしー!」



そう言ってあむさんがヴィヴィオの胸をまた見る。さ、さすがにちょっと恥ずかしいかもー。



「……あむ、はしゃいでるとこ悪いけど、それは究極の偽乳だから」



恭文が呆れ気味に言うと、あむさんの身体が小さなうめき声と共に石になった。



「実際のヴィヴィオがほんとにこれだけ成長してるわけじゃないんだよ?
ヴィヴィオはまだまだお子ちゃまなんだし、あむが使っても結局は今のままだし」

「そ、それを言われると弱いかも」



ヴィヴィオはつい頬を膨らませる。てゆうかお子ちゃまってひどいよー。ヴィヴィオだってそれなりに成長してるのにー。

うーん、やっぱり恭文は胸の大きな人が好きなのかなぁ。でも歌唄さんやリインさんも居るし……謎かも。



「あむちゃん、ボクが思うに戦闘力強化とか抜きでこれ使っちゃったら負けなんじゃないかな」

「偽乳で男の人を騙せても、変身解除しちゃったらガッカリ度が5割増しですぅ」

「大丈夫よ。私が勉強したところによると貧乳はステータスだそうだから」

「あむちゃんファイトー!」

「うっさいっ! 素のあたしが残念仕様みたいに言わないでくれるっ!?
あと恭文、ダイヤに変な事教えたのアンタ……目を逸らすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



何気に容赦のないしゅごキャラーズだけど、これはデフォなので気にしない。

とにかく恭文を見ながら両手をわなわなさせるあむさんの両肩を、ママ達が優しく叩いた。



「でもあむさんはまだまだ大きくなると思うけどなぁ。あのね、私もあむさんくらいの年だと同じくらいだったし」

「あ、私もだね。第二次性徴は個人差はあるけど、基本的に成長し出したら早いし……それほど気にしなくていいよ」

「いや、なんでなんか慰めてるんですかっ!? てゆうか辛いからマジやめてー! 余計に突き刺さるからー!」



ママ達が落ち込み始めたあむさんの肩を撫でて慰める。というか、ヴィヴィオは何気に居心地悪いかも。

それでつい恭文の方を見る。恭文がヴィヴィオの視線に気づいてこちらを向くので、笑顔でだっちゅーのなんてしてみた。



「……なのはママー、ヴィヴィオが偽乳で男誘惑するようなポーズ取ってるよー? 具体的にはだっちゅーのー」

「あー、バラすの禁止ー!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? ヴィヴィオ、一体何してるのかなっ!
というか、前々から思ってたけど恭文君相手にスキンシップが過剰過ぎるよっ!」

「大丈夫だよ、なのはママ。ヴィヴィオは恭文にヴィヴィオの裸を見た責任を取ってもらうだけだし」



思い出すのは3年前の夏休み。デスティニーヴィヴィオになるための苦難の途中で……うぅ、恥ずかしかったなぁ。

ヴィヴィオの揺れるおっぱいもお腹もお尻も腰も女の子の大事なところや太ももとかも全部見られちゃったもん。だからついもじもじ。



「恭文、アンタフェイトさんが居ながら……さすがにそれあたしマジ引くんですけどっ!」

「黙れバカっ! てーかお風呂一緒に入るとかはもうしょうがなくないっ!?
なにより僕は合法ロリはOKだとしてもマジなロリはダメなのっ! 理性が働くのっ!」

「……あ、そっか。まぁヴィヴィオちゃんの年頃なら恭文と一緒にお風呂くらい入るか。
てゆうかそうだよね、仮に大人モードでも幼女に発情するわけないか。リインちゃんのアレも断ってたし」

