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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第65話 『Girl waking up/『人形』の求める道具』



リズム・クスクス・ダイチ『しゅごしゅごー♪』

ダイチ「ドキッとスタート・・・・・・じゃねぇってっ! ヤバい、ヤバ過ぎるだろっ!!」

リズム「あむ達が火災に巻き込まれ・・・・・・しかも事件の犯人がもう死んでるっ!? マジでどういう事だっ!!」

クスクス「というかというか、それだけじゃなくてえっとえっと・・・・・・この子誰っ!?」





(画面から出るのは、薄着で裸足なオレンジ色の髪の女の子)





ダイチ「とにかくあむ達の事だっ! みんな、マジでどうなっちまんだっ!?」

リズム「ナギナギ、リインも急いでくれっ! このままじゃ・・・・・・あぁもう、マジでバットクールだぜっ!!」

クスクス「クスクス達も応援するから、頑張ってー! あむちゃん達の事、絶対助けてっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・おいドゥーエ、それマジかよ」

『マジよ。・・・・・・私自らが調査したんですから。死体の処理と施設の消去もクアットロと一緒に行ったわ。
もう一度言うけど、トレディア・グラーゼは死亡してる。だからこの事件の犯人であるはずがないの』





三人を送り出してから少しして、通信がかかってきた。それは俺の同棲相手。

さすがに休日に放ったらかしだしな。お小言食らいつつ現状説明したんだよ。

なお、普通に謝り倒しながら。まぁここは普通に理解を示してくれたから、まぁいい。



問題は・・・・・・ドゥーエが事情を聞いて、表情を険しくしたからだ。



だから俺は空海君やヴィヴィオちゃん達に聞かれないような位置にまで来て、音声オンリー通信に切り替えて話をしてる。





「おいおい、だったら誰がマリアージュ動かしてるってんだよ。まさか幽霊とか言うんじゃないだろうな」

『そんなの知らないわよ。ただ、トレディアという人間のあれこれを考えれば私達が知らなかった協力者が居てもおかしくはないわ』



協力者・・・・・・なるほど、確かにこうなるとそういう方向性しかないか。



『やってる事はアレとしてもよ? オルセアの内戦地域で戦ってる戦士達からは、英雄的に見られている部分もあったわけだし』

「まぁ、それはな」



俺はやっさん達の前でコイツを『屑』と言ったが、それはあくまでも一つの側面でしか無い。

トレディアが活動家としてやって来た事で、良くなった現状もあるんだ。・・・・・・それ相応の犠牲は払ってるが。



≪では単純に考えるなら、オルセア関係でトレディアと志を同じくする人間が・・・・・・でしょうか。
スカリエッティどうこうは関係なく、トレディア個人の遺志を引き継ぐ形で犯行を重ねてる≫

『そしてそうなってくると、連続殺人事件の図式も大きく変わってくるわ。
イクスはともかく、なぜマリアージュがトレディアの名前まで出したかもね』

「そうなるな。・・・・・・くそ、俺達は全員そのモブ野郎の手の平で踊ってたってわけか?」





恐らく真犯人はトレディアが生きていると思わせるために今回の連続殺人事件を起こしたんだ。

現に俺も頭から疑うくらいに、トレディアは色々やらかしてる。それくらいにトレディアは黒いんだよ。

動機もあり、マリアージュとの関連も深い。そしてスカリエッティとも関係していたわけだしな。



つまり、そんなトレディアの生存を匂わせる事は、捜査を混乱させるための布石。

あとこれは、完全犯罪を成立させるためのとても重要なキーにもなる。

あたかもトレディアがマリアージュを操ってるように見せる事で自分へ疑いがかからないようにしたわけだ。





「あぁもう、マジで失態だ。ドゥーエ、サンキューな」

『問題ないわよ』





だがどうする? そんなの現状で一気に調査なんて無理だろ。

オルセア絡みとすると、トレディアの人間関係を一から洗い直す必要が出てくる。

もちろんグラースの奴がなんか掴んでるとかなら、まだ分かる。



でもそうじゃないなら、この段階で捜査は振り出しに戻ったわけだ。どうすんだよ、これ。





『・・・・・・あなたが夕飯までに帰ってきてくれるならね』



・・・・・・普通ならとても優しく温かいセリフだったんだろう。でも、色々思考していた俺はそれを聞いて寒気が走った。

てーか、思考も止まった。だってドゥーエの奴、普通に殺気込めながら脅す気満々で言ってるんだよ。普通に怖いって。



「ぜ、善処します。ただ、ヴィヴィオちゃんや空海君達も居るんで」

『あ、問題ないわよ。みんなうちに連れて来ればいいじゃない』



なんかすっげー英断したっ!? 普通に俺はビックリなんですけどっ!!



『まぁ私はそういう感じだから・・・・・・いいわね? せっかくの休日に彼女を置いてけぼりなんて、最低よ』

「ご、ごめんなさい」





なお、この言葉も殺気混じりだったのは言うまでもないだろう。だからこそ俺は音声オンリーなのにペコペコするわけだ。



・・・・・・さて、とりあえずグラースに連絡だな。それで・・・・・・あー、これはまずいな。



いきなり被疑者候補0状態に戻っちまったし、下手するとマリアージュ止めても犯人は捕まらずに迷宮入りだぞ。





『あ、ちょっと待って』



ドゥーエがそう言うと、数秒沈黙が訪れた。それに俺が首を傾げていると、声がまた届いた。

だがその声は・・・・・・とても緊張していて、若干掠れたものだった。



『・・・・・・サリエル』

「なんだ? てかどうした」

『とりあえず今日中に帰って来れればいいわ。えぇ、どうせあなたも最後まで関わるんでしょうし』



いや、意味分からないから。てーかなんでそうなる? まるで俺とかが・・・・・・ちょっと待て、まさか。



『今うちのテレビの速報で流れたんだけど、マリアージュがマリンガーデンを襲撃したみたい』

「はぁっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・それでフェイトお嬢様、その子達も他の救助者同様に全力で捜索してるんですけど、まだ』

『すみません。俺達は探す事すら出来なかった』

『私、本当に・・・・・・恭文さんやあむさん達の親御さんになんと謝ればいいのか』

「・・・・・・ううん、大丈夫だから」



だめ、落ち着いて。私が動揺したら、他のみんなにまで伝わる。ハードボイルドハードボイルド。



「だってみんな、気遣ってくれたんでしょ? それなのに悪いことしたみたいに言わないで。
・・・・・・海里君、君はその・・・・・・もどかしいとは思うけど、そのまま後ろに下がってて」

『・・・・・・はい』



いくらキャラなりの能力があると言っても、さすがに危険過ぎる。普通ならともかく、これはそうじゃない。

火災現場に突入するなら、フィールド魔法なり耐火服等の装備が絶対に必要。ここは私達魔導師と災害救助隊の出番だよ。



「それでこのことはヤスフミ達には」

『もう連絡しています。というか、聞いてすぐにこっちに来て、リースを連れて中に飛び込みました。
あ、セッテとリインさんも一緒なのでユニゾンしてもソロになりません。そこは安心してください』

