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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
450万Hit記念小説 『あの子はーたいよーの小町……って言うけど、世界中のみんながそう思ってたらどうするんだろう。ほら、夏だし/前編』



「――あー、あっちいー。毎日なんでこんな暑いんだよ」

「そうアル。真夏の夜のなんちゃらよりも暑いテキーラ飲んでもこんな熱くならないアル」

「いや、去年よりはマシじゃないですか。恭文君が送ってくれた夏対策グッズのおかげで、クーラーなくても涼しい生活じゃないですか」





僕達万事屋メンバー……というか、かぶき町は夏真っ盛り。そんな中では恭文君がお中元として送ってくれた夏対策グッズが役に立っている。

例えば窓から差し込む日の光や熱を跳ね返すカーテン。部屋の内側にかけてOKなそれを万事屋の窓には全てかけてある。

片面がアルミホイルみたいにギンギラギンなそれのおかげで、部屋の温度は使用してない時より最大で19度近く低いとか。



部屋が暑くなる原因は日光により熱が上昇する事が大きいそうなので、このカーテンはかなり助かっている。

なんでも冬では部屋の温度を維持する効果もあるとか。ようは寒くなりにくい。

唯一の難点は、外から見てこの部屋の窓がこう……なんか怪しい事してるみたいにギンギラギンな事だけ。



あとは熱を吸収してひんやりと気持ち良く寝れるジェルマットとかも送ってくれたのに……なーんでこの二人は冒頭から文句垂れてるんだろうか。



ほらほら、部屋の隅でゴロゴロしてる定春だってそんな事言ってないのに。すっごく平和に過ごしてるのに。





「ぱっつぁん、お前空気読めよ。夏ってのは涼しかろうとなんだろうとまずここから入るんだよ。あれだよ? 鉄腕アトム時代から決まってるお約束だよ?」

「そうアル。だから石ノ森章太郎だって髪からあんなに白いもじゃもじゃな汗流してるアル」

「あれ汗じゃないからねっ! あれはちゃんとした毛髪だからっ! あと石ノ森章太郎先生関係ないだろっ!
……てゆうか、しっかりしてくださいよ。ほら、せっかく前回のアレが好評で僕達また出てこれたんですし」

「お前、アレのどこがどう転んだら好評なんだよ。ヅラがストリーキングになっただけだろ」

「そうらしいアルな。……わたしはジャスタウェイになってたけど。ずーっと放置されてたけど」



あー、そう言えばそうだったね。僕達もしばらく忘れてて1週間位気づかなかったしね。

でも神楽ちゃん、そんなヘコむ権利ないから。だってあれはさすがにアウトだったし。



「そうよ。アンタ明らかにやり過ぎだったんだし、自重しなさい」



玄関に続く廊下の入り口から声が聴こえて来たのでそっちを見ると、いつの間にか四人の人影が生まれていた。

一人はすっごい見覚えのある子で、もう三人も同じく。そのうちの二人を見て神楽ちゃんが目を開いて、立ち上がった。



「ごめんなさい。空いてたので勝手に入ってきちゃいました」

「二人がこっち来たいって言うから連れて来たよー」

「おぉー! ティアナにルナモンっ!」



それで神楽ちゃんは二人にダッシュして、一気に抱きつく。



「ちょ、こら神楽っ! 離しなさいよっ! 暑いでしょっ!?」

「神楽ちゃん、苦しいー」

「よいではないかよいではないかー」



それで定春も立ち上がって……あ、寝ちゃった。あんま興味ないみたい。



「……え、僕は無視?」

「やっさん、そりゃ仕方ねぇわ。俺でもそこは空気読むわ」

「そうよ。アンタは空気読んで私と全てのルートで添い遂げなさい」

「そこうっさいっ! なにまた極々自然に一緒に……腕に絡みつくなー!」










とまと・450万Hit記念小説


『あの子はーたいよーの小町……って言うけど、世界中のみんながそう思ってたらどうするんだろう。ほら、夏だし/前編』









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お前ら……この暑苦しいのにくっつくなよ。てーかやっさん、奥さんどうしたんだよ。
せっかくだから奥さん連れて来いよ。なんで愛人連れてくるんだよ」

「愛人じゃないからねっ! ちゃんとお付き合いしてるからっ!」

「恭文君、元々付き合わないって選択肢は」

「……そんなもの僕になかった。だって包囲網が凄くて」



うわ、すっごい疲れた表情でため息吐いたし。男の夢叶えてるはずなのにすっごい疲れた空気出してるし。



「それで腹立たれても困るっつーの。でもさ、おかしくない? この話の読者の大半がハーレム推奨派なんだけど」

≪反対意見0って勢いですしね。まぁそれも当然ですよ。みんなあなたがそれで苦しむところを見て楽しんでるんですから≫

「うん、知ってる。あれだよね、僕の持ち芸だもんね。三枝師匠で言うところの『いらっしゃーい』と同じだよね」

「なんか変な方向に自虐的になってるっ!? なにがあったか分からないけどとりあえず落ち着いてっ!
ま、まぁそういうのもかなり稀有だよね。多分銀魂では許されないし……というか」



僕はなぜかヘコむ恭文君から、銀さんの方に視線を移した。



「銀さんじゃあなぁ」

「うるせぇよっ! お前だって同じだろうがっ! この童貞っ!」

――童貞のなにが悪いんじゃコラァァァァァァァァァッ! 童貞はな、凄いんだぞっ!
30過ぎたら魔法使えるんだぞっ! 心清き勇者の称号が童貞なんだよっ!