「納得してくれて嬉しいよ。やっぱこう……ね? 無理なのよ」



むー、なんか面白くないー。ヴィヴィオはまた頬を膨らませちゃう。というか、それなら早く大人になりたいなぁ。



「……あ、それとヴィヴィオ」



でもそこは一旦置いておくとして、なのはママが声をかけてきたのでそちらを見る。なのはママは真剣な顔でヴィヴィオを見てた。



「まぁ分かってるとは思うけど、大人モードでいたずらとかするのは禁止だよ? さっきみたいなのも恭文君相手だから良いのであって」

「こらこら、僕的には全然よくないんですけどっ!?」

「普通の男の人に今のヴィヴィオがあんな事したら、ちょっと勘違いしちゃうよ。なのでそういうのも基本禁止。
あくまでも大人モードは魔導と武術の訓練や実戦のために使う事。ママとお約束だから」

「……分かってるよ」



とりあえずヴィヴィオは真剣な顔のママを安心させるために、表情を崩す。



「てゆうか、恭文が今あむさんに言った通りだもん」

「え、あたし?」

「ヴィヴィオがフェイトママより身長が高くなってフェイトママより胸が大きくなっても」

「それで私が基準っ!?」

「ヴィヴィオはまだ子どものまま。いきなり大人になんてなれない」



ソファーの上に両手をついて、ママの方を見下ろしながら思いっきり笑っちゃう。



「だからちょっとずつ大人になるよ。大人モードは、子どもなヴィヴィオじゃ手が届かないものを掴みたい時だけ使う。
そういうものを掴んで守りたかったり貫きたかったり……今を変えたい時だけ使うよ。ちょっとズルだけどね」

「……天と星に誓って?」

「ううん、自分自身に誓って」

「そっか。なら安心かな」





まだまだ子どもなヴィヴィオの時間は長く険しい。だからのんびりじっくりいく事にする。

それでヴィヴィオの中のたまごと――『なりたい自分』や可能性と一緒に進んでいけたらいいなぁと思う。

でもでも、早く大人になりたいなーとは思うんだ。特に恭文とか見てるとそうなんだよね。



どうも恭文はヴィヴィオを子どもと侮っているんだよね。思いっきりドキドキさせたりしてやりたいのに。

まぁそれは将来の楽しみにしておく事にして、ヴィヴィオはなのはママと一緒にクリスの慣らしに出る事にした。

何気にクリスは生まれたばっかりだし、ヴィヴィオがどういう戦い方するとかもさっぱりだもん。



だから魔法訓練しつつそういうお互いの事を知っていく勉強をしていくんだ。これはママ達や恭文もやってる事。

ヴィヴィオ達は落ち着きを取り戻したあむさんと恭文とフェイトママに見送られつつ、家を出た。

軽く伸びをしながらも身体の感触やリーチを確かめ、やっぱり気になる胸をふにふにしてみたり……やっぱり大きい。



それをママに涙目で止められたりしながらも、ヴィヴィオ達は二つの白い月と満天の星空の下を歩く。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、姉達元ナンバーズ六人は、隔離施設を出てからナカジマ家で世話になりつつそれぞれに好きに生きていた。

