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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第66話 『Cyclone/悲しい炎を斬り裂く強き風』



リズム・クスクス・ダイチ『しゅごしゅごー♪』

リズム「火災現場はまだまだ混乱。あむ達も超ピンチでかなりヤバい事になってる」

ダイチ「てーかスバルさんも炎に巻き込まれて・・・・・・おいおい、嘘だろっ!?」

クスクス「うぅ、これどうなるのー!? というか恭文ー! 早くー急いでー!!」





(立ち上がる画面に映るのは、眩い光と『人形』の前に立ちはだかるあの三人)





クスクス「と、というかこの光は何ー!?」

リズム「なんかすっげーまぶしくなって・・・・・・凄い。胸にどんどんビートが響いてくるぜ」

ダイチ「おいおい、まさか・・・・・・まさかコレって・・・・・・!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あそこにトレディア・グラーゼは居なかった。だから私はここに来た。

耐熱防護服を着込み、両手でシルバーダガーを持ってマリンガーデンの区画から一気に突入。

なお、ここは消火活動のおかげで防災隊の突入口のひとつになっている。





消火担当の頑張りがあってか、ここはもうほとんど火は回っていない。そして現在は私一人。





だから私は、素の自分を出したりも出来る。










「ランスター執務官、フレイホークさん、聞こえますか? 今どちらに」



でもその前に、私は水浸しの通路をひた走る。

そして通信をかけながら、同じく水浸しな柱の一角に隠れるようにしつつ伏せる。



『マグナス執務官補? あ、もしかしてマリンガーデンに』



そして私の声に僅かな合間を挟んで、ランスター執務官補の声が返ってきた。



「はい。まず調査ポイントでマリアージュ三体と接触。こちらは問題なく排除出来ました。
ただ、トレディア・グラーゼはあそこには居ませんでした。それでヘリで急ぎこちらに」

『そっか。で、マグナス執務官補はどう動くつもりなんだ?』

「防災担当や要救助者にマリアージュが襲いかかる可能性があるので、その露払いを。執務官殿の指示です」



もちろん私一人ではどうにかなるわけがない。なので、やるのであれば他の人達と連携を組んだ上でだ。



『それでお二人は今どちらに』

『あー、結構近くだな。そっから800メートル程先の防水車両脇に居る。てーかほら、見えるだろ?』

「――見えます。というより手を振っていらっしゃいますね」

『ジン、アンタやっぱアイツの友達だわ』

『失礼な。俺はヤスフミよりは常識的だっつーの』



仲の良いことで。いや、それなりの付き合いがあるので信頼し合っていると言えばいいのだろうか。

現にここから見える二人をよく観察してみると、そんな様子が伺い知る事が出来る。



『じゃあマグナス執務官補、その指示通りにお願いします。
俺とティアナはちょっと海底遺跡に向かって、デートしてくるんで』

「デート?」

『もうちょっと言えば、イクスヴェリアの確保です』

「なるほど、納得しました」



現場でこういうジョークを言う人だとは思っていなかった。こういう時、普通は笑うべきなのだろうか。

あの苦笑し気味な表情のランスター執務官補と同じように。でも、私には難しい。



「ですがお二人だけでは危険なのでは。海底遺跡内部への道筋は火災と瓦礫のために塞がっていると聞いています」

『大丈夫ですよ。そこは奥の手があるんで。んじゃマグナス執務官補、御武運を』

『また後で』

「はい、また後で」



そうして、防水車両脇に居たバリアジャケット姿の二人はそのまま小走りに走っていった。

その様子を見送っている間に、この場には本当に私だけになった。



「行かれたか」



滴る水音とどこかひんやりとした空気の中、私は軽く口元が歪む。



「この混乱なら、自由に動ける。私も探しに行かないと」



そうだ、行かなくてはいけない。ずっと・・・・・・ずっと私は望んでいたんだ。



「耐熱防護服問題無し。弾薬、残り充分。・・・・・・この炎は、明けの星」



夢が叶う日を・・・・・・ずっとだ。ずっと手を伸ばし続けていた時間が、ようやく届くところまで来た。

必要なカードは二つあった。一つはイクスヴェリア。そしてもう一つは・・・・・・大量の死体。



「再生の炎の中で、イクスは王として蘇る。現在の稼働しているマリアージュは、63体。
だが出動している防災担当は、周辺含めれば数百人以上」



イクスヴェリアとコアだけでもダメだった。この兵器運用システムは、戦場という『日常』の中で最大限の力を発揮する。

死体がいくらでもある状況だからこそ、冥王は驚異になれた。だからどうしても作る必要があった。



「これだけ『材料』があれば・・・・・・充分だ」





この夢の世界に『日常』という一つの現実を。今は内戦地域で死体を漁るのも楽ではない。

そのためにここまで回りくどい事をした。『マリアージュ』という凶悪犯のイメージをここまでかけて作り上げた。

だからこそ誰もが注目し、止めようとする。そして誰もがこの煉獄の精製場に集まる。



私の夢を叶えるために。そして現実を思い知るために。そうだ、私はそれを知っている。でも無駄だった。



喜べ。お前達は世界を変える礎になる。そしてお前達はようやく『夢』から覚める。





「イクスが居て、死体をいくらでも作れるこの状況なら」



突然、後ろから空気を斬り裂くような音が聴こえた。それに反応する前に、私の背中は何かに撃ち抜かれた。



「うぁっ!!」



そのまま前のめりに倒れて、顔から柱にぶつかってしまう。だけど、そのまま私は崩れ落ちた。

シルバーダガー・・・・・・・あぁ、駄目だ。衝撃で手放して、届かない。



「撃たれ、たっ!? 背中から・・・・・・誰にっ!!」

≪その昔、『犯人はヤス』と形容されるゲームがあってな≫



足音は二つ。それがゆっくりと私に近づいてくる。私はなんとか寝返りを打ってその足音の方を向く。



≪とある刑事が殺人事件の捜査をするというゲームでな。そうしたらなんと、真犯人が自分の部下だったというオチだ。
プレイしていたハイ・マスターが『なんじゃこれっ!!』と叫んでコントローラーを投げ出したのも、今はいい思い出だ≫

「いや、何の話してんだっ!? 色々かかってるようで中途半端に的外れだからっ!!」

「ホントよ。・・・・・・あー、下手に動かない方がいいわよ? それ、特殊なスタンバレットだから。まる一日は動けない」



オレンジ色の髪を靡かせながら私に銃口を向ける女と、ランチャーを抱える男。



「執務官補、俺一緒に訓練した時に指摘しませんでした?
執務官補は集中してると、背中が甘くなりがちだって。
ガンナーなら、もっと視野を広く持った方がいいって言ったはずですけど」

≪あとは独り言も多いな。・・・・・・それらはフェイクではなくマジな癖だったとは。
内戦地域出身でありながら、今の今までそこを修正しなかった時点で色々アウトだろ≫

「ランスター執務官補・・・・・・それに、フレイホークさん」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第66話 『Cyclone/悲しい炎を斬り裂く強き風』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「マグナス執務官補、悪いんだけど私もコイツと一緒にぜーんぶ聞かせてもらったわ。・・・・・・あなたがこの事件の犯人なのよね?」

「確認する必要が、ありますか?」

「えぇ、するわよ? 私の一生のパートナーの受け売りでね。
こういうのはじわじわ追い詰めるのが礼儀らしいから」



あー、なんで前に進んだ私達がこっち来てるのかとかは色々疑問よね? まぁタネは簡単よ。



「どうして後ろに・・・・・・高速移動? いや、幻術?」

「さぁどっちでしょ。そこはご想像にお任せするわね。
亀から『他人に手札は見せるな』って教わったから」

「なんですか、それは」

「亀は亀よ。それ以外の何ものでもないわ」





なお、正解は後者よ。フェイクシルエットで私とジンの幻影を作って、それをマグナス執務官補に見せたの。

実際は執務官補がマリンガーデン内部に突入した段階から後ろに居た。気配を消して、尾行してたの。

ジン共々、何か尻尾を出してくると踏んでしばらくそれを維持するつもりだったんだけど、どうも必要なかったみたいね。



だって思いっきり自供しちゃったもの。問題なく逮捕出来るわ。というわけで・・・・・・バインド発動っと。



オレンジ色の縄が執務官補・・・・・・いいえ、ルネッサ・マグナスの身体を縛る。





「・・・・・・私の事は、いつからお気づきで」

「・・・・・・昨日、食堂での話を聞いてからだな。俺もそうだしウエバー執務官やティアナもだ」

「ランスター執務官補にまで・・・・・・・ですか。私が何か、ミスをしましたか?」

「ミス? ・・・・・・俺達の前であんな本心さらけ出したのがミスそのものだろうが。
知ってるか? アンタと同じ思考のテロリストはゴマンと居るよ。だからウエバー執務官は疑った」



どうもそこで・・・・・・らしい。ただ、まだ決定じゃなかった。ウエバー執務官は危機感を持っただけ。

この人がそうならないように歯止めがかけられればと思って、あんな話をしたんだから。



「あと私は・・・・・・そうね、あなたが『トレディア』の名前を聞いた時、寂しそうな瞳と声をしてたからかしら」





苦しげな彼女は、驚いた顔で私を見る。だから頷いて答えた。うん、本当にたったそれだけ。

知り合いなのかなとか、ちょっと思ったの。フェイトさんのアドバイスもあったしね。

いや、知らなくてもこう・・・・・・聞き覚えのあるとかそういう方向で一応納得してた。



あの時、食堂での話とアイツからの情報提供という二つのキーが揃うまでは。





「実は俺達、昼間ちょこちょこっと調べ物をしてな」



これが執務官からの頼まれ事。執務官のツテを使って私達で急いで調べ回った。



「アンタ、オルセアの内戦地域でトレディアと一緒だったんだってな」



ルネッサを保護したNPOにも問い合わせしたりしたわよ。あとは保護された当初の事情確認のあれこれとか?

