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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第14話 『アギトの世界/運命・動向不明なエクシード?』



海東「前回のディケイドクロスは」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「誰がドットサイズだってっ!?」

「誰もそこまで言ってないでしょっ! いいから集中してなさいっ!!
・・・・・・まぁあの耳はともかく、体力は申し分ないわ」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



海東「というわけで、ドットサイズな少年君が頑張ってG3ーXを目指して頑張るお話さ」





(ゴスッ!!)





恭文「黙れボケがっ! おのれ殴るぞっ!?
そして『頑張る』って二回言うなっ! 大事な事だからですかコンチクショウがっ!!」

もやし「待て待てっ! お前既に殴ってるだろうがっ!! それも椅子の足の角でっ!!」

海東「だがそれは幻影さ」

もやし「嘘だろっ! お前頭頂部にたんこぶ出来てるぞっ!? てーかちょっと涙目だろっ!!」

恭文「あ、それと忘れてた。・・・・・・えー、このお話は各平成ライダーのお話の確信に触れるネタバレが多数あります。
なので見る際にはそこに注意して見てください。なお、それでどんな被害が出ようと僕達は一切関知しないし謝らない」

もやし「今更そこかっ!? お前、この話始まってもう14話なのにそれはないだろっ!!」

恭文「いや、ごめんね。そこの怪盗がそこの辺りの原稿を盗んだから」

もやし「盗んだらまた書けばいいだけだろうがっ! 14話まで引っ張る理由が分からないぞっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



前回のあらすじ。アギトの世界に来ました。それでユウスケが空回ってます。

そんな中行われているG3ーXの装着員テスト・・・・・・まぁ当然ながらユウスケは×。

G3ーXに完全に振り回されちゃってて、動くのも辛そうだもの。こりゃあしゃあない。





で、落ち込むユウスケはそれとして、続くのは海東。ちなみに海東はコケませんでした。





海東は僕達の前まで来て、軽く跳躍。それから左右のワンツーでジャブ。










「・・・・・・なるほど」





海東は一旦構えを解いてから両手を肩くらいまでの幅に広げて、その手を見る。

それからすぐにまた構えて、ステップも交えてシャドーボクシング。

先程のユウスケG3ーXとは動きが全然違う。打ち続ける突きはどれも鋭く重い。



ステップもユウスケのアレがフザケてるんじゃないかと思えるくらいに軽やか。



そして最後に海東は、上に跳んでバク転。これも難なく着地。





「・・・・・・凄い」



八代さんがめっちゃ嬉しそうに呟く。ギンガさんも中島さんも驚いた顔で海東G3ーXを見ていた。

ユウスケは・・・・・・まぁ察してあげて欲しい。これじゃあ比べるまでもないから。



「こりゃ装着員は決まりだな」

「そうです・・・・・・ちょっとっ!? 僕の事忘れないで欲しいんですけどっ!!」

「いや、でもさすがにアレには勝てないだろ。坊主、無理するなって」

「むきー! だったらいいですよっ!! そう言った事を後悔させてやるっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



という事で、次はなぎ君の番。なぎ君エンジンかかってたけど・・・・・・暴走しないといいなぁ。あのね、心配なの。

なぎ君ちょっとテンションおかしかったし、G3ーXの装着員になるために手段選ばなそうで・・・・・・あ、入ってきた。

ドアを蹴破るかと思ったんだけど、そんな事もなくなぎ君は普通に入ってきた。というか、なんだか嘘みたい。





本当になぎ君の体型に合わせる形で小さくなってる感じがする。だからその、あの・・・・・・かわいい。










「・・・・・・八代、笑うな。お前悪いだろうが」

「いや、でもあの・・・・・・かわいいなーって」



今のG3ーXなぎ君は、海東さんやユウスケさんのG3ーXよりも身長が20センチ近く低い。

だからさっきのアレから比べると本当に微笑ましい。まさにミニG3ーXという感じ。



「あー、いっそキャラクターで売り出すのも面白いかも。ぬいぐるみでデフォルメな感じで『じーすりーえっくすくん』って感じで」

「あ、そりゃいいな。G3ーXへの世間への評価も良くなりそうだ。てーかうちの坊主達に一つやりたいな」



二人は顔を見合わせて笑い合うけど、すぐに動きが止まった。それで恐る恐るある方向を見る。

そこにはなぜか淀んだ色の空気を出しているG3ーXなぎ君が居た。



「・・・・・・・・・・・・ドア蹴破って入って来た方が正解だったかな。
ほら、ぬいぐるみにされないように荒々しさを強調して」

「やっぱりやろうとしてたのっ!? というかダメだよっ! これはテストなんだからっ!!」



お願いだから首を傾げるのやめてっ! 本当にやりそうで私は怖いんだからっ!!



「分かってるよ。・・・・・・という事にしておこう

「なぎ君、今なに呟いたっ!? 私聞こえたんだけどっ!!」

「ギンガさん、だめだよ。地獄耳はIKIOKUREの証拠だよ?」

「ほっといてっ! なぎ君が本妻・愛人・現地妻を問わず私の事一生面倒見てくれれば問題ないよっ!!」

「ギンガさん何口走ってるのっ!?」





あ、愛人って・・・・・・私何言ってるんだろっ! あの、恥ずかしいよっ!!

うぅ、八代さん達も驚いた顔で私の事見てて・・・・・・顔真っ赤だし、熱くて苦しいよー!!

でもあの、今の私の立ち位置的にそうなっちゃうのかな。フェイトさんが本妻なんだよ。



最悪、それでもいいのかな。私はなぎ君が見てくれてるだけで嬉しいから愛人でも・・・・・・うぅ、なんか泣きたい。





「と・・・・・・とにかくそういうアピールはダメっ! 極々普通に動けるところを見せてっ!!」

「はーい。んじゃ・・・・・・普通にやるか」





なんて言いながら、なぎ君は一歩ずつ軽やかに歩く。・・・・・・うん、軽やかなの。

少なくともユウスケさんの時みたいにふらふらじゃない。それでなぎ君は部屋の中心に立って、構えた。

腰を落とし気味にして、左側面を前にして左腕を腰の辺りで構える。右手は顔の近く。



まずは左のジャブ。海東さんのとは打ち方が違う、しなって伸びるようなジャブをなぎ君は打ち込んだ。





「へぇ、いい1発ね。中々様になってる」



そこから右のフック。どうやらまずはワンツーパンチを続けて、海東さんとの違いを見せつけるつもりらしい。

そして部屋の中で、G3ーXに内蔵されている身体能力強化のための装置の駆動音が激しく響き渡る。



「・・・・・・1発じゃないです」

「え?」





ギリギリだけど見切れた。あれは海東さんのオーソドックスなストレートとは違う、フリッカー気味なジャブ。

力で相手を倒すというよりは、腕をしならせてその衝撃を身体の内部に全部伝えて傷めつけるためのパンチだ。

だから打ち込むよりも素早く腕を引いて、相手の身体に接触する時間を出来るだけ短めにしている。



私こういう打ち方はやらないんだけど、こっちの方が攻撃としては普通にパンチを打つより残りやすいそうなの。



だからアレが1発に見えても仕方ない。なぎ君、本当に素早く腕を引いてまた打ち出してるから。





「アレ、3発打ってます」





八代さんが驚いた顔をしている間に、そんなジャブも交えたワンツーパンチは続いていく。

なぎ君はフットワークを駆使して動きまわり、左で相手を威嚇しつつ右のフックやアッパーで仕留めるスタイルの演舞を続ける。

でも、そのスピードが尋常じゃない。なぎ君が小柄なせいもあるんだろうけど、海東さんよりずっと速いの。



拳が打ち出されて唸る音が部屋に響き続け、ステップ音がまるで何かの音楽のように絶え間なく続いていく。





「おいおい、なんだよアレ。アレ着てあんな速く動けるものなのか? あんな小さぇのに」

「いえ、小さいから速いんです」

「嬢ちゃん、そりゃどういう事だよ」

「小さい分、体重が軽い。空気抵抗も少ないし、消費する体力量も低め。小回りも利く。
身体の小さい人は、やっぱりその分スピーディーに動く事に長けてます。あれくらいは当然です」





