小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第123話 『Counter Identity/悲しみに立ち向かうのは、今を覆すため』
ドキたま/じゃんぷ、前回の三つの出来事っ!!
一つ、あむ達の力で黒いたまごが浄化され、イクトは新しいキャラなり・セブンシーズトレジャーにキャラなりしたっ!!
二つ、勘違いを続けるリンディが人としての道を踏み外し、とうとうクロノたちに拘束されたっ!!
三つ、大量の×たまが集まり出来た巨大×キャラによって世界中の人々のこころが悲しみによって繋がり、行動不能に陥ったっ!!
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「・・・・・・あなたは時空管理局という組織には不要の人間となります」
あっさりとそう言い切られて、私は信じられなくて笑ってしまう。だって、ありえない・・・・・・ありえないもの。
私は今まで世界のために、組織のために正しい行動を取ってきた。だから私は信じられなくて笑ってしまった。
「クロノ、悪いけど今回の事は問題にさせてもらうよ。見過ごせない理由は、分かるよね?
これは必要な処置だ。僕達は彼らを守るために、見せしめを用意する必要がある」
「ここであそこに、恭文君達に手を出すと痛い目を見るという手本が必要になってしまったわ。
リンディ、あなたの軽率な行動のせいでね。だからあなたはその責任を取らなくてはいけない」
「・・・・・・母さん、すみません。きっと僕の言い方が悪かった。
なのに僕は・・・・・・母さんの心を解く前に、こんなマネしか出来ません」
三人の言っている事が信じられなかった。なんでこんな事になるのか全く分からない。だって私は悪くない。
悪いのは私達の心遣いを尽く無駄にして好き勝手にするあの子じゃない。だから私は笑って首を横に振る。
「ねぇ、早くバインドを解いてっ! もうこれしかないのっ!!
おかしくなった時間を元に戻すにはこれしかないのっ!!」
「それは無理よ。あとリンディ、親友のよしみで言ってあげる。
・・・・・・おかしくなったのは、異常なのはあなたよ」
「・・・・・・嘘よっ! そんなの、そんなの嘘よっ!! 私はおかしくなんてないっ!!
おかしいのは私を、私達が守ってきた組織と社会を信じられない異常者共よっ!!」
「リンディ提督、残念ながら今のご時世ではその価値観こそが異常になるんですよ。
僕達が守って来た組織は、僕達すら裏切ってたんですから。信じる理由そのものがない」
私は悲しかった。私達が守るべき組織を、社会を、世界を一緒に支えてきたと思っていた仲間にまた裏切られた。
しかも息子とその友達と私の大の親友に・・・・・・本当にこの世界はおかしくなってしまったらしい。やっぱり、あの子のせいだ。
あの子が居なければこんな事にはならなかった。今やっと、私だけが真実に気づいたんだ。でも遅過ぎた。
私はこのまま全てを異常になった世界に奪われ壊される。・・・・・・もう、死にたい。生きてる意味がない。
あなた、ごめんなさい。あなたから預かった世界は、組織は、もうとっくに壊れていたみたい。
だから涙が零れる。裏切られた事が、否定された事が悲しくて・・・・・・アレ、おかしい。なんでクロノ達まで泣いてるの。
それで崩れ落ちて動けなくなって身体を震わせながら・・・・・・あ、バインドが解けた。
「クロノ、これってまさか」
「多分、そうだろう。くそ、こんな時に」
「何・・・・・・何で私、今更こんな事思い出してるのよ。おかしい、おかしいわ」
これは神がくれたチャンスだと思った。きっと世界をおかしくした異常者を殺すために神は私を助けてくれた。
だからすぐにここから逃げ出そうとする。だけど私も椅子から立つのがやっとで、床に崩れ落ちてしまう。
「そん、な・・・・・・どうして、こんな。なぜ私まで」
・・・・・・その時、クライドが亡くなった時の記憶が蘇った。あの時の墓前での自分の姿も見える。
それだけじゃなくて仲間達が死んだ時の事やその時自分が何を誓ったかも思い出していく。
ただその度に感じるのは、仲間達が背中を押してくれているという充実感ではない。それは明確な恐怖。
違うの。あの時の私と今の私とでは何かが違うと突きつけられている。だから頭を抱えて、身体を震わせる。
そして次に・・・・・・やめて、やめてクライド。どうしてあなたは笑っていないの。どうしてそんな悲しげな瞳で私を見るの。
私は間違っていない。あなたが望む形に、あなたが好きだった世界を守ろうとしただけ。それだけなのよ。
なのにあなたはどうしてそんな悲しげな瞳で私を見るの? どうして過去の私は、あんなに眩しく感じるの?
どうして今の私は・・・・・・とても汚らわしく、醜い存在に思えてしまうの? 違う、こんなの違う。これは嘘なんだ。
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「ギン、ガ。お前らも、大丈夫・・・・・・か」
「ごめ・・・・・・無理。なんでだよ、なんでこんな悲しいんだよ」
「びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! もう嫌っスっ!! こんな悲しいのは嫌っスっ!!」
「母さん・・・・・・なぎ、君。私、人じゃ・・・・・・嫌、来ないで。私、私」
現在うちのみんなで夕飯中に揃って崩れ落ちた。てーかボロボロに泣き出して誰一人起き上がれねぇ。
その上そういうキャラでも無さそうなトーレやセッテまで同じってのが余計にこの状態の異常さを物語ってる。
「セッテ、お前・・・・・・どうした」
「分かりま、せん。ただ救助活動中に助けられなかった子どもの事を思い出して・・・・・・なぜですか。
私はあの時、泣いたりしなかった。なのにどうして私は今・・・・・・こんなに涙が」
「くる、しい。くるしくて・・・・・・もう動けない」
「ディエチ、しっかり・・・・・・しろ。姉が、姉がなんとか」
チンクはそのまま立ち上がろうとするが、バランスを崩して椅子ごと床に叩きつけられる。
だが助けてやれねぇ。クイントの事とかギンガが拉致られた時の事とか思い出して、動けねぇんだ。
泣きまくって洒落じゃなく大きい悲しみに押し潰されかけて・・・・・・くそ、マジでこりゃなんだ。
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「拓也、しっかり・・・・・・して」
「ゼロ・・・・・・くぅ」
家で英会話の練習をしてたら、急に苦しくなって動けなくなった。というか、涙が止まらない。
それであの時、事務所の人に捨てられた時の事やゼロだった時の事を思い出して胸が苦しくなる。
「なに、これ。ゼロ・・・・・・ゼロ」
「大丈夫だよ、拓也」
ゼロも僕と同じようにボロボロに泣いていて、それでも・・・・・・笑おうとする。
「僕は、ここに居るよ。スマイル・・・・・・スマイル」
「・・・・・・うん」
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「びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! なんで、なんでやっ!! なんでこんなー!!」
「みや子・・・・・・アンタやかまし、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「おかんやって泣いてるやんかー!!」
現在、うちはみんな揃って涙流し中。てーかアカン。あのオーディションの時の事思い出して辛くなってきた。
フェイトさんや神様ズ達をごっつ笑わせるような新ギャグ考えてたんに・・・・・・これじゃあアカン。なんでうち、笑えんのやろ。
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「シャッハ、イクス・・・・・・イクスのところに」
「いけません、騎士カリム。動ける状態では・・・・・・くぅ」
ヤ、ヤバい。覚悟はしてたけどこれはキツ過ぎる。泣いても泣いても全然ダメなんだよ。
しかも私とかよりそういうの強そうなオットーでさえ崩れ落ちてしくしく泣いてるんだよ? どうしようもないって。
「シスター・シャッハ、騎士カリム、イクスのとこへは私が」
立ち上がろうとして、力が入らないで床にそのまま倒れてしまう。だけど、それでも私は床をはいずり回って前に進む。
「シスター・セイン、無理を・・・・・・無理をしては」
「ダメ、だよ。だって、あの子達から預かってんだよ?」
そうだ、ややちゃんやみんなにお願いされてる。お礼まで言われて照れ臭くもあってさ。
なのに・・・・・・なのに私がそれ放棄しちゃダメでしょ。だから身体をみっともなくても動かして床を這う。
「恭文やあの子達だって今、こんな想いしても戦おうとしてるんだ。だったら、負けてられないよ」
「それも、そう・・・・・・ですね。では」
「みんなで、行きましょうか」
それで私は振り返ってそう言った騎士カリム達を見る。二人は泣きながらも頷いていた。
私も頷いて、少し身体を起こして・・・・・・まずはみんなで支え合いつつ起き上がる事にした。
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『それではうたいますっ! 悲し過ぎてもうなにも出来ないー!!』
「セシル、アンタそれ違・・・・・・苦しい、苦しいよぉ」
新曲のレコーディングが間近なので家の部屋で練習してたら、セシルと二人ぼろ泣きしてしまった。
それでね、幼稚園の頃の事とかうたえなくて悔しかった時の事とか一気に思い出して・・・・・・動けないの。
「優亜ちゃん、ダメ・・・・・・諦めちゃ、ダメ」
「うん、分かってる。分かってるけど」
無理だと言いかけた時、優亜は震える両手を上げて自分の顔を叩いた。でも力が入らなくて軽くになってしまう。
でも大丈夫。言葉は、諦めで弱気な言葉は飲み込めた。優亜はまだ・・・・・・笑える。
「大丈夫だよ、セシル。優亜、先輩やお兄ちゃん達に優亜の歌・・・・・・届けるんだから」
「うん・・・・・・!!」
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今日は休日・・・・・・のはずだったのに、家の中でみんな泣き暮らすハメになった。