で、そこでちょろっと話してたのよ。戦場で自分の面倒を見てくれていた人が居ると。それが・・・・・・『トレディア』よ。



「本当に言い逃れが出来ない状況というわけですか。・・・・・・血の繋がりはありませんが、親子でした。
そしてそれ以上にあの土地で、地の底のような戦場で、同じ夢を見て戦った同志でした」



これで動機が生まれた。この事件を起こした理由――トレディアの意志を継ぐためかしら。

多分トレディアも、あの時のこの人みたいな感情を抱いていたんだと思う。そこはなんとなく分かる。



≪動機はその男の意志を継ぐためか?≫

「えぇ。・・・・・・救い出された先にあった平和な世界なんていうものを、信じてみたかった。だけど、そんなの空っぽだった。
――ただ人の数が多いだけっ! 人はどこでも戦って・・・・・・傷つけて、殺しあうっ!!
父もそうして裏切られて絶望したっ! だから、父は世界に気づいて欲しかったっ!!」

「気づく・・・・・・何にだよ」

「戦いの意味と、虚しさにっ! それを伝える事が・・・・・・それを知らしめる事が私の、私達の夢だったっ!!」



叫びが通路内に響く。響いて・・・・・・左隣に居るのが拳をギュッと握り締める音がした



「てめぇ、マジで」

≪マスター、落ち着け。・・・・・・まぁアレだ。本当にもっと、もっと色々と話せればよかったのだがな≫

「それでもきっと、私は・・・・・・変わらなかったと思う。この夢は、私とあの人二人分の夢だから」



嘲笑うような声はきっと・・・・・・私達や世界に対してのもの。・・・・・・何も言えるわけないわよね。

ここで私が説教かましても、結局は私の世界と現実を押し付けてるだけ。



「そうね、きっと無駄だったわよ。アンタは・・・・・・とんでもない勘違いしてるんだから」

「勘違い?」



昨日の繰り返しなだけなのは分かってる。でも、やっぱり言わずにはいられなかった。



「夢ってね、世界や他の誰かに『変わって欲しい・こうなって欲しい』って事じゃない。
それは違うの。他人やその世界は変わらないわ。変えることなんて誰にも出来ない」



私は左手を自分の胸に当て・・・・・・私があの街であの子達から教わった事を、こころの中から引き出す。



「自分がどう変わりたいか、どんな風になりたいかなの。ルネッサ・マグナス、アンタに一つ聞くわね。
アンタはそれを描いた事がある? 世界や他人に変わってもらう事ばかりを期待してない?」

「何をバカな事を・・・・・・こんな、こんな嘘だらけの世界で」

「だったらアンタが嘘っぱちというこの世界じゃなくていい。
アンタが現実だと思う中でそれを描こうとした事がある?
『戦場だから描けない』なんて言うのは言い訳よ?
そっちを自分から選んでるアンタには、そんな事を言う権利がない」



彼女は何も答えない。やっぱりヘタクソだなと思いつつも・・・・・・これだけで終わらせる事にする。



「・・・・・・昨日ウエバー執務官が言った通り、アンタは選択し続けてるの。もうその立場に居るの。
裏切られて絶望した? それが自分達の夢? ふざけんじゃないわよ。
アンタ達の夢は、子どもの癇癪と同じよっ! 周りが自分の思い通りにならなかったから、暴れ回っただけっ!!」



それだってやり方がある。こんなやり方を進んで選ぶ必要なんてどこにもない。

だから怒りを・・・・・・ありったけの怒りを込めて叫んだ。



「えぇ、たったそれだけよっ! それをイッチョ前に『夢』とか誇らしく語るなっ!!
それで他の人の命や夢を、世界を奪うなっ! そんな権利、アンタ達にはあるわけないっ!!」










彼女はただ、私の顔を困惑した顔で見ていた。やっぱりこういうキャラ、らしくもないとか思った。





もうこれは・・・・・・うん、封印よ。やっぱこういうのはアイツやあむの領域だって。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



もうさ、正直に言っていいか? 女って怖いと思った。いや、色んな意味で怖いって思った。

そして思った。ティアナを怒らせるのはやめようと。もう俺やバルゴラでは相手に出来ない領域に奴は居る。

・・・・・・でも、そんなティアナを普通にからかってセクハラして、ヤスフミはよく平気だよな。





まぁそんな話はともかくとして、俺とティアナで被疑者を引きずるように護送。










「ヴァイスさん、ウエバー執務官、被疑者の護送を・・・・・・お願いします」



俺は言いながら、手錠をかけたルネッサ・マグナスを目の前の二人に引き渡す。

なお、普通に空気が重い。まぁそりゃ・・・・・・身内が犯人だったわけだしなぁ。



「・・・・・・分かった」

「二人とも、ご苦労でしたね。彼女は私達に任せてください」



それでもウエバー執務官は普通にしようとしている。こういうところは尊敬するべきだと思った。



「さ、いきましょう」

「・・・・・・ウエバー執務官」

「なんでしょう」

「私を補佐官に誘ったのは、私の動揺を誘うためですか?」



あー、実は俺やティアナもそこは気になってた。というかこの人、元々疑ってたんじゃないの?

なんか今までのあれこれを見てると、どうしてもそういう風に感じてしまう。・・・・・・色眼鏡で見過ぎかな。



「さぁどうでしょうねぇ」



本当に軽く、どこか曖昧な感じでウエバー執務官は笑う。笑いながらも彼女を見る。



「ただ私、女性をお誘いする時にはそれなりの覚悟と礼儀は踏まえるようにしていますので」



それを聞いて・・・・・・彼女は笑った。ただ静かに言っている意味が伝わって、だから笑った。その笑いの意味は、きっと感謝だ。



「そうですか。ありがとう・・・・・・ございます」

「いえ」



そしてそのまま彼女を乗せて、アルトさんが操縦するヘリは飛び立った。まぁ、あとは大丈夫だろ。

元々ウエバー執務官は優秀な魔導師でもあるんだ。ヴァイスさんも居るんだし、ちゃんとしてくれる。



≪ティアナ、いつ話術サイドの人間になった? 中々の名演説だったぞ≫

「うっさい、そこには触れないでよ。普通に後悔してるんだから」



言いながら、ティアナはそっぽを向いて俺や右肩に抱えているバルゴラから視線を外す。

さて、このまま解決モードと行きたいんだが・・・・・・それは無理だよなぁ。



「それでティアナ、さっきの緊急連絡だけど」

≪お前、真面目にスバルの行動が――脱出地点が分かるのか?
ソナーもそうだがサーチ関係は一切アウトだと言うのに≫

「可能よ? 遺跡内部の詳細な地図に火災と崩落予想ポイントのデータがあればね」





スバル、普通に消息不明になっているらしい。いや、ここは訂正だな。

崩落に巻き込まれて海底遺跡内部に落下。そうして反応がロストした。

無事であればおそらく遺跡内部に取り残されている。



ただ、遺跡付近は瓦礫や崩落、燃焼が余りに酷過ぎてヤスフミ達以外は突入出来なかったらしい。

なお、ヤスフミ達が作ったルートは既に潰れてしまっているのであしからず。

対策本部の読みでは遺跡内部にイクスヴェリアが居て、遺跡付近のアレコレがひどいのはバリケード代わり。



ようするに、普通にマリアージュが俺達にイクスヴェリア確保を邪魔されないためにそうしたんだよ。

で、俺達がそれの除去ないし突入に手間取っている間に、イクスヴェリアを確保と。

ここまで言えば分かるだろう。遺跡内部にはマリアージュが犇めいている可能性もある。



マリアージュと紛れ込んでいる『素材』の捜索と確保のために、それ相応の数を揃えない理由がない。



なお、この辺りをあの女にも聞いたが・・・・・・自嘲気味に笑うだけで、何も答えてくれなかった。





「ただ、マリアージュがあのままだし・・・・・・ちょっと苦労するかも」





その上あの女、普通に手元にあったコントロールキーを破棄してやがった。

万が一に備えて、ヴァイスさん達と合流する前に壊したんだとよ。

ただ、それでも問題ないらしい。まず予備のキーを作るための材料は揃っていた。



そしてマリアージュには簡潔に言うと『イクスを使って自分達の僚機を増やし、世界を炎に染めろ』と命令しているそうだから。



ちなみに予備のキーを作るにしてもそれなりの設備は必要だし、時間もかかる。そこを待っている余裕はない。





≪つまり現存するマリアージュは全部排除だ≫

「そうなるな。ティアナ、俺が前衛をやる。お前は後ろからアシスト頼むな」

「了解よ」



手持ちのスキル的に、俺が前に出た方が良くはあるんだよな。俺、サイスフォルムとかあるしよ。



≪それでマスター、カウントは?≫

「いらねぇよ。俺達は、カウントが0になってからが本番だろ?」



・・・・・・って、つい乗っちまったけどコレなんだっ!? 普通に幸太郎じゃねぇかよっ!!

