小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第16話 『電王の世界/超・電王ビギニング』
恭文「前回のディケイドクロスは」
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『近づくな・・・・・・お前、俺が怖くないのかっ! 俺は化物だぞっ!? アイツらと同じ化物だっ!!』
『安心しろ。俺も見ての通りアンタと似たようなもんだ。アンタが化物なら、俺だって化物だ。
なにより、アンタの身体や姿が人間じゃなきゃいけない理由があるのか?』
小野寺君は、そのまま一歩ずつ歩いていく。それでその姿が大きく変わった。
紫色のラインが入った甲冑を着た後ろ姿が、画面越しに見えた。
『人とは違う力を持っていてはいけない理由があるのか? もし本当にアンタがそんな理由があると思ってるなら、そんなのは間違いだ』
『違う。俺は・・・・・・俺は、もう戻れないんだ。アイツらと同じなんだ』
『アンタがアイツらと同じだろうがなんだろうが、アンタが芦河ショウイチなのは変わらないだろうがっ!!
俺は・・・・・・アンタの事なんてちっとも怖くないっ! 誰もアンタを怖がってなんてないっ!!』
私と中島さんの声を代弁するかのような叫びを聞いて、私は自然と両手を強く握り締める。
画面の中のショウイチは、首を横に振りながら後ずさりを続ける。
『アンタを怖がってるのは、アンタだけじゃないかっ! アンタは自分の弱さが、醜さが怖いだけなんだろうがっ!!
でも怖がる必要なんてどこにもないっ! 力も、弱さも、醜さも・・・・・・全部アンタじゃないかっ!! 違うかっ!?』
『来るな・・・・・・来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
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恭文「というわけで、ユウスケがめっちゃ株を上げました」
もやし「感想見てもそうなるんだよな。てーかアレだ、『他のSSよりユウスケの扱いが良い』って意見が多数出てる」
恭文「作者的には余りに扱いが不憫だからプッシュしてる感じなんだけど・・・・・・好評でよかったね。
さ、そんなわけで今回は波乱必死な電王編だよ。いったいどうなるんだろうね」
もやし「まずはギンガマンの風邪からだろ。アレは長引くぞ」
恭文「うん、そんな気がするよ」
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「というわけで、電王の世界に来たわけだけど・・・・・・はぁ」
「あなた、なんでいきなりため息吐いてるんですか。というかギンガさんは」
「あー、ダメダメ。完全にこじらせちゃってるから、休ませないとだめだって」
写真室に戻ってきて早々、夏みかんやユウスケが心配そうに僕を見る。
正確には起きてこないギンガさんの状態を見てきた僕と栄次郎さんを見る。
「まぁギンガちゃんの事は私に任せておいてくれれば大丈夫だから」
「お願いします。・・・・・・はぁ」
「恭文、お前なんでさっきからため息吐きまくってるんだよ。あ、まさかギンガちゃんが居なくて寂しいとかか?」
「ユウスケ、ニヤニヤするな。そしてもやしもニヤニヤするな。てーかそんなんじゃなくて・・・・・・ねぇ?」
なお、隣の栄次郎さんも困った顔しちゃってるのには理由がある。それはさっきまで顔合わせてたギンガさんの様子だよ。
≪ギンガさん、この人の事をまるで子どもの如く心配しまくったんですよ。無茶しないようになんて序の口です。
知らない人について行かないようにとか、落ちてるものを食べちゃだめとか、転んだくらいで泣いちゃだめとか≫
「アルト、それ違うから。ギンガさんはスバルの心配してただけだし」
「スバル? ・・・・・・あ、私聞いた事あります。ギンガさんの妹さんです・・・・・・アレ」
「ね、おかしいでしょ? 僕を見ているのに、どうしてかスバルの心配してるのよ」
というか、頭撫でるし抱きしめようとするしで大変だった。しかも栄次郎さんをゲンヤさんに間違えてたし。
ただ、ギンガさんの性格がどういうところで構築されたのかはよーく分かった。それはもうバッチリだよ。
「・・・・・・ギンガちゃん、病院に連れて行った方がいいんじゃないか?」
「それも考えておこうか。保険証とか無いけど」
「あー、そういやお前はともかくギンガちゃんは基本ガチ異世界人だったな。そりゃあ地球の保険証なんてないか」
そんな話をしながらも、僕達は早速電王の世界の探索に乗り出す事になった。
ギンガさんがダウンとは言え、ジッとなどしていられない。
これも早く二人で元の世界に帰るためである。ガンバ、僕。
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「・・・・・・で、俺達はまた格好が変わるわけか」
「なんでだろうなぁ。まぁもう俺達は見慣れたけど」
今回の俺達の格好は、茶色のコートとトランクを持った上に帽子をかぶった旅人ルック。
そして写真館の外見も、また変わった。看板こそあるが外はレンガ造りの建物になっている。
東京駅の入り口とかを思い出してもらえると分かるかも知れない。ノリとしてはあんな感じだ。
だが俺やユウスケに夏みかんはともかくとして、蒼チビが神妙な顔で自分の姿を見た。
「蒼チビ、どうした。また原作知識が疼きだしたのか?」
「そんなとこ。これ・・・・・・僕の知ってる電王に出てた人の格好そのままだから」
なんて言いながら、蒼チビは自分のポケットを探る。それを見て、今までの経験からピンと来た俺も同じく探る。
今までも生徒手帳とか手紙とかが変わった服や持ち物に入りまくってたからな。
だから蒼チビだってまずそこから確認をし始めたんだ。ただ、俺の方には今回は何も入っていなかった。
いや、それは正確じゃないか。俺の左手には懐中時計があったんだからな。
ついでにそのアナログ時計が示す現在の時刻は、午前10時35分54秒だ。
それで俺達の視線は、自然と蒼チビの方に向いた。どうやら蒼チビは当たりらしい。
蒼チビは・・・・・・右ポケットからあるものを取り出してた。
「やっぱり入ってましたか」
「やっぱりだね」
「でも、それなんですか? パスケースに・・・・・・カード?」
「デンライナーのチケットに、ライダーパスだよ」
そう言いながら蒼チビはどこか嬉しそうな顔で、そのチケットとパスを持ち上げて見ていた。
「恭文、まずそのデンライナーってのはなんだよ。まぁあの絵の列車の事だってのは分かるが」
「えっとね、時の中を走る列車なんだ。チケットがあれば、どんな時間にも行ける」
「なるほど、要するにタイムマシンって事か」
「まぁそんなとこ」
言いながらもやっぱり楽しそうで・・・・・・コイツ、どうした? 今回はまたテンションおかしいだろ。
「チケットなりパスがあれば、例えば・・・・・・11時11分11秒みたいにゾロ目が揃う時間に近くのドアを開けると、その列車に乗れるの」
「じゃあ俺達は、その列車に乗って旅をしろって事か? また分かりやすいな」
「なら、もうちょっと待たなくちゃいけませんね。でもあなた、なんでそんなに楽しそうなんですか」
「そりゃあ電王には前に一度会ってるしさ」
『はぁっ!?』
いやいやっ! ちょっと待てっ!! 確かコイツの世界では、俺達仮面ライダーはテレビのヒーローじゃなかったかっ!?
それと会ったって・・・・・・あ、なんか俺達無視して歩き出しやがったしっ!!
≪でも、余計な期待はしない方がいいと思いますけどね。間違いなく別人出るでしょうし≫
「それは分かってるって。でもさ、なんかこう・・・・・・知らないイマジンとかと会えるかなーとか考えると楽しくならない?」
≪まともな人だといいんですけどね≫
「いや、それはね?」
そう言いながら歩き出した蒼チビを、当然俺達は追いかける。
「おい蒼チビ、お前どこ行くつもりだ」
「当然・・・・・・薬局だよ」
「はぁっ!? ・・・・・・あぁ、そういう事か。大体分かった」
「いつも物分りが良くて嬉しいよ」
ようするに、ギンガマンの風邪対策にまずは薬を買ってこようとしてるわけだ。
その様子を見て夏みかんもユウスケも顔を見合わせて、笑っていた。
そして俺達はそのまま蒼チビを追いかけた。・・・・・・だが、それは俺達だけじゃなかった。
そんな蒼チビの背中に、ふよふよと浮かんで動く光る何かが直撃した。その瞬間蒼チビは動きを止める。
蒼チビの足元から砂が零れ落ち、かぶっていた帽子も頭から落ちる。しかも髪型まで変わっていた。
後ろからだが、オールバックっぽい感じになっているのが分かる。いつもはムカつくくらいの主人公ヘアーなのにだ。
「・・・・・・邪魔だっ!!」
いきなり蒼チビが左手を動かして、叫びながら胸元に手をやって一気に上に上げた。
・・・・・・いや、アレは放り投げたんだ。俺はすかさずこちらに飛んできた宝石を・・・・・・え?
宝石は一気に日本刀に変わった。それに驚きつつも、しっかりとそれを受け止めた。
当然ながらコイツは蒼チビの相棒だ。アイツ、いきなり相棒放り投げやがったんだよ。
いや、それだけじゃなくて今度はコートや首元の紐状ネクタイまで脱ぎ出しやがった。
「全く・・・・・・あんなの俺様の趣味じゃねぇんだよっ!!」
「お、おい恭文っ! お前いったいどうしたんだよっ!!