「悪い悪くないの問題じゃねぇんだよっ! やっさん見ろよっ!
同人版じゃあ本命以外相手に童貞捨てて、年上の彼女に『僕が教えてあげる』状態」

≪Icicle Cannon≫



そしてそんな銀さんは突如発生した蒼い氷の奔流に飲み込まれ……また壁に穴開いたしっ!



「同人版の話はするなっ! あとそんな描写直接的にはないからっ! なに妄想垂れ流してるっ!?」

「お願いだから暴力の前に言葉で話してくれますっ!? なにまた砲撃ぶっ放してるのかなっ!」

「そうよ。私は別にアンタが初めてじゃなくても気にしないわ。
私だってイクトとキスだけは経験済みだし……でもアンタは気にしないでしょ?」

「そこのお前はツッコミがなってねぇよっ! あとその近親相姦は別の意味で気にすべき問題だろうがっ!」



よし、この子は放置だ。とにかく恭文君を見ると……ちょっと、なんで僕そんなKYってで目で見られなくちゃいけないのかな。おかしくない?



「新八、最近僕達はリリカルなのはの要素がほとんどないという事に気づいたんだよ。納得した?」

「意味分からないんだけどっ! それと砲撃とどういう関係があるのかなっ!」



そこでため息吐くなよっ! まるで僕が悪いって空気作るなよっ! あれ直すのだって大変だったんだぞっ!?



「いや、リリカルなのはと言えば魔王の砲撃でしょ? だから砲撃撃ってらしさを出してる」

「他にもっと出し方あるだろうがっ! なに暴力に訴えてるんだよっ!」

「あのねぇ、リリカルなのはの話がしたくてもこっちは……もう4〜5回はStSやってんだよっ! A'sもやったんだよっ!
その上ForceやVividがアレな感じで先も見えないから出来ないんだよっ! だったらこうするしかないでしょうがっ!
それでどうしろとっ!? そんな事言うなら原作者にもうちょっとマトモな話やれって言えよっ! お前がなっ!


≪確かにリリカルなのはで出来る話はもうやり尽くしてますよね。
無印やってもA's・Remixと同じ感じになりそうで手出す意味ないですし≫

「そんなの僕達に関係ねぇだろっ! 砲撃撃つならもっと別のとこでやれよっ!」



駄目だっ! 今日の恭文君はなんかネジ外れてるしっ! これ前回よりヒドい暴走しそうな気がするんだけどっ!



「ねぇ恭文、そんな事どうでもいいからキスしよ?」

「それでそっちのお前は状況見ろよっ! もっと他にやるべき事あるだろうがっ!
唇と唇触れる前に触れるべき現実がここにはたくさんあるぞっ!」

「うるさいわよ、童貞。女の柔らかさと温もりも知らないくせに偉そうにしないでくれる?」

「童貞のなにが悪いんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ぱっつぁん、知ってるか? 童貞は人類繁栄の妨げ……がぶ」



お前もなにガタガタ震えながらボケようとしてんだよっ! もういっそそのまま冬眠でもしてろっ!



「ティアちゃん、童貞って」

「ルナモン、アンタは知らなくていいの。ほら、あのお兄ちゃんに近づいちゃだめよ?」



え、なんで僕が悪いって事になってるのっ!? その話したのコイツらだよねっ! 僕じゃないよねっ!

あとちょっと距離取るなよっ! なんか嫌われてるみたいでちょっとぐさりと刺さるじゃないかよっ!



「あ、そう言えば」

「なに、まだなんかあるの?」

「いや、実はこっち来る前に小耳に挟んだんだけど……桂さん、またバカやってるらしいのよ」

「桂さんが……いや、あの人バカだからバカな事しかしないじゃない。
シリアスな長編以外はバカしかやってないよね? バカ丸出しだよね?」

「そんな事実をよく知っている読者からのタレコミですけど。
どうもあの人、前回のお兄様達とのゴタゴタがあったのにまだカードゲームに手出してるんですよ」



……ごめん、開いた口が塞がらなかった。だってシオンちゃんの言う通りなのに。

前回デュエルモンスターズとデュエルマスターズを間違えてバカやってたのに。



「なんね、ヅラは今度はなんのゲームと間違えたアルか。花札か」

「神楽ちゃん、さすがにそれはないよ。あの人がどんなにバカでも一度正解を示してるわけだし」

「そうそう。ただデュエルモンスターズじゃなくてヴァンガードやってるだけだもの」

「あぁ、それなら……おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」



さらりと流してしまいそうになったので慌ててその気になる発言を拾う事にした。



「ちょっと待てよっ! それ全然問題解決してないよねっ! むしろ振り出しに戻ってるよねっ!」

「きっとあれだな。あのストリーキングの事だから……もぐ」



恭文君の隣に居るヒカリちゃんがなぜか自分サイズのハンバーガーを一口食べて、しっかりと咀嚼。



「JAM Projectが主題歌うたってるからとか考えてるんじゃないのか?」

「限界バトルですね、お姉様」

「あの人、自分のバカさ加減が既に限界超えてるのにコレ以上なにとバトルする気だよっ!
既にバカのナンバー1だからバトルする必要性が全くないじゃないかよっ!」

「お前……まぁ前回のアレ見てたら分かるが、アイツに対して容赦ないよなぁ」



ショウタロウが引きつった笑いを浮かべるのは、きっとあの人のバカに巻き込まれていないせいだよ。僕達はそれはもう……なぁ。



「じゃああれだ、ヅラはイチかバチかのカウンター決めたいんだよ。ほら、そういう歌詞あるし。そういうので勝負決まるし」

「むしろ自分に対してのカウンターじゃないかよっ! とんでもない凡ミスで負けてるぞっ!
……でもそれ、マズいよね。そこまで頑張ってるって事は当然なぎひこ君に」

「挑むつもりだろうねぇ」



それは僕達的にはあんまり嬉しくないんだよね。だってあんなワケ分かんない騒ぎに……まぁいつもの事だけどさ。

でもあれで僕達まで真選組に怒られたしなぁ。またそういうのは嫌なんだけど。



「でも大丈夫だよ、苦労するのはなぎひこだから。廬山昇龍覇撃つのもなぎひこだから」

「それ全然良くねぇだろっ! お前友達なのにめちゃくちゃ冷たいなっ!」

「いや、冷たくはないよ。ただそこで慌てふためくなぎひこを見るのはきっと楽しいかなと」

「笑うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! そのドSな笑いはマジやめろっ! どっかの誰かを思い出すんだよっ!」