例えばなぎ君と同じ体力量や反応速度に技量を持っているけど、なぎ君より身長が30センチ近く高い人が居たとしよう。

その人は多分体格を活かしたパワーの扱い方をするなら、なぎ君に勝てると思う。

でも、小回りや速さに加速力ではなぎ君には真っ向勝負では勝てないんじゃないかと思う。



ただしここは色々やり方があるから、体格の大きい人は全然素早く動けないとは言えないんだ。



あくまでも少しだけアドバンテージがあるというだけの話なのは、覚えておいて欲しかったり。





「もちろんスーツの重さを支えて動く力も必要ですけど、なぎ君ならそれくらいは余裕で出来ます。
私の事お姫様抱っこして、全速力でダッシュしても息切れ一つ起こしませんし」



今言ったように前にちょっとお姫様抱っこされた事とかもあって・・・・・・それを考えるとスーツの重さくらいは大丈夫かなーと。

あとはスーツ自体の能力かな。あれは単なる鎧じゃなくて、装着員の身体能力の上昇のための装置も組み込まれてるから。



「なによりスーツからの身体能力向上のための補助機能があるなら」

「アレだけ動けても問題はないと」

「はい」





左のハイキック。そこからなぎ君は跳んで右足での回し蹴り。身体を回転させつつ、また左でミドルキック。

着地したかと思うと、そこから身体を伏せ気味にして右足を一気に踏み込む。

その右足でコンクリ製の床を派手に踏み割りつつも、拳を突き出した。・・・・・・そこから場が一気に静まり返る。



なぎ君は構えを解いて・・・・・・あ、また素早くワンツーし出した。それもさっきよりも速くだよ。





「あー、ストップストップッ! もう充分分かったからっ!!」

・・・・・・地獄へ落ちろ横馬がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

『横馬って誰っ!?』

「あぁ、すみませんすみませんっ! なぎ君落ち着いてっ!!
何が見えたのかは大体分かるけど、それでも落ち着いてっ!!」



・・・・・・・・・・・・こうして、G3ーXの装着員はその・・・・・・なぎ君になりました。



コロンビア

「なぎ君、両手上げてなにしてるのっ!? というか、コロンビアって何っ!!」





なんか楽しそうななぎ君はとりあえず置いておこうと思う。あ、それとこの話はまだ続きがあるんだ。

まず海東さんのオーソドックスながらも堅実な動き方も捨てがたい。

ユウスケさんもAIの癖に慣れれば、もしかしたらいけるんじゃないかと結論が出された。



だからなぎ君はあくまでも『仮』装着員という事になったんだ。二人がその準候補という感じ。

実はここには理由がある。さっきのなぎ君の動きだと、G3ーXにかなり負担をかけてしまう事が判明した。

具体的にはG3ーXの駆動用モーターだね。それにバッテリーの消耗も激しくなるみたいなの。



まぁ確かにアレだけ速く動きまくってたらなぁ。動いてる間、モーター音がキュイキュイ響いてたもの。

八代さんは『ここの辺りも出来るなら改善して欲しい』と言ってたけど、多分なぎ君は本当に改善する。

それならそれで、きっと動きが少なめでモーターやバッテリーに余り負荷がかからない方向で戦うよ。



それがあっさり出来てしまう私のお試し彼氏のポテンシャルに軽く恐怖をしつつ、私はなぎ君を見る。



なぎ君は元の黒一色のタイツスーツ姿に戻った上で・・・・・・また両手を上げて不敵な顔を見せた。





コロンビア

「だからそれはもういいよっ! というか、コロンビアって何かなっ!!」




















世界の破壊者、ディケイド。8つの世界を巡り、その瞳は何を見る。










『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路


第14話 『アギトの世界/運命・動向不明なエクシード?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



コロンビ

「だからそれはもういいって言ってるよねっ!?」

・・・・・・コロンビア

「ユウスケさんもやらなくていいですからっ! やってみたかったんですかっ!? やってみたくなったからそれなんですかっ!!」





さてさて、僕とギンガさんは現在警視庁の食堂。まぁ何気にお昼時なワケですよ。

・・・・・・で、姿が見えない海東は放置して三人でお食事だよ。

でもさ、公僕って良い物食べてるよね? 何気にここのご飯めっちゃ美味しいのよ。



まぁ六課隊舎で散々タダ飯食べてた僕が言う権利はないので、ここは置いておこうか。

ちなみに食堂は地下。外の景色なんかは見えないけど、照明関係には気を使われているようで薄暗い印象はない。

それで隣に座るギンガさんのご飯がとんでもない量なのは・・・・・・察してください。





「でもなぎ君、どうするの? G3ーXの装着員をこのまま続けても」

「あー、大丈夫でしょ。ユウスケがG3ーXを扱えるようになれば」

「へ?」



ナポリタンを美味しそうにすすっていたユウスケが動きを止めて、僕の方を驚いた顔で見た。



「このままこっちの世界に残ってーとか、考えてたんじゃないの?」

「・・・・・・なんで分かるんだよ」

「分からないとでも思った?」



そうじゃなきゃ、G3ーXの装着員なんて難しい上に長期勤務が望まれる仕事をやろうとするわけがないでしょ。

でもそうするとなぜ僕は警官服・・・・・・いや、気にするのやめとこっと。僕は楽しかったし。



「・・・・・・ユウスケさん、八代さんが居るからですか?」

「まぁ、そうだな。俺さ、分かったんだよ」



ユウスケは右手に持ったままのフォークを一旦置いた上で、僕とギンガさんの方を見た。



「俺が旅に出たのは、もう一度姐さんと会うためだったんだって。
言うなら・・・・・・ここが俺の終着点? 俺の居場所だったんだ」

「だからG3ーXの装着員になって、八代さんの力になろうとしたと・・・・・・ユウスケさん、ダメです。
だってあの人は・・・・・・あの人はあなたの知ってる八代さんじゃ」

「ギンガさん」



ギンガさんが僕の方を見た。なので僕は首を横に振った。それから改めてユウスケの方を見た。



「ま、それならそれでいいさ。ユウスケの人生だし、好きにすればさ」

「あぁ、そうするさ。恭文、今まで世話になったな」

「いいよ、別に。僕もそれなりに世話になったから」



終着点かぁ。まぁ僕とギンガさんは当然元の世界に戻る事がそれだけど・・・・・・ちょっと考えて難しいと思ってしまった。



”なぎ君、いいのかな。だってあの人は”

”うん、確かにユウスケが守りたかった八代さんじゃない”



確かに違う人なんだよ。だから同一の存在として見るのは、ちょっとアウトなのよ。

あとは・・・・・・多分ギンガさんも、そしてユウスケも気づいている事だ。



”なにより八代さんを見てると、誰かこう・・・・・・別に気にしてる人が居るような”

”やっぱ気づいてたんだ”

”それはまぁ、私も女の子ですから”





例えば昨日のお話。昨日八代さんと中島さんが前任者を引き止めてた時だよ。

八代さんは中島さんに『彼じゃないのにそれだけ出来るんだから充分でしょっ!!』とのたまわった。

それで今日のお話。装着テストの前段階・・・・・・ロードランナーで走ってた時だね。



その時もバシバシ飛ばしてる八代さんを中島さんが諌めた時、八代さんは不満そうな顔をした。

それで『彼ならこのくらい、簡単にこなせるのに』と、とっても不満げに・・・・・・そしてとても悲しげに言っていた。

ここからは勝手な想像なんだけど、G3ーXには正式且つ相当優秀な装着員が居たんじゃないかと思う。



その人は多分この世界の八代さんにとって、単純に自分の作ったものを装着してくれる人ってわけじゃないんじゃないかな?





”なぎ君、なぎ君の知ってるアギトにも、G3ーXは出てたよね?”

”うん”

”ならその・・・・・・そのG3ーXを装着してた人の立ち位置に立っていた人が、八代さんの気にしてる人とか?”