しかもいきなりアルトアイゼン放り出すなんてダメじゃないかっ!!」
「あぁっ!?」
蒼チビがこちらを振り向くと、近づこうとした俺達は動きを止めた。てーか、驚いた。
髪はやっぱりオールバックで、赤いメッシュが入っていて・・・・・・そして瞳まで赤くなってたんだよ。
いや、それだけじゃない。コイツ声まで変わってたんだよ。な、なんだコレ。
「うるせぇんだよっ! ガタガタ抜かすとぶっ飛ばすぞっ!!」
「あ、あなた・・・・・・どうしたんですか、それ」
≪・・・・・・これはまさか≫
「アルトアイゼン、このバカがいきなりイメチェンした理由が分かるのか?」
≪えぇ、おそらくですがこの人≫
青豆が言いかけている間に、蒼チビは全速力で疾走した。なお、方向は前だ。
当然俺達も前を見るが、もうその時には遅かった。俺達の誰の手も届かない。
蒼チビは持っていたチケットを落としながらも、まず写真館の前の道路を一気に横切り走り抜ける。
その上で通りがかった駅員っぽいのに飛び蹴りかましたんだよ。
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「がはっ!!」
当然駅員は倒れて、道に倒れた。・・・・・・おいおい、アイツがいくらデンジャラスだからってアレはないだろっ!!
俺達は追いかけようとするが・・・・・・運悪く左車線からトラックの集団が走り込んで来た。
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「・・・・・・上手い事隠れたようだが、匂いで分かんだよ匂いでっ!!」
「ふん、鼻が利くようだな」
目の前のあんちゃんはニヤリと笑いながら、一気に崩れ落ちる。それでその身体がから砂が噴き出した。
その砂は右手にナックル式の刃を持って、左手がドリルになっているモグラ型のサイボーグっぽいイマジンになった。
「へ、やっぱイマジンだったか。つーわけで・・・・・・行くぜっ!!」
どういうわけかこのチビ、パスを持ってた。だったら今までよりはやりやすい。遠慮無くやってやるぜ。
俺はどこからともなく左手でベルトを取り出して、腰に装着。
そのベルトのバックルに付いている赤いボタンを押すと、音楽が鳴り出した。
俺はパスを持ったまんまの右手を広げ、左手も前に突き出す。
「変身っ!!」
右手を動かして、そのパスをバックルにかざした。
≪Sword Form≫
その瞬間、俺の身体を黒と銀色の装甲に仮面を纏ったスーツが装着される。
そして周囲に円形の虹色のレールが走って、そこに赤い装甲が出てくる。
装甲は次々と俺のスーツの上に装着されて、赤いイカした鎧になりやがった。
最後に、俺がかぶっている丸坊主な仮面の真ん中に走っている銀色のレールに変化が起こる。
頭頂部から桃色の仮面がレール伝いに走って来て、目を覆うような位置まで火花を走らせながら降りてくる。
仮面はそこで開いて、強く輝く。俺は右手をスナップさせてからその親指で自分を指差す。
「・・・・・・俺」
そして左手を突き出し、右手は真横に。派手に名乗りを上げてやった。
「参上っ!!」
それから俺はすぐに、腰の両側にあるパーツ四つを手に取る。まずは左側二つだ。
「貴様・・・・・・電王かっ!!」
「あぁ? なんだそれ。知らねぇなぁ」
それを合体させて、軽く放り投げる。次は右側の二つを手に取った。
右手は一番下で、左手は一番先っぽになるパーツだ。
放り投げたパーツをそれで挟み込むようにキャッチすると、火花を走らせながらくっついた。
すると先っぽのパーツから赤い剣が生えた。俺はそれを肩に担いで、一歩踏み出す。
「言っとくが俺は・・・・・・最初から最後までクライマックスだぜっ!!」
で、当然・・・・・・突っ込むわけだっ!!
「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
世界の破壊者、ディケイド。8つの世界を巡り、その瞳は何を見る。
『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説
とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路
第16話 『電王の世界/超・電王ビギニング』
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「おいおい、どうしてこんな時にコレなんだよっ!!」
「知るかっ! くそ、こうなったら変身して無理矢理」
「士くんダメですってっ! それでも轢かれて怪我しちゃいますからっ!! 事故になりますっ!!」
「じゃあどうしろってんだよっ!!」
一番早く飛び出そうとしていたユウスケも一旦足を止めて、10数台のトラックの列が通り過ぎるまで待つしかなかった。
そして俺は夏みかんに右手を掴まれ引き止められ、変身して突っ込む事も出来ない。
「俺・・・・・・参上っ!!」
声だけが聴こえて来て、俺達が焦るなかようやく全てのトラックが通り過ぎた。
すると赤いアーマーを装着した蒼チビくらいの身長っぽいのが、青いサイボーグっぽいイマジンに斬りかかっていた。
「な、なんですかアレっ! というか、アレもっ!!」
≪イマジン・・・・・・電王の世界の怪人ですよ。それであの赤いのが、電王です≫
「・・・・・・仮面ライダー電王か」
「いや、納得してる場合じゃないだろっ! すぐに恭文の奴を」
ユウスケ、それはもう遅い。・・・・・・今度は反対車線からきやがったよ。しかも数はさっきの倍だ。
「おいおい、またかよっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まずは袈裟に一撃。肩から一気に斬りつけてやった。次は右薙、左薙と剣を叩き込む。
するとモグラ野郎はドリルを突き出して来た。だから俺は右に動いてそれを避けてながら腹を右薙に斬りつけてやる。
「遅ぇん」
そのまま斬り抜けて、俺はすぐに足を止めて、右足でモグラ野郎を背中を蹴り飛ばしてやった。
「だよっ!!」
モグラ野郎は前のめりに倒れる。だが、すぐに立ち上がった。俺はゆっくりと振り返って、また踏み込む。
「くそぉ・・・・・・調子に乗るなぁっ!!」
そんな俺に右のナックルを叩きつけてくるんで、俺は剣を左薙に叩き込んでそれを払って、モグラ野郎の横に回る。
右側からまずは突きを打ち込む。火花を散らしながモグラ野郎が怯んだところで、ゆっくりと距離を詰める。
「うっせぇっ! テメェらのせいで俺は・・・・・・俺は・・・・・・!!」
詰めながら袈裟に、逆袈裟に、とにかく乱暴に剣を叩きつける。てーかまたイライラしてきやがった。
モグラ野郎は怯みながらも俺の剣をドンドン受けて後ずさりしていく。その弱さが俺を更にイライラさせる。
コイツらの・・・・・・コイツらのせいで・・・・・・! あぁクソっ!! マジでイラつくしっ!!
「だからとっととやられやがれっ!!」
10数回叩きつけた後、トドメに腹に突きを叩き込んでやった。モグラ野郎はそのまま吹き飛び数メートル転がる。
俺は左手からパスを取り出して、またバックルにかざす。そうしたらバックルが赤く輝いて、そこから火花が走る。
≪Full Charge≫
「・・・・・・必殺」
その火花が剣の下に繋がって、剣の刃が強く光った。その刃は剣から離れて、ドリルみたいに回転しやがった。
俺はそのまま剣が無くなった剣を右薙に振るうと、回転している刃がそれに合わせて動く。
「俺の必殺技っ!!」
「や、やめ・・・・・・!!」
その刃がモグラ野郎をを斬り裂く。次に腕を上げて・・・・・・一気に剣を唐竹に叩き落とした。
すると振り抜かれた剣もまた俺の腕に合わせて動いて、モグラ野郎に向かって迫る。
「パートU!!」
回転する剣はモグラ野郎の頭に叩き込まれて、身体を一刀両断にする。
その時に地面も砕くが、気になんてしてられねぇ。そいでモグラ野郎の身体が強く震えた。
「くそぉ・・・・・・くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
モグラ野郎は後ろのめりに倒れて、そのまま爆発した。回転してた剣は、そのまま俺の手元にまで戻ってきた。
カッコ良く・・・・・・そうだ、めちゃくちゃカッコ良く倒せた。暴れられた。だが、ちょっとしかすっきりしねぇ。
「何が『くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』だ。そう言いたいのは俺の方だっつーの」
俺は身体を起こして、左手でベルトを外す。そうしたらスーツも鎧も仮面も一瞬で消えて、元のチビの格好になった。
俺は舌打ちしながら、ガーガーうるさく通っているトラックから遠ざかるように歩き出した。
「・・・・・・あ、でも待てよ。パートUがあるって事は、Tもあるって事だよな?
