小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 第5話 『始まるJ/二人が切り札っ!?』 前回のあらすじ。フェイトがこっちに来て幸せだーと思ったら、急転直下な出来事が起きました。 なんか僕と日奈森あむが普通にガーディアンに入る事になりました。てゆうか、ジョーカーになりました。 ・・・・・・意味分かんないんですけどっ!? どうしてこうなったっ! どうしてこうなったっ!! そもそも僕ガーディアンに入るつもりなかったのにっ! だから思わず二人でロイヤルガーデン乗り込んだしっ!! 「ねぇアンタ達っ! ちょっとコレどういう事っ!?」 「そうだよそうだよっ! 僕も日奈森あむも全く聞いてなかったんだけどっ!!」 なのに奴らは普通にお茶飲んでお菓子食べてた。そして僕達の方をキョトンとした顔で見てる。 うわ、なんですかコレ。まるで僕達が空気読めてない行動取ったみたいだからやめてよ。 「何って・・・・・・今日のおやつならブラウニーだけど」 「うんうん。なでしこのブラウニー好きー♪」 「「ちっがーうっ!!」」 まぁ分かるよっ!? 確かになでしこは料理上手だからそこは分かるさっ!! 何気にそのブラウニーは美味しそうだなと思って軽く食指が動いたさっ!! でも違うんだよっ! そうじゃないんだよっ!! 僕達が求めてる答えはそうじゃないのっ!! 僕達が求めてるものはお菓子じゃないのっ! もっと別の何かなんだからっ!! 「てゆうか人をガーディアンに入れておいて・・・・・・ジョーカーってなんですかっ!!」 「なんだお前ら、ジョーカーも分からないのかよ。ジョーカーってのは」 僕は即座に両手を合わせて石の床に当てると、蒼い火花が走る。そして瞬間的に槍を生成。 それを一気に右手で保持し、今呆れたように説明しようとしたアホに突きつける。 いや、正確には空海の持っていたブラウニーに軽く突き刺した。それでやさーしく笑いかける。 アレ、どうして空海は急に汗を垂らしながら僕を見るんだろ。うーん、おかしいなぁ。 「空海、ジョーカーが切り札な事くらいは僕も知ってるんだよ。きっと日奈森あむも知ってるよ」 試しに視線を向けると、どうしてか引きつった顔で何度も頷いた。うん、良い事だよ。 「ようするにアレでしょ? 人数満杯だから特別枠作って僕達入れたんでしょ? どうせ唯世の未来予想図な理事長さんの指示でしょ? うん、全部分かってるよ」 以前も話したけど、ガーディアンのメンバーは初代Kチェアでもあるこの学校の理事長の司さんが決めてる。 日奈森あむを入れたのは・・・・・・察するにランとミキとスゥが居るからだと思う。ここはちょい事情込みなんだ。 「そ、そうか。でも恭文、それならお前マジ落ち着け? ほら、俺のブラウニーにめっちゃ刺さってるし」 「・・・・・・そういう事を聞きたいんじゃないんだよっ!! なんで当人達にそこを今まで話してないかを聞いてるのっ!!」 「だからお前話聞けよっ! あとその周囲の武装は引っ込めろっ!! 銃刀法違反で捕まるぞっ!!」 「その前にお前が僕の話聞けっ!? そして武装は気にするなっ!!」 なお、その周囲にどういうわけか日本刀とかブロードソードとかハンドアックスとか大量にあります。 全部ブレイクハウトで生成したのよ。これも全てはこれまでの修行の成果。物質変換のスピードも精度も上がってるの。 「え、えっと・・・・・・八神君それはなにっ!? なんか床が武器に変化したんですけどっ!!」 「床は気にするな」 「気にするからっ!!」 僕は槍を空海のブラウニーごと引いて、それを左手で引っこ抜いた上で足元に突き刺す。 で、ブラウニー咥えつつ両手をパンと合わせると足元の周囲から火花が上って、造られた武装は全て元に戻る。 「とにかく・・・・・・あ、これ美味しいな。とにかく・・・・・・はむはむ。 とにかく・・・・・・うん、良い味だ。とにかく・・・・・・そういう事だから。分かった?」 「分からねぇよっ! お前が俺のブラウニーふんだくって満喫してるって事以外はさっぱりだっ!!」 「空海、そんなんだからあの子を泣かせてばっかりなんだよ。もうちょっとしっかりしようよ。 空海がバカやる度にあの子は泣いて、僕は相談されて慰める事しか出来ないで」 「そうだよ相馬君。僕は知らないけどそんな子が居るなら泣かせてばっかりはダメなんじゃないかな」 「唯世、お前話の噛み砕き方おかしいだろうがっ! お前マジもうちょっとしっかりしろっ!? キングなんだしよっ!!」 それでも空海は息を吐いて、僕達の方を困った顔で見る。でも勘違いだ。むしろ困ってるのは僕達なんだ。 「てーかアレだ。俺らが説明すべき事は全部今恭文が言っちまったから、後は言う事ないぞ」 「え、空海そうなの? てゆうか八神君が言ったって」 「うん、そこは八神君が言った通りなんだ」 ブラウニーを食べながら、唯世の方を見る。ちなみに日奈森あむは・・・・・・やっぱ戸惑い気味。 「二人にやってもらうジョーカーはガーディアンの緊急枠で、特別任務担当職。 本来ガーディアンは僕達四つの椅子しか無いんだけど、理事長が二人にはどうしてもって事で」 「いやいや、唯世くんちょっと待って。理事長って何かな。なんでいきなり理事長の話に」 「あ、そういえばそこも説明してなかったよね。その・・・・・・実はガーディアンの選出は、僕達や一般の先生には権限が無いんだ」 「はぁっ!?」 やっぱり日奈森あむは知らなかったようなので、唯世が簡潔に説明して・・・・・・驚いた顔したけど納得したみたい。 「・・・・・・つまりアレだ。僕達がガーディアンに入るのは理事長命令も同じって事だよ」 「そ、それじゃあ辞退とかって」 「もう一回転校すればいいんじゃないの? 次の学校はガーディアンの無いところでさ」 つまり暗に『それくらいに継続不可能な理由がないと、基本無理』と言ってます。 「そんなぁ」 だから日奈森あむは肩を落として落ち込んで・・・・・・そんなに嫌なんかい。 僕はもう受け入れるしかないと、ブラウニーを食べながらも思い始めたのに。 「もうー、あむちーもそんなに落ち込まなくていいのにー。ジョーカーは楽なんだから。 ジョーカーはガーディアンの通常業務に関しては基本ノータッチでいいんだよ?」 「・・・・・・やや、それマジ? だってガーディアンの通常業務って相当大変なのに」 僕がガーディアンに入らなくてもいいやと思ってた理由の一つはここなのよ。 まずガーディアンは忘れがちだけど生徒会という役職上、学校の行事や維持に関しての仕事が多い。 例えば花壇の水やりに各種イベントの準備や運営。あとはアンケートの取りまとめや発表。 与えられた権限と権利の分だけ、ガーディアンはもう洒落じゃなく仕事量が多い。 学校のみんなは唯世達の事を一種の崇拝対象みたいに見てるとこあるから、そういう地道な活動に気づいてないのよ。 そこに今話が出てる特別任務の事もあるから、何気にガーディアンの活動で取られる時間は多い。 魔導師の仕事とかもあるから、正直そこまでちゃんとこなせるか分からなくて・・・・・・ちょっと不安だなぁ。 「僕、入るなら覚悟決めて全部手伝う必要あると思ってたんだけど」 「でもでも、そういう話に決まっちゃったんだー。その分特別任務の方を頑張って欲しいって事みたい。 それに・・・・・・ほら、恭文には手伝ってもらったりしたから分かるかもだけど、最近多くなってるし」 ややが困ったような顔で言ったのを見て、僕は他の三人の方に視線を向けた。 三人もややと同じような顔で頷いて来たので、そこは一応納得した。 「なるほど。だから日奈森さんとお兄様をガーディアンに入れて戦力強化と」 「そういう事だな。てーかアレだ。恭文の場合どっちにしたって入った方が得だろ。 お前、普通に過ごしてても特別任務絡みのゴタゴタに巻き込まれやすいんだからよ」 ・・・・・・そこを言われると非常に辛い。確かにガーディアンに入ると、欠席に遅刻に早退自由だしなぁ。 だから苦虫を噛み潰したような顔でみんなの事を見てしまう。 「そうね。そのために授業の出席日数にも、何気にまばらに穴が開いている状態だもの。 魔導師のお仕事も継続中だから、余計になのよね。先生達もいい加減気にし始めてるわよ?」 なぜそこを一生徒であるなでしこに知られているのかという点については、第2話を見てもらえれば分かると思う。 日奈森あむの根っこの性格すら把握していたガーディアンメンバーなら、これくらいの事は朝飯前なのよ。 「あんまりこれが続くと、リインフォースさんやシャマルさんもそうだけどフェイトさんだって心配するわ。 恭文君の性格を考えると、ここの辺りを一切気にせずに事件に関わるのは確実でしょうし」 「お兄様、完全に見抜かれてますね」 「それで気を使われてるな。まぁ入る資格がある故だろうが」 そうだね。でもアレだよ、なんか辛い。だから今苦笑い浮かべてるもの。 「そういうわけなんで八神君も日奈森さんも、納得して・・・・・・くれると嬉しいな」 「でもあたし・・・・・・八神君と違って、ガーディアンなんてキャラじゃないし」 何を僕の方をチラチラみながらいきなり言ってくるか。僕だって基本そういうのはキャラじゃないし。 