具体的には原作でもアニメでも相当危ない発言繰り返してるあの鈴村健一ボイスだよっ!

マジでホントなんかのフラグみたいだからその笑顔やめろっ!



「たのもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「……おいおい、この声は」

「ちょっとちょっと、まさかとは思うけど」



全員嫌な予感がしつつ部屋の入り口の方を見ると……そこにはやっぱり今噂してたバカが居た。



「ヅラ……帰れ」

「ヅラじゃない、桂だ。そうそう蒼凪殿、あのコートは部下に申しつけて常に守らせている。心配めされるな」





ちょっとちょっと、この人まだ騙されてたって気づいてないんですけどっ!



なんかすっごいドヤ顔で自分がバカだって公表しに来たんですけどっ!



気づく要素あるよねっ! 今目の前にこの鬼畜が居る事で気づけるよねっ!





「そうですか、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」

「うむ、任せろ」



任せろじゃねぇよっ! そっちのお前もなに息するかのようにコイツの勘違い加速させてんだっ!? もっとやるべき事あるだろっ!



「で、アンタはなにしに来たのよ。私と恭文のラブラブタイムを邪魔しないでくれる?」

「……あぁもうツッコむしかないしっ! 歌唄、そんな時間なに一つ存在してないよねっ!
そういう時間は今までなに一つ存在してなかったよねっ! いい加減な事言うなっ!」



あ、恭文君が復活した。いやぁ、やっぱり恭文君がツッコミしないととまと世界回っていかないしなぁ。良かった良かった。



「……とにかく桂さん、今日はどうしたんですか。なぎひこ君なら居ませんけど」



いや、待てよ。前回のあれこれを考えると……僕はすぐに恭文君とティアナちゃんの方を見た。



「ねぇ二人とも、今なぎひこ君ってどうしてるのかな」

「いや、アンタいきなり……あぁそっか。アイツ前回突然現れたんだっけ」

「そうそう」

「それなら大丈夫よ。アイツ今日は藤咲家の講演会に出てるから。
まぁ今回は関係者だけだから、私達は見に行けないんだけどね」



ティアナちゃんは少し残念そうな顔で笑いながら、両手で膝元に居たルナモンを抱える。



「ティアちゃん、最近藤咲家で花嫁修業してるから、踊りにも興味あるんだよね」

「まぁちょっとだけね?」

「そっか。それなら……桂さん、そういうわけでなぎひこ君はここには」

「ふ……逃げたな、藤咲なぎひこ。そんなに廬山昇龍覇を撃つ事から逃れたかったか」

「違うって言ってるだろっ! お前ほんと人の話聞いてないよなっ!」



ツッコんでもこのバカは僕の話を全然聞いてないらしく、ドヤ顔でそう言いながら腕を組む。



「まぁ奴とはいずれ決着をつければいい」

「ヅラ、お前前回既に決着ついてるじゃねぇかよ。お前ぼろ負けしてるじゃねぇかよ。人として」

「ヅラじゃない、桂だ。銀時、お前は分かってないな。俺は日々進化している」

「いや、だからバカさ加減が進化してるんだろ? だったらもう勝てねぇよ」

「問題はないっ! 俺は毎週日曜日にやっているニコニコ動画の生放送で遊戯王ヴァンガードの予習はバッチリだっ!」



なんかとんでもない勘違いしてるしっ! てゆうかあの読者からのタレコミ情報マジだったんかいっ!



「桂さん、あの」

「おぉ、なんだルナモン殿。まずはにくきうを触らせ」

「触るな変態っ! アンタ前に捕まえた事マジで懲りてないみたいねっ! ……ルナモン、気にしなくていいから続けて」

「う、うん」



ルナモンはティアナちゃんの胸元で耳を揺らしながら頷いて、桂さんの方を見る。



「あの……それ遊戯王じゃないっぽいです」

「……は? なにを言っている。今やっている新シリーズは遊戯王ヴァンガードだろう」

「いや、それ勘違いだから。今やってるのは遊戯王ZEXAL(ゼアル)だから」

「なんと……アニメ四期は二つやっているのか。それはつまり……あれだな。
リリカルなのはが迷走しているForceとティアナ殿の乳首券が発行されたVividと同じか」



その瞬間、ティアナちゃんが右足を上げて桂さんの脇腹を蹴り飛ばした。



「がはっ!」

「……見たのかっ! アンタVivid2巻かコンプエースの方を見たのかっ!」

「違うっ! 俺は武士だぞっ! アニメイトやゲーマーズに行ったりなどしていないっ!
ただネットで画像が載っていただけだっ! それで両手を合わせて拝んだだけだっ!」

「そんなアウトなもん見てなに胸張ってんのよっ! むしろ買った方がまだ清々しいわよっ!
あと乳首券の事は忘れなさいっ! 私の乳首見ていいのはコイツだけだからっ!」



お前もなに人の家でアホな事言ってんだよっ! あとそれ、多分恭文君本人の許可得てないよねっ!