てーか俺、なんでこれで変身出来るとかって・・・・・・あー、だめだ。ちっとも思い出せねぇ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・必殺っ! 俺の必殺技っ!!」
「や、やめ・・・・・・!!」
「パートU!!」
・・・・・・あ、トラックの向こうから爆発音が聴こえた。アイツ、マジでなにやってんだ。
「ち・・・・・・違ったか」
とにかくようやくトラックは通り過ぎて、俺達は右見て左見てまた右を見る。
『・・・・・・異常なし』
確認した上で向かい側を見るが、見事に蒼チビの奴は居なかった。
後に残っているのは、倒れた駅員っぽい奴だけ。・・・・・・なんだよ、これ。
「おい士っ! 恭文居ないぞっ!?」
「いや、分かってるからイチイチ言うな。・・・・・・おい青豆、説明してもらうぞ。アイツはなんであんなになった」
≪あの人、イマジンに身体を乗っ取られたんですよ。それも、電王と契約しているイマジンに≫
そしてそんな俺達の目の前・・・・・・左車線から、今度は何かのデモの更新が通り過ぎた。なにやら『給料上げろー』と叫んでいる。
・・・・・・もう別にこれはいいだろっ!? この世界の連中はどんだけ俺達の邪魔をすれば気が済むんだよっ!!
いや、なにより俺達は写真館を出てから10メートルも歩いてないんだぞっ! なのにこれはありえないからなっ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・なにやら外が騒がしいねぇ。ギンガちゃん、大丈夫?」
「そうそう。まぁ今のギンガちゃんは色っぽくて綺麗だと思うけど、それでも心配よぉ」
顔を赤くして、息も荒らげでパジャマ姿・・・・・・普通に男の人がノックダウンなレベルだと思うわぁ。
「あ、はい。大丈夫・・・・・・です。妹の夢見てたせいか、こう・・・・・・気持ち的に楽に」
「そ、そう。まぁその・・・・・・良かったねぇ」
栄次郎ちゃん、めちゃくちゃ微妙な顔になってるわねぇ。あー、でも当然よねぇ。
だってその妹さんと恭文ちゃんの事間違えちゃってたわけでしょ? それは相当よ。
「あ、なぎ君は」
「恭文ちゃんなら、士くん達と一緒にこの世界の事を調べに行ったわぁ。
あー、あとお財布の中身も確認してたから、何かお土産買って来てくれるかも知れないわよぉ」
前の世界でG3ーXの装着員やったおかげで、そこそこお金が入ったそうなのよぉ。
だから栄次郎ちゃんにユウスケとギンガちゃん共々生活費を入れて・・・・・・士が居心地悪そうだったわぁ。
「なぎ君・・・・・・もう、そういうのいいのに」
「あら、いいじゃない。病気の時くらいは甘えちゃえば。
でも何買ってくるのかしらぁ。例えば・・・・・・アイスクリームとか?」
「あぁ、いいねぇ。体調が悪い時にはね、とにかく何でも食べなきゃいけないんだよ。
アイスとかは特に効果的なんだよ。食欲がなくても食べやすいし、夏海も子どもの頃には」
氷枕をギンガちゃんの頭の後ろに置いていた栄次郎ちゃんがそこまで言って、ギンガちゃんの方を見る。
全部の動きを止めてギンガちゃんの方を見たから、栄次郎ちゃんに頭を抱えられていたギンガちゃんが首を傾げた。
でも栄次郎ちゃんはすぐに動きを再開させて、氷枕の上にギンガちゃんの頭を乗せる。
「・・・・・・ギンガちゃんなら心配ないね」
私も栄次郎ちゃんの反応が疑問だったんだけど、この一言で納得したわぁ。
「それもそうねぇ。ギンガちゃんだもの」
「あの、えっと・・・・・・もしかして私、今何気にひどい事言われてるんじゃ」
ギンガちゃんが困り気味にそう言うから、私は隣の栄次郎ちゃんと顔を見合わせる。
でもすぐにギンガちゃんの方を見て、栄次郎ちゃんは首を横に振る。私も身体ごと横に振った。
「「いやいや、そんな事はないから」」
「ホントですか?」
「「ホントホント」」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文の行方は・・・・・・もうなんつうか、さっぱりって言いたいくらいに分からない。
アルトアイゼンもサーチ機能や思念通話の類で探してくれてるんだが、さっぱり掴めないらしいんだよ。
ここはどうも今恭文に取り憑いてるイマジン・・・・・・モモタロスに支配されてるせいらしい。
・・・・・・え、ギンガちゃんに相談? いや、それも考えたんだけどギンガちゃん風邪引いてるじゃないか。
もしもこの事を知ったら、間違いなく飛び出そうとする。ギンガちゃんならやりかねない。
俺達三人は街を散策しながら・・・・・・まず薬局屋に寄った。そしてギンガちゃん用の薬を購入。
薬屋を出て、改めて俺達はアルトアイゼンから話を聞く事にした。なお、待機状態に戻ってないのは気にしないでくれ。
「・・・・・・アルトアイゼン、つまりこういう事ですか? 電王は怪人であるイマジンの力を借りて変身する。
そのうちの一体が、あの人に取り憑いたその・・・・・・モモタロスなんですよね」
≪そうですね。ただ、ここで問題が出てくるんですよ。
あの人特異点でもなんでもないのに、電王に変身しちゃったぽいんです≫
「その特異点ってのじゃないと、電王には変身出来ないんだったな。
でも恭文はどういうワケかそれじゃないのに、この世界のライダーに変身してると」
≪えぇ。まぁ私達の知ってる電王とルールが違うとかなら、話は分かるんですけど≫
・・・・・・あー、そういやファイズのベルトの事もあるしなぁ。あんまテレビ知識持ち出すのもアレなんだよ。
恭文やアルトアイゼンの知ってる電王と違ってても、それは当たり前な事だったりする。
「士、どうする? 恭文も見つかんないし・・・・・・って、話聞いてますっ!? 何懐中時計見てるんだよっ!!」
コイツ、さっきから俺と夏海ちゃんが頭抱えてるのに、懐中時計や街中の時計や建物見回してんだよ。
俺だけじゃなくて、夏海ちゃんも怪訝そうな顔をして士を見る。それでも士は懐中時計から視線を離さない。
「・・・・・・今は11時ちょうど」
士がそう呟いたのを聞いて、俺と夏みかん・・・・・・あ、間違えた。夏海ちゃんは顔を見合わせる。
「士くん、もしかして」
「あぁ。その電王と契約してるイマジンは、本来はデンライナーに居るもんなんだろ?
それに電王になってるライダーもデンライナーを拠点にしているっぽい。だったらまずはそこだろ」
「確かに・・・・・・それが手っ取り早いか」
士、何気に対策考えてたんだな。だからさっきからやたら時計を気にしてたと。
うし、ならそれで・・・・・・俺がそこまで考えた時、頭の中でストップの声がかかった。
「士、でもそれで本当に大丈夫か?」
「何がだ」
「向こうの状態がどうなってるかも分からないじゃないか。
こっちの世界のライダーが友好的とも限らないぞ」
士は俺に視線を向けるけど、別に不愉快とか怒ってるとかそういう感じじゃない。
多分俺が言った事が、ありえない事じゃないって思ってるんだろ。だって。
「確かに・・・・・・そうですね。ユウスケの例もありますし」
「う、うん。そうなんだよ。君達はこう・・・・・・分かってくれて嬉しいよ」
うん、俺の例もあるしね。でもなぁ二人とも、俺だけじゃないだろ? ほら、ワタルだってそうだったし。
・・・・・・あ、でもあの予言者も龍騎の世界以降姿を現してないな。一体なにしてんだろ。
「あの予言者がまた先回りして、士くんやあの人を悪魔だと吹き込んでる可能性もあります」
「それでユウスケみたいに襲ってくるってか。それは怖くて行けないなぁ」
「よし、二人ともちょっと真剣に俺と話しないかっ!? 恭文の事はひとまず置いておくとしてだっ!!
俺達はこれから一緒にやってくために、まず超えなきゃいけない壁があると思うんだっ!!」
・・・・・・ようするにアレだ、差異がありまくって乗り込んだ途端に攻撃食らうとかもありえない話じゃないんだよ。
基本アウェイなのはこの旅での常識になりつつあるとは言え、さすがに何の準備も無しはダメだろ。
だがそこは置いておいても・・・・・・神様、俺は時折この二人の事がこう、めちゃくちゃ怖い時があります。
やっぱ俺が悪い・・・・・・そう思いながら、俺は両手を握って天を仰いでいた。だからこそ俺は気づいた。
俺が視線を向けていた9時方向にあった高層ビルが、一瞬で消えていく様子にだ。
「お・・・・・・おい、士っ! 夏海ちゃんっ!!」
「なんだ、バカスケ。懺悔の時間は終わったのか?」
「そうじゃないからっ! アレ見ろっ!!」
俺が叫びながら指差すと、今度は隣のビルが消えた。それも普通の消え方じゃない。
ビルを構築している全ての物質が粒子化して、砂でも落ちるかのように消え去ったんだ。
「・・・・・・な、なんですかアレ」
「夏海ちゃんも見たか?」
「はい。士くんも・・・・・・って、写真撮ってる場合ですかっ!?」
士がいつもの調子で写真を撮ってる間に、遠くから爆発音みたいなのが聴こえてきた。
それで悲鳴も微かに・・・・・・まさかあの、イマジンってのが暴れてるっ!?
