小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 第121話 『Continue to be proud of stained/手を開くという強さの意味』 ドキたま/じゃんぷ、前回の三つの出来事っ!! 一つ、歌唄と海里と咲耶が恭文達に合流したっ!! 二つ、恭文を拒絶するリンディが孤立し始めたっ!! 三つ、あむがついに星名専務と対面したっ!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』 ラン「というわけで、中田譲治さんの無駄使いだよね?」 ミキ「気にしたら負けだね。あ、拍手であらすじ送って来てくれた読者さん、本当にありがとうございました」 (ぺこり) スゥ「というわけで、今回もイースターとの最終決戦ですぅ。ついについに星名専務とイクトさんと対峙したあむちゃん達」 ミキ「仲間達に背中を押されながらも挑むあむちゃん達の大一番。 でもデスレーベルはやっぱり強敵で・・・・・・それと同時にイクトでもあって」 ラン「あむちゃんとヨルと唯世の必死な叫びも今のイクトにはどうしても届かなくて・・・・・・!! うぅ、あんなに戦ってたら本当にイクトが死んじゃうよっ! これどうすればいいのー!?」 (立ち上がる画面に映るのは、皆様おなじみなあのロックとキー。そして優しいヴァイオリンの音色と涙を流す男の子) ミキ「そんなわけで、今回もいつも通りにいってみよう」 スゥ「光編も残すところ今回を含めて3話か4話。みなさん、最後までついてきてくださいねぇ」 ラン「え、もう終わりが見えてるのっ!?」 スゥ「はい。それでは今日もみなさんご一緒にぃ」 ラン・ミキ・スゥ『じゃんぷっ!!』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・わー! 歌唄ちゃん凄い凄いー!! さすがはアイドルー!! 眼力も半端なければ歌も半端ないないー!!」 【いや、眼力って言うんでちか? アレ】 色々疑問は残るけど、一応この場は片づいたらしい。でも・・・・・・僕はジッともしてられない。 なんか×たまのせいで変異させられてたっぽい動物達には申し訳なく思いつつ、僕は改めて歌唄の方を見る。 「歌唄、僕はシルビィと一緒に急ぐからみんなと一度体勢整え直してから追いかけてきて」 「大丈夫よ、まだいける」 「ダメ。多分上に上がったら補給関係一切出来ないだろうし、それに」 そう言いながら僕は周囲で気持ち良さそうに寝ている動物達を見る。 「この子達も避難させないと」 「・・・・・・それもそうね。ここは危ないだろうし。分かったわ、そっちは任せて」 そう言ってくれた歌唄の方を見ると、歌唄は翼を羽ばたかせながらこちらに飛び込んで・・・・・・僕に抱きついてきた。 「イクトの事、お願い。それでアンタも無茶しないで。私にここに来た事、後悔させないで」 「うん、約束する。じゃあ、行ってくるね」 「えぇ」 僕とシルビィは海里と久々の挨拶もさほど出来ずに、あむ達が通ったと思われる上へと続く階段を見つけて上がっていく。 でもこれ・・・・・・出来るだけ急いだ方がいいかな。何気に足止めされまくっちゃってるし。 「シルビィ」 「何かしら」 「ディードとザフィーラさん込みでデスレーベル止められると思う?」 「・・・・・・微妙なところね。前回遅れを取ってるわけだし」 やっぱり僕と同意見だったらしく、表情が苦くなる。それでも足を止めないのがまた凄いけど。 「でもそこまで過激な事はしないと思うの。普通なら・・・・・・だけど」 「九十九達?」 「えぇ。月詠幾斗君は洗脳状態だし、星名専務が本気でそういう事をさせたなら正直分からないわ。 浄化能力を持っているあむちゃんや唯世君はともかく、それ以外は見せしめに殺そうとするかも」 星名専務・・・・・・マジで悪の首領ってどういう事だろ。しかもフェイトから聞いた話通りなら、絶対後で後悔するフラグだよ。 「やっぱ急がないとダメか。くそ、転送魔法使えないのがこんなめんどいとは」 「ダメよ。転送した途端に罠にハマる危険もあるんだから。ちょっとずつ状態を確認して進まないと」 「分かってる」 なお、ここの辺りで『あむ達が通ったなら安心だろ』と思う人も居るかも知れない。でもそれは間違いだよ。 下手に手数が増えてデスレーベルが負ける危険を考えるなら、先に進んだ・・・・・・あ、訂正。 一番最初に到着した組以外を排除した上で戦わせた方が得策だと思うんだ。それなら勝率は高い。 そこで誰かしら人質に取って、あむや僕辺りに浄化を強制するというシナリオだって描ける。 向こうは本気でこちらを潰すような攻撃が出来ない以上、蛇の生殺し状態に置く必要があるって事だね。 だからこその足止めで戦力分断も狙ってのこれまで。・・・・・・自然と僕達の歩速は早くなっていた。 階段を駆け上がる音だけが響き渡って、何も言わなくてもシルビィと『もっと急ぐ』という意思疎通が出来てる。 それが心地良くなりつつも、僕達はまだまだ見えない最上階を目指して螺旋階段を走り続ける。 All kids have an egg in my soul Heart Egg・・・・・・The invisible I want my 『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説 とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/じゃんぷっ!!! 第121話 『Continue to be proud of stained/手を開くという強さの意味』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ イクトは刃を振りかぶりあたしに突撃してくる。というか刃を唐竹に打ち込んできた。 あたしは両腕を後ろに引いてハートロッドを二本出しつつ、それを交差させて盾にする。 次の瞬間、鋭い斬撃がハートロッドと衝突。火花を散らしながらも振り抜かれる。 鎌の刃が地面にも深々と突き刺さり真っ直ぐな斬撃の痕を残す。でもハートロッドはなんとか無事。 ・・・・・・止められるかとも思ったけど、無理。ハートロッド離さなかった時点であたしは自分を褒めて上げた。 振り抜かれた刃が返って再度襲って来る前に、あたしは大きく後ろに跳ぶ。そしてイクトがまた鎌を振るう。 鎌はそれまであたしが居た空間を鋭く薙いだ。でもイクトの動きは止まらずにそのまま身体を回転させる。 そして刃に黒い光が灯る。あくまでも軽めの跳躍をしていたあたしはとっくに着地。 「ダークナイト」 イクトは硬くもあるけどどこか乱れた呼吸を漏らしながら、鎌を左切上に振るった。 「ストームッ!!」 その瞬間、刃の光が大きな渦を巻いた風となってあたし達に襲って来る。てゆうか危なかった。 もし空中に居たら、あたし飛べないからあの風なり斬撃波なり打たれてたら避けられなかった。 ただ避けるだけじゃなくて、次の行動にも繋がるように回避する。恭文とフェイトさん達にも教わった事。 だからあたしはみんなにフォローさせるような事はなかったし、ザフィーラさんもすぐに動ける。 「鋼の軛っ!!」 地面から白い魔力の刃が八本生えて、あたし達に迫る黒い風に向かって突き出された。 それによって風の動き自体が乱されて大きく辺りに撒き散らされる。でもこのままじゃ安心出来ない。 あの風はどうも触れるだけで動けなくなっちゃうみたいだから。・・・・・・唯世くんが前に出た。 ロッドを前にかざして両足を踏ん張って、襲い来る風に向かって力を発動。 「ホーリークラウンッ!!」 生まれた金色の障壁が風からあたし達を守ってくれる。黒い光の粒子を含んだ風は展望台全体に吹き抜けた。 ここは広さ的にはかなりあって、400メートルくらいありそうなのに・・・・・・これはマジで気をつけないとヤバい。 やってくる事は単純なんだよね。ただ斬ってくるだけ。やっても今みたいな風で動きを止めてくるだけ。それだけだけど怖い。 まず動きを止められたら確実に詰まれる。その上本気の攻撃は唯世くんのホーリークラウンも斬り裂く。 ・・・・・・そんな力をずっと行使し続けたら、そりゃあイクトにだって負担がかかる。あたしは自然と声をあげていた。 「イクト、もうやめてっ! こんな事続けてたらイクト・・・・・・本当にボロボロになっちゃうよっ!!」 「というかもうボロボロにゃっ! イクト、オレとあむの声聞こえてるんだろっ!? てゆうか聞こえてないのはおかしいにゃっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 風を防がれた月詠幾斗が改めて構え直しこちらに踏み込んでくる。 私は唯世さんの前に出てデスレーベルと対峙。逆袈裟に振るわれた鎌を身を伏せつつ避けて更に踏み込む。 「イクトが本当にダメになってたら、オレが平気なわけないにゃっ!!」 打ち込んだ刺突を月詠幾斗は右に避けつつ身を捻り、足を止めてから鎌を左薙に振るう。 刃の切っ先が私の胸元に迫る中、素早く上に跳躍。月詠幾斗の上を取った。 「でもオレはピンピンしてるにゃっ! イクト、ちゃんと目を覚ますにゃっ!!」 私の足元を刃が通り過ぎた瞬間、月詠幾斗が無理矢理に跳ぶ。そして右足で回し蹴りを打ち込む。 でもその瞬間に私はISを発動。