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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第1話 『クウガの世界/遭遇』



恭文「これまでのこのお話は」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あぁもう分かったよっ! ……勃たないんだよっ! だ、だからあの……勃たないのっ!
バレンタインの辺りから全然で……全然なのっ!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文「……ごめんなさい、無理でした。アレを小説で再現は無理でした」

ギンガ「ちょっと待ってっ!? いきなり一発目これってどういう事かなっ!」

恭文「ギンガさん、見て分からない? とりあえずやってみてすぐに挫折しただけだよ」

ギンガ「自信を持って言わないでー!」

恭文「とにかく、詳しくはIFルートのギンガさんとそのアフターをご覧ください。
……というわけで、新連載だよー。みんなが待っていた」

ギンガ「私アフターだね」

恭文「違うよっ!? ディケイドクロスなんだからっ!」

ギンガ「違わないよねっ! 私がメインなんだからっ!」

恭文「それでもギンガさんを1番押しじゃないのっ! とにかく……お話スタートッ!」

ギンガ「…………ぐす」

恭文「泣くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



知らない世界に跳ばされて、新しい仮面ライダーに会って、ここが『クウガの世界』だと教えてもらいました。

まぁまぁ異世界来訪って言うのは、二次創作の基本ラインだよ。でも、これはいきなり過ぎる。

なので僕はとりあえず、この男について行く事にした。まぁ大丈夫だよ、一応主役ライダーだし。



ただ、その前にある場所に来ていた。その場所には、『光写真館』と看板があった。

そしてその玄関前には、蒼と白のラインが眩しいオフロードバイクと、それを不思議そうに見ている女性。

暗めの栗色の髪を二つに分けて、少し目尻が切れ長な僕達と同い年くらいの女の子。



僕達はここに門矢士――仮面ライダーディケイドに連れられて来たんだけど、ちとびっくりした。





「あー! デンバードじゃないのさっ!」



僕をミクロマン呼びした奴を抜き去り、急いであのバイクに走り寄る。



「あの、君は? というか……士くんっ!」



というか、ちょっと待って。このフレームにアクセルにボディにタイヤのサイズはなに?

実際のデンバードより少し小さめで、タイヤもオフロードじゃなくてモタードタイプになってる。



「おう、夏みかん。お客さん二人連れて来たぞ」

「連れて来たって……あの、この人達は」



それでキーボックスが無くて、パス……僕は、懐から黒いパスを取り出す。



「俺達と同じだ。というか、コイツらは魔導師ってやつだ」

「同じっ!? ……いやいや、その前に魔導師ってなんですかっ!」



それでそれをデンバードのフロント部分にある長方形の差込口に挿し込むと、見事に起動した。

デンバードは静かなエンジン音を響かせていて、それを見て僕の目はまた見開く。



「あの、どうも」

「あ、どうも」





デンバードの近くに、銀色のジェラルミンケースが置いてあった。銀色の蓋には、紫水晶のマーク。

このマークは……僕はジェラルミンケースを開けた。鍵はかかってなかったので、そのまま開いた。

開いた中にあったのは、黒を基調として黄色と緑のラインが入ったベルト。その傍らにはカードケース。



……待て待てっ! なんでこれまで一緒に跳ばされて来てるっ!? おかしいでしょうがっ!





「……というかなぎ君ダメだよっ! 勝手にここのバイク動かしちゃっ! それにケースも勝手に開けちゃだめっ!」

「いえ、あの……私達のバイクじゃないんですけど」

「え?」

「そのケースも、そのバイクと一緒に突然現れて……もう何がなんだか」

「そりゃそうでしょ」



僕は驚きつつも、後ろから声をかけてきたギンガさんの方へ振り返って視線を向ける。



「……このバイク、僕のなんだから」

「なぎ君の……って、まさかヒロリスさん達が作ったデンバードのレプリカっ! じゃあ、そのケースはっ!?」

「これもヒロさんとサリさんの発明品」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」



ギンガさんは驚きながらも僕に近づきつつ、信じられないという様子で首を横に振る。



「でもあの……ううん、そんなはずないよっ! それらがなんでここにっ!」

≪残念ながら事実です。この人の持ってるパスケースで起動出来ましたし、私とのリンクもしっかり繋がってます≫

「……なるほど。このバイクとケースはお前達を追っかけて来たってわけだ」



そう言われて、胸が熱くなる。だから僕は……デンバードにすりすりする。



「そうかそうかぁ。お前、追いかけて来てくれたんだぁ。ありがとねー。あ、お前もありがとー」



ボディにスリスリしつつも、僕は右手でケースもスリスリ。色々意味分かんなくはあるけど、それでもスリスリはやめない。



「そんなわけないだろうが。コイツ、バカだろ」



鼻で笑うようになんか言ってきたので、大人な僕は程良く流す事にした。



「うっさい、もやし」



視線を向けながら言うと、門矢士こともやしは嘲笑っていた表情を変えて、僕の方を睨みつける。



「……・・・・・ちょっと待てっ! そのもやしってのは俺の事かっ!」

「いや、他に居ないでしょ。ねー、もやし」

「ふざけんなっ! お前、真面目にセンスないだろっ!
こんなにも完璧な俺を見て、どうしてもやしになるんだよっ!」

「いや、なるでしょ」



分かってないようなので、身を起こして説明する事にした。……あ、空間モニター展開っと。

なんかそれを見て女の人が驚いてるけど、ここは気にしない事にする。



「門矢士……これは、もやし門矢士って事でしょ?」

「ひらがなに対して漢字で読もうとするなよっ! お前バカかっ!」

「それはこっちのセリフだよ」

「俺のセリフで合ってんだよっ!」





とにかく、懐かしのデンバードとも合流出来たので……うん、良かった良かった。



いや、あんまりよくないか。このままだと僕達帰れないっぽいし。どうすりゃいいの、これ?










世界の破壊者、ディケイド。8つの世界を巡り、その瞳は何を見る。



『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路


第1話 『クウガの世界/遭遇』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なぎ君はもや……じゃなかった。あの士さんという人としばらく言い争った後、どこかへ姿を消した。

というか、士さんと一緒にだね。この世界の事、色々調査する必要があるらしいから。

それで今は、出る前に士さんの知り合いであるあの女の人……光夏海さんから、色々とお話を聞いてた。



写真館の中は二階建てになっていて、その上結構広い。特に写真を取るスペースだね。

陽の光が程良く差し込んでいて……そこにあるテーブルで、私は紅茶をいただいていたりする。

それで私やなぎ君が何者かという事についても、しっかりと説明した。まぁ、相当驚かれたけど。



ちなみにあの二人に関してはあのままでも何も問題ないという事で、意見が合致した。



だって会って1時間も経ってないのに『もやし・蒼チビ』って呼び合う仲なんだよ? 問題ないって。





「――私、もう頭がおかしくなりそうです」

「ギンガさん、私もです」



えっと、とりあえず話を整理しよう。まず、夏実さんや士さんが元居た世界が相当におかしい事になった。

そんな時に、妙な怪人達が現れて大騒ぎになって、そこであの士という人がディケイドに変身した。



≪……それで、その後あなた達……・というより、彼ですか。
彼は8つの世界を巡り世界を救う必要があると、何者かに言われた≫

「それで最初に来たのがここ……クウガの世界、ですよね」

「そうです。……というか、やっぱり不思議です。宝石が話してるなんて」

「宝石じゃなくて、デバイス……私の大事なパートナーです。一緒に走って、戦える相棒」

≪恐縮です≫



まぁブリッツキャリバーを興味深そうに見ている夏海さんはともかくとして……うーん、どういう事だろ。

私達、単純に次元漂流してこの世界に来ちゃったって事? それならまぁ、納得は出来るんだ。



「でも、ギンガさんのお話を聞いてちょっと希望が出てきました」

「というと?」

「だってその……魔導師さんが居る世界は、次元世界で時空管理局ってところが治めてるんですよね。
次元世界もたくさんの世界があるって言いますし、だったら私達の事も助けてくれて、元の世界へあっさり帰れるかも知れないですし」