「こうしちゃいられない。俺達も」
≪ストップです≫
動き出そうとした俺達を止めたのは、アルトアイゼンだった。だから俺達は全員でアルトアイゼンの方を見る。
≪あなた達が行ったところで無駄ですよ。どうにも出来ません≫
「なんでだっ!? もしかしたらあそこに恭文も居るかも知れないのにっ!!」
≪ユウスケさん、さっき説明した事をもう忘れたんですか? イマジンは人に取り憑いてどうするんですか≫
そう言われて・・・・・・俺は納得した。そうだ、俺はさっきちゃんと聞いてる。イマジンは人に取り憑いてどういう行動を取る?
まず取り憑いた人間の願いを叶えるという契約を結ぶ。イマジンはその契約を叶えるために働く。
その契約を叶える事で、契約者の一番記憶に残っている時間に・・・・・・過去にタイムスリップが可能になる。
その過去で破壊活動を行って人間の時間を消す事が、イマジンの目的になっていたらしい。
「青豆、つまりアレがそれなんだな?」
≪えぇ≫
過去でイマジンが暴れた影響で、建物や何から何まで消えようとしている。だからアレなわけか。
確かにそれだと、今の俺達がどんだけ頑張っても意味が無い。根っこから対処しなきゃどうにもならない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・くそっ! 何が起こってやがんだっ!! 俺にはさっぱり分からねぇっ!!」
ビルの屋上に立って、俺は消えてく他のビルや建物を見る。いや、消えてってんのはそれだけじゃねぇ。
橋に車に道に・・・・・・やっぱあのモグラ野郎共を根こそぎ潰してくしかねぇのか。
「それは当然。今の君では無理だ」
そんな事を言いながら俺に近づいてくるのが一人居た。ジャンパーにジーンズ姿のいけすかねぇ感じの男だ。
「まさか少年君の身体を使ってるとは思わなかったけど・・・・・・まぁそこはいいか」
ソイツはニコニコ笑いながら、俺の方に平然と歩いて来る。睨みつけても軽く流しやがる。
てーか少年君? 少年・・・・・・あ、まさかコイツ、このチビスケの知り合いか。
「なんだ、コイツなら返さねぇぞ。コイツの身体、ちょうど良いんだよ」
チビのくせにやたら鍛えてやがるんだよ。だから少々無茶に動いても全然響かねぇ。
その上カッコ良く変身出来るしな。俺が使うにはマジでちょうど良いってわけだ。
「そんな事はどうでもいいさ。それに少年君なら、本気を出せば君を追い出すくらいは簡単さ。僕の出る幕じゃない」
「はぁ? お前、バカじゃねぇのか。コイツは俺ん中でぐっすりお休み中だ。出来るわけが」
「出来るさ。君、少年君を甘く見るのは良したまえ。痛い目を見るよ?
・・・・・・それで話を戻すけど、実はデンライナーには前々から興味があってね」
なんかよく分からねぇが、コイツを返せとかそういう話じゃないらしい。てーかデンライナーって・・・・・・なんだ?
「でも本物を盗むのはちょっと無理だったんだよ。だから君がデンライナーになってくれないか?
君ならデンライナーにファイナルフォームライド出来るはずさ」
「ふぁ、ふぁいなるふぉみゅ・・・・・・なんだそれっ! ワケ分かんねぇ事言ってんじゃねぇっ!!」
「ぜひ手に入れたい」
俺の話は一切無視かよっ!! ・・・・・・とにかくそのあんちゃんは、右手でカードを取り出した。
そこには俺がさっき変身した仮面野郎に、白い電車みたいなのが描かれてた。
「おいあんちゃん、さっきから何の話してんだ」
「実体を無くした君には、ちょうどいい話だろ?」
ソイツは俺の方に近づきながらも、平然と・・・・・・平然とそんな事を言いやがった。
だから俺の動きは完全に固まった。その間にソイツは近づいてくる。
「数日前、この世界に大きな時間の歪みが発生した。そのせいで君は持っていた実体どころか記憶すら無くしている」
・・・・・・あぁ、そうだ。気がついたらワケの分かんない場所に居て、俺の仲間っぽい奴らが居た。
だが俺は・・・・・・そこから飛び出した。だってワケ分かんねぇだろ。何にも、何にも覚えてねぇんだぞ。
俺には元々身体があって、外も自由に歩けて名前でも呼ばれてた。そこだけしか分からねぇ。
だが俺だけが、俺だけが『俺』を無くしちまって・・・・・・居ても立ってもいられなかったんだよ。
「そんな君に新しい姿が手に入るんだ。悪い話じゃないだろ」
あんちゃんは俺の目の前に来て、にこやかに左手を差し出して来た。
「というわけで、デンライナーをくれ♪」
「・・・・・・うっせぇんだよっ!!」
俺は両手であんちゃんを突き飛ばした。あんちゃんは軽くのけぞるが、コケたりはしないで両足を踏みしめた。
動きを止めてから軽く息を吐いて、右手のカードを一旦懐に仕舞う。
「まぁ、君の性格を考えれば素直に話が進むとは思っていなかったけどさぁ」
「テメェ、とっとと俺の目の前から消え・・・・・・待て、お前まさか俺の事を」
「あぁ、知ってるよ? でも教えない。それを教えても何の意味もないからね」
あんちゃんはそう言いながら、右手でさっきのものとは別のカードを出した。
それから左手で銃を出す。あんちゃんはカードを右手のカードをその銃に挿入した。
≪KAMEN RIDE≫
銃をなんか伸ばして、ソイツはその銃を上に向ける。
「変身」
≪DIEND!!≫
ソイツが引き金を引くと、なんかこう・・・・・・分身みたいなのや青い板みたいなのが出てきた。
それが身体に重なって、青と黒のスーツと鎧を着込んだ妙ちくりんなのになった。
「あぁあぁそういう事か」
俺はすぐに左手からベルトを取り出し、さっきと同じように装着してパスをセタッチ。
「だったら早くそう言えってんだよっ!!」
≪Sword Form≫
それでさっきと同じようにスーツと仮面とアーマーを装着。当然・・・・・・これもやる。
「俺・・・・・・参上っ!!」
右腕を一回グルリと回して、俺はあの妙ちくりんなあんちゃんに向かって突撃した。
「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・じゃあ私達はどうすれば? このままじゃどうしようもないんですよね」
≪他に手がかりが無い以上、デンライナーに乗るしかないでしょ≫
俺はもう一度、あのビルが消えた方を見る。今のところ続けて何かが消えたりという事はないようだ。
というか、一旦収まった様子と見て良いかも知れない。俺は自然と表情が苦くなってしまう。
≪全く・・・・・・相変わらず運が悪い人ですね。その上世話も焼けますし。
なんでいきなりトラックが両車線で連続的に通った上にデモ行進が来るんですか≫
「確かに・・・・・・アレはありえません」
「おかげで俺達、完全に恭文から離れちゃってるしな。というか、恭文はいつもあんな調子なのか?」
≪えぇ。まぁあれくらいは序の口ですかね≫
アレが序の口って・・・・・・アイツ、どんだけ運悪いんだろ。
旅に出る事になったのも事故っぽいし、悪魔呼ばわりもされまくったし。
「でもあなたは、それでもパートナーなんですよね。どうしてですか?
そんなに運が悪いなら、あなたも大変なはずなのに」
≪そんなの、あの人に付き合えるのが私くらいしか居ないからに決まってるじゃないですか。
何を分かり切った事を・・・・・・あぁ、すみません。あなたはバカでしたね。それも生粋の≫
「なんですかそれっ! 私はちょっと疑問に思っただけなのにっ!!」
「夏みかん、それはしょうがない。お前は今までの自分の行いを省みた方がいいな」
「士くんまでひどいですっ!!」
あー、夏海ちゃんごめん。俺も全く同意見だわ。まぁ何にしても、まずはデンライナーに乗り込む事か。
えっと、恭文の話だとゾロ目な時間にパスとチケットを持って・・・・・・アレ、チケット?
「なぁ、俺達チケットもパスもないよなっ!?」
「・・・・・・あ、そう言えばっ! あの、どうするんですかっ!! それじゃあデンライナーには」
「安心しろ」
言いながら士が左手から出したのは、あの時恭文が見せてくれたチケット・・・・・・なんでここにっ!!
