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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
300万Hit記念小説・その2 『Episode Destiny/新世代MS魔法少女・・・・・・発進します』



・・・・・・時は新暦76年。六課解散から約半年が経ち、鬼退治からは3ヶ月が経った。

僕とフェイトの身体も先日の鬼退治騒ぎの余波も少なく、いい感じで元に戻った。あ、なのはも同じくだね。

いや、まさか元に戻るのに1週間もかかるとは思ってなかったからビビったって。それも徐々にだよ。





しかもその影響で全員揃ってほぼひと月ほどお仕事お休みして、有給たっぷり消費したしなぁ。

おかげでフェイトやなのはの評価、ちょっと悪くなったらしい。特にフェイトはそこらへんの被害が大きいのよ。

僕が上からの無茶振りやらキナ臭い話、全部シャットアウトしてる関係で評価下がってたとこだしね。





ただ、フェイト的には問題ないらしい。だってフェイトはもう六課の時の失敗をしたくないって決めたんだから。

シャットアウトもフェイトに相談した上での事だし、フェイト的にも局の都合に利用されるのは辛いっぽい。

それは・・・・・・世界がまだ何も変わってない。僕達の関係は、それはもう凄い方向で変わったのにね。





そう、世界は変わらない。アレだけの事件を超えても、世界は何も変わらない。悲しいけどそれは事実だ。

それが身体が元に戻るまで、ゆったり療養中だったフェイト共々話して出した結論だった。

フェイトがその時、何を思ってどう考えてしまったかはご想像にお任せする。とりあえず楽しい話ではない。





ちょっとずつ変えていこうとしても、そのちょっとずつすら上は台なしにしてくれる。

そんな悪癖が今の局にはある。ただ、ここの辺りは今はいい。今回はそういう話じゃない。

今大事なのは、休暇な僕がハガレン見てたのにいきなり邪魔してきたこのガキンチョだ。





名前は高町ヴィヴィオ。なのはの娘で、今年7歳。生まれに複雑な事情を抱えながらも、明るく育っている。










「・・・・・・ね、恭文。ヴィヴィオモビルスーツになりたい」



それはいいんだけど、いきなりこんな頭おかしくなったとしか思えないような事を言うのはやめて欲しい。

だから僕は当然のようにヴィヴィオを押しのけて、ハガレンを見るわけだよ。あー、相変わらずBONESは作画いいなぁ。



「無視しないでー! ヴィヴィオ真剣なんだからー!!」

「えぇい、また前に出るなっ! てーか僕だって真剣にハガレン見てるんですけどっ!?
真剣にハガレン見た上で、真剣にBONES作品の素晴らしさを世の中に伝えたいと思ったんですけどっ!!」

「恭文がBONESさん好きなのは分かるけど、今はヴィヴィオを見てー! ヴィヴィオだって作画綺麗だよっ!?」



そう言いながらこのお子ちゃまは、僕の顔を両手で掴んで自分の方に引き寄せる。なお、当然邪魔。

なのでアイアンクローで掴んだ上で、一気に引き剥がそうとする。でも、凄く抵抗してくれる。



「いや、ヴィヴィオは作画崩壊してるでしょ。ヴィヴィオは充分作画崩れてるよ。
StSのアレとかコレとか見てみな? 崩れ過ぎて恐怖を覚えるくらいだよ」

「女の子にそういう事言うのどうなのっ!? 大体それならフェイトママだって」

「フェイトは僕の嫁だからいいんだよっ! 僕はどんなフェイトでも愛する自信があるわっ!!」



だからほら、鬼退治の時だって・・・・・・だし。昨日だって・・・・・・だし。

あー、でも昨日は凄かったなぁ。フェイト、恥じらいながらも凄く積極的で朝まで頑張っちゃったし。



「むー! エコひいきっ! というか、ヴィヴィオはDVDでは修正されてるから大丈夫だよっ!!」

「バカっ! 一般視聴者にとっては、テレビが本番なんだよっ!!
テレビであそこまで崩れてちゃ完全にダメダメでしょうがっ!!」

「色々事情があったんだよっ! アニメ作るのって大変なんだよっ!?」

「そこは分かるけど一般視聴者にそんな事情関係あるかっ! 一体どこのガンド(キンキンキンッ!!)だよっ!!
てーかお願いだからそういう事情を視聴者側に持ち込まないで欲しいのよっ! 最低レベルでいいからそれはやめて欲しいのよっ!!」



なお、StSの作画崩れがどれだけのものかは、各自で調べて見てください。

僕がここまで言いたくなる気持ちが、少しは理解してもらえると思う。



「ガンダム00とか見てみなっ!? 監督さんがスケジュール管理しっかりしてるおかげで、作画綺麗で絵もバシバシ動いてバンクほとんど無しだしっ!!」



ちなみにガンダム00の脚本家さんは、筆が速いので相当有名らしい。

その関係もあって、作画以外の作業を徹底的に効率化させてその分時間を稼いで作画組み立ててたとか。



「そしてBONESを見なっ!? このアクションの素晴らしさをっ!!」



僕は言いながら、放送中なハガレンを指差す。あぁ、素晴らしい。

一期でやった話は全部スピーディー展開だったけど、1クール超えた辺りからワクワク沢山だからなぁ。



「BONES作品こそ至高であり究極なんだよっ! BONESは最高なんだよっ!!
アクションで見せ、作画の安定さで見せ・・・・・・素敵過ぎるじゃないのさっ!!」





例えばカウボーイビバップの劇場版、例えば知る人ぞ知るストレンジア。

例えばDTBにソウルイーターにハガレン、BONES作品はとにかくアクションが凄い。

ソウルイーターの1話目のマカの両手鎌でのアクションなんて、神だよ神。



ちなみにちょっと前にそれをフェイトに見せて『これやって』と期待に充ち溢れた視線を送った事がある。



そうしたらフェイトはなぜかすっごい困った顔をしていた。あれはどうしてなんだろうか。





「そんな事ないよっ! 至高であり究極はプロダクションIGじゃないかなっ!!
攻殻機動隊とか好きだしっ! 特にバトーさんのボクシングシーンッ!!」

「・・・・・・確かに攻殻機動隊はいいね。そこも良かった。
派手さはないけど、肉と肉とのぶつかり合い特有の重さが感じられたもの」



ヴィヴィオ、中々にいいとこつくなぁ。プロダクションIGもクオリティ高い制作会社だからなぁ。

というか、やっぱりアクションシーンの描写がかっこいいアニメを挙げる辺りで僕達の趣味を分かってもらえると思う。



「あとはRDだよね。電脳調査室ー。ヴィヴィオ、アレ好きなんだー」

≪ヴィヴィオさん、あなた何気にアニメ見まくってますよね≫

「うん。だって魔法とか武術の訓練で、参考に出来るところがいっぱいあるもん。他には」

「・・・・・・あの、そこの二人っ!? 何昼間からそういう危ない話題について語ってるのかなっ!!」



そんな事を言うのは、今日は珍しくお休みななのは。

なお、なのははフェイトとリインと三人でご飯作ってる最中です。



「いや、僕達は魔王が魔王になってしまった要因について考えてたんだよ。そう考えるとやっぱり」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! それ以上言っちゃだめだからっ!!
もうお願いだからその話はやめてっ!? 記念小説なのに爆弾になってるからっ!!」