……まぁこれだと言い方は悪いが、罪滅ぼしも兼ねた救助隊の仕事もしながら将来を模索しているんだ。

特にあの一件で姉も知ったしゅごキャラの話は衝撃的でな。何気に姉も『なりたい自分』とやらについて考えている最中だ。



姉は姉上――ギンガの居る108で局員待遇で働くようになった。まぁ准陸尉に昇進したギンガの補佐という感じだな。

ノーヴェとウェンディとディエチはバイト生活だ。ただ、そんな中でも救助隊で研修を受けつつ己を鍛えている。

トーレとセッテは……まぁあの二人はバイトどうこうは中々難しくてな。というより、その前にやるべき事があった。



なので実は二人も108で姉と同じように局員待遇で働いている。まぁセッテはよく聖夜市に向かっているが。

この辺りがどうしてかは、察して欲しい。ただ紙一重の答えを掴んでも、中々にそこを超えるのが難しいと言ったところだ。

それでドクターとウーノは……さすがにまだ局の施設内で監視下に居る状態だが、それでも更生への道を進んでいる。



というか、ドクターはあの一件以来何か針が振り切れたらしくてな。恭文曰く『おもしろ発明家』になっている。

まぁだからと言って納豆巻きしか握れない自動寿司製造マシーンだけで商売やろうとしたのには呆れたが。

とにかく未だに牢屋の中なクアットロ以外のメンバーは全員、それぞれに未来を――自分の可能性を捜している最中。



犯した罪から逃げず、過去から目を背けずに未来を夢見る勇気を持てたのは、やはり彼らのおかげだろう。

ただそんな時間の中でも、人々のこころが原因はどうあれ一つになった中でも、事件は起きるもの。

人のこころは本当に簡単な事で閉じてしまって、他人どころか自分の未来までも歪めてしまうらしい。過去の姉達と同じようにだ。



本日午後8時半頃、ナカジマ家のリビングで今日はトーレ達共々当直なギンガから通信を受けた。



その内容は……一応でも局関係者な姉達に覚えておいて欲しい事。つまり、さっきも言ったように事件関係だ。





「――連続傷害事件?」

『そうなの。あ、でもまだ事件ではないんだけど』

「はぁ? それってどういう事っスか」

『まず被害者は主に格闘系の実力者。もちろん死人は出てない。
そういう人にいきなり街頭試合を申し込んで』

「叩きのめすというわけか」



腕を組みつつそう言うと、ギンガが画面の中から姉の顔を見て頷いた。



『そういう事だね。ようするにストリートファイターや喧嘩師の類。そういう人達の間で話題になってるそうなの』

「でもギンガ、それならどうして事件じゃないんだよ。察するにソイツ、ケンカ吹っかけて勝ってんだろ?」

「あ、それは私も気になる。そこはどうしてかな」

『被害届が出されてないからだよ。あくまでも合意且つ正当の試合で、特にエグい事をされたわけでもない』





だから局に被害届を出す必要もないか。……もちろんストリートファイトなど原則的には良くはない。

まぁ元テロリストの姉が言うのも説得力に欠けるが、試合を行う事で周囲に被害を撒き散らす可能性もあるしな。

特に次元世界だとその手のファイターも魔法能力者である事が多い。だから余計にだ。



あとは……この手の事で賭けなどをやり出すと根が深いトラブルに発展する可能性もある。

この件では見られないが、勝ち負けによって怨恨が生まれて凄惨な事件に発展する場合もある。

だからこそ局もこの手のファイター達の動きには一定の注意を払っているんだ。





『とにかくみんなも……特にノーヴェだね。襲われたりしないように気をつけて?』

「まぁうちの中だとギンガとスバル除いたら格闘系はノーヴェっスからね」

「てーかアタシ気をつけるならギンガとスバルもだろうが」

『もちろんスバルにも伝えてる。あと、もし見つけたら……まぁ確保は出来たらだね。
近くの詰所なり私達に連絡を。うちの管轄でも起きてる事だし、なんとかしたいの』



姉達は画面の中のギンガを見ながら、即で頷く。……こういう時、恭文がミッドに居なくて良かったと思う。

マリアージュ事件やその他もろもろの事を考えると、奴は確実に巻き込まれる。さすがにそれは忍びないからな。



「それで姉上、その容疑者候補の顔や素性などは」

『……そこが問題なの。チンク、悪いんだけど聖王教会の騎士カリム達にもこの件を相談してもらえないかな。
私や父さんが行ければいいんだけど、近日中にはちょっと難しくて。通信だと少し難しい話になっちゃうから』



いきなり騎士カリムの話が出てきて、姉は軽く眉を潜める。いや、それはノーヴェ達もだ。



『あとノーヴェ。ヴィヴィオに会うようなら少し気をつけてあげて? ここは私達からなのはさん達に連絡するけど』

「待ってくれ姉上。それはどういう事だ」

「そうだぞ。なんでヴィヴィオや聖王教会の話がそこで出てくるんだよ」





画面の中のギンガの顔が消えて、代わりに別の映像が生まれる。……これは市街のサーチャーの映像か?