「そっか。うん、それなら安心だ。・・・・・・ディエチ、私もチンク達と一緒にすぐにそっちに向かうから」

『了解です。でも、出来るだけ急いでください。こっち・・・・・・相当ひどいことになってるんです』



そのまま通信を終えて・・・・・・私達四人は顔を見合わせる。今の話の中で色々分かった事がある。

マリアージュ・・・・・・海底遺跡・・・・・・海の底・・・・・・多分間違いない。



「フェイトさん」

「うん。多分イクスヴェリアはマリンガーデンの海底遺跡に眠っていたんだよ。だからマリアージュが襲撃をかけた」



マリンガーデンには、開発中に発見された海底遺跡がある。多分それがトレディアの言っていた『海の底』。



「営業時間中に襲ってきたのは・・・・・・単純に数を増やすためか?
コア母体が確保出来れば、その場でマリアージュを生産出来る。それも大量にだ」



でも狙いはお客さんだけじゃない。大災害になれば、当然だけど防災のために局員が相当数出張る。

多分その全員をマリアージュ化するつもりだ。そして災害という特殊環境下なら・・・・・・それも可能。



「色々やらかした元テロリストの私が言うのもアレだが・・・・・・見境無しだな。
ドクター、クアットロにウーノ、そういうわけだから我々は」



トーレが三人の方を見る。スカリエッティは・・・・・・やっぱり私の知っている通りの普通の顔。



「あぁ、行ってくるといい。・・・・・・少しはお役に立てたようだしな」

「えぇ、そこだけは間違いないですね」

「そうか。なら私の研究も安泰だな」

『結局気にするとこはそこっ!?』










とにかく私達はマリンガーデンに向かうために、急ぎ足でミッド地上に降りる事にした。

でも、それだって結構時間がかかる。現にここに来るまでだって時間がかかった。

もしかしたら私達が戻っている間に全部の事が終わる可能性だって・・・・・・ううん、今はいい。





今は急ぐ事だ。うん、頑張ろう。それでハードボイルドだよ。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第65話 『Girl waking up/『人形』の求める道具』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・お願いがあります。耐火服を貸してください。火の対策さえ整えられればあの連中とも」

「バカ、無理すんな。てーか火災現場をナメ過ぎだ。何の訓練もしてねぇお前に出る幕はねぇよ。
ディードも同じくだ。恭文やその友達が心配なのは分かるけど、お前はこっち手伝え」

「こっちも手が足りないんっスよ。ツインブレイズでの破砕作業、頼むっス」

「はい。・・・・・・ノーヴェ姉様、すみません」

「だから謝るな。フェイトお嬢様だって言ってただろうが。お前らは別に悪いことしてねぇってよ」





フェイトお嬢様には時間的な問題で言わなかった事がある。

それはこの子・・・・・・三条海里君やディードが負傷している事。

ただ、負傷と言っても擦り傷や打ち身に軽い火傷程度。



治療自体はもう済んでるから大丈夫。二人でマリアージュ数体とガチでやり合って退けたの。

あ、リインさんとリースって子も一緒にだね。マリンガーデンのお客さんの大半が逃げられたのは、みんなの協力が大きい。

そうじゃなかったらやばかった。普通に逃げ道を塞ぐように襲ってきたらしいから。



それで消耗が少なかったリースとリインさんが恭文と一緒に飛び込んで・・・・・・だね。

でも疑問がある。この子が装備してた装備やバリアジャケット、魔力反応が一切無かった。

というより、今も魔力とか感知出来ないし・・・・・・どうやってそれでマリアージュを退けたの?





「そうっスよ。海里、もうアンタは充分頑張ったっスから、あとは私達に任せるっス。
・・・・・・あー、ムサシも同じくっスよ? 海里と一緒に頑張ったんっスから。良い子良い子っスよー」





でも気になる事があるの。ウェンディやノーヴェにディードが『何か』と話してる。

それが何か良く分からないんだけど、みんなには何か見えてるみたい。

あとはセッテも不思議そうな顔で『・・・・・・しゅごキャラ。紙一重の答え』とか呟いてた。



あ、あの・・・・・・真面目にどうなってるのかな。てゆうかウェンディ、ウェンディは何を撫でてるの?



私には何も見えてないから、普通に怖いよ。だって空中を撫でてるんだよ?





「・・・・・・バカ、そんな事気にするな。お前らの手だけじゃ足りなかった分は、アタシらが掴む。
お前らとは会ったばっかだし、それで『信じろ』とは言わねぇさ」



言いながら、ノーヴェは海里君と・・・・・・・その、ウェンディが撫でている何かに向かって右拳を突き出す。



「でも、このままにはしねぇよ。そうだろ、ウェンディ」

「当然っス。・・・・・・人命救助は一応私らの得意分野っスよ? それに」

「マリアージュって特攻兵器が居たなら、問答無用でぶっ潰すっ! こっちはアタシらの専門だっ!!」



あはは・・・・・・確かにね。私達、元テロリストで壊すのは得意技とも言えるし。



「・・・・・・ナカジマさん、ありがとうございます」

「いいさ、別に。・・・・・・あー、それとアタシらに苗字呼びはやめろ。
ナカジマは父親も含めてあと四人ほど居るから紛らわしい」

「あー、そうっスね。ノーヴェと素敵なウェンディさんでOKっスから」

「なんでお前は自分だけ持ち上げてんだよっ!!
・・・・・・・こらムサシっ! 普通に『ではそのように』とか言うなっ!!」










いや、だからあの・・・・・・みんな? 普通に何と話してるのかな。そして何を撫でてるのかな。

あぁもういい。とりあえずここは後だよ。消火剤タンクや突入のための必要装備ももうすぐ届く。

それが届いたら、全員で行動開始。私は後ろからそれを背負って、消化用の砲撃を撃ちまくって消火活動。





ノーヴェとウェンディは現場に突っ込んで、要救助者の捜索と救出活動。

恭文の友達だけが特別じゃない。もちろん他の要救助者が特別なわけでもない。

うん、立場も年齢も性別も関係ない。みんな同じなんだ。





だから・・・・・・絶対に助けたい。特別扱いはせずに、やれるなら全部だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まさか先日『遊び行けたらいいよねー』って言ってたところに突入するとは思わなかった。

とにかく僕達は下へ。ただひたすら下に向かう。目的はもちろんあむ達。

あむ達は魔法が使えない。なので当然だけど火災に対しての備えが全く出来ない。





今僕達がやってるみたいに、ジャケットの構築による熱の防御は無理。なら、下だ。










「・・・・・・蒼凪恭文、本当にあなたの友人達は下に逃げているのですか?」

「多分ね。てゆうかセッテ、普通に入り口から中程まではずっと炎だよ?」

「確かに・・・・・・魔法能力もない人間が何の装備も無しであそこを超えられるとは、考え辛いです」

≪現に主様とセッテちゃんも防熱耐火コート装備バージョンなの。これは辛いの≫



僕で言うと普段リーゼフォームで装着してる蒼のジャケットが防熱耐火コートになってる。

僕の体型だと膝まであるそれの上からいつものマントを羽織って、リーゼフォームにしてるの。



≪言うならリーゼフォーム・特殊環境下Verその1なのー≫

”恭文、ジガンが普通にネーミングしてるよ?”

