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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第34話 『ノリ過ぎなカウントダウン』(加筆修正版)



恭文「前回のあらすじ。ついにやってきたAAA+昇格試験。その試験官は・・・・・・なのは。
しかもしかも、全力で戦って総合的な戦闘技能を見るという試験」

フェイト「当然だけどヤスフミもそうだし、私達も何も知らなくて・・・・・・混乱の中で、試験が始まります」

恭文「というかこれ、どうなってんのっ!? なんでなのはが出てくるのさっ!!
六課所属のはずだよねっ!? なのになんで平然と出てきてんのさっ!!」

フェイト「そんなの私達が聞きたいよー! ねぇ、こういう時ってどうすればいいのかなぁっ!!」

恭文「笑えばいいと思うよ」

フェイト「笑ってもどうにもならないよっ!!」

恭文「分かったっ! だったら」





(蒼い古き鉄、どこからともなくCDプレイヤーを持って来て、再生する。そして鳴り響く音楽)





恭文「最後のガラスーをぶち敗れー♪ 見慣れた景色ーを蹴り出してー♪」

フェイト「ヤスフミ、現実逃避しないでっ!? それでは何も解決しないからー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まずは、互いにウォーミングアップ。せっかくの晴れ舞台でのケンカ、簡単に終わらせたら意味が無い。





なのはもそのつもりだから、吹き荒れる風に髪をなびかせつつも僕を楽しげに見ている。





いつもなら、即行でケンカという名の砲撃を撃ってくるだろうに・・・・・・今回は中々空気が読めているらしい。










≪Axel Fin≫





カートリッジを1発使った上で発動したのは、久々登場の飛行魔法。

両足首に、蒼い翼が広がって羽を舞い散らせる。なお、当然ながら今回は戒めなし。

そして頭もフル回転。・・・・・・ぶっちゃけ、なのはには骨の二〜三本は覚悟してもらう。



『仕事はどうした』とは言う事なかれ。今回の事は、双方同意の上でのケンカだ。

というかね・・・・・・そんな事気にしてたら、マジで説得って方向しかないんだよっ! でもそんなの無理でしょっ!?

あのバカ、きっと絶対に引かないもんっ! それで僕にいったいどうしろって言うのさっ!!





”それで、どうするつもりですか? 真正面から突っ込んだら、確実に負けですよ”

”大丈夫。・・・・・・序盤から徹底的に布石打ちまくるよ。それで、一気に仕留める”

”やれればいいですよね”

”うん、ホントにそうだね”



方針を決めて、僕はアクセルを羽ばたかせて前に突っ込んだ。なのはは迎撃のために、周囲に魔力弾を生成。

数は10数発の桜色の弾丸が、なのはがレイジングハートの先を僕に向ける事で一気に放たれた。



≪Divine Shooter≫





迫ってくる大量の魔力弾を狙って、僕はアルトを打ち込む。そうして弾丸を斬り払っていく。

真っ二つに裂かれた弾丸の爆発の中をかいくぐりながらも、僕は直進する。

だけど、なのはは後ろにさがりつつ僕から距離を取る。取りつつまた撃ってくる。



もちろん放つのは魔力の弾丸。移動しながらでも、誘導弾のコントロールは的確。

やっぱり簡単に接近を許しちゃくれないか。そうだよね、至近距離は僕の得意レンジだし。

迫り来る誘導弾を僕は動きを止めず、ただただ斬り払ってすり抜けていく。幾重にも生まれる斬撃は、盾。



そしてその盾に斬り裂かれていく桜色の弾丸達は、僕の動きをなんとか止めようとする。でも、僕は止まらない。



・・・・・・訂正。止まるのは絶対に無しだ。止めた瞬間に、砲撃がくる。





≪Stinger Snipe≫





シューターを斬り抜けた時に発生した爆煙の中で、魔法を詠唱して発動。

右から大きく迂回させるようにして、あのバカに接近させる。なのはは横から迫り来るスティンガーから逃げる。

アクセルを羽ばたかせ、左側に大きく飛ぶ。なお、逃げる理由は簡単。防御なりやった瞬間に僕が斬りつけるから。



でも、これで十分。僕はアクセルを羽ばたかせ・・・・・・一気に突撃。

なお、このスティンガーは現在僕の操作は受けてない。僕がアレンジしたバージョンなの。

魔力反応で相手を自動追尾するプログラムを仕込んでいるの。



だから、操作の手間はいらない。僕は蒼い羽を撒き散らしながら、一気になのはの進行方向上に飛び出した。



前後から挟み込むようにして、僕は右薙に斬撃を叩き込む。そしてアルトの刃を包むのは、薄く研ぎ澄まされた蒼い刃。





「鉄輝・・・・・・!」



なのはは右手をかざして、瞬間的にシールドを生成。



≪Round Shield≫



展開される桜色のミッド式魔法陣の盾など構わずに、僕はアルトを叩き込んだ。



「一閃っ!!」





なのははシールドを展開しつつも、ノーモージョンで背後に魔力弾を生成。それを撃ち出した。

狙いは迫っていたスティンガー。どうやら誘爆するようなタイプらしく、スティンガーに直撃してそのまま打ち消された。

その間に斬撃は火花を散らしながらシールドと摩擦。僕はアルトをそのまま振り抜いた。でも、盾は斬り裂けなかった。



あいかわらずのバカ装甲だし。でも、まぁいいか。僕は左手からマジックカード5枚を取り出して、なのはの足元に放り投げる。

そのままアクセルを羽ばたかせて一気に下がると、上から桜色の魔力弾が7発叩き込まれた。

そして全ての弾丸の先が僕に向く。そしてそれらは至近距離で掃射された・・・・・・いや、訂正。されるはずだった。



でもその前に、マジックカードが発動。至近距離でカードから蒼い雷撃が撒き散らされ、なのはの身体を焼く。





「・・・・・・くっ!!」





それでもなのはは僕に向かって視線を険しくしながら、誘導弾を掃射しようとした。けど、出来なかった。

全ての弾丸が、雷撃に接触して爆発したから。その爆煙がなのはと僕の間を遮る。

・・・・・・こういうところが、なのはの怖いところだよ。平然と反撃して、僕の事倒そうとしたし。



基本的にはこの女は先手必勝キャラじゃなくて、カウンタープレイヤーなのよ。

チーム戦で前に出てくれるのが居るならともかく、個人戦だとその傾向が顕著なように僕の目には見える。

堅実な防御で攻撃を防いで、その直後に豊富な魔力を活かした砲撃なり射撃弾でノックアウト。



もしくはバインドで拘束した上で、堅実に当ててくる。なのは、戦術に関しては天才的というよりは古風なのよ。

教導隊だからすっごい先鋭的でアッと驚くような戦術をどんどん用いるかと思ってるのも居るけど、そいつらはバカだね。

うん、絶対的な勘違いしてるよ。なのはが魔法戦で使う戦術は、そんな洗練された天才的なものなんかじゃない。



むしろオーソドックス・・・・・・使い古されてると言っていいくらいなのよ。そうだなぁ、質実剛健とでも言えばいいのかな。

なのはは目新しさや奇抜さよりも、結果の出ている確実な戦法をちゃんと用いてくる。それがなのはの戦い方。

基本に忠実であり、従順。教導隊という魔導戦研究の最先端の現場に居るのにも関わらず、なのは自身はそんな事はない。



てゆうか、この女は基本『誘導弾・砲撃・バインド』による三点突破が強みみたいなキャラだしなぁ。

下手に絡め手使うよりも、自分の強みである一撃必殺を確実に活かすやり方の方が、ずっと効率的なんだよ。

ようするに、自分の力の使い方をちゃんと知ってるのよ。だからあえてこの方法を選んだ。



なにより、性格的にもトリックスター詐欺師にはなれないよ。それはどっちかと言えば僕だし。

・・・・・・あ、ちなみに今の雷撃、足元からの即時発生だったから避けるタイミングがなかったのよ。

なのはの性格からして、カウンターかまそうとするのは読めてたしさぁ。



つまり、カウンターのカウンター返・・・・・・僕は何も言わずに、一気に下に飛んだ。





≪Short Buster≫





その次の瞬間、僕の居た空間を桜色の小さめな奔流が突き抜けた。

そして、爆煙の中から姿を現すのは・・・・・・ほぼ無傷に等しいあのバカ。

威力を抑えて、速度重視の砲撃か。あれで動きを止めてそこからと。



雷撃食らってからさほど経ってないのに、躊躇い無く平然とぶちかましやがったし。

それもほぼタイムラグも無しで・・・・・・ほら、堅実なとこ堅実なとこツツいてくるでしょ?

