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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第30話 『ゆっくりと静かに過ごす時も、過去を思い出す時も、たまには必要 前編』(加筆修正版)



「やっさん、お待たせっ!!」



・・・・・・フェイトと恒例の夜のお話をしていたら、いきなり飛び込んできた人影が二つ。

なお、ヒロさんとサリさんです。うん、本当にいきなりだよね。



「あー、悪いな二人とも。ちょっと失礼するぞ」

「そうですか。なら帰ってください。失礼するなら帰ってください」

「あ、そうだね。いやごめんね、二人とも。それじゃあ」



僕の言葉にヒロさんがそう答えて、サリさんも申し訳なさそうに頷きながら踵を返す。

そして部屋のドアを潜ろうとしたその瞬間、こちらに振り向きつつも叫ぶ。



「「・・・・・・って、おいっ!!」」

≪普通でそこにボケに乗っかりますか≫

「そうだね。ほらフェイト、フェイトも見習わないと」

「わ、私もっ!?」



というわけで、軽いやり取りもした上で二人が改めて部屋の中に来る。てゆうか、何の用だろ。



「それでなんですか? 僕は見ての通り、フェイトと楽しく話してるんですけど」

「そっか。じゃあ問題ないよね」



いや、大ありでしょ。なんでアンタはそういう思考に走れるのさ。ほら、空気を読んで?



「やっさん、お待たせっ!!」

「いや、何がっ!? そして今までの件を丸々なかった事にするのはやめてっ!!」

「やっさん、お待たせっ!!」

「お待たせっ!!」

「二回も言わなくていいんですよっ!? というか、サリさんも乗らなくていいからっ!!」



てゆうか、アレですかっ!? 二人揃って丸々さっきまでの件を無しにしたいわけですかっ!!

・・・・・・なお、これは口には出さない。なんか普通に頷かれそうだもん。



「ヤスフミ、何かあったの?」

「だから僕分からないってっ!!」



残念ながら、さっぱり覚えがない。なんでヒロさんがウキウキ顔なのかも分からない。



「やっさん、アンタほんとに覚えてないの?」

「・・・・・・え?」

「ほら、トゥデイとモトコンボ送った時の・・・・・・アレだよ、アレ」



トゥデイとモトコンポ・・・・・・あぁ、そうだっ! 思い出したしっ!!



「ヒロさん、まさかっ!!」

「そうだよっ! アンタへの三つ目の誕生日プレゼント・・・・・・アレが出来上がったんだよっ!!」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第30話 『ゆっくりと静かに過ごす時も、過去を思い出す時も、たまには必要 前編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、ここからは開幕早々だけどしばらく回想です。もっと言うとカットシーンの再生です。

それはなのはとスバル達と一緒に取った休みが明けてから、数日後の事。

もうちょっと言うと、エリオが卑屈全開にして僕に選定かけようとした直前くらいだね。





僕はこの時、非常に疲れていた。だって、休みは休みにならなかったしさぁ。

なのはは相変わらずバカだし、キャロとエリオは手間かけてくれるし・・・・・・アイツら、マジで自由だし。

頼むから局どうこうの前に僕の迷惑を顧みて欲しい。僕の幸せは人類の幸せだよ?





てゆうか、予定が大幅に狂って内心頭を抱えていた。僕、極力六課のアレコレには関わりたくなかったのに。

僕はフェイトが落とせれば、なのはが死のうがスバルがKY発揮しようがエリキャロから嫌われようがどうだっていいのよ。

なのに、本命とは仲良く出来ず妙なフラグばっかり・・・・・・くそ、マジで奴らは空気を読まないし。





その上『六課は絶対に居場所に出来るし、みんなとも仲良くなれる』って良識派がウザいウザい。

奴らは僕がなぜここに来たかを全く理解してない。フェイトも同様なのが、非常にめんどくさい。

てーか、僕は局や部隊に関わるの嫌いなんですけど。何度言えばそこの辺りを理解してくれるんだろ。





とにかく、そのために失踪の手はずとかもそれはもうナチュラルに整えていた僕に、ある吉報が舞い込んだ。





夕方の六課隊舎に、僕宛てにあるものが送られて来た。それがその吉報。










「・・・・・・で、なんやこれ?」

「いや、『なんやこれ』と言われましても・・・・・・僕には分からないし。
アレじゃない? これ自爆させて隊舎ぶち壊せって事じゃないかな」

「それ違うよねっ!? というか、どうしてそうなるのっ! ここは恭文君と私達の部隊で」

「うっさいバカ馬。僕はおのれらの夢の尻拭いのために居るだけであって、ここに腰を落ち着けたつもりはない」



バカはともかくとして・・・・・・いや、マジでどうしよう。はやてが引き気味に僕を見るのも分かるのよ。



「で、どないするんや? これは」

「持って帰るしかないでしょ。はやて、そんな事も分からないの?」

「そういう事言うてるんやないよっ! なんでこうなるんかを聞きたいんやけどっ!?」



はやてがテンション高めにあるものを指差す。その先にあるものに、僕も呆然としている。

つーか、ありえませんぜ旦那。これはないから。



「はやて、僕に言えば何でも解決するとか思ってない? 悲しいけどそれは勘違いだよ」



確かに僕はリリカルなのはの二次創作界を代表する主人公の一人だとは思うけど、それでも無理だって。

僕にだって解決出来ない事はあるのよ。例えば未だに不満そうなバカ馬の視線とかさ。なんでだろ、間違った事は言ってないのに。



「そうだな、例を出すと・・・・・・はやてに谷間を要求しても出来ないのと同じ事だよ? 分かるかな」

「うっさいわボケっ! ちゅうかセクハラすなっ!! あと、アンタの方こそ勘違いしとるからなっ!?
うちはアンタのバナナを余裕で挟んで、アンタの中のバナナジュース出せるくらいには育っとるわっ!!」



何アホな事叫んでるっ!? てゆうか、マジで落ち着いてー! 普通にそれもおかしいからー!!

・・・・・・とりあえず、胸の内の動揺は見せないようにして僕ははやてを止めるためにしっかりと諭す事にした。



「大丈夫、無理しなくていいんだよ? 胸じゃなくて、手や口でもバナナジュースは出せるんだから。
はやてはそっちの路線を目指すべきじゃないかな。そこの辺りは人それぞれだって」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! よし、そこまで言うんやったら今日の夜やったるわっ!!
アンタが『許して』言うまで胸で攻め立てて、挟みに挟みまくってこすってバナナジュース出したるわっ!!」

「へぇそうですかっ! 人が冷静に冷静に対処しようと思ってるのにそう来るわけですかっ!!
だったらやってもらおうじゃないのっ!? それで事実に打ちのめされるといいよっ!!」

「ほう、よう言うたなっ! もううちから離れられんようにしたるから覚悟しとくんやでっ!?
うちの培ったエロ知識とテクニックで、アンタのを抜かしに抜かしまくったるからっ!!」