エンブリオも唯世達とは協力し合いつつ、フェイトと二人でのんびり探そうと思ってたのに。 「まぁまぁ、そう言わずに。というかほら」 「まずはこれを見てくれよ」 ややと空海は机の下にもぐりこんでゴソゴソとして・・・・・・立ち上がってから二人は僕達の前にあるものを見せつけた。 それを見て日奈森あむは軽く引き気味に声を出し、僕はつい身を乗り出してそれを見てしまう。 「二人用のガーディアンケープ、もう容易しちゃいましたー♪」 「ついでに恭文には二つ分、日奈森には三つ分のしゅごたまが入るポーチもあるぞ」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんか外堀が埋められてるしっ!! てゆうかそれはマジだめっ! あたしの美的センスに反するのー!!」 「あ、これいいね。あー、でもコートとの兼ね合い・・・・・・いや、むしろ合う?」 コートの上にケープを羽織って・・・・・・おー、なんかハードボイルドー♪ 「よし、これ採用っ! 唯世、みんな、よろしくねー!!」 「いやいや合わないからっ! てゆうかアンタちょっと思ってたけどセンスないってっ!! なんでいっつも同じコートッ!?」 「そんなのこのコートが僕が魔法で作った特殊装備だからに決まってるじゃない」 アレから改良に改良を重ねて、より進化したハイパーコートVer3.5だよ。素晴らしいでしょー? 「なにそれっ! てゆうかずっと同じはダメじゃんっ!! もうそのコート禁止だからっ!!」 「なんで今のところ友達でもなんでもないおのれにそんな事言われなくちゃいけないのっ!? ありえないよねっ!!」 「まぁまぁ、二人とも落ち着いて? ・・・・・・まず日奈森さん、ケープは公式行事の時だけ着てもらえればいいから」 「え、マジ?」 そこでいきなり日奈森あむの表情がほころぶのは、多分そこまであのケープが嫌だからだよ。 うーん、僕は良いと思うんだけどなぁ。コートと合わせたら最高な感じだよ。 「一緒に頑張ろうね、日奈森さん」 「・・・・・・唯世くん」 ・・・・・・釣られかけてるし。また安い女だよ。やっぱ唯世は餌になるんかい。 「日奈森はこれでOKとして・・・・・・恭文、お前はどうすんだ? まぁ魔導師の仕事もあるだろうから、理事長も無理は言わないとか言ってたけどよ」 「当然やるに決まってるでしょ。僕はここに宝探ししに来てるわけだし、今はそっち優先だよ。なによりコートとケープを合わせて」 「いや、お前マジでそれやめろ。俺でも分かるぞ。それはセンスないわ」 「失礼な。僕は常にハイセンスだっつーの」 こうして元々四人のガーディアンに僕達という切り札が入って、ガーディアンは六人体制となった。 これで出席や途中退席の事でいちいちツツかれなくて済むので、とりあえずは一安心かな? 魔法少女リリカルなのはA's・Remix とある魔導師と閃光の女神のえ〜すな日常/りた〜んず 第5話 『始まるJ/二人が切り札っ!?』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 結局唯世くんの笑顔にほだされる形であたしはガーディアン入りを了承してしまった。 そして八神君はあのコートを脱ごうとしない。どんだけお気に入りなんだって言いたくなる。 やばい、改めて見るとこの子センス無い。お菓子作り手伝ってくれた時の服もアレだったし。 でもそれはそれとして、あたしは唯世くん達から『渡す物がある』と言われてあるものを見せられた。 それは今あたしの目の前にある、一つのロック。 「・・・・・・いつの日か、三つのしゅごたまを持つ者が現れた時、このロックを託せ。 初代キングはその言葉と共に、後継のガーディアンにハンプティ・ロックを残したんだ」 テーブルの上に置かれた綺麗なクリスタル装飾のロックを見て、みんなどこか楽しそうにしてる。 でもそれだとコレ・・・・・・あたしが持つの? いや、確かにあたししか三つのしゅごたま持ってないけど。 「ロックって事は・・・・・・これってキーもあったりするの?」 「さぁ・・・・・・それは分からないわ。ただ私達も先輩ガーディアン達もその言葉を受けて」 なでしこはそう言いながらチェーンをロックに通して、通したチェーンを両手で持った上で持ち上げる。 ロイヤルガーデンに差し込む陽の光を受けて、ロックの地金の部分とクリスタルの部分がキラキラと煌く。 「代々このロックを受け継いできただけだから」 なでしこはそのままロックを隣に居た唯世くんに渡す。唯世くんは私の後ろに来て、首にロックをかけてくれる。 というかあの、なんだろ。唯世くんの息使いとかが聴こえてきて・・・・・・めっちゃ恥ずかしい。 「だから日奈森さん、このロックは君のものだ」 あたしは胸元で輝くロックを改めて見る。なんか、重い。いや、マジで重いんだ。 「でもあの、こういうのってあたしなんかより唯世くんや八神君とかが持った方がいいんじゃ」 「日奈森あむ、何言ってるのよ。僕も唯世もしゅごたま三つは居ないじゃないのさ。受け取り資格そのものがないし、なにより」 八神君は自分の首元からかけているアルトアイゼンを取り出して、あたしに見せつける。 「僕にはもうアルトが居るのよ。かけてる余裕ないし。僕にはロックより剣の方が合ってる」 「僕も同じくだよ。まぁ僕はデバイスもなにもかけてないけど・・・・・・だから日奈森さん、自信を持って?」 「でもほら、あたしマジでその・・・・・・普通だし。こういうのキャラじゃないし」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そう言ったのに、結局受け取るハメになって・・・・・・あたしはグラウンド近くのベンチに座って猛省中。 みんなはアレだ、あたしを買いかぶってる。あたし別に特別な子じゃないのに。そんな事あるワケないのに。 あたしは胸元からかけたロックを右手に乗せて、憂鬱な気持ちを隠せずにため息を一つ。 なんか嫌だなぁ。あたしの知らない内に色んな事が勝手に変わってってる感じがする。 「・・・・・・これ、明日返そうっと」 「えー! どうしてー!? だってだって、それすっごく可愛いのにっ!!」 「そうですよぉ。唯世さん達がせっかくくれたのにぃ」 「いや、もうマジでこんな伝説のアイテムみたいなものを持つのは趣味じゃないし。 あれだよ、やっぱ八神君とかが持ってた方がしっくり来ると思うんだよね」 八神君は魔法使いでもあるしさ。あたしよりずっとこういうの持ってるのにふさわしいって。 「うん、そうしよ。それでガーディアンも辞められるようなら辞めよう。そういうのあたしのキャラじゃないし」 「・・・・・・またそれ?」 気持ちを固めてどう言おうか考え始めると、ミキが困ったようにそう言った。というか、あたしの事呆れたように見てる。 「あむちゃん、見てるとそういうの多いよね。『あたしのキャラじゃない』って口癖になってる」 「いや、でも・・・・・・事実だし。あたしマジでそんな凄いキャラじゃない。八神君やガーディアンのみんなと違うし」 「そうかな。ボクにはあむちゃんもガーディアンのみんなも恭文も同じに見えるけど。 というか、それならあむちゃんの本当のキャラはどういうキャラなの?」 ミキが首を傾げながらそんな事を言って・・・・・・なんだろ、それがめちゃくちゃ苦しく感じちゃう。なんかあたし、責められてるみたい。 「あむちゃんが思う自分の『こういうキャラ』は、ホントにあむちゃんのキャラなのかな。 あむちゃん、何か勘違いしてない? ううん、あむちゃんはボク達を産んだ時の気持ち忘れてるよ」 「・・・・・・なにそれ。あたし何も忘れてないし。てゆうか意味分かんないよ」 「ふぎゃっ!!」 痛そうな鈍い音と一緒に聴こえてきた声に驚きながら視線を正面に向けると、鉄棒の近くに一人の男の子が居た。 というか、あたしの座ってるとこの目の前に鉄棒があったから気づけた。でもあの子・・・・・・アレ? 「あの子、確か」 新学期始まる前に、中学生に絡まれてた子じゃん。名前も知らないけど、見覚えはあるから分かった。 その子は逆上がりを何度も、何度もやろうとして・・・・・・失敗してまた尻餅をつく。それでも立ち上がろうとする。 そんな時、その子は途中で力を抜いて息を吐いて鉄棒を掴んだまま頭を下げた。 結果的にあの子とあたしの視線が重なって、あの子が驚いた顔をしながらこちらを見た。 「日奈森先輩っ!?」 その子もあたしの事を覚えていたのか、驚いた拍子で鉄棒から手を離して地面に背中から叩きつけられた。 痛そうだったけど・・・・・・てゆうか、痛いよね? うん、あたしも覚えあるから分かるよ。だってあたしも逆上がり出来ないし。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 世界はいつだってこんなはずじゃなかった事ばかりというのは、クロノさんの持論。 確かにそれは事実だよ。だって僕、数時間前までガーディアン入るなんて思ってなかったし。 それは今僕と一緒に学校内を散策しているフェイトも同じ。あの後すぐに合流してデート中なの。 なんというか・・・・・・ほら、婚約者だし両想いだから。