夏海さんが表情をほころばせてそう言ったのを見て……私はなんというか、とても居心地が悪い気持ちになった。



「そう……ですね」





そう、なるといいんだけどなぁ。というか、どう考えてもおかしいの。

例えばここが未発見の世界の一つだったとするよね? なら、どうしてクウガが居るのかな。

クウガは野上さん達と同じ仮面ライダーの一人で、私達の現実には居ない存在。



でもこの世界ではクウガも居て、お話の中での怪人であるグロンギも人を襲い続けている。

クウガの事はなぎ君や夏海さんにも確認したから、ここは間違いない。

でも、良太郎さんや侑斗さん達が実在してたくらいだから、ここはありえるのかも。



それで問題は……そんな世界に放り込まれて、私達が普通に帰れるのかって言うところだね。

なにより自宅に置いてあったなぎ君のデンバードと、ヒロリスさんが作ったアイテムの事だよ。

それらがそのままセットでこっちに……というか、ここに跳ばされて来てたのも謎だよ。



それも世界崩壊の対策本部であるここに。どうにもこうにも、私達の常識だけで解決出来ない気がする。



私はそれ以上夏海さんの言葉に答えられずに、ただ静かに紅茶を飲むだけだった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、僕はデンバードに乗って同じくピンク色のでかいオートマバイクに乗ったもやしを追いかけて、警察署にやってきた。

街並みと同じで、ここも地球のそれと作りは変わらない。あ、服装は警官服にしてある。バリアジャケットを構築した上でね。

もやしも警官服着てるし、同じじゃないと色々不便だと思って、自主的に服装を合わせたのよ。



それで、もやしの先導の元で進む。そうしながらももやしから大体の話は聞いた。

こうなると僕達が跳ばされて来たのも……実は偶然とは思えない。

なにより、それならなんでデンバード? それも僕が自宅に置いてあったものをそのままだよ。



でも、さすがに色々パニクってる。もう状況的について行くしかない感じだけど、それでもパニクってる。



というかさ、異世界に跳ばされてどうこうなんて、とまとでは初だもの。さすがにビビってしまうのよ。





”まぁアレですよね。デンバードも跳ばされて来たところから考えるに、『この人達について行って世界を救え』って感じですか?”

”だろうね。しかし、なんつう面倒な。いきなり過ぎてさすがにビビるよ”



ビビるけど、それでも気になる事がある。それは、もやしが左手でやかんを持っている事。



「もやし」

「なんだ、蒼チビ」

「黙れもやしが。そして誰がナノミクロンだ」

「お前こそ黙れ。なにより俺はそこまで言ってない。
……まぁ、お前が俺の素敵さに嫉妬しているのは分かるが」



などと言うので、軽くジャンプして左手で後頭部を叩く。なお、今度はさっきのキックと違って直撃。



「……ったく。身長だけじゃなくて、心までみみっちい奴だな。あのギンガマンの胸を見習え」



なんて言うので、もう一度後頭部をl叩く。そして起き上がって睨むので、もう一回叩く。



「人の彼女にセクハラなんざいい度胸だね。さすがはもやし」

「うるせぇっ! さっきから人の頭バカバカ叩きやがってっ!」



当然だ。おのれの動きは既に見切った……はず。



「てーかアレが彼女っ!? 姉の間違いだろっ!」

「やかましいわっ! 愛さえあれば身長なんて問題ないんだよっ!」

≪……あなた達、仲良くしません? ほら、一応協力しあう関係ですし≫



あれ、なんかアルトがすっごい呆れてる感じがする。てゆうか、なんでだろ。僕悪くないよね?



「もやしが謙虚さを覚えて僕に頭を下げるならいいよ?」

「バカ言うな。謙虚さの前に礼儀だろ。全く、これだから蒼チビは使えない」

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! そして誰がミジンコだっ!」

「だから誰がそこまで言ったっ!? てーかやるかおいっ! グロンギの前にお前ぶちのめしてやろうかっ!」

≪いや、だから……ほら、そろそろ目的地ですよ?≫





アルトがそう言うので目の前を見ると……あ、ホントだ。



縦書きの張り紙がドアの横にしてあって、そこに『グロンギ対策本部』って書かれてる。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、我々は未確認生命体……グロンギと呼ばれる存在の驚異に晒されている。

そしてグロンギには、警棒や銃器と言った従来の装備が全く効かない。

正直に言うとお手上げ状態だったんだけど、そんな時に一人の青年と私は出会った。



その青年はまぁまぁお調子者で危機感0で、ハッキリ言えばバカだと思う。

ただ、グロンギが出没するようになった初期の段階でちょっとしたきっかけがあって、一つの能力を手に入れた。

それはグロンギと同時代に存在していた、グロンギを倒す聖なる戦士……クウガに変身する事。



グロンギはどうも、超古代に存在していた人間を超える力を持っている強力な生命体らしい。

あ、ここは専門家チームの必死の解読作業により、なんとか判明したところ。グロンギという名称も同じく。

そしてそのグロンギを倒し、封印した戦士がクウガ。世間では未確認生命体4号と呼ばれる存在。



なお、グロンギの詳細に関しては世間には伏せられている。4号の正体を知っているのも……私だけだ。





「また被害者は女性警察官でした。犠牲者は三人目。職務中の女性警察官ばかりです」

「……なぁ、八代」





私は会議室の一番前で、立ってまるで演説するかのように捜査員に状況説明。



そして私の左隣で席に座っている先輩が、疑問の声を上げる。



なお、黒の背広姿で頭頂部は禿げ上がっていて……でも、温和でとても優しい人。





「未確認が出現すれば、すぐに警察が出動する。被害者が警官なのは、むしろ当然だ」

「しかし、これまでも未確認生命体は一定の手順に従い殺人を行ない、被害者にも共通点がありました」

「……グロンギゲーム殺人説か。奴らにそんな知性があるのか」

「あるよ」



その言葉に、私はそう言った人間の方を見る。というか……え?

身長は150前後の、小さな子ども? いや、でも警官服は着ている。



「グロンギは『ゲゲル』と呼ばれる殺人ゲーム……儀式を行ってるんだもの。
そしてゲームだから、当然の事ながら制約がある」

「さすが蒼チビ。テレビで俺達の事は把握済みってわけか」

「そういう事だね」



そしてそんな小さな子と一緒に入ってきたのが、先輩の目の前のコーヒーに……はぁっ!?

おいおい、麦茶注いで……それでなんか思いっきり溢れ出してるんだけどっ!



「……いや、実際に女性警察官が狙われてるとして」



そしてこの異常な二人を気にも止めずに、捜査官の一人が立ち上がって資料を見つつ話し始める。



「女性警察官全員に護衛をつけろとっ!? そりゃ無理だろっ!」



その捜査官が言い切った直後、やかんが床に叩きつけるように置かれた。それにより全員の動きが止まる。

というか、あの小さな子がもう一人の後頭部をグーで叩いてた。それに男は頭を押さえつつ、あの子を睨む。




「痛ぇ……お前いちいち殴ってんじゃねぇよっ!」

「うっさいバカっ! てゆうか、お茶を無駄にするなー! 何平然とこぼしてるっ!?
あれですかっ! お茶と一緒におのれの知性までこぼれたってわけですかっ!」

「そんなわけあるかっ! 俺は十分に知性に溢れてるっつーのっ!」

「……ここは対策班の会議よ!?」



そう言って詰め寄った瞬間、あの小さな子が右手を伸ばして私の口を塞ぐ。

というか……力が強くて、外せない。何、この子?



「黙れお姉さん。僕は今このもやしとちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと大事な話中だ。邪魔するな」

「ぬー! んーんー!」

『……緊急通報』



私がなんとかしてその手を外そうと思っているところに、警報と共に部屋にアナウンスが響いた。



『先程とは別種の未確認生命体が、警ら中のパトカーと接触した模様。
繰り返す、先程とは別種の未確認生命体が、警ら中のパトカーと接触した模様』



その声を聞いて、あの小さな子は私の口から手を離した。

それで一言文句を言ってやろうと思ってその子を見て……固まった。



「……もやし、行くよ」

「お前、いきなりやる気かよ」

「いいのよ。やっぱ見過ごせないし」





さっきまで言い争いをしていた時とは違う、鋭い空気がそこにあったから。なお、もう一人の方は変わらず。

……私がその子に威圧されている間にも、捜査員は全員慌しく動き始める。だから、私も急ぐ。

色々と気になるところはあるけど、それでも私はそのまま現場へと飛び出した。それで彼にも急いで連絡。



パトカーが襲われたのは、山間部に近い一本道の道路。私達はそこに急行した。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現場にあったのは、破壊されたパトカーに呆然としている女性警察官一人。そして屍一つ。



力なく倒れている女性を見て、『私達』は顔を歪める。でも……ううん、ここはいい。考えるのは後だ。





「四人目の……犠牲者」

「姉さん、9号は?」

「○○○○○○○ーーーー!」



私達のちょうど目の前にあるトンネルから、飛び出してきた影がある。それは……グロンギっ!?