急加速して背後に回りつつその蹴りを避けた。 「そうだよっ! イクトはこんな事に負けるような奴じゃないっ!!」 刃を振りかぶり二刀を唐竹に打ち込む。それを月詠幾斗は鎌の柄を盾にして受け止める。 ただ向こうは飛べないらしく特に抵抗される様子もなく、その身体が吹き飛ぶ。 月詠幾斗は空中で身を捻り展望台の手すりに器用に着地。身を縮めながら、一気に跳ぶ。 その目標は私。そして刃には黒い光が宿る。・・・・・・私はそれに構わずに同じように踏み込む。 「昨日だってあたし達の声、届いてたよねっ! イクト、お願いだから返事してっ!!」 突撃しながらも右の刃に力を込める。するとツインブレイズの刃が輝き出した。 私はその刃を、月詠幾斗は鎌をお互いに踏み込みながらも刃を右薙に振るい一瞬の交差。 それから床を滑りながらも振り向く。とりあえず斬られた箇所はない。 だけど・・・・・・手応えが重い。エネルギーを込めて強化した状態での打ち込みと真っ向からぶつかった。 ううん、向こうの方が上なんだと思う。なんとか押し負けなかっただけに過ぎない。 魔剣Xでツインブレイズをバージョンアップしていなかったら、多分砕かれていた。これは下手な魔導師より手強い。 もう少し認識を強める事を決めつつ、左の刃を振るって蛇腹剣を展開。それを月詠幾斗に伸ばす。 刃は小さな螺旋を描きながらも直進するけど、月詠幾斗は右に動いてそれを回避。そのまま私の方に踏み込んでくる。 すぐさま蛇腹剣を左に振るい迎撃するけど、その刃の下を月詠幾斗はくぐり抜けた。そうしながらも直進を止めない。 右の刃を盾にしつつ迎撃体勢を整えている間に距離は縮まり・・・・・・右側から月詠幾斗に向かってザフィーラが飛び込む。 「ふんっ!!」 それを見て月詠幾斗が冷静にザフィーラから距離を取るように右に跳ぶ。そして鎌が逆風に振るわれた。 その瞬間刃に灯っていた光は破裂し、再び黒い風になる。私は咄嗟にザフィーラの方に近づいてその背後に回る。 「その技」 ザフィーラはバリア系の防御魔法を展開。 「既に見切ったっ!!」 ドーム状の白い障壁によって風は防がれ、私達の脇をすり抜けていく。風が吹き抜けてから、ザフィーラは私を見る。 「ディード、あまり飛び出すな」 「すみません」 私はこの手の障壁を発生させる事が出来ないから、この手の攻撃には実は相性が悪い。 風だからツインブレイズで斬っても完全に防げるわけではないし・・・・・・何気に厄介。 言っている間に月詠幾斗が空高く跳躍する。そして空中で身を翻し、刃にまた光を灯す。 月詠幾斗はそのまま刃を右薙に地面に向かって振るった。私達は感じた予感に従って後ろに大きく跳ぶ。 すると私達のそれまで居た場所に黒い光の刃が落ちて来る。それは床を綺麗に斬り裂いた。それで下から何か音もする。 下の柱や壁の類も斬り裂かれているからこんな音がするんだと納得しつつ、私達はまた上を見る。 月詠幾斗は落下しながらこちらに来ていた。刃にしつこく光を灯し、額に脂汗を垂らし・・・・・・疲れ切っている。 「イクト・・・・・・イクトォォォォォォォォォォォォッ!!」 あむさんの声が聴こえていないわけがない。それはよく分かった。それならヨルの事が説明出来ないから。 つまり・・・・・・無視してる。あむさんの叫びとあの表情で苛立ちが募った私は、両の刃を蛇腹剣に展開。 「この」 ザフィーラがその範囲外に居るのも確認済み。まずは・・・・・・右の刃を逆風に振るう。 「バカ兄がっ!!」 蒼と赤の二色の刃が月詠幾斗に襲いかかる。でもそれを鎌を左薙に打ち込んで払う事で回避。 次は左の刃。これも左薙の斬撃で払われた。その間に距離は零になる。 月詠幾斗は鎌を振りかぶりながらも頭上で回転させて、そのまま唐竹に打ち込んだ。 「ホーリークラウンッ!!」 でも間に入り込んでいた唯世さんがその刃を受け止める。・・・・・・マズい、これにはホーリークラウンは。 「バーストッ!!」 私の心配が杞憂であった事を証明するかのように、ホーリークラウンが爆発した。 派手な音と共に目の前に爆煙が生まれて、その中に月詠幾斗は飲まれる。 「・・・・・・なるほど、その手がありましたか。唯世さん、やりますね」 「蒼凪先生のおかげですよ。僕なんてまだまだ」 風はともかくあの刃にはホーリークラウンは通用しない。つまり防御壁としては役に立たないという事。 だから斬り裂かれる前にバーストで吹き飛ばしたと。これなら一応は防御出来る。・・・・・・根本的解決になってないけど。 だから月詠幾斗が爆煙を突っ切りながらまた踏み込んでくる。私が前に出ようとする前に、唯世さんが踏み込む。 そしてロッドを袈裟に振るい同じように振るわれた鎌を迎え撃つ。 ロッドと鎌が衝突して金属音が響き、火花を散らしながらせめぎ合う。 唯世さんは両足を踏ん張って押し込み、月詠幾斗は・・・・・・やはり無表情。 「イクト兄さん、僕もあむちゃんと同じように覚悟を決めた」 唯世さんはそう言いながら一歩踏み出す。それで月詠幾斗が僅かに押し込まれる。 「あなたが傷ついて苦しんでいるのは分かるけど、ごめん。今は・・・・・・戦うっ!!」 その声に反応するようにロッドが光り輝く。その光が辺りをまるで昼間のように照らしていく。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 唯世さんは勢い任せに月詠幾斗を押し込み、その光を強引に振り抜いた。 その瞬間、月詠幾斗は表情を驚きに染めながら向かい側の手すりまで吹き飛ばされる。 そして身体を背中から派手に叩きつける。その衝撃によって手すりが身体の形にヘコんだ。 よく見ると服に薄く斬撃の痕が刻まれていた。それだけじゃなくて、何かがこちらに飛んでくる。 私の方に落ちてきたそれを、左のツインブレイズを一旦収納して受け取る。それは・・・・・・綺麗な装飾の鍵だった。 根本はクローバーの装飾でクリスタルがはめこまれてあって、私はその鍵に覚えがあった。 「・・・・・・壊すためじゃなく、その心を守るために。あなたが闇に囚われて何も見えなくなっているなら、まずはその闇を斬り裂く」 唯世さんは手にした光を突き出す。すると光が粒子に変わり空に昇っていく。 その中から姿を表したのは、黄金の翼のような鍔と柄をした西洋式のロングソードだった。 「この・・・・・・ロワイヤルソードでっ!!」 唯世さんは刃を両手で持って踏み込む。私もそれに続こうとするけど、足を止めてしまった。 それは手の中の鍵のせい。・・・・・・私は踵を返して後ろのあむさんの方に走った。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ イクト兄さんが手すりから立ち上がり、苦しげに鎌を振るう。というか、また斬撃波が来た。 僕は走りながらも意識を集中させる。するとロワイヤルソードに金色の光が灯った。 「ホーリー」 地面を斬り裂きながら真っ直ぐに迫る斬撃波に向かって僕は、ロワイヤルソードを唐竹に打ち込む。 「セイバー!!」 その瞬間、僕の刃からも光の斬撃波が放たれる。ただしこちらは金色。 金色と黒の斬撃波はぶつかり、互いに混ざり合うように弾けた。そのまま僕は直進。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 イクト兄さんと距離を詰めて、刃を袈裟に振るってぶつけ合う。次は右薙。 そこから左切上に唐竹、右薙左薙と刃を立て続けに振るって斬り合う。 ・・・・・・正直蒼凪君やディードさんにフェイトさんのようにこの手の武器を扱う技量は僕にはない。 でも基本は教えてもらったし練習もした。まずは打ち込みの瞬間に手の内を締める事。それで威力が増すらしい。 あとはこういう刃物の武器でも扱い方や種別が色々ある。それでこの西洋剣は・・・・・・重さで斬る武器。 日本刀は引き斬りと言って反りを利用して対象を引き斬る事で強烈な切れ味を発揮する。でも西洋剣はそうじゃない。 元々分厚い甲冑をそのまま上から叩き潰す方向で作られたのが西洋武器らしい。まぁ例外はあるけど。 とにかくこれなら、引き斬りのような特殊な技能はいらない。必要なのは・・・・・・ありったけの力を叩きつける事。 それでなんとか隙を見つけて、ホーリーセイバーで動きを止める。今の僕なら、いける。 刃を右薙に打ち込むと、イクト兄さんは後ろに僅かに下がって鎌を頭上で回転させる。 「ダークナイト」 どこか泣き叫んでいるような声をあげながらその回転が早まり、刃に光が灯る。 そしてイクト兄さんの周囲に黒い風が渦を巻いて吹き荒れる。 「ストームッ!!」 その渦が大きく広がって僕達に迫ろうとしていた。僕は後ろに大きく飛びながらまた意識を集中。 着地と同時にロワイヤルソードを高く掲げて、迫り来る風に向かって刃を叩き込む。 「ホーリーセイバー!!」 放たれた金色の斬撃波が黒い風と衝突し、細かく混ざり合い風はマーブル色の光となって弾けた。 イクト兄さんは目を泳がせながら、脂汗を流しながらも全力でこちれに突っ込んでくる。僕も同じく前に走る。 【唯世、気合いを入れろっ! ちょっとでも怯んだら一気に押し込まれるっ!!】 「分かってるっ!!」 地力も技量も相手の方が上。そんな相手と戦う場合のコツも蒼凪君から教わっている。 それは・・・・・・気持ち。相手が格上だからこそ、気持ちまで負けてしまったら意味が無い。 