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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース07 『ギンガ・ナカジマとの場合 その7』(加筆修正版)



恭文「前回のあらすじ、カナダで美味しくポトフを食べました。以上」

ギンガ「もっと紹介するべきところあるよねっ!? なんでそこをチョイスするかなっ!!
・・・・・・でも、私ルートもついに最終回・・・・・・だよね?」

恭文「大丈夫、これ以上は引き伸ばしようがないから」

ギンガ「なぎ君、正直に言ってっ!? 私とのIFルート気が進まなかったのかなっ!!
だからそういうふうにちょっと投げやりなのかなっ! ねぇ、そうなのかなっ!!」

恭文「そんな事ないよ。ただギンガさんの横槍のために色々あったなーって思っただけで」

ギンガ「うぅ、なぎ君がひどいよっ! 確かにその通りだけど、それでもひどいよー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あの、ごめんね。リイン曹長と二人で大事な用事の途中に」

「ううん、もう終わってたから。あのさ、ギンガさん・・・・・・はやてから、どこまで聞いてる?」

「そんなに詳しくは。ただ、クリスマスには必ずここに来てお話をしてるという事だけ」



前回のあらすじ。リインとクリスマスに秘密のデートしてたら、ギンガさんが乱入してきてコレです。

しかしやっぱり見抜かれてたんだ。いや、さっきも言ったけど見抜かれて当然なんだけどさ。



「・・・・・・ここね、リインのお姉さんが空に還った場所なんだ」

「リイン曹長の・・・・・・お姉さん?」

「うん。それでね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、毎年ここには来てるのよ。それだけは、外せなくてさ。
おかしいよね、もしかしたら本当に夢なのかも知れないのに」

「ううん、そんな事ない。おかしくなんて・・・・・・ないよ。
きっと、本当にお姉さんに会えたんじゃないかな。私はそう思った」



ギンガさんが僕の顔をまっすぐに見て・・・・・・そう言ってくれた。それがなんか嬉しかったり。



「ありがと」



だから改めて、お礼を言った。ギンガさんは微笑みながら首を横に振るけど、それでも感謝はしてたりする。



「ううん」

「・・・・・・あ、ごめん。僕自分の話ばっかりだった」

「大丈夫だよ? というか、カナダの話とかも聞いてみたいな。少しだけ、いい?」

「うん」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先の事


ケース07 『ギンガ・ナカジマとの場合 その7』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・と思ったけど、やっぱやめない?」

「なぎ君、タイトルコール早々何言い出すのっ!?」

「いや、だって」



僕は上を見てみる。世界を白く染め上げる雪は・・・・・・まだまだ降り続けていた。



「さすがにここで旅の話してたら、二人揃って風邪引くよ」

「・・・・・・納得しました。というか、結構長くなりそうなの?」

「うん」



視線を落として、改めてギンガさんの方を見る。それでワクワクしちゃう顔になるのは、やっぱり旅が楽しかったおかげ。



「カナダ、とっても良かったんだー。最初の時は猛吹雪で死ぬかと思ったけど」

「そ、そうなんだ。ならそこも含めて聞くために場所」



ギンガさんは言いかけて、目を見開きながら言葉を止めた。それで改めて周囲を見渡す。

それからすぐに何も言わずに、スッと立ち上がった。その左手が、強く握り締められている。



「ギンガさん?」

「ごめん、移動する前にちょっとだけ付き合って。・・・・・・聴いてもらいたいの」





それだけ言うと、ギンガさんは僕の前へと移動する。

自分の身体の前で両腕を掴んで、胸の前へ持っていく。

その時に気づいた。ギンガさん凄く震えてる。呼吸も少し荒い。



それでも構わずギンガさんは・・・・・・震えた声で、言葉を続ける。





「あのね・・・・・・私の歌、聴いて欲しいの」

「歌? え、いきなり何を」

「いいから、お願い。ここなら・・・・・・誰も居ないから。
私となぎ君しか居ない世界だから、うたえそうなの。お願い」



それでギンガさんは一度深呼吸して、僕の返事は聞かずに始めた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君の・・・・・・声が好き



ゆっくりと雪が降る中で、ギンガさんがうたい出した。というか、あの・・・・・・これって。



この空の下の誰よりも・・・・・・この胸の中に、君が居る



震えたような声が、少しずつ力強さを増していく。それが僕の胸を貫く。



優しく・・・・・・優しく・・・・・・この星の、誰よりも



僕とギンガさんしか居ない空間で、ギンガさんの歌声が響いていく。



君の・・・・・・声が好き。君の・・・・・・事が好き



心の中が温かくて、嬉しくて。それで少し苦しい物が溢れ出す。



この星の誰よりも・・・・・・この星の・・・・・・誰より



なんだろう、これ。僕、なんでこんなにドキドキして、嬉しい気持ちでいっぱいになってるんだろ。



僕が送るこの歌は・・・・・・まだ名もない・・・・・・歌だけど





歌が終わった。だけど僕・・・・・・何も喋れなかった。



だって胸の中がいっぱいで、苦しくて・・・・・・だけど嬉しくて、ドキドキして。



それで、それで・・・・・・涙が溢れ出した。沢山・・・・・・涙が、零れ落ちた。





「な・・・・・・なぎ君っ!? あ、あのどうしたのかなっ! 私、なにか・・・・・・あのっ!!」

「ごめん、なんか・・・・・・よく分からないの」










嬉しいんだけど、ドキドキきしてる。それであの、涙が止まんない。





だってこの歌・・・・・・この歌の意味、僕は知ってる。知ってるんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・落ち着いた?」

「うん」



ギンガさんからハンカチを借りて、ようやく涙が止まりかけた。でも、ドキドキと嬉しさがまだ胸を支配してる。

ギンガさんの歌声・・・・・・胸に、残ってる。どうしよう、僕かなり戸惑ってるのかも。



「あの・・・・・・どう、かな」

「素敵・・・・・・だった」



確かに歌唱力という点では、ゆうひさんやフィアッセさんには負けるかも知れない。でも、そういう話じゃない。

胸に、しっかりと届いた。歌声に溢れていたものが、僕の胸にしっかりと届いた。



「ならよかった。あの、それで・・・・・・ね」

「うん」

「・・・・・・なぎ君、私」



ギンガさんが、僕をまっすぐに見る。両手をぎゅっと握りながら・・・・・・あれ?

な、なんかおかしいな。空から降るのが雪じゃなくて、これ・・・・・・雨っ!?



「ギンガさん、ごめんっ!!」



僕は声をあげながら、改めて上を見た。・・・・・・やっぱり雨降ってるー!!



「話は後っ!! と、とりあえず雨降ってきたっ!!」

「あ、うんっ! というか、どうしようっ!? 私、傘とか持ってきてないしっ!!」

「よし、このベンチを傘に物質変換して」

「それはダメだよっ! 管理外世界だよっ!?」

「ならフィールド魔法で雨防御っ! もしくは周りの空気を操作して雨が当たらないようにするっ!!」



なお、後者はスレイヤーズの魔法。水で服が濡れるのを防ぐ潜水用の魔法だったりする。

しかも水圧関係にも耐えられて、水の中でも呼吸可能という魔法。まぁ時間制限はあるけど。



「だから管理外世界だから魔法はダメっ! というか、私そんな器用な事出来ないよっ!!」

「おのれ何年魔導師やってきたのよっ! なんで出来ないのさっ!!」

「学校時代を含めると6〜7年になるけど何か問題あるかなっ!!
というか、なぎ君はそろそろ自分が一部だけでも天才だって自覚持とうよっ!!」

「僕天才じゃないしっ! てーか自分の勉強不足棚に上げないでもらえますっ!?
これくらいスレイヤーズ見てたら基礎の基礎でしょっ! もっと本読めっ!!」

「そんなの知らないよっ! というか、何かなそれっ!!」



なんて話している間にどんどん本降りに・・・・・・! というか、むちゃくちゃ豪雨っ!?