もう悲しくて悲しくて、本当に涙が止まらないの。あのおばあ様でさえ号泣して崩れ落ちている。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんで、なんでこんなに悲しいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あなた、しっかり・・・・・・うぅ、演技のために涙は取っておきたいのにー!!」
とりあえずうちの両親は放置する。というか、構っている余裕が本当にない。心の中が悲しみでいっぱいになってるの。
少し前に派手に間違えて、大事なものをたくさん壊した事実が一気に吹き出して来て後悔が全く止まらない。
「ルル、しっかりせんかぁっ! 泣いたら・・・・・・泣いたら・・・・・・無理やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ナナ・・・・・・ごめん。ほんと、止まらないの」
「シオン・・・・・・シオン、お別れ寂しい。寂しいよ」
「イン、お前・・・・・・あぁ、あの鍋貯金はたいたのに、買って二日目でダメにするなんて」
みんなそれぞれに悲しい事や苦しかった事、後悔してる事が心の中で一気に吹き出しているみたい。
ただ兄さんが若干アレだけど・・・・・・いきなりどうして? まさか、イースターの作戦じゃ。
・・・・・・正直ここだとどうしようもない。というより、助けに行きたくても情けない事に全く動けない。
あむ、ガーディアン・・・・・・悔しいけどここは任せるわ。もちろん私が頼める義理じゃないのは分かってる。
だから私はいいの。報いと考えたらこれくらいは当然だと思う。だけど・・・・・・お願い、兄さんとママ達を助けて。
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「ぐす・・・・・・びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! アタシの、アタシの研究取るなー!!」
≪キアラちゃん落ち着いてー! といかあの、みんなどうしたのっ!?≫
「寂しい・・・・・・寂しいよ。ほんとは友達、欲しいのに」
現在アリサの家に匿ってもらっている私達は、思いっきり泣きじゃくっていた。
それは私達だけじゃなくてアリサの犬達も同じ。さっきまで私を癒してくれたみんなは、今は涙を流しながら苦しげにしている。
「こんな・・・・・・何、これ。凄く苦しい。シャーリー」
「すみませんマリーさん、巻き込んじゃって。いや、これは逃げようないかぁ。フェイト、さん・・・・・・これやっぱり」
「・・・・・・うん」
母さんに捨てられた時の事や傷めつけられていた時の事。自分の生まれの事で悩んだ事。
ヤスフミとケンカして苦しかった事や、一方的な押しつけなのに被害者ぶって悲しんでいた時の事。
それに・・・・・・JS事件の事。身勝手な怒りに自分すらも振り回されて、色んな人達を傷つけた事。
自分の夢を自分から捨てたのに、それに気づかずに嘘っぱちの成果を誇りに思っていた時の事。
そしてそれに気づいて、死にたくなる程に絶望して苦しかった時の事。悲しくて辛い記憶が一気に吹き出してきた。
それに押し潰されて、呼吸する事すら諦めてしまいそう。だけど・・・・・・私は左手でお腹をさする。
少し縮こまっていた背を私は伸ばして、荒く息を吐きながらお腹を撫でる。それでさっきまでの弱気な私を嘲笑う。
「そうだ、諦めたくない。私は約束してる」
ヤスフミにもっともっと変わっていくって約束してる。もっとあなたと向き合いたいって言葉を届けた。
それは悲しい事にも、辛い事にも本当に負けないという事なんだ。私一人の力でも立ち向かうという事なんだ。
誰が認めてくれなくても、誰に否定されても・・・・・・私はそういう意志で歩いていくという事なんだ。
そうだ、だから諦めない。それにきっと今、ヤスフミやあむ達だってこんな気持ちを感じながら戦ってる。だったら負けられない。
今の私の戦いは、こんなに弱くて情けない私の騎士で居てくれたあの子の帰る場所を守る事。
それで私は・・・・・・あの子の隣に居て、いっぱいいっぱい笑う事を選んだ。だから私は笑うんだ。もう、負けない。
今まで何度負けたか分からないけど、もう負けない。私は・・・・・・悲しい事にもう負けたりなんてしない。
「ヤスフミ、私は大丈夫。この子の事も、自分の事も守るよ。それで・・・・・・みんなで幸せになるんだから」
押し寄せる悲しみと後悔の中、私は笑う。零れ落ちる涙にも負けずに私は抗う。それが私の戦いだから、負けない。
それで愛するあの子と一緒に生きる事を選んだ自分の選択を、絶対に間違いなんかにしない。だから今、戦える。
All kids have an egg in my soul
Heart Egg・・・・・・The invisible I want my
『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説
とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!!
第123話 『Counter Identity/悲しみに立ち向かうのは、今を覆すため』
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幼稚園が終わってから帰り道をお散歩してる時、知らないお兄さん達に話しかけられた。
そうしたらいきなり口を塞がれて眠くなった。それで目を覚ましたら薄暗い大きな部屋の中。
あのお兄さん達がニヤニヤしながら僕を見てた。それがとても怖くて、悲しくて、寂しくて。
なによりお父さんとお母さんと会いたくて・・・・・・泣いたら叩かれた。顔が凄く痛くなった。
それでひくひくしながら夢だと思って眠った。でも、目が覚めても何も変わらなかった。
二回寝ても何も変わらなくて、ご飯も何も食べさせてもらえなくて、段々と何も考えられなくなった。
だけどそんな時、突然部屋のドアが開いてお兄さん達が驚いたように部屋の中に入って来たおじさんを睨んだ。
おじさんはお兄さんのうち何人かを殴ったり蹴ったりしながら僕に近づいて頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったな。もう大丈夫だ」
それから立ち上がって、ナイフや鉄パイプみたいなのを持って襲いかかってくるお兄さん達をそのおじさんはやっつけた。
その内の一人はよく分かんない怪物みたいな姿になった。そうしたらおじさんが赤いバックルを取り出した。
「・・・・・・変身」
≪Skull≫
それで骸骨みたいな仮面を着けた姿を変えた。怪物に光の弾丸を撃ち込まれても、殴られてもおじさんは止まらない。
「さぁ、お前達の罪を・・・・・・数えろ」
≪Skull・・・・・・Maximum Drive≫
そう言いながら怪物にキックして、変身したお兄さんをやっつけた。
お兄さんは元の姿に戻って呻きながら倒れて・・・・・・おじさんも元の姿に戻った。
荒く息を吐きながら近くにあった縄でお兄さん達を縛った。
それから縛られてた僕は縄を解かれておじさんにおんぶされて、いつまで居たかも分からないその部屋を出た。
「坊主、ついさっき俺やアイツの姿が変わった事は内緒にしといてくれ。バレるとちょっと厄介なんでな」
「うん。あの、おじさん」
「おじさん・・・・・・まぁいい。おじさんはな、探偵なんだ。お前の両親からお前を助けて欲しいとお願いされた」
お父さんとお母さん・・・・・・あぁ、そうだよね。心配してるよね。だからおじさんに頼んだんだ。でもあの、そうじゃないの。
「おじさん、痛くない?」
「大丈夫さ。この程度の事は慣れてる」
「なら」
僕は少し怖かったけど・・・・・・それでも聞いてみる事にした。
「あのお兄さん達も、痛くない?」
「・・・・・・お兄さん達は痛いかも知れないな。だが死んじゃあいないから安心しろ」
「・・・・・・うん」
「坊主、なんで泣いてる。やっぱり怖かったか」
そう言われて、僕は首を横に振った。
「違うの。痛いのとか怖くて嫌なのに・・・・・・なんでこんな事しちゃうのかなって。
だって自分が痛いなら、みんなだって痛いって思うのに。それなのに・・・・・・おかしいよ」
「・・・・・・そうだな。それはとても難しい質問だ。だが世の中には、その痛みによって涙が零れる事を喜ぶ奴も居る。
坊主を誘拐した奴のようにな。そんな奴は、坊主の言うような当たり前の事が分からなくなっている。だから人を殴れる」
それはもしかしたら本当かも知れない。でも・・・・・・頷けなかった。
だって頷いたら、僕を助けるために殴ったおじさんまでそうだーって言うみたいだった。
「かく言う俺もそういう時があるんじゃないかと自省する時があってな」
けどおじさんは僕の考えている事が分かるかのように、笑いながら言った。
「こういう仕事をしてると、自分がどこかのヒーローみたいに感じる時もあるんだ。
昔は始終そんな感じだった。だから自分にその罪を突きつけて数える事にしている」
「罪?」
「そうだ。罪・・・・・・間違いを数える事は、その間違えた過去と向き合う事。間違えた自分を認める事。
認めた上で、どうすればいいか考えていく事。例えばさっきおじさんが殴ったのだって、罪だ」
やっぱりおじさんは大人だから、僕の考えてた事はもう考えてたみたい。なんだか、納得しつつ頷く。
「でもでも、おじさんは僕を助けてくれたよね? お父さん達にそうして欲しいって頼まれたんだよね?」
「坊主を助けるためとは言っても、誰かを叩いたりする事が良い事なわけがない。
いや、良い事にしてはいけない。だから罪を数えて、覚悟を決めて・・・・・・拳を握る」
「怖く、ないの? 痛く・・・・・・ないの?」
「怖いさ。それで痛い時もある。だけどそれでもやらなきゃいけない時がある。
そういう時は踏ん張って、意地を張るものさ。お前がここまで頑張ったようにな」
僕は励ますような言葉に何も言えなくなって・・・・・・おじさんの背中で泣いてしまう。
「僕、頑張ってない。だって・・・・・・おじさんみたいに戦ったり出来なかった。意地なんて張れなかった。
お父さんとお母さんに心配かけた。ただ泣く事しか出来なかった。それに、途中でもうダメって諦めた」
「・・・・・・そうか。悔しいか?」
「悔しい。僕・・・・・・僕、悔しい」
「なら、それが坊主の罪かも知れないな。さすがに坊主が諦めたら、おじさんやお父さん達だって助けるのが難しくなる。
人間というのは不思議なものでな。身体はともかく心が折れなかったら何気にどこまでも踏ん張れるものなんだ」