鎖帷子のような鎧に、赤黒い肌。それで悪魔のような顔立ち。それがいきなりトンネルの中から飛び出して来た。



「グギグギうるせぇんだよ」

「蒼チビ、それ俺のセリフ」

「もやし、空気を読め。おのれはどこのスバルだ」



そんな事を言いながら出てくるのは、先程会ったあの小さい子。そしてその隣……あれは、何よ。

ピンク色に白と黒の左右非対称のラインに、白いバックル。まるで、4号のようにも見える。



「もやし、空気を読め。おのれはどこのスバルだ」

「待て待てっ! 今俺は人としての尊厳を激しく貶されたような気がするんだが、気のせいかっ!? そして二回言うなよっ!」

「気にするな。……で、もやしは分かるんだよね」

「大体な」



小さな子は、ただ見ている私達さえも殺しかねない程の殺気を出していて……というか、怒ってる?

とにかく、右手に刀を持ったあの子とその保護者みたいにピンク仮面がゆっくり歩いてくる。



「で、大体の事は全部吐いてもらったから……もういいぞ」

「そう。だったら、落とし前だけつけてもらおうか」

「……○○○○○○○○ー!」



あの二人に向かって、グロンギが再び突進してくる。



「君、危ないっ!」

「……鉄輝」



私の叫びなんて無視して、あの子の右手に持った刀が蒼い輝きに染まる。

陽も暮れかけていて、薄暗くなっている山道にその輝きが光をもたらす。



「一閃っ!」



刃を返し、右薙にその輝きをあの子は叩き込む。すると、グロンギの身体が真ん中から両断された。

拳銃さえも弾く肉体が、太い腕が、蒼い閃光によって断ち切られた。



「○○○○……○○○ー!」



そしてまるで隣に居る彼が倒したみたいに、爆発した。そしてその爆炎はすぐに消えていく。

そこには、刀を振るって鞘に収めるあの子と4号に似た何かが居た。



「……気は済んだか?」

「いいや、全然だわ」

「そうか」



そんな事を言いつつ、あの子達は振り返ってトンネルの中へ消えていく。



「……未確認、10号? それと……まさか、人間体」



つまり11号。だからグロンギを倒せた。そう考えるのが、自然だと思った。



「待ててめぇらっ!」



隣に居る彼が、逸り気味に数歩踏み出してあの子達に声をかける。



「なんで同じ未確認を倒したっ!」

「うっさいバカっ! このピンクもやしはともかく、僕はグロンギじゃないしっ!」

「誰がピンクもやしだっ! 誰がっ! ……ちなみに、俺もグロンギじゃない」



それだけ言って、足早にトンネルの中へ消え去っていった。

それを見て、彼は苛立ち気味にまた数歩踏み出す。



「答えになってねぇぞっ!」

「ユウスケっ!」





そのまま走りだそうとした彼を、名前を呼んでしっかりと手を掴んで引き止める。



そこに彼らがバイクに乗ってこちらに来た。私達は慌てて下がるけど、ユウスケが足を滑らせてコケた。



そのまま二台のバイクは走り去って消えた。私達は、ただそれを見送る事しか出来なかった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



この写真館のオーナーで夏海さんのおじいさんと挨拶し合ったりしている間に……夜。



なぎ君も、あの士さんも帰って来ない。だから私達は、テーブルの上で突っ伏してたりする。





「士くん、使命を忘れたりしてるんじゃ」

「なぎ君、またまた妙な事に巻き込まれてるんじゃ」

「ですよ……って、ちょっと待ってください。ギンガさん、妙な事ってなんですか?」

「……なぎ君、致命的に運が無いんです。だから普通に歩いてても事件に遭遇する事がよくあって」

「それはまた……漫画の登場人物みたいな子ですねぇ」



私はそこを全く否定出来ないから、机に突っ伏しつつも苦笑いしか浮かべられなかった。

そんな時、写真館のドアが開いた。ここからではドアは見えないけど、それを知らせる鈴の音が聴こえた。



「士くんっ!?」

「なぎ君っ!」



私達は立ち上がって入り口の方まで駈ける。そこで見たのは、怪訝そうな顔をした男女二人だった。



「……姐さん、ここって確か喫茶店だったんじゃ」



一人は赤系統のスポーツジャンバーを着て、ジーンズを履いている人。

なお、髪は黒色でなぎ君よりもちょっと長め。首元くらいまではかかってる。



「バカ。どう見ても違うでしょ」



もう一人は黒髪ロングで、その髪を後ろで結わえてる。それで、背広で白いコートを羽織っている人だ。



「えぇ、写真館ですけど」



夏海さんが不満そうに言うのも、無理はない。だって私達……・肩透かし食らっちゃったもの。



「……あ、コーヒーなら自信ありますよ?」





後ろからそう優しくあの人達に声をかけるのは、この写真館のオーナー。名前は、光栄次郎さん。

綺麗に梳いた首元くらいまでの白髪に、青いYシャツに暖色系のチョッキと蝶ネクタイ。

一昔前のファッションだけど、とても温厚で優しい人でもある。というか、本当にびっくりしたの。



私達の事とか、魔法の事も色々説明したんだけど……全部受け入れて、ここでお世話になっていいって言ってくれた。



なお、私が頭を下げまくったのは当然の事として欲しい。普通に追い出されてもいいくらいなのに。





「さ、どうぞどうぞ」

「……じゃあ、よかったらどうぞ」





私はその、なんというか……ちょっと困惑し気味な夏海さんと違って、苦笑いしか返せなかった。



だってその……ねぇ? ここ写真館なのに、いいのかなーとはちょっと思っちゃうの。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私と夏海さんは、そのまま栄次郎さんのお手伝い。これでも、調理関係は自信があるんだから。



ただ、準備をしながらちょっとだけ気になる会話が聞こえてきた。





「彼ら、一体なんだと思う?」

「未確認10号と11号だろ? まぁ、一体は人間の姿なんて取ってたけどさ。
でも、刀で蒼い光出してバシューンだぜ? あんなの人間じゃないって」



その言葉で、胸が二つの意味で締め付けられた。一つは、思い当たる節があるから。

もう一つは、あの男の人がまるでその存在を化物のように思っているのが分かったから。



「次は倒してやる」



そして二つめの意味は、その言葉でより強くなった。カップを持つ手が……軽く震えてる。



「……私の印象ではね」

「あぁ」

「グロンギよりも、あなたに近い存在に見えた」



グロンギ……あぁ、そうだよ。今更だけどこの人達、この世界で未確認生命体って言われてるアレの関係者なのかな。

話から察するに、この世界の警察機構に属してるとか。というかなぎ君……グロンギに間違えられてるんだ。



「俺に近い?」



とにかく、止まっていた手を動かしてカップを準備。

カップに栄次郎さんがコーヒーを注いでいくと、とてもいい匂いが広がっていく。



「……彼らもまたグロンギと戦う存在なら、話を聞いてみたい」



コーヒーを淹れ終わったので、それをお盆に乗せて夏海さんに渡す。

夏海さんはそれを受け取って、二人のところまで持っていく。



「何のためにっ!? 俺の代わりに戦わせるって言うのかっ!」



そう叫んで、あの男の人がテーブルか何かを叩いた音がした。

私は驚きつつそちらを見ると、夏海さんがびっくりしたらしく動きを止めていた。



「ユウスケっ! ……あなたを助けてくれるかもと思っただけ」

「あ……そ、そうか」



動きを再開させた夏海さんが、二人の前にカップを置いていく。もちろん、お客様だから静かに。

でも……どうしよう。というかなぎ君、一体なにやったの? グロンギに間違われるなんて、おかしいよ。



”Sir、彼はあのディケイドと一体なにをやらかしたんですか。来て一日目でこれはおかしいでしょ”

”ごめん、それは私が聞きたい。そして私が一番思ってる”



なぎ君が帰って来たらしっかり話を聞こうと考えていると……突然に部屋の中にシャッター音が響いた。

そちらを見ると、ピンク色のトイカメラで写真を撮っているあの人と、それを横目で見ていたなぎ君が居た。



「なぎ君っ!」

「士くんっ!」

「ギンガさん、ただいまー。いやー、ごめんね。ちょっと遅くなっちゃった」

「あ、お前……!」



そう言いながら、あの人がなぎ君に飛びかかっていく。……あ、そっか。

なぎ君の事グロンギと勘違いしてるから、捕まえようとしてるんだっ!



