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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース02 『ギンガ・ナカジマとの場合 その2』(加筆修正版)



その日の夜、仕事を終えてから私はある人に通信をかけた。・・・・・・訂正。夕飯を食べ終わった後にかけようと思っていた。

でも、その途端にその人の方からかかってきて、夕飯の準備をなぎ君に任せた上で私はお話。

その相手とは、当然のように八神部隊長。空間モニターの中のその表情が疲れ切ってるのは、気のせいじゃない。





そして私も疲れ切ってる。なぎ君、うちに来るの凄い嫌がってたから。こっちに連れて来るのが本当に大変だったもの。





どうも昨日の事、気にしてるみたい。・・・・・・別に気にする必要ないのに。私はその、大丈夫なんだから。










『・・・・・・一応な、旅行はうちからも止めた。なのはちゃんからも止めた。フェイトちゃんも止めた。
試験間近やし、こっから調整せんとアカンからダメやと。今回は見送れと』

「ですよね」



まずは『どうしてこうなった?』と疑問の視線をぶつけられた。それで話は当然なぎ君の事。

でも、私もなぎ君の勢いが強過ぎて全く止められないのは、本当に強く念押しした。



『でも、ダメやった。派手に大暴れして、なのはちゃん泣かせて無理矢理納得や』



そこまで・・・・・・なんだ。というか、なのは隊長を泣かせたってどうして?



『というかギンガ、アンタマジでなにした?』

「え?」

『前に話したやろ。恭文はめっちゃ怒ってるって。アイツ、その抑えが利かんようになってる。
どっちにしたって、しばらく六課には戻せんよ。下手したら全員精神的に再起不能にしかねん』



部隊長、どうやら軽くお冠みたい。だからあの・・・・・・視線がかなり厳しくて、私は俯く事しか出来なかった。



「ごめんなさい。実は・・・・・・あの」



私は昨日の昼間に話した事を、そのまま伝えた。それで部隊長は、私に呆れた視線を向けるだけだった。



『・・・・・・アレほど注意して欲しい言うたのに。ギンガ、アンタマジでやらかしてくれたなぁ。
うちはアンタとちょっと前に話した時、なんて説明した? アレか、トリ頭で忘れてもうたか』

「あの、本当にごめんなさいっ! 私、まさかなぎ君があんな風になるなんて思わなくてっ!!」



あそこまでなんて、思ってなかった。まさか管理局や世界そのものにあんなに怒ってるなんて考えてなかった。

あと・・・・・・六課の隊長達のダメージがそんなに酷いなんて、知らなかった。それが余計に、なぎ君をたぎらせてるんだ。



『いや、いいわ。てーか謝られてもどうしようもない。・・・・・・あー、でもマジどないしよう。
なのはちゃん完全に崩れて、もう一人でも立てん感じやし』

「なぎ君、そこまでだったんですか?」

『そこまでやったで? うん、ぶっちゃけ運営妨害でアンタ訴えてえぇレベルやな。
正直アンタに恭文任せた事、めっちゃ後悔してるくらいやもん』



私はただ俯く事しか出来無くて・・・・・・本当に自分が情けなくて、泣きたい。



『とにかく、一緒に旅行行くならマジでそこは注意してな?
フィアッセさんがコンサートに誘ってくれたんは、うちらから距離取らせて静養させるためやろうし』

「え? ・・・・・・で、でもなぎ君はそんな事は一言も」

『そりゃそうやろ。恭文には多分言うてない。でも、そういう人なんよ』



つまりその、なぎ君のあの状態を電話で話してそれで・・・・・・なんだよね。

凄い敗北感を感じる。私、本当になにやってるんだろ。六課のみんなにまで迷惑かけてるのに。



「・・・・・・というか、あの」

『なんや?』

「フィアッセ・クリステラさんって、そんなになぎ君と親しいんですか?」



私は正直、なぎ君があんなにウキウキ顔で人の事を話すのをフェイトさん関連以外では見た事がない。

ううん、あの熱の入れようはフェイトさん以上かも。本当に楽しそうで、旅に出る事にときめいてる。



『うん、めっちゃ親しい。まぁちょお色々あって・・・・・・フィアッセさんも恭文に相当良くしてくれててなぁ。
ここではあのハードボイルドなお仕事用の顔しかせん奴が、表情綻ばせて甘えられる人なんよ』

「そう・・・・・・ですか。私達では、ダメなんですね」

『ダメやなぁ。実はうちらもそこが薄々分かっとったから、強い事言えんかったんよ。
フィアッセさんが恭文の事大事に思うとるように、恭文もフィアッセさんの事をめっちゃ大事にしとるから』



つまり、両想いになるんだよね。なんだろ、ちょっと胸が苦しい。



『それでフィアッセさんは、なのはちゃんがもう4歳とかそれくらいの頃からお世話になってる人でもあるんよ。
元々はなのはちゃんのお兄さんとお姉さんの幼馴染みやからなぁ。なので、ここで下手にバカやらかすと』

「・・・・・・色々辛いと」

『辛いな。もちろん運営に口出ししてくる事はないやろうけど、それでもプレッシャーは感じる』



というかあの・・・・・・私、なんでイライラしてるんだろ。というか私、最近色々とおかしい。

朝もその、楽しそうななぎ君を見てて弾みでついて行くって言ったくらいだもの。



『・・・・・・おやおや、ギンガヤキモチかぁ?』

「は、はぁっ!? いきなり何言い出してるんですかっ!!」



というか八神部隊長、そのニヤニヤした顔はやめてくださいっ! どうしてそうなるんですかっ!!



「大体、ここでヤキモチなんて焼いたら、私がまるでなぎ君に恋してるみたいじゃないですかっ!!」

『あらま、違うん? うちはそうやと思うてたんやけど』

「どうしてそうなるんですかっ! ホント信じられませんっ!!」

『なるやろ。・・・・・・アンタ、恭文の事相当心配しとったやろ?』



・・・・・・私は不満げにその言葉に頷いた。うん、心配だった。なぎ君が消えちゃいそうで、ずっと怖かった。



「でもそれは・・・・・・違います。その、なんて言うか嫌なだけです」

『・・・・・・はい?』

「なぎ君と離れてると、不安で苦しくて・・・・・・それが嫌なだけです。
例えば旅に出てそのままずっと居なくなるとか、そういうのも絶対嫌なんです」





なぎ君と距離が離れてると、不安になる。また無茶してないかなとか、元気してるかなとか。

逆に、一緒に居ると安心する。楽しくて、幸せで。なぎ君が笑ってると、私もなんだか嬉しい。

私、段々となぎ君の事を考える時間、増えてる。ある時を境に、今まで以上に。



それにこの間も・・・・・・ケンカしたら、凄く後悔した。実はJS事件の時もやっちゃったの。





「だから側に居て欲しいだけです。友達だから、心配になっちゃうだけです。それだけなんです。
だから108にも誘ってて・・・・・・私、別に変な事は望んでいません。なぎ君にここで一緒に居て欲しいだけです」





現状に納得出来ないのは、なぎ君がずっと怒りを胸の中に収めて笑えなくなっているから。

私にはそう見えるの。だから私、最初は『忘れて欲しい』って言った。そうすれば、大丈夫だと思ったから。

もちろんそこはズレまくっていた。なぎ君にとっての問題は、過去じゃなくて今なんだから。



なんだろ、またモヤモヤする。なぎ君、旅やフィアッセさんの事になるといっぱい笑ってた。

局は、六課という仲間が居る場はダメなの? そこじゃあ、なぎ君は笑えないの?

でもそれなら私・・・・・・ダメ、私は局を辞めたりなんて出来ない。だって私、ちゃんとやりたい事がある。



だけどそれだとなぎ君とはいずれ離れる事になる。でもそんなの、そんなの嫌だよ。





『・・・・・・なぁ、ギンガ』

「はい」

『それ、恋や』



部隊長の言っている意味が、よく分からない。だから私は、首を傾げた。



『いや、せやからそれ恋やて。それもぶっちぎりや』

「・・・・・・魚ですか?」



なんで、今魚の話になるんだろう。うーん・・・・・・やっぱりよく分からない。



『全然ちゃう。つーか、その返しは使い古されとるから。ようするに、アンタは恭文に恋しとるんよ』

「・・・・・・え?」

『アンタ、マジで自覚無いんか。・・・・・・ほな、一つずつ確認してこか。
まず恭文の事、無茶苦茶心配なんやろ?』



私は真剣な目でそう言われて、強く頷いた。



『で、無茶して欲しくなくて、局入り勧めとった。でもな、そこから間違いや』

「間違いって、どういう事ですかっ!?」

『局入りどうこうなんて関係無い言う事や。というか、答えは今アンタが言ったやろ?
自分の側に居て欲しいって。・・・・・・いいや、ちゃうな。アンタが恭文の側に居たいだけやないか?』



そんな事はない。私は、なぎ君の将来が心配で・・・・・・そう言おうとした。でも、言えなかった。

身体が、心が言ってる。それは嘘だと。全部じゃないけど、それだけと言うのは嘘だと。



『なにより、ギンガ』

「はい」

『うちの知る限り、今のアンタの反応のアレコレは、典型的な恋の病よ? それもぶっちぎりや』



・・・・・・つまり、私はなぎ君が・・・・・・好き? 好きだから、今までのあれこれ?