だから一歩も引かず、恐怖も迷いも躊躇いも全部含めて相手をしっかりと見る。 そして呼吸を整え、乱れないようにしつつ全身と周囲の空間そのものに神経を張り巡らせる。 相手の一挙手一投足・・・・・・その全てを見逃すな。それで隙があるようなら一気に突っ込む。 でもその場合カウンターが怖いから、どこかで冷静でもいなきゃいけない。 大事なのは高まる気概と冷静さの融合。押し込みつつもどこかでクールで理知的な自分を保つ事。 ・・・・・・そこまで考えて、僕は自然と笑ってしまった。うん、教わった事はちゃんと覚えてる。 身体にも、まだまだ完璧じゃないかも知れないけど染みついてる。あとは・・・・・・やっぱり気持ちだ。 改めて柄を握り直して僕は、イクト兄さんに向かってロワイヤルソードを打ち込む。 「・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ふは・・・・・・ふははははははははははははははっ! 素晴らしいじゃないかっ!! さぁ戦えっ! それがお前達の罪の償いになるっ!! 戦って戦って、イクトに力を与えろっ!!」 イクトが刃を振るう度、汗を流す度に周囲の×たま達の輝きが強くなっているように感じる。 それがかなり怖いけど、とりあえずそこはいい。マジコレどうしよ、あぁは言ったものの下手に飛び込めない。 そんな事したらみんなの迷惑。なによりあたし・・・・・・そうだ、あたしはイクトに対して拳を握れない。 そんな事絶対にしたくない。だからあたしはイクトに対してはどう飛び込めばいいのか迷ってた。 「イクト・・・・・・どうしてにゃっ! なんでオレ達の声が届かないんだにゃっ!! てゆうかイクトバカにゃっ! こんな事になるまで・・・・・・それ止められなかったオレもバカにゃっ!!」 ヨルが叫びながら涙を流す。あたしも、正直泣きたい。 【何か、何か足りないんだ。何かがイクトの心を硬くなにしちゃってるんだよ】 ランが焦りながら唯世くんと斬り合うイクトを見る。でもおかしい。イクトの動きがその、どんどん良くなってるの。 顔色はもっと悪くなってるはずなのに、あたしから見ても斬撃の勢いが強まってる。それに徐々に唯世くんが圧されてる。 二の腕や頬に髪が浅く斬り裂かれて、唯世くんが傷だらけになっていく。でもあたしは・・・・・・あぁもうっ!! 「何かってなんだにゃっ!?」 【私にだって分からないよっ! でもそうじゃなかったらここまでっていうのはないよねっ!? 昨日だって結局洗脳解けかけてたし、絶対私達の声は届いてるはずだもんっ!!】 「でもぉ、それでもスゥ達に嫌われるような事を言ってましたぁ。どうしてでしょうかぁ」 「きっと、男の子だから」 ミキが悲しげにそう呟くから、全員がミキを見る。でもミキはすぐに首を横に振った。 「ううん、違う。意地を張り過ぎて、なんのためにそうしてたのか忘れちゃってるのかも。 ・・・・・・イクトの輝きは、恭文によく似てる。だからボク、なんとなく分かる。イクトは意地を張ってる」 「意地?」 「イクトはきっと、最初はお母さんや歌唄、みんなに幸せになって欲しくてイースターの言う事を聞いた。 そうする事が必要で・・・・・・だから最初に決めた事を通そうとしてるのかも。それが」 「不吉な、黒猫」 なら不吉な黒猫はイクトにとってただの中傷なんかじゃないって事になる。大事な人達を守るために背負った、自分の選択。 そうだね、確かに唯世くんやザフィーラさん達が言ってたみたいによく似てる。だってアイツも・・・・・・同じだから。 【でもでも、そんなんじゃダメだーってもう確定しちゃってるのにー!!】 「意地を張り過ぎちゃうと周りの声が聴こえなくなるものだしね。うん、ランがさっき言った通りなんだよ」 「イクト・・・・・・もうやめるにゃっ! それだけじゃ、それだけじゃオレら全員ハッピーエンドなんて無理なんだにゃっ!! もういいんだにゃっ! もう意地を張らなくていいんだにゃっ!! オレ達は・・・・・・もっと別の道を探さなくちゃいけないんだにゃっ!!」 だけどイクトは止まらない。力任せに鎌を左切上に打ち込む。 唯世くんはそれをガードするけど、吹き飛ばされて床を転がる。 それで起き上がって唯世くんが固まった。それでも唯世くんはすぐに立ち上がる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【唯世、早めに決めないとマズいぞ】 「分かってる」 さっき起き上がる時に見たらロワイヤルソードにヒビが入っていた。間違いない、イクト兄さんのパワーが上がってるせいだ。 それと同時に周囲の×たまの妖しい輝きがどんどん強くなる。・・・・・・これ、どういう事だろ。 僕は直接的に斬り合ってたから分かるけど、どちらかが強くなる度にもう一方も強くなってる感じがする。 まさかとは思うけど、イクト兄さんのパワーが上がったのは周囲の×たまのせい? それでイクト兄さんは、もう真っ青って言葉を使うのもためらわれるくらいに顔色を悪くしている。 荒く息を吐きながらも鎌を持って・・・・・・ううん、引きずっている。歩くのも辛いらしい。 「もう、やめろ」 パワーが上がるのに比例してイクト兄さんの身体もボロボロになっているように感じた。 だから瞳に涙を浮かべながら、剣を持つ事しか出来ない自分が情けなくて、そんな事を呟く。 「もう・・・・・・もういいんだっ!!」 僕はまたヒビの入っていつ砕けるかも分からないロワイヤルソードを両手でもってイクト兄さんに向かって走り出す。 そしてイクト兄さんは今にも倒れそうな程に息を荒くして、大きく目を見開いて同じように僕に踏み込んだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・あむさん」 また斬り合い始めた二人を見ていると、あたしの方にディードさんが来た。 「あの、あたしはいいから唯世くんの方にっ!!」 「その前にこれを」 ディードさんが手を開いて見せてくれたのは、クローバーを模した装飾のある鍵だった。 「やはりこれが例の?」 「・・・・・・はい、ダンプティ・キーです。ディードさん、これ」 「先ほど唯世さんが攻撃した際、月詠幾斗が落としたみたいです。私はそれを拾って」 イクト、デスレーベルになってもずっと身につけてたんだ。あたしは少し躊躇いながらもそれを手に取る。 するとその瞬間、目の奥に一瞬だけ寂しげに佇む子どもの絵が見えた。でも、それはすぐに消えてしまう。 あたしは当然驚きながら目をぱちくりさせる。もうその子の姿は見えないけど、記憶には残った。 あの子は声をあげながら、涙を流しながら泣いていた。・・・・・・あたしは自然と胸元のハンプティ・ロックを右手で掴む。 「・・・・・・ヨル、あたしどうしたらイクトを止められるのか分かったかも」 「えっ!? ほ、ほんとかにゃっ!!」 「うん。ただ拳を握るだけじゃだめなんだ」 イクトは今、ミキの言うように意地を張っている。だから『こうしなきゃいけない』って思い続けてる。 だったらその意地を、貫いていきた選択がこの場では悪手になっているって伝えなきゃいけない。 でもただ伝えるだけじゃだめなんだ。それはもうあたしもそうだしヨルがとっくにやっている。 それは単なる押しつけになっている。だったら、どうしてイクトが意地を張るのかを知ろうとしなかったら・・・・・・きっと助けられない。 「だから拳を、こころを開く。それで手を伸ばす。それでそれは・・・・・・あたしの戦い方で、あたしの強さ」 ディードさんの方を見上げると、まとまりのないあたしの言葉を受け止めたように頷いてくれる。 まるで背中を押してくれるような優しい表情に安心してしまうけど、それでもイクトの方を見て深呼吸。 そこから意識を一気に集中。まず強く・・・・・・強くロックとキーを握り締める。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 数度目の刃と刃の衝突。互いにやや袈裟気味に打ち込んだ斬撃がぶつかり合い、火花と衝撃を散らす。 でもその拮抗はすぐに崩れた。・・・・・・ロワイヤルソードの刃が真ん中から見事にへし折れた。 「・・・・・・くそっ!!」 刃は回転しながら飛び、入り口付近の床に鋭く突き刺さる。でもイクト兄さんは当然のように次に備えて動いている。 【唯世っ!!】 「まだだっ!!」 折れた刃を返し、僕はそれを叩きつけるようにイクト兄さんに踏み込む。 イクト兄さんは避けたりせずにそれを柄で受け止めた。 「まだ・・・・・・まだ戦えるっ!!」 まだ刃は残っている。まだ力は残っている。まだ・・・・・・心は折れてない。 だから前に進める勇気が出せる。だから僕は、イクト兄さんを見上げて必死に声を出せる。 「イクト兄さん、もうやめるんだっ!!」 柄と刃の接触点から火花が走る。イクト兄さんはやっぱり息を荒くして、相当疲れ果てている様子だった。 「あなたは大切な人達を守りたくてずっと黒猫を通してたんじゃないのかっ! だったらやめろっ!! このままではあなたの選択が無意味になるっ! あなた自身が、大切な人を傷つけ続けるっ!!」 でもその瞬間、腹に衝撃が走った。僕の身体は大きく後ろに吹き飛んでしまう。 【唯世っ!!】 ・・・・・・イクト兄さんは、僕を右足で蹴り飛ばしていた。次に刃を大きく後ろに振りかぶり、左逆風に振るう。 