ほら、なんか驚愕したって顔しちゃってるしっ! あの歌唄ちゃんでさえ呆れてるしっ!



「おいおいやっさん、お前何人嫁増やすつもりだよ。あれか、マジで大奥か」

「蒼凪殿……いや、俺はなにも言うまい。蒼凪殿は過去幾度と無く世界を襲う暗雲を退けて来た武士。
ならば大奥を形成したとしてもなんの不思議もあるまい。むしろそうして血筋を絶やさない事が責務であろう」

「いや、不思議ありまくりだろ。コイツがモテるなら俺だってモテるぜ? 俺To LOVEる出来るぜ?」

「アンタらなんの話してんだよっ! ……でも恭文君、本気? さすがに四人って大変じゃ」

「違いますよっ! 誤解のないように言っておきますけど」



恭文君は左手でなぜか顔が赤いティアナちゃんを指差す。



「コイツ自分がIKIOKUREたくないがために僕の嫁になろうとしてるんですよっ!?
僕の事好きとかなら話分かりますけどただ結婚したいがためだけにこれなんですよっ!」

「そうなのっ!? じゃ、じゃあフラグ立てて恋愛感情持っちゃったとかは」

「全然ですよっ! てーかあったらそれなりに考えて返事するけど、そういうのも無しでこれだから僕も困ってるんですよっ!」



それダメじゃねぇかよっ! なに『責任取って』みたいな空気出してんの、この子っ!



「やっさん、正直に言うね。ティアナのデカい乳で汚れたバベルの塔挟んでバナナジュース出したいんだろ?」

「そうよ。IFではマジで好き勝手なんだし、問題ないでしょ」

「ティアちゃんも神楽ちゃんも落ち着いてー! そういう話じゃないよねっ!
あとティアちゃんは自分安売りしちゃダメだからっ! あと話すっごい逸れてるよー!」



……ルナモン、苦労してるなぁ。でもティアナちゃんもマトモに見えてこれって……どうなってんだろ、この世界。



「と、とにかく恭文さん、遊戯王とヴァンガードは全然違うカードゲームなんだよね」

「そうだよ。発売元も違うから、ヴァンガードやっても少年ジャンプじゃない。
あと遊戯王はニコニコ動画の生放送で配信してないから。それこそ間違いだから」

「なん……だとっ!」



桂さんは……あー、なんかデジャヴだ。とにかく崩れ落ちて、懐からヴァンガードのものと思しきパックを次々と落とす。



「では……ではここに来るまでに買った新パックはなんだったんだっ!」

「あー、はいはい。それであれでしょ? 確かあなた、大会に出て優勝もしたのよね」

「そうだっ! 公式大会に出て……なのにそれが全て無駄だったと言うのかっ!」

「……なぁ歌唄、知ってはいたけどコイツバカだろ」

「なのです。エルはこんな大人にはなりたくないのです」



そこの赤白コンビのしゅごキャラは容赦ねぇな。いや、容赦する優しさすら吹き飛ばすくらいこの人バカだけど。



「これでは明日の真選組への討ち入りが出来ないではないかっ!」

「おいおいヅラ、お前ついに自分の事すら分からなくなったのかよ。
デュエルモンスターズでどうやって討ち入りすんだよ。千年アイテムでも手に入れたのか」

「ヅラじゃない、桂だ。……ふ、勉強不足だな銀時。今の俺をただの攘夷志士と思うな。これを見よっ!」



桂さんはどこからともなくデュエルモンスターズではおなじみなデュエルディスクを出して来た。

てゆうかこれ、あれだよね。遊戯王の漫画のバトルシティ編で出てきたのだよね。なんでこの人平然とそんなの出してるのさ。



「いいかっ! これにはジュエルシードというものが入っているっ! それにより闇デュエルが出来るそうだっ!」

「な……ちょっと待ってっ! 確かジュエルシードってっ!」



僕は同じように驚いてる恭文君の方を見る。



「無印で出てきたロストロギアじゃないのさっ! 願望実現器――なんでそんなのアンタが持ってるんですかっ!」

「ふ、そんなのは決まっている。ちょっと管理局の人間と仲良くなってパク……もとい、借りて来たのだ。
その上でうちのエリザベスがあーでもないこーでもないと試行錯誤したところ、それが実現した」

「そう。だったら」



ティアナちゃんはなんの抑揚もなくそう言うと桂さんの右手を掴み、懐から銀色の輪っかを取り出してその手にかける。

素早くもう片方の手にも手錠をかけ、桂さんはそれを見て首を傾げた



「……なんだ、これは」

「逮捕よ。えっと、ロストロギアの窃盗に警察設備への攻撃未遂だから……あー、20年行くかなぁ」

「なぜだっ!」

「犯罪者が自覚なく逆ギレしてんじゃないわよっ! もうこれ見過ごせるレベル超えてるのよっ!」

「く、かくなる上は」

「というわけで」



逃げようとした桂さんの両足にオレンジ色のバインドがかかり、桂さんは仰向けに倒れて頭を打ちつける。



「がはっ!」



桂さんはそこで目を開き、一気に意識を失ったのか力なく項垂れた。ティアナちゃんはその様子を見て大きくため息を吐く。



「じゃあ私、コイツ連れていくから。ルナモン、ちょっと手伝って」

「うん、分かった。でも桂さん……大丈夫なのかなぁ」

「大丈夫よ。この人バカだから」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そう言いながらティアナちゃんはとルナモンは桂さんの首根っこ掴んで引っ張って帰っていった。