≪でも高町教導官、こういうのは大事だと≫

「うん、分かるよっ!? 分かるけどもうやめてっ! 絶対危険過ぎる話だからやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










こうして、魔王の叫びが響いたところで本日のお話は終わる。





いやいや、良かった良かった。やっぱ休日はのんびり過ごさないとダメだよねー。




















とまと 300万Hit達成記念小説


『Episode Destiny/新世代MS魔法少女・・・・・・発進します』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「それで恭文、ヴィヴィオモビルスーツになりたいんだ」

「話終わってないしっ!!」





ご飯が出来るまでしばらくかかるので、僕は庭先でヴィヴィオの相手をする事にした。

だってなのはが作画の話はやめろって言うし、フェイトもソウルイーターの話したら涙目になるんだよ?

本当に僕に一体何をどうしろって言うんだろう。みんな注文が多いなぁ。



で、一番注文が多いのはこのお嬢さんだよ。一体どうして何がこうしてこうなったのかを聞きたい。





「てーかヴィヴィオ、人間はモビルスーツにはなれないのよ? はい、納得したね」

「うー、なれるよー! コレ見てコレっ!!」



言いながらヴィヴィオが展開した空間モニターの中に映るのは・・・・・・あぁ、なるほど。こういう事か。



「えっとね、みっちぃさんって人があげてる動画なんだ」



ちなみに、映ってるのはニコ動。それで画面の中で造られていくのは、モビルスーツな装甲を身につけた美少女フィギュア。

可動式のアニメキャラのフィギュアに、ガンプラを組み合わせる形で改造してるのよ。それをヴィヴィオは楽しそうに見てる。



≪なるほど、コレを見てエンジンかかったと≫

「うん♪」

「まぁそういう話なら納得かな。確かにこっち方向は、昔からあるし」





僕は両腕を組みながら、改めて納得。・・・・・・それでモビルスーツになりたいと言ったわけですか。

まぁご存知ない方も居るかも知れないけど、こういうのは昔からあるジャンルなのよ。

あがってる動画やヴィヴィオの要望はまた違うけど、モビルスーツの美少女化を試みた人は沢山居る。



頭部をヘルメットのように纏い、装甲はさながら戦闘的なドレスのよう。なおかつボディーラインはしっかりと出てる。

無機物と有機物の融合。そこに美少女という要因が加わる事で、最高の素材が出来上がるわけですよ。

例えば武装神姫とかも、そういうメカと美少女の融合というジャンルから発展したものとも言えなくはないわけですよ。



あとはたまにアニメとかに出る、機械パーツが剥き出しなアンドロイドとか? それもこっち系統に入る。





「これでヴィヴィオ、素敵なレディになってIKIOKUREな未来を回避するんだ。ほら、きっと続編でも百合路線だろうし」



・・・・・・ごめん、ちょっと涙出てきた。そうか、そうだよね。それなら頑張らなきゃいけないよね。

ヴィヴィオ、僕は理解したよ。これはヴィヴィオにとって花嫁修業なんだね、分かります。



「でもヴィヴィオ、デバイスはなのはの許可がないと使えないでしょ」

≪高町教導官、ケチですからね。自分の事棚に上げてヴィヴィオさんにデバイス持たせようとしませんし≫





なのはは自分は9歳からレイハ姐さん持っていた。その上ただでカートリッジシステムなんて搭載した。

そのくせに、ヴィヴィオには初等科で基礎を終えるまでデバイスは必要ないとのたまわっているのだ。

だからヒロさん達が趣味半分で作ったSEI-Oベルトも、なのはの許可がないと起動すら出来ないわけ。



なんというか、心の狭いママだよ。自分だけ特別扱いされなくちゃ気が済まないんじゃないかと思ってしまう。





「うん、だから恭文なんだ。まぁデバイスはヴィヴィオも諦めてるの。ママの言う事も一理あるし。
だから、なんちゃってでもいいからヴィヴィオもモビルスーツ少女になりたいなーって。だから」



ヴィヴィオは言いながら、両手をパンと合わせてニコニコ笑い出した。・・・・・・なるほど、そういう事か。



「僕にブレイクハウトでなんちゃって装甲を作れと。で、それをヴィヴィオが装着と」

「正解〜♪ それならママ達もうるさく言わないと思うんだ。
本物は、SEI-Oベルトが本格始動したらパワーアップ形態にすればいいし」

「そんなんするつもりなんかい。・・・・・・まぁ、いいけどさ。で、ヴィヴィオ、何になりたいの?」





何気に僕もこういうのは大好きなので、協力する事にした。まぁお昼までの暇潰しにはなるでしょ。

材料は・・・・・・物置に置いてある暗器やダガーの自主制作用の大量のくず鉄を使えばいい。

ヴィヴィオ一人の装甲にするくらいの量は、十二分にある。まぁこれも修行という事で。



それでヴィヴィオは、僕の方をワクワクした顔で見ながら画面を操作し始めた。





「えっとね・・・・・・コレっ!!」



ヴィヴィオが出したのは・・・・・・僕は何も言わずに、ヴィヴィオの肩を叩いた。



「ヴィヴィオ、主役乗っ取られちゃうよ?」

「・・・・・・恭文、言いたい事は分かるけどヴィヴィオは大丈夫だよ」

「うん、彼も最初はそう思ってた。見てる僕達も最初はそう思っていた。
でもね、実際は違ったんだよ。あの最終回を見た時僕はビビったさ」



やばい、止めたい。これは悲劇しか連想出来ない。言った事すぐ撤回するのもアレだけど、真面目に止めたい。

だって・・・・・・物が物だよ? ヴィヴィオが二の舞になりそうで僕は非常に怖い。



「というか、ママに主役はもう無理だと思うな。ほら、主役はやっぱり何かしらの成長要素が必要だもの」

「そうだね、それが一般的な主役だ」

「でしょ? というか、ママはこれ以上どこが成長するのかな。お胸とかかな」





そんな事を言うヴィヴィオは、きっと知らない。主人公は成長しなくても出来るものだと。

完成された大人の主人公が、難事件をズバッと解決ってのもアリだという事を。

成長要素はワトソン的な立ち位置の人を置けば問題無いという事を、きっと知らない。



だから胸の成長なんて事で話を濁せると・・・・・・まぁまだ7歳とかそこらだしなぁ。しゃあないか。





≪ヴィヴィオさん、甘いですね。あの人は強欲そのものですから、平然と取りに行きますよ。つまり≫



アルトがそこまで言うと、僕達の目の前に空間モニターが展開。そこに映るのは、一人の男性。



欲しいっ! 金も、女も、力もっ!! この世にある、ありとあらゆるもの全てが欲しいっ!!