あぁ、ティアナがすっげー呆れた目で俺達を見てるー! でもな、俺達いつもこんなことしてないからなっ!?



≪その通りだっ! では行くぞっ!!≫

「「了解っ!!」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そんな、スバル・・・・・・・スバルさんっ! うそ、うそだよねっ!!」



ややが叫んで青い防御魔法から出ようとする。それを唯世くんが羽交い締めにするように止める。

スバルさんが、あのマリアージュの一体と一緒に砲撃を受けて・・・・・・爆発、しちゃったから。



「結木さん、落ち着いてっ!!」

「唯世離してっ! スバルさん・・・・・・スバルさんがっ!!」

「バカ者っ! この状況でお前が飛び込んでも・・・・・・・そうだ、僕達の誰が飛び込んでも、意味がないだろっ!!」

「防災、士長・・・・・・どうして」



キセキの叫びを聞きながらも、イクスが呆然としながら炎を見る。

というより、その中に巻き込まれたスバルさんを。



「アンタ達・・・・・・なんなのよ」



でもあたしは、その前に気にするべき事が出来た。言いながらあたしは、顔だけ後ろを振り返る。

後ろ・・・・・・あたし達が通った道から、さっき遭遇したのと同じ数のマリアージュが歩いて来る。



『僚機が撃ったのは、戦車すら破壊する砲弾です。人の身で耐えられるものではない』



あたしはゆっくりと立ち上がって、身体ごと振り向いてそいつらを見据える。



「アンタ達・・・・・・マジでなんなのよっ! こんな事して、何がしたいわけっ!?」

『我々はただ王の元でその望みを叶えるだけ。そして我々の王は闘争を望んでいる』



王・・・・・・・今マリアージュを操ってる奴の事だよね。・・・・・・ふざけんな。



「マジでふざけんなっ! もう頭きたしっ!! ・・・・・・渡さない」



ここまでやられて、スバルさんまで・・・・・・・そうだ、絶対に引かない。

うじうじも迷うのも今は無しだ。今はきっと、戦わなくちゃいけない時だから。



「アンタ達に、アンタ達の王様にイクスは絶対に渡さないっ!!
あたしが・・・・・・あたしが自分でこの子の力になるって決めたからっ!!」

『そうですか、なら・・・・・・死になさい』





先頭に立っていたマリアージュが踏み込んでくる。あたしは思わず身構える。

でもその瞬間、変化が起きた。あたし達の傍らを、轟音を立てながら青い風が吹き抜けた。

それは一人の女性。その人を見て、私も唯世くんもややも、イクスでさえも表情が喜びに染まった。



それは右拳を引きながら構えて、上半身に着ていた白の長袖のジャケットも全部吹き飛んでるのに、それでも走る。





「必殺っ!!」



左腕の二の腕の外側が抉れていて、そこから火花が散る。

損傷した機械部品を覗かせながら・・・・・・え、機械部品を?



「私の・・・・・・必殺技っ! パァァァァァァァトU!!」



先頭のマリアージュに向かって、その人は右拳をストレートに打ち込んだ。

マリアージュの身体が小刻みに震えながら吹き飛んで、後ろに控えていた連中に激突。そのまま爆発した。



「ど・・・・・・どうだぁ」

≪・・・・・・相棒、やっぱり振動拳にしませんか? 普通にこれは≫



拳を引きながらその人は、すぐにあたし達の方にローラーブーツでバックしながら近づく。




「だめ。だって良太郎さんもこっちがカッコいいって言って・・・・・・くれ」



でもあたし達の前に来た途端に、そのまま崩れ落ちた。



「ナカジマさんっ!!」

「スバルさん・・・・・・ふぇ、良かった・・・・・・良かった」

「あー、ごめんねややちゃん。あははは・・・・・・ちょっと危なかったかも」



傍らで崩れ落ちたややを見て、スバルさんは傷だらけなのに笑う。

・・・・・・なんだろ、恭文がバカやった時と反応が似てる。



「防災、士長・・・・・・どうして」

≪咄嗟にマリアージュを弾頭に向かって放り投げたんですよ。それで直撃だけは回避しました≫



あ、腕を掴んでたからそれでなんだ。じゃあもしかして、マリアージュからじゃなくてスバルさんが?



≪ただ砲弾にプラスしてマリアージュの爆発でしたから・・・・・・相棒も私もこの状態で≫



ケガがひどいのはスバルさんだけじゃない。そう言ったあの子に私達は視線を向ける。

足元のマッハキャリバーも損傷がひどくて、傷だらけで・・・・・・涙が出そうになった。



「はわわわ・・・・・・マッハキャリバー、大丈夫ですかぁっ!?」

「お前、本当にボロボロじゃないかっ! あっちこっちヒビが入って・・・・・・おい、しっかりしろっ!!」

≪スゥさん、王様も落ち着いて。外側はこれですが、稼働自体には問題ありません。
・・・・・・出来ればあむさんとスゥさんのリメイクハニーが欲しい所ではありますが≫

「りょ、了解ですっ! あむちゃんっ!!」

「うん」



戦ったりするのはダメだけど、リメイクハニーで怪我のお直しだったら得意。

あたしの中にある可能性の力・・・・・・まるであたしじゃないみたいだけど、それでもあたしの一部分。



≪相棒、それでいいですよね。これでまだ『大丈夫』は説得力がありませんよ≫

「あはは、そうだね。でもさ、その前にちょっと問題があって」

「問題?」

「・・・・・・まだ、居るんだ」



・・・・・・・・・・・・そうだ、忘れてた。スバルさんを横から撃とうとしたマリアージュが居る。

だからこそ、あたし達の後ろからまた足跡が聴こえる。それも複数・・・・・・ついでに前後から。



≪・・・・・・あぁ、そうでしたね≫



あたし達が元来た道からは10数体。そしてその向かい側からは2体。

合計20体近く。当然だけどこれを何とかしないとあたし達は・・・・・・死ぬ。



「もうちょっと、頑張らないとだめ・・・・・・かな」



言いながらスバルさんが立ち上がろうとするけど、そのまままた崩れ落ちた。



「スバルさんっ!? ・・・・・・もう無理だよ。だって身体中傷だらけで」



ランがそう言っている間にも、アイツらはこっちに来る。・・・・・・どうするの、あたし。

かなり最悪な状況だよね。それでどうする? イクスを『アンタのせいだ』って責めてさようならってする?



「ううん、大丈夫。大丈夫だから」



出来るわけ、ないじゃん。スバルさんがここまで必死になってまだ立ち上がろうとしてるのに、出来るわけがないじゃん。

だからあたしは一歩踏み出して、イクスとスバルさんを守るようにその前に・・・・・・アイツらの前に立ちはだかる。



『もう抵抗は無意味です。そこをどきなさい。イクスさえ渡してくれるなら、あなた達にこれ以上危害は加えません』

「渡さないよ。この子はアンタ達と一緒に行きたくないって言ってる。ずっとそうやって泣いてた」



正直さ、色々思うところが無いって言ったら嘘になるよ。だけどそれでもあたしはこうする。



「1000年とかそんな長い間、ずっと。こんな事嫌だ、こんな事したくないって泣いてた。
きっと一人で・・・・・・ずっとだよ。今ここであたし達が逃げたら、また同じことの繰り返しじゃん」



イクスは・・・・・・今あたし達の目の前に居るから。隣のランとスゥも同じようにイクスの前に立ってくれる。

だからあたし、意地っ張りキャラを通してこうやって立ち上がれるんだ。



「そうだよ、あむちーの言う通りだよ」



でも、あたしだけじゃない。ややが涙を吹きながら、唯世の腕をほどいて同じように立ち上がった。



「イクスちゃん・・・・・・自分の事をなんて言ったか分かる? 自分はただの兵器で、失敗作。
だから生まれてきちゃいけなかったって・・・・・・そんな悲しいこと、言ってたんだよ?」

『興味がありません。イクスはただ、我々を産み出すだけでいい。それこそがイクスの存在意義であり全て』

「だから・・・・・・だからあなた達には絶対に渡さないっ! そんな風に眠ってた子を道具扱いなんて、絶対嫌だもんっ!!
ややは赤ちゃんキャラだから分かるのっ! 小さな子は眠ってる時には、温かく優しく見守っていて欲しいんだからっ!!」