神楽ちゃんはなんか寂しそうだったけど……でも『ルナモンを進化させればもっと楽だったんじゃ』と思った僕は悪くないと思う





「とりあえずあれだ、やっさん」



銀さんは大きくため息を吐きながら恭文君の肩を右手でポンと叩く。



「あの嬢ちゃんはもらってやれ。変な男に捕まってボロボロになる前に」

「「アンタはこの静けさをどんな話題で破ってんだっ!」」

「いや、だってよぉ……あれはもう、だめだぞ? 男から見たかもがネギしょってるみたいなもんだしさぁ。
それで適当に弄ばれてやさぐれちゃってもなんか寝覚め悪いじゃん? 一応顔見知りだし? だったらここはお前が責任持って」

「絶対嫌だしっ!」

「ほんとよ。そもそもあの人ただIKIOKUREたくないだけじゃないのよ。それで私は恭文の嫁宣言? もう笑っちゃうわ」



歌唄ちゃんもそう言ってなんで僕まで殺し屋の目で見るのっ!? 僕関係ないよねっ!



「だったら笑え。お前が笑ってあの嬢ちゃんの未来が救われるならそれでいいじゃねぇか。
それにあれだよ? お前だってあんな美人もう一人侍らせられて幸せじゃねぇか。
おっぱい大きいし、性格だってまぁちょっと素直じゃないとこあるけど可愛いもんだし、お前の嫁やる気満々だし。
ついでにあっちの方もヤル気満々だし? そんな相手もらわない方がおかしいって。大丈夫、どうにかなるって」



お前結局最後下ネタかよっ! それやったら恭文君はそのカモネギ食って弄ぶ奴とあんま変わらないじゃないかよっ!



「そうアル。IFではエロエロだったんだし問題ないアル。IFの嫁を本編でも受け入れるだけでいいアル。
ティアナがOKって言ってるんだから問題ないアルよ。アレアル、マカビンビン送ってやるから頑張れ」

「頑張れるわけないだろうがっ! もうホントお願いだからあのツンデレ応援とかやめてよっ!
うちのみんなとルナモンで力合わせてあのバカの焦りをなんとかしようなんとかしようってしてるのにー!」

「いや、むしろなんとかするためにはお前がエロを頑張るしかないんじゃないかなぁ。それも経験だ」

「そんな経験させずに健全な方向に進む努力をしたいんですけどっ!? てーかエロは」



突然鳴り響く着信音に、恭文君の言葉が止まる。それに首を傾げながらも恭文君は右手で何処からともなく端末を取り出した。

iPhoneみたいなスマートフォンタイプのそれを左の人差し指で一回押して、右耳に当てる。



「はいもしもし」

『ね、アンタ今私の事ツンデレって言わなかった?』



その声は僕達にもしっかり聴こえていて……それで全員が驚愕の表情を浮かべた。



「おぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! なんであの嬢ちゃん分かってんだよっ! 我が家は盗聴でもされてんのかっ!」

「アンタ、分かってないわね。ティアナさんならこれくらい出来るわよ?」

「そんな常識って顔で言わないでもらえますっ!? 俺達お前らみたいにむちゃくちゃなキャラじゃないんだよっ!」

「そうアル。わたし達は由緒正しきJumpキャラね。わたしらかドラゴンボールかっていうレベルね」

「それ思いっ切り嘘じゃねぇかよっ! 自分で言うのもあれだけど、僕達ドラゴンボールとはタメ張れないだろっ!」



その間に恭文君は怯えた表情で周囲を見渡し、なぜか机の下とかソファーの裏とかを確認し始めた。

そしてしばらくせわしなく動いてうちの中を捜索した結果……とっても良い笑顔を浮かべた。



「言ってないけどなにかな」



平然と嘘つきやがったっ! てーかそれなら今の無駄なアクションはなにっ!?



『そう、言ってないの』

「うん。当たり前じゃない。ティアナはただIKIOKUREだねって話してただけで」

『そうね。アンタが同人版とかで私のスリーサイズバラした責任取ってないせいでね。で、ツンデレって言ったのよね』

「いや、言ってないって」

――嘘だっ!



なんかすっごい殺気に満ち溢れた叫びが聴こえて、僕達は一斉に恭文君から距離を取る。いや、歌唄ちゃんは平然と側に居るけど。



『ねぇ、どうしてそんな嘘つくのかなぁ。別にいいのよ? アンタツンデレ好きっぽいし、それで私の事もらってくれるなら』

「はい先生、それ意味分からないですっ! だからほんと未来諦めるのやめようかっ!」

「うっさいバカっ!」



そして背後から恭文君が蹴られて……なんか本人電話片手にいきなり出てきたっ!?



「ティアちゃん落ち着いてー! いきなり蹴ったらだめだからっ!」



それでその後ろからとたとたとルナモンが……ねぇ、さっき二人して居なくなってたよねっ! なんでこうなるのさっ!



「もう焦ってる時間はないのよっ! なのはさんも……あのなのはさんでさえも、男と添い寝して胸を直に触らせたのよっ!?
私あの人にだけは追い越されたくないのよっ! だから結婚してっ! それで今すぐ新婚初夜よっ!」

「ティアナさん、ホントいい加減にしない? 自分磨く努力も足りてないくせにいきなり嫁になろうなんて言語道断よ」



そして歌唄ちゃんは……殺気を放ちながらティアナちゃんを睨み始めた。



「――出たぁぁぁぁぁぁぁぁっ! もう何回か出てるけど出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
あれがどんな相手だろうと恐怖のどんぞこに叩き落とすっていう殺し屋の目かっ!」

「銀ちゃん、ガチな殺し屋より怖いねっ! あれなら吉原編で出てきた夜王とかうちのバカ兄貴とかも楽勝ねっ!」

「いや、無理だからねっ!? あれで全部解決するってどんなインフレだよっ!」

「悪いけど私も今回は下がれないのよっ! てーか知ってるっ!? コイツは……巨乳好きなのよっ!」



それでなんでお前も胸張って対抗しようとすんだよっ! そんな事する意味が分かんないんですけどっ!