「変」

「はーい、遅いよ」



なぎ君は即座に後ろに回り込んで、腕を捻り上げた。というか、止める間がなかった。



「痛ぇ……こら、離せっ! 未確認生命体11号っ!」

「だから……僕は未確認生命体じゃないって言ってるじゃないのさ」

「バカ言うなっ! あんな力、普通の人間に使えるわけがないだろうがっ!
いくら人の皮をかぶってたってお見通しだっ! お前はただの化」

「黙ってろ」



なぎ君は、そのまま背中を蹴り飛ばしてその人を壁に叩きつけた。

そしてその人は壁から滑り落ちて……気を失ってるみたい。



「ユウスケっ!」

「はーい、怒らないでね? 人の話を全く聞かないでとんでもワード言おうとしたコイツがどう考えても悪いよね?」



なぎ君がそうにっこりとあの女の人に笑いかけながら言うと、席を立ち上がりかけていたあの人は頷きつつもまた着席した。



「いや、悪いな八代刑事。この蒼チビにはどうも人に対する優しさというのが著しく欠けてるらしい。
俺もよく暴力を振るわれるんだ。今日に限って言えば5回も頭をはたかれた」

「なぎ君、本当に出かけてる間になにしてたのっ!? というか、士さんと仲良くするようにって言ったよねっ!」

「いや、だってもやしがお茶を無駄にするから」

「意味分からないよ、それっ!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ蒼チビの事は、ギンガマンに任せるとするか。というか、やっと子守りから解放された。



俺はあのうるさそうなのについて聞いておく事にした。あの現場にも同行してた以上、無関係でもないだろ。





「それで八代刑事、あそこでノビてる奴は?」

「あ……小野寺、ユウスケ。ちょっと、捜査に協力してもらってるんです」

「……へぇ」



俺はあそこで倒れて……ん? なんか頭振りながら起き上がり出したぞ。

なるほど、それなりに丈夫らしいな。蒼チビは暴力的だから、加減は一切しなかったはずなのに。



「あぁ、あの」



俺は言いながら、八代刑事に近づく。なお、着席してるテーブルに膝を当てて、目線の高さを合わせつつだ。



「未確認の事件について、ちょっと思いついた事があるんですけど」

「あ、うん」

「姐さん、聞く必要ないですよ」



……そして復活速度が早過ぎるだろうが。てーか、俺まで睨むな。お前はあの蒼チビ睨んでろよ。



「素人が首突っ込むな。引っ込んでろ」

「いや、俺も八代さんがあの四号とか言うば」





その瞬間、とってつもない寒気が俺を襲った。そしてその発生源は蒼チビ。

蒼チビはギンガマンのお説教を受けながらも、俺の方を一瞬見て睨みつけた。

とりあえずアレだ、俺が今から言おうとしてる事は何かしらのNGワードらしい。



そういや、コイツやけに仮面ライダーの事とか詳しいんだよな。もしかしてそのせいか?



まぁそれならそれで言い方を変えるか。蒼チビ、お前俺に感謝しろよ?





「ば……バイオテックな戦士のお世話をしているのを見てて、大変そうだからお手伝いをしたいなと」

「……お前、今なんて言った? いや、俺はマジで意味が分からないんだけど」

「知るか」



俺だって適当に脳内変換したら出てきたんだから、仕方ないだろうが。

だが、これでOKだったらしい。八代さんの眼の色が少し変わって、その中に興味の色が出てきた。



「……話を聞かせてくれる? あと、そっちの子も」

「もちろん。なぁ蒼チビ、問題ないよな」

「えっと……あと1時間後なら」



なお、蒼チビがそう言うのにも当然の理由がある。八代さんは首を傾げてるが、ここはしょうがない。



「なぎ君、よそ見しないで。大体、私凄く心配してたんだよ?
グロンギに間違われたりしてるみたいだったし……本当に」

「いや、だからそれは色々あって……あの、ギンガさんっ!? お願いだから泣かないでー!」

「あーあー、いけないねぇ。男の子が女の子を泣かしちゃ。……めっ!」

「そしてそんな事を言うあなたはどちらのおじい様っ!?
なんかすっごいフレンドリーに話しかけられて、逆に戸惑うんですけどっ!」



とりあえず俺は、あの様子を八代さんに視線で示した。



「まぁ、アイツの話はもうちょい後だな。今は彼女と大事なお話中だ」

「そ、そうみたいね」





そしてその様子を見て……その男は立ち上がりつつ部屋から出ていった。



なお、出て行く時に蒼チビはともかく俺まで睨みつけてだ。全く、失礼な奴だ。



だが、更に分からない事がある。そんなのを夏みかんが追っかけてった事だ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お店の外に出て行ったあの人は……バイクのエンジンをかけるためにキックしまくっていた。

彼が乗っているバイクはあの子のものとは、デザイン的に似ている。ただ、こっちの方がタイヤが大きい。

それでカラーリングも銀色と黒と赤で、印象としては渋い感じに見える。



それであの人は、後ろから近づいてくる私に気づいてヘルメットをかぶったまま振り向いた。





「コーヒー代か?」



私はそう言われて少し言いよどんで……切り出した。



「あなたもしかして、4号?」



私がそう聞いた瞬間、目が軽く見開いた。……やっぱり。というか、気づかないわけがない。

うちの中でしてた全ての発言がまるで、グロンギと自分が戦ってると言いたげなものだったから。



「だったらなに?」



言いながらも、またバイクのキックペダルを踏み下ろす。でも……バイクのエンジンはかからない。



「凄いなと思って。誰かのために戦えるなんて」



またキックして、エンジンの音が一瞬だけ聴こえる。でも、すぐに静かになる。



「誰かのため?」



あの人は振り返って、私の言葉を鼻で笑った。そしてまた私から視線を外す。



「俺は自分のために戦ってるんだ」



またキック。でも、エンジンはかからない。



「戦わなきゃ俺は」



もう完全に私の言葉を肯定しつつも、その人はまたキック。でも、エンジンは全然かからない。

それで私は……目の前の人の言葉に、少しだけ寂しいものを感じた。だから、強めにこう言う。



「八代って人、あなたの事本気で心配してる」



そして、またキック。エンジンは……今度はかかった。小気味いいエンジン音が辺りに響く。

あの人は座席に座って、少し意外そうな目で私を見る。



「……なんで分かる」



私はどう言っていいのか分からなくて、俯いてしまう。それで少しだけ間が開いて……あの人が、言葉を続けた。



「アンタも、誰かを心配している……からか」





そのまま、私は更に俯いた。そしてあの人もバイクに乗ったまま、しばらく動かなかった。



ただ……ただ静かにエンジン音だけが、辺りに響き渡っていた。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、なんかあの子が青春ロードを走っている間に、僕ともやしはまたまたお出かけ。



八代さんにはまぁ……僕は一種の特殊能力持ちとだけ言っておいた。



そして何気にもやしはなんか掴んでるらしい。あの警察署の会議室で、僕は早速もやしの名推理を聞く事にした。





「殺された警察官、変な共通項があるなぁと思って」

「共通項?」





八代さんの先輩らしい年配の刑事が、もやしの話に身を乗り出しつつ食いつく。

そしてもやしは、無礼にもその先輩に向かって右手を差し出した。手の中には、空っぽの湯のみ。

その目の前には麦茶入りのやかん。これだけでこの男が何を要求してるのか。



そこは分かっていただけると思う。なので僕は、右手に持ったハリセンでこのバカの頭をはたいた。





「自分で淹れろ、このバカが」



ずれた帽子を左手で直しつつ僕を睨み、それでももやしは素直にやかんを持ってお茶を湯のみに入れる。

そして一口飲んでから軽く息を吐いて、話を続けた。



「……誕生日」

「誕生日?」



僕はすぐに、横のホワイトボードに書かれた被害者のプロフィールを見る。

……それでもやしの言いたい事が分かった。確かにこれはゲームが成り立つ。



「なるほど。一人目は13日生まれ、二人目は27日、三人目は5日」



言いながら、僕はホワイトボードに縦に数字を書いていく。なお、ローマ字で横並びにだ。



「それでさっき死亡した四人目が、26日。うん、これなら成り立つ」

「……へぇ、蒼チビにしては頭の働きがいいじゃないか。ギンガマンの説教のおかげか?」

「黙れKYが」

「待て待てっ! 今の発言でその返しはおかしいだろうがっ!」

「いや、まずあなたがちょっと待ってっ!? ……これのどこがゲームになるのかしら」



八代さんは、どうやらまだお分かりいただけてないらしい。というか、他のみんなも同じくだね。

なので、僕は1の桁だけをそのままペンで線を引いて囲んでいく事にする。



3・7・5・6み・な・ご・ろ



そして、その下にある一つの数字を書き入れる。それを見て、八代さんを含めた数人の捜査官の人達の表情が変わった。



。つまり……皆殺し」

「……そうか。つまり次は誕生日が4の数字の女性警察官が狙われるわけか」





僕は振り返りながら、捜査官の人達に頷く。ちなみにもやしは……なんか不遜な顔してるよ。

で、これだと四人目の時に同伴していた女性警官が殺されなかった理由も納得出来るの。

だってこの人まで殺してしまったら、ゲゲル……儀式は失敗に終わる。それはグロンギの望むところじゃない。



しかし、どうやって女性警官の誕生日とか調べたんだろ。別にデスノートの死神の目とか持ってるわけじゃないよね?