戸惑う私の目を見て何かを察したのか、部隊長は呆れたように頷いた。それで頭の音頭が一気に上がる。



「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」










・・・・・・やっぱり、そうなのかな。ううん、もう嘘つけないよ。私、知ってる。

なぎ君を見ている時に感じてた不安も、寂しさも、とても大きな幸せも・・・・・・全部ひとつの感情に繋がってる。

好きなんだ。なぎ君の事が・・・・・・友達じゃなくて、男の子として。





私きっと、あの時から恋してる。私より背が小さくて、細くて、いつも無茶ばかりして、だけどとっても強い男の子の事が好きなんだ。

だから、放っておけなかった。どこかで違う場所に居て、諦めてる部分を感じてたから。

それがすごく寂しくて、悲しかったから。だから、側に居て欲しかった。それだけで・・・・・・本当にそれだけで嬉しかったから。





それだけで私、心が満たされたから。でも私、嫌な女の子だね。

自分の感情、ずっとなぎ君に押し付けてた。そこに関しては、今だってそうだよ。

私の勝手な感情でなぎ君を振り回して、独り占めしてる。





だけどごめん、どうしても止まらないの。止められないの。今のままなんて嫌。こんなの嫌。





なぎ君には・・・・・・もう、フェイトさんが居るって分かってる。でも、それでも嫌なの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・アルト」

≪はい≫

「今の悲鳴はなんだろうね」

≪さぁ? 私には分かりませんよ。それよりも、本気でギンガさんを連れてくつもりですか?≫



表情が自然と苦いものになったのは気のせいじゃない。だって、フェイト居るのに・・・・・・だよ?

でもギンガさんももうエンジンかかっちゃって、引かない感じだしさ。てゆうか、フィアッセさんはなんでギンガさんを?



「もうそうするしかないでしょ。まぁ大丈夫なはずだよ。
如何わしい事は無いんだし、ギンガさんのポンコツを直すためと考えれば」

≪相変わらず甘いですね。・・・・・・というか、あの人どこがポンコツなんでしょうね。
見てる限り仕事はかなりちゃんとやってますよ? あなたとのアレコレはそれとしてもですよ≫

「そうだよね、本当にそこが疑問なんだけど」




















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ケース02 『ギンガ・ナカジマとの場合 その2』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして数日後、私達はイギリスの地を踏んでいた。

なお、父さんの反対は無かった。どういうわけか無かった。でも、泣いていた。

そして母さんの遺影に向かって、手を合わせて嬉しそうに報告していた。





ちょっとだけカチンと来たので、翌日の朝食のおかずはメザシ一匹だけにしてしまったのは、絶対に罪じゃない。










「・・・・・・なぎ君」

「なに?」

「フィッシュアンドチップスって、美味しいね」





冬のイギリスの街を、ゆっくりとなぎ君と二人で歩いていた。

ここはご先祖様が生まれた世界。私、初めて来たよ。

街並みがミッドとかとは違うけど、それが楽しくて嬉しくて・・・・・・なんだか不思議な感覚。



事前情報で調べたらイギリスはご飯が美味しくないって書いてたんだけど、そんな事ない。これ美味しいよ。

初めて触れる異文化な空気を楽しみつつ、ソースをかけたフィッシュをもう一口。

・・・・・・うん、美味しい。試しにそのまま食べた時は本当に味付けもなにも無かったけど、ソースをかけたらバッチリだよ。



私が口の中に広がる幸せを満喫していると、なぎ君がクスっと笑った。それで、一気に体温が上昇する。



わ、私・・・・・・なにか変な事言ったかなっ!? あ、もしかしておかしい事したとかっ!!





「ギンガさん、僕と同じ事言ってる」

「そうなの?」

「うん、僕も同じ事思った。・・・・・・あ、ひとつもらうね」





なぎ君が私の持っている容器に手を伸ばして、チップスを取る。

その時私の指になぎ君の指が触れて、その感触に心臓が高鳴る。

ほんの一瞬だけ襲ってきたのは、甘くて身体の芯がとろけそうな感覚。



あれ、私やっぱりおかしい。最近、変な事ばかり考えてる。



その、なぎ君とハグした時の事とか思い出して、それでもっと触って欲しいなとか考えてるの。





「僕も初めてここに来た時にね、同じようにフィッシュアンドチップス食べて、同じ感想言った」

「・・・・・・そっか」

「うん」



それがなんだか嬉くて、頬が緩むのが分かる。気持ち、共有し合ってるのかな。



「やっぱり、旅が好きなんだ」

「うん、大好きだよー。だって楽しいし、色んな所に行けるし・・・・・・冒険だって出来るもの。
ここに来たのも初めての海外旅行時でさ、もうすっごく楽しかった。それで思ったんだ」



チップスを食べながら、なぎ君がどこか楽しげに、遠いどこかを見る。



「先生みたいにあっちこっち旅してみたいなーって。旅をして、色んな物を見て、色んな物に触れていくの。
僕の夢のひとつなんだ。いっぱい旅や冒険したいって・・・・・・ずっと思ってる。旅や冒険の中には、僕の世界があるの」



それは、私の嫌いな瞳。どこかへ本当に行っちゃいそうな予感を感じさせる空気。



「それで沢山、ドキドキする事やワクワクする事を見つけるの。それでまた、旅を続けていく。
どこまでも止まらずに行けて、そんな自分になれたらいいなーって沢山考えるんだ」



またなぎ君はそんな瞳と空気を出している。なぎ君のこういう部分を見る度に、私は泣きたくなる。

ずっと側に居られないのが分かって、苦しい。気持ちを自覚してからは特にそう。



「・・・・・・そっか」





でも、縛れない。そんな真似しても、なぎ君笑ってくれない。

きっと辛そうな顔ばかりで、後悔ばかり積み重なっていく。

今だって、夢が叶ってるから笑えるだけだ。ミッドに戻ったら、きっと元に戻る。



なんだろう。誰かを笑顔にするのって、本当に難しい。きっと、簡単じゃない。

どうしてダメなんだろう。社会に順応して、みんなの輪の中でそれなりの夢を描くだけじゃ、ダメなのかな。

きっと六課のみなさんだってそうしてる。それが社会人の正しいあり方だと思うから。



私も、スバルも、父さんだってそう。本当ならきっと、認めなきゃいけないのは分かってる。



だけど認めたらなぎ君、本当にどこまでも行っちゃう。それでもう、会えなくなる。そんなの・・・・・・嫌。





「ね、なぎ君」



私が言葉を躊躇っている間に、風が吹く。



「・・・・・・うん?」



その切り裂くような冷たさが頬をすり抜け、私の憂鬱な気持ちを少しだけ吹き飛ばす。



「・・・・・・ううん、なんでもない」

「どうしたの? てゆうか、話しかけておいて途中で止めるのは気になるよ」

「なんでもないの。うん、なんでもないんだ」










『世界や人を信じて』なんて、やっぱり言えなかった。『憎まないで』とも、もう言えなくなってる。

そんな私に『旅じゃなくて、そんな人の輪や社会の中で夢を見つけていこう』なんて言えるわけ・・・・・・ううん、もう言ってしまいたい。

例え何があっても、それらは信じていかなきゃいけない。なぎ君はそれから逃げてるだけだって、言いたい。





そうすればきっと、私達の側に居てくれる。旅と同じくらい大事な夢を、私達の世界の中から見つけてくれる。

これから組織も、世界も変わっていく。きっとそれは見つかるし、なぎ君もみんなと同じようにしてくれる。

ここじゃないどこかになんて、目を向けなくていい。そうすればいい、それが正しい事なんだってどこかから声がする。




そうすれば私の『なぎ君の側に居たい』という願いは叶う。もちろん言ったからには、責任を通す。

なぎ君がそういう夢を見つけられるまで力を貸すし、辛いなら支えていく。それで守ってあげるの。

その覚悟も出来る。だってそうすれば私の願いは叶うんだから。・・・・・・叶うはずなのに、私は何も言えない。





それと同じように、別の声もするの。『本当にそれでいいの?』と、私に問いかける声。

それが私をまた中途半端にする。それを無視して振り払おうとすると、また別の・・・・・・あの人の声がする。

・・・・・・過去は拭えない。忘れたら意味が無い。全部含めて、その上で変わらないとだめ。





八神部隊長の言葉が、何度も胸の中でリピートされる。その度に私は胸を締め付けられる。

それでも、忘れていい事もあるんじゃないかと・・・・・・私はなぎ君に逃げ道を提示したくなる。そうすれば、きっと笑えるから。

今みたいな事にならずにみんな笑って、私や六課、局のみんな楽しく過ごしていけるから。





それの何がいけないの? 逃げても言い訳しても、みんなで楽しく過ごせるのなら、それが一番いい。

旅に出たって、結局なぎ君が一人になるだけだよ。誰かと繋がる事も出来ずに、寂しくなるだけなんだから。

分かってるのに、やっぱりまたあの声達がストップをかける。どうやら私、本当に中途半端みたい。





こんなのダメって分かってるのに、私は・・・・・・何も出来ずにただなぎ君の隣を歩く事しか出来なかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そんな話をしつつ、僕達はようやく到着した。そう、クリステラ・ソング・スクールにである。

クリステラ・ソング・スクール。イギリスにあるこの音楽学校は、生徒は常時10人前後。

多くて20人程と生徒数こそ少なめだけど、その全てに行われる英才教育のレベルは世界トップクラス。





フィアッセさんを筆頭に現役の実力派シンガーがその技術と魂を教えていく。

そうしてこのスクールから羽ばたいた生徒達は、みな例外なく優秀なシンガーとして世界に名を残すの。

えっと、有名どころで言うとアイリーン・ノアさんとかだね。うん、あの人とも仲良しなんだー。





あとはSEENA・・・・・・椎名ゆうひさんとかかな。あ、そう言えばゆうひさんも来るってフィアッセさんが言ってたな。

・・・・・・よし、覚悟はしておくか。色々と弱み握られてるし。うぅ、さざなみ寮メンバーは知佳さん以外怖いよー。

僕は軽くトラウマを刺激されつつもスクールの玄関を抜け、やたらとデカイ中庭も抜け、建物へと足を・・・・・・あれ?





