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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第35話 『嵐、来たる』(加筆修正版)



恭文「前回までのあらすじ。ついにAAA試験でリーゼフォーム爆誕。勢い任せでなのはを瞬殺」

フェイト「ヤスフミ、お疲れ様。というか、身体は大丈夫?」

恭文「いやいや、僕よりなのはの方でしょ。・・・・・・まぁ、いいか。僕は六課に義理立てする義務もないし」

フェイト「えっと、それもどうなのかな? でも、それであの・・・・・・うん、ここからだよね」

恭文「何が?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あの即行で病院送りになったバカを相手にした試験は終わり、どうやって帰ろうかと思っていた時にフェイトから連絡があった。

少し時間がかかるけど、迎えに行くからとの事。なので、僕は二つ返事でOKした。

それからしばらくして、今はフェイトの車の中。それで、帰り道の途中。海沿いにあるパーキングの中で車を停めてる。





ここでちょっと遅めのお昼をいただいて、二人でなんか始終ニコニコしてしまった。





というか、フェイトはずっと真っ赤だった。風邪かと思って聞いてみても、首を横に振るだけだった。










「それで・・・・・・あの、ヤスフミ」

「うん、何かな。てゆうかフェイト、どうして顔そんなに真っ赤?」

「これは、いいの。本当に大丈夫だから」



いや、大丈夫に見えないから。というか、なんかまたスチーム出始めてるし。



「ヤスフミ、私の側に居て・・・・・・騎士として私の事を守りたい。そう言ってくれたよね」

「うん」



確かに言った。これからしたい事、居たい場所はやっぱりそこかなと。



「あのね、言われた時からずっと思ってたの。うん、たくさん。それで、ちゃんと確認させて?」



フェイトはそこまで言って深呼吸する。数度呼吸してから、僕を真っ直ぐに見て言葉を続けた。



「あの言葉は、ヤスフミからの告白で・・・・・・いいのかな?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?



「こくはく?」

「うん。・・・・・・『側に居たい』や『私の騎士になる』だから、そうかなと。私は、ずっとそう思ってた」

「・・・・・・あ」



あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? そ、そうだよっ! そうなるじゃないのさっ!!

言ってる事はともかく、そういう行動を取れば当然・・・・・・! 僕のバカァァァァァァァァッ!!



「いや、だからその・・・・・・あれはあの、えっと」





今度は、僕がスチームを出す番だった。だってあの、凄い無意識に・・・・・・なんかだめ。

やばい、逃げたい。意識せずに告白してたとか、色んな意味で有り得ないし。

手が震えて、瞳に軽く涙が黙って・・・・・・じゃなかった、涙が溜まってきてしまう。



口の中が急激に乾いて、どう言っていいのか分からなくなる。どうしよ、これはどうしよ。





「ヤスフミ」



でもフェイトの言葉で、パニックが止まる。だってそれだけじゃなくて、フェイトが僕の右手を握ってくれた。

それで優しく・・・・・・優しく左手で、そっと撫で上げてくれる。だから僕は、乱れてた呼吸を整えられた。



「ごめん、ちょっと困らせちゃったね。ただ私は、ヤスフミの正直な気持ちが聞きたかったの。
・・・・・・お願い。嘘つかないで、ちゃんと教えて欲しい」



僕の・・・・・・そんなの決まってる。何度も言葉にして、何度も更新してきたから。



「・・・・・・・・・・・・好きだよ」



だから言える。迷わずに今ある気持ちを、フェイトに伝えた。



「フェイトの事が・・・・・・凄く。仲間とか友達としてじゃない。女の子として好きなの」



自分の気持を口にした時から、心の中がざわつき始めた。

これはきっと、いつもとは違う。答えは・・・・・・ここで出る。だからまた、怖くなってきた。



「・・・・・・ありがとう。嬉しいよ」

「本当に? あの、迷惑じゃないかな」

「そんな事ない。私、凄くドキドキしてる。涙が出るくらいに、嬉しいの。・・・・・・でも」



そこで『でも』とフェイトは続けた。これはあの・・・・・・ダメ、なのかな。



「私に時間をくれないかな?」

「え?」

「ちゃんと考えて返事をしたいから。8年分の想いに、ちゃんと応えたいの」



8年? え、どういう事ですか。そして何故にフェイトは泣きそうになるのさ。



「ヤスフミ、私に何回も・・・・・・告白してくれていたよね」

「えぇっ!?」



いや、確かにしてたけどっ! でもいつ気付いたのっ!?



「1ヶ月前のデートから」



僕の考えていた事が表情から読み取れたのか、フェイトは申し訳なさげにそう言った。



「うん、あれで気付いた。私が今まで、ヤスフミを沢山傷つけていた事に」

「あの、そんな事ない。それを言ったら僕だって・・・・・・ほら、同じだから」



心配かけまくってたし、きっと傷つける事もあって・・・・・・うん、同じだよ。

何回か本気で殴ったりもあったよ? そういうのも考えたら、ある意味当然なんだよね。



「同じじゃないよ。この間、教えてくれたよね? 自分を諦めたくないって。
色んな事が出来る自分になりたいって。それが・・・・・・ヤスフミの夢」



フェイトの中では、そういう解釈になったっぽい。あぁ、でもそうなのかな。

僕の目指す『魔法』はきっとそういう形でもあるんだ。



「だから、きっと違う」

「・・・・・・フェイト」

「それで・・・・・・えっと、少し話が逸れたけどアレで気付いたの。ヤスフミが私に沢山、言葉と想いを届けてくれていた事に」



フェイトが僕の手を握る力を、更に強める。痛い感じじゃなくて、結構必死な感じに。



「例えば、嘱託試験の時にプロポーズしてくれた」



お、思い出させないで。勢い任せにも程があると、反省してるんだから。



「補佐官の資格を取って、助けようともしてくれた。ううん、それ以外でもいっぱい支えてくれようとした」



数年、IDカードの肥やしでしたけど。というか、今も肥やしになり続けてる。



「1年前は、迷って止まりそうになっていた私の事、叩いて起こしてくれた」



1年前のは何話か前に話した、チートばかりが出まくりな事件の時だね。



「JS事件だってそう。ヤスフミはいつだって、私の1番の味方・・・・・・してくれた」

「僕、そんな事してないよ」

「してるよ。私、一緒に居るのが当たり前だとどこかで思ってた。だから気付かなかった。
私、ずっと・・・・・・ずっとヤスフミのこの温かい手と心で守られてた」



フェイトは瞳を静かに閉じて、そっと僕の手に口づけしてくれた。

フェイトの柔らかい唇は、ちょうど僕の中指の第一関節から第二関節の間に触れる。



「でも、ただ優しくするだけじゃない」



指に触れた熱と柔らかさで、頭の芯が痺れる。フェイトは目を開いて、少し照れたように笑った。



「すぐに何かに甘えてズルしちゃう弱い私の事、何度も何度も叱ってくれた。
そんなのダメだって。そんな風に自分を諦めちゃだめだって・・・・・・手を引っ張ってくれた」



フェイトは、僕の手を抱き寄せるようにする。それで、手が柔らかくて温かい感触に振れる。



「だから、あの」

「・・・・・・うん?」

「私、まだ勇気が出ないの。このままヤスフミとそうなってもいいのかなとか、迷ってる」

「・・・・・・・・・・・・フェイト、別に無理しなくていいんだよ? 嫌なら嫌で、仕方ないし」



フェイト、8年スルーを負い目に感じてるのかなと思った。だから瞳に戸惑いの色が見える。

その、確かに辛いけど・・・・・・でも、フェイトが絶対に僕と付き合わなくちゃいけないとかじゃないし。



「違う、そういう事じゃないのっ!!」



フェイトは首を横に振って、僕の手を更に強く抱きしめる。それで、柔らかい感触がより強くなった。



「・・・・・・そういう事じゃ、ないの。私、まだ全然ダメダメなんだ。女の子としても、人間としてもダメな子なの。
ずっと局や家族や友達・・・・・・何かの繋がりに甘えて、ズルを続けてたから。だから今、私は自分の事が嫌いなの」