白く武闘着に近いデザインの服を纏った、メロン色の髪の女がその真ん中に立っている。

それでその足元には倒れているスキンヘッドの男。どうやらこれが事件の映像らしい。



ならこの10代後半に見えるツインテールでバイザー姿の女が、容疑者候補というわけか。





『まずこの女性は覇王イングヴァルトを名乗っているの』

「……それって、えっと……アレっスよね? 古代ベルカ――聖王戦争時代の」

『うん。その中に出てくる王様の名前。しかも彼女』



画面が切り替わり、ギンガの顔がまた戻ってきた。だがギンガの顔は非常に困ったものになっている。



『ストリートファイター達に片っ端から『聖王と冥王の居場所を知らないか』って聞き回ってるらしいの』

『はぁっ!?』





(Memory02へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、いよいよ始まったVivid編。ただまだ方向性が定まってないので、とりあえず4話だけやります」

フェイト「え、4話だけってどうして?」

恭文「それはね、ヴィヴィオがIMCS編でGODの話を絡ませてやりたいって言ってるから」

フェイト「はぁっ!?」



(『えっとね、IMCSでマテリアルとピンク髪の子がチーム・イリアステルを組んで出場して悪巧みするのー。
それをヴィヴィオ達が止めるために出場してー、今回のIMCSは全部チーム戦にするんだー。
ヴィヴィオはその戦いの中でクリアマインドを習得して、シューティングスター・フォームに変身出来るようになるのー。
それでそれで、最終決戦はオーバートップ・クリアマインドを発動してシューティングクェーサー・フォームに』)



恭文「もうえぇわっ! てーかそれ遊戯王5D'sじゃないのさっ! しかもGODの話どうなるかも分からないのに組み込むつもりかいっ!」



(『だってー、原作だとIMCSどうなるか分からないでしょ? なんかこう、ぐだーって感じで終わりそうだしー』)



恭文「と、とにかくそこのバカにはあとで説教が必要だ。……というわけで、お相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……えっと、デジモンクロスの方も最新話書きはじめたんだっけ」

恭文「うん。でもキャンプってなにすればいいのかさっぱりで困ってるけど。とりあえずあれだ、肝試しでもやろうか」

フェイト「一体なにするつもりっ!?」



(当然、夏休みを満喫)



恭文「それで今回は……てーか序盤の四話は、僕がなんだかんだで出しゃばってしまう」

フェイト「話の都合上どうしてもって感じなんだよね。まぁそこは適度な感じで」

恭文「ヴィヴィオがシューティングスター・フォームに変身出来るように頑張りたいしね。軸はやっぱりヴィヴィオともう一人だよ」



(『それでClear Mindかけるんだー』)



恭文「というわけで、連続掲載なのでここから更に続きます。次回はいよいよ……あれが登場だよ」

フェイト「ヤスフミ、そんな顔しないの。ようやく本登場なのに」

恭文「だってあれ、テンションおかしいしー。もうちょいしっかりして欲しいのに」





(そして蒼い古き鉄は主役交代したはずなのに……もうそこはお察しください。
本日のED:abingdon boys school『潮騒』)











フェイト「というわけで、テーマソングはabingdon boys schoolさんの潮騒……あの子イメージだね」

恭文「そうだね。というわけで次回登場のそこのバカ。マジで拍手のような事をしたら怒るから」

???「私は……諦めません。あなたの寵愛を受けるだけでも幸せで」

恭文「だから黙れつってるでしょうがっ! てーかどうしてっ!? なんでこんな愛人キャラになっちゃったのよっ!」





(おしまい)





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あきゅろす。
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