それに……気になってるところはまだあるの。これ、僕が知っているクウガのゲゲルとルールが違うの。

アレは基本的に、一体につき一つのゲゲルを遂行していくルールだったはず。他のグロンギと一緒にやるようなものじゃない。



でも僕が倒したグロンギ二体とも、同じルールでゲームをやってる。

つまりグロンギという種そのものが一つのゲゲルをやって来てる感じなのよ。こんなの、僕は知らない。

どうやらこの世界、マジで僕が知ってるクウガの世界と色々と差異があるらしい。



だって『ユウスケ』が……あの情けなさそうな感じだしなぁ。てゆうか、見てて痛いって。





「……全女性警官の誕生日をチェックさせろ。4日・14日・24日生まれのものを、重点的に警備するぞ」



そう言って、捜査官の人達が足早に出て行く。それでここに残ったのは……僕ともやしと八代さんだけ。

……てゆうか、展開早いよなぁ。異世界来訪物って、みんなこんな感じなのかな。あっという間に住むところまで決まったし。



「少しはお役に立ちましたか?」



またまた不敵な態度を崩さずにもやしがそう言うと、八代さんが驚いた表情をもやしに見せる。



「あなた……何者?」

「見ての通りの国産もやしです」

「そうそう……って、おいっ!?」

「まぁ、確かに外国産には見えないけど」

「そしてアンタも乗るなよっ!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。僕とギンガさんは光写真館の空いている部屋を使わせてもらう事になった。

で、昨日はそこでお休みだよ。なお、部屋は別々です。……あのじいちゃんはなんかニヤニヤしてたけどさ。

それで朝起きて、あいさつも込みで朝ご飯を作るのを手伝いつつ僕も話を聞いた。



みんなはこの写真館ごと、元の世界からこっちの世界に跳んで来たらしい。



で、しばらくして僕のデンバードだけじゃなくてヒロさんのアレも到着だよ。……どう考えてもおかしい。





「なぎ君、今日は私も一緒に行くよ。またグロンギに間違われてもアレだし、一緒に頑張りたいの」

「だめ」

「どうしてっ!?」



ほう、そこでそれを聞いちゃいますか。それを聞いて立ち上がって不満そうにしますか。

だったら、ハッキリと言ってあげよう。うん、相当にハッキリとね。



「……ギンガさんはまだリハビリ中でしょっ!? 戦闘なんて絶対だめっ!」

≪むしろ足手まといですよ。何かあっても私達は助けられませんよ?≫

「う」



どうやら、忘れてはいなかったらしい。自分が死にかけて現在絶賛リハビリ中だと。



「なにより、ここだとカートリッジの補給も簡単には出来ない。
僕は怪人相手でも奥の手は色々あるけど、ギンガさんはそうじゃないでしょ?」

「それは……あの、うん」





なお、戦闘機人モードも当然だけどアウト。マリエルさんからまだ使用許可は出てない。

つまり、マジで今のギンガさんは戦闘要員としては数えられないのよ。だから、一緒には行かせられない。

それで僕達の奥の手の一つはセブンモード。アレなら何が出ようが対抗出来る。



セブンモード、オーナーとリュウタのおかげでパワーアップしてるから。強度ならそこいらのデバイスなんてメじゃない。





「元の世界に帰る手はずも全然整ってないし、それでギンガさんが体調崩されても僕はどうしようもない」



ギンガさん、身体が特殊な分ちゃんと気遣わなきゃいけないもの。

それで何かあっても、僕では助けられない。……いっそマリエルさんも転移させて欲しかったよ。



「だから、ギンガさんはここで待ってて。出るにしても、戦闘に参加は絶対ダメだから。いいね?」

「……うん、分かった」

「ん、いい子だね」



言いながら、僕はギンガさんの頭を右手で撫でる。ギンガさんは顔を赤くしながら、少し頬を膨らませる。



「なぎ君、子ども扱いしないで欲しいんだけどな」

「いいの。こういうのも役得なんだから」



僕は立ち上がって、キッチンの方に居たもやしの方を見る。



「蒼チビ、もうラブラブはいいのか? ギンガマンとイチャつきたかったら、好きなだけしてていいんだが」

「冗談。何もしないでもやし任せなんて、僕の性に合わないし。……それでもやし、さっき言ってた事はマジ?」

「あぁ。どうやらお前はとんでもない勘違いをしてたらしい。全く、人騒がせな奴だ」

「だから待て待てっ! アレおのれの推理だよねっ!? 僕のせいにするなー!」





というわけで、この世界に来て僕ももやしも他のみんなもマジでどうしていいのか、さっぱり分からない。



分からないから、とりあえずグロンギにケンカを吹っかけてぶっ潰す事にしました。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



会議室で死んだように眠っていると、もやし巡査から電話がかかってきた。

それで私が携帯を取ると、とんでもない事を言われた。昨日の推理は……間違っていると。

私は急いで指定された場所へ車を飛ばして向かう。そこには、もや……じゃなかった。



まずい、朝起きたばかりで頭がパニクってる。とにかく、門矢巡査と蒼凪君が居た。



場所は山間の河原。それで蒼凪巡査は、まるで子どものように石を投げて水面が何回跳ねるかという遊びをしていた。





「二人共どういう事っ!? 昨日の推理が違っていたってっ!」



その二人に慌て気味にそう声をかけると、昨日と違って黒いスラックスと上着の上下を着た門矢巡査が私にあるものを渡す。



「見なよ」



そこには地図があった。というか、これはこの近辺の地図。それで四つの×印に、○印が一つ。



「そのうち四つは、昨日までに女性警官が殺された場所だ。そして……どこからも等距離に灯溶山ひときやまがある」



確かに五つの印から伸びてるラインは、灯溶山がある。



「で、ここも同じ距離なんです」



そう言うのは、石投げをやめて私の方に歩いてきた蒼凪君。なお、服装はジーンズの上下。

右手には大きめな石を持っていて、それを軽く放り投げつつまた受け止める。



「そして次に女性警察官が襲われるのは、ここです」

「……え?」

「あの山がどうしたって言うんだ」



そう言いながらこの場に近づいてくるのは、ユウスケ。それを見て二人は『やっぱりか』という顔をする。



「簡単だよ。……連中、別に語呂合わせで人を殺してなんていなかった。
ただ特定の場所に居合わせた女性警察官を殺していっただけ……だよね、もやし」

「あぁ。それで灯溶山には、グロンギの遺跡がある。そこに眠る『究極の闇』とやらを復活させるため、普段とは違うゲゲルを仕掛けてきたらしい」

「……ずいぶん詳しいんだな、グロンギの事に。お前らやっぱ連中と繋がってて、話聞いてるんだろ」



ユウスケが疑いを隠さずに声を上げるのも分かる。だって、いくらなんでも話がおかし過ぎる。

なぜ彼はそんな事を? 本当にユウスケの言うように、グロンギから話を聞いたみたいにも思える。



「お前、よく分かったな。聞いたんだよ」

「「はぁっ!?」」

「……昨日のグロンギ9号から、チート能力使って聞いたんですよ。
僕は無理だったけどこのバカ、グロンギ語分かるらしくて」





そう言われて、私は昨日の会話を思い出す。確か……そうだ、グロンギが蒼凪君に倒される前。



そうだ、それっぽい話を確かに彼らはしてるっ! 私達はちゃんと聞いていたじゃないのっ!





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「……グギグギうるせぇんだよ」

「蒼チビ、それ俺のセリフ」

「もやし、空気を読め。おのれはどこのスバルだ」



言いながら出てくるのは、先程会ったあの小さい子。そしてその隣……あれは、何よ。

ピンク色に白と黒の左右非対称のラインに、白いバックル。まるで、4号のようにも見える。



「もやし、空気を読め。おのれはどこのスバルだ」

「待て待てっ! 今俺は人としての尊厳を激しく貶されたような気がするんだが、気のせいかっ!? そして二回言うなよっ!」

「気にするな。で、もやしは分かるんだよね」

「大体な」



小さな子は、ただ見ている私達さえも殺しかねない程の殺気を出していて……というか、怒ってる?