フェイトの手が、震え始める。そして俯いて僕から視線を外す。



「そんな自分に自信が持てなくて、だから勇気が出なくて」



視線を落として吐く息は、その震えに合わせるように乱れていて、その吐息が軽く腕にかかる。



「そうやって、きっと今まで逃げてた。・・・・・・ヤスフミ、確認」

「うん」

「そんな私で・・・・・・こんなダメな私で、本当にいいの?
私より素敵な子、たくさん居る。それでも、私なのかな」



変わらない必死な目でそう言われて、僕は頷いた。迷いも躊躇いもなく、すぐにフェイトの言葉に答える。



「それでもフェイトなの。フェイトの事、全部欲しい。それで守りたい。
フェイトの事、全部。だって、フェイトの事大好きだから。フェイトに、沢山笑って欲しいの」

「・・・・・・ありがと」



俯いていたフェイトが、顔を上げて僕の目を真っ直ぐに見る。



「なら私、まずこの手を握り締める事から、始めていいかな」



というか、少し身体を倒して僕に顔を近づける。



「これからヤスフミの事も見て、自分の事も見て・・・・・・少しずつ、変わっていく。ズルい私なんて、振り切っちゃう。
それで必ず、必ず近い内に答えを届ける。そこは絶対に約束する。だから、それまで・・・・・・待ってて欲しい」



最後の言葉が尻切れになるのは、きっとフェイトが不安になってるから。

まぁ、そうだよね。なんだかんだで『返事は保留・考えさせて欲しい』って事なんだから。



「うん、いいよ」



でも、僕の返事はこれだから。僕は空いていた左手をそっとフェイトの手に重ねる。

それで、さっきフェイトがしてくれたように・・・・・・優しく、優しく撫でていく。



「でも、僕だって・・・・・・いつまでもフリーじゃないんだから。
早めに答え出さないと、フィアッセさんと結婚しちゃうから」

「うん」

「その時になってOK出されても、困るし」

「その時は、第三夫人になるよ」

「なに平然ととんでもない事言ってるっ!?」



そして第二夫人は誰っ! いや、もう言わなくても分かるけどっ!! 大体誰が来るのか分かるけどっ!!



「てゆうか、気が長い方じゃないし・・・・・・審査をもたもたしてると、勝手に奪って彼氏面するから」

「審査・・・・・・うん、そうだね。これは私がヤスフミに審査されるんだよね」

「それだけじゃないよ。僕だってフェイトに審査されるんだから」

「あ、そうなるのかな。それで奪われるのは・・・・・・うん、覚悟してる。
私がまたズルしそうになってたら、遠慮無くそうしていいよ」



だからそういうとんでもない事を言うなー! 僕が男だって意識0でしょっ!!



「でも、乱暴なのは本当にやめて欲しいな。優しく、独り占めにして欲しい。
私だって・・・・・・女の子なんだよ? 一応、それなりの理想はあるんだから」



苦笑し気味に笑うフェイトを見て、僕はなんかもう・・・・・・照れくさくなって視線を左に逸らすしかなかった。



「フェイト」

「なにかな」

「・・・・・・・・・・・・あり、がと」

「それは私のセリフだよ。ありがと、ずっと・・・・・・ずっと味方で居てくれて」










・・・・・・そのまま、かなり遅くまでフェイトと二人でずーっと手を繋いで色々話してた。





審査中というか、お試し期間というか・・・・・・とにかく、僕達の関係は少しだけ前に進んだ。





その実感が今ひとつ持てなかった。でも、繋いだ手の温かさが、それを伝えてくれた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その日の夜、ヤスフミを家に送ってから隊舎に戻った。なお、隊舎の空気は非常に微妙。





なのは・・・・・・うん、明日は私もお説教かな。まぁそこはともかくとして、私は談話室で通信。





その相手は、ようやく海鳴に戻って一安心のエイミィ。まぁその、お姉さんと現状確認?










『試験の様子は見てたよー。いやぁ、恭文くんはまた派手に暴れたねー』

「うん。でも・・・・・・楽しそうだった。多分、六課に来た中で一番」

『もうアルフなんて口開けてポカーンとしてたけど、最後は大笑いだよ。
『あんなバカやったのはアイツが初めてだ』ってさ。というか、初めてだよね?』

「初めてだろうね」



戦闘中に音楽を流して、それで能力アップだもの。前代未聞もいいところだよ。

知ってる私やヒロさんはともかく、はやて達はポカーンとしてたもの。まぁ、ヴィヴィオは楽しそうだったけど。



「ちなみに母さんは?」

『頭抱えてたよ。もう愚痴が凄かったんだから。真剣な試験の場をバカにしてるって言いまくってたし』

「そっか。うん、予測はしてた」





うん、ここは予想してた。まぁそういう側面も無くはないんだけど・・・・・・言っても無駄だと思うなぁ。



だってヤスフミ、あのベルトを現段階でも相当大事にしてるもの。



イルド陸士からの貰い物だからというのもあるけど、それ以上に思い入れは相当に強いみたい。





『あとは恭文くんがブラスターのエクセリオン斬った時に、なんか使ったっぽいでしょ? モニターではよく見えてなかったんだけどさ』

「・・・・・・あぁ、それも込みなんだね」

『そうそう。相当危険な術組んでるんじゃないかって、目くじら立てちゃってるの』

「まぁ、危険と言えば危険かな。だからヤスフミも禁呪にしちゃってるくらいだし」





ヤスフミがエクセリオンを斬った時に使ったエクレールショットは、魔力付与を応用した魔法。

撃ち込んだ対象に対応する属性攻撃を撃つと、付与した魔力に連鎖反応を起こして威力を倍加する事が出来るの。

しかも敵の魔力攻撃にも付与する事が可能で、ここに関してはヤスフミも『出来るとは思ってなかった』と言ってた。



でも、欠点がないわけじゃない。ヤスフミ曰く、あの魔法はダメコン・・・・・・ダメージコントロールが一切出来ないらしい。

純粋な威力倍加に焦点を絞ってしまっているから、対人戦だと危険度が大きい。

ヤスフミもブラスターを使ったエクセリオンがなかったら、使うつもりはなかったそうだし。



ちなみにこの術、当然だけどヤスフミしか使えない魔法。クレイモアと同じく、プログラム量が本当に多いの。





『まぁお母さんの方は、しばらく距離を取った方がいいね』

「うん、そのつもり。私も正直話したくないから」

『・・・・・・そこまでか。てゆうかフェイトちゃん』

「何かな」

『『死んでしまいたい』って言ったの、本当?』



画面の中のエイミィが、少し険しい表情でそう言った。だから私は・・・・・・首を縦に振った。



『お母さん、相当崩れちゃってるよ。アレで自分の子育て関係の事を一切がっさい否定されたも同然だしね』

「だろうね。でも、私の気持ちは変わらない。私・・・・・・今の自分が、六課が嫌いなんだ」

『またどうして・・・・・・って、聞くまでもないか。JS事件絡みで、妙な事があったんでしょ』

「うん」



エイミィは休職中でも、一応局員。だから私の今の感情とかそういうの、ちゃんと察してくれた。

細かい事情が話せないのにそういう対処をしてくれるのは、妹としては本当にありがたい。



「私ね、気づいたんだ。・・・・・・自分が、何を守りたいのかとか。あとは、どんな自分になりたいのかとか」



私は別に、世界や組織の事なんて本当にどうでもよかった。そんな自分の感情に気づくのに、8年かかった。

・・・・・・ううん、きっと途中で忘れていたんだ。私はズルをして、自分からも逃げてたんだから。



「ずっと、ずっと一緒だと思ってた。一緒に居るのが当たり前だと思ってた。
私達には家族や友人、仲間という絆がある。だから・・・・・・ずっと逃げてた」

『・・・・・・恭文くん?』

「うん。エイミィ、私ようやく分かった。私、ずっと・・・・・・ずっとヤスフミに笑っていて欲しいだけだった。
だから私が居て幸せを感じる居場所に・・・・・・局に誘ってた。ヤスフミもきっと幸せになってくれると思って」



今思うと、色々歪んでると思う。だって、ここにはヤスフミの感情が何もなかったから。

私達はケンカして、互いに向き合っていかなきゃ繋がれないのに、以前言ったように私はここを放棄していた。



「私が今居るこの場所なら、同じ立場ならヤスフミの事を守れると思ってた。私は執務官で、それなりに権力もある。
みんなと同じようにするのが辛くても、きっとそれも共有出来て分かり合えて、幸せになれるって・・・・・・本気で考えてた」



分かっているではなくて、分かりたい。知っているのではなく、知りたい。私は初めて会った時、そう思ってたはず。

でも、一緒に居るのが当たり前になって・・・・・・強い繋がりが出来て、私はその感情を蔑ろにした。だからズレていった。



「でも、そんなの勘違いだって最近気づいた。立場も、権力も、居場所も・・・・・・そんなの関係なかった。
ううん、そんなのがあっても邪魔なだけだった。だからヤスフミ、六課に居る時はいつもつまらなそうなの」