「アンタ適乳じゃないのよっ! 私にケンカ売りたかったらまずはバスト85以上の巨乳になりなさいっ!」

「……へぇ」



歌唄ちゃんの笑みがより深くなって、僕達は更に距離を取った。そんな中恭文君はティアナちゃんと歌唄ちゃんの間に入る。



「歌唄、落ち着いてっ! あのね、話逸れてるっ! てーかティアナ、おのれマジふざけるなっ!
僕は巨乳だからOKなんて考えてないからっ! なによりそうだとしてもおのれはごめんだしっ!」

「なんでよっ!」

「おのれは何回僕にそこ説明させるつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「……恭文さん、もうお願い出来ませんか?」

「ルナモンが諦めたっ!? とにかく座ろうっ! 全員一度座ってっ! それで落ち着いて話そうっ!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく座らせた上で……どうすりゃいいのよコレっ! もう僕マジでどうも出来ないんですけどっ!



ただそこまで考えて、僕は一つ思い当たった。だってほら、ここって……万事屋じゃない?



なのでとっても良い笑顔を浮かべつつ、隣に座る銀さんを見る。





「銀さん」

「あ、俺仕事」



そんな事を言うので首に空間固定型のバインド生成。



「ぐぇっ!」



銀さんがそれに気づかず立ち上がろうとして苦しみを覚えてしまったけど、それはきっと銀さんの明日の糧になるから気にしない。



「銀さん、ここ万事屋ですよね。ちゃんと依頼料払うんでこのバカの結婚相談に乗ってください」

「はぁっ!? やっさん、お前ふざけんじゃないよっ! 元はと言えばお前がところかまわず女に手出すからだろうがっ!」

「そうアル。ちゃんと責任取るアルよ」

「出してないっつーのっ! あとコイツに取る責任ないからっ!
ただIKIOKUREたくないだけで僕とくっつこうとしてるのよっ!? それおかしいでしょっ!」



どうも僕が悪いみたいな空気になってるし、歌唄も殺し屋の目のまま僕の事隣で見てるし……しょうがないので強硬手段に出る。



「分かりました。ならそのバインドはそのままにして僕達帰りますんで」

「へっ! そんなんで脅してるつもりかっ! こんなのはうちの神楽ちゃんに壊してもらって」

「無理に壊そうとしたら爆発しますけど。そうしたら銀魂は連載終了ですね」

「おーいっ! この子ナチュラルに俺の事殺しにかかってるよっ! どんだけデンジャラスな世界からやって来たんだよっ!」



まぁ爆発は嘘だけど……これくらいしないとこの人達逃げちゃうし、やっぱりねぇ。

とにかく銀さんも話を引き受けてくれる事が決定したので、改めてなんでか頬を膨らませてるティアナの方を見る。 



「手切れ金ってわけ? そうよね、結局私……現地妻だものね。用がなくなったらポイ捨てよね」

「そもそも切れる関係じゃないでしょうがっ! あとティアナ、それ違うっ! 手切れ金ならティアナに渡すんだからっ!」

「でもティアナちゃん、恭文君じゃないけどやっぱりちょっとおかしいんじゃないかな」

「うっさい童貞」

「お前がうるさいんだよっ! 真面目な話してるんだからちょっとは聞けよっ!」



新八は大きくため息を吐いてから、困った顔で隣に座るティアナを見る。



「別に20前後だったら結婚焦る必要ないと思うけど。ほら、今は30代で結婚も珍しくないし」

「……でも私の周り、20代前半で結婚とか多いし。コイツだって」



ティアナが僕の方を見るのは、僕も一応その限りだから。どうやらそこも焦る要因らしい。



「あと二階堂先生とゆかりさんも20代だし、スバルとかも良太郎さんといい感じだし。
エリオとキャロだって同人版でこそあれだけどこっちだともう食うか食われるかの関係だし」

「いや、最後関係なくない? むしろそれバイオレンスな方向だよね」

「私だけなのよ。私だけそういう好きになるとかそういうのさっぱりで、原作だと百合路線で男の影ないし……もう希望が持てないのよっ!
原作でそういう相手とか絶対出てこないだろうし、しかもこの話で出てくる男は大半今アウトだしっ!」

「いや、結構居るんじゃないかな? しゅごキャラのちびっ子共はともかくリリカルなのはに男キャラは」

「ダメよ。全員揃って登場する事そのものが難しいのよ? どうやってフラグ立てるのよ。
影も薄いしもう生きてるんだか死んでるんだか分からないのに。Forceとかでも出てないのに」