「とにかく、走ってどこかに雨宿りするよっ! それで僕は魔法使って一人だけでも濡れない方向で」

「だからそれはだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「抱きつかないでっ!? フィールド維持が難しくて・・・・・・ちべたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










・・・・・・結局僕は、ギンガさん共々濡れる事になってしまった。

ただ、この辺りは山沿いの道。雨宿り出来る所など近くにあるわけが無かった。

おかげで僕とギンガさんはどんどんびしょ濡れになっていく。





もうこれはさざなみ寮なり近くのコンビニなり行くまでにびっしょりかなと思っていた。

そうしたら・・・・・・雨宿り出来る場所、ありました。普通ならそこはスルーしていたと思う。

だけど僕は、そしてギンガさんはさっきの歌のせいで若干テンションがおかしくなっていた。





僕達は躊躇いなくそこに入った。・・・・・・ご宿泊・ご休憩と書かれたそこに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そこはどうやら本当に最近出来た所らしくて、内装はピカピカ。





設備もバッチリ。開店サービスで料金まで安くなっていた。










「・・・・・・あ、どうしよう。私この国のお金」

「大丈夫、僕が持ってるから」





えっと、支払いは後払いなのか。じゃあ部屋指定して・・・・・・あ、鍵出してきた。

カードキーになっているそれを僕は受け取って、ギンガさんを引っ張って中に入る。まず自動ドアに突入。

エレベーターは右側にあるので、僕はそっちの方に入る。なお、証明がムーディーなのは気のせいだ。



部屋は・・・・・・5階か。えっと、ポチっと推してと。エレベーターが来るまで、僕はしばし待つ。





「うぅ、寒い。ギンガさんが邪魔するから」

「一人だけ濡れないように頑張るっておかしくないかなっ!? 男の子としてそれは最低だよっ!!」



ずぶ濡れなギンガさんは、そう言いながら震えている。でも、僕は気にしない。そうだ、気にしてはいけない。

だって僕はギンガさんを気に出来る余裕がない。僕も無茶苦茶寒いんだ。



「ギンガさん、日本では『情けは人のためならず』という言葉があってね」

「それ意味違うよねっ! それは『情けをかけるのは人のためじゃなくて、自分のため』って意味で」

「そう・・・・・・そうなんだよ、ギンガさん。
だからこそ僕は涙を飲んで心を鬼にして、ギンガさんのために」

「だからそういう理論武装はダメっ! そこは絶対なぎ君の悪いとこ」





ギンガさんの言葉がそこで止まった。それはエレベーターが僕達の前に来たから。

ドアが開くと、そこにはやたらとベタベタしている男女二人組。僕達は自然と道を開けた。

そのカップルはずぶ濡れな僕達を見て怪訝そうにしながらも、そのまま入り口に向かう。



うん、カップルだよね。なんかこう・・・・・・甘ったるい空気出してたし。

その背中を見送っている間にドアがしまろうとしていたので、右手を出してそれを止める。

僕が早々に中に入ると、ギンガさんも続いた。それで5階のボタンを押す。



ドアはすぐに閉じて、僕とギンガさんはそのまま無言で5階へゴー。

エレベーターを降りて、二人でくしゃみしつつ部屋の前に来た。僕はカードキーで鍵を開ける。

ドアを開けて、ギンガさんと二人部屋に入った。まずは・・・・・・風呂場の確認。



やたらと広くてジャグジーだったけど、僕は気にしない事にした。





「ギンガさん、お風呂先に入って。服は僕がなんとかするから」

「なんとかって、どうやって?」

「ブレイクハウトで服の中の水分に干渉して、蒸発させる」



僕は両手をパンと合わせて、自分のずぶ濡れなコートをその両手で触る。

コートに軽く蒼い火花が走ると、コート全体から蒸気が上がった。



「こんな風にね」





ギンガさんが驚きながらもコートを触る。それで更に驚いた顔をした。



うん、そりゃそうでしょ。僕も前にやってマジで出来るとは思ってなくてびっくりしたし。



まぁ普通の運用とはまた違うコツがいるんだけど、そこも僕の能力なら問題無しだよ。





「ほんとだ、すごい」



まぁギンガさんが触ったとこがまた濡れるけど、これくらいはいいか。



「というかなぎ君、その術はいつもの事ながら応用力高過ぎない?」

「そんな事ないよ。物質としてそこに在るなら、僕に干渉出来ない物はないってだけの話で」

「いや、そんな事あると思うけど・・・・・・うーん」



ギンガさんが軽く首を捻っている。その様子を見て、僕は軽くため息を吐いた。



「別に下着まで触ったりはしないよ。そっちは干しておけばいいし」



図星だったらしい。ギンガさんの顔が、急に真っ赤になった。



「・・・・・・別にいいよ?」

「無理する必要ないけど」

「いいの。というか私」



アレ、なんか凄い真っ赤になった。



「な、なぎ君にはもう全部見られちゃってるもの。下着くらいは・・・・・・平気」



今度は僕が真っ赤になる番だった。てーかこの状況でそれ言い出すのはやめて欲しい。



「そ、そうだね。じゃあアレだよ、早く入りなよ。乾かすだけは乾かしておくから」

「うん」










現在、僕達が居るのはシティホテル。なお、これは今時の言い方。

もうちょいストレートな言い方をすると・・・・・・ラブホテル。

当然ながらここは、男の人と女の人がいやらしい事をするためのホテルです。





・・・・・・しゃあないでしょっ!? あのままずぶ濡れになるって選択はなかったんだからっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お湯の温かさが、雨と冷たい風のために冷えた身体に染み渡る。

ジャグジーのボコボコが、内面的には傷だらけの身体にとっても嬉しい。

だけど、あの・・・・・・うぅ、どうしよっ! さすがにこれはダメだよねっ!!





それに私、さっき余計な事言っちゃったから、意識させて・・・・・・は、恥ずかしいよっ!!










「ど、どうしよ。さすがにあの・・・・・・うぅ、どうしよ」










とりあえず私は、身体のチェックを念入りにする事にした。あと、洗うのも念入り。

私だって子どもじゃない。ここがどういう施設かはすぐに分かった。

もしも、もしもそうなった時のために・・・・・・やっぱり準備はしておきたい。





だって私は、女の子だから。それでなぎ君の事・・・・・・好き、だから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その後、ギンガさんがあがったら僕もお風呂に入る。服は乾かしているけど、それでも一応バスローブ着用。





