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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第74話 『Strike Arts/魔法少女、己の拳と向き合う』



キバットV世「しゅごしゅご〜♪」

クロノ「いきなりだが『蛇』とは、爬虫綱有鱗目ヘビ亜目に分類される爬虫類の総称である」





(・・・・・・え?)





クロノ「足を持たない長い体、毒を持つ身体、脱皮等の特徴から『死と再生』を連想させる。
その異常な生命力から、古来より蛇を「神の使い」とする宗派も多い」

キバットV世「にょろ〜ん。って擬音は、蛇にゃ可愛い過ぎかもな。
・・・・・・いや〜クロノ、バッチリだったぜっ! 今回、来てくれて本当にありがとうな」

クロノ「別にかまわないさ、他ならない君の頼みだし何より管理局の任務よりずっと楽な物さ。
さて・・・・・・そろそら帰らなくて」





(―――キィィィィン!!)





キバットV世「おいクロノっ! この音はっ!?」





(そう言って黒の艦長、懐から蛇を型取った金の紋章が描かれた紫のカードデッキを取り出す)






クロノ「あぁっ! 分かっているっ!!」





(それを正面に掲げる。すると、カードデッキからスパークが溢れる。
そえは腰部分に集束。特徴的な稼動音と共に、銀色のベルト――Vバックルが展開され、そして)





クロノ「KAMEN RIDE(カメンライド)!!」





(声を張り上げて、カードデッキをVバックルに装填。装填されたバックルが回転する。
それと同時に、紫の二重のサークルを含むエネルギーの球体が、クロノの身体を包む。それが身体の周りを一周し、球体が弾け飛ぶ)




クロノ「よし。・・・・・・キバット、行って来るっ!!」





(・・・・・・そこに居るのは紫色の戦士――仮面ライダーストライクッ!!
そう言い、黒の艦長は鏡の中に入って行った)





キバットV世「おうっ! キバって行って来いっ!!」

恭文「・・・・・・『キバって行って来い』じゃないよっ! 何やってるっ!?」

キバットバットV世「なにって、OPの前説乗っ取ってるんだが」

恭文「乗っ取るんじゃないよっ! このバカっ!! てゆうか、アレドラゴンナイトのだよねっ!?
ドラゴンナイトでクロノさんの中の人が変身したアレでしょっ! しかも敵役っ!!」





(詳しくは『仮面ライダードラゴンナイト』で検索してみてください)





キバットバットV世「やっちゃん、良く知ってるなー。いや、必ず拾ってくれると信じてはいたが・・・・・・気づいてくれると嬉しいなー」

恭文「嬉しがらないでっ!? てゆうか、早く今回の話を」

キバットバットV世「あ、無理だ。もう時間残ってないし」

恭文「なんですとっ!? いやいや、これいいんかいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、前回のあの非常にアレな時間から少し経った。というか、二日だね。

結局あのノリで、オールでお誕生会だもの。そりゃあ僕達だって疲れて丸一日寝てたりするさ。

そんな事してる間に、濃厚な夏休みはあと11日となってしまった。





というか、アレだね。空海がラッキースケベでリースが真っ赤になりまくっていたのにはびっくりした。





まぁリースが空海を見ると顔を真っ赤になったりしつつも・・・・・・本日はここに来ました。










「・・・・・・うわぁ、広いね」





あむが感嘆とした声で見渡すのは、ミッド首都にある建物の中。

ここはストライクアーツの公共の練習場。市民が自由に使っていい公共施設なの。

なお、今僕は建物と言ったけど・・・・・・実はここ、公民館なの。



そんな場所に立派な施設が作られているところからも、ストライクアーツの普及率の高さを窺い知れると思う。





「てゆうか、あっちでもこっちでもバシバシバシバシやってんな」

「ホントだね。それで・・・・・・みんな楽しそう」



空海と唯世も、瞳を見開いてその様子を見てる。



「てか、ちゃんとしたトレーニング機材まで置いてあるのかよ。また本格的だな」

「空海、楽しそうだね」

「そりゃそうだろ。いや、恭文サンキューな。マジで連れて来てくれて嬉しいわ」

「いいっていいって」



そして空海は、体育会系だから余計にそうなるっぽい。ご覧の通り目をキラキラさせてはしゃぎまくってる。



「・・・・・・ここに居る者達はみな、こころが輝いているな」

「みんな、あの学校に居た子ども達みたいにストライクアーツが好きなんだな。だからそうなんだよ」










・・・・・・今日はヴィヴィオと一緒に、あむと唯世と空海を連れてここにやって来た。

ちなみに、他のメンバーはそれぞれに行きたいところへ引率者込みで行ってる。なので、別行動。

フェイトとリインはりまとややを連れて、同じく首都でウィンドウショッピング。





ディードとリースは海里となぎひこを連れて、郊外にあるベルカ式剣術道場の見学。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さー、今日はお買い物いっぱいするですよー!!」

「おー! ミッドの流行の服とか、色々買うんだー!! そのためにお小遣いここまで貯金してたんだものー!!」

「そのために、先月からお菓子も我慢して節約してたでちもんね。いっぱいお買い物出来るでち」

「うんっ!!」



あはは・・・・・・リインもややも、テンション高いなぁ。・・・・・・あ、お小遣いは事前にこっちの貨幣に変えているのであしからず。

さすがに地球の貨幣をそのままっていうのは、無理なんだよね。いや、一応みんな分かるんだけど・・・・・・それでもなの。



「やや、リインも何言ってるの?」



そして、テンションが高いのはりまとややだけじゃない。

今、私の隣で右拳を強く握り締めて瞳を燃やしているこの子も同様。



「まずはミッドのお笑い文化を勉強するために、お笑いライブを見に行くのよっ! だからそんなの後っ!!」

「それで爆笑爆笑ー! クスクスクスクスー!!」

『なんかエンジンかかってるっ!?』

「あの、りま? ちょっと落ち着こうよ。ほら、周りの人達も目も・・・・・・うん、聞いてないよね。私分かってたよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でも、剣道場なんてあるんですね。僕ちょっとびっくりです」

「お話を伺う限り、地球にある剣道場とはまた違うのですよね?」

「はい。古代ベルカの戦技は、近代ベルカ式の発展と共にここ10年でかなり見直されてきていますから」

「そういう動きのせいで、こっちにも剣技の研究と研鑚を目的とした施設があるんです。
今回私達が見に行くのも、そんな施設のうちの一つですね」



僕と三条君を先導するように歩いているディードさんとリースさんが、視線を前に向けたままそう言った。

ちなみにここは、なのはさん宅よりもうちょっと都心から離れたところ。木々が生い茂る並木道。



「ナギー、近代ベルカ式ってなんだ?」

「・・・・・・リズム、戦技披露会の時に教えてもらわなかった?」

「蒼凪殿やスバル殿にヒロリス殿、後は以前お会いしたシスター・シャッハが使う魔法術式だな」





ここまでに何回か出ている古代ベルカ時代に発展した魔法術式で、古代ベルカ式というのがある。

それがシグナムさんやヴィータさんが使う魔法術式だね。ただ、これは一度途絶えてしまった。

遠距離攻撃を犠牲にして近接戦闘に特化し過ぎた仕様は、技術進歩にそぐわない部分がたくさんあったから。



でも、ここ10年でその古代ベルカに、フェイトさんも使うミッド式を組み合わせた術式が生まれた。

それが近代ベルカ式。この術式は、近接・個人戦闘に特化しつつも遠距離攻撃も視野に入れた術式。

だから恭文君みたいな、近接寄りのオールラウンダーも多く居る・・・・・・とは、なのはさんの談。





「・・・・・・あぁ、そうだそうだ。思い出したぜ。いや、あの告白と誕生会がどうにも衝撃的で忘れちまってた」

「あぁ、それでか。ならしかたないな。拙者もそれなら分かるぞ」

「しかし、相馬さんには悪い事をしてしまいましたね。それにスクライア司書長にも」

「確かにそうだよね。結果みんなで煽り過ぎちゃったわけでしょ?」

「えぇ」





まぁさ、僕も本当に驚いたわけだよ。だっていきなり告白だしさ。

それでまぁ、事情も恭文君達から聞いたけど・・・・・・うーん、どうしよう。

なのはさんも反省はしてるんだよ。いきなり殴っちゃったしさ。



出来ればなんとかしたいけど、ここで介入は・・・・・・絶対モメるコースだよねぇ。





「ですが」

「うん、なにかな」

「俺は藤咲さんが剣術に興味があるとは思いませんでした」

「いや、興味っていうか・・・・・・ねぇ?」










色々気を使っただけなんだけど。フェイトさん達の方について行く事も考えたけど、ちょっとなぁ。





こういうのは女の子だけの方がいいかなーと思って、入り辛かったんだよね。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕はなぎひこまで剣術関係に興味あるとは思っていなかった・・・・・・けど、裏があった。