「二人とも落ち着いてー! はやてちゃん、隊舎でどんな会話してるのかなっ!!
というか、それは危ないからやめてー! あと、恭文君もそのキレ方おかしいからっ!!」





とにかく・・・・・・そんな僕達の目の前にあるのは、一台の車。その名は・・・・・・トゥデイ。

これはさっきも言ったけど車である。ホンダの有名な軽自動車だね。

なお、中身・・・・・・エンジンやフレームと各種部品は、ミッド基準に当てはめた最新式である。



これが突然僕宛てに送られて来た。というか、リボンまでかけられていた。





「・・・・・・それで話を戻すけど、誰なの。こんなことしたの?」



呆然な顔をして言うのは、皆様ご存知高町なのは。なのはもこの場に来て呆然としていた。

まぁ、ビックリするのは当然だよね。突然こんなの送られて来たんだし。



「僕の友達。開発局に勤めてるんだけど、またテスターしろって」



ようするにヒロさんとサリさんだね。うん、また二人の仕業なんだ。

つか、これはぶっ飛び過ぎてて僕もどーしたらいいのか分からない。



「また? ・・・・・・あぁ、あのデンバード作った人たちと同じなのかな」

「そうそう、それだよ」










僕はなのはの言葉に頷く。この車もヒロさん達の試作品なのよ。





そして、これに付いていた手紙にはこのように書かれていた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



やっさんへ。3ヶ月ほど遅くなったけど・・・・・・誕生日おめでとう。いや、マジでおめでとう。

ということで、またうちで作った試作品のテスターをお願いするね。

この子のメンテや維持なんかは、思いっきりうちを頼ってくれていいから。





で、モノなんだけど、全部で三つ。・・・・・・やっさんは今年はJS事件で頑張ったよね。

そしてアホ保護責任者のせいで六課へと不幸にも出向になり、死出の旅路をいっちゃった。

まぁアレだ。アンタ・・・・・・うぅ、なんでそんな不幸なの? いくらなんでも今年はおかしいでしょ。





それでプレゼントの一つは、そのトゥデイ。やっさんの好きな逮捕しちゃうぞ仕様だよ。

中身も最新式の車両に負けないくらいの性能だけど、外見もこだわったから、バッチリでしょー。

あ、ニトロシステム(モドキね?)も搭載してるから、原作再現度はバッチリだよ。





ただ、運転に慣れないうちは使わないように。絶対パワー持て余すから。

それと運転席側のドアのポケットには、改造モデルガン仕込んでるから。弾は自宅に送ってる。

もち、大量のペイント弾をね。使う機会があったら、有効に使って(ま、必要ないよね)。





で、もう一つは後ろに搭載してるモトコンポ。これも逮捕しちゃうぞ仕様ね。

どっちも見かけによらずパワーあるから、気をつけなよ?

あ、デンバードと同じく両方とも、アルトアイゼンのコントロールで動かすことも可能だから。





あと一つは・・・・・・ごめん。現在マリーちゃんと相談の上で作ってる最中。

ただ、やっさんならいきなり渡されても間違いなく使いこなせるシロモノだから期待してて。

近日中には完成させて送るから。きっと驚くと思うなぁ。





じゃ、その子達大事にしてあげてね〜♪





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・あの、なに考えてるんですかあなたがた?

つーか死出の旅路ってなにっ!? あ、相変わらずワケ分からないしっ!!

あぁもう、ここは別にいいや。ツッコむと疲れるのは目に見えてる。





それに・・・・・・誕生日プレゼントだしね。やっぱりありがたく思わないと。





ありがとうございます。この子達、大事にしますね。










「アンタ、免許持ってるよな?」

「うん。殺しのライセンス取った時に一緒に取得したから」

「アンタどこの007気取りやっ!?」



正確には、バイクの免許と一緒に取った。結構大変だったなぁ。

つか、学科のテストが難しくてさ。本番以外で合格点取ったことなかったもの。



「なら今日は仕事はえぇから、このまま帰り? あー、でも車の置き場ないか」

「問題ない。そのあたりは解消済みらしいから」



追記で、マンションの駐車場を使っていいと書いてあった。

さすがメゾン・ド・クロスフォードのオーナーだよ。



「ねぇ恭文君、その友達ってなにもの? 手際良過ぎるよ」

「そういう人達なんだよ」

≪そうですね。そういう人達ですよ≫



もうそうとしか説明出来ない。だって、なのはとかにヒロさん達の事知られたくないし。

普通にうるさくなるのは決定だろうしなぁ。だから今まで内緒にしてたんだもの。



「ワケ分かんないよ、それっ!!」

「横馬、大丈夫。横馬が分からなくてもとまとは進行出来るんだから」

「そういう言い方ないんじゃないかなっ!? 私達友達だよねっ!!」

「あいにく、僕横馬と友達になった覚えないし。大体、友達はあんな迷惑かけないもんでしょ」

「・・・・・・ぐす」



あ、なんか涙目になった。まぁここはいいか。いつもの事だし。



「・・・・・・アンタ、普通にエグいな。てゆうか、ちょっと突き刺さったんやけど」

「はやてはまだいいよ。ブラスターなんて使わないでしょ?」

「そらまぁなぁ。・・・・・・あ、後でアンタの家いくから。それでマジでうちの胸でしごいたる」

「うん、楽しみに待ってるよ。今日はちょうど偶数日だし」

「だからそういう会話禁止っ! なんでまだ続けるのかなっ!!」










涙目ななのはと、なんか楽しそうなはやてはさておき、僕は帰ることになった。





ただし・・・・・・どういうわけかお客さんも連れて。やっぱり六課なんて嫌いだと思っても、罪じゃない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うわー、かっこいいねこれ」

「そーね、ミッドじゃなかなか見ないデザインだし。でも、白と黒のツートンがいい感じね」



結論から言いましょう。どっかから話を聞きつけたフォワード四人が見に来た。くそ、普通にKYな連中。



「本当ですね。こう、アニメのみたい」



・・・・・・キャロ、中々勘がいいな。僕はちょっとビックリだよ。



「えっと、恭文、これ・・・・・・なんて読むの?」

「気にしなくていいんだよ? というか、ググれカス」

「カスってひどくないかなっ!!」



やかましい、このゆとり世代が。どいつもこいつも聞けばすぐ分かるとか思ってるし。

そりゃあ僕だってちょっとイライラして、はやてとあんな会話したりするさ。バナナジュースの話をしたりするさ。



「でもアンタ、またいきなり車貰うっておかしいわよ」

「・・・・・・そう思うよ。でも、一応テスターなんだよ? 完全に僕のじゃないし。
というわけで、僕買える・・・・・・じゃなかった。僕もう家に帰るね?」



余裕で運転席に乗り込む。そして走り出すためにキーを鍵穴に入れて・・・・・・エンジン始動。

小気味いいエンジン音が響き、僕はニュートラルに入っているギアを・・・・・・入れられない。



「恭文、待ってー!? せっかくなんだから乗せてよー!!」



前にバカが一人立ってるから。・・・・・・あ、前方確認はアレとして、サイドとか確認しなくちゃ。

えっと、バックミラーを調整して・・・・・・よし、後ろはよしっと。あとは両側のミラーだね。



「無視しないでー? ほら、私達みんな仕事終わってるしー」

「僕も・・・・・・ちょっと乗ってみたいかも」

「あ、私も。こういう車は余り見ないから」



えっと、ハンドル近くのスイッチで操作して・・・・・・おぉ、動いた動いた。角度は・・・・・・こんな感じでいいな。

さて、あとは前と両サイドを占領しているバカ共の排除だね。さて、どうしたもんか。



「ねー、恭文ってばー!!」



よし、ブレイクハウト使ってコンクリ拳で殴るか。全く、マジでウザったいたらありゃしないし。早速術式を。



「・・・・・・ね」



運転席側のドアの窓を軽く叩く音が聴こえる。でも、気のせいだ。きっとこれは気のせいなんだ。



「アンタがこの現実を否定したい気持ちは分かるけど、諦めた方がいいわよ。
スバルだけじゃなくて、ちびっ子達までエンジンかかっちゃってるし」

「・・・・・・・・・・・・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! お前らなんなんだよっ!!」



とりあえず両手でハンドルの真ん中・・・・・・クラクションの部分を叩く。それも連続で・・・・・・そして全力で。

うん、完全無視とか無理だったしっ! てゆうか、現実否定出来なかったよっ!!



「てーか、なんでお前ら乗せなくちゃいけないのっ!? 普通にフェイトを乗せさせてよっ!!」



車の中から声を上げると・・・・・うわ、三人揃ってちょっと不満そうな顔するし。

アレですか、もう僕が乗せる事決定ですか。もうそれが当たり前ってやつですか?



「えー、いいじゃん別に。ほら、私達同僚なんだし」

「赤の他人を車に乗せる程、僕は優しくないんだよっ! てーかお前ら調子乗り過ぎだからっ!!」

「ちょっと恭文、それないんじゃないかなっ!? 赤の他人なんてひどいよー!!」

「うっさいバカっ! おのれのせいでどんだけひどい目に遭ったと思ってるっ!?
あと、そこのちびっ子も涙目で助手席の窓からこっち見るなっ! マジでうっとおしいしっ!!」



だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 普通にコイツらに隙見せたのは失敗だったっ!! もう調子乗りまくってるよっ!!

フェイトを・・・・・・フェイトを初めて助手席に乗せて、楽しくドライブだったのにー!!