泣きながら、僕はおじさんの言葉に頷く。おじさんは足を止めて、僕を背負い直した。それで僕の身体が軽く揺れる。
「坊主、もし悔しいのが我慢出来ないなら、また困った事があったら・・・・・・まぁ今回みたいな事は無しだな。
そういう時は、絶対に諦めるな。最後の最後までなんとかなると希望を持って、なんとかするために考えていけ」
「・・・・・・それが罪を数える事になるの?」
「そうだ。別に難しい事じゃないさ。坊主が叩かれて痛いのが嫌なら、他の人にそれをやらないというのもそれ。
お父さんとお母さんに心配をかけて悪かったと思うなら、その分いっぱいお父さん達に元気なところを見せるのもそれ」
僕はやっぱり涙が止まらないけど、おじさんの言ってる事を考えて・・・・・・また頷いた。
「分かった。僕、罪を数える。それでそれで、おじさんみたいな人になる」
「・・・・・・はい?」
「悪い事してる人が居たら、それを殴ってでも止める覚悟のある人になる。それはダメだーって言える勇気のある人になる。
それで・・・・・・おじさんやおじさんみたいな人達が痛くなるのが少なくなるように頑張る。僕、やっぱりこういうの嫌だ」
おじさんはまた足を止めて振り返りながら僕をマジマジと見る。それで吹き出すように笑った。
「そうか。なら、おじさんと約束だ」
またおじさんは前を見て、僕を背負いながら歩き出した。
「友達やお父さん達を、大好きな人達を大事にしろ。誰かの涙を、痛みを止められる優しく強い男になれ。
それで・・・・・・どんな理由があろうと誰かに暴力を振るう事が罪になると、絶対に忘れるな。あとはそうだな」
「うん?」
「トマトは食べられるようになろうな」
「・・・・・・お父さん達のお喋りっ! というか、トマトが食べられなくても大人になれるもんっ!!」
それでも僕はおじさんと約束した上で、安心しながら眠っちゃった。おじさんの背中は温かくて陽だまりみたいだった。
だから僕はとっても安心して・・・・・・怖い事とか全部忘れちゃうような勢いで眠った。
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目が覚めたらお父さんとお母さんがそこに居た。お父さんとお母さんは最初は僕が戻ってくれて喜んでくれた。
だけど、すぐにケンカするようになった。僕が誘拐されたのはどっちが悪いのかって言い合うようになった。
やめてって言ってもやめてくれなくて、二人とも家に帰らないようになった。それが悲しくてあの時みたいにたくさん泣いた。
そういう施設に入れられるのも嫌で、無い知恵絞って周りの大人に疑われないように一人で普通を装った。
ご飯はスーパーやコンビニで買えるし、特に・・・・・・そうだ。僕はすぐに気づいた。
お父さん達が居なくても生きていけるんだって。それに気づいてから、一人の時間が平気なものになった。
お金だけはあったから、それを自由に使って一人で過ごしてた。それでよくテレビのヒーロー物を見てた。
悪い人達を倒して弱い人を助けて・・・・・・そんなヒーロー物を見ていると、自然と胸が高ぶった。
あとはファンタジー物? そういう不思議な事や魔法や異文化や異世界、そういう系統も同じように楽しかった。
その頃の僕は・・・・・・探偵のおじさんの事をもう忘れてた。お父さんとお母さんが居なくなった事が悲しくて吹き飛んでた。
同時に誘拐された事も凄い勢いで忘れてた。あの時のおじさんの背中の温かさも、全部。
だから一人で良いと思ってた。灰色の空が当たり前で、どこかでそれを壊したがっていた自分が居るのに。
まるで何かのアニメみたいに大きなきっかけが来る日をずっと待っていた。・・・・・・それで後悔するとも知らずに。
僕は悲しい事に負けて間違った。それで忘れてしまった。僕は探偵のおじさんから大事な事を教わったはずなのに。
嫌な事は、辛い事は、立ち向かっていかなきゃ変えられない時もある。そのために力を振るう事もある。
矛盾してるかも知れないけどそれが必要な時もある事を・・・・・・忘れたんだ。それが、あの時の僕に必要だったのに。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「そうだ」
呟きながらフラッシュバックする記憶のおかげで、身体に力が戻るのが分かる。
そして目の前に迫った衝撃波に向かって、その力を全て叩きつけた。
「負けてられるかっ!!」
僕はアルトを袈裟に打ち込み、その衝撃波を斬り裂いた。黒い風が破裂したように周囲に吹き抜ける。
「おじさん、約束・・・・・・今の今まで忘れててごめん。僕、きっとおじさんが教えてくれたような大人になれてない」
≪あの、あなたどうしたんですか。いきなり復活しましたけど≫
「だからまだ、目指してる最中。あの時のおじさんの言葉も約束も、ちゃんと僕の中にあるから」
アルトの言葉に答える余裕もないくらいに心は震えていて、まだ涙は止まらない。
でも・・・・・・今は動ける。今は立ち上がれる。僕はまだ、折れてなんてない。
「負けるか・・・・・・! こんな叫びに、こんな痛みに負けて、諦められるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
巨大×キャラはそんな僕を見て、右手を振りかぶる。そしてその右手を僕に突き出すと右手が伸びて来た。
「シオン、来てっ! 僕のこころ、アン」
『解錠』
「ロックッ!!」
でもそれを見据えながら僕の姿は大きく変わる。次の瞬間には僕は右手で長い翠色の髪をかき上げていた。
【「キャラなりっ! セイントブレイカー!!」】
名乗りをあげながら僕の身体の主導権を握ったシオンは右足を上げる。
右足に翠色の光が灯り、迫り来る手に向かって回し蹴りを叩き込む。
「ビートスラップ」
本来なら勝負にならない程の質量の差。でもシオンの蹴りは巨大×キャラの蹴りを止めた。
翠色の光が火花として迸りながらも、蹴りと巨大×キャラの手の平はせめぎ合う。でも、その光が炎に変わった。
【「アクセル・エフェクトッ!!」】
翠色の炎を纏った蹴りは熱を伴った閃光となり、巨大×キャラの手の平を斬り裂くように振り抜かれた。
シオンが背を向けつつも振り返ると、巨大×キャラは鈍い声をあげながら体勢を後ろのめりに逸らしていた。
そして右手を構築していたであろう×たま達が炎によって浄化され腕から離れていく。
その結果巨大×キャラは右手が肘から無くなった状態になった。シオンはそれを見ながらまた髪をかき上げる。
「私達という最強、その身に刻み込みなさい」
≪わわわ・・・・・・キャラなり出来てるのっ! 主様、シオンちゃんも大丈夫なのっ!?≫
「大丈夫ではありませんね。やはり涙は」
シオンが言いかけている間に、今度は左手が伸びる。どうやら当面の敵を僕達と見なしたらしい。
それを見たシオンが泣きながらも大きく息を吐いた。
「全く、無粋な。お姉様、次お願いします」
『解錠』
「あぁ」
シオンはその場で反時計回りに回転する。するとその姿が一瞬で黒服銀髪赤目の女の子に変わった。
【「キャラなりっ! ライトガードナー」】
僕とキャラなりしたヒカリは身を捻りながらながら左手を振りかぶる。そして前面に黒色の光のスフィアが生まれた。
「レディアント」
そして左手を払うように振り抜き、改めて巨大×キャラと向き合いつつヒカリはトリガーを引いた。
「スマッシャー!!」
声をあげると同時にスフィアが砲撃として放たれ、左手に直撃する。そして光の奔流と手が拮抗する。
前面にスマッシャーの粒子が撒き散らされ、じわじわと押し込まれる。それを見てヒカリは改めて左手を前にかざす。
「・・・・・・フルブラストッ!!」
その声のトリガーによって、奔流の太さが一気に増して僕の身長くらいの直径になった。
そして・・・・・・一気に左手を押し込む。巨大×キャラは砲撃に左手を弾かれるような形になり、またのけ反る。
左手を構築していた×たま達が次々と浄化されて元の白いたまごに戻っていった。
砲撃はそのまま夜空を突き抜けるかのように放たれ、巨大×キャラの脇を掠めていく。
ヒカリはやっぱり涙を流しながらも、右手と同じく肘から先が無くなった巨大×キャラを見ていた。
≪ヒカリちゃんもなのっ!?≫
「あぁ。だが」
ヒカリが困ったようにそう続けたのには理由がある。その原因は、砲撃と蹴りによって浄化されたたまご達。
元の白に戻ったはずのたまご達は、持ち主のところに戻る前にまた×が付く。
そして更に泣き叫ぶ巨大×キャラの一部となり・・・・・・二人の攻撃によって無くなった箇所が再生した。
「中途半端な攻撃は通用しないようだ」
「ですがアレはお姉様と私の本気の攻撃ですよ? こうなるとここはやはり」
【アレしかないね。でも二人とも、その前にちょっとキャラなり解除。ちょっと準備するから】
「分かった」
そして僕は元の制服姿に戻った。涙はやっぱり止まらないけど、それでも僕は立っていられる。身体の力も戻ってきてる。
そうだ。僕の『箱』の中には確かに悲しみも詰まってたけど、それが引っ張り出される事で思い出した事もある。
もう、思い出した。10歳の頃までのボヤけてた記憶・・・・・・親の顔も誘拐された時の事も、その前の幸せな記憶も全部だ。
おかげでいつもの自分を、目指している自分の姿を取り戻した。それは・・・・・・ハードボイルド。
あの日見たおじさんの姿のおかげで、悲しみの中からそれを引き出せた。
自分なりのハードボイルドを、自分なりの勇気を貫いて今を変えたいという僕の『なりたい自分』が僕を支えてる。
僕はきっとヒーローになんてなれない。リンディさんや星名の言うような『幸せ』な大人にはなりたくない。
けどあの時おじさんと約束したような大人にも、きっとなれていない。正直自信がないんだ。
だけど僕は、それでも悲しみに立ち向かえる。悲しみと戦える。痛みに負けて、未来を諦めたりなんてしない。
だって僕は・・・・・・何も諦められないんだから。何も諦められなくて、欲張りで贅沢で傲慢なのが僕なんだ。
だからお嫁さん三人居るし、人を殺したりしても笑う事や理想も諦められなくて・・・・・・そうだ、こんなの全然平気だ。
だからまた襲ってきた衝撃波を右手の中に戻ってきていたアルトを逆袈裟に打ち込んで斬り裂ける。
「もう気が済んだでしょ? だから・・・・・・今から強制的にその涙、止めてやるっ!!」
それから身体を起こしてすぐに後ろに向かって声をあげて、仲間達の名前を呼ぶ。
「あむ、唯世、なぎひこ、やや、りま、リイン、海里、空海、歌唄・・・・・・みんな揃いも揃っていつまで寝てやがるっ!!