建物を目指して歩いていると、金色のポニーテールにピンクのスーツを着た凛々しい女性が見えた。





というか、入り口の方で僕を見ながら軽く微笑んだ。・・・・・・あー、なんかほんと久しぶりだなー。










「・・・・・・久しぶりだな」

「エリスさんっ!!」



7年前、フィアッセさんと一緒に知り合った女性で、エリスさん。

このスクールの警備を主立って担当している人なの。



「わー、お久しぶりですー。・・・・・・あ、それじゃあ」

「当然、今度のコンサートも私が警備の担当者だ」

「納得しました」



エリスさんが、僕の隣のギンガさんを見る。すると、ギンガさんがぺこりとお辞儀。



「・・・・・・ほう、君もそういう年頃か。まさか彼女連れで来るとは思わなかった」

「違いますよ。ギンガさんはただの友達です。というか、本命居るって知ってますよね?」

「そう・・・・・・だったな。ただあの、アレだ。人間ダメな時はやっぱりダメで」

「エリスさん、それどういう意味ですかっ!? てゆうか、僕から目を逸らすなー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



友達・・・・・・か。そうだよね、私はなぎ君にとって友達、なんだよね。





うん、知ってたよ。知ってた。でも・・・・・・でもね、やっぱり傷つくよ。




























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



挨拶もそこそこに建物に入った僕達はエリスさんに案内されつつ、スクールの様子をちょこっと見てみる。





コンサート間近なのか、全体に活気が溢れている。生徒の人達もみんな楽しそうだし・・・・・・いや、いい事だよ。










「なんだか凄いですね。あの、活気があるというか、気合いが入っているというか」



ギンガさんが感心したように呟く。どうやら驚いているらしい。

それも当然だよね、だって・・・・・・僕もちょっと驚いているくらいだし。



「今回のコンサートは在校生のみ出演だしな。そういうのもあるのだろう」

「実際に舞台を踏んで、そこでうたうわけですしね」





そりゃ気合いも入るってもんさ。だって、夢へ近づく一歩になるのは間違いないんだから。

・・・・・・夢、かぁ。うん、そうだよね。夢って本来こういうものなんだよね。

何かに依存したりしないで、一生懸命頑張って追いかけてさ。なのに・・・・・・バカバカしい。



何が夢の部隊だよ。あそこで誰が夢を叶えたと? 叶えたなら、なんで誰も笑ってないで痛みを隠してるのさ。





「それは関係各所も同じだ。未来の歌姫達を見ておこうと、取材や現役関係者もたくさん見に来る予定だ」

「そうですか。なら、よかったです」

「そう思ってくれるか?」

「はい。あの時守りたかったもの、ちゃんと続いていってるんだなと」





7年前、スクールが主催したコンサートでテロがあった。まぁ色々と複雑な事情が絡んで、通常のテロとは違ってたけど。

それで僕も魔法無しで暴れたの。暴れて・・・・・・うん、そうだ。あの時僕、フィアッセさんの歌を守りたかったんだ。

まだフィアッセさんの歌をちゃんと聴いた事がなくて、聴かせてもらう約束をしてたから。あとは、その歌に賭ける想い。



それはフィアッセさんからスクールの生徒に伝わって、その生徒がまた伝えて・・・・・・だからなんだね。



あの時フィアッセさんから感じてたものと同じキラキラが、スクール全体に広がってるんだ。





「・・・・・・そうだな」



エリさんが僕の方を振り返りつつ、表情を崩して微笑む。

それにギンガさんが軽くびっくりした顔をした。まぁ、さっきまで基本クールな感じだったしね。



「続いていく。なにせ、あのフィアッセが校長だからな」

「それもそうですね。簡単に終わるわけがない」



なんて話していると・・・・・・校長室に到着した。でも、久しぶりだなぁ。うぅ、元気してるかな?



「失礼します」





エリスさんがノックをした後にそこのドアを開ける。そのまま入っていくので、僕達も続く。

そんな僕達に視線を向けるのは、ブロンドと金の混じった髪をポニーテールにしている女性。

青いセーターに白いストールを纏い、首から十字架のアクセサリーを着けている。



そして、その女性はそのまま僕達の方へと嬉しそうに駆け出し・・・・・・コケた。





「・・・・・・って、コケてないよっ!!」



なんか地の文にツッコまれたっ!? ・・・・・・それでツッコみながらも、その人は僕に飛び込むように抱きついた。



「恭文くんっ!!」



少し恥ずかしいけど、僕も抱き返す。やっぱり、フェイトとはまた違った意味で特別だから。

自然とそうなってしまう。そうして腕や服越しに身体に伝わるのは、変わらない柔らかい感触と温もり。



「久しぶり。うぅ、本物の恭文くんだよー。声だけじゃなくてちゃんと身体もここにあるよー」

「あの、フィアッセさん・・・・・・お久しぶりです」



この人がフィアッセ・クリステラさん。このスクールの校長で、現役シンガー。通称『光の歌姫』。

そして、僕の年の離れた友達兼理解者で・・・・・・婚約者。それでそれで、すっごく大事な人。



「・・・・・・あの、えっと」

「あぁ、気にしないでくれ。フィアッセは少々子どもな所があってな。
彼だけでなく、男女問わず誰にでもあぁなんだ」



エリスさん、ナイスフォロー! 僕、ちょっと今やばい感じしてたしっ!!



「えっと、もしかしてあなたがギンガちゃん?」



フィアッセさんが一旦僕から身体を離して、ギンガさんの方を見る。

・・・・・・両肩にフィアッセさんの手がかかってるのは、気にしない方向で行く。



「あ、はい。ギンガ・ナカジマです。初めまして」

「初めまして。えっと・・・・・・聞いてると思うけど、私がこのスクールの校長のフィアッセ・クリステラです。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」



互いにお辞儀して、挨拶し合う二人を見てちょっと思った。

なんか、不思議。本当なら会うはずのない二人だったのに。



≪・・・・・・その原因が何を言ってるんですか≫



だから地の文にツッコむなっ! 基本小説ではそういうのタブーだって何度言えば分かるっ!?



「この状況は全て君が引き金だろう。間違いなくな」

≪エリスさん、言っても無駄ですよ。この人基本的に自覚無いんですから≫

「そうだったな。そこも変わらずか」



なにやら失礼な事を言い出した二人はスルーします。てーか、エリスさんまで地の文が読めてるんかい。



「・・・・・・アルトアイゼンっ!? なに喋ってるのっ!!」



あ、スルー出来ない人が居た。当然だけど、それはギンガさんです。



「あ、あの・・・・・・これは違うんですっ! なぎ君最近腹話術にハマってて・・・・・・そうだよねっ!!」

「いや、ハマってないけど」

「ううんっ! 激ハマリだよねっ!? お願いだからそうだって言ってっ! それが正解なんだからっ!!」



なにやら慌てふためくギンガさんを見て、フィアッセさんが合点が行ったのかくすくすと口元を押さえて笑い出す。



「・・・・・・恭文くん、こうなるって分かってて黙ってたんでしょ? まったく、人が悪いなぁ」

「はて、僕はなんの事やら」

「え? あの」

「えっとギンガちゃん、大丈夫だよ? 私達、知ってるから」



すると、ギンガさんが止まった。そして、額から汗が一滴流れ落ちる。



「あの、知ってるというと」

「あなたの世界の事。・・・・・・魔法や次元世界、デバイス・・・・・・アルトアイゼンの事もね」

「彼経由で話は聞いているからな」

「えぇぇぇぇぇっ!?」



ギンガさんが若干睨み気味に僕を見たので、頷く。もちろん、知っているという意味で。



「てゆうかギンガさん、そうじゃなかったらいくらなんでもギンガさんを誘うわけないでしょうが。本気で気づいてなかったの?」

「え? ・・・・・・あぁっ!!」



そしてギンガさんが、顔を両手で押さえて悶えて・・・・・・いやぁ、楽しいねぇ。うん、振り回された憂さが晴れたよ。



「・・・・・・君は相変わらずだな。いいのか?」

「いいんです。僕、ギンガさんに相当振り回されてるおかげで、フェイトのフラグ立て損なったんですから」

「そうか。だがもうちょっと気遣ってやれ。だからと言ってこれは酷いだろ」



なるほど、エリスさんは僕のギンガさんに対する対処が不満と。うん、でもね・・・・・・僕も不満があるのよ?