「蒼チビ・・・・・・いや、モモタロスがダッシュした時に落としたんだよ。青豆、これで問題ないよな」
≪ダメかも知れませんね≫
「そうか・・・・・・はぁっ!? なんでだよっ!!」
≪そのチケット、日付書いてませんよね?≫
俺と士と夏海ちゃんは身を寄せ合って、改めてチケットを見る。・・・・・・確かに日付は書いていない。これは空白のチケットだ。
≪本来チケットは書かれている日付の時間に行くものなんです。
もしくは無期限マークがついていて、いつでも乗車可能≫
「つまり、何にも書かれて居ないこのチケットじゃあダメって事かよ。てーかそれならそれで早く教えろ」
≪いえ、そうと決めるのは早いかもしれません。それがチケットなのは間違いないですし、もしかしたら乗車だけなら出来る可能性も≫
・・・・・なるほど、確かに電車の切符には入場券の類もあるしな。だからさっきも『かも知れない』を付けたと。
「ならまずはこのチケットが使えるかどうかだけ試す事からでしょうか」
「めんどくさいが・・・・・・それしか無いな。それで使えるようなら」
「悪いけど、それで早速乗り込まれちゃあ僕達もちょっと迷惑なんだよねぇ」
俺達の前から、声がした。俺達は足を止めてそちらを見ると・・・・・・そこには一人の女性。
金色の髪をポニーテールにして、それを青いリボンで結んでいる。そして瞳は青。
前髪の一部にはメッシュが入っていて、服装は黒の上着とロングスカートに黄色の無地のシャツ。
身長は165近くあって、スタイルはめちゃくちゃいい。というか、一瞬見とれてしまった。
「いやはや、まさか本当にディケイドなんて居るとは思わなかったよ。あのおじさん、無茶苦茶怪しいオーラ出しまくりだったし。
しかもそれに別世界と言えど恭文やギンガちゃんが一緒だって言うのも、実は信じられなかったんだけどなぁ」
でも、声がおかしい。この人は女性のはずなのに、完全に男の声を出してる。
右手を上げて指を弄りつつ、腰をくねらせながらその人は俺達に近づいてくる。
≪・・・・・・・・・・・・フェイトさん? というかあなた、ウラタロスさんですか≫
え、ウラタロス? あの、誰ですかそれは。ね、お願いだから俺達にも分かるように話を進めてくれないか?
というか、アルトアイゼンはこの人と知り合・・・・・・アレ、今『フェイト』って言ったよな?
「正解。さすがはアルトアイゼン、すぐ気づいてくれると思ったよ。
ね、一つ確認なんだけど・・・・・・君のマスターが付き合ってる女性は誰?」
≪いやいや、あなた知ってるでしょ≫
「いいから、答えて? これは必要な事だから。
あ、正直に答えてね。今回は釣りはなしで真剣に知りたいんだよ」
≪ギンガさんですけど。まぁあの人はフェイトさんに未練たらたらで、いつお別れするかも分かりませんが≫
フェイ・・・・・・あ、思い出したっ! 恭文の初恋の相手で、めちゃくちゃ美人でギンガちゃんがプレッシャー感じてるっていう人っ!!
え、じゃあこの人がそれっ!? いや、それ以前に・・・・・・ごめん、俺もうワケ分かんないっ!!
「・・・・・・なるほど、これはどうやらビンゴっぽいね。でもアルトアイゼン、恭文やギンガちゃんはどこ?
君だけがそこに居るって言うのは、僕的にも今ひとつ嫌な予感しか感じさせないんだけど」
≪それはこっちのセリフですよ。私の事を知っているという事は≫
「待て待てっ! お前ら待てっ!! 頼むから俺や夏みかんにも分かるように話してくれっ!!」
士が苛立ち気味にそう叫ぶと、青い瞳の男声のお姉さんは士や俺達の方を見た。
俺や夏海ちゃんも首を縦に強く振ると・・・・・・納得したように笑ってくれた。
「ね、これが噂の悪魔? 数日前からおかしな事になってるの、コイツのせいだって聞いてたんだけど」
「なんですかそれっ!? というか、あの予言者の人から聞いた事を鵜呑みにしちゃだめですっ! 嘘ついてるかも知れないんですからっ!!」
「あぁ、怒らないで? あくまでも可能性の話だから。・・・・・・それでアルトアイゼン、どうなの?」
≪残念ながら、このKYっぽい女の人の言う通りですよ。
ディケイドどころか、マスターまで悪魔呼ばわりですから≫
あの人の表情が、一気に真剣なものになった。というか目が鋭い。
俺や士に夏海ちゃんの方も見てきたので、俺達は頷いた。
「それはまた・・・・・・初耳だね。あの変なおじさん、まさか恭文の事までそんな風に言ってたとは」
≪私達が直接的に知り合ってる仲だから、あえて言わなかったんでしょ。言ったら味方になるとか思って≫
「なるほど、ディケイドだけを敵視させて恭文は巻き込まれた形にしようと。
やっぱり僕達、まんまと釣られかけちゃったみたいだね。てゆうかそれ、いつもの運の悪さ?」
≪えぇ。それでそろそろ事情を話してもらえますか? 私も何気にワケが分からないんですよ。
あの人、モモタロスさんに身体を乗っ取られて電王に変身したまま行方不明になってますし≫
「先輩にっ!?」
え、もしかしてモモタロスってのと・・・・・・あ、そう言えば契約してるイマジンは四体居るって言ってたか。
じゃあもしかしてこの人・・・・・・ヤバい、本気でワケが分からない。誰か説明お願い。
「そりゃまた、相変わらずすごい引きをするねぇ。別世界の恭文でも、やっぱり恭文って事?」
「いや、だからお前らいい加減に俺達に分かるように」
「あー、分かってるって。んじゃ、場所を移そうか。ほら」
目の前の人は、右手を上げて軽く身体を捻りつつ、近くにあった時計を指差した。
「ちょうどいい時間だもの。僕が案内するから、このまま・・・・・・ね?」
そして俺達はそのまま近くのデパートの玄関のドアを、11時11分11秒に開けて別世界へ入った。
本当にドアだったらなんでもいいらしい。入った途端に別世界に突入だよ。
そこは砂ばかりの世界で、どっかのグランドキャニオンと言わんばかりの岩山が乱立していた。
そんな世界の中で俺達を待っていたのは、あの絵の通りの列車だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「みんなー、ただいま」
「あー亀ちゃんお帰り・・・・・・って、ソイツら誰?」
「例のディケイドご一行様だよ」
僕が四人を食堂車に引き連れながらそう言うと、リュウタだけじゃなく金ちゃんやハナさんまで怪訝そうな顔をした。
というかハナさん、先に戻ってたんだ。合流する必要があるかなとも思ったけど、手間が省けて良かったよ。
「え、じゃあ悪魔じゃん」
「そやな。亀の字、なんでそないな奴ら連れて来たんや。
世界崩壊の原因はディケイドっちゅう話やないか」
≪・・・・・・やっぱりそういう方向で話が進んでるんですか。本当に予想通りですね。
それ言ったの、帽子にコート羽織った気持ち悪い笑い方するメガネオヤジじゃないですか?≫
「うん、そうそう。突然デンライナーにやって来て・・・・・・え、この声」
リュウタは背伸びをして、もう一度よくディケイド組を見ようとする。
なので僕は軽く身を右に動かして、リュウタが見やすいようにしてあげた。
「・・・・・・あー! 熊ちゃん、ハナちゃん、アイツが持ってるのアルトアイゼンじゃんっ!!」
「あ、ほんまやっ!!」
席にいつものように両腕組んで座っていた金ちゃんが、思わず立ち上がって驚きながらディケイド・・・・・・門矢士の方を凝視する。
それはハナさんも同じ。だけどふたりとも、すぐに納得した顔で落ち着きを取り戻す。
「いや、おかしな事やないか。フェイト嬢ちゃんの言うように別の世界の恭文がディケイドと一緒に居たんなら」
「ディケイドがアルトアイゼンと一緒に居てもおかしくはないのよね。
・・・・・・え、それじゃあ今恭文君はどこに? というか、ギンガちゃんも」
「あ、そうだよそうだよっ! お前達、恭文に何かしたのっ!? だったら」
僕は四人に飛びかかろうとしていたリュウタの肩を掴んで、グルリと回してそのまま押していく。
「ちょ、亀ちゃんー! なにするのー!?」
「リュウタ、落ち着いて。・・・・・・そこも実はかなり厄介な事になっててさ。
お互い情報交換が必要だと思って連れて来たんだよ」
「厄介な事って・・・・・・ウラタロス、何があったの?」
「どうも恭文、居なくなった先輩に取り憑かれて暴走しまくってるらしいんだよ。
それだけじゃなくて・・・・・・恭文もディケイドと同じく悪魔って事になってるみたい」
『はぁっ!?』
ここは着席しつついわゆるかくかくしかじかで、みんなには簡潔に説明した。
僕がどうしてフェイトさんの身体を借りた上で、ディケイドを探していたのかもだよ。
あとは今言ったように、別世界の恭文がディケイド共々『悪魔』として認識されてしまっている事もだね。
みんな凄い驚いてたよ。さっきの僕と同じ感じだねぇ。
「・・・・・・アイツはまた。別世界でも運が悪いまんまってどういうこっちゃ」
「というかなんなの? 恭文はそれだと悪魔でもなんでもないじゃん。
それなのに・・・・・・僕すっごいムカつくんだけど」
「しかもそれだけじゃない。私達が今まで聞いたディケイドのアレコレも疑わしくなるわね。
あの鳴滝って名乗った人、もしかしたら何か裏があってディケイドを敵視してるのかも」
「そうなんだよねぇ。まぁ良太郎や幸太郎に恭太郎達は喜びそうだからいいけど」
三人も実はフェイトさんが来た後に、デンライナーに乗ってもらったんだよ。
今回はちょっとおかしい事が多いしさ。特に良太郎はまた凄い事になってた。僕達そこもビックリしちゃったんだよ。
それで恭文の事をフェイトさんから色々話を聞いて・・・・・・かなり心配しちゃってたんだよね。
ディケイドと居るのは、パラレルワールドの恭文なのにさ。なんというか、みんなお人好しだよねぇ。
「そうね。少なくとも無事は確認出来たんだし。・・・・・・えっと、すみません。
このスケベ亀、何かそちらにご迷惑をかけたりは」
「え?」
「いえ。まぁその・・・・・・イマジンって言うのは基本思考が飛んでる部分があるので、いきなり襲いかかったりしてないかなーと」
ちょ、ハナさんっ! それはひどくないかなっ!! なんでそんな申し訳無さげに『アンタも謝りなさい』って体で話すのさっ!!