普通なら弄るとこだけど、あの女の場合それが的確過ぎて言う気が起きない。



僕は内心舌打ちしつつも、アルトの刃を右に構えて一気に前に踏み込む。

バスターを撃った直後のなのはを狙って、アルトを左薙に叩き込んだ。

なのははその斬撃を、レイジングハートの柄で受け止める。そして顔をしかめた。



そりゃそうでしょ。徹・・・・・・内部浸透系の打撃も込みで叩き込んだんだから。

ちなみにこの徹、防御フィールド越しでも相手にダメージを与える事が可能。

なお、本気で撃てば人一人くらいならあっさり殺せる技だけど、今回はさすがに加減してる。



そして僕は、そのまま刃を振り抜いて斬り抜けた。一気になのはから50メートル近く距離を取る。

その時に火花と衝撃が弾けて、一気に空間に広がった。・・・・・・じわじわと蓄積ダメージを残す。

例え少ない量としても、まずはそこから。それは、僕がなのはやフェイトみたいな格上相手によく使う戦法。



相手の動きや行動を制限出来るように布石を打ちつつ、決めは一気に。

だからなのはにもそうしてるんだけど・・・・・・確実に読まれてるよなぁ。

だからなのはの動き、全然陰りがない。さっきの雷撃、一応スタン効果込みだよ?



魔力ダメージだけだと、あのバカのチートレベルな魔力量を削り切れない。

だからなのは・・・・・・ううん、なのはレベルで魔力が多いの相手にはだね。

魔力ダメージ以外の、二次的な作用のある攻撃を仕掛けるのが基本戦術。



でも・・・・・・くそ、マジでやりにくいし。なのはのバカ、僕がどうして六課来たのかとか完全に忘れてるでしょ。

もう目がやる気なんだもの。だから今だって、レイジングハートからカートリッジがロードされるのよ。

数は2発。もう聴き慣れた『ガシャンがシャン』という音が、空間に響き渡る。そして、なのはの周囲に30程の魔力弾。




僕は空中で滑るようにUターンしつつ、それを見据える。





≪Accel Shooter≫



放たれた誘導弾に向かって、僕はカードを5枚前面に投擲。なお、左手から出しました。

そしてそのカードを撃ち抜こうと、アクセルが密集してくる。うん、そうするよね。



「無駄だよっ!!」





なのはは、カードの効果や能力を知ってる。だから即座に対応を決めた。

アクセル5発を加速させて、カード・・・・・・ううん、カードから発動される魔法を貫こうとする。

その後ろの残り25発のアクセルは、大きく左右に分かれるように迂回してきた。



うん・・・・・・そうするって知ってたわ。だからコイツは驚く事になる。



・・・・・・僕はジガンのカートリッジを3発使用。それでアクションを開始。





「・・・・・・なっ!!」





カードから発動した魔法は、雷撃でも氷結魔法でもなかった。それは・・・・・・ベルカ式シールド。

ふ、新型カードの実力ナメるなよ? 前は強度的に使い物にならなかったシールド系魔法の使用も可能になってるのよ。

さて、前面のアクセルは防がれ爆散。そして他のアクセルはさっきの雷撃のようなのを警戒して、大きく迂回。



そしてアクセルという魔法は、コントロール中は動けなくなってしまう中距離用魔法。

他の防御関係に関しても、一旦アクセルのコントロールを中断しなければ使えない。

まぁ総合すると・・・・・・これは隙って事だね。僕は真正面からまたアクセルで突っ込んでいる。



タイミング的には、シールドがアクセルを防ぐより前には踏み込んでる。なお、他のアクセルによる迎撃は間に合わない。

距離を大きく取り過ぎてんのよ、バカ。だから僕は、もうお前の前に居る。

僕はアルトを振りかぶ・・・・・・らずに、目の前で軽く上に跳んだ。その次の瞬間、なのはの前面をアクセルが2発突き抜ける。



アクセルはそれぞれタイミングをずらしながら、なのはの目の前でクロスするように撃ち込まれた。

上から見ると、アクセルの機動は『X』を描いている。そして突き抜けたアクセルは、なのはの両横を通り過ぎた。

・・・・・・アクセル使用時の防御は、今みたいな『迎撃』を用いるのよ。つまり、撃ち落とし。



今の場合、数を2発に限定して遠距離から最大速度で狙い撃って来た。

それぞれが命中して動きを止めたら、続きのも迎撃って算段だったんでしょ。

とにかく、僕はなのはを飛び越えるように動いた。そして、魔法発動。





「鉄輝」





なのはの頭頂部に、さっき使ったカートリッジ分の魔力も込みでスフィア形成。



なのはは即座に上を向いて、レイジングハートを構えようとする。



でも僕はなのはの上を飛び越えつつ、とっくにトリガーを引いている。





「一閃っ!!」



そうして放たれたクレイモアが、零距離でなのはを真上から撃ち抜く。そしてもう一つスフィア形成。

今度はなのはの背中辺りを狙う。・・・・・・普段の傾向からすると、一発だけだと生存フラグだ。だから、徹底する。



「鉄輝一閃っ!!」



そしてトリガーを引いてクレイモアを掃射。それからすぐになのはから大きく距離を取る。

距離にして、200メートル程。そしてその場で停止。



≪・・・・・・あなた、技名間違えてません?≫



ひときわ大きく渦巻く爆煙を見ていると、アルトがそんな事を言ってきた。



「気のせいじゃない? 『鉄輝一閃』と書いて『クレイモア』と読むのよ」

≪どんな当て字ですか。さすがにそれは無理があるでしょ≫

「いいのよ。うん、勝てさえすればなんでもいいの」










・・・・・・さて、これでおしまい・・・・・・だと、嬉しいんだけどなぁ。





でも、安心するのだけは絶対だめだ。それはなのはにとって生存フラグだよ。





そして、それは同時に僕にとっては敗北フラグだ。ここは慎重に警戒・・・・・・と。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第34話 『ノリ過ぎなカウントダウン』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「や、恭文・・・・・・なのはさんに躊躇いなくクレイモア撃ちましたよっ!? それも二連発で嘘ついてまでっ!!」

≪そりゃ撃つだろ。そうでもしねぇと、ボーイは勝てないしな≫

「相手はあのエース・オブ・エースだ。躊躇ったら、そこで終わるよ。
てか、なのはちゃんもバカだねー。言葉聞いてそのまま信じて反応って」

「いや、普通そうしますって。・・・・・・てゆうか、始まって数分経って無いのにこれ? 心臓に悪いわよ」



ここは六課隊舎のロビー。そこでみんなで、ヤスフミの試験を見ていた。

はやてが手管を使って、見れるようにしたんだ。一大イベントではあるし、スバル達の勉強のためにもね。



「でもまさか、高町教導官が来るとは」

「えぇ。つか、アイツはまた」

「え、はやても知らなかったの? 部隊長なのに」

「うん。うち、教導隊の方の要請で、高ランク試験の相手勤めるとしか聞いてへんのよ。
で、リミッターも限定的に解除するから、それも許可して欲しい言われて」



え、たったそれだけっ!? たったそれだけでOKしちゃったんだっ!!



「いや、それで・・・・・・って、無理か。今日試験受けるのは、やっさんだけじゃ無いしね」

「なにより、試験内容が漏れたら大変ですよ。なぎ君となのはさんは身内でもありますし」

「・・・・・・いや、それでも八神部隊長にも知られないように話を進めるって。連中どんな手使ったんだよ」

≪主にも出来る範疇かと。しかし・・・・・・蒼凪氏の運の無さもここに極まりですね。これはあり得ませんよ≫





そこを言われると辛い。なのはは、絶対に加減しないだろうし。・・・・・・ちなみに、私達で止めるという選択肢はない。

まず、なのはは言っても聞かない。ヤスフミももうそこは分かってるから止めない。

なにより、これは教導隊のみんながOKを出してる公式的なお仕事なんだよ? どういう形であれ、そこは変わらない。



なのに私達が個人的感情も込みでそれを止めたらどうなる? 当然大問題になる。

私達は試験に関しては部外者も同然。管轄外もいいところ。つまり、言う権利そのものがない。

というか、教導隊の人達もどうしてなのはに試験官を? ほら、今は六課に出向中だし。



まぁ、試験官は・・・・・・そうだな。例えば他に空いている人間が居なかったとかなら、分かるの。

JS事件の影響で忙しいというのもあるし、年始めからさほど経ってないから仕事が溜まっていたとも考えられる。

ようするに、ヘルプ的にだね。管理局はそこの辺りの融通、相当利かせられる組織だったりするから。



私も結構こういう仕事は経験あるんだ。普段はクロノが居る船で仕事してるけど、人手が足りないから別の船でーって。

特に魔導師の戦力は慢性的に不足しているしね。こういう人材運用も、組織的には常識なんだ。

でも、それなら怪我は? さすがにそこ無視は・・・・・・あれ、ちょっと待って。今、凄く怖い可能性が出てきたんだけど。



もしかして教導隊の方、なのはの体調とかケガの事を知らないとか?