「あはは、それじゃあエリスさんが立て損なった分・・・・・・ぐす」

「いや、泣くな。というかあの・・・・・・そこまでいい空気だったのか?」

≪えぇ。そこから一気に成立する可能性もありました≫



だってさ、デートしてたら今頃ラブラブだったかも知れないんだよ? なのになのに、ケンカしちゃうしさ。



「ねぇギンガさん、呪っていい? いや、かなり本気で呪いたいのよ」

「あの、えっと・・・・・・ごめん」

「こらこら、その辺にしておけっ! 彼女が本気で泣きそうだろうがっ!!」

「泣けばいいんじゃないんですか? むしろ僕の分まで泣け。ギンガさん、ほんとお願いね?
もし今度フラグ成立邪魔したら・・・・・・『ベートーヴェンッ!!』って断末魔をあげる事になるから」

「君はそこまで恨んでるのかっ! というか、そこまでチャンスだったのかっ!!
あと、なぜ人名が断末魔になるっ! 何かのダイイングメッセージかっ!? それはっ!!」



とにかく今回はそこまでチャンスだった。なのに・・・・・・なんか、しばらく戻りたくないな。

まぁはやてからもそれでいいって言われてるし、ここでのんびりするか。



「とにかく・・・・・・悪いんだが、君はちょっと来てくれ」

「はい? ・・・・・・あ、藁人形の工房に」

「違うっ! 少し話があるだけだっ!! あと、彼女を呪う事前提で人の話を聞くなっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・フィアッセさんに促されるままに、私は部屋のソファーに腰を下ろした。

なぎ君はなにやらあのエリスさんが少し話があるとかで、この場を離れた。

もちろん、出された紅茶はしっかりと味わった上で。うん、そこはしっかりとだね。





でも、この紅茶すごく美味しい。なぎ君が淹れてくれたのと同じくらいかな。香りも立っていて、味わいもある。










「それで、ギンガちゃんは時空管理局・・・・・・で合ってるよね? そこの局員さんって聞いてるんだけど」

「はい、そうです」





なぎ君、そこも話してたんだ。というか、黙ってるなんてヒドイよ。うぅ、私恥ずかしかった。

というか・・・・・・フェイトさんと、本当に上手くいく直前だったんだ。私、相当恨まれてるね。

だって目がね、本気だったの。アレを見て私、確信したよ。そして戦慄したよ。



これ以上下手な事すると私、本気で『ベートーヴェンッ!!』って断末魔をあげて事切れる事になりそう。





「まぁ、恭文くんはちょこっといじめっ子だしね。あんまり気にしないほうがいいよ?
・・・・・・基本的に好きな子しかいじめないから。私もよくいじめられるんだー」

「えぇぇぇっ!?」



す、好きって・・・・・・私をっ!? あぁ、違うっ!!

そういう意味じゃないっ!! これはライクじゃなくてラブで・・・・・・逆だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!



「・・・・・・ふーん」



身体が熱い。芯がまた・・・・・・溶けそうになる。だめ、なんだか涙が・・・・・・私、本気でおかしくなってる。



「やっぱり。好き?」

「・・・・・・え?」

「あのね、私ギンガちゃんの話聞いてて思ったんだ。・・・・・・恭文くんの事、好きだよね。それも男の子として」



少しだけ真剣な目でそう言って来たフィアッセさんの言葉に、私は貫かれた。



「それとも・・・・・・ただ友達として? 友達だから、振り回しちゃってるのかな」

「あの、フィアッセさん」



私はなぎ君の事・・・・・・うん、振り回してる。だってデートやお休み潰しちゃってるし。

だから結構言われるよ? なぎ君本人からもそれなりに。だから余計に突き刺さって・・・・・・落ち込むの。



「ギンガちゃん、別に私あなたを責めたいわけじゃない。
ただ、ちゃんと確認はしておきたい。一つはなのは達の事」



なのは・・・・・・あぁ、そっか。やっぱり昔馴染みだから、かなり心配なんだ。



「そしてもう一つは、今の恭文くんの事。恭文くんやなのは達の口からじゃなく、あなたの口から聞きたいの」

「あの、どうして私に? というか、それならなのはさん達に」

「あの子達はだめだよ。どうしても部隊や局のお仕事中心で物を考えてるところがある。
・・・・・・特になのはは、恭文くんに甘えてるみたいだから」



言っている意味が分からなくて、私は軽く首を傾げてしまう。あ、前者の事じゃないの。

だってそれは大人であるなら当然の事だから。でも後者は・・・・・・甘えてるって、やっぱり分からない。



「なのは、恭文くんに甘えてるところがあるんだ」



そんな私を見てフィアッセさんが、少し困った表情を私に向けた。



「もうちょっと言うと、依存って言ってもいいのかも知れない」

「依存・・・・・・ですか」

「うん。もしくは恭文くんの優しいところに、困ってる誰かを放っておけないところを利用してるとも言えるね。
ただ、なのははまだいいのかも知れない。問題は恭文くんの保護責任者のリンディさん・・・・・・ハラオウン家のみんな」





それは耳が痛い言葉だった。少し前だったら『そんな事ない』と言えたかも知れない。

でも、あの時・・・・・・なぎ君に『ズルい』と言われた時だね。鉄火場の事後処理中に、108に誘った時。

アレを言われてからかな。確かにその、ズルいという言葉を否定出来ない事に気づいた。



私も、同じだよ。なぎ君の事を利用してる。ううん、利用しようとした側面がある。

そしてそれも『旅なんて夢は追いかけないで欲しい』と言えなかった理由の一つ。うん、分かってるよ。

私の言ってる事は、結局私やみんなの都合になぎ君を利用してるのと同じだって。



でも、だったら私・・・・・・本当にどうすればいいんだろう。なんでこんなに上手くいかないの?





「別に恭文くんは、必ず困ってる誰かを助けなきゃいけないわけじゃない。
友達が泣いてたら、必ず手を伸ばさなきゃいけないわけじゃない。そんな事、誰も強制出来ない。でも」

「でも、今名前の挙げられた人達は全員、それを『当然』だと思っている・・・・・・でしょうか」

「そうだよ。今までも色々話は聞いてきたけど、私はみんなに対してそういう印象を持ってる。そして、それが不愉快。
というか、恭文くんが自分達の言う事を全部聞いて、局員になって誰かを助ける事を当然の事だと思ってる節がある」



本当に耳が痛かった。それは私にも言える事。私にも当てはまる事。



「私は、今のままの・・・・・・自分の想いに正直な恭文くんの歌が好き。なのに、みんなはその歌を歪めようとする。
自分や他の局員さんと同じようにすれば、ただ自分達の言う事を聞いてその通りにすれば恭文くんが幸せになれると勘違いしてる」



だから何も言えなかった。それは違う、そんな事はしていないと言おうとしたけど、だめだった。

だって現に私、さっきフィアッセさんが言った事・・・・・・考えてたから。というか、一つ気になる事があった。



「あの、一ついいですか? ・・・・・・歌というのは」

「あ、ごめんね。ついいつもの癖で言っちゃったけど、ギンガちゃんには分からないよね」



歌・・・・・・なぎ君、歌なんてうたってる? そういう話はあまり聞いた事がないんだけど。



「人はね、誰でもその心で・・・・・・魂で歌をうたっているの。
その歌は、その人そのもの。その人の全部が詰まってる」



言いながらフィアッセさんは、とても優しい顔で自分の右手を胸元に当てる。

歌・・・・・・あぁ、そっか。音楽関係者だから、こういう物の喩え方をしているのかも。



「その歌は誰かの心に響いて、何かを変えるきっかけを作るかも知れない。
その歌に惹かれて、その歌い手を慕って人が集まるかも知れない。それで」

「なぎ君も・・・・・・同じ、という事でしょうか」



なぎ君も、歌をうたっている。それが・・・・・・あぁ、そうだよ。それがあの私の嫌いななぎ君なんだ。

なんでかそう強く思ってしまった。アレがなぎ君の心でうたっている歌なんだ。



「そうだよ。恭文くんの歌は、強くて優しくて・・・・・・輝きに溢れた歌。誰かに希望を示す事の出来る歌。
とても真っ直ぐで一途で、優しいあの子の全部が詰まってる。私、あの歌にずっと惹かれてるんだ。なのに」



フィアッセさんの表情が変わる。ううん、さっきの厳しい表情に戻ったと言った方が正解かも。



「どうも局の仕事に携わってる人達は、そういうところがさっぱりみたいなんだよねー。
恭文くん自身の意思より、局やそれに関わる自分達の都合の方が大事みたい」

「それが、納得出来ませんか? 私はその、なぎ君を見てるともったいないと思う事があるんです。他の皆さんだって同じです。
純粋になぎ君の将来を心配して、その上で局に誘っています。それなのにそんな言い方は、顔馴染みとして心外です」

「でも恭文くんは管理局のやり方を嫌ってるよ? それで何度も何度も話してる。管理局は嫌だと。
大事な友達や仲間を簡単に利用して、道具扱いするようなやり方をする組織になんて入れないと」



・・・・・・そこまで知ってたんだ。ううん、知ってて当然なのかも。だってなぎ君・・・・・・あんな調子だし。

なによりフィアッセさんの言っている事は事実だよ。だってJS事件そのものが、それを示したんだから。



「そうしたらみんなは、『だったら中に入って変えていけばいい。そのために自分達に力を貸して』と言う。それ、おかしくないかな?
さっきも言ったけど、恭文くんが必ず誰かを助けなきゃいけない理由なんてない。それなのに・・・・・・絶対おかしい」