”ミキ、気にしなくていい”



なお、ミキも居る。あむ達の探索になんとなくレーダーが使えるかもと言って、ついてきたのよ。

ただ環境が環境だから、シオンと一緒に絶対安全な不思議空間に入ってる。



”というか、この空間何っ!? ボク達こんなの使えないのにっ!!”

”私という最強に不可能などありません。はい、納得しましたね”

”それで納得なんて出来ないよっ!!”





火災現場というのは、ひどいとこだと温度が普通に100度単位で超えてしまうような世界だ。

僕達魔導師だってバリアジャケット付きでもずっとは辛い。こういう装備の補助は必須。

だからセッテも少しぶ厚めのコートを羽織ってるのよ。そして燃焼による熱は唯世のホーリークラウンでは防げない。



つまり魔法も使えず装備も0なあむ達が炎を突破しての脱出は不可能。そうなると・・・・・・中だ。





「ですが」

「うん。逆に中は至って普通・・・・・・これ、どういう事? もうちょっと派手に燃やしていいのに」

「単純な放火じゃないということですか? うぅ、リインはちょっと疑問なのです」



僕達は何とかマリンガーデンの中心部まで来た。でも、少しおかしいのよ。確かに外は派手に燃えてるように見える。

もちろん中も燃えてるんだけど・・・・・・でも、入り口や外側に比べるとそれほどじゃないのよ。



「おじいさん、内部の空調設備も生きているようです。
これならあむさん達が中に逃げているという推測も納得出来ますけど・・・・・・うーん」

≪えぇ。色々気になりますね。どうしてそんな加減するような真似・・・・・・マスター≫

≪フェイトさんからメールなの≫



こんな時にラブメール・・・・・・フェイト、素晴らしいなぁ。まぁそんな事を思いつつ画面が展開される。

でも、ラブメールじゃなかった。ラブじゃなくてトゥルーメールだ。



「あー、三人ともストップ」

「・・・・・・いつも通りの惚気や糖分過多なら必要ありませんが?」

「失礼な。あのねセッテ、僕とフェイトは節度ある付き合い方してるから、そんなもん振り撒いた事なんてないよ」



なぜだろう、三人が普通に呆れた顔をしている。でも、そこは気にせずに簡潔に用件を伝える。



「・・・・・・連中を作るためのコアを無限に生成する生体ユニット、ここにあるかも知れないんだって。
場所はマリンガーデンの海底遺跡のどこか。ちなみに名前はイクスヴェリア」

「イクスヴェリア・・・・・・話に聞く冥王がここにですかっ!? そうか、だからこの状況なんだっ!!」

「外に比べて内部に余り火をつけてないのは、中の生体ユニットまで焼き殺さないためですよ」

「もしかしなくてもイクスヴェリアのいぶり出しが狙い? そうすると・・・・・・蒼凪恭文、どうしますか」



セッテがこっちを見て・・・・・・まぁ、普通にイクスヴェリアの確保も頑張りたいとこではあるけどなぁ。



「簡単な話だよ。確保すべき存在が四人に増えただけ」



でもそのためにあむ達を見殺しにするのは間違ってる。だったら、二兎を追うしかないでしょ。



「そしてどっちにしろ下だよ。海底遺跡に要救助者が居るかも知れないしさ。でも、三人とも忘れないで。
僕達がここに居るのは救助と消火活動のため。だから何よりも重視するべきは人命だよ」



マリアージュの行動を止めるだけじゃだめなのよ。消えかけてる命も助けていかなきゃ。



「僕達は戦うために来たんじゃない。消えそうな命や夢を・・・・・・こんなバカな状況から守るために来たんだ」



・・・・・・クールになれ。みんなならキャラなりの能力もある。多少の事は大丈夫だ。



「だから戦闘は極力避けて、あむ達もそうだしあむ達以外に誰か居たなら迷う事なく救助。まぁ一番優先は自分だけどさ」

「・・・・・・そうですね。救助する側のおじいさんや私達が、される側に回っていては本末転倒です。
あむさん達には悪いですけど、自分の身を守る事を一番に考える。でも、助けられるなら」

「うん。助けられるなら絶対に助ける。人の命も自分の命もしっかり守るよ。それは生体ユニットも同じ」



三人が頷きながらも、僕の言葉に首を傾げる。なので、右手の指をピンと立てて言葉を続ける。



「もしも争いを好まない『守ってあげたい』系な女の子なら、全力で助けるよ」

「・・・・・・恭文さん、なぜ生体ユニットが女の子だって言い切れるですか」

「フェイトのメールに書いてた。てゆうか、スカリエッティがそう言ってたらしい」

「ドクターが? なるほど、それならば納得です」

「・・・・・・古代ベルカの王様って、女性が多いんでしょうか。聖王陛下も同じですし」



そんなリースの疑問に答えられるだけの知識を、僕もセッテもリインも持っていなかった。

とりあえず・・・・・・不思議空間のミキとシオンに対してテレパシー。



”ミキ、シオン、どう? なんとなくレーダー、さっきから使ってるんだよね”

”・・・・・・うん、感じてる。あむちゃんにラン達の気配。確かに恭文の言うように下から感じる”

”私も同じくです。微弱ですがペペさんやキセキさん達も一緒ですから、なんとか。
ただ、急いだ方がよろしいかと。ここは余りに優しさに欠けています”

”了解”










とにかく僕達は中に進んでいく。というか、そのまま下に降りていく。目指すは海底遺跡。

マリアージュがいぶり出しのためにこの火災を起こしたなら、この火災の中で一番火の手が回ってないのは最深部になるはず。

もちいぶり出しだから、生体ユニットに『ここに居ると危険』って思わせるくらいには火が回ってるだろうけどさ。





で、もしもあむ達・・・・・・ううん、あむ達だけに限った話じゃないか。

もしも要救助者がそこに居た場合、マリアージュと遭遇する危険が非常に大きい。

で、遭遇したらどうなるかとかは言うまでもないよね? うん、もうそこはいい。





・・・・・・限りなく最悪に近くないっ!? 目的が一纏めなのはいいけど、それでもアウトだってっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・暑いよぉ」

