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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第127話 『Party Start!/ガーディアン見習い誕生っ!?』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ミキ「ドキッとスタートドキたまタイム。さてさて、本日のお話は」

スゥ「ついにドキたま/じゃんぷも3クール目に突入ですぅ。そんなわけであの子が再登場」

ラン「でもでもそれだけじゃなくて……というか、平和だよねー」



(立ち上がる画面に映るのは、ボールと伸びた手と笑顔なあの二人)



ラン「光編まではバトル一直線だったから、こう……穏やかだよねー」

ミキ「ついつい気が緩みがちだよね。でもそんな中でもしっかりと帯を締めて」

スゥ「今日も元気にいくですよぉ。せぇの」

ラン・ミキ・スゥ『じゃんぷっ!』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



コロナは明日の朝一で戻る事になったので、今日もお泊り。夕飯作るのも手伝ってくれて本当に良い子だよねぇ。

ヴィヴィオも少しはこの子を見習って、失ってしまった純粋な気持ちを思い出して欲しいよ。あのね、そこは本当に思う。

とにかく夕飯を食べてから、僕はフェイトと一緒にお風呂。足とか滑らせると危ないからここはもう日課になった。



お腹に負担をかけたりしないように、湯船で向かい合ってゆったりのんびりしつつ今日の学校での事を話してた。



フェイトはいつものように優しく笑ってくれて、時たまおかしそうにくすくすと……可愛いよー。





「でもなんというか、今日は色々考えちゃったんだ」

「空海君の事? あ……IMCSかな。というかあの、ごめん。私の仕事の都合とかで振り回してる部分もあったし」

「あー、違う違う。りっかの事だよ。りっかね、浄化した×たまが戻れるかどうか心配してたんだ」



フェイトは少し怪訝そうに首を傾げた。まぁこれだけだと分からないだろうから、話を続ける。



「宿主に新しい夢が出来てたら、浄化されたたまごはいらない子になるんじゃないかーって」



フェイトはようやく分かったらしく、驚いたように少し息を吐いた。



「なんかこう、一応納得してくれるような説明はしたけど……ハンマーで頭叩かれたみたいにショックでさ」

「……確かにね。例えばほら、ヤスフミ達だと最終決戦で万単位のたまごを浄化したわけだし」

「うん」



その全部がちゃんと戻れたのかなーとか考えたら、そりゃあなぁ。あー、でもそれ関連でもう一つ気になってたんだ。



「あとそれで思ったんだけど、ショウタロスってなんで居るのかなと」

「え? でもそれってほら、ヤスフミが最初の時に描いたしゅごキャラだから」

「でも僕が誘拐された事自体忘れちゃってたから、ショウタロスも今までずっと消えてた」



湯船の中で両腕を組みながら、フェイトの胸元……その下の水面に視線を落とす。



「つまりその、僕ってりっかが危惧してたみたいに元の『なりたい自分』をいらない子扱いしてたんだよ。
だからショウタロスは僕のところに戻って来るどころかたまごとして形にもなれなくて」



それが僕とショウタロスの繋がり。だけどショウタロスはそれでもそんな僕をずっと見てたとも言ってた。



「あのね、そこが改めて考えると疑問なのよ。ショウタロスはそれならどこから出てきたのかなって。
だってしゅごキャラ――こころのたまごは、宿主が可能性を信じられなきゃ消えちゃうんだよ?」

「……そう言えば、そうだよね」





僕は信じる信じないの前に、ショウタロスがこころの中に生まれた時間そのものを忘れてた。

そうなるとショウタロスはその時点で消滅していたのと同じだよ。以前あった幽霊騒ぎの時に出会ったあの子みたいにさ。

だけどショウタロスははっきりと、自分があの時生まれた存在だと言った。僕の事もずっと見てると言ってた。



というかというか、よく考えるとシオン達もショウタロスが出てきた時あんまり驚いてる様子が見られなかった。



つまりその、それって……じゃあしゅごキャラってなに? 僕が今まで聞いてた話は、なんだったんだろう。





「というかヤスフミ、私今思い出したんだけど」

「なにかな」

「ほら、二階堂先生の子どもの頃のしゅごキャラも一時的に復活した事があったよね? あの時の私は見えてなかったけど」



あー、あったあった。あむがリメイクハニーをかけて……あれれ?



「その子もショウタロスと同じじゃないかな。二階堂先生は一度『なりたい自分』を諦めて壊した。
リメイクハニーの『お直し』は壊れたたまごまではそれが出来ないのはもう証明されてる」

「うん。おねだりCDにされたたまごもさっぱりだったしね」





あむのリメイクハニーは確かに凄い能力だけど、それでも限界はあるし万能でもない。

元の形を取り戻しようのないくらいに壊れてしまったもの――死んだ存在なんかを生き返らせる事も出来ない。

元の形にしようとする能力だから、その元の形そのものの中に異常があったらそれ以上のお直しも出来ない。



ここはイクスに対してのリメイクハニーで機能不全が『お直し』出来なかった事からも分かる。

それで二階堂の場合だと……あの、本当に待って。そうだよそうだよ、なんで今まで考えなかったんだろう。

あの時のあむのリメイクハニーは、一体何を対象として何をどうお直ししたっていうの?



二階堂の身体や×たまはもう分かってるからいい。でもそれ以外に何か、全く別のものをお直ししたんだ。



だから完璧な形じゃないけど、あの場で二階堂のしゅごキャラが出てきた?





「ヤスフミ、もしかしたらだけどしゅごキャラって、こころのたまごって消えても完全に消滅しないんじゃないかな」

「かも、知れないね」





そう考えないと、今ショウタロスが生まれたままの状態でここに居る事やあれこれが説明出来ないのよ。

もし消えちゃった上で生まれたなら、今の僕の感情とかを基準に別のキャラが生まれるんじゃないかと思うんだ。

だから疑問が残る。それならショウタロスやあの時出てきた博士っぽいしゅごキャラはマジでどこから来た?



消えてしまって長い時間、一体どこでどうやって存在を維持していたのさ。



ひかるのたまごみたいに迷子になってたわけじゃないのに……これ、かなりの謎かも。










All kids have an egg in my soul



Heart Egg……The invisible I want my




『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!


第127話 『Party Start!/ガーディアン見習い誕生っ!?』










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『ムリ』

『ムリ』



ねむいー。ねむいのに誰かがあたしの身体に体当たりをするー。てゆうかもういつもの事だから分かっちゃったー。



『ムリムリー!』

『ムリムリー!』



うちの子達が『起きろ起きろー』『遅刻するぞー』って起こしてくれるの。それはね、嬉しい。

でも……体当たりはやめてー! 何気に痛いんだからー! だからあたしはばっと身体を起こす。



「あーもううっさいなぁー! てゆうか体当たりで起こすのだめーって言ってるじゃんっ!」

『ムリー』

『ムリムリー』

「あー、うん。おはよう。でも体当たりはやめてね?」



右手で目をこすりながら部屋を見渡す。それでみんなあたしに『おはよう』って言ってくれてる。

それはまぁ、嬉しい。あたしお寝坊なとこあるからさ。でも……やっぱ数多いよなぁ。



「……どうしよう」

『ムリ?』

「やっぱりアンタ達の事知られたらガーディアンになれないかもー!?」

『ムリっ!?』



頭を抱えてベッドの上でのたうち回る。でもそんな事しても何も変わらないので動きを止めた。

そんなあたしを×たま達や窓際の水槽の中のナマズをジーっと見て……あ。



「そうだっ!」



あたしは起き上がりながらベッドから降りて部屋を見渡す。それでそれで……あったっ!

お部屋のお掃除用のモップの柄を持って、あの人がやってたみたいに構えて×たま達を見る。



……てっき



それでそれで……×たま達に近づいてこう、ずばーっと打ち込むっ!



いっせんっ!



そうしたら×たま達は浄化され……ない。てゆうか、さすがに当てるの怖くて×たま達から離れたとこでやったもん。

でもでも、それでもこうビームみたいなのが出てもいいと思うんだ。だけどそういうのも無しなんだよ?