再び厳しく目を細めるフィアッセさんの言葉に、私は何も返せなかった。

フィアッセさんの瞳には、落胆と言い様のない寂しさが見えた。それはきっと、気のせいじゃない。



「とにかくこのままは心配なんだ。みんな、恭文くんの事をちゃんと見てない。
ただ恭文くんの能力だけを見てる感じがする。だから恭文くんの歌、少しずつ弱くなってる」

「・・・・・・だから、比較的第三者に近い私を呼んだ」

「そうなるね。あとはあなたの事もなんだか気になった。だから、あなたの気持ちもちゃんと知りたい。
・・・・・・どうかな。少しキツい言い方をするけど、恭文くんの事が利用しやすいから振り回してるの?」



フィアッセさんはきっと、本気でなぎ君を心配してる。それで六課のみなさんにちょっと怒ってる。

多分その怒りは私に対しても向けられてると思う。・・・・・・私は、ちゃんとフィアッセさんの目を見て話す事にした。



「違い、ます。そんなつもり、ありませんでした。
でも、結果的にはそうなって・・・・・・だから今、分からないんです」

「何がかな」

「フィアッセさんの仰る事、全部当たってるんです。そんなのダメだって、なぎ君自身から突きつけられたんです。
だけど私、それでも・・・・・・それでもなぎ君に私達から離れて欲しくない。だけどもう、何を言えばいいか分からないんです」

「そっか。・・・・・・じゃあ」

「そうです、私」










全部、ぶちまけてしまった。自分が中途半端だったせいで、なぎ君を追い詰めてしまった事とかも含めて。





もっと、もっと早く気づいてれば大丈夫だったのかなって思って・・・・・・私は、情けなくてまた涙を流した。





フィアッセさんは何も言わずに全部話を聞いてくれた。それでその間ずっと、私の隣に座り直した上で頭を撫でてくれた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、エリスさんに連れられて・・・・・・というか引っ張り出されて、人気の無い一室へと足を向けた。





そうして、真剣な顔でエリスさんから話をされた。そして僕は、崩れ落ちてしまった。










「・・・・・・大丈夫か?」

「・・・・・・・・・・・・えぇ、なんとか」



うん、分かってた。このままマトモに行くわけないなとちょっと思ってた。

でもさ・・・・・・これはないでしょこれはっ! くそ、マジで今年は厄年だしっ!!



「あー、エリスさん。もう一回確認させてくださいね」



とりあえず僕は立ち上がる。そうしなきゃ、現状は何も変えられないから。

でも、泣きたい。現状変える前に僕は泣きたい。



「・・・・・・狙われてるってのは本当なんですか?」

「間違いないだろう。警防・・・・・・君も知っている御神美沙斗さん経由で来た情報だ」





あぁ、もう確定か。それじゃあどうしようもないよ。・・・・・・あ、一応補足。

美沙斗さんというのは、美由希さんの実のお母さんで御神流の使い手。

今は香港国際警防隊という、凶悪事件専門の特殊部隊に所属している無茶苦茶強い人。



そしてその警防隊は、テロ関係のあれこれに相当強い。なら、この情報は確定だよ。





「ちなみにその事はフィアッセさんは」

「知っているわけがないだろう? 知っていたら、君を呼んだりはしない。
というより、私も君達が来る直前に聞いて・・・・・・まだびっくりしてる」

≪なるほど、それは道理ですね。しかし・・・・・・なんでまたコンサートが狙われているんですか≫



僕が聞いた一件というのは実に簡単。今回のコンサート、不埒な連中に狙われているらしい。



「思い当たる節は色々あるが、まず今回のコンサートの収益は全て寄付される」

「という事は、チャリティー・ツアーと同じって事ですか?」

「そうだ」





さて、ここで一応説明しておく。このスクールの定期的な活動として、スクール卒業生と共に最短で半年。

最長で1年かけて世界を回り、チャリティーコンサートを行うというものがある。

このコンサートで得られた収益は、世界で恵まれない人達のために使われる。なお、主な使用目的は・・・・・・医療関係の充実。



世界には21世紀になった現在でも、ひとつの現実として存在する。

薬や包帯、注射器と言った器具や薬品が圧倒的に不足していたり、果ては病院や医師すら存在しないという町が。

そして、そういう場所に限って紛争やら内乱やらで情勢が不安定だったりする。



結果・・・・・・人が死んでいく。僕がのんきにあくびをしている間に、何人もだ。

そういう現状を子どもの頃から間近で見ていたフィアッセさんの母親、ティオレ・クリステラさんが健在の頃にこのコンサートは始まった。

それにより発生した莫大な収益金により、救われた人達も大勢居る。そしてそれは今も変わらない。



母親の志を受け継いだフィアッセさんがその想いを歌声に込めて、世界中に届けている。

・・・・・・まぁ、かっこいい言い方をすると、歌声が世界を救っているわけである。

全部じゃないかもしれないけど、両手を伸ばして・・・・・・その一すくいくらいは、きっと。



ただ、仕方ないと言えば仕方ないんだけど、こういうのを快く思わない奴らも居る。

まぁ音楽関係だけ見てもこういう活動をずっとしていると、スクールに対しての対外的な評判は良くなるしね。

で、今回もその辺りを不快に思う連中が何かやろうとしていると。それも、今言ったような表関係じゃない。



どこぞのシンジケートなりそういうのが得意な裏の奴が、コンサートに乗り込んで大暴れかまそうとしてるのよ。





「どうもそれらしい奴がイギリスに向かって出立した形跡もあると言っていた」

≪そうして襲ってどうするかは・・・・・・考えるまでもありませんね。
コンサートを潰しての、スクールへの攻撃≫





コンサートがテロに遭って、万が一にでも大規模な被害が出ればどうなる? 当然だけど信用問題にも関わる。

協賛する企業だって、別に本気でチャリティーのために金を出してるわけじゃない。協賛したという事実そのものが欲しいのよ。

そういうのは、企業のイメージ対策としては十分過ぎるくらいの効果があるしさ。うん、ぶっちゃけ自分達のためだね。



でも、テロが起きて一般の来場客にまで被害が起きたら、話が大きく変わってくる。

そんな血生臭いコンサートになんて、誰も金を払いたいと思うわけがない。そもそも客だって行きたいとは思えない。

それだけではなく、スポンサーは協賛した事で自分達の会社にまで標的にされる可能性を考える。



結果、スポンサーは居なくなってコンサートの継続そのものが不可能になる。

更にこれも当然だけど、スクール出身者の活動にも影響する可能性がある。下手したら全員干されるかも。

このように・・・・・・テロが成功した場合の影響は、正直とんでもなく大きい。



だからこそ、エリスさん達ガードが全力で警備してくれているわけですよ。





「正直、君達は休暇中ではあるわけだし、巻き込みたくは無い。
ただ、万が一にもキョウヤやミユキクラスが出てきた場合、私達では対処出来るかどうか微妙だ」

「また弱気な。経験豊富なプロのボディガードとは思えない発言ですよ?」

「・・・・・・私はあの二人のような、マスタークラスではないからな。
悔しいが、そんな意地よりもフィアッセの安全が大事だ」



なお、その恭也さんと美由希さんや警防の人員の手は借りられない。みんなそれぞれ仕事があるのよ。

もちろん、それぞれにとても大事な仕事。だからこそエリスさんもここまで慎重になるんだと思う。



「納得しました」





どっちにしても、戦力強化が必要な状況って事だよ。じゃなきゃ、事件に対処出来ない。

僕を頼るくらいだから、エリスさんの勤めてる会社に連絡しての人員増強も難しいんでしょ。

だって今は師走だよ? この手のイベントでの警備人員は、むしろ足りないくらい。



いきなりこっちにだけ人員寄こせって言って、すぐに調達出来るとは僕には思えないよ。





「というか、会場的にそこまで考えないといけないんですか?」



立地条件によっては、少ない人員での徹底警備も可能なのよ。例えば入り口が相当限定されてるとかさ。

いわゆる構造的にどっかの要塞みたいになってるところなら、問題ないの。でも、そういうわけじゃないらしい。



「いけないな」



エリスさん、苦い顔で頷いちゃったから。



「侵入しようと思えばどこからでも出来るような場所だ。
以前君が手伝ってくれた海鳴のベイサイドホテルと同様と考えてもらっていい」

「あぁ、それでですか」



確かにあの時も、警備人員を増強しても結局賊に侵入されたしなぁ。

達人級の奴なら、それくらいは楽勝なのよ。さて、こうなってくると・・・・・・やるしかないよね。



「で、僕はそのマスタークラスが出てきた時に相手って事でいいですね」

「そうだ。だが、本当にいいのか?」

「問題ありません。だって、僕達休暇使って来てるんですよ?
休みのスケジュールにとやかく口出しされたくありません」



・・・・・・・・・いや、さすがにマズイか? そうするとはやて辺りには話すしかないとか。

いやいや、でも話したら絶対に止められ・・・・・・うーん。まぁ、そこは後でいいか。



「それに・・・・・・変わってませんから。フィアッセさんと、フィアッセさんの歌が好きなのは。ここのスクールの人達だって同じです」





・・・・・・潰させないよ。このスクールの人達の歌声は絶対に。

ここの人達の歌声は、色んな夢や願いが詰まった歌声なんだ。

今日見た限りでも、コンサートに自分の未来への願いも込めてる。



だから絶対に守る。それで何が来ても、絶対に負けない。

テロなんかで人の夢を踏みにじろうとする奴らになんて、負けない。

だってそんなの、管理局と同じじゃないのさ。負けたらムカつくし。



僕の大事な人の夢を、願いを勝手な理屈で蹂躙しようとする奴らなんて・・・・・・絶対に認められない。





「なによりここで戦わなきゃ、僕が嘘になりますし。だから、戦わせてください。
僕はフィアッセさんやスクールのみんなの夢が壊れるのなんて、見過ごせない」

「そうか。・・・・・・ありがとう、協力に感謝する」



エリスさんがそう言いながら頭を下げ・・・・・・って、そういうのいいですからっ!!