そんな事をのたまうのは、アーチャーからヴァイスさん似の声にクラスチェンジしたハガレンのグリード。

それを見て僕とヴィヴィオは、アルトの言いたい事が分かった。なので。



「「せぇの」」



声を揃えて、次にこう言うわけである。



「「欲しいっ! シリーズ作品全ての主役の座も、フェイトちゃんとの百合相手の座も、凄まじい火力もっ!! この世にある、ありとあらゆるもの全てが欲しいっ!!」」



一字一句間違えずに言い切った僕達は、何も言わずにハイタッチ。・・・・・・なのは、やっぱおのれはダメだ。



「確かに現にあのバカ、StSでもスバルから主役ぶんどってるしなぁ。ハート泥棒ならぬ主役泥棒だよ」

「恭文、ヴィヴィオ主役出来るかなぁ。次回作があったら、ヴィヴィオは主役で居られるのかなぁ」

「最終回まで安心は出来ないね。最終回のスタッフロールで突然入れ替わる可能性だってあるから」



それで話を戻すけど、ヴィヴィオがなりたいと言ったのは・・・・・・悲劇の主役が乗っていたガンダムだった。

それは『機動戦士ガンダムSEED Destiny』の後半で出てきた、デスティニーガンダム。



「というかアレだ、あの貧相な胸が成長したとかそういう話をすればいいとか思ってるって。
ヴィヴィオ、これをやるならそれなりに覚悟しておかないと。まず主役は確実に乗っ取られる」

「それで(うったわれるーものー♪)?」

「そうそう。あとは」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それは先日の事。本局の訓練場で、唐突にヤスフミにあるアニメの1シーンを見せられた。

あの、アニメの作画とか動きとかに余り詳しくない私にも凄いアクションだと言うのは分かった。

ただその・・・・・・それを『やって♪』と期待に充ち溢れた目で言われてしまった。





それで現在、ティアナとの合同訓練だとかそういうのすっ飛ばして、ヤスフミとちょっとお話です。










「・・・・・・え、フェイト出来ないの?」

「う、うん。というかほら、私達は魔法による機動もあるし、大丈夫じゃないかな」

「・・・・・・・・・・・・出来ないの?」

「えっと、防御魔法は苦手だけどそれでも私はなんとかなってる・・・・・・はず。
というか、アレだよ。その前に砲撃や射撃を撃った方がいいと思うし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・出来ないの?」





それは先日の事。本局の訓練場で、唐突にヤスフミにあるアニメの1シーンを見せられた。

・・・・・・あ、これはさっき言ったね。つまりあの、その・・・・・・うぅ、辛い。

ヤスフミが子どもみたいにキラキラした目をして私を見ているから、余計に辛いよ。



こういう時は・・・・・・あ、そうだ。あの手があったよ。うん、これでいこう。





「でもヤスフミ、アニメはアニメだし現実とは違うよ? これは魅せるための動きもあるし、実戦では」

「そんな事ないよ。僕覚えて役立ててるけど。飛天御剣流とか」

「・・・・・・そうでした」





ダメだ。目の前に居る男の子の手札の大半、アニメとか特撮関係からヒントを得て覚えたものばかりだった。

それで実際役に立ってるんだよね。例のオーギュスト・クロエも、龍鳴閃っていう技で仕留めたそうだし。

ど、どうすればいいのっ!? というかあの、私の言ってる事って相当ダメなのかなっ! これ出来なきゃアウトなのかなっ!!



う、うぅ・・・・・・ヤスフミの視線が突き刺さる。ねぇ、ティアナ・・・・・・視線逸らされたっ!?

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! シャーリーと一緒にさり気無く部屋から出ようとしてるっ!!

お願い、逃げないでー! 私をこのまま一人にしないでー!!





「よし、だったらフェイトも出来るようになろう」

「え?」

「そうすれば大丈夫。ほら、ここの鎌を目の前で投げて『ギュルギュルギュルー』ってところとかかっこいいよ?」

「あの、ちょっと待ってっ! さすがにそれはその・・・・・・え、本当にやるのっ!?」










・・・・・・その後、本当に練習した。それでも私は全く出来ませんでした。

でも、ヤスフミはあっという間に修得しました。楽しげに鎌を目の前で投げて『ギュルギュルギュルー』ってところを再現しました。

私よりも自由自在にハーケンフォームのバルディッシュを操っている姿を見て、泣いてしまいました。





フェイト・T・ハラオウン、今年21歳ですけど・・・・・・もうちょっとアニメ見て色々勉強していこうと決めました。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのは、私やっぱりダメだったのかな。なんだか最近自信が無くなる事ばかりなんだ。
仕事の事もそうだけど、魔導師としてもだよ。私、アレから何回もやったけどちょっとダメで」





庭先で楽しくやっている二人はそれとして、私はフェイトちゃんとリインの三人でお昼作り。

昨日は三食ともに恭文君に任せちゃったから、今日は私達三人がやろうって話になったんだ。だからコレ。

で、フェイトちゃんが作画の話でヘコんでいたので事情を聞いたら・・・・・・まさかそんな事してたとは。



というか恭文君のあのコピー能力はおかしい。明らかにチートレベルだよね?



というか、もう2000の技を持つ男とか余裕なんじゃ。





「そ、そんな事ないんじゃないかな。ほら、恭文君はちょっと特殊だし・・・・・・ね、リイン」

「そうですか? 恭文さんは比較的一般的だと思うですけど」

「そんな事ないよねっ!? どこの世界にアニメや特撮見て実戦レベルな見取り稽古出来る子が居るのかなっ!!
絶対恭文君だけなんだからっ! 出来ないのはフェイトちゃんだけじゃないからっ!! あんなの私にも無理だよっ!?」



あぁっ! リインに聞いたのが失敗だったっ!! リイン、完全に恭文君に毒されてるもんねっ!?

というかリイン、どうしてなのはをそんな慰めるような優しい目で見出すのかなっ! なんか突き刺さるんだけどっ!!