服は全部お風呂場に干して・・・・・・そこで改めて考えた。僕達、なにか大きな間違いを犯しているんじゃないかと。










「・・・・・・雨、止まないね」

「そ、そう・・・・・・だね」





部屋はとても綺麗な内装で、有線放送なんて聴けるベッド設備付き。

細かい照明の調整まで出来る。なお、回転ベッドはない。

だって、法律で禁止されてるって言うし。あ、カラオケ設備とかもあるな。



や、やばい。ギンガさんが真っ赤になってる。というか・・・・・・どうしよう。

しかもフロントで聞いたら、傘とかはここでは売ってないらしい。

かと言って誰かに迎えに来てもらうわけにも、当然ながらいかない。



どうしよう、マジで。よし、ここはアレだ。





「僕、隣の部屋行ってるわ」

「え?」



この部屋は、どういうわけか二部屋ある。

なので、僕は立ち上がって・・・・・・すると、ギンガさんに手を掴まれた。



「あ、あのね」



ギンガさんの手、震えてる。それに瞳も潤みがちで・・・・・・可愛いかも。



「そんなに遠慮しなくていいよ? 私は大丈夫だから」

「・・・・・・だったら、顔真っ赤にしないで欲しい」

「これは・・・・・・あの、その・・・・・・えっと」



とにかく離してくれない感じなので、ベッドに腰かける。やばい、あの・・・・・・ドキドキしまくってる。



「そ、そうだ。なら、雨が止むまで・・・・・・さっきの話の続き、聞いてくれる?」

「・・・・・・うん」



改めて僕は、バスローブ姿のギンガさんを見る。

なんというか・・・・・・あの、無理。色々間違ってるから無理。



「あの・・・・・・はくしゅっ!!」



でも、そんなドキドキに苛まれている時にギンガさんが突然くしゃみをした。



「大丈夫?」

「あ、うん。お風呂で温まってきたんだけど」



僕はすぐにベッドを見る。・・・・・・あ、タオルケットあった。

それを手に取って、ギンガさんにかける。



「・・・・・・ありがと。なぎ君は大丈夫?」

「うん、僕は・・・・・・は、はくしゅっ!!」





大丈夫じゃ・・・・・・ない見たい。でも、タオルケット見る限りだと一枚しかなかった。

予備はあると思って、さがそうとした。でも行動を開始する前にギンガさんが動いた。

ギンガさんは背中にかかっているタオルケットを広げて、僕にかけてくれた。



つまり、今僕達は二人で一枚のタオルケットを共用している状態。





「あ、あの」

「せっかく・・・・・・だから。こうしてたい」

「・・・・・・うん」





僕はこういうの、嫌じゃなかった。だから・・・・・・そのまま。

ギンガさんと腕をくっつけながら、一枚のタオルケットを背中からかける。というか、くるまれる?

ギンガさんの体温と、タオルケットのおかげでずいぶん温かくなった。



それでギンガさんが深呼吸を一回してから、話を始めた。





「さっきの・・・・・・歌ね、ゆうひさんから教えてもらったんだ」

「・・・・・・やっぱりか」

「うん、やっぱり・・・・・・えっ! なぎ君あの、し、知ってたのっ!?」

「うん。・・・・・・前にゆうひさんから教えてもらったんだ。
あの、海鳴にゆうひさんが暮らしていたさざなみ寮って所があってね」



今現在僕が宿泊しているあそこですな。あ、後で連絡しておかないと。



「そこの寮の管理人さん・・・・・・槙原耕介さんって言うんだけど、その人が今の奥さんにプロポーズする時に」



・・・・・・そう、その時だ。その時にこの歌は重要な役割を持った。僕はちゃんと知ってる。



「その時、まださざなみ寮に住んでたゆうひさんが後押しの意味も込めて、作ったんだって。
耕介さんは必死にこれを覚えて、練習して、奥さんの前で顔真っ赤にしながらうたって」





うたって想いを・・・・・・届けろと、耕介さんはゆうひさんから言われたらしい。



歌は心。その人の想いが沢山詰まっていくものだから・・・・・・きっと届くって。



そうだ、それで鼻歌交じりでゆうひさんがこんな歌だーって教えてくれた。





「僕、その話聞いててさ。実際にハミング程度に歌ってもらった事もあって。だから、嬉しかった」

「・・・・・・うん」

「僕、嬉しかった。ギンガさんが・・・・・・好きだって言ってくれて」



その時、改めて気づいた。あんなに胸が震えた理由。あの歌には、詰まってたんだ。

ギンガさんの気持ち。ギンガさんの想いが。僕はあの時、ギンガさんに告白されたんだ。



「そう・・・・・・だよ。私ね、なぎ君が好き」



それで改めてギンガさんは僕を見て、瞳を潤ませながら・・・・・・不安そうな顔を見せる。



「でも、友達としてじゃない。男の子として、この世界の誰よりも、なによりも・・・・・・大好き、なの」

「うん、ちゃんと伝わったよ。だって、僕・・・・・・あの歌声思い出すだけで、泣きそうになるくらい嬉しくなるから」

「・・・・・・よかった。本当に・・・・・・よかった」



ギンガさんの瞳から涙が零れる。それを僕は、右手の親指で拭う。

その時、ギンガさんの頬に触れた。・・・・・・凄く熱いと思った。



「・・・・・・ギンガさん」

「うん」

「ごめん」

「謝らないで・・・・・・欲しいな」



それは、怒りや否定じゃない。むしろ優しさ。僕を安心させようとしてくれている。



「迷惑・・・・・・だったかな」

「ううん、それはない。さっきも言ったけど、凄く・・・・・・嬉しい」

「なら、よかった」



でも、あの・・・・・・返事しなくちゃ、いけないよね。ギンガさんは気持ちをぶつけてくれたわけだし。



「その・・・・・・あの、私の方こそ、ごめん」

「なんで謝るのさ」

「私がわがまま、言ったから。迷惑、沢山かけたから」



・・・・・・迷惑、かけられたかな。覚え無いんだけど。



「私ね、この間の一件で・・・・・・本当の意味で分かったの。
なぎ君が、どうして昔の事、忘れたくないと思ったのかとか、色々」

「そうなの?」

「うん。・・・・・・私もね、傷つけたから。魔法無しで、人を。
あの時の事、忘れて何もなかったような顔なんて、出来ない」

「・・・・・・そっか」



そのまま僕は、ギンガさんの頬を撫でる。どう言葉をかけていいのか・・・・・・分からなくて。

ギンガさんは、そのまま受け入れてくれた。



「全く・・・・・・不用意に関わるからそうなるんだよ」

「そうだね。そこは本当に・・・・・・って、なぎ君に言われたくないんだけど。
運が悪いからって、なんでもかんでも自分から関わる必要なんてないよね」

「僕はいいの。僕は、覚悟決めてるから。僕は運が悪いのは事実だけど、『不幸』じゃない」



言いながら僕一度瞳を閉じて、改めてギンガさんを見る。



「運が悪くて、トラブルに巻き込まれて・・・・・・だけど、だからこそ気づける事があると思うの。
誰かの泣いてる声に気づける僕は、やっぱり幸せなんだよ。最初の時だって、今までだってそうだから」

「・・・・・・それが、なぎ君の答え?」

「うん。まぁそこはいいとして・・・・・・別にギンガさんが謝る必要ないよ。
てか、ギンガさんのせいじゃないでしょうが。僕が振り切れなかっただけの話で」

「私の・・・・・・せいだよ」

「ギンガさんのせいじゃない」



その・・・・・・あれだよ。うん、僕が悪かった。多分色んな意味で心配かけまくってたんだしさ。



「僕だってきっと、ギンガさんの気持ち傷つけてた」

「え?」

「フェイトの話をしたり・・・・・・とかさ。さっき謝ったのも、それ」





ギンガさんの気持ち、考えて・・・みようとも、してなかったね。

フェイトにされてた事、ギンガさんにもしてた。そこだけは間違いなかったりする。

異様に首突っ込んで来たのは、ギンガさんから見て僕が『不幸』に見えたせい。



そりゃあ好きな人がそういう風に見えたら、心配するよ。僕だってフェイトに対して同じだし。



だからきっと嫌な思い、沢山させてた。きっと・・・・・・傷つけてた。





「私は、大丈夫。・・・・・・8年だもの。簡単には、見れないよね。あの、それでね・・・・・・なぎ君」

「うん」

「私・・・・・・ね」



ギンガさんの翡翠色の瞳が揺れる。それで自分の頬に触れている僕の手を左手で、優しく掴んだ。



「何度も考えたんだ。なぎ君の事好きだって気づいて、ここに来るまでに・・・・・・告白するの、やめようかなって。
それこそ何度もだよ。なぎ君はフェイトさんが好きで、私は・・・・・・きっとフェイトさんには勝てなくて」