”そういう事になるのかなぁ。それでその人と八代さんは、それなりに深い関係だったと思うんだよ”



ここの辺りは、男女のアレコレってだけに限らずだね。一種の心友的な感じもアリだと思う。



”それで八代さんは、その人にG3ーXになってもらいたいと今でも思ってたり・・・・・・するよね”

”うん、私もそういう風に見えた。だからその人との繋がりの一つであるG3ーXにこだわる?
G3ーXが無くなったら繋がりが消えるように感じて怖い。それでもしかしたらあの無茶振りは”



ギンガさんは念話しながらも、ご飯をどんどん入れていく。今はちょうど白身フライを一尾まるごと口に入れました。



”G3ーXをその人以外に使って欲しくないという気持ちの裏返しでもあるのかも”

”・・・・・・また深いとこまで読み取るね。なんで分かるのさ”

”言ったでしょ? 私だって女の子なの。だから・・・・・・うん、分かるんだ。
でもそうするとユウスケさん、ここに残っても辛いだけなんじゃないかな”





ギンガさんの言ってる事がマジで事実なら、そういう事になるね。仮にユウスケがG3ーXの装着員になったとしよう。

でもどんなに頑張っても、八代さんはそのポストG3ーXな人をずーっと見てるわけだよ。

G3ーXの装着員を募って装着させて戦わせるのも、成果を出せなきゃG3ーXそのものが無くなるからだろうしさ。



・・・・・・願わくば、ユウスケにはそこを分かっていて欲しいよ。じゃないと、辛過ぎる。





”たださ、僕はまぁ・・・・・・ユウスケの気持ちは分かるんだ。
守れなかったものを、今度こそ守れるようにって気持ちはさ”



特にユウスケの場合、その対象が死んでしまってるからなぁ。

僕にとっての・・・・・・うん、僕にとってのフェイトやリインは、それなりに幸運なんだよ。



”それは私も分かる。分かるけど・・・・・・うーん”





ギンガさんがご飯を食べながら困った顔をする。僕はギンガさんがそう言いたい気持ちも、実は分かる。

さっきも言ったけどこの世界の八代さんは、あの時亡くなった八代さんと違うもの。

そういう意味ではユウスケもこっちの八代さんの事、ちゃんと見ていないとも言えるんだよね。



そこの辺りはまた折を見てツツく事にして・・・・・・いや、ユウスケは何気に大人だから気づいてるよね?

お願い、そう信じさせて。そうじゃないと僕は不安で安心してG3ーXを着て戦えそうもないの。

言いようのない不安を感じながらも僕は、ご飯をしっかり食べる事にした。まずはお腹いっぱいにしてから考えようっと。





「でも、ユウスケ」

「なんだ?」

「僕はもうとやかく言わないけど、写真館のみんなには改めて挨拶しなきゃだめだよ?
特に栄次郎さんには絶対だよ。ご飯から住むところからなにからなにまで、お世話になりっ放しなんだし」

「もちろん分かってるって。この後にでも時間があるようなら、おみやげ持った上で」



ユウスケがそこまで言った瞬間に、食堂に警報が鳴り響く。



世田谷区近辺で、未確認生命体第48号と49号と思われる対象を確認。
対策班は支給出動せよ。繰り返す。世田谷区近辺で


「ユウスケ、残念ながら挨拶は後回しだよ」

「みたいだな」










僕達はお食事をタッパーに詰めてもらった上で・・・・・・いや、当然でしょ。食べ物無駄にしちゃいけません。





とにかく詰めてもらった上で、急いで対策班のオフィスに向かう。それから専用トレーラーに乗って警視庁を出た。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Gトレーラーの車内・・・・・・というか積載しているカーゴの中は、前線基地になっている。

オペレーション用のコンソール機材一式に、装着のための台座。それにガードチェイサー。

僕は既に装着用のスーツに着替えていて、いつでも準備完了ですよ。





ただその前に・・・・・・僕はガードチェイサーにまたがってちょっとだけ確認事項があった。










「坊主、足はつくか?」

「ギ・・・・・・ギリギリですけどなんとか。つま先だけじゃなくて、ちゃんと指の付け根までつきます」



G3ーX装着前に、僕がガードチェイサーに乗れるかどうかをテストしてました。

あー、元がアメリカン入ってる車体で良かった。おかげで車高がちょっと低めなのよ。



「それじゃあ蒼凪君。さっき話した注意事項も鑑みた上で状況に対処するように」

「必要な機材を壊さないように扱いつつ状況をクリアするのも、立派な仕事の一つだ。しっかり通せよ?」

「はい」



僕は返事をしてからガードチェイサーから降りる。・・・・・・でも、やっぱデカいな。圧し潰されそうだよ。



「ギンガちゃんは私と一緒にここでナビお願いね? それで小野寺君と海東君」

「「はい」」

「二人は現場に出て、実際の目で現場を見てくれ。で、何かあれば俺達にすぐ報告だ」





つまりG3ーX備え付けのカメラが使えなくなった場合などに備えてという事だね。

あとは戦ってる時のサポート。ただここは、攻撃行動だけに限った話じゃない。

例えば戦闘に一般人が巻き込まれた時。即座に避難誘導して市民の安全を確保。



例えば装着員のもう一つの目となって、異常や変化を即座に伝える。

G3ーXは装着員だけでは成り立たない。メンバー全員がそれぞれに役割分担して、効率的に運用。

・・・・・・というのが、中島さんの方針らしい。この辺りはG3ーXの破損防止の意味合いもある。





「特に小野寺、お前は坊主の戦い方見て勉強しとけ」

「はいっ! 分かりましたっ!!」



ユウスケ、エンジンかかってるなぁ。というか、なんだろ・・・・・・僕保護者みたいな気持ちになってきてる。

あー、でも大体分かった。ユウスケは多分母性本能をくすぐるタイプなんだよ。あ、僕の場合は父性本能だね。



「説明は以上よ。それじゃあ蒼凪君、G3ーXを装着後ガードチェイサーで出動。グロンギを鎮圧して」

「了解です」










胸の中にG3ーXになって戦えるワクワク感が無いと言ったら、嘘になる。

でもそんなワクワク感は吐いた息と共に一旦外に出しておく。

グロンギのせいで人や物に被害が出ているんだ。お遊び気分は絶対にアウト。





だって今からやるお仕事は、戦えない誰かの代わりに戦うお仕事なんだから。さ、ハードボイルド通しますか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



薄暗い地下の通路の中、頭を押さえ呻きながら蹲る男が居る。





普通に通りすがりなら近づきたくない相手なんだろうが、俺はそういうワケにはいかない。










「・・・・・・探したぞ、芦河ショウイチ」



男は俺の方を見て・・・・・・あー、不快感丸出しだなぁ。



「・・・・・・近づくなと言ったはずだ」

「安心しろ」



俺は寛大なのでそこの辺りを一切無視して、安心させるように笑いながら話を続ける。



「今日から俺が、アンノウンから守ってやる」



それがそう言った瞬間、芦河が目を見開いた。



「士くんが・・・・・・人を守るっ!? ありえませんっ! 士くんどうしたんですかっ!!
殴られたら常に100倍返しで性悪で自己中で身勝手極まりない士くんはどこに行ってしまったんですかっ!!」

「・・・・・・・・・・・・夏みかん、お前あとでボッコボコにしてやるからな? 覚悟しとけ」

「なんでですかっ!? 私間違った事言ってませんよねっ!!」



激しく間違ってるだろうがっ! てーかお前は一体俺をなんだと・・・・・・まぁいい。

芦河は俺達を見て、笑っていた。それは決して楽しい笑いではなく、嘲笑だった。



「俺を・・・・・・俺を守るだと?」



芦河が左手を伸ばすと、服の袖から赤い触手が飛び出てきた。俺は咄嗟に左に転がってそれを回避。

だがその触手はちょうど俺の真後ろに居た夏みかんを捉え、胴体に巻きついて一気に引き寄せた。



「きゃっ!!」



夏みかんは芦河の腕の中に捕まった。夏みかんはもがくが、両腕も縛られているので全く身動きが取れない。



「・・・・・・その夏みかんは、搾っても美味しいジュースにはならないぞ? むしろ規制されるな」

「ふざけるなっ! 守るだと・・・・・・・・・・・・この化物をかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





芦河は声に怒りを込めて両腕を広げ叫んだ。すると、その姿が瞬間的に変わった。

緑色の体色に赤い瞳、緑色の二本の角。方からは黒い棘が鋭く飛び出している。

そして両手には鎌のように反り返った爪が、手首の辺りから生えている。



・・・・・・あぁ、大体分かった。これがこの世界のライダーの一人ってワケか。



俺は納得しながらも、すぐにバックルを腰に装着。右手でカードを取り出した。





「・・・・・・変身」



バックルにカードを即座に挿入。バックルを操作して一気に変身。



≪KAMEN RIDE・・・・・・DECADE!!≫



俺の姿がディケイドに変わる。まずは夏みかんを救出・・・・・・と思ったが、必要はなかった。

夏みかんは投げ飛ばされて、宙を飛んだ。飛ぶ方向は、俺の居る方。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