「なのはさん、リインはなのはさんの運動能力には元から期待してないから大丈夫ですよ?」

「その視線はそのためっ!? うぅ、リインがなのはの心を傷つけるような事言うよー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というわけで、暗い話はここまでにしてデスティニー・ヴィヴィオを作ろうと思いまーすっ!!」

「思いまーすっ!! ・・・・・・でね、デザイン考えたんだー」

「あ、行動早いね。どれどれ・・・・・・ふむふむ、これならまぁ出来るかな。
ただヴィヴィオの体型的にSDチックにはなっちゃうけど」

「そこは大丈夫だよ。ヴィヴィオはSDも嫌いじゃないから」



というわけで、早速庭先にくず鉄を持ってきて生成開始です。既にくず鉄達は僕の目の前。

ヴィヴィオの体型は既にメジャーで測ったので、それに合わせて作っていく。



「真っ白なー景色に今ー誘われてー♪ 僕は行くよーまだ見ぬ世界へー♪」

「恭文、やっぱりハガレンなんだ」

「もちろん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・アルト、そんなわけでなんちゃってだけどパーツは出来上がったね」

≪出来上がりましたね≫

「で、それをヴィヴィオに装着したわけだよ」

≪しましたね≫



いわゆるサフ吹き後な灰色状態だけど、通電前と考えればまぁいい。

問題は・・・・・・そんなパーツ達を装着したヴィヴィオの今の格好だよ。



「ヴィヴィオ、やっぱあと10年は必要だと思うな」

「エッチー! 今のヴィヴィオを見ていやらしい事考えないでよっ!!」

「なんでいきなりそうなるっ!? 絶対考えないから安心してくれないかなっ!!」



現在のヴィヴィオの格好は、確かにデスティニー・ヴィヴィオだ。うん、確かにデスティニー・ヴィヴィオだよ。

黒のトレーナーを着た上から、デスティニーの装甲をピンポイント的に装着しまくってるから。ただ、問題が一つ。



「ヴィヴィオ、そろそろ空を見てないで立ち上がらない?」

「出来たらやってるよー。というか羽・・・・・・羽が重いー」



ヴィヴィオ、立ち上がれません。背中の羽が重くて、どうしても後ろに倒れてしまう。

なお、中は空洞状態でそれなりに軽め。サイズもヴィヴィオに合わせた。それでもダメなのよ。



≪ヴィヴィオさん、やっぱり子どもだからこれは無理ですよ。大体、他のパーツだって重いでしょ≫

「実を言うと・・・・・・その、かなり。うー、悔しいー」



足をじたばたさせながら、ヴィヴィオはもがく。そのまま世の中の厳しさも学んで欲しいと思った。

僕は軽く溜め息を吐きながら、ヴィヴィオを一旦上半身だけ起こしてた。それからすぐに背中のパーツを外す。



「あ、ありがと。でも恭文、もうちょっと軽くならない?」

「それ以上は無理。強度と形状のバランスがギリギリなんだから。てーか、それだって中は空洞だよ?」



なお、鉄くずは軽くて丈夫なFRPに再構築しています。それが一番手っ取り早かった。



≪やっぱりあなたの体型が問題なんですよ。というか、重さに弱すぎですって≫



ヴィヴィオ、基本的にゴテゴテ感たっぷりな防具関係は苦手っぽいんだよなぁ。

それ装備させて訓練すると、途端にバランス崩すし。うーん、これはちょっと困ったぞ。



「アレだ、もうちょっと成長しないとダメだね」

「うー、嫌だ嫌だー。ヴィヴィオは今やりたいのー」

「・・・・・・だったらバリアジャケット構築するしかないでしょ。それなら重さ関係ないし」

「それが出来るなら、最初から恭文に頼んだりしないよ。でもヴィヴィオ、まだ本当に基礎の基礎だし」

≪「ですよねー」≫





背中だけキャストオフ仕様なデスティニー・ヴィヴィオと、僕は軽く頭を捻ってしまう。

・・・・・・まず今のままでは絶対にどうにもならない。ここだけは確定だよ。

ヴィヴィオの全体的な踏ん張りが足りないから、装備の重さに負けちゃうんだよね。



でも、だからってこれ以上軽く薄くってのは正直無理。それやると、耐久度が減っちゃうもの。

このバカの事だから、絶対二度三度と要求してくるに決まっている。それを考えると使い回しは出来た方がいい。

だからバリアジャケットでそれっぽいのを構築するのが、一番手っ取り早いのよ。



でも、ヴィヴィオの現在の魔法教育は基礎の基礎。デバイスも無しでそこまでの力は発揮出来ない。

僕みたいな自主学習も、あのケチなママが制限つけて出来ないようにしてるんだよね。

まぁヴィヴィオの出自の事もあるし、万が一を考えて自分の目の届かないとこでは魔法使わせたくないんでしょ。



でも、そのためにヴィヴィオの夢が潰れようとしているわけですよ。なんというか、寂しいよねぇ。





「・・・・・・あ、そうだ」



ヴィヴィオは金属音を響かせつつ両手をポンと合わせると、いそいそと灰色のデスティニー・アーマーを脱ぎ始めた。

それでジャージ姿に戻ると、なぜか僕の方を見てにこやかに笑い始めた。



「ヴィヴィオ、どったの?」

「恭文、ヴィヴィオを見てお嫁さんにしたくなっても許してあげるね」

「よし、お前今すぐ黙って僕に土下座をしろ。てーか何を」

「へーんしん♪」



返事しないでいきなり右手あげたっ!? あ、ヴィヴィオの身体が虹色の光に包まれ・・・・・・変身魔法っ!!



≪なるほど、その手がありましたか。というか、覚えてたんですね≫

「だね」





さてさて、変身魔法とは読んで字の如くな魔法。

ヴィヴィオはどうやらそれで体型を変化させるつもりらしい。

それはグッド・・・・・・あれ? なんか姿が変わらない。



普通ならこういうの、蒸着的にコンマ何秒で終わるのに。

なのにずっと光に包まれたままで変化しない。それに僕は思わず首を傾げる。

そして次の瞬間、僕はその原因を直視する事になった。





うぅぅぅぅぅ・・・・・・苦しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!





そのまま光が弾けた。ただし、弾けたのは光だけじゃなかった。なぜか僕の顔に強烈に何かが飛んできた。

僕は咄嗟に顔を左に動かしてそれを回避。でも、それらは庭中に散らばっていく。散らばったものは、黒い布。

生地はジャージ生地の切れ端で、どう見てもさっきまでヴィヴィオが着ていたジャージの切れ端達だった。



それらは窓にも叩きつけられて、ガラスを粉砕した。でも、僕はそんな音を気にしてる場合じゃなかった。




だって目の前に・・・・・・素っ裸なヴィヴィオが居たんだから。なお、僕から見ると全部丸見え。





「・・・・・・・・・・・・アレレ?」





キョトンとする顔のヴィヴィオの瞳は軽く釣り上がって、大人っぽくはなってる。

体型は170前後とフェイトよりも大きく、胸も見る限りではフェイトよりずっと大きくて豊か。

100近くサイズあるんじゃないかと思う乳房は、形を崩す事なくそこにある。



腰も細く、お尻から足のラインも・・・・・・とりあえず、僕は叫ぶ事にした。





一体何やってるのっ!!