”・・・・・・はやて、まさか教導隊の人達・・・・・・なのはのケガの事を知らないとかはないよね?”



みんなには聞かれるわけにはいかないので、念話ではやてにちょっと確認してみる。



”はぁ? いやいや、そないなわけないって。なのはちゃんかてちゃんと説明はしとるやろ”



そうして返って来た答えがコレ。それにより、私の胸の中の不安がより強くなった。



”つまりそれって、はやてが説明してるわけじゃないんだよね?”





まぁ、ここは仕方ないとも言える。だって、なのはは子どもでもなんでもないんだよ?

自分の状態くらい、自分でちゃんと説明出来なきゃ局員としておかしい。

というか、私達は同じ部隊員だけど、基本的な事を言えば教導隊の部外者だもの。



なにより・・・・・・簡単に話せないんだよね。事件の詳細や部隊員の体調の事、緘口令が敷かれちゃってるから。





”というか、向こうの立場でちょっと考えてみようよ。JS事件は非公開項目の多い事件。
『外部』から見たらなのはがどういう戦い方をしてどう傷を負ったかなんて、分かる訳ないよ”





クロノ曰く、私達六課の部隊員のデータ等も、その非公開項目の領域に入ってしまうらしい。

そこの辺りで、この事件が管理局にとってどれだけ重要なものなのかは察して欲しい。

あとはアレだね。私やエリオ、スバルやギンガと言った具合に、スカリエッティないし戦闘機人に絡んでる人間も居るから。



例えば私とエリオはプロジェクトF関連。そして、スバルとギンガは戦闘機人としてのあれこれ。

そこの辺りのプライバシーの問題を保護する意味合いでも、やっぱり情報は安易に公開出来ないんだよ。

とは言え、六課の構成メンバー自体は関係者やそれに連なる人からすると、もうバレバレなんだけどね。





”・・・・・・そう言えば”

”でしょ? もしくはなのはの言い方がちょっと悪くて、ケガの深刻度が向こうにちゃんと伝わってないとか。
私もね、その辺りはなのはに任せるしかなかったから介入してないし・・・・・・よく考えるとこうなる要因は、かなりあるんだよ”



はやてが画面から目を離して私の方を見た。そして、頬から一筋の汗が流れる。



”・・・・・・事後になのはちゃんに確認してみようか。なんや地雷源に踏み込む感じやけど”

”そうだね、そうしていこうか”










私達は、もう一度画面に目をやる。爆煙の中、まだなのはは出てこない。でも、アレで終わるはずがない。





あの二人が本気で『ケンカ』したらどれだけ壮絶か・・・・・・私は、よく知っているから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・めんどくさい」



すぐに距離を充分に取り、警戒しながらもカートリッジをリロード。今回弾丸は、常にフルで装填してないと怖い。

次に懐からカードを取り出しつつ、自然と出た言葉はそれだった。で、即座に魔法発動。



≪色々とやりにくくはありますよね。というか、私思ったんですよ≫



カードに念じると、蒼い光が身体を包む。消費した体力と魔力が、それで回復する。

・・・・・・うん、回復魔法のカードなんだ。新型のおかげで、今までよりも効果が高い。



「なに」

≪もう六課に義理立てする必要、ないと思うんですよ。ここまであのアホ提督に散々やられましたし≫

「そうだね」



ぶっちゃけさ、あの人とはもう縁も切ってるからいいのよ。

ついでに、自分の尻が拭えないような奴らが死のうが生きようが僕が気にする理由はない。



≪だったら、六課の事やあの人の都合なんざ無視でいいでしょ。・・・・・・私達は、私達のために戦うんです≫



どこか迷いを持っている僕に対して、アルトは静かにそう言って背中を押してくれる。



≪私達が自分で胸を張れるために。誇りを貫くために。ようするに、自分の勝手のために戦うんです。
大体、六課のために戦うなんてらしくないでしょ。だからここからは≫

≪Short Buster≫

「本気で、自分のために・・・・・・だね」



そして、僕の目の前に砲撃が迫る。発生源はあの爆煙の中から。

桜色の奔流を、僕はアルトを逆袈裟に振るって斬り裂く。そして、目の前で爆発が起きた。



「アルト、ありがと」

≪いいえ≫



タイムラグ無しの不意打ち気味の砲撃だったから、なんとか斬れた。

さすがに本気のだったら・・・・・・魔力無しで対処はまず無理だったよ。



「・・・・・・さて、こっからは第2ラウンドか」










砲撃により生まれた衝撃によって、爆煙が一気に晴れる。その中から現れたのは、やっぱりなのは。

ただ、姿がさっきまでと違う。ミニスカートは、ロングスカートに。あの年を考えない聖祥大付属の制服の上着も変わってる。

ビスチェの上に白のジャケット。そして、両手首には青い装甲入りのガントレット。





レイジングハートも、大型のランスのような形に変わってる。アレは、なのはのエクシードモード。





いわゆる本気モードだね。その姿はまさしく魔王。やっぱりワルキューレの騎行が似合う女である。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


”・・・・・・レイジングハート、強いよね”

”えぇ、強いです”



こちらの戦術が全て読まれる。まぁ、私の戦術が古臭い上に読みやすいというのもあるんだけど。

私は、恭文君やはやてちゃんみたいなトリックスターにはなれないもの。基本に愚直なまでに忠実に従い、貫くだけ。



”というか、おかしいよね。私の方が戦闘経験はずっと多いはずなのに”





私には、恭文君の動きが読み切れない。だから恭文君と戦う時は、本当に気が抜けない。

あの回避も、例えば相手がスバルやフェイトちゃんなら避けられないタイミングだよ。

オートバリアに頼って防ぐか、ソニックムーブで緊急離脱してギリギリってレベルかな。



そしてそこを狙って、残りのアクセルを撃つなり砲撃なりで落とすというのが、私の常套手段。

でも、恭文君はあっさりと避けた。魔法も使わずに、飛行魔法だけでだよ。

恭文君には、事前に私の動きが読めているとしか思えない。これが気の抜けない理由の一つ。





”仕方がないでしょう。濃度では彼の方が濃いんですから”

”そうだね”





恭文君は、この間お姉ちゃんが来た時にやっているような訓練を本当に数年単位でずっとしていた。

それは魔法も銃器も無しで、刀で近代戦闘兵器相手に戦って勝つための訓練。

リンディさんやアルフさん、フェイトちゃんが『普通でいい・言い訳してもいい』と言っているのにだよ?



恭文君は魔導師なんだし、私やフェイトちゃんだって出来ない。それは極々一般的な事でもあるから。

・・・・・・なお、うちの家族は例外で。みんなはアレなの、常識から外れてるから。

というか、御神流が常識から外れちゃってるから。ここを基準に含めるとどうしようもないよ。



大体警防みたいな特殊部隊だって、基本的に銃器や近代的な特殊装備有りきだよ?