『ムリムリ』

『……ムリ』





あたしは×たま達からかけられた慰めの言葉がなんか辛くて、大きくため息を吐いた。



もう着替えて学校行かなきゃいけないのに、頭の中はこの子達の事でいっぱいだったよ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



朝ご飯をいっぱい食べて、パパとママに行って来まーすって言ってあたしは元気に学校に向かう。

うー、ご飯とかは必要ないけどあのまま増え続けるなんて絶対だめだよね? だってあの子達、迷子みたいなものだし。

あたしじゃ浄化出来ないし、やっぱり見つけたらあむ先輩達に報告かなぁ。



でもでも、うちの子達の事がバレちゃったらあたしガーディアンになれないだろうし……どうしよー。



うちの近くの道を歩きながら、あたしは大きくため息を吐く。





『……ムリィ』





通りがかった家の植え込みの中から、すっごく聞き慣れた声が聴こえた。

あたしはどんどんと学校の方へ歩いて行くあたしと同じ制服を来たみんなはさて置きそちらを見る。

でも気にせずに歩き出した。そうだ、だめだめ。あたしが連れてくとまた懐いて家に来ちゃうし。



ここは学校に来てからあむ先輩達に報告だ。これ以上はその、ダメなんだから。





『ムリィ』



でもどこか寂しそうな鳴き声を聞いて、また足が止まった。……あたしはその場で数メートル後ずさり。

それで周囲を気にしつつ植え込みの中に手をツッコんでかき分けて中を覗くと、そこにはやっぱり×たまが居た。



「迷子になっちゃったの?」

『ムリ』

「……おいで」



あたしが両手を伸ばすと、その子は植え込みの中から出てきてくれる。それを素早く掴んで、植え込みの中から抜けだした。



「かばんの中に居るんだよ? それで絶対出てきちゃだめだから」

『ムリー』





あぁ、どうしよう。また拾っちゃったよ。いくら他の人には見えないっぽいとは言え、この調子だと……うぅー。



うちの中がそのうち×たまでいっぱいになっちゃうよー。一個みたら30個あるってノリでー。



かばんの中で嬉しそうに鳴いている×たまはそれとして、あたしは頭が痛くなってた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