「ややちゃん、頑張るでち。中の方はまだ大丈夫なんでちから」

「日奈森さん、大丈夫?」

「うん、なんとか。でも・・・・・・何、これ?」



突然爆発みたいなのが起きて、それでいいんちょやディードさん達とはぐれた。

入り口には戻れなくて、非常口も潰れてて・・・・・・それで下まで降りてきたけど、かなりキツい。



「それで唯世、ここはどこだ?」

「マリンガーデンに備え付けられてる海底遺跡だよ。ほら、パンフレットに」



あたしとややは汗だくになりながらもそれを見て・・・・・・あ、ホントだ。

確かに外壁が今の建築物っぽくない。なんかこう、遺跡っぽい。



「外には出れないみたいだし、ここで救助を待つ方がいいかも。というか、それしか無い」

「そうだね。あんな轟々に燃えてたら」



竈の中みたいに通路全体が赤く染まっていて・・・・・・無理っぽかったもの。



「助け・・・・・・来るかなぁ」

「大丈夫だ。それにやや、忘れたのか? 我が家臣達にはこういう状況に強いのが」



キセキが言いかけた瞬間、瓦礫が崩れ落ちるような音が響いた。それによりややがビックリして、抱きついてくる。



「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ! な、何っ!? ややもうこれ以上はだめー!!」

「あぁ、やや落ち着いてっ!! ・・・・・・結構近くだよね?」



というかあの・・・・・・アレだよね。あたし達が今通りがかった曲がり角だよ。



「そうだね。・・・・・・よし。日奈森さん、結木さんの事お願い」

「え、唯世くんっ!? ちょっと待ってっ!!」

「大丈夫だから」



そう言いながら唯世くんは慎重に・・・・・・曲がり角の際から音のした方を見た。



「・・・・・・ナカジマさんっ!?」



そう声を上げて・・・・・・え、ナカジマさん? ちょ、ちょっと待って。それってもしかして。

あたしとややは顔を見合わせて、そちらの方へ走る。走って・・・・・・嘘。



「「スバルさんっ!!」」



瓦礫に軽く埋もれるような形で、スバルさんが倒れてた。右手にナックル装備で、ローラーブーツ履いてる。

でも、怪我してる。頭から軽めに血が出てて、ジャケットもちょっとボロボロで・・・・・・あれ?



「・・・・・・あなた達は」



そのスバルさんの腕に抱きしめられていた子が居た。その子は丁度腕から抜け出した所らしい。

チャイナ風の半袖ミニスカートのワンピースで、素足のままで・・・・・・どう見てもこの光景には不釣合い。



「あなた達も、マリアージュの犠牲者・・・・・・なんですね」










オレンジ色のショートカットの髪を揺らしながら、その子は悲しげに・・・・・・本当に悲しげにそう言った。





まるであたし達がここに居るのとか火事が起きたのとか、全部自分の責任だと言わんばかりに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・無茶、しちゃったなぁ。崩落の危険があるのに飛び込んじゃあだめか。

でも、放っておけなかったんだもの。あの子、こんなとこに素足だったし。

それで・・・・・・あぁやばい。頭打ってる。それに右足もかるくやられちゃったかな。





でもあの子・・・・・・そうだ、あの子は? 抱きしめたはずなのに感触がない。





私は痛みに耐えながらゆっくりと瞳を開ける。すると、そこには四人の子ども達。










「・・・・・・あぁ、スバルさん良かった。あの、マジで大丈夫ですか?」

「スバルさん死んじゃ嫌だー! しっかりしてー!!」



・・・・・・あれ、四人? なんかおかしくないかな。私、一人しか助けてないのに。

そこまで考えて、ぼんやりとしてた頭が再び回転を始めた。



「ナカジマさん、あの・・・・・・大丈夫ですか?」

「あむちゃん・・・・・・ややちゃんに唯世君っ!!」

『はいっ!!』



身体を起こして・・・・・・あ、あの子もちゃんと居る。オレンジ色の髪をショートカットにした子。

やっぱり素足なのが目立つ。というか、普通にこの子色々とおかしくない? 主に格好とか。



「うぅ、みんな良かったよ。怪我とかない?」



そうだよそうだよ、それであむちゃん達が居る理由も思い出してきた。

みんな、火災に巻き込まれたんだよね。あー、でも無事で良かったよー。



「・・・・・・いや、それはスバルさんでちから」

「そうだぞ。お前、普通に傷だらけじゃないか」

「そうだよー! 私達みんな心配したんだよっ!? 全然目を覚まさないしっ!!」



ぺぺちゃんとキセキにランちゃんが呆れ気味に私に対して強めにそう言う。

私は右腕で頭を軽くかきながら、誤魔化すような半笑いしか浮かべられなかった。



「あははは・・・・・・みんなもごめん」



つまり、相当声かけててくれたんだ。だめだなぁ、私何分くらい寝てたんだろ。



「でもでも、これは大変ですぅ。今すぐスゥがお直しを」

「あー、スゥちゃん大丈夫だから。うん、私はこれでも強いんだよ?」



言いながら立ち上がる。なお、ちょっと無理して笑ってるのはご愛嬌。

・・・・・・スゥちゃんのリメイクハニーが凄いのは知ってるけど、今は時間がないもの。



「あなたも大丈夫ですか?」



あ、あれ? 私どうして敬語なんだろ。おかしいなぁ。



「はい。助けていただいたようで・・・・・・ありがとうございました。あなたは、とても強い人」



あれ、言いながらもなんで私から距離を取ろうとするの?



「そしてその子達と、周りに居る小さな子達も」

「・・・・・・え?」

「も、もしかして・・・・・・スゥ達の事が見えてるですかぁっ!?」

「はい。とにかくここからすぐに逃げてください。あとは・・・・・・大丈夫ですから」



それでその子が足早に立ち去ろうとする。でも、足をふらつかせる。

私が駆け寄る前に、あむちゃんが彼女を抱きとめた。



「アンタ、大丈夫?」

「・・・・・・はい。あれ、おかしい。どうして立てないの? 予定外の目覚め方をしたから?」

「ねーねー、あなたもしかして歩けないの?」

「歩けない?」



ランちゃんにそう聞かれて、その子は少し考えて・・・・・・ポツリと漏らした。



「・・・・・・そうかも。こんな目覚めは予定にないから」

「そっか。それなら話は簡単だよ」



私はその子にマッハキャリバーを軽く走らせて近づく。それからしゃがんで笑いかける。



「ね、あなたお名前は?」



その子は少し迷うような仕草をして、また呟くように口を開いた。



「イクス・・・・・・イクスヴェリア」



イクス・・・・・・あ、ティアとジンから聞いたマリアージュの関係者。というか、マリアージュはそれを探してるって言ってた。

そうか。この火災でマリアージュが目撃されてるのはそこが理由なんだ。この子を捕まえに来た。



「イクス・・・・・・いいお名前ですね。お姉さんはレスキュー隊員です。えっと、災害で困ってる人を助けるのがお仕事なんです。
だから、あなたを・・・・・・ううん、あなただけじゃない。あむちゃんも唯世君もややちゃんも、しゅごキャラのみんなだって助けます」

「だめです。その、私は」

「何がダメなの? てゆうかアンタ、この状況でどこ行くつもりだったの」



あむちゃんにそう言われて、少し言葉にどもる。私達に色々言いにくいみたい。



「・・・・・・私はその」

「いいからいいから」



とにかく私は、その子をお姫様抱っこ。あ、なんか軽い。

大体ややちゃんと同い年くらいだから・・・・・・うん、当然か。



「じゃああむちゃん、みんなもついて来て」

「はい。でもスバルさん、やや達の逃げてきた所・・・・・・火事が凄くて」

「大丈夫。避難経路に関しては別口があるから。ね、マッハキャリバー」

≪その通りです。災害救助のプロにはそれなりの手管があるんですよ。任せてください≫










というわけで、あむちゃん達を連れて私はイクスを抱っこしながら脱出開始。





・・・・・・やっぱスゥちゃんとあむちゃんにお直ししてもらえばよかったかな。ちょっとダメージ深いかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