「・・・・・・というわけでティアナ、このバカ共轢いていいかな?」

「止めはしないけど、アンタが捕まるのは決定よ?
てゆうか、テスターで貰い物の車で故意にそれはダメでしょ」

「くそ・・・・・・とりあえずスバルのメールと通信は着信拒否にしてやる。
あとはエリキャロ、お前らも同じくだ。もう僕に話しかけるな」

『どうしてっ!?』





というわけで、結局ドライブになった。あぁ、フェイトを初めて乗せる予定だったのに・・・・・・汚されていくー。

なお、スバル、エリオ、キャロ、フリードはバックシート。

トゥデイは2ドアなので、助手席のシートを前に動かしその隙間にに入るようにして乗る。



で、ティアナがその助手席。あぁ、乗られてしまった。僕の予定や夢が全部パーになってしまった。



ね、ナチュラルにコイツら(ティアナ以外)に殺意沸いてくるんだけど、どうすればいいかな。





≪すぐにでも動けます。まぁ、慣れるまでは私がサポートしますから≫

「・・・・・・アンタ、免許取ってから運転してないの?」

「いや、仕事で何回かはある。でも久し振りだし、初めて乗る車だしね」

「納得した。まぁ、慌てなくていいから。最悪アルトアイゼンに任せられるんでしょ?」



確かに事故ったら意味無いしな。ダメな場合はアルトに任せることにしよう。



「そうだね。無理しなくていいから、安全運転でお願い」

「きゅくー」

「よし、お前ら黙れ。てーか一言として喋るな。喋った瞬間に魔法でぶっ飛ばされると思え」

『どうしてっ!?』

「どうしてもに決まってるでしょうが。・・・・・・峠攻めようかな」

≪無理でしょ。あなたじゃ頭文字Dにはなれませんよ≫










そんな話をしながらも、僕達は出発した。・・・・・・フェイトを乗せてドライブだったのに。





それで綺麗な風景を見ながらドライブして、それでそれで・・・・・・くそ、マジでコイツらとは仲良くするのやめよう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



外回りを終えて隊舎に帰って来た直後の私は、突然目に入ったその光景に目を奪われていた。

だってエリオとキャロが・・・・・・ミニパトに乗っていたんだから。

それだけで私の頭は思考は止まる。そして数秒のときを経て沸騰して、フル回転する。





ミニパトに乗る→エリオとキャロがミニパトに乗る→どうしてミニパトに乗る?

なにかしたから→何をした?→悪い事→犯罪→犯罪をしたらどうして乗る?→犯罪だから=連行される。

そこまで考えて、私は走り出した。だって、訳が分からないから。その間にもミニパトは無情に走る。





というか、どうしてミッドにミニパトがっ!? ・・・・・・ひょっとして、広域次元犯罪っ!!










「お願い、止まってー!!」





だめ、距離が離れてて・・・・・・というか、聴こえてないみたい。



そうこうしている間にも、ミニパトが隊舎の外へと進んでいく。



どうして? 今朝出かけるときは、みんな普通だったのに。なんで、どうして。





「・・・・・・こうなったら、無理にでも止めるっ!!」










私は全速力で走っていく。さすがに攻撃魔法は使えない。だけど私には、この足がある。





私はなにっ!? ・・・・・・私はフェイト・T・ハラオウンっ! 速さなら誰にも負けないっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ギアチェンジよしっと。うん、久々だけど問題ない。
というか、乗りやすいなコレ。気に入っちゃったよ〜」

「ふーん、意外と普通なのね」

「まぁ、僕一人じゃないしね。邪魔なのは変わらないけど、これで怪我されてもめんどい」

『どうしてっ!?』

「おのれらの血と体液で車が汚れても困るのよっ! そんなの絶対嫌だしっ!!」



きっと掃除は大変だよっ!? フェイトとドライブ行く前にそんなのなんて、絶対に嫌だしっ!!

血は消してもルミノール反応で見えちゃうんだから、何かあった時にそれが見えたら大変でしょうがっ!!



「とりあえず僕は明日、部隊長に進言する事にする。
スバルとエリオとキャロには空気を読む大切さを叩き込むべきだと」

「・・・・・・あぁもう、分かったよっ!!」



あ、後ろからなんかスバルが叫んだ。というか、どうして怒ってる?

ほら、空気読んで。今怒っていいのは僕なんだから。



「そんなに私達乗せるのが嫌なら、もう降りるよっ! それでいいでしょっ!?」

「そうですね、さすがにその」

「これだけ言われたら、私達もその・・・・・・ちょっと気分悪いよ」



スバルとエリオとキャロが軽くキレ気味にそう言ったので、僕は表情と声を明るくして前方を向いたまま言い切った。



「三人とも、ありがとうっ! あぁ、ようやく空気を読んでくれたんだねっ!!
やれば出来るじゃないのさっ! てーかそれなら最初からそうしろっ!! このボケ共がっ!!」

『すごい嬉しそうにしてるっ!?』

「・・・・・・いや、落ち着きなさいよ。てゆうか、そこまで嫌だったの?」

「うん」

『即答っ!?』



当たり前でしょうが。他人を事情無しで車に乗せるほど、僕は優しくないのよ。



「というわけで、車を停めるからすぐに降りてね? そしてそのまま隊舎に戻れ」

「恭文、ちょっと待ってっ! 普通に停めるのっておかしくないっ!?
ほら、普通は友達としてこういう時は謝るのが常識かなと私は」

「おのれらと友達になった覚えはないっ! よって停めて降ろしても問題無しっ!!
はいはい、すぐに停めるから言った以上は降りてよっ!? 有言実行って大事なんだからっ!!」

「なんか最悪なんですけどっ!!」



三人が後ろでギャーギャー騒ぐけど、僕は一切気にしない。うん、特に問題ないよね。



「・・・・・・アンタ、友達無くすわよ?」

「だからおのれらとは友達じゃないと何度言ったら理解してくれる?
その頑固な油汚れレベルのしつこさの方が、よっぽど友達無くすよ」

「あぁ、そうだったわよね。ごめん、私すっかり忘れてたわ」

「そういう大事なとこを忘れないでくれる? とにかく車停め」



ブレーキを安全に踏もうと瞬間、凄まじく冷たい感覚が身体を走り抜けた。僕はブレーキを踏もうとした足をアクセルに戻す。

そして一気に踏み込み、法定速度ギリギリなスピードで道を走る。というか、カーブを曲がる。



「ちょ・・・・・・アンタ、どうしたのっ!? 普通にスバル達降ろすんじゃ」

「・・・・・・だめ、停まれない」

「はぁ? なんでよ」

「・・・・・・恭文、分かってくれたんだね。うん、そうだよ。今は友達じゃなくても、ここから」



・・・・・・なんかふざけたことを言うので、魔法を一つ発動。



≪Blast Lancer≫



車の中で発動したのは、小型のランサー。なお、フェイトが使う同型魔法の無属性版。

手の平サイズのそれを発動して、声を低くして僕はこう続ける。



「黙れ。僕はお前らと友達になる必要なんぞないと何度言ったら分かる?
・・・・・・僕はここに仕事しに来てんだよっ! お前らと慣れ合うために来たんじゃねぇよっ!!」

「あの、恭文落ち着いてっ!? こんなところで魔法は」

「大丈夫。僕は気にしない。壊れたら修理するし」

「そういう問題じゃないからっ! 私が気にするのっ!!」



こんな事をしている間に、S字カーブは抜けた。だけど・・・・・・悪寒が消えない。

ヤバい。ミラーで後ろ確認した方がいいんだろうけど、それはダメだって本能が否定してる。



「よし、ハイウェイだ。そこならきっと大丈夫。てゆうか」



右手で運転席側の窓を操作して開ける。そのまま右手を出して、魔法発動。



≪White Mist≫



右手の平から発生したのは、白い霧。それが走り行くトゥデイの後ろ側に撒き散らされる。

対向車線をも覆い隠す形で霧は視界を塞ぐ。で、もう一つ即座に詠唱して・・・・・発動。今度はコレですよ。



≪Dark Mist≫





これは空気中の水分を操作して、色つけした上で発生させた濃霧。うん、単純な霧ですよ。

ただし、その中だと光すら通さないくらいに無茶苦茶黒い霧。それがまた後ろに撒き散らされる。

なお、これは一回じゃない。周りに車の出入りが無いのを確認した上で更に発動。



ここからそれぞれ交互に三回連続で術を使用して、周辺の視界の一切を防ぐ。

さすがに他に車が居るとかだと使えないけど、こっちの車線にも対向車線にも居なかったので遠慮なく使った。

・・・・・・これくらいしないと、今感じている『何か』を撒けない。僕達は逃げる事が出来ない。





「ちょ、アンタっ! 一体何やってんのっ!? こんなとこであんな魔法使ったら」

「やかましいっ! 霧は風で数分もすればすぐに晴れるからいいのよっ!!
てか・・・・・・後ろから何か来てるのよっ! それも相当怖い何かがっ!!」

「はぁっ!?」










ティアナが助手席側の窓をスイッチで操作してあけた。そして顔を出す。





出して・・・・・・そのままジッと煙の方を見ている。でも、とりあえず僕の方からは何も見えない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



な、なにコレっ!? 急に霧が・・・・・・というか、前が全く見えな・・・・・・きゃっ!!