ティアナ、それやっぱりなんか違うから。影薄いとかは……まぁなぁ。やっぱ管理局入らない方が出番増えやすいのに。



「確かに恭文は影も濃いしきっちりしてるけど……でもあれはないわよ」



今まで殺し屋の目のままだった歌唄がその状態を解除して、呆れた顔をする。



「恭文だってマジで心配してるし困ってもいるし」

「……ごめん。さっきの私、冷静じゃなかった」

「ティアちゃん、元気出してー」



ルナモンはティアナの腕の中で手を伸ばして、俯くティアナを撫でた。一応……冷静にはなってるっぽい。



「てゆうかティアナ、大丈夫だよ。何度も言ってるじゃないのさ」

「なにがよ」

「ティアナはなぞたま事件の時にファンシー・ドリームになったあのキャラと結婚するってアカシックレコードに」

「なに適当な発言してんだよっ! てーかそれただのたちの悪いネタバレじゃねぇかっ!」



なぜか不満そうな新八がおかしくて、僕は目を閉じて鼻で笑ってしまう。



「新八、そのネタバレ一つでティアナの心が救われるのなら、安いもんと思わない?」

「思わねぇよっ! お前デンライナーの人達からめちゃくちゃ怒られるぞっ!」

「そっか。だったら安心かも。あんなに焦る必要なかったんじゃ」

「お前も納得するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



こうして、ティアナのバカは今日を境に止まっていく事になった。そう、ティアナの不安を取り除く方法なんて一つだけだった。

ただちょっとアカシックレコードの話をすればよかった。それに気づけば……頑張れティアナ、負けるなティアナ。



「なに勝手にモノローグ入って終わらせようとしてんだよっ! まだ何一つ問題解決してないじゃないかよっ!」

「あぁ、新八の中ではそうなんだよね。……お前の中だけではな」

「僕の中だけじゃなくて世界的にそうなんだよっ! とにかく……そんなんじゃダメだよ。
もうちょっとちゃんとした具体案を出さないと。てゆうか、安心してると逆に堕落するかも」



……ち、余計な事に気づいちゃったし。ティアナがハッとしてまた僕の方見出したじゃないのさ。



「そやそや。そういう適当な事するからティアにつけ狙われるんよ」



入り口から声がしたのでそっちを見ると……薄い緑で胸元の開いたワンピース姿のはやてとテントモンが居た。



「はやてさんっ!」

「おいおい、今日はほんと客がよく来るなっ! てーかソイツって」

「どもー。光子郎はんのパートナーやのうてとまとキャラの方のテントモンです。……あ、これお中元です」



テントモンは羽を羽ばたかせながら銀さんの方へ行き、六つの腕で持っていた箱を手渡す。



「お、ありがとな。あー、お前も狸の嬢ちゃんもこれ渡しに来たのか」

「そのお中元返してもらえますか? 今すぐに」

「やだよっ! もらったもんは俺のもんだろうがっ!」

「子どもみたいな事言ってんじゃないよっ! ……いや、もうホントすみません。この人バカなんで」



新八がぺこぺこすると、はやては右手を振って笑顔で『大丈夫』とアピール。それからソファーの後ろに回り込んで、僕の後ろに立つ。



「ティア、マジ焦るとロクな事ならんよ? コイツはなんだかんだでそういう線引きしっかりしとるから大丈夫なだけや。
アンタのそういう焦った気持ちにつけ込んで美味しい思いしよう言うのが近づいてもおかしくないもん」

「そうだよ? 男は狼なのよ気をつけなさいーって言うだろうが。あんまがっつくと逆に良い奴は引いちまうからなぁ」

「でもフェイトさんは夜這いかけて」

「フェイトちゃんと恭文は元から両想いやったやんか。そういう意思の疎通があったからOKなだけよ」



ティアナが疑問顔で僕の方をまた見るので、頷いて肯定。……確かにはやての言う通りなんだよね。

過程があったからこそ今に繋がってるけど、ティアナの場合は過程抜かして結果だけ求めてるもの。これじゃあダメでしょ。



「じゃあその、どうすれば」

「やっぱみんなも言うてたけど、焦らず自分を磨くとこからやろ。それか出会い探す? でもこれも今のティアやと怖いんよなぁ。
合コンであまりがっつくとやっぱさっき銀さんが言ってたみたいになるし……あ、そうや」



後ろを見ると、はやては両手で拍手を打ってから僕達の方を見て笑みを深くする。



「ちょうど男と女の人数えぇ感じやし、練習してみよっか。擬似合コンや」

『はぁっ!?』

「「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」



突如部屋の中に気配が生まれ……僕は素早く両手を腰のワイヤーベルトに手をかける。

まず僕の向かい側にある銀さんの部屋のふすまが開いて、そこに群青色の髪に赤いメガネと白服姿のバカ1号が出てきた。



「合コンとは聞き捨てならないわねっ! それってつまり銀さんと合体したい女共が集まってきゃっきゃうふふするって事よねっ!
冗談じゃないわっ! 銀さんのメス豚は私だけよっ! そんなオワコン作品の駄メス共にその座は渡さないわっ!」



そして僕の背後にある神楽が寝床にしている押入れが開き、その中から黒髪短髪でガタイの良いゴリラ顔が出てくる。



「いかん……いかんぞ新八君っ! 前にも言っただろうがっ! 合同コンパなんて合体コンパなんだっ!
ただモテる奴が安い飯奢って美味しい思いするための場なんだっ! いい加減に目を覚ませっ!」