まだいけるでしょうがっ! だからとっとと立てっ!! それで今すぐに力を貸してっ! コイツを、ぶっ飛ばすっ!!」
「・・・・・・アンタ、マジ無茶過ぎだって。てゆうかいきなし主人公キャラに戻らないでくれる?」
愚痴りながらもまず一人は立ち上がったらしい。それで思わず頬が緩む。
「ホントホントー、もうちょっと寝かせて欲しいのにね」
「まぁしょうがないよ。そんな場合じゃないだろうし」
「ここは踏ん張りどころですしねぇ」
「だから、立ち上がらなくちゃいけない。私達は誰一人、こんな事で終わるなんて納得出来ない」
続いた声はキャンディーズとダイヤのものだった。どうやらしゅごキャラ達も復活したらしい。
僕は振り返り、完全に動けなくなって涙を流しまくっているシルビィを見た。
それで安心させるように笑いかけると・・・・・・シルビィも少し苦しげだけど、笑顔で返してくれた。
それでシルビィはゆっくりと立ち上がる。立ち上がって一歩ずつよろめきながらも踏み出し、懐から銃を取り出す。
でもそんな時、僕とシルビィを隔てるように白いミッド式の魔法陣が床に生まれた。そこから二人の影が生まれる。
それはヒロさんとサリさんだった。てーか二人揃って見た事ないくらいに思いっきりボロボロ泣いてた。
「二人とも、どうしたんですか。それも珍しく泣きまくって」
「うっさい。てーかやっさん、マジアレ何?」
「お前、ついに巨大化変身でもするのかよ。それで殴り合いか?」
「出来たらやってますよ。で、アレが予言に出たものの正体です。
世界中の人間の悲しい記憶、一気に引き出してるんですよ」
「・・・・・・なるほど。それで可能性をみんな揃って諦めてもらおうと。
俺らとアリサちゃん達もコレなのはコイツのせいか。まさしく超常現象じゃないかよ」
軽い会話をしながらも二人は泣きながらこっちに来て、ヒロさんが持ってきていたケース一度地面に置いてから開ける。
そこにはクリアカラーの刃をしたデンカメンソードがあった。ただし仮面部分はダイヤが四つ組み合わさったような形になってる。
「お待たせ、ユニゾウルブレード完成したよ」
「それとフェイトちゃんから伝言だ。『私は絶対諦めないから、ヤスフミも諦めないで』・・・・・・だってよ」
「分かりました。というか、わざわざありがとうございます」
「「いいっていいって。んじゃ後は・・・・・・ぐす、任せた」」
二人はそのまま下がって、一気に崩れ落ちた。どうやらこの泣き声、二人にも辛いらしい。
僕は感謝しつつもアルトを鞘に納めて、素早くケースからユニゾウルブレードを取り出す。それを軽く地面に突き立てる。
二人はそれを見ながらも更に後ろに下がって、動けないみんなの方に回ってくれる。そこは安心した。
それからすぐに右手でパスを取り出し、カードスロットを展開した上で左手で四枚のカードを取り出す。
それはリインとアギトと咲耶とリースのカード。僕が意識を集中させて念じると、四枚のカードは一枚のカードに融合した。
久々登場な超クライマックスフォーム用の変身カードをそのままスロットに挿入してパスを閉じる。
≪Fusion Ride 超・Climax Set up≫
それから周囲に念のため予備武器をブレイクハウトで作っておく事にする。
イメージは・・・・・・アルトと同じ形状の日本刀五本。もちろん刃は魔剣X製。
というわけで術式発動。僕の周囲の地面のコンクリから激しく火花が走る。
その分子構造そのものが作り替えられて、それらは現れた。
「全く、本当にあむさんの言う通り人使いが荒いのです」
「ほんとほんと。もうちょっと優しさが欲しいわ」
そんな事を楽し気に言いながらこちらに来たリインも、シルビィ共々やっぱり泣いていた。
リインが少し膝をすりむいてるのは、さっき吹っ飛ばされたせいだと思う。
「悪いね、僕は基本こういう奴なのよ。で、釣った魚は逃がさないタイプだから」
「知ってるですよ。だからリインとシルビィさんだって生殺し状態ですし。・・・・・・でもでも、そういう所も大好きなのです」
「リイン、それは僕が外道だって思われるからやめて」
「大丈夫ですよ? リイン達は外道で鬼畜な恭文さんも全て受け入れて愛していけるのです。
それでそれで、リインの愛は次元世界よりも大きいのです。感謝するのですよ」
そんな話を泣きながらも笑ってしている間に、あむ達も僕の近くへ来た。
僕はそれを見てから、パスを左手に持ち替える。それで素早く右手でユニゾウルブレードを改めて手に取った。
「・・・・・・アギトちゃんっ! リースも咲耶もとっとと来るのですっ!! まだ・・・・・・まだ何も終わってないですよっ!!」
「他のみんなも動けるようなら動いてっ! 私達はここに・・・・・・今を覆しに来たんだからっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「蒼凪君、ズルいよ。それは王様の仕事なのに」
「シオンとヒカリもだな。僕達を差し置いて目立ってどうする」
「唯世、油断してるとキングの座をかっさらわれるぞ。もう少し厳しくしとけ」
「そうします」
笑いながら唯世が立ち上がるが、その途端に前のめりに体勢を崩した。俺は咄嗟に唯世を受け止める。
「大丈夫か?」
「イクト兄さんこそ。僕、イクト兄さんの泣き顔直に見るの・・・・・・初めてかも」
「うるせぇよ」
俺は恥ずかしくなって隣のヨルの方に目を向ける。ヨルは泣きながらも頷いていた。
「イクト、ヴァイオリンの中の奴にも力貸してもらうにゃ」
「出来るのか?」
「大丈夫にゃ。きっと・・・・・・アイツだってこんなの嫌にゃ」
「・・・・・・それもそうだな。なら行くぞ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「なのは、さん。ここで少し・・・・・・待っててください」
「オレ達、まだやる事あるみたいだからさ」
「まだまだ踊らなければなりませんね」
なぎひこ君が立ち上がるのに合わせて、リズムとてまりも泣きながらまた浮き上がる。
それに続くようにりまさんとクスクスちゃんも目に光を宿して動き出した。
「すぐに、終わらせてくるわ」
「それでみんなで祝勝会ー♪ あ、クスクスなのはさんの作ったハンバーグまた食べたいなー。アレ美味しいのー」
「二人とも、待って。あとクスクスちゃん、そう言ってくれるのは嬉しいけどそれ完全に・・・・・・死亡フラグ」
「ガーンっ! 嘘ー!!」
「嘘じゃ、ないの。というかあの、私も」
私も立ち上がろうとするけど、すぐに崩れ落ちてまたレイジングハートを杖替わりにしてしまう。
子どもの頃の寂しかった時の事やヴィヴィオがさらわれた時の事を思い出して、私の身体からまた力が抜ける。
「それじゃあ無理よ。アギトさんも」
「バカ言ってんじゃねぇよ」
アギトはボロボロ泣きながら、二人と同じように立ち上がった。
「せっかくヒロリスの姉御達まで頑張ってくれたのに・・・・・・引けるかよ。
そうだ、アイツにばっかいいカッコさせてられっか。なのはさん、ちょっと行ってくるわ」
「・・・・・・分かった。三人とも、気をつけてね」
「はい」
そのまま少しよろつきながらも恭文君の方に足を進めるみんなを見送る事しか出来ないのが辛かった。
結局、私は本当に大した事はしてないね。やっぱり最後は・・・・・・あの子達になるんだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「歌唄ちゃん、大丈夫?」
「無理そうならそれでいいんでちよ?」
「バカ言わないでよ。この程度で止まれるわけ、ないじゃない」
「ここまで来たらもう、突っ走るしかないのですっ!!」
「そうだ、アタシら全員このために来たんだ。なのに・・・・・・寝てられるかよ」
歌唄ちゃんは強いなぁと思いつつ、ややも立ち上がった。もちろんもう大泣き中。
ずっとひくひく言ってるし、心の中も悲しい事でいっぱい。だけど、ややはまだ止まれない。
「イクスちゃん、イクスちゃんも・・・・・・今は悲しい夢、見ちゃってるのかな」