私は黒い霧の中に突入した途端に、足を躓かせてコケた。というか・・・・・・痛い。

右足、ちょっとすりむいちゃったかな。でも、でも・・・・・・ここで諦められない。





私は痛みを堪えて立ち上がる。立ち上がって、視界が全く広がらない霧の中を見据える。





エリオ、キャロ・・・・・・待ってて。すぐに助けるから。・・・・・・私はまた、前に向かって踏み込んだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえず、撒いたらしい。数百メートル進んで多少は感覚が緩んだ。





でも、このままではダメだと本能が告げている。やっぱりハイウェイに乗るのは決定だ。










「恭文、お願いだから停めてっ! いくらなんでもおかしいよっ!!」

「そうだよっ! なぎさん冷静に」

「うるさい、ゆとり世代がっ! なんで周辺に漂ってる今感じてる寒気を感じられな」



言いかけて、僕は気づいた。一気に寒気が強くなった。というか・・・・・・右に気配がする。

現在の速度は時速で言うと70キロ。普通なら車とかだろうけど、あいにくここは1車線。そして対向車もない。



「・・・・・・とりあえずアンタ」



ティアが掠れた声で僕に声をかけた。とりあえず、言いたい事は・・・・・・うん、分かった。



「右側、見た方がいいわよ?」



そりゃそうだろうね。なんかこう、窓を叩くような音が聴こえてるから。それもかなり強めにだよ。



「・・・・・・このままハンドルを右側に倒したら、どうなる?」

「とりあえずアンタが死ぬほど後悔するのは決定ね」

「そ、そっかぁ」










だから僕は・・・・・・多少速度を緩めながら、そちらの方をチラ見した。





するとそこには、制服姿で必死に走るフェイトの姿があった。なお、恐怖で叫びました。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヤスフミ、これは、どういうことなの」

「いや、さっき説明した通りだから」

「作り話ならもうちょっと上手くしてっ! いくらなんでも、いきなり車が送られて来たなんて、信じられないよっ!!」



いや、それが真実だし。それ以外に言いようがないから。



「どうして・・・・・・どうしてっ! エリオとキャロを連行しようとしたのっ!? 正直に答えてっ!!」

「だーかーらっ! 違うって言ってるじゃないのさっ!! コイツらが空気読まずに勝手に乗ってきたんだよっ!!」

「エリオとキャロが何かしたのっ!? もしそうだとしてもこれは酷いよっ!!
ヤスフミ、エリオ達と仲良くなっていきたいって言ったの、嘘だったのっ!? ねぇ、そうなのっ!!」

「あぁそうだねっ! ぶっちゃけこんな空気の読めないクソガキ共ともう関わりたくないかなっ!?
てーか僕はコイツらと友達にも仲間にもなりたくないのっ! 他人で居たいのっ!! そこんとこ分かってるっ!?」



・・・・・・んな悲しそうな顔してもダメだからっ! マジで僕は今回腹立たしいんだよっ!!

下も上も慣れ合い押し付けやがってっ! あぁもう、マジで失踪したいしっ!!



「・・・・・・どうして、どうしてなの? 六課は・・・・・・私達の部隊で、他とは違うよ。
ね、ヤスフミ落ち着いて? 今は疲れてて余裕無いかも知れないけど、絶対それは違うよ」

「黙れバカっ! もういい加減そういうのウザいんですけどっ!! あぁもう分かったよっ!!
だったらもう出てくっ! こんなとこ居たくないし、リンディさんからゴチャゴチャも言われたくないから失踪するよっ!!」

「だからどうしてそうなるのかなっ! そんなの絶対違うよっ!!
お願いだから・・・・・・ここを、ここのみんなを・・・・・・グス」

「泣くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 泣きたいのはこっちなんですけどっ!?」





そして街へ出る一本道の道路の上で、口論すること・・・・・・1時間以上もの時間を消費した。

スバル達がなのはとはやてを呼んでくれたので、一緒になだめつつ説得。ティアナも事情を説明してくれた。

それでやっと納得してもらった。なお、納得した後フェイトは恥ずかしさで崩れ落ちた。



なお、理不尽にも魔法を使った事を怒られました。いや、普通は怖いでしょ。凄まじい速度で迫ってたしさ。





「うぅ・・・・・・ごめん、エリオ、キャロ」

「あ、いえ。その」

「私達は大丈夫ですから」



うん、微笑ましい光景だね。・・・・・・でも、ちょっと見過ごせないね。



「やかましいっ!!」



とりあえず、そういう事を抜かす二人をげんこつでどつく。



「「痛っ!!」」

「ヤスフミっ!?」

「おのれらが大丈夫でも、僕が大丈夫じゃないんですけどっ!?
てーか元はと言えばおのれらが空気読まずに乗り込んでくるのが原因でしょうがっ!!」



そうだよそうだよっ! フェイトがバカな勘違いしたのもぜーんぶコイツらのせいだしっ!!

最悪エリオ達乗ってなかったらなんとかなったんじゃないのっ!? 親ばかモード発動はなかったでしょっ!!



「「・・・・・・ごめんなさい」」

「謝らなくていいからもう僕に話しかけるな。全く、これだからガキは嫌いなんだよ」



あーもう、マジで先日のアレコレでフォローなんてするんじゃなかったし。



「エリオ、キャロ、謝る必要なんてないよ。・・・・・・恭文君、そんな言い方ないんじゃないかな。
スバルやエリオ達に六課のみんなが恭文君と仲良くしたいって気持ち、もうちょっと理解してくれたって」