その手が震えているのは、声が震えているのは、きっと僕のせい。はやての言う通りになるとは、マジで思わなかった。



「なぎ君は優しいから沢山・・・・・・沢山困らせちゃうんじゃないかって、何度も考えたの。でも、抑えられなかった。
私、なぎ君が欲しい。なぎ君との時間が・・・・・・欲しいの。なぎ君を諦める事なんて、出来ないんだ」



ギンガさんの瞳から、また涙が溢れる。あの歌を最初に歌いだした時のように、やっぱり声は震えている。

・・・・・・言わなきゃ、いけないよね。ちゃんと、伝えなくちゃ。



「あの・・・・・・ね、ギンガさん」

「分かってる」



ギンガさんは僕の言葉を遮るように、言葉を続ける。まるで僕の言葉を聞くのを拒否してるようにも思えた。



「・・・・・・私だって、他の人に告白されて、その人に自分を見て欲しいとか言われたら、無理だって思う。
そう返事する。なぎ君の事好きなのに余所見なんて、出来ない。でも・・・・・・お願い。考えるだけでいいの」

「ギンガさん」

「付き合うとか、恋人になるとか、そういうの・・・・・・無くていい。だから、お願い。私の・・・・・・私の歌を」

「ギンガさん、少し黙って」



語気を強めに放たれた僕の言葉に、ギンガさんが固まる。

表情が悲しげに見えるけど、それに構わずに僕は話を続ける。



「僕、それじゃあ話出来ない。お願いだから、少しだけ僕の話・・・・・・聞いて」

「う・・・・・・ん」

「好きだって言ってくれて、すごく・・・・・・嬉しい」



それは事実。今だって、苦しいくらいに胸が・・・・・・震えてる。



「でもフェイトが・・・・・・好き、なんだ」

「そう・・・・・・だよね。あの、ごめん。この話は」

「最後まで聞いて。でも・・・・・・おかしいんだ。
僕、ギンガさんとの時間を考えてもいいかなって、思ってるの」



ギンガさんの表情が固まる。そして、今僕が言った事が信じられないと言わんばかりの顔になってる。



「ホント・・・・・・に?」

「ホント・・・・・・に。さっき告白された時、すごく嬉しくて、ドキドキしてる。
僕、ギンガさんの事を意識し始めてる。だったら、考えてみてもいいかなって」

「そう・・・・・・なんだ」



二人でそのまま少しだけ口を閉ざしてしまう。ただ、ただ・・・・・・もっと言わなきゃいけない事がある。



「だけど僕、何も約束出来ない」



それは僕の弱さ。中途半端な今の気持ちは、本当だったらいけない事。

だけど・・・・・・言わなきゃいけない。そうしなきゃ、ギンガさんを傷つける。



「フェイトの事、振り切れる自信がない。フェイトの事、好きなんだ。
だからギンガさんの気持ちにちゃんと応えたいと思ってるのに、何も約束出来ない」

「なぎ君」

「あの歌、本当に伝わったのに・・・・・・ごめん」

「いいよ、そんな事しなくて」



ギンガさんはそう言いながら僕の手を離して、ゆっくりと抱きしめる。僕の顔は自然と胸に蹲った。

ギンガさんの胸は本当に大きいので、すっぽり埋まる感じ。それで・・・・・・温かくて、フワフワ。



「大丈夫だから。・・・・・・8年、だよね。8年・・・・・・ずっと好きだった」



横で舞い上がったタオルケットが、柔らかく落ちる音が微かに聴こえた。

でも、さっきみたいに寒くはない。今はとっても温かい。



「うん、好き・・・・・・だよ」

「なぎ君にとっては、大事な荷物なんだよね。絶対に下ろせない荷物の一つ」

「・・・・・・うん」



重くて、だからこそ大事で・・・・・・下ろせない。確かに僕達、離れようがないらしい。

でもだからこそ、今それが苦しい。例えそうでも、ギンガさんに決めなきゃいけないのに。



「だったら、それでいいよ」

「え?」

「フェイトさんへの気持ち、忘れたり消す必要なんてない。
それでも私が、ギンガ・ナカジマが一番好きだって、言わせてみせるから」



ギンガさんの抱擁が深くなる。それで胸の感触がより一層強まった。



「フェイトさんには、二番目になってもらうだけ。だから忘れなくて・・・・・・いいよ。
私、なぎ君のそういう一途な所も好きだから」

「ギンガさん・・・・・・でも」

「いいの。だって、どうしてもフェイトさんがいいって場合もあるでしょ?」



左手で、そのまま僕の頭を優しく撫でてくれる。その感触がくすぐったくて、軽く身を捩ってしまった。



「そういう時に気持ちに嘘ついちゃって、それで失敗したら私は責任取り切れないもの。
・・・・・・考えてくれるだけで、見てくれるだけでいい。今は、それでいいよ。そういうお試しな関係で」

「・・・・・・でも」

「いいの。私は、なぎ君に選んで欲しいんだから。・・・・・・自分の意志で、私を選んで欲しいの。
ありがと。私の歌に・・・・・・こんな私の気持ちに、応えたいって言ってくれて。凄く、嬉しいよ」



そう言いながらギンガさんの声は、どんどん涙ぐんだものに変わる。

この状態だと顔は見えないけど、それでもギンガさんがまた泣いてるのは分かった。



「・・・・・・本当に、何も約束出来ないから」



僕は諦めて、そのままギンガさんを抱きしめる。それで優しく背中を撫でてみる。




「ギンガさんの事、弄ぶだけ弄んで捨てるかも知れないよ?」

「それがなぎ君の選択なら、それでいい。というか、初めてがなぎ君なら嬉しいかな」

「・・・・・・もの好き」

「なぎ君に言われたくないよ。私みたいなダメな女の子と、向き合おうとしてくれたんだから」



ギンガさんはゆっくりと身体を・・・・・・僕の事を離した。ギンガさん、やっぱりまた泣いてた。

それでも嬉しそうに、安心させるように僕に笑いかけてくれる。それを見て、また胸が傷んだ。



「私、もっとなぎ君に私の歌を届けるよ。何度でも、何度でもうたっていく。君の声が好きだって、伝える。
だから、もし良ければでいい。無理強いなんてしない。・・・・・・聴いて、ください。私の、まだ名前のない歌を」

「・・・・・・うん」



そのまま、ギンガさんは涙目のまま笑顔を深くして・・・・・・あの、抱きついてきた。

その瞬間、僕は硬直する。いや、だって体重かけられてそのままボスンって押し倒されたから。



「あ、あの・・・・・・ギンガさん?」

「ごめん、もう我慢出来ない。私、さっきからずっと・・・・・・なぎ君にこうしたかったの」

「こ、こうしたかったって・・・・・・あの」



ギンガさんは、そのまま身体を起こす。僕はギンガさんの方を見て、気づいてしまった。

ギンガさん、胸元が完全にはだけてる。それで・・・・・・見えちゃってる。



「ギ、ギンガさ」

「目を閉じないで」



そう強く言われて、動きが止まってしまう。でも、そうすると見えてしまう。

これはこの間より色っぽい・・・・・・って違うっ! そういう事じゃないしっ!!