悲鳴をあげる夏みかんを、俺は仕方なくそのまま受け止める。だが、勢いに圧されて前のめりに倒れた。

俺は夏みかんの肩越しに奴を見るが・・・・・・くそ、姿が消えてやがる。



「夏みかん、お前どけ。邪魔だ」

「あぁ、良かったっ! やっといつもの士くんが戻ってきましたっ!! それでこそ士くんですっ!!」

「お前マジであとでボッコボコにするからなっ! 覚悟しとけっ!!」

「だからどうしてですかっ!! ・・・・・・でも、アレもライダーなんですか? シルエット的にはそれっぽいですけど」



夏みかんが俺の上からどきながらそう言ったが・・・・・・まぁ、確かにあのG3ーXとかと似てるところはあるがな。

ただしそれは本当に大まかなラインだ。俺達が今まで旅してきて見たライダーよりは、ずっと生物的な印象がある。



「さぁな。だが今はそこはいいだろ。とっとと追うぞ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ガードチェイサーに乗って見つけたのは、スタジアム近辺を歩いていたグロンギ二体。

えっと・・・・・・毒の胞子飛ばして五代さんに重傷を負わせたグロンギと、腰布巻いた黒いグロンギか。

僕はソイツらの背後から全速力で一気に接近。その間を突っ切るようにキノコと腰布を跳ね飛ばした。





火花を上げながら二人は左右に倒れ、僕はガードチェイサーを安全に停止。サイドスタンドを左足で跳ね上げる。










『GMー01、アクティブ。発砲許可』

「了解」





ガードチェイサーを降りてから、右太ももに装着してあったスコーピオンのグリップをを右手で握る。

そのまま両手で構えて、こちらに飛びこもうとしていたキノコをよーく狙った上で引き金を引く。

銃器関係は警防での訓練で触らせてもらったから、扱い自体は初めてじゃない。ただ、それでも慎重に。



次の瞬間、オート発射の弾丸達はキノコの身体を撃ち抜き火花を走らせる。

銃身から一気に空薬莢が10何発も飛び出して、それらは全て音を立てながら地面に落ちていく。

でも僕は一旦射撃をやめて、常時繋がっている無線で八代さんに一つお願いをする。





「八代さん、デストロイヤーの使用許可お願いします」

『え?』

「お願いします」

『・・・・・・分かった。GSー03、アクティブ。使用許可』





八代さんがそう言った瞬間、ガードチェイサーの後部左カウルが開いた。

・・・・・・あ、こういう形で武装が搭載されてるんだっけ。

僕はスコーピオンを左手に持ち替えながら、デストロイヤーを取り出す。



その形状は前回言った通り。装着した今の気分はまさしくガンダムエクシアだよ。





「ありがとうございます。・・・・・・んじゃ」





僕はこちらに踏み込んで右拳を叩きつけてきた腰布に向かって、突撃する。

突き出される拳を避け、デストロイヤーを左薙に打ち込みながら斬り抜ける。

手に感じるのは、確かな手応え。それを示すように火花も激しく撒き散らされた。



でも相手もさるもの。拳がG3ーXのメット右側面を掠り、そこから小さくはない衝撃が伝わる。

それでも僕は斬り抜けて、反時計回りに回転。同じように来ていたキノコに銃口を向けた。

狙いはバッチリなので当然即座に引き金を引いて、その身体を撃ち抜くと同時に突撃を止める。



キノコはそれでも突撃しようと両腕を前に出して、身体をガードした。

でも甘い。その間に僕は引き金を引きつつも踏み込んでいる。

僕は先ほどと同じように、デストロイヤーを左薙に振るって刃を叩き込む。



ただし、今度の狙いは胴体ではなく両足。具体的には脛と足首の間くらいを狙う。



ちょうどデストロイヤーで引っかけるようにして、身を伏せながら斬り抜ける。





「うん、やっぱ」





キノコはその斬撃によって、突撃しているところに足元を叩かれる形で衝撃を受けた。

結果、バランスを崩して前のめりで倒れた。僕は再び身体を回転。キノコが起き上がる前にチェック。

後ろからデストロイヤーの切っ先を突き出し、キノコの背中に突き立てそのまま押しこむ。



起き上がりかけていたキノコは刃の勢いに圧されて再び地面に寝そべり、背中からは派手に火花が走る。





「こっちの方が好みだわ」



そういやこの武器、超音波での振動を利用したチェーンソー・・・・・・よし、僕は気にしない。



「まずは・・・・・・一体っ!!」





こちらにまた飛び込もうとしていた腰布には、スコーピオンの銃口を向けてその足元に弾丸をばら撒く。

それで腰布の足が止まっている間に、更に刃を押し込み・・・・・・その身体を貫いた。

結果、身体を震わせていたキノコの身体から力が抜け、その場で爆発。・・・・・・うし、いい感じいい感じ。



僕は身体を起こしながら、ゆっくりと腰布の方に歩いていく。





「さ、次はお前だよ? 瞬殺してあげるからドンと来い」










爆発によって生まれた炎を踏みしめながら、一気に加速。

袈裟にデストロイヤーを叩き込むと、腰布はそれを両腕をクロスさせて受け止めた。

次の瞬間、腰布の右足が僕の腹に向かって突き出される。





いわゆるミドルキックだね。僕は右足のブレを見切った瞬間に上に跳んで、その蹴りを回避。

そのままデストロイヤーと腰布の両腕の接触点を中心とし、縦に回転するように腰布を飛び越えた。

飛び越えながらもデストロイヤーをそこから振り切って、両腕に斬りつける。





走る火花を視界に収めながら、僕は腰布の後ろに着地。すぐにデストロイヤーを右薙に振るう。

腰布は身体を回転させながらももう一度右足で僕に向かって蹴りを叩き込んでいた。それをデストロイヤーで払う。

デストロイヤーはアキレス腱辺りに叩き込まれ、火花を走らせながらも振り抜かれた。





腰布は衝撃に圧されて足を引き、いい具合に背中ががら空き。僕はデストロイヤーの切っ先を突き出しつつ突撃。

腰布の右脇腹の辺りに刃は通り、再び派手に火花を散らしながらその肉体を斬り裂く。

でも、致命傷にはならなかった。体勢が崩れていたせいで、身体を貫通する前に相手が吹き飛んだ。





タイル式の地面の上を転がりながら、腰布は僕から距離を取る。・・・・・・うし、いい感じだ。

神経を研ぎ澄ませ。強い『鎧』に守られてるって、安心するな。感覚を鎧の外に向けるんだ。

分かるはずだ。相手の動きの先が、周辺の異常が、いつものように先読み出来るはず。





まだだ、まだ足りない。いつもに比べると反応速度がちょっと下がってる。もっと速く出来るはず。





僕は鎧に甘えている自分を叱咤しつつも、起き上がりつつある腰布に向かって踏み込む。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ・・・・・・あのね? 私はなぎ君と模擬戦も訓練もした事あるし、なぎ君の戦闘センスが非常に高いのはよーく知ってたの。

なぎ君は確かに魔導師としての資質はフェイトさん達六課隊長陣や、私やスバルよりも下かも知れない。

そこだけ見れば凡人かも知れない。でもそれを補って余りあるくらいに、戦闘に関してのセンスに長けてるんだよ。





ここはフェイトさん達も認めてる。前になぎ君のセンスは、自分達では届かないところだって言ってたから。

もちろん経験での蓄積もあるけど、それ以上に天性のものがあるんだと思う。

それがなぎ君の魔導師として・・・・・・ううん、戦う人間としての強さの秘密でもある。





それがあるから、なぎ君はオーバーSとでも張り合える。今みたいに怪人相手でも絶対に押し負けしない。

なぎ君は魔導師としては天才じゃあないかも知れないけど、戦闘者としては充分その領域だよ。

私はこれでもなぎ君とは3年以上の付き合い。だからね、本当にもう・・・・・・凄い分かるの。めちゃくちゃ分かるの。





でもね・・・・・・知ってはいても今の現状には納得しかねるのっ! だって装着して初戦闘なのにっ!!





ほら、見てっ! 私だけじゃなくて八代さんも中島さんもすっごい驚いてるんだからっ!!