僕、フェイトさんの身体借りちゃってるから今回は釣りも控えたのにっ!!
「あ、いえ。そこは大丈夫です。アルトアイゼンとも知り合いっぽいおかげで、話がうまく・・・・・・進みましたよね?」
「まぁ今までの世界みたいに、いきなりドンパチってのはなかったな」
「そうですか。なら良かった」
「だが一つ聞かせてくれ。まずお前らが蒼チビやギンガマンとマジで知り合いなのは分かったが、さっきから言ってる別世界ってのはなんだ」
門矢士にそう言われて、ハナさんは僕の方を見る。僕は・・・・・・うん、頷いた。
多分ここはアルトアイゼンも気になってるところだと思うし、ちゃんと話しておいた方がいい。
「えっと、実は・・・・・・私達はそちらでお世話になっている恭文君達とは、直接的に知り合ってるわけじゃないんです」
「はぁ? なんだよそれ」
「つまり、そっちに居る恭文とギンガちゃんにこのフェイトさんは、別の世界に居る僕達と知り合いなんだよ。
それと同じように僕達が知っているのも、別の世界に居る恭文達ってわけ。パラレルワールドって言えばいいのかな」
・・・・・・あー、全員困惑してるね。もう顔見合わせてワケ分かんないって言いたげな顔してるもの。
≪・・・・・・まさかあなた、さっきの質問は≫
「そうなんだよね。しかもこのフェイトさんは僕達が走ってた時間より過去の時間から来ちゃってたから、余計にビックリだよ」
僕達が知ってる恭文はフェイトさんとお付き合いしてるんだよ。
でもこのフェイトさんはギンガちゃんとって言うでしょ?
特にお別れしちゃったわけでもないし、僕達も最初はビックリだよ。
「でもあの・・・・・・そんなのアリなんですかっ!?
だってそれだと電王は複数居る事になるじゃないですかっ!!」
「いや、夏海ちゃん。ありえない話じゃないぞ」
「ユウスケ?」
「考えてもみろよ。例えば・・・・・・恭文が知ってるテレビのライダー達。
それが現実に居ないという保証はどこにもないだろ? 現に電王はテレビそのままに居たんだ」
ジャンパーを羽織った黒髪の男・・・・・・確かユウスケって言ってたっけ。
彼が両手を膝下で握りながら、必死に考えをまとめてる。
「例えばディケイドだってそうだろ。ここは恭文も知っていたし、士自体もどうもそのままらしい。それで次に俺、クウガだ。
もしも恭文が知ってるテレビのクウガがそういうパラレルワールドに存在していた場合、クウガは二人居るという事になる」
「・・・・・・そう言えば、そうですね」
「だろ? そう考えるとパラレルワールド・・・・・・平行世界なら全く同じ存在が居ても、不思議じゃないんだよ」
「だがどうしてそんなライダーの電車に、その金髪姉ちゃんが乗ってたかってのが疑問ではあるな。
大体、お前達がその別世界の蒼チビにまとめて会ってるわけでもなんでもないんだろ?」
へぇ、それなりに頭は回るんだねぇ。これは中々。恭文、もしかして結構このメンバーでの旅を楽しんでるんじゃないかな。
恭文も元々こういうの好きっぽい感じだし、そこは別世界の恭文も同じみたい。だったらって考えちゃうのは、悪い事かな?
「仰る通りだよ。そこはどうも、君達も関わってるらしい世界崩壊の余波が原因らしいよ?
あとは君達も見たアレ。僕達の世界で起きてる時間の歪みだね。これが一番大きいかも」
「今回起きてる歪みは、どうもめちゃくちゃデカいみたいでなぁ。そのせいでこないな事になってるらしい」
僕と金ちゃんがそう言うと、少なくとも門矢士は納得したらしい。表情からそこは分かった。
「なるほど、俺がこの世界でやらなきゃいけない事が大体分かって来たぜ。・・・・・・ところでお前」
「えっと・・・・・・僕かな」
「あぁ、そうだ。お前、ずっとソイツに入ってなきゃ話せないのか?
さすがにソイツの外見でその声は違和感バリバリなんだが」
「あ、僕とした事が忘れてたよ。それじゃあ・・・・・・よっと」
僕はそのままフェイトさんの身体から外に出た。するとフェイトさんの外見に変化が起こる。
僕はフェイトさんの近くに着地したおかげで、その様子をよく見て取れた。
髪は元のストレートになって、青のメッシュも消えてる。ゆっくりと開いた目は、綺麗なルビー色。
フェイトさんは目をパチクリさせながら辺りを見回して・・・・・・僕の方を見た。なので僕は軽くお手上げポーズで返す。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・私が意識を取り戻したのは、見慣れた食堂車の中。
私が目をパチクリさせて周囲を見渡すと、見慣れた人達と見慣れない人が三人。
そのうちの一人の横に、すっごく見慣れた日本刀を見つけた。
私は座っていた席から立ち上がって、向かい側にあるその日本刀のところに近づく。
「アルトアイゼンっ!!」
私が両手でその日本刀を持つと、柄尻に埋め込まれている宝石が輝いた。
≪・・・・・・あなた、普通にどうやってここに来たんですか。びっくりしましたよ≫
「ヘイハチさんからチケットを借りて・・・・・・あぁ、良かったよ。あ、でもあの、ヤスフミの今の彼女は」
≪ギンガさんですよ。そこの辺りの事情もウラタロスさん達から聞きました≫
「そうなんだ。あの、良かった。じゃあヤスフミも」
私は嬉しくなって、辺りを見渡して・・・・・・アレ、ヤスフミが居ない。ギンガの姿も無い。
「あー、アンタ」
そう話しかけてきたのは、私の席の向かい側に座っていた男の人。
茶髪の髪で、首元からカメラを下げていて・・・・・・アレ、この人確か。
「あ、はい。えっと、あなたは」
「門矢士だ。アンタには仮面ライダーディケイドって言った方が分かりやすいだろうがな」
「あの・・・・・・はい。分かります」
そうだ、出発前にネットで見た姿そのままだ。というか・・・・・・本当にそのままなんだよね。俳優さんのそっくりさんでも通るよ。
「アンタ、ずっとあの青いのに憑かれてたのに今までの話聞いてなかったのか?」
「私達も結構長く話を聞いてたんですけど」
「あ・・・・・・それは、えっと」
「あ、それはしょうがないんです。普通の人がイマジンに憑かれちゃうと、意識そのものがなくなっちゃいますから」
「つまりコイツは特異点ってのじゃないと。なるほど、それなら仕方ないな」
私の隣には、いつの間にかハナちゃんが居た。ハナちゃんがそう言うと、その人は納得したように頷いた。
「あの、ハナちゃん。ヤスフミやギンガは? というか私がウラタロスさんに憑かれてた理由とかも」
「まず亀の字に憑かれてた理由は、俺らで説明したから大丈夫や。嬢ちゃんは身体を貸してくれただけやってな」
・・・・・・実はウラタロスさん達、今発生している時間の歪みの影響で外で実体化が出来なくなってるらしいんだ。
その上モモタロスさんはその影響を特に強く受けて、記憶喪失にもなって・・・・・・そのまま失踪している。
それで自分達の世界にディケイドが居る事を知って、調査しようとしたんだけど当然ながらそのままでは無理。
しかも良太郎さんと良太郎さんの孫の幸太郎君と・・・・・・あと、あの子だよ。
ヤスフミの孫って言う恭太郎君は、少し気になる事があるとかで別のところの調査をしてるの。
だから私がウラタロスさんに身体を貸して、ハナちゃんと手分けしてディケイドを探してたんだ。
「それで恭文の事なんやけど・・・・・・実はちょい面倒な事になっててなぁ」
「面倒な事?」
「まずこのメンバーと一緒に居た恭文が、フェイトさんの世界の恭文なのは間違いないんですよ。