ヴィヴィオの目の前に居る僕と、部屋の中に居たフェイトとなのはの叫びが合わさったのはきっと奇跡だ。





だって僕達、それぞれ違う対象に対して声を荒らげていたんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



窓ガラスを『僕が』しっかりと直した後、ヴィヴィオ共々なぜかお説教を食らってしまった。

あんまりに横暴だったので、横馬は軽くシバいて僕が一切悪くないという事を平和的に認めさせた。

なお、フェイトは大丈夫だった。さすがに状況がアレ過ぎて、変な風には誤解しなかった。





そこでなぜかヘコんでいる横馬は放置して、フェイトも加えた上で室内で安全にデスティニー・ヴィヴィオ計画を進める事にした。










「・・・・・・でもヴィヴィオ、変身魔法はもうちょっとうまく使えるようにならないとダメだよ。ママ達、本当にびっくりしたんだから」

「うー、ごめんなさい。というかフェイトママ」

「なにかな」

「ヴィヴィオ的には、恭文に男の責任を取って欲しいなと」



僕は躊躇い無く、僕とフェイトの部屋の床に座っていた大人状態のヴィヴィオの顔面を蹴り飛ばした。

なお、加減はしました。そして着ている服は、フェイトのお下がりです。でも、サイズがキツそうでした。



「痛いー! 恭文いきなり何するのっ!?」

「やかましいわボケっ! あいにく痴女に責任取る義理立てはないんだよっ!!」

「だってー! ヴィヴィオの大人な身体全部見たよねっ!!」



確かに見ました。大きな胸もそうだし、もう色んなところをくっきりと。

でもそれで発情したりしないのは、僕がマトモなためである。グッジョブ、自分。



「ヴィヴィオもうお嫁行けないよー! もう恭文に将来的にもらってもらうしかないよっ!!」

「あぁそうですかっ! だったらこの事は今すぐ黒歴史にしてしまえっ!!
てーかおのれがIKIOKUREようが、僕には関係ないわボケっ!!」



あー、頭痛い。てゆうか、アレだ。僕はなんでここまでしてヴィヴィオに協力を・・・・・・泣きたいなぁ。

隣に座るフェイトを見ると、フェイトは軽く苦笑い気味だった。



「ヴィヴィオ、それはちょっと困っちゃうな。あの・・・・・・ヤスフミは私の彼氏だから。
というか、ダメだよ。あの、絶対だめ。ヤスフミを独り占めにしていいのは、私とリインだけだし」



それでギューッとヤキモチ焼きながら抱きしめてくれるのが嬉しい。あぁ、やっぱりふかふかで温かいー。



「うーん、残念」

『残念なのっ!?』

≪・・・・・・それで、どうします? ほら、体型の問題は解決したわけですし≫

『あ、そう言えば』



ヴィヴィオの変身が余りにアレだったから忘れそうになってたけど、一応はこれでOKなんだ。

だったら・・・・・・僕は改めてヴィヴィオを見ると、ヴィヴィオはガッツポーズしながら頷いて来た。



「うし、それじゃあ改めてやってみようか。ここからデスティニー・ヴィヴィオ爆誕だよ」

「うんっ!!」

「ヤスフミ、私も手伝うよ。まぁその、ちょっとだけだろうけど」

「うん。ありがと、フェイト」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まずはフェイトに今のヴィヴィオの体型を測ってもらった上で、装甲の再作成。





サイズ的なゆとりが出来たし、これなら構造ももうちょっと余裕を持たせられるから。










「ねーねー恭文ー、別に恭文が測ってもいいよ? ほら、ヴィヴィオは気にしないし」

「よし、お前黙れっ!? そして1年前の純粋無垢だった自分を思い出してっ!!」





そして出来上がった装甲には色つけする。ネットのプラモ作成記事とかを見た上で、色合いを決定。

さすがに塗装に関しては庭先でやった。なお、塗料はフェイトと車出して買いに行きました。

あとは金属用のサーフェイサーもだね。下地作っておかないと、塗料のノリが違って来ちゃうから。



なお、これに関しては一日では終わらなかった。つまり仕事の合間にちょっとずつちょっとずつだよ。





「でもヤスフミ、よくエアブラシなんて見つけられたね」

「ヒロさん達から借りてきた。・・・・・・こらヴィヴィオっ! そんな一気に吹きつけちゃだめだからっ!!」

「えー、やるならもうドーンと行こうよー」

「だから1年前の純粋無垢だったヴィヴィオに戻ってっ!? どうして道を間違っちゃったのっ!!」










お母さんななのはを完全に除け者にした上で・・・・・・いや、しょうがないじゃない?

だってなのは、あのお休みの翌日にどうしても断わり切れない長期出張に出ちゃったんだもの。

それで僕にどうしろって言うのさ。・・・・・・とにもかくにも、その2週間後。





ちょっとずつちょっとずつ作ったデスティニー・ヴィヴィオ変身セットは、見事完成したのでした。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトママ、恭文、アルトアイゼンもありがと。ヴィヴィオ・・・・・・感動かもー♪」




そう言って庭先ではしゃぐのは、見事なデスティニー・ヴィヴィオ。なお、現在は夜の7時。

ヴィヴィオはこの2週間で急ピッチで覚えたバリアジャケット(外見だけVer)を装着した上から、アーマーを着けている。

なおそのジャケットは、黒のタイツスーツに紺色のジャンバーを羽織る形のものだった。



それを見たフェイトが最初震えた声で『SEI-Oモードだ』とか言ってたけど、僕は聞かなかった事にした。

それで足から装甲は始まり、腰の部分にはガンダムお決まりなスカート部分。

これは元々ジャケットにあるスカート部分と相まって、結構不思議なデザインになっていたりする。



盛り上がった大きな胸元はバランスを取りつつも装甲をしっかりと装着。装甲は前面部分だけって感じだね。

肩アーマーはブーメランへの分離機能こそ無いけど、それでもヴィヴィオの身体のバランスにぴったり。

そして両手にはガントレット。なお、手の平には当然パルマフィオキーナの発射口(形だけ)が付いています。



左手にはシールドを装備して、右手にはビームライフル。こっちも頑張って作りました。

そして背中にもジャケットの上から翼・・・・・・ようするにデスティニーのバックパックを装着。

ここは可動式にして、ヴィヴィオの意思で開く事も可能。



いや、機構を仕込むのが大変だった大変だった。

それでそのバックパックには、実はアロンダイトと長射程ビーム砲もある。

折りたたみ式で展開も可能なのよ。もちろん実際に撃つのは無理。



そして最後に、ヴィヴィオの額にはデスティニーのアンテナ。頭部装甲も一部再現した上で装着している。

カラーリングもヴィヴィオの好みに合わせて若干アレンジしてるけど、ほぼ原作準拠。

なんというか・・・・・・ハシャいで笑っているヴィヴィオを見ると、頑張って良かったなぁとか思っちゃうわけだよ。





「じゃあヴィヴィオ、写真撮るねー」

「あ、うん」



言いながらフェイトは、どこからともなくカメラを取り出してパシャパシャ・・・・・・いつの間に準備してたのさ。

というか、無茶苦茶嬉しそうな顔してるんですけど。とってもにこやかなんですけど。親ばかだからですか。



”恭文、ありがとー”

”いや、別に・・・・・・って、なんで念話?”