その瞬間、バカの顔面に僕が反応する前に銀さんが首元のバインドを砕きながら飛び込む。

そして右の飛び蹴りがバカに直撃し、バカは大きく吹き飛んで銀さんの寝室の畳を滑り窓側の壁に頭を打ちつける。



「テメェはナチュラルにどっから出てきてんだよっ!」



しょうがないので僕は背後のバカの首に向かってワイヤーを投げつけ、引き寄せつつ電撃を食らわす。



「おのれもどこから出てきとんじゃっ!」

「ぐがががががががががががががががががっ!?」



ゴリラは地面に落ちながら煙を上げ、軽く足をひくひくさせる。なお格好は……青の着流しだった。真選組の黒い制服じゃないね。



「ちょっとちょっと、近藤さんにさっちゃんさんもなにやってんですかっ!」

「……ね、この人アンタ達の知り合い? 普通に玄関から出て来なかったわよね」

「既に家の中に入ってないと出られない場所から出て来たよね。ティアちゃん、この人達ってなに?」

「あー、そういや歌唄とルナモンは知らなかったわね。まぁその、一応知り合い」

「というか、単なるストーカーね」





説明しよう――まず銀さんが蹴り飛ばした身長170はある『さっちゃん』は猿飛あやめ。

元お庭番衆の凄腕くノ一で特徴はその髪型と右目下の泣きぼくろ。

忍者としての実力派充分で一級の実力があるんだけど……残念ながらこの人も致命的にバカ。



銀さんに惚れてる関係でドMなストーカーと化してしまっていて、最近うちの寄りあい住宅に住み着いたマッドサイエンティストとキャラが被ってる。

そして背後でぴくぴくしてる身長180以上はあるゴリラこと――バカその2は、近藤勲(こんどう・いさお)。

何度も名前の出ている真選組の局長だけど、新八のお姉さんのストーカーとなって公僕の恥さらしな生活を送っている。



なのに真選組を全くクビにならないのは本当におかしい。もちろん仕事はきっちりするし、人望はかなりあるから見習いたいけど。





「近藤さん、アンタなにしとるんですかっ!」

「そうでっせ。ついさっきワテらが挨拶に行った時には屯所に居たやないですか」

「お、お妙さんの声がしたのでつい」

「どんな耳してはるんですかっ! あとコイツお妙さんちゃいますからっ!」



とりあえずもう一発電撃かましとこう。なんかムカついたので術式再び詠唱。



「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「……で、さっちゃんさんはどうしてこっち来ちゃったんですか」

「そんなの決まってるじゃないっ!」



あやめさんは何事もなかったかのように立ち上がり、右手で赤い眼鏡を正してこちらに来る。



「銀さん専用のメス豚決定戦が行われるって聞いたら、私が出ないわけにはいかないでしょっ!」

「アンタ話聞いてたかっ!? うちそんな事一言として言ってないんやけどっ!」

「ふん、私はだまされないわよっ! そんな事言って銀さんのバベルの塔を狙ってるんでしょっ! 汚らわしいっ!
銀さんのバベルの塔も罵声のツバもバックスタイルも全部この私のものなのよっ! この駄ブタがっ!」

「その言葉そっくりそのまま返したるわっ! あとうち結婚しとるからっ!
旦那と奇数日にラブラブでバックスタイルもOKな生活送ってるからっ!」

「うるさいっ! とにかくその争奪戦、私も参加させてもらうわっ!」



駄目だコイツ、全く話聞いてないしっ! ……それに頭を抱える暇もなく、後ろのゴリラが立ち上がって左腕でガッツポーズを取る。



「俺も同じくだっ! 新八君は俺の弟も同然っ! それが合体コンパなどに参加するのを黙って見ているわけには」

「もう一発電撃いっとくか」

「ちょ、待ったっ! 恭文君、そんな総悟みたいな真似は……ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

≪はぁはぁ……あぁ、羨ましいの。ジガンも主様にいじめて欲しいの。心がじゅくじゅくしてくるの≫

「そこ発情してんじゃねぇよっ! てーかもうなんなんだよコレはっ! なんでお前ら俺らの家で大騒ぎっ!? ちょっとは自重しろよっ!」






こうして、なんだかよく分からない模擬合コンは始まる事になってしまった。てーか僕にも誰にもバカどもを止められなかった。



でも大丈夫。きっとこれもティアナにとって勉強になると信じて……僕達は更なるカオスの極みに突撃する事を決めた。





(後編へ続く)




















あとがき



恭文「最近作者は担々麺にハマっています。そんな中書いた時系列も世界観も完全無視の銀魂メンバーとの大騒ぎ、どうだったでしょうか。
なお劇中で出たヴァンガードネタは、拍手で来たものを使わせていただきました。ありがとうございます。というわけでお相手は蒼凪恭文と」

キャス狐「これはひどいと言いたいキャス狐です。ご主人様、これは……問題作ですね」

恭文「そうだね。18歳以上お断りだよ。もうありえないノリになってるね」



(ただこれは前編。きっと後編は……とんでもない事になる)



キャス狐「というかご主人様、これいいんですかー? 奥さん居るのにー」

恭文「いや、もうしょうがないでしょ。これでティアナがなんかあっても嫌だし、ルナモンも気にするし」

キャス狐「そう言えばあの子、ティアナちゃんにべったりですしね」

恭文「ティアナも妹みたいに思ってるとこあるしね。とにかくあれだよ、練習くらいならいいでしょ。身内だけだし、擬似だし」

キャス狐「でもマトモに進みそうにないんですけど」

恭文「……言わないで」



(きっと次回は……もっとヒドくなるなぁ)



恭文「というわけで、早々にもっとヒドくなる次回を書こうか。でも担々麺って美味しいよねー」

キャス狐「暑い時に辛いもの食べるといい感じっていうのですか?」

恭文「そんな感じだね。残ったスープにご飯を入れるとそれはもう」





(担々麺の美味しさに気づいたために、日進の冷凍担々麺を毎日……あぁ、美味しい。
本日のED:サイキックラバー『Precious Time,Glory Days』)










フェイト「ティアナ……ぶっ飛ばしてるなぁ」

恭文「飛ばしてるとかそういうレベルじゃないけどね。でもそんなに焦るものなの?」

フェイト「やっぱりなのはのあれがあるんじゃないかな。ほら、なぎひこ君と」

恭文「……なるほど、なぎひこのせいか」

なぎひこ「いやいや、ぼく関係ないよねっ! てゆうか僕も……あれどうしようっ!」(頭を抱える)





(おしまい)





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