スバルさんに先導される形であたし達は移動を開始。慎重に、だけど急いで走る。





ややはスバルさんが居るせいか、さっきよりも落ち着いてる。そこはあたし達もだよ。





どこか古めかしい通路を進みながら、少しだけ・・・・・・あの子とお話。










「・・・・・・ごめんなさい」



あの子はスバルさんに抱えられながらそう言った。この火災を起こしたの、マリアージュらしい。

そしてこの子はこの遺跡の奥深くでずっと眠ってて、この火事のせいで起きちゃった。



「もう、そんなに謝らなくていいよー。ねーねー、イクスちゃん・・・・・・だったよね? イクスちゃんっていくつなの?」

「えぇっと、あなたは」

「あ、ややは結木ややだよー。それでこっちの子はしゅごキャラのペペちゃん」

「でち」

「ややとペペ・・・・・・なんというか、赤子のように可愛い方達ですね」



スバルさんの腕の中のイクスがそう言う。・・・・・・やや、アンタのイメージはやっぱそれなの?



「・・・・・・細かい年代は分かりませんが、恐らく1000年単位で」

『せ、1000年っ!?』



じゃあこの子、あたし達より遥かに年上じゃんっ! で、でも子どもだし・・・・・・これ、どうなってんのっ!?



「私は兵器ですから」



本当にあっさりと・・・・・・だけど少し悲しげにそんな事を言った。



「防災士長にややとペペ、他の方々とは違う。あの子達の王となるべくして造られた存在。
あの子達を生み出し、戦場を焼け野に変えるための存在。死ぬ事の出来ない冥王。それが私です」

「・・・・・・イクスちゃん」

「やや、みんなもごめんなさい。私が・・・・・・私があの子達を止められないから、あなた達を巻き込んでしまった」



あれ、なんだろ。なんかこう・・・・・・イライラする。1000年前の兵器とかなんとかって、あたしには良くわかんない。

でも足を進めながら思うのは、マジでイライラだ。あたしだけじゃなくて、みんなも同じ。



「太陽が見えない空も、血と硝煙の匂いも、無数の屍も・・・・・・もう見たくないのに、ずっと繰り返している。
目覚める度にあの子達を産んで、眠り、また産んで・・・・・・それをずっと繰り返していた。・・・・・・私なんて」



イクスが、さっきより小さな声で呟いた。だけどそれがあたし達みんなの胸を貫いた。



「私なんて、産まれてこなければよかった。私は失敗作・・・・・・この世界に居てはいけない存在だから」



イクスがそう言った瞬間、ややがポツリと呟いた。



「スバルさん、ちょっと止まって」

「え?」



ローラーで走っていたスバルさんが、足を止めてややの方に振り向く。



「イクスちゃん、ちょっとごめんね」



それからややの右手が動いて、イクスの額にデコピンをした。



「痛っ!! ・・・・・・やや、何を」



言いかけて、イクスが言葉を止める。だってやや・・・・・・凄く悲しげな顔をしていたから。



「デコピンって言うんだよ。悪い子に対してのお仕置き。
ねぇ・・・・・・イクスちゃん、どうしてそんな事言うのかな」

「・・・・・・やや」

「『産まれてこなければよかった』なんて、ダメだよ。そんなの・・・・・・絶対ダメ」



イクスは少し戸惑ってるみたい。自分の発言に対してややがどうしてこういう反応を返すのか、分からないって顔をしてる。



「そんなの、凄く悲しくてダメな言葉なんだよ? 周りの人達だって悲しむよ」

「・・・・・・私の周りの人達は、私やマリアージュを利用する事しか考えていません。
例え『悲しむ』としても、それは道具が無くなるからで」

「そんな事ないよっ! ややは今のイクスちゃんの言葉を聞いて、すっごくすっごく悲しいもんっ!!」



そう声を上げたややを見て、イクスがハッとした顔になる。そして申し訳なさげな顔をする。



「赤ちゃんは・・・・・・この世界に産まれて来る子は、誰だって必要とされてるから産まれてくるんだよ?
ママがそう言ってた。でもそれは、絶対に道具にするためなんかじゃないよ。だから・・・・・・ぐす」

「・・・・・・ややの言う通りだよ」



だからあたしもまぁ・・・・・・ちょっと乗っかる。というか、半べそかいてるややの頭を、右手で撫でる。

やや、ありがと。アンタのおかげでちょっとモヤモヤしてたのが吹き飛んだ。・・・・・・うじうじするな、あたし。



「あたしはさ、アンタが何者でどうしてこうなったのかとか全然分かんないよ。でも、これだけは分かる。
例えアンタがなんであれ・・・・・・アンタが今言った言葉は、絶対にダメな言葉だよ。そんな事、言っちゃいけない」

「・・・・・・ですが、私は」

「あー、ごめんみんな。ちょっとお話はストップ」



スバルさんがそう言いながら、通路の前の方を見る。そこから・・・・・・足音が聴こえた。



「ややちゃんがイクスを叱ってくれて良かったよ。おかげで不意打ちされずに済んだ」

「・・・・・・僕達、待ち伏せされてたんですか?」

「うん。あのまま直進してたら、ちょっと危なかったかも。ややちゃん、ありがと」

「え、えっと・・・・・・あの、どういたしまして」



足跡は一つじゃない。それを隠そうともせず、かなりの人数がこちらに近づいて来てる。

かなり前の曲がり角から、人影が見えた。そしてそのままその人影の先頭が、あたし達の方を向く。



「・・・・・・アレが我らガーディアンにケンカを売ってくれたマリアージュか」

「なんというか、見るからに悪いオーラがプンプンでちね」

「くそ、本気でイクスを狙っているわけか。あいつら・・・・・・何を考えている」



キセキが苛立ちながらもイクスを見る。イクスは自分が責められていると思ったようだけど・・・・・・違った。



「イクスが・・・・・・自らの王が、『もう誰も傷つけたくない』と声を上げ続けているというのにっ!!」

「その通りでちっ! イクスたんは静かに眠りたいだけなんでちよっ!?
赤ちゃんの眠りを勝手な理由で妨げるなんて、最悪な連中でちっ!!」

「・・・・・・え?」



キセキとペペがあげたのは怒りの声。それはマリアージュに対してで・・・・・・あたし達全員の総意。



「許せん・・・・・・許せんぞっ! 僕は勝手な都合でイクスの眠りを妨げた事が、絶対に許せんっ!!」

「キセキ、僕も同じだよ。イクスヴェリア陛下は、何が何でも守らないと」

「当然だっ! 同じ王として、イクスの危機を見過ごす事など僕には出来ないっ!!
絶対に助けるぞっ! そして我らガーディアンを敵に回した事、徹底的に後悔させてやるっ!!」