ほら、お礼だったらさっきみたいに普通に声出して言えばいいのに。遠慮するような関係でもないでしょ。



”うんとね、フェイトママにはちょっと聞かれたくなくて。・・・・・・ヴィヴィオの裸、見たよね”

”うん、見たね”

”ヴィヴィオって、恭文から見て・・・・・・綺麗、だったかな”



笑顔で写真を撮られているヴィヴィオは、その笑顔とは裏腹な程に不安げな声を出した。

・・・・・・それがどうにも理解出来なくて、つい表情を渋いものにしてしまう。



「ヤスフミ、どうしたの?」

「あ、いや・・・・・・デスティニー・フォームはどうしようかとか考えちゃって」

「もう、気が早いよ? それをやるにしても、あと4年とかは必要だよ」



フェイトは苦笑気味にそう言って、また写真を撮り始める。でも僕は・・・・・・やっぱりうまく笑えなかった。



”ヴィヴィオ、いきなりどうしたのよ”

”いいから、答えて? ヴィヴィオ、綺麗だったかな。というか、もっと頑張らないとママ達みたいになれないかな”



なぜそんな事を言うのかは分からないけど、ヴィヴィオは・・・・・・うし。



”綺麗だったよ。でも、身体どうこうじゃないかな”

”え?”

”ヴィヴィオがいっぱい笑って、自分のなりたい形に向かってちょっとずつ頑張っているから綺麗なの。
先生が前に言ってたよ? 心が輝いている人は、何をしても美しいものだってさ”



ヴィヴィオは身体の動きを止めて、僕の方を見た。だから僕は・・・・・・優しく微笑みながら頷く。

フェイトがまた怪訝そうな顔をするけど、ヴィヴィオはそれに気づいてすぐにポーズを取り出す。



”ヴィヴィオが綺麗だったのは、胸が大きいからでも作画が良いからでもない。
ヴィヴィオが自分の心を・・・・・・自分自身を諦めないから、綺麗なんだよ”

”・・・・・・自分を”

”そうだよ。頑張るって、そういう事じゃないのかな。他の誰かにみたいになるから、頑張るんじゃないの。
物事よりも自分を諦めないで、手を伸ばす事なんだよ。・・・・・・ヴィヴィオは、ヴィヴィオだから”



そこまで言うと、ヴィヴィオは僕の方を見て・・・・・・目一杯の笑顔を向けてきた。



”恭文はそうなの?”

”僕はそうだよ? いつだって・・・・・・自分を諦めたくなんてないの”

”そっか。恭文・・・・・・ありがと。ヴィヴィオ、なんか分かった”

”うん”










正直、ヴィヴィオが何を考えていたのかとかはよく分からない。そこは本当。

ただヴィヴィオ的にはもう大丈夫そうなので、僕は何も言わなかった。僕は、静かに空を見上げる。

空に輝くのは二つの月と輝く星達。ここは住宅街だから、都心と比べると星は相当綺麗に見える。





・・・・・・ちょっと後で、フェイトと武術の訓練しようかな。なんか、僕も自分をもっと諦めたくなくなった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・8月×日。今日、ヴィヴィオはデスティニー・ヴィヴィオに超進化しました。

恭文とフェイトママと一緒に作ったデスティニー・アーマーは、当然大事に保管。

将来的にデスティニー・フォームを作る時の土台にしようと、今から画策中です。





それと・・・・・・今日、ヴィヴィオは恭文にフラグを立てられました。えへへー♪

だって嬉しかったんだもん。ヴィヴィオはヴィヴィオだーって言ってもらえて。ヴィヴィオの心、綺麗だって言ってもらえて。

・・・・・・なんかね、ちょっと考えちゃったんだ。ヴィヴィオ、生まれが特殊だからどうしてもね。





フェイトママみたいに素敵な彼氏出来るのかなーとか、そういうのを沢山・・・・・・沢山。

あとはママ達みたいに強くなれるのかなとかもあるけど、一番はここかな。

でも・・・・・・焦らなくていいのかも。あんまり考えなくてもいいのかも。だって、ヴィヴィオはヴィヴィオだもん。





ヴィヴィオが頑張るのは、ママ達みたいになるためじゃない。

ゆりかごの中でママと約束したからとも考えてたけど、きっと・・・・・・それはキッカケ。

キッカケは続ける理由にはならない。続けるには、別の理由が必要なんだと思う。





きっと根っこにあるのは、ヴィヴィオが自分を諦めたくないという想いなんだ。

そうだね、諦めたくない。例えば色んな訓練してみて、ちょっとずつ出来る事がとっても嬉しい。

その嬉しさの意味がよく分からなかったんだけど、今日恭文と話してみて分かった。





諦めないで出来ない事を出来る事に変えて・・・・・・そんなヴィヴィオになれた事が嬉しかったんだ。

そうだよね、きっとこれでいいんだ。ヴィヴィオは、ヴィヴィオを諦めたくなんてない。

素敵な彼氏が欲しいなら、諦めないで手を伸ばしてゲットしちゃえばいい。強くなりたいなら、訓練すればいい。





ヴィヴィオはヴィヴィオのままで、ただヴィヴィオを諦めないで・・・・・・手を伸ばせばいいんだ。





でも恭文・・・・・・うーん、フェイトママとリインさんがラブラブな理由がよく分かるなぁ。普段はヘタレなのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はっくしゅんっ!!」