平和な日常の中に謎が一つ増えた。それも僕の勘が告げている。これはとても気になる謎だと。

もちろんショウタロス達にも聞いた。だけど連中はあやふやな事しか言わないし。ようするに『自分で確かめろ』って事だよ。

そんな謎に頭を悩ませつつも、今日もロイヤルガーデンでみんなと紅茶を飲みながら会議。



イースターとの戦いが終わってもガーディアンの仕事はたくさんある。それは聖夜小の平和を守るという事。

まぁこう言うと大仰だけど、以前も説明したようにガーディアンは通常業務もかなりの量がある。

これも与えられている権限の重さだと思い、僕達は花壇の手入れや校内の清掃のローテーションを組む。



それも大体終わったところで、唯世がいつぞや見たような表情で俯いてしまった。





「唯世、どうした?」

「いや、その……ほら、昨日柊さんが『ガーディアンに入りたい』って言ってたじゃない?」

「あー、うん。言ってたね」

「今更ながらに思ったんだけど」



唯世は不安な表情のまま、お菓子とお茶を頂きつつ楽しそうにしているリインとややを見る。



「僕達卒業したら、ガーディアン大丈夫かな」

「……唯世くん、またそこ心配になったんだ。でもほら。リインちゃんもこっちに残る事になったし、まだ大丈夫じゃ」

「辺里君、それに考えてもみてよ。再来年なんて現メンバーは誰も居なくなるんだから……でもやっぱり不安かも」

「そうなのよね。最近リイン、ややに感化されてきてるし」



全員がクッキーを食べながら昨日見たドラマの話をしている二人を見る。



「でもでも、あの展開びっくりだよねー。まさかお姉さんが好きだったなんてー」

「最近のドラマは発達してるですよねー。まさか月9でストロベリーパニックするとは思ってなかったですよ」

「……ふむ、このクッキーは美味しいな。よし、もう一枚だ」



なお、その下ではヒカリが黙々と同じようにクッキーにかじりついていた。



≪まぁリインさんは機動六課でもスバルさん達の上司でしたから、新人教育くらいは出来るでしょうけど≫

≪でもでも、やっぱり不安なの。ほら、リインちゃんがガーディアンから外れる可能性だってあるの≫

「あ、そっか。リインちゃんはしゅごたまとか生まれてるわけじゃないし……いや、でも今更だしなぁ」

「あむ、甘い。もしかしたらメンバー全員総入れ替えって可能性もあるよ?」





まぁさ、ややもマリアージュ事件やイースターとの戦いでかなり成長しているとは思うのよ。

戦闘能力どうこうではなくて、精神的にだよね。ややが単なる赤ちゃんキャラじゃないってのは読者も知ってると思う。

だけど普段のややは……甘えん坊の末っ子キャラだしなぁ。しかもリインも段々そういうの入って来てるし。



いや、その前にガーディアンの仕事はさっきも言ったようにかなり忙しい。二人だけとかなったら無理だって。

唯世の不安はそういう部分も含まれているのは理解出来たので、僕達は困りつつ顔を見合わせてしまう。

でもそんな時、ロイヤルガーデンの入り口に人の気配が二つ生まれた。僕は咄嗟にそちらを見ると、そこには二つの人影。





「やぁ、ちょっといいかな。大事なお話があるんだ」

『理事長(司さん)っ!』



リインとややもそちらを見て、僕達はほぼ同時に席から立ち上がった。その原因は司さんの足元に居る子ども。

ネクタイは蝶ネクタイ型だけど、聖夜小の制服を着ている金髪の男の子が居る。それも僕達がすっごい見覚えのある子。



「久しぶりだな、ガーディアン」

『ひかる(君)っ!?』



そこに居たのは一之宮ひかる。イースターの御前でラスボスだった男の子。

もちろんこの学校の生徒ではないので、僕達が揃って驚きの声をあげたのも当然と言える。



「司さん……なんでひかるがここに? てーかその格好は」

「彼、一之宮ひかる君は1年に転入してきたんだよ。
というか蒼凪君、君は一之宮専務からそこは聞いてないのかい?」



この人、さり気無くなんかとんでもない事を言い出した。それでびっくりしてしまう。

先日僕が星名――実は結婚してなくて一之宮だったあのおっちゃんとの会議に参加した事知ってたんかい。



「え、恭文ひかる君が聖夜小に来る事知ってたのっ!? それならなんでやや達に教えなかったのかなー!」

「僕も知らなかったよ。ただ一之宮から『普通の子どもとして過ごさせてあげたい』って聞いてただけで」

「つまりその結果聖夜小に転校してくるとは知らなかったのね。……でもまた」

「まぁ僕としてもわざわざ学校に通う意味はないように感じる。
この学校のレベルなら既に高学年の段階まで学習済みだ」



どうやら勉強するためにここに来る意味が本気で無いと思ってるらしい。だからひかるは大きくため息を吐いた。



「ただ庶民の生活というのにも触れておく必要はあるのでな。
企業経営者として学ぶべき事がこの学校の中にはあると思う。まぁよろしく頼む」

「……ムカつくですね。思いっきり上から目線ですし」

「ややも同感。なんかこう……ムカーってしないっ!?」

「ごめん、あたしもだ。てゆうかひかる君どんだけ頭いいわけ?」



後日、ここの辺りを確かめて今拳を握り締めて怒りの炎を出している三人は大いにヘコんだ。

というかね、しょうがない。ひかるのこれまでを考えたらこれはしょうがない。



「ちょっと待って。ひかる、あなた企業経営者って……御前は続けるの?」

「あぁ。イースターは今までとは違う形に変革しようとしている。
僕と一之宮専務はその手綱取りをしなければならない」



りまが眉をひそめるのは、ここでひかるが自分の祖父を役職呼びした事。

でもまぁ、これもまたしょうがない。人間いきなりは変われないもの。



「もちろんイースターの仕事からは引くつもりだが、それを達成するにはもうしばらく時間がかかる」

「それが終わるまではって事ね」

「そういう事だ。なにより今まで勉強してきた事を全て捨てるのも愚かだしな。
将来的にはイースターとは別の会社でも作るつもりだ。そのための準備もしている」

「えー! ひかる君また社長やるのっ!? というか今から準備って早過ぎだしー!」

「そんな事はない。僕くらいの年で起業している人間は世界には沢山居る」





驚きながらあむとややが僕や唯世の方を見る。僕達はひかるの方を見ながら頷いた。

世の中には大人では思いつかない柔軟な発想を武器に起業して、かなり稼いでる子どもも居るのよ。

もちろんいきなり大会社なんて作れるわけないから、みんな個人経営からのスタートだけどね。



日本だとそういう話はお国柄さっぱりだけど、海外とかだとそれなりに実例はある。



だからひかるがイースターから手を引いてそうしようとしても、別におかしい事ではないのよ。





「でも司さん、なんでひかるをわざわざここに?」

「あぁ、簡単だよ。一つは改めての紹介。いきなりだと君達もびっくりしちゃうだろうしね。それでもう一つは」



司さんはいつものように微笑みながら、自分の傍らに居るひかるに視線を向ける。



「彼をガーディアン見習いにしたらどうかなーと思ってね」

『ガーディアン見習い?』

「そう。現体制のガーディアンは、6年生組が卒業したら現状だとリインさんと結木さんの二人になるわけでしょ?」



ちょうどその話をして将来を憂いていたので、僕達は力強く頷く。



「それだと後を託す君達も色々不安が募ってるみたいだしね。唯世君にも相談されてて僕も少し考えてたんだよ」

「理事長、だから彼をガーディアン見習いにして、僕達が居る内に後輩を育てていこうと?」

「そういう事。まだひかる君はたまごも生まれてないけど、前例はないわけじゃない。だったらというわけ」



さてさて、ここでおさらい。僕とリインは聖夜小に来た当初、ガーディアンと深く関わるためにそういう扱いにしてもらった。

それでガーディアンとの距離が縮んでも問題ないようにしたのよ。次期ガーディアン候補になったーとか言ってさ。



「……確かに一之宮君なら」



唯世がなんでか嬉しそうに呟いた言葉を聞いて、現6年生は揃って顔を見合わせる。



「イースターのトップなわけだし、ガーディアンの事務作業もてきぱきこなしそうだよね」

「というか、これ以上ないくらいの人材じゃん?」

「僕達が反対する理由、ないよね」

「あるはずがないわね」



上級生五人は頷き合い、素早く椅子から立ち上がりつつひかるに迫る。そして右手を伸ばした。



『第一印象から決めてましたっ! 来年のガーディアンをよろしくお願いしますっ!』

「……とりあえずそこの二人に任せると不安があったのはよく分かった。よし、任された」

「ちょっと待ってー! やや達すっごいバカにされた気がするんだけどー!」

「ですですー! リイン達だって頑張れるですよっ!?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪というわけで、早速ひかる君に聖夜小を案内する事にしたのー≫

「ですが結木さん達、不満そうですね」

「しょうがないだろう。だが僕達の気持ちも察して欲しい。さすがに不安なんだ」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、早速僕達はグラウンドに来ました。というか、なぎひこが先導取りました。



なぎひこはどうしてかバスケットボールを右手に持って……いったいどこから持ってきた。





「ここがグラウンドだよ」

「知っている。スポーツという無価値」



ひかるはそこまで言うと、首を横に振って改めてグラウンドを見渡した。



「とにかくスポーツをするための無駄に広い場所だ」

「……そうだよ。じゃあバスケットは」

「ルールだけなら。イースターがスポンサーを務めるプロチームの査察のために勉強した。
ルールが分からなければしっかりとした査定も出来ないからな」





その返事に満足したらしくなぎひこは笑って、一旦ボールを置いた上で羽織っているケープと上着を空高く放り投げた。

それから下のYシャツの袖を肘くらいの位置まで袖まくりしてから、ひかるをその場に置いてドリブル開始。

ひかるはその様子を驚いたように目を見開いて見た。その間になぎひこは近くのゴールに肉薄。



ゴール下まで来ると一気に跳躍。2メートル以上あるゴールドリングへとボールを持ったまま手を伸ばす。

ううん、片手でボールをリングの中目がけて放り投げた。アレはレイアップシュートだね。

そしてボールは曲線を描いてゴールの中に入る。なぎひこは着地して、自分より先に落ちて来たボールを拾う。



そのボールを自分の事をジッと見ていたひかるに向かって、あくまでも優しく放り投げる。



ひかるはそれを両手でキャッチ。なぎひこはそこから腰を落とし両手を広げて、ガード体勢に入った。





「おいでよっ! 1on1だっ!」





ひかるはなぎひことボールを見比べて、左手でボールをドリブルさせつつなぎひこが守るゴールに向かう。

ただ、その速度が非常に遅い。視線がなぎひことボールを交互に見比べて泳いでいるようにも見える。

そんな状態でバカ正直に近づくものだから、なぎひこはひかるに鋭く踏み込んで右手でボールを奪って交差。



ひかるの後ろを取る形で振り返りつつ、今度はなぎひこがドリブル開始。



ひかるはというと、その場でたたらを踏みつつも停止して、なぎひこの方に振り返った。





「へー、センスはあるみたいだな」

「それじゃあ、今度はこっちから行くよ」





……その後の展開はもう説明するまでもない。ひかるは息を切らせながらも必死になぎひこに食い下がっていく。

でもなぎひこはそれじゃあ止められない。ひかるのガードを難なくかわして次々とシュートを打つ。

当然ひかるにはそれを止める事が出来ないから、ゴールリングに向かって飛ぶボールを目で追いかけるだけ。



外れる事を期待してゴールしたまで言ってリバウンドしようともするけど、シュートは全てゴールの中に入る。





「……1年生と6年生じゃ、勝負にならないのに」

「りま、それ違うよ。例えひかるが6年生でも、なぎひこの相手にならない」

「どういう事?」



そのボールをひかるが持って攻守交替。今度はなぎひこを迂回するように右に回り込んだ。

けど1on1では直接対決はどうやっても避けられないから、結局対峙して……あー、ボール奪われた。



「ひかるの運動能力が低いんだよ。ドリブルしてる時とかもなぎひことボールを交互に見てるし」

「そう言えば……というより、なんだか必死よね」

「察するにアイツはこの手の事をした事がないのではないのか? おそらくはなぎひこも気づいていると思う」



ヒカリの言う通りだと思う。というかね、自分の過去の姿と丸かぶりだよ。僕だって同じ感じだったし。

もちろん横馬みたいに運動音痴っていうのとはまた違う。てゆうか、御前やってたらそりゃあこんな事する余裕ないよなぁ。



「え、それの何がだめなの? ほら、ボール落としたらだめじゃん」

「……あむちゃん、どうしてそういう事言っちゃうのかな」



ランが呆れながらため息を吐くと、あむが首を傾げながら同じようにしていたキャンディーズの方を見る。



「ドリブルは目でいちいち確かめなくても自然と出来るようにならなくちゃいけないの。
夏休みになのはさんと一緒になんであんなにドリブルやらされたと思ってたの?」

「そうだよー。いちいちボール見てたらその間に相手プレイヤーに近づかれてボール取られちゃうよー」

「……い、いやっ! 知ってたしっ! あたしそれすっごい知ってたからっ! ちょっとボケただけだしっ!」

『へー』





なんて話している間になぎひこがドリブルして足を止めてる。

ひかるがボールを奪われてから咄嗟にディフェンスに回り込んだせいだね。

そのせいで今までみたいに速攻が出来なかったっぽい。……なるほど。



学習能力というか、分析力はかなり高いんだよね。だからボールが奪われると思った瞬間にはもう身体が動いてた。





「と、とにかく……それじゃあひかる君相手にならないじゃん。今まで一度もボール取れないし」

「大丈夫、あむよりは取れる確率高いから」

「恭文、アンタそれどういう意味っ!? これでもあたしだって鍛えてるんだからっ!」

「簡単だよ」





再び自分の背後を狙って進軍してくるなぎひこに向かって、ひかるは全速力で駆け出す。



なぎひこはそれを見て身体を捻りながら左に避けようとした。でも、次の瞬間ひかるの足が止まる。



一瞬だけ左足を前に突き出して自分の動きを止めてから、回避行動に出ているなぎひこに飛び込む。





「ひかるはおのれよりずっと頭がいい」





そうして自分の進行方向を軌道修正したのよ。なぎひこはそれに驚きながらも回避を続ける。

でもひかるはなぎひこがどれくらいまで動くかも読み切っていたらしく、なぎひこはひかるから逃げ切れない。

なぎひこが回避行動を終了して動きが止まったその瞬間、ひかるの伸ばした右手が僅かにボールに触れる。



そしてボールはなぎひこの後ろに弾き飛ばされた。ひかるはすぐさまボールを追いかけ、なんとかそれを拾い上げる。



なぎひこは半身で振り返りつつ、息を切らせながらもまたバウンドするひかるを楽し気に見ていた。





「わわ、ひかる君なぎーからボール取ちゃったっ!」

「うーん、今のは見事ですね」

「な、なんでっ!? なんか今一瞬めっちゃ動きがよくなったんだけどっ!」

「……なるほど。藤咲君の動きを読んだんだね。それでどうやったら自分でボールを取れるか計算した」





唯世に頷きつつ僕達は改めて二人を見る。なぎひこは……もうやるつもりはないみたい。



どういう狙いがあるにしても、その辺りで手応えみたいなのは得られたっぽいね。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「へぇ……やっぱやるじゃないか」