それはきっと、今のヤスフミが求めているものがここにはないから。というか、あるわけがないと思う。



『あー、それもお母さんから聞いてる。もうそれも信じられないって顔してたよ』

「でも、事実だよ。本当は・・・・・・いっぱい旅をして、冒険したいんだと思う。
大事な夢を、自分なりのペースで追いかけたいんだと思う」



ズレに気づいて、自分の勘違いや愚かさに気づいて、今のあの子を知ろうとして・・・・・・ようやく分かった。



「私はオーバーS魔導師で、執務官で武装隊では一等空尉扱いで・・・・・・でも、だめなの。
そんなのじゃ、私は大好きな男の子の笑顔を守れないの。あの子の今を何一つ守れない」

『それが、フェイトちゃんの気づいた事なんだね』

「うん。だから私・・・・・・今度こそ、本当の意味で強くなりたい」



立場なんて、役職なんていらない。そんなものがあったって、私は自分の理想一つ守れなかった。

そんなものがあったって何も変わらないって、ようやく気づいた。だから、ここから・・・・・・ここから一歩。



「私が本当に守りたいものを、この手で守れるように。
あの子にいつだって胸を張れる自分であり続けられるように」



当然だけど、今は張れない。私はあの頃から何の成長もしてないって分かったから。

守れてもいないと思う。私は昼間言った通り、ずっと守られっぱなしだから。



「・・・・・・そうしていきたいの。私、ようやく気づいたから。私にとってヤスフミが・・・・・・どれだけ大事かって事に」

『そっか。それが、フェイトちゃんの願う形?』

「うん」

『だったら、それでいいよ』



そう言いながらエイミィは、少し前のめりになって優しく笑ってくれる。



『でも、また情熱的だよねー。まるで恭文くんに告白してるみたいだったし』

「エイミィ、お願いだからからかわないでっ!? ・・・・・・その、まだそういうのじゃ、ないんだから」










まだ、本当に私達はそういう関係じゃない。私のわがままで、ちょっとだけ中途半端な関係になった。

でも、それでも前進ではある。ヤスフミ、もう少しだけ・・・・・・もう少しだけ、待ってて欲しいな。

今のままじゃダメなんだ。今のままじゃ私、迷ってばかりで胸を張れない。だから、一応でもこれからの道を決める。





決めて、これが新しい私だって胸を張れる自分に少しでも近づけたら、その時は・・・・・・私の方から、奪いに行っちゃうから。





今まで待たせた分、積極的に頑張りたいんだ。だってあの、恋人同士になるってそういうものだよね?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにもかくにも、やっさんのAAA試験はこうして終わりを告げた。

で、皆が気になる試験の結果だけど・・・・・・見事、合格っ!!

いや、なのはちゃんは結構辛めに採点したらしいんだけどね。それでもこれだよ。





やってる事はともかく、成果は出してるしね。うん、私らもしっかりと鍛えた甲斐があるってもんだよ。

よかったよかった。・・・・・・ちなみに、なのはちゃんがどうなったかは色々察して欲しい。

とりあえず本局に三日程検査入院で、その間にフェイトちゃんや教導隊のみんなから説教されまくったとだけ言っておく。





で、この試験の後に元々高かった古き鉄の悪ひょ・・・・・・もとい、評判は更に上昇する事になった。

理由は簡単。あの『エース・オブ・エース』、『管理局の白き魔王』、高町なのは一等空尉を倒したから。

それも勝利宣言した上で、宣言通りにものの5分弱で倒した。ここが大きく評価された。





まぁやっさんの勝利宣言だけが広まっちゃって、その前段階すっ飛ばしてるのがアレだけどさ。

とにかくこれによって、局内外を問わず誰であろうと決して敵に回してはいけない存在・・・・・・これは魔王なのはちゃんだね。

そんななのはちゃんすらも一蹴出来る存在として、その名は更に広まっていく事になった。





というか、悪化した。サリ曰く本気で『なのマタ』とか呼ばれ始めているらしい。

我が弟弟子がどこまでいくのか、楽しみでもあるけど怖くもある。

それでやっさんは試験の翌日、フェイトちゃんと一緒に局のセンターに向かい、IDカードを更新。





新しいカードには、当然のようにしっかりと『空戦AAA+』の文字が記載されていた。

フェイトちゃん曰く、やっさんとアルトアイゼンはそれを見て・・・・・・とても嬉しそうだったらしい。

いつものすました顔ではあったけど、それでもだよ。それでこう言ったらしい。





これを返却なんてしたら、バチが当たるね。一生持ってないと。全く、めんどくさい』・・・・・・と。





その時の事を、まるで自分の事のように喜びながら話すフェイトちゃんを見て私は・・・・・・素直によかったなと思った。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第35話 『嵐、来たる』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あれから、数日。まぁまぁAAA+というバカでかい荷物も背負いつつも日常は続く。そして、ここから始まった。





もしかしたら六課最大の危機だったかもしれないと、後に関係者が口を揃えて言う事になる大事件が。










「・・・・・・戦技披露会?」

「うん。3月の末くらいにやるらしくてね。で、今出場者を探してる最中なんだって」



今日はフェイトの外回りに付き合っております。その道中、車内でそんな話をされた。



≪また突然ですね。・・・・・・あぁ、アレとかコレのせいですか≫

「そ、そこを言われると辛いけど・・・・・・そうだね、それが大きいと思う」





戦技披露会とか、局が定期的に行っている公開模擬戦。

局内でもエースとされている人間が選出され、大衆の面前でその技術をぶつけ合う。

これには目的がある。それは、犯罪者やアウトゾーンな方々に対する威圧のため。



局という組織には、これだけの人材が居ると言うアピールのため。

ま、そういうのは抜きで、これに選出される事は局員にとっては名誉とされているのも事実。

だって、対外的にも『アンタは強いっ!!』って、局からお墨付きもらうのと同じだもの。



ただ・・・・・・ねぇ、やるにしてもメンバーはきっちりした方がいい。





「でも、戦技披露会か。今年も地獄が見られるのかなぁ」

「確かに・・・・・・なのはとシグナムは酷かったから。それで毎回1試合はそういうのがあるんだよね」

≪まさしく『血戦』でしたしね。というか、また出してブラスター使われても困りますよ≫





実はなのはとシグナムさんは、以前これに出ている。二人共技能だけは高いしね。

ちなみに戦技披露会では、人格どうこうは一切問わない方向性になっているのであしからずです。

そして、だからこそ問題が起きた。あのバカ二人、凄まじい暴れっぷりで観客を全員引かせた。



そのお陰で、試合の様子を局の空戦教材ビデオ使う予定だったのがパーにもなった。

まぁあの時はみんなに説教されまくったから、今度出るとしたら大丈夫だとは思うけど。

でも、油断は出来ない。相手はあの二人なんだから。だって人格問われないし。



あ、一応補足ね? 二人は『だったら私を出すななの』とは言えない立場に居るの。

だから、お説教を受けるしかなかった。だってケンカ紛いの模擬戦は、戦技披露会の趣旨の一つを潰す事にもなるから。

それは後進の育成。トップクラスの魔導師の戦いを見せる事で、魔導戦技の奥深さを知らしめるの。



それで見ている人達は、こう思うわけですよ。『凄いなー。僕もこういう風になりたいなー』って。

実際、戦技披露会を行った年は武装局員全体のモチベーションも大きく上がるし、ただの理論武装というわけじゃない。

つまり、戦技披露会とは内にも外にも局にとっていい影響をもたらす一大イベントなの。



だからこそ、JS事件や1年前のチート軍団によるテロ事件で信頼失墜しまくりな管理局が、ここでやろうとするのも分かる。

そしてだからこそ、先程話したお説教の時に、リンディさんやレティさんが相当言ってきたのも分かる。

あ、そこには教導隊のメンバー(なのは対象)も入ってるから。そういう趣旨なのに、見せられた試合が血戦だもの。



しかも、観客全員がドン引きする程の難易度。そりゃあ説教くらいしたくなるよ。





「はやても、もし要請が来ても断るつもりみたい。ここはなのはの怪我の事以前の問題だもの」

「正解だよ。てゆうか、あれは一般ピーポーにはキツいって」

≪あなたは楽しそうでしたけどね≫





気にしないで。『みんながモノクロの中、ただ一人カラーだった』とか言われるけど、気にしないで。

でも、真面目に今回は出さない方がいいと思うな。怪我どうこう抜きにまた血戦になったらまずいよ。

出すにしても、アレだよね。二人には何か制限をつけないと。魔力リミッター今より厳しくするとかさ。



じゃないと、絶対にスペック勝負に走って火力が凄い事になるに決まってる。うん、断言してもいいね。





「あ、そうだ。ヤスフミ」

「なに?」

「気づいているとは思うけど・・・・・・はやて、様子が変なの。というか、どんどん酷くなってる」



フェイトの顔や声から、心配そうな色が窺える。その対象は、言うまでもなくあの女。

・・・・・・あのタヌキの問題は未だに片付いていない。こりゃ、いよいよ放置出来なくなったかな。



「ヤスフミ、私にも話してくれないかな」

「・・・・・・えっと」

「悪いけど、もう知らんぷりは出来ないよ。はやてもそうだけど、八神家のみんなも相当気にしてる」

「だよ・・・・・・ね」



うし、こうなったら巻き込んじゃおう。僕の許容量を越えてるのは、間違いないんだから。



「じゃあさ、今日ははやても入れて、三人で外で夕飯にしようか。
ちょうどはやても中央本部に行ってるし、呼び出しちゃおうよ」

「そこで・・・・・・だね」

「うん。たださ、フェイト」



・・・・・・ただ一つだけ、念押ししておこう。うん、絶対にだ。



「お願いだから、冷静にね? 絶対にザンバーとか真・ソニックとかはダメだから」

≪本当にお願いします。血の雨が降るのは避けたいんですよ≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私には、どうしてヤスフミやアルトアイゼンが真剣な声でそう言ったのか、その時は分からなかった。