「ややもややもー! ややはイクスちゃんみたいな小さい子に、もうあんな事言って欲しくないもんっ!!」

「・・・・・・そうだよね。あたし達は・・・・・・こんなの、絶対に納得出来ない。
納得出来ないなら、全力で意地を通して突っ走ればいいだけじゃん」



イクスは驚いた顔であたし達を見る。いつの間にか全員、イクスを守るように前に出ていた。



「あなた達・・・・・・どうして」



あたし達はそれに気づいたから振り返りつつイクスを見た。

それで振り向いて、イクスを安心させるように笑った。



「簡単だ。それは僕達が・・・・・・ガーディアンだからだ。イクス、よーく覚えておけ。
僕達聖夜小学園・ガーディアンはな、生徒の生徒による生徒のためのちょっと特別な生徒会だ」

「それでやや達ガーディアンは、困っている子が居たら助けていくのがお仕事なんだ。絶対に放っておいたりしないんだよ?
それはイクスちゃんに対してだって同じ。イクスちゃんは聖夜小の生徒じゃないけど、それでも子どもだもん」

「・・・・・・何を言ってるんですか。私はあなた達よりずっと年上で大人です」

「そっちこそ何を言ってるでちか。大人はあんなバカな事を言わないでちよ。
・・・・・・自分の事大事に出来ない大人なんて、ホントにダメダメでち」



そう即座に躊躇いもなく返されて、イクスが軽く苦い顔をしながら唸る。どうやらペペの言葉が突き刺さったみたい。



「つまりはそういう事ですよぉ。だからイクスさんは変な心配したりしなくていいんですぅ。
もちろんあむちゃんにスゥ達から逃げたりも、絶対にダメですよぉ? それはスゥ達とお約束ですぅ」

「そうそうっ! こんな状況、私達とあむちゃんですぐにひっくり返しちゃうんだからっ!!
よーし、やるぞー! 頑張れ頑張れー!! ファイトファイトー!!」

「ラン、アンタちょっと黙れっ! てゆうかこの状況で応援だけされても意味ないってっ!!」



そんな落ち込んだ顔してもだめっ! 普通にあたし達、足手まといの可能性大なんだよっ!?



「ガーディアン・・・・・・守護者。あなた達が・・・・・・私を守るというの?
命の危険もあるのに、死ぬかも知れないのに。それでも、そうするの?」

『もちろんっ!!』



あたし達全員で声を揃えてそう言うと、イクスの目が見開いて驚きに染まった。

・・・・・・とは言え、どうしたもんか。やっぱり×たま・×キャラ相手みたいには無理だよね。



「・・・・・・スバルさん、スゥ達でお話してマリアージュさん達を止めるのは無理ですかぁ?」



あたし達が気持ちを固めている間にも、進軍は続く。そして決して止まらない。



「お茶とお菓子が必要ならすぐに用意しますし、もしくはイクスさんにお話してもらうとか」

「あ、そうだよね。だってイクスちゃんがあの子達の王様なんでしょ?」

「確かにそれなら・・・・・・・イクス、今スゥちゃんやランちゃんが言った事って、可能ですか?」

「無理です」



広めの通路を埋め尽くすように、20人近くの同じ顔をした人が近づいてくる。

それはあの時あたしがなぎひこやりまと一緒に見たのと同じ人。



「私からマリアージュへの指示・統率機能はありません。私に出来るのは、あの子達のコアを生み出す事だけ」

「つまりあの者達は、元から王であるお前の命令を聞く事が出来ぬという事か」



こうする理由・・・・・・もしも恭文だったらどう言うんだろ。えっと、あーこんな感じかな。

イクスはマリアージュを生み出して戦争とかするのが嫌だったんだよね。だからあれこれに繋がる。



「・・・・・・・イクスヴェリア陛下が『反乱』を起こさないようにそういう形にしたんですね」



あたしが答え出す前に、唯世くんが出しちゃったけど。や、やっぱり恭文みたいには上手く行かないなぁ。

まぁそうだよね。あたし、そんな戦闘バリバリなキャラじゃないんだし。唯世くんみたいに頭も良くないし。



「えぇ。あの子達のコントロールキーを握っている人間は別に居ます。
そしてあなた方による説得も無理です。お茶とお菓子があっても同じく」

「どうしてもですかぁ? スゥのお茶とお菓子はとっても美味しいのにぃ」

「どうしてもです。そもそもマリアージュは死体を元に生産されるインスタント兵器。食事を取るという概念がないんです」

「死体を元に・・・・・・待て待てっ! それではまるでゾンビではないかっ!!」



とにかくそのキーを持ってるのが、イクスの眠りを妨げた犯人。というか、あの時の・・・・・・元凶。

あたしは自然と拳を握り締める。なんかこう、本気で腹立たしいんですけど。



「そしてマリアージュは対話こそ可能ですが、判断能力が非常に低いんです。
キーを持つ人間・・・・・・操手からの命令を実行する事しか出来ない人形ですから」

「つまり止めたかったら命令してる奴を捕まえて、そいつに『止まれ』と命令させるしかないんでちね」

「そうです」

「でも、あたし達の現状だとそんなの無理だよ」

「そうだね。僕達は誰がマリアージュを操ってるかも分からないんだから。その方向でどうにかするのは現実的じゃない」



それ以前の問題として、目の前にはその止めたいマリアージュだよ。・・・・・・マジでやばいんじゃ。

あたしや唯世くんにややがキャラなりしても、きっとマリアージュは止められないし。



「ナカジマさん、僕達のキャラなりだと、防御や回復はともかく攻撃能力がありません。
・・・・・・三条君なり蒼凪君が居てくれれば、まだなんとかなったんですけど」

「もう、唯世君もそんなに不安そうにしなくても大丈夫だよ。というより、ちょっと下がってて欲しいな。
さすがにみんなをアレとは戦わせたりは出来ないよ。そんな事させたら、防災士長の名折れだもの」



言いながらスバルさんは、イクスを床に下ろして座らせる。そして前に踏み出した。



「それじゃあみんな・・・・・・イクスの事お願い。最悪の場合には頼りにさせてもらうけど、今はこのまま」



そして左手をかざすと、青いドーム状の障壁があたし達を包む。



「これは・・・・・・防護障壁? あの、防災士長」

「イクス、私もあむちゃんとややちゃんと同じなんです」

「え?」

「『産まれてこなければよかった』なんて、言って欲しくない。
・・・・・・私にもそういう覚えがあるから分かるけど、それでも嫌なんです」










言いながら、スバルさんが右手のナックルを構える。構えて・・・・・・スバルさんは前へと踏み込んだ。





そしてあの『人形達』とあたし達の目の前で戦い始めた。あっちこっち傷だらけで、ボロボロなのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、僕達は色々と荒っぽい手を他の防災の方々に迷惑をかけないように使って、どうにか遺跡内部に突入した。

でもここ、やっぱり燃焼の頻度が低い。生体ユニットは普通に頑丈って言うのも考えたけど、そうじゃないらしいね。

だから意図的に生存可能な環境を作り上げてるんだよ。ついでに言うと、海底遺跡内部は基本海の中だ。




穴が空けば当然だけど海水が流れ込んでちょっと危ない。溺死の可能性だってある。





僕達はもちろんそこの辺りを気をつけて別ルートを作った。でもこうなると・・・・・・やばいな。










≪アルト、ジガン、サーチは≫

「だから僕のセリフを取るなボケっ!!」



遺跡の結構広めな通路を走りながらも、アホかましてる相棒にツッコむ。

・・・・・・まぁ、言いたい事は分かっているようなので、そこは色々ありがたい。



≪ビンゴですよ。多少ノイズが入ってアレですけど、あむさん達の『生体』反応も確認出来ました≫



つまり、まだ生きてる。とりあえず、これを確かめられただけでここまで急いだ甲斐はあったよ。



≪ただ、一つ問題が≫

「問題?」

≪あむちゃん達の近くにスバルさんも居るの。それで現在戦闘中なの≫



自然と速度が上がったのは気のせいじゃない。なお、僕のだけの話じゃない。

僕の右隣のリインに、後ろのセッテとリースもだ。



「誰とスバルが戦っているか・・・・・・考えるまでもありませんか」



なお、突入直前にフェイトから連絡が入った。スバル、救助活動途中で崩落に巻き込まれて、反応が消えたそうなの。

遺跡内部のサーチが外からだと出来ないみたいで、恐らくその中に居るとは思われると言ってたけど・・・・・・ビンゴか。



「状況から察するに、あむちゃん達を引き連れてスバルさんが避難を開始。
そこで運悪くと遭遇・・・・・・でしょうか。いえ、運悪くではないようです」

「ですです。恭文さん、普通にあむさん達以外にもう一人、知らない反応が出てるです」



つまり、イクスヴェリアもスバルとあむ達と一緒に居る? 色々都合が良いけど、それが逆に怖い。

守り切れなければ、全部一瞬で壊されるって事だもの。特にここは閉所だし、普通に逃げ場がない。



「ならアルト、ナビお願い。全速力でスバル達と合流して、一気に避難するよ」



とりあえず僕の推測が正しいなら、一気に爆破で全員お陀仏ってコースは避けられるはず。

そんな事をしてイクスヴェリアがお亡くなりになったら、意味がないもの。つまり、スバルの頑張り次第で時間は稼げる。



「・・・・・・フェイト、聴こえる? フェイト、フェイト。あー、それじゃあついでにスバル、聴こえるかな」



曲がり角を右に曲がりながらも通信や念話をしてみるけど、一切通じない。



≪マッハキャリバーも同じくですね。アドレスを変えたとかではない限りは、ここでの通信は不能です≫





くそ、もしかしてなんか通信関係でジャミングでもされてんじゃないの?

外に居るフェイトはともかく、同じく内部に居るスバルまで連絡付かないのはおかしいでしょ。

ブレイクハウトで道作るか? いや、距離がまだあるし、かえって時間がかかる。



ここは焦れったいけど、突然の爆発や崩落に気を付けつつも前に進まないと。



こういう時だからこそ、慎重に。そしてハードボイルドにだよ。ここで僕達が全滅したら、意味がない。





「やはり通信はだめですか」



セッテが僕の様子を見て、『分かっていた』という声でそう言った。



「私の方でも防災隊のヴォルツ司令に呼びかけているんですが、さっぱりです。あとはうちの姉妹達にも」

「・・・・・・こりゃ、とっとと脱出しないと色々危ないな」

「そうですね。蒼凪恭文、急ぎましょう」

「うぃさっ!!」





外の事は防災隊やフェイトにトーレ、チンクさんとディエチ達に任せれば大丈夫なはず。

フェイトはともかく、トーレやチンクさん達は防災隊の手伝いもよくやってて、こういう状況の専門家のたまごだしさ。

次の曲がり角を右。でも、僕達の400メートル先には五体の人形。・・・・・・普通に警戒グループかい。



僕は迷う事なく前に踏み込む。そして、踏み込みながらも左手で取り出した蒼いデンオウベルトを巻いてパスを取り出す。

右手で持ったパスを開いて、親指で扇形のカードスロットを展開。

そして左手でそのカードを二枚セット。そのスロットを閉じると、どこからともなく電子音声が聴こえた。





≪Sound Ride Set up&Fusion Ride RinforceU Set up≫

「変身っ!!」



そのまま左手で青いボタンを押して、片手で閉じたパスを右からのアンダースローで前面に放り投げる。

パスは通路の中で回転しながら僕の前でブーメランのように飛んで、そのままベルトにセタッチした。



≪Vinculum Form≫



バックルから放たれる蒼い光が僕の身体を包む。そして右隣のリインが僕に吸い込まれる。

その姿の中、僕達は一つになり・・・・・・古き鉄はその姿を表す。



≪The song today is ”Double Action Strike Form”≫



鳴り響くのは音楽。なお、最新の電王の曲だね。ちなみに歌っているのは幸太郎と天丼。



【「最初に言っておくっ!!最初に言っておくですっ!!」】





僕に向かって正面から突っ込んで来たマリアージュが、唐竹に刃を振り下ろす。

でもその前に僕は踏み込み、アルトで抜きを放ちつつも斬り抜けて胴体からマリアージュを真っ二つにしている。

上半身と下半身は僕の後ろに落ちてそのまま小さめに爆発する。その爆発を紫色の風が渦巻いて斬り裂く。



リースが使う風属性の魔法だね。炎すら微塵に斬って消し去っちゃうみたい。

踏み込むまでの間に光が弾け、僕達が動いた軌跡を描くように蒼い氷の羽が舞い散る。

左腕のケープとフードが僕達を視点に生まれた風に揺れ、蒼く染まった髪も同じく。



その衝撃に押されるようにして、他の四体が動きを止めた。だから僕は更に踏み込む。





【「僕達はかーなーり・・・・・・強いっ!!私達はかーなーりー・・・・・・強いですっ!!」】

≪ついでに言っておきましょう。『人形』では私という伝説には勝てません≫



というか、セッテも踏み込んでる。両手の刃を振りかぶり、そのまま投擲した。



「IS、スローターアームズッ!!」





突撃する僕の後ろに隠れるようにしつつも回転する刃は飛ぶ。

僕とマリアージュの距離が10メートルを切ったところで軌道を上に変えた。

そのまま打ち下ろすようにマリアージュ達に向かって飛ぶ。



咄嗟の事で反応が遅れたのか、マリアージュの内二体が肩から胴体までをブレードで斬り裂かれる。

それによりその二体もまた小爆発。なお、本当にその場だけの爆発で僕達は巻き込まれる感じではない。

その間に僕は魔力をアルトに込めて、残り二体に正面から接近している。



マリアージュは反応してそれぞれ唐竹に刃を叩き込もうとするけど、もう手遅れも良い所である。





【「氷花」】



両手で蒼い凍れる刃の柄を持って、袈裟、逆袈裟、右薙、左切上、そして右切上と刃を瞬間的に叩き込む。

一瞬の内に刻まれた斬撃の線は、並ぶように立っていた二体のマリアージュと襲い来る銀色の二条の刃を微塵にした。



【「繚乱っ!!」】



僕に斬られた断面から這うようにして、それぞれのパーツが凍結魔力によって凍り付いた。

そしてそのまま砕け散るようにしてそれらは粉砕して、床に転げ落ちた。



≪繚乱・・・・・・あ、連続攻撃だから繚乱なの≫

【ジガン、正解ですよー】



・・・・・・とりあえず、進路クリ・・・・・・じゃないか。なんかまたまた五体出てきたし。

400メートル程先の曲がり角から身を屈めて走りつつこっちに来る。そして・・・・・・む。



”はわわわ、なんか左手が大砲みたいになってるよっ!?”