遠い世界に居るイクスちゃんにも、こころのたまごがある。だからきっと、この叫びはイクスちゃんにも届いてる。
もしも、もしもイクスちゃんも今泣いてるなら・・・・・・そうだ、これがややの立ち上がれる理由だ。
「イクスちゃん、もうちょっとだけ待ってて。やや達がすぐに、そんな悲しい夢は終わらせちゃうから」
歌唄ちゃんと肩を貸し合いながら、ゆっくりと足を進める。それでティアナさんとナナちゃんの方を見る。
二人はボロボロに泣きながら頷いて・・・・・・サムズアップしつつ立ち上がった。ややもそれに返した。
「ナナ、やれるわね」
「もちろんよ。でも、正直一撃が限度かも。根こそぎ力奪われてる気分なのよ」
あ、そっか。ナナちゃんはランちゃん達と似たような存在だから、この攻撃やや達よりずっとダメージ大きいのかも。
実際顔色も悪いし・・・・・・でもナナちゃんはティアナさん共々立ち上がって、必死に足を進める。
「奇遇ね、私もよ。まぁ、がんばりましょうか」
「えぇ」
「やや、歌唄さん」
それでそんなやや達にディードさんが声をかけてきた。そちらを見ると、隣のザフィーラさん共々泣き崩れてた。
「お願いします」
「情けない話だが・・・・・・我は敵の姿すら見えん。あとはお前達に任せた」
「・・・・・・うんっ!!」
泣いててもややは二人を安心させるようにめいっぱい笑って、恭文のところへ行く。
そうだ、ややはもう立ち上がれる。歌唄ちゃんもナナちゃんもティアナさんも歩ける。だってやや達には、そうしたい理由があるもん。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「恭太郎さん、咲耶さんとリースさんをお借りします」
咲耶さんには俺が、リースさんには相馬先輩が肩を貸しつつ立ち上がる。
・・・・・・もう立ち上がれない理由はない。今あの人が、俺達を必要としているなら行くだけだ。
「あぁ、頼む。てーか・・・・・・悪い」
「気にするな。これしきの事、拙者達が世話になったその恩が返せると思えば安いものだ」
「そういう事だな。つーか恭太郎、お前は働き過ぎだからゆっくり休め。それで俺に出番をよこせ」
「そうだそうだ。それじゃあまぁ、いくか」
少しふらつきながらも足を進める。ただ、一歩歩く毎に未だに響く叫びを受けても揺らがない何かが心の中で生まれる。
そのために俺達の足取りは、蒼凪さんの背中に近づく度にしっかりとしたものになった。そこは他のメンバーも同じく。
「海里さま、もう・・・・・・大丈夫です」
「私もです。ありがとうございました」
「二人ともマジで大丈夫か?」
「はい」
試しに手を離すと、二人はしっかりとした足取りで・・・・・・俺達に並んで歩き始めた。
涙は止まらないのに俺達はそれでも、いつも通りに動けるようになっていた。
「もう、大丈夫ですわ。・・・・・・雷鳴の鉄姫足るこの私が、とんだ醜態を晒してしまいました」
「私も三代目祝福の風なのに・・・・・・でも、もう大丈夫。そうだ、絶対に負けるもんか」
「だな。俺達は、絶対に負けねぇ。俺はもっともっと突っ走って、今よりすげー自分になりたいんだ」
「俺は悲しみに、過去に、痛みに、絶望に負けて何かを諦めるのは・・・・・・もうごめんだ。
だから、そんな弱い自分を吹き飛ばせる自分になるんだ。俺はもう、何も諦めたくない」
俺も諦められなかった。罪の重さを、間違えた事実を理由に『なりたい自分』を諦められなかった。
そうだ、この程度の痛みになぜへばっていた。やはり俺は修行が足りない。俺は、負けたくないとあの時思ったはずだ。
だから声をあげた。そんなのは嫌だと・・・・・・助けて欲しいと蒼凪さんに手を伸ばした。
でももうあの時とは違う。俺は・・・・・・まだまだ未熟だが、それでも自分の悲しみと立ち向かうくらいの事は出来る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「シオン、ヒカリ」
「ラン、ミキ、スゥ、ダイヤ」
僕はみんながこちらに来たのを見計らって、ソードの峰の部分にある挿入口にパスを挿入。
「みんな、いくよ。・・・・・・僕のこころ」
「あたしのこころ」
リイン達が光に包まれて球体となり、ソードに吸い込まれていく。
「「僕のこころ」」
「「「俺のこころ」」」
「ややのこころ」
「「私のこころ」」
涙を流しながらも、悲しみに苛まれながらも僕達はそれでも自分を信じて、鍵を開けた。
『アン』
『解錠』
『ロックッ!!』
全員揃って鍵を開けて、いつも通りに光に包まれてその中で姿を変えた。そして光が弾ける。
【「キャラなりっ! プラチナロワイヤルっ!!」】
唯世はいつも通りに王様姿。なお、僕が作ったロングソード所持バージョン。
【「キャラなり・・・・・・セブンシーズトレジャー!!」】
それで猫男、お前もまたそれかい。てーかまさかヴァイオリンはサーベルに変化したんかい。
【「キャラなりっ! スカイジャックっ!!」】
【「キャラなり、サムライソウルっ!!」】
【「キャラなりっ! ビートジャンパー!!」】
新旧Jチェアな三人もいつも通りにキャラなり完了。それでも泣きまくってるのがちょっとおかしくはある。
【「キャラなりっ! ディアベイビー!!」】
【「キャラなりっ! クラウンドロップっ!!」】
ややぺぺ、それにりまとクスクスももう大丈夫そう。それで歌唄・・・・・・おかしい。
白と赤の二色の螺旋の光に包まれててそこからもうおかしい。そしてそれが弾けた。
【【「キャラなりっ!】】
その中から姿を表したのは右は白、左は黒で色分けされたロングスカートで装飾たっぷりな胸元の開いたドレスを纏った歌唄。
背中から右側に赤い悪魔の翼と、左側に白い天使の翼が生えていた。そしてそれが大きく広がる。
【【エターナルチャームっ!!」】】
それを気にする余裕もなく僕の周囲を翠と黒の螺旋の光が包む。あむは虹色の光に包まれて、お互いにその姿を変える。
その光が弾けた瞬間、僕達はそれぞれのしゅごキャラ達とてんこ盛り状態で出てきた。
【【「キャラなりっ! リインフォース・ライナー!!」】】
【【【【キャラなりっ! アミュレットフォーチュンっ!!】】】】
キャラなりしてからずっと下ろしていたソードを上げて、両手で持って構える。
その刃は中心から紫・金・赤、蒼の四色に色分けされて染まっていた。
≪エンチャント・ユニゾン、完了ですっ! みんなー、元気ですかー!?≫
≪おう、問題ないぜっ! 試しに・・・・・・ほれっ!!≫
アギトが声をあげると、僕は柄尻のグリップレバーを操作してないのにダイヤ形のレールが時計回りに回転した。
レールは蒼・赤・金・紫の順になっていて、今までは蒼が一番上を向いていたのに赤色になった。そして刃が炎を宿す。
【わわ、それ魔法だよねっ!? ねね恭文、なんでキャラなりしてるのに魔法が使えてるのー!!】
「アギト、無駄に魔法使っちゃだめだって。余裕なくなるでしょ」
≪悪い悪い。さすがに不安だからちょっと実験したくなった≫
それでまたまた自動で回転して、蒼のダイヤが一番上に来る形に戻った。
・・・・・・まぁそういう事ならしょうがないか。いきなり実戦投入だし。
≪これは当然ですわ。今魔法を使っているのはアギトさま。つまり私達ですから≫
≪私達は今ユニゾウルブレードにユニゾン状態ですし、キャラなりの変身の対象にもなっていない。だから魔法を行使出来るんです≫
これもキアラ曰くユニゾウルブレードの利点らしい。つまり魔法とキャラなりの能力の融合が可能になる。
でもそのためにはブレードにリイン達の誰かしらが入ってないとダメなんだけど。
「てーか歌唄、それなにっ!?」
【アタシとエルとの同時キャラなりだー! どうだー、カッコ良いだろー!!】
【土壇場でのパワーアップ・・・・・・燃えるのですっ! これぞ王道なのですっ!!】
「そういう事よ。いいから納得しなさい」
いきなり過ぎてビックリな僕の心情を鑑みてくれますっ!? てーか胸開き過ぎ・・・・・・あぁもういいっ!!