刀一つでどうこうなんて、基本的にどこにもないから。でも、だからなんだよね。

だから元々高い恭文君の危険察知能力が、魔法戦の訓練だけでは無理なレベルにまで磨かれてる。



そこの辺りはリンディさんが聞いたら否定しそうだけど、間違いない。それはこの間のお姉ちゃんとの訓練で痛感した。

私達は魔法という『鎧』に守られた上で、現場に対処する事を前提としている。それが普通であり当たり前の事。

だからこの間の訓練、その『鎧』が無い場合を想定した訓練で一部を除いて全員が黒星で終わるという不本意な結果を残した。



魔法無しで銃器に立ち向かうって、一般的な魔導師が思っているよりもずっと慣れが必要なんだよ。

ただ魔導師としての・・・・・・局の教導にあるようなキツ目のフィジカル訓練を積んでるだけでは、意味が無い。

言うなら空気そのものに慣れる必要がある。魔法という、便利な鎧に身を守られていない状態でね。



ここ、いい勉強になったんだよね。そこは私だけの話じゃなくて、私の元々の所属である教導隊でも同じ。

教導隊の先輩にもこの間お話して、今後の教導カリキュラムに入れるって決まったくらいだから。

それで恭文君は・・・・・・うぅ、悔しいなぁ。まるで教導隊の先輩を相手にしてる時みたいだよ。



恭文君は鎧が無い状態での戦闘経験が、私達よりずっと多い。だからそこの辺りが飛躍的に伸びてるんだ。

相手の僅かな仕草に表情に感情の変化、そう言ったデータを元にして的確に動きを先読みして、反応速度を上げてる。

恭文君の速さは機動が速いとか、そういう一般的なものじゃないんだよ。こちらの動きを的確に読んで対処するの。



攻撃を見てから避けるのではなく、どういう攻撃が来るかを読み切ってその予想を元に予め動いておく。

だからこそ速い。魔法という『鎧』の存在をちゃんと認識してるから、その外の事にも神経を伸ばしていけるんだ。

私もそういう読みが使えないわけじゃないけど、精度で言えば恭文君の方が上だと思う。



アレだよ、まさしくスプリガンの後半で御神苗優さんがAMスーツに頼らないで戦ってたのと同じだよ。

つまり総合的な『速さ』では、恭文君が上。もちろんそれで簡単に防御を抜かせたりはしないけど、それでもだよ。

それに恭文君には、バインドによる捕縛が通用しない。特殊能力で瞬間破壊が可能だから。



つまり、バインドによって動きを止めてどうこうという普段の私が使う常套手段は、恭文君には使えない。

普通に撃てば自慢の砲撃も、避けられるか斬られるかで終わる。でも、それなら普通に撃たなければいいだけ。

足の止め方なら、バインド以外にも色々ある。そうだ、私には恭文君に勝ってるものがある。



それは火力と打たれ強さ。恭文君がこちらの動きを読み切って攻撃をしてくるなら、私はそれを全部受けて耐える。



耐えた上で、隙を狙って一撃で仕留める。古典的ではあるけど、これが一番確実だよ。





「私はそういう意味では『言い訳』していたんだろうから、差がつくのは当然だよね」



足元に、ミッド式の魔法陣を展開。一つの巨大なスフィアと四つの小型スフィアが全面に展開。

大型・・・・・・砲撃スフィアは、レイジングハートの穂先にある。そしてその5つともが恭文君を狙う。



「でも、私にだって積み重ねたものがある。それを・・・・・・見せつけるよ」

≪Yes My Master≫










・・・・・・普通に遠距離から撃ってもだめ。だったらどうする? 簡単だよ、零距離で最大火力を叩き込めばいい。

つまり、ここからの狙いどころはクロスレンジだよ。もちろん無謀なのは承知の上。

でも、相手の得意な領域だからこそ、油断が引き出せるかも知れない。特に恭文君は私の事をよく知っている。





あえて相手の得意領域に踏み込んで、一瞬の隙を狙って全部叩き込む。これは立派な戦術。






恭文君流に言うなら、戦いはノリのいい方が勝つの。私のノリがクロスレンジで出せるなら、この狙いは決して的外れじゃない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「クロスファイア・・・・・・! シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」



放たれたのは、5メートル程の砲撃。周囲にある他の四つのスフィアも、砲撃の周りで螺旋を描きつつもこちらに向かって突き進む。

僕はとっくに回避行動に出てる。右に移動して、大きく砲撃を回避。そこを狙ってなのはがレイジングハートを構えて狙いを定める。



≪Short Buster≫





速度重視の小型砲撃。それを数発乱射して、僕を撃ち抜こうとする。

でも、それをそのままなのはの周囲を回りながら回避。

六発目の砲撃が撃たれてから、僕はまたなのはに向かって踏み込んだ。



なのはは当然ながら迎撃のために砲撃を撃ってくる。





≪Short Buster≫





連続で撃ってくる砲撃をすれすれで左に動いて回避しつつ、僕は踏み込む。

そしてなのはからあと10メートルという距離で、僕は真横にベルカ式魔法陣を発生。

なのはは変わらずにスフィアを形成して、僕に狙いを定めていた。



ちなみに魔法陣というのは、物理的な足場としても使える。だから僕は、それを足場に一気に右に跳んだ。

それで直前で放たれたなのはの砲撃を・・・・・・いや、なのはは撃たなかった。僕の回避行動を読んでいたらしい。

即座にレイジングハートの穂先を向けて、僕に狙いを定める。その間にカートリッジを2発ロード。





「エクセリオン・・・・・・!!」



スフィアがその分大きくなって、なのはは僕にトリガーを引いた。



「バスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」





僕はなのはの方を振り返りつつ、また足場を形成。それを使って瞬間的に2時の方向に飛ぶ。

そうしてすれすれで砲撃を回避。砲撃は形成した足場だけを飲み込み砕いた。

・・・・・・左肩のジャケットが、吹き飛んだけど。てゆうか、僅かに掠ったんかい。



そして砲撃を避けられたなのはは、即座に魔力スフィアを形成。





≪Divine Shooter≫





数は15。それらを一斉に僕の進行方向に幅広く掃射した。

僕は左手でカードを3枚投げて、再びシールド展開。それで弾丸を防ぎつつ・・・・・・その場で足を止める。

次の瞬間、上に向かって太い砲撃が放たれた。・・・・・・あのバカ、やっぱりそうくるか。



僕はそれからすぐに下に向かって移動。なのはは後ろに下がりつつも、砲撃を四発掃射。

3枚のシールドと誘導弾を防いだ事による爆煙すらも、砲撃が飲み込む。

アレだ、やっぱりあの女は魔王だって。何にしても攻撃が派手過ぎるから。



そして魔王は、そんな攻撃を避けた僕に向かって再びレイジングハートを向ける。



エクシードモードのおかげか、先程よりも動きがいい。・・・・・・後々怒られるのは決定なのに。





≪Short Buster≫





なのはは一発だけ僕に向かって撃つと、即座に振り向いてアクセルを羽ばたかせて飛び去る。

・・・・・・どうやら、追いかけっこをしようという腹らしい。なので、当然のように僕はそれに乗る。

僕もアクセルを羽ばたかせて、なのはを一直線に追いかける。なのはは、飛びながら魔力スフィアを形成。



それをノーモーションで後ろの僕に向かって掃射していく。





≪Divine Shooter≫





僕はその隙間をかいくぐるように飛び、アルトで斬り払いつつもなのはを追いかける。

僕の後ろで、魔力スフィアの爆発が起こる。その間に、なのはは大きく下に向かう。

高度にすると100メートル近く下のビル群に一気に突っ込んで、その身を隠した。



僕は遠慮なしにそのまま突っ込む。というか、ためらう理由がない。あそこは・・・・・・僕の領域だ。





「クロスファイア」



なんて言っている間に、また僕に向かって砲撃が放たれた。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」