「嫌だ」

「恭文君、どうしてそうなのっ!? 色々お話聞いたけど、恭文君だって悪いとこはあるよねっ!!」



気のせいでしょ。僕は常に公明正大だって言うのは、歴史が証明してるし。



「あー、それはなぁ。人間関係ちょおうまくやってく努力はしてもらいたい言うんが、部隊長の意見ではあるなぁ」

「あははは・・・・・・はやて、その結果がコレだって事を踏まえた上で話してる? ・・・・・・てゆうか、マジで怖かったしっ!!」



両手を広げて呆れ気味にそう言うと、はやてが納得した顔になった。



「あぁ、そない涙目にならんでえぇから。そうやな、時速70キロで走ってるのに並走してくる人間居たら、そら怖いわな」

「でしょっ!?」

「・・・・・・それ、恭文君の自業自得じゃないかな みんなに対してヒドいから、バチが当たったんだよ」



なのに、普通にそこを読まずにKYな事を言う奴が居る。その名は横馬。



≪・・・・・・あなた、話分かってないでしょ。乗りたいと言ったのはエリオさん達ですよ?
この人、それを拒否してたんですよ? それで自業自得も無いでしょ≫

「そうだよ。そもそもコイツら居なかったら普通に僕は帰れてるのよ?
なんでそれで僕が悪いのさ。話おかしいでしょうか。横馬、マジでバカでしょ」

「いや、だからそういう事じゃないの。私が言いたいのは」

「・・・・・・あの、ヤスフミ」

「なにさ」



不満そうな横馬とは対照的に、フェイトは表情を暗くしていた。

・・・・・・そんな申し訳なさげな顔してもだめ。僕は今日とっても機嫌が悪いの。



「ヤスフミは今きっと、凄く疲れてるだけだよ。あのね、今日の事はその・・・・・・私も悪かった。怖がらせちゃったしね」



そうだね、相当に怖かったね。だってマジで殺気が戦闘中に感じるソレなレベルだったし。

反射的にアクセルを踏み込んだのは、戦闘者として培ってきたもの故と思って欲しい。



「だけどもう少しだけ考えて欲しいんだ。ヤスフミは今私達の部隊に居るよね。
私達の居場所の中で、あんまりそういう態度は取って欲しくないの。つまりその」

「分かった。じゃあ六課辞めるわ。それならいいでしょ」

「ううん、違う。そういう事じゃないの。あの、落ち着いて?」

「僕は落ち着いてるよ。だから、フェイトは自分達の居場所がゴチャゴチャするのが嫌なんでしょ?
だから僕に六課を辞めて欲しい。うん、これでいいよね。はい、決着決着」

「だから違うよっ!!」



・・・・・・いや、もうそれでいいって。僕はもう正直めんどいのよ。非常にめんどくさいのよ。



「・・・・・・エリオやキャロとも、みんなとも仲良く出来るはずなの。仲間として繋がっていけるはずなの。
あの、少しずつでいいから頑張ってみようよ。私・・・・・・力になるから。フォローもちゃんとするよ。だから」

「絶対に嫌だ」



めんどくさいので、僕は即答する。フェイトを悲しませてるのは胸が痛いけど・・・・・・別にいいのよ。



「こんなくだらない事になるような部隊なんて、そんな部隊に居る連中なんて、好きになる理由そのものが無いでしょ。
もう一度言うけど、僕はコイツらと仲良くする義理はないし、どうなろうと知ったこっちゃない。だからゴチャゴチャ抜かすな。OK?」

「・・・・・・ヤスフミ」





・・・・・・・・・・・・本日の教訓:プライベートでミニパトに乗るのはやめましょう。

そして友達でもなんでもない仕事場の人間を自分の車に乗せるのもやめましょう。

そんな事をした場合、例外なくこうなります。なので、絶対だめ。



なお、この話をヒロさん達にしたところ・・・・・・こんな反応が返ってきた。





『『あーはははははははははっ! もうダメっ!! アレかっ! うちらを笑い殺したいのっ!?』』

「・・・・・・もしもしっ!? そんなに楽しいですかっ! こんちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・回想はおわ・・・・・・り・・・・・・です。
あぁっ! 恥ずかしいよっ!! 私いったいなにやってるのっ!?」

「大丈夫だよフェイトちゃん」



頭を抱える私に、ヒロさんが優しく肩をポンと叩いてくれた。



「そうだよ。気にする必要はないぞ?」



サリさんも同じく。・・・・・・なんだろう、この優しさがすごく



「「うちらは面白かったからっ!!」」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



突き刺さったっ! なにかが私の心に突き刺さったよっ!!



「フェ、フェイト落ち着いてっ! ヒロさん達も余計なこと言わないでっ!! つーかなんでトドメ刺してるっ!?」

「は、恥ずかしい。穴があったら入りたいよ」



うぅ、私なんかだめだな。もっとこう・・・・・・しっかりしたいのに。



「やっさん、ブレイクハウトで作ってやりなよ」

「そーだよ、こういうので男の器量は決まってくるんだ」

「あ、そうだね。ヤスフミ、お願い。穴を作って? 私、その中で悶えたい」

「だからフェイトも落ち着けっ! そんな必要ないからねっ!?」



必要あるよっ! 私その・・・・・・凄く恥ずかしいんだからっ!!

自分で自分に今の回想の中で相当数ツッコんだんだよっ!? それくらい恥ずかしいんだからっ!!



「で・・・・・・それでなんですか?」

≪ようするに、最後のプレゼントが出来たと言う話ですよね≫



うん、そうだよね。確かマリーさんと協力して作ってた・・・・・・デバイスだったよね。



「うん。で・・・・・・それがこれ」



そうしてヒロさんが出したのは、長方形のケース。

ヤスフミがそれを大事に受け取って、開ける。私も起き上がって、軽く中を覗くけど・・・・・・え?



「・・・・・・これ」

「マジックカード・・・・・・だよね?」



マジックカード。ヤスフミが数年前に開発した個人装備。あれ、でもこれちょっと違う。

ヤスフミのカードは全部銀色だけど、これは銀に青の縁取りがされてて、カードの装飾も。



「ふふふ、気付いた? 実はこれ、やっさんのマジックカードの改良型なんだよ」

「「改良型っ!?」」

「まぁ、『1枚につき、一つの形の魔法を一度だけ』って特性は変わってないけどな。
でも、貯蔵出来るデータと魔力容量が多少ではあるが上がってる」



だから改良型という事らしい。というより、バージョンアップ版だとサリさんが言った。

言うなら『マジックカード・Ver1.2』って感じかな。



≪でも、よく改良出来ましたね。マスターもマリエルさんも、相当苦労して形にしたのに≫



うん、覚えてる。ヤスフミ、凄く苦労してたから。どうしても安定した形にならないって言ってたもの。



「それはここ数年の技術発達のおかげだよ。まぁ、これからのアンタには必要だと思ってね。・・・・・・どう、気に入った?」

「あの・・・・・・気に入ったっていうか、ビックリしたっていうか、驚いたっていうか・・・・・・あの、ありがとうございます」

「あー、いいっていいって。でも、マリーちゃんにも言っておいてね? 反応、期待してたから」

「はい、了解です」



・・・・・・ヤスフミ、本当にいい友達を持ったよね。うん、感謝しないとダメだよ。

でも、新型マジックカードか。どんな感じか気になる。ヤスフミの新しい力になるわけだし、魔導師としても興味がある。



「うし。それじゃあ、早速明日から試していくよ。大丈夫だとは思うけど、一応練習しとかないとね」

「はい」

「ヤスフミ、私も付き合うね。どんな感じか気になるし」

「うん、よろしくね。フェイト」





・・・・・・うん、頑張っていこう。私も、負けてられないよね。



その・・・・・・しっかりしないと、ダメかなと。私、今よりも強くなりたいから。



本当の意味で、速く、鋭く、折れない刃になるために。





「・・・・・・あー、ヒロ。話勝手にまとめるな。あと一つあるだろうが」

「あ、そうだったそうだった」

「え?」



その言葉に、私はヤスフミと顔を見合わせる。そして軽く首を傾げてしまう。



「あのヒロさん、あと一つって」

「まぁこっちは私じゃなくてイルドからのもらいもんだけどね」

「イルドさんからの?」



ヒロさん達とヤスフミの間では話が通じてるらしいけど、私は軽くさっぱり。

その辺りが表情に出ていたらしく、サリさんが私を見て補足を加えてくれた。



「あー、フェイトちゃんは知らないよな。・・・・・・イルドってのは、地上本部第十三技術部所属しているイルド・シー一等陸士。
俺とヒロはそこの主任と仕事絡みで前々から知り合いでな。やっさんの修行の時に軽く顔合わせてたりしたんだよ」