とにかく、右手に刀を持ったあの子とその保護者みたいにピンク仮面がゆっくり歩いてくる。



「で、大体の事は全部吐いてもらったから……もういいぞ」

「そう。だったら、落とし前だけつけてもらおうか」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ま、天才足るこの俺にかかれば楽勝と言ったところだな」

「じゃ、じゃああの……皆殺しって言うのはっ!?」

「あぁ、アレ? ……嘘」

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

「あー、ちなみに僕も騙されてましたよ? 話聞いたの、今日の朝ですし」



……と、一応弁明をしておく。なお、聞いた時めっちゃ恥ずかしくなって蹲って悶えたし。

それで納得した。僕、コイツとは絶対に仲良く出来ないって。うん、納得したわ。



「誕生日とは関係なく、さっき言った通りに山から等間隔の場所で戦うリントの女性」



なお、リントとはグロンギの言葉で人間を表す。この場合は、戦う女性の人間という意味になるの。



「ようするに、女性警官を狙って殺してたってわけです」

「でも、それならどうして嘘の推理なんかしたんだっ! おかしいじゃないかっ!」

「……そうか。警察の警備を警視庁に集中させれば、こんなところに来る女性警官は居ない」





さて、ここがもやしの狡猾なところである。誕生日というこじつけをしたのは、警察の戦力を集中させるため。

だって、ぶっちゃけ1の桁が4の誕生日の人なんて無茶苦茶居るよ? そういうのを警備するとしたらどうする?

一番簡単なのは、一処に集めて籠城戦だよ。そしてこの世界の警察も、全く同じ事をやった。



この世界にも警視庁があるので、近辺の警察官はみんなそこに居る。警備人員も警備対象も含めて。

それこそがもやしの狙い。そうやって余計なところに対象となる女性警察官が来ないようにした。

……なお、『来ないとゲゲルが成立しない』というツッコミは意味が無い。だって今、ゲゲルは成立する状況なんだから。





「今ここに居る女性警官は……あなただけだ、八代刑事」



あのバカと八代さんの表情が驚きに染まる。……だから、気配が二つほどこの近辺に姿を表した。



「……そこに居るのは」



僕はその方向に向かって、魔力硬化込みで右手にずっと持っていた赤ちゃんの頭大の石をその方向にぶん投げた。



「分かってんのよっ!」





そこには、二体のグロンギ。一体は女性的なラインを持つ暗めの紫の肌のグロンギ。

頭にバンダナと、編み込んだ髪のようなアクセサリーを着けてる。こいつは木の上に居る。

それで次は、頭と両手首に鋭い刃を持つどこぞの半魚人みたいなデザインのグロンギ。



こいつは近くの岩の上だ。そして僕の石は、木の上に登っていた女グロンギの頭に見事に命中。



グロンギは崩れ落ちて地面に叩きつけられた。





「うーん、ナイスコントロール」

「蒼チビ、お前やっぱ優しさないわ。女の顔面にいきなり石投げつけるか?」

「うっさい。僕は全ての存在に対して平等なだけだよ」



なんて言っている間に、半魚人も女もこっちに来る。あ、女の方はすぐに立ち上がったよ。



「○○○○ー!」

「〇〇〇〇!」



あー、うん。細かいところは分からないけど、言いたい事は大体分かった。

この人を殺せばゲゲルは完遂とか、それっぽい事を言ってるわけだね。



「さて、それじゃあ」



どんどんグロンギが近づいてくる中、僕が応戦しようと思っていたところに異変が起きた。

……もやしのバカが、振り返って八代さんの顔面をグーで殴った。



「ぶっ!」



八代さんは右ストレートをまともに受けて、鼻を押さえて崩れ落ちる。

それで鼻から血が滴り落ちて、足元の岩に付着する。



「姐さんっ! ……お前、なにしてんだっ!」

「そうだよもやしっ! 普通におのれに暴力のあれこれ言われたくないしっ!」

「バカ、よく見ろ」



もやしが視線でグロンギの方を指すのでそちらを見ると……あれ、なんか顔を見合わせて困惑してる。



「○○○ー!」

「○○!」



それですっごい困ってるっぽいし……あれ、てゆうか敵意強くなってないかな。



「……おい、アレどういう事だよ」

「簡単だ。ゲゲルは失敗したんだ」

「はぁっ!?」

「コイツらは今までの四人を、一滴の血も流さずに殺していた」



……血? 僕はもう一度八代さんの方を見る。

八代さんはデリカシーの欠片もない突然のもやしのパンチで、絶賛鼻血タイム中。



「なるほど」



でも、僕はそれで納得した。相手の空気が変わったのは、やっぱり八代さんをもやしが殴ってからだよ。

もっと言うと、八代さんが血を流してから。それで色々と分かってしまった。



「血を流さないってのも、ゲゲルのルールだったわけですか」

「そういう事だ。資料を見たら被害者は全員、血を一滴も流さずに殺されてたからな」



もやしが相変わらずの態度で言うと、そこの二人は驚いた顔をする。



「うん、僕もそこは資料を見せてもらったから分かるよ」





儀式的なものでは、血というのは結構重要アイテムだったりする。



例えば血を使って魔法陣に近いものを書く儀式も、実際あったりするしさ。



逆に血を……・それも生贄の血を忌避とする儀式があっても、おかしくない。





「ま、さすがに悪いとは思ったが、ゲゲルそのものをお流れにした方が楽だろ?」

「確かにね。これ以上バカな事はされずに済む」



僕は言いながら、胸元のアルトを右手で掴んで、そのまま前にかざす。



「あぁ。既に血は流れちまったからな」





そしてもやしも、どこからともなく白いバックルを取り出して、腰の前面に装着。



するとバックルの両側からベルトと、それに付随するカードホルダーらしきものが現れる。



もやしはそのホルダーから1枚のカードを取り出すと、右手でカードを前にかざした。





「……変身っ!」



もやしはそのまま、バックルにカードを挿入。



≪KAMEN RIDE≫



そして両手でバックルの両側を押すと、バックルの中央の白いパーツが回転。

90度回転したそれが両側のパーツに挟まるように収まると、もやしを灰色の光が包んだ。



≪DECADE!≫



するともやしの周囲になんかもう色々見覚えのあるマークが10個発生。それがもやしの身体に吸い寄せられる。

もやしの身体にそのマークが吸い込まれると、あのピンク色で翠の目の仮面ライダーが出てきた。



「……変身っ!」

≪Barrier Jacket Nacht Form――Set up≫



なお、僕も同じく。アルトから発生した蒼い光に包まれて、いつも通りにセットアップ。



「さぁ」



蒼い光を振り払いながらも、僕は右手を動かし、連中を人差し指で指差す。その上で言い放……あ、なんか逃げた。



「こら、逃げんなっ!」



なので僕は一旦腕を下ろしてから一気に跳躍して、二体のグロンギの進行方向上に降り立った。



≪逃がしませんよ≫

「それでは改めて……さぁ」



僕は振り返りながら、もう一度連中を指差して言い放った。



「お前達の罪を数えろ」





それでまずは一体……半魚人っぽいのが灰色のシミターを持って僕に襲ってくる。

もう一体も相手するつもりだったけど、そっちはもやしが突っ込んで後ろから蹴り飛ばした。

それで両手をパンパンと払うように合わせるもやしをにらんで、女グロンギが槍を取り出す。



それは三叉の槍。なお、色はこっちの半魚人と同じく。そのままもやしに突っ込んだ。

さて、程良く役割分担出来たところで……やりますか。

僕は半魚人グロンギが唐竹に叩き込んでくるシミターを、右薙にアルトを抜き放って弾いた。



火花が上がり、その衝撃によってグロンギの体勢が崩れる。そこから僕は一気に行動開始。





「飛天御剣流」



身体を時計回りに回転させつつ相手の右サイドに回りこんで、もう一度アルトを右薙に叩き込む。

そしてやたらと硬い肉体を、回転の勢いを活かして一気に引き斬る。



「龍巻閃もどきっ!」





火花を散らしながら斬撃は通り、半魚人は前のめりになりつつも数メートル転がっていく。



後ろは後ろでしっかり警戒しておくとして、僕はそのまま起き上がろうとする半魚人に斬りかかった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あの小さいのはともかく、今のアイツがあの10号? いや、考えてしかるべきだった。

てゆうかアイツ、『ディケイド』って……おいおい、マジだったのかよ。

いや、でもそれなら納得出来る。グロンギの言葉が分かるのとか、やたら強そうなのとかも全部だ。



つまりアイツは……いや、アイツと一緒に居たあの小さいのも含めて悪魔だ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」





俺は槍を持ったグロンギの薙ぎ払いを下がりつつも避け、柄を狙って手で払っていく。

……というか、真面目に俺は戦い方ってやつを知ってるらしい。ここはびっくりだ。

とにかく右や左から襲い来る槍での斬撃をかわしつつ……あぁ、めんどいな。



てゆうかアレだ、アイツだけ剣とかずるいだろ。というわけで、俺は左手であるものに手を伸ばす。

それは俺の左腰に装着してあるカードホルダー……というか、ブッカー?