先ほどと同じ砲撃は、さっきより鋭い。くそ、ここに来て集中力が高まってるか。

さすがは実戦向き。温い馴れ合いしている時よりずっと強い。・・・・・・僕は即座にカードを2枚投擲。

それはもうお馴染みのシールドカード。それが砲撃を一瞬だけ防ぐ。その間に僕は右に移動。



そんな僕を狙って再びなのはが誘導弾を展開する。今度は・・・・・・アクセルか。





≪Accel Shooter≫



追いかけてきた4発のアクセルから逃げるように、僕は近くの高層ビルの屋上に着地。そしてブレイクハウト発動。

足元のコンクリを変換して、杭を生成。それによりアクセル4発を打ち抜いて爆散させる。



≪Flash Move≫



その間に、なのはが後ろに回り込んでいた。てーか、丸分かりだし。移動しながらガシャガシャ言ってるもの。

そして後ろを振り返ると・・・・・・なのはのバカがまたまた遠慮無く砲撃を撃とうとしていた。



「エクセリオン・・・・・・!!」



それも至近距離で。・・・・・・なるほど。確実に当てるために、虎穴に入らずんば虎子を得ずですか。



「バス」

「甘いわボケっ!!」

≪Stinger Ray≫





斬撃による迎撃は危険と判断して、スティンガーで発射直前なスフィアを狙い撃つ。

次の瞬間、砲撃として放たれてようとしていたスフィアは爆発して僕達を吹き飛ばした。

衝撃や爆風に逆らわずに、僕は一気になのはから距離を取って近くのビルの屋上に着地。



その際に、右肩や左太もも、両膝のジャケットが吹き飛ぶ。・・・・・・くそ、魔力ダメージ食らったか。

直撃でないにしろ、これはちょっと回復していかないと。でも、間に合ってよかった。

・・・・・・僕が撃ったスティンガーは、術式にアレンジを加えて反応性質を持たせてある。



魔力は、魔力に干渉する事が出来る。それは魔導師であれば常識の範疇。

だからこそ魔法を魔法で防御する事が出来るし、バインドで縛られても解除が可能になる。

アレは放たれたらスティンガーじゃ対抗は出来ない。でも、放たれる直前だったら問題ない。



放たれる前の砲撃スフィアは、ただの強大なエネルギーの塊に過ぎない。

そして僕が撃った反応魔力弾は、そういうエネルギーの塊に干渉して誘爆を起こす性質がある。

これはスティンガーが速度と貫通力重視のセッティングだから、出来た事だよ。



さて、話はこれで終わる? 終わるわけがない。爆煙に包まれて姿が見えないは。





「生存フラグだよっ!!」

≪A.C.S. Standby≫





爆煙の中から、僕に向かって突撃してくる影が一つ。そしてその手に持つ不屈の心の先には、桜色の四つの翼と虹色の杭。

なのははレイジングハートの穂先を前にかざして、一気に飛び込んできた。そしてその周囲には10数発の魔力弾。

僕は右に大きく跳んで突撃と同時に掃射された射撃を全て回避。というか、結構ギリギリ。A.C.S.・・・・・・瞬間突撃システム。



あれだよ、スバルが前に僕との模擬戦で使ったのとほぼ同じだよ。瞬間的な突撃を可能とする加速システムなの。

ただし、なのははスバルとは違って、基本的に前にしか進めないけど。

砲撃魔導師のなのはがそんなシステムを使って、前に突っ込んでやるのは防御を抜いての零距離砲撃。



防御魔法で防いでも、あの高密度に圧縮されて虹色に輝く魔力の杭で貫かれる。

その上で、エクセリオンバスターを連射しまくって、一気に仕留めるわけだよ。

もう思考が既に魔法少女じゃないし。誰だよ、『魔法少女リリカルなのは』とかってタイトルを付けたの。



とにかく僕はその動きを見切って、右に跳んで回避。回避しつつもすぐにその場から跳ぶ。

というか、ビルから飛び降りる。そして、僕が先程まで居た場所を桜色の奔流が砕いた。

・・・・・・悪魔の砲撃が、天を貫く。魔王だ。やっぱりあの女、完全無欠に魔王だ。魔王少女だよ。



地面に落下しながら、僕はそんな事を思った。でも、殺気を感じた。なので足を止めて、すぐに左に跳ねるように移動。

空中だからあんま言われても困るけど、それでも跳ねるようにしてその場から待避。

そして、ビルの壁を砕いて斜め上から再びあの魔王少女リリカルなのはが突っ込んで来ていた。



反撃のために僕は足を止めて・・・・・・アレ、加速スピードがちょっと遅い。



その間にまた向かい側のビルに激突すると思っていたなのはは、直前で足を止めた。





「ブラスター1」



気になる発言を吐きつつも、なのはは抜き打ち同然で僕にレイジングハートの穂先を向ける。



「リミット、リリースッ!!」

≪Excellion Buster≫





そこにはやっぱり魔力スフィア。ただし、さっきよりも寒気が強くなってくる。

回避・・・・・・いや、余裕が無い。というか、追い込まれた。A.C.S.で乱暴に突撃しつつも、ここに追い込まれた。

この・・・・・・横には逃げ道のない場所に。そして、放つタイミングも色々ドンピシャ。



このタイミングだと、僕はちょっと逃げるのは無理っぽい。どうやら、今回の読みはなのはが上っぽい。





「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトっ!!」



放たれる砲撃に向かって、僕は覚悟を決めて奥の手を一つ切る。

それはヒロさんサリさんしか知らない、奥の手。というか・・・・・・禁呪の一つ。



≪Eclair Shot≫





左手の人差し指と中指を砲撃に向けて、魔力スフィアを3発撃ち込む。そして、桜色の巨大な奔流に蒼い火花が走る。

これはエクレールショット。うん、ぶっちゃけるとザグルゼムだね。さっきも言ったけど、魔力は魔力に干渉し合うもの。

その性質を利用して組み立てたのが、この魔法。これは一種のウィルスに近い性質を持っている。



射撃した対象に張り付き、その対象に向かって属性攻撃をかますと、ショットの構築魔力と連鎖反応を起こす。

それによりダメージを倍増させるって魔法だね。で、相手の砲撃・防御魔法などにも干渉出来る魔法なの。

砲撃魔法に撃ち込んでから属性攻撃を打ち込むと、砲撃の魔力そのものに干渉した構築魔力と連鎖して、大爆発を起こして迎撃。



そしてこの技術そのものは、特別なものじゃない。術式プログラムや魔力に割り込む魔法は、昔からあるもの。

バリアブレイクなどがそれだね。ようするにエクレールショットはそれの発展形なの。

つまり、これによりブラスター1使用時のエクセリオンバスターを撃墜しようというわけである。・・・・・・大丈夫、多分出来る。



サリさんとヒロさんと面白半分で『出来たらいいよねー』なんて言って、サリさんの砲撃魔法で試したでしょ?

それでマジで出来たし・・・・・・大丈夫。多分大丈夫だ。そのせいでサリさんから禁呪指定されちゃったし、大丈夫なはず。

ほら、桜色の中に蒼い火花がバチバチ走ってるし・・・・・・大丈夫なはずだ。そうだ、そう信じよう。





「・・・・・・フルドライブ」



・・・・・・僕の魔力だと、フルドライブ状態を継続は無理。だから、これを使うのは一瞬。

普段は安全のために備え付けられているリミッターが解除され、僕の魔力が倍近く上がる。



「閃華」



それからカートリッジを3発ロードした上で使用するのは、雷撃属性に変換した魔力。

薄く研ぎ澄まされた蒼い雷撃の刃を・・・・・・僕はエクセリオンに向かって、袈裟に叩き込んだ。



「一閃っ!!」










今放ったエクレールショットは、雷撃属性の攻撃を食らう事で連鎖反応を起こすようにしてある。

だから次の瞬間、蒼い雷撃が混じった桜色の爆発がビルとビルの間で生まれた。

それは周囲のビルの外壁や窓ガラスを砕き、蹂躙し・・・・・・破壊のための衝撃を撒き散らす。





そして僕は、それにジャケットの各所を吹き飛ばされまくった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うそ、恭文」

「届かへんかったか。てーかなのはちゃん・・・・・・あー、フェイトちゃん落ち着いて?」

「大丈夫だよ。・・・・・・うん、大丈夫」



ブラスターまで使って・・・・・・もうだめ。これ、ケンカだよ。試験なんか関係ない。

なのはも、ヤスフミも、ケンカのつもりでやってる。だから・・・・・・だからアレを使った。



『・・・・・・試験、終了。受験者は撃墜』



だけどなのはがどこか無機質な声でそう告げた。そう、ケンカは終わったと。



『これで』

『まだ終わりじゃないよ』



響いた声に、なのはの言葉が止まった。というか、全員が驚いた顔で画面を見る。



『・・・・・・驚いた。どうやって防いだの?』

『企業秘密。てか、おのれ・・・・・・本気かい。ブラスター使うなんて』



その声になのはが、少しおかしそうに笑った。



『当たり前だよ。私達、こういう関係でしょ? それに約束したよね。
・・・・・・いつだって全力でぶつかり合って、繋がっていこうって』



そしてなのはは、渦巻く爆煙に向かって視線を定めて、下ろしていたレイジングハートを再び構えた。



『私も試験どうこうなんて関係ない。私は・・・・・・恭文君とケンカしたいんだから。
ありったけで、全力で。私にとってこの約束は、命を賭けたって守らなくちゃいけない約束なんだ』

『・・・・・・んな愛の告白みたいな事言って、いいわけ?』

『にゃははは、またそういう事言う。ねぇ、続きやるんだよね。まだ・・・・・・終わってないよね』



そして爆煙の中から出てきたヤスフミの身体を、蒼い光が包んでいた。

でも、ジャケットのあっちこっちがボロボロ。上半身のジャケット全部が吹き飛んで・・・・・・な、なんか顔が熱い。



『普通、こういう時はギブアップを勧告しない?』



というかアレ、回復魔法のカード? そっか。会話しながら回復してたんだ。相変わらず抜け目がない。

とにかくそんな事を言いながら、ヤスフミはまたカードを取り出す。柄は・・・・・・だめ、よく見えない。



『する気、ないよね。言っても無駄なのは、もう分かってるもの』










でも、分かる。あのカードの絵柄は巨人の騎士が剣を持った絵柄だ。





そしてそれは、ヤスフミの切り札。なんだろ、ちょっとだけドキドキしてきた。というか、顔がまだ熱い。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というかさ、結局私達はこういうのがピッタリなんだよ。こっちの方が楽しいし、分かり合える」