「イルドもやっさんや私らに負けないくらい、地球のアニメ・特撮関係大好きでさぁ。それが縁で仲良くなってんのよ」

「なるほど。じゃあ三人の共通のお友達なんですね」



つまり、もう一つのプレゼントはその人が作ったものだよね。技術関係の人なら、やっぱりデバイスの類かな。



「それで・・・・・・これだよ」



唐突にヒロさんが右手から取り出したのは、銀色のベルト。そして黒いパス。それをヤスフミにそのまま渡す。

ヤスフミは大事にそれを受け取って・・・・・・軽く首を傾げる。



「あのヒロさん、これDEN-Oジャケットじゃ」

「DEN-Oジャケット?」

「物理装甲込みの特殊ジャケット。電王の全フォームを再現してる装備で、僕達が共同で作ったの」



そ、そんな事してたんだ。なんというか修行時代って、色々趣味関係に走ったりしてたんだね。



「あー、違う違う。てゆうか、覚えてないの? アンタがイルドのアイディアに乗っかって『作りたい』って言ってたじゃないのさ」

「え、僕が?」



ヤスフミはそう言われてベルトを見つめて少し考えて・・・・・・ハッとした顔になった。



「え、じゃああのこれ・・・・・・えぇっ!?」

「感謝しなよー? イルドの奴、わざわざやっさんの分まで作ってくれたんだしさー」

「あの・・・・・・ヒロさん、これって」

「やっさんの新しいリーサルウェポンだよ」

「はぁっ!?」










そして装備の実験などにも付き合って・・・・・・私は非常にビックリした。だ、だってあの・・・・・・色々ありえないし。

ただ、それで効果が非常に高いのがビックリではあったりする。まぁ、でもいいのかな。

ヤスフミ、とっても嬉しそうだもの。・・・・・・でも、そうなんだよね。今のヤスフミの味方、本当に沢山居る。





きっと自由で真っ直ぐで、キラキラしてるヤスフミに惹かれて・・・・・・これでいいんだよね。





私は、そんなキラキラなヤスフミが大好きだから。ヤスフミがいつでも笑ってくれるなら、どこに居てもいい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。僕達が早速アレコレ試したり、ヒロさんと美由希さんが楽しく組み手をやったりした午前と午後を過ごした。





そこで・・・・・・隊舎にお客様が来た。さて、突然だけどみなさん覚えているだろうか?





僕がメガーヌさんにデートの結果報告の約束をしたのを。当然、それは行われた。というか・・・・・・あのね。










「いや、ごめんね。来ちゃった♪」



すみません、頭抱えました。・・・・・・てーかなんで居るのっ!?

聞くところによると、まだ病院とお友達な生活のはずなのにっ!!



「あ、あの・・・・・・メガーヌさん、なんで来たんですか?」

「もう・・・・・・そんなこと聞かなくても分かるでしょ? 私はあなたの」



そこまで言って、メガーヌさんは軽く頬を染めてそっぽを向いた。



「あ、ごめんなさい。これはみんなの前では内緒だったわね」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ! その妙な言い方やめてっ!!
てゆうか、みんなの僕を見る目が痛いですからねっ!?」



具体的に言うと、スバルやなのは? シャマルさんと美由希さんもだね。



”・・・・・・なぎさん”



いや、もっと痛いのが居た。具体的にはすっかり馴染んでしまったあの連中。



”アンタ、これはなに?”

”いや、何と言われましても・・・・・・幻覚?”

”いや、そんなわけないでしょ。現実に目の前に居るしさ”



あー、そうだね。うん、知ってた。もしくはメガーヌさんとしか言いようがないって。他にないって。



≪あなたはアレですよ。現地妻4号ですよね?≫

「そうね、そうなるのかしら」

「ならないですからっ! つーかなにを自然に受け入れているっ!!」



あ、なんか視線が痛くなったっ! つーか殺気っ!?

その瞬間、両肩と頭を捕まれた。というか、視界が遮られた。



「アンタ、ちょっと来なさい。現地妻って・・・・・・なに?」

「恭文、知ってると思うけど、メガーヌさんって私のお母さんの友達なんだ。
そんな人に・・・・・・なにしてくれてるのかな」

「恭文くん、増えるのは構わないけど、現地妻1号である私に、事前に話して欲しかったわ」

「そこは私もだよ。一体何したのか、ちゃーんと聞かせて欲しいかな」










そうして、僕はドナドナされました。美由希さんが前に居るんじゃ、逃げる事も不可能。





あれ、おかしいな。なんでこんな事に? 昨日はとってもハッピーだったのに。・・・・・・まる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文くんも大変ね」