「私の事、ちゃんと見て。大丈夫・・・・・・だよ?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



胸、きっと全部見えてる。だってさっきよりスースーしてる感じがするもの。

だけど、いいの。というか、よく考えたら恥ずかしがる理由がない。だってなぎ君はもう全部見てる。

それに私、なぎ君に見て欲しいと思ってる。見て、興奮してくれるならもっと嬉しい。





少しいやらしいかも知れないけど、これだって私の・・・・・・私の歌だから。だから、頑張りたい。





それにあの、色々と気になる事もあるんだ。つまりその、私は女の子としてどうなのかなーとか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なぎ君、私今日安全な日なんだ。だから、大丈夫」

「いや、あの・・・・・・そうじゃなくて」

「あの、私は確かに特殊な身体だよ? 普通の人とは違う。
けどマリーさんからはそういう事、ちゃんと出来るって太鼓判押されてる」



いきなりなんの話っ!? いや、僕そんな事言ってないっ! 一言も言ってないよねっ!!



「それに赤ちゃんだって・・・・・・産めるよ?」

「な、なぜにいきなり赤ちゃんの話になるのさっ! お願いだから落ち着いてっ!?
なんというか、いきなり過ぎないかなっ! さすがにこれはありえないよっ!!」



順序って大事よっ!? いや、ここは絶対だってっ! なにより僕達はお試しっ! お試しなんだからっ!!

それでこうなってもダメに決まってるでしょうがっ! マジで僕最低だしっ!!



「そ、それは・・・・・・あの、確かにそうかも。あの、だったら」

「うん?」

「あのね、一つ聞かせて欲しいんだ。・・・・・・私の身体って、どうかな」



だから息を荒らげないでっ! というか、まずこの体勢をなんとかしたいんですけどっ!!



「女の子として、魅力的に見える? なぎ君がそういう・・・・・・エッチな事したいって思える?」

「あの、ギンガさん。落ち着こうか。ほら、僕達はお試しな関係であって、そういう事は抜きで」

「お願い、ちゃんと答えて」



いや、だからどうしてそういう不安げな顔になるのさっ! 僕なんか間違った事言ってますかっ!?



「・・・・・・お願い」

「・・・・・・綺麗、だよ?」



ギンガさんは絶対に引かない様子だったので、僕は諦めて・・・・・・ギンガさんを見上げた。



「あの、この間見ちゃったわけじゃない?」

「うん。あの、全部・・・・・・見られてたかな」

「うん。全部見た」





ヤバい、なんか凄い顔熱くなって来た。てゆうか、雰囲気がおかしいから。この展開ありえないから。

そう思いつつも、僕はこのありえない展開をぶち壊すために、話を進める事にする。

それに・・・・・・ほら、もしかしたらギンガさんは生まれの事とかコンプレックスに思ってるかも知れないしさ。



そうじゃなくても、女性って体型に関してはどんなに綺麗でも気にしてる部分が少なからずあると言う。



そういうのが作用して、男の僕に聞いてきたという可能性もある。だからまぁ・・・・・・頑張る事にした。





「ギンガさんの身体、綺麗だと思う。そこは、本当に。ただあの、エッチしたいかどうかはまた別で」

「・・・・・・そうなの?」

「うん。ほら、僕・・・・・・やっぱり、だし」



ギンガさんはそう言うと、ゆっくりと身体を起こした。それで少しだけ僕に背中を見せて、胸元を整える。

それで恥ずかしそうに起き上がった僕の方を見た。な、なんかその視線が可愛い。



「あの、ありがと。というか変な事聞いてごめん。凄く・・・・・・気になっちゃったんだ」

「そ、そうなんだ」

「うん。気に、なるよ? 好きな男の子から見て、そういう事したいと思えるかどうかって・・・・・・かなり」



ギンガさんはそう言いながら、改めて僕の方に飛び込んで来た。僕はギンガさんを優しく受け止める。



「あのね、エッチな事は納得した。確かにいきなり過ぎたもの。
でも雨が止むまで・・・・・・ギュってしてて欲しい。それだけで、いい」

「・・・・・・うん、そうする」

「でもなぎ君がしたくなったら、そこは受け入れるよ。私の気持ちは、さっき言った通りだから」

「・・・・・・・・・・・・大丈夫、きっとそうならないから。うん、ならないと思う」










僕はギンガさんをギュっと抱きしめた。ギンガさんの僕を抱きしめる力が、それに返すように強まる。

色々と不安な選択。どうなるかなんて、分からない。でも、今はこうしたい。

ギンガさんの言葉に、想いに、胸が震えたのは事実で・・・・・・それに、応えたいなと。





ただし、雨は止まなかった。それも翌日までだよ。つまり僕とギンガさんは、丸一日ここに缶詰となった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その日の夜。なぎ君は『さすがに無理』と言って、隣の部屋で就寝。私はベッドで一人横になってる。

勝手に外泊だし、きっと父さんに怒られる事も覚悟しておこうと思う。なぎ君は・・・・・・失踪中だから大丈夫か。

本当になぎ君、なんにもしなかった。まぁここは納得してるの。仕方なくはある。





それに私は、なぎ君に私の歌がちょっとでも届いたのが嬉しかったから。今はそれだけで充分。

ただね、なぎ君。なぎ君はきっと知らないと思うんだ。・・・・・・このベッド、やたら広くて大きいの。

まぁその、男女が二人でこう・・・・・・くんずほぐれつするベッドだし、ここは当然だと思う。





でもそこに一人で寝るのって、寂しいんだよ? うぅ、これは予想外過ぎたかも。

私は改めて布団をかぶって、早めに寝る事にする。広さなんて、寝ちゃえば気にならないもの。

・・・・・・もっと、うたっていこう。私の歌を・・・・・・今の私の歌を、もっとうたえるようになろう。





私は、結局私にしかなれない。だから私は、私の歌を自信を持ってうたっていきたい。





今は小さくても、弱くても、いつかあの子の一番になれるように・・・・・・この歌を、うたい続けたい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして、それから1月と少しという時間が流れました。