なぎひこ、あむに気を使ったのよ。ほら、この編成だと唯世と一緒に行動出来るから。

ちなみに空海にそんなスキルはないので、そこは気にしないで欲しい。うん、してはいけないね。





というわけで、僕達はここで一日楽しくストライクアーツ三昧です。










「てゆうかヴィヴィオ、コロナは?」

「うーん、そろそろ来るはずなんだけど」

「コロナ? 恭文、ヴィヴィオちゃん、それ誰かな」

「あ、コロナは」



ヴィヴィオがあむの方を見上げて説明しようとした時、僕達の後ろから声がかかった。



「・・・・・・ヴィヴィオちゃーんっ! 恭文さんー!!」





僕達がそちらを見ると、ツインテールの髪の子が小走りで走ってくる。

身長はヴィヴィオより少し高いくらい。オレンジのスカートにストライブのシャツ。

上には淡い黄色の半袖の上着を羽織った、おとなしい印象の女の子。



なお、髪をツインテールにしている髪留めは、青のストライブの包装に包まれた丸いキャンディーの形。





「あ、コロナー!!」



それでヴィヴィオが、その子の方に走りよって両手を繋ぎ合う。



「ちょこっとだけ久しぶりー」

「うん、久しぶりー。ヴィヴィオ、背伸びた?」

「コロナ、さすがにそれはないよー」



うーん、相変わらず仲良しだなぁ。でも、百合には走らないで欲しいとかってちょっと思った。・・・・・・ママみたいに。



「蒼凪君、あの子は?」

「あ、ヴィヴィオの同級生。僕やフェイトとも顔見知りで、あの子もストライクアーツやるんだ」

「なるほどな。じゃ、あの子も今日は参加か」

「そういう事」



夏ももうすぐおしまい。だから、残り少ない時間をいっぱい堪能しようという努力が必要。

だから僕達は、今日はここでバトルしまくるのである。



「あ、ところでヴィヴィオちゃん。あの人達は」

「恭文のお友達だよー。あむさんに唯世さんに、空海さん」

「ふーん、そうなんだ。なら・・・・・・みんなの周りに居る小さな子は?」



コロナがそう疑問を顔に浮かべながら言った瞬間、またまた僕達の表情が引きつったのは気のせいじゃない。



「え? あの、小さな子って」

「ほら、たくさん居るよね。うーん、ユニゾンデバイスかな。あ、みなさん魔導師とか」

「コロナ、しゅごキャラ見えてるのっ!? わー! ヴィヴィオと一緒ー!!」

「・・・・・・恭文、もしかしてボク達はまたアレかな? あの説明パート?」

「ミキ、正解だよ。でもまぁ・・・・・・そこの辺りは『かくかくしかじか』で済ませようか」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第74話 『Strike Arts/魔法少女、己の拳と向き合う』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



えー、それではストライクアーツについて、少しおさらいだよー。ヴィヴィオと一緒に振り返ろうー。

ストライクアーツというのは、ミッドで今広まっているスポーツ系格闘技。あ、魔法も込みのクラスもあるの。

拳と蹴りの打撃技や関節技に投げ技は、危険過ぎる場合を除いて基本的に自由。





専門用語なども色々あるけど、ここはまぁ・・・・・・いいよね?

それで現在、ヴィヴィオはみんなと一緒にお着替え中。それで念話でコロナに事情説明。

あ、コロナもヴィヴィオと同じ魔法能力者なんだ。だから問題無し無し。





まぁ、コロナは・・・・・・かなりびっくりしてる。着替えは続けてるけど、それでも動きが若干鈍い。










”・・・・・・ヴィヴィオちゃんや恭文さんが言うならまぁ・・・・・・本当、なんだよね”



トレーニングウェアを上から羽織って、コロナが振り返りながらあむさんの方を見る。

あむさんはもう着替えバッチリで、楽しそうにランちゃん達と話してる。



”でもあの、かなりびっくりだよ”

”うん、ヴィヴィオも最初見た時同じだったから分かるよ”



というか、コロナがしゅごキャラのみんなが見えてる事もびっくりしたよ。

ということは、コロナにもこころのたまごがあるのかな? それも、しゅごたま。



”あ、でもでも・・・・・・基本的に内緒だよ?”

”分かってる。そこはさっきも教えてもらったし、大丈夫だよ”

”ありがと、コロナ”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



白の半袖シャツに黒のインナーとスパッツ。それにインナーと同じ色の薄手の指出しグローブと膝までの丈で前面を覆う形のブーツ。

ただ、ブーツはこれ・・・・・・底が無いんだよね。恭文は『安全対策』って言ってたっけ。

底が厚いと、それだけで凶器に成り得るらしいから。それで今のあたしの服装が、ストライクアーツのトレーニングウェア。





てゆうか、この靴はこう・・・・・・貧乏な人みたいだよね。いや、そこは真面目に思うの。





だって、底も臑の後ろ側も無いしさぁ。どんだけ頑張って履き潰したのかって話だよ。










「・・・・・・お、出てきた出てきた」



更衣室を出ると、あたし達とほぼ同じ格好の恭文と空海と唯世くん。

・・・・・・あぁ、唯世くん可愛いよー! ちょっとおどおどしてるところがまたキュートっ!!



「・・・・・・あむちゃん、ヨダレヨダレ」

「これだけ見ると、ヒロインに見えないですぅ」

「スゥ、それ今更だと思うな」



うちの子達がなんか言ってるけど、あたしはなーんにも聞こえない。

それで・・・・・・恭文があたしの事、ジッと見てる。



「・・・・・・あむ」

「何かな」

「やっぱ体型的にヴィヴィオやコロナと変わらないね。お姉さんなのにまったいら」





その次の瞬間、あたしは右足を恭文の腹部目がけて叩き込んでいた。

なお、最近ヴィヴィオちゃんに基本的な事を教わったので、蹴りも軽くパワーアップしてる。

いつもだったら、当たってた。普通なら当たってた。



でも・・・・・・それはあっさりと避けられた。あたしはそれに目を見開く。





「・・・・・・へ?」

「あむ、やっぱ甘いね」



恭文はあたしの蹴りを身体を右に捻ってすれすれで避けてた。



「そんな蹴りじゃ、そこら辺の枝一つ落とせないよ」



それで左手を伸ばして、あたしの足首を掴んでくる。



「ちょ、なにし・・・・・・あれ、動かないっ!!」



な、なにこれっ!? 全然足引けないしなんか力強いし・・・・・・だめー! なんかバランス維持してるのがやっとー!!



「てゆうか、なんで当たらないのっ!? いつもならばしーってっ!!」

「・・・・・・いや、日奈森。そりゃ恭文の奴が当たってやってるからだろ」

「はぁっ!?」

「お前、よく考えてみろよ。恭文は戦闘のプロだぞ? 基本トウシローのお前のツッコミを、避けられないはずがないだろ」



空海にそう言われて、頭の中が驚きでいっぱいになる。た、確かにその通りだ。そうだよそうだよ、そうなるよね。

それで恭文の方を見たら・・・・・・あぁぁぁぁぁぁっ! なんか自慢げに頷いてるしー!!



「まぁいつもはボケるための対価として甘んじて受け入れてるけど、今日はそういうわけにもいかないんだよね」

「なんでっ!!」

「あむ、今日は格闘技を練習しに来たんでしょ? だったら、僕が避けても当てられるようにならなくちゃ」



ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! さも当然な顔してそういう事言う前に、あたしにセクハラしないって考え方はないわけっ!?



「こりゃ、あむも唯世もまずは初心者コースかな。空海、空海もそっちの方がいいよね?」

「そうだな。まず基礎から覚えていきたいし・・・・・・うし、それで構わないぞ」

「こらー! あたしを無視して話進めるなー!!
てゆうか、離してくれないっ!? あたし動けないじゃんっ!!」

「あむ、何言ってるのよ」



そう言うと自分の後ろに居る空海の方を向いていた恭文が、あたしの方を呆れた目で見始めた。



「こういう場合は即座に左足を軸に跳躍。右足を曲げつつも僕の手元を狙って蹴りだよ」

「はぁっ!?」



それはアレですかっ! あたしにここでカウンターをかませと言っているわけですかっ!!