こういうのは大事なんだ。 「・・・・・・そっか。じゃあこれから結構大変になりそう?」 「かも。でも問題はまだあって」 「あの子・・・・・・日奈森あむちゃん、だね」 「うん」 ロックをもらった時の様子から考えるに、今ひとつ腹が決まらないらしい。その様子を思い出して困った顔になってしまう。 見てるとイライラするのは事実だけど、確かにいきなりだからどうしようもないよなぁ。 「それに僕、あの子見てるとなんかイライラするんだよね」 「もう、だめだよ。あの子はしゅごキャラも生まれてそれほど経ってないんだし、戸惑うのは当然だと思うし」 「あー、違うの。そういう事じゃないんだ」 かなり広い緑に覆われた聖夜学園の中庭を歩きつつ、僕はフェイトの方を見て首を横に振った。 「あの子ね、まぁ僕は関わってさほど経ってないんだけど・・・・・・よく言うのよ。『こんなのあたしのキャラじゃない』って」 「・・・・・・あー、確かに言ってるな。実はオレも気になってたんだわ」 「えっと、二人とも・・・・・・それって気になる事なの?」 「「かなり」」 あ、ショウタロスと声がハモった。でもショウタロスも気にしてたとは・・・・・・何気に鋭い奴。 「例えばそうだな・・・・・・自分らしくないって意味合いでなら、それは納得出来るんじゃないかな。 それなりに自分というのが出来上がって来てると、そういうこだわりは出来ちゃうよ」 「まぁそうなんだけどね? ・・・・・・僕、あの子のしゅごキャラのミキと仲良くなってるんだけど」 「うん」 「話を聞くとあの子達、みんな日奈森あむが『素直なキャラになりたい』って願って生まれたらしいのよ。 日奈森あむって学校の中だと凄いクールでかっこいいキャラって言われてるけど、実際は違うらしいし」 でも本人はそれでもそういうキャラに見られてしまって、そこで温度差を感じて・・・・・・しゅごキャラが生まれた。 まぁここはいい。問題はこの先にあるのよ。まぁようするに僕やショウタロスが何が言いたいかと言うと。 「フェイトさん、ようするに日奈森さんの言う『キャラじゃない』は、あの人自身が嫌ってるクールなキャラ寄りに見える部分があるという事です」 「えっと・・・・・・え?」 ・・・・・・シオン、美味しいとこ勝手に持ってかないでもらえます? 僕達歩きながら軽くガクってなったし。 「あの、待って。だって話通りだとあの子はそういう外のキャラを変えたくて」 「うん。でもあの子は見てると無意識の内に自分をそっち寄りに近づけようとしてるのよ。 『こんなのみんなの言うあたしのキャラじゃない』って考えてさ」 ショウタロスも全く同じ事を思っていたらしくて、フェイトを見ながら頷いている。 そうだな、例えば・・・・・・お菓子作りの時を思い出して欲しい。具体的には壊れた生地を前にした時だよ。 あの時日奈森あむは『お菓子作りなんてあたしのキャラじゃない』って言って諦めようとした。 本当は泣く程嫌だったはずなのに、その状況でなおそれなのよ。そこでもうちょっと深く考えてみよう。 そもそもあの子の言う『キャラじゃない』がマジなら、あの子の本当のキャラは何か。 どうも僕達の目から見ると、あの子はその基準を勝手に作られていく外キャラに置いているように見える。 「あむの奴、みんなの目から見えるキャラを自分から作って維持しようとしてるんだよ。 そのキャラを本当は嫌っていて、しゅごキャラが生まれる程に変えたいって願っているのにな」 フェイトの表情が一気に曇った。どうやら僕達の言いたい事、ちょっとは伝わったみたい。 「・・・・・・それは、あんまり良くはないね。二人がどうして気になってたのかようやく納得出来たよ」 「あぁ。ただ別にそこで性格的に歪んでるとか、そういうのは無いんだよな。 ・・・・・・まぁあれだよ、あむはオレから見てると相当意地っ張りな上に口下手で内気なとこがあんだよ」 「あー、それはあるね。だからついついひねくれた態度を取りがち。 でも、その分自分の本当のキャラが分からなくなってきてるのかも」 だからこそ変わりたいと願ったなら・・・・・・分かるのよ。ミキの話だと家でもあの調子らしいし。 それで自分のホントのキャラを見せるのも相当怖いんじゃないかな。あの公開処刑の後の様子を見てるとそう思えてならない。 「それでヤスフミ的には、出来る限り力になりたいと思ってるんだ」 「まぁね。・・・・・・あ、浮気とかじゃないから」 「ん、そこは分かってる。やっぱりガーディアンだから?」 「それもあるかな。まぁ単純に放置出来ない感じだし、それでラン達が×たまになられても困るだけで」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・恥ずかしいところをお見せしちゃいましたね。すみません、日奈森先輩」 「いや、なんつうか・・・・・・そこあたしに謝られても困るし」 結局そのままスルーも出来ず、あたしは鉄棒の近くまで降りてあの子を起こしてその場の流れで話をする事になってしまった。 あの子は鉄棒の基部の根本に座り込んで、すっかり落ち込んでいる様子。でも、それはあたしのせいじゃないと思いたい。 「こんな僕じゃクール&スパイシーな日奈森先輩のファンの資格なんて無いですよね」 「はぁ? なにそれ」 でも分かった。あぁ、この子もあたしの外キャラに騙されてる子なんだ。 なんつうか、あたしって一体。ちょっとマジ泣きたくなってくるんですけど。 「だって僕ってば運動神経0。おまけにドジでのろまで年の割にはジジくさいってよく言われちゃうし」 ねぇ、どうすればいいの? なんかめっちゃ自分の事力入れて語り出したんですけど。ただジジくさいってのはちょっと分かる。 でもそんな失礼な事を思ったせいか、急に辺りで強い風が吹き出した。てゆうか、日の差し込みも弱くなってきてる。 「こんな僕の夢なんて、どうせ叶わないんだろうなぁ」 「・・・・・・夢? どんな」 「僕、学園トップの成績になってゆくゆくはIT社長かカリスマプログラマーにもなりたい」 そ、それはまた現実的な・・・・・・あー、とりあえず運動神経どうこうはともかく、ジジくさいってのは余計に分かるわ。 やたらと現実的って言うか今のご時世でこれから当たりそうな方向に行くから、よけいそうなるんだよ。 だけど・・・・・・別にそれでも良くはないかなーとは思った。だってさ、それでもこのメガネ君の夢なのは変わらないじゃん。 あたしがジジくさい・・・・・・みんながジジくさいし無理って言うから諦めろなんて、なんか違うと思うし。 てゆうか、あたしは羨ましいよ? そこまでそういうの考えていけるって言うのは・・・・・・マジでさ。 「でも・・・・・・なれないに決まっている」 「いや、そんな事ないんじゃ」 あたしの言葉は、その子から突然吹き出した風によって遮られた。てゆうか、吹き飛ばされた。 「ふゎ・・・・・・あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 あたしの身体は簡単に風の勢いに圧されて数メートル飛ばされて、そこからグラウンドを転がる。 その痛さに顔をしかめながらも起き上がってあの子を見ると、あの子は立ち上がっていた。 でも、その目を見て寒気が走った。栗色の丸々とした可愛らしい瞳は完全にハイライトが消えてて黒にもなってる。 それであたしに向かって吹いた風があの子の頭上でひとまとまりになって、一つの形になる。 それは黒くて白い×のついたたまご。なんだろ、あのたまご。めちゃくちゃ嫌な感じがする。 「・・・・・・どうせ日奈森先輩も僕なんてダメダメだって思ってるんだ」 「いや、思ってないよっ!? むしろあたし感心したくらいで」 あの子の表情が一気に怒ったものに変わって、瞳が釣り上がる。そしてまたあの風が吹き荒れる。 「思ってるんですっ!!」 あたしは今度は両足を踏ん張って腰を落として、両腕を使ってガードして風に耐える。耐えるけど・・・・・・それだけ。 吹き荒れる風の中で必死に目を開けてあの子とあのたまごを見てるだけしか出来ない。 「ラン、ミキ、スゥ・・・・・・あのたまごなにっ! アンタ達の親戚か何かかなっ!!」 「似たようなものだよっ! アレ、×たまって言うのっ!!」 「×たまっ!? なにその見たまんまのネーミングッ!!」 アレですか、たまごに×付いたから×たまってわけっ!? 分かりやす過ぎて泣けてくるわっ!! 「それは当然ですぅっ! アレはこころのたまごに・・・・・・自分の夢に宿主が×を付けちゃった状態なんですぅっ!!」 しかもその理由までドンピシャらしい。だけど、それを聞いてなんかこう・・・・・・イライラが募ってくる。 「無理だって諦めて・・・・・・なりたい自分を諦めて・・・・・・大事な可能性に自分で自分に×付けてるっ!! あのまま放置しちゃうと、あの子は夢なんてもう見れなくなるっ! ずっとずっと自分の事諦め続けるっ!!」 「無理・・・・・・無理・・・・・・無理・・・・・・ムリ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「それもあるかな。