年が明けて新暦76の2月の中旬。六課解散まで、3ヶ月を切ってしまいました。

電王のみんなが来たり、一夫多妻制事件が勃発したりであっという間です。





まず、年末は大変でした。原因は恭文君とギンガが付き合うようになったという話。

というか、朝帰りの話は私達のコミュニティを駆け抜け、みんなが衝撃を受けたのは言うまでもないと思います。

ただ、本人達は審査中というか、お試し期間的な感じの清い交際らしいのです。





全員余計なちょっかいを出さず、暖かく見守る事が決定しました。特に・・・・・・はやてちゃん。

はやてちゃんには余計な口出しをしないようにと、口をすっぱくして注意してたりします。

そうそう、その間に何が起きたかですね。恭文君、やっぱり一度六課を辞める形にはなったんです。





だけど、再び出向してもらう事になりました。これで六課は再び正しい形に戻りました。

あ、誤解の無いように言っておきますけど、恭文君から言い出したりはしてません。

でも、私は知ってる。きっと恭文君も六課の事を本当は大切に思ってくれてたんだ。そうに違いない。





それでそれは当然なんだ。だってここは、私達みんなの夢の部隊なんだから。

なによりこれは、スバル達フォワード四人の要望でもあるんです。

四人で恭文君と一緒に六課を卒業したいと隊長陣に懇願してきたんです。





私達はまぁ・・・・・・構わなかったんですけど、問題は当の本人。

知っての通り、恭文君は強情な子ですから。あと、こういうのが基本的に嫌いです。

なので恭文君はこの話をされた当初、意地を張って頑なに断ってました。





でも、電王のみんなが来た一件で六課の良さを再認識してくれたのか、戻って来る事が決定しました。

私、本当に嬉しかったなぁ。これで安心して私達の夢の部隊を終えられるよ。というか、こうならなきゃおかしい。

スバル達も恭文君と改めて仲間になろうと、気合いは充分。私達の夢は、ここから叶います。





それでフェイトちゃんとは・・・・・・うーん、ちょっとおかしい。

ギンガと付き合ってるのに、やたらと仲良しだったんです。

それも今まで以上に感じてしまうのはどうしてでしょう。





だってあんなに大変だったのに。なんでなんだろ、クロノ君とナカジマ三佐が一夫多妻制・・・・・・あれは忘れよう。

真面目に恭文君がキレて、クロノ君と一騎打ちしたりして大変だったから。まぁ、とりあえずアレです。

アレで恭文君の凄さを部隊員のみんなが痛感したのは、確かです。だから部隊みんなが恭文君を受け入れてる。





とにかく恭文君は今はドイツ。ギンガと一緒に、電王の一件の中で修得した神速の修行中。

でも、本当にアレはおかしい。記憶を奪われたギンガを助けるために、神速発動でしょ?

なのにフェイトちゃんとは、前よりずっと仲良し・・・・・・よし、友達として少し注意しておかなきゃ。





それで明日・・・・・・二人はドイツのお兄ちゃんの所での修行を終えて、ミッドに帰還。そこから恭文君は再び六課で勤務。

悲しい事ばかりが続いた年越しだったけど、ようやく私達は笑って六課を卒業出来そうです。

私達には、恭文君が必要なんだ。だって恭文君はもう六課の一員で、私達と一緒に夢を見る仲間だから。





これでハッピーエンドだよね。きっと、きっとうまくいく。恭文君だって、もう分かってるはずなんだから。

六課に居る事が・・・・・・私達と一緒に居る事が、みんなの幸せに繋がるんだって。

旅や冒険なんてしなくていい。そんな事して一人ぼっちなんて、不幸になってしまうだけだよ。





恭文君の幸せは、ここにあるんだ。だってここは私達の夢そのものだから。本当に、良かったなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・マジバッドエンドやないか。これ、こんまんまで終わるんかい」



部隊長室ではやてが頭を抱える原因は・・・・・・もう言うまでもないよね。うん、私だって分かってるよ。



「全く、クロノ君もリンディさんもマジで何考えとるんや」

「はやて、それはきっとはやてには言う権利ないよ」

「うん、分かっとる。めっちゃ分かって・・・・・・あぁ、恭文に申し訳ないわ。
アイツ、絶対デンライナーで旅したいとか考えてたやろうし」



私ははやての言葉に、困った顔のまま頷いた。



「そこは間違いないよ。・・・・・・私、本当に申し訳ないよ。なのはは楽しそうだったけど」





それはスバルとエリオ達もだよね。なお、ティアは今回の事に相当呆れ顔だった。

せっかく頑張ってフォローしたのが、台なしになったんだもの。そこは私も同感。

というか、ティアはやっぱりヤスフミの事理解してくれてるみたい。距離感、合わせてくれてるんだ。



だからヤスフミもティアに対しては心を開いてて・・・・・・今は仲間でも、友達でもないと思う。



だけど二人はいずれ、そんな関係になるんじゃないかな。何も言わなくても、きっとそうなる。





「なのはちゃんはしゃあないよ。てーかアレや、うちのせいやから」

「そんな事、ないんじゃないかな」

「いいや、うちのせいや。なのはちゃんは、うちのためにめっちゃ信じてくれてるだけや。
それで気づかん振りしとるだけや。うちらの夢は、もう壊れてるって」



はやての声がここまで弱気な声になるの、初めて聞いたかも。だから私は・・・・・・胸が締めつけられる。



「うちが夢を勝手に改竄した時点で、レジアス中将や最高評議会と同じような事して六課動かした時点で壊れたんや。
うちらは・・・・・・現実に負けて、夢を自分から踏みにじった。でもなのはちゃんは、そないな事ないって言うてくれてるだけや」

「だからなのはは信じ込んで、幸せな顔をしている?」

「そうなるな。でも、そんなん『不幸』や。気づく不幸が幸せなら、気づかん幸せが不幸になる事もある」





その言葉が突き刺さったのは、きっと私が気づかない不幸に浸っていた自分に気づいてしまったから。

そして今までの私は、その不幸ありきだった。その不幸の上で笑って生きていた。

それで・・・・・・ダメ、だな。今までの私、本当にダメだったんだ。私、言いようのないくらいに最低だったんだ。



ずっと、ずっとこんな風に気づかない振りをして幸せな顔をしていたのかと思うと、寒気がする。



でも、同時に少しだけ希望が持てた。だったら私は・・・・・・まだ、幸せだと思うから。





「・・・・・・なのははこの際気にしなくていいんじゃないかな。問題はヤスフミの方だよ」





なのはやスバル達の状態改善のために、クロノと母さんが頼み込んでまた六課に引き入れちゃったもの。

今回はヤスフミを局に入れようとか、そういう目論見はない。本当に、全くと言っていい程にない。

母さんも渋々だけど納得してるし、ヤスフミはただ解散まで居るだけでいい。私の補佐でもしてもらえればいい。



だけど旅も、冒険も・・・・・・当然取り止め。私達はまた、ヤスフミから『不幸』を取り上げてしまった。

それによってフィアッセさんや知佳さんにさざなみ寮の方々がどういう反応をしているかは、察して欲しい。

さざなみ寮の人達も、魔法の事とかヤスフミ経由で知ってるんだって。エイミィから教えてもらった。



それで今回の事も、ヤスフミが失踪中に詳しく聞いていたらしい。うぅ、本当に申し訳ないよ。

確かになのはの状態、どんどん悪くなってったから・・・・・・処置は必要だったんだけど。

でもそれは、私達だけでなんとかするべきだった。なのにそこも全くだめで、このザマ。



やっぱり六課なんて、無い方が良かったのかな。この場所は存在するだけで色んな人の夢や願い、踏みにじってるよ。





「そこはギンガにも話しとる。フォローも頼んだわ。まぁ、ギンガは嬉しそうやったけど」

「はやて、それはしょうがないよ。だってギンガはお試しと言えど、ヤスフミの彼女なんだし」

「そのくらいは分かっとるよ。やっぱ寂しかったんやろうしなぁ」



特に記憶を無くした状態になった事で、そういう恋しさが強まったんじゃないかなと思うんだ。

だからギンガが嬉しそうなのは、しょうがないんだよ。それにギンガはなのはとは違うだろうし、安心は出来る。



「私もフォローするから、なんとか・・・・・・解散までは持たせる。
でもはやて、ヤスフミがどうしても我慢出来なくなったら」

「分かっとる。そん時は遠慮無く飛び出してくれてえぇわ。うちも無理は言えんよ。
ただ居るだけでOKなんて、マジで檻と同じやし。それでどうしろって言うんよ」

「なのは達的には、自分達と仲良くしてくれればいいと思ってるんだろうね」



そう思っているのに、自分の被保護者二人が居るのが非常に心苦しかったりする。

・・・・・・少し、話した方がいいのかな。あぁ、でもティアのフォローをこれ以上無駄にするのもなぁ。



「やろうなぁ。てーかフェイトちゃん、アンタ的にフォローするんはえぇんかい」

「いいの。ギンガにも宣戦布告はしているから」





記憶が戻って、ヤスフミと修行に出発する前に軽く宣戦布告した。うん、だってムカつくんだもの。

私とヤスフミとの時間を横取りした上でコレなんだよ? 私的には全然納得出来ません。

ただ、答えを決めるのはヤスフミだから・・・・・・だから、私はギンガと真正面から戦うだけ。



私は『仕事や立場なんかよりあなたが大事』とタンカを切った時の気持ちを・・・・・・嘘にしたくない。



だからはやての方を見ながら、自信満々に胸を張りながら笑う。だって私は、『不幸』なんだから。





「私は、ヤスフミの事が好きだってね。うん、負けないよ? 私の一番は、ヤスフミなんだから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・本局の転送ポートから、ミッドの中央本部へ移動。それからそこのロビーまで歩いて、外に出る。





空に見えるのは、二つの月。いやぁ、帰ってきたねぇ。帰ってきたくなかったのにさ。










「・・・・・・不幸だ」

「なぎ君、あの・・・・・・私も極力そっちに顔出すよ。だから、ね?」

「何が『ね?』なのっ!? てーかマジで縁切ってやるっ!!
隊舎で話しかけられてもフェイトとリインとはやて以外全員無視してやるっ!!」

≪何言ってるんですか。結局情に流されたあなたが悪いんでしょ≫

「分かってるよっ! 分かってるから今この場でこれくらいは言わせてっ!?
ちくしょー! やっぱ僕は不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



荷物を抱えながら軽く涙目になってしまうのは、きっと罪じゃない。

明日から地獄なんだ。そうだ、今こうやっている事は絶対に正義なんだ。



「で、でもなぎ君」

「何?」

「話変わるけど・・・・・・ドイツ旅行、楽しかったね」

「あー、それはね」



歩きながら、思い出すのは冬のドイツの風景。修行がてら、あっちこっち観光したのよ。

本当に楽しかったなぁ。だからこそ今、戻って来てしまった事が非常に悲しい。



「てかさ、よく考えたら凄いよね」

「え?」





近くのバス停を目指して、二人で両手いっぱいのお土産を持ちながら歩く。

なお、このおみやげは全てさっき名前の出た三人だけのもの。

まぁさ、はやてには色々面倒かけてるし、良いものたくさん買って来たのよ。



リインもそうだし、フェイトも・・・・・・自然と買ってしまった。ギンガさんに内緒で。



そこの辺りを反省しつつも、僕はギンガさんを見上げる。





「だって、ほんの3ヶ月足らずの間に、僕ギンガさんと3回も旅行してる。
・・・・・・イギリスでしょ? 海鳴・・・・・・日本でしょ? それでドイツ」

「そう言えば・・・・・・そうだね。あ、でもそれで改めて分かったんだ」

「何が?」

「なぎ君が旅をしてみたいって思う気持ち。知らないものや知らなかった事、本当に沢山ある。
そういうのや、そこに住む人に触れていくのって楽しい」



ギンガさんはそう言って、僕の方を見て言葉通りの感情を込めながら笑う。



「これがなぎ君の歌なんだね。旅や冒険に・・・・・・未知なものに憧れる気持ち。
私、修行に付き合えて本当に良かった。またちょっとだけ、なぎ君の歌に触れられたから」

「・・・・・・そっか」



ほんの1ヶ月で僕、ギンガさんの事を前よりも好きになってる。こうしてるのが、幸せで、嬉しくて。

だけど、ちょこっとだけチクンと痛むものがあって。それも事実だったりして・・・・・・僕、ダメだな。



「・・・・・・あと、5年」

「え?」

「私となぎ君が初めて会ってから、あと5年で8年経つの」



一瞬、ギンガさんが何を言っているのか分からなかった。でも、次の言葉で分かった。



「でも、付き合うようになったのは本当に最近だから・・・・・・やっぱり、8年かな。
一応、それが目標。私が・・・・・・なぎ君の一番になるまでの時間」

「・・・・・・ギンガさん」

「8年あったら、きっと私でもなぎ君の中のフェイトさんを抜けると思うんだ。
私が自分の下手っぴな歌をうたって、磨き続けていけば・・・・・・ううん、絶対に抜きたい。だから」



ギンガさんが表情を変えて、少しだけ真剣な顔で僕を見る。



「焦らなくていいよ。なぎ君、優しいから色々考えちゃうかも知れないけど、本当に少しずつでいいから」



考えてる事とか、色々見抜かれてたっぽい。そうじゃなくちゃ、この話の流れは説明出来ないと思った。



「なぎ君の歌の中にフェイトさんの存在がどうしても外せないなら、それでいい。
私は・・・・・・なぎ君にずっと、笑って自分の歌をうたっていて欲しいから」

「・・・・・・なんで分かる?」

「分かるよ。その・・・・・・一応でも、私はなぎ君の彼女なんだから」

「そっか」



僕は空を再び見る。2月のミッドの風は少しだけ冷たいけど、その風がなんだか心地よかったりもする。

・・・・・・そう言えば今日って、バレンタインデーじゃ。



「ね、ギンガさん」

「なに?」

「せっかくだから・・・・・・今日、デートしない?
ほら、バレンタインデーだから、一日帰りを遅れたという事にして」



あの、視線を厳しくしないで。いいじゃないのさ、今日くらいはいいじゃないのさ。

明日から地獄の日々なんだ。うぅ、デンライナーで過去に戻って、この話断ってしまいたい。



「デートはダメだよ。みんなにバレるかも知れないから。でも、二人きりには・・・・・・なりたいかな」

「・・・・・・じゃあ、家・・・・・・来る?」

「うん、行く。それで、あの・・・・・・ラブラブとか、してみたいかも」

「あ、うん。それじゃあ、がんばる」





少しずつ・・・・・・少しずつ、歩くよりも遅いスピードかも知れない。

けど、僕とギンガさんの時間は進んでいく。これから、色んな事があると思う。

でももしも、もしも・・・・・・隣に居る女の子とずっと一緒に居られたら?



それはそれでいいのかなと、最近よく思う。だって、その・・・・・・好きなのは、事実だから。





「それじゃあ、早く行こう? ・・・・・・恭文君」

「へ?」

「あ、あの・・・・・・名前で呼びたいなと思って。ずっと、ずっと考えてたの。
『なぎ君』だと、苗字でしょ? あの、ダメ・・・・・・かな」

「ううん、それでいいよ。・・・・・・ギンガ」

「・・・・・・うん」




















(ギンガルート・・・・・・おしまい)




















あとがき



恭文「というわけで、ギンガさんルート完結です。え、終わり方がバッド?
大丈夫、そのためのディケイドクロスだから。というわけで、本日のあとがきは蒼凪恭文と」

ギンガ「ギンガ・ナカジマです。というか、ディケイドクロスのプロローグになったよね」

恭文「そうだねー。これで何があっても安心だよ」

ギンガ「何がっ!?」





(青いお姉ちゃん、なんでか不満そう。きっと蒼い古き鉄のせいだ)





恭文「でもアレだよ、IFの改定とかめっちゃエネルギー使うね。ギンガさんも大変だったでしょ」

ギンガ「そう、だね。ディケイドクロスに繋がるようにというのもあるし、超・ギンガルートだったから」

恭文「そ、そっか」





(青いお姉ちゃんの微笑みに蒼い古き鉄は軽く引く。というか、何かが突き刺さる)