「もしくは跳びかかりつつも首元掴んで、体重を使って相手のバランスを崩してから関節技だね」



やっぱりそういう方向かいっ! なんか話続いちゃったしー!!



「あー、首元だったらきっと取れるよねー。でも、即でやらないとさっぱりだよ」



あ、なんかヴィヴィオちゃんまで乗ってきてるしっ!!

てゆうか、ヴィヴィオちゃんまであたしを『仕方ないなぁ』って目で見ないでっ!?



「あむさん、だめですよ? 返し技はちゃんとあるんですから、やらないと」

「そうだぞ、日奈森。なんかそういう事らしいから、もうちょっとしっかりしないとダメだろ」

「いやいやっ! アンタ達あたしが初心者だって事忘れてるよねっ!?
あたしそんな事出来ないしっ! そんなの絶対に無理だしっ!!」

「・・・・・・全く、これだからゆとり世代は」



言いながら、恭文があたしの足を掴んでいる手を徐々に上げていく。



「・・・・・・やめてー! なんか股間が痛いのー!!」

「あむさん、開脚はやりましたよね? 大丈夫、それくらいのペースならいけますいけます」

「無理っ! なんて言うか無理だからっ!! ヴィヴィオちゃん、あたしに一体何求めてるっ!?」

「えっと、ヴィヴィオ的には今日の内に魔法無しで恭文を倒せるくらいになってもらおうかなーと」

「それ確実に無理コースじゃんっ! ・・・・・・痛い痛いっ!! 真面目に痛くなってきてるしっ!!」



て、てゆうか・・・・・・これって唯世くんの前で開脚っ!?

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! そんなの恥ずかしいしー!!



「あむ、だからどうしてすぐ諦めちゃうの? 諦めたらそこで試合終了って、安西先生も言ってたでしょ。
大丈夫。あむなら外キャラ全開で、今日の間にストライクアーツのトップ取れるよ。バンテリンあるよ」

「いや、誰それっ!? そしてバンテリンって一体なにっ!! なにより外キャラでトップ取っても意味ないじゃんっ!!」



・・・・・・だから首を傾げるなー! くそ、絶対後でぶん殴ってやるー!!



「てゆうかマジやめてっ! あたし恥ずかしくて死ぬー!!」

「日奈森、頑張れ。俺は応援してるぞ」

「空海、アンタも止めてっ!? あと、そんなガッツポーズいらないからー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あぁ、まただ。また日奈森さんと蒼凪君が仲良さそうにしてる。というか、実際仲良いんだよね。

マッサージし合っても平気だし、この間のマリアージュの一件でも日奈森さん・・・・・・蒼凪君に抱き抱えられてた。

なのに平気な顔してたよね。というか、普通に嬉しそうだったよね。あれ、なんかまたモヤモヤする。





僕、どうして日奈森さんを見ているとこう・・・・・・こんなにモヤモヤするんだろ。おかしくないかな。

なんかこう、日奈森さんが蒼凪君と仲良くして欲しくないように感じてしまう。

・・・・・・って、だめだよね。僕達はその、友達で仲間なんだから。そうだ、きっとこれでいいんだ。





いや、良くないんじゃないかな。だって蒼凪君には、フェイトさんとリインさんと歌唄ちゃんという婚約者が居るわけだし。





でも、日奈森さんの友達付き合いをあれこれ言うのもきっと違うし・・・・・・うーん。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「え、えっと・・・・・・ヴィヴィオちゃん、あの唯世って人がこう・・・・・・怖いんだけど。なんだかぶつぶつ呟きまくってるし」

「コロナ、気にしない方がいいよ? 恭文曰く『いつもの事』らしいから」

「いつもの事なのっ!? アレっ!!」

「さ、それじゃあまずは初心者コースから始めるよー! おー!!」

「お、おぉ・・・・・・?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さてさて、あむちゃんはみんなと一緒に初心者コースで基本から練習だよー」

「というか、初心者コースって何やるんだろ。格闘技だし・・・・・・こう、構えからとか?」

「それではぁ、みんなの様子を見てみましょう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「はーい。それじゃあ次は突き。・・・・・・はっ! はっ!!」

『はっ! はっ!!』





インストラクターの先生の動きを真似るように、初心者コースの人達が正拳突きをする。

鳴り響くリズミカルな音楽に乗せて、さっきから屈伸などのストレッチも込みで動き続けてる。

大人も子どもも混じっているのは、特に子どもを対象としたものではないから。



なにより、夏休みだしね。子どもと付き添う形で参加って人も、結構居るんでしょ。で、僕は別口。



その様子を見つつ、自分でストレッチの最中。ミキ達も、僕と一緒に居る。





「恭文、アレはなんだ?」

「あー、準備運動。ほら、前にエクササイズ的なものもあるって話さなかった?」

「・・・・・・おぉ、そう言えばそうだったな。では、アレがそうなのか」

「そうそう。準備運動もやりつつ、基本的な動作も楽しみながら習得。初心者コースの要だね」





もちろん軽めの組み手とかも初心者コースではやるけど、それは基礎の基礎が終わってから。

もっと勉強してみたいって人は上のコースに行けばいいし、これで十分って言う人はエクササイズ代わりにやってもいい。

こういう懐と間口の広さが、ストライクアーツという競技を世の人々に受け入れられている要因なのよ。



もうちょっと言うと、自由がある。入ったからと言って、トップクラスを目指す必要のない気楽さがある。

多分人々に広く親しまれて浸透していくスポーツや文化というのは、なんでもこういう部分を持ってるんだよ。

ただ、ストライクアーツを純粋な武術と考えると、これはあまりいい要素ではないんだけどね。



そうなると、どうしても質の低下が起きやすいから。間口が広いという事は、誰でも入れる。

資質どうこう意気込みどうこうは抜きにして、誰でも。これは一つの問題でもある。

だからこそ古来より武術、それを研鑚し後世に伝えていく事を目的とした流派の主は、閉鎖社会を形成する。



それは全体的な質の低下と自身の流派が掲げる看板を守るために、どうしても必要な事。

例えばその流派の門下生が弱くて、どこかの対外試合なり野試合などで負けるとするよね?

そうなると、他の人間が鬼みたいに強くても流派全体が『弱い』と言われかねない。



だから、どの流派も門下生を強くしようとする。出来ない奴は、切り捨ててしまえというところも少なくない。

こういう世界はね、メンツってのが大事なのよ。命よりなにより、メンツが大事。

それを守るためには、今のストライクアーツみたいな事は出来ないの。だから門戸を狭くするの。



それにより資質があると思った人間だけを少数・・・・・・場合によっては一人とかだけしか入れない。

そしてその一人に、他の連中にかけてる分の時間だけかけれて強くしたらどうなる?

誰にも負けないくらいに強くしたら。そうなったら、その流派のメンツはいい感じで保てるのよ。



この辺りは、以前なぎひこの家の話をした辺りと似てるね。技能の質を保つために、少数精鋭の方式を取る。

ただ、ストライクアーツは武術というよりは、みんなで楽しめるスポーツだもの。

考案した人だって、『家族みんなでレジャーとして楽しめるような、そんな競技になって欲しい』って言ってるくらいだし。





「では、それより上のクラスはどうなるのだ?」

「とりあえずは本格的なスパーリングしたり、あっちこっちでやってる大会に出たり? あー、それで思い出した。
なんかプロ的な協会や体制を作って、ミッドのオリンピックの正式種目にしようとする動きもあるらしいの」