「みんな、気合い入れるよっ! なんかもうボロボロだけど・・・・・・僕達はまた立てるっ!!」
「はいはい、そこでストップ」
「恭文、あなたちょっと目立ち過ぎよ。出しゃばらずに控えてなさい」
一気に飛び込もうとしたのに、それを腕で制したのはなぎひことりまだった。てゆうか、他のみんなも全員それに続く。
「あむちゃん、君は蒼凪君と一緒に力を溜めてて。多分普通に浄化しようとしても効き目ないだろうし」
【そうにゃ、普通に浄化してもまた×たまにされて元通りにゃ】
【それで我々もこのまま攻撃を受け続ければ、そう長くは持たないだろう】
「やるなら私達の全火力を叩きつけて正面突破・・・・・・ほんと、最後の最後でこんなジュンやアンジェラみたいな手になるとはね」
ナナが自嘲するようにため息を吐きながら、ステッキを構える。
「まぁしょうがないでしょ。クロスミラージュ、インフィニティ・ガンモード瞬間発動でいくわよ」
≪Yes Sir≫
「だからお前らは唯世の言うように力蓄えとけ。俺達はまず、アイツらの数を出来るだけ減らす」
「唯世くん・・・・・・イクト」
「恭文、悪いがこれ借りるぞ」
空海がそんな事を言いながらブレイクハウトで作った日本刀を二本かっさらっていく。
それはなぎひこも同じく。二人して生意気にも二刀流に挑戦らしい。
「ちょ、おのれらなにしてるっ!!」
「さすがに武器無しは辛そうだしね」
「いやいや、それでどうするのよっ! 二人はそういうの出来ないでしょっ!!」
「大丈夫。さっき三条と歩きながら対策は整えた。もうさっきみたいな居るだけにはならねぇよ」
それで二人が手に取った途端に刃がその色を変えた。まず空海はオレンジ色。
それでなぎひこの方は空色に変わった。てゆうか前に試した通りの色。
「チビ、せっかくだから俺も借りるぞ」
「・・・・・・って、お前もかいっ!!」
【ケチケチするにゃー。減るもんじゃないしー】
「減るのっ! 僕の魔力とか素材とか平気な顔して減るのっ!!」
なんて言いながらも猫男は勝手に僕が作った予備武器の最後の一本を強奪。
すると刃の中から泡立つように気泡が生まれ、それが弾けると同時に色を変える。
その色は・・・・・・黒色。何ものにも染まらぬその色が猫男の色になるらしい。
猫男は左手で持ったそれを軽く一振りすると、右手でサーベルを抜き放って腰を落として構える。
「さて、誰からって考えるまでもないわね」
「もう来ちゃったしねー。よし、まずはやや達からね」
ややはいつの間にか出現したノロウサアルトに乗っかり、巨大×キャラを見据える。
巨大×キャラは再生した右腕を泣きながらも振りかぶっていた。
「アルトちゃん、アレ・・・・・・受け止めてっ!!」
『・・・・・・ウサっ!!』
さすがに無理だと思ったけど、先行したややは本気でそれをやった。
突き出された×たまの手をアルトはその体全部を使って受け止めた。
そこにシルビィも走り込んで、ややとアルトと並んで左手を使って更に受け止める。
押し込まれて床をガリガリと削っていいたアルトの足がそれで止まった。
そして辺りに歌が響き始めた。これは・・・・・・歌唄だ。それで歌唄を視線で探す。
歌唄は少し浮かび上がりながら、翼を広げてこの場に歌声を届けていた。
それで・・・・・・なんだろ。この歌を聴いていると自然と力が出てくる。涙が出る勢いが、少し弱まった。
「りまたんっ!!」
「分かってる」
りまはその間に周囲に大量にピンを出す。その数・・・・・・100近く。てゆうか、今までよりずっと多い。
その隣にティアナが来て、待機状態に戻っていたクロスミラージュを構える。それと同時にその身体が光に包まれる。
「・・・・・・コードドライブッ!!」
≪∞Gun Mode Ignition≫
ティアナの周囲に服装がチェンジしながらも12機のホルスタービットが・・・・・・って、二度目っ!? あれ消費大きいでしょうがっ!!
でもそこを気にしてる余裕はなかった。巨大×キャラが右手を引きつつ、次は左手を突き出してきた。
「・・・・・・いくわよ、最大火力」
それに対してはナナが対処するらしい。その杖の先に巨大な炎の砲弾が生まれた。その大きさはナナよりずっと大きい。
その熱が風に乗って辺りに広がる。そんな中拳は展望台に向かって打ち出された。
「フランメン」
ナナはその拳に向かって、その砲弾を突き出す。
「シュベルトッ!!」
するとそれは瞬間的に螺旋を描き、巨大な炎の奔流となった。アレは僕の知っているランツェよりずっと大きい。
その奔流は×たまの手と正面衝突し・・・・・・×たまはその腕を炎に飲まれる事になった。
また辺りに鈍い声が広がりつつも奔流は×たまの腕と左肩に胸元辺りを削り取るかのように突き抜けた。
そしてまだ攻撃は続く。というか、今度はティアナの番らしい。
「さぁ、もう一度」
ティアナはクロスミラージュを構えて巨大×キャラを狙うと、周囲に展開されているクロスミラージュ達も同じように巨大×キャラを狙う。
「乱れ撃つわよっ!!」
次の瞬間、まるで雨・・・・・・いや、雪崩のように大量に放たれたオレンジ色の弾丸が巨大×キャラを狙い撃つ。
ただの乱射と思う事なかれ。それぞれの銃口が僅かに動いて的確に相手を狙い撃っている。
それで勢いもスゴイので、あれじゃあどんどん身体を削られているのと同じ。
数瞬の間にティアナの宣言通りに乱れ撃たれた弾丸は巨大×キャラの右手と肩を完全に削り取っていた。
「休んでいる暇はないわよ?」
【いっくよー! みんなに負けない新必殺技っ!!】
「コメット」
次はりまが動くりまは両手を振りかぶって、周囲のピンに命令するかのように両手を真一文字に振った。
「カーニバルッ!!」
その瞬間、ピンが次々と射出されていく。でもそれはいつものジャグリングパーティーじゃない。
まず速度が段違いに速い。そして×たまに直進している間にそれらは白い光の弾丸となる。
それは尾を引きながらも次々と巨大×キャラにちゃくだ・・・・・・ちょっと待ってっ!!
「りま、確かりま浄化出来ないよねっ!!」
「それなら心配ないよ」
僕の言葉に笑顔で返してきたのは待機していたなぎひこ。それで・・・・・・なぎひこの言う通りだった。
りまの弾丸は、先程のティアナの弾丸に負けないレベルで巨大×キャラの身体となっている×たま達を撃ち抜き浄化していく。
その命中箇所は胴体。弾丸は×たま達の胴体を削っていき、そこからまるで火花のように浄化されたたまご達が飛ぶ。
そしてある程度深くその身体を削ったところで、中から十字架に張りつけにされているかの如き体勢のひかるが出てきた。
その周囲に例の『たまご』・・・・・・なし。それを知ってか知らずか、りまは射撃を止めてロープを一つ射出。
それをひかるの足に絡ませて、その周囲の×たま達を削りつつ表情を苦悶に染めて体勢をやや崩した。
【りまー!!】
「まだよっ! やや、シルビィさんっ!!」
「「了解っ!!」」
その声に従ってシルビィとややを乗せたアルトがすぐにロープに走り込んで、しっかりと握り締める。
「「せぇのっ!!」」
その声と共にロープは勢いよく引かれ、ひかるはそのまま巨大×キャラの中から引きずり出された。
空中へ飛び出したひかるを見て、巨大×キャラは慌ててロープごとひかるを抱き締めようとする。
「あわわわわわわわっ! アルトちゃんっ!!」
「ややちゃんダメっ! あなた飛べないでしょっ!?」
なんて言っている間にひかるはこちらに来る。でも巨大×キャラも迫ってくる。手はまだ再生していないけど、さすがにヤバい。
そんな時僕の隣に居たなぎひこと海里、空海が駈け出した。そして手すりを踏み台にして大きくジャンプ。
それでひかると巨大×キャラとの間に入り込んだ。それで三人揃って仲良く刃を振り上げる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「三条、藤咲、いけるなっ!!」
「いつでもっ!!」