そうして黒い風がまた生まれ、未だ床に落ちていない僕に吹きすさぶ。 でもそんな僕の前にザフィーラさんが走り込んで、障壁を発生。風から僕を守ってくれた。 僕はその間に受け身を取りつつ床に着地。すぐに立ち上がって折れたロワイヤルソードを構える。 「辺里、まだいけるかっ!!」 「・・・・・・はいっ!!」 「ならば・・・・・・行くぞっ!!」 僕はザフィーラさんと一緒にイクト兄さんに向かって全力で走る。 でもこのままじゃダメかも知れない。どうすれば、どうすればイクト兄さんは止まってくれる? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『錠』と『鍵』は、もう揃ってる。あとはあたしのこころ次第。まずは、あたしからだ。 あたしからこころをアンロックしなかったらきっと届かないから・・・・・・うん、やれる。 「ダンプティ・ロック、ハンプティ・キー、お願い」 あたしは握り締めてたキーとロックを胸元まで上げる。 「イクトの事を助けたい。どうしてあんなに頑張っちゃうのか知りたい。・・・・・・力を貸してっ!!」 ハンプティ・キーをダンプティ・キーの鍵穴に挿し込み、素早く回す。それで簡単にアンロック出来た。 その瞬間それらから強い・・・・・・眩い閃光のような光が放たれ、あたし達はその中に包まれた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「このバカが」 ザフィーラさん共々突撃しようとしたら、横から素早く影が走り込んだ。そして・・・・・・イクト兄さんに右拳が叩き込まれる。 「まずは僕の分っ!!」 イクト兄さんは不意を突かれる形でその拳を左頬にマトモに受けた。てゆうか、それは蒼凪君だった。 蒼凪君は続けて左拳をイクト兄さんの腹に叩き込む。 「そして僕の分っ!!」 拳は腹に叩き込まれてイクト兄さんの身体がくの字に折れる。 でもイクト兄さんは少し後ろに跳んですぐに蒼凪君に踏み込んで来た。 鎌を素早く蒼凪君に向かって袈裟に打ち込んだけど、その刃は何も捉えない。 蒼凪君はその斬撃を身体を反時計回りに捻りながらも身を伏せて、その斬撃を回避していた。 そしてアルトアイゼンを素早く抜き放つ。その刃は鉄輝という光に包まれていた。 「最後に」 刃はすくい上げられるようにイクト兄さんの胸元に向かって打ち込まれた。 「僕の分だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 まるでイクト兄さんの腕や鎌をすり抜けたような斬撃を見て、僕は思わず息を飲んだ。 蒼凪君はその刃を振り切ってイクト兄さんを斬りながら大きく吹き飛ばす。 イクト兄さんの胸元が斬撃によって、服ごと大きく斬り裂かれる。でもそれは当然非殺傷設定の攻撃。 だから血が出たりとかは今のところない。イクト兄さんはそのまま床を滑るように叩きつけられた。 「・・・・・・うし」 「いや、蒼凪君・・・・・・自分の分しかないような」 「大丈夫。ティアナはティアナでちゃんと殴るそうだから」 「ランスターさんも同じなのっ!?」 あぁ、でもそっか。そう言えばご両親やお兄さん亡くしてるんだったよね。だからイクト兄さんの行動で色々考えちゃうとか? 確かにイクト兄さんの話を聞いた時ちょっと表情険しかったし・・・・・・兄さん、助けてもしばらく入院生活じゃ。 「と、とにかく九十九さん達は? というか他のみんなは」 それで入り口の方から後を追うようにニムロッドさんも来た。それで視線をあの倒れてる人に向ける。 「そっちは無事。で、僕達は」 蒼凪君もニムロッドさんと同じようにあの人に視線を向けた。 「・・・・・・自業自得とは言え死にかけてるあのバカを助けに来た。 アイツに殺しの重さなんて、背負わせるわけにはいかない」 「そっか」 その言葉がとても重く感じたのは、その重さを蒼凪君が知っているせい。だから僕はその背中を押すように言葉を続ける。 「だったら二人は星名専務の方をお願い」 僕とザフィーラさんは少し足を進めて、イクト兄さんの方に進む。 イクト兄さんはフラフラになって鎌を杖代わりにしながらも立ち上がっていた。 「出来るの? 得物折れてるのに」 「大丈夫。というか、やる。だから・・・・・・お願い。それは蒼凪君にしか頼めないから」 僕は魔法が使えないし、傷の治療みたいな能力も行使出来ない。だからこの場だと蒼凪君に頼るしかない。 「分かった。なら唯世、僕からプレゼントだよ」 その言葉に後ろを見ると、蒼凪君は左手を地面についていた。するとそこから蒼い火花が迸った。 蒼凪君が身体を起こすのと同時に腕も上げると、それに合わせて地面から物質が引き出される。 それはロワイヤルソードと同じ形状のロングソードがあった。ただし刃はクリアカラー。 蒼凪君は何も言わずにそれを逆手で掴んで、僕に差し出す。 「・・・・・・ありがと」 僕はロワイヤルソードを消して、その剣を受け取った。もう考えるまでもなく、蒼凪君のブレイクハウトで作った剣だよ。 刃は魔剣X製。だから蒼凪君が手に取った事で蒼色になっていた刃は一気に金色・・・・・・僕の色に変わった。 「んじゃ、早々に済ませるから・・・・・・ちょっと待ってて」 そう言いながら蒼凪君は僕に背を向ける。僕もその剣を持ち直して正眼に構えつつ、蒼凪君に背を向けた。 「了解」 それから僕は、改めてザフィーラさんと一緒にイクト兄さんに踏み込んだ。 イクト兄さんは、やっぱり先ほどと変わらずに僕達を見て目を見開いて踏み込む。 でもその瞬間、僕達は眩い閃光に包まれた。そのために驚く間もなく瞳を閉じてしまう。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 閃光に包まれて思わず目を閉じたあたしは、ゆっくりと瞳を開ける。 するとそこは・・・・・・まるで夜空の中のような星達がひしめく光の世界だった。 というかあの、あたしの身体が虹色のシャボンの中に包まれちゃってる。 それはちょうどあたし位の体型が膝を崩して座るような感じにしないと入れないような大きさ。 「これはなにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっぃぃぃっ!? てゆうかみんなどこっ!!」 【あ、私は居るよー】 「ボクも同じく」 「スゥも健在ですぅ」 「オレもだにゃっ! てーかイクトはどこにゃっ!!」 みんなあたしのシャボンの中に居た。てゆうか、キャラなりは解けてないから安心みたい。 それであたしは周囲を見渡すと、同じようなシャボンがいくつかあった。 「あむちゃん、これなにっ!?」 で、あたしの隣には唯世くんが居た。もちろんシャボンに包まれた状態。 「・・・・・・面白いですね」 「ディード、楽しそうだな。だが我はその・・・・・・狭い」 ディードさんとザフィーラさんも同じくらしくて、そこは安心。でもザフィーラさんは苦しそう。 というか、よっぽど辛かったのか一瞬で光に包まれながら大型犬状態に戻った。 「なんじゃこれっ!? ・・・・・・てゆうかシルビィ、苦しい。 あの、出てって。なにより抱きつくな。胸顔に当たってるから」 「しょうがないでしょっ!? なんか一緒くたに・・・・・・あ、これは私達が離れられないという暗示かしら」 【残念ですけどそれはないのですよ。だってだって、リインが既に身も心も一つになってるですからー♪】 「言ってる場合かー! てーか緊張感を持てー!!」 それでなんでかアンタとシルビィさん達も居るのね。いや、多分追っかけて来てくれたんだろうから何も言わないけどさ。 「・・・・・・あっちはあっちで楽しそうだから、放置しておこうにゃ」 【そうだね。でもでも、来て早々いきなりコレって・・・・・・恭文やっぱ運無いかも】 「それが恭文のアイデンティティだしね。しょうがないよ。でもコレ、何?」 「分かんない」 そう言いながら視線を落として、両手の中に残っていたロックとキーを見る。 「やっぱりロックとキーの力なのかな。でもこれでどうすれば」 『お母さん、寝てなくちゃダメだって。身体の負担にもなるから、俺達も会っちゃだめだ』 その声が空間に響いて、全員の視線がせわしなく動く。それで・・・・・・一つのものを見つけた。 ううん、ものって言っていいのかも分からない。空間に穴が開いたみたいになっていて、そこに一つの景色が浮かんでいるから。 そこに居るのは、さっきあたしが一瞬だけ見た男の子。その男の子が居るのは病院の通路。 松葉杖ついてたり包帯巻いてたりする人や、入院着みたいな服を着ている人に看護師さんも居るから間違いない。 それでその男の子は薄紫のワンピースを着て泣きじゃくる女の子の方を力なく見ていた。 『やだぁっ!!』 『歌唄』 あの男の子が女の子を歌唄と呼んだ。それに驚いている間にも映像は続く。 『会いたいよっ! 寂しいよっ!! お父さんも居なくなっちゃったのに・・・・・・このまま歌唄達どうなっちゃうのっ!?』 そのまま泣きじゃくる金色のツインテールの女の子を通りすがった人達が見る。 その瞳がどこか同情的なのはしょうがないのかも知れない。だって言ってる内容が内容だし。 『・・・・・・歌唄』 そんな中あの子は女の子の前にしゃがみ込んで、諭すように少し厳しめに声を出す。 あの子は涙を止めて、自分の名前を呼んだ男の子を見下ろす。 『泣いちゃダメだ。