まぁ単純に放置出来ない感じだし、それでラン達が×たまになられても困るだけで」 こんな事を冗談めいた形で言ったのが悪かったのかも知れない。僕は意識せずにアホなフラグを踏んでしまった。 「・・・・・・お兄様」 「ヤスフミっ! ×たまだっ!!」 『嘘ぉっ!!』 「嘘じゃねぇよっ! ただ・・・・・・なんだこれ」 シオンとショウタロスは方向的に・・・・・・学校のグラウンドがある方を見ながら、首を傾げてた。 「ショウタロウ、他にも何かあるの?」 「あぁ。なんかこう、めちゃくちゃ強い力を感じる。下手するとオレ達や唯世以上・・・・・・おいシオン、これまさか」 「行ってみれば分かります。お兄様、フェイトさん」 僕とフェイトは顔を見合わせて頷き合い、先行して飛び出したショウタロス達を追いかける。 ・・・・・・フェイトと二人デートしてて正解だったかも。フェイト巻き込んだのは申し訳なかったけど、それでも現場に直行出来る。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 吹き荒れる風の中で、その発生源は自分に×を付け続ける。自分から諦めてたまごを捨てようとしているようにも見える。 八神君・・・・・・あたしようやく分かった。なんであたしがラン達の事捨てようとしたの、ショウタロウ共々止めたのか。 なんであの時八神君が厳しい事ばっか言ってたのか、ようやく分かった。確かにこれはムカついてくるわ。イライラもする。 目の前でこんなうじうじやられちゃ、そりゃあ腹だって立つよね。 『「ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ」』 「・・・・・・何が無理じゃん。そんなの嘘だよ」 風の中であたしは胸の中で渦巻いているイライラとかそういうのを吐き出すように、右足をゆっくりだけど踏み出す。 「そんなのアンタが自分から諦めてるだけじゃんっ!!」 その右足を踏みしめてあたしは・・・・・・一気に声を上げる。 「自分で自分の事信じなきゃ、夢なんて消えちゃうんだよっ!? 何もしないで諦めるなんて・・・・・・100年早いじゃんっ!!」 声を張り上げた瞬間、胸元のロックが強く輝く。その輝きが黒い風を吹き飛ばした。 それだけじゃなくて光はあたしの身体を包みこんで・・・・・・弾けたその瞬間、一気に変えた。 あたしの服装はピンク色のバッシュにミニスカとへそ出しノースリーブなチアガール服になった。 それだけじゃなくて頭にはバイザーを装着してて、髪は軽めのサイドポニー。バイザーにはハートマークのアクセサリー。 不思議なくらいに身体から力が溢れて・・・・・・温かい。凄く心地いい。 「・・・・・・って、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 【わー、凄い凄いっ! あむちゃん、これキャラなりだよっ!?】 「キャラなりっ!? それなに・・・・・・てゆうかランはどこっ! なんか声するけど姿見えないしっ!!」 【もう、あむちゃん何言ってるのー? 私はここだよー。あむちゃんの中ー♪】 あ、確かにあたしの中から響くような声が・・・・・・いやいや、ありえないしっ! こんなのあたし聞いてないしっ!! 【とにかくキャラなりは、しゅごキャラと一体化してその力を120%引き出す能力なんだ】 「じゃ、じゃあ姿が変わったのって・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! こんなのあたしのキャラじゃないのにー!!」 『ムリムリ・・・・・・ムリィィィィィィィィィィィィィィッ!!』 あたしが頭抱えてパニクっている間にも、あの×たまって言うのからたまごが吹いて来て・・・・・・あたしはその直撃を食らう。 両足を踏ん張ってその風に何とか耐える。でもあの、マジでこれどうしよ。このままじゃエンドレスだし。 【あむちゃん、大丈夫。いけるいけるー】 「いや、いけるったって」 【感じない? あむちゃんの中から、ドンドンパワーが湧き上がってくるの】 パワー・・・・・・あ、そう言えばさっきよりは楽かも。これってつまりこのキャラなりって言うのをしたおかげ? だからあたしこんな超常現象相手でもなんとかなりそうな・・・・・・そこまで考えて思考が止まった。 「・・・・・・ダメ」 【あむちゃん?】 「無理・・・・・・無理だよ。あたし、こんなのどうにも出来ない。こんなのあたしのキャラじゃない」 【あむちゃん、どうしたのっ! そんな事ないっ!! あむちゃんだって感じてるよねっ!? ドンドン力が湧いてくるのっ!!】 感じてる。確かに感じてるよ。でもそれがたまらなく怖い。 あたしがあたしじゃなくなっちゃうみたいで・・・・・・怖い。 「ダメ、無理っ! こんなの・・・・・・こんなのやっぱあたしじゃないっ!!」 【あむちゃんだめっ! 自分を信じなかったら】 ランの言葉の続きは聞けなかった。だってあたしの身体から急激に力が抜けて、そのまま吹き飛ばされたから。 それも相当高く・・・・・・遠くだよ。・・・・・・あ、キャラなりって言うの解けてる。あたしまた吹き飛ばされたんだ。 「キャラなりが解けちゃ・・・・・・って、もう解けてるしっ!!」 「あむちゃんっ!!」 「あむちゃんっ!!」 あ、ラン達があんなに小さく・・・・・・って、元から小さいか。それで身体が一気に落ち始めた。 この高さだと、大体10メートルくらいはあるかな。さすがにこれ落ちたら・・・・・・死んじゃうよね? ・・・・・・って、どうしよ。マジヤバい状況なのに、全然身体に力が入らない。頭働かない。 もうこういう落ちネタはいいと思ってたんだけどなぁ。出来れば痛くならないで欲しい。・・・・・・無理か。 ≪Sonic Move≫ だけどあたしの身体は急激に落下速度を落とした。あの、景色の流れでそれは分かるの。 というかこう、服越しに身体の温もりみたいなのは感じてる。・・・・・・アレ、なんかめっちゃデジャブ。 あたしがふらつく頭でその温もりを追うと、そこに居たのは八神君じゃなかった。 黒い中等部の制服を着て、金色の髪を揺らして空中を飛んでいる女の子だった。 ルビー色の瞳は心配そうにあたしを見てたけど、すぐにあたしから視線を離してその人は声を上げる。 「・・・・・・ヤスフミっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ フェイトに言われるまでもなく僕はアルトをセットアップし、ジャケットを装着しつつ×たまの右側から接近。 もうコートの裏返し作業は終わっているから、あとは突っ込むだけ。僕は一気に加速して零距離に踏み込む。 あの子はこちらに反応して風を吐き出そうとするけど・・・・・・遅い。僕はとっくに刃を打ち上げてる。 右手はアルトの柄に。そして左手は鯉口に添えて、親指で鍔を押して僅かに刃を抜く。 「・・・・・・鉄輝」 自分なりのハードボイルドを通したいという想いを、悲しい時間を壊したいという願いを込めて打ち上げたのは鉄輝。 僕はその鉄輝を迷う事なく×たまに向かって、右薙に抜きで刃を叩き込んだ。 「一閃っ!!」 刃が入る直前で吹き出した黒い風すらも蒼い斬光は両断し散らせて・・・・・・その黒い絶望を斬り裂く。 僕はそのまま斬り抜けてグラウンドに足をつける。砂ぼこりを上げながらも滑るように着地。 「・・・・・・瞬(またたき)」 『ムリ・・・・・・ムリィィィィィィィィィィィィィィッ!?』 グラウンドを滑りながらも時計回りに振り返ると、あの子の頭上の×たまが白く変わっていた。 その白いたまごの柄は当然×ではなく翼。アレがこころのたまごの本来の姿なんだ。 真っ白な色はまるで純粋さを表しているようで、翼はどこまでも飛んでいける可能性に見える。 ショウタロスやシオン達しゅごキャラは一種の突然変異だから、アレとは違う柄になってるだけ。 それでそのたまごはゆっくりとあのメガネの子の胸元に、水の中に沈むかのように波紋を立てて吸い込まれる。 メガネの子は瞳を閉じてその場で崩れ落ちた。まぁ死にはしないから問題なしでしょ。 「・・・・・・うし、浄化完了っと」 ≪そしてまたキャラなりしなくて済んだとホッとしたあなたでした≫ 「うっさいわボケ」 ・・・・・・あ、そう言えば説明してなかったかも。僕の魔法・・・・・・というか魔力だね。 僕の魔力はこころの中にショウタロスとシオンが居る関係で、×たまの×を壊す事が出来るの。 ×たまの×を壊して、元のたまごに戻す・・・・・・これを浄化って言うんだけど、それが出来る。 なんか先生曰くリンカーコアで吸収された魔力素は、一種の精神エネルギーに近いものに変質してるせいとか。 なんかね、そういう学説があるんだって。まだ実証はされていない完全な想像の域を出ない話だけど。 リンカーコアで吸収した魔力は魔力だけど、それを通して外に出す事で使用者の精神力が含まれてるものに変わっている。 それはリンカーコアと所持者の精神は、非常に密接な繋がり方をしているから。 そのためにリンカーコアを経由して使われる魔力は魔力にあらず。それは人の心の力・・・・・・というお話なんだ。 だからこころの中にたまごのある僕が魔法を使うと、それを通して×たまとかに干渉出来ちゃうみたい。 