「そうだね」



・・・・・・どんな時でも、ありったけで、全力でぶつかりあって、それを受け止め合う。

そうやって心を通わせていこうって、約束してる。



「・・・・・・なのは」

「うん、馬鹿げてるよ。でも、ここで私のありったけをぶつけないのは、もっと馬鹿げてる」





8年前、初めて模擬戦した時に言ったセリフと全く同じことを、なのはは口にした。



そういや、あの時も復帰直後なのに、エクシード使ったんだっけ。



そう、なのはは言ってる。あの時と同じ・・・・・・いや、それ以上に全力全開で、ぶつかり合いたいと。





「分かってるならいいや。てーか、今の僕は目の前のケンカ以外は興味ないし」

「・・・・・・ありがと」




止めるのが正解なんでしょ。でもね、それは世界や常識の正解であって、僕となのはの正解じゃない。

僕達のの正解は、目の前のバカに付き合うことだ。僕達、そういう付き合い方してんのよ。

友達になった時からずっとね。だからどいつもこいつも、ぐだぐだ抜かさずに傍観者として見てろ。



特にこういう時にごちゃごちゃ口出ししてくる某提督や使い魔とか? うん、ウザいよね。





「じゃあなのは、ここから一つルール変更ね」

「ルール変更?」

「3分27秒だよ」

「・・・・・・え?」



言いながら僕は、右手に持ったカードを前面に放り投げる。



「ここから3分27秒の間に、おのれをぶっ潰すっ! それが出来なきゃ僕の負けって事でいいでしょっ!!」



巨人の騎士が描かれたカードは、僕の前面で時計回りに回転を始める。



≪Standby Ready≫





そして僕は左手から、銀色のベルトを取り出す。それを腰に即座に装着。



なお、形状は電王のベルト。バックルには、赤いケータロスが装着されている。



左手の人差し指でケータロスのエンターボタンを押しつつも、右手で黒のパスケースを取り出す。





「・・・・・・あの、えっと・・・・・・恭文君っ!? それはいくらなんでもちょっと」



当然だけど、驚くなのはの言う事などアッサリ無視して・・・・・・僕はベルトのバックルにパスをセタッチ。



「変身っ!!」

≪Riese Form≫





そして回転していたカードが蒼く眩い光を放つ。その光は、僕の身体を包んでくれる。

ボロボロだったバリアジャケットも含めた全装備は、光の中で一瞬で解除。そこからすぐに再構築されていく。

まず下半身はジーンズではなく、黒のロングパンツへと変わる。ブーツは・・・・・・黒色でリインと同型。



上半身には黒の半袖インナー。その上に白のインナーシャツ。ちなみにデザインは、リインやはやてと同じもの。

その上からまた蒼いジャンパーだ。こちらもデザインが変わって、多少制服然とした装飾が付いている。

そしてジガンスクードも装着。左手だけではなく、同じものを右手に装着する。こちらはカートリッジ無しのただのガントレット。



でも、まだ終わらない。どこからともなく白いマントが現れる。

そして、首元には空色の留め金。それをジャケットの上から羽織る。

最後に上から鞘に納められる形で回転しながら、アルトが現れる。



そのアルトを手に取り、左腰に差す。これでようやく完成である。これが・・・・・・僕とアルトの新しい力だ。





「・・・・・・最初に言っておく」



僕は右手でなのはを指差して、そのままここに強さを刻み込む。

ここから一歩・・・・・・『騎士』としての自分を始めるために。



「僕はかーなーり・・・・・・強いっ!!」





・・・・・・さて、簡単にだけど装備説明。今着ているジャケットはリーゼフォーム。

そして、装着しているベルトはサウンドベルト。数話前にイルドさんからもらったプレゼントは、このベルト。

まずリーゼフォームは、フェイト達の協力の元で作られた新型のバリアジャケット。



僕の今までのジャケットにフェイトのジャケットを組み合わせて、更なる『速さ』を実現したジャケット。

だからところどころのデザインが、フェイトのそれと似てて・・・・・・反応は、察してください。

なお、魔力消費はそのままで多少の全体的な能力向上も行ってる。だから、かなり大変ではあった。



いっそフルドライブという手も考えたけど、さっき言った通り僕はフルドライブを維持出来ない。だから、頑張ったわけ。

そしてサウンドベルトは、大音量で音楽を鳴らしに鳴らしまくるという装備。うん、これだけだよ。

ただし、その効果は使用者のノリ・・・・・・引いては戦闘能力を大幅に強化するというリーサル・ウェポン。



あと、大音量で音楽を流す事で相手はあっけに取られて、戦意を著しく喪失する。

・・・・・・とは、イルドさんの談。なお、実際に実験して効果に関しては保証済みらしい。

僕が言った時間は、これから流れる音楽の時間。それまでにこの女をぶっ潰す。



そしてそれは、絶対に不可能な事なんかじゃない。この女、今までどんだけバカやらかした?

エクシードを使って、砲撃撃ちまくって、射撃撃ちまくって、その上ダメ押しのブラスター。

僕が全力で・・・・・・この女をぶち壊す勢いで僕が奥の手切りまくれば、それは不可能じゃない。



全ては気持ちから。自分の想いからその一歩は踏み出せる。諦めなければ、いつだってここから今は変えられる。





「それじゃあまぁ」



僕は右手を引いて、頭くらいの高さにまで挙げる。それと同時に魔法を発動。

カートリッジを1発使って改めて発動するのは・・・・・・これ。



≪Axel Fin≫



背中に生まれたのは、蒼い大きな翼。なお、リーゼフォーム版のアクセルフィン。性能から色々弄り直して、コレ。

大きな蒼い翼が広がり、僕の周囲に羽が舞い散る中・・・・・・僕は右の指を軽く鳴らした。



「ここからカウントスタートだ」

≪The song today is ”内秘心書”≫





指を鳴らした瞬間にマジで大音量で流れ始めたのは、ONE OK ROCKの曲だね。

というか、名曲だよ名曲。色々エンジンかかってきて・・・・・・ヤバい、楽しいわ。

あ、ちなみにこれに入ってるのは電王関連の曲がほとんどなんだけど、この曲は届いてから入れたの。



いや、最近ONE OK ROCKをサリさんから教えてもらってハマっちゃってさー。二人で入れたのー。





「何この音楽っ!? てゆうかあの・・・・・・えぇっ!!」

「さー、行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「行かないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」










僕は、アクセルを羽ばたかせてなのはに一気に踏み込む。爆発の影響で荒れたビルの谷間を風が駆け抜ける。

そしてアルトを一気に抜き放ち、右薙に刃を叩き込む。なのはは咄嗟にレイジングハートで防御した。

火花が散り、勢いに押されるようになのはが弾かれて壁に叩きつけられる。僕は足を止めて、一気に上昇。





そして、僕を先回りするようにしてレイジングハートの穂先の縮小版みたいなのが・・・・・・え?





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



な、何これっ!? というか今の踏み込みは・・・・・・嘘みたいに速いしっ!!

さっきのエクセリオンのダメージが全くないっ!? ううん、回復魔法は使ってたはずっ!!

・・・・・・ここが恭文君の厄介なところだ。私の予想のつかないものをいつも出してくる。





追い詰めたように見えても、実は追い詰められてるのがこっちなんて言う事もざらで・・・・・・胸が震えた。

多分本気で潰しにかかってる恭文君と勝負した事は、これで三度あるかないかだよ。

だから嬉しい。なんだかんだで優しいから、身内には加減する方だって知ってるから、今の状況が嬉しい。





だから私も、もっと本気を出す。・・・・・・レイジングハートのサポート付きで、私の札の一つを切る。










「ブラスタービットッ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ブラスタービットッ!!」





数は四つ。てゆうか、あのバカいつの間にこんな・・・・・・いや、良い。

ブラスタービットはそれぞれにスフィアを形成して、僕に砲撃をかまそうとしている。

なのははすぐに接近しようとして・・・・・・僕は最高速で突っ込んだ。



突っ込みながらも、蒼い魔力の刃を形成。僕は立ちはだかるブラスタービットに狙いを定める。





「鉄輝」



そのまま、刃を振るってブラスターをスフィアごと斬り裂いた。袈裟に、右薙に、左切上に、逆袈裟に閃光が生まれる。



「繚乱っ!!」










その閃光によって真っ二つにされたビットとスフィアが、僕の後ろで爆発する。

やっぱり速い。ううん、僕の思った通りに反応出来るって言った方が正解かも知れない。

そう言えばサリさんが『今までのジャケットは今のお前には重過ぎる』って言ってた。





それの意味が今一つ分からなかったんだけど・・・・・・そうか、こういう意味か。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「な、なんなのアレっ! あんな加速力・・・・・・!!」



今までの恭文君の加速力じゃない。アクセルが込みでも、確実にそれを上回ってる。

ジャケットが加速力・・・・・・速度重視になってるから? でも、動きを見るに反応が機敏過ぎるような。



≪なるほど、彼ならばこの仕様も有りですか≫

「レイジングハート?」

≪視覚に頼らない知覚・・・・・・空間把握と危険察知に優れる彼なら、あの速度だろうと問題ありません≫

「・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そうだよそうだよっ! これは速度重視は重視でも、恭文君の反応能力に合わせた仕様なんだっ!!

つまりつまり、例えさっきのシチュでも遠慮無く避けられて・・・・・・な、なんていう玄人仕様なのっ!?