「ヤスフミ、大丈夫? あの、すぐ戻ろうか」

「ううん、大丈夫。風邪とかじゃないだろうし」

「ダメだよ、油断大敵。・・・・・・ねぇ、ヤスフミ」



近くの公共の魔法訓練場で、フェイトとさっきまで組み手していた。

今は休憩中で、ベンチに腰かけてスポーツドリンクを飲んでいるところ。



「ヴィヴィオと何話してたの?」

「・・・・・・気づいてたの?」

「うん。私はヤスフミの事知りたいなーって思ってるから」



白のTシャツにスポーツパンツ姿のフェイトは、そう言いながら誇らしげに笑う。

それがどう関係あるかは今ひとつ不明だけど・・・・・・別にいいのかな。



「うーん、僕にもよく分からないの」



フェイトは首を傾げてるけど、それは本当なのよ。いや、マジでちょっと分からない。



「まぁアレだよ、自分を諦めない事は大切って話かな」

「諦めない・・・・・・か」

「うん」



フェイトは少し背を反らして、身体ごと夜の星空を見上げる。僕も同じように空を見上げた。



「それは私には耳の痛い言葉だなぁ。私はきっと、諦めてたから。
諦めて、ずーっと諦めて・・・・・・ここまで来ちゃった」

「そうだね」



僕は否定しなかった。ううん、出来るわけがない。きっとフェイトが一番分かっている事。

フェイトは確かに諦めた。自分の夢を叶える事を、あの日の誓いを通す事を・・・・・・どこかに置いてきた。



「最近はね、別の事も諦めそうになってる」

「局の事?」

「うん。正直、ここまでとは思わなかった。ここまで・・・・・・変わらないとは思わなかった」





世間的には、1年前と比べると一般的にはまぁまぁ変わってる部分も多いのよ。

JS事件はなんだかんだで、局内に巣食う悪癖や悪漢を清掃する機会にもなったからさ。

そこの辺りはヴェロッサさんが所属する査察課の方々が、相当頑張ったおかげ。



というか、頑張っていると言った方が正解かも。事件は、やっぱりまだ終わってないんだよ。

それで話を戻すけど、僕達はさっき言った一般的な形で事件には関わっていないの。

もっと深く・・・・・・人を道具扱いする事を当然とする局の根源から、事件に関わってしまった。



だからフェイトの言う『変わってない』は、多分とても重い。だから、とても悲しげなんだ。





「解決直後は組織全体はともかくとして、人の意識は変わると思ってた。
そこから組織は少しずつ変わっていくものと思ってた。でも、そうじゃなかった」

「フェイトから見て、変わってないように見えるの?」

「見えるよ。だってヤスフミ」



フェイトは僕に視線を向けて、悲しげに・・・・・・本当に悲しげに笑う。



「私、本局に戻ってから六課に来る前と『変わりなく』働いてしまっているの。
でも、それがおかしく感じるんだ。自分の中でどんどん違和感が強くなるの」



僕は右手を伸ばして、そんなフェイトの左頬を優しく・・・・・・優しく撫でた。



「このままでいいのかなって、沢山考えるんだ。本当にこのままでいいのかなって。
もう一度自分の夢を追いかけようと決めて、局員を続けようと決めて・・・・・・でも、いいのかなって」



だけど僕は、それじゃあ我慢出来なかった。フェイトをそのまま抱き寄せて、受け止める。



「・・・・・・なら、考えるしかないよ。もうフェイトは諦めたくないんでしょ?」

「うん、諦めたくない。絶対に・・・・・・諦めたくない」



フェイトは両腕を伸ばして、僕にしがみつくように抱きつく。

いつもみたいにフェイトが僕を受け止めるんじゃなくて、僕が胸元でフェイトを受け止める感じ。



「僕だって同じだよ。自分の一番を・・・・・・フェイトを諦めたくない。だったら考えて今の自分と向き合って、手を伸ばすしかないんだよ。
僕達は神様でもなければ、万能無敵な主人公キャラじゃない。きっと諦めない事しか出来ない、無茶苦茶弱いキャラだから」



そのままフェイトの頭を優しく撫でる。撫でて・・・・・・涙ぐみ始めたフェイトの全部を受け止める。



「だから、考えようよ。一緒に・・・・・・なんにも諦めない僕達を続けるために」

「・・・・・・うん。あとね、ヤスフミ」

「何?」

「私も、私の一番を・・・・・・ヤスフミを諦めないから。その、今の言葉嬉しかったから・・・・・・お返し」

「ありがと」





・・・・・・・・・・・・世界はちょっとずつ変わり始めているけど、変わらない事もある。

変わる事は、変わらない事は、良い事もあるし悪い事もある。

例えばヴィヴィオの変化は・・・・・・きっと良い事だね。うん、そこは強く思う。



でも、局が変わらない事は間違いなく悪い事だ。そのために諦めを余儀なくされる人が出てくる。

夢を、居場所を、願いを諦めて・・・・・・今のフェイトのように、2年前のGPOのみんなのように、それが悲しくて泣いてしまう人も居る。

レジアス中将、ゼストさん、今二人から見て世界は・・・・・・二人が正義を貫けると信じた組織は、どう映ってますか?



結局信じ切れずに中に入る事をしない僕に言う権利なんてないけど、このままで本当にいいと思いますか?

どうすれば・・・・・・フェイト達みたいに泣く人が減ると思いますか? 僕には、正直分かりません。

さっきも言ったけど世界や組織の前に・・・・・・自分を諦めたくないと勝手通してる僕には言う権利なんてない。



そんな事は分かっている。僕は世界より、目の前に居る女の子の一番の味方を通そうと覚悟決めた。

だけど、どうしても思うんです。今の泣いているフェイトを見てると、考えちゃうんです。

フェイト達の頑張りは、戦いは、二人の積み重ねは・・・・・・もしかして無駄だったんじゃないかって、かなり。





「そうだ。フェイト、来月お墓参り付き合ってくれないかな」

「え?」

「レジアス中将とゼストさんのお墓、行きたいんだ。来月命日だから。
それで・・・・・・ちょっと相談してみよ? 僕も、二人と話したい」

「・・・・・・うん」










事件の爪痕は、関わった人達に刻まれた色々な記憶は、未だに消えないし薄れない。





だけど、僕達はそれでも・・・・・・輝く星空の下、迷いながらも自分を諦めない事を選択していく事にした。




















(Episode Destiny・・・・・・おしまい)




















あとがき



恭文「えー、というわけでニコ動で活躍中のみっちぃ様からデスティニー・ヴィヴィオの使用許可を(読者が)頂いた事で実現したこのお話。
まずみっちぃ様、許可をくださって本当にありがとうございました。それですみません、もうマジすみません。ご迷惑をおかけして」

ヴィヴィオ「それでそれで、お待たせしちゃってすみませんでしたー。
せっかくなので記念小説で出そうと思って、アイディア温めてたんです」





(みっちぃ様、本当にありがとうございました。もうありがとうございました。お心広くて感謝しか出来ません)