俺達見たいな子は泣いちゃだめなんだ。泣いたら同情される』 『同情って、何?』 『可哀想だって思われる事だ』 『可哀想だと、だめなの?』 その子はその涙声で発せられた質問に答えられずに、視線を落とす。落として・・・・・・そこで映像が消える。 でもすぐに別の映像になる。というかその映像の景色に見覚えがあった。アレ、唯世くんの家だ。 『おにーたんっ!!』 「こ、今度は僕っ!?」 ・・・・・・小さい頃の唯世くん激カワァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!! 『今日から幾斗君と歌唄ちゃんはうちで預かる事になったのよ』 あの二人に甘えるようにはしゃいでいる唯世くんを見ながらそう言うのは、栗色の髪をソバージュにした女性。 察するにあれが唯世くんのお母さんかな。てゆうかこれはもしかしなくても。 「これは・・・・・・もしや朝の話にあった」 「月詠兄妹が辺里家で世話になり始めた時の事か」 『二人ともとても可哀想な子達なのよ。唯世、優しくしてあげなさいね』 あの病院に居た人達と同じ同情の視線が二人に向けられた瞬間、胸が鋭く痛む。 それはあたしだけじゃなくてみんなも同じで、僅かに表情が歪む。そして映像が途切れた。 『可哀想』 『可哀想』 『可哀想』 『可哀想』 『可哀想』 映像は途切れたのに声は止まらない。色んな人達の同情の声が空間内に響く。 その度に胸に痛みが走る。悔しいとも悲しいとも言えない痛みで、どんどん苦しくなってくる。 「ヤスフミ、これって」 「間違いない。よくは分かんないけど僕達・・・・・・猫男と歌唄の過去、覗き見してるんだよ」 そうだ、あたしもう分かる。あの子は、小さい頃のイクトだ。だからどこか見覚えがあるように感じてたんだ。 でもどうしてコレ? ロックとキーは、これをあたし達に見せて・・・・・・そっか。イクトのこころをアンロックするための鍵がここにあるんだ。 というかあの、なんか電波系になったみたいだけど素直にそう思えるんだ。みんな軽く混乱してるのに。 ロックとキーがあたしの手元にあるせいかな。まるでロックとキーからそうだーって言われたみたいに納得出来ちゃうんだ。 やっぱりそういうの不思議になりつつも映像はまた別のものに切り替わる。 風景は唯世くんの家だけど、そこに司さんの姿が映っていた。司さんは相変わらず無表情なイクトに笑いかける。 でもその笑いは他の人みたいに同情の感情なんてなかった。いつも通りの、司さんの笑いだった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「可哀想なんかじゃないよ」 ソイツと初めて会ったのは、辺里家の縁側。唐突にそんな事を言って来て俺の隣に現れた。 俺がそれに内心ビックリしつつ左側に座っていたソイツを見ると、ソイツは俺に構ってないように庭を指差す。 「ほら、見てごらん」 どうやら指差してるとこを見ろという事らしいので視線をそちらに向ける。 そこは庭の木の一つで、歌唄と唯世が木の上の巣箱から飛び立とうとしている鳥を見てはしゃいでた。 「誰だっていつかはああやって親から巣立って独り立ちしていくんだ。それが早いか遅いかの違いだけさ」 どうやら俺と歌唄はその巣立って独り立ちとやらをしただけと言いたいらしい。 普通ならムカつくとこだったのかも知れない。でも俺は・・・・・・なんかストンと胸に落ちた。 「もう司さんったら」 呆れたようにそう言いながら、右側から唯世のお母さんがやってくる。 手には麦茶を入れた四つのコップを載せたお盆。どうやらコイツの分も込みらしい。 「こんな小さな子を相手にそんな・・・・・・可哀想じゃありませんか」 「そうですか?」 ・・・・・・その言葉に感じていた言葉に出来ない感覚が吹き飛んだ。 だからまた表情が硬くなっていると、司と呼ばれたソイツは・・・・・・変わらずに笑っていた。 「私はこんなに優しく接してあげているのにニコリともしない」 その瞬間お母さんの足が止まる。というか、一気に表情がこわばった。 「なんて可愛げのない子ども達なんだろう・・・・・・なんて思ってませんよね? 義姉さんは」 「な、何を言って・・・・・・!!」 どうやら正解だったらしい。お母さんは俺の側にお盆を置くと、何も言わずに早々に立ち去った。 なんかこう、驚きながらも改めて司と呼ばれたアイツを見る。アイツは、なんでか楽し気に笑ってた。 「『なんで分かったんだ』って思っているね。『こんな変な事を言う大人は今まであった事がない』って」 今度は俺がギョッとする番だった。てゆうか、お母さんの気持ちがよく分かった。 俺がそこの辺りで色々反省してる間に、ソイツは俺を見てまたクスリと笑う。 「そりゃそうさ。僕大人じゃないもん」 それが俺とこの変な奴との出会い。本当に変な奴なのに、妙に気になった。 だってソイツは本当に大人じゃないみたいなんだ。少なくとも俺の知っている大人じゃ、ない。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ それからしばらくして、俺にある変化が起きた。これも長い付き合いになる出会いだった。 ある日朝起きたら枕元に黒いたまごがあった。でもただ黒いだけじゃなくて、ガラがある。 真ん中がたまごが割れたみたいに白色でギザギザな模様があって、そこに黒色で動物みたいなマークがある。 というか耳っぽいのがあるんだけど・・・・・・なんだろ、これ。猫? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「あ、オレのたまごにゃっ!!」 【ならこの映像、ヨルが生まれる前のものだったんですか】 「でも司さん・・・・・・若い頃も素敵よねー」 「・・・・・・人に胸押しつけてる状態で発情するな、ボケが」 軽く呆れながらも狭い中ではしゃぐシルビィにツッコむと、なんかシルビィが体重思いっきりかけてきた。 「もう、そんなんじゃないわよ。大丈夫、私もうよそ見はしない事にしたから」 「よそ見しててもいいから力を抜いてっ! なんか苦しいしっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ たまごの事をあれこれ考えてて、誰かに相談しようとも思った。いや、捨てようとも思った。 だって気味悪いじゃないか。いきなり枕元にコレなんだしさ。でもそれは出来なかった。 なによりこのたまご、温かかった。だからこれがスーパーであるようなたまごじゃなくて、生きてるのはすぐ分かった。 その温かさが心地良くて毎日のように撫でている頃、また司の奴がある物を持って来た上で来た。 「・・・・・・父さんのヴァイオリン」 俺に手渡されたのは、大人用のヴァイオリン。だから俺の手には余る大きさ。 というより俺の胴体と同じ大きさ。これはどうしたのかと聞くように俺はアイツを見上げる。 「入院した奏子さんから預かっていたんだ。お父さんの気持ちがこもったヴァイオリンは、やはり君が持っておいた方がいい」 ・・・・・・まぁそうだろうな。母さんは父さんの事今でも待ってるだろうし、捨てるはずがない。 でも俺は・・・・・・思わずヴァイオリンをアイツに突き返してしまった。 「・・・・・・父さんの気持ちなんか分からないよ」 そうだ、俺には母さんの気持ちも分からない。だからこんなヴァイオリンは、いらない。 いつもの仏頂面を装おうとしても、それも辛くてつい視線を落としてしまう。 「父さんのせいで、母さんも歌唄も不幸になったんだ」 「うーん」 それから少し場が静かになった。でも突然俺の頬にアイツの手が当てられた。 殴ったわけじゃなくて、アイツは優しく俺を撫でてくれた。 「幸せって、なんだろうね。不幸せってなんだろう。・・・・・・一人で出て行ったお父さんは幸せだったのかな」 それは衝撃的な問いかけだった。俺・・・・・・父さんの事まで考えてなかった。 父さんは幸せだったのだろうかと改めて考えて、でも分からなくて・・・・・・だから首を横に振るしかない。 「・・・・・・分からない」 「そうだね。だから知りたいと思わない? お父さんの事」 アイツは俺の頭から手を離して、改めて俺にその手を差し出した。 「僕と一緒に探しに行こう。お父さんの本当の気持ちを」 本当は断っても良かった。でも、行かなきゃいけないって思った。だからそれからしばらくして、俺はコイツと旅に出た。 旅に出たらずっと感じていたモヤモヤが解消されるような気がして・・・・・・俺は一人黙って家を抜け出した。 でもそれに気づいた唯世が後を必死で追いかけてくる。それでも俺は振り返らずにヴァイオリンを背負いながら走った。 ・・・・・・ごめんな。唯世、歌唄。ごめんな。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「イクト兄さん・・・・・・それならそれでちゃんと話してくれれば」 【何を言っても言い訳になると思ったのだろうな。なにより唯世、イースターの跡継ぎ問題もある】 「・・・・・・あ、そっか。もしかしたら司さんが『みんなには内緒』とかってイクト兄さんに口止めしてたのかも」 唯世達の言うような事があったから黙っていたというのは、充分考えられる。これはぶっちゃけ失踪だったんだし。 僕がイースターの立場なら、当然辺里家の人間が居場所を知っているってやっぱ疑うしさ。 