でもこれはラッキーだったなぁ。だからこそ僕、魔法使って浄化出来ちゃうから・・・・・・うぅ、助かってます。 「・・・・・・恭文ー!!」 とにかく僕は鞘にアルトを収めてから待機状態に戻して、足早に着地したフェイトのところに駆け寄ろうとした。 でもそんな僕達にラン達が近づいてくるので、僕は足を止めずにそちらに視線を向ける。 「キャンディーズ、一体何がどうなってんのよ。 二人が×たまの気配掴んで飛んできたから良かったものの」 「いやいや、キャンディーズって何っ!? ボク達そんな名前じゃないのにっ!! ・・・・・・というか恭文、その格好」 「コートからインナーに靴に至るまで黒一色ですぅ。あ、でもでも左手の鎧は違いますねぇ」 「これが僕の魔導師としての姿だよ。で、この子はアルトとはまた別のデバイス。喋ったりはしないけどね」 左手に装備しているのはジガンスクード。マリエルさんと協同で作った装備。 銀色で分厚いガントレット型のデバイスで、リボルバー式で8発装填のカートリッジ付き。 まぁ普段は全く使わないけど、物理盾としてはかなりの強度を誇ってたりする。 とにかく話を続けようと思っていると、もうフェイトの近くに来ていた。・・・・・・とりあえずそこは後か。 「・・・・・・フェイト、日奈森あむは」 「擦り傷と・・・・・・あと体力を消耗してるみたい。ちょっと息が荒い」 僕は腰を落としてフェイトの腕の中の日奈森あむを見てみる。 確かに息も荒いし、ちょっと視線もふらついてて安定してないかも。 「あむちゃん、しっかりしてー!!」 「日奈森あむ、僕達の事分かる?」 「あ、うん。なんとか。てゆうか八神君も・・・・・・フェイトさんも、どうしてここに」 「フェイトと校内探検しててさ。それでシオンとショウタロスが×たまの気配掴んで、ここに来たの」 で、来たら来たでいきなり日奈森あむが派手に吹き飛ばされてるもの。ビックリしたよ。 フェイトが瞬間的にソニックムーブであむの方に行ったから、僕は×たまを早々浄化したってわけ。 「お兄様、これは一度うちに来てもらった方が良いかも知れません」 「だな。なんか知らないが相当疲れてるぞ。ケガの治療もしないとダメだし」 「あの、シオンもショウタロスも大丈夫だよ? あたしその」 フェイトの腕から抜けだして立とうとするけど、すぐにふらついて前のめりに倒れる。 「危ないっ!!」 でも大丈夫。フェイトが後ろから支えたから。日奈森あむは崩れ落ちて、その場で尻をつく。 「・・・・・・これはダメだね。ヤスフミ、この子は私が抱えていくからシャマルさんに・・・・・・って、今居るかな」 「多分大丈夫。進級と入学祝いにごちそう作るって張り切ってたし。 日奈森あむ、後でちょっと携帯借りるよ? 家にも連絡しなきゃいけないだろうし」 「あの、大丈夫。あたしマジで」 「バカじゃないの? 一人で立てない奴がそんな事言ったって説得力0だし。とにかくこのまま連行するから」 「・・・・・・ん」 あのメガネの子は安全なところに(近くのベンチ)寝かせた上で、僕とフェイトは日奈森あむを家まで連れて行く事になった。 なお、家はハラオウン家とほぼ同じ間取りのマンション。家は7階にあって・・・・・・って、今はいいか。 でも本当にこれはどういう事? 擦り傷どうこうとはまた違うダメージだろうし・・・・・・むむむむむ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 客間の布団にフェイトさんのパジャマを・・・・・・ダボダボなパジャマを借りた上であたしは寝かされて、ぐったりしてる。 というか、動く事すら許されないってどういう事ですか? これはさすがにありえなさ過ぎだし。 そこの辺りを色々考えてると、部屋のドアが開いて金色の髪をショートカットにした女の人が入ってきた。 名前はシャマルさんって言って、八神君の家族らしい。でもお姉さんでもなければお母さんでもないとか。 この人も魔導師で、あたしの擦り傷とかも全部シャマルさんが魔法で治してくれた。 でもあたしの体力に関しては回復出来ないって、謝られたっけ。どうしても魔法が受けつけないらしい。 だけど家族が魔導師でフェイトさんも魔導師らしくて・・・・・・やっぱ八神君、あたしより主人公キャラしてるって。 「・・・・・・あむちゃん、ご両親には私から連絡しておいたわ。今日はこのまま家に泊まっていいから」 「あ、あの・・・・・・ありがとうございます」 「ううん、いいのよ。本当は体力回復してもらって、すぐに帰らせてあげたかったし」 少し苦笑気味にシャマルさんは笑って、あたしの右側・・・・・・傍らに足を崩す。 「それで痛いところとかはない?」 「それは大丈夫です。身体が思う通りに動かない事だけが辛いだけで」 「そう。でも無理はしちゃだめよ? あなたの身体、本当に力が抜け切ってる状態だから」 「・・・・・・はい」 ・・・・・・やっぱダメだ。あたしはジョーカーなんて出来るキャラじゃない。絶対無理だよ。 というか、なりたくない。変わりたくない。変わっちゃうの・・・・・・怖いよ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 家に戻って、早速食事準備中だったシャマルさんにあむの事を診てもらった。 シャマルさんはとてもびっくりしてたけど、それでも事情を聞いてすぐに治療と検診を開始。 まず擦り傷に関してはすぐ治る。骨とかにも異常はない。問題は体力の消耗状態。 身体の奥底から根こそぎ体力を奪われているような状態らしくて、今日一日は安静が言い渡された。 で、なんでそんな事になったかをリビングでラン達から聞いていたんだけど・・・・・・まぁ納得したわ。 「・・・・・・あの子、キャラなりが強制解除になったからあの状態なんだね」 「みたいです。あむちゃん、自分の事信じ切れなくて・・・・・・それでそのままばーんって。 というかあの、私ちょっとビックリかも。フェイトさんとそっちの・・・・・・えっと」 「私の事か?」 リインフォースがキッチンの中からこっちを見てくると、テーブルの上のラン達が頷く。 「そうそう。リインフォースさんもしゅごキャラ見えるんですね。あ、もしかしてキャラ持ちとか」 「ううん。私は特にそういうわけじゃないんだ。 リインフォースも違うけど・・・・・・みんなの事が『居る』って分かってるから」 でも、残念ながらリインフォースと違って見えない人も居る。そこはシャマルさんと・・・・・・あと一人。 「・・・・・・なぁフェイト、いやまぁ・・・・・・分かるよ? アタシも話は聞いたし信じてはいるけどさぁ。 でも何もないところに目線向けて喋るのはやっぱ怖いって。つい心配になっちゃうって」 今フェイトの隣で大人モードの状態で困った顔をしているアルフさんも同じ。やっぱり認識を持つ事自体が難しいみたい。 「でもまぁ、話は分かったけどさ」 ≪継ぎ接ぎだらけなのに分かったんですか≫ 「まぁな。ようするにアレだろ? あの子はそのキャラなり・・・・・・だけっか。 それを強制解除しちゃった時のショックで、体力完全に使い果たしちゃってると」 「みたいです」 「でもそれ、ちょっとヤバかったよな。その状態でそのままグラウンドに叩きつけられてたら」 僕とフェイトもそこを思い出して、少し寒気がしたからアルフさんの方を見ながら頷いた。 ・・・・・・ホント運が良かったよね。ガーディアン会議も終わって、唯世達も家帰っちゃってたから。 「お兄様、こうなると・・・・・・ジョーカーの任務、少し気を引き締める必要がありますね」 「そうだね。現に転校してきてからがアレだしなぁ」 「ヤスフミ、それってどういう事?」 「いや、まぁその・・・・・・僕転校してきてからさほど経ってないわけじゃない?」 まだ転校して3ヶ月も経ってなかったりするんだよね。 でもその間に実は何気に問題はかなりの数発生してる。 「でも×たま、その間に相当数出てるんだよ。少なくとも去年の同じ月の10倍以上」 僕も転校してきてからそこまで何気に遭遇する事が多くてさ。その週1〜2なペースで浄化を手伝ってるの。 というか唯世達はたまごの浄化そのものが出来ないから、必然的に僕がこき使われるわけですよ。 「・・・・・・それは多いね。でも×たまってそんなに結構出るものなの?」 「今までのデータを見る限りではそんな事はないね。 少なくともこんなペースでは無いって唯世達は言い切ってたから」 ≪だからこそのこの人とあの人のジョーカー就任ですしね。・・・・・・もしかしたらですが≫ 「やっぱりイースターかな」 ≪おそらく。日奈森あむさんの出現で本腰を入れた可能性もありますし≫ 全く・・・・・・こっちの宝探しの前にイースターとケンカしなきゃいけないかも知れないってどういう事? まぁいっか。それに僕、連中のやり方を許すつもりないし。遅かれ早かれ潰し合いになるのは確定だったしさ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・・・・非常に頭が痛い。あたしの予定が見事に崩れていって・・・・・・頭痛い。 