恭文「というわけで、六課解散後のフェイトや僕の様子も描きつつやった記念小説ですよ。
みなさん、いかがでしたでしょうか。本日のお相手は蒼凪恭文と」

ヴィヴィオ「蒼凪ヴィヴィオです。なお、娘ではなく嫁です」

恭文「そうそう、ヴィヴィオは僕の嫁・・・・・・なワケがあるかボケっ! ヴィヴィオは覇王の嫁じゃないのっ!?」

ヴィヴィオ「そんなの嫌だよっ! ヴィヴィオは百合路線とか興味ないもんっ!!」





(とまとのヴィヴィオは、百合の気はちっともありません。むしろ恋愛描写カモンな子です)





ヴィヴィオ「恭文、大丈夫だよ。ヴィヴィオは『禁断の父娘プレイ』は許容範囲内だし」

恭文「よし、誰からそういう属性を教わったっ!? メガーヌさんかっ! それともあの狸かっ!!
なのは、親としてこれは即刻調査した方がいいっ! 特に狸を重点的にっ!!」





(『言われるまでもないよ。はやてちゃん、頭冷やそうか』)





ヴィヴィオ「でも恭文、ヴィヴィオの婿になれるのはもう恭文しか居ないよ。
ほら、ティアナさんのついででいいからさ。頑張ってみようよ」

恭文「だからあの自分安売りしまくりなバカを見習うなっ!?
・・・・・・てーかヴィヴィオ、リリカルなのは勢だけならともかく、他にもいい人居るでしょ」

ヴィヴィオ「あ、そっか。しゅごキャラ勢とか居るもんね。なら・・・・・・なぎひこさん?」

恭文「まぁ、僕は止めない。その結果どうなろうと僕は一切止めない。
というか唯世はどうなの? ほら、唯世とか好みーとか言ってたし」





(なぜか次期主人公のカップリング決定話になってきました)





ヴィヴィオ「あ、それもあるか。でもあむさんの牙城を崩せるかなぁ。原作でもあんな感じだし」

恭文「確かにあんな感じだったよね。なら後は空海? ほら、原作と違ってフリーだし」

ヴィヴィオ「えー、でも空海さんは御坂美琴さんが居るよね。というか、浮気者過ぎて不安だよ」

恭文「あー、それはあるなぁ。空海は誰でもいいみたいなとこあるし」





(『そんなのねぇよなっ! お前らなに好き勝手な事言ってんだっ!!』)





恭文「ちなみにリリカルなのは勢でのカップリングは・・・・・・二次創作だと色々あるね。
ザフィーラさんとか、グリフィスさんとか、なのはやフェイトとのカップリングもあった」

ヴィヴィオ「全部犯罪だよね?」

恭文「年齢的に仕方ないよ。あとは一番多いのはユーノ先生? ほら、書庫繋がりで絡めやすいから」

ヴィヴィオ「ヴィヴィオがユーノ君の事が好きで、将来的にーって感じだよね。
もしくは大人モードになれるのを活かして、もう犯罪覚悟で」

恭文「よし、それはどこで見たっ!? というか、誰に見せてもらったっ!!
狸かっ! やっぱあの狸かっ!! うん、分かってたわっ!!」





(『ティバイン・・・・・・バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!』)





ヴィヴィオ「あ、カップリングで思い出したけど恭文、本当に本編でアインハルトさんを愛人にするの?」

恭文「するわけないでしょうがっ! それでやらかしたらマジでダメだと思うんだよっ!!
・・・・・・いや、かなり真面目にだって。アレはダメ、アレは本編出たら絶対性格変わるはず」





(『いえ、変わりません。私は・・・・・・いつでもあなたのお側に』)





恭文「というわけで、聴こえて来た声は無視して本日はここまで。
みっちぃ様、本当に許可をくださってありがとうございました。そしてごめんなさい」

ヴィヴィオ「恭文、そこ謝るの?」

恭文「いや、まぁね? あとみんな、みっちぃ様の動画を見に行こう。ホント凄いから。
作者は自分のせいでコメント欄荒れてるんじゃないかって、ビクビクして見に行けないけどね」

ヴィヴィオ「作者さん、ヘタレだねー」

恭文「しょうがないよ。作者のやってる事は基本的に他の人との連携を考慮してないから。
てーかしてたら冒頭で作画の話なんてしてないし。それでは、本日はここまで、お相手は蒼凪恭文と」

ヴィヴィオ「高町ヴィヴィオでした。それじゃあみんな、また本編でねー♪」










(みっちぃ様、本当にありがとうございました。許可を下さってとても嬉しかったです。
本日のED:TM Revolution『ignited』)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・レジアス中将、騎士ゼスト、初めまして。フェイト・T・ハラオウンです。
なんだかおかしいですよね。事件中ではなく、こういう形で会うのが初めてだなんて」

「リインはお久しぶりですけどね。二人共、元気してたですか? リインはとっても元気です」





フェイトとリインはそのままお墓の前で、話を続ける。僕はもう挨拶を済ませたので、後ろに控えていた。



それでレジアス中将とゼストさんのお墓、せっかくだから隣同士にしてもらったんだ。



ここの辺りはシグナムさんやレジアス中将を慕っていた人達の尽力のおかげだよ。





≪・・・・・・アレから1年ですか≫

「だね。本当に・・・・・・本当にあっという間だ」



僕は1年前の事を思い出して・・・・・・瞳を閉じる。



「ねぇ、アルト」

≪なんですか?≫

「アレから色々考えたけど、やっぱ僕は・・・・・・フェイトの、大好きで大切な人の一番の味方になりたい」





まぁね、別にリンディさんに言われたからじゃなくて・・・・・・改めて考えたんだ。

局員になる事は、組織を変える事は、本当に僕の守りたいものを守る結果にならないのかなってさ。

でも結論は一つしか出なかった。それを考えると、どうしても困った顔になってしまう。



僕はやっぱりフェイトを、六課のみんなを、クロノさんやカリムさんに・・・・・・リンディさんを裏切った局が許せない。



そんなやり口を当然としている組織になんて、何も預けたくない。それが僕の答えだった。





「世界を救えたって、組織を変えられたって、それが出来なきゃ意味がないんだ。
だから、このまま突っ走る。僕は・・・・・・自分の怒りも諦めないで持っていく」

≪・・・・・・いいんじゃないんですか? あなたはバカなんですし、割り切るとか向いてませんよ。
なにより局員になったからフェイトさんが守れるなんて、話おかしいでしょ。短絡的です≫

「確かにね。何かを守るって、きっとそんな簡単な事じゃないよ」



そう痛感した1年前の日を思い出しながら、僕は空を見る。



「アルト、空綺麗だね」



空はとても静かで、そして1年前のあの日と同じように・・・・・・悲しいくらいに綺麗だった。



≪えぇ。本当に良く晴れていて・・・・・・何色に見えますか?≫

「そんなの決まってる」



僕はアルトの言葉に軽く笑いを返しながら、自信を持って言い切った。



「この空は、蒼色。僕の・・・・・・僕だけの色だ」










(おしまい)






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