≪そうですね≫

「あら、アルトアイゼンちゃんいつの間に」



いつの間にか私の手元でぷかぷか浮いてるの。うーん、普通にビックリだわ。



≪これくらいは当然です。説教など聞きたくありませんし≫

「むむ、器用ね。さすが裏ヒロインと呼ばれるだけのことはあるわ」

「・・・・・・いや、関係無いでしょそれは」

≪ねーちゃんがしたたかなだけだと思うぜ?≫



その声は二つ。後ろから聞こえてきた。振り返ると・・・・・・居た。私の親友と、その相棒が。



「あら、ヒロちゃん」

「よ。つか、元気そうだね」

「それはもうバッチリよ」



車椅子の上で私は、軽く笑顔になりつつもガッツポーズなんて取ってみる。

・・・・・・お願いだから、それを見て苦笑いなどしないで欲しいわ。



「ま、気に入ってるのは分かるけど、やっさんはあんまからかわないでやってよ? フェイトちゃんと雰囲気良くなってるしさ」

「あら、そうなの」



ふーん、じゃあ成功はしてるのね。ならよかった。でも・・・・・・ちょっとつまらないなぁ。

お姉さん的には、もっともっと深いところまで教えてあげたかったのに。ま、ここはいいか。



「ねー、ヒロちゃん」

「なにさ?」

「フェイト執務官、今居るよね? ちょっと話があるんだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



話と言っても、別に恭文くんのことじゃない。私やルーテシアの事なの。

現在、ルーテシアの裁判が行われている。フェイト執務官は、その辺りで色々と便宜を図ってくれている。

私が目を覚ますまでは、身元引き受け人にもなっていてくれていたしね。





何て言うか、そんなお世話になっている人に、改めてちゃんと挨拶しておきたくて。





それに私の命の恩人でもあるし、そこはまた改めてよ。私、最近まであんまり派手に動けなかったから。










「・・・・・・というわけなの」

「なるほどね。じゃあ後ろに入ってた菓子折りはそれか」

「それよ」



ヒロちゃんに車椅子を押してもらい一旦外に出た上で事情説明。

車椅子の身としては、結構安心な時間。ヒロちゃん、男前だしねー。



「で、どんな感じよ?」



この『どんな感じ』が私やルーテシアちゃんの事だと言うのは、もう聞くまでもないわよね。



「私はまぁ大丈夫。リハビリも始めてるから。でもルーテシアは、島流しは決定・・・・・・かな」





ルーテシアはさすがに無罪放免というわけには行かなかった。・・・・・・無人世界への島流し。

まだ開発途上の世界にあの子を送って、それで罪を償わせるというのが・・・・・・判決。

なので、私は保護者として一緒に同行する感じかな。もちろん最低限のフォローはしてもらえるから、まだなんとかなる。



ガリュー達も残してもらえるようになったし、魔法能力自体は大幅封印こそされるけどそれだって期限付き。

だからこれは、ルーテシアの心情や環境、そう言ったものを考慮した上での温情処置とも取れるの。

良くて数年は一つの世界からは出られないけど、連絡や通信環境はかなり自由に出来るそうだし、まぁいいかなと。





「・・・・・・そっか」

「フェイト執務官もかなり頑張ってくれたんだけど、その他の細々とした事もツツかれちゃってね。特に」

「ゼスト・グランガイツが一緒に居たのに・・・・・・とか?」

「そうだね」



ゼスト・グランガイツ・・・・・・ゼスト隊長はスカリエッティとは違う、良識的な大人。だったらという事なの。



「それなら局に保護を求める事も出来たんじゃないかって」

「また無茶苦茶な・・・・・・そんなの無理でしょうが。その局のトップそのものが黒幕だったってのに」

「うん。でもまぁ、検事役っていうのは罪を厳しく問い詰めていくのがお仕事だもの。
それに、それが出来る可能性があったのもまた事実だとは思うから」



この六課の人達みたいに、良識的な人も居るしね。そういう人達に頼る事をすれば、もっと早く・・・・・・って。

ルーテシアを責めるというよりは、そういう側面も少なからずあった事を知っておいて欲しいという感じかな。ま、勝手だけどね。



「でもね、ずっとではないと思うの。あそこでの行動次第だけど、多分数年で刑期を終えられる」

「あ、そりゃ良かったね」

「うん。まぁ親子二人でこれまでの分、埋めていくわ。時間は思いっきりあるんですもの」





やりたいこと、色々あるわ。あの子に料理や家事を教えたり、一緒にご飯を食べたり。

大人になったら、好きな子のそうだ・・・・・・まぁ、これは当分先ね。恭文くんはアウトっぽいし。

でも、親子としての時間を、しっかりと刻んで行きたいかな。



罪は罪でしっかり償わなきゃいけないけど、それで幸せになれないなんて・・・・・・おかしいもの。





「そうだね、そうするといい。ま、私もたまに会いに行くからさ」

「うん、お願いね。あと」

「うん?」

「・・・・・・ありがと」



色々と助けてもらったそうだし、実はこれも・・・・・・今まではちょっと照れくさくて言えなかった。

だから私は、車椅子に座りながら前だけを見て、ヒロちゃんに小さくそう言った。



「いいさ別に。・・・・・・私は、私の戦いってやつを私の勝手でしてるだけだし。
何時だって、どんな時だってね。そこだけは絶対に変わんない」



あら、照れてるわね。・・・・・・照れ屋なところも変わらずか。うん、いいことね。



「そっか。それで・・・・・・どう? ヒロちゃんと同じくそういう戦いをしているあの子は。
・・・・・・あ、細かい経緯はメールでは聞いてるんだ」

「あら、そうなの」

「うん。これでも私、恭文くんからはそれなりに信頼されてるもの」



軽く胸を張るのは、きっと誇らしいから。・・・・・・仲良くしていきたいあの子に信頼されている事が、誇らしいの。



「・・・・・・アンタが聞いている現状そのままだよ。てゆうかさ、これフェイトちゃんの使い魔のアルフが言ってたんだけどね」

「うん」



お使い途中にこっちに来た時に、ヒロちゃんが少し話したらしい。というか、クレームをつけたとか。

『早くどうにかしろ』と言ったら、涙目になられて謝り倒されて非常に困ってしまった・・・・・・らしい。



「保護責任者とやっさんが派手に決裂しちゃったから、クロノさんも手出しし辛いみたいなのよ。
もし自分までそこを失敗したら、連鎖的にやっさんとの事までひどくなる可能性があるとかなんとか」

「あー、それは確かにね。だから余計にって事かぁ」

「やっぱそういうもん?」

「ヒロちゃんのところのご両親はかなり自由気ままな方だからアレだけど・・・・・・一般的にはそういうものよ」



うーん、恭文くんは大変だなぁ。それで隊舎暮らし・・・・・・もしかして、そこまで狙ってこれじゃないわよね?

隊舎で暮らせば、今度こそ部隊や局を好きになるとか・・・・・・って、それは無いか。



「でも、それだとその使い魔さんは味方してくれてる感じなのよね」

「そうだね。事件中と事後にゴタゴタして、かなり反省したらしいよ。
自分でフォン・レイメイの事を調べたりもしたらしくてさ。それでみたい」

「そう。なら、まずは家の方だね。うーん、いっそ私のマンションで同居しようかしら」



あ、それいいわね。ほら、私は現地妻4号なんだし、問題ないわよ。

朝はキスで起こして、お昼のためにお弁当作ってあげて、夜は・・・・・・いっぱい愛し合うの。



「よし、そうしようっと。早速恭文くんに相談を」

「・・・・・・いや、それ無理でしょ。やっさん引くし、フェイトちゃんが気にするし」

「大丈夫よ。本妻であるフェイトちゃんには認めてもらうから」

「いや、そういう問題じゃないからっ!!」



・・・・・・さすがに本気では言ってないんだけどなぁ。

てゆうか、フェイトちゃんがOKしても恭文くんは絶対だめよ。



「うーん、それならヒロちゃんがどうにか出来ないの? ほら、オーナーさんなんだから」

「・・・・・・一応そこもさ、アルフに相談されて考えてるのよ。最悪不法占拠者と見なして叩き出すとかさ。
でも、やっさんを『パパ』と慕ってる子達があそこ気に入って楽しく過ごしてんのよ。そこで強制退去は」

「・・・・・・それは躊躇っちゃうわね」



やっぱり平和的に会話による解決しかないのかなと思った時、どこからともなく怒号が聞こえた。

あら、凄いわね。空気が震えたわ。さすがに『四人が最大音量で叫ぶ』とこうなるわよね



「察するにバストタッチの話かしら」

≪でしょうね。そんな気配がします≫

「・・・・・・いや、アンタらなんで分かるのさ」

≪レディとねーちゃん、スゴすぎるぜ≫

「当然よ。私は恭文くんの、現地妻4号ですから♪」










・・・・・・日々は静かに、そして騒がしくも過ぎていく。私達の日常は、ついに年越しというイベントを迎える事になった。





でも、その前に重要なイベントがある。それは・・・・・・クリスマス。私もルーテシアにクリスマスプレゼントをしたくて、今から準備中。





そしてそれは恭文くんも同じみたい。というかというか、特別な日でデートするとか。・・・・・・フェイト執務官かしら。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