「え、ミッドにもオリンピックってあるのっ!? 私ちょっとびっくりなんだけどっ!!」

「あるのよ。僕も初めて聞いた時はホントにびっくりしたけどね」



なお、趣旨どうこうも地球と同じ。ここまで来ると、実はミッド人の祖先は全員日本人だったんじゃないかとか疑ってしまう。



「それで恭文」

「なにさ王様、らしくもなく改まっちゃって」

「・・・・・・すまぬ」



そして更にらしくもなく、謝ってきたし。



「だから、なぜ謝る」



なお、ストレッチしているみんなを応援しているキャンディーズやダイチにシオンには聞こえない声で。

僕はみんなに視線を向けたまま、ストレッチを一旦止めて王様の話を聞く事にした。



「お前は唯世に力を貸してくれているのに・・・・・・あのバカ、未だにお前もそうだが家臣達に話す勇気が出ないらしい」

「・・・・・・あの事?」

「あぁ、あの事だ」



いつぞや僕がツッコんだ唯世と歌唄と猫男の関係の話なのは、もう言うまでもないと思う。

確かに、歌唄との決戦前に答えは提示された。でもそれはきっと、一部分だけだ。



「確かに以前聞いた話だけだと・・・・・・僕もちょっと納得は出来ないかな」

「やはりか」

「うん。だってあの話には、三人が仲が良かった事だけしかないもの。
どうして唯世があそこまで猫男を毛嫌いするのかが、全くない」





これがさっき話した一部分以外のところ。唯世と猫男と歌唄の関係を語る上で欠かせないはずのキーワード。

そして、唯世にとっては相当に重い傷となっている部分。だから僕も今まで迂闊に触れられなかった。

ただ、今まで唯世を見ていて、いくつか気づいた事がある。一つは歌唄との関係。唯世、歌唄は嫌ってない様子なの。



イースターのあれこれで敵対こそしていたけど、猫男みたいに感情的になって排除しようとする程じゃない。

だからこそ、先日の打ち上げ会でもまぁまぁ仲の良い感じで談笑はしていたのよ。

つまりこの傷には、歌唄は関与してないのかなぁ・・・・・・とは、ちょっと思ってたり。



単純に猫男と唯世との間に何かが起こって、それが色んなあれこれに繋がってると思うんだ。





「たださ、やっぱり無理には聞きたくないんだ。だからキセキ、別に気にしなくていいよ」

「しかし恭文、さすがに僕もこのままでは」

「僕だって人を殺したって話す時・・・・・・それなりに勇気が必要だった」



キセキの言葉が止まった。横目で視線をやると・・・・・・軽く目を見開いて、驚きながらも納得した様子だった。



「・・・・・・そういうもんだよ。傷は、罪は消えたりなんてしないから。ただ痛くなくなるだけ。ただ風を受けても平気になるだけ。
でも、触れられたらやっぱり痛い。その傷を負った時の気持ちまで一緒に思い出して、立てなくなっちゃう人だって居る」



例えばいつぞやのフェイト、例えば僕がこれまで見てきた色んな人達。

もちろん僕自身の事も含めて、そう思うんだ。傷は・・・・・・悲しみは、やっぱり消えないんだって。



「・・・・・・そうか。すまん、余計な話をしたな」

「別にいいよ。ただまぁ」

「なんだ?」

「いや、キセキが中々に宿主思いだって言うのは分かって、ちょっと安心してるわ」



僕がそう言うと、キセキが鼻で笑いながら少し呆れた顔をした。



「全く・・・・・・お前は何を言っている。僕達しゅごキャラはそういうものだ。前に説明しなかったか?」

「うん、そうだった。大丈夫、ちゃんと覚えてるから。それと王様」

「なんだ?」

「申し訳なく思ってるなら、一つお願いを聞いて。・・・・・・唯世が感情的になったら、叱りつけてでも止めて。
唯世の事、最後の最後でブレーキかけられるのはきっと王様だけだから。だから、頼むよ」

「・・・・・・分かった」










僕達が話し込んでいる間に、鳴り響いていた音楽が止んだ。これでエクササイズは終了らしい。

・・・・・・さて、ヴィヴィオや空海はまぁ大丈夫。この程度で音を上げるような鍛え方はしてない。

コロナはちょっときつそうだけど、まだ大丈夫。それに唯世も、予想よりはヘトヘトになってない。





なんだかんだで唯世、×たま狩りとかで走り回っちゃってるしね。そのせいで体力はそこそこついてるんでしょ。





で、問題児が一人居るけど・・・・・・察してください。正直、僕もアレには触れたくない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「つ・・・・・・疲れたぁ。てゆうか、ヴィヴィオちゃんと一緒にやってる時以上に疲れてるってどういう事〜?」

「だって、ストレッチだもん。ストレッチはもともとキツいものだって、相場が決まってますよ?」

「ヴィヴィオの言う通りだ。日奈森、ストレッチは身体の筋伸ばしたりするから、そういうもんなんだよ。てーかお前、体力無さ過ぎ」

「う、うっさいっ! あたし脳筋な空海と違うしっ!!」

「待て待てっ! 誰が脳筋だってっ!?」





そして一人汗だくな約一名に付き合って、僕達は隅の方で休憩。しかしこの魔法少女、半端なく弱い。

何気に走り回ってる事も多いし、体力つきそうなのに・・・・・・うーん、普通の女の子ってこういうものなのかな。

僕の周りには規格外的なのが多過ぎて、今ひとつ判別出来ない。だってコロナよりへばってるし。



年下で文系のコロナよりへばってるって、どういう事だろ。だからキャンディーズだって、ちょっと呆れた目であむを見てるのよ。





「・・・・・・あむちゃん、コロナちゃんやヴィヴィオちゃんだって頑張ってるのに」

「ボク、もうちょっと頑張った方がいいと思うな」

「そんな事言われても無理ー! てゆうか、コロナちゃんやヴィヴィオちゃんは経験者じゃんっ!!」

「・・・・・・お兄様、とりあえずこれからどうします? 日奈森さんはまぁ巻き込むとして」

「そうだねぇ」



一応考えてる事はある。せっかくだし、ここも修行の場として有効活用はしておきたいのよ。

なので、僕はまずヴィヴィオの方を見る。ヴィヴィオはくりくりとした瞳で僕を見ながら、首を傾げる。



「恭文、ヴィヴィオに愛の告白? いや、それは・・・・・・恥ずかしいよ〜。確かにヴィヴィオは大人モードを練習中だけど」



次の瞬間、僕のかかと落としがヴィヴィオの頭頂部に炸裂した。そしてヴィヴィオは前のめりに倒れた。



「黙れエロガキっ! てゆうか、もじもじしないでっ!? 逆に気持ち悪いからっ!!」

「気持ち悪いってひどくないっ!? ヴィヴィオだって乙女なのにー!!」



なんて言いながらも、ヴィヴィオは即座に立ち上がる。うん、当然だよね。すっごい加減してたし。



「乙女はいきなりそんな事言わないのっ!!」

「・・・・・・ヴィヴィオちゃん、今のはヴィヴィオちゃんが悪いと思うな」

「えー、コロナまでひどいよー。・・・・・・それで恭文、用件はなに? ほら、早く早く」

「黙れよバカっ! てゆうか、話逸らしたのおのれだよねっ!? なんで僕が話進めてないって体でものを言うのよっ!!」



とりあえずアレだ、なのはには帰ったら『ヴィヴィオに妙な入れ知恵してるのが居る』と言っておこう。

いや、そうじゃなくちゃこの変化は説明出来ないのよ。色々おかしいでしょ?



「ヴィヴィオ、悪いんだけどここから一日唯世の相手してもらえる?
基礎的なとこはもう教えてるから、いつも通りでいい」

「うん、いいよー」

「え? ・・・・・・あ、あの蒼凪君。どうしてヴィヴィオちゃんと」

「唯世、前に唯世に足りないものの一つに『経験』って言った事あるよね」



そう言いながら、僕は唯世に視線を向ける。唯世はすぐに頷いてくれた。



「うん、よく覚えてる。それで経験には二つある」

「そうだよ。一つは数の問題。もう一つはどんな相手と戦ってきたかという・・・・・・まぁ、バリエーションの問題?」



どっちにしても、唯世は両方足りない。今すぐにそこを僕達レベルで埋めるというのは、ちょっと無理。

だけど、唯世が飲み込み早いおかげでそれなりに様にはなってきてるのよ。なので、そろそろ後者をなんとかしたい。



「ぶっちゃけ、僕とだけ組み手やってても強くならないよ? それだと限界がある。
唯世は色んな人の相手して、もうちょっと洞察力や応用力を身につけないと」

「えっと・・・・・・初見でも相手の動作にしっかり対応って事だよね。
以前に言っていた経験からの行動予測などを用いて」

「そうだよ。ヴィヴィオに今日相手してもらうのは、そこの辺りの練習」





遅かれ早かれ、フェイトやティアナ、リースに頼もうとは思ってたのよ。もち、魔法込みのガチ戦闘。

荒っぽいとは言う事なかれ。てーか、そんなの言われなくても分かってる。

本当なら何の基礎もない人間を、1ヶ月やそこらでいっぱしのケンカ屋にしようって言うのが無茶なのよ。



ただ、僕も唯世とは似たような感じではあったので、師匠やなのはと相談の上で過去の僕のやり方をそのまま持って来てる。

方針はいつぞや海里が作った資料通り。唯世には文字通り盾役として成長してもらう。

そこに僕主導でフィジカルでの戦闘技術も叩き込んでいるから、以前と比べると多少は立派になった。



あとは体調管理だね。ここはマジで気をつけないと・・・・・・唯世、猫男が絡むと無茶する方だしなぁ。





「でも蒼凪君、ヴィヴィオちゃんは僕より年下で女の子だし・・・・・・その、怪我させちゃったりしたら」

「・・・・・・唯世、それ何かの冗談かな?」



次の瞬間、唯世の身体が一瞬だけ激しく震えた。僕がかるーくお冠なのが、声だけで伝わったらしい。



「まさか、今の唯世でヴィヴィオに届くとか本気で思ってはないよね。
もし思ってるとしたら・・・・・・うーん、これは問題だなぁ。いつのまにか天狗になってたわけですか」