多分それで迷惑をかけてもアレだし、司さんは黙ってたんだよ。それで辺里家の面々を本気で混乱させた。 実際唯世の話だと唯世自身もそうだし妹の歌唄も当時泣きじゃくってたそうだしさ。効果は覿面だったと思う。 「・・・・・・ヤスフミ」 「何?」 「どうしたの? 表情がちょっと優しくなってる」 「うん、どうしたんだろうね。まぁ・・・・・・僕も分かるから」 9年前にイレインに派手に負けてからずっとモヤモヤしてて、それで旅に出た時の事を思い出した。 あの時の僕も周囲が出してくれる答えじゃ、周りのみんなの声だけじゃ我慢出来なかった。 周囲の環境から得られる物だけでは絶対に足りなかった。僕は、僕の足で答えを探しに出たかった。 僕は今の猫男の気持ちが少しは分かる。それに・・・・・・猫男が何でどうモヤモヤしているのかも。 あの周囲の大人の視線は僕も覚えがある。だから自然と胸が痛くなる。でも誰もそれに気づかない。 だけどきっとこの時、司さんだけはその気持ちに気づいてた。だから旅に誘ったんだと思う。 ただ単に難しい事情があるってだけじゃなかったんだよ。それに納得していると景色が変わった。 そこはどうやら外国らしく、もう風景が日本じゃありえない形になってる。でもあの、おかしい。 僕、その風景に見覚えがあるのよ。というか、僕もあの場所には前に何度も行った事がある。 「・・・・・・イギリスだ」 「え?」 「あそこ、イギリスだよっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ イギリスが意外と寒いというのはよーく分かった。まぁしょうがない、だって今は冬なんだし。 それに雪もはらはらと降って来ててさ。まぁここはしょうがない。だって今は冬なんだし。 ただまぁ、アレだよ。それでも・・・・・・それでも身体だけじゃなくて懐まで寒くなるのはおかしいと思う。 だから噴水に腰を下ろしてへらへら笑うこのバカに、年齢差とかそういうのすっ飛ばして怒鳴るわけだよ。 「金がないってどういう事だよっ!!」 「いや、さっきのマーケットで使い切っちゃったみたいで・・・・・・お財布ごと見当たらないんだよねぇ」 「それ絶対落としたかスられたんだろっ! カードはっ!?」 「全部お財布の中だよ」 頭が痛くなった。いや、目の前が真っ暗になったと言った方が正解かも知れない。だから自然と拳が震える。 「あ、でも安心して? パスポートだけは胸ポケットに」 「バカっ! 今日の宿とご飯どうすんだよっ!! なにより帰りはっ!?」 沸き上がる怒りのままに俺は、このムカつくヘラヘラ野郎を指差す。 「人の事散々連れ回しておいて・・・・・・結局父さんのアテだって何もなかったんじゃねぇかよっ!!」 「イクト君すっかり口が悪くなって・・・・・・或斗さんに似てきたねぇ」 「まるで感動したように涙ぐむなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 歌唄、唯世、辺里家のみんな・・・・・・ごめんなさい。俺はもしかしたらここで死ぬかも知れません。 というか俺のバカ。こんなバカを信じた俺のバカ。今度からもっと人の言葉は疑って・・・・・・泣きそう。 「まぁなんとかなるよ。パスポートがあるなら大使館や警察でも身元証明が出来るしね。 幸いな事にイギリスはそこまで辺境の国じゃない。手はないわけじゃないんだよ」 「・・・・・・あ、そっか」 なるほど、コイツの余裕はそこから来てたのか。ならバカじゃないのかも知れない。コイツはちょっとバカなだけだ。 「なら早速」 「でもその大使館の場所もそうだし連絡先も分からないんだよねぇ。あはははははは」 「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 コイツはマジで大バカだろっ! てーかもうマジで泣きたいっ!! キャラ崩壊とかそういうのすっ飛ばして泣きたいよっ!! 今だけは俺は泣いても許さると思いつつ頭を抱えてしまう。てーか殴りたい。マジで殴りたい。 「まぁなんとかなるよ。言葉が全く通じないならともかく、僕英語出来るし。 のんびり異国の空でも見上げていようじゃないか」 「雪なんかずっと見てたって凍死するだけだ。はぁ・・・・・・もう」 俺は背負ってたヴァイオリンをため息を吐きながら下ろす。・・・・・・こうなったらこのバカはアテにしない。 俺は一人でも生き残ってやる。それで必ず歌唄と唯世のところに帰る。そう決意を固めつつ、俺はケースを開けた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 小さい猫男が始めたのは、路上ライブ。ようするにヴァイオリンを演奏してそれで旅費を稼ごうとしたのよ。 普通ならこういうのは中々に厳しいものなの。だってお金自体はあくまでも善意で入れられるものだから。 だけど小さい猫男の演奏のレベルは・・・・・・やっぱりハンパなかった。だから示し合わせたかのようにお金がどんどん入れられる。 ここの辺りは猫男がまだ小さかったせいもあるかも。だけどそういう同情心だけじゃない。 猫男の演奏にどこか惹かれるものを感じて、そのためにお金を入れてくれる。頭を撫でて嬉しそうに感想を言う人まで居る。 そうこうしている間に、お金入れと化していたヴァイオリンのケースの中にはかなりの額が入ってた。 それを見た司さんは悪意なく感動したように表情を崩す。 『おぉ・・・・・・イクト君凄いっ! これで旅費に困らないねっ!!』 『黙れバカっ!!』 それで小さい猫男はさすがにムカついたのか、司さんを後ろから蹴り飛ばした。 殴らない辺りヴァイオリニストとしての素質があるのかも知れない。 「・・・・・・ヤスフミ」 「何?」 「ヒドいわね。てゆうか、これは誘拐とかそういうレベルじゃないわよ」 「うん、知ってる」 それは他のみんなも同意見らしくて、全員呆れ返ってる。てゆうか、ザフィーラさんに至っては涙目で目を逸らした。 「天河さん、もう少し頼りになる方だと思っていたんですが」 「これは100年の恋も冷めるぞ。恭文、お前は見習うな?」 「うん、分かってる。てゆうかシオンもヒカリも・・・・・・なんで出てきてる?」 だって危ないからずっと不可思議空間に隠れてたのに。 ぎゅうぎゅう詰めのせいで視線を向けられないけど・・・・・・横目で二人の方を見た。 「「出番が欲しくなった。だってここ数話空気にもなってないし」」 「・・・・・・うん、分かってた。おのれそういうキャラだったよね」 とにかくそんなヒモと化した司さんと小さい猫男の旅は続く。まぁ状況としては相当にヒドい。 だけど・・・・・・どこか楽し気な感じになっているのは、どうしてなんだろ。うん、猫男は今の状況を楽しんでる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ おかしい。父さんの事を知りに来たはずなのにいつの間にかヴァイオリン修行になってる。 ただまぁ、食べるのに困った時にはこれで生きていけるのが分かった事は収穫・・・・・・いやいやいや、それおかしいから。 なによりなんでそれで俺だけじゃなくてあのバカまで養うんだよ。絶対おかしいだろ。 疑問を感じつつも日本に居る間は得られなかった手応えみたいなものを感じつつも旅は続く。 とりあえず大使館の場所は分かったし連絡先も同じく。でも・・・・・・かなり遠かった。 まぁ元々居た場所が首都から離れてるところだからこれはしょうがない。なので俺達は首都を目指す事にした。 一応の簡単な処置・・・・・・あー、カードとかが勝手に使われないようにはしてくれるんだって。 だけど帰りの旅費関係やそういう手続きは直接大使館に出向かないとダメだそうだ。 もし問題があるようなら警察に頼んで保護を受ける事も勧められた。いや、むしろそっちの方が普通だとか。 イギリスの警察にも外国の言葉・・・・・・俺達が使う日本語が分かるスタッフも居るから、それで保護を受ける。 その上で大使館の職員と接触してという運びらしい。パスポートがあるならすぐ出来る。 でも俺は、俺達はそれなのに旅を続ける。てゆうか、俺がそれでもいいんだって言ってしまった。 弾きにくい大人用のヴァイオリンを必死に弾いて、それで得られる手応えをもっと感じたい。 これはお金どうこうじゃないのかも知れない。もっと別の何かが、俺の胸に響いてる。 そんな旅行も1週間が経ち、今日もまた別の場所で路上演奏。そんな時・・・・・・ギャラりーの中から二人ほど近づいて来た。 もう演奏自体は終わってたので頭を下げると、その内の一人のおばあさんが英語で話しかけてきた。 腰も大きく曲がって、身長もさほど変わらない。服装は・・・・・・冬だから温かそうなセーターとスカートだ。 そのメガネをかけたおばあさんはその孫らしいお姉さんと一緒に杖を突きながらここに来る。 でも俺は英語が出来ないので、上手く返事が出来なくてちょっと困ってしまう。 「・・・・・・あなた、月詠或斗さんの子どもか何かかな」 するとそのお姉さんがいきなり日本語で喋ってきた。 驚きながら見上げると、金色の髪を揺らしながらその人はニコリと笑う。 「あ、今のはこのおばあさんがそう言ってるんだ。えっと、日本語なら大丈夫だよね?」 「あの・・・・・・はい。というかあなた」 「あ、私これでも日本にはかなりの回数行ってるから。