「エリスさん、頭上げてくださいっ!! ・・・・・・その、どこまでお役に立てるかも分からないんですから」

「だが、必要な事だ。君ももう大人だしな」



それから、エリスさんは頭を上げた。僕はそれを見て、どういう顔をしていいか分からない。

・・・・・・マジでどこまで出来るか分からないもの。そんなありがたられても困る。



「あぁ、それと君の職場には一応でも話しておいた方がいいな」

「一応黙ってそのまま『なんの事?』ってとぼける方法もありますけど」



というか、そうしようと思ってた。そうじゃなくちゃ連中は煩いもの。



「駄目だ。ギンガ・ナカジマの事はどうするつもりだ?」

「・・・・・・あ」



そ、そうだった。ギンガさんの事すっかり忘れてた。

だからエリスさんだってちょっと困った顔で僕を見るのよ。



「仮に君がこのまま黙って警備に参加したとしよう。それで彼女に何か有ったらどうする。
つまりなんにしても彼女には、この事を話して向こうに戻ってもらう必要がある」



さすがにエリスさんは、どっかの管理局と違って良識的らしい。

初対面のギンガさんを巻き込むような事は、避けたいみたい。



「だが、そうなると嫌でも君の職場に話が伝わる。つまり君は」

≪どちらにしても六課に連絡して、この事を話す必要があると。・・・・・・また厄介な≫

「まぁ私が最初言ったように、遠慮無く何も知らない彼女を巻き込むつもりなら、必要ないが」

「・・・・・・出来ませんよ、そんな事」



出来るわけ、ない。だから・・・・・・くそ、マジでめんどくさいし。エリスさんだって、そう思ってるからここまで言うわけだもの。

くそ、ギンガさんを連れて来たのはマジでミスだった。今更だけど、反省してしまったし。



「だからアレだ。私としてもこれは無理にとは言わない。
もしも職場の方に戻りたいなら、戻ってくれて構わない」

「エリスさん」

「いいから聞いてくれ。・・・・・・同じ職場の仲間は、大事なものだ。傷つけていいわけがない。
もし君が彼女達を傷つけないために戻る選択をしたとしても、それは仕方のない事だ」

「仲間じゃありませんよ」



そう言うと、エリスさんの言葉が止まった。それで驚いたように僕を見る。



「仲間じゃ、ない。あんなバカ共、仲間だって思った事は一度もないし。
てゆうか、もう面倒見切れないからこっちに来たんです。だから、いい」

「だが、その職場にはフェイトちゃん達も」

≪エリスさん、すみません。少し事情込みでこの人、ちょっと荒れてるんですよ。・・・・・・察してください≫

「そうか。分かった。だが・・・・・・ちゃんと話だけはするように。それがケジメでもある」

「はい」









例えば、ここでミッドに戻ったとしよう。それはきっと正しい選択だ。正し過ぎて笑っちゃうくらいに正しい選択。

僕はあそこで仕事がある。正直もう放り出しかけてるけど、そこだけは間違いない。

なら僕が戻る事は、それを通す事に繋がる。例えその結果フィアッセさん達がどうなろうと、それは変わらない。





・・・・・・でも、それでいいわけがない。僕は、ここのみんなが好きだ。

フィアッセさんが・・・・・・・フィアッセさんの歌が好きだ。だから、絶対に守りたい。

僕は右手を上げて、手の平を見る。それから強く握り締めた。





間違えてばかりの、失敗してばかりの僕の手。でも、それでもこの手の中に僕の全部が詰まってる。

・・・・・・僕が誰かの1番の味方で居たいと、何かを守りたいと思ったら、そのために頑張ればいい。

今の僕のままで、手を伸ばして戦えばいい。無理にその誰かと同じになる必要なんてない。全部分かる必要もない。





そう思う時があったら、本当にそれだけでいい。それだけでその誰かは凄く強くなれるし、頑張れる。

前にある女の子が、笑顔と一緒にそう教えてくれた。その言葉で、僕は本当に救われた。

それを聞いてから1年、そこだけは絶対に忘れないでやってきたつもりだ。・・・・・・間違えまくったのはアレだけど。





僕は今、何を1番に守りたいの? 管理局や六課のルール? 人形みたいに働く事しか出来ないバカ共?

違う、それも重要な要素ではあるけど、今の1番じゃない。僕の両手は二つしかなくて、一つはアルトを握っている。

残りはもう片方の手しかないから、常に変動する1番を最低でも決めていかなきゃいけない。





『全部』なんてきっと守れない。僕はそんなヒーローにはなれない。・・・・・・だから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうして夕方、僕は宛てがわれた部屋に入った。コンサートは明後日。それまでここでお世話になる。

荷物を置いてすぐに僕はベッドに腰かけ、最悪手と思われる手段を踏む事にした。

もちろん六課への事情説明だ。はやて辺りに事情を話して、なんとかギンガさんを説得してもらおうという腹である。





『それはマジで最悪手でしょ』・・・・・・とは言う事なかれ。僕だってこんな事やりたくない。

ぶっちゃけ話したくない。休日中のちょっと刺激的な秘密のアバンチュールで済ませたい。

怪我もせずに事態を超えて『事件? なにそれ、美味しいの?』的な事を言ってとぼけてしまいたい。





でも、このままギンガさんに話して強制的にミッドに連れ戻される事態だけは避けたい。

なにより万が一を考えると、ここに残らない選択肢は存在しない。

あとはエリスさんと話した通りだね。どっちにしても、僕はここで話さないという選択がないの。





でも、やっぱり・・・・・・だった。最悪手はどこまで言っても最悪手なのですよ。










『・・・・・・よし、アンタは今すぐギンガ連れてミッドに戻って来るんや』

「お断りします」

≪残念でしたね。では、この話はこれで決着という事で≫



こうして、話し合いはアルトの言うように見事決着。



『するわけないやろっ! なんなのアンタっ!? なんでいきなりそないな事になっとるんやっ!!
いくらなんでもおかしいやろっ! いきなり魔法無しで銃器でドンパチとかありえんやろっ!!』

「うっさいバカっ! 僕だってビックリし過ぎて当たり前田のクラッカーだよっ!!
つーか、そのセリフは僕がイギリスの中心で叫びたいわっ!!」

「色々混じってるやないかっ! マジわけわからんでそれっ!!」

≪すみません、私達もいきなり過ぎて混乱してるんですよ。色々大変でして≫



当然、反対されるわけですよ。そして・・・・・・最悪な事に話を聞いているのは、はやてだけじゃない。



『・・・・・・恭文君、お願いだからすぐに戻って来て。フィアッセさんが心配なのは分かるけど、だめ。
恭文君は今は六課の預かり。こんな勝手許されないよ。だから戻って来て』

「なるほど、それで自分達の尻拭いを続けろと。
そっか、教導官と執務官ってのは自分の尻も拭けない人種だったか」

『どうしてそうなるのかなっ! 私、そんな事一言も言ってないよねっ!!』

『ヤスフミ、お願い。冷静に話そう? こんなのだめだよ』



そう、フェイトとなのはも居た。くそ、タイミング見誤った。どうすりゃいいのさ、この四面楚歌。



「とにかく問題ない。ほら、僕は今、休日よ? ちょっとした刺激的なアバンチュールだって」

『ほな、その休暇今すぐ部隊長権限で終了や。これで勝手は許されんよ』

「なんなの、その権力の横暴っ!!」

『当たり前やろっ! アンタがどう思おうと、六課の一員である事には間違いないっ!!
それで管理外世界で無許可でドンパチっ!? 部隊長として許すわけにはいかんわっ!!』



た、確かにそこを言われると・・・・・・非常に弱い。悪いのはぶっちぎりで僕です。はい、知っております。



「はやて」

『なによ』

「てーか、フェイトもなのはも一度しか言わないからよく聞け。・・・・・・僕はフィアッセさんを守ると決めた。
フィアッセさんの歌が、スクールの歌が好きだから。そのために戦うと決めた。だからゴチャゴチャ抜かすな」



あいにく、僕は六課やはやての風評なんてもうどうでもいいわ。でも、どうやらそれではダメらしい。

僕が六課に居ると、そういうのがついて回るっぽい。なので・・・・・・遠慮無く爆弾を投下する。



「てーかアレだ、僕が六課所属で問題があるって言うなら、六課辞めるわ」



鼻で笑いながらそう言うと、三人が愕然とした顔をする。というか、なのはがまた泣き出すし。



『・・・・・・アンタ、マジか』

「マジだけど何か? というか、ここに来て僕と殺し合いするよりはずっとマシでしょ」

『まぁ、それはな? でもさすがにコレは』

≪はやてさん、もう納得してもらえませんか? というか、酷過ぎるでしょ。
フィアッセさんの危機を見過ごしてここで戻れっていうのは、ないですって≫





はやては軽く睨み気味に僕を見る。フェイトは・・・・・・呆然としてる。

バカ馬は変わらずにバカみたいに泣いてる。でも、僕は気にしない。もう我を通すと決めたもの。

そして、決めるという事は誰かを傷つける事でもあるのよ。



僕達は六課をドロップアウトして、その上で今回の一件に関わる。それが、僕の選択だ。





『・・・・・・条件はひとつや。アンタらがうちらを助ける言うたんやから、それは最後まで通す。
六課を出ても解散前になんかあったら、絶対助けてもらわんと困るよ。えぇな?』