「え、えっと・・・・・・え?」

「よーしヴィヴィオ、加減は一切無しで徹底的にやっちゃっていいよ。
時間いっぱいまで止めないから、もうヴィヴィオのしたいようにして」

「分かった」



おぉ、なんて物分りのいい子なんだ。しかもガッツポーズ付きで言ってきたし。



「ヴィヴィオから見ても、唯世さんはちょっと天狗になってると思うし・・・・・・うん、鼻をへし折らなきゃね」

「いや、天狗になんてなってないよっ!? というか、どうしてヴィヴィオちゃんまで僕の事睨むのかなっ!!」

「じゃあ唯世さん」



ヴィヴィオは唯世の左手を掴んで、そのままスパーリング用のフロアへと移動する。



「ビシバシいきましょうね。大丈夫、明日はちょっと痛いかも知れないですけど」

「なにするつもりっ!? てゆうかあの・・・・・・・みんなー! 助けてー!!」

「唯世くん、ストップー! てゆうか、ヴィヴィオちゃんストップー!!」

「はい、おのれがストップね」



僕は消えていく二人を追いかけようとしていたあむを、襟首掴んで引き止める。



「ぐぇ」



あむがまるでダチョウのような鳴き声をあげたように聴こえたけど、きっと気のせいだと思う。



「アンタいきなり何すんのっ!?」

「やかましい。訓練メニュー邪魔されても困るのよ。・・・・・・コロナ」



首を反時計回りに動かして後ろの方を見る。そこには、半笑いなコロナが居た。

コロナは当然ながら僕より身長が低いので、軽く見上げながら聞き返してくる。



「はい?」

「悪いんだけど、空海に打ち合いの基本動作を教えてくれる?
まぁさっきの見てて分かると思うけど、空海は運動関係強いんだ」

「あ、そうですね。空海さん、さっきのエクササイズもあまり息切れてませんでしたし」

「うん。だから飲み込みは早いと思うの。空海、悪いんだけどそれでいい?」



僕は空海の方を見ると・・・・・・うん、納得したように頷いてくれた。



「ま、それが妥当だよな。で、お前が一番手間のかかる日奈森か」

「え、あたしっ!?」

「そういう事。まぁ僕達は固まってやるけど、一応はこういう形でだね。というわけで、早速基礎訓練スタートだよー」

「ちょ、ちょっと待ってー! 唯世くんがー唯世くんがー!!」










・・・・・・あむは唯世離れが出来ない、ただ一人のあむだよ。というか、ただ一人の魔法少女だよ。





でも、当然ながら僕達はそんな叫びはガン無視。早速後半戦をスタートするわけですよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・で、そこで俺はバイクで風を受けながら、彼女にこう言うたわけですよ。
さぁ、地獄の一丁目まではもうすぐだぜ? 10数える内に懺悔しなって

『なんで殺そうとしてんだよっ!!』



壇上に立っている二人のお兄さんの一人が、もう一人のお兄さんの頭をはたく。

・・・・・・ツッコミって、今ひとつよく分からない。細かいタイミングで面白さが変わるって言うけど、本当なのかな。



『いや、だって殺し文句って』

『殺しの意味ちゃうわっ! なんで生命的に殺そうとしてるっ!? 彼女が落ちるようにするのっ!!』

『あぁ、そっち? ・・・・・・俺はそのまま崖に飛び込んだ。落ちる直前に俺は華麗にバイクから飛び降りる。
そして彼女はバイク諸共『どらえもん のび太の恐竜のデイスクをWARAYAにー』と叫びながら、崖の下へと消えた』

『だからお前はなんでいちいち殺そうとすんだよっ! そしてそういう意味での落ちるじゃねぇっ!!
なによりそれ死にそうになってる時に叫ぶのじゃないしっ! なんでそこでドラえもんいくんだよっ!!』



そして会場で笑いが起こる。というか、私達も笑ってる。・・・・・・現在、私達は結局お笑いライブ見に来ています。

まぁりまの熱意が凄かったしね。こうする以外になかったの。買い物は、この後でも出来るから。



「あははははははっ! もうさいこー!! 面白いねー、リインちゃんっ!!」

「ですですー」



実を言うと、私も不覚にも笑ってしまった。あー、お笑いってやっぱり面白い。

・・・・・・ちょっとだけみや子ちゃんの事、思い出した。元気でやってるみたいだけど・・・・・・頑張ってるかなぁ。



「フェイトさんもさっきから笑いっぱなしなのです」

「うんうんー。フェイトさんもクスクス達と同じ同じー」

「うん、そうだね。ね、りまも」



そう言いながらりまに視線を向けると、私達は固まった。



「・・・・・・感動ね」



だってりま、両手を胸元で握りしめて涙ぐんでたんだもの。



『なんか感動してるっ!?』

「ミッドでも、お笑い文化は発展していたのね。しかも日本のそれと割合近い。
だけど、同じなように見える中にも次元世界の色があって・・・・・・感動だわ」



りまは懐からハンカチを取り出して、目に溜まっていた涙を拭う。



「私、産まれて来てよかった。異世界のお笑いを見れるなんて、本当なら無いものだもの。
私・・・・・・そうだ、パパとママに電話しよう。私を産んでくれてありがとうって、いっぱい言うの。それで」

「りま、ちょっと落ち着かないっ!? さすがにエンジンかかり過ぎだよっ! というか、何気に話が重いからっ!!」










なお、後日本当に電話してりまのご両親が大変な事になったのは、言うまでもないと思う。





その時に私やヤスフミもお礼を言われたんだけど・・・・・・あの、ねぇ? 素直に受け入れられなかったのは、どうしてかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さてさて、唯世さんの鼻をへし折るために、ヴィヴィオは心を鬼にしたいと思います。

組み手用のフィールドは、正方形で大体20〜30メートル前後。その真ん中には立会い線。

それで、キセキには審判の位置に居てもらって・・・・・・ヴィヴィオはその場で構えながら軽く跳躍。





唯世さんは、もう言っても無理だと思って構えてる。両手を顎の辺りまで上げていく基本的な構え方。

腰は落として、足はやや半開き気味にしつつも、身体の正面は横に向くようにする。

自分の左側面を前に出すやり方は、前方からの攻撃に備えたやり方。ようするに、命中範囲を狭くするの。




例えば身体の正面までがヴィヴィオの方に向いているのだと、色んなところを狙える。

肩や胸元に腹に両足と言った具合に。でも、あれだと攻撃を仕掛けられる部分は左側面しかない。

少々慣れは必要だけど、アレなら回避も横からの攻撃などを除いては楽なんだ。





左手に肩に足に脇腹・・・・・・うーん、恭文結構オーソドックスな構え方教えてるんだね。

恭文が格闘や剣術の時にやる、色々な流派や人の動きがミックスされた我流のそれとは違う。ホントに基本的で綺麗な構え。

しかも中々様になってる。きっとそれぞれの動作の意味、唯世さんがちゃんと分かってるからだ。





実はヴィヴィオはヴィヴィオで訓練があったから、こっちの師弟コンビの方はあんまり見れてなかったんだよね。

だからちょっとびっくり。唯世さんは本格的な訓練始めて、まだ1ヶ月とかそれくらいだよ?