「・・・・・・おいおい、余裕しゃくしゃくじゃねぇか。八代、G3ーXの状態は」

「バッテリー消費に各部駆動・・・・・・大丈夫です。充分に許容範囲内」

「じゃあアレか、ちゃんとG3ーXに負担かけないように動いて・・・・・・なんだコレ」

「多分テストのアレで、なぎ君G3ーXの限界地点みたいなものを掴んでます」



もうこれはそうとしか考えられない。そして予想通りだよ。うぅ、あのセンスが私にもあればなぁ。



「掴んだ上で、そこを超えないように戦ってるんです」





ここは不可能なところじゃない。カメラからの映像を察するに、なぎ君は自分からは基本的に攻め込んでいない。

相手の攻撃の回避の中に反撃のためのアクションを組み込んで、確実にダメージを与えている。

言うならカウンターなんだよ。それで隙を作って、さっきみたいに背中にグサリで確実に仕留めていく。



これならあの時みたいなフル稼働はしなくていい。必要なのは、確実な見切りの力なんだし。

動きを先読みして、反応速度を上げるという手もあるわけだしね。私もその、そういうのは経験があるから分かる。

それでまぁその、体育会系の性って言うのかな? 私、こう・・・・・・身体がウズウズしてるの。



なぎ君は真剣に戦ってるんだから失礼だし不謹慎なんだけど、こういうのを見てるとジッとしてられない。

自分も身体を動かしたい。もうちょっと言うと、訓練なり模擬戦なりして強くなりたいと思う。

でも当然だけど私は・・・・・・うぅ、本当にあの時の私のバカ。あそこで無理しなかったらちゃんと出来てたのに。



私は命賭けるタイミングとかやり方とか、確実に失敗しまくってるなぁ。だから今は解説役なわけだもの。





「いや、だがそれにしちゃあ・・・・・・八代、こりゃとんでもない拾いもんしたな。芦河以来の逸材だろ」

「中島さん」










私には今中島さんが嬉しそうな顔で話してた『芦河』という人が誰かなのは、当然分からない。





でもその人がさっきなぎ君と話してたあの人だと言うのは・・・・・・うん、なんとなく想像出来た。





だって今の八代さんの顔、困ったような悲しいような顔だもの。正直、見てるだけで胸が締めつけられる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「これは、僕らの出番は無さそうだね」

「そ、そうですね。てーか恭文が強いのは知ってたけど、まさかこれでもいけるとは」

「少年君は僕にはまぁまぁ負けるけど、戦闘に関してのセンスがずば抜けてるしね。これくらいは余裕ってところだよ」





なぁ、確か恭文って魔導師だよな? 魔法使って戦う人だったよな?

まぁまぁ今までのは納得出来るんだよ。アイツの本領だしさ。

なのにこれはなんだっ!? 今アイツ魔法使ってるわけでもないよなっ!!



な、なんつうか8年訓練とか頑張れば、人間ってここまで強くなれるのか。

・・・・・・俺、今25歳だけど間に合うか? ここから新しい自分、始められるか?

だがセンス・・・・・・恭文って何気にいわゆる天才っていうやつなのか?



あー、でもそう言われるとなんとなく納得してしまう。あ、別にここは魔法どうこうじゃないんだよ。

具体的には・・・・・・士の写真へのとんでもない理解度?

正直アレに関しては俺も夏海ちゃんもギンガちゃんでさえ首を傾げてたんだ。



だが恭文が天才だとすると納得出来る。ほら、バカと天才は紙一重・・・・・・あれ、なんか違うな。

でもほら、天才は常人とは発想そのものが違うって言うしさ。

だけど俺、最低でもこのレベルにならないとG3ーXの装着員に。





「・・・・・・はぁっ!?」





俺の今後を左右するであろう思考は突然に遮られた。その原因は、恭文と戦っていた腰布。

別に腰布は逃げたわけでも、突然土下座して命乞いしたわけでもない。

ただ殴られて、スタジアムの壁近くに吹き飛ばされただけ。それも恭文や俺達以外の奴にだ。



黒い体躯に二本の触覚。そして右手にそれぞれハンドアックスとブロードソードを持っている。

それでそのアックスとソードで、腰布を何度も何度も殴りつけていく。

腰布はそのリンチのような・・・・・・違う。アレはリンチそのものだ。それによって爆発した。





「な・・・・・・なんだ、アレ。グロンギを倒した? 味方か」



アックス持ちとソード持ちの二人は、ゆっくりと恭文の方に向かっていく。

その様子を見て俺もさすがに気づいた。違う、コイツらは味方じゃない。コイツら・・・・・・恭文に敵意を向けてる。



「アンノウンだね」

「アンノウン? 海東さん、それ」

「天使に等しき神の御使。人を超えた存在を抹消し、世界を平定する存在だよ」

「な、なんですかソレっ! てーかなんか厨二っぽいんですけどっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「な・・・・・・アイツらっ!!」



正体不明の怪物との戦闘の様子を映したカメラの前で、八代さんが立ち上がりながら叫んだ。

私も中島さんも、そこに驚きつつも画面を・・・・・・うん、なぎ君なら大丈夫だ。



「おいおい、なんだよコイツらは。グロンギ攻撃したと思ったら、今度はG3ーX狙いか?」

「・・・・・・アンノウン」

「アンノウン? 八代、コイツらが何かお前知ってんのか」

「えぇ。以前一度だけ遭遇した事があります。目撃例もグロンギのせいで目立ってはいませんけど、かなりあるようです。
それでコイツらの狙いは今のところ不明です。でも、これだけは言えます。奴らは・・・・・・グロンギとは別の敵です」





アンノウン・・・・・・未確認という意味だよね? あ、ちょっと待って。えっと・・・・・・そうだ。

確かアギトに出てくる敵役の怪人がそれだった。士さんから連絡もらった時に、なぎ君に確認したから。

アンノウンは、人を超えた能力を持った存在を優先的に殺していく神様の使いだって言ってた。



神様はそういう強い能力を人が持ってはいけないと考えて、そんな存在を世界の平和のために殺す。

例えば超能力・・・・・・アギトに変身する力を持った人とか。アギトの世界だと超能力は、アギトの力になるらしい。

つまり超能力に開花するという事は、アギトに変身出来る資質を持っているのと同義語。



アンノウンがターゲットにするのは、そういう人達。なぎ君はまだ能力自体が覚醒していない人も襲うって言ってた。

そういう能力が目覚めているかどうかが問題じゃない。そういう能力が使える資質を持っているかどうかが問題になる。

少なくとも神様はそう思っている。だからその命令を実行するアンノウンは、実は神の使い・・・・・・天使に近い。



正直、それを聞いた時はとてつもなく嫌なものを感じてしまった。



だってそんなの、身勝手過ぎるもの。でもなんでグロンギまで・・・・・・あ、もしかして。





「・・・・・・グロンギが、人を超える存在だから?」



私がそう呟くと、八代さんと中島さんの視線が私に突き刺さって・・・・・・あ、失敗した。



「ギンガちゃん、今なんて・・・・・・もしかしてアンノウンの事、知ってるのっ!?」



ど、どうしよっ! なんか凄い食いついて肩掴まれてるんだけどっ!! ここ、正直に言うしかないよねっ!?



「あの、えっと・・・・・・なぎ君から軽く聞いてて。
あの怪物達は、人の枠を超えた力を持った存在を狙って殺していくって」

「人の枠を超えた? というか、あの子も知ってたんだ」

「は、はい。なぎ君もウワサ話程度らしいんですけど。
だからその、グロンギを襲ったのもそのせいじゃないかと」



八代さんは私の言葉に納得してくれたのか、すぐに肩から手を離してくれた。それで中島さんと顔を見合わせる。



「中島さん、それってどういう事だと思います?」

「嬢ちゃんの言葉通りだろ。グロンギの能力が普通の人間超えてるから、まずグロンギ倒したんだ。
てーか八代、お前があの連中と遭遇した時ってのはどのタイミングだ」

「G3ーXの前身・・・・・・G3の最終テストの際です。襲撃されて、ボロボロにされて・・・・・・あ」



八代さんは何かに気づいたように目を見開いて、なぎ君との通信用のマイクに顔を近づける。



「蒼凪君、気をつけてっ! ソイツらの狙いはG3ーXの破壊よっ!!」

『分かって・・・・・・ますってっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・唐竹に振るわれるブロードソードを、僕は左に動いて回避。