「確かに」





僕がひかる君のガードを回避した直後を狙って来られた。そのために左足で一時停止したんだよ。

そうやって自分の動きにディレイをかけて、僕がどちらにどういう動き方で回避するかを見極めた。

その上で一か八かの飛び込みって感じかな。なお、取れる公算はかなり大きかったと思う。



だって僕、今までひかる君をすれすれで避けるようにしてたしさ。あとは突撃スピードさえ出せればかなりの確率だよ。





「ひかる君、身体を動かすってのも悪くないでしょ?」





ひかる君は荒く息を吐きながら、自分の持っているボールと僕を見比べる。それで表情は、変わらない。

だけど悪い感じがするわけじゃないらしい。顔を真っ赤にしたひかる君の表情は、どこか明るい。

どうやら本当の意味でスポーツが無価値かどうか、ちょっと分かったみたい。……まぁ、先輩だしね。



さっき『無価値』って言葉を自分で否定してたから、実際どうかを確かめてもらおうかなーってさ。

きっとこの子にはそういう風に自分で確かめていく時間が必要なんだよ。あむちゃん達に言われたからそうするんじゃダメ。

それじゃあ今までとなにも変わらない。自分の目で見て、身体で感じて、少しずつそれが本当かどうかを確かめていく。



そういう時間を作る手伝いが少しでも出来たらいいなぁと……まぁ先輩風吹かせちゃったりするわけで。なんだか恥ずかしいけどね。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……蒼凪君、あむちゃん、ひかる君の事は任せちゃっていいかな」

「え?」

「ほら、花壇の水やりがまだだから。僕達ちょっと行って来ないと」



あー、そう言えばそうだった。何気に花壇関係は最近忙しいんだよなぁ。

新しい花壇作ったからそこの種まきもそろそろしないとダメだし。



「分かった。じゃあ他の事務作業は僕達で進めとくよ。ついでにひかるにガーディアンの業務内容も詳しく教えとく」

「お願い。じゃあ結木さん、真城さん、リインさん」

「「はーい」」

「二人とも、また後でね」



三人はそのままこの場から離れていく。僕達はそれを見送ってから顔を見合わせた。



「でも恭文、ひかる君にガーディアンの業務教えるって早くない? ほら、来たばっかなのに」

「もちろん概要だけだよ。細かいとこまではやらせない。というか、その前にひかるは自分のクラスに馴染まないと」



疑問顔のあむからグラウンドの方に視線を移す。ひかるは息を整えている最中で……やっぱ体力はないらしい。



「これでガーディアンの事ばっかやらせても、同級生と距離出来ちゃうでしょ。さすがにそれはなぁ」

「それもそうだね。じゃあそこの辺りはあたしに任せてよ」

「……出来るの? だってジョーカーで仕事関係はほぼサボりまくりで」

「そんな事ないしっ! てゆうか、アンタ来てから手伝うようになってるんだから問題ないしっ!」

キャー!



あむの反論をかき消すような叫びが聴こえて来た。これは複数の女子の声だね。

僕とあむは顔を見合わせる。それで自然としゅごキャラーズを見てしまうのがまた悲しい。



「ヤスフミ、あむ、×たまの気配がするぞっ!」

「……恭文、いくよっ!」

「うん」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



これでも×たま達との付き合いは長い。だからまぁ、子どもみたいに自由だなーと思うんだ。



だから授業中にかばんから×たまが居なくなってもおかしくはないんだ。なので現在、学校中を探しまわってます。



とりあえず植え込みを重点的に。ほら、犯人は犯罪現場に戻るーって刑事ドラマで言ってたし。





「うぅー、どこ行っちゃったのー? あれほど出るなーって言ったのにー」

キャー!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ひかるにその場で待つように言った上で、三人でしゅごキャラーズの案内で来たのは……用具室か。



体育とかで使うボールや器具を入れておくアレですよアレ。妙に埃っぽかったりして大変なアレ。



僕達は用具室の入り口近くまで来た。用具室の中には、確かに×たまが一個浮いていた。





『ムリっ!』



その×たまが声を上げると、金属製のかごの中に入っていたバスケットやバレー、サッカーのボールが浮かび上がる。

そしてそのボール達は何かのマシーンで打ち出されたかのように、中に入ろうとしていた僕達を狙って射出された。



「……散開っ!」

≪Riese FormU≫



声をあげると同時にリーゼフォームに変身。僕は右に、あむとなぎひこは左に跳ぶ。

そうしてボールを避けつつ入り口の左右の壁に身を隠す。ボールは……出て来ないか。



「ねぇ、どうしてこんな事するのかなっ!」

『ムリムリっ!』



あむの声に答えるような叫びが聴こえると、僕達が背にしている壁に振動が感じられた。

……ボールを壁に叩きつけてるのか。さすがにそれで崩すのとかは無理だろうに。



「よし、こうなったら」

「恭文君、何か方法が?」

今からこの建物ぶち壊すから。それに巻き込まれたくなかったら出てこい

『ムリっ!?』

「「それはだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」」



僕が首を傾げたその瞬間、なんでか入り口から凄い勢いでボールが先程よりも凄い勢いで射出されるようになった。



「アンタ絶対バカじゃんっ!? てゆうか、そんな事したらあの子まで壊れちゃうしっ!」

「いや、だからそれが嫌なら出てこいって言ってるのよ。大丈夫、前にやった事あるから」

「あるのっ!? とにかくそれはだめっ! ここは普通に説得して落ち着かせようよっ!」

「……ボールが嫌いだって言ってます」



その声は僕の後ろから聴こえて来た。それで思わず後ろを振り向くと、なんでか僕のマントを掴んでいる女の子が居た。



「りっかっ!?」

≪あなた、どうしてここに居るんですか≫

≪そうなのそうなのっ! 気配とかそういうのガン無視だったのっ!≫

「あの子、スポーツしてて……だけどレギュラーになれなくて」



それでこっちの言葉も無視……いや、待て。そういやりっかは。



「だからボールなんて嫌いで、ボールなんて無くなってしまえばいいって」



やっぱり。この子、本当に×たまの言葉が分かるんだ。とにかく原因は分かった。

なのであむとなぎひこの方に視線を向けると、二人は力強く頷いてた。



「恭文、悪いけど」

「分かってる」



僕はアルトの鯉口を左手で掴んで、突入口を開くためにまず突っ込もうとする。でも、動けない。……僕は視線を後ろに向けた。



「わーー、このマントも刀も前に思ったけどカッコ良いー。
先輩先輩、あたしにも『てっきいっせん』って出来ますか?」



りっかがマントとアルトの鞘を力強く掴んで離してくれない。てーか目をキラキラさせて……またかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!