それで様になってるのは・・・・・・唯世さんが頑張ってるからなのかな。うー、ちょっとワクワクかも。





だからヴィヴィオは口元でちょっと笑いつつ、真正面から突っ込んだ。

少し身を伏せ気味にして突撃するヴィヴィオを見て、唯世さんが戸惑いの表情を浮かべる。

そしてそんな気持ちを乗せたまま、ヴィヴィオの突撃を止めるために拳が飛んできた。





左側面に一気に回り込んでそれを回避。あんなヘナヘナ攻撃にやられる程、弱くないもん。










「・・・・・・・そぉ」



回り込みつつもヴィヴィオは飛び上がって、右足で唯世さんに向かって蹴り。



「れっ!!」





もちろん、骨とかが折れたりするような威力じゃない。ある程度は打ち方を緩くして加減してる。

声を出したのも『避けてねー♪』って言うサインでもあるから。だから、唯世さんも咄嗟に反応。

咄嗟に後ろに下がって、ヴィヴィオの蹴りを避けた。・・・・・・あ、思ったよりも反応がいい。結構余裕で避けられちゃったし。



それで今度はヴィヴィオの番。ヴィヴィオが着地すると同時に、唯世さんが掴みに来る。

だけど・・・・・・アレ、なんか緩い。ちょっとだけやる気があるのかと思ってしまうようなスローペース。

ヴィヴィオは右手を平手にして、それで伸ばされた唯世さんの手を払う。払った上で左拳を動かす。



狙うはがら空きな右脇腹。そのまま、ヴィヴィオは拳を叩き込む。でも、これも避けられた。

上半身の動きだけで捻るようにしてすれすれで回避・・・・・・って、嘘っ! 今のは結構本気だったのにっ!!

そしてそんなヴィヴィオの手を、唯世さんが優しく右手で掴む。掴んで、微笑みかける。





「・・・・・・捕まえた。ヴィヴィオちゃん、これで僕の勝ち」



・・・・・・甘い。ヴィヴィオは手首を動かして、唯世さんの手による拘束を解く。

それから逆に唯世さんの手首を掴んで、一気に引き寄せる。



「え?」



右手は平手にして、足はしっかりと踏ん張りつつも軽くしゃがむ。

そして、しゃがんだ分一気に伸び上がるようにしつつ唯世さんの胸元に向かって・・・・・・掌底を叩き込んだ。



「やぁっ!!」



唯世さんはヴィヴィオに向かって前のめりに倒れていた。その勢いも加わった上で掌底は決まる。

ヴィヴィオは直撃と同時に左手を離す。唯世さんの身体は、大きく飛んだ。



「唯世っ!?」

「大丈夫」



キセキがびっくりしたように声を出したから、それで安心させてあげる。というか・・・・・・びっくりしてる。

唯世さんは少し柔らかめに出来ているフィールドの床に叩きつけられるけど、すぐに起き上がった。



「直撃じゃないから」





唯世さん、あの瞬間に左手を盾にしてヴィヴィオの掌底をガードしてた。

飛ばされちゃったのは、多分対処のための技能を知らないから・・・・・・だよね。

ヴィヴィオは突き出した腕を下ろして、唯世さんをつい怪訝な目で見てしまう。



・・・・・・おかしい。どう考えてもおかしい。よし、ちょっとツッコんでみよう。





「唯世さん、どうして打ってこないんですか?」

「え?」

「別に唯世さん、完全に素人ってわけじゃない。基本的なところだけなら、かなりしっかりしてる」



もっと言うと防御関連だね。見切りもしっかりしてるから、ヴィヴィオはちょっとびっくりしたくらい。



「ヴィヴィオが子どもだから加減してるーとかなら、怒りますけど」

「あの、違うんだ。その・・・・・・キセキ」

「キセキに頼るの、禁止っ!!」

「はいっ! ごめんなさいっ!!」










・・・・・・でも、本当にどういう事? 防御もしっかりしてるなら、打撃や掴みだってもうちょっと出来ていいはずなのに。





そこだけが全くの素人・・・・・・ううん、それ以下だよ。恭文、どういう教え方してるのかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そうですそうです。空海さん、もしかしたら私より上手いんじゃ」

「そうか? 俺はコロナがちゃんと教えてくれてるからだと思うけどな」

「えっと・・・・・・あの、ありがとうございます」



・・・・・・向こうの方は、予定通りに上手くいってる。やっぱ空海の運動神経は良かった。

基礎だけだから、コロナにとってもおさらいになってるらしくて、まるで兄妹で練習してるみたい。



「それに引き換え・・・・・・日奈森さん、だめだめですね」

「う、うっさいっ! こういうのめんどくさいんだから、しょうがないじゃんっ!!」



現在僕達がやってるのは、手順を決めての打ち合い。ようするに、これで各種攻撃に対しての基本対処を覚えるの。

そんなどっかの香港映画みたいな派手な打ち合いはしない。あくまでもゆっくり・・・・・・なんだけどなぁ。



「シオン、仕方ないよ。むしろこれが普通なんだと思う」



僕だって、あむとどっこいどっこいだった気もするし・・・・・・まぁ、いいよね。



「てゆうか、恭文」

「なに?」



なにより、かなりスローペースだけどちょっと形になってきた。

そんな時に、あむが僕に拳を叩き込みながら視線を向けてくる。



「マジでヴィヴィオちゃん大丈夫なの? 鍛えてるとは言え、体格では唯世くんが上だし」

「僕となのはが主導で鍛えてる。今の唯世じゃあ絶対に勝てないね」

「・・・・・・アンタ、また言い切るね。てゆうか、先生としてそれでいいの?」

「しゃあないでしょうが。唯世、人に対して全く攻撃行動が取れない子なんだから」



打ち込まれた拳を払い。打ち込んだ拳を払われつつ、たまに避けたりしつつも会話。

この辺り、段々と本格的なスピードになってきた向こうの組と違うからなのは、覚えておいて欲しい。



「まぁ、唯世くん優しいしね。殴ったり蹴ったりなんて出来ないか」

「・・・・・・いや、あむちゃん。私が思うにそれだとだめなんじゃ」

「え、なんで?」

「だって、格闘技してるのに攻撃一切しないんだよ? どうやっても勝てないよね」



ランにそう言われて、視線がそっちの方に向く。



「そうだよっ! それじゃあ全然ダメじゃんっ!!」



なので、右手で頭を掴んでグイっと僕の方を見させる。



「余所見禁止」

「ご、ごめん。・・・・・・恭文、唯世くんが絶対に勝てないって言ったの・・・・・・そこが理由?」

「そうだよ。前にさ、ホーリークラウンは『守る』って事に力を発揮しやすいって話したじゃない?」

「うん」

「これもそれと同じ。唯世自身が、『誰かを攻撃して傷つける』という事を忌むべき事として捉えてるからだよ」





だから唯世に突きを打たせると、非常にへろへろする。捕縛しろと言うと、緩く相手の腕を掴むだけに終わる。

腕を捻ったりするように言っても、その間にロスタイムがあって使い物にならない。うん、攻撃関係ほとんどダメだね。

それでね、苦肉の策として投げ技を教えようとしたのよ。フェイトにもちょっと手伝ってもらってさ。



足払いとか出来るだけでも違うだろうなーと思ってたんだけど・・・・・・ロスタイムがひどかった。



結果、攻撃関係を鍛え直すのは、マジで無人島に放りこむしかないという結論に達した。つまり、今すぐに改善は無理。





「・・・・・・アレ? ね、恭文。唯世は攻撃関係一切ダメなんだよね」

「ダメだね」

「あのね、ボクは×たま相手は分かるんだ。捕縛とか拘束という意味合いで使う事があるから。
でも・・・・・・それならイクトは? 唯世、イクト相手にはバシバシ攻撃してるよね」



さすがにミキは鋭い。この矛盾に気づいてしまったか。まぁアレだよね、唯世の問題点はそこなのよ。

唯世は優しい。ぶっちゃけ、唯世みたいなのが局員で『魔法は守るための力だ』とか言ったら、両手を上げて認めるくらいだよ。



「そう言えば・・・・・・そうですねぇ。円盤みたいな形にして、投げてたりもしましたしぃ」

「・・・・・それが唯世の怖いとこなのよ。何があるか知らないけど、猫男に対しては色んな意味でタガが外れる」



こういう話をしている間にも、打ち合いという名の触り合いは続いている。

あのね、ゆっくりだから終わるのに時間がかかるの。



「普段のそれが信じられないくらいに、攻撃一辺倒になるのよ。そして、逆に唯世の持ち味である守りが薄くなる。
なによりタガが外れたって、普段の唯世の攻撃はヘボそのものよ? それじゃあ猫男には通用しない。結果」