そして唯世くんもあたし達の側に来る。



「何より、陛下が嫌がっている。だから僕達は・・・・・・見過ごせない」

『なるほど、命が惜しくないわけですか。・・・・・・愚かな』

「ふん、笑わせるな。これでも僕と唯世は王でな。情けなくても、未熟でも、それは変わらん」



キセキも同じようにして、あたしやややと想いを同じにしてくれる。



「だが、そんな僕達に剣を預けて、信頼してくれる者達が居る。
そしてその者達がお前達と『戦う』と言っている。それなのに僕達がここでみっともなく逃げる?」



キセキはそこまで言うと、マリアージュを見ながら鼻で笑った。



「バカを言うな。王はいつだって、家臣達の前に立って道を示すものだ。・・・・・・命懸けで、全力でだ」

「ダメ・・・・・・ダメです。あなた達では彼女達には勝てない。・・・・・・私が行きます。そうすればあなた達に危害は」

『いいからジッとしててっ!!』



三人で声を揃えてイクスに視線は向けずに叫ぶ。



「・・・・・・やや、こんなのキャラじゃないけど・・・・・・本気で怒ってるの」



そう呟いたのはやや。でも、同じ事を言ったのはややだけじゃない。



「君達を・・・・・・いいや、君達の操手の行動を、僕は認めない。僕も未熟だけど・・・・・・王様だから」



唯世くんも同じく。そして二人は視線を落としながら言葉を続ける。



「イクスちゃんの・・・・・・赤ちゃんの眠りを勝手な理由で、勝手な理屈で起こして泣かせて傷つけるのなんて。
そのために沢山の人を怖がらせて、泣かせて、悲しませるのなんて。こんな想いでみんなの心を染め上げるのなんて」

「どんな理由があるかは分からないけど、誰も・・・・・・陛下すら望んでいない闘争を強いる『王』なんて」



そして二人は目を見開いて、普段とは全然違うシリアスなキャラでマリアージュに向かって全力で叫んだ。



「そんなの、ややは絶対に許さないんだからっ!!」

「そんな王、僕は絶対に認めないっ!!」



二人がそう叫んだ時、胸元から強い光が溢れた。これ・・・・・・ハンプティ・ロック?

そうだ、ハンプティ・ロックから光が溢れてる。その眩い光に全員が視線を向けて目を見開く。



「これは・・・・・・唯世とややの感情に、ロックが反応してるのかっ!?」

「なら、やる事は一つでちっ! 唯世、ややちゃんっ!!」

「あむちゃんもいくですよぉっ! それで一気にクライマックスですぅっ!!」

『・・・・・・なんですか、この光は』



言いながらマリアージュの一人の左手が変化する。それはさっきもみた大砲。

大砲・・・・・・またあの攻撃をするつもりだ。だからその前にあたし達は鍵を開ける。



「アンタ達には、アンタ達の親玉には一生理解出来ないよ。
・・・・・・本当に、随分あたし達の事をナメてくれたよね」



これはあれかな、恭文に預ける事を当たり前にするなって言うお告げなのかな。



「でも、もうこんなのは終わりっ! 今ここで・・・・・・あたし達に出来るありったけで、こんな時間は絶対に止めるっ!!」



だったらそれでいいよ。全部あたしの荷物にして、その上であたし・・・・・・もっと強くなるから。



「・・・・・・あたしのこころ」

「ややのこころ」

「僕のこころ」



『解錠』アンロック



『アンロックッ!!』










指を動かし、いつものようにこころの鍵を開ける。それと同時に砲弾が放たれた。





それは無慈悲に、そして確実に私達に迫る。そうしてその衝撃と炎があたし達を襲う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・イクスまでは傷つけていないだろうな』

『問題ない。威力は抑えめにしてある。それに後ろから僚機達も接近した』



イクスの方はがら空きだった。あの魔導師も重症を負って咄嗟に反応は出来ない。これならば問題ないだろう。



『そうか。それならば大丈夫か』



それでもあの程度の障害ならば遠慮なく吹き飛ばせる。だが、イクスに傷はない。そこの辺りは計算済みだ。

だが、そう思っていた私達の判断は間違っていた。爆煙と炎を吹き飛ばすほどに輝く黄金色の光が現れた。



『・・・・・・あれは』

『防御魔法? だが魔力反応・・・・・・0』



あの少年少女達の姿が各々変わっていた。あのピンク髪の少女は緑色と白のフリフリの格好になった。



【「キャラなりっ! アミュレットクローバー!!」】



そしてあのツインテールの少女は・・・・・・なんだアレは。幼児服か?



【「キャラなりっ! ディアベイビー!!」】



そして少年は、白い王様を象ったような格好になっていた。



【「キャラなりっ! プラチナロワイヤルっ!!」】



そして白い少年が右手に持った王冠が先についたデザインのステッキを、天井に向けてかざしている。

その杖から溢れた光がドーム状に形成され、彼らとイクスを守っている。砲弾はどうやらアレで防がれたらしい。



「ホーリークラウン。・・・・・・なんだけど、あの・・・・・・キセキ」

【あぁ。どうやら僕達のキャラなりもパワーアップしたみたいだ。
まぁここはいい。あむ、今のうちにスバルさんとマッハキャリバーを】

「マリアージュの攻撃は僕が全部防ぐから。日奈森さん、お願い」

「分かった。スバルさん、マッハキャリバー、すぐに傷を治すから」

「・・・・・・うん、お願い」










いや、それだけではない。体長2メートル50センチほどの白い巨大な何かが見える。





それが後ろから接近していた僚機達の頭を掴んでいた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




『なんだ・・・・・・・これは』

『召喚魔法? だた、このようなのは見た事がない』



我々の頭を掴むのは、人型ではあるが人ではない。言うなら人の形をした巨大なうさぎ。

長い耳にふてぶてしい青い目に首元には同じ色のリボン。そして指も無い手で我々の頭を掴む。



「えっと・・・・・・この子、ややが呼び出したの?」

『ウサッ! ウサウサッ!!』

【その通りって言ってまちゅね。それで名前が『アルト』って言ってるでち】

「え、アルトちゃん? ・・・・・・あー、というか普通にノロウサだよねっ!?
え、それじゃあややとぺぺちゃんのキャラなりもパワーアップしちゃったんだっ!!」

【みたいでちね。でもややちゃん、そこは置いておくでちよ。今はこのおバカちゃん達におちおきでち】



栗色の髪の少女がなにやら納得した顔になる。そして我々の方を見る。



「了解。じゃあアルトちゃん、その人達を」



そして我々が元来た方向を見据える。そのまま右手で指を差した。



「思いっきりぶん投げてっ!!」



その言葉に対して嫌な予感がして、我々はこのうさぎに向かって刃を突き出す。

だが紅い色のエネルギー障壁がうさぎの身体を守る。我々の刃の切っ先は届かなかった。



『・・・・・・ウサッ!!』





まず左手を大きく振りかぶり、僚機が放り投げられた。

空気を切り裂く音を立てながら、曲がり角の壁に激突した。

そして次は右手に掴まれていた私だ。うさぎの腕が動く。



首がへし折れるかと思うような衝撃が加えられ、そのままオーバースローで投げられた。

私も同じように壁に激突して、床に落ちる。・・・・・・なんだ、これは。

計測・解析不能。こんなのは、聞いていない。僚機達や操手から頂いたデータにもない。





『・・・・・・僚機達、一斉攻撃だ。こうなれば加減は出来ん』



立ち上がった僚機がそう言った。・・・・・・確かにそうだ。

あの障壁は戦車を壊す砲弾の直撃にも耐えた。それくらいしなければ意味がない。



『そうだな。多少イクスに傷を負わせても構わん。ようは生きて連れ帰ればいい』

「残念ながらそれは無理だね」



起き上がり、再び踏み込もうとしていた我々の右横から声がした。そして、風が吹き抜ける。



「その通りです。・・・・・・人形は眠りなさい」



銀色の刀を持った『少女』と二振りの刃を持った女が私達に向かって刃を叩き込んでいた。

そしてその風の後ろについて来ている少女も、そのままターゲットの方へと進行した。



『・・・・・・これまで、ですか』










そのまま我々は爆発した。だが、それでも彼女達を巻き込む事はなかった。





まぁいい。僚機達が・・・・・・あとは、任せ・・・・・・した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「リメイク・・・・・・ハニー!!」