「いいよ。ただし、みんなの自業自得な場合は絶対助けないから。遠慮無く見捨てる。
僕はもう六課もお前らも見限ってんのよ。特にそこのバカ教導官絡みはね」

『ん、それでえぇよ。ただな、恭文』

「分かってるよ。自分の行動がありえない事くらいはさ。うん、言われるまでもなく分かってる」

『なら、えぇんや。・・・・・・そう言うてくれるだけで充分や』



知ってるよ。こんなのはきっと、間違ってるよね、それが分かってて止まらないってのもさ。

そのために苦くなりそうな表情や気持ちを奮い立たせて、僕は平然を装う。



「それではやて、悪いんだけどギンガさんの説得をお願い。僕だけじゃだめかも知れないのよ」

『やるんは殺し合いなレベルやろうしなぁ。ギンガが拒絶反応起こしたら確実に邪魔やし・・・・・・ん、そこは分かった。
最悪ナカジマ三佐にも手伝ってもらうわ。さすがのギンガも、それやったら絶対止まるやろ』

「本気でそう思う?」

『・・・・・・いいや、スバル見とったら全然思えん』



うん、僕もはやてと同感。だから二人してため息吐いて、苦笑してしまうのよ。

・・・・・・はやて、ありがと。それで本気でごめん。そこだけは本心だから。



『はやてもヤスフミも待ってっ! どうしていきなりこんな話になるのっ!?』

『そうだよっ! 恭文君が六課を辞めるっ!? スバルやティア・・・・・・みんなにどう説明すればいいのっ!!』

「そうだねぇ、高町なのはってバカの尻拭いなんて出来なくなったって言っておいて」



僕はもう、対価を払うと決めた。それでも・・・・・・それでも、戦うと決めた。

でも僕、やっぱりバカだ。本当にそうしなきゃいけない相手、居るはずなのにさ。



『ふざけないでっ! 私達、何か間違った事言ってるかなっ!?
ただ仕事を優先しろって言ってるだけっ! それだけだよねっ!!』

「高町さん、僕は真剣そのものだよ? ・・・・・・もう自分が見限られてるって、どうして分からないかな。
あのさ、もう僕に頼らないでくれる? 僕はもうお前なんて死んだ方がいいと思ってるくらいなの」



そこまで言うと、なぜか高町さんが僕を震えた瞳で悲しげに見出した。うーん、どうして?



「守ってもらいたいなら、管理局に頼れ。でも、フェイト達に迷惑をかけるな。
いい? お前の大好きな『管理局』に頼るの。飛ぶなら、友達になんて二度と頼るな」



そして、瞳を震わせて必死に涙を堪えてる。



「というか僕はもう、お前となんて友達じゃない。お前みたいな奴とは付き合い切れない。
高町さん、お願いだからそこの辺りを理解してもらえませんか? ・・・・・・勝手に死ね」



でも、僕の一言で涙は決壊した。うん、これでいい。だってマジで付き合い切れないし。



『ヤスフミ、お願いだからちゃんと話そうっ!? そんな言い方しなくてもいいのっ!!
・・・・・・私、このままは嫌だよ。ちゃんとヤスフミと』

「そうやってまた尻拭いさせるつもりですか。うん、そういう事ね。お断りだわ。
あ、フェイトも自分を認めてくれる大好きな局に守ってもらってよ。そうすれば僕なんてもういらないよ」

『ヤスフミっ!!』





結局こうやって、傷つけて振り切る事しか出来ない。でもごめん、もう無理なの。

僕はぶっちゃけ六課なんてどうでもいい。そんなもんに縛られてるのは嫌。

そのためにフィアッセさんやここの人達を守れないのは、もっと嫌。



そんなの、もう嫌だ。僕は悲しげなフェイトの顔を見ながら、余計に決意を固める。





『違うのっ! 私達、そんなつもり・・・・・・局に利用されたつもりはないよっ!!
私達の現状は、局のせいなんかじゃないっ! これは私達自身のせいなのっ!!』

「あ、分かった。スカリエッティっていう悪い奴が居たからこうなったーって思ってるんでしょ?
だって管理局はフェイトの大好きな大好きな居場所なんだから、悪い事なんてあるわけないし」

『・・・・・・そうじゃないよ。私達がそれぞれにダメだったから、本当にバカだったからこの結果になった。
ヤスフミだって、分かってるよね。局のせいにしたって、誰のせいにしたって何も変わらないって』



・・・・・・そうだね、分かってるよ。そんなの、きっと間違ってる。間違ってるから僕は、何も変えられない。



『そんな事したって、私達は何も変わらない。意味なんてないよ。
お願い。もう怒るのやめよ? もう、何も憎まないで欲しい』



唐突にそう言われて、僕ははやての方を見る。画面の中のはやては、軽く両手を合わせてきた。

・・・・・・なるほど、はやて経由でバラされたのか。だからこれか。



『私の事だってそうだよ。局どうこうじゃない。母さん達どうこうじゃない。私の心が弱かっただけ。私、ずっと勘違いしてた。
私は局員で執務官でオーバーSだから強くて、ヤスフミの事もちゃんと守れるって勘違いしてた。そうやってズルして逃げてた』



言いながら、フェイトは右の目から零れた涙を右の手で拭う。拭って、それでも僕に笑いかける。



『ううん、他にも勘違いやズルは沢山ある。・・・・・・デートでね、そこの辺りを話したかったんだ。
まぁ、ギンガに邪魔されちゃったけど。だから私はこんなにお話するの、遅くなってる』



だけど、分からない。僕はフェイトの事傷つけてるのに、どうしてそうなるのか・・・・・・分からない。



『ヤスフミは凄く優しいから、怒っちゃうの分かる』

「優しくなんてない」

『優しいよ。・・・・・・凄く、優しい。だから今、戦う事を選んだ。
そしてだからきっと、自分に対して1番怒ってる』



その言葉に胸が震える。というか、僕は驚きを隠せずにフェイトを見る。



『何も変えられない自分に、変える手段が見つけられない自分に怒ってる。・・・・・・局員になっても、変わらない。
例えスカリエッティみたいにテロリスト紛いの事をしても、何も変えられないって分かってる。だから余計に怒る』

「フェイト・・・・・・それ」

『沢山・・・・・・沢山考えて、気づいたんだ。ちゃんとヤスフミの事を知りたいって思ったら、気づけた』



そう言いながら、フェイトは自嘲するように笑う。



『まぁヒントはもらっちゃったし、今更ではあるけど気づけたの。
・・・・・・ここに来るまでに分からなかったのは、きっと本当に駄目だったね。ごめん』

「謝ら、ないでよ。てーか、違うし。僕、そんなんじゃない。
僕はもうみんなの面倒なんて見切れなくなっただけだし」

『そっか。でも・・・・・・ごめん、私はそれじゃあ納得出来ない。私はそんな未来、納得出来ない。
ヤスフミ、もう一度言うよ。もう分かってるはずだよね。分かってるから、コレなんだよね?』



自嘲する笑みは変わらないけど、それでもフェイトは言い切った。



『でもヤスフミ一人では、どんな事をしたって何も変えられない。私だけでもだめ。
私達二人で考えて、変えなくちゃいけないの。そうしていかなきゃ、何も変わらないの』



それで、決意が揺らぐ。揺らぐけど・・・・・・すぐにそれを収める。



『ここから・・・・・・ここからもう一度、ちゃんと向き合って繋がっていきたい。だから』

「それで局員になれってわけ?」

『ならなくていいよ。そんなの、私達が繋がる事には必須じゃない。というか、勘違いしないでくれるかな。
私はただ、ここから新しい私とヤスフミを始めたいだけ。もう一度ちゃんと手を繋ぎたいだけだよ』



画面の中の女の子は言いながら笑って・・・・・・そっと右手を伸ばす。



『もしどうしても局員が信用出来ないなら、私は今の仕事を辞めるよ』

「・・・・・・え?」

『フェイトちゃん、アンタ何をっ!!』

『局員であるためにヤスフミと分かり合えないなら、私はこんな立場いらない』



僕はその言葉に、軽く目を見開く。だってそれは、あんまりにも予想外の言葉だったから。



『全部振り払って、そのままの私で・・・・・・ただのフェイトとしてそこに行く』

「・・・・・本気?」

『本気だよ。これくらいの出来なきゃ、何も伝わらないから。本気だって思ってもらえないから。
だから私は私自身を全部賭ける。そのままの私でぶつかって、本気だって伝えたいの』



微笑みながらも、フェイトの目は真剣そのものだった。



『・・・・・・何の対価も無しでは何も得られない、だったよね。前に教えてくれた、等価交換の法則。
だから、対価を払う。私にとってヤスフミは、そうするだけの価値があるから』



だから悔しいけど・・・・・・伝わって、しまった。



『私にとってあなたは、あなたの笑顔は、どんな対価を払ってでも守りたいものなんだ。
世界中のみんなや私が笑えていても、あなたが笑ってくれてなかったら意味がない』



笑顔のまま言葉を続けるフェイトの想いが、通信越しでもダイレクトに伝わってしまった。



『・・・・・・うん、どうでもいい。あなたが笑ってくれない世界なんて、どうでもいいって思った。
JS事件の時・・・・・・ううん、ずっと前から私はそこを忘れてた。だから、こんなにも遠く離れちゃった』