「問題ありませんっ!!」
正直剣なんて使った事はないけど、それでも僕は飛びながら意識を集中させる。ううん、更にこころをアンロックさせていく。
具体的には・・・・・・今僕の隣を飛ぶ二人と繋がりたいと強く願って、僕達三人の力を合わせていく。
「雄々しくっ!!」
相馬君の二刀のオレンジの輝きが強くなって、夜空を照らし始める。
「鮮烈にっ!!」
次は三条君。二刀から雷撃が迸って空間を焦がす。
「どこまでも高くっ!!」
そして最後は僕。僕が持っている刃からは何故か空色の風が吹き出した。僕達はほぼ同時にその二刀を振り上げる。
『ジャックス』
そして僕達それぞれの輝きを見て眩しそうに目を瞑る巨大×キャラに向かって、その二刀を打ち込んだ。
『ブラスロックッ!!』
三色の光と雷撃と風が刃が振り抜かれた事により放たれ、混ざり合いながら一つの大きな斬撃となる。
それが巨大×キャラを押し潰すかのように打ち込まれ、その胴体と足に斬撃を刻み込んだ。そしてまた鈍い痛みの声があがる。
それで僕達の身体はそこから落下していく。ちなみに下は・・・・・・塔の入り口の前。つまり地面。
でもすぐに僕達の腰に縄がかけられ、一気に引っ張られる。それで瞬きする間もなく僕達は展望台の床に打ち付けられる。
「・・・・・・痛ぇ。おい真城、もうちょい安全確実に戻せよ」
「そんな余裕ないわよ」
「それもそうですね。クイーン、助かりました。それで彼は」
「大丈夫」
りまちゃんが息を荒くしながら右手で僕の背中側を指差す。そちらを見ると、あの子はアルトに優しく抱えられていた。
「それよりも、まだ来るみたいよ?」
それでまた巨大×キャラに視線を移すと・・・・・・マズい、また腕が再生しかけてる。
「もうもうしつこいー! というかコレじゃあキリがないしっ!!」
「任せてっ!!」
その声と共に飛び出したのは、辺里君。それと辺里君に続く形で月詠幾斗。
二人は展望台から大きく飛び上がり、×キャラと目線の高さを同じにする。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「唯世、残ってるとこを一気に切り崩すぞっ!!」
「はいっ!!」
俺は二刀を高く掲げて意識を集中させる。それで、その場で身体を時計回りに捻る。
「エメラルド」
回転の勢いに乗せて、右手のサーベルをそのまま右薙に叩き込む。
「ラインッ!!」
その瞬間、刃の軌跡から翡翠色の斬撃波が飛び出す。それが×キャラの胴体に入り、その繋がりを断ち切る。
だがまだ足らねぇ。だから左の刀をその軌道に合わせるように打ち込んだ。
【もう一発にゃっ!!】
そこから放たれた斬撃波は、まるで刃のように黒かった。そして翡翠色の斬撃波の後ろにぴったりと直撃。
その瞬間、光が混ざり合って胴体に火花のように走る。そこを狙って唯世が動いた。
「ホーリーセイバー」
唯世は金色に輝く刃を頭上に掲げ、そのまま切っ先を巨大×キャラの胴体に向かって突き出した。
「スペシャルッ!!」
そこから光の奔流が放たれ、巨大×キャラに直撃。その光が俺の斬撃波から生まれた光と混ざり合っていく。
結果三色の火花が巨大×キャラの全身に回る事になり、首元から足の先が一気に破裂した。
別にたまごが壊れたとかじゃない。ただ繋がりあっていた×たま達が弾けて周囲に散らばっただけ。
俺達は特に浄化とかはしてないし出来てもいない。だが・・・・・・その×たま達が次々と光の弾丸達に射抜かれていく。
下を見るとガーディアンのちっこいのとオレンジ髪の女が凄い勢いで弾丸を撃ちまくっていた。しかも狙いがやたら正確だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「りま、アンタ無理しなくていいのよっ!? もう限界でしょっ!!」
「ティアナさんこそ、インフィニティ・ガンモードも使えなくなってるじゃないのよっ! 休憩したらっ!?」
「必要ないわよっ!!」
「私だってっ!!」
仲の良い二人はそれとして、次は僕達の番だよ。だからあむも残った頭部部分を見ている。・・・・・・集中しろ、これで決める。
「これで・・・・・・決まりだっ!!」
僕は飛び上がりながらソードのグリップレバーを四回引く。すると剣の切っ先から虹色のレールが生まれた。
それだけじゃなくて刃の中の四色の色が光り輝き、一瞬でその色が虹色に変わる。
切っ先から発生しているレールは僕の頭上に昇り、そこでカーブを描いて僕の背後まで伸びる。
そこからUターンして巨大×キャラに向かって進み始める。僕は一気に上昇してその上に乗った。
そのままレールの上で足を踏ん張っているとレールは更に伸びていき、巨大×キャラの頭部に向かっていく。
巨大×キャラは迫り来るレールに向かって黒い衝撃波を放って、それをを吹き飛ばそうとする。
でもレールはそれすらも突き抜けて散らしながら伸びる。そしてレールは巨大×キャラの眉間辺りに衝突。
その瞬間に巨大×キャラの頭部が虹色のリングに覆われる。それも一つじゃなく、合計五つ。
そのライン達が描く図形を一言で言うなら、×キャラの頭部を囲む巨大な球体のようにも見えた。
僕はそのままレールの勢いに乗りながら加速。×キャラに向かって飛び込んでいく。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ネガティブハートに、ロックオンッ!!」
巨大×キャラに、そしてこの場に居る全ての×の付いた夢達にあたしは指差す。
そしてみんなが頑張っている間高めていた気持ちを吐き出すように両手でハートを作る。
胸元のハンプティ・ロックが赤・青・緑・金と順番に輝いてから、虹色に輝き始める。
『・・・・・・ムリ』
その声は巨大×キャラの声。てゆうか、泣き声や唸り声以外で初めて喋った。
『イラナイ、ミンナ・・・・・・イラナイ。ムカチ、ムカチ』
「何度も言わせんなっ!!」
あたしは一旦目を閉じてから、すぐに大きく開きつつ張り叫んだ。
「無価値なものなんてどこにもないっ! アンタもあたし達も、みんな必要なんだっ!! ・・・・・・オープンハート」
その声に従って、ハンプティ・ロックの中の光が一気に吐き出されるかのように放たれた。
それはあたしの両手の中を通って、虹色のハート型の大きな奔流となって巨大×キャラとその周囲の×たま達を包み込む。
「フルボリュームッ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あむが放ったオープンハートを受けても巨大×キャラは止まらない。泣き声をあげながら周囲に黒い弾丸を放つ。
それは展望台の方にも着弾し、穴をいくつも開ける。でも僕はそれに構っている余裕はない。
今ここで、今ここでありったけの力を振るわなかったらここまで背中押してくれたみんなに応えられない。
だから僕は直進し続ける。そして僕の前面に虹色の障壁が生まれた。それらが弾丸を全て弾く。
【お兄様、一気に決めてください】
【ありったけの力を全て注ぎ込むぞ】
その言葉に頷きつつ刃を右に大きく振りかぶる。その刃の虹色は強く光り輝いていた。
「・・・・・・必殺、僕達全員の必殺技っ!!」
僕はそのまま×たまに肉薄し、そのまま刃を右薙に叩き込み・・・・・・斬り抜けられない。
刃がその身体に入る直前、黒い障壁のようなものが生まれた。それに斬撃は阻まれてしまう。
「く・・・・・・!!」
【さすがに、しぶといですね】
【恭文、押し込めっ! もたもたしてたらまた再生するっ!!】
「やってるよっ!!」
刃と障壁が火花を散らし夜空を照らす。それが服に当たり軽く焦げを作る。でも、刃が通らない。
リイン達もありったけで力を出してくれてるのに・・・・・・ヤバい、これが破れないと多分オープンハートも効かない。
どうする? こうなったらもう力技でいくしかない。ここまで来て一旦引き返して再突撃もない。
だけどこのままでも・・・・・・くそ、あとちょっとなのにっ!!