あむちゃんがピンク色のリボンのついた泡だて器を両手で可愛らしく持って、それを右薙に振るう。

琥珀色のクリームのような光がその泡だて器から溢れて、私達の上に舞い上がる。

それはすぐに光り輝く粒子のように私達の周りに降り注いで、それぞれの傷を癒していく。



・・・・・・あ、痛みが消えてく。というか、あっちこっちの傷やマッハキャリバーの損傷も治ってく。



うーん、恭太郎の怪我とかもすぐに治してたしなぁ。普通にこの能力はすごいよ。





【スバルさん、マッハキャリバー、どうですかぁ?】

「・・・・・・うん、もう完璧」



ヒビが入っていた骨も、爆発で損傷した強化フレームや神経関係もバッチリ。

私は立ち上がりながらも両の拳を握りしめて、その感触を確かめる。・・・・・・うん、いつも通り。



「ね、マッハキャリバーもだよね」

≪えぇ。完璧過ぎて怖いくらいですよ≫

「あむちゃん、スゥちゃん、ありがと」

【イクスさん、イクスさんはどうですか? イクスさんが歩けないのも『お直し』出来てるはずですぅ】



・・・・・・って、聞くまでもないらしい。普通にイクス、立ち上がってるもの。



「嘘みたいです。あの、あむ・・・・・・いいえ、唯世もややも小さな子達も、あなた達は一体」

「だから言ったじゃん。あたし達はガーディアンだってさ」





そう言っている間に、ややちゃん達がマリアージュを放り投げた方で爆発が起きた。

そしてその爆発の中から出てくる影が三つ。それは私達の知っている影。

全員がそれに視線を向けて、表情を明るくする。その影達は私達に走り寄ってくる。



だってその影は・・・・・・恭文とセッテにリインさんにリースだったんだから。



あ、ちなみに恭文はユニゾンしてヴィンクルムフォームになってるから、外見が変わってるね。





「あむ、スバルもみんな無事っ!?」

「蒼凪君っ! それにリインさんにリースさんもっ!!」

「というかセッテまでっ! あの、どうした・・・・・・って、聞くまでもないよね」



四人が私達の前まで来て、普通に安堵の表情を浮かべる。・・・・・・あははは、私心配かけてたもんねぇ。



「あむちゃんっ! ランもスゥも大丈夫っ!?」



それで恭文の傍らから・・・・・・あ、ミキちゃんだ。そのままあむちゃんの方に飛んでくる。



「ミキっ! あの、えっと・・・・・・アンタバカっ!? こんなとこに来たらだめじゃんっ!!」

「え、ボクが来たこといきなり否定っ!?」

「あー、ミキ。気にしない方がいいよ? あむちゃんはいつものアレなだけだから」

【ちょっぴし意地っ張りキャラを発動しちゃったんですよねぇ】



とにかく、ミキちゃんをあむちゃんは抱きしめる。・・・・・・恭文の方を見ると、恭文も嬉しそうだった。

まぁミキちゃんとはしゅごキャラのみんなの中でも特に仲良しだって言ってたしなぁ。そういうのもあるんだよ。



「それでセッテ、あの・・・・・・事情説明してくと非常に長くなるんだけど」

「えぇ、そのようですね。まぁ色々聞きたい事はありますが・・・・・・今は避難が先でしょう。スバル、イクスヴェリアは」

「うん、大丈夫。この子がそれだから」



言いながらセッテがイクスを見る。それで・・・・・・あれ、なんか笑った。

でもすぐにいつもの無表情に戻った。でも、頬がちょっと赤い。



「・・・・・・やはりこういうのは慣れません」



なるほど、どうやら安心させるように笑いかけてみたらしい。



「セッテ、大丈夫だよ。私から見てもちゃんと出来てたか」

「なんですか?」



とか言いながら、首元にブーメランブレードの切っ先突き付けるのやめてくれないかなっ!?

あれかなっ! 相当にそこを触れられたくなかったとかなのかなっ!!



「とにかくスバル、あなたは脱出経路の再検討をお願いします」



ブレードを引きつつも唯世君が張った防御フィールドの脇を恭文と二人で抜ける。それにリースが続く。



「私と蒼凪恭文で脱出経路を確保しますから。もっと言えば邪魔者の排除を」



確かに・・・・・・ここで早急に今居るマリアージュを排除しないと、また挟み撃ちにされるかも知れない。



「じゃあお願い。・・・・・・あー、それと恭文」

「なにさ」

「あむちゃん達、本当に頑張ってくれたんだよ? だからみんなの前で無様なとこ、見せちゃだめだから」

「分かってるよ」



恭文は右手で青いパスを取り出して、左手で二枚のカードを取り出す。



「で、あむにややに王様。アイツら遠慮なくボコってやりたいんだけど・・・・・・いいよね?」



少し動きを止めて、恭文は三人を見る。三人は・・・・・・そのまま頷いた。



「うん、問題ないよ。それで王として、騎士である君に僕から一つお願いをさせて欲しいんだ。
・・・・・・イクスヴェリア陛下を、無事に安全な場所までお送りしたい。だから力を貸して」

「了解。ジョーカーV・・・・・・ちと大暴れするわ。んじゃ、そのままよろしくね」

【あぁ、こちらは任せろ。・・・・・・頼むぞ、家臣】



それから手に持ったカードを、開いたしたパス内部の扇状のスロットに挿入。そのままそのスロットを閉じる。



≪Sound Ride Set up&Fusion Ride RinforceV Set up≫



恭文はパスを閉じて、セッテと二人でマリアージュの前に立つ。



「リイン、交代だよ。僕達が暴れてる間に消火お願い」

【分かったです】



それからベルトの紫のボタンを押す。するとハープの音のような音楽が流れる。



「・・・・・・変身」



右手を優しく、ふわりと動かしてそっとパスをベルトにセタッチ。



≪Cyclone Form≫





ベルトから紫色の四角いガラスのような光が弾ける。それが恭文の身を包む。

そうして一瞬でヴィンクルムフォーム形態だったその姿を変えた。

それと同時に、後ろに居たリースが紫色の球体になって恭文に吸い込まれた。



そして入れ替わるようにリインさんがこの場に出てくる。というか・・・・・・え、リースとのユニゾン?



あ、そっかっ! ユニゾンカードがあるから普通に出来るんだっ!!





「あの、防災士長、あむ・・・・・・あの方と融合騎達は一体。というより、この音楽は」

「あ、えっと・・・・・・なんて言うかアイツはその、色々特殊でさ」

「そ、そうだね。恭文はなんて言うか・・・・・・うん、特殊だからなぁ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



黒い編上のブーツに白のゆったり目の無地のロングパンツ。そして紫色のロングコートを羽織る。

インナーは黒で、左の胸元には銀色の胸当て。コートの肩の部分は黒い色で染め上げられている。

デンオウベルトのバックルが紫色に光を放ち、ジガンはそれと同じ色に染まった。





髪と瞳もそれぞれ色調を変えた紫色に一瞬で染まり、僕達を包んでいた紫色の光が変化する。

僕の背中で大きな翼となって形を変えて、そのまま羽が思いっきり弾けた。

その風が通路内に吹き抜けて、燃え盛っていた炎の全てを消し去ってしまう。





あ、リインに消火頼む必要全くなくなってしまったな。まぁいいか。

僕は両足をくっつけて、真っ直ぐに立ち上がりながらも右手を高く高く上げる。

手は開き、縦にしたままゆっくりと下ろす。そのまま『人形』達を見据える。





これがリースとのユニゾン、サイクロンフォームッ! 何気にやりたかった風を使う形態っ!!










≪The song today is ”Double-Action Cyclone Form”≫

【「――降臨」】



弾けた光は紫色の風を纏う羽となり、僕達の周囲に舞い散る。そしてそんな中音楽が鳴り響く。

どこかアラビアンな音楽で・・・・・・え、もしかしなくても僕とリースとアルトが歌ってるとか?