伝わったから、今までみたいな憎まれ口が言えなかった。ただただ、聞く側に回るだけだった。



『でも思い出した。だから手を伸ばしたいの。私はあなたと一緒に笑って、幸せになりたいの。
もしもまだ私に、あなたの手を握るその資格があるなら・・・・・・違うな』



フェイトは言いながらも首を横に振って、まだ笑う。



『例え資格がなくたってそうしたい。今は遠い手を追いかけて、掴んで抱き寄せる。それで絶対に離さない。
でも、縛るわけじゃない。抱き寄せて、そのまま追いかけてく。私、あなたの事が好きみたいだから。離れるなんて、もう考えられない』

「・・・・・・そう。でもフェイト、僕はそれでも戻らないよ。もう決めたから」



だけど僕は・・・・・・そんな顔も、手も今は振り切る。揺れた心を、閉ざすように固めていく。

僕はもう決めた。だから、迷えない。迷ったり・・・・・・出来ない。



『・・・・・・フィアッセさんの事、守りたいんだね』

「そうだよ。僕・・・・・・フィアッセさんの事が、大好きだから。フェイトと同じくらいに。
僕も、フェイトと同じ。離れるなんて、考えられない。おかしいね、恋人でもなんでもないのに」

『うん、そうだね。おかしいけど・・・・・・でも、これが私達なんじゃないかな』

「そうかも知れないね」



苦笑するフェイトの顔が映る画面を見ながら、僕は両の拳を強く握り締める。



「だからこそもう、嫌だ。もう間違えたくない。きっと僕はJS事件の時、選択を間違えた。
間違えたのはフェイトだけじゃない。僕も間違えて・・・・・・この手を伸ばせなかった」



思い出すのは、目の前の女の子を守れなかった事。それは誰にも変えられない、本当の事。

1番の味方をしたかったのに、出来なかった。それは僕が後悔している時間。



「大事な人が勝手な理屈で壊されそうになるのは・・・・・・もう、嫌だ」

『・・・・・・ヤスフミ』

「だからごめん。振り切るわ。僕はもう、フィアッセさんの1番の味方をやるって決めたから」



そのまま通信を切る。それで、すぐに電源を落とす。着信拒否に出来ないのが、僕の甘さだよ。



≪・・・・・・いいんですか?≫

「いいの。フェイトがあんな風に言ってくれただけで、充分だから。それだけで、充分だから」



最低野郎にとっては、本当に充分過ぎるくらいにありがたい言葉だよ。

フェイト、ありがと。それで・・・・・・ごめん。やっぱり僕、フェイトの事傷つけてばかりだ。



「なにより、僕はもう決めて選んだもの。今更行く道引いてられるかってーの」

≪・・・・・・全く、バカですね。ここで戻ればフェイトさんの好感度が上がるかも知れないのに。ほら、フラグ成立の匂いがしますよ?≫

「大丈夫だよ。戻った後で上げるから。それに・・・・・・今はどの面下げて会えばいいのか、分からない」

≪まぁ、そこも分かりますけど≫



でしょ? ほとんど見抜かれまくってた上に、局員や夢まで賭けさせちゃったんだもの。



「やっぱり僕、最低だよね。うん、最低だ」



僕は上を見上げて、白い天井を見ながら自嘲するようにそう呟く。

嬉しいのと同時に、なんか負けた感じがしてとても悔しい。



≪いいんじゃないんですか? あなたが最低で鬼畜なのはいつもの事でしょ≫

「やかましい。僕は常に紳士的だっつーのに。だからこそ今、そんな自分が崩れてショックなのよ」

≪そうですか。ならそれは勘違いですね。あなたは常に鬼畜ですよ≫



・・・・・・さて、次はギンガさんに説明か。うー、頭痛いなー。

いざとなったら、マジでふん縛って転送しちゃ・・・・・・ん?



「アルト、セットアップ」

≪はい≫





そのまま、日本刀モードのアルトを左手に持つ。・・・・・・気配がした。誰か、近づいてきてる。



まぁ、大丈夫とは思うけど一応・・・・・・ね。賊がどんな手で来るか分からないんだし。



そうして、僕は近づいてきている気配がドアの前に立った瞬間を狙って、ドアノブに手をかけてドアを開け放つ。





「・・・・・・あ」



・・・・・・そこに居たのは、僕の知っている顔。それでちょっと驚いている。

そりゃそうだ、アクション起こそうとした出鼻を僕によって挫かれたんだから。



「フィアッセさん」

「あ、えっと・・・・・・その、こんばんは」



なんだ、フィアッセさんか。あー、ちとびっくりした・・・・・・てか、警戒しすぎかな。気分昂ぶってるのかも。



「ね、もしかして私が近づいてきてたのに気づいた?」

「一応」



視覚や聴覚の届かない位置の気配や動き、そういうものを察知する能力。

僕の得意技であり、これだけなら恭也さん達以上と言われてちょっと自信を持って鍛え上げた部分。



「そっか。すごいね、恭也や美由希と同じ事、出来るようになったんだ」



まぁ、長年あのハイスペック連中を相手にしてれば、これくらいは・・・・・・てか、出来なきゃ死ぬ。



「あの・・・・・・それでね」

「はい」

「少しお話。いいかな?」




















(その3へ続く)




















あとがき



やや「というわけで、本日のあとがきのお相手の結木ややでーす。・・・・・・なのはさん、気持ち悪い」

ウェンディ「ウェンディっスー。・・・・・・てゆうか、アレっスね。ご主人様に見捨てられた子犬みたいになってるっスよ」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンです。・・・・・・それで正解なんじゃないですか? ほら、あの人ドMでこの人がご主人様ですし≫

恭文「蒼凪恭文です。・・・・・・基本的になのはIFだと、僕は相当鬼畜っぽいしね。てゆうか、僕達そんな関係なんかい」





(どうしてもそうなってしまうのは、きっと色々な相乗効果のせいだろう)





やや「てゆうか恭文、ギンガさん分が少なくなってるような」

恭文「うん、それはね? まぁここの辺りはまた次回にやるお話だよ。というか、最後まで基本このノリだから」

やや「えぇ、そうなのっ!?」

ウェンディ「それはまた、大胆っスね」





(というか、実は次回の話もう書き上がってたりします。その関係でこういう感じかなーと)





古鉄≪新しい方向性を模索した結果、どうしてもこうなりました。
というか、ドンがぶりだと改訂版の意味がないでしょ≫

恭文「基本ラインは同じだけど、中身をある程度変えていかないとどうしようもないしね」





(まぁそこの辺りは大体察してください)





恭文「というか、改訂版ギンガさんルートのテーマが一つあって」

やや「なに?」

恭文「拍手で話の出てる超・ギンガさんルートの方に繋がりやすい展開にするつもりなの」

古鉄≪その代わり、真・ギンガさんルートの方に繋がるのは改定前と考えていただけると分かりやすいかと≫

やや「えー! そうなのー!?」

ウェンディ「・・・・・・まぁ、フェイトお嬢様が告白っぽい事言ってるっスからね」





※一応の説明


真・ギンガさんルート=『恭文×ギンガ+リイン』のカップリングになる。

超・ギンガさんルート=『恭文×ギンガ+フェイト+リイン』のカップリングになる。





ウェンディ「恭文、それいいんっスか? ほら、ギンガがまた泣くっスよ」

恭文「いいのよ。差異はやっぱり出さないとダメだし、なによりとまカノでやるハーレムの練習と考えれば」

ウェンディ「・・・・・・あぁ、そう言えば改定前書いた時はハーレムとかさっぱりだった時っスからね」

やや「だからこっちはそういう繋がりになるようにーって事?」

古鉄≪そうなります。そのために改定前も残したんですよ。・・・・・・それでは次回ですけど≫

恭文「次回はアレだね、改定前で言うと4話とかそれくらいの話だね。そして当然荒れるわけですよ」

やや「特になのはさんだよねー。てゆうか、なんかなのはさんもギンガさんも、自分の事しか考えてないように見えるんだけど」

ウェンディ「あー、それはそうっスね。まぁそこの辺りも次回という事で・・・・・・今回はここまでっスか?」

恭文「うん。・・・・・・というわけで、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンと≫

やや「何気にメルとまの話が出ててびっくりな結木ややと」

ウェンディ「そこも改定だと思ったウェンディっス。それじゃあみんな、またっスよー」










(そして、四人で笑顔で手を振る。・・・・・・というか、このメンバーももう定着したなぁ。
本日のED:ONE OK ROCK『皆無』)




















ギンガ「・・・・・・私、この改訂版の自分を殴りたいんだけど」

恭文「なんでいきなり暴力発言っ!?」

ギンガ「だって、勝手過ぎるものっ! こんなの絶対ないよっ!!
というかというか、リンディさんと同じだよっ!? うぅ、自分が恥ずかしいよっ!!」

恭文「大丈夫、ギンガさんはリンディさんとは違うよ。・・・・・・多分」

ギンガ「多分ってつけないでっ!? というか、ここはちゃんと取り返せるのかなっ!!」

恭文「どうだろ、作者はネタバレに近いから言いたくないそうだけど。あー、でも言わないとまたゆとりが」

ギンガ「なぎ君、だめっ! 多分その発言は色んな意味でアウトだからだめー!!」










(おしまい)





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