というか、数年ほど暮らしてた事もあるんだよ? だからペラペラ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「フィ、フィアッセさんっ!?」 金色のポニーテールの髪に柔らかい笑顔に声・・・・・・そうだそうだ、アレ絶対フィアッセさんだしっ!! 【恭文さん、どうしてフィアッセさんがいきなり出てくるですかっ!!】 「そんなの僕にも分からないよっ! 僕だって何も聞いてないしっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ というか、ビックリした。うちの蒸発したバカ父はあの有名歌手とも知り合いだったとは。 フィアッセさんから色々話を聞いて、そのおばあさんにもお礼をたくさん言ってその場で別れた。 今はその様子を後ろからしっかり見ていたと思われるバカと一緒に、近くのベンチで休憩中。 手応えは今日もたくさん。もちろんそれはお金じゃない。それで悔しいけど確かに見つかった。 行方とかそういうのは無理だったけど、父さんの事・・・・・・少しだけだけど確かに分かった。 「・・・・・・父さん、学生の頃に演奏のバイトをしながらヨーロッパ方面を回ってたんだってな」 「うん。ちょうど唯世君のお父さんと奏子さんも一緒だね。三人はそこで友情を深めた。 或斗さんと奏子さんが結婚したのも、ここで色々な経験をしたのが大きい」 「それであのおばあさんの店でも働いてた」 あのおばあさん、食事関係のお店・・・・・・あー、家族と一緒に食堂をやってたんだって。 今はもう年齢的な問題でお店はしてないそうだけど、それでも父さんの事は覚えてた。 俺のヴァイオリンの音色を聴いてすぐに父さんのヴァイオリンだって分かったらしい。 ちなみにフィアッセさんが居たのは、フィアッセさんもデビュー前にそこでうたってた事があるから。 しかもフィアッセさん、父さんのヴァイオリンの演奏でうたったんだとか。随分楽し気に話してた。 それで今日はたまたま時間が出来て遊びに来てて、一緒に散歩をしてる時に俺の演奏を見つけた。 「演奏を聴きに来た人達でお店は繁盛して、お客さんの一人とあのおばあさんの娘が結婚して」 「うん」 「フィアッセさんも、父さんの演奏でうたった事を幸せそうに話してた。本当に楽しくて素敵だったってさ。 ・・・・・・それであのおばあさん、父さんに会ったら伝えて欲しいだってさ」 どこか清々しい気持ちになりながらも、俺は・・・・・・青く晴れた空を見上げる。 「みんなに幸せをありがとう・・・・・・って。ホント、笑っちゃうよな。父さんがどこに居るのか知らないのに。 フィアッセさんもフィアッセさんだよ。アレ、絶対知ってるぞ? てーか知らないはずないよな」 「だろうね。フィアッセ・クリステラさんは今や世界の歌姫だもの。なにより君のお父さんの知名度も中々高いし」 「なのに同じように俺の頭撫でながら言うんだぞ? それも同情とか可哀想とかも見せないでさ。 ホントおかしいっつーかなんつうか・・・・・・あれじゃあ嘘だって疑いたくても疑えないだろ」 別にフィアッセさんが知ってておばあさんと同じ事を言ったのはいい。おばあさんの目の前だったんだしさ。 おばあさんが日本語が分からないと言っても、そういうの空気で伝わるもんだろ? だからここは怒ってたりしない。 むしろそういう風に気を使わせて、苦しい想いさせて申し訳ないとも思ってる。でも・・・・・・それだけじゃない。 あの人、本当に父さんの演奏でうたえた事が、父さんの演奏に触れられた事が幸せだって思ってるんだ。 それで俺の回りに居た大人のように、俺の事を可哀想なんて思ってなかった。ちゃんと、俺の事を見てくれていた。 そこだけは絶対に嘘じゃないのは伝わった。だから・・・・・・空を見ながら自然と言葉が止まってしまう。 「イクト君?」 そのまま視線を落として、俺は俯く。俯いて・・・・・・必死に普通のフリをする。 「父さんのヴァイオリンは、誰かに不幸を呼んだりしてなかったんだな」 「・・・・・・そうさ、誇り高き野良猫君」 そのまま俺はバカに抱き寄せられる。それで胸元に肩を埋めて・・・・・・身体を震わせる。 俺は、泣いていた。歌唄に『泣くな』って言ったのに・・・・・・泣いてしまっていた。でも、涙が止まらない。 「もう大丈夫、君は誰かに同情されたり指図されなくていい。君はもう」 『自由にゃっ!!』 その声は胸元から響いて、涙が流れながらも俺は胸元を見る。すると服の内ポケットに入れてたあのたまごが飛び出した。 たまごは白い光に包まれながら真ん中に割れ目が出来て、次の瞬間にはパカリと開いた。 「にゃっ!!」 そこから出てきたのは、俺と同じ髪の色をした猫耳猫尻尾猫手足の小さな子。ソイツは俺の側まで来て笑いかける。 「よろしくにゃー、イクトー」 俺はついアイツを見上げる。アイツは・・・・・・俺の方を見て優しく微笑みながら頷いてくれた。 いつもならムカつくとこだったけど、俺は何も言わずにその子に両手の平を差し出した。 その子は笑いながらも俺の手の平の上にチョコンと座った。・・・・・・そっか、俺やっと分かった。 この子が入ってたたまごが壊せなかったのは、俺にとって大事なものだって知ってたからだ。 そうだよな、大事じゃないわけないよな。なんかこう、俺・・・・・・やっと分かった。 「・・・・・・探したぞ、月詠幾斗」 分かった答えに喜ぶ間も無く、俺に新しい首輪が付けられようとしていた。 俺を呼ぶ険しい声の方を見ると、そこには・・・・・・黒服黒サングラスと言った怪しい出で立ちの男達が居た。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【アレ、イースターの実行部隊じゃないですかっ!!】 「なるほど、ここで月詠幾斗は捕まって家に連れ戻されたのか」 「ではこの段階で星名専務は星名奏子と結婚。イースターは事実上星名専務に乗っ取られた」 ザフィーラさんとディードさんの言う通りらしい。映像の中でイクトは乱暴に腕を掴まれて引きずられる。 司さんも抵抗しようとするけど他の人達に阻まれて・・・・・・二人は引き離された。そこで映像は途切れる。 でもそこから次の映像にはいかなかった。あたし達の周囲の景色がせわしなく右から左に流れていく。 その中で今まで見ていた映像達が浮かんでは消えて・・・・・・これ、何? 「イクト兄さんの記憶が、流れている?」 【く、もう限界という事なのか】 『いいか、お前に音楽など必要ない。あの父親のようになられても困るからな』 流れていく映像の中からも声が響く。アレは・・・・・・家のリビングみたいなところ。 力なくソファーに座る髪の長い女の人と、そう高圧的に口にする星名専務の姿が見えた。 『イクト、私事務所のマンションで暮らす。あんな人達、お父さんでもお母さんでもない』 次は歌唄だ。歌唄はそう告げてイクトに背を向けて歩き出した。その後ろにどこからともなく星名専務が現れる。 『イクト、お前には自由など許さんぞ。逃げ出せば残された者がどうなるか分かっているな? 一生を賭けて父親の罪を償え』 「・・・・・・やっぱりイクト兄さんは」 【あぁ、脅されていたんだ。なんと卑劣な】 それで次に響く声・・・・・・ううん、これはヴァイオリンの音色だ。優しいヴァイオリンの音が響く。 あたし達の目の前を流れていく映像の中には、温かい庭先で寝転がる犬と優しくヴァイオリンを弾くイクトの姿があった。 「アレは・・・・・・ベティっ! まさかあの時のっ!!」 『・・・・・・おやすみ、ベティ』 その声はヴァイオリンと弦を下ろして、ベティを優しく見つめるイクトの声。その声は、慈しむような柔らかい声だった。 「待ってっ! 僕はあの時の・・・・・・あの時の事がっ!!」 でも唯世くんの声を無視するように映像は流れてしまう。もうイクトの顔も見えなくなってしまった。 それで次にあたし達の前に現れた映像は・・・・・・砕ける数個の×たま達。ううん、斬り裂かれたんだ。 『エンブリオ以外のたまごは全て無価値なガラクタだっ! 始末しろっ!! これは命令だっ!!』 それを成したのは、ブラックリンクスにキャラなりしたイクト。イクトが×たまを爪で斬り裂く度に胸に痛みが走る。 これは誰かのたまごを、夢を、『なりたい自分』を壊す度に受けてきたイクトの痛み。 なら最初に感じたあの痛みは・・・・・・あぁそっか。ロックとキー、あたしようやく分かったよ。 イクトのこころをアンロックする鍵は、これだったんだ。イクトの『なりたい自分』は、今の形じゃない。 最初の痛みも次の痛みも、全部今のイクトにとって大事なものなんだ。だから苦しくて、こんなに悲しい。 だったらあたしは・・・・・・あたしがやるべき事は、きっと一つだけなんだ。 ”その通りよ、あむちゃん” 懐かしい声が頭の中から響いたその瞬間、あたしはロックとキーを握り締めながらあの言葉を呟いていた。 「あたしのこころ、アン」 『解錠』 「ロック」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 流れていく記憶の奔流がいきなり弾け、僕達はどこかへ落ちる。てゆうか展望台の床に叩きつけられた。 まぁそれほど高いとこからじゃないし、数センチ浮いてたってレベルだけど・・・・・・やっぱり痛いものは痛い。 