「でも・・・・・・それは面白いよね」

≪えぇ≫



この音楽が非常に煩いけど、私はそれでも上に飛び上がった。

飛び上がりつつも、魔力スフィアを20生成。それを恭文君に叩き込む。



「ディバイン・・・・・・シュゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」










今の恭文君なら・・・・・・知覚や反応そのままに動ける恭文君なら、きっとこれも対処されちゃう。





でも、それでもいい。私は今とっても楽しい。六課が始動して・・・・・・ううん、ここ1年はこういう気分、味わった事ないかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・これにはね、リインにヒロさんサリさんとシャーリー」



言いながら、シューターを刃を振るいつつ斬り抜けていく。



「アメイジアに金剛、シグナムさんに師匠とレヴァンティンとグラーフアイゼン」



身体を時計回りに回転させて、目の前に迫っていた4発を真横から右薙に叩き斬る。



「それにバルディッシュと」



そして、僕は全てのシューター斬り抜けて・・・・・・一気に踏み込む。

そしてなのはに向かって袈裟に刃を叩き込んだ。



≪Round Shield≫

「フェイトの想いがこもってんだ」



刃は桜色の丸いシールドに衝突して、火花を散らす。僕はすぐに左に移動。



≪Short Buster≫



今の斬撃は、シールドを発生させるための攻撃。そしてなのはは、予想通りに零距離で砲撃を撃った。

シールドを消した上で放たれた砲撃は虚空を斬り裂き、なのはに確実な隙を作る。



「みんなが力を貸してくれて、初めて生み出せて、始められた」



時計回りに回転して、なのはの左サイドに回り込む。なお、今までよりずっと軽快に。そして速くだ。



「だから・・・・・・!!」



僕は残り1発のカートリッジをロードした上で、右薙にアルトの刃をなのはの背中に叩きつけた。

当然だけど、刃はカートリッジの魔力込みの鉄輝一閃。そのまま、回転の勢いを使って引き斬る。



「絶対に負けらんないんだよっ!!」



なのはのジャケット・・・・・・背中の部分に斬撃が刻まれて、なのははそのまま吹き飛び300メートル先のビルの床に叩きつけられた。



「・・・・・・飛天御剣流、龍巻閃もどき」





そう言って、僕はアクセルを羽ばたかせてからなのはの方に向き直り、一気に踏み込む。

なのはは起き上がって、床から飛び上がりつつもまた僕から逃げる。

というか、距離を取ろうとしているんだね。でも、スピードは僕の方が・・・・・・あれ?



なのはのバカがある程度進んだら振り返って・・・・・・突っ込む体勢を整えた。

再び広がるのは、4枚の翼。そして虹色の杭の切っ先が僕に向けられる。

僕は即座に対処を開始。アルトを逆手に持ちつつ、ジガンのカートリッジを自動排出。





「A.C.S.・・・・・・いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



機動性は向こうの方が上。そしてその優位は更に広がった。というかというか、ズルだってアレ。

フェイトちゃんの真・ソニックみたいに装甲が薄くなったわけじゃないし、魔力量を見るにフルドライブの類でもなさそうだし。

・・・・・・ううん、ズルじゃないか。恭文君が少しずつ鍛え上げた『速さ』も、あの中に込みなんだから。





私達がただ魔法で高速移動するのとは、ワケも質そのものさえも違う。でも、だからって負けられない。

勝利の布石は・・・・・・多分たった一つだけ。一撃、一撃を当てる事に集中するんだ。本当にちょっとの隙に、ありったけを叩き込む。

まずはA.C.S.で零距離を取る。一瞬・・・・・・一瞬でいいんだ。火力は私の方が上。





集中しろ。その一瞬を掴むためには、魔力も何も必要ない。ただ、私の想いだけでいいんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕はカートリッジをリロードした上で、なのはに向かって突撃。

互いに翼を羽ばたかせ、羽を舞い散らせる。

集中しろ。斬ろうと思って斬れないものなんてない。だから、これだって同じ。





なのはの周囲には8発の魔力弾。それと共になのはは突撃してくる。





僕は突撃してくるなのはに向かって、唐竹にアルトを叩き込んだ。










「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」





僕達が交差した瞬間、なのはは周囲に発生させていた魔力弾を掃射した。

でも、それは数発は彼方へと消え去る。ただ、二発は僕に命中。

一つは左肩を掠り、一つはマントの裾の右側に命中して軽く吹き飛ぶ。



だけど、それでも捉えた。なのはのレイジングハートの穂先にある杭を・・・・・・僕は叩き切った。

振り返りつつ、胸元サイズの魔法陣を展開。それに両足を乗せて、なのはの方を見る。

なのはのレイジングハートの穂先の杭は、中程から真っ二つに折れていた。・・・・・・僕はアルトを鞘に収める。



なのはも振り返りつつ、砲撃の準備をしていく。とりあえず抜き打ちで一発ぶちかまされた。





≪Excellion Buster≫

「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」





10メートルにも及ぶ巨大な砲撃。僕はそれを右に動いて、すれすれにかわして突撃。ジガンのカートリッジを3発使用。

なのはは即座に砲撃を切り上げて、右手をかざす。そして手の中にはベルカ式魔法陣が生まれる。

僕はもうなのはの目の前に居て、シールドはすぐにでも展開される。だから僕は・・・・・・アルトを抜いた。



下から上に斬り上げて、なのはの手首を・・・・・・展開されていくシールドの裾を狙って打ち上げた。

手首の装甲とシールドを刃が捉えて、火花を散らす。でも、これでなのはの腕は上がった。

なのはの真上にシールドは展開されて、大きく桜色の円が頭上を守る。でも、それじゃあ意味が無い。



徹も込めたから、これで右手は潰した。それじゃあ次々。・・・・・・フルドライブ。





「閃華」



刃を返して逆袈裟にアルトを叩き込む。なのはは咄嗟に、レイジングハートを胸元で横に構えて盾にする。

レイジングハートと刃が摩擦して、その衝撃でなのはが軽くたたらを踏む。そして、口元が歪んだ。



「一閃っ!!」



なのはは僕の居合い・・・・・・抜きによる瞬間的な斬撃が、二撃目までだって知ってる。それ以上は無理だと知ってる。

だから僕は、三撃目の斬撃をなのはのがら空きな腹に左薙に叩き込んだ。その瞬間、雷撃が腹を中心に迸る。



「な・・・・・・!!」



そのまま、なのはの浮かべる驚きの表情は気にせずに斬り抜けた。空間すら蒼い雷撃によって斬り裂かれる。

なのはは、綺麗に一直線に裂かれた傷口から雷撃に焼かれて、その身を逸らす。



「・・・・・・瞬・極(またたき・きわみ)」





先生が教えてくれた抜き・・・・・・居合いの技、瞬(またたき)。僕が今まで撃てたのは二連まで。

でも、その上があるの。それが今僕が放った瞬・極(またたき・きわみ)。抜きから続く神速の三連撃。

先生が教えてくれた剣術の奥義というか、ひとつの到達点がコレ。



なお、ヒロさんサリさんが六課に来てからの秘密の修行中になんとか完成させた。

いくらブラスターと言えど、限界はある。これで決まってなきゃ・・・・・・マジでSLB使うしかない。

いやいや、いくらなのはでもフルドライブでスタン攻撃込みで倒れないわけが。





「・・・・・・恭文君」



倒れなかったらしい。後ろから、なのはの声が届く。

必死に耐えてるような、意地を張っているような・・・・・・硬い声。



「最後の、一勝負だよ。いいよね」

「・・・・・・もちろん」



互いの残っているカートリッジを、全てロード。それぞれの相棒にその分の魔力が込められ、ロード音が空に響く。



「撃ち抜くから」

「ぶった斬って、我を通す」



その言葉を合図になのはは反時計回りに振り返る。

片手でレイジングハートを腰だめに保持して、零距離で砲撃を撃つ。



≪Excellion≫

「バスタァァァァァァァァァァァァァァッ!!」



僕も同じように振り返りつつ、左薙にアルトをなのはの胸元に叩き込んだ。



「鉄輝・・・・・・一閃っ!!」





蒼い閃光と、桜色の砲撃が交差した。空に刻まれたそれぞれの色が消えた瞬間、僕は前のめりに体勢を崩す。



僕は必死に右足を前に踏み出して、魔法で空中を踏みしめる。



・・・・・・右手のジャケット、全部吹き飛んだ。てーか、カスって倒れる寸前ってどんだけバカ威力なんだよ。





「・・・・・・今日は」



なのはの声が後ろからする。それは、さっきまでの硬い声ではなくて掠れた弱々しい声。

だけど、どこかすっきりしたような声でもあって・・・・・・笑っていた。



「私の、負け・・・・・・かぁ」



そのまま、なのはは下に落ちて行った。そちらを見ると・・・・・・あ、レイジングハートがフォローしてるや。

飛び込もうかとも思ったけど、ゆっくりとどこぞのラピュタの1シーンみたいに落下していって、ビルの上に降りた。



「・・・・・・アルト」

≪はい≫

「音楽、終わるね」

≪えぇ≫



ちょうど最後のサビが終わって、もうあとちょっとって感じ。とりあえずは・・・・・・僕の勝ちで、いいよね。



≪ま、あなたにしてはまぁまぁでしょ。お疲れ様でした≫

「うん、お疲れ様。でも・・・・・・この後、荒れるよねぇ」

≪荒れるでしょうね≫










かくして、試験は僕の勝利で終わった。終わったって言ったら終わったの。





なお、結果に関しては・・・・・・次回に続きます。てゆうか、疲れたー。




















(第35話へ続く)




