”・・・・・・全く、しょうがねぇなぁ”
頭の中に全く知らない声が響いた。それに思わず目を見開く。
”オレが・・・・・・いや、オレ達が力貸してやるよ。てーかそのまま力入れてろよ? 絶対に気を抜くな”
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まるで祈るように両手を合わせて握り締めながらヤスフミの・・・・・・みんなの無事を願っていた。
それはシャーリーとマリーさん、アリサとキアラも同じく。涙は止まらないけど、絶対に諦めないと何度も心に言い聞かせていく。
でもそんな時、胸の中が急に温かくなった。それで私は自然と落ちていた視線を上げる。
「・・・・・・ヤスフミ?」
あ、分かる。ヤスフミ今・・・・・・必死で戦ってる。というか、目の奥に姿が見える。
「力を、貸せばいいんだね? うん、分かった。私とこの子の力・・・・・・使って」
「フェイトちゃん、何を・・・・・・あ、分かる」
「アタシも・・・・・・あれ、なんでナギの姿が見えるのよ」
「おじいちゃんもみんなも、頑張って・・・・・・なのにアタシ、情けな」
「私も見えます。それで・・・・・・あぁそっか。願えばいいんだ」
本当に電波でももらったみたいだけど、私達はそのまま瞳を閉じて必死に願った。
目の奥でちらつくヤスフミの姿にこの気持ちが、私達の力が届くようにって・・・・・・必死に。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「父さん、今」
「お前も、か」
「この異常事態・・・・・・アイツやガーディアンが絡んでんのかよ。あむ達の姿も見えたぞ」
「どこまで、運悪いんっスか。こんな状態で戦うなんて・・・・・・無理っスよ」
それでもうちの娘達も俺も、必死に踏ん張って今ちらついた景色の中に居る奴に向けて活を入れる事にする。
「恭文・・・・・・ガーディアンの面々も、負けるな」
「よく分かんないけど、力が必要ならあげるから」
「今まで言い訳まみれの生き方しか出来なかった私のものでいいなら、根こそぎくれてやる」
「蒼凪恭文・・・・・・負ける事は、許しません。私があなたに勝つまで、あなたは誰にも負けてはいけない」
ただ身体の中に僅かに残ってる力が届くようにと、そう願っただけ。たったそれだけだった。
なのにそれだけでちゃんとそれが届いてるように思えるんだから、マジ不思議だよな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・私で、いいのか?」
拘置所の中で崩れ落ちて泣き続けている私に、不思議な姿が見えた。
アレは戦っている蒼凪恭文の姿だった。どうやら彼はこの異常事態に立ち向かっているらしい。
「私は・・・・・・こんなところに引きこもっているような弱い男だ。娘達に理想の世界を渡す事すら出来なかった。
いや、それが理想ですらどうかも疑わしい。私はただ、私の中に刻まれていた欲望に振り回されていた。ただそれだけだった」
それで世間で言うところの『間違い』を犯し続けた。あの祭りを起こしたのも、結局自分のためだ。
こんな重犯罪者で罪人の私に・・・・・・いや、今は言い訳はすまい。私は床に倒れながらも、必死に両手を天井に伸ばした。
「もしも私も、私も・・・・・・彼やフェイト・テスタロッサ、今の娘達のように輝けるなら。
そんな輝きがもしも私の中に一握りでもあるのなら・・・・・・使えっ! 少しは足しになるだろうっ!!」
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「エリス、今の」
「あぁ。全く・・・・・・彼は忙しいな」
「そうだね。でも、きっと大事な事だ。だから」
私達も・・・・・・うん、私達もだ。両手を握り締めて、恭文くんに祈りと一緒に力を届ける。
今ならそれが出来ると思う。だって私達、あの子とちゃんと繋がってるんだから。
「恭文くん、負けないで。私も・・・・・・負けない。悲しい事や苦しい事になんて絶対負けない。
あなたが守ってくれて、大好きだって言ってくれた私の歌、ちゃんと貫いていくから」
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姉さんやオーギュ、ダンケルクとキュベレイの事を思い出して指先一つ動かせなくなるくらいに泣いていた。
でもそんな時、目の奥に何かがちらついた。それはどんどん明確な映像になって・・・・・・あの人の姿が見えた。
それであの人はこの状況で、涙を流しながらも必死に戦っていた。だから僕は、両手を握り締める。
というか、声が聞こえたんだ。あの人は今、力を求めてる。それでみんなの悲しみを止めようとしてる。
きっと今、僕はあの人から遠いところに居るけど助けてくれって・・・・・・お願いされてる。
だったら、僕の中にある力を使ってください。僕は、あなたの王様だから。だからあなたを助けたい。
あの時あなたが僕を助けてくれたように、僕もあなたを助けたい。ううん、僕も一緒に戦います。
「恭文さん・・・・・・!!」
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「恭文君・・・・・・もっと力を入れて」
「蒼凪さん、俺の残っている力を全て渡します」
「ややもややもー! だから絶対負けちゃだめっ!!」
「あなた、ヘタレなんだからここでいいとこ見せないと取り返せないじゃないのよ。しっかりやりなさい」
唯世くん達が動きを止めて、恭文に声をかける。それは倒れて動けない他のみんなも同じ。
だからあたしも・・・・・・あのバカにオープンハート放ちながらハッパかける事にする。
「アンタ・・・・・・しっかりしろっ! あたしが言えた義理じゃないけど、ここで負けたらほんとに意味ないじゃんっ!!
ずっと魔法使いになりたかったんでしょっ!? 正義のヒーローみたいに、勇気で今を変える強い人になりたいんでしょっ!!」
【そうだよっ! だから恭文は大人だけど、シオン達と出会えたし私達が見えるんだよっ!?
いっぱいいっぱい輝いてるんだよっ! それは簡単な事じゃないんだからっ!!】
「だったら今がその時じゃんっ! それにミキと約束したよねっ!!
そうしなきゃいけない時があるなら、たった一瞬でもそれが出来る自分になるってっ!!」
【不器用でも諦めなかった恭文だから、誰かの笑顔のためにそうありたいと思える恭文だから、ボクは信じたいと思ったっ!!】
両足を踏ん張って、零れ落ちる涙を振り払うかのように言葉を続ける。
「アンタには折れちゃいけない理由があるっ! 負けらんない理由もたくさんあるっ!!」
【一人じゃありませんっ! スゥ達はずっとずっと恭文さんと一緒ですっ!!
出会う前からずっと、恭文さんのこころと繋がってたんですぅっ!!】
「もし足りないって言うなら、あたしの力も使えっ! あたしはアンタの仲間だから、いくらだって使ってくれていいっ!!」
【悲しみでこころが繋がっている今なら、世界中の人達が一つになっている今なら、それは可能よ。
だって私達の中にあるのは悲しみだけじゃない。私達の中にあるのは、こんな絶望だけじゃない】
さすがに立ってるのも限界かも。というか、足が震え始めて来た。それは唯世くんとイクト達も同じでみんな膝をつく。
それでも、それでもみんな震えながら立って、空で必死に障壁を斬り裂こうと抗ってる恭文を見上げる。
「だから・・・・・・だから負けるなっ! 恭文ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
その声が届いたのかどうかは知らない。でも、恭文の羽織っている服が急に輝き出した。
ううん、輝きが恭文の周囲に星の光・・・・・・まるでスターライトみたいに生まれて集まっていく。あれ、何?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
言われた通りに踏ん張っていると、さほど経たずに身体に力がみなぎってきた。というか、羽織っている陣羽織が輝き出した。
それでみなぎる度に色んな人の顔が浮かぶ。例えばゲンヤさん達ナカジマ一家に、カリムさん達。
恭也さん達に知佳さん達さざなみ寮のみんな、警防のみんなもそうだしなんでかスカリエッティの顔まで浮かぶ。
二階堂にゆかりさん、はやて達八神家にヴィヴィオとコロナ・・・・・・あ、拓也とみや子に優亜達の顔も見える。
ルルとナナ、ヘイとインにかおるさんとお父さんにおばあさんもだ。てーかルルがまたハッパかけるように拳握ってる。
あ、メルビナさん達も居る。てーかレイカさん達維新組もだ。その真ん中にアレクの姿も見えた。
それに・・・・・・・フェイトの顔が見えた。フェイトは泣きながらも笑ってそのまま唇を動かして、僕に言葉を届けてくれた。
その言葉の意味が分かって、この力がなんなのかが分かって、僕は・・・・・・衝突し続ける中一瞬でも弱気になった自分を恥じた。
フェイトが届けてくれた言葉は『負けないで』。この力は今姿が見えたみんなが貸してくれたこころの輝き。
声は届かなかったけどフェイトの唇の動きで、この力の温かさで分かった。未だにせめぎ合う中、僕は自然と笑っていた。
僕は折れない。みんながこんな僕を信じてくれて、こんな今に納得出来ないなら、それに折れない自分であり続ける。
それがハードボイルドであり古き鉄。なによりそれ抜きでも僕は・・・・・・絶対に折れたくなんてない。負けるのは、嫌いなのよ。
だからみんなに感謝しつつ貸してくれた力を使わせてもらう事にする。
「こんなところで、止まれるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
声をあげたその瞬間、陣羽織を包んでいた光が弾け、その中央付近に色付きの太いラインが入る。
その色は・・・・・・金色。それと同時に虹色だったブレードの刃がそのラインと同じ色になった。
それだけじゃなく首元にもマフラーが生まれる。その色は黒色で、先が六つに分かれていた。その先も少し特殊。
そこから先黒色なのは上部分のラインだけで、後は翠色で薄い虫の羽のような形になっていた。
そしてそれが僕の背で大きく広がりまるで羽ばたいているかのように風を起こす。
それはとりあえず気にせずに更に力を込めながら押し込むと、障壁が音を立てて小さくヒビが入る。
そのヒビは障壁全体に迸るかの如き勢いで広がる。そしてそのまま砕けた。
その破片が舞い散る中をレールもその上に乗った僕もマフラーの羽を羽ばたかせながら突き進む。
太陽のように眩く輝く刃を巨大×キャラの頭部にようやく叩き込んだ。
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
≪≪≪≪いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!≫≫≫≫
そして斬撃は僕が刃を当てた側だけでなく、×キャラの頭部そのものを両断するような形で光となって打ち込まれる。
刃を打ち込みながらも加速して強烈な衝撃と走る火花に耐えつつ、僕は一気に斬り抜けた。
そのままレールから飛び上がり、空中を滑りながら後ろを振り返る。そうしつつ左手でパスを取り出した。
それを頭上に放り投げ、マフラーを揺らしながらも一気に足を止めて振り向く。
また左手でアルトガッシャーを腰から引き抜きながら右薙に腕を振るうと、別のパーツも腰から飛び出す。
それらは虹色の火花を走らせながら繋がり、一瞬でロッドモードに変化。その後にパスが回転しながら落ちてくる。
パスは僕の真正面を通り過ぎ、そのままベルトのバックルにセタッチした。
≪Full Charge≫
「アルト、行ってっ!!」
≪はい≫
それからすぐにバックルから走る火花がアルトロッドに伝わるのを確認しつつロッドを投擲。
ロッドは未だにその形を保っている巨大×キャラの頭部・・・・・・ううん、訂正。
周囲の×たまを包み込むかのようなとても大きな虹色のサークルへと変化した。それにより×キャラも×たま達も動きを止める。
ブレードを逆手に持った上で僕はその場で跳躍し、サークルに向かって飛び込む。
そしてまた翼を大きく広げると、両足に黄金の輝きが生まれる。
【【【「ビートプリズム」】】】
僕は翼を羽ばたかせながら両足をサークルに・・・・・・それによって動きを戒められている全ての存在に向かって打ち込んだ。
【【【エクストリィィィィィィィィィィィィィムッ!!】】】
両足がサークルに激突したその瞬間、巨大×キャラの頭部と×たま達を巻き込んで大爆発が起こる。
僕はその中を突っ切るように直進。爆炎にドーナツのような穴を開けながらもありったけの力を叩き込んだ。
(第124話へ続く)
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