でも恭文、突然先輩に取り憑かれたままどっか行っちゃって・・・・・・行方不明なんです」
「・・・・・・え?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そこから改めて、みんなから私への事情説明が行われた。まずはヤスフミの状態についてだね。
あと、この場には居ないギンガの状態について。ギンガ、風邪を引いてダウンしてるだけだったの。
「・・・・・・じゃああの、ヤスフミはともかくとしてギンガの方は」
「そこは大丈夫です。俺達もお世話になってる写真館の方で、寝てるところですから」
「うちのおじいちゃんがしっかり看病してくれてます。だから心配いりません」
「そうですか。あの・・・・・・ありがとうございます」
「あ、いえ。私もギンガさんにはお世話になったりしてますし」
・・・・・・でも良かった。二人ともまずは無事なんだ。そこだけは本当に安心だよ。
私、本当にヤスフミと会えるかどうか不安だったけど・・・・・・良かった。本当に良かった。
「アンタ、嬉しそうだな」
「え? ・・・・・・はい、嬉しいです。私、ちゃんと約束守れるから」
私がそう言って、視線を落として笑うと・・・・・・シャッター音が聴こえた。
それに驚いてその音の方を見ると、あの人が私の方を見て写真を撮ってた。
「士くんっ! いきなり失礼じゃないですかっ!! ・・・・・・すみません」
「あ、いえ。でも・・・・・・本当にヤスフミが電王に変身したんですか?」
「あ、それ僕も分かんないよ。だって恭文は特異点でもなんでもないんだよ?」
リュウタロスさんが席から身を乗り出してディケイド組の方を見てそう言う。
けど、みんなは困ったように顔を見合わせるだけだった。
「そうなんだよねぇ。前に僕が身体貸してもらった時も、意識は完全になかったっぽいし。
というか、『特異体質』でパスを使っても電王には変身出来なかったんだよ?」
どうやらここも私達の世界と同じみたい。別世界のヤスフミも、ネガタロスとの最終決戦で一度電王のパスを使ってるの。
だけどオーナー曰くヤスフミは『特異体質』らしくて・・・・・・パスの力を借りてアギトとのユニゾンが出来るだけだった。
ここも私達の世界と同じ。もちろんアギトとのユニゾンは適正そのものが無かったから、それだけでも十分に凄い事なんだ。
でも今回は違う。この人達は途切れ途切れにしか見てなかったらしい。
だけど、ヤスフミが電王に変身したのは事実みたいだから。
「それなのに恭文が電王に変身したっちゅうんか? またなんでや」
「そんなの私達にも分かりません。私達もアルトアイゼンからそうだって聞いて、ビックリしてるくらいなんです」
「蒼チビが突然に特異点の力にでも目覚めたとかか?」
「いや、さすがにそれは・・・・・・そういうのは生まれつきのこう、資質みたいなものですし」
ハナさんが困った顔でそう返した瞬間、食堂車の車両前方のドアが開いた。
「いえ、案外そっち方向かも知れませんよ?」
『オーナー!!』
杖を突きながらこの場に入ってきたのは、オーナーだった。
オーナーは入ってきて早々、ディケイド組に視線を向ける。
「初めまして、ディケイド・・・・・・門矢士君。私がデンライナーのオーナーです」
「あぁ、どうやらそうらしいな。で、さっきのはどういう意味だ?」
「またぶしつけですねぇ。まぁいいでしょう。・・・・・・これはあくまでも、もしかしたらという話ですが」
オーナーはそのまま杖を突きながら、食堂車の真ん中を歩いていく。
「彼は分岐点かも知れません」
「分岐点っ!? あの、それって私と同じっ!!」
「えぇ」
「それはまた・・・・・・衝撃的な事実だねぇ」
「ハナちゃん、分岐点って何かな」
私は初めて聞く用語なので、当然ハナちゃんに聞く。
ハナちゃんは驚く表情を一旦収めて、私の方を向いてくれた。
「あ、えっと・・・・・・分岐点というのは、特異点の親戚って言えばいいのかな。
存在自体が時の運行に影響を及ぼして、その生死でその後の未来が決定するんです」
「えっと・・・・・・え?」
「恭文君が生きてる事で、フェイトさん達の生きてる世界の時間に別の可能性が生まれる。
その可能性は恭文君自身もそうだし、フェイトさん達の時間を先に繋ぐ事の出来る道・・・・・・線路」
「今をそういう未来に続く線路に繋げる能力を持った人間の事を、分岐点って言うらしいんですよね。
あ、ハナさんも一応それだったんですよ。だから僕達もそこは知ってるってわけ」
・・・・・・ごめん、私もさっぱり分からない。試しに士さんやユウスケさんに夏海さんの方を見るけど、同じみたい。
「そして分岐点が万が一にも死んでしまった場合・・・・・・あなた達の時間は先に繋がらないかも知れないという事です。
フェイトさん、今までに彼が居なかったらどうなっていたか分からなかったような状況はありませんでしたか?」
「え?」
「私が知る限り、彼は何かしらのトラブルにおいてとかく鍵になりやすいです。そして、それこそが分岐点の特性。
分岐点は『この線路しかない』という事実を、『こんな線路もある』というものに変えられる存在の事なんですよ」
・・・・・・オーナーに視線を向けられる事もなくそう言われて、私は少し考える。確かに・・・・・・あぁそうだ、あるよ。
例えば一番最初の時。リインがヤスフミに会わなかったら、リインは今頃生きていたかどうかも分からない。
例えば私にも言える事だよ。あの時、ヤスフミと一緒にライオットを作ろうって思ってなかったら・・・・・・私、今頃壊されてたかも。
その中でも一番は、やっぱりヴェートルでの一件かな。あの事件でヤスフミは鍵の一つになったから。
もしかしたら私達は今頃、スカリエッティも含めて親和力に支配されていたかも知れない。
でもヤスフミが居た事で、あの世界に根ざした事で公女達の計画は止められて、あの世界も変革の時を迎えた。
ヤスフミだけでどうこうというわけじゃないのは当然だけど、それでも鍵の一つにはなってる。
「・・・・・・あります。細かい事から大きい事まで、その・・・・・・かなり」
「でしょうねぇ。彼の運が良太郎君並みに悪いのも、そのせいかも知れません」
じゃあヤスフミはそういう分岐点って言う・・・・・・そういう存在だから運が悪い?
な、なんだろ。ちょっと信じられないかも。あの、確かにヤスフミは鍵になりやすいところはあるけど。
だから私も前はヤスフミは局に入って、世界やみんなのために頑張るべきだと思ったりもしてた。
そういう強い力を持つヤスフミだったら、きっと色んな事が変えられるって・・・・・・その、汚い事を思ってたんだよね。
・・・・・・私、改めて自分が本当にバカだったんだって思い知った。私はヤスフミを局に誘う時、本当にヤスフミの事見てたのかな。
ヤスフミがそういう分岐点で、ヤスフミが入れば私の大好きな居場所がもっと良くなるって事だけを見てた気がする。
それは結局、ヤスフミの事を何にも見てなくて・・・・・・全部私の勝手な都合。
ヤスフミ、私・・・・・・やっぱりダメだね。本当にダメだと思う。
きっと私は『こんな線路もある』を『この線路しかない』に変える事しか出来なかったんだ。
「でもオーナー、ハナちゃんは運が悪いとかはないよ? どうして恭文だけ」
「人、それぞれですから」
え、それで納得しろって無茶なようなっ! しかも今臆面もなく言い切ったしっ!!