倒れて自分が情けなくなったりした翌日。今日あたしはなんとか学校に行けた。 それでさ、ガーディアンのみんなに相談したのよ。あたしはそういうキャラじゃないから無理だって。 でも見事に断られた。というか八神君が・・・・・・ぶった切った。 「・・・・・・そんな理由じゃダメ」 「どうしてっ!? てゆうかあたしマジ無理だしっ! だからこのロックは八神君が」 「嫌。てーかおのれが逃げる言い訳に僕を使うな」 場の空気が完全に凍りつくくらいの鋭い声であたしの目の前の男の子は言い切った。 それで呆れたような・・・・・・怒ってるような目であたしを見る。 「さっきから聞いてれば・・・・・・まぁ『自分には無理』はいいさ。昨日大負けしたわけだし、自信過剰になるよりずっとマシだ。 でもその次が問題だよ。『八神君が居る・唯世くんが居る・ガーディアンのみんなが居る・あたしのキャラじゃない』・・・・・・全部言い訳でしょ」 「ちょっと待って。あたし言い訳なんてしてないじゃん。ホントの事言ってるだけで」 「いいや、言い訳だ。僕には昨日みたいな事がもう嫌だから、僕達に押しつけようとしてる風にしか見えない」 「なにそれっ!? 勝手な事言わないでよっ! てゆうか、アンタに分かるわけないしっ!!」 あたしはテーブルを両手で叩きつけて、勝手な事を言ってあたしの逃げ道を塞ぐあの子を睨みつける。 「あたしはアンタと違うっ! 魔法使いでもなければあんな凄い家族なんて居ない普通の女の子だよっ!! アンタみたいに完璧になんでも揃ってるわけでもなんでもないんだよっ!? 無茶言わないでよっ!!」 「・・・・・・情けな」 「確かに情けないですね。日奈森さん、あなたは本当にバカでしょう」 「バカってなにっ!? あたし全然情けなくないしっ! ホントの事言ってるだけじゃんっ!!」 八神君は立ち上がってあたしの胸ぐらを掴んで一気に引き寄せた。そのまま一気に睨みつける。 「分かるさ。お前がとんでもなく甘ったれて、僕達に面倒事押しつけようとしてるって事はさ。そうだね、だから言い切れる。 お前、そのままだと後悔するよ? ずっと今みたいに言い訳して逃げ続ける事になる。そしてラン達も壊す」 「違う、あたし逃げてなんて」 「いいや、逃げてる。でもそれは僕達からじゃない。ガーディアンの業務からでもない。 自分から・・・・・・ガーディアンを辞めたい本当の理由から逃げてる」 その言語を聞いて、あたしは目を見開く。やばい、なんか・・・・・・口の中が乾いて来てる。 「本当の理由? ねね、恭文それって」 「日奈森が今話してくれた理由は嘘だって言うのかよ」 「そうだよ。昨日ラン達からも話を聞いてたから分かる。日奈森あむは別に自分の力どうこうでこの話はしてない。 今僕達に言ったガーディアンを辞めたい理由・・・・・・『自分には無理』は全部フェイク。本当の理由は別にある」 ≪・・・・・・あぁ、なるほど。そういう事ですか。あなたとしてはそこに嘘をついて辞めるのは認められないと≫ 「そういう事。・・・・・・日奈森あむは昨日確かにキャラなりした。でもそれは途中で解除された。 それはなぜか。日奈森あむがキャラなりによって変化した自分を受け入れられないから」 そうだ、あたしは・・・・・・怖かった。湧き上がる力が怖かった。温かい力なのに怖くて・・・・・・逃げ出したかった。 「そこはラン達からも確認を取ってる。それっぽい事を解除される直前に呟いてもいる。 具体的には『あたしのキャラじゃない・こんなのあたしじゃない』ってね。つまり日奈森あむは」 「やめてっ!!」 あたしは八神君を突き飛ばしてその言葉を止めようとする。でも・・・・・・八神君はあたしの手なんて身体で受け止めてしまう。 あたしと八神君の距離は絶対に変わらない。変わらないけど・・・・・・今はそれが怖い。 「あたしの・・・・・・あたしの中勝手に見ないでっ! アンタマジ最低だよっ!!」 「最低?」 あたしはそのまま右腕だけで突き飛ばされて、後ろのめりに倒れる。 倒れてこけて、尻餅もついて・・・・・・その音がロイヤルガーデンに響く。 「僕達の意志を無視して勝手に『そういうキャラだから』って決めつけて面倒事押しつけようとしたバカの言うセリフとは思えないね。 僕が最低なら、お前は最悪だよ。そうやって逃げて、目を伏せて、他の誰かに期待して自分では何もしようとしないんだから」 「・・・・・・あむちゃん、ボクも恭文と同じだよ。今のあむちゃんカッコ悪いと思う」 「・・・・・・ミキ」 「あむちゃん、勝手に自分のキャラ誤解されるの嫌だったよね? なのにみんなに対して同じ事をするの? みんなの事まだほとんど何も知らないのに、勝手にこういうキャラだって決めて押しつけて・・・・・・うん、最悪だよ」 ・・・・・・反論、出来なかった。確かにその通りだ。あたし・・・・・・そうだよ、やってたよ。 唯世くん達は、八神君はあたしと違ってそういうキャラだから出来るって・・・・・・押しつけようとした。 「とにかく僕が納得出来ないのはその一点だけだ。別に辞めるのはいいさ。確かにおのれが絶対にやらなきゃいけない事じゃない。 でも、僕や唯世が居るからなんて理由は絶対に認めない。辞めるなら今の自分のホントの理由を僕達に言ってからにしろ」 「八神君、その辺りで。さすがにそれ以上は」 「だからちゃんと話せ。場合によっては力になる」 厳しい言葉の先に出てきたのは、予想すらしてなかった優しい言葉。だからあたしは胸がまた苦しくなる。 それで驚いてるのはあたしだけじゃない。唯世くん達も、それにミキも目を見開いて八神君の事見てる。 「それは僕だけじゃない。唯世も、なでしこも、ややも、空海も、キセキ達だって力になる」 「なん・・・・・・なんで? なんでいきなりそんな事」 「お前、そんな事も分かんないの? ・・・・・・正直に言うと僕はお前がどうなろうと知ったこっちゃ無い。 それで一生今と同じように逃げ続けてだめになろうと助ける義理立てもない」 ただそれでも八神君は・・・・・・『でも』とあたしを見ながら続けた。 「でも、そのためにミキ達が消えたりするのは嫌なのよ。だから放置は出来ない。あと、僕はガーディアンだし」 あたしは怖いけど・・・・・・怖いけどまた八神君の目を真っ直ぐに見てみる。 その目に嘘も偽りも何もなかった。本当にそう思っているのが伝わった。 「ガーディアンは生徒が平和な学校生活を遅れるように頑張るのが仕事。その中には当然お前も含まれてる。 だから助ける。立場で動くつもりなんざないけど、これは僕が自分でやると決めて引き受けた仕事だ。でも、それだけじゃ足りない」 あたしは今の八神君の目が怖くなる。そんな風にどうして・・・・・・どうして自分持っていられるのか分かんない。 だって八神君だっていきなりガーディアンに任命されたんだよ? あたしと同じなのに・・・・・・どうして。 「そのためにはお前にも勇気を振り絞ってもらう必要がある。 自分の心の内を・・・・・・今何を考えてるかを僕達に教えてよ」 「・・・・・・あたしの、こころ」 「そうだよ。これがこのままお前が出て行くのは認められない本当の理由。だってワケ分かんないし。 そんなんじゃ僕は引き受けた仕事を通せない。だから・・・・・・お願い。全部教えて」 そう言われてもあたしは両の拳を握り締めて、俯く事しか出来無くて・・・・・・そのまま立ち上がってロイヤルガーデンを飛び出した。 あたし、どうすればいいの? だってあたし・・・・・・あたし・・・・・・!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・恭文、お前ちょっと言い過ぎじゃね?」 「そうだよ。日奈森さん泣いてたし」 「気のせいじゃない?」 どうやら気のせいじゃないらしい。だって全員の視線が厳しいというか、ちょっと呆れてたし。 「そうだぞ、ヤスフミ・・・・・・そういう風にキツいとこはお前の悪いとこだぞ? 誰でもお前みたいに出来るわけじゃないだろ」 「何言ってるのよ。僕は相当優しく言ったでしょうが」 「どこがだっ!? めちゃくちゃキツい言い方してただろうがっ! てーかミキっ!!」 ショウタロスの視線がミキに向いた。ランとスゥは日奈森あむと一緒に出ていったのに、ミキは残ったのよ。 「お前なんであっち行かないわけっ!? ほら、あむのしゅごキャラだろうがっ!!」 「いいんだよ。だってボク、今回はちょっとカチンと来たし。というわけでしばらくお世話になるから」 「そうそう、お世話に・・・・・・はぁっ!? なんですかそれっ! いや、勧誘したけどどうしてそうなるっ!!」 驚きながらミキを見ると、ミキは両腕を組んで軽くウィンクした。・・・・・・え、反論ダメって事? それはなんというか。 「なるなよバカっ!! ・・・・・・だがヤスフミ、そんなムカついたのかよ。どうせ勢いだとは思うが」 「まぁね。お姉ちゃんやシグナムさん達も、あのバカと同じような事言うのに仕事押しつけられて大変だもの」 「・・・・・・恭文君、そうなの?」 「うん」 あ、今更だけど説明。唯世達は管理外世界で魔法の事を知ってる現地協力者という形になってる。 だけどみんな今のところは魔導師ってわけじゃないから、局の仕事にも当然ノータッチ。