「りっか、お願いだから離してっ! ほら、今は×たま浄化が先っ!」

「どうしたら出来ますかー!? 教えて教えてー!」

「……柊さん、自由ですね」

「言ってる場合かよっ! りっか、マジでヤスフミを離せっ!
ほら、出来るだろっ!? 拳を開く事も強さなんだよっ!」

「ショウタロス、言っても無駄だ。コイツは私達の話など聞いてない」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……なぎひこ」

「恭文君はその、無理だね。僕達で頑張ろうか」

「うん」





恭文、ごめん。それ助けようとしたら確実にあたし達も巻き込まれるから……無視するわ。

とにかく今のところ。ボールが用具室の中から飛ばされるのは止まってる。

でも、あたし達が飛び出した瞬間にまたあれやられちゃうのは目に見えてる。



この場合……やっぱりあの子を落ち着かせていくしかないか。うし、早速行動開始だ。





「ラン、いくよ」

「了解っ!」

「あたしのこころ、アン」



『解錠』アンロック



「ロックッ!」



こころの鍵を開け放つと、あたしの身体が光に包まれる。そしてその光が弾けた瞬間、あたしの姿はいつも通りなアレに変わってた。



【「キャラなりっ! アミュレットハートッ!」】



キャラなりしたら早速両手を前に伸ばす。するとピンク色のボンボンが手の中に現れた。

一度深呼吸して気持ちを固めて、あたしは入り口に躍り出た。



『ムリっ!』



そしてまたバスケットボール達が襲って来る。あたしはそれに構わずにボンボンを前にかざして両足を踏ん張る。

あたしの前にピンク色のエネルギーの障壁が現れて、ボールを防いで弾き返す。



『ムリムリっ!? ……ムリー!』


それでも×たまは構わずにあたしにボールを叩きつけてくる。

障壁に守られててもそれなりの衝撃は伝わってくるので、それに負けないように更に腰に力を入れる。



「レギュラーになる事だけが目的だったのっ!?」

『ムリッ!?』

「本当はスポーツが――身体を動かす事が好きだったんじゃないのかなっ!」



あたしの声が届いたのか、×たまの周囲に浮いていたボール達が次々と落ちていく。

同時にあたしに対してのボール攻撃も停止して、あたしは×たまを見ながら両手を下ろした。



「きっと運動部に入った時君は、目をキラキラさせてたはずだよ。
レギュラーになれるかどうかじゃなくて、その頃のキラキラを思い出して?」

『……ム』



×たまはゆっくりと俯きながら、あたしから遠ざかって壁際に後ずさりしていく。

あたしは安心させるように右手で×たまを指差し、微笑んだ。



「……ネガティブハートに、ロックオンッ!」



胸元でピンク色にハンプティ・ロックが輝き出す。あたしは両手でハートマークを作って狙いを定めた。



「オープンハートッ!」





あたしの両手の中をハンプティ・ロックから生まれた光が通り抜けて、ハート型の奔流に変わる。



それは×たまを飲み込んで、部屋の中を光で満たす。その中で×たまの×は消えて、元の白い羽の柄がたまごに戻ってきた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あむ先輩の『おーぷんはーと』って言うのであの子は浄化されて、宿主のとこに戻って来た。



これで一安心ーって思ったら恭文先輩が鬼の形相であたしを叱って……うぅ、理不尽だー。





「うぅ、叱られたー。マントと刀カッコ良いって言っただけなのにー」

「ほう、どうやら反省してないらしいね。じゃあティアナ方式いってみる?」

「わわわわわわあっ! 反省してまーすっ! だからげんこつやめてー!」



拳をボキボキ鳴らしながらあたしに近づいてきた恭文先輩を避けるように、あたしはあむ先輩の後ろに隠れた。



「あー、大丈夫だって。恭文って基本的に戦ってる最中に邪魔されるのが嫌いなだけだから」

「そうなんですか?」

「そうだよー。あむちゃんも前にやって撃たれそうになった事あるよねー」

「え、それってだめなんじゃっ!」

「まぁほら、それで怪我とか周りの人にさせちゃう場合もあるじゃん?
あたしの時もそれだったし、さっきだってボールどんどん投げつけてきたし」



さっきのアレを思い出して、あたしはあむ先輩を見上げながら頷いた。



「恭文にとっての邪魔っていうのは、そういうの止めるのを『邪魔する』事を言うの。
壁に隠れてたから大丈夫だったけど、そうじゃなかったらりっかも恭文もボールぶつけられたよね」

「……あ」



あたしは驚きながらまた恭文先輩を見た。恭文先輩、すっごく呆れた顔であたしの事見てた。

 

「そうだよ。これだって昨日の猫の事と同じだよ。おのれは状況判断が甘過ぎで考えなさ過ぎ」

「その……ごめんなさい」

「分かればよろしい」





とりあえずその、恭文先輩の邪魔はしちゃいけないみたい。気をつけよーっと。



それであむ先輩の後ろから出てくると、とたとたと足音が左側から――グラウンドの方から響いた。



そちらを見ると、息を切らせながらあたしと同い年くらいの男の子が走ってきてた。





「「ひかる君っ!?」」



金色の髪のその子はあむ先輩達の知り合いっぽくて、三人とも驚いた顔をした。

その子はあむ先輩達の前まで来て、両手を膝の上に置いて背中を丸めながら咳き込み始める。



「ひかる、なんでまた……てーかあーもう、呼吸困難起こしかけてるし」



恭文先輩は心配そうにしながらその子の背中を撫でて……あれ、あたしの時と態度違うような。



「てーかグラウンドで待っててもよかったのに」

「バカを、言うな」



それでもその子は顔を上げて、背を伸ばして恭文先輩を見上げた。



「僕はガーディアン、見習い……だぞ?」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ひかるがイッチョ前にもそんな事を言ったので、僕とあむとなぎひこは三人でひかるをマジマジと見る。



でもその目はやたらと真剣。そんなひかるを見て、あむは表情を崩した。





「……そう」



なぎひこもどことなく嬉しそうで、僕も右手でひかるの頭を軽く撫でてあげた。

その間にひかるは呼吸が大分落ち着いて来たらしく、荒れていた息も規則正しいものに戻っていく。



えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?



いきなり横からでかい声がした。それに驚きながらもその声の方を見ると、こっちにりっかが瞳をキラキラさせながら迫ってくる。



「ガーディアン見習いってなんですかっ!?」

「えっと」



りっかに迫られたあむとなぎひこが僕の方を……って、僕に振るなバカっ!



「なんですかっ!」



あーもう、なんか足音させて僕の方来ちゃったしっ! てーかじりじり迫るなバカっ!



「……将来のガーディアン候補だよ。僕とリインも前はそうだったんだ」

「えー! だったらりっかもなりたいー!」

「いや、ちょっと待ってりっか」



そして僕の制服の一部がりっかの両手に掴まれて、りっかはそれを押したり引いたりする。



「なりたいなりたいー! どんな事でも耐えるからあたしもガーディアン候補にしてくださいっ!」

「だから落ち着けっ!」



まずは右手でりっかの頭頂部にげんこつ。それでりっかはようやく止まってくれた。



「ふぇ……痛いー」

「やかましいっ! 人の制服掴んで揺らすなボケっ! あと、僕やあむになぎひこは許可出来ませんっ!」

「どうしてですかっ!?」

「当たり前でしょうがっ! ガーディアンの人選は司さん――ここの理事長の権限なんだよっ!
つまり僕達がどんなにりっかを見習いにしたくても、理事長がダメって言ったら無理になるのっ!」



りっかの動きが止まった。それで悲しげに瞳に涙を溜めていく。でも僕の服からは手を離してくれない。



「実際ひかる……あー、この子だって理事長が決めた子だもの。だからこの場でりっかがどんだけ騒ごうと無理」

「そんなぁー」

「なので」



僕はりっかは気にせずに、素早く懐から携帯端末を取り出す。



「今から僕が理事長とKチェアの辺里唯世に、りっかのガーディアン見習い入りを相談する」

「えっ!?」

「僕達に出来るのはここまでだよ? 結果までは保証出来ないので」

「やったー!」



りっかは僕の服を掴んだままジャンプも込みでバンザイ。その結果僕の服装は大きく乱れる。



「これであたしもガーディアン見習いだー! わーいわーいっ!」

……だからおのれは人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!