白地のラインの中にグレーのペイントがされている長方形に、黒のラインが左上から右下にかけて斜めに入っている。



そして、その横には黒い持ち手が付いている。折りたたみ式だから、基部に回転式の可動軸も込み。

その持ち手を掴みつつ、俺は右薙の打ち込みをしゃがんで避ける。そのまま相手の右脇をすり抜けて後方を取った。

数歩下がって距離を取りつつ、ブッカーを右手に持ち替えてから、持ち手の可動軸を回転。



可動軸をいっぱいまで動かし、 持ち手と黒のラインが一直線上に並ぶようにする。

すると持ち手の対角線上の角から、どこからともなく刃が生まれた。途中までは黒く、中程から切っ先までは銀色の刃。

俺はその刃で突き出された槍を右薙に振るって払う。刃と槍が衝突し、火花が散る。



……これはアレか。おもちゃ的な多機能武器ってやつか? 全く、これは一体どうなってんだよ。

そんな事を思いつつも、俺は刃を下ろして前に歩いていく。グロンギはすり足で下がりつつも槍を再び両手で保持。

まずは左薙に一閃。俺がしゃがんで避けると、そこからすぐに槍を引いて腹に向かって突き。



それを剣の鍔元……というか、ブッカーを盾にして受け止める。

そこから数度踏み込みながら突き。その度に切っ先とブッカーが衝突して、火花が派手に撒き散らされる。

俺は後ろに下がりながらもタイミングを見計らって、5度目の突きを右に身をひねりながら避ける。



そこから一気に踏み込みつつ、グロンギの腹に向かって突きを叩き込んだ。





「せいやっ!」





グロンギは怯んで下がろうとするが、それは無理だ。俺はとっくに左手で槍の柄を掴んでる。

つまり、俺の距離は維持されたまま。槍の柄を脇の下でも抱えて保持しつつ、俺は相手が対処する前に攻撃を打ち込む。

袈裟、逆袈裟、右薙、左薙、また袈裟に逆袈裟と叩き込んでいくと、暗めの紫の皮膚から火花が迸る。



最後は再び胸元を狙っての突き。刃は中程までその肉体を貫通し、グロンギの顔が上がって身体が震え始める。





「ぐ……・ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」





グロンギは叫び声をあげながら槍から手を離す。なお、俺も同じく。



数歩後ずさるように下がると、そのまま後ろ向きに倒れつつ爆発した。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「○○〇〇ー!」

「だから何言ってるか」



唐竹に叩き込まれた斬撃を、身を左に捻りつつ回避。そこからまた袈裟にアルトを叩き込む。

なお、狙いは顔。アルトの刃は、顔面に叩き込まれた。



「分かんねぇっつーのっ!」



こちらに踏み込んで来ていたグロンギは、バランスを崩してそのまま転倒。

頭から地面に叩きつけられる。だけど、すぐに起き上がって僕の足元を狙って左薙に斬撃。



「……甘いっ!」





その斬撃を、右足で踏みつけて無理矢理に止める。というか、徹を込めて中程から粉砕してやった。

なお、さっきまでの打ち合いでこの剣の強度は大体読めていたから、出来ると踏んだ事。なお、出来なくても問題なかった。

あんな半端な体勢から打ち込んだ斬撃、止められないはずがないもの。それで向こうの攻撃は空振り決定。



つぎはこちらのターンである。続けてカートリッジ……は使わずに、アルトに魔力を込める。……てーか、温い。





「鉄輝」



動きが素人過ぎる。これならキャロの方がまだいい動きするわ。……そう思いながらも、おなじみの刃を打ち上げる。

唐竹に刃を振り上げると、グロンギが逃げようとするけど……うん、遅いわ。



「一閃っ!」



唐竹に叩き込まれた斬撃は、グロンギの頭から股下までを見事に斬り裂いた。

……茶色も混じっているような暗めの肌に、蒼い閃光がやけに不釣合いだと思った。



「○○……〇〇〇〇ー!」



そのままグロンギは爆発。僕は刃を返し右薙に振るって、その爆発を斬り裂いて吹き飛ばす。

それから軽く息を吐きつつも、周囲を警戒。……うん、今のところ異常無しっと。

 

≪しかしあなた、あっさりですね≫

「あっさりにもなるでしょ。あんな素人丸出しの動きじゃあさ。なにより、僕はコイツらを知ってる」



テレビでさ、ちょうど魔導師になるちょっと前から見てて……うん、凄く知ってる。

五代雄介ってヒーローにやっぱり僕は憧れてて、2000の技を持つ男になりたいーとか思っててさ。



「だから、負けるわけにはいかないのよ。うん、知ってるから余計にね」

≪確かにそうですね。でも、あなたがチートである事には変わりませんよ≫

「うっさいバカっ! チートはあのもやし……あ、そう言えばもやしは?」



結構距離が離れたので、アルトを鞘に収めてもやしのところまで急いで走って戻る。

するともやしもグロンギを倒した直後っぽい。それでこちらに気づいて振り向いた。



「……もやし、後ろっ!」

「は?」



僕が叫んだのには理由がある。あのユウスケってのが、飛び込みつつクウガに変身してもやしに殴りかかってたから。



「ユウスケっ!」



八代さんが叫ぶけど、もう遅い。僕も……ちょっと距離が離れてて対処が間に合わない。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



もやしは反応が遅れて、そのままクウガに殴られて数歩下がった。その間にクウガは当然着地。

でも……あぁ、やっぱりか。やっぱりアイツがクウガだったんだ。



「おま……いきなり何すんだよっ!」

「はぁぁぁぁぁっ!」





その間にも、クウガは猪突猛進に殴りかかる。それをもやしは覚悟を決めたらしい。

下がりつつも剣にしていた腰のアイテムを、一旦収納。その上で相手の攻撃を拳で捌く。

そして、隙を見つけて突出されたクウガの左拳を取る。



取って動けないように両手で抱えるけど、それでもクウガは止まらない。そのままもやしを押し込み始めた。





「うるさいっ! この悪魔めっ!」

「はぁっ!?」



押し込んで、近くの脇道に入っていった。だけど、クウガの方は相当興奮してるのか……声だけはしっかり聴こえる。



「お前の事は知っているぞっ! いつか現れると聞いていたっ! 全てのライダーを倒すためになっ!」





追いかけようとした足が、そこで止まった。……でも、すぐに動きを再開させる。とにかくここは後だ。



八代さんも近づいて来て、僕の方を見て頷いた。それで僕達は二人でそのままもやし達が消えた脇道の方に入る。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



……もやし達が消えていった脇道は、坂になっていた。そしてその一番上には……寂れた神社。

見る限り、誰もしばらく足を踏み入れてないと思ってしまう程の腐敗具合。ぶっちゃけると、おんぼろ。

そんな神社の境内の中で、二人は殴り合いをしていた。というか、どうやらもやしにも良識的な心があるらしい。



相手の攻撃を捌いて避けるだけで、今のところは自分からは攻撃してない。





≪……どうするんですか、これ≫

「とりあえず」



僕はクウガともやしを見る。まぁまぁ状況から見るに襲ってきたのは向こうだよね?