メガーヌさんが来たその日の夜。私はまた談話室でヤスフミとお話。





昨日の話の中で少し気になっていた事を、ちょっとだけ聞いてみる事にした。










「・・・・・・ね、ヤスフミ」

「何?」

「正直に答えて欲しいんだ。六課の事・・・・・・嫌い?」

「うん」



・・・・・・出来れば即答はやめて欲しかった。その、言うなら溜めたりして欲しいなーとか思ったり。

でも、そういうところもヤスフミらしさでもあるのかなと思って、軽く苦笑する。



「だって、バカばっかだし。その上後見人のせいで僕は自宅から追い出されてるし」

「でも、それだけじゃないよね」



いつもの皮肉めいた調子でそう言うヤスフミの言葉を、私は軽く遮る。

四角いテーブルの向かい側に座ったあの子は、少し・・・・・・意外そうな顔をした。



「昨日の話・・・・・・ほら、私がその大ポカやらかした話、思い出したじゃない?」

「うん」

「アレでね、気づいたんだ。・・・・・・ヤスフミ、六課が私達を利用した場所だから。
だから、あんな風に嫌ってたのかなって・・・・・・思ったんだ。違う?」

「・・・・・・違わないかな」

「うん、やっぱりだったか」





お泊りデートでしたお話の時、ヤスフミはナカジマ三佐やクロノのような身近の信頼出来る人すらも『信じられない』と言った。

その理由は、六課という場所のせい。私を含めた隊長陣もだけど、部隊員も色々な都合で局に利用されてしまったから。

真実を告げられず、理不尽に命を賭けさせられ・・・・・・多分、なのはの後遺症の事や私の事もその感情を助長させている。



ある部分ではね、ヤスフミの言ってる事はただの子どものわがままとして切り捨てる事が可能なんだ。

だってこれは当たり前の事だから。局・・・・・・警備組織の人間では、当たり前の事なの。

末端部分とも言える私達前線に、任務における全てが知らされる事は、実はそう多くはない。



与えられる任務の重要度が高ければ高いほど、その傾向は強い。だから今回もそれと言えばそうなる。

それでも上を、組織の在り方を信じて私達は与えられた任務に従事して事態を解決する。

それが私達の仕事であり、組織人としての在り方。きっとこれに関しては、どこでもそうなんじゃないかな。



・・・・・・そうなんだよね。私達の行いは『組織では当たり前の事』で片付けられる。

だけど、『片付けられる』から『罪が一つたりとも無い』という結論にはならない。それは違うと思うの。

私を含めた隊長陣や母さん達後見人が、スバル達を道具扱いしたのは事実。



美味しい餌をチラつかせて、死ぬかも知れない現場に何も知らせずに送り込んだ。

さっき事件の重要度が高ければ高いほど、事実が隠匿される率が高くなると言ったと思うけど、それは矛盾も含まれている。

重要度が高いという事は、危険度が高い事の裏返しでもあるから。



だから、事実を知らせる事は単純に気構えを作るように促したり、生存率の向上にも繋がる。

何も知らないで突発的な事態に対処するより、ある程度構えた上で対処した方が絶対に効率がいいしね。

でも、それすらもなくて・・・・・・今もみんなには何も言わないし、言えない。



ヤスフミはきっと、私なんかよりずっと優しい。優しいから、そういうものに対して納得出来ない。

だから今だって、少し苦い表情で私の言葉に頷いてくれた。だって私達、やっともう一度向き合う事が出来たから。

母さん辺りは『そのための対価は払っているし、問題はない』って言ってたけど・・・・・・それもアレなんだよね。



部隊員で死亡者が誰も出なかったから言える部分があるのは、否めなかったりするから。

なんか、ホントにダメだな。六課は私達の夢の部隊だったはずなのに・・・・・・結果的に何か、大事なものを無くしてしまった気がする。

夢を通すのに綺麗事ばかり言ってられないのは、分かるの。それは分かるの。



でも、だからってこれはいいのかなって・・・・・・ちょっと考えてしまった。






「・・・・・・ごめんね。私、もっと早く気づくべきだった」

「別に謝る必要ないし」

「ううん、必要あるよ。私がそうしたいの」



そうしたら、もっと色々とフォローも出来たから。

もっと、もっと早くズレを感じていたらと思うと・・・・・・色々と考えちゃうんだ。



「じゃあ、もう一つ質問。・・・・・・今でも『みんな』とは、友達じゃない?」



みんなは、スバルやティアにエリオとキャロ・・・・・・六課の部隊員の『みんな』。

私がそういう含みを持たせた上で聞いたのをヤスフミは察した。だから、表情が変わる。



「当たり前でしょ。別に仲良くする義理はないし」



それは以前と変わらない言葉。ヤスフミはお手上げポーズでそう言った。

でも、私はそれが嬉しくて・・・・・・優しく、微笑んでこう言う。



「・・・・・・そっか」










だってヤスフミの言葉、前よりずっと優しいものになってた。少しずつだけど、変わってるものがあるの。

それは六課という場所どうこうなんて関係ない。ヤスフミと『みんな』との間が変わったから。

これで、いいんだよね。『友達だ・仲間だ』なんて素直に言えなくても・・・・・・きっと、これでいい。





だって私、もうちゃんと分かったから。ううん、また見失わないように、今も探し続ける姿勢を持っている。





だから安心出来る。私は、目の前の男の子が何時だって自分らしく笑っていてくれれば・・・・・・それだけで嬉しいから。




















(第31話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、かなり久々の改訂版です。改定前で言うと25話だね。
おまけもプラスして、ここの辺りは前後編になりました」

あむ「しかし、かなり変わってない? 暴走シーンがとんでもない事に」

恭文「あむ、気にしなくていいから。この時の僕は・・・・・・アレだ。きっとイライラしてたんだ。フェイトを助手席に乗せられなくて」

あむ「いや、これは気にするじゃんっ!! ・・・・・・というわけで、挿絵がどうなるかとか心配な日奈森あむと」

恭文「もう有志を募った方が早いんじゃないかと思った蒼凪恭文です」





(ググれカス)





恭文「あぁもう分かってるよ。まずは自分で動いて調べてが基本だもんね。そうじゃないと、某掲示板とかで叩かれるもんね」

あむ「そうなの?」

恭文「そうなの。検索エンジンとか、ピクシブや理想郷みたいなその手のものの情報が沢山ある場所もかなり増えてるしさ。
『下調べも無しでそういうのを質問しないように』って規約に書かれてる場合もあったりする」





(まぁ、『調べてどうにかなるならそれでどうにかしましょう』という事ですね)





あむ「ふーん、なんかめんどくさいんだね」

恭文「めんどくさくても、そういう努力は大事なのよ。
ちなみにそこをやらないで質問ばっかしてる人を『質問厨』と言ったりする」





(なので、調べ物はまず検索してみましょう)





恭文「ところであむ」

あむ「ん、なに」

恭文「実はさ、同人誌の事調べてる時にしゅごキャラの同人誌を調べたのよ」

あむ「あ、そうなんだ。何かあった?」

恭文「・・・・・・キツかった」

あむ「なんでっ!?」





(蒼い古き鉄、普通に崩れ落ちた。現・魔法少女はその意味が分からなくてただ驚くだけ)





恭文「主に『なでしこ(なぎひこ)×唯世』とか、あむがエロな感じで頑張ってるのとか?」

あむ「アンタなに見てんのっ!? てゆうか、前者おかしいからっ!!」

恭文「いや、大半がそんな感じで・・・・・・ダメ。やっぱ小学生とそうなるとか無理。
もっと言うとリインと今の段階でエッチするとか絶対無理」





(『むー、どうしてですかー!? リインはいつだって恭文さんのものになる覚悟が出来てるですよっ!!』)





あむ「まぁ・・・・・・リアルに想像しちゃったからそうなるんでしょ。大丈夫、アンタまだマトモだって」

恭文「だからあむ、ごめん。IFアフターでもやっぱりあの路線で」

あむ「あ、それはダメだから」





(にっこりと笑顔で現・魔法少女はそう言う。蒼い古き鉄、久々に感じる威圧感に軽く引く)






恭文「い、いや・・・・・・でも、ほら。エロとか恋愛とかこうね?」

あむ「大丈夫だって。ちゅーまでなら許されるんじゃないかな。ほら、歌唄もしてたし」

恭文「いや、だからダメだよっ!? 僕捕まるからっ!!」

あむ「大丈夫。あたし黙ってるし」

恭文「それでも読者見てるでしょうがっ!!」

あむ「・・・・・・いいからやれっつってんでしょうがっ!!」





(あ、なんかキレた)





あむ「てゆうか、IFアフターやってもあの路線っ!? マジありえないしっ!!
またあたし除け者な感じは嫌なのっ! だからちゅーでも添い寝でも頑張るからあたしをヒロインとして扱えー!!」

恭文「いやいや、扱ってたよねっ!? もうすごい勢いで」

あむ「あたしより歌唄やフェイトさんがそれっぽいんですけどっ!?」

恭文「・・・・・・気のせいじゃないかな。ほら、まずフェイトとは婚約しただけだし、歌唄とは肉体言語で語って抱きしめあっただけだし」

あむ「そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうかそれだけやれば充分だよねっ!?
なのになんであたしはたい焼き食べてハグしただけなのかなっ! マジおかしいしっ!!」

恭文「しゃあないでしょうがっ! 小学生にそれ以上したら犯罪なんだからっ!!
・・・・・・あぁ、分かったよっ! だったら婚約しよっ!? それなら大丈夫だよっ!!」

あむ「・・・・・・え?」





(現・魔法少女、普通にそんな爆弾が飛び出たのでびっくりする)





恭文「アレだよ、IFアフターで婚約指輪に相当するものをプレゼントするよっ! それで確約するよっ!!
フェイトや歌唄がプラスされても、1番はあむだってさっ! それなら文句ないよねっ!!」

あむ「・・・・・・恭文、本気?」

恭文「もう本気だけど何かっ!? 大体・・・・・・あの、あむ」

あむ「なにかな」

恭文「いや、あの・・・・・・なんか急に冷静になったんだけど、僕とんでもない事口走ったんじゃ」

あむ「そんな事ないんじゃない? うん、あたしが1番って言ってるだけだし」





(現・魔法少女、そう言いながらなんだか嬉しそう)





あむ「というわけで、IFアフターの方針が決まった所で今日はここまで。本日のお相手はとっても気分がいい日奈森あむと」

恭文「今更ながら怖くなってきた蒼凪恭文でした。・・・・・・ね、撤回していい?」

あむ「だめ。・・・・・・うん、だめ。例え撤回してもあたしは覚えてるから、意味ないし」

恭文「いや、だからそれも含めて」

あむ「だめ」

恭文「・・・・・・ですよねー」










(ただ、現・魔法少女は知らない。IFアフターを書くにしても、ミッドチルダ・X編の後の事になりそうだと言う事に。
本日のED:T.M.Revolution『魔弾』)




















フェイト「・・・・・・これ、次回どうなるのかな。基本は変わらずなんだよね」

恭文「そうだね。基本は変わらずにゆったりのんびりだよ。そして・・・・・・問題が表に出始めると」

フェイト「あぁ、アレだね。うぅ、今からかなり怖いんだけど・・・・・・大丈夫なのかなぁ」

恭文「どうだろ、僕には分からないよ。というか、それよりも重要な問題がある」

フェイト「何かな」

恭文「・・・・・・あむがすっごい乗り気で怖い」

フェイト「恭文、それは仕方ないよ。というか、ちゃんと責任取らないとね。あ、もちろんIFの方限定で」

恭文「そうだね。本編でやると凄い事になるしね。うん、そこは大事だ」










(おしまい)





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