本日二度目のげんこつが入ってりっかがなんでか地面に崩れ落ちた後、僕は服装を正しながらも二人に相談。



その結果は……まぁ唯世はまともだった。あとはこれまでのこのお話での司さんの行動から言わなくても分かると思う。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今日はもう、大変だった。てゆうか今後りっかに振り回されまくると考えるとそれなりに覚悟は決める必要がある。

でもね、思ったわ。あれが普通の子どもなんだーってさ。僕の周りのエリオやキャロとかはスレてるとこあったしなぁ。

基本大人というか目上の思い通りになんてならなくて、だからまぁ昨日みたいに気づかされるところもあると思うのよ。



そんな話を家に帰ってから、リビングで夕飯食べつつみんなにしてた。なお、今日のメニューはカレーライスです。





「そ、それはまた……強烈キャラだね。フェイトさんから昼間聞いてた以上かも」

「もう強烈とかそういうのじゃないですから。私も昨日ちょっと話しましたけど、ほんと無軌道ですし」

「そんな子がガーディアン見習い……恭文さん、大丈夫なのですか?」

「性格どうこう落ち着きのなさどうこうで言うなら全く問題ないよ。むしろそれは理由にならないでしょ」



ディードが不安そうな顔をするので、安心させるように笑いながらご飯を食べる。



「てゆうか、ガーディアンやってて思ったけど子どもって基本それくらいが普通なんだよ。
僕やフェイト、その周囲に居る子どもが少々特殊だったり大人過ぎるだけでさ」

「確かに……私的にはエリオとキャロもりっかちゃんくらい自由だと嬉しかったんだけどな。
というか、私の子育て? そう考えていくと色々失敗してるとこはかなりあるかなと」

「フェイト、安心していいよ。奴らはもう充分自由だから。特にキャロが」



フェイトが落ち込む前にそうフォローを入れると、フェイトは納得したように苦笑い。それでまたカレーを一口。

今日のカレーは大根とサバのカレー。初めて見た時は驚いたけどこれが結構いけるのよ。



「いやー! このカレー美味いっすよねー。あ、おかわりお願いっすー」

「あ、はーい」



シャーリーは立ち上がって、楽しそうな顔してるのから空っぽの皿を受け取った。



「いやぁ、空海君はあいかわらずいい食べっぷりだねー」

「そりゃもう、男っすから」



で、僕の話とか気にせずに空海がご飯を食べているのはしょうがない。

だって今日僕の家にお泊りだし。なので僕も空海は気にせずに話を進める。



「むしろ問題は……魔法の事だよ」

『……あ』

「ひかるはともかく、りっかが中に入るとおいそれとその事喋れないしなぁ」

「ですです。しかもその事が分かったら絶対『あたしも魔法使えるようになりたいー!』って言い出すに決まってるです」



その場合、こっちもそれなりに本気で相手をしなくてはいけないのは今日の事でもはや明白だと思う。あははは、頭痛いなー。



「ただあの子と接する事自体は全然嫌でもなんでもないんだよね。
むしろ子育て前の最終演習と思えばアリだし」

「あー、それはあるかも。てゆうかさ、私もついついエリキャロとかルーテシアやヴィヴィオ基準で考えがちだけど」



ティアナは一旦スプーンを更に置いて、少しおかしそうに笑う。



「ホントに基本低学年くらいはみんなあんな感じよね。私だってそうだったしさ。
もう毎日ただ生きてるだけでも楽しくて、目の前がいつもキラキラしてて」

「なら、そんなりっかさんをガーディアンのみんなやエリオ達と同じラインで見るのは間違ってるですね」

「な、なんというか……勉強になります」





そういう子ども時代や子どもに今ひとつ覚えがないらしいフェイトは少し苦笑しながらカレーをまた一口食べる。



僕も同じようにしつつ、まぁまぁ気長にゆっくりと付き合っていく事にした。絶対に悪い子ではないしね。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



食事が終わってから、自室で装備の整理。ここの辺りは空海のデバイス作成のためだね。

ベッドの上に座りながらフェイトが床であぐらをかく僕を呆れた目で見ているのは気のせいじゃない。

その上にあるのは、どこかの作品で見た事があるようなアイテムの数々。



これ、僕がデバイスマイスターの資格を取ってから勉強がてらに作ったデバイス達なのよ。



空海がやたらお金の事を心配していたので、この僕の練習の成果を活用する事にした。





「……恭文、お前また趣味に走ってんな」

「当然でしょ。デバイスマイスターってのはそういう資格なんだから」

「違うよねっ! マリーさんとかそういう事しないよっ!?」



それはないとツッコミ入れてきたフェイトはそれとして、僕は向かい側の空海を見る。



「まぁデバイスはこれら現状だとジャンク品になっちゃってるアイテム達を使えば最安値で出来上がるよ」

「いや、そりゃありがたいけど……いいのかよ。だってこれお前のだろ」

「そうだぜ。……あ、デカレンジャーの赤いのが持ってた銃もあるな」



ダイチが楽し気にハイブリッドマグナムに近づいていくのを見つつ、僕は頷く。



「いいのよ。元々なんらかの形で再利用しようと思ってたしさ。フレームも僕ならパパっと作り替えられるし」

「あ、そっか。物質変換だな」

「そうそう」

「ヤスフミの能力、こういう時に便利だよね。ヤスフミのブレイクハウトはリサイクルの魔法だから」

「リサイクル?」



空海が首を傾げながらフェイトの方を見る。僕も同じく視線を向けると、フェイトはお腹をさすりながら楽しく笑ってた。



「私達が基本使う魔法ってね、Aというスタート地点からBという結果を出す一方通行なものなの。
例えば修理魔法。破砕している修復物に魔法をかけて、それを修復する。ここまではいい?」

「えっと……あー、はいっす。壊れてるものがスタート地点で、修復が結果っすよね」

「正解。私達の魔法は現状を打破するために必要な結果を出すものを使うのが基本。
射撃が必要なら射撃魔法。砲撃が必要なら砲撃を使うし、斬るのが必要ならそういう魔法を使う」



これは……あー、はやてが最初に会った時にブレイクハウトを見て言ってくれた事か。うんうん、覚えてる。



「でも結果からスタート地点には戻せないの。修復魔法で言うなら、直した物を元の壊れた状態には戻せない。
もし元の状態に戻したいならそれを破砕する結果を出す別の魔法を使わないといけないんだ。つまり全て一方通行」



それが魔法の基本ルールとも言える。使ったら基本は使いっぱなし。それを使う前の状態に戻すのは不可能。

それは間違った使い方をした場合、取り返しがつかない場合もあるという事。そういう危険も魔法は含んでいる。



「ヤスフミのブレイクハウトは、単一の魔法の中でその一方通行同士が繋がり合って、一つの循環が生まれているんだ。
壊れた物を修復する事も出来れば、その逆に破砕する事も出来る。これは次元世界の魔法の中でもかなりレア」



空海は考え込みながらも僕の方を見た。



「……そう言えばお前の物質変換、壊す事も出来るつってたよな。あー、だからリサイクルなのか」

「そうだよ。まぁはやての受け売りだけどね」





フェイトはそこで照れ気味に笑う。……はやて、今と全く同じ事を出会った時に言ってくれたんだ。

『そこに物質として在るなら神様だって殺せる能力』を全く怖くないって……うん、断言してた。

何気に嬉しかったんだよね。もう周囲が凄まじく物騒な魔法だって認識だったから、余計にさ。



そういうのもあるから、色々あったけど友達はやめられないのかも知れないとちょっと思った。





「でもどんなにリサイクルしていても、使った以上は一方通行の結果が出るのは変わらない。それは空海君だって同じだよ」



フェイトが少し真剣なトーンでそう言うと、空海の視線が再びフェイトに移った。



「魔法以外の事でもそうだけど、何か行動すれば結果が必ず出る。その結果が望まないものでも、必ず。
……特に魔法は本当に強い力だもの。今の空海君でも、大量虐殺くらいは軽く出来る」

「ちょっと待てよっ! 空海はそんな事しないぜっ!」

「あー、ダイチ落ち着け」



空海は自分の前に飛び上がって来たダイチを、左手で優しく撫でる。



「ようするにそれくらいのパワーで一方通行するって事っすよね。
それで俺がしっかりしてないと、間違った方向にそうなりやすい」

「そうだよ。もちろん空海君がそんな事する子じゃないのは、私も知ってる。だけど一応は言っておきたいんだ。
……何かの映画のセリフじゃないけど、強い力を行使するのにはそれと同じくらいの責任が伴う。そこは忘れないで」