「ようするに蒼チビは、特異点の親戚に近い特性を持ってるかも知れないって話だな」
士さんが腕組みをしながらオーナーの方を見てそう言うと、オーナーは振り向いて頷いた。
「えぇ」
「じゃあもしかして・・・・・・その時間の歪み、でしたよね。この世界で起きている異変。
それの影響を受けて、分岐点の恭文が特異点に近い性質を持ってしまった?」
「そう考えるのが妥当かと」
「だからあの人は電王に変身出来て・・・・・・アレ」
夏海さんがそこまで言って、軽く首を傾げた。それからすぐにオーナーの方を見る。
「でもそれだとあの人は意識無くなったりしてないんじゃ。
ほら、一時的にでも特異点になっちゃってるわけじゃないですか」
「そこは私にも分かりません。ただ特異点でも、身体を乗っ取られて好き勝手される場合もありますから」
「つまり、アルトアイゼンが言ってたみたいにイマジンの支配に必ず抵抗出来るわけじゃない・・・・・・ですか」
「そういう事です」
・・・・・・あ、ウラタロスさん達がなんか凄い頷いている。私にはよく分からないけど、どうもそういうものらしい。
「とにかく、恭文くんが記憶喪失状態のモモタロス君に身体を乗っ取られてしまっているのは、運が悪いというかなんというか」
「まぁ良太郎レベルな恭文だしねぇ。これで疑問に思わないのがなんというか」
「そしてその原因となる時間の歪み。おそらくモモタロス君はそれを追っているはずです」
・・・・・・ありえる。モモタロスさんなら、多分そういう形で動いてると思う。
「なにより分岐点である恭文くんの存在を守る事は、結果的にディケイドの旅を良い方向に結びつける事に繋がるかも知れません」
オーナーがそう言ったのを聞いて、私はその・・・・・・胸が痛くなるのを感じた。
「これは一刻も早く恭文くんを助け出して、安全を確保する必要がありますねぇ」
「オーナー、つまりそれって・・・・・・別世界の恭文がディケイドと同じく、世界崩壊を止める鍵になってるって事?」
「かも知れません。まぁ、私の考えが合っていれば・・・・・・の話ですが」
ヤスフミ、そんな重要な立ち位置に・・・・・・また、巻き込まれちゃってるのかな。
さっきの悪魔呼ばわりもそうだし、どうして・・・・・・どうしてヤスフミなんだろ。どうしよ、また落ち込んで来た。
「まずはモモタロス君と恭文くんの行方を追う事からでしょうか。
そうすれば、自然と今回の時間の歪みの原因となっているイマジンに行き当たるでしょう」
「いや、追っているって・・・・・・オーナー、どうしてそんな事が分かるんですか?」
私は事前に話を聞いてたから納得出来たけど、どうも夏海さんや士さん達は納得出来ないらしい。軽く首を傾げてるもの。
「あー、君達は先輩の性格を知らないからそう言えるんだよ。先輩、僕達の前から消える直前も相当苛立っててさ。
それはもう手がつけられないきかん坊って感じだったんだよ。その上基本バカだから、単純な行動しか取れないの」
「そんなバカな桃の字はバカなりに考えとるはずや。
で、その結果手当たり次第にイマジン倒してけば、いずれ本命に当たるとか考えとるはずや。バカな事になぁ」
「うんうん、モモタロスならそれでいくよね。てゆうか、亀ちゃんと熊ちゃんの言うようにモモタロスはバカだから、他にやり方知らないだろうしー」
「だからこそのバカモモよね。まぁおかげで私達は、時間の歪みへの対処とあのバカの捜索を同時に出来るんだけど」
「お前達・・・・・・すごい言い草だな。てーか全員の共通認識が『バカ』ってどうなんだよ」
そう言いながら士さんは私に呆れ気味な視線を・・・・・・私は慌てて首を横に振った。
私はさすがにそこまでは考えてない。まぁその、やりそうだなーとは思ったけど。
「ならオーナー、私もう一度外に出て・・・・・・ヤスフミを探して来ます」
「あ、私も行って来ます」
「お願いします」
オーナーの視線は、自然に私とハナちゃんからあの人達の方へと向けられた。
それを見て・・・・・・そうだ。あの、私ちょっと話しておかなきゃいけない事がある。
「・・・・・・あの、ウラタロスさん。というか、みんな」
「はい、なんですか?」
「ヤスフミはその・・・・・・私もそうですけど、みんなの知ってる私達じゃないです。
同じだけど違ってて、だからその・・・・・・これ以上は迷惑かけられなくて」
やっぱりこれ以上はって考えちゃうんだ。ここまで連れて来てくれただけでもありがたい。
ここからは私がなんとかしなきゃいけないんじゃないかって・・・・・・でも、みんなはそんな私を見て笑った。
「なんや、そんな事気にしとったんか。嬢ちゃんはバカやなぁ。そないな事関係ない。
なによりもう俺らは嬢ちゃんと知り合って、仲良うなっとるやないか。他人行儀にせんでえぇ」
「・・・・・・キンタロスさん、でも」
「いいや、金ちゃんの言う通りですよ。なにより、うちの先輩の事もあるからさすがに放置は出来ませんって。
先輩は乱暴だから、何時恭文をひどい目に遭わせるか分かったもんじゃないし。さすがにそうなったら責任取れないじゃないですか」
「そうだよー。それにそれに、パラレルなんとかだって恭文は恭文じゃん。僕、恭文とは友達だしー」
私はまた、ハナさんにオーナーの方にも視線を向ける。二人も・・・・・・笑いながら頷いてくれた。
「フェイトさん、忘れてもらっては困りますねぇ。今の時間の歪みに対処出来なければ、私達の世界は消えてしまいます。
なにより分岐点の件どうこうは抜きに、彼に何かあれば良太郎くん達の調査にも影響がでます。それは、困りますから」
「恭文君を助けるのも、その目的の・・・・・・まぁついでみたいなものですし。だから、大丈夫です」
「・・・・・・ありがとうございます」
私はただ、ただ頭を下げる事しか出来なかった。というか・・・・・・これが精一杯だった。
「・・・・・・よし、それじゃあ俺達も行くか。事情も分かったし、後は恭文見つけるだけだろ」
私がその声に驚きながら頭を上げると、ユウスケさんが立ち上がって右拳を左手に打ちつけてた。
「全く・・・・・・仕方ないな。あのまんまじゃ、ギンガマンに顔も合わせられやしない。ホント世話の焼けるチビだ」
「そうですね」
それは他の二人も同じ。その様子を、私は少し驚きながら見ていた。
「てーか夏みかん、お前もかよ。お前、蒼チビの事嫌いじゃなかったのか」
「そ、そこには触れないでください。・・・・・・私もバカだったなって、反省してるんです」
「そうか。だったらそれは勘違いだ。お前はバカだったんじゃなくて・・・・・・今でもバカだ」
「士くんひどいですっ! さすがにそれはあんまりじゃないですかっ!?」
私のがそんな事を言う二人を見ていると、ユウスケさんが近づいて来た。
「まぁ俺達、一応は仲間って事になってるんですよ。ギンガちゃんも含めて、世界を救うチームなんです」
「・・・・・・チーム」
「えぇ。なにより俺も恭文には色々世話になってるし、このままにはしませんから。
だからさっきみたいな水くさい事はもう言いっこ無しで。パパッと助けちゃいましょ」
「・・・・・・ありがとう、ございます」
「いえいえ」
私はこの人達と一緒に、また外に飛び出していく。飛び出しながら、改めて決意を固める。
あの時自分で言った事をきっちり守るというのが、まず一つ。
それでもう一つは・・・・・・ヤスフミの口から、直接聞かなきゃいけない事があるんだ。
正直ね、ここでヤスフミが分岐点だから旅をした方が良いなんて言うつもりはないんだ。そこは絶対に。
というか、そんな事を言ったら今までの大嫌いな私から何も成長していない事になる。そんなのは嫌なの。
なにより私は、ヤスフミが分岐点だから好きになったんじゃない。強いから好きになったんじゃない。
そんな私がここに来て、ヤスフミとお話して知りたかったのはたった一つだけ。
そのためにここに来たんだから。それを聞いて、もし私の予想通りだったら・・・・・・うん、そうしていきたい。
そう思いながら決意を固めて、改めて私はみんなに心の中で静かにお礼を言った。
自然と溢れてくる惜しみない感謝の気持ちを込めて、沢山。
(第17話へ続く)
あとがき
恭文「というわけで、早速大混乱な電王の世界はいかがでしたでしょうか。
本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」
あむ「日奈森あむです。・・・・・・アンタが電王になるんかい」
恭文「うん。そうじゃないと3秒でこの話終わっちゃうから」
あむ「というか、まさかこのためにギンガさん風邪?」
恭文「せいかーい♪」
あむ「いやいやっ! そんなのアリなわけっ!?」
恭文「アリなのよ。というわけで、テレビの方とはかなり展開が変わってたりします」
(具体的にはディケイドVS電王の図式が発生しないところとか?)
あむ「あ、そんな図式あったんだ」
恭文「うん。ディケイドとウラタロスさん達が話の流れで戦う事になるのよ。
そこの辺りの理由はアルトが居るおかげだね。仲介役って大事なのよ」
あむ「それで電王の世界は、本編のアンタ達と友達なチームデンライナー・・・・・・カオスだよね」
(ディケイド+IFルート恭文とギンガとフェイト+本編チームデンライナーの勢揃いですから)
恭文「そうだね。きっとディケイドクロスじゃないと、こんな話は書けないよ。
そんなワケで相当好き勝手にやってる電王の世界なんだけど・・・・・・次回でおしまいなんだよね」
あむ「え、そうなの?」
恭文「うん。というか・・・・・・ほら、これプロットなんだけど」
(現・魔法少女、プロットをもらって読んで・・・・・・あ、納得したらしい)
あむ「あー、確かにこの流れだとすぐ終わりそうだよね。でもこの後もあるよね? ほら、前に言ってた超・電王編」
恭文「うん。そこは番外編的に本編の僕とフェイトのお話だね。
以前も言ったように、劇場版超・電王の第一作目準拠だよ」
あむ「そのために良太郎さんだけじゃなくて、幸太郎や恭太郎まで居ると。
・・・・・・でもよく考えたら、アンタ普通にまだデルタに変身してないよね?」
恭文「してないんだよねぇ。まぁ次回出せればそれはそれでいいかなーとは思うけど」
(最悪カブトの世界で初登場出来ると思います。というか、あそこは変身しないとどうしようもない)
恭文「では、次回決着がどうなるかを楽しみにしてもらいつつも本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」
あむ「日奈森あむでした。それじゃあみんな、またねー」
(とりあえず流れは原作通りだけど、細かいところはオリジナルだと再度言っておく事にする。
本日のED:AAA『Climax Jump』)
ギンガ「・・・・・・うぅ、風邪辛いなぁ。というか、結構久々に引いたかも」
恭文「基本病気とは無縁だしね。ここも疲れが出たと思ってもらうとして・・・・・・あぁ、夢みたい。
色々な偶発的な要因が絡みまくりとしても、僕は電王に変身出来てるわけなんだよねぇ」
ギンガ「というか、最初から最後まで基本モモタロスさんでアクションだよね。なぎ君大丈夫?」
恭文「うん。テレビ見てたから、動きは楽々だよ? というか、いつこうなってもいいように練習してたし」
ギンガ「すっごいメタ発言だからやめないっ!? しかも練習してたんだっ! 予測しちゃってたんだっ!!」
(おしまい)
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