「結果、唯世は弱くなっちゃってて・・・・・・イクト相手には振り回されまくってピンチな事が多いと」

「ミキ、よく分かったね」

「今までのあれこれ見てれば、考えるまでもないって」

「ですよねー」



うーん、マジでどうしよう。キセキにはカッコつけてあんな風には言ったけど、ここはなんとか改善したいのよ。



「それで先生としては、どう改善するつもり?」

「・・・・・・現在考え中」

「また悠長な。恭文、長考に良手無しだよ?」

「そうだね。でも、考えても思いつかない場合はどうしようもない」



ただ、改善の方向も今言ったように模索してるような段階で・・・・・・師匠やヒロさん達に相談しようかな。



「・・・・・・唯世くん」



・・・・・・だから、おのれは打ち合い中に平然と唯世の方を見るなってーの。どんだけ余裕あるのさ。



「あむ、また余所見?」

「あ、ごめん」










ホントになんつうか、アンバランスな子だよなぁ。まぁ、自分に正直でいい事とも言えるけど。

だけど、マジでどうしよう。一応の応急策としては、唯世が猫男とやり合う時には誰かしらつけるって言うのを考えてるのよ。

さすがに唯世だって、あむなりりまなりが居るのに突っ込むような事はしないでしょ。てーか、したら殴る。





あー、何にしても猫男の動向だよなぁ。そこが分からないと・・・・・・でも、うーん。





クロノさんの調査でもさっぱりってどういう事だろ。あのでくの坊、マジでどこに居る?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・新装備開発の許可が欲しい?」

「はい」



あー、しかし今日も暑い。普通に35度超えってどういう事さ。僕が子どもの頃は、こんな暑くなかったよ?

ま、専務の部屋・・・・・・てゆうか、イースター本社の中はクーラーも効いてて涼しいからいいけどね。



「九十九、BYのみならずまだ何かやるつもりか」

「あー、いえ。それほど大掛かりなものではないんですよ。
ただ、会社の資金を使うわけですし、専務にしっかりお伺いを立てたいなと」

「・・・・・・まぁいい。それでなんだ?」

「コートです」



というわけで、またまたスクリーンモニターで説明。そこに出るのは・・・・・・現在忙しく作戦の準備をしている女の子のお兄さん。

ヘイ・ド・モルセール・山本・・・・・・って、名前長いなぁ。



「以前お送りした報告書にも記載されていますが、ヘイ君は幾斗君やほしな歌唄のようにキャラなりは出来ません。
ですが、そのしゅごキャラとのキャラチェンジにより、ちょっと特殊な能力が使える事が分かりまして・・・・・・まぁ、彼用の装備ですね」

「それがコートか。で、私に聞きに来るくらいだ。当然普通のものではないのだろう?」

「はい。彼、キャラチェンジすると電気を発生させられるようになるんです」



あくまでもそこそこの出力ではあるんだけど、人を感電させて動けなくするくらいの事は出来る。

なにより彼、武術関係の訓練しててそれなりに出来る子なんだよ。そこでこの天才九十九、考えました。



「まず、電気というのは色々なものに使われているエネルギーです。我々が指を動かしているのもそう」



スクリーンに次に映るのは、電気関連の色々な映像。それを専務はいつもの険しい表情で見てる。



「物質そのものの構造にも電流・・・・・・電子を通して干渉したりも出来る、まさしく万能の力。
そこでこのコートには電流を流した時に、ある効果が起こるようにします」

「効果?」

「物質硬化です。・・・・・・あ、これがその実験映像ですね」





次は、試しに作った布切れを空中で器具を使って固定して、電気を流す。

それに向かって僕の助手が全身をプロテクターで完全防備した上で、右手に包丁を持つ。

そして、その包丁を布切れに向かって唐竹に全力で叩き込む。



だけど次の瞬間・・・・・・包丁が中程からへし折れて、助手の胸元に切っ先が突き刺さる。



なお、さすがにこれにはビビったけど・・・・・・プロテクターのおかげで無傷だった事は、付け加えておく。





「・・・・・・とまぁ、このような形ですね」

「・・・・・・トリック映像というわけではなさそうだな」

「えぇ。どうでしょ、これを使えばガーディアンのキャラなりの能力の大半は無効化出来ます」



打撃関係は、このコートの前では一切無意味だよ。

もしかしたら蒼凪恭文の刀も、ぽきんって折れちゃうかも知れないねぇ。



「いいだろう。どちらにしろ駒は多い方がいい」

「ありがとうございます」



僕は頭を下げて、しっかりとお礼を言う。会社務めでは、こういうのが大事なんだよ。



「では、早速開発に入りますので」

「だが九十九」

「はい?」



僕は頭だけを上げて、専務の方を見る。専務は・・・・・・相変わらずの表情だった。



「コレを×ロットなどに搭載するのは無理なのか?」



・・・・・・あー、そこ考えますよね。僕もそこ考えて、色々計算しましたから。



「結論だけ言うと、無理です」



僕は身体を起こして専務にそう言うと、専務jの視線が僅かに厳しくなった。



「まず、電気能力を×ロットが使えるかどうかというのが分かりません。
そうするとバッテリー仕様になりますが・・・・・・今度はコレを開発する時間が必要になる」

「既存のバッテリーでは無理なのか」

「えぇ。コートの硬化にそこまでぶっちぎりな電力を使ったりはしないようにしますけど、それでも。
あとは単純に重いというのと、メンテナンスも今よりずっとめんどくさくなるという問題があります」





×ロットもそのために、×たまのマイナスエネルギーを動力源にしてるしねぇ。

二階堂が残したレポートでも、バッテリーなどを使って動かすよりもこうした方がずっと効率的だと書かれている。

つまりこのコートを使うなら装着者は予め、電気を発生させる能力を持ってないといけない。



だから今のところはヘイ君専用装備だよ。正直BYにも装備させたくはあるけど、電気使えるかどうかもまだ不明だしね。





「そうか、分かった。というより、量産するにしてもまずはこれでテストしてからだな」

「えぇ。・・・・・・あ、それともう二つ程連絡が」

「なんだ」

「まず一つは・・・・・・BYの起動実験、成功しました」



専務が僕を強く見てくるので、僕は頷いて肯定した。・・・・・・いや、長かったなぁ。

まだまだ作業が残ってるとは言え、自信作だからこれは相当嬉しい。



「あとは微調整だけですので、もう少しで実戦投入出来ます。そしてもう一つ。
こっちはヘイ君から今日連絡が来たんですが・・・・・・あっちも最終調整完了だそうです」

「本当か」

「はい。物の方はあとは数を揃えるだけ。それもさほど時間はかからないそうです」

「そうか、それは喜ばしい事だな。・・・・・・あぁ、本当に喜ばしい」



専務が笑ってる。かすかに聴こえるような声だけど、それでも嬉しそうに笑っている。

まぁ、そりゃこうなるよね。やっとあのお邪魔虫達を叩き潰せるんだから。僕だって嬉しいさ。



「あのガキ共にようやく教える事が出来る。我々イースターに楯突く事が、如何に愚かかをだ」

「はい。本当に喜ばしい事ですねー」










さて、BYの調整はもうちょっと頑張らないとなぁ。ふふふ、これで蒼凪恭文もおしまいだね。

BYはパワーやスピード、そのポテンシャルは全てにおいて彼を上回る。そう、まさに全てにおいて無敵。

そして彼は立ち上がれなくなる。そのまま再起不能でガーディアンからもさようならーさ。





だって彼は・・・・・・もう一人の自分に敗北を喫する事になるんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして夕方。なんだかんだで一日中ストライクアーツ三昧。いや、楽しかったなー。