だから疑問そうな顔になる。 「結構無茶な現場に突っ込まされて、危ない目にも遭ったりしたみたい。大事にはなってないけどね」 「お兄様、アレとかソレとかですか? シャマルさんが頭を抱えていましたから私も覚えています」 「うん、アレとかソレ」 まぁなんとか無事だったからそれはいいけどさ。・・・・・・いや、よくないか。 多分お姉ちゃん達への無茶振りが多い理由は、闇の書事件だよ。 そのせいでやっぱりお姉ちゃん達は局の偉い人達から疑いの目を向けられてる。 でもそれだけじゃない。そこを知らない人達から見ると、お姉ちゃん達のキャラが誤解されちゃうのよ。 お姉ちゃん達は局の上からも信用されて、どんな事件でも即座に解決出来ちゃう凄いキャラ・・・・・・ってさ。 実を言うと今のあの子の状態が分かったのは、お姉ちゃん達との事と照らし合わせたのも理由。 お姉ちゃん達だってそんな凄いキャラじゃないのに、出来る子として見られて押しつけられてるもの。 で、それを唯世達にやろうとしてたから・・・・・・まぁちょっとプチンとね。 「それで唯世、もしも日奈森あむが本当にジョーカー辞めたいって言った時は」 「うん、そこは分かってる。理事長とも相談して日奈森さんの希望に合わせられるようにする。 というか、八神君もそこは認めるんでしょ? さっきもそう言ってたし」 「当然。もちろんあの子が本当の理由を言った上でって条件が付くけど」 それなら認めるよ。さっきも言った通りだからもう説明はしないけど、それなら僕に言う権利はない。 「でもそこを口にさせるってのもまたキツい話だよな。お前、やっぱ鬼だろ」 「失礼な、僕は常に紳士だし。てゆうか空海、もしかして」 「あぁ、気づいた。お前やミキがなんであそこまで手厳しく言ったのかも大体分かるさ。 確かに日奈森の状態はよろしくないな。充分にガーディアンの業務絡みだと思ったのも分かる」 さすが年長者。両腕組みつつそう言う姿に嘘偽りは感じられない。マジで空海は分かってるっぽい。 「ま、お前はちょっと引いててくれ。日奈森の事は俺が様子見てみるからさ。 てーかアレだ、お前はスパルタ過ぎるからダメだ。絶対人に教えるのとか向いてねぇよ」 「何言ってるのよ。先生や香港の警防のみんなの方がずっと厳しいっつーの。むしろ僕は優しい方だと思うし。 先生達にはジープで追いかけられ、目隠してるのに野球ボールを投げつけられ、鉄のブーメランを投げつけられ・・・・・・辛かったなぁ」 「お前そこと一緒にするの絶対違うからなっ!? あのじいちゃんや香港の方はガチに強いのばっかだろうがっ!!」 気にしてはいけない。僕はあくまでも自分の経験から言ってるだけだし。 「でもあの」 「ん、ややどうした?」 「・・・・・・恭文、あむちーの事嫌いにならないでね? あむちー、きっとまだ色々戸惑ってるところも多いと思うし」 「はぁ? やや、いきなり何バカな事言ってんのよ」 ため息を吐きながら、心配そうなややの方に呆れた視線を向ける。 「嫌いになるもならないも、僕は自分の勝手でガーディアンの仕事を通そうとしてるだけだし。もちハードボイルドにさ」 「ホントに?」 「ホントだよ。それにやや、それは僕に言う事じゃないと思う」 僕は自然と・・・・・・訂正。本当に自然な形を装って、未だ渦巻く動揺を隠しつつあの子を見る。 あの子はキョトンとした顔で僕ややや達を見る。でもどうしてそうなるのかがさっぱり分からない。 「・・・・・・うん、言いたい事は分かったよ。そうだね、恭文は大丈夫だよね。ただお仕事しようとしてるだけだし」 「そうそう。てーかややだってそうするでしょ?」 「もちろんだよー。あ、もちろん恭文みたいに鬼にはならないけど。 ややは赤ちゃんキャラだから、優しく温かくあむちーを応援するのー」 「うん、そうだよね・・・・・・って、誰が鬼だってっ!? 僕は天使のように清らかだっつーのっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あたしはあのまま学校から家に帰ってきて、ご飯を食べてお風呂に入る。その時にはもう夜になってた。 温かいお湯の中でまた泣いたりして、あたしはようやく落ち着いた。 でも結局あたしは・・・・・・ガーディアンを辞められない。ホントの理由を言わない内は無理。 本当は辞めたくてしょうがないのに、辞められない。しかもまだ辛い事がある。 それで同じクラスになったみんなは八神君やなでしこと同じくあたしの事まで特別な目で見る。 普通がいいのに・・・・・・別に変わったりしなくていいのに、どうしてこうなるかな。 もうしゅごキャラ生まれてどうこうなんて言うつもりはないけど、これじゃあ素直なキャラになっても意味なくない? みんながあたしの事ガーディアンとして見まくって・・・・・・そんな不安をかき消すように、あたしはビンの牛乳を飲む。 「・・・・・・ぷはぁぁぁぁぁぁぁっ! やっぱお風呂上りは牛乳一気飲みだよねー!!」 お風呂上がりの牛乳一本飲みはあたしの日課。ほら、牛乳って大事じゃん? 背も大きくなりたいし、胸だって・・・・・・さ。 あのシャマルさんやリインフォースさんだって相当大きかったし、フェイトさんも中1にしてはスタイル良かった。 まぁあたしはその、日本人だから外国の人みたい・・・・・・アレ、確かフェイトさん達はミッドの人って言ってたような。 そこまで考えた時、八神君がブチ切れた時の事を思い出した。それでまた気分が重くなる。 重くなるけど、また一口牛乳を飲んでそれをかき消す。だって、マジどうしたらいいか分からないし。 いや、マジで分からない。だって・・・・・・ミキ帰って来ないの。あのまま八神君と居るっぽい。 あたし、自分のしゅごキャラにまで見捨てられてるのかな。なんかもうやってられないよ。 「あむちゃん・・・・・・仮にもヒロインなのに。しかも窓辺に出てバスタオルだけ巻いた格好で」 「ガーディアンなのにおじさん入ってるですぅ」 「はいアンタ達うっさいっ! これくらい普通じゃんっ!! おじさんなんてちっとも入ってないしっ!?」 窓辺で牛乳ビン持ちながら振り返って、自分の机の上を見る。正確にはそこの上にあるものを見る。 そこにはあの時ガーディアンでもらったしゅごたまポーチと・・・・・・一つの南京錠。 ただし普通の南京錠じゃない。鍵穴の周りがクリスタルになってて、四つ葉のクローバーを模してる。 アレはハンプティ・ロック。なんか初代Kチェアから代々伝えられた由緒あるものらしい。 「あむちゃん、あの」 「いけないのかな」 「え?」 「変わりたくないって思っちゃ・・・・・・いけないのかな」 八神君の言う通りだよ。あたしは本当の理由をみんなに言ってない。 それであたしが今嫌だと思ってる事をみんなにやろうとしてた。だからあたしは・・・・・・まず呟く。 「あたしさ、別にもうアンタ達が居なきゃいいとか思ってないんだ。まぁ大変だけど、楽しいし。 でも、ガーディアンにジョーカーに今度はキャラなり・・・・・・あたしの周りがどんどん変わってく」 まるで万華鏡を回したみたいにくるくるくるくる・・・・・・酔っちゃうんじゃないかって言うくらいに変わっていく。 それが怖い。あの時感じた温かい大きな力がとても怖いの。怖くて、怖くてしかたない。 「あたしは別にそんな凄いキャラを目指したいわけじゃなかった。ただ、ただ意地っ張りな自分を変えたかった。 そう願ってアンタ達が産まれたのに、別のものが変わっていってるようで・・・・・・そんな願いも置いてけぼりにされそうで」 あの時の恐怖が蘇って、あたしは牛乳瓶を握りしめる。握りしめて・・・・・・唇を噛み締める。 「それが怖いの。昨日まで着れたお気にの服が、身体が大きくなっていきなり着れなくなっちゃったみたいな・・・・・・そんな感じ。 それみたいにホントのあたしや願った『なりたい自分』が・・・・・・全部置いてけぼりなくらいにキャラが作られてくのも変わるのも、怖い」 「・・・・・・あむちゃん。でもぉ、変わってもあむちゃんはあむちゃんですよぉ?」 「それは、そうなんだけど」 そうなんだけど、納得出来ない。何か・・・・・・何か置いてけぼりにしそうで、このままだと怖いの。 だけど言えない。これを八神君やみんなの前で言えない。言えるわけがない。 そこを言う事そのものが怖い。あたし、どうすればいいの? 悩んでも怖がっても答えは出ない。 だからあたしはそれをかき消すように牛乳瓶に口をつけて、また一口。 「なーにシリアスキャラしてんだ」 一口また牛乳を飲もうとすると、目の前から何かが降りてきた。 というか人の顔が180度回転して・・・・・・あたしは当然のように驚いて牛乳を噴き出してその表情にぶっかけた。 『あ、牛乳吹いた』 咳き込みながら後ずさりすると、その逆さに吊るされるような体勢だったソイツは身を翻してベランダに着地。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 「イクト、大丈夫かにゃ?」 「大丈夫だ。てーか汚ぇな」 どこからともなくタオルを取り出して顔を拭いて・・・・・・って、あたしコイツ知ってるしっ!! 