むしろライダー倒そうとしてるのは向こうだよね? うん、なら……僕は、両手をパンと胸元で合わせた。



「お前、おとなしくしろっ!」



そして地面に手を当てると、巨大な黒い手が10数メートル先で生まれる。それが後ろからクウガを掴んだ。



「な……なんだコレっ!」

「……コイツは」



もやしが辺りを見回して、僕の事を見つけた。



「なんだ、お前の魔法か。余計な事しやがって」

「うっさい。むしろ助けてあげたんだから、感謝しろってーの」

「くそ、お前の仕業かっ! お前、一体何をしたっ!」

「黙れよ」



右手を上げながら指をパチンと鳴らすと、手がどんどん締まっていく。それによりクウガが頭を動かす。



「ぐ……この、悪魔がっ!」

「失礼な事言わないでくれる? 僕は清廉潔白な清い天使だっつーの」

「嘘だろ」

「はい、そこ黙れっ!? てーか鼻で笑うなっ! 変身してても丸分かりだっつーのっ!」



僕は歩きつつももやしの方に近づき、クウガに視線を向ける。クウガは僕を睨みつけるようにしてる。



「……とにかく、お前の力じゃソイツは破れないよ」

「黙れっ! 超変身っ!」





クウガは……あぁ、やっぱそう来るか。クウガは僕の予想通りに紫のクウガに、タイタンフォームになった。

あ、こういうフォームチェンジなの。紫色の瞳になって、銀色のアーマーを上に装着した姿なんだ。

パワーと防御力重視で、剣をイメージするものを掴むと、タイタンソードって言う武器に変換する事が出来る。



ただ、そんな力重視な形態が力を入れても、巨大な手はビクともしない。うん、そりゃそうでしょ。

地面の中にあった炭素を使って、硬度を相当に上げてるもの。

……炭素ってね、ダイヤモンドとかにも含まれてる元素物質なの。



つまり、他の物質との兼ね合いによっては、凄まじい強度を誇る。



剣なりハンマーなり使って勢いつけて叩き割ろうって言うならともかく、今の状態からの破壊は無理だよ。





「そのパワー重視の紫のクウガに変身しても同じ。
それで武器も生成出来ないから、どうしようもないでしょ」



僕がそう言うと、その視線が和らいだ。別に敵意を解いたとかじゃなくて、驚きによって。



「例えば紫のクウガなら、警棒。例えば緑のクウガなら拳銃、例えば青のクウガならそこら辺の鉄パイプ。
お前はそれぞれの形態の際に、武器に出来るものを手にして専用のそれに物質変換する能力がある」

≪でも、両手が塞がれちゃっている以上は、もうどうしようもありませんよね≫

「お前……なんでそれを。というかこの声は」

「……ユウスケっ!」



あ、八代さんが来た。後ろを振り向くと、荒く息を切らせながら巨大な手に拘束されているクウガを見てびっくりしてる。



「あー、大丈夫です。ちょっと暴れてたんで、拘束しただけですから」

「そう。という事はそれも……その、君の特殊能力で?」

「えぇ。それで、これ以上暴れなければ僕も何もしませんから」



八代さんが誤解して拳銃を取り出す前に、僕は僕でお話を進める。うん、大丈夫。



「さて、未確認生命体4号」



この場の主導権は既に僕が握っている。自由に、ゆっくりとお話していこうじゃないのさ。



「いや、小野寺ユウスケ。ここからはちょっとだけ尋問だ。……なぜディケイドを、もやしを襲った」

「悪魔の仲間に答える義理はないっ! というより、俺を早く離せっ!」

「ダメだね。そっちが話したら、離してあげてもいいけど。
それとも無駄に根競べする? 絶対に無理だと思うけどね」



そっちのスペックについては把握済み。それも込みでこの対処だもの。



「そこは俺も聞きたいな。というか、素直に答えた方がいいぞ? コイツ、やっぱり暴力的だしよ」

「うっさいもやし、空気を読め。おのれはどこのスバルだ」

「だからそうやって俺という人間を貶めるのはやめろっ!」





……なんて言っていると、僕達にオーロラが迫ってあっという間に通り抜けた。

というか、そうとしか言いようがないのよ。透明なカーテンみたいなのが、左横からいきなりやってきた。

それは僕達が上がってきた道とは、違う方向。そしてそのカーテンはボロボロな神社を包む。



神社も同じように包みこむと……そこには、二人の人影。





「……兄貴、ここにもライダーが居るよ」



一人は白い瞳に黒い角のような仮面、暗めの黄色にも似た細身の金属質なボディースーツ。

そして右手には、ジンのレオーみたいなジャッキ装備。



「そうだなぁ。叩き潰すか、兄弟」



そしてもう一人は、瞳は赤でこちらは緑。そしてジャッキを左足に装備してる。



「……なんだ、コイツらは」



もやしが怪訝そうな顔をしている間に、二人は動く。緑はもやしに、もう一人は拘束されているクウガに。

僕は驚きを隠せなくて、一瞬呆然としていた。でも、すぐに動いてクウガの前に立ってもう一人の白目仮面の前に立ちはだかる。



「もやし、油断しないで」

「え?」

「コイツらも、もやしやクウガと同じ……仮面ライダーだ」





緑の仮面の方は、キックホッパー。カブトで矢車という人が変身していたライダー。

そしてもう一人は、パンチホッパー。影山という人が変身していたライダー。

そして二人は僕達に対して、明らかな敵意を向けた上でゆっくりと歩いてきている。



てゆうか、マジでどうなってるっ!? なんでいきなり他の仮面ライダーが出てくるのさっ!



ここ、クウガの世界だよねっ! なのになんで、よりにもよってカブトのライダー!?






(第2話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、原作ほぼそのままだと丸1日で完成してしまうという事が分かった、ディケイドクロス第1話です。
このお話はIFルートで以前やったギンガさんルートとそのアフターから発展したお話であります」

あむ「……ついに始まったね」

恭文「うん。さすがにそろそろ着手しないといけないかなーと作者は思ったらしい」





(そりゃあ天神乱漫クロスやってる場合じゃないと思うわけですよ)





恭文「いや、僕はむしろそっちがいいんだけど。あんな性悪なもやしが相棒じゃあ、楽しくないし」

あむ「うん、そりゃあゆかなさん出てるしねっ!? そこは分かるけど、とりあえず自重しろー!
……えー、とにかく本日のあとがきのお相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文です。とにかくアレだよ、当初の予定通りに8つの世界だよ」

あむ「一つだけ除かれるんだっけ」

恭文「うん。というか、その方向でしかもらったアイディアを活かすルートがなかった」





(もうちょっと言うと、こうしないととまとの主人公(笑)が旅に参加というのが難しくなりました。
でも……どうしよう、詳細まだ完全に決めてなかったり)





あむ「で、アンタは結果的にフェイトさんも嫁にもらう覚悟を決めるわけだね。もうちょっと言うと、そのためのお話だよね」

恭文「そうだね。もうちょっと言うと、勃たない僕が勃つようになるまでの話だよ」





(その瞬間、台本がすごい勢いで跳んできて蒼い古き鉄の顔面に直撃。蒼い古き鉄、鼻を押さえながら現・魔法少女を見る)





恭文「あむ、ごめんなさい」

あむ「うん、素直でよろしい。……で、現段階でのあれこれをちょっと整理してみようか」





・スタートはIFのギンガルートアフター直後。

・なぜかデンバードとマル秘アイテムまで跳ばされてきた。

・巡る世界は8つ。

・恭文は基本ナハトフォームで通す。なお、技能関係は改訂版準拠。というか、ギンガルートも改定しなきゃ。

・そしてもやしと蒼チビの相性は非常に悪い……と本人達だけが思っている。
ちなみに、周りから見ると似たもの同士に思われている。





あむ「……まぁ、士さんとはうまくやれそうでよかったじゃん」

恭文「どこがっ!? アイツ性格悪いし口も悪いし失礼極まりないしっ!」

あむ「いや、アンタと似てるじゃん」

恭文「…………あむ、眼科行く? きっとね、あむは疲れてるんだと思うの。
大丈夫、きっとすぐによくなるよ。いや、むしろ眼科じゃなくて精神科かな」

あむ「即行であたしを病人扱いするのやめてくれるっ!? てゆうか、そっくりじゃんっ!」

恭文「どこがっ!?」

あむ「自覚ないんかいっ! ……えー、こんな自覚がない二人が主役ですけど、今後とも宜しくお願いします。
それでは、本日はここまで。お相手は今日はとっても元気な日奈森あむと」

恭文「あむは10秒後にお亡くなりになってもおかしくないほどに消耗していると思う、蒼凪恭文でした。あむ、忘れないよ?」

あむ「そして勝手に殺すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」










(……真面目にもやしと蒼チビ、どうなるんだろうか。いや、書いてると距離感いきなり0でもいいくらいのシンパシーだし。
本日のED:GACKT『Journey through the Decade』)










夏海(写真館の前で)「……アレ」



(その視線の先には、例の灯溶山。そしてそこには透明なオーロラ)



ギンガ「夏海さん、あの……アレがなにか?」

夏海「私達の世界が壊れそうになった時、あれと同じものが出たんです」

ギンガ「え? じゃ、じゃあもしかして」

夏海「この世界にも……滅びの時が近づいてるのかも」(そして、そのまま駆け出す)

ギンガ「夏海さんっ!? あの……あぁもうっ!」(当然追いかける)





(おしまい)





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