唯世が非常にヘコんだり、ヴィヴィオが膨れてたりするけど僕は気にしない。まぁこうなると予想はしてたから。

公民館から全員元の私服に着替えた上で出ると・・・・・・あー、風が気持ちいいー。





ミッドは夏でも地球みたいに35度とかいかないのがいいよね。もちろん暑くはあるんだけど、それでも常識的。










≪それでコロナさん、帰りはどうするんですか?≫

≪ジガン達は、主様の車で来たからなんとかなるの≫

「あ、ママが迎えに来てくれる事になってるから・・・・・・ここでお別れだね」

「うー、コロナー。ヴィヴィオ寂しいよー。一緒に帰ろうよー」



言いながら、ヴィヴィオがコロナに抱きつく。そしてすりすり。

こういう甘え上手なところは、是非ともあのIKIOKUREにも見習って欲しいってちょっと思った。



「うー、私もだよー。ヴィヴィオちゃん、また新学期に会おうねー」



そしてそんな甘え上手なヴィヴィオにしっかりと合わせてすりすりするコロナも、何気に凄いと思う。

それを僕達は全員で微笑ましく見ていた。僕はまぁ・・・・・・うん、ヴィヴィオが元気なのはいい事だなと思って、嬉しいかな。



「あ、そうだ」



コロナがヴィヴィオと離れてから、空海の方を見てニコニコする。



「空海さん、今日はありがとうございました」

「へ? ・・・・・・いやいや、言うの逆じゃね? 俺が言う側だろ」

「いいえ。空海さんのおかげで、色々おさらい出来ましたし。
私、どうも格闘術も魔法も苦手なので・・・・・・それで」

「あー、そうなのか」





あむと唯世が僕を見て『そうなの?』と視線で聞いてくるので、頷く。

確かにコロナは、ヴィヴィオほど格闘が上手いわけでもない。魔法に関しても並み。

・・・・・・一般的にはね? ただ、コロナは凄い魔法が一つ使えるんだよ。



だから『苦手』って言い切るのはまた違うと思うんだけどなぁ。





「でも、礼なら別にいいぞ。俺も楽しかったしな。コロナ、また一緒にやろうな」



空海がサムズアップしながらそう言うと、コロナが嬉しそうに笑った。



「・・・・・・はいっ!!」



・・・・・・それからすぐ、予定より早くコロナのお母さんが迎えに来て、僕達はその場でお見送り。

コロナを乗せた車が見えなくなってから、僕達も帰路につく事にした。



「それじゃあみんな、帰ろうか」

「うん」



僕達は公民館の駐車場に停めているトゥディの方に向かう。歩きながら、吹き抜ける風に髪をなびかせる。

あー、気持ちいいー。シャワー浴びた後だから、余計にそう感じるや。



「・・・・・・しかし、腹減ったな。なんかラーメンとか食べたくないか?」

「相馬君、夕飯前なんだから・・・・・・でも、気持ちは分かる」

「だろ?」

「運動した後だから、ガッツリいきたいですよねー。とんこつとか美味しいんですよ」



その会話を聞いて、唯世も男の子なんだとちょっと安心したり。

なお、ヴィヴィオが乗っかってる事に関しては何も言わない。あれだよ、やっぱアレは体育会系なんだ。



「・・・・・・恭文」

「ん、あむどった?」

「やっぱりあたし、格闘技ってよく分かんない」



言いながら僕の隣を歩くあむは、右手を上げて手の平を空に向ける。



「やっぱり殴られたら痛いだろうし、エクササイズも大変だし、今日なんて全然出来なかったし。でも」

「でも?」

「もうちょっと、続けてみたくなった。きっとこれも、あたしに出来る可能性のあるものの一つだから」



そう言ってからあむは右手を下ろして、僕の方を見る。・・・・・・それで気づいた。

あむ、僕と身長が全く同じになってる。半年の間に・・・・・・なんか悔しい。



「だから、向こう戻っても今日みたいに教えてくれるかな。あたし、もっともっと続けてみたい。
・・・・・・あ、でもあたしお礼とかなんにも出来ないし、相当不器用だから恭文に迷惑かけるかもだし」

「別にいいよ」

「・・・・・・ほんとに?」

「うん」



僕が頷くと、不安げな表情をしていたあむが安心んしたように笑った。なので、もうちょっと意地悪。



「それで、ミッドのストライクアーツでトップ取ろうか」

「うん。・・・・・・はぁっ!? トップって何っ!!」

「みんなー!!」



驚くあむは無視しつつ、僕は振り返って唯世達に声をかける。



「あむがストライクアーツで次元世界のトップに立つんだってー!!」

『・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

「こらー! 変な事言うなー!! あの、違うからっ! マジそうじゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










夕方の空に、一番星が輝く頃。僕達は騒ぎつつも残り少ない夏の時間を満喫していた。





うん、あとちょっとで夏休みもおしまいなんだよね。だから・・・・・・もうそろそろ、やらなきゃいけない。




















(第75話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、ドキたま/だっしゅ74話。今回は平和な日常話です。
だっしゅになってからは25話目で、何気に折り返し地点にさしかかりました」

ヴィヴィオ「それでそれで、ヴィヴィオのお友達のコロナがゲスト的に出てきましたー。
そんな今回のお話、いかがでしたか? お相手は高町ヴィヴィオと」

恭文「蒼凪恭文です。でも・・・・・・今回はアレだね。今後のネタふりもしつつも、基本のんびり」

ヴィヴィオ「そうだねー。あ、ちなみになのはママはお仕事だったので、あしからずですー」





(教導隊は忙しいのです)





ヴィヴィオ「でも恭文」

恭文「なにさ、エロガキ」

ヴィヴィオ「うー、ヴィヴィオエロくないもんっ! 大人モードになったら体型がエッチなだけだもんっ!!」

恭文「そういう事言えるのがエロいって言ってんのっ!! ・・・・・・というか、腹黒いよね」

ヴィヴィオ「腹黒くもないもんっ! ヴィヴィオはキャロさんと違うよっ!?」





(『・・・・・・ヴィヴィオ、後でお話しようか』)





恭文「それでなによ」

ヴィヴィオ「唯世さん、アンバランス過ぎない? というか、大丈夫なの?」

恭文「本人にも欠点の方は言ってあるよ。さすがに無自覚ってわけにはいかないし。
でも・・・・・・あー、なんにしても時間がないよー。訓練でどうにかってのは無理だってー」

ヴィヴィオ「やっぱり、唯世さんと月詠幾斗の事を解決するしかないんじゃないの?」

恭文「でもさ、それは予定としては三期までは出来ない事になってるのよ」

ヴィヴィオ「なんか進行上の都合を持ち出したっ!? ・・・・・・とにかく、これでアレだね」

恭文「うん、アレだね」

ヴィヴィオ「アレでアレだよね」

恭文「アレがアレしたらアレだね」

ヴィヴィオ「アレってやっぱりアレでアレだからアレなんだよね」





(二人共、非常に適当に話しているようだ)





ヴィヴィオ「それで恭文、次回は?」

恭文「うん、次回は・・・・・・ほら、2クール目の最後なわけじゃない?」

ヴィヴィオ「あー、そうだね」

恭文「というわけで、ちょっと特別編でみんなで楽しくボーリングでもする? リクエストもらったし」

ヴィヴィオ「あー、そうだねー。それで罰ゲームでとんでもないドリンク飲んで、全滅と」

恭文「それはテニスの王子様でやってたやつでしょうがっ!! ・・・・・・でも、多分そんなノリで進む」

ヴィヴィオ「やっぱりかぁ。それでは、そんな次回を楽しみにしつつ本日はここまで。お相手は高町ヴィヴィオと」

恭文「蒼凪恭文でした。というわけでヴィヴィオ、次回はボーリングだよ」

ヴィヴィオ「きっとすごい珍プレーが飛び出すと思うな。具体的にはママがやってくれるよ」

恭文「・・・・・・ヴィヴィオ、そこに期待するってどうなの?」










(色んな意味で、このちびっ子が怖くなりつつある蒼い古き鉄であった。
本日のED:秦基博 『透明だった世界』)




















海里「・・・・・・感動しました。古代ベルカの戦技の奥深さ、実に興味深い。ディードさん、リースさん、ありがとうございました」

リース「あははは・・・・・・海里さん、そう何度もお礼言わなくてもいいですよ? ね、ディードさん」

ディード「そうです。半分は私の興味のためですし」

リース「そうなんですかっ!?」

なぎひこ「でも、本当に凄かったね。特にあの打ち合いとか。まさしく騎士ーって感じで」

リズム「ベルカ式の魔導師が『騎士』って呼ばれてるのも納得だよな」

ムサシ「あくまでもポピュラーなものがアレだそうだがな。例えば八神殿やシャマル殿は、また趣が違うとか」

ディード「その方達は、支援・遠距離砲撃関係・・・・・・ようするに後衛色が強いから。それで海里さん」

海里「はい」

ディード「そろそろですが・・・・・・気持ちは固まりましたか?」

海里「えぇ。・・・・・・俺のありったけを叩きつけて、そして見せつけます。
俺なりの数え方と、覚悟を。その上で・・・・・・絶対に勝つ」

ディード「その意気です」(嬉しそうに微笑む)










(おしまい)




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