「……はいっす」



空海はそれだけしか言わなかったけど、それでもフェイト的には満足だったらしく一気に表情を緩めた。



「うん、よろしい。……それでご家族にはいつお話するの?」

「明日の放課後っすね。もううちの兄ちゃんズと親には話してるっす」

「そっか。なら私も行くよ」

「「あ、それはありがた……はぁっ!?」」



思わず空海と二人して子をハモらせながらフェイトを見ると、フェイトは当然と言う顔で胸を張った。



「さすがにヤスフミだけだと向こうも驚いちゃうしね。私こっちでも大人で通ってるし、きっと必要だよ」

「そ、それはありがたいんっすけど……いいんっすか? うち男臭いっすけど」

「そうだよフェイト、何気に空海の兄ズはフェイトやティアナ狙ったりしてきてるんだから」

「そ、それは心配してくれてるのかな」



フェイトがなんでか僕達を見て困った笑いを浮かべるけど、僕と空海はかなりマジ。

……前に顔合わせてもらった時も相当だったしなぁ。多少威圧して押さえ込んだけど不安は残る。



「でもそれなら大丈夫だよ。だって私には」



僕の方を見てからフェイトは、自信を持って笑った。



「世界一素敵で強い旦那様が一緒だもの。ね、旦那様?」

「……了解。奥さんも子どもも一緒に守るよ。ありったけでね」

「うん、お願いね」





その後、フェイトと見つめ合いながらニコニコしてしまって……幸せだなー。



とにもかくにもガーディアン会議もちょっとお休みな明日、僕達は早速事情説明第一弾を行う事にした。



……うん、第一弾なんだよ。あむとりまも何気に魔法興味あるっぽいし、下手したら第三弾まで続く。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで翌日、うちに海童・集水・雲海・れんと達兄ちゃんズと恭文とフェイトさんとで会議だ。

うちのリビングのテーブルで七人近くが固まって話す……いや、話す内容が内容だったんで嫌でも重くなる。

あ、うちの親は緊急の仕事が入っちまって遅くなるんだ。なのでまぁ、後で俺から直に話す事にした。



フェイトさん達引き止めちまうと、午前様になるからな。まずは兄ちゃん達という事になった。

そこの辺りも踏まえた上で魔法の事やら恭文とフェイトさんの素性や次元世界の事とかも詳しく説明。

兄ちゃん達はまず、恭文がマジな大人だというのを全く信じなかった。しかもフェイトさん奥さんってのもだ。



そこの辺りから色々話がややこしくなったが、とにかくあらかたの事情を説明した。





「……とにかく、まず大事なところなのでもう一つ言っておきます」





恭文とフェイトさんが若干顔赤いのは、まぁ……察してくれ。

兄ちゃんズが『夫婦だったらキスくらい出来るだろ』って言ったせいなんだ。

そのために二人がどういう行動を取ったかも、察してくれ。



俺とかは夏休みのあれこれで慣れてはいるが、兄ちゃん達にとっては刺激が大きかったらしい。



現に海童兄ちゃんは居心地悪そうに視線逸らしてるしよ。れんと兄ちゃんに関しては泣いた。





「現段階で空海の魔法資質は眠ったままです。空海自身に魔法資質があるって自覚がないから、使う事は出来ない。
……あー、ここは空海の意識の話だけじゃなくて、身体の問題ですね。僕もそうだったんですけど、外からそういうハッパかけないと」

「空海は君やフェイトさんみたいに魔法が使えないって事か?」



雲海兄ちゃんの言葉に頷きつつ、恭文は右手を上げて人差し指をビッと立てる。それで自分の指先に魔力光を灯した。



「それ自体は僕達でも出来るんですけど、さすがに家族に無許可でそれはちょいアウトですから」



俺としては早く魔法が使ってみたかったんだが、ここでそれやると話がこじれるかも知れないんでそうしてたんだよ。

あ、日奈森と真城に関しても同じだな。魔導師組としては家族の理解を得られた上でという事っぽい。



「ここの辺りはさっきも説明した時空管理局関連ですね。スカウトがもう凄い勢いで行われてるんで」

≪個人資質に頼り切った能力を武力に使ってる分、その資質を持った人間を欲しがってるんですよ≫

「まぁその、恥を晒すようですけど私の実家の母がいわゆるスカウト魔なんです。
そのせいでかなりの人にご迷惑おかけしたりもしてたので、まずは」

「俺達にと」



集水兄ちゃんがフェイトさん達から俺の方に視線を移した。



「じゃあ空海をその管理局ってとこに入れたいから俺達に話したわけじゃないんですね」

「あー、それはないですね。まぁその、僕とフェイトは魔法で殺し合いもしてるんですよ」



兄ちゃんズが驚きながら目を開いて恭文の事を見る。それは顔逸らしてた海童兄ちゃん達も同じだ。

それはフェイトさんと俺もだ。でも恭文は俺達の視線なんて気にせずに、真剣な顔のまま兄ちゃんズを見ていた。



「……つまりそういう事です。空海が回復魔法とかそういう支援系の能力覚えて後ろに下がって仕事するならまだいい。
でもそうじゃない限りは、必ず前線に出る事になります。さっきも言ったように魔導師が管理局の戦力ですから」

≪もちろん魔法は非殺傷設定と言って、相手を殺す事なく鎮圧する能力もあります。
でもそれを相手が同じように使うという保証は0です。それでさすがに勧誘は無理ですよ≫

「家族の理解が無しなら余計にそうなるね。……もちろんそれで必ず理解して欲しいなんて言うつもりない。
だからまぁ、空海が本気で魔法勉強したいなら局の事抜きで出来るだけ力になりますって話をしたかったんです」



恭文はそこで表情を崩して苦笑して、隣に居る俺の方を見る。



「年は離れてるけど、友達ですから。それに理由はどうあれ僕やフェイトがこの街に来た事でコレですし」

「……言いたい事は分かった。おい空海」



海童兄ちゃんは両腕を組みながら、俺の方を険しい目つきで見てきた。



「この事を親父とおふくろにもしっかり話す前に一つ確認だ。お前はどうしたい」



あー、うん。そう来るよな。だって俺、さっきからずっと黙りっ放しだしよ。

魔法や次元世界の事、しょうがないとは言え恭文とフェイトさんに説明任せっきりになってたしなぁ。



「まず俺は……正直局に入るなんて今は考えられねぇ。だけど魔法は勉強したいんだ。
さっきも説明したように、そういうのをスポーツとしてやってるみたいだから、そっち方向でな」

「なんでだ。お前の友達が今話してくれた通り、簡単に人を殺せる力だぞ。ガキが持つもんじゃねぇ」

「知ってるさ。俺は、ずっとコイツやフェイトさんの背中見てたからよ」



戦ってる背中を、力を振るう強さをずっと見てきた。だから言われるまでもなく知ってるさ。

恭文とフェイトさん、ティアナさん達がめちゃくちゃ強いってのはさ。



「その背中に守られた事もあって、同時に憧れて……だから、抑えられねぇんだ」



右手を胸元まで上げて、手の平を見る。その手は軽く震えてたりした。



「確かにデカい力だ。正直俺なんかが持っていいのかって震えたりもする。
だけどこのまま知らなかった事にしてその力から逃げて、本当にいいのかとも考えちまうんだ」

「逃げか」

「あぁ。俺は力から逃げる前に、怖いのや苦しいのも含めて……もっともっと自分の力を知りたくなった。それで俺は」



それでもその震えごと握り締めるように、その手を拳にする。その上で兄ちゃんズを見て笑ってやった。



「俺はもう守られるだけじゃない。大事な友達や世話になってる人達を守れる自分に変わりたい。
でもそれは、力があるから強い俺じゃない。そんなんじゃダメなんだ」



そうだ、俺はそんな俺になりたいんじゃない。俺が魔法って力と逃げずに向き合いたいのは、その力に……勝つためだ。



「俺は恭文やフェイトさん達みたいに、自分の力に絶対に負けない強い自分になりたい。
そのために魔法の事を、自分の力をもっと知りたい。だから……頼む」



俺は両手をテーブルについて、頭をさげる。すると恭文とフェイトさんまで同じように……心の内で二人にも頭を下げた。



「あぁもう、やめろやめろっ! てーかチビも姉ちゃんも頭上げろっ!
こんなバカのために下げる必要ないだろっ! ……とにかく、俺は許可出来ない」



海童兄ちゃんの言葉に俺達は揃って頭を上げた。ただ海童兄ちゃんは言葉とは裏腹に、左手で困ったように頭をかいてた。



「というより、出来るわけがないだろ。まだ親父達に話してないんだからな。
あとで俺達も一緒に話してやるから、頭下げるのはそれまでとっとけ」

「兄ちゃん……それじゃあ」

「だがよ空海、覚悟は決めとけ」



兄ちゃんは頭から手を離して、組み直した上で俺を睨みつけた。



「お前がヘタな事したら、お前のためにここまでしてくれたチビと姉ちゃん達の顔を潰す事になる。
……お前が自分の力に負けるってのは、そういう事だ。それでも、やるのか?」