そうしつつも身体を反時計回りに回転させて、右薙に側面からデストロイヤーで斬りつける。

刃の切っ先はソード持ちの右の二の腕を斬り裂いて、火花を散らす。





でも、致命傷に・・・・・・僕は反射的に後ろに大きく跳んだ。右側からアックス持ちが斬りかかって来ていた。

そのまま左手のスコーピオンを向けて、数発撃つ。それらはソード持ちとアックス持ちに命中。

奴らはそれでも怯まずに僕に斬りかかってくる。まずはアックス持ちの右薙の打ち込みを、しゃがんで回避。





回避しつつもデストロイヤーを左薙に振るって、その腹を斬り抜ける。続けて来るのはソード持ちの突き。

僕は身体を時計回りに捻り、身体の軸を左にズラしつつスレスレで回避。

相手のソードの切っ先が僅かに装甲を斬り裂き、一直線に傷が刻まれて火花を散らす。





それでも前進して、デストロイヤーの刃を返してがら空きな顔面に向かって袈裟に斬り抜ける。

ソード持ちは咄嗟に顔を下げてそれを避けた。僕は交差した瞬間に足を止める。

その回転の勢いを活かした上で素早く身を翻して、再びデストロイヤーの刃を打ち込む。





それはソード持ちも同じくらしく、互いに左薙に打ち込まれた刃が交差して火花を大きく走らせた。

続けざまに脇からアックス持ちが突撃してきて、アックスを唐竹に打ち込んで来た。

僕はその刃をデストロイヤーの刃で受け止める。それからすぐにスコーピオンをアックス持ちの腹に連射。





アックス持ちはその衝撃で後ろに下がるけど、すぐにアックスを突き出してくる。

これは刺すというよりは、打撃によってダメージを当てる目的の攻撃。

僕は下がりつつもデストロイヤーの刃を右薙に打ち込んで、その刺突を払いのける。





そして僕の首元辺りを狙って袈裟に打ち込まれたソード持ちの斬撃を、しゃがんで回避。

刃を返しての右切上の斬撃は、後ろに数度跳んでなんとか回避した。

ただ、切っ先が装甲を捉えたために火花が軽く走り・・・・・・くそ、やっぱ気が緩んでるか。





それでもダメージは入ってないから、まだ動ける。でもここは反省点だわ。





とにかくそれにより20メートル程距離を取って、また僕達は睨み合う。










”・・・・・・さすがに二体は厳しいですか”

”いやいや、まだ余裕しゃくしゃくって感じよ?”



僕はデストロイヤーを再び構えながら、アルトの念話に軽く答える。



”でもアルト、なんでグロンギは襲われたんだと思う?”



僕の知ってるアギトでアンノウンが襲うのは、超能力・・・・・・人の枠を超えた力を持った人間だけなんだけど。



”何言ってるんですか。アンノウンの目的を考えれば、グロンギ抹殺は当然でしょ。
人類の敵なワケですし。もしかしたら同時に存在してたらこういう行動に出てたかも知れませんよ?”

”あー、それもそっか。なら、それを済ませて僕を狙って来るのは?”

”八代さんの言うようにG3ーXが目的か・・・・・・あなたがアギトと同類と取られているか”

”・・・・・・そりゃ厄介な”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



どうしよう、G3ーXの頭部に搭載してるカメラの映像じゃあ現場の状況がよく分からない。

マイクやなぎ君の息使いでなんとか凌いでるのは分かるけど、細かいところがさっぱりだよ。

画面の中の映像は激しく動きに動きまくっていて、大まかにしか分からないんだ。





当然私達がこの場に出ても意味がないし・・・・・・ここは現場のユウスケさん達に任せるしかない。










「つまりアレか。G3もその『人の枠』を超えた力だと認識されたから、襲撃されたと」

「多分。それでまた・・・・・・なんなのよ、それ。アイツら神様でも気取ってるわけ?」



八代さん、それ正解です。現にアギトのラスボスは、アンノウンに指示を出していたその世界の神様に近い存在らしいですし。

八代さんは慌しく動きまくるカメラを見て、苛立ち気味に唇を噛み締める。でもそのカメラの動きが、突然止まった。



「なぎ君っ!?」



私は反射的にマイクに声をかける。それでその返事は、すぐに返って来た。



『大丈夫。というか・・・・・・あの』

「どうしたのかな」

『・・・・・・ギルスが居る』

「ギルス?」





私は改めて画面の方に視線を向ける。それは八代さん達も同じ。それで私達は驚いた。

そこには右腕からこう・・・・・・ガリューみたいな感じで生えた鉤爪で、ソード持ちを貫いている影が居た。

その影は背中だけしか見えていないよく分からないけど、身体の体勢的にそれで間違いないはず。



そのままソード持ちの頭に光の輪のようなものが出て、ソード持ちは爆発した。

そこからすぐに反撃に出たアックス持ちは、左薙にアックスを叩き込もうとする。

でもその影の両手から赤い触手のような物が伸びて、接近される前にアックス持ちを縛り上げる。



そのままアックス持ちの身体は空中へと浮かんでいく。多分触手によって持ち上げられたんだ。





グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!





その緑色の影は高く跳び上がって、右足を大きく上げる。



そしてかかとに付いている鉤爪を、そのままアックス持ちに叩き込むように蹴りを入れた。



刃は相手の身体に深く食い込み、アックス持ちの身体が震える。





ガァァァァァァ・・・・・・!



それから緑色の影は左足で再び跳躍し、その足を相手の胸元に叩きつけた。

その瞬間に触手での拘束はあっという間に解かれ、アックス持ちは影に蹴り飛ばされる。



ガァッ!!










影はそのまま宙返りして地面に着地。アンノウンは吹き飛ばされて・・・・・・地面に落ちる事もなく爆発した。





影はゆっくりと立ち上がって、私達を・・・・・・なぎ君の方を見た。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「エクシード、ギルス? え、でもなんで」

「なんだ。やっぱり少年君は知っていたのかい」



後ろからどこか楽しげにそんな事を言うのは・・・・・・海東、おのれか。それでその脇にはユウスケだよ。

しかもこのバカ、いつの間にか変身してるし。それで見物気分だったのが非常にムカつくんですが。



「いや、ちょっと待て。恭文も海東さんも、アレがなんだか知ってるのか?」

「あぁ。彼はギルス。そしてアギトになれなかった存在さ」

「僕が知ってる仮面ライダーアギトに出てくる、ライダーの一人だよ」



だとすると・・・・・・どうする? なんかこっちに敵意むき出しで一歩踏み出して来たんですけど。

まぁ取り押さえてどうにかってのが一番いい方法かな。変身してるのは人間・・・・・・アレレ?



待てっ!!



なんかバイクが走って来た。てーかそこに乗ってるのは・・・・・・ディケイドッ!?

もやしはエクシードギルスの前に走り込んで、僕とエクシードギルスの間で止まった。



「もやしっ! おのれなにしてんのっ!!」

「そのムカつく声に小さい」



僕は躊躇わずにもやしに銃口を向けた。



「ちょっと待てっ! 躊躇わずに撃とうとするなっ!! お前相変わらず沸点低いなっ!!
・・・・・・とにかく、コイツは攻撃するな。俺はコイツを守ると・・・・・・決めた」

『はぁっ!?』



いやいや、ちょっと待ったっ! 何がどうしてこうなったっ!? なんか全然納得出来ないんですけどっ!!