でも、はやてからご飯を食べながら話を聞いて意味が分かったよ。うん、許せない。絶対に・・・・・・許せない。










「許せない。女の子を・・・・・・女の子をなんだと思ってるのかな」

「フェイト、そう言いながら箸を握りしめるのはやめてっ! というか、折れちゃうからっ!! 少なくとも箸に罪はないよっ!?」

「そうだね、罪があるのはヴェロッサ・アコースだよね」



そうだよ、だから罪を数えさせなきゃ。徹底的に・・・・・・うん、頑張ろう。



「いやいやっ! 一概にそうとは言えないよっ!?」

「どうしてかなっ!!」

「だってはやてが押し倒してはやてが主導でエッチしちゃったんだからっ!!」

「そんなの関係ないよっ! 女の子はそんな簡単じゃないんだよっ!?」

「あぁもう、確かにその通りだよねっ! うん、そう言われたら僕は納得するしかないわっ!!」





ヤスフミが納得してくれたところで、念密に計画を立てようと思う。やっぱりこの場合・・・・・・逮捕かな。

お酒の影響でそうなるのなんて、はっきり言えば犯罪だよ? そんなの、絶対に最低だよ。

もし私がそんな事を・・・・・・あ、ヤスフミ以外になるのかな。ヤスフミの場合、お酒酔わないから。



とにかく、一緒にお酒を飲んでたとするよね? それで私も相手も酔っ払ってて、そうなるなんて嫌だ。

男の子って、そういう時には我慢するものなんじゃないかな。ヤスフミはちゃんと出来るよ?

大体、そんな形でエッチしたって本当に好きかどうかなんて分からないよ。それで・・・・・・うん、そうだな。



もしそういう事があって、相手がその後で『好きだ』って言ってきても私は断る。というか、ザンバーで八つ裂きにする。

私、そんな人とはお付き合い出来ない。そんな最低な事する人とは、どんなに仲良くても縁を切るよ。

確かに私にも隙があっただろうし、そこは色々否めないけど・・・・・・でもそういうの、デートレイプって言って立派な犯罪だもの。



・・・・・・あ、でも待って。これはヤスフミ以外って考えるからこうなるのかな。

なら、ヤスフミだったらどうする? 例えば、ヤスフミがお酒強くなかったら。

それでそうなら・・・・・・まぁ、どうしても止まらなかったとするよね? うん、どうしてもだよ。





「あ、あの・・・・・・・フェイトちゃん? マジで目が怖いんやけど。
てゆうかアレよ、恭文が言うたみたいにうちが押し倒してうちが自主的に頑張ったみたいな感じやし」

「・・・・・・はやて、ダメだよ。フェイト話聞いてない」

「そやな、めっちゃ考え込んでるし」





もしそうなら・・・・・・やっぱり、幻滅するかな。あの、ヤスフミは襲わないって結果が出てるから自信持てないけど。

ううん、幻滅しなくちゃいけない。信頼してた分、幻滅しなくちゃいけないんだ。

というか、ショックかも。この間の奪うどうこうのやり取りだって、ヤスフミがそんな事しないって思ってるからだし。



だって、わざわざネカフェに行こうとするような子だよ? 据え膳食わぬは男の恥というのに、それなんだよ?

添い寝した時だって、私それなりに覚悟は・・・・・・あぁ、そっか。なんだか分かった。

許せるか許せないかの境界線は、女の子としてそういう覚悟を相手に対して出来るかどうかなんだ。



それで相手にもその覚悟をちゃんと見せて欲しいんだ。あぁ、だからだ。





「おーい、フェイトー? お願いだから現実世界に戻って来てー」

「そやそやー。うちら置いてけぼりでめっちゃ寂しいんやからー。
・・・・・・あ、恭文。このししゃも食べてみ? 中々いけるで」

「え、ホント? ・・・・・・あ、ホントだ。すっごいたまご入ってるし」





だから私、酔ってどうこうは納得出来ないんだ。その互いの覚悟の確認が出来ないから。

どこか流されて、興味本位や肉欲だけで話を進めてる感じがするから。

それで・・・・・・そうだ。私はさっき言ったみたいに流されないヤスフミだから、覚悟出来たんだ。



そんなヤスフミだから、その・・・・・・キスやバストタッチもOKだって、言い切れちゃったんだ。





「はやて、覚悟はあったのかな? 正直に聞かせて」

「アンタなんやイキナリっ! てゆうか、イキナリ過ぎて意味分からんからっ!!」

「いいから聞かせてっ! 覚悟はあったのっ!? それともなかったのかなっ!!
ちなみに私はあったよっ! ちゃんと覚悟は決めてたっ!!」

「だから何の話やっ! フェイトちゃん、お願いやからちゃんとうちらに分かるように話してやっ!!」



どこが分からないのかな。私はちゃんと・・・・・・ううん、ここはいいよね。

とにかく私はヤスフミの方を見る。なお、若干視線が厳しいのは許して欲しい。



「ヤスフミ、なんでこんな大事な事を黙ってたのっ!? そうと知ってたら」

「そうやって怒りにかられるからに決まってるでしょうがっ!!
みんながみんなそうなったら、本気でどうなるか分かんないでしょっ!?」

「・・・・・・・・・・・・そうだね、ごめん」

≪いきなり冷静になりましたね≫

「ちょっと、想像しちゃって」



うん、とんでもない事になる。間違いなく。その光景を想像して、身体が震えた。



「とにかくはやて。アコース査察官とちゃんと話そう? それで覚悟を」

「そやから覚悟ってなんの話っ!?」

「覚悟は覚悟だよっ! はやて、そんな事も分からないのかなっ!!」

「ごめんフェイト、僕もさっぱり分からないよっ! というか、ちゃんと最初から最後まで話そうよっ!!」



・・・・・・話すと長くなりそうなので、私は本題に戻る事にした。というか、話逸れそうだもの。



「とにかくアコース査察官に『気にしないで』と言っちゃったから、どうしても連絡し辛いのは分かるの。
でも、このままは絶対だめだよ。私から見てもはやて、確実に気にしてるよね」

「そこは僕も同感。というか、はやてはどうしたいのよ。まずはそこだよ」



私達がそう言うと、はやての表情が一気に重くなった。

・・・・・・やっぱり辛いよね。うん、辛くないはずがない。私だったらって考えると、泣きたくなるもの。



「あのな」

「「うん」」

「そういう問題や無くなったかも知れんのよ」

「「はい?」」



え、どういう事? そういう問題じゃなくなったって、意味が分からないよ。



「・・・・・・来ないんよ」

「来ない?」

「フェイトちゃん、知っとるやろ? うち・・・・・・あの日がそんな遅れたりとかしないで」



少し言っている意味を考えて、気づいた。うん、確かにそう聞いている。だから私は頷いた。

はやてはその、あの日・・・・・・生理が少々無茶な生活をしても、遅れたりしない子なの。



「え、ちょっと待って」



話がおかしい。なんでいきなりそんな話になるの?