「やるさ。それで俺は、もっともっと強くなる。今よりもっとデカい男になる」





俺はその視線に怯えずに強くハッキリと言い切った。そうしたら海童兄ちゃんは……笑った。

その後、恭文とフェイトさんは家に戻っていった。気にはしてたが、ここは兄ちゃんズが大丈夫だと背中を押してた。

さすがに午前様に妊婦付き合わせるわけにもいかないしなぁ。……あぁ、午前様だろうな。



そんな中付き合ってくれようとしてる兄ちゃんズに感謝しつつ、俺は改めて海童兄ちゃんの言う『覚悟』を決めた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



空海の家に波乱を呼びこむだけ呼び込んだんじゃないかと気にしつつ、僕達は家路を急ぐ。



というか、帰り道で星を見上げながら二人でデート? 手を繋いで、のんびりしながら歩道を歩いて行く。





「ねぇヤスフミ、空海君のお兄さん達って素敵だよね」

「うん」



ここで『余所見禁止』と言うほど僕は空気が読めないわけじゃない。

フェイトは人間的に素敵って言ってるのはすぐに分かった。



「ほら、海童さん以外のお兄さん達も、海童さんと同じくって感じだったし。
……やっぱりお兄ちゃんって強いのかな。何気にクロノもそういうタイプだし」

「あー、そうだね。てゆうかさ、僕は海童さん達見習いたいわ」

「りっかちゃんとひかる君の事?」

「まぁね」



何気にお兄さんキャラやる事になるからなぁ。二人とも歴代ガーディアンに負けず劣らずキャラ濃いし、そこは色々考えるのよ。



「もちろん僕達の子どもの事も」



言いかけて僕は苦笑しつつ首を横に振った。



「ううん、子ども達も……だね」

「うん、そうだよ」



あのね、昨日フェイトが昼間ディードとシャーリーと検診に行った時に分かった事があるんだ。

どうもお腹に居る僕とフェイトの子ども……双子っぽいの。つまりその、僕達一気に二人の子持ち。



「でもここまで気づかないものなんだね」

「そうだね。私もびっくりだよ。だけどこうなると、余計に旦那様の力に期待しちゃうかな」



僕の隣を歩くフェイトは右手でお腹を撫でつつ、楽し気に笑う。



「だって双子の子育ては経験済みだもの」

「まぁね。……かなり大変だよ? 授乳の時間がバラけててホントに寝れない時もあるし。
あ、でも僕も力を貸していく。僕とフェイトの、夢だもの。二人で本当のお父さんとお母さんになる」

「うん。二人で、少しずつ……だね。なんだかとても楽しみ。早くこの子達に会いたいな」





歩きながら見上げる空に広がるのは、満天の星。その星を見上げながら僕達は笑って手を繋いでいられる。



本当に幸せで、いっぱいキスしてもっと幸せになりたくなったけどそれは家に帰るまで我慢。



今は手を繋いで、フェイトと双子達を守る事に集中。だって僕はフェイトの旦那様で二人のお父さんなんだから。





(第128話へ続く)




















あとがき



フェイト「というわけで、今回のお話はしゅごキャラパーティーでアニメとしては104話『誕生! ガーディアン見習い!?』を参考にしています」

恭文「そんなドキたま/じゃんぷ127話、いかがでしたでしょうか。というわけで本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……もう本当に平和だよね」

恭文「そうだねー。7話前からは想像出来ない程に日常系になったね」



(そんな中でも×たまが出るのがしゅごキャラクオリティ)



恭文「というわけで、3クール目なのでイメージOPはBuono!の『泣き虫少年』。
イメージEDは同じくBuono!で『雑草のうた』です」

フェイト「……やっぱりやるんだね」

恭文「やっぱりもう引き返せないのよ。というか、何気にBuono!の楽曲は神が多い。ハロプロだからで食わず嫌いするのはもったいないって」



(特に最近雑草のうたは聴いてかなりビビっと来た曲です。特にアイドル関係とか趣味じゃないのにー)



恭文「雑草のうたはホントいい曲だしねー。さてさて、そんなわけで今回のお話はひかる再び登場です」

フェイト「一之宮専務が通わせる学校って、聖夜小だったんだね。まぁ環境が良いから候補としては上がるだろうけど」

恭文「司さんも居るし、そういうのもあったのかも。で……りっかはりっかでまた自由だし」



(蒼い古き鉄、若干苦笑いなのはあの子にペースを握られっ放しなせいだと思う)



フェイト「でもヤスフミ、あの子が居るとやっぱり×たまが今までみたいに暴れたりしないみたい」

恭文「なんだよね。まぁ×たま化したら必ず暴れるかって言われるとそうじゃないけどさ。
でもりっかが×たまと対話出来るから、今までよりもっと深いコミュニケーションは出来る」

フェイト「二階堂先生や歌唄、ルルちゃんみたいな特殊な能力者の一人という扱いなんだね。
でもあのペースでどんどん拾ってたんだ。それは……確かにあの数集まるよね」

恭文「元々×たまの存在を知らないで、自分にしか見えないペットみたいな感じで接してたんだろうしね。
だからりっか、今相当戸惑ってるかも。自分のとこに居るたまご達を元のとこに帰す必要も出てきたし」



(でも基本的には子ども……うん、子どもなのでそこの状況判断はとまとの中で出てきたキャラクターの中ではかなり甘いです。
とは言え子どもなゆえの甘さを出さないと某使い魔や魔王や提督みたいになってしまうので、さじ加減は難しかったり)



恭文「あー、確かに劇中でも話してたけど、りっかは子どもなキャラだしね。というか、凄い純粋?」

フェイト「もう興味のある事にどんどんツッコんでいく感じだよね。だから行動が無軌道だし奔放だし。
でも……私は好きかな。ほら、とまとの中ではりっかみたいなキャラは結構珍しいし」

恭文「子どもなキャラも基本スレてるしね。ガーディアンやしゅごキャラ勢はそれほどじゃないけど問題は」

フェイト「リリカルなのは――私達だね。うん、分かります」

恭文「そこは僕も含めてだけどね。基本ラインも変わってるわけじゃないし」



(そんなわけで柊りっか、今後どんどん成長していく……はず)



恭文「というわけで、しばらくはこういうのんびりとした形で……でも困った事がある」

フェイト「何かな」

恭文「パーティーは半分実写だから、小説に出来る部分が今までの半分しかない」

フェイト「……そう言えば。あ、でもいっそこっちも半分実写に」

恭文「どうやってっ!? ユキノ・カナメでも出せとっ!」





(『あ、私はいつでもOKだよー。もうすっごいやる気だしー』
本日のED:Buono!『雑草のうた』)










ショウタロス「……こうなったらもうぷっちぷちネタやるしかないんじゃないのか?」

ヒカリ「まぁ……ぼりぼり。それしか……ぼりぼり」

ショウタロス「よし、お前は喋るなっ! てーかやっぱ食ってばっかだよなっ!」

シオン「とりあえず『だだしこだだしこ』と『しゅごボンバー』ネタはやりたいですね。特に前者は」

ショウタロス「あぁ、アレが絡むからなぁ。あとはあれか、けいおんクロスネタ……そういやもう12月で文化祭終わってんじゃ」

シオン「巨大×キャラによる異変の影響で延期になったとでもしておけば大丈夫です。
なにより現時点でこの話はまたまたサザエさん空間に突入しています。問題はありません」

ショウタロス「あ、それもそうだな。んじゃそういう方向で」

ヒカリ「……青のりクッキー、悪くなかったな。よし、もう一枚だ」(ボリボリ)





(おしまい)





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