「もやし、おのれどうしたっ! あの性悪で常に人を食ったような偽悪的でカッコつけパワー全開な自分を捨てて一気に方向転換ですかっ!!」

「そうだぞ士っ! お前はいわゆる厨二病全開な部分を売りにしている勘違い気味なキャラだろうがっ!! 台本読み違えてるだろっ!!」

「黙れよバカ共がっ! お前らこそ色々読み違えてるだろうがっ!!
そして誰が厨二病だっ! 俺は記憶喪失だからそんなもんにはかかってねぇっつーのっ!!」



その自覚0な言葉に、僕とユウスケは思わず顔を見合わせた。そして二人で笑いつつ、右手を振る。



「「・・・・・・いやいや、記憶喪失設定は厨二病のありがちパターンだし」」

「よし、お前ら謝れっ! 全てのマジに記憶喪失になってる人間に真剣に謝れっ!! 特に俺になっ!!」



鋭くツッコミながらも、もやしはバイクから降りた。どうやら本格的に守るつもりではあるらしい。



「そんな事はどうでもいい。早くそこをどきたまえ、邪気眼」

「お前までその扱いかよっ!! ・・・・・・まぁいい。海東、お前の邪魔も出来るらしいな」





そう言いながらもやしと海東は僕達差し置いて睨み合って・・・・・・もやしは踏み込もうとした。

でも僕達は、そしてもやしは忘れていた。だからどうしても隙が出来ていた。

後ろに居るエクシードギルスは素早く動いて、もやしのバックルに手をかけて一気に引っ張る。



するといとも簡単にバックルは外れ、もやしは変身解除した。





「・・・・・・おいっ!!」



当然のようにギルスはもやしから離れようとするけど、突然その動きを止めた。

空いている左手で頭を押さえ、急に呻き出した。



「が・・・・・・ぐぁ」





苦しげに息を吐き、声を出す光景を見た瞬間、とてつもなく嫌な予感が走った。

この予感は・・・・・上から。僕は上を見ながらも対処開始。上に生まれていたのは、明らかな驚異。

僕は強くなった予感に従って、まずデストロイヤーの装着を解除。



デストロイヤーをその場に置き去りにする。それからもやしの方に一気に加速。

変身解除で無防備なもやしを不本意ながらも両手で抱きかかえて、すぐに左に大きく跳んでその場から離れた。

次の瞬間、どこからともなく降ってきたエネルギー状の青い十字架が僕達四人のちょうど間に着弾。



・・・・・・うん、着弾なのよ。その瞬間に爆発が起きて、僕達四人とも吹き飛ばされたから。

僕はもやしをかばいながら転がる。転がって着弾地点を見ると・・・・・・うわ、なんかクレーターが出来てるし。

ユウスケとあのバカ海東も無事っぽい。てーかなんですか、今の妙ちくりんな描写の攻撃は。



どう見ても爆発・炸裂系のエネルギー攻撃だよね? 爆発タイミングは・・・・・・接触による衝撃かな。





「・・・・・・全く、お前に助けられるとはな。凄まじく不本意だ」



腕の中のもやしがそんな事を言うので、僕はすぐに離した。



「そりゃこっちのセリフだっつーの。てーか間抜け、ベルト取られるなんて間抜けのする事だよ」

「うるせぇっ!! てーかアイツは」










僕も起き上がって辺りを見回してみると、エクシードギルスも爆発の衝撃で吹き飛ばされてたらしい。

地面を転がりながらもゆっくりと起き上がろうとして・・・・・・あ、変身が解けた。

その姿は年の頃だと30代前半で素敵なお兄さんと言ったところだけど、伸びっ放しの髪と無精ヒゲでマイナスだね。





あれがエクシードギルスの変身者・・・・・・じゃあもやしが守ろうとしたのは、あの人か。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ショウイチ」



八代さんが驚いたように、そんな名前を呟く。ううん、驚いているのは八代さんだけじゃない。

中島さんも同じ。信じられないという顔で、G3ーXからのカメラ映像を見ていた。



「ショウイチっ! あなたなのっ!? ショウイチっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



いきなり頭部ヘルメットから大音量で声が響く。響いているのは八代さんの声。





その声を聞いて髭面男は目を見開き、慌てて身体を起こし始める。










「もやし、なんかあったの?」



もやしはそれを見て同じように急ぎ気味に立ち上がって、あの男の方に近づく。



「それなりにな。まぁお前はお前で楽しくライダーやってろ」



あの男はふらふらしながらも、もやしから・・・・・・僕達から逃げるように走り去った。

当然もやしも急いでその後を追いかけた。後に残ったのは僕達と、未だ燃え盛る爆炎だけ。



”アルト、これどういう”

”・・・・・・どうしました?”





僕も慌てて立ち上がり、2時方向の上の方を見る。そこはちょうどスタジアムの縁の辺り。

そこには金色の穂先の槍を持った、闘牛みたいな角を持ったアンノウンが居た。

でもソイツだけじゃない。他にも二体程アントタイプのアンノウンが居る。あとは女性型だね。



確かアレ・・・・・・水のエルだ。アンノウンの上位形態。それが牛男の傍らに居る。

僕には牛男がアンノウン三体を引き連れているように見えた。つまりアレ、上位のアンノウン?

だけどあのアンノウンは僕は見た覚えが・・・・・・あ、もしかしてまたオリジナルですか。





人間達よ、あんな力に惑わされてはいけない。人はただ



ソイツが持っていた槍の先が、僅かに動く。僕は感じた予感に従って一気に左に走る。



人であれば良いのだ





突き出された槍の先から、再びあの十字架が生まれて僕の居た場所に発射される。

今度はさっきよりも速い。そして僕の後ろ側にあったフェイスごと地面を吹き飛ばしてまたクレーターを作る。

僕はなんとか範囲外に回避出来たので、すぐさま左手に持ちっぱだったスコーピオンを構える。



でも、牛男の姿が消えていた。だから僕はゆっくりと銃口を下ろしつつ、改めて周囲を警戒。





”アルト、今の見えた?”

”えぇ、バッチリです。G3ーXのカメラ映像、こっちに回していますから。
さて、状況から察するに・・・・・・ワケが分かりませんね”

”まぁそうなるよね。本当にここは全然だよ。でも一つだけ分かる事がある。あの攻撃をしたのは、あの牛男だ”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



初出動は、内容だけ見ればまぁまぁ悪くはなかった。うん、途中のグダグダがなければね?

なので僕達は警視庁に戻って、対策班のオフィスで改めて会議だよ。もうね、めっちゃ聞きたい事あるし。

まず聞くべきは、アンノウンの事と八代さんが名前を呼んでいたあの『ショウイチ』についてかな。





てーかどう考えてもあの人がこの世界のライダーだよね? だって『ショウイチ』だし。

でもエクシードギルス・・・・・・あぁ、でもそうなっても別におかしいところはないんだよね。

だってギルスは、アギトとは別の形で力が発現した個体の総称だもの。





つまり原典の津上翔一と違って、ギルスになっていても特別変という事ではない。










”・・・・・・という感じなんだけど、分かった? ギンガさん”

”うん、分かった。じゃあもしかして士さんがあの場でそのショウイチさんを守ろうとしたのは、そのせいなのかな”

”この世界のライダーだからって事? うーん、ありえない事じゃないけど・・・・・・でもやっぱりよく分からない”



まぁもやしの事は後だよ後。アレはアレで元気にやっていくでしょ。僕はそう信じてるよ。

今問題にすべきは、ユウスケがめっちゃヘコみモードになってる事なのよ。うーん、どうしよう。



「・・・・・・じゃあ蒼凪君、あなたがアンノウンの事を知ってたのは」

「えぇ、あくまでも噂話程度なんです。そういうグロンギとは別の怪物が出てーって」

「じゃあ坊主、人間の枠を超えた存在を襲うってのも同じか? あとはギルスとかってのも」

「それも同じです。僕もそういう尾ひれがついたのかなーっと思ってたんですけど・・・・・・どうやらそうじゃないみたいです」



・・・・・・という事にしておく。まさか『テレビで見たから全部知ってまーす♪』なんて僕には言えない。

ごめん、僕にはそんな度胸はひとかけらもないの。今だって相当にビクビクなの。



「蒼凪君、その噂話・・・・・・どんな感じなの? アンノウンは分かったから、ギルスの方」



あー、そっちにいっちゃうよね? 僕も名前呟いてたから。そこもこっちに聞かれてたっぽいから。



「えっと・・・・・・確か超能力に目覚めた人間が行き着く進化の可能性・・・・・・って話だったような」

「超能力?」

「えぇ」



・・・・・・海東が横で楽しそうな顔してるけど、僕は一切気にしない。てーかこういう言い方するしかないでしょうが。



「自己の持っている力が強くなって、その結果人は人を遥かに超えた強力な力を持つ存在になれる。
それがギルスだったり、あとは・・・・・・アギト。確かそんな単語もありました」



それで八代さんと中島さんの表情を見ているのが辛い。あのね、突き刺さるの。なんかこう、言いようのない何かがめっちゃ突き刺さるの。



「いわゆる厨二設定かなーと思ってたんですけど、まさかあんな風に変身する形とはちょっと思ってませんでした。
てっきりアレですよ、『触れたら死ぬ』みたいな攻撃が出来る左腕の痛い人になるのかなーと」

「はぁ? なによそれ」

「・・・・・・なるほど、言いたい事は分かる」

「中島さん分かるんですかっ!?」



八代さんが強く頷く中島さんを見て、無茶苦茶驚いて・・・・・・あ、ギンガさんも同じくみたい。

なんでかヘコみ気味だったユウスケまで、凄い勢いで納得したように頷いたから八代さんは更に驚いてる。



「まぁアレだ、男ってのは誰にでもそういう時期があるもんなんだよ。俺にもあったさ」

「そ、そうなんですか。私にはよく分からないんですけど。・・・・・・とにかく、アレがギルスと。
つまり超能力を発現させた人は、ああいう変身形態を持つ事が可能になる・・・・・・で、いいのかしら?」

「僕がネットとかで見た話だと、そういう感じっぽいです」

「普通なら眉唾もんの話だが、緑色の奴から芦河が出てきたとこを見せられた後じゃなぁ。
なんにしても、人からそういう不可思議な存在に変身出来る奴が居るのは確かって事か」