絶対おかしいよ。・・・・・・ううん、一つだけ納得出来る答えがある。



≪・・・・・・はやてさん、まさか来ないというのは≫

「正解や」

「はやて、一応確認。避妊しなかったの?」



私と同じく意味が分かったヤスフミの言葉に、はやては・・・・・・真剣な顔で頷いた。



「つ、つまりはやては」

「妊娠・・・・・・してるかも知れないって事っ!?」










・・・・・・こうして、機動六課最大の危機と騒動が始まった。





というか・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、どうしようかこれ」

≪とりあえず・・・・・・でしょう≫

「そうだね。フェイト」

「うん」



僕はフェイトにゆっくりと右手を差し出した。で、ニッコリと笑ってから、思っていた言葉を届ける。

あくまでも、優しく、柔らかく・・・・・・だよ。



「バルディッシュ、預かるから貸して?」

「ダメ」



・・・・・・あくまでも、優しく、柔らかくだよ。



「あのね、フェイト。じゃあ言い方を変えようか。
その右手でずっと握り締めているバルディッシュを、一旦離して欲しいんだ」

「どうして?」



・・・・・・あくまでも、優しく柔らかく、刺激をしないようにだよ。



「それはね、フェイトが今もの凄く怖いオーラを出してるからだよ。
うん、僕もはやてもちょっと引いてるくらい。だからね・・・・・・とりあえず、置いて」



そこまで僕が言うと、フェイトはしぶしぶバルディッシュをテーブルの上においてくれた。

・・・・・・あー、これで一安心だ。やっと話が進められる。



「でさ、はやて。その・・・・・・それって確定情報?」

「ううん、まだわからん。ちゃんと検査したわけちゃうし」

≪なら、まずはその事、ヴェロッサさんに知らせるところからですよ。・・・・・・平和的に≫



うん、結構重要よそこ。現に、鬼に一人なりかけたしね。



「でも」



はやて、相当躊躇ってるみたい。・・・・・・まぁなぁ、どう考えても修羅場コースだもの。



「はやて、ヤスフミの言う通りだよ。まずはそこを確認しないと。
・・・・・・怖いの、分からなくはないよ? 私だったらって考えると、本当に怖い」



フェイトも泣きそうな顔しているのを見て・・・・・・うん、心から思った。

僕はあの時、我慢して本当に良かったと。じゃなかったら、きっとBADだったよ。



「けど、ちゃんとしなきゃ。まずそこから始めないと、私達もどうしようもないよ」



検査もしていない現段階じゃあ、勘違いの可能性もあるしね。

はやてがどう言おうと、ここだけは絶対に抜かせない。それで、あと一つか。



”・・・・・・フェイト、悪いんだけど、そっちは頼める? 僕は僕でちょいやる事があるから”

”それはいいけど・・・・・・やる事?”

”ヴェロッサさんだよ”





現状はともかく、はやてとどういうつもりでそうなって今どう思っているのかについてちょっとツツこう。



いきなり会わせて『いや、押し倒されたし僕もバナナジュース溜まってたから頑張りたくなった』なんて言ったとしよう。



そんな事になったら、マジではやてが自害しかねない。なお、今回はシャレは抜きだよ。





”いきなりはやてから話しても、またゴタゴタしそうだしね。ワンクッションは必要でしょ”

”なるほど、確かにそうだね。でも、ヤスフミだけで大丈夫?”

”うん、まず人生の先輩方に相談する。そこの辺りは、アテがないわけじゃないから”










・・・・・・とにかく、僕達は動く事になった。どちらにしろ、これは本当に先送りなど出来ない。





でも、いきなり過ぎでしょこれは。あー、クリスマスに放置したのはやっぱミスジャッジだったのかー。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、フェイトにはやては任せる事にして、僕は家に戻った。





なので、早速行動開始だよ。僕は、ある人に通信を繋げた。










「・・・・・・もしもし、クロノさん。今、仕事は大丈夫ですか?」

『あぁ、丁度一段落したところだ。どうした。深刻そうな顔だが』



そう、クロノさんです。まず最初の相談相手は、頼れるうちのバカ兄貴だよ。



「いえ、頼りになる人生の先輩のお知恵を借りたくて」

『ふむ・・・・・・珍しいな。よし、それじゃあまず話してくれ』



さすがクロノさん、話が早くて助かる。先日の篭城事件も、この調子だったら本当に助かったのに。



「えっと・・・・・・エイミィさんとの間に子どもが出来た時って、どんな感じでした?」

『・・・・・・は?』

「えっとですね、僕の知り合いの相手がまぁ・・・・・・ご懐妊したんですよ。あ、女の人です。
でも、どう伝えたらいいかよく分からないらしくて。悩んでいると相談されまして」





現段階でヴェロッサさんの名前は出せない。そんな事したら、どうなるかマジで分からない。

ここは名前は伏せた上で相談して、ヴェロッサさんへの判断材料にさせてもらう。

まず立てておきたいのが・・・・・・はやての事を聞いた時のヴェロッサさんの反応。



こういう場合、やっぱり聞くべきはクロノさんなのだ。ほら、経験者だし。

ゲンヤさんはまた事情違うし、恭也さんはなんかこう・・・・・・ヤバい臭いしかしない。

くそ、マジで僕の周りは男成分少ないぞ。おかげでこういう時やりにくいし。





『なるほど、それでか。普通に言うのはダメなのか?』

「実は反応が怖いらしいんですよ。その子、相手と結婚とかしてるわけじゃないんです。
それでもしも喜んでくれなかったらどうしようとか、かなり考えちゃうらしくて」



なお、嘘は言ってない。僕はさっきから少なくとも、嘘は言ってないのであしからず。

・・・・・・うむぅ、ここまで言うと状況は悪いよね。こう、辛いよ。



『・・・・・・その危惧は正解かも知れないな』

「え?」

『実を言うとな、僕も良く分からなかった。
子どもが出来て自分が父親になるという事実を、エイミィから聞いた直後は認識出来なかった』

「そうなんですか?」



意外だ。クロノさん、しっかりしてるから大丈夫だと思ってたのに。つーか、見ててそう思った。



『もちろん頭では分かっていた。だがそれが頭だけの事だと、カレルとリエラが生まれるまでに、散々思い知ったよ。
自分が父親になるんだと認識し切ったのは、本当に生まれる直前のエイミィを見てからだな』

「じゃあ、徐々に・・・・・・ですか」

『そうだな。大きくなっていくエイミィのお腹と、それを愛おしいそうに撫でるエイミィを見て少しずつだ。
どうも男は体内で抱えない分、認識が遅れるらしい」



あー、なるほど。そういう生体構造的な部分にも関わってくるのか。なら・・・・・・うわ、寒気がしたし。



「お前の知り合いの彼氏も、いきなり父親モードになる事は無いと考えた方がいいかも知れん』



そういうものなのか。でも、ここは貴重な情報だ。うん、それもかなりだよ。



『それで一度自分はおかしいのではないかと母さんに相談したが・・・・・・笑われたよ。父さんも同じくだったとな』

「あはは・・・・・・遺伝なんですかね」





じゃあ、やっぱりいきなりあれこれ反応を求めるのは酷か。



うん、はやてとフェイトには言い含めておこう。多少鈍くても、それは仕方ないんだ。



・・・・・・しっかり言っておこう。じゃないと、どうなるか分かったもんじゃない。





「クロノさん、ありがとうございました」

『参考になったか?』

「かなり」





重々にお礼を言ってから、通信を切る。さて、次だ。



正直、話を持ちかけるのは戸惑うけど・・・・・・この状況で、一番信頼出来るのは間違いない。



口も固いし、このコミュニティから距離もあるし。なので、ピポパと。





『はーい♪』

「・・・・・・失礼しました」



どうやら、僕は色々と間が悪かったらしい。だから、遠慮無く通信を切ろうとした。



『あら、別に切らなくても大丈夫よ?』

「切りますからっ! まさかバスタオル一枚とは思わなかったんですっ!!」

『もう、そんな事言わなくていいのよ。私とあなたの仲じゃない。
あの時、私の胸に触れたあなたの手の温かさに、どうしても運命を感じて』

「その話はやめてー! てゆうか、運命なら他の所で感じてっ!!」










・・・・・・この人は、頼れるシングルマザーで最近一番メールのやり取りをしているお姉さん。





その名もメガーヌ・アルピーノさんです。でも思った。人選色々ミスったのかもと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく一旦通信を切って、着替え終わってから話を再開させた。





というか、かけ直した。で、全ての事情を話したところ・・・・・・とっても困った顔をされてしまった。










『恭文くん』

「なんですか」

『私ね、試験の様子も見てたしヒロちゃんやフェイト執務官に、ゲンヤさんにギンガちゃんからも色々聞いていたの』



何を聞いたんですか、あなた。あと、そんな可哀想な物を見る目を僕に向けないで。



『君・・・・・・本当に運が無いと言うか、トラブル体質だよね』

「・・・・・・言わないでください。んなもん、とっくに分かり切ってる」



というか、僕の尊敬するあの人に比べれば僕はまだマシな方ですよ。

いや、確かに僕も最悪ゾーンあるけど・・・・・・でも、まだ一般的なレベルのはず。



『まぁ、そこはいいか。でも・・・・・・結構こじれてるね』

「そうなんですよ」



正直、放置してしまった事が悔やまれる。くそ、失敗だった。



『それでこれからだけど、まずは事実確認からという判断は正解だと思う。
というかさ、この間隊舎にお邪魔した時に見た様子から思うに、六課の人達に現段階で話せないよ』

「やっぱりそう思います?」

『かなりね。現状だとアコース査察官が悪者なのは、間違いないし。だって、それっきりなんでしょ?』

「えぇ、それっきりです。はやてに上に乗られてバナナジュース搾り取られてからそれっきりですよ」

『なら、誘ったどうこうを含めても、はっきり言ってただのヤリ逃げにしか見えないよ』



・・・・・・ですよねー。えぇもう、そこは言われるまでもなくよーく分かってました。



『女の子にとって、エッチって特別なんだから。単純に快楽を得るだけじゃないんだよ?
心身ともに、その人のものになっていくという・・・・・・まぁ、儀式的な意味合いもあったりするの』