「お前、そんなもん飲んでも胸大きくなんねーぞ?」 「うっさいバカっ! てゆうかいきなりセクハラすなっ!! いや、なによりアンタなんでここにっ!?」 まずどうやってあたしの家が分かったっ! 表札っ!? 表札で察したわけですかっ!! いや、それよりなにより・・・・・・あぁもうっ! マジコイツしつこいしっ!! 「あたしのたまごはもうエンブリオじゃないって分かったんだから、ほっといてよっ!!」 「バカ、ちげーよ。・・・・・・ほれ」 ソイツは左手から白いスーパーの袋っぽいのをあたしに差し出してきた。 なお、外見から判断すると中身はぎっしりっぽい。 「なによ、それ」 「お前にやるってさ。一応弁償だって」 「弁償?」 あたしは恐る恐るソイツから袋を受け取って中身を見てみた。 ・・・・・・中身はおせんべいにキャンディにチュッパチャプスにふ菓子・・・・・・なにこれ、お菓子ばっか。 「・・・・・・わぁぁぁぁ、お菓子がいっぱいですぅ」 「なんかおばあちゃんちにありそうだよねー」 「あの、コレなに? なんでいきなり」 「お前、あの時そういうの作ってただろうが」 あの時? あの時・・・・・・あたしが作って・・・・・・弁償? そこまで考えて、ピンと閃いた。だからあたしは目を見開いて声をあげる。 「あ、まさかこれタルトの代わりっ!?」 「あー、それだそれ。なんかよく分かんねぇけど、そういうもん作ってただろ」 「いやいや、これタルトと全然違うしっ! アンタちょっと感覚おかしいからっ!!」 ・・・・・・でもこれが弁償って事は、もしかしてあの時タルトダメにしたの悪かったと思ってる? 言動はアレだけど、そういう謝罪の気持ちを表すためにこれって事なのかな。 だったコイツそれほど悪いヤツ・・・・・・いやいやっ! あたしダマされるなっ!? しっかりしろっ!! そもそもタルトダメになったのはコイツのせいじゃん。でも・・・・・・こうやって持って来てくれたのはまぁ嬉しかったり。 「・・・・・・じゃあ俺、行くな」 アイツは振り返ってアタシに背を見せて。 「ちょっと待ってっ!!」 そのまま見送ればよかったのに、あたしは声をかけて引き止めてしまった。 ただ振り返った時、月明かりに照らされた横顔が綺麗で・・・・・・少しドキドキしてしまった。 「あ、あの」 「あぁ」 「アンタは・・・・・・イクトは、どうしてエンブリオを探してるの? 何か叶えたい願いとか、あるのかな」 あたし何聞いてんだろ。ワケ分かんないけど・・・・・・それでもイクトはあたしに近づいてしゃがむ。 あたしに目線を合わせた上で、そっと両手であたしの顔を掴んできた。 「・・・・・・なら、お前にだけ教えてやるよ」 「ほ・・・・・・ほんと?」 「あぁ、秘密な? だから耳貸しな」 あたしは言われるままに、ドキドキしながら右の耳をイクトに向けた。 でもその瞬間、あたしの耳はこう・・・・・・柔らかい何かで甘噛みされた。 「・・・・・・・はわわわわわわわわわわわわわわっ!!」 あたしは咄嗟にイクトから距離を取って、ベランダに尻餅つきつつ後ずさり。 それで両手で耳を押さえて・・・・・・ま、まさか甘噛みされたっ!? てゆうか騙されたっ!! 「やーい、騙された」 「ア、アアアアアアアアアアア・・・・・・アンタァァァァァァァァァァァッ!!」 「んじゃ、俺もう行くな」 イクトは楽しげに笑いながら軽く跳んで、ホントに猫みたいに塀に乗っかった。でも、そこで動きが止まった。 「・・・・・・なぁ」 「なにっ!? てゆうかマジ今すぐあたしの目の前から消えて欲しいんですけどっ!!」 「消える前に二つだけマジネタ。まず一つ、今すぐエンブリオから手を引きな」 声の調子は全く変わってないと思う。でもあの・・・・・・今イクトが言ったみたいにマジな話なのは伝わった。 だから動揺しまくりだった心が少しだけ落ち着きを取り戻す。 「イースターの奴らが本格的に動き出した。このままお子様キングやチビ達の側につくなら・・・・・・俺達は敵同士だ」 「敵? え、なにそれ。てゆうかイースターって」 「それで二つ目。別に変わるの怖いの、お前だけじゃないだろ」 あたしの話や動揺なんて完全無視なイクトは、体勢をそのままで顔だけこちらに見せてくれる。 月明かりに照らされた青い髪と整った横顔はやっぱり綺麗で・・・・・・見惚れてしまう。 「けど変わらない奴なんてどこにも居ない。みんな変わっていくし、場合によっては無理矢理変えられたりする場合もある。 ・・・・・・お前は怖がれるだけ恵まれてるだろ。世の中にはそれすら許されない奴だって居るんだ」 イクトはそれだけ言うと、跳んだ。高く・・・・・・本当に高く跳んで、夜の街に消えていく。 その姿はやっぱり夜を飛び交う野良猫。てゆうか動きそのままだしなんか分かっちゃった。 「・・・・・・なんなのよ、それ。マジ・・・・・・マジ意味分かんないし」 ベランダで一人呟いても、あたしの声は誰にも聴こえない。てゆうか、なんかムカつくんですけど。 あたしマジで何してる? ワケ分かんない事ばっかで・・・・・・だめ、やっぱ分かんないかも。 (第6話へ続く) あとがき 恭文(A's・Remix)「というわけで原作だと第1巻終了間際、アニメだと第4話と第2話後半のミキシングなA's・Remix第5話です」 フェイト(A's・Remix)「あむ、原作よりワケ分かんなくなってる感じだよね」 恭文(A's・Remix)「そうだね。まぁそこの辺りは次回に期待してもらいつつ・・・・・・本日のあとがきのお相手は八神恭文と」 フェイト(A's・Remix)「フェイト・テスタロッサです。とりあえずあむの事を抜くと、ヤスフミの浄化能力も変わらずな感じだったね」 恭文(A's・Remix)「うん。そこの辺りの理由付けも本文通りだよ」 (まぁ新たに設定作るのがめんどかったという理由もある) 恭文(A's・Remix)「それで今回と次回のお話は、あむがガーディアンになって遭遇した初めての事件。 アニメだとまた違うけど、原作だと今回名前が出なかったキャラなりが初登場したお話だよ」 フェイト(A's・Remix)「というか、これだとあむ自身が事件の当事者みたいになってるよね。×が付くか付かないかというレベル」 (どうしてこうなったのかは、また次回見てもらえれば分かると思います) フェイト(A's・Remix)「あとはハンプティ・ロックか。あれも何気に謎なアイテムだよね。 まだドキたま/だっしゅ終了の段階でも、詳細が詳しく分かってるわけじゃないし」 恭文(A's・Remix)「とりあえずプリキュアとかの変身アイテムとは一線を画すアイテムなのは間違いないね」 フェイト(A's・Remix)「あ、それは言えてるかも。でもアレがあるから起きる現象も沢山あったり」 恭文(A's・Remix)「あるね。アレとかコレとか」 (とにかくこんな感じでジョーカー・日奈森あむはスタートしたわけです) 恭文(A's・Remix)「でもあむ、やっぱ主人公キャラだよねぇ。僕は本当に脇で控えてていいと思うの」 フェイト(A's・Remix)「うん、その方がいいね。あのね、私もだんだん分かってきたよ。確かにヤスフミはあんまり目立たなくていいかも」 恭文(A's・Remix)「でしょ? 少なくともあむがメインになるお話なら、僕は脇に居るなり語り部的な感じだって。 作者もそうなるように調整しつつ話を書いていくつもりらしいし。ただ重要イベントにはしっかり顔は出してたり」 フェイト(A's・Remix)「うん。でも・・・・・・なんというかね」 恭文(A's・Remix)「何?」 フェイト(A's・Remix)「私もヤスフミの事見習いたくなった。だってほら、なのはがアレだし」 恭文(A's・Remix)「・・・・・・確かに」 (奴は自重しないしねー) 恭文(A's・Remix)「じゃあ僕達は自重していこうか。そのためにはまず」 フェイト(A's・Remix)「サブライダーとしての立ち位置を知るべきかな。 ほら、やっぱりStSでも出過ぎだと思うんだ。もうちょっと抑え目にして」 (二人で新主人公を支える相談をし始めて・・・・・・そのままこの会議は朝まで続くのでした。 本日のED:KOTOKO『ハヤテのごとく』) なのは(A's・Remix)「・・・・・・どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! どうして私の出番がないのっ!?」 シオン「あるわけないじゃないですか」 ショウタロウ「そうだぞ。そもそもお前聖夜市居ねぇし」 なのは(A's・Remix)「聖夜市のお話しなきゃいいだけの話だよねっ!? 私が主役じゃなきゃ嫌だよっ!! そもそもこれじゃあリリカルなのはのお話じゃないよねっ! こんなんじゃ読者だってどんどん離れちゃうよっ!!」 ショウタロウ「なのは、安心しろ。自己顕示欲の塊なくせにやたら常識に縛られてるお前の話の方がもっと離れる」 シオン「ぶっちゃけあなたに集客力があるとは思えませんし」 なのは(A's・Remix)「そんな事ないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |