小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第7話 『龍騎の世界/歪み惑うばかりのドラゴンナイト』
ユウスケ「前回のディケイドクロスは」
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「誰かー! 誰か居ませんかっ!? 私、こんな事してる場合じゃないんですっ!!」
「・・・・・・夏海さん、静かにしてください。というか、私の話忘れたんですか?
いいえ、それよりもなによりも騒がないで。お腹に・・・・・・お腹に響いて辛いんですから」
「主にあなたのお腹の心配ばっかりじゃないですかっ! というか、ダメなんですっ!!
士くんをライダーと戦わせたりしたらダメなんですからっ!!」
「いや、だからどうして」
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ユウスケ「・・・・・・なぁ恭文、ギンガさん真面目に危ないだろ。というか、普段どんだけ食ってるんだよ。
別に前回の最後の方でお前が言ったみたいな病気関係じゃないんだろ? なのになぜこれなのさ」
恭文「第2話で説明しなかった? あのままの量を毎食毎食だよ。
正直ね、僕も過剰摂取でなぜ太らないのかと心配になった事はいやって程ある」
ユウスケ「そ、そっかぁ。でも食費関係、大変そうだな」
恭文「ナカジマ家ではそこは一切計算してないっぽいけどね。さて、今回は・・・・・・嫌だなぁ。
ヤンデレてる上に、誰かしら断罪したがってるのを止めるのは無理だって。どうしろって言うのさ」
ユウスケ「だがこのままにはしておけないだろ。少なくともシンジさんみたいなやり方はダメだ。
・・・・・・というわけで、ディケイドクロス龍騎編の第3話、いきます」
恭文「ヤンデレ嫌だよー。お話出来ないのは怖いよー」
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ヤスフミとギンガが失踪して、まだ1週間も経ってない。でも、捜索の手は凄い勢いで伸びている。
目撃者であるはやてとスバルの証言も含めつつ、色々な形で調査が行われた。
でも、原因は未だに不明。私はお昼休みの中庭の中で、芝生に座ってただ空を見上げていた。
青空を見ると、あの子の事を考えてしまう。私がずっと・・・・・・ずっと大好きだった男の子の事を。
ギンガとお付き合いを始めてから、色々考えたの。身を引いた方がいいのかなって。ううん、いいに決まっている。
私は今までチャンスを棒に振りまくって、その結果がコレだからおとなしく受け入れるべき。
でも、ダメだった。だからバレンタインの時に、改めて告白めいた事言ったりしたし。
私はあなたから離れられないから、側に居て一緒に笑っていきたいんだよーって・・・・・・その、ほっぺにキスしたりして。
というかさ、ギンガにこのまま渡すって言うのはなんか腹が立つんだ。
だってギンガのために私とのデートとか色々潰れてるわけだし・・・・・・うん、負けたくなかった。
それにまぁ、一生に一度くらいはこういう風にわがままになってもいいかなってね。
あとはその、一番大事なもの・・・・・・ちゃんと気づけたからかな。私が守りたいのは、あの子の笑顔。
それが守れる自分になりたくて、もう一度頑張っていきたくて・・・・・・だからあの時手を伸ばした。
重いの。ヤスフミの存在が重くて、拭えない。下ろす事も出来ない。本当にどうしようもないくらいに重いんだ。
分かってる。私はもう遅いんだから、ギンガに任せて身を引くべきなんだって分かってる。
でも、止められない。これがヤスフミの迷惑だって頭ではちゃんと分かって・・・・・・分かってるの。
なのに私は止まれない。気づいた事を嘘にしたくなくて、なかった事にしたくなくて。私はあの子の側に居る事を決めた。
そうまでしたのに、私はまた遅かったのかも知れない。私は右手を上げて、青空へと手を伸ばす。
私の手はただ空を掴むだけだけど、それでも・・・・・・それでもちょっとだけあの子に触れられた気がした。
「・・・・・・ヤスフミ」
今、どこに居るの? ギンガと一緒なのかな。すごく、すごく会いたいよ。だから探すよ。私、言ったよね?
手を伸ばして抱き寄せるって。もう間違えないって・・・・・・もう見失わないって決めた。
迷惑だよね。うん、分かってるよ。戸惑わせてるし、傷つけてるよね。分かってる。すごく、分かってる。
でもごめん。私の根っこには、私の中にはあなたが居る。それはとても大きくて、もう消せないの。
「私に、もう一度だけチャンスを・・・・・・ください。私は、もう間違えない。仕事も、地位も、もうなにもいらない」
そこまで言いかけて、私は首を横に振る。それで苦笑し気味に空いているもう片方の手も空に向かって伸ばす。
「ううん、これじゃあだめだよね。私は、私は本当の意味でもっと笑って幸せにならなきゃいけない。
諦めてたら、きっとなにも変えられない。そんなのダメなんだ。それで私が・・・・・・そんな私が絶対に欲しいものは」
私は両手の中にある青空を掴みながら、胸の中で決意を燃やす。
私の一番大事なものを、必ず見つけ出してやるんだと。
私はただ、側に居る事しかしちゃいけないかも知れない。それで迷惑かけちゃうかも知れない。
恋人になんて、なれないかも知れない。一生このままかも知れない。
ずっと引きずって、ずっと大事な重さを持っていて・・・・・・それで心配、かけちゃうかも知れない。
でも私は今の自分の気持ちに、嘘なんてつけそうもない。どうやってもコントロール出来ない。
恋人じゃなくてもいい。家族じゃなくてもいい。ただ私は、あの子と一緒の時間で笑い合いたい。
どんな形でもいいから何も諦めずに一緒に笑って・・・・・・幸せになりたい。
いつでも側に居て、あの子が辛いなら支えになりたい。そんな私達の関係をどう表現するかは、まだ分からない。
分からないから、どうしてもヤスフミと話していく必要がある。それで・・・・・・何度も言うけど、やっぱり傷つける。
分かってる。それは分かってる。だけど、だけど・・・・・・止まれないの。もう私、気づいてしまってるから。
世界の破壊者、ディケイド。8つの世界を巡り、その瞳は何を見る。
『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説
とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路
第7話 『龍騎の世界/歪み惑うばかりのドラゴンナイト』
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前回のあらすじ。シンジさんがヤンデレました。なんでかヤンデレました。
なのでそんなシンジさんに軽く寒気を感じつつも、僕はユウスケと一緒に事情説明。
ただ、レンさんが会社を辞めた本当の理由については、伏せておく事にした。
きっとここは・・・・・・レンさんが自分で言わなきゃいけない事だから。
そしてまだ公開出来るほど情報が集まってないけど、他に犯人の目星がついてる事も話した。
この辺りは少し考えたけど、鎌田へ圧力という面もある。というか、僕の方に目を向けさせる。
それで僕を邪魔者として認識して、襲ってくれでもしたら一番手っ取り早い証拠になる。
・・・・・・ギンガさんと夏みかんに、もうちょっと苦労かける事になるんだ。命くらいは賭ける覚悟を見せなきゃ。
そしてその上で完全勝利を目指すのは当然。僕はこんなとこで・・・・・・って、バカ。
なんでそこでフェイトの顔を思い浮かべるんだろ。僕はもう、ギンガさんを選んでる。
フェイトが僕を本当に異性として見てくれて、その上で付き合う未来はもう無いんだ。そんなもの、あっちゃいけない。
まぁそこはともかくとして・・・・・・一つ補足。弁当が未だに届きません。
なのでおそらくこのシーン終了までは、ずーっとギンガさんのお腹の音がBGMだと思われます。・・・・・・やる気でねぇ。
「・・・・・・とにかく伏せてる情報や今話したアレコレも含めて、レンさんは犯人ではないと僕達は思ってる。
もちろん俺達もシンジさんの言いたい事は分かる。羽黒レンという人に、疑わしい部分が無いわけじゃない」
「でも、それだけじゃあ断定して裁判にかけるのは無理なんです。
『犯人じゃないと言える証拠がない』と言われたら、確かにそれまで」
なにより、今の僕とユウスケにまで敵意を向けている感じのシンジさんには、何を言っても通用しない。
もうね、目が鋭いのよ。あぁ、この目は・・・・・・トーレの腕ぶった斬った直後のフェイトと同じ目だ。
やっぱりかぶってるし。あぁもう、滑稽な程に偏ってる人間の相手なんて、もう二度としたくなかったってのにさぁ。
だからなのかな。さっきからやたらとフェイトの事思い出してるのは・・・・・・それで、だからなのかな。
僕はギンガさんとお試し的にお付き合いを決めた。でも、それで本当にいいのかって迷っちゃうのは。
「僕達の言っている事は、全部証言からの印象に過ぎない」
そんな気持ちを振り払うように、僕は言葉を続ける。
どっちにしたって、今はその事を気にしてる余裕ないんだから。
「でも、それはレンさんが犯人だと言う話も同じ。何にしても確証がない」
「じゃあ犯人は誰なんだよ。さっき目星がついてるとか言ってたけど、ソレだって証拠がないんだろ?
なら、もうレンさん以外にありえないだろ。いいや、証拠がないならそれで決定だ」
だからシンジさんは、僕達をKYと決めつけんばかりにこんな事を言う。
なお、鎌田ともやしは我関せずの姿勢。それで夏みかんは頬を膨らませて、不満そうにしてる。
「大体、アンタらにあの男の何が分かる。・・・・・・あの男は、俺達を裏切ったんだっ!!
犯人はアイツ以外にありえないっ! そうだ、ありえないんだっ!!」
「・・・・・・動機は?」
もう正直耳タコだ。何度『ありえない』って言えば気が済むんだろう。イライラがどんとん募っていく。
この手のとは話しても意味が無いと経験で知っているだけに、どうしても態度が投げやりになりつつある。
「なんで『裏切って』まで別会社に移って楽しそうにやってるのに、なんで今更編集長殺す必要があるんですか」
「さぁ、知ったことか。そんなのどうだっていいさ。
どうせ今度は会社を乗っ取るつもりなんじゃないのか?」
その言葉を聞いて、あの時のフェイトの顔がまたチラついた。なので、しっかり叩きのめす事にした。
というか、今の状況を利用させてもらう事にした。シンジさん、今のうちに謝っておく。・・・・・・ごめん。
「分かっただろ? 犯人は羽黒レン以外にありえない。
アイツ以外の誰かが殺したなんて、俺には思えない」
「・・・・・・・・・・・・アンタ、どうもはっきり言わなきゃ分かんないようだね。
僕は今のアンタの戯言なんか、信用するに値しないと思ってる」
「なんだってっ!?」
「お、おい恭文っ!!」
慌てて間に入ろうとするユウスケの方を見て、僕はその動きを止める。ユウスケは目を見開いて、素直に下がった。
それから改めて、不満丸出しなこのバカの方を見る。・・・・・・あぁもう、マジやってらんないし。
「今のアンタは、羽黒レンへの嫌悪感・・・・・・いや、憎しみに囚われて完全に目が腐ってる。
頭から犯人と決めつけ、自分の言ってる事がどんだけ無茶苦茶かも分かってない」
うん、無茶苦茶よ。なんでそんな話になるのかをツツいても、おそらく『知るか』だろうね。
もう極端な話、この人は目の前で子どもがコケただけでも羽黒レンのせいにする。
もしくは自販機にお金を入れたのにジュースが出なかった時も、全部羽黒レンのせいにするよ。
そうやって相手を疫病神扱いして、そういうのを断罪して気持よくなりたいって感情が見え隠れしてる。
それがやっぱり、あの時の・・・・・・まるで熱に浮かされたようにスカリエッティを追い続けたフェイトにかぶってしまう。
そしてフェイトがその結果、どういう目に遭って何を後悔したかを嫌でも思い出してしまう。
だからイライラが更に募る。コイツはきっと分かってない。その結果が何を呼び起こすかを、全く分かってない。
「分かってないのはそっちだろっ! あの男が俺や会社のみんなに何したと思ってんだっ!!」
このバカは僕の方に立ち上がって駆け寄って、首根っこを掴もうとする。
「裏切って俺達を捨てて・・・・・・その上今度は桃井編集長まで奪って」
「・・・・・・いい加減頭冷やせっ!!」
でもその前に僕は左手を伸ばして、その胸元を掴んだ。そのまま立ち上がりながら、このバカを持ち上げる。
「そう言うんだったら証拠を提示しろっ!!」
そのまま片手で目の前の机に叩きつける。机を叩く音が激しく響き、耳をつんざく。
ただ、それでも僕は胸元を圧迫して、このバカを威圧する。当然睨みつけもする。
「殺した方法も、動機も、それを示す確定的な証拠すらないんじゃ話にならないんだよっ!!
全部お前の勝手な思い込みだけだろうがっ! お前、それでもカメラマンかっ!?」
「お、おい恭文っ! 落ち着けっ!!」
「いったい桃井編集長の下でなにやってきたんだよっ! そんなんなら編集部やめちまえっ!!
お前、そんな調子だと遠からず無茶苦茶後悔して、死にたくなるぞっ! それでもいいのかっ!!」
うん、言い切れる。現にフェイトは・・・・・・相当後悔している。
今も内心では、局員を辞めるか否かってレベルで考えてる。
目が曇ると、真実が分からなくなる。でも、それは物事だけに限った事じゃないらしい。
自分にとっての真実も、あっさり曇ってしまう。
「僕はお前みたいなのを一人知ってるよっ! 僕にとっちゃあ初恋の人でなっ!! どういう目に遭ったか分かるかっ!?
まず自分の追っていた犯罪者に捕まりかけて、危うくモルモットにされかけたっ! でも、それだけじゃあないっ!!」
フェイトは曇らせて、局員となろうとする代わりに理想をドブに捨てた。うん、知ってるさ。
二人で色々話したんだから。ギンガさんが居るのに、僕は・・・・・・フェイトを振り切れなかったんだから。
「その犯罪者を追っていた時、自分の家族や友達も巻き込んだ上で、沢山の人間を怪我させた上で捕まえたっ!!
なのに結局自分はその相手を断罪するためだけに、自分が悦に入るためだけに周りを傷つけてまでそうしたと事後に気づいたっ!!」
・・・・・・そこに気づかなかった自分に、しかも結局は自己の陶酔のためだけに事件に関わった自分を事後に知った。
それはきっとフェイトの罪。その罪は、今なおフェイトを苦しめて・・・・・・迷わせている。
フェイトはJS事件の時、局員としてもなのはやはやて達の友達としても動いてはいなかった。
あの時フェイトは、ただ相手を断罪して自分が気持ちよくなるためだけに事件を追っていた。
そういう側面があったって、本人が言い切ったのよ。全部じゃないけど、そう思っていた。
その時、今現在局内で評価の上がる『閃光の女神』がどれだけ呆然としたかは・・・・・・察して欲しい。
問題は、フェイト自身がそれに全く気づかなかった事。そしてその結果行った事の重さ。
仲間が、友達が、そして世界が傷ついたのに結局自分は自分の事しか考えていなかった。
そういう『嘘』をついてまで盛大な自慰行為をかました事が、フェイトの心を砕いた。
その様を見ているから、僕は言い切れる。コイツは絶対に後悔する。
もしこれで羽黒レンを断罪したら、そりゃあ当初は気持ちいいだろうさ。
でも事後に絶対に後悔する。しなかったら、そりゃあもう人じゃない。
「今のお前も全く同じだっ! ただ気持ちよくなりたいんだろっ!? 羽黒レンを断罪して気持ちよくなりたいんだろっ!!
そんな裏切り者を断罪した英雄になりたくて、英雄になる快感に酔いしれたいからそうやって喚き散らしてるんだろうがっ!!」
「違うっ!!」
「違わねぇよっ! お前は僕達や羽黒レンオカズに自慰してんのと同じだっ!! 気色悪いんだよっ! お前っ!!」
夜中に僕にいきなり通信かけてきて、号泣してたくらいだよ。僕、失踪中だったのによ?
それで僕、普通に会いに行って一晩中話聞いてさ。なお、フェイトはそれに関して凄まじく謝ってきた。
僕が普通にミッドに戻ってきたの、自分のせいだって思って・・・・・・それで泣いてさぁ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・・ごめん」
夜の隊舎内の中庭で、パジャマの上からコートを羽織ったフェイトが、申し訳なさげにそう言う。
季節は1月の末間近。まだ・・・・・・良太郎さん達と会う前の事。
「私、またヤスフミに迷惑かけた。また・・・・・・また足を引っ張ってる」
「違う」
「違わないよ。ヤスフミはギンガが居るのに。旅に出て自分なりの夢の時間を過ごしてたのに。
なのに私・・・・・・またヤスフミに甘えた。ごめん、あの・・・・・・もう大丈夫だから」
そう言いながら、フェイトは笑う。僕を安心させるように笑って、そのまま少し下がる。
「ヤスフミが元気そうな顔見せてくれただけで、充分だよ。大丈夫だから。うん、私強いんだよ?」
言いながら、そのまま隊舎に戻ろうとするフェイトの左手を僕はそのまま掴む。
掴んで引き寄せて・・・・・・僕は抱き寄せる。フェイトは、やっぱり震えてた。
「・・・・・・フェイト、約束したよね。一番の味方するって」
「もう、いいの。ヤスフミは充分その約束を守ってくれた。もう、いいんだから」
「僕の愛人になってでも、側に居るって言ったのは誰」
「だけど、これじゃあダメなの。迷惑・・・・・・迷惑かけちゃうから」
「いいから話、ちゃんと聞かせて」
少しキツ目に言いながら、腕の中でもじもじするフェイトを更に強く抱き締める。
「フェイトが言ったんでしょうが。僕達、離れられないって。二人で考えていかなきゃいけないって。
だから一緒に考えさせて。このまままた旅に出ても、僕はアバンチュール一つ出来ないし」
「・・・・・・ギンガに言いつけるよ? ヤスフミが浮気しようとしてるって」
「そうだね」
確かにギンガさんとは、あくまでもお試しな関係。互いの気持ちが離れるような事があったら、即別れる約束になってる。
それでも浮気はいけないね。だったらこんな事するなって話だけど、やっぱ放置は出来ない。
「でも、愛人だったら浮気するのは当然じゃないの?」
「それは・・・・・・うん、そうだね。ならヤスフミ」
フェイトは躊躇いがちに、僕の事を抱きしめる。
本当に夜中で冷え切ってるから、フェイトの腕や胸・・・・・・身体の温かさが心地いい。
「思いっ切り叩いてくれていい。バカだって、笑ってくれていい。話、聞いてくれる?
私一人じゃ重くて、なのはやはやて、母さん達には話辛くて」
うん、そりゃそうだろうね。特になのはは『六課は夢の部隊でみんなの居場所』って認識だ。
それはきっとリンディさんとかも同じ。はやては・・・・・・言いにくいよね。うん、言いにくいよ。
でもフェイトは一人で抱えて、向き合う事も辛くなっちゃうくらいに苦しかった。だから僕を頼ってくれた。
本当だったら振り切らなきゃいけないのに、僕は・・・・・・その言葉に頷いて、フェイトの背中を撫でた。
「聞くよ。それで一緒に考えようか。きっと僕も同じ罪がある。だから、少しくらいは力になれる」
「・・・・・・うん」
それでフェイトと場所を移動して、フェイトの車の中でホットコーヒーを両手で抱えながら色々話した。
この翌日に、イマジンとか色々なものが来るとは知らずに・・・・・・ギンガさんとは共有出来ない罪の重さを、フェイトと分かち合った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・あの時僕は結局いつも通りに『フェイトのしたいようにしていい』って背中を押す事しか出来なかった。
ホント、我ながらなにやってるんだろ。その時には僕はもうギンガさんと付き合ってた。
それならフェイトの事、振り切らなきゃいけないはずなのに。それが正解のはず。なのに、振り切れない。
あぁもう、ダメだダメだ。またフェイトの事考えまくってるし。話ズレちゃってるし。今重要なのは、目の前の事。
恨み辛みや疑念のために、目の前の事すら分からなくなってるバカの事だ。
「鎌田副編っ!!」
「・・・・・・なんでしょう」
うわ、すっごいめんどくさそうに答えやがったし。でもまぁいい。
丁度いいから墓穴を踏んでもらう。・・・・・・もしもマジで犯人なら、そうなるのよ。
「こんなの、編集部の取材だったらありえないですよねっ! コイツは勝手な思い込みで真実を決定してるっ!!
過去ばっかり見て今の事象を何一つ見ずに、逆恨み同然に羽黒レンが犯人だと決めつけてやがるっ!!」
「な・・・・・・勝手な思い込みじゃないっ! お前の方が思い込んでるだけだろうがっ!!」
「黙ってろっ!!」
更に胸元を圧迫すると、目の前のバカは苦しげに顔を歪めて黙った。それで僕は、睨み気味に鎌田を見る。
「・・・・・・まぁまぁ今君が振るっている暴力はアレとしても、確かにシンジのしている事はありえないですね。
そこまで言うのだから何か証拠があるのかと思ったら・・・・・・全部被害妄想の類と来てる。これじゃあ話にならない」
「副・・・・・・編っ! 違いますっ!! 俺は被害妄想で物は言ってないっ! アイツ以外に考えられないじゃないですかっ!!」
「それこそが被害妄想の類だと言っているんだ。確かに羽黒レンは裏切り者かも知れない。
だがそこが今の事象に関係あるかどうかという確証がない。全部お前の証言だけだ」
困ったような顔で鎌田にそう言われて、必死だったバカの顔が固まる。
どうやら自分と同じく裏切られた仲間だから、味方してくれると思ったんでしょ。うん、するわけがないよね。
「シンジ、ジャーナリストとしてと問われてしまうと、私はそう言うしかない。
もし本気で羽黒レンが犯人だと思うなら、その証拠を掴むしかないだろ」
「・・・・・・副編」
「亡くなった桃井編集長なら、そうすると思うが?」
それは嗜めるような言葉に聴こえる。ただ、実際は違う。その中に含まれているのは、辛辣なまでな不快感。
この人はこのバカに対して、身内としてはありえないほどの不快感をぶつけている。いや、これは怒りだよ。
「それともお前はここで私にお前の味方をして、編集長の培ってきたものに泥を塗れとでも言うつもりか」
僕はこのバカが呆然とした顔になったところで、一気に腕を引く。
それでそのまま身体を持ち上げて、このバカを睨みつける。
「・・・・・・そういう事だ、このバカが。てめぇの好き嫌いでこっち振り回してんじゃねぇよ。
お前はガキだ。だから今だって自分の思い通りにならないから、喚く事しかしない」
「違うっ! 俺は・・・・・・俺はそんな事はしていないっ!!」
「違わねぇだろうがっ! そんなに羽黒レンを犯人にしたきゃ、鎌田副編の言うように証拠を見つけてこいっ!!
それが出来ないんだったら、もうじっとしてろっ! お前みたいな頭のおかしい野郎にうろちょろされたら迷惑だっ!!」
「おかしいのはお前だろうがっ!!」
それでこのバカは、僕の胸元を掴んで押し込もうとする。でも、僕は一切引かない。
「お前、夏海さんやギンガさんがこのままでもいいのかっ!!
無実の罪でずっと牢に入れられる事になるんだぞっ!?」
「話逸らすんじゃねぇよっ! というか、それで問題ないけどなにかっ!?
僕達が犯人見つけられなきゃ、それも覚悟してもらわなきゃいけないだろうねっ!!」
・・・・・・アレ、なんか場が凍りついたね。でも、気のせいだからいいとしておこうか。
「・・・・・・助けるために、無実の人間をお前みたいに犯人にしたてて意味があるのか? 無いだろうが。
僕達がやらなきゃいけないのは、なんで慕われていたあの人が殺されなきゃいけなかったのかを知る事だ」
そのまま身を反時計回りに翻して、一気に突き飛ばしてやる。
で、あのバカは当然ながら床に転げる。転げて、すぐに身を起こす。
「なんでアンタも大好きだった人が殺されて、悲しい想いをする人が出なきゃいけなくなったのかを知る事だ。
いったいどこの誰があの人の命を踏みつけたのか、誰が先に続くはずだった時間を奪ったのかを知る事のはずだ」
それで苛立ち気味に僕を見上げるので、叫びながらも一気に見下してやる。
「そしてそれを・・・・・・それを白日の元に晒して、犯人に罪を数えさせる事のはずだっ! 違うかっ!! 辰巳シンジっ!!
お前は羽黒レンを憎みたいのかっ! それとも真実を知りたいのかっ!! ・・・・・・いったいどっちだっ! 答えろっ!!」
「・・・・・・・・・・・・話にならない」
どうやら、マジで人の心を開くのは本当に難しいらしい。
だからこのバカは、立ち上がりながらそう吐き捨てる。
「天才弁護士だかなんだか知らないけど、お前調子乗ってるだろ。・・・・・・でも、もういい。
あの人は、俺が裁く。あの人が犯人なのは間違いないんだ。そうだ、俺がそう決めた」
「無理だな。お前にあの人の罪を決める権利なんてどこにもない。あの人の罪は、あの人が決める事だ」
そうだ、あの人は罪を決めていた。決めて、数えていた。どんな形であれ最高のチームを壊した事を悔やんでいた。
だから素直に信じられた。あの人は違うと。あの人は・・・・・・逆恨みなんかで人を殺せるような人じゃない。
「誰にも人を断罪して悦ぶ権利なんて、あるはずがない。罪は、お前のオナニーのためにあるんじゃない。
罪は・・・・・・過去は数えるもの。その人が向き合って、そこから変わって笑って生きていくために罪を数えるんだ」
でも今のコイツは違う。コイツは言い切った。『自分で裁く』と。
うん、僕が一番嫌いなタイプだ。僕が嫌いなフェイトも、そういう事を言いかねないから。
「犯した間違いから逃げないために、同じ過ちを繰り返さないために・・・・・・だから間違えた痛みを人は『罪』と名づけたんだ。
その痛みと向き合って初めて人は、道をやり直す事が出来るんだ。そうやって今そこにある真実を歪めようとするなら、覚悟決めろ」
確信のままに右手を上げて、僕は未だに憎しみに囚われているバカな迷い子を指差す。そして、こう断言する。
「お前の罪を、死に等しいほどの痛みを持って数えさせる。もしこの場で裁かれるべき罪人が居るとしたら、それは羽黒レンじゃない。
桃井編集長を殺した真犯人と、自らに人を裁く権利があると驕った偽善者・・・・・・お前だ、辰巳シンジ」
「やれるもんならやってみろよ。鏡の中にも入れない、天才弁護士さん?」
そんな事を吐き捨てるように言いながら、あのバカは出てった。それで・・・・・・あぁ、視線が痛い。
なんかすっごい視線が痛い。具体的には恨めし気に僕を見ている夏みかんとか?
「・・・・・・恭文、あれはちょっと言い過ぎじゃ」
「いいのよ。憎しみで目が曇ってるバカには、あれくらい言っても通用しない。なお、経験談」
「いや、そりゃさっきの話で分かるが・・・・・・って、違うから。そっちじゃなくて」
「あなた、なんなんですか」
あー、うん。言いたい事は分かったわ。今僕に対して批難の視線をぶつけてる夏みかんの事ね?
「私達がずっと牢屋に入れられても問題ないってなんなんですかっ!? 私はともかく、ギンガさんだって居るのにっ!!
あなたは正真正銘の悪魔ですっ! あの人の言ったように私やギンガさん、みんなの幸せを壊す最低最悪の悪魔ですっ!!」
それでその夏みかんは、容赦なく僕にそんな事を叫ぶ。苛立ちや怒りを隠そうともせずに叩きつける。
「せっかく私達が出れるところだったのに・・・・・・それをぶち壊してっ!!」
正直この発言に、軽く頭に来ても許されると思う。コイツは大事なところが抜けてる。
大事なところを抜かした上で、自分達が出てる事を望んでいる。そこがイラつく。
「あなた、私達を不幸にしてるだけじゃないですかっ!!
私達と羽黒レンって人と、一体どっちが大事なんですかっ!!」
更にイラつくのは、どう考えても勘違いしまくっている発言。
そしてそのイラつく発言は、悲しい事にまだ続く。
「シンジさんが嘘ついてるわけないのに、どうしてそうなるんですかっ!!」
オーケーオーケー、クールになろうか。まぁまぁ確かに僕にも悪いところはある。
二人の釈放を優先で考えれば、夏みかんの言っている事も正解だ。
だから軽く半笑いになったりするわけだよ。なお、なぜかそんな僕を見てユウスケはオロオロしてる。
それで鎌田は口元が笑ってる。なお、それは僕を見て笑っているんじゃない。
今ここで欲望ぶちまけている20歳なお姉さんを見て笑ってるのよ。
「・・・・・・なるほど。だから無実の人間に罪を着せてOKと。
さすがは夏みかん、思考が最低きわまりない」
「そんな話してませんっ! 私はただシンジさんの言う事を信じろって言ってるだけですっ!!
いいじゃないですかっ! それで私達は外に出られるんですからっ!!」
次の瞬間、甲高い音が響いた。それは・・・・・・僕が夏みかんを右手でぶん殴った音。なお、平手。
夏みかんが何が起こったか分からない顔で僕を見る。でも僕は・・・・・・そのまま怒鳴りつけた。
「・・・・・・してるだろうがっ! お前、今自分で何言ったかもさっぱり分からないのかっ!?
だったら黙ってろっ! 大体お前、全てに置いてウザいんだよっ!!」
睨みながら僕は夏海の胸ぐらを掴んで引き上げる。
すると夏みかんは、怯えた表情で僕を見出す。
「ウザいって・・・・・・なんですか。私達、被害者なのに」
「『私達』? なに勘違いしてんだ。ギンガさんはウザくない。ウザいのはお前だけだ、光夏海。そしてお前は卑怯だ。
いつもいつも巻き込まれた被害者ぶって、結局はこうやって僕やもやしが尻を拭わなきゃなにも出来ない」
真面目に今言った事が許せない。こんな奴助ける価値もないとか、本気で思ったりした。
マジで自分の事しか考えていないらしい。だからさっきから不満そうに・・・・・・腹が立つ。
「結局ここで捕まったのも、全部お前の自己責任だろうが。
それをグダグダグダグダ・・・・・・調子こいてんじゃねぇよ。大体お前は」
「蒼チビ、もうやめとけ」
もやしが両腕を組みながら、そんな事を言ってきた。なお、目が若干怒ってるように見える。
「お前の言いたい事はよく分かる。夏みかんが言った事もまぁ最低だろ。
だがな、それでもやり過ぎだ。・・・・・・誰も彼も、お前みたいに出来るわけじゃないだろうが」
もやしがそう言ったからなのか、涙ぐんで俯きやがったし。てーかまた逃げた。
その様子を見て荒く息を吐きながら、掴んでいた胸ぐらを離す。それで夏みかんの身体はストンと落ちた。
そして僕から怯えたように視線を逸らして嗚咽を吐き出す。僕は・・・・・・右手で頭を掻きむしる。
もうこの愚図はどうでもいい。どうせ一生このままなんだし、気にする必要もない。
とにかくここは証拠集めだね。何にしても確定的なものがないのは、変わらないし。なら、やっぱあの手帳か。
やっぱりまずはアレから調べよう。というわけで、僕はそのままその部屋を足早に出た。
それで後ろから同じように足早に僕を追いかける足音。誰が来たかは、振り返らなくても分かる。
「・・・・・別に来なくてもいいよ? 不満ならもやしにでもついてていいし」
「そういうワケには行くか。俺達はチームだろ? 世界を救う旅をするチームだ」
「誰がそんな事決めた」
「俺がたった今決めた。それがダメなら、やっぱり弁護士助手だからだな」
そんな事を呆れ気味に言うお人好しは、まるで僕に付き従うようについて来る。
「まぁ夏海ちゃんには、事後でいいから謝っとけ。俺ももやし・・・・・・じゃなかった。
士と同じくやり過ぎだと思う。男だったら、女の子の不安な気持ちくらい察してやらないとな」
で、器用にも歩きながら僕の頭を撫でてくるし。
「夏海ちゃん、やっぱ拘置所で相当追い詰められてるんだよ。ギンガちゃんはこういう事件関係に多く関わってるんだよな?
だから食欲以外は大丈夫な感じだけど、夏海ちゃんはそうじゃない。そりゃあ当たり散らしたくなっても仕方ないだろ」
「仕方ない訳あるか。あのバカ、最低な事言い過ぎだし。
・・・・・・てゆうかユウスケ、そういう経験持ちなんだ」
「まぁ俺だってそれなりにな? コレでも学生時代はすごかったぞー?
バレンタインの時なんて、毎年フォンデュが出来そうなくらいもらってたしな」
そんな事を明るく言いつつもついて来てくれるのがまぁ、ちょっと嬉しかったりもした。うん、でも絶対言わない。
「てーかさ、まぁ・・・・・・アレだよ。多分お前は、魔道師どうこうは抜きにめちゃくちゃ強いんだろうな。
正しい事とか、間違ってる事とかを真っ直ぐに見る勇気がある。それはいいとこだ」
それでもユウスケは、『ただ』と言葉を続ける。そして・・・・・・嗜める口調で僕にこんな事を言う。
「ただ、誰も彼もその勇気があるわけじゃない。勇気が出せなくて、甘い誘惑に負けてしまいそうな奴だって居る。
本当に士の言うように、誰も彼もお前みたいに出来るわけじゃないんだよ。特に夏海ちゃんはそうだな」
その口調のままそう言ったのを聞いて、僕は軽いデジャヴを覚える。
「いきなりこんな旅に出る事になって、普通にしてる方が難しい。それを誰かのせいにしたくもなる。
俺はそれは仕方のない事だと思ってる。・・・・・・もう一度言うが、夏海ちゃんだって追い詰められてるんだ」
少し考えて、覚えて当然だと気づいた。だってギンガさんと念話で話した時、ギンガさんにも言われた事。
・・・・・・日に二度もこういう事を言われると、さすがに突き刺さったりするものがある。
「間違った事を間違いだと言える事が強さなら、間違えた人の弱さを受け入れる事も強さじゃないかな?
俺はお前なら、そんな強さを出せるって思う。いや、むしろ逃げない勇気を持つお前だからこそ、そんな強さを出すべきだろ」
「してどうなるってのよ。あのバカ、完全に甘ったれてるってのに」
「でも、しなかったら何も解決しない。夏海ちゃんはなんでお前があそこまでキレたのかも分からないままだ。
もう少しだけ、優しく接してやれよ。夏海ちゃんは本質的には、お前が思ってるよりもずっといい子なんだからさ」
「また分かったように・・・・・・まるで僕がそれが出来るって確信があるみたいだし」
「あるに決まってるさ。お前は口ではどう言っても、夏海ちゃんを見捨てる奴じゃないって信じてるからな」
そう言いつつ、ユウスケは手を離す。それで僕は考えて・・・・・・軽くため息を吐いた。
「まぁ分かった。・・・・・・言いたい事は、分かった」
「ならいいさ。今は素直に謝れなくてもいい。そう言って分かってくれるだけで充分だ。
で、今後の予定は? アレだけ派手にタンカ切った以上、もたもたはしてられないぞ」
「当然アレのご開帳だよ。一旦写真館に戻るよ。・・・・・・『二人揃って』とっとと助け出さなきゃ」
後ろから、嬉しげに笑う声が聴こえた。でも僕はそれを気のせいとしておく。うん、気のせいだよ。
「了解」
やっぱりここで開帳って言うのは避けたい。今度こそ・・・・・・今度こそしっかり中身を見る。
それで真実を必ず掴む。例え中身がアレだったとしても、他の方向で絶対にだ。
”・・・・・・・・・・・・なぎ君”
”何?”
”まずは一言。夏海さんに乱暴し過ぎ・・・・・・くぅ”
なにっ!? 最後の可愛い感じの鳴き声っ! やっぱお腹空いて力出ないんかいっ!!
”ちゃんと言えばいいだけなのに。『私や夏海さんと同じ想いをする人を出したくない』って。
誰かを逮捕するという事は、私達が解放されても別の誰かが不条理な裁判にかけられる可能性があるって”
”・・・・・・20歳にもなってそこを察せないようなバカに、そこまでしてやる義理立てあるの?”
”でも・・・・・・え、夏海さん20歳なのっ!? 私、知らなかったんだけ・・・・・・がふ”
吐血っ!? ねぇ、今のセリフって吐血とかそういうのだよねっ! てゆうか、ギンガさんマジ大丈夫なんかいっ!!
ユウスケと二人シリアスな顔して足を進めながら、僕はひたすらに動揺。だって、セリフおかしいし。
”と、とにかく・・・・・・私はなぎ君の事、信じてるから。でも、私が餓死しない内に犯人捕まえてくれると嬉しいかも。
あとは夏海さんもだよ。夏海さん、やっぱり相当キテる。あんまり長引くと、精神的な部分からダメになっちゃうよ”
”分かってる。ギンガさん・・・・・・ありがと”
”うう・・・・・・あぁ、母さんが見える”
やばいやばいやばいやばいっ! ギンガさん絶対末期だってっ!! 今なんて言ったっ!?
死んだ人見えてるって言っちゃったしっ! よし、絶対に素早く犯人捕まえてやろうっ!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「で、写真館に戻ってきたわけだが・・・・・・蒼チビ、お前は相変わらずKYだな。
もうちょいやり方ってもんがあるだろ。あの凶暴な夏みかんが半泣き状態で」
「それで恭文、例の手帳は」
「既に解錠済み。後は開くだけだよ。というか、ギンガさんヤバい。念話で死んだお母さんに会ったみたいな話してたのよ」
「念話・・・・・・あぁ、魔力を使ったテレパシーみたいなもんだよな。・・・・・・え、死んだお母さんっ!?
おいおい、ギンガちゃん真面目にアウトだろっ! もうそれ命の危機ってレベルだしっ!!」
「・・・・・・っておいっ! お前ら俺を無視すんなよっ!!」
というわけで、いつもの場所に着席した上でお話です。なお、もやしは無視されて当然。
・・・・・・当たり前でしょっ!? なんでか僕達が戻ると、平然とローストチキンを食べてたんだからっ!!
「てか、なんだよ。その手帳」
≪桃井編集長の遺留品の一つです。それも引き出しの中をわざわざ二重底にして隠してました≫
アルトが律儀に頬杖ついてるもやしにそう返すと、もやしの目が見開いた。
それから前のめりになって、僕が白い手袋着用の上で持っている手帳に注目する。
「それはまたタダ事じゃなさそうな感じだな。
・・・・・・でもお前ら、さっきはその話してなかったよな」
「あぁ。中身をまだ見てなかったし、犯人が裁判参加者の可能性もあったからな」
「なるほど。確かに関係者が二人も居たしな。特に怪しいのが一人」
「そういうワケで、俺と恭文で最低でも中身確認するまでは黙ってようって事にしたんだよ」
とにかく僕は既に開いている鍵を外した上で、ページを開く。まずは1ページ目・・・・・・ん?
顔をしかめつつもページをどんどん捲っていく。ただ、その度に疑問が強くなる。
「なんだ、まだ見てなかったのかよ。また行動が遅いな」
「そう言うなって。こっちは羽黒レン絡みの聞き込みやらなんやらで忙しかったんだぞ?
・・・・・・それで恭文、中身はどうだ? 何かこう、重大な秘密が書かれてるんだよな」
「・・・・・・・・・・・・照り焼きハンバーグの作り方」
「「はぁっ!?」」
二人がすっごい驚いた声出すけど、僕は気にしてる場合じゃない。
だってこれ・・・・・・途中まで書かれたページの文章、ちとおかしいもの。
「次のページは8月の日付なのに白菜鍋。その次は焼き魚で、その次は・・・・・・これ、全部料理のレシピだよ」
あ、書き方がちょっと独特かな。具体的に言うと『日付・料理名・調理方法・ワンポイント』が書かれてる。
でも、料理にそれなりに詳しい人間からすると・・・・・・うーん、これはちょっとおかしい。
「あらま、このレシピはところどころ穴だらけだねぇ」
なぜか僕の左横で手帳を覗いてたおじいちゃんが、そんな事を言った。
僕は驚いて、軽くのけぞる。だってあの、気配とか全く感じられなかったし。
「このまま作っちゃったら、一味どころか二味は足りないご飯が出来ちゃうよ。こりゃレシピとしては不完全だね」
「で、ですよね。僕もちょっとおかしいなーって思ってたところで」
「そうだよねぇ。それに文章の書き方も・・・・・・うーん、小難しい感じだなぁ」
そう言いながら、栄次郎さんは首を傾げつつキッチンに戻る。なお、その両手にはワインビネガー。
・・・・・・あぁ、やっぱり早めに二人共助け出さないと。栄次郎さんが『二人共遅いなー』って言ってるのが突き刺さる。
「・・・・・・おい蒼チビ、マジか?」
「マジだよ。ほら」
僕は向かい側に座っていた二人に、手帳を渡す。もやしがその手帳を丁寧に受け取って、ページを数枚めくる。
怪訝そうな表情は、ページを捲る毎にどんどん困ったような呆れたような顔に変わっていく。
「本当だな。マジで料理のレシピじゃないかよ。てーか肉や魚ばっか・・・・・・野菜食えよ、野菜」
≪もやしさん、それは人参嫌いのもやしさんが言う権利はありませんよ≫
なお、当然だけどユウスケももやしにくっつくようにしながら、手帳の中身を見てる。
それで困惑の表情を浮かべて、僕の方を見る。僕は・・・・・・何も言えずに頷く事しか出来なかった。
「そ、そんな・・・・・・嘘だろっ! なんでそんなもんを二重底の下に隠してるんだよっ!!」
「知るか。どっちにしても、証拠集めは振り出しだな。こんなレシピ集じゃ、何の証拠にもならないだろ」
言いながらもやしは、手帳を開いたまま机の上に放り投げる。それで僕は呆れながら、手帳に向かって右手を伸ばす。
「バカ。大事な証拠品を乱暴に扱うなっつーの」
「いや、証拠品じゃないだろ。完全に料理手帳じゃないかよ」
「それでも大事な遺品の一つよ?」
僕から見て逆さ状態になっている手帳を手に取り、そのまま手元に持って行く。
「あとでご家族が居るなら返却する必要もあるんだし、傷でもついたら」
言いながら逆さの手帳を見る。手帳を見て・・・・・・何か引っかかった。
逆さ・・・・・・穴だらけのレシピ・・・・・・夏なのに白菜鍋・・・・・・まさかっ!!
僕は手帳を引っくり返して、もう一度最初のページから一気に読む。
書かれてる日付や時期、そしてレシピの内容も鑑みた上で頭をフル回転。
「・・・・・・恭文?」
・・・・・・そうだよそうだよっ! なんですぐに気づかなかったのっ!?
これ立派な手がかりだよっ! それも超絶最大級のっ!!
そうだ、全部じゃないけど読み取れる。この中に、確かに真実が存在してる事が分かる。
でもまだ足りない。もっと・・・・・・もっと確信が欲しい。もっと、もっと読まないと。
「蒼チビ、どうしたんだよ」
二人が声をかけてくるけど、僕の目は手帳の中身に集中していた。
それで真冬の日付になぜかつくしの佃煮のレシピが載っているのを見て、疑念は確信に変わった。
「もやし、ユウスケ」
「「なんだよ」」
僕は顔を上げながら、自然と笑っていた。笑って・・・・・・その確信を分かりやすい言葉にした。
「証拠、見つかった」
「「あぁ、そう・・・・・・はぁっ!?」」
僕は手帳を一旦閉じた上で、優しく机の上に置く。そしてそのまま立ち上がり、踵を返す。
方向的には、撮影室の入り口を向くようにした僕を照らすようにスポットライトが点く。
そして、周りの照明が一気に落とされる。さて、ここから一気に反撃だ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・えー、やはり桃井編集長は腕利きのジャーナリストだったようです。
もしかしたら彼女はこういう時に備えて、この手帳に日々向かい合っていたのかも知れません」
いや、あの・・・・・・恭文? お前何してんだ。てーかほら、なんで俺達真っ暗なところに居る?
なんでお前だけ照明当たってるんだよ。てゆうかそこ、照明設備のない場所だよな。おかしいだろ。
「そうです。この料理レシピこそ、彼女が残した真実への道しるべです。これで真犯人にも辿りつける事でしょう。
そしてその真犯人は、おそらく鎌田です。ミラーワールドでの行動も合わせて考えると、彼はいくらなんでも怪し過ぎる」
いや、だからなんでちょっと前のめりなんだよ。なんで右手あっちいったりこっちいったりしてんだよ。
あとなんか声色違わないか? 俺、その声すっげー聞き覚えあるんだけど。
「ただ、今回は時間がないのでもう一手間。僕は彼に罠を張ろうと思います。
そのための布石は、既に打たれています。おそらく、『彼ら』はすぐに動き出すかと」
いや、だから誰に話してんだよ。怖いよ、俺マジで怖いよ。
具体的にはなんか照明の関係? なんなんだよ、この写真館。
「解決の鍵は四つ。季節外れな上に穴だらけなレシピばかりが書かれた手帳。異世界からの来訪者。
そして被疑者最有力候補である、羽黒レン。その羽黒レンを過去の事件から執拗に恨んでいる辰巳シンジ」
あの、恭文っ!? 頼むから俺達にも分かるように説明してくれよっ!!
ほら、士共々俺ら置いてけぼりじゃないかよっ! なんなんだ、この状況はっ!!
というかさ、なんか俺ら声出ないんだけどっ! もうちっとも出ないんだけどっ!!
なんなんだよコレっ! 頼むから誰でもいいから説明してくれー!!
「解決編はこの後すぐ。・・・・・・蒼凪恭文でした」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・鏡の中の標的を探して、俺は歩き続けていた。時刻は既に夕方。もうすぐ夜になろいうかと言う時間。
あの青いライダーに打ちのめされた痛みに耐えながら、俺は歩いた。
しかしあの青いライダー・・・・・・どうやら、真面目に俺の知らないところで何かが起きているらしい。
桃井編集長は、まさか本当にあの件を調べていたために殺されたのか?
俺の中でどんどん疑問が、そして欲望が強くなっていく。そうだ、俺もあの弁護士と同じだ。
俺も・・・・・・俺も真実が知りたかった。そしてそのための手段を、一つしか知らなかった。
通りがかった河原の粗大ごみ置き場。底にある割れた鏡に俺は・・・・・・その捜し物を見つけた。
「・・・・・・見つけたぞ」
黄金の仮面とスーツ。そして全身には、羽を思わせる装飾の数々。そうだ、間違いない。
噂に聞く仮面ライダーの中でも最強の能力を与えられたと言われる、オーディンだ。
俺は痛む身体を引きずりながら、鏡の中の街を歩くアイツに狙いを定めてパスをかざそうとした。
でも、左手で掴んだパスを取り出そうとした瞬間、炎と水の奔流が鏡の中から飛び出てきた。
そしてその直前に、あの青いライダーとシンジが変身したライダーが見えた。
そのために俺の反応は一瞬だけ遅れてしまい、そのまま奔流に飲み込まれる・・・・・・はずだった。
「・・・・・・無駄だっ!!」
でも、それは俺の正面に発生した壁によって防がれた。そうだ、突然に分厚い壁が生まれた。
俺は助かった事を本能的に察して、そのまま崩れ落ちた。
奔流を防いでびくともしなかった壁も、続けるように粒子化して崩れていく。
そしてそんな俺の傍らに走り込んでくる足音がした。俺がそちらを見ると・・・・・・あの二人が居た。
真実を知りたいと強く輝いていた瞳をした子と、その子の助手という男がそこに居た。
「士っ!!」
「もやしっ!!」
二人が叫ぶと、鏡の中でピンク色の影が動く。そして二人をバイクで跳ね飛ばした。
よくは分からないが・・・・・・いや、なんとなくだが分かった。だからあの弁護士を軽く睨む。
「大丈夫ですか?」
「よく言う。俺が襲われるのを待ってただろ」
少々恨めしげな表情になるのは、許して欲しい。だが、これで正解だ。
二人は俺の方を見て、申し訳なさげな顔になるんだからな。
あのピンク色のライダーの事も考えると、やはりここで助けるのはタイミングが良過ぎる。
それも当然なんだ。彼らは俺をずっと尾行していて、囮にしていたんだからな。
「すみません」
「いいさ。俺が許可したからな」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・・・・・・・それは2時間前。俺の携帯に知らない番号から電話が入った。
それを不審に思いながらも電話に出ると、電話の声は弁護士だった。
弁護士は挨拶もそこそこに、俺に一つの提案を持ちかけた。それは、俺が求める真実への道筋の一つだった。
「・・・・・・なるほど。つまり鎌田と目の曇ったシンジが俺に襲いかかるかも知れないと」
『えぇ。あなたはさっき会った時にも言いましたけど、犯人の有力候補です。
罪を擦り付けるとしたら、一番手っ取り早い。なおかつ疑問を持つ人間も少ない』
「本来ならツッコミどころが満載なんだがな」
携帯に向かってそう言いながら表情が苦笑気味になるのは、確実にそうなる事を知っているからだ。
なぜならこの世界の人間は、真実には・・・・・・そう思って、一つの可能性に気づいた。
もしかしたら電話の向こうのこの少年は・・・・・・いや、ここはいいか。なによりそこは理由にならない。
なぜなら俺も同じだ。この少年と同じく、この世界ではきっと異端な存在になるんだろう。
「まぁそこはいい。それで? 俺は何をすればいい」
『まぁ簡単に言うと・・・・・・囮になってください。僕とユウスケで後ろから護衛しますんで。
あともう一人のピンク弁護士にも、鏡の内側から鎌田とシンジさんを警戒してもらいます』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そういうわけで、さっきまでのアレコレは全部小芝居だ。そうだ、俺はこの提案に乗った。
鎌田が犯人だと思う確証や推理も聞いたが、乗るのがおそらく一番いいと感じた。
まぁ、鏡の中のオーディンを見た時には多少心が揺らいだが。揺らいで飛び込もうとした。
・・・・・・揺らいで実行する前に襲われたのは、何かの天啓なんだろうか。
「だが」
「なんでしょ」
「お前、俺がこの話を断るとは思わなかったのか?」
「思いました。でも、引き受けてくれる方が可能性として高いかなとも思いました。だって」
あの弁護士が、そう言いながら苦笑気味の表情に変わった。
「あなたは僕と同じで、真実が知りたいとずっと感じてるように見えたから」
「・・・・・・そうか」
そうだな、俺もお前から感じていた。この世界の人間にはない、強い心だ。
だからこそ桃井編集長の調べていた事は事実なんじゃないかと、確信が持てた。
そしてその確信が、こんな行動に走るきっかけになったわけだ。我ながら、色々と甘い。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
向こうさんが色々納得してる間に、俺はバイクを降りてあのバカと鎌田の前に立った。なお、あのバカは殺気立ってる。
なるほど、蒼チビの予想通りか。てーか蒼チビの奴、この状況を予想した上であの場でキレたんだよ。
あの場でシンジを徹底的にコキ下ろせば、コイツはどうする? 当然羽黒レンを犯人にするために、証拠集めに奔走する。
その中で羽黒レンが犯人じゃないと思う確証を、自分で見ていく事に期待したそうなんだよ。
だが、それだけじゃない。最悪の場合、そこに被疑者と思しき鎌田が声をかけると踏んだ。
ようするに『自分と一緒に真実を掴もう』とか、『自分もジャーナリストとして放っておけない』とか言ってだな。
蒼チビがキレてる途中で鎌田を巻き込んだのも、ここが狙いだ。あそこで鎌田はなんて言った?
蒼チビの言った事を肯定して、証拠を集める必要性があると自分の意見を出した。
そんな鎌田の申し出なら、おそらくは二つ返事で嬉しそうな顔をしながら引き受けると読んだ。
それがあった場合、部下である上に蒼チビの鼻をあかそうとしてるシンジが乗らない理由がない。
つまりだ。さっき言った目的と合わせて、あの場でシンジを罵倒しまくった理由はもう一つ。
鎌田が攻勢に出るためのきっかけになってもらうために、シンジを利用したんだよ。どっちにしろ、事態は動くしな。
・・・・・・性格悪いよな。てーか計算高過ぎて恐ろしいぞ。
ナチュラルにそこまで考えてキレてるとは、あの場で誰も予測つくわけないだろ。
現にこの話を聞いた時、俺とユウスケは呆れて物も言えなかった。
なお、夏みかんを罵倒したのも同じくだ。蒼チビは鎌田に対する圧力をかけるつもりだったらしい。
ようするに『自分はダマされない』としたわけだ。そして自分の存在を強くアピールした。
仮に羽黒レンを犯人に仕立て上げようとした場合、自分が邪魔な存在だと印象付けようとした。
ここの辺り、最悪自分が狙われる事も計算に入れてたって言うんだから驚きだ。
むしろ狙って欲しかったとか。そっちの方が話が早いらしい。返り討ちにして徹底的に叩きのめした上でしょっ引く予定だった。
ようするにあの場での事は、『真実を求める事に貪欲で、回りの事を全く気にしない鬼畜野郎』を演じただけ。
俺はそんな性悪で計算高い蒼チビとユウスケの指示で、鏡の中からアイツらの事を探しまわってた。
それで・・・・・・ギリギリだが見つけた。ま、上手くいけば万事OKってとこか。
「・・・・・・士さん、アンタまで邪魔するのかっ!?」
「当たり前だろ」
だから今、龍騎に変身しているシンジに睨まれてるわけだ。しかし、マジで二人同時に襲うとは。
蒼チビとユウスケの読みでは、羽黒レンが狙われる可能性はかなりあるって感じだった。
当然、被疑者の有力候補である羽黒レンに罪を着せるためだ。ただ、二人同時に来るかどうかは賭けだった。
鎌田がシンジに適当な事言って暴走させて、単独で襲わせる可能性もあったらしい。
あっちもこちらと同じく囮扱いだな。で、その間に自分は後ろからさっきのようにズドン・・・・・・ってわけだ。
だからこそ俺が鏡の中で動き、蒼チビとユウスケが現実世界で動いてたわけだ。
てーかコイツ、もしかして焦ってたか? だから確実に潰すために、二人同時で羽黒レンを襲った。
その原因は、蒼チビ達の調査だ。重要なとこは伏せてたが、それでもいくつかの確証は掴めてたように振る舞った。
その上さっきの圧力・・・・・・『やり過ぎだ』とも思ったが、意外と効果があったらしい。
だからこそ、これ以上証拠を掴まれる前に裁判を終わらせようとした。ま、理由があるとしたらそんなとこだろ。
「てーかお前ら、ライダーが鏡の中入ってないのに攻撃はいいのか?
どう考えてもルール違反だろ。なにより、証拠集めはどうした」
「攻撃じゃありませんよ。私達は羽黒レンに自供させようとしただけです」
「そうだっ! アイツが犯人なのはもう確定だっ!!
だから俺達で・・・・・・俺達で真実を導き出そうとしただけだっ!!」
『バカじゃないの? あいにく、真実はお前には一生微笑まないよ。
真実が微笑むのは、ハードボイルドを貫いて手を伸ばす勇気を持った人間だけだ』
その声は、鏡の外。二人が攻撃を撃ち込んだ鏡から見えるのは、蒼チビの姿。
それで蒼チビの手元には・・・・・・あの手帳がしっかりと握られていた。
こうして最終決戦の幕は開いたわけだ。ま、役者もしっかり揃ってるしな。始まらない理由がないだろ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「弁護士、それは」
「桃井編集長の遺留品の一つです。・・・・・・鎌田、この中にお前の事がびっしり書いてあったよ。
お前には桃井編集長を殺す動機がある。そして、お前が殺したと示す証拠も上がっている」
なお、8割方ハッタリ。後者は全部状況証拠だけで、確定的な事は何一つない。
ただし、この手帳の中に最近の鎌田の事がびっしり書いてあったのは本当の事だよ。
「鎌田、犯人はアンタだ。アンタはレンさんに罪を着せるために、シンジさんを利用して襲った。
さぞかしそのバカは利用しやすかっただろうねぇ。なにせ恨み辛みで完全に目が曇ってるわけだし」
『ふん、バカな。そんな事はありえない』
あらま、凄まじく僕をバカにしてくれてるねぇ。もう嘲るような笑い方した上で、相当強く確信持って言い切ったし。
まぁまぁそこの辺りがムカついたけど、それでも僕は冷静にこう聞く。
「どうして?」
『当然だ。その手帳は』
鏡の中の鎌田の声が止まった。さてさて、これは焦っていたと読むべきか。はたまた油断と読むべきか。
でもまぁ、どっちでもいいか。大事なのは・・・・・・今鎌田が墓穴を掘った事なんだから。
「その手帳は・・・・・・何? ねぇ鎌田、どうしてお前は僕の言ってる事が『ありえない』って笑えちゃうのかな」
そう、鎌田の墓穴はここ。なぜこの手帳の中身を、鎌田が知っているような口ぶりなのかが気になる。
というか、気にして当然じゃない? 今の『ありえない』は相当確信こもってたしさぁ。
「ねぇ、お願いだからちゃんと話してよ。なんでお前は、この『机の引き出しの二重底の下』にあった手帳をそう言い切れるのかな」
「それはアンタが、この手帳を見たからじゃないのか? それも桃井編集長の目を盗む形で。
いや、事件後・・・・・・自分にとって都合の悪い情報が載っているものを処分する作業中にだ」
でも、この手帳は見逃された。普通に見る分には、ただの料理のレシピだから。
だからあの場に残っていた。本当にギリギリだけど、真実は未来に繋がったのよ。
『・・・・・・違う。私はその手帳の中身を、桃井編集長から見せてもらった。
それは、ただの料理のレシピだった。だからそんな事があるはずない』
「へぇ、そうなんだ。ちなみにそれはいつの話?」
『つい最近・・・・・・そう、1週間前の話だ。編集部のデスクで楽しそうに書いていた』
「そう。じゃあ断言してあげるよ。お前の言っている事そのものが、あるはずがない。だってこれ」
鏡の中から僕の顔が見えているかどうかは分からないけど、それでも不敵に笑ってやる。
こういうのはハッタリが大事。言葉に力を持たせるのは、揺らがぬ確信だ。だから僕は、その確信を振りかざす。
「そういう風に偽装した、秘密の取材手帳なんだから」
『・・・・・・なんだとっ!?』
「確かにこの中には、料理関係の事しか書かれてない。それは事実。でも、それこそが偽装だ。
・・・・・・料理の品目は、書かれている項目が何かを示している」
「レシピとワンポイントアドバイスは、ところどころ抜けているけどある程度の法則性で書かれている暗号文」
もうちょっと言うと、抜けてる部分こそが本文でもあるのよ。そこからまた解読作業が必要ではあったけどね。
「どちらもどういう情報が入ったとか、それでどう思ったとか・・・・・・解読するの、ちょっと大変だったけどそこは確認済みだ」
もちろん桃井編集長自身がそこを見抜かれにくいように、ある程度法則性をバラしてパターンを多様化している。
バラしてはいるけど、アルトとユウスケと栄次郎さんに協力してもらって大分中身は読み取れた。だからここまで言える。
「それでこの手帳にはここ『ひと月』、ただひたすらに魚レシピの料理ばかりが書かれている。特にサメ料理が多い。
それでその暗号文には、こう書かれていた。『・・・・・・鎌田は異世界から来た存在で、人間じゃないかも知れない』ってさ」
なお、ハッタリです。真面目な話をすると、完全には解読出来なかった。それでも僕は勝ち誇ったかのように笑う。
いや、しょうがないのよ。正直細かい罠を大きく見せるくらいの事をしなきゃ、魚は釣れない。
「多分サメ・・・・・・魚は、お前が今変身しているそのライダーそのものを示している。
現にバリエーションが足りなくて、今は時期じゃない魚料理までレシピに加わってるくらいだ」
「ついでに言うと、お前が桃井編集長を狙撃したと思われる弾痕も見つかってるのよ。
お前、水の能力使って桃井編集長の首撃ち抜いてるでしょ。あとはお店の人の証言?」
当然だけど、あのオープンカフェの人達にも鎌田のアリバイ関係を確認した。そこはレンさんに会いに行く前にね。
「桃井編集長の死亡時刻、所要でカフェの店員は外には誰も居なかったんだってね。いや、聞き出すの苦労したよ。
で、あそこは人通りも少ない位置に居る。そのためにお前がおとなしくコーヒー飲んでたのを見たっていう人間が誰も居ない」
勝ち誇った表情をそのままにしながら伝えるべき大事な事は二つ。あの場に鎌田が居た事と、鎌田『だけ』しか居なかった事。
人が居れば異能力はさすがに使えないだろうけど、そういう状況だったならおそらくは・・・・・・やれた。
「つまり、お前のアリバイは現時点では完全じゃあない。
というかさ、もう申し開きは出来ないでしょ。だってさっき自白したし」
「まずこれが暗号文を掲載した手帳なのは確定だ。そんなものをどうしてお前に見せる?
その話そのものだって少しおかしいじゃないか。そうだ、お前は編集長に見せてもらったと言った」
「それが1週間前だっけ? でも、ここにお前の事が書かれるようになったのはひと月・・・・・・いや、もっと前だ。
鎌田、お前に対して桃井編集長は形はどうあれ強い疑念を抱いていた。なのにこの手帳を見せるわけがない」
秘密の手帳で、あんな厳重に隠してるものを他人に見せる? もうね、ぶっちゃけありえないわ。
多分桃井編集長が手帳を編集部に隠していたのは、仕事場なら誰か・・・・・・シンジさんとかが必ず見つけてくれると踏んだから。
つまりこの手帳は、『自分の身に万が一の事が起こった時の保険用の調査手帳』なのよ。
普通のプライベートな日記とかなら、自宅に隠しておけばいい。そっちの方が確実だ。
つまりなぜあの場にこんな物を隠す必要があったかも、この手帳の価値を考えるなら考慮する必要がある。
例えばあの隠し方に鍵付きの手帳、そして暗号文と思しき書き方をされている中身。
これだけでもその重要度は十二分に読み取れる事間違いなしだよ。というかさ、よく出来てるよ。
暗号文の表面を料理の話題にしたのは、警戒されて悪意を持った誰かに手帳が処分される事を避けるため。
もちろん、完全な方法じゃあないけど。でも立派に『取材ノート』って書かれてるよりは、ずっと安全。
実を言うと、僕も別方向なんだけど全く同じ暗号文を作ってるのよ。具体的には魔導の研究ノート。
鋼の錬金術師で、エドやドクター・マルコーがそういう研究ノート作ってるってのを見て、面白そうだから真似したの。
ちなみにサリさんとヒロさんも同じく。二人は『出来る男(女)の秘訣メモ』って形で作ってたのであしからず。
「そしてそうなると・・・・・・当然ながらお前はどこでどうやってこの手帳を見て、中身を知ったのかという事が疑問になってくる。
それもしっかり鍵までかかっていた手帳の中身をだ。鎌田・・・・・・もう言い逃れは出来ないよ? もうキリキリ吐いちゃおうか」
「お前は、俺達に何かを隠してる。それもとんでもなく大きな事だ。違うか?」
僕とユウスケが畳みかけるようにそう言うと、鎌田は沈黙した。
返事を待つけど、何も言わない。それで数秒後にその沈黙を破ったのは、鎌田じゃなかった。
『・・・・・・副編、あなた』
それはシンジさん。もう完全にうろたえてる声だね。あんまりな事実に、涙目なのが目に浮かぶよ。
『騙されてはいけない。シンジ、お前は羽黒レンが憎かったんじゃないのか?
裏切った羽黒レンに復讐したかったんじゃないのか? 彼らはその権利をお前から奪おうとしてる』
理論武装で、シンジを騙す方向で動くつもりか。・・・・・・僕は手帳をレンさんに手渡す。
レンさんは何も言わずに強く頷きながら、手帳を受け取ってくれた。それからすぐに、左手でベルトを取り出す。
それは黒色で、緑と黄色のラインがバックラーに入っているゼロノスベルト。
これがアルトに調整を全任せにしていた、僕の切り札。
そして、デンバードと一緒に跳ばされてきたケースに入っていたもの。
左手からカードを取り出している間に、洗脳はまだ続く。
『大体、貴様だってそうだ。なぜ羽黒レンを・・・・・・あんなお人好しと、粗暴な輩を信じられる』
『別にそっちの黒いのは信じてるわけじゃないさ。・・・・・・俺は人を信じる事が出来ない。
人の痛みを感じる事も。だから、ユウスケと蒼チビの信じるものを、俺も信じてるだけだ』
あ、なんか名台詞っぽい事言ってるし。でも、すぐに鼻で笑うような声が聞こえる。
『・・・・・・ユウスケは優しいところしか取り柄がないバカだしな。
そして蒼チビは、目的のためなら平然と暴走出来る超絶的な愚か者だしな』
「「・・・・・・って、おいっ!?」」
よし、お前今すぐ殴ってやる。そっち行ってぶん殴ってやる。・・・・・・僕は左手の親指で、バックル上部のレバーを押す。
するとベルトから、笛の音のような音楽が鳴り響く。僕はカードの赤い面を表にしつつ、バックルに挿入。
「変身」
カードをバックルの右横から挿入すると、バックル中心部の緑と黄色のラインが入った円形部分が動く。
動いて、カードの赤と緑が重なり一つのラインを描く。そして僕のそこから赤色のガラスのような光が弾けた。
≪Charge and Up≫
その光が僕の身体に纏わり、光は黒いスーツに変化。そこに錆びた朱色のアーマーを装着していく。
手甲も、ブーツも、側面だけを覆う形の肩アーマーも、線路を模しているY字のラインが入ったプレストアーマーも全て朱色。
そして、フルフェイスなヘルメットの真ん中の線路を走って眼前に装着された仮面の瞳も・・・・・・朱。
両腰には、ゼロガッシャー。そして右手に取り出すのは、10門の小さな砲門が付いているガトリングガン。
というか、デネビックバスター。なお、どれもこれもAMF完全キャンセル化だろうと使用可能です。
具体的には、魔力をベルトを通して変換してそれでは対応出来ない別のペクトルの力にしているのよ。
そしてそんなマル秘機能まで搭載しているこれは、ZERONOSジャケットッ!!
当然、ゼロノスを模した特殊装甲装着版のバリアジャケットッ! DEN-Oジャケットの姉妹品っ!!
「お、おいおいっ! なんだよそれっ!! てーか恭文、お前も仮面ライダーだったのかっ!?」
「うん、今だけはそうだね。言うなら仮面ライダーゼロノス2号だよ」
「2号っ!?」
「それでアルト、身長伸びてないんだけど」
ほら、このベルトそういう機能付いてたよね? 言うならダイレンジャーのキバレンジャーとか、ワタルのキバみたいな感じでさ。
なのにどうして僕の身長は未だに154センチ? これじゃあ2号じゃなくて『ゼロノスミニ』になっちゃうし。
≪魔力の燃費向上のために、その機能はOFFにしました。
というか、あなたの身長が伸びると因果律が歪みますし≫
「そんなワケあるかボケっ! むしろ世界は僕の身長が伸びる事を望んでるよっ!!」
とにかく、そこの辺りを議論している余裕はない。アルトにはあとで説教するとして、僕は飛び込む事にした。
銃身の真ん中を左手でしっかり保持して、そのまま鏡に向かって走りこむ。
「・・・・・・うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
強く、強く鏡の中に入れると信じ抜いた。そしてその想いが、世界の境界を壊した。
僕はそのまま鏡に吸い込まれ、色んなものが反転した世界に飛び込んだ。
(第8話へ続く)
あとがき
フェイト「えっと、そういうわけでディケイドクロスの第7話はいかがでしたでしょうか。
今回、ちょっとだけ出番があったフェイト・T・ハラオウンと」
恭文「この話の中だと、未だ迷ってる最中の蒼凪恭文です。
・・・・・・みなさん、言いたい事は分かります。なんで龍騎編完結しなかったかって事ですよね」
フェイト「そこにはもちろん事情があるんだよね。というか、1話でまとまり切れなかった」
恭文「うん。あのね、戦闘シーンも含めて色々書き込んでたら、普段の倍近くの分量になったんですよ。
なので2分割しました。なので、実は次の本当の龍騎の世界編の完結話は既に書きあがってたりするんです」
(まぁまぁ最近のとまとの傾向からみなさんご想像がつくでしょうけど、大半戦闘シーンです。
まずいなぁ。普通でも1話2万文字とか書いてるはずなのに、最近はボス戦だと平気でそれ使い切っちゃう)
恭文「あとは誤字修正とかちょっと頑張って、また連続でアップですね」
(とりあえずあと30〜70キロバイト程度は書き込める)
恭文「というか、ラストを見ての通りZERONOSとしての戦闘シーンなんで気合い入って」
フェイト「ヤスフミとしては珍しく、銃撃戦がメインの戦闘になってるんだよね。というか、デネビックバスター中心」
恭文「うん。そっちの方は、是非ともお楽しみだね。それで今回の話は、アレだね。やっぱフェイトとの事」
フェイト「まだこっちのお話の私もヤスフミも、互いのこれからの関係が見えてない感じなのかな」
恭文「一応そういう方向だね。別にいきなり第三夫人になるって感じじゃないのよ。でも、今までの付き合いもあるしさ。
それに六課関係の事で、どうしても似たような後悔とか背負っちゃってるわけでしょ? そこを相談しあえる相手でもあるし」
フェイト「ギンガやなのは、スバル達はここの辺りだめなんだよね。まずギンガとスバル達は知る権利そのものがないし」
(つまり、六課の裏事情関係で愚痴りたい事があっても、蒼い古き鉄も閃光の女神も愚痴れないのです)
恭文「なのはやフェイト・・・・・・事情知ってるメンバーも、色々話辛い部分はあるんだよね。
出来るとしたら、師匠達守護騎士メンバーくらい? クロノさん達に話すと嫌味に繋がりかねないし」
フェイト「当然だけど、母さんもだめ。母さんは組織の人間として六課の存在を肯定するという姿勢を決めてるから。
そうなると、私もヤスフミもそこの辺りをお話出来るのって・・・・・・やっぱり私はヤスフミだし、ヤスフミは私になるんだよね」
恭文「そうなっちゃうんだよね。だからこの話の僕もそれ絡みだと相談に乗ってしまうって感じ?
自分も重いの持ってるから、余計に吐き出せない辛さが分かる。結果、皮肉な事に繋がりが深くなる」
(それの一旦が、冒頭での回想シーンだったりします。
というか、新しい観点を考えた時にこの切り口をやってみたくなったり)
フェイト「ヤスフミ、そう考えるとあの、私とヤスフミが離れがたい感じになってるのって・・・・・・六課の事が要因にも成り得るんだよね」
恭文「そうなっちゃうんだよね。でもこれで結婚式とかで『六課が僕達を結びつけてくれました』とは言えない」
フェイト「そうだね。私もさすがに・・・・・・ちょっと躊躇う。まぁ、本編はこれで問題ないんだよね。
やっぱりIFだと問題なんだよね。相手に距離感の差を感じさせちゃうし」
恭文「・・・・・・そこなんだよねぇ」
(蒼い古き鉄、頭が痛くて机に突っ伏す。なお、作者も同じく)
恭文「でもさ、だからって例えばこの話の中でギンガさんにそこ全部バラすわけにもいかないわけですよ。
さっきも言ったけど、フェイトだって話せる人間限られるでしょ? というか、ぶっちゃっけ師匠達にだって話し辛いよ」
(そうなる要因を作って、勝手に夢改竄した張本人の家族だしねぇ。話されても辛いだけだって)
フェイト「そう、なんだよね。だからついついヤスフミを頼っちゃって・・・・・・あの、ごめん」
恭文「僕は別にいいよ。フェイトどうこうじゃなくて、僕の勝手でやってるんだし」
(・・・・・・いや、よくないでしょうが。IFヒロインはどうするのさ)
恭文「・・・・・・・・・・・・えー、本日はここまで」
(逃げたっ!?)
恭文「逃げたとは失礼な。戦略的撤退を提示しただけだよ。それでは、次回は戦闘編。
何気に射撃武器オンリーで大暴れは初めてで、とっても楽しみな蒼凪恭文と」
フェイト「IFでのヤスフミとの関係、まだまだ試行錯誤だけど頑張っていきたいと思うフェイト・T・ハラオウンでした。
・・・・・・というかヤスフミ、ファイナルアタックライドとかも出るの? ほら、キバの世界では無しだったし」
恭文「えっとね、キバの世界は自分を追い詰めてアレだったけど、今回は・・・・・・続きはWebでっ!!」
フェイト「どうしてそれかなっ!? というか、今この時点でWebだよっ! それ当たり前の事だからっ!!」
(というわけで、次回のお話・・・・・・あー、やっぱりもっと書き込みたいかも。
本日のED:CHEMISTRY『Period』)
夏みかん「本当に・・・・・・なんなんですか、あの人。私、卑怯なんかじゃない。
自業自得なんかじゃない。被害者なのは当然なのに・・・・・・なんで」
ギンガ(・・・・・・夏海さん、やっぱりそうとうキテるなぁ。まぁ殴られたし当然か。
でもなぎ君・・・・・・あぁ、やっぱりなんだ。なぎ君の心の中には、フェイトさんが居る)
(真・ヒロイン、そこまで考えて膝を抱えて落ち込む。なお、お弁当食べてちょっと元気になりました)
ギンガ(シンジさんにした話、間違いなくフェイトさんの事だよ。他に該当者は居ないもの。あの時なぎ君、フェイトさんの事思い出してた。
ううん、きっとフェイトさんが泣いてるのとか、後悔してる姿を思い出して・・・・・・だからあそこまで言い切れた)
(そして表情を険しくして、両手を強く握り締める)
ギンガ(そういう部分からも来てるのかな。事件中・・・・・・私では絶対に知り得ない高度な極秘機密絡みで、繋がりが強くなってる。
うん、分かってるよ。私は私の歌を・・・・・・あるがままの私で勝負していくしかないんだって。私は、フェイトさんにはなれない)
(それでも目を閉じて、思い出すのは・・・・・・やっぱり蒼い古き鉄の顔)
ギンガ(なぎ君の中のフェイトさんと勝負する権利を、私が一番を目指すための時間はもらった。でも、こういう時は辛い。
それ絡みの話になると、なぎ君は私の方じゃなくてフェイトさんの方を向きがちになる。うん、ちゃんと分かってるよ)
夏みかん「・・・・・・あの、ギンガさん? 大丈夫ですか。なんだか顔色悪いですけど」
ギンガ(機密絡みの事だし、私に迷惑かけないようにってしてくれてるのは分かる。
だけど・・・・・・嫌だ。入り込めない壁みたいなのを感じて、とても悔しい)
夏みかん「ギンガさん、私の声聴こえてますか? ギンガさ・・・・・・ダメ、聞いてないっぽい」
(おしまい)
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