あとがき


恭文「というわけで・・・・・・消えればいいのに」

あむ「恭文、ストップっ! いきなりトラウマ発現させるの無しだからっ!!」

恭文「気にしちゃいけない。・・・・・・えー、一気に仕上げた34話ですよ。改定前だと28話だね」

あむ「とりあえず、FS最大の魅せ場は終了だね。あとはヴェロッサさんが大変なだけだし」

恭文「そうだね。・・・・・・というわけで、本日のお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。それでさ、流す曲とかも変わってるんだよね。あとは戦闘描写も」





(展開はともかく、ほぼ書き直しです。というか、使えたところあんまなかったかも)





恭文「どんだけ問題があったんだろうって話だよね。
それであれだよ、またとまコンを見て自分の未熟さを思い知ったわけでしょ」

あむ「・・・・・・あぁ、言ってたね。改訂版の改訂版書きたいとかって泣いてたしね。
まぁ、それをやるとキリがないし、そのモチベーションを他の話に持って行ってもらうとして」

恭文「A's・Remix二期で? 『あなたが好きですっ! 王子様っ!!』で?」

あむ「そっちはやんなくていいからっ!! ・・・・・・でも、ようやくリーゼフォームが出たね」

恭文「そうだねー。ドキたまにも繋がるようにするから、デザインとかは変わってないけど」





(ちなみに、例の仮面を装着して表情から動きを読ませずに戦うという方法もありました。
るろ剣の般若がやってたやつですね。ただ単に趣味だけの話じゃないのです)





恭文「ちなみに、18話でスバルがあっさり僕に瞬殺されたのも仮面効果のせいだから」

あむ「え、マジっ!?」

恭文「マジ。機械兵器ならともかく、人間相手でアレは多分初めてだったろうしね」

あむ「・・・・・・うん、そうだよね。テレビでもみんな覆面とかしないで、堂々と顔見せてたしね。
てゆうか、なのはさん達はマトモだから、訓練でアンタみたいな真似は絶対しないしね」

恭文「だからどいつもこいつもアッサリジュンイチさんに負けるのよ」

あむ「それGMの話じゃんっ! 向こうの話読んでないみんなは、色んな意味でさっぱりだからっ!!」





(詳しくは、リンクからモリビト28号様のサイトへどうぞ。なお、100話以上あります)





恭文「てゆうか、曲はアレだね。最近作者がハマっているONE OK ROCKだよ」





(ちなみに作者はDTBのMADで知りました。内秘心書が使われてるアレですね)





恭文「ちょうど某サイトでライブ映像とか、主要な曲を集めたのがアップされててさ。
結構聞いてるんだけどいいよねー。基本アニソン縛りな作者には、衝撃的だよ。でさ、あむ」

あむ「うん、なによ」

恭文「僕、天神乱漫とのクロスすると、ゆかなさんのキャラとラブラブ出来るんだ」

あむ「うん、とりあえず黙れっ!? てゆうか、ゆかなさんのキャラならリインちゃん居るじゃんっ!!」

恭文「いや、聞いて? そのキャラがジガンレベルでドM発現しまくるのよ? 『いじめて』ってサイン送るのよ?
ゆかなさんボイスでスタイル抜群の巨乳キャラで『いじめて?』なのよ? もうこれは乗っかるしか無いでしょ」





(あの妖精はどっちかって言うとSだしねー)





恭文「というわけで、天神乱漫クロスやります」

あむ「だから落ち着けー! 作者さんがまた頭抱えてるからー!!」





(その前にディケイドクロスだよっ!? その前にディケイドクロスをそろそろ頑張らなきゃ、さすがにダメだからっ!!)





恭文「分かった。ならディケイドと天神乱漫のクロスで」





(出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! マジでクロスオーバーは大変なんだから、勘弁してー!!)





恭文「えー、じゃあどうやってあの子とラブラブするのさー。天神乱漫の逆移植版を待ってる余裕は僕にはないよ?」

あむ「・・・・・・逆移植版?」

恭文「うん。ようするに(うったわれるーものー♪)という事なんだ」





(次の瞬間、現・魔法少女が顔を真っ赤にして蒼い古き鉄の胸ぐらを掴む)





あむ「恭文、それ以上言うな」

恭文「いや、だからそうなるとゆかなさんゆかなさんのキャラが」

あむ「だからそれ以上言うなー! アンタマジバカじゃんっ!? そこ期待するっておかしいからっ!!」





(まぁゆかなさんはさすがに出ないだろうけど・・・・・・作者もかなり期待を)





あむ「だからアンタもするなー!!」





(えー。だってそのためにPSP版を買うかどうかかなり迷ってて)





あむ「アンタら二人共バカじゃんっ!? てゆうか、エロ過ぎだし」

恭文「あむ、男ってこういうもんよ? ね、作者」





(うんうん)





あむ「ふざけんなー! てゆうか恭文、アンタがバカなせいでこんな拍手来てるんだよっ!?」





(※ IFゆかな「恭文君。私とフェイトちゃんどっちをとるの? 嘘はつかないでね……」
と言い恭文に迫る電波を受信)





恭文「あ、ゆかなさんです。もう僕はゆかなさんの婿だから。そしてゆかなさんは僕の嫁だから」

あむ「即答するなー! アンタまずこんな拍手が来た事を疑問持とうよっ!!
こんなSS他にないよっ!? 現実に居る人とのIF絡みの拍手なんて、絶対ないからっ!!」





(なお、マジもんで来ました)





恭文「つまり、これは読者が望んでるんだよ。というわけで作者、頑張ろ?」





(だから頑張れるかボケっ! てゆうか、マジでこんな痛いIFは書けるかー!! 泣いて謝ってでも拒否するわっ!!)





あむ「作者さんの言うとおりだしっ! てゆうか、誰も望んでないしっ!!」

恭文「嘘だよ。だって僕は望んでるから」

あむ「アンタだけじゃんっ! ほかは全員アウトなのっ!! ・・・・・・とにかく、本日はここまで。
お相手はこのバカをどうすれば止められるのかをマジで聞きたい日奈森あむと」

恭文「僕のゆかなさんへの愛は永遠無敵。蒼凪恭文でした」

あむ「だから黙れっ!? もうそれだったらフェイトさんとラブラブしててよっ! それならまだいいからっ!!」

恭文「いや、フェイトはフェイトで僕の永遠の嫁だからいいのよ。で、ゆかなさんはまた別で」

あむ「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(コイツは間違いなくバカだと、その場に居た全員が思った。でも、修正は不可能だったりする。
本日のED:ONE OK ROCK『内秘心書』)










恭文(試合終了後)「・・・・・・ゆかなさん、2月に大阪でライブっ!? そうだそうだ、すっかり忘れてたっ!!」

古鉄≪あなた、最悪ゾーン突入しまくりでしたしね。で、行くつもりですか。
というか、試合終わった直後にブログチェックしてそこですか≫

恭文「もちろん。それでそれでー、CD買って予習して・・・・・・うふふー楽しみだなー♪」

フェイト(迎えに来た)「・・・・・・ヤスフミ、あいかわらずゆかなさん好きなの?」

恭文「うん。だってだってーゆかなさんって美人で綺麗で演技も歌も上手でもうすごいタイプでー♪」

フェイト(なんだろ、ヤスフミの入れ込みようはその・・・・・・かなり知ってたよ? それはもう凄かったから。
ファンクラブにも入ってたし、誕生日イベントやライブにもほとんど顔出してる感じだし・・・・・・でもなぁ)

恭文「・・・・・・あれ、フェイト? なんでちょっと視線が厳しいのさ」

フェイト(なんだろ、もやもやする。だってその、これだって余所見だよね? 確かにゆかなさんが素敵なのも分かるよ。
私の目から見ても、綺麗で素敵な女性に見えるよ。だけどあの・・・・・・言う権利ないのも分かるけど、やっぱりもやもやする)

恭文「あの、フェイト?」

フェイト「ううん、なんでもない。あの・・・・・・ヤスフミ」

恭文「何かな」

フェイト「ちょっと帰りに寄り道。なのはの方は大丈夫だし・・・・・・また、二人でお話したいんだ。いいかな」

恭文「うん、大丈夫だけど」

フェイト「あと、ゆかなさんが好きなのも分かるけど・・・・・・ごめん」

恭文「どうしていきなり謝るっ!? てゆうかフェイト、なんでどんどん落ち込んでくのさっ! 意味分からないってっ!!」










(おしまい)




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