【「満を持して」】



前へ一歩一歩ゆっくりと歩いていく。そうして両手を広げると、手の中に紫色の風が生まれた。

その風は一瞬で大きくなり、片刃の紫色の大ぶりのシミターに変わった。僕は思わず両手を上げてそれらを見る。



「リース、これなに?」

【知らないで出したんですかっ!? ・・・・・・専用武器です】

「あ、納得した」



刃渡りとしては50センチ程度で、軽く湾曲しているので中華系のあれこれに似てるかも。

あ、なるほど。これ使って戦うのね。うん、納得納得。



『何をくっちゃべていますか』



などと言いながらマリアージュが僕に向かって接近してくる。なので、右から袈裟にシミターを叩き込む。

紫色の粒子が舞い散り、それがマリアージュの身体を斬り裂いた。



『・・・・・・な』



その言葉は無視して、僕は左の刃も同じように袈裟に叩き込む。それから右の刃と一緒に腹に突き立てる。

軽く時計回りに身を捻り、マリアージュの身体を中から斬り裂く。でも、そうしながらも壁に投げつける。



「あー、ごめんね。なんというか雑魚ばかりだったんでナメてかかってたわ」



マリアージュは勢いに逆らえずに壁に叩きつけられて、爆発した。一回転して僕はまた足を進める。



「よし、サイタシミターと名付けよう」

【なんですかっ! その妙な名前はっ!!】

「いや、サイクロンだからサイタロスでしょ? でもそれだとワンパターンだから略称にしてサイタシミターで」

【それはやめてくださいっ! というかというか、普通にセンスないですからー!!】





僕に向かって、マリアージュが次々と襲ってくる。・・・・・・打ち込まれる刀を右の刃で弾く。

左の刃で別の奴の腹を薙ぎ、身体を反時計回りに回転させながら、更に左の刃で右薙に斬りつける。

そんな僕を挟むように左右から突撃してきたマリアージュに向かって、両の刃を投げつける。



それはマリアージュの顔に直撃して、二体は爆発した。そして右足を動かす。



先程斬りつけた奴の腹を蹴り飛ばして、距離を取る。そいつも爆発した。





「全く無粋な」



そして前から唐竹に刃を叩き込むのが一体突っ込んできた。

左に軽く動いて避けて、時計回りに回転しながらも右拳で裏拳を叩き込んで、それを捌く。



「もうちょっと優雅にいけないのかってーの」





そいつは振り返りつつ刃を真一文字に振るってくるので、左足で回し蹴りをを叩き込んだ。

なお、狙うは刃を持って振るわれた右手。それをまともに喰らって刃から手を離して、マリアージュがたたらを踏む。

右手を上げて、そのはじけ飛んだ刀を手に取る。それを零距離でマリアージュの胸元に刺突を叩き込む。



衝突の際に刀の柄から手を離しつつ、魔法を行使。柄を中心として紫色の風が渦を巻く。

それはいわゆるブースターのような役割を果たし、僕が刺突を叩き込んだマリアージュを遠く吹き飛ばす。

そのマリアージュは吹き飛ばされながら爆発。刀が爆発を突き抜け、そのまま床に転がる。



そして僕の周囲に居るマリアージュ七体が刀を手放して、一気に僕目がけて飛びかかろうとする。

どうやら僕につかみかかって自爆するつもりらしい。・・・・・・丸腰の所を狙うのはいい。でも甘い。

僕の右腰に差してある刀が見えないのは色々問題でしょ。というわけで、僕は少し身を屈めて、左手を鞘口に添える。





【「風花」】



柄に手をかけて、一瞬の内にアルトを抜き放つ。



【「一閃っ!!」】





一回転しながら叩き込んだ刃は、紫色の風の魔力を纏う薄く研ぎ澄まされた刃。

それが周囲の七体のマリアージュを胴体から斬り裂き、真っ二つにした。

当然だけどこれだけで終わらない。僕は刃の切っ先をそのまま天井に向けた。



すると紫色に染まった刃から風が吹き荒れ、合計14個のパーツを吹き飛ばす。



それらは少し離れた壁や床、天井に全て勢い良く衝突していく。なお、あむ達の方には行ってない。





「・・・・・・瞬(またたき)」





そして衝突と同時にマリアージュ達が爆発する。

でもその爆発さえも、刀身から吹き荒れる風に斬り裂かれ消える。

なお、セッテもこの間に何気に六体程片してたりする。



普通にブーメランブレードで殴って潰しました。





『馬鹿な。あれだけの僚機達を・・・・・・こんな短時間で』

≪雑魚過ぎますね。知ってますか? 戦いというのは、ノリのいい方が勝つんです≫

「で、かく言う僕達は・・・・・・昨日の段階からとっくにクライマックスなんだよっ! てーか今日、僕の誕生日だしっ!!」



ゆっくりと歩きつつ、両手を軽く上げてお手上げポーズなんてしつつそう言い放った。

すると、一瞬の静寂が場を襲う。それからすぐに、マリアージュと僕とリイン以外の全員が叫んだ。



『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



そう、今日は8月1日。マリアージュのせいでみんな忘れてるみたいだけど、僕の誕生日ですよ。

それもリインと出会って10周年の記念日ですよ。なので恨みは100倍だよ。



【そ、そう言えば・・・・・・あぁっ! すっかり忘れてましたっ!!】

「お前のおかげで誕生日の色々な予定が全部パーなんだよっ!!」



具体的にはフェイトと指輪買いに行くとか、リインとラブラブとか、三人でまたお話し合いとかっ!!

そしてその後、フェイトとまた二人でラブラブするとかっ! もう全部パーだしっ!!



「てーか潰すっ! 徹底的に潰してやるっ!! ・・・・・・行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



というわけで、一気に走る。そんな僕にマリアージュがまた迫ってくる。・・・・・・つーか、数多いから。

だけどここは慌てず騒がず冷静に、また刃を打ち上げる。



「風花」



言いながらも、僕はアルトを袈裟、逆袈裟、右薙、左薙、唐竹に振るって足を進める。

というより斬り抜けた。マリアージュは一太刀で身体を両断され、そのまま僕の後ろで小さく爆発。



「繚乱っ!!」

≪さすがに怒りパワーも上乗せだと強いですね≫

【なんだか私、悪いことしてる気が・・・・・・おじい様、前っ!!】



斬り抜けた直後の僕を狙って、唐竹に刃が叩き込まれた。僕は身を左に捻ってそれを回避。

リースに言われる前に反応はしてるから余裕。斬撃と同時に、それを叩き込んだマリアージュも僕の横を通り過ぎる。



『騎士と融合騎、もう消えなさい』



通り過ぎて、身体を時計回りに動かして僕の方を見つつそう言って来た。



『そうしてイクスを――我々の王を私達に返しなさい』



言いながらまた僕に踏み込んでくる。僕は後ろに下がりながら、突き出された刃を避けた。

でも、連続して突きや袈裟の斬撃が襲ってくる。それを身を捻って下がりつつも回避。



「何言ってんのよっ! イクスは・・・・・・イクスはアンタ達の言うような事は嫌だって言ってるじゃんっ!!」



あむが叫ぶ中でも、斬撃は止まない。マリアージュは動揺もせずに突きや薙ぎ払いを繰り返す。

僕は下がりつつも身を捻りながら回避。後ろに大きく跳んで、距離を開ける。



『愚かな。兵器は戦いのために運用される事こそが幸せであり本望』



僕とやり合ってたマリアージュは、あむの言葉に応えながらもまた小走りで踏み込む。



『その意義を捨てては存在する理由が無い』





僕は右に動いて、打ち込まれた刺突を避ける。・・・・・・ただし、僕の後ろからの斬撃。

普通に伏兵の如く隠れてたのが居たのよ。避けつつも僕は左手を開く。

そうしてすぐにジガンの仕込みダガーを取り出す。取り出して逆手に持ち、襲ってきた奴の頭に突き出す。



バイザーを割りながらダガーは深々と突き刺さる。

ダガーを手放してから左足でそいつの胴に向かって、遠慮なく蹴りを叩き込む。

マリアージュは床にぶつかった瞬間に爆発。またまた炎が湧き上がる。





『それはその魔導師も同じ。先程の傷口から見えたのは、強化骨格と人工筋肉に神経ケーブル』



怪我? ・・・・・・そっか、リメイクハニーをここで使ったのはその修復のためか。

つーことはあむ達もそこを見たのか。また後の説明が大変なフラグを立ててるなぁ。



『兵器は、作られた存在は戦うための道具。私達と操手はただその意義を果たせと言っているだけ。それの何が悪いのですか』

「ふざけんなっ! イクスが――『誰も傷つけたくないから自分はいらない』なんて言うこの子が、兵器なわけないじゃんっ!!
スバルさんだって同じだよっ! 確かにあたし達と違うかも知れないけど、それでもアンタの言う通りなわけがないっ!!」

「その通りです」



そう言ったセッテが、マリアージュに踏み込んで両手のブレードを叩き込む。

マリアージュは刀でそれを受け止めて・・・・・・でも、足が沈んだ。



「その身が兵器かどうかなど関係ない。それを言えば、私もスバルやイクスヴェリアと同じ人ならざる者。
機械兵器――戦機です。お前達と在り方やその意義は対して変わらない」



というか、普通に残り一体らしい。他のは影も形も見えなくなってるもの。

納得している間にマリアージュの刀とセッテのブレードが接触しながらも、火花を散らしていく。



「でも自己の在り方で、その在り方を少しずつでも追求する事で、どんな存在でもどこまでも進化出来る。
どんな風にだって変わっていける。自分が望むままに、道を決めていく事が出来る」



そしてセッテは自身を持って言葉を続ける。なお、誤字ではないのであしからず。



「それを私は姉妹達から、私が目標とする人から教わった。
私が壊そうとしたこの『世界』そのものから教わった。だから言える」



その言葉でイクスが目を見開いたのが分かった。そしてイクスがスバルを見上げる。

スバルは優しく、イクスを見ながら頷いた。そしてその間にも拮抗は続いていく。



「だからこそ、言い切れる。お前とお前の操手は間違っている。そんな事は絶対に許されない。
例え兵器であろうと、どう在るかはその個が決める事。お前達にどうこうされる謂れはない」

『理解、不能』

「そうか。ならばそれがお前達とお前達の操手の」



セッテは唐竹にブレードを無理矢理に叩き込む。

それにより刃が砕けて、マリアージュの両肩に叩き込まれた。



「限界だっ!!」



振り抜かれた斬撃は轟音を立てながら下の床を砕き、マリアージュを吹き飛ばした。

マリアージュは僕の右側を風のように通り過ぎて、10数メートル程飛んでから床に衝突。



「蒼凪恭文、あとは任せてもいいですか?」

「当然」



その間に僕はアルトを鞘に納めてから右手でパスを取り出し、開いてスロットを展開。そこに一枚のカードを入れる。



≪Final Attack Ride Set up≫



パスを閉じて、そのままバックルにセタッチ。



≪Full Charge≫



マリアージュはゆっくりと立ち上がって、左手を大砲に変えようとする。だから僕も動く。



「リース、いくよ」

【はい】



右手と両手に先程の片刃のシミターを取り出して、それらを逆手に持つ。そしてその柄尻を合わせる。

するとシミターが光に包まれて、僕の身長より僅かに小さい大ぶりな弓に変わった。



「サイタボウッ!!」

【だからそのネーミングは】



右手をそれから離して開くと、また風が手の中で生まれて一つの形状を取る。それは紫色に輝く矢。



「サイタアロー!!」

【いやー! もうやめてくださいー!!】



左手で持った弓を前にかかげ、銀色の弦に矢をかける。そしてそのまま右手で弦を引いて構えた。



『弓? それでこれをなんとかするつもりですか』



ほう、面白い事を言うね。てーか、逆に聞いてやりたいよ。そんな豆鉄砲で、僕達という風を吹き飛ばすつもりかってさ。



【「嵐華」】



マリアージュが大砲を構えて、砲弾を撃とうとする。

僕はマリアージュの土手っ腹目がけて狙いを定め、めいっぱいに引いた弦を離した。



【「一閃っ!!」】



矢は勢いよく飛び出しながらも、その矢尻から風が吹き荒れる。

それが螺旋を描き、通路を斬り裂きながらマリアージュに迫る。



『これは・・・・・・く』



マリアージュが砲弾を撃ち出す。その砲弾は矢に接触した途端に爆発。

でも、その爆発すらも螺旋状に渦巻く風の力によって斬り裂かれ、全てが一瞬で飲まれた。



『そんな・・・・・・そんな、バカな。理解、不能。理解・・・・・・不能』





矢と呼ぶには巨大過ぎる風の螺旋は、マリアージュを射抜く。いや、その身を粉々に引き裂いた。

それに伴なう爆発すらも引き裂きながら、静かに回転が衰え始め・・・・・・消えていった。

辺りの気配を探るけど・・・・・・うん、大丈夫。周辺に妙な気配とかそういうのは感じない。



僕は弓を下ろした。弓は上の方から粒子化して、その粒子が木枯らしが吹いたかのように消えていく。





「リース」

【おじいさん、どうしました?】

「風属性、楽しいね。というか、サイタシリーズはいいなぁ」

【え、この状況でまずそこですかっ!? というかそのネーミングはやめてくださいっ!!
本当にセンス無いですよっ!? というか、フェイトおばあさんが泣きますからっ!!】

「いやいや、そんな事ないから。うん、問題ないって」










こうして障害を見事に排除して、僕達はその場から脱出する事にした。もちろんスバルの先導で。





で、当然ながら走りつつも互いに『どうしてこうなった』という点について聞くわけですよ。





特にでっかいノロウサについてとかっ!? 普通に流してたけど、僕はビックリしたしっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、現在僕達は必死に避難中。マッハキャリバーでひた走る全開バリバリなスバルを先頭に、僕達は前に進むのみ。





てゆうか、アレだよね。改めて考えてもリメイクハニーはチートだって。・・・・・・あむはきっと将来的には凄いチートになるな










「・・・・・・キャラなり、しゅごキャラ・・・・・・一概には信じられないです。
そんなの、私は今までの中で見たことが一度もありません」



イクスがややが出した巨大ノロウサに抱っこされながらもそんな事を言う。

なおこのノロウサ、普通に二足歩行でややも背中に背負ってるのに普通に速い。



≪・・・・・・ややちゃん、この子はなんなの?≫

「あ、ややの新しいお友達。あのね、なんかキャラなりがパワーアップしたんだー」

≪そうなの? じゃあこの可愛らしくてファンシーな足音を何とかしての。色々台なしなの≫



てゆうか、足音が無駄に可愛い。もうね、どこのサンリオかって言いたくなるくらいにファンシーな音なの。



『ウサッ!!』

【無理って言ってるでち。というか『お前こそ『なのなの』うるさい』って言ってるでち】

≪どうしてなのー!? というか失礼なのっ! これはお母さんから遺伝したとっても素敵なチャームポイントなのっ!!≫



ジガンは不満そうだけど、おかげで火災現場の真っ只中のはずなのに、僕達は非常にゆるゆるに話を進められたりする。



「あー、それでねイクス」

「はい」

「しゅごキャラはあたし達の・・・・・・ううん、誰の中にでも眠っている、まだ形になっていない未来への可能性。
キャラなりはランやみんなに力を貸してもらって、、それを一時的に借りているだけなんだ」





意外と忘れがちだけど、キャラなりやキャラチェンジで出来る事は、自分の力でもありそうじゃないの。

今あむが言ったみたいな感じだから、宿主がそれを大事に育てて現実にしていかないと、いつか消えちゃう。

もちろん僕も同じくなの。そのためにはやっぱり自分を信じる事が大事。



とっても簡単だけど難しい事。でもそれが出来なきゃ・・・・・・消えちゃうんだよね。

その言葉に、イクスが軽く目を閉じる。閉じて、その可能性が形になったものを見る。

例えばみんなの今の姿。そして自分を抱きかかえる巨大なノロウサ。





「防災士長・・・・・・いえ、スバル。それにセッテ」

「はい、なんでしょう」



自分の傍らに居る二人にイクスは声をかける。

自分が抱えられているノロウサの前を走る二人の事を、真剣な目で見ている。



「あなた達は・・・・・・私やマリアージュと同じ、なんですよね」

「・・・・・・そうですね。あむちゃん達も見ただろううけど、私の身体・・・・・・大半が作り物なんだ。
戦闘機人って言ってね、人の身体に機械を入れて、色んな能力を強化された存在」

「私も同じくです。本来我々を産み出した技術は、戦うための兵器を作るためのものです」

「でもセッテ、あなたは先程それでも『変われる』と言った。それは本心からですか?」

「当然です」



走りながらもセッテは僕を見る。それからすぐに前に視線を移した。



「私は生まれた時、戦機・・・・・・兵器として、創造主の道具としての自分を絶対のものとして持っていました。
普通の人間より強い身体があり、それを創造主の望みを叶えるために使う。それが全てだと思っていた」



あむと唯世、ややが僕の方を見る。だから僕は・・・・・・まぁ、軽く頷いた。

僕と会った時もそんな状態だった時。で、戦って妙な繋がりが出来たのも同じ時。



「ですが、それは正解でもあり間違いでした。・・・・・・ある人と戦って、雑魚のように一蹴されたんです。
それも二度も。その人は私やスバルとは違う、能力的にも平凡なただの『人間』でした」



イクスはノロウサの腕の中で、ただただ静かにそう話を続けるセッテを見る。



「私の身体は、私の全ては戦いに勝つために特化している。だからこそ強い。
余計なものがないからこそ強いし負けない。ですがそんな私の常識は崩れた」



でも僕は・・・・・・その、少しくすぐったい。だってあの、普通に適当にケンカした勝っただけだし。



「それでその人は私にこう言いました。余計なものなどないと。自分として感じたもの全部が必要だと。
その時私が感じていた『悔しさ』も含めて。・・・・・・そして『変わりたい』と願うようになりました」

「その人に勝てるように・・・・・・でしょうか」

「いいえ、違います。戦機では、兵器では、余計なものを捨て続ける機械では、そのままの私では『人間』には勝てない。
私はそんな限界が悔しかった。そんな自分に打ち勝ち、戦機という限界を壊したかった。だから戦機である自分と戦う道を選びました」



セッテはただ前を見続ける。その表情は、あの時とは違って・・・・・・うん、なんか綺麗になった。

きっとそれはセッテのこころがどこかキラキラしてるせいだと思う。そういうのが表に出てるのよ。



「陛下、あなたも同じではないでしょうか。しゅごキャラはその宿主の『変わりたい』という可能性から生まれたもの。
それが見えるあなたも本当はそう願っているのではないのですか? 自分という存在を、今自分を取り巻く状況を変えたかった」

【・・・・・・なるほど、だからこそイクスは僕達が見えているわけか。
理由はどうあれ、イクス自身が強く『変わりたい』と願ったのは事実】

【ならイクスさんの夢・・・・・・『なりたい自分』は、こんな悲しいことを終わらせられるくらいに強い自分、なんですかねぇ】

「・・・・・・そう、なのでしょうか。よく分かりません」



イクスが少し困った顔で俯く。・・・・・・まぁ、そこの話は後かな。

ついついこの足音のせいで空気が緩みがちだけど、それでももうちょっと気を引き締める必要がある。



「とにかくイクス、細かいお話はまた後で。・・・・・・恭文、悪いんだけどちょっと手伝ってくれる?」

「何を?」

「脱出経路、少し問題が有って・・・・・・バスターで撃ち抜こうかと思ってたんだけど、恭文が居るなら任せたいなーって」

「いや、だから何をっ!? まず質問にちゃんと答えてよっ! あと、『撃ち抜こう』って何っ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、現在私はジンのガードを受けて、データとにらめっこしつつもスバルとの合流ポイントへ到着。

アイツという外部要因があるけど、アイツの性格からしてスバルの案に乗るはず。

スバルの方がこういう現場での経験は豊富だもの。というか、そうじゃなくちゃこのプランそのものが崩れる。





で、なんとかここまで来た。マリンガーデンの裏手、施設の電力供給スポットの隅の方。





火災のせいで天井が大きく吹き抜け状態になってる。だから今、そこからは空が見える。










「ティアナっ!!」



右の方からボードに乗って飛んできたのは・・・・・・あ、ウェンディだ。



「ウェンディっ! アンタどうしたのよっ!!」

「どうしたもこうしたもないっスよっ! 近くに来たから様子見てこいって言われたんっスっ!! ・・・・・・で、どうなんっスか?」

「あとは向こうの到着待ちよ」



火災は移動中の間にある程度は落ち着いてきている。もちろん油断は出来ないのは変わらないんだけど。

マリアージュ、どうやらイクスの確保に力を注いでるみたいだし・・・・・・もしかして結構手間取ってるのかな。



「・・・・・・ティアナ、本当にここでいいのかよ」

≪確かに下にフロアがあるようだが・・・・・・障害がかなりの枚数あるぞ。これを一枚ずつ抜くのか?≫

「てか、俺やヤスフミはともかく、スバルが単独だったら無理だろ。それでこっち来るとは思えないんだが」



でしょうね。普通に7フロア分くらいはあるから。なお、全部床よ。



「問題ないわよ。崩落予想地点と火災ポイントとスバルの行動パターンから察するに、ここに決まってるわ。
普通の退路確保は無理。障害となる瓦礫や火災のクリアにも時間がかかる。要救助者達と居るなら余計に」



もちろんアイツやリインさん達が無事に合流出来てるなら話は変わってくるけど、それでも要救助者の存在がある。

もし途中で発見・救助してるなら、手早く安全に脱出しようとする。それは災害救助の現場に立っていた私自身も良く知ってる事。



「このフロアの下は、幸いなことに火の手が届いてないわ」

≪あぁ、サーチだとそうなるな。熱関係もここは非常に落ち着いている≫



今私達が居るところはちょっと燃えてたみたいだけど、そこは災害担当が消火してくれたから問題ない。



「つまり自分から脱出は無理でも、火の手や瓦礫の崩落で危なくなるような状態は避けるはずなの」

「だからこそここ・・・・・・か」



もちろん上の状態・・・・・・つまりここや上のフロアをサーチかなにかで確認した上で突入よ。

マッハキャリバーも居ればそれは可能だから、しない理由がない。



「でもアイツ、そこまで頭回るのか? 普段はKYな上にヤンデレ属性持ちの犬っ子なのに」

「・・・・・・ジン、確かに事実っスけど無茶苦茶言うっスね」



ウェンディが呆れたように言うのも無理はない。私だってちょっとビックリしたくらいだし。



「ジン、アンタ分かってないわね。・・・・・・スバルは災害救助の申し子よ?」





まぁあんまり言えないけど、戦闘機人としての強い身体にナックルや振動拳による破砕能力。

ウィングロードによる自分や他者への移動能力の強化とマッハキャリバーによる走破能力。

そしてなにより、どんな現場にも飛び込んで、必ず戻ってこようという気概に充ち溢れた強い心根。



元々私とスバルが居た災害担当の部署の先輩がね、そういう事を言ってたのよ。

スバルは災害救助の現場に飛び込んで、消えかけている命を守るために生まれてきたように思えるって。

あの子の生まれに色々あるから、私はあんま素直には頷けなかったんだけど、そういう所はある。





「私はあの子とずっと一緒に居た。ずっと現場に出て、色んな状況を超えてきた。
だから分かる。スバルは・・・・・・スバルは絶対にここに来る」

≪・・・・・・そのようだな。ティアナ、下に団体さんの反応だ≫

「・・・・・・マジかよ」



呆れているような、驚くような顔のジンを見ながら、軽く勝ち誇ったように笑う。

当然よ。これまで過ごしてきた時間は、伊達じゃないもの。少なくともアイツよりは行動が読みやすい。



「・・・・・・・・・・・・スバル、聴こえるっ!? 聴こえたらすぐに返事しなさいっ!!」



この距離なら、もう通信も届く。それで私は下に居るであろうあの子に呼びかける。



『・・・・・・ティアっ!? あ、ジンにウェンディも居るっ! やっほー!!』

「お前絶対バカだろっ! 『やっほー!!』じゃ・・・・・・ちょっと待てっ!!
なんだ、その後ろの仮装集団はっ! てゆうかそのバカでかいノロウサは何っ!!」

「あー、もしかしてその子達も海里やムサシと同じくっスか? うん、それなら納得っス」

「そしてお前も納得すんなよっ! 頼むから疑問を持ってくれっ!!」



確かにスバルの後ろにキャラなりしたあむ達も居て・・・・・・いや、うさぎは見覚えないんだけど。

とにかく予測通りと。うし、じゃああとは・・・・・・私の仕事ね。



『え、ウェンディ・・・・・・あむちゃんやしゅごキャラのみんなの事、分かるの?』

「海里とムサシから聞いたんっス。キャラなりとかに関しても少しだけ。
で、現状なんっスけど・・・・・・どうするつもりだったんっスか」

『恭文に撃ち抜いてもらおうかと思ってたんだ。ほら、私よりこういうの得意だし。
あ、それでみんな無事。イクス・・・・・・イクスヴェリアも保護してるから』

「そう良かった。あとスバル、そのプランは却下よ」



私は左手で8枚のカードを取り出す。そしてそれを上に高く投げると、それは蒼い光の粒子を放った。

これがアイツの新魔法。魔力素を周辺に撒き散らすという魔法。うん、ただそれだけよ。



「スバル、私がフロアをぶち抜く。だからアンタはアイツとリインさん達と一緒にみんなの保護を。
てゆうか、どうせアイツは普通に活躍したんでしょ? だったら少しくらい私にも見せ場をちょうだい」

『・・・・・・うん、分かった。それならティア、お願い』

「えぇ」



ただし、術者が『回収』しやすいようにある程度形を整えたものになっている。

それを数枚使うとどうなるか。簡単よ、周辺の魔力素の濃度が濃くなるの。



「というわけで、やるわよ。クロスミラージュ」

≪Yes Sir≫










さて、色々出番が少ないように感じるけどそれでもここからは見せ場よ。





・・・・・・集中しろ。一撃で決めるんだ。スバル達が横から襲われない内に、全部終わらせる。




















(第67話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、普通にX編は次で決着です。いやぁ、これでゆるゆる日常話に戻れる」

歌唄「何気に登場のサイクロンフォームが活躍したり、キャラなりがパワーアップしたりと色々あった66話、どうだったかしら」





(そう、あの赤ちゃんエースとキングのキャラなりもパワーアップしました)





歌唄「お相手は月詠歌唄と」

恭文「蒼凪恭文です。・・・・・・で、キャラなりパワーアップと同時に初登場しましたっ! ノロウサアルトッ!!」





(ややのパワーアップとして、前々から来ていたのです。なお、どういうものかは見ての通り)





歌唄「というかアレなのね。あの子は何か呼び出してお願いーって言うのがパターン」

恭文「うん。ただこのノロウサアルト・・・・・・まぁこの辺りはX編終了後だね。
なお、ノロウサアルトはアニメには出てこないオリジナルパワーアップだったりします」

歌唄「それでアレよね? 全長2M50の巨大ノロウサ」

恭文「うん。それで目が青いの。そして足音がファンシー」





(ドラえもんとかサンリオ的な可愛い足音を想像してください。
つまり、劇中のセッテとイクスの話中もずっとそんな足音がしてました)





歌唄「というか、唯世は? 対して変化ないように見えるけど」

恭文「唯世はホーリークラウンの応用力勝負だしね。目立ってるとこはないよ。
それで・・・・・・初登場の僕とリースのサイクロンフォームッ!!」





(何気にここまで出すチャンスがなかった形態だったりします。いやぁ、弓は楽しいなぁ)





恭文「デザインのモチーフは拍手で前にアイディアをもらったfate stay nightのアーチャーだね。
多少変えてあるけど、基本シンプルな感じ。で、戦闘スタイルはウィングフォーム準拠」





(出来る限り優雅に、回転してのカウンター攻撃や回避を主にしています。・・・・・・後半違うけど)





恭文「何気に弓での必殺技もやってみたかったんだよね。こういうの王道だし」

歌唄「そうなの?」

恭文「うん。弓・・・・・・もっと言うと射撃武器系統での必殺技はかなり多いよ?
戦隊物の二号ロボでもこういうのはかなりあるし、アニメとかでもさ」





(例:勇者エクスカイザーのドラゴンカイザー)





歌唄「でも、名前はダサいわよね。サイタシリーズって」

恭文「え、僕はいいと思うけど」

歌唄「・・・・・・恭文、知ってる? センスって矯正出来るらしいわ」

恭文「どういう意味かなっ! それっ!! てゆうか僕はハイセンスだってっ!!」

歌唄「気のせいよ」

恭文「なんでそうなるっ!? そんな事ないからねっ!!」





(蒼い古き鉄、普通に不満そうだけど・・・・・・まぁ、結論はみんなに任せよう)





恭文「とにかく、本日はここまで。僕はハイセンスだと声高らかに言いたい蒼凪恭文と」

歌唄「普通に勘違いだと思う月詠歌唄でした」

恭文「なんでっ!?」

歌唄「恭文、大丈夫よ。私はアンタにどんなにセンスが無くても、好きなのは変わらないから」

恭文「何の話してるっ!? てゆうかそういう問題じゃないからっ!!」










(蒼い古き鉄、色々不満そうだけど・・・・・・もうこれは仕方ないと思う。
本日のED:野上良太郎(佐藤健)&ジーク(CV:三木眞一郎)『Double-Action Wing Form』)




















恭文「・・・・・・え、撃っちゃだめなの? 普通に嵐華一閃の準備してたのに」

あむ「アンタ、気が早過ぎっ! てゆうかその弓はしまっていいからっ!! てゆうか、いつの間にフルチャージしたわけっ!?」

恭文「じゃあじゃあ、リースとのユニゾンバージョンで紫色のスターライトブレードとか」

スバル「え、えっと・・・・・・ティアだけで大丈夫みたいだから、そこもいいみたい」

マリアージュ『・・・・・・見つけました、イク』

恭文・リース【「むっ! 嵐華一閃っ!!」】





(通路から出て来ようとしたマリアージュ数体を軽くちゅどーん♪)





唯世「・・・・・・蒼凪君、とりあえずチャージしておいて良かったね」

恭文「そうだね。というわけでもう一回」

キセキ【いや、しなくていいだろ。もうすぐ脱出だぞ?】










(おしまい)





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あきゅろす。
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