「儀式、ですか」

『うん、ちょっと古風な考え方ではあるけどね。というか、元々は子作りなんだよ?
ただ私達は身体の構造上のあれこれのせいで、それによって強い快楽を得られるというだけの話』



メガーヌさん的にも、このお話はかなり不愉快らしい。ちょっと目が怒ってるもの。



『だから本来なら、どういう経緯であれ繋がった子とはちゃんと向き合う必要があるの。
避妊もなにも無しなら、余計にそうだよ。子どもを作るって、一生の事なんだから』

「・・・・・・ごもっともです。てゆうかメガーヌさん、そのままヴェロッサさんに言ってやってくれませんか?」

『そうしたいのはやまやまだけど、無理よ。私が出たら、話が余計にこじれちゃうもの』



ですよねー。うんうん、そこも分かってました。



『なので私としては、まずはアコース査察官に面談。
それで皆で検査に立ち会わせる方がいいと思う』

「ヴェロッサさんも一緒に・・・・・・ですか?」

『そうだよ』



むむ、そうなのか。でも・・・・・・なぜ? 僕はつい首を軽く傾げてしまう。

そんな僕の様子から察したのか、メガーヌさんが怒ってた表情を変えて少し笑ってくれた。



『こういうのは、男の子も不安にさせなきゃ。検査結果を待ってる間はね、色々考えるの。
うん、私は考えた。まだ前の旦那と仲良かったけどそれでもね。アレ、女の子一人は辛いよ?』



どこか遠い目をして言うメガーヌさんを見て、少し申し訳なくなった。

こう・・・・・・ねぇ? 嫌なものを思い出させたかなと。



『・・・・・・大丈夫だよ。今は、恭文くんが居るから。私、もう君の事しか考えてないんだ』



神様、居るなら今すぐに答えてください。どーしたらこの優しい笑顔を浮かべた人を止められますか?

いや、無理っぽいですけどっ! あー、やっぱり勝てないよっ!! どーしろというのよこれっ!?



「とにかく、ヴェロッサさんにもその待ち時間を堪能させておけと」

『さりげなく流したわね。うぅ、ひどいわ。私・・・・・・いつあなたに求められてもいいのに』

「でも、そのためにはどうすれば」

『そして徹底無視はひどくないかなっ!? もうちょっと反応してくれた方が可愛いのにー!!』



やかましいっ! 反応したらしたで色々大問題でしょうがっ!! 僕、フェイトといい感じなのにー!!



『とにかくそこは、八神部隊長に話をさせるしかないよ』



メガーヌさんは、バカをやりつつもやっぱり強い。分かり切った事ではあるけど、しっかりと言い切った。



『場合によっては傷つく可能性もあるけど、それでも、結局は当人同士がどうにかするしかないんだから。
二人だけで話が一番いいけど、君やフェイト執務官が同席するにしても、あくまでも中立の立場として話す事だよ?』

「そうしないと、余計にゴタゴタすると」

『するね。君達は、あくまでも第三者なんだから。・・・・・・まぁ、色々言いたくなるのも確かに分かる。
これ、押し倒したのがアコース査察官だったら、ぶっちぎりで犯罪だもの』



えぇ、そこはもう分かっております。でも、押し倒したのがはやてだから・・・・・・あれ?



「あの、この場合はやてが悪いって事に」

『なる危険性はあるよ? 以前と違って、男性に対しての強姦罪は成立するようになってるもの』





あー、ようするに男って興奮しちゃってエッチ出来るようになるでしょ? というか、勃起しないと出来ない。

だから、以前は女性の方から無理矢理関係を迫っても、さほど重い罪にならなかったの。

なお、女性は言わずもがなだよね。でも、近年になって事情が色々変わった。その原因は薬品関係。



いわゆる勃起剤的なものがあるから、相手の意志を無視で勃起させてそのまま・・・・・・というパターンも多いらしい。

だから、法改正で男が無理矢理関係を迫られた場合でも重い罪になるようしたんだ。そこは地球もミッドも同じ。

ようするにアレだね。合意の上という立証が難しい場合では、そういう事しない方がいいって事だね。互いに傷ついちゃうもの。



現に今、はやてもヴェロッサさんも傷ついてる。こんなの、いい事なわけがない。





「・・・・・・はい」



うーん、フェイトを押さえるのが結構大変かも。でも、方針は決まってきた。うん、あとは冷静にいこう。



『とにかくみんな冷静且つ慎重に。だけど迅速に・・・・・・だね』

「はい。あの、ありがとうございました」

『ううん、力になるって約束したもの。これくらいはね。・・・・・・で、その後はどう?』

「へ?」

『フェイト執務官に告白して、考えてくれる事になったじゃない。その後、何か進展は?』



そんなに興味がありますか。というか、身を乗り出さないで。谷間がパジャマから見えてるから。



『あ、もっと見たいなら・・・・・・いいよ? 大丈夫、フェイト執務官には黙ってるから』

「へ?」

『だって恭文くん、私の胸見てたもの』



なんでバレてるっ!? いや、確かに見てたけど、そこまで露骨に見てないのにー!!



『うん、いいんだよ? さっきも言ったけど、私はOK出してる。・・・・・・いきなりこういう事言う女は、やっぱり嫌いかな。
でも、遊びのつもりじゃないって事は知っておいて欲しいな。私、そんなに軽い女じゃないよ? いつだって、本気なんだから』

「見たくないですからっ! つーかボタンに手をかけるのはやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





とにかく、こうして行動は決まった。そして、僕がメガーヌさんに勝てない事も再認識した。

しっかりお礼を言った上で、メガーヌさんが四つ目のボタンを外さないうちに通信を切った。

それでまず、はやてとヴェロッサさんには二人でしっかりと話をさせる。てゆうか、ここは絶対だ。



もうこれ、二人だけの問題じゃないし・・・・・・アレ、通信? これ、フェイトからだ。



僕は思考を一旦中断して、その通信を繋げた。立ち上がった画面に映るのは、僕の大好きな女の子の顔。





『もしもし、ヤスフミ?』

「あ、フェイト。丁度良かった。今」

『アコース査察官から、はやてに連絡が来た。明日、ちゃんと会って話したい・・・・・・だって』

「はいっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、最近うちの旦那様からよく通信が来る。あの一件以来、色々と思うところが出来たらしい。





まぁ奥様としては、家庭を大事にする気持ちが芽生えてくれて、とっても嬉しい。





私もやっぱり寂しくはあるし、こういうのは嬉しいのよ。で、今日のお話は・・・・・・恭文君の事。










「恭文くんから相談?」

『あぁ。・・・・・・かくかくしかじか・・・・・・というものでな。確かにアイツもパパとは呼ばれてはいる。
だが、その辺りをよくは分かってるわけではないのだと、少し思ってしまった』



いや、あの・・・・・・なんて言うかさ、クロノ君? なんでそんな嬉しそうなのさ。

アレですか。パパ対決で勝てたから、嬉しかったってオチですか。



「あのクロノ君、嬉しそうにしてるとこ悪いけど、それちょっとおかしくない?」

『なぜだ?』

「いや・・・・・・まずさ、あの子にそういう友達居るの? それも話通りなら女の子だよね?
フェイトちゃんは当然除外として、あとはなのはちゃん達くらいだよ?」



私がそう言うと、うちの旦那様は見事に固まった。うん、居ないよね。私だって思いつかないもの。

まさか、美由希ちゃんとかさざなみ寮の人達の誰か? そういう局の外の繋がりなら、まだ分かるんだけど。



「というかクロノ君、お母さんに相談する時に同じような手を使ったらしいね。友達がどうとかーってさ」

『あぁ、それは・・・・・・待て待てっ! なぜ知っているっ!?』

「あー、お母さんが楽しそうに話してくれたぞ? いや、アタシもエイミィも聞いてて微笑ましかったよ」



なお、突然に口を出してきたのは、リビングでゴロゴロしながら通信を聞いていたアルフ。

それでまぁつまりよ、友達の話なんて言ってるけど実は・・・・・・という可能性を、私はさっきから言ってるわけ。



「・・・・・・あり得ないか」

『あり得ないな』

「一晩一緒に居て、何にも無いような二人だもんな。ないない」



うん、きっとちょぉぉぉぉっと気になっただけだよね。うん、まさかね。

私達がそう結論付けようとした瞬間、通信がかかった。・・・・・・あれ、なのはちゃんからだ。



「はい、もしもし?」

『あ、エイミィさんっ! あの、その・・・・・・大変なんですっ!!』

「・・・・・・なぜに君はそんなに慌てているのかね? まー、落ち着いてお姉さんに話してみなさい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