「痛たた・・・・・・もう何っ!? てゆうか何があったのよっ!!」 「僕も知らない。てゆうかシルビィ、その前に・・・・・・どいて」 「え?」 シルビィは今現在、僕の頭の上に座ってます。断じて顔の上ではない。 しいて言うなら左頬がシルビィのお尻。右頬がコンクリに圧されてサンドイッチ。な、なんでこんな体勢に。 「・・・・・・ちょ、ヤスフミ何してるのっ!?」 「それは僕が聞きたいわボケっ! てーかどいてー!!」 【シルビィさん何してるですかっ! そういうのは順序があるですよっ!?】 「そんなの知ってるわよっ! なによりわ、私・・・・・・こんな大胆な体勢した事ないのにー!! ヤスフミ、やっぱり責任取ってねっ!? もう私他の人のお嫁になれないわよっ!!」 「そこについては後でしっかり協議するから今はどいてー!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ザフィーラ、大丈夫ですか?」 「なんとかな。・・・・・・どうやら元に戻ったようだな」 「そうですね。でも・・・・・・アレ、あむちゃんは」 まずは周囲の状況確認。場所自体はさっきまで居た展望台。それでイクト兄さんも星名専務も動きを止めて空を見上げてる。 ・・・・・・そうだ、空だ。僕達は自然と空を見た。空は、眩いくらいの光で溢れかえっていた。 【唯世、アレは】 「・・・・・・うん」 そうだ、僕達はあの光を知ってる。理屈じゃなくて感覚的なもので分かるんだ。 夏ごろアレと同じものを僕達は見た。だからあの中にあむちゃんが居るって、言い切れた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ダイヤ形の光達がひしめく世界の中にあたしはいつの間にか居た。てゆうか、何も着てない。キャラなりも解けてる。 だけど怖い事なんてなにもない。あたしはこの世界を知ってる。だから目の前に突然たまごが現れても驚かない。 「・・・・・・ようやくお目覚め?」 『えぇ。今が必要な時だと判断したから。私は素晴らしく空気が読めるもの』 その声と共にたまごが割れて、中からオレンジの髪をツインテールにした女の子が出てきた。それは、言うまでもなくダイヤ。 この世界は以前ダイヤがたまごに戻った時にも来た事がある。だからすぐにダイヤなんだって分かった。 「あむちゃん、お久しぶり。でも今は時間がないから挨拶も後回し」 「うん」 「私はあむちゃんの中にある『キラメキ』そのもの。だからあむちゃんといつでも一緒。 あむちゃんが答えを探してそれを見つめられるなら、私は必ずあむちゃんの力になる」 「・・・・・・うん」 そうだ、ダイヤはいつでもそうしてくれた。ブラックダイヤモンド事件の時も、敵側に回ったけどずっと問いかけてくれてた。 明治時代に月夜と戦った時も、ただ怒りに囚われそうになったあたしに『それでいいのか』と声をかけてくれた。 あたしは自然と自分の手の平を見る。その手は小さくて弱くて、でも・・・・・・もう開かれていた。 「さぁ、答えを見つけて」 「もう、見つけてるよ」 意外そうな顔をしたダイヤはともかくとしてあたしは手を、開かれた自分のこころを、答えそのものを見て笑う。 「あたしは確かに弱くてバカで、ただの女の子。司さんが言うみたいに主人公って言うには、頼りなさ過ぎる。 あたしの知っている強い人達みたいにはなれないかも知れない。強くなんて、なれないかも知れない。だけど」 笑いながら顔を上げて、ダイヤを見た。 「あたしにはあたしの強さが、あたしの戦い方があるっ!!」 その瞬間に光が弾けて、あたしの姿が一瞬で変わる。 懐かしい感覚に笑いを深くしながら、あたしは夜空の中で身体を時計回りに回転させた。 【「キャラなり」】 右手に現れたマイク型のステッキを身体の前にかざして、こちらを呆然と見ていたイクトの方に向ける。 【「アミュレットダイヤッ!!」】 ・・・・・・もう迷いはない。全部じゃないけど、イクトの事が前より少しは分かった。だから戦える。 そうだ、あたしは戦うっ! あたしなりの戦い方とあたしなりの強さで、イクトを・・・・・・イクトを守るっ!! (第122話へ続く) あとがき 恭文「というわけで、本日のお話はアニメしゅごキャラの第100話・・・・・・タイトルはネタバレのため伏せます」 シルビィ「またなのね?」 恭文「うん。まぁ次回冒頭ですぐ分かるけどね。とにかく今回のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」 シルビィ「光編も残すところ今回を含めてあと3〜4話と聞いてビックリなシルビア・ニムロッドです」 恭文「あらそうなの?」 シルビィ「えぇ。なんでもラストバトル開始なところまでは書いたらしいの。そこを超えれば後はエピローグね」 (でも何気に構築が難しいです。出来る限りガーディアンメンバー全員に見せ場作ろうとするとそれはもう大変な事に) 恭文「まぁ次回の話はもう書き上げてるからそこは察しがついたけど・・・・・・ラスボスアレだしなぁ」 シルビィ「アレなのよね。ノリとしてはA'sの第12話に近くなるかもとは言ってたわ」 恭文「でも能力は闇の書以上にチート・・・・・・てゆうか、ヘタしたら親和力よりチートかも」 シルビィ「アレだものね」 (そこの辺りもぜひ次回に。多分ガチにチートレベルだと思います。・・・・・・原作準拠なのに) 恭文「というわけで、今回のお話はデスレーベル対あむと唯世達。でもそこは一旦中断」 シルビィ「メインはロックとキーの力で見た幾斗君のビギンズナイトよね。それでアミュレットダイヤの覚醒」 恭文「何気にアミュレットダイヤ自体の出番も1年近くなかったんだよね。最後に出たのドキたま無印の超・電王編だし」 シルビィ「あー、アレね。アレでアミュレットフォーチュンが出たりして・・・・・・アレ、ヤスフミ」 恭文「何?」 シルビィ「アミュレットフォーチュン・・・・・・あむちゃんのてんこ盛りって、確か原作だと一度しか出てないのよね? それでその話の時のあとがきにも最終決戦で出たとかなんとか言ってて・・・・・・つまりその」 恭文「まぁそこは次回を見てのお楽しみだね。で、何気にこの光編って謎が多いのよ。 なのでラストも近くなったので、現時点での謎を一旦整理しましょー」 ・御前は本当に星名専務の孫? ・御前がエンブリオを求めた理由は何? ・イクトがキャラなりしているあの黒いたまごは何? ・予言が現実になる場合一体何が起こる? ・そもそもロックとキーってなんぞや? シルビィ「あ、確かに気になる所が多いわね。特にほら、ロックとキーよ。 今回みたいな事が出来ちゃったり、あれの力であむちゃんがキャラなり出来るようになったりしたし」 恭文「何気に不思議アイテムなんだよね。それでキーもあっち行ったりこっち行ったりでどこで出てきたのかもさっぱりだし」 シルビィ「そこの話もやるの?」 恭文「うん。ただここは最終決戦終わってからだね。原作でもそれから話が出るようなものだから。 ただ後の事に関しては・・・・・・作者ー、次回ないし次々回で必ず解決出来るよねー?」 (もちろん。てゆうかもう書きあがってる分で完全解決) 恭文「ならよかった。というわけで、次回も楽しみにしつつ今回はここまで。お相手は蒼凪恭文と」 シルビィ「ヤスフミに責任についてちゃんと協議したいと思うシルビア・ニムロッドでした」 恭文「え、そこ忘れてなかったのっ!?」 シルビィ「当たり前よっ! あんな・・・・・・男の人の顔に乗るなんて、した事ないのにっ!! わ、私は確かにお姉さんだけどそれなりにウブなところもあったりするのよっ!? ピュアなんだからっ!!」 恭文「自分で言うなボケがっ!!」 (そして、二人はひたすらにバトル・・・・・・仲良いよなぁ。てゆうか、この二人の絡みは書いてて楽しい。 本日のED:北出菜奈『希望のカケラ』) なぎひこ「・・・・・・でも司さん、大胆ですよね。普通に訴えられる危険もあったのに」 なのは「まぁイースターの影響力を考えると他に方法がなかったんだろうけど、でもアレはなぁ。 というかね、ありえないと思うのっ! お財布スられて子どものヒモ同然ってっ!!」 (さすがにお母さんだから、こういうのは見過ごせないらしい) なのは「てゆうかアレ、家なき子で安達祐実かなっ!? もうあのままその路線行きそうだったしっ!!」 なぎひこ「・・・・・・あの、家なき子で安達祐実さんってなんですか?」 なのは「・・・・・・へ? あの、ちょっと待って。なぎひこ君家なき子って知らないの?」 なぎひこ「いや、童話ですよね。家なき子レミ。でもそこに安達祐実さんが絡むのは」 なのは「・・・・・・・・・・・・ジェネレーションギャップきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 なぎひこ「あの、なのはさんっ! どうして頭抱えて泣くんですかっ!! 僕何か悪い事言いましたっ!?」 恭文「・・・・・・まぁなぎひこが生まれる前のドラマだしなぁ。それはしょうがない。てーかなのはもギリギリだし」 フェイト「あ、ドラマだから安達祐実さんの名前が出たんだね。面白いの?」 恭文「面白いけど・・・・・・フェイトは見るの覚悟居るかも。うん、かなりね」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |