[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース04 『ギンガ・ナカジマとの場合 その4』(加筆修正版)



『・・・・・・結局アンタは、恭文が好きなんやない。恭文が魔法使えて強いから好きなんよ。そうやなかったらいらないんやろ?
今ゴネてるんは、そんな恭文が自分の側から離れて、自分の部隊に入って働いてくれん道を行くからゴネとるだけや』

「違うって言ってますよねっ! 私は、そんな風になぎ君を見た事なんてないっ!!」





だって、局にはみんなが居る。みんなでなぎ君の事を守って支えてあげられる。なにより私の居場所なんだ。

それを嫌って欲しくない。ううん、好きになって欲しい。だって・・・・・・私自身まで嫌いって言われてるようで、凄く悲しいの。

それの何がいけないの? 誰だって好きな人に、自分の事や自分の仕事を嫌ってなんて欲しくない。



そんなの、ちゃんと理解して欲しいに決まっている。それを求める事の何がいけないのかな。



好きな人と一緒に頑張って、同じ道で一緒に生きていけたらいいなって夢を見て、何が悪いの?





「なにより私、グズグズなんてしてませんっ! ただ私は、ちゃんとして欲しいだけですっ!!
みんなと同じように、普通に・・・・・・無茶なんてして傷ついて欲しくないだけですっ!!」

『・・・・・・それが中途半端言うてるんが分からんのか』



そう反論しても、部隊長が呆れ気味に私を見るのは止まらない。ううん、哀れまれてるのかも。



『アンタ、局員としても女としても中途半端や。本気で惚れた男の全部を認める覚悟もない、ホンマもんの臆病もんや。
・・・・・・自分を局員言うなら、今ここで恭文を切り捨てるんや。それがアンタの選ぶべき道や。いや、アンタはそうせんとアカン』



そんな事、出来るわけない。今ここで私がそんな真似をしたら、本当にあの子は一人になる。

そんなの絶対だめ。だから・・・・・・そうだ、私は中途半端なんかじゃない。



『でもアンタは今目の前に居る恭文を認めようともせず、自分の頭の中で描いた予想図通りに動かんからゴネてる。
それで怖い。自分の予想図が・・・・・・恭文のためと思って考えたものが、実は自分の都合によるものやったと認めるのが怖い』

「違い・・・・・・ます」

『なんも違わんよ。もう一度言うけど、アンタは逃げとる。恭文と自分が違う人間言う基本的なとこから目を背けとる。
結局ただ自分のワガママが恭文には通らんから、喚いてるだけやんか。そんなん、ジェイル・スカリエッティと同じよ』

「違う・・・・・・私は、違う」



それが腹立たしくて・・・・・・だけど、反論する権利そのものもないって、どこかで思ってる自分が居る。



『ワガママが通らんから、今かてゴネてる。違うか? ・・・・・・もうな、マジでぶっちゃけるわ。てーか我慢が出来ん。
うちはアンタの存在が、不愉快以外の何ものでもない。アンタ、ホンマ恭文の友達やめてくれんか? もう消えてや』





だって私はここに来るまで、ずっと自分が中途半端だと思ってたんだから。

そうだ、私はなにも言えない。反論する権利そのものからない。

私の、せいだ。全部・・・・・・全部私が悪いんだ。私がなぎ君を苦しめてる。



私がもっとちゃんと出来てたら、私さえ居なければ、こんな事にはならなかったんだ。





『・・・・・・まぁえぇか。アンタが後悔しようがしまいが、うちには関係ないし。
うちが言うまでもなく、その調子続けとったら恭文からあっさり切り捨てられるやろ』



そしてその感情が、更に強くなる。私、逃げてる・・・・・・のかな。



『それで話戻すけど、恭文の説得はうちらには無理や。そして今のアンタには更に無理や。
ハッキリ言えば、恭文ここで辞めさせる方がうちは手間が少なくて済む』



もう部隊長は受け入れてる。その理由は、今までの話の中にある。なぎ君は止められなくて、ここがなぎ君の世界だから。

なにより、そんななぎ君と付き合う覚悟を決めてる。だから私みたいに揺らがない。私みたいに、ズレない。



『それでギンガ、悪い事は言わんからアンタはすぐにこっち戻ってき? 転送手続きはこっちでしとくから』

「・・・・・・でも、なぎ君を残しては帰れません。このままじゃなぎ君、殺し合いに近い事をする」

『じゃあアンタ、そこに居てなにするんよ』



今の部隊長は、いつものどこか飄々とした部隊長と違う。私にとても厳しい口調で物を言っている。

どうやら私、本気でなぎ君に関わらないで欲しいと思われているらしい。視線や口調から、そういう感情が見え隠れしてる。



『居てもアンタ、役立たずやろうが。恭文だけやのうて、エリスさんやフィアッセさん達の行動の邪魔やんか。
まぁ現場に出て恭文止めようとするのもえぇやろ。ただし、その場合はアンタ・・・・・・死んでも責任持たんから』





その言葉を否定出来なかった。確かになぎ君はその・・・・・・ある。

なぎ君にとって、そういう事をする人間は敵も同然になるって知ってる。

それで私が役立たずなのも知ってる。だって私、まだリハビリ中だもの。



だけど、このまま戻っていいのかって声がする。だから今、凄く迷ってる。

止める事はもう不可能で、私達はただ状況に流されるしかなくて・・・・・・どうして、かな。

私はなぎ君にまたあんな戦い方、して欲しくない。重いものを背負って欲しくないだけ。



だから他の人と同じようにルールに自分を預けて、少し楽になって欲しい。だから今だって必死に言ってる。

それが大人で、社会に生きる人間の当然の義務。そして、それに従えば社会そのものが人を守ってくれる。

これは悪い事じゃない。みんなそうしてる。私だって、スバルだって、部隊長達だってみんなそうしている。それが普通。



なのに・・・・・・なのになぎ君は、そうしようとしない。私達が、世界や局が、なぎ君に憎まれてるから?

嫌、そんなの嫌だよ。やっぱり私、そんなのは納得出来ない。なんでそうなるのか、私は分からない。

そんな感情があるから、なぎ君は私の話を聞いてくれない。みんなの手を振り払って、一人になっていく。



止めたいのに、言葉が通じない。私達はどんどんズレて、どんどん離れて・・・・・・違う。



私が全部いけないんだ。私さえ、私さえ居なければよかったんだ。そうすればよかった。





『まぁ昨日は色々あったし、うちもゴチャゴチャ言うてもうたし・・・・・・今すぐ決めろ言うんも無理か。
夕方ごろまた通信するから、それまでに一応でも決めておく事。えぇな?』

「・・・・・・はい」










なぎ君が離れていく本当の原因を突きつけられてもなお、私はまた流されてしまう。

流されてきっと、戻る事を選びとる。だって私は局員だから。

でも、本当にそれでいいの? なぎ君を残したままで、本当にそれでいいのかな。





このままで本当にいいのかって、声がする。だけど・・・・・・私はなぎ君みたいには出来ない。

だって私の自信は、局員として積み重ねてきたものが大半だから。それを除いてしまったら、何もない。

情けない事に、何もないの。それでね、そこまで考えて気づいた。それじゃあ、ダメ。





それじゃあダメなの。それじゃあ私、勝てないの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてお昼頃。なんだかんだでかなり集中して訓練してしまった。





僕は中庭から移動を開始。汗を流そうと、部屋を目指し歩き始めた。










「・・・・・・あれ?」





メインの道まで戻ってきたところで、入り口の方からでっかいボストンバックを抱えて歩く女性を見つけた。

茶色のコートに白いスカート。季節外れだけど素敵な白い帽子なんてかぶってる。

で、一歩歩くたびに栗色でウェーブのかかった髪が揺れて・・・・・・あぁ、そう言えば来るって言ってたよね。



なので僕はその人に近づいて、優しく紳士的に声をかける。





「・・・・・・荷物、持ちましょうか?」

「あ、大丈夫ですよ。これくらいはいつも・・・・・・あらま。なんで居るん?」



・・・・・・フィアッセさんから聞いてなかったのか。なんか僕の事を見て、ビックリしてる。



「コンサート、友達と聴きに来たんですよ。フィアッセさんに誘われて」

「なるほどなぁ。なぁ、その子って女の子?」

「そうですけど・・・・・・なんで分かったんですか」

「いや、君の交友関係考えたらそれは分かって当然やて。
アレから知佳ちゃんともかなりマメに連絡取り合ってるみたいやしなぁ」



・・・・・・まぁ、ここは考えない。確かに女の子大半だけど、気にしない。

あと、知佳さんはいいの。年は離れてるけど、大事な友達なんだから。



「それでアレやろ? うちと同じくH友達しとるとか」

「してないですよっ!? てゆうか、そこに自分含めるんかいっ!!」

「恭文君、大丈夫。うち、年下は好みやから」

「そういう問題じゃないからー!!」



・・・・・・さて、こちらのお姉さんは椎名ゆうひさん。僕の知り合いの一人で、フィアッセさんの先輩歌手。

このスクールの出身者で、SEENA(シーナ)という歌手名で世界に名を轟かせてる凄い人なの。



≪ゆうひさん、お久しぶりです。お変わりないようですね≫

「お、この声はこてっちゃんやないか。うんうん、お久しぶりなぁ。
なぁ、自分相変わらず毒舌キャラで恭文君弄ってるんか?」

≪いえいえ、私はいつでも謙虚なサポートキャラですよ?
だからマスターに日々虐げられて踏みつけられて≫

「そんなことないからっ! むしろそれは僕のセリフだからねっ!?」

「はは、やっぱり変わりないみたいやなぁ。なんや安心したわ」





このお姉さんは関西弁で気さくな感じにも関わらず、しっとりとした素敵な歌声を持っているのよ。

世界的に有名な歌手の一人として名を連ねている。なお、僕とは数年前に知り合っている。

・・・・・・あのね、海鳴にさざなみ寮って言う魔窟があってね? 美由希さん経由でそこの手伝いを頼まれたの。



それで2週間ほど寝泊りして仕事を手伝った事があるのよ。ご飯作ったりとか洗濯したりとか掃除したりとか頑張ったの。

で、ゆうひさんはその時さざなみ寮に滞在していたお客人・・・・・・訂正、里帰りを果たしていた一人だった。

なんでも、大学在学中に寮に住んでたらしい。その時にスクールのスカウトマンにスカウトされて、ここの生徒になったとか。



で、その時またごたごたして・・・・・・年こそフィアッセさん以上に離れているけど、僕の魔導師としての顔も知っている友人となっている。



でも、あの時はびっくりしたなぁ。そして思ったよ。やっぱり海鳴っておかしい街だと。だって・・・・・・ねぇ?





「でも、相変わらず綺麗ですよね。最後に会ったのはちょっと前ですけど、その前から外見年齢変わってませんし」

「あ、ありがとなぁ。でもうちもさすがに年やから、こう・・・・・・若い子には負けるよ」

「あぁ、そうでしょうね。肌のハリとかが違いますもん。化粧も前に会った時より濃くなってますよね」

「そうやろ? どうも最近化粧のノリが悪いし肌も荒れるようになってもうてなぁ・・・・・・って、ちょっとっ!?
そこは『そんなことありませんよ、ゆうひさんはいくつになっても綺麗で可愛くて素敵です』言うべきやろっ!!」



あはは、絶対嫌だ。だって僕フェイト本命・・・・・・本命なのに、なんでギンガさん連れて来たんだろ。

てーか、今回はマジで帰って欲しい。居ても足手まといだし、怪我されても僕は責任が持てない。



「それで『もう今すぐプロポーズして教会に駆け込みたいくらいですよ』とか言う所やろっ!!
ほら、うちらH友達なんやし、問題ないやろっ!? というわけで今すぐ教会行くでっ!!」

「なんでいきなりそうなるっ! つーかおかしいからっ!! どんだけ自分持ち上げたいんですかっ!!
そしてH友達言うなー! ゆうひさん、しばらく会わない間にシモネタに広くなってませんかっ!?」

「いや、自分はこういう方向性でからかうとめっちゃ反応が面白い言う事に、今更ながら気づいてな」

「そこ気づかないでー!!」



くそ、誰の入れ知恵っ!? ・・・・・・そう、ゆうひさんは入れ知恵されたんだっ! 絶対そうなんだっ!!



「てゆうか、そういう風に言うても言い訳出来んやろ?
初めて会った時、うちの生まれたままの姿を目に焼きつけて」

「それは言わないでー! あと、その映像は永久封印したからいいんですっ!!
・・・・・・そこはともかく、荷物持ちますよ。素敵なレディを助けるのは、男の役目ですし」



言いながら僕は右手を延ばす。ゆうひさんはそれを見て、微笑みながらバックを渡してくれた。

というか、結構重い。てゆうか、これをゆうひさんだけでここまで? またきつかっただろうに。



「うん、ほんならお願いな。いやぁ、あいかわらずのタラシっぷりで安心するわぁ」

「・・・・・・砲丸投げ世界記録って、何メートルでしたっけ」

「言いながら投擲体勢っぽいポーズ取るのやめてくれんっ!? てゆうか、アンタ何かあったんかっ!!
なんかいつにもまして沸点低い感じがするんやけどっ! あと、うちのツッコミを流しながら力溜めるのやめてー!!」










というわけで、荷物を渡されて僕はそれを慎重に持ちつつ、再びスクールの校舎の中に入った。





胸の内で色々と決意を改めつつ、僕はゆうひさんと漫才をやりつつ足を進めていく。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先の事


ケース04 『ギンガ・ナカジマとの場合 その4』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フィアッセ、久しぶりー」

「ゆうひっ! ・・・・・・うん、本当に久しぶりっ!!」





そうして、校長室に到着した。で、二人感激で抱き合ってる。

なお、フィアッセさんとゆうひさんは友達同士です。

なんかゆうひさんがスクール在学中に知り合って、それから姉妹のように仲が良いらしい。



いや、違うか。その時スクールに居た在校生全員姉妹みたいに仲が良いらしい。



フィアッセさん曰く『お姉ちゃんが沢山居る状態』・・・・・・とか。





”・・・・・・あの、なぎ君。この方は?”

”・・・・・・・・・・・・ギンガさん、なんでまだ居るの?”



なぜか校長室に居たギンガさんが、二人を見て首を傾げてる。

なので僕は当然のように左側を向いて、そんなギンガさんに視線を向ける。



”てゆうか、二人がなんだろうとギンガさんには関係ないでしょ。
どうせもうすぐ帰るし、ギンガさんはミッド人で管理局員なんだから”

”なぎ君、あの・・・・・・待って”

”待たない。あと、友達とか仲間ってのを理由にするなら、もう友達でもなんでもない”



ギンガさんが驚いたように目を見開いて、すぐに泣きそうな悲しげな顔になる。

それを見て心が痛むけど、僕は気にしない。ううん、気にするわけにはいかない。



”だから帰れ。ギンガさんが居ても足手まといなんだし、居てもらったらみんなに迷惑だ”

”・・・・・・なぎ君”





今回はいつもとは違う。これくらい言ってでも追い返さないと、僕はギンガさんを守り切れる自信が全くない。

ううん、『付き合わせるわけにはいかない』・・・・・・かな。なお、理由は前回話した通り。

ギンガさんはもしもフィアッセさんなりゆうひさんなりが殺されそうになったら、絶対に飛び出して助ける。



そういう人だから、僕だって友達出来たとも言える。でも、そういう人だからこんな事に関わって欲しくない。

ギンガさんは僕とは違う。局の仕事が・・・・・・局のみんなが好きで、世界が好きな人だ。

だから今だって仕事もナンバーズへの更生プログラムも頑張ってる。そういう、優しい人だって思ってる。





”・・・・・・あなた、ちゃんとしなくていいんですか? 本当に友達やめる事になりますよ”

”いいの。というかアルト、優しく真正面から話したらギンガさんがどういう反応するか分かるよね?”

”まず帰る選択はなくなるでしょうね。そしておそらく・・・・・・こちらに協力するかと”

”だから、絶対にだめ。僕はギンガさんから大事な場所、奪いたくなんてない”





僕は管理局なんて嫌い。局員も嫌い。でも、ギンガさんは違う。ギンガさんは、そのどちらも好きなんだ。

そこに関してはフェイト達も同じではあるかな。だからあんまり言いたくはないのよ。

そんなの、リンディさん辺りとやり口変わらないし。視点が逆になっただけで、意味なんてない。



ただ・・・・・・振り回され過ぎて今回はマジで殴りたいけど。いや、本気でだよ? フェイトフラグ潰されたし。





”全く、バカですね。高町教導官やスバルさん達にもこっぴどく絶縁宣言したのだって、結局それが理由でしょ。
下手に今回の事に関われば、せっかく上がった六課やみんなの評価がダダ下がりになる可能性がありますし”



あらためて拳を奴らに叩きつけてやろうと覚悟を決めていた時、アルトがそんな事を言い出した。

それに少し・・・・・・ほんの少しだけ、胸の中がチクリと傷んだ。



”スバルさん達が言うように真正面から話して理解を得た場合、それは局側から見るとルール違反に当たる。
そうしたら、せっかく決まった全員の志望は取り消し。最悪局員をクビになる可能性もある”





賢明な読者はもうとっくにお気づきだろう。僕が前回ギンガさんに対して思った事は、何もギンガさんに限った話じゃない。

それは、フェイト達にも適用される事でもあるの。ううん、ギンガさんよりずっと被害が大きくなるかも。

特に六課は『奇跡の部隊』なんて持ち上げられて、評価が上がっている。そんな時に部隊員扱いの僕がコレ。



おかしいもので、評価がうなぎ登りの時にスキャンダルが起こると、上がってた分ダメージが倍増する。

例えば人気絶頂の芸能人が理由は問わず逮捕されたとか、そういうのを想像してもらえると分かりやすいかも知れない。

人間が他の人の粗探しをして貶めるのが先天的に大好きな生き物だからこうなると、僕は思っていたりする。



まぁこの辺りの被害に関しては、前回話したので割愛する。それで実は、あれにはもう少し続きがある。

それはスバル達の言うように、『全員と話してきちんとした理解を求める』という選択を実行した場合はどうなるかという事。

ぶっちゃけると、アルトの言うような事になる可能性がある。その辺りの理由も、アルトが言った通り。



だからはやても僕をクビに・・・・・・ううん、切り捨ててくれた。ちゃんとこっちの意図とかを読み取ってくれたの。

そうやって、ちゃんと部隊員みんなの将来とかを守れるようにする必要があったからだよ。

それはきっと、僕が六課を振り切るのであれば絶対にやらなきゃいけない最低条件。そして必須項目。



なお、局の中で立場が固まって元々居場所が定まってるフェイト達隊長陣もかなり危ない。

ここは僕が六課の中に居る事が、完全に仇になってしまっている。外に居れば他人事で片付けられたのに。

上の立場って言うのは、色々繊細らしいしね。というかさ、絶対今後の活動に差し支えるって。



隊長職で僕の無茶をあっさり認めてるようじゃ・・・・・・全く、フェイトにもなのは張りにキレてくれて良かったのに。

まぁフェイト達はそれとして、ここでは気にしなきゃいけないのが居る。それは、スバル達の事。

スバル達は六課から先の志望が決まっている。ただ、それは何かしらの問題が起こると取り消される可能性がある。



フェイトの補佐官になるティアナはまだいい。引受人のフェイトが六課の関係者だもの。

元の職場に戻る形のキャロも問題ない。キャロの人格は向こう方も知ってるだろうし。

ただ、エリオは完全な新天地。いくらキャロやフェイトのアレコレがあるからって、油断は出来ない。



特にスバルは夢のレスキューでしょ? なんかね、そういう熱の篭った感じで聞かされた事があるよ。

相手方の心象を悪くして不適合の烙印を押されてしまったら、僕は責任が取り切れない。

つまりここに残る場合の最良の選択は・・・・・・みんなの声など無視して、そのまま職場放棄。



そうやってみんなをあくまでも『裏切られた被害者』という立ち位置に立たせるべきなの。

そうじゃなきゃ、だめ。だから僕には、やっぱり仲間や友達になる資格そのものがない。

今それをやっちゃったら、みんなの夢を潰す事になる。それは・・・・・・六課を作ったバカ共と同じだ。



そんなのだめだ。これは、僕のためのケンカ。みんなを生贄にしてまでやりたいとは思わない。

なにより僕は、六課の人間に『僕のために未来を賭けろ』とは言えない。巻き込む事は、出来ない。

やるなら、今この瞬間だけでも全て振り切る。その覚悟を決めなくちゃ、やっていいわけがない。





”違うよ。僕はあんなバカ共の面倒が見切れなくなっただけだし”

”はいはい、そういう事にしておきますよ。全く、あいかわらずバカですし”



なんだろ、アルトがちょっとムカつく。もしかしなくても僕はバカにされてるのかな。

そこはともかくとして、僕はフィアッセさんの方を見ていつも通りにほんわかと声をかける。



「・・・・・・フィアッセさん、僕まだちょっと準備があるんで」



ゆうひさんとハグしていたフィアッセさんの方を見て、僕は右手を上げて『ごめんなさい』のジェスチャー。



「うん、分かった。恭文くん、ゆうひをここまで連れて来てくれてありがと」

「あー、それはホンマ助かったわー。何気にお土産買い過ぎて、ちょっと大変やったし」

「いえいえ」



たまたまはち合わせしただけだからなぁ。単純にタイミングの問題だよ。



「あ、それと」

「はい?」

「何か準備に必要なもの、あるかな? 時間もないし、調達出来るものは限られてるけど」



フィアッセさんの目が、少し真剣なものになった。だから僕はそれを見返したまま、首を横に振った。



「今のところは大丈夫です。元々消耗品は多めに常備してますから。
あー、でももし足りない感じなら、いらないくず鉄とか金属の類をくれれば」

「くず鉄?」

「はい」



僕は両手を胸元でパンと合わせる。それから手を離して、二人を見ながら安心させるように笑う。



「無いなら『造ればいい』だけですし、材料があればなんとか」

「・・・・・・あぁ、そうだったね。そういうのは恭文くんの得意技だもの」

「はい」



フィアッセさんは、僕のブレイクハウト・・・・・・物質変換魔法の事を知ってる。

前に壊れたネックレスをブレイクハウトで修復した時に、凄く感心されてね。色々説明したんだー。



「なら、イリアに頼んでそこの辺りはリストアップしておくよ。必要なら遠慮無く使って?」

「ありがとうございます」



ちなみにイリアさんというのは、フィアッセさんの補佐役でスクールの責任者の一人。

フィアッセさんのお母さんの頃からスクールを支えてくれている、とても出来る女性。



「というか、助かります」

「ううん。それで・・・・・・夕飯はまた、一緒に食べたいな」

「あ、はい。ぜひ」










僕はそのまま部屋から退出して、部屋で汗を流してから再び外へレッツゴー。

フィアッセさんや生徒の方には、エリスさん達がついててくれてる。だから、ここは大丈夫。

万が一に備えて、校内を対象にアルトのサーチを走らせる事にもした。





そんな中、僕は自分の甘さとか躊躇いも持ったまま突き抜けるために・・・・・・鍛錬を続ける。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私はゆうひと二人で話があるから、ギンガちゃんにも少しだけ席を外してもらった。

ただギンガちゃん・・・・・・相当落ち込んでる。恭文くんだけじゃなくて、はやてちゃんにもキツい事を言われたみたい。

自分の行動が中途半端で、ズルい立ち位置を望んだからこんな事になった。





今の状況は全部ギンガちゃんのせいだって言われて、ギンガちゃん泣いてたんだ。

私のところに来たのは、きっと昨日色々と話してたおかげ。だからちゃんと頼ってくれた。

でも、ちょっと困っちゃったなぁ。確かにそういう側面が無くはないけど、言い方が悪いよ。





その上恭文くんも冷たい態度を取ってるみたいだし・・・・・・とにかく、そこは一旦置いておく。





まずはゆうひとお話。ゆうひには昨日と今日で大きく変わった現状について、しっかりと説明しないといけないから。










「・・・・・・フィアッセ、もう一度聞くな。それはホンマなんやな」

「うん、間違いないみたい。明日のコンサート、かなり危ない」





一応中止も考えた。事前情報はあるわけだし、色んな人に迷惑をかけてもいる。

だからそれだって選択。でも、エリスと恭文くんが言ってくれた。絶対に守るからと。

特に恭文くんは相当真剣に。それを見て私は、もう覚悟を決めるしかないと思った。



だから、開く事にした。わがままを、またいつものように通すために。





「なるほどなぁ、それで恭文君が居るわけか。あの子もこてっちゃんも、小さいのにむっちゃ強ぇからなぁ」

「・・・・・・違うの」

「え?」

「恭文くんは今回、本当にただ私が招待しただけなの。ギンガちゃんも同じ」



私、こんな事になるって分かってたら誘わなかったよ。そこだけは、本当。



「つまり二人とも」

「偶然巻き込まれてしもうたと。・・・・・・なぁ、フィアッセ。
もしかしなくてもあの子の運の無いとこ、変わって無いんか?」

「変わってると思う? ゆうひだって色々聞いてるよね。だってメル友なんだし」

「まぁ、それなりになぁ」





うー、別に恭文くんが運悪いからって嫌いにはならないけど、やっぱり不安ではあるよ。

優しい子ではあるから、こういう時に重いものを背負うんじゃないかと考えるとそれはね?

きっとこれは矛盾。守りたいと思いながら、傷を負う選択を認めている矛盾。



それは恭文くんだけの話じゃない。エリスやガードの人達にスクールのみんなにも感じている。

それでね、たまに凄く不安になる時もあるんだ。やめたくないって思っていても、かなりね。

これは私がこれから先もワガママを貫いていくなら、持っていなくちゃいけない痛みだと思ってる。





「とにかくゆうひ、明日のコンサートは」

「うちも居るよ」

「でも・・・・・・なにが起こるかわからないんだよ? どうなるかも分からなくて」

「そんなの、どんな舞台でも普通のことやろ」



あっけらかんと言うゆうひを見て、私はただため息を吐くしかなかった。



「確かにそうだね」



舞台は生き物。だから、どんな事が起こっても不思議なんてない。何があっても、それは当たり前の事。

そう考えると少し胸の中が楽になって、私は私を見ながら笑うゆうひの笑みに、自然に返せた。



「まぁ、度合いはちょっとこっちの方がデンジャラスやけどな。・・・・・・大丈夫や、きっとなんとかなるって」

「そう、かな」

「なるよ。フィアッセの大事な婚約者が頑張るんやからな。問題ないやろ」

「・・・・・・うーん、もう婚約者じゃないかも知れないんだ」



私がそう言うと、ゆうひが少し驚いた。でも・・・・・・納得したみたい。

やっぱり気づくよね。ギンガちゃん相当だから。



「なんていうか、アレはガチやな。うち、見て一発で気づいたよ。いやぁ、若いってえぇなぁ」

「ゆうひ、そういう事言うと、自分は若くないって言ってるのと同じだよ? まぁ・・・・・・私も思ったけど」

「せやろ? てゆうか、フェイトちゃんはどないしたんよ」

「フェイトちゃんとも、いい空気っぽいらしいよ?」



お電話で話した印象から、それは感じた。というか、ここ最近色々あって、かなり反省してる最中だったらしい。

それで、色々と躊躇っている感じでもあった。だけどきっと・・・・・・ううん、ここはいいかな。



「うぅ、ゆうひー。私寂しいよー。浮気されっぱなしだし、まだ唇でチューもしたことないしー」

「あー、よしよし。でもな、それはしかたないよ? さすがに12とか13のあの子にそれやってもうたら、犯罪やから」

「あの子はもう18だよ? 私、いつでもOKなのになぁ」










でも・・・・・・どうしよう。一度フェイトちゃん経由で、はやてちゃんに何を言ったか確認した方がいいかな?

あの落ち込み具合は半端じゃないもの。色々ライバル的ではあるけど、色々と気になる。

というか、これであの子のこれからの人生を暗いものにしちゃったら、さすがに私申し訳無さ過ぎるよ。





よし、はやてちゃんにはすぐに連絡を取ろう。それで恭文くんにも少し釘を刺しておく。

気持ちを伝えるのは無理だけど、あの子にとって恭文くんの言葉が本当に影響力が大きいというのは、しっかりとだよ。

というかね、思ったの。あの子が『中途半端』になっちゃうのは、恭文くんに原因がある。





それは恭文くんからするとどうしても仕方のない事ではある。でも、それがギンガちゃんをあそこまで追い込んでる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・スクールの中は、コンサートが間近だからかとても活気が溢れてる。

それでみんな、キラキラしてる。だって明日のコンサートは、生徒全員が主役なんだから。

夢への新しい一歩を、明日の舞台から踏みしめるという人だってたくさん居る。





前に先生が『こころが輝いている人は、何をしても美しいもの』と教えてくれた事がある。

だからここのみんなは、本当にキラキラしてる。きっと、こころそのものが輝いているから。

それはフィアッセさんにゆうひさん、エリスさんも同じかな。うん、みんな輝いてる。





そんな様子を見ながらスクールの中を一人歩いて、僕は拳を握り締める。










”・・・・・・アルト”

”はい”

”今さらだけどお願い、一緒に戦って”



やっぱり戻るための言い訳なんて出来ない。それでもしこの輝きが一つでも消えたら、絶対に後悔する。

ここは、僕の大好きな場所の一つだから。それでフィアッセさんが大好きだから。



”僕はここに居るみんなを守りたい。命だけじゃない。それだけじゃ足りない。
夢も願いも、それを生み出す心も・・・・・・全部だ。それでこの『キラキラ』を先に繋ぐ”

”・・・・・・全く、何を今さら。今ここで私達が一緒に戦わなくて、何時戦うんですか。
やりますよ? それもありったけでです。だってもう私達は決めているんですから”

”うん。アルト、ありがと”










こころが輝いている人は、何をしていても美しい。それなら、六課のみんなは?

そんなの、フェイト以外はダメに決まってるじゃないのさ。あのバカ馬は論外だし。

なによりフェイトは僕の永遠の嫁よ? 輝いてないわけがないでしょうが。





まぁだから・・・・・・だから余計に、守れなかった事が悔しかったんだけどさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



落ち込みながらも部屋に戻ると、また通信がかかってきた。なお、父さんから。

また部屋のベッドに腰かけながら私はその通信を繋ぐ。用件はもう分かり切ってるけど、それでも繋いだ。

私は画面の中の父さんから、八神部隊長に言われた事をそのままトレースしたような言葉を言われた。





だけど私は、やっぱり頷けなかった。私がここに居てもダメだって分かってても、それでも。










『・・・・・・ギンガ、まぁ八神からお前が恭文に対してどういう感情を持ってるかは聞いてる。
お前がその場から離れられないのは、その感情も大きく左右してるってな』

「・・・・・・そう」



八神部隊長、それはさすがにマナー違反・・・・・・ううん、仕方ないのかな。

だって私、更にゴチャゴチャして、意固地になってるように見えてるはずだから。



『とにかくだ、お前はすぐ戻れ。マジでお前が居ても恭文の足手まといだ』

「だめ」

『なんでだよ。言っておくが恭文に守ってもらおうなんて思うなよ? 多分今回はそんな余裕無いだろうしな』

「それでも、だめ。離れられない。離れたくないの。今離れたら、ずっと会えなくなりそうで・・・・・・怖い」



私は俯いて、両手で自分の身体を抱きしめる。抱きしめて震わせる。

凄く寒い。暖房は入っているはずなのに、とても寒くて震える。



『お前・・・・・・マジでどうした。てーかよ、アレだアレ』

「なにかな」

『もうちょっと自信を持て。お前は局員じゃなくたって、充分魅力的だ』



父さんが、いきなりとんでもない事を言い出した。娘への発言としては、ブッチギリでアウトだと場違いにも思ってしまった。



『局員の業務を通して培ったものだけが、お前の全部じゃないだろ。ただ、ここに関しては俺も悪かったな。
ちゃんとそういうの、気づいてやれなくてよ。ギンガ、すまないな。俺ぁ、お前に妙なこだわりを背負わせちまった』

「・・・・・・違う。そうじゃない。そうじゃないの」



父さんはきっと私がなぎ君を好きというだけじゃなくて、自信がなくて局員のあれこれにこだわるというところも聞いてる。

でも、違う。八神部隊長は勘違いしてる。それだけじゃない。それだけじゃ、答えには程遠かった。



「さっきまで、ずっと・・・・・・ずっと考えてたの。どうして中途半端になるのかなって。
どうしてなぎ君に同じで居る事を望むのかなって。それでね、答えが出た」

『なんだ?』



私は顔を上げて、父さんの顔を見る。父さんの目がなぜか驚いたような顔になった。



「そうしなくちゃ私、フェイトさんに勝てないから」



きっと私、今は相当な表情をしてるらしい。そこだけは、なんとなく分かった。



「私こっちに来た時にある人からね、なぎ君の彼女って間違われたの。でもなぎ君、すぐにそれを訂正した。
私は友達で、本命が居るって。父さんがなぎ君に私の事を頼んでくれた時もそう。私は友達で、フェイトさんは好きな女の子」



仕方ないって思ってる。フェイトさんは女性の私から見ても魅力的で、素敵な人だから。

欠点なんて見当たらなくて、出世もしていて魔導師としても優秀で・・・・・・だから、憧れてる。



「なぎ君と居る時に私、何度も何度もそれを突きつけられた。その度にね、痛いの。
なぎ君が他の子を見ているのが辛くて、どうにか目をこちらに向けたくて、だから同じになって欲しくて」



だけど、同時に妬ましい。フェイトさんはなぎ君の気持ちを独り占めしてる。ずっと愛されてる。

守りたいって、大切にしたいって強く思われてる。それが羨ましい。だから妬ましい。



「というか、他にどうすればいいのかな。色仕掛けで迫っても、乱暴に引き剥がそうとしても、なぎ君私から離れちゃうよ。
そんなの嫌だよ。だったら・・・・・・局員になって、私と一緒の場所で少しずつ頑張るしかないじゃない。ねぇ、そうでしょ?」



あの金色の髪も、豊かな胸も、紅い優しい瞳も、高い魔力と技量も、空を飛ぶ事の出来る翼も、全部妬ましい。

そのどれも全部私には無いもの。今の私に欠けているものばかりで、自分がとんでもなく穴だらけに思える。



『ギンガ、お前』

「分かってる。こんなやり方間違ってるって、分かってる。ここで突きつけられた。だからなぎ君とズレていったんだって分かった。
でも・・・・・・だったら私は、どうすればいいのかな。ねぇ父さん、教えてよ。私、どうすればなぎ君に振り向いてもらえるの?」



私は女の子としても局員としても、フェイトさんに勝てるものがなにもない。

私は、ただの空っぽ。私は中途半端ですらなかった。私はただの負け犬だった。



「悔しい。このままは凄く悔しくて、情けなくて・・・・・・止まれないよ。納得なんて出来ないよ」



瞳からいつの間にか涙が溢れていた。それが幾筋も頬を伝って零れ落ちるけど、それでも私は拭わない。



「父さん、教えてよ。どうしたら私は・・・・・・フェイトさんになれるの?」










父さんは、何も答えてくれない。ただ呆然と私を見ているだけだった。

・・・・・・分かってる、分かってるよ。私はフェイトさんにはなれない。どうやっても無理だって知ってるよ。

だったら、どうすればいいのかを教えてよ。これから私、どうしていけばいいのかな。





フェイトさんにもなれず、フェイトさんに勝つ事も出来ない無力な私は、どうやってあの子にぶつかっていけばいいの?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



明日のために色々と準備中な僕は、ついに凄いアイテムを開発してしまった。





ズバリ、黒のコート。物質変換で銃弾くらいは楽々と弾いちゃう優れもの。










「・・・・・・・・・・・・怖い。自分の才能が怖い」

『いや、何がよ。てーか普通に斬撃で穴開いたやんか。それ失敗作やんか』

「失礼な。これから実用化していくんだから、大丈夫だよ」





まぁそんな穴だらけなコートは軽くそこら辺に置いておくとして、僕は訓練中にはやてに通信をかけてた。

こっちは向こうを着信拒否にしてるけど、向こうはこっちを着信拒否にしてなかったから出来る芸当だよ。

で、はやてが僕を着信拒否にしてなかった理由は一つ。僕が絶対にギンガさん関係で連絡してくると踏んでたから。



色々と行動が読まれてるのがムカつくけど、まぁ狸なのでここは納得しておく。





「それではやて、ギンガさんは」

『相当キツく言うたんやけどなぁ。てーか恭文』

「なによ」

『ここ最近のギンガがダメになってるの、ガチでアンタのせいやからな?』



・・・・・・ちょっと待ってっ!? 僕何もしてないしっ! むしろ被害者でしょうがっ!!

ほら、今までの話をよーく見返してみてっ! 基本巻き込まれまくってるんだしっ!!



『まぁきっと今地の文でうちの発言に対してそうとう不服を申し立ててるとは思うけど』



なんか思考が読まれてるっ!? くそ、やっぱり狸だコイツっ!!



『ここは理由がある。・・・・・・ギンガ、相当局員としてのルールを守る事にこだわったりしとるやろ?
それでアンタにも自分の部隊に入って、そこの辺りに恭順して一緒に頑張って欲しい思うとる』

「あぁ、あるね」

『それ、アンタが事ある毎にフェイトちゃんの事持ち出すのが原因や』



とりあえず不服を申し立てるのはやめて、少し考えてみる。考えて・・・・・・あれ、おかしいな。

どこをどうやっても全然その結論に繋がらないよ? だから身体ごと傾けて首を傾げるわけですよ。



『ようするに、ギンガはフェイトちゃんに強いライバル意識持ってるんよ。そやから負けたくない思うとる』



ライバル意識・・・・・・あ、それなら繋がるかも。ようするに局員としても優秀なフェイトに負けたくないからそうなるんだよ。

そう言えばギンガさん、フェイトが目標って言ってたしね。そっか、それってライバル意識にも繋がるんだ。



「なるほど、だから・・・・・・アレ。それだと後者に繋がらなくない?」

『繋がるんよ』

「いや、繋がったらおかしいでしょ。それだとフェイトと僕を取り合いしてるのと同じじゃない」





フェイトも僕に何度も『局に入って欲しい・自分達や自分達の居場所を信じて欲しい』って言いまくってたし。

なんかフェイトやリンディさん達的には、局が嫌われるのは嫌な事らしいのよ。

どうやらみんなにとっては仲間が一生懸命頑張っている場だから、それを否定されると辛いらしい。



まぁようするに、ギンガさんと同じくらいにフェイトも僕を局に誘ってたのよ。で、ギンガさんが望んでたみたいにして欲しかった。





『繋がるんよ。てーかアンタ、もうちょっと気遣ってあげた方がえぇって。
女の子の意見で言うと、やたらとフェイトちゃん好き好き言うてたらそりゃあ不愉快になるよ』

「・・・・・・はやて、バカじゃないの?」

『はぁっ!? なんでそないなるんよっ! うち、めっちゃ真剣な話しとるんにっ!!』

「好き好き言わないと、またシャマルさん達みたいなのが出てくるでしょうがっ! それでいいって言うのっ!?」



てーか、それだとギンガさんが・・・・・・いやいや、ないない。だってギンガさんは大事な友達だもの。

というか、僕ギンガさんのフラグ立てるような事してないし。いや、立ててても現在へし折ってる最中だし。



「・・・・・・なにより、はやての言う通りだとして僕にどうしろって言うの?
アレですか、ギンガさん好きとでも言えばOKなの? それもまた違うでしょ」

『・・・・・・そやな』



画面の中のはやては、納得したような顔をしながら渋々そう言ってきた。



『いや、うちが悪かったわ。確かにアンタに言っても、どうにも出来んわな』

「でしょ? それにほら、昨日のアレコレで僕達は離れられない間柄というのが証明されたわけだし」

『でもまぁ・・・・・・ギンガの前であんまその手の話はしたらあかんよ?
他はともかく、ギンガが気にしとるんは事実なんやから。そやからここはグッと堪えて』

「だが断る。僕は常にフェイト一筋だもの」

『よし、アンタもうこっち戻ってきっ!? マジでお説教せなうちの気がすまんわっ! てーかこの鬼がっ!!』










そんな失礼な事を言う友達の事はさておく事にしよう。だって、失礼だから当然でしょ?

とにかく僕はイリアさんがリストアップしてくれた鉄くずも、せっかくだから再利用。それで武装をいくつか作り上げた。

あとはこっちに来る前にヒロさんからテストを頼まれた例のワイヤーベルトの改良型も、一応練習。





これは第18話で使ったアレだね。あの改良、ヒロさん相当な速度でやってさ。またテスターを頼まれたのよ。

電撃関係は使うつもりはないけど、それでも一応はテスト。そこの方も問題はなかった。

というか、前のより軽量になったのかな。腰の辺りが思ってたよりも軽いし、ワイヤーの質も良くなってる。





そして夜が来て・・・・・・暗い空に星と月が生まれる。コンサートは、もうすぐそこだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夕飯をフィアッセさんと二人で楽しく頂いてから、僕とアルトとエリスさんはお話です。

場所はスクールの一室。会議室みたいなところで、二人で向かい合いつつもあるものを見る。

テーブル中央に置かれたそれは、明日コンサートが行われる会場の見取り図。





今回襲撃があるとしたら、僕達は防衛戦の布陣を敷く形になる。そして受け手は攻め手より3割ほど有利なのは常識。

この辺り、単純に待ち伏せという形になるからなのは覚えておいて欲しい。ただ、今回は違う。

人員も結局僕以外は増員出来ていないし、会場もこうやって図面を見ると警備関係者を悩ませる難所。





ようするに、穴だらけなのよ。これを今ある人員だけでカバーして侵入を防ぐのは、無理かも知れない。





普通の相手ならともかく、恭也さん達みたいな達人級が相手だとそうなっちゃうのよ。










「・・・・・・してエリスさん、明日は如何様に?」

「フィアッセやゆうひさん、コンサート関係者には私達がつく。
仮に爆弾等の不審物があったとしても、それも任せてくれ」

≪では、私達の仕事は≫

「いつぞやキョウヤ達がやったのと同じだな」



つまり、不審者の発見と排除に全力を注ぐ。それが僕とアルトの仕事だ。



「それで君は準備の方は」

「整ってます。幸いな事に、出る前に色々装備調達してたので」



JS事件の時、そこを怠ってて調達が大変だったしなぁ。一応学習して、戦争起こせるくらいは常に常備してるのよ。

特に自宅を離れる時はそうだね。だからこの間フェイトと旅行に行った時にも、同じようにしてた。



「そうか。それは安心した。ただ・・・・・・危険な場合は魔法を使うように。それで死なれても私は責任が取れない」

「分かりました。でも、言い訳どうしよう」

「少々不謹慎ではあるが、HGSとでも言うしかあるまい。もちろん、使わないのが1番ではあるだろうが」



とにかく僕の方は装備はオーケー。技能もオーケー。後は・・・・・・どんな札が出てくるかによる。



「それで、今更言うまでもなく会場の方だが」

「聞いてた通りですね。寸分の狂いも無くて逆に泣きたくなりましたよ」

「奇遇だな。私も改めて見てみて同じ感想を抱いた」



会場は3階建ての建物に地下1階の駐車場という構造。さっきも言ったけど、侵入しようと思えば、きっとどうにでも侵入出来る。

多分決め手は、僕達が侵入した賊を如何に迅速に排除出来るかだと思う。やっぱり、躊躇う事は許されない。



≪さて、あとは賊がどういう手で来るかですね。例えば爆発物等などを使ったテロ。
例えば武装隆起による会場の徹底的な蹂躙。例えば出演者をピンポイントで狙った暗殺≫

「出来れば二番目はやめて欲しいがな。そうなると嫌でも来場している観客を巻き込む事になる」

≪それに向こうにとってはリスクも高いでしょう。そうなれば、こちらとガチでやることになりますから。そうすると≫

「1番目か3番目・・・・・・だね。爆弾を使うなら、アルトが言ったリスクは充分避けられる。
なら、あとは設置方法? 予め仕込むのでなければ、何かに入れて置き去るとか」

「妥当なところだな。手荷物検査は徹底しておく事にしよう」





こちらとしては出来れば最後だけなのが一番ありがたい。それなら敵は少数。僕が出て相手すればいいんだから。



まぁ、そうすると出てくるのは相当腕の立つ奴なので決定だけど。



だって、ピンポイントで侵入して暗殺して脱出だよ? 並大抵の腕じゃだめだって。





「とにかくアルト、明日は結構働いてもらうよ? 会場内を常時サーチ。
フィアッセさんや出演者の人達の状態も常時把握。不審な反応を発見次第、エリスさんに連絡」

≪まぁ、仕方ありませんね。苦手項目ではありますが、頑張っておきましょう≫



アルト、基本的にそういうの最低限の機能しか積んでないしね。でも、今回はいつもとは違う。

それでも頑張ってもらわないと。使えるもんは、ばしばし使っていきましょ。



「そう言えば、デバイスにはそういう機能があったな。これは心強い」

≪苦手項目にはなりますけどね。それよりはこの人の野獣並みの直感の方がアテになりますって≫



誰が野獣だよ。てーか、僕をどっかのニュータイプみたいに言うなってーの。



「とにかく二人共、よろしく頼むぞ。あー、それと・・・・・・渡すものがある」

「え?」

「君ももう大人だ。さすがにジーンズ上下はまずい。
確か、バリアジャケットと言うのは使うわけにはいかなかったな」





僕はエリスさんの言葉に頷いて肯定した。・・・・・・さすがに今回はなぁ。

着れるなら着れるに越した事は無いけど、魔法を使うと局にこれがバレた時に色々マズイ。

なので、極力使わない方向でいく。



・・・・・・僕はあんまルール違反の項目が多くならないように動くしかなくなった。

結局残っちゃってるギンガさんへの被害も少なくなるだろうしね。

まぁ最悪フィールド魔法で最低限の防御強化は可能だし、なんとかなるでしょ。





「それでそろそろのはずなんだが」



そうエリスさんが自分の左手首に巻いている銀色の腕時計を見ながら呟く。



「エリスさん、何がですか?」

「さっき言った渡したいものがだ」



そして次の瞬間、この部屋のドアが開いた。入ってきたのは、フィアッセさんだった。

四角くて白い二つの箱を両手で大事そうに抱えながら、少し急ぎ足で僕達の方へ近づく。



「ごめん、待たせちゃった?」

「・・・・・・あれ、フィアッセさん。どうしたんですか」

「いや、大丈夫だ。今話し始めたところだしな」



二人は色々通じ合ってるっぽいけど、僕は軽く首を傾げる。というか、意味が分からないから。



「あのね、恭文くん。これ」



そう言って、エリスさんが僕にその箱の一つを僕に差し出す。



「あの、これは?」

「君の仕事着だ」

「急いで作ってもらったんだ」

「・・・・・・へ?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・突然、ナカジマ三佐に飲みに行こうと呼び出された。それはもう凄い勢いでだよ。

なお、クロノ提督もどう言うわけかそこに居た。当然俺はビックリした。

だって本局の船の館長・・・・・・もとい、艦長さんだぞ? なんで普通に居酒屋で焼き鳥食ってるのさ。





ただ、それも事情を聞いたら納得した。だって・・・・・・なぁ。これは三佐だけで抱えるには重過ぎる。










「・・・・・・ギンガちゃん、ヤンデレの資質がある資質があるとは思ってたが、そこまでとは」

「三佐、本当に申し訳ない。もう我が愚弟がとんだご迷惑を」





まさかマジでやっさんに惚れてたとは。てーか・・・・・・あぁ、そりゃ辛いよなぁ。

自覚持ってなかったから、今まではまだよかったんだよ。でも、自覚持っちまったからなぁ。

だから余計にこんがらがって、とんでもない不確定要素になっちゃったんだよ。



ただ・・・・・・一つ分からない事がある。三佐はなんで俺だけじゃなくてクロノ提督を?



こういう話するだけなら、クロノ提督呼ぶ必要ないだろ。現にクロノ提督、辛そうだしよ。





「よせやい。てーか俺はアンタ責めるために呼んだんじゃねぇしよ」

「・・・・・・はぁ」

「まぁアレだ。結論から言うと・・・・・・クロノ提督、恭文がフェイト執務官とうちのギンガの両方を嫁にしたら、何か不都合はあるかい?」

「「・・・・・・・・・・・・はぁっ!?」」



俺らが周りの客に目もくれずにそう叫んだのは、当然とも言える。いや、マジで話おかしいし。

よし、冷静に考えろ。つまりそれは・・・・・・ハーレムじゃねぇかよっ! 男の夢だよ夢っ!!



「ようするに問題になってんのは、アイツがフェイト執務官だけしか嫁にしないからだと思うんだよ。
で、そこにギンガも一緒にくっつけちまえば、アイツが悩む事はなくなるんじゃねぇかなってな」

「いや、三佐・・・・・・さすがにそれは」

「そうです。まぁ僕の方は本人達の意思があるのであれば、問題はありませんが」



問題ないのかよっ! アンタ、サラリととんでもない事言うなっ!! いや、マジでそうだけどなっ!?



「ただ、ギンガ陸曹が辛いのではないかと。アイツの事ですし、もう分かりやすいくらいにフェイトを溺愛します」

「そうですよ。てか、それ以前の問題としてフェイトちゃんとやっさんは上手くいくんですか?」



確かに楔を打ち込んだが、今のところ動きがないらしいしな。それでいきなりこれは。



「・・・・・・それがよ、八神に確認したんだがフェイト執務官はもうアイツと付き合うのOKしてるっぽいんだよ。
てーか俺も最初はこのつもりで恭文をギンガに付かせたしよ。だったらハーレムだろうがもう言う必要ないかなとは」

「「はぁっ!?」」



それで改めて詳しく聞いた。フェイトちゃんがなにかましたのかとか、それっぽい事をやっさんに言った事とか。

そして俺とクロノ提督は顔を見合わせて、どう言っていいか互いに困った表情を見せ合う事しか出来なかった。



「・・・・・・さすがによ、あのままは見てられねぇんだよ。親ばかって笑ってくれてもいいさ。
ただよ、切ないんだよ。アイツが『フェイトさんになれるの?』って言った時の顔を思い出すとよ」



言いながら三佐は涙ぐみ、ビールをまた一気に飲む。それにより、顔の赤みが強まる。

三佐は荒く息を吐いてから、空になったカップをそのままテーブルに置く。



「もちろん本人同士ってのは分かってんだよ。ただよ、やっぱり・・・・・・なぁ」



そしてクロノ提督は何も言わずに、ビール瓶を右手で持って三佐の空になったコップに注ぎ込んだ。



「・・・・・・三佐、今日は飲みましょうか」

「そうですね。俺も付き合いますよ」

「お前ら・・・・・・いや、すまねぇな」










とにかく、俺は決めた。やっさんが帰ってきたらちと真剣に話そうと。

議題はやっさんの将来の事でもなければ飛び出し癖でもない。うん、そんなのどうでもいいわ。

・・・・・・お前のこれから持つ家族の基本形は、既に決まったと話そうと思う。





具体的には『お前×ギンガちゃん+フェイトちゃん+リインちゃん』と言う図式になったと。





だから、おとなしく受け入れろと。俺はこの点についてのみ、真剣に話したいと思う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いや、そうなると俺はハラオウン家の親戚ってことになるのかね」

「そうなりますね。今後とも長い付き合いをよろしくお願いします」

「おう、こちらこそ頼むな。・・・・・・ほら、もう一杯」

「あ、どうも」



・・・・・・そんな事を思っていた1時間前の俺は、きっと三佐の涙に感化されてしまっていたんだ。

あの後、三佐にほだされる形でクロノ提督も暴走。本気でこの関係を樹立させる動きが出来てしまった。



「ところで、挙式はいつにしましょうか」

「まぁ、ギンガ次第だけどな。でも、上手く行けば再来年の初頭くらいにはいけるんじゃねぇか?」



・・・・・・なぁ、アンタらマジか? いや、今のアンタらの会話はさすがにありえねぇだろ。



「でもよ、結婚式で誓いのキスって連続でしてもいいのか?」

「問題はないでしょう。一夫多妻制ですし」



もう笑えねぇ領域来てるから。永久封印したくなるから。というか、黒歴史決定だろ、これ。



「あとよ、夜の生活だけど・・・・・・アイツは大丈夫なのかね。なんせ曹長さんは年齢的にアウトだけど、それでも二人だろ?
線も細いし、なんか押していくタイプってわけでもねぇだろうしよ。女一人満足させるのだって大変だってのに」

「確かにそうですね。やはり若い時分、色々ありますから。実は、僕も妻とは色々と」

「へぇ、そうなのかい。こりゃまた意外だな」

「自分でも意外でした」



そして気持ち悪いから。娘や妹が夜の生活で満足出来るかどうか心配する家族は、果てしなく気持ち悪いぞ。



「まぁそれもあって、いわゆる出来ちゃった結婚でしたから。婚約こそしていましたけど、コレが中々」

「おいおい、マジか? ・・・・・・あ、でもそうだな。結婚した時期とお前んとこの双子が生まれた時期を考えると確かにそうなるな。
よし、俺もあんま得意って言える方じゃねぇが、少し教えておくか。あ、もちろん言葉でな。実地はマズイだろ」

「そうですね、実地はマズイでしょう。教えた瞬間にナックルとザンバーが飛んでくるでしょうし」



もう遅いよ。こんな会話してる時点で飛んできておかしくないんだよ。なぁ、頼むからアンタら気づいてくれよ。



「なら、僕と妻からも教えていくことにします。特に妻は恭文とは本当の姉弟のようになっていますし、きっと協力してくれると思います」



・・・・・・あぁっ!、俺も酔っ払ってたけど、それが醒めるくらいにちょっと引いてるぞっ!? てーか、落ち着けよ提督と三佐っ!!

アンタら何にしても、やっさんとギンガちゃんとフェイトちゃんの気持ち完全無視じゃねぇかよっ!!



「まぁ、恭文とギンガとハラオウンの嬢ちゃんの説得にはサリエルに頑張ってもらうとして」

「え、俺もそのバカ計画に参戦決定っ!?」

「当然でしょう。一緒に酒を飲み交わした者同士、もう僕達は家族です」

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



でも、この二人は止まらない。元々色々と心配要因があったせいか、暴走は更に続く。



「てーかハーレムっておかしいだろっ!? そこは家族として『一人の女性を愛せ』とか言えよっ!!」

「いや、無駄でしょ。元々リインが居るんですから」

「アイツはあのおチビの曹長さんを振り切れねぇだろ。どっちにしたってハーレム決定だろうが。サリエル、お前バカか?」

「そうでしたー! でも、アンタにバカ呼ばわりされんのは納得出来ないんですけどっ!?」



しかもリインちゃん、めっちゃやっさんラブだし・・・・・・あぁもう、マジで二人の言う通りじゃないかよっ!!



「というか、それなら一人増えようと問題ないでしょう。恭文には僕からしっかりと覚悟を決める必要性を説いていきたいと思います」

「アンタがそんなこと言うなっ! そして忘れてるかも知れないけど、増えるのはお前の可愛い妹なんだよっ!?」

「忘れてるわけないでしょうっ! むしろ増やして欲しいからこういう話をしてるんですよっ!!」

「凄まじくバカな発言を即答で言い切ったっ!? あぁもう、コイツらどうすりゃいいんだよっ!!」










この会話が少し後に、色々な大騒ぎに発展する事になるけど・・・・・・気にしてはいけない。





だってそこは話の主軸じゃないしな。そして俺にとっては黒歴史決定だからだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてついに、決戦の朝はやってきた。僕は夜が明ける前に会場入り。それで改めて会場内をチェック。

地理関係も頭に叩き込んで、サーチで不審物が無いかどうかもチェックした。結果はオールグリーン。

やっぱり爆発物なり使う場合は、持ち込んで設置ってパターンで決まりだと思う。なお、実はそれは意外と簡単に出来る。





例えば、某MGSに出てくるC4みたいな爆弾もあるしね。もしくは液体だったり、もうちょい原始的なものだったり。

とにかく、小型で持ち込めるサイズでそれなりの威力があるものは結構ある。そしてここで重要な事が一つ。

相手方は別にコンサート会場を粉砕する必要がないという事。ようはこちらの出演者なり来場客に被害を出せばいい。





だから威力にこだわる必要はない。大事なのは設置箇所だよ。ここはちょっと注意しておかないと。

そこの辺りのおさらいをしつつも、僕は控え室の一室でお着替え。警備には、警備用の服があるの。

それで着替え終わって、控え室で朝ご飯のクロックムッシュなどほうばっていると通信が来た。





それは・・・・・・ただ一人、着信拒否にしてなかったあの子から。










『・・・・・・また決めてるね。スーツ姿なんて』

「まぁね。でもコレ、凄いんだよ? エリスさんのとこの会社で造られた防刃・防弾スーツなんだって。しかも最新型」





蒼い無地のスーツは、僕用に仕立ててもらったもの。時間もなかったのに、鋼糸や飛針用のポケットまである。



この辺りはフィアッセさんのデザインらしい。・・・・・・二人にいっぱいお礼言っちゃったよ。



ちなみにインナーは白のYシャツ。そしてノーネクタイで結構ラフな着こなしも出来たりするので、僕好み。





「あとはワイヤーベルトにダガーもかなり用意してるし、装備関係は思ったより充実してるかな」

『ワイヤー・・・・・・あ、スバルとの模擬戦の時に使ったのだね』

「うん。改良型、こっちに来る前に借りてたんだ」



言いながら僕は両手でベルトのバックル近くにぶら下がっているカラビナを取って引く。

すると、そのカラビナがくっついていた四角い機械の中からワイヤーが出てきた。



『・・・・・・アレ、二つ?』

「本来はこういう形になってるの。バックルを中心に、左右に分かれてるわけ」



手を離すと、引き出したワイヤーは瞬く間にベルトにつけてあるリールの中に巻き込まれた。



「それで、フェイト」



・・・・・・通信画面の向こうに居るのは、フェイト。やっぱりさ、フェイトのアドレスは拒否出来なかったよ。



『なにかな』

「僕、これが終わったらしばらく旅に出るわ」

『・・・・・・ヤスフミ、それ死亡フラグっぽいからやめよ? あの、私ちょっと勉強したんだから』

「あぁもう分かってるよっ! 自分でもそこは気づいてるから何も言わないでっ!?」



いいじゃんいいじゃんっ! たまにはこういう発言したってさっ!! なんか必要かなって思っちゃったんだしっ!!



『じゃあ、私もついて行っちゃおうかな』

「仕事はどうすんのよ。放り出すわけにはいかないでしょうが」

『いいの。仕事より世界よりヤスフミの方が大事だって気付いちゃったんだから』



・・・・・・こ、これはなんだろ。告白されてるのかな。そういうのに近い感じがするけど・・・・・・よし、気にしない事にしよう。



『あのね、ヤスフミ』

「なに?」

『私は、いつでもヤスフミの側に居るから』



なんだか少し照れくさくて、いつの間にか逸らしてしまっていた視線を動かす。



『例えばヤスフミが誰を好きでも、誰と付き合ってても同じ。私、ヤスフミの笑顔や今を守るって決めた。
私という時間の大半に、あなたが居た。あなたとの時間が、私に今をくれた。この繋がりは・・・・・・きっと奇跡』



そして画面の中のフェイトを見ると、優しく微笑んでくれていた。



『だから、側に居る。側に居て、今度は間違えないで本当の意味であなたを守りたい。
・・・・・・なにより私、やっぱり離れられないから。私の心の奥には、ずっとあなたが居るんだ』

「・・・・・・フェイト」

『だからフィアッセさんと結婚してもいいよ? 私は第三夫人・・・・・・愛人かな。
ヤスフミの愛人として、ヤスフミの幸せのために頑張っていくし』

「え、今の話の終着点はそこっ!? ちょっと感動しかけた僕の気持ちを返してよっ!!
てゆうか、愛人言うなっ!? それやったら僕は真面目に最低だしっ!!」



・・・・・・フェイト、そんな楽しそうに笑わなくていいのよっ!? というか反省して欲しいなっ!!

だいたいそんなストレートに言われたら・・・・・・僕、マジでどう答えていいか分からないし。



『まぁ何が言いたかったかと言うと・・・・・・ヤスフミの好きにしていいって話かな。
私は自由にどこまでも進んでいくヤスフミが好きみたいだから。だから、飛び出していいよ』

「言われなくてもそうするし」

『それで旅に出て、気が向いたらこっちに戻ってきて・・・・・・その時にまた、ちゃんとお話したいな。
沢山、沢山伝えたい事があるんだ。きっと言葉だけじゃ足りないから、ハグしたりして伝えていく』

「ん」



あまりの変化っぷりに何かあったのかなと思いつつも、僕はフェイトの顔を見ながら・・・・・・ちゃんと伝えたい言葉を言う事にした。



「フェイト・・・・・・ありがと」

『ううん。それを言うなら、私の方こそありがとうだよ。ずっと、ずっと守ってくれてたんだから』










それからまた少し話して、フェイトとの通信を終えた。僕は食べかけだったクロックムッシュを右手に取って、パクリ。





クロックムッシュは・・・・・・やっぱり冷めていた。でも、とても美味しかった。




















(その5へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、結局追加部分のために6話くらいになりそうなギンガさんルート改訂版の第4話、いかがだったでしょうか」

古鉄≪お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

ウェンディ「ウェンディと」

やや「結木ややでお送りしまーす♪ ・・・・・・でも恭文、相変わらずギンガさんが。というか、これだとフェイトさんIF」

恭文「そこの辺りは次回以降だよ。てーかゆとり世代に合わせていくと読んだ時の驚きが無いので、展開予告はやめにしました」

古鉄≪アレですね。きっと私達はゆとり世代に媚びていました。なので、奴らは放置します≫





(これからのとまとはアンチゆとり世代の精神でいきたいと思います)





ウェンディ「いやいや、それ意味分からないっスよっ!?」

やや「でも、先の展開とかでハラハラする気持ちを大事にするのはいい事だから、いいのかなぁ」

ウェンディ「あ、それもそうっスね。で・・・・・・恭文、マジで恭文のせいじゃないっスか」

やや「そうだよー。やたらとフェイトさんのお話ばっかするから、ギンガさんがコンプレックスに思ってるわけだよね?」





(それが今までの行動の一番の原因になっていたりします。というか、前々からこういうのをやりたかったり)





恭文「作者、前にも話したけど飽き性だからどんどん新しい事に挑戦してきたいしね」

古鉄≪色々な作品とのクロスや描写関係の充実も、一応それなんですよね。
それで今回のIFもですよ。言うなら、チャレンジャーですよチャレンジャー≫





(そこまでカッコ良くはないけど、常に新しい方向性を模索はしていきたいかなと。ただ惰性で話は書きたくないのです。
今回のIFみたいな話も、今まではなかった路線ですしかなり頑張ってます。目指すは今の『とまとらしさ』の否定?)





やや「え、とまとらしさ自分で否定しちゃうの? どうして?」

恭文「ようするにアレだよ。ある程度イメージ固まって、自然とそれに沿った形で話を書きがちなのを壊したいのよ」

ウェンディ「あぁ、固定概念の破壊ってやつっスね。じゃないと新しいものは書けないと」





(というか、色々映画とか本とか映像とかを見てよく『このままでいいのか』と考える事はあります。
特に話の作りや戦闘シーン? もうちょっと本格的に勉強はしたいなーとはかなり)





古鉄≪まぁそれでそんなとまとらしさを破壊して新しいものを作るためのこの話ですけど・・・・・・あなた、最低ですよね≫

恭文「いや、確かに僕が悪いのは明白だけど・・・・・・それじゃあどうしろとっ!?
フェイトの事好きって公言していかないと、あの天然は全然引っかからないしさっ!!」

古鉄≪公言しても引っかからないじゃないですか。あなた、ミニマムなんですし≫

恭文「誰がミジンコだってっ!?」

ウェンディ「誰もそこまで言ってないっスから。とりあえず、読者に謝るっスよ」

やや「そうそう。結局ギンガさんが感想でアレコレ言われてたのって、全部恭文のせいなんだし」

恭文「ち、うっせぇなぁ。・・・・・・・・・・・・反省してまーす」

ウェンディ「・・・・・・恭文、殴られないと分からないっスか?
あと、そんなどっかのスノボー選手みたいな事しなくていいっスから」





ち、うっせぇなぁ。・・・・・・・・・・・・反省してまーす)





やや「そうだよっ! こういう時は真剣にするっ!!」

恭文「でも僕にはどうしようもなくないっ!? ここでいきなり恋愛感情噴出しちゃったわけだしさっ!!」

やや「そこも分かるけど、ほら。ちゃんと謝って」

恭文「・・・・・・ごめんなさい」





(蒼い古き鉄、今回は素直に謝った。やっぱりオリンピックには出たいらしい)





ウェンディ「それで後はアレっスよね。改定前よりシリアス度が増したあの飲み会」

やや「じゃあ、こっちでもハーレム事件って起こるの?」

恭文「起こるね。なお、詳細はやっぱり察してください」

古鉄≪これがないとディケイドクロスに繋がりませんんしね。ただ、逆を言えば布石はあと一つを残して全て打ちました≫





(後はアレだけでOKだったりする。ただ、結論や話の流れはまた違ってきますけど)





恭文「というわけで、次回はついにやってきたコンサート激闘編。そして戦闘シーンはおそらく全て書き直し」





(もういつものコースだけど、これが中々・・・・・・というか、恒例?)





古鉄≪あなたが結局書き出したら全編手直しみたいにするからそうなるんじゃないですか。
まぁそこの辺りも期待しつつ、本日はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

やや「結木ややと」

ウェンディ「ウェンディと」

恭文「蒼凪恭文でした。それじゃあみんな、またねー!!」










(そしてどこからか『おのれディケイドォォォォォォォォォォォォォォォっ!!』という声が聴こえたとか。
本日のED:BUMP OF CHICKEN『才悩人応援歌』)




















ギンガ「・・・・・・いよいよかぁ。私の戦闘シーンもかなり書き直すんだよね」

恭文「そうらしいよ? 格闘戦に関しての資料も集まったそうだから。具体的にはニコ動の格闘シーン解説」

ギンガ「それは『集まった』って言い方はおかしいんじゃないかなっ!?
というかあの・・・・・・私、ここから巻き返せるの?」

恭文「ギンガさん、大丈夫。巻き返せなかったらこれはギンガさんルートにならないんだから。何をバカな事を」

ギンガ「だからそういう言い方禁止っ! それでもこの展開は不安になるのっ!!
そういうところ、もうちょっと分かってくれないかなっ!?」(すっごい涙目)










(おしまい)





[*前へ][次へ#]

4/7ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!