フェイトちゃんとはやてちゃんの様子がおかしい。一緒にご飯を食べて、帰ってきてからずっとだよ。

その上フェイトちゃんは、帰って来るなりはやてちゃんと調べものとかでオフィスに行った。

事件が起こっているわけでも無いのになんだか変だなと思いつつも、お茶とお菓子を差し入れに持っていった。





でも・・・・・・・誰もいない。トイレか何かかなと思い、とりあえず電源ランプの点いていた端末の横にそれらを置く。





その時に、画面がチラっと見えた。というか、私に反応したのかスリープモードが解けた。










「・・・・・・・・・・・・えっ!?」










そこに映っていたのは局のデータベースとか、仕事関連の物じゃなかった。それはいわゆる検索エンジン。





そしてそれが弾き出していた検索内容は・・・・・・首都にある主立った産婦人科のHPだった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「・・・・・・というわけなんです。あの、でも・・・・・・まさかですよね。
恭文君とフェイトちゃん、何もなかったんだし」



そ、そうだよ。確かにクリスマスの時にもお持ち帰りされちゃったけど、何もなかったって言ってたよ?

恭文君、優しくまた守ってくれたんだって・・・・・・本当に嬉しそうに話してたもの。



『・・・・・・クロノ君』

『間違いないかも、知れないな』



私が期待していたのは、二人・・・・・・というより、第三者による否定の言葉。だけど、それは出てこなかった。



『あー、実はさっき、クロノが恭文から相談事をされてたんだよ』

「相談事?」

『あぁ。・・・・・・男が父親の自覚を持つのには、時間がかかるものなのかという事を聞かれた』



えぇっ!? あの・・・・・・恭文君がだよねっ! どうしてっ!!

・・・・・・私は、驚きの表情を隠す事が出来なかった。それはその、余りにも予想外過ぎるもの。



「クロノ君、それって何時の話?」



私はとりあえず、落ち着こうと思って冷静を装ってそんな事を聞く。それを聞いている間に、冷静になろうと思っていた。



『・・・・・・大体、3時間程前だな』



でも、その目論見は砕かれた。私は冷静になるどころか、更に取り乱す事になったから。



「それくらいの時間だと・・・・・・恭文君、フェイトちゃんとはやてちゃん達とご飯食べた後のはずだよ」

『えっと、つまり・・・・・・どういう事だよ、おいっ!!』



冷静に・・・・・・KOOLだ。KOOLになれ高町なのは。・・・・・・分かったっ!!



「つまりつまり、恭文くんとフェイトちゃんは1ヶ月前に」

『そうなっちゃっていた・・・・・・と』

『ひと月以上経ち、変化・・・・・・いや、兆候に気付いた? それをはやてに相談していた』



それでもしかしたら、はやてちゃんの様子がおかしかったのもコレ関係なのかも。

元々恭文君なりフェイトちゃんから、色々相談されていたからなのかも。



『クロノに変な質問をしたのは自分の反応がおかしいんじゃないかと思って、相当遠回りに聞いた・・・・・・とかか?』

『多分、クロノ君にバレないようにするためだよ。でも、まためんどくさい手を』

『穴だらけな辺りが、実にアイツらしいがな』

『じゃあ、なにか? もしかしてフェイト』

「お腹の中に・・・・・・恭文君との赤ちゃんっ!?」










え・・・・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? それって妊娠してるって事だよねっ!!

でもそれならクリスマスの時とかに確認・・・・・・・あぁそうだよっ! それなら納得出来ちゃうよっ!!

恭文君にお持ち帰りされて、一晩かけて確認し合ったんだよっ! それでそれで、OK出したんだっ!!





私、こういう時は友達としてどうすればいいのかなっ! おめでたい事ではあるけど、突然過ぎて混乱してくるよー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、翌日・・・・・・決戦の日はやってきた。

舞台となるのはここ、あのトンデモ査察官との待ち合わせ場所。

クラナガンにある某ファミリーイタリアンレストラン・タイゼリア。





その近くに、僕達は立っていた。おそらく奴はもう中に居るはず。そう、決戦はもうすぐなのだ。










「「ハックシュンっ!!」」



なので僕はフェイトと一緒に、くしゃみなど出すのですよ。



「・・・・・・二人とも、大丈夫か?」

「「あ、うん。なんとか」」



・・・・・・おかしい。なんで急に? というか、フェイトも一緒に。



≪二人揃って風邪ですか?≫

「いや、そんなはずは・・・・・・ないよね?」

「体調管理、ちゃんとしているよね」



うーん、謎だ。誰かが噂してるとかかなぁ。それならまだ納得出来るんだけど。



「でも、はやて。本当に一人でいいの?」

「うん、大丈夫や。・・・・・・ちゃんと話す。気持ち、もう固まったから」



いや、真面目に心配だよ。そう言ってまた気にするなとか言いそうだし。



「うちがあの時どう思っていたのか、ちゃんと話すから。・・・・・・言ったやろ?」










確かにここに来る道すがら、はやては話してくれた。どういうつもりで・・・・・・そうなったのかを。





だから僕とフェイトは顔を見合わせてから、はやての方へ向き直って頷いて答えた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うちな、恭文にうちの気持ちはどうなんや・・・・・・と言われてから、ずっと考えてたんよ」



歩きつつ、どこか遠い目をしながらそう言うのは・・・・・・僕よりも小さな女の子。

僕なんかより偉くて凄くて・・・・・・そしてか弱い、一人の女の子。



「どうして、アコース査察官と・・・・・・って事?」

「そうや。でもな・・・・・・これが中々分からんよ。うん、今でも、分かってるわけちゃうかも」



はやてにとっては、そうらしい。やっぱ、フェイトの言うように戸惑うらしいね。うん、簡単じゃないか。



「でもな、これだけは言えるんよ。うち・・・・・・後悔してないんよ。
少なくともロッサと・・・・・・結ばれた事は。あの時の時間を、大事やとも思うてる」



でもそこに『他は後悔しまくりやけどな』・・・・・・なんて付け加えるのが、はやてらしいけどね。



「でも、こんなんでえぇんかな」

「自信、無いの?」

「そうやな、自信無いわ。・・・・・・もう色々不安なだけで、それを埋めたくてしょうがない。
そやから知らず知らずにそういう風に美化してるんやないかと思うと、ちとな」



なるほど、それはまぁ・・・・・・分からなくはない。ま、今の僕が言うと説得力0だけど。



「・・・・・・でも、大事な記憶になってるんでしょ? そう思えるなら、それでいいじゃないのさ」

「アンタ、また簡単に言うなぁ」

「簡単でいいんだよ。その人と一緒に居た記憶と時間が、どんなものでも大事だと思えるならさ。
それはその人が好きだって事だと思う。少なくとも僕はそう。うん、その全部が大事で、大好き」





フェイトと居る時間。フェイトと居た記憶。その全部が大切な宝物になってる。

楽しく笑い合った時間も、ちょっとケンカした記憶も。いらない時間なんて、一つだって無い。

だってその全部に、僕達の全部が詰まってるから。どれも全部必要で幸せなの。



そんな時間を刻む度にそれを大事だと思う。なにがあっても守り抜きたいと思う度に・・・・・・感じる。

僕はこの人の事が好きなんだと。それで、好きって気持ちが更新されていく。

うん、ずっと好きだったじゃないね。僕はフェイトの事を好きになり続けているんだ。今、この瞬間も。





「なるほどなぁ。・・・・・・ちゅう事らしいけど、フェイトちゃんどうや?」



え、待って待って。なんでそこでフェイトに話を振る? それ、色々間違ってるから。



「あの、えっと・・・・・・ヤ、ヤスフミっ!? いくらなんでもいきなり過ぎだよっ! 私にだって、心の準備はあるんだからっ!!」

「え、なんで怒られてるの僕っ!? 今、良い事言ったよねっ!!」

「空気読めてへんからやろ」



こ、このタヌキは・・・・・・ふざけるなー! そういう意味ではおのれの方が空気読めてないのよっ!?

元はと言えば、出歯亀やらかしたせいでこれなんでしょうがっ! 絶対その事忘れてるしっ!!