芦河・・・・・・あぁ、あのショウイチって人の苗字かな? じゃあ中島さんもあの人の事知ってるんだ。



「何よりあの牛型の奴だ。アレ、最後の攻撃は坊主に直接だろ」

「えぇ」





アレ、中島さんの言うように、明らかに最後のは僕を狙ってきてたもの。

アルトと話してた通り、G3ーXも『人の枠を超えたもの』と認識されたせいかい。

もしくは僕が魔導師だから? 出来ればこっちは嫌だなぁ。



それだとギンガさんまで狙われる危険がある。本当にそこは勘弁だよ。





「私達の方にもしっかり聴こえたわ。確か『あんな力に惑わされてはいけない。人はただ人であればいいのだ』・・・・・・だっけ? 全く、フザケてるわね」



八代さん、相当頭来てるらしく目が怖い。それを中島さんが横でなだめて、なんとかって感じかな。



「それで八代さん、あの・・・・・・ギルスに変身してた人は」



八代さんと中島さんが、困ったように顔を見合わせた。でも、僕も正直このままというワケにはいかないのよ。

ここは興味本位どうこうだけじゃなくて、単純に仕事の側面もあったりする。



「あの、無理には聞きません。ただあの人が本当にギルスなら、早急に探し出す必要もあるかなと」





アンノウンの狙いは、人の枠を超えてしまった存在の抹殺だもの。

それは当然、アギトやギルスのような存在を出さないため。それは人に行き過ぎた力だから。

だからあの人も、アンノウンに狙われている可能性がある。



そういう人の力に本人の要望も出来うる限り踏まえた上でなるのも、警察機構のお仕事だよ。





「あぁ、分かってる。・・・・・・八代、いいな?」



八代さんは中島さんの方を見て、悲しげな顔で頷いた。それを受けて中島さんは、深く息を吐いた。



「まずアイツの名前は芦河ショウイチ。元警官で、G3システムの最初の装着員だった男だ」










・・・・・・やっぱりか。それがどういうワケかギルスやっていると。





なお、今の話を聞いてユウスケがどういう表情をしたかは・・・・・・察して欲しい。




















(第15話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、アギトの世界も多分次で終わりだと思う蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。でさ、恭文。あとがきなわけだけど・・・・・・あのアンノウンムカつくんですけどっ!!」

恭文「ムカつくねぇ。ひたすらに上から目線で『守ってやってる』感が強いのがアレだよ。最高評議会見習ってるのかしら」





(いや、多分時系列的に・・・・・・いえ、なんでもありません)





あむ「てゆうかアンタ、G3ーXでも近接戦闘なんだね」

恭文「あむ、そこは仕方ないのよ。作者がデストロイヤーを敵の身体に当ててやりたくてしょうがなかったんだから」





(あの武器、超音波を利用したチェンソー系統の武器なので、そのせいで劇中では当たらない描写になっているそうです。
まぁようするに・・・・・・そんなもんで斬ったりするのは危ない? くそ、規制だらけの世の中なんて嫌いだ)





あむ「あ、そうなんだ。・・・・・・じゃあちょっと待ってっ! 話の中でぶんぶん振り回してるのって、もしかして相当危ないっ!?」

恭文「今頃気づいた? でも大丈夫、そこまで描写するにしても手間と時間がかかるから、基本はGNソードだよ」

あむ「それ別作品じゃんっ! 最近スゥが『今度スゥが主役をやる映画では、これを使うのですよぉ』って言って見てるのっ!!」





(でもあの系統の武装は今までとまとではあんまり出てなかったし、書きたかった。
ほら、ユニゾソウルブレードもGNソードな形状とか出来るかも知れないし)





あむ「やるつもりだったんかいっ!! ・・・・・・あと、戦い方変えてるんだっけ」

恭文「うん。スコーピオンで牽制しつつ、カウンター気味にデストロイヤーで斬り抜け。
あとは回転する動きを多用して回避と攻撃を同時進行で行う形?」





(G3ーXは基本武装を活用して戦う描写が多いので、なんかそういう形になりました)





あむ「・・・・・・アンタ、戦闘スタイルいくつくらい使い分けられるの?」

恭文「いや、普通くらいだよ?」

あむ「基本一般人なあたしにアンタの『普通』を察しろとっ!? それ無茶振りじゃんっ!!」

恭文「でもそんな多くないって。少なくとも2000どころか100には到達しないし」

あむ「そんなの当たり前じゃんっ! 戦い方だけで2000ってどんだけ器用っ!?
あと、100近いでしょっ! 少なくとも50以上はあるでしょっ!! 違うっ!?」





(蒼い古き鉄、突然によそ見。それを見て現・魔法少女は軽く拳を握る)





あむ「分かった。じゃあアレだ、とまかのでエッチな描写書いてって作者に頼むから」

恭文「なんでそうなるっ!? てーかそれはダメっ!!
あの時点でもあむは13歳でしょうがっ! それは犯罪だからっ!!」

あむ「大丈夫、アンタが将来を約束してくれれば一応合法になるらしいから」

恭文「ならないよっ!? 一部がなるだけで他がアウトなんだからっ! 前にその話したしっ!!」





(各都道府県ごとに話は変わってくる部分もあるので、あしからずです)





恭文「・・・・・・てゆうかあむ、それは僕とそういう事がしたいって事? いやらしいねぇ」

あむ「ば、ばかじゃんっ!? あたしそんなんじゃないしっ! ただアンタへのお仕置きのためだしっ!!」

恭文「なるほど、お仕置きと言いつつしたいんだね? あむ、もっと自分を大事にしなよ。
13とか絶対早いから。もうちょっと大人になって、後悔しないようにじっくり考えて」

あむ「だからあたしがエロいみたいに言うなー! エロいのはアンタとフェイトさんじゃんっ!!」

恭文「僕達はエロくないよっ! あくまでもごく普通のお付き合いをしてるのっ!!
なによりこの話の僕とギンガさんを見てみなっ!? めっちゃ普通だしっ!!」





(いや、それはあなたがEDな上に話違・・・・・・いえ、なんでもありません)





恭文「とにかくあむがエロいという事でファイナルアンサーとして」

あむ「するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

恭文「みんな、突然話変わるけどとまとの挿絵描いていただけませんか? いや、マジでお願いします」

あむ「なんでいきなりそっちっ!? てーか『この人に頼みたい』って人はどうしたのっ!!」

恭文「・・・・・・時間的都合って、あるんだよ」

あむ「わ、分かった。じゃあ深くは聞かない。でもやっぱ大変なんだ」

恭文「お話知らない人だと、まず読んでキャラを掴んで・・・・・・って段階から始めないとだめっぽいんだよね。
そこの辺りを全く考慮に入れてなかった作者のアホさ加減はアレとして」





(アレとしてだね)





あむ「あー、でもそっか。お話の内容分かってないと絵は描けないもんね」

恭文「描けないんだよねぇ。でさ、同人関係の事している方々は、一部の超有名な凄い人はさて置いてみんな本業があるわけじゃない?
本業があって、その傍らにやってるーって人も居て、自分の作品もある場合はそっちも・・・・・・やっぱ普通に大変みたい」

あむ「で、読者から募ったと」

恭文「うん。でもほら、やっぱりここはまだまだ『ググれカス』な志を忘れてはいけないと思うわけですよ。僕達は自分の足を動かすべきなのよ。
それはマジで最後の最後の手段として、もうちょい探してみる事に・・・・・・てゆうか、候補の作家さんまだ居るんだっけ」





(まぁそれなりに。ただ時間がかかるものというのはよく分かったので、期限関係は余り問わない方向にしたいかなと)





恭文「まぁそんなわけで、最後に同人誌化のお話をしたところで本日はここまで。
僕達は『ググれカス』の志を忘れない強い人でありたいと願う蒼凪恭文と」

あむ「いや、あたしも含めないでっ!? ・・・・・・日奈森あむでした。
ただまぁ、自分でちょっとずつ頑張る気持ちを忘れちゃいけないってのは同感」

恭文「ならよかった」










(こうして現・魔法少女も、『ググれカス』の伝道師になったのでした。
本日のED:川田まみ『JOINT』)




















恭文「というわけで、おそらく次のお話でアギトの世界も終了のはず」

ギンガ「予定分量的にはそうなるんだよね。それで次が・・・・・・あそこだよね」

恭文「あそこだね。まぁそこに関してはちょい考えてる事があるので見ていただくとして、G3ーXはいいなぁ」

ギンガ「なぎ君、戦闘の時はアレだけど基本楽しそうだったもんね。というか、仮面ライダーになってる」

恭文「そうなんだよねー。あー、僕旅に出れてよかったかも。なんかこう・・・・・・幸せ」

ギンガ「あの、なぎ君? それは分かるけど涙目はやめようよ。あの、泣く必要はないから」










(おしまい)





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あきゅろす。
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