ギンガ「それで振り返るけど・・・・・・これって、改定前の真・ギンガルートよりは揺れてる感じなんだよね」

恭文「そうなるね。ほら、フェイトがスルーで管理局盲信状態じゃないから。その差もあるんだよ」

ギンガ「そっか。つまりそうなら・・・・・・あ、でもこれはこれでダメな気が。Forceで心停止状態になるフラグが」





(アレは普通に死ぬレベルだと思う。だって敵の目の前なのに)





ギンガ「というかなぎ君、私ちょっと思ったんだけど」

恭文「何?」

ギンガ「・・・・・・ゆうひさんが『うちENDはまだかー?』とか言いまくってるんだけど」





(蒼い古き鉄、軽く固まる。というか、台本を落としそうになる)





恭文「・・・・・・ギンガさん、そこには触れないでおこうか。ほら、今はギンガさんENDの締めなワケだし」

ギンガ「そ、そうだね。というか、知佳さんも」

恭文「だから触れちゃだめっ! ギンガさんルートのお話しよっ!? 二人の話は二人のルートでいいからっ!!」

ギンガ「そ、そうだねっ! せっかくなんだし、私の話しないとねっ!!」





(というわけで、シクシク泣いてる二人は無視します)





ギンガ「それでなぎ君、改定前と比べると、やっぱり六課の立ち位置が微妙になってるよね」

恭文「そうだね。というか、FS改訂版を書いて改めて六課について考えてたわけですよ。
あとは管理局? 例えば現実の汚職問題だって、そりゃあ数ヶ月や年単位で取り沙汰されるわけじゃない」

ギンガ「やっぱそこから考えると、まだ足りないくらいとか?」

恭文「かも。例えばStSは完全に管理局の中のお話なわけだから、外がどう思ってるのとか分からないんだよね。
もしかしたらアレだよ? 学校とかで管理局員の親の居る子は『不正した奴の仲間だろー』とか言われていじめられてるかも」

ギンガ「それはちょっと嫌だけど・・・・・・あぁ、でもありえない話じゃないんだよね。
StSが中のお話だからそういう『外』の話題が出てこないだけで、ありえない事じゃない」





(VividやForceは当然それとは違う視点になるわけです。その『外』の視点のお話になりますし。
だからなのは達が敵みたいな風に見えても、それはそれでおかしくないのかなーとは思ったり)





ギンガ「ならなぎ君は・・・・・・やっぱり外の視点多めなのかな。正式な局員じゃないし、むしろその外の行動が多いし」

恭文「そうなるよね。あとはアレだよ、FSとか以前書いたのと同じ切り口じゃあつまらないじゃない。
フェイト達の夢どうこうの話もそうだし、リンディさんのバカだって別の切り口にしただけだし」

ギンガ「あとは私だよね。なんかこう、自分の歌をうたうーって覚悟が決まった感じはする」

恭文「あ、ギンガさんももちろん変化はあるよね。だからあの・・・・・・あの歌も凄く良かったし」

ギンガ「あ、ありがと」





(なんだか二人して真っ赤。一応IFだから、いつもみたいにフェイト命じゃないらしい)





ギンガ「そう言えばなぎ君、これって改訂版まだ出すの?」

恭文「うーん、今のところ作者曰く予定はないらしいよ? 出してもティアナルートまでだって言ってたし」

ギンガ「あ、そうなんだ」





(あむルートは改定のしようがないというのがありますし、フィアッセさんルートはやる必要ないですし。
こっちのIFルート改訂版に載せるのは、初期に書いたギンガさんとティアナの二人だけだと思います)





恭文「確かティアナルートも、話の切り口当然変えるんだよね。それも超・ティアナルートに」

ギンガ「私と同じ路線なんだね。そこの辺りはアイディアあるの?」

恭文「ある。なんかアルトが前に言ったように三角関係がメインとか。
ただ、僕が欝寸前になるとかそういう展開は無しにするんだって」





(だってもうやりましたし。FS改訂版準拠は当然として、別の方向性も考えていかないと。
まずはフォワード陣に妙な遠慮がある恭文に、ティアナがアタックする展開かなーと)





恭文「妙な遠慮言うな。僕は徹底的に仕事場の同僚として軽いお付き合いをしたいだけだ」

ギンガ「客観的な視点を持った上で?」

恭文「そうそう。・・・・・・というわけで、そんなお話をしたところでもうお時間です。
えっと、ギンガさん・・・・・・改定版のルート、お疲れ様でした」

ギンガ「あ、いえ。こちらこそ・・・・・・お疲れ様でした。ディケイドクロスでも、今後ともよろしくお願いします」

恭文「よろしくお願いします」





(そう言いながら、二人はぺこりとお辞儀。いや、楽しそうだなぁ)





ギンガ「というわけで、本日はここまで。お相手はギンガ・ナカジマと」

恭文「蒼凪恭文でした。それじゃあみんな、次はディケイドクロスでねー」

ギンガ「それでは、またです」










(言いながら二人、笑って手を振る。なんだかんだで仲は良いのでした。
本日のED:鳥居花音『nameless melodies 〜だけど、きみにおくるうた〜』)




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・では改めて確認させてください。あなた達が我々に協力を申し出た目的は」

「当然次元世界の平和のためです。JS事件で疲弊した管理局のお力になれればと」

「そうですか。確かにこれだけの人員が居れば、局の慢性的な戦力不足も解消出来る」



そう言いながら高官の一人が、空間モニターとやらで我々の出した草案を見ている。

それは他の連中も同じ。全員、嬉しそうな顔で餌に食いついてくれている。



「だが、これだけの人員をどこから調達したのですか?」

「いかがわしいルートからではありませんので、ご安心を。
局と我々の目的・・・・・・次元世界の平和という理念に共感してくれた者ばかりです」



そう、共感している。お前達管理局と我々の目的は、とても近いものがある。だからこそ、利用出来る。



「・・・・・・このデータはまた検討させていただいて、後日お返事という事でよろしいでしょうか」

「構いません。一日二日でお返事がもらえるとは思ってはいませんし」

「そうですか。では・・・・・・ノブヒコ・ツキカゲさん、ご協力を感謝します」

「いえ」










これで手はずは整うだろう。奴らは餌と自分達の支配欲を満たす事に貪欲だ。だからこそ必ず食いつく。

この世界から変革は起こる。そして私達の名前が、存在が響き渡る発信源となる。

いや、この世界でなければいけない。なぜならこの世界は、始まりの世界だからだ。





そう、全てはここから始まった。破壊は・・・・・・ここから始まったのだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕はギンガさんと家の近くまで来た。バス停から降りて再び歩き出しながら、改めて地上本部を見た。





なんとなく・・・・・・本当になんとなくだけど、ジッと見てしまった。










「・・・・・・なぎ君、どうしたの?」

「あ、ううん。なんでもない」










僕は先に進んでいたギンガさんの隣へ行って、安心させるように笑う。それでまた、二人で進む。

・・・・・・この時僕は、なんにも知らなかった。再びとんでもない事件が起きようとしていた事。

僕が・・・・・・そして僕の居る『世界』が、その中心にならなくてはいけない事が、既に決定している事。





この世界は、僕が知らないだけで始まりであり終わりを司る世界だった。

だからこそ破壊は生まれ、そこから創造は造り上げられる。

そうして、僕達は少しの時を置いて出会う事になる。そして、旅に出る。





その中で出会う仲間と一緒に、全てを壊して全てを繋ぐために。





たった一人の手に押しつけるのではなく、みんなの手で破壊の先の創造を導き出すために。




















(おしまい)




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