「・・・・・・でも、そんな単純で・・・・・・えぇんかな?」



ニヤニヤしていた表情を真剣なものに変えて聞いてきた我が悪友に、僕は何時もの調子で返す。



「いいに決まってるでしょ。てゆうか、難しく考えるから頭の中の迷路はごちゃごちゃになるの。
答えは、いつだってシンプルなんだよ。好きで、大事。だから側に居たい・・・・・・ってね」

≪8年頑張った人間は、言う事が違いますね。というより、重みが違いますよ≫

「そうやな。うち、思わず感心してもうたもん」

「・・・・・・おのれらは」

「ヤスフミ、抑えて抑えて」










・・・・・・でもさ、きっとそれくらい単純で、簡単でいいんだよ。





大事な答えは、難しくなんてないの。いつだって、どんな時だってシンプルなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・分かった。じゃあ、私とヤスフミは近くに居るから」

「うん。待っててな」



そう言って、はやては店内に入っていった。・・・・・・さて、外から観察だ。



「えっと、事前に調査していた観測ポイントはっと」

「ヤスフミ、ダメだよ。それで邪魔したらどうするの?」



呆れた顔でフェイトがそう言った。なので、僕はしっかりとカウンターをかまして沈める事にする。



「・・・・・・フェイト、そう言う事を口にするなら今すぐバルディッシュを離して。どうしてまた握り締めてるのさ」

「・・・・・・だって、心配で」



えーい、いちいち可愛い表情しおってからにっ! 悪いけど、それじゃ騙されんぞっ!!



≪あー、とりあえずあなた達・・・・・・見てください≫

「「なに?」」

≪ヴェロッサさん、いきなり頭下げました≫

「「あぁ、そ・・・・・・えぇっ!?」」



あ、ホントだ。思いっきり頭下げてる。というか、はやてが戸惑ってるや。



「え、どういうつもりでアレっ!?」

「当然だろ。話すにしても、この場合まずは男が頭下げなきゃだめだしな」

≪アコース査察官にも非があるのは、明白ですしね≫



僕達はすぐに後ろを振り向いた。すると・・・・・・よく知った顔があった。

というか、全然気づかなかった。くそ、僕もまだまだ甘い。



「「・・・・・・サリさんっ!?」」

≪あなた、いつの間に≫

「それはこっちのセリフだ。どうもこそこそ動いてるなと思えば、こういう事か。・・・・・・てーか、フェイトちゃん」



サリさんが少し怯えた顔で、フェイトの両肩に手を置いて頭を下げる。



「頼む。まずバルディッシュを離してくれないか? やっさんだけじゃなくて、俺も全く安心出来ない」

「・・・・・・・・・・・・はい」




















(第36話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、改定前だと29話。加筆分も加えて前後編となった今回のお話です。本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。・・・・・・で、恭文。今回は難しい問題だよね」

恭文「そうだね。色んな意味で最低だしね。酒に酔っ払ってどうこうなんて」





(なお、ここはエッチするしない以外の事でも言えます。・・・・・・アイツら、○ねばいいのに)




あむ「え、どうしたっ!? なんで作者さんいきなりトラウマ発動してんのっ!!」

恭文「あー、それは作者は酒関連では多大なトラウマがあるからだよ。なお、人に迷惑かけられる方ね?」

あむ「あ、そうなんだ。というと何かな」

恭文「・・・・・・当時の知り合い二人と、お酒を飲んだわけですよ。まぁ、相手は男だね。うん、二人共男だよ?
そうしたらその二人が二次会終了までに凄まじい酔っ払い方をして、新宿の歌舞伎町の入り口の歩道の植え込みで動けなくなったの」

あむ「え?」

恭文「それで、寝ゲロ吐きやがりまして・・・・・・近くの商店の人まで飛び出してきて、救急車が来る大騒ぎになった。
なお、作者は二次会終了までに酔いが醒めていて、完全シラフ。結果的に2月の真冬の夜の中、その二人のお世話だよ」





(その上、衆人環視に晒されながらです。そうですね、行き交う人々合わせて大体100人前後の人間に見られ続けました)





あむ「そ、それはまた・・・・・・で、どうなったの?」

恭文「なんかね、商店の人から掃除用具をもらって寝ゲロを掃除して、水を自腹で買って飲ませて酔いを醒まさせて」





(あ、そう言えばその時のお金もらってないな)





恭文「その上近くの商店の人や誰かが呼んだ救急車の救急隊員さんに、作者さんは凄い叱られたそうだから」

あむ「はぁっ!? なんでよっ! だってそれだと悪い事してないよねっ!!」

恭文「ようするに『何故にこんな事になる前に止めなかった?』って話をされたわけですよ。
なお、作者はかなり必死に止めたけど全然聞いてくれなかった事も言ったさ。でも、却下されたね」

あむ「そ、それはまた・・・・・・散々だね」

恭文「酒は人を変えてしまうのよ。ちなみにその時作者は、救急車で運ばれると2万円取られるというのを知ったりしたのよ」

あむ「へぇ、そうなん・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 救急車お金取るっておかしくないかなっ!!」





(でも、取ります。ただ、事故や事件などの場合はそんな事はしません。
この時みたいに、酒が原因の急性アルコール中毒の場合のみ、お金を取るそうです)





恭文「やたらとこういうのが多いらしいから、もうそうしてるんだって。それは作者びっくりだったね」

あむ「・・・・・・あぁ、そうなんだ。ちなみに、その迷惑な二人とは?」

恭文「それっきりに決まってるじゃないのさ。作者はまた他人の寝ゲロを掃除するような目に遭うのは嫌らしいから」

あむ「いや、それは誰だって同じじゃん。・・・・・・じゃあアレかな、もしかしてこの話にはそういうお酒絡みのあれこれが詰まってるんだ」

恭文「そうだよ。酒はね、人を狂わせるの。だからあむ、大人になってもお酒に飲まれるのはやめようね?」





(もっと言うと、寝ゲロはやめてね? 急性アルコール中毒もやめてね?)





あむ「・・・・・・いつもならツッコむとこだけど、今回は分かった。マジ気をつけるよ」

恭文「うん、お願い。・・・・・・さて、8月1日は作者の誕生日。そして僕の誕生日だよ」





(なお、蒼い古き鉄は平成22年の8月1日は、マリアージュのせいで全ての予定を潰されました)





恭文「うん、ドキたま/だっしゅの方でね。・・・・・・で、そのドキたま/だっしゅ76話なんだけど」

あむ「あ、4分の1は書きあがったんだっけ」

恭文「そうだよ。ただ、ここを見てちょっと勉強し直してるんだって」





・『ttp://www.nicovideo.jp/mylist/19904312』

・『ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm11097413(【スパイクvsヴィンセント】格闘シーン考察【カウボーイビバップ】)』

・『ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm11154801(【バルサvs狩人】格闘シーン考察【精霊の守り人】)』





恭文「この動画のアニメ格闘シーンの考察、勉強になるからこれ見つつ76話書いてるのよ」





(基本的に、こういう専門知識が著しく欠けているので・・・・・・結構助かっています)





あむ「あ、そうなんだ。じゃあ、もうちょっとかかりそう?」

恭文「うん。以前の二回を超える対決にするつもりだから。でもね、本当に勉強になる。
特に三番目とか? ・・・・・・でもさ、これ見てて思ったんだって」

あむ「なに?」

恭文「フェイト達のテレビでの武器の使い方とか立ち回り方が、全然リアルじゃない」

あむ「・・・・・・まぁ、アニメだしね。その上空飛んでドラゴンボールだし、仕方ないって」

恭文「それもそうだね。・・・・・・おのれ、ディケイドめ」





(『こら青ちびっ! お前いちいと俺のせいにしてんじゃねぇよっ!! てゆうか、どこの鳴滝だっ!!』)





恭文「とにかく、ドキたま/だっしゅ76話を頑張ってるので、もうしばらくお待ちください。
それでは、本日はここまで。マジで戦闘シーンを頑張りたい蒼凪恭文と」

あむ「一体どんな形になるかが楽しみな、日奈森あむでした。それじゃあみんな、またねー」










(でも、この動画達は本当に勉強になるので助かっています。
本日のED:中原麻衣『あなたという時間』)




















恭文「さて、FS改訂版もついに大詰めだよ」

フェイト「残り2話だしね。うーん、ようやくここまで来たね」

恭文「そうだね。同人誌化に向けての一つのゴールが、見えてきたよ。あとは・・・・・・ファイル圧縮かぁ」

フェイト「まだよく分かってないんだっけ」

恭文「作者、専門知識が著しく欠けてるしね。まぁ、頑張ってくから大丈夫でしょ」










(おしまい)






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あきゅろす。
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