”砲撃タイプ・・・・・・まずいですね。通路だと逃げ場がありません”



そいつが先頭に出て、左腕を動かしてその方向を僕達に向けようとする。

この状況で持ち出す事を考えると、火炎放射・・・・・・いや、榴弾タイプか? でも甘い。



”問題ない”



閉所と地上戦は僕の得意分野なのよ。ここなら色々と『素材』がある。

だから僕は、左手を伸ばして自分の左側の壁に手を当てる。



『さぁ、我々と等し』



言いかけた大砲持ちが、自分の右側から襲ってきた三本の錐に頭と胴体と腰を貫かれる。

なお、ブレイクハウトによる物質変換で作ったもの。それでマリアージュを串刺しにしてやった。



”・・・・・・またエグい手を”



で、それだけじゃない。今攻撃したのは三つ。当然だけどもう一つ残ってる。

それは平手。それがかざした大砲を横から押して、その先を左側に向けた。



”さすがはお兄様、躊躇いの無さが素敵です”





放たれた砲弾が壁に衝突して、その場で爆発する。そしてそれに巻き込まれて大砲持ちは爆発する。

炎と衝撃が僕達の少し前を埋め尽くす。そして、そんな中突っ切る影が四つ。

ブレイクハウトで作った錐や手は、爆発によって折れてしまったらしい。その隙間からどんどん来る。



なので僕は左に身を捻る。すると空いたスペースから縦回転しながら再びセッテのブレードが飛ぶ。

先頭のマリアージュがそのブレードを右薙に振るって弾く。そのブレードをセッテが手に取った。

ただし、マリアージュの目の前で。普通にブレードを投擲してからその後を追うように突撃していた。



手にとったブレードを唐竹に叩き込むと、先頭のマリアージュは刃を横にしてそれを防ぐ。

だけど、その衝撃に圧されるようにして踏ん張りつつも数メートル下がった。

その左右を残りのマリアージュが走り抜ける。僕もセッテの隣目指して一気に踏み込む。



僕は一体が左薙に叩き込んできた刃をアルトの中程で受け止める。

そしてそのまま反撃されないように刃を抑えつつもアルトを寝かせて、そのまま切っ先を突き出した。

なお、マリアージュの刀の刃はアルトの刃と鍔で止められ動かせない。



マリアージュの胸元をアルトの刃は捉えた。僕はアルトの刃を捻って、左薙に身体の中から斬り裂く。

刃は胸元と右腕を両断した。それだけではなく、壁に真っ直ぐに亀裂を刻んだ。

それでも僕は構わずにアルトを振り抜く。まず一体が崩れ落ちようとしているので、僕は後ろに数度跳んで下がる。



その間にマリアージュが爆発した。僕がこのやり取りをしている間に、セッテももちろんに動いている。

上から自分を叩き潰すように襲ってきた斬撃を半歩下がって回避。続けてくる右切上、左薙、逆袈裟、突きを後ろに下がりつつも回避。

そして最後の突きは身を左に捻って避けた。それから右手で持っていたブーメランブレードを右薙に叩き込んだ。



マリアージュは咄嗟に後ろに跳部。そうしてセッテの斬撃を避けて、また踏み込む。

セッテは身体を回転させながら、自分の背中を晒していた。マリアージュはそこを突いて突きを叩き込む。

でも、セッテの回転は僅かに身体の軸をずらしていた。その突きはすれすれで外れる。



・・・・・・訂正。セッテは最初からそのつもりで動いてた。だから外れたのではなく避けたの。

そうしてセッテは突きが叩き込まれる前に、左手に持っていたブレードも合わせて二刀を袈裟から叩き込んでいた。

マリアージュの身体が押し潰されるような斬撃によって床に叩きつけられて、そのまま爆発する。



当然だけどセッテはそれを後ろに飛びつつ回避していた。・・・・・・くそ、普通に爆発避けるのメンドイな。

そう思っている間にももう二体だ。僕の方に来たのが、袈裟に刃を叩き込んでくる。左に身を捻ってそれを回避。

そこから数合互いに斬撃を打ち合って、通路の中で金属音が響き火花が散る。なお、セッテも同じ感じ。



左から来る真一文字の斬撃をしゃがんで避ける。それから一気に踏み込む。





「飛天御剣流」





アルトの峰に左手を当て、飛び上がりつつも下から上へと斬撃を叩き込む。

それと同時に詠唱開始。というか即終了。アルトの銀色の刃が魔力に包まれた。

刃を包むのは、当然薄く鋭く研ぎ澄まされた凍結魔力。それがアルトの銀色の刃を蒼く染め上げている。



マリアージュは咄嗟に後ろに下がりつつも刃を横にして、僕の斬撃を防御。





「龍翔」





だけど、勢いまでは殺せない。マリアージュは斬撃に吹き飛ばされるようにして通路の天井近くまで上がった。

そしてその時に刀が火花を散らしながらへし折れて、刃の切っ先がマリアージュの鳩尾に叩き込まれる。

そこから一気に胸元から右肩までが深く斬り裂かれる。マリアージュは身を逸らしながらも、僕を捕まえようと左手を伸ばす。



うん、自爆兵器だからそう来るのは見えてるよ。だから僕は刃をとっくに返しているし、次の攻撃態勢は整ってる。



伸ばされた左手ごと、体格差故か僕より早く床に落ちつつあるマリアージュに向かって、斬撃を唐竹に叩き込む。





「槌閃もどきっ!!」





左手が真ん中から斬り裂かれ、斬撃が肩に入る。その衝撃によりマリアージュの身体が吹き飛ぶ。

床に叩きつけられるようにしながらもバウンド。そうしながら刻み込まれた傷口から全身に氷が回る。

そうして少し滑って・・・・・・粉々にその身は砕け散った。僕はそれを見ながらも着地する。



そして爆発音がもう一つ。どうやらセッテの方ももう一体を排除したみたい。

・・・・・・うし、これで進路クリア。あ、爆発はリースに消火してもらえばいいからクリアなの。

でもこの調子だと、結構な数が遺跡内部に入り込んでるかも。注意しとこうっと。





「うし、全員油断せずに直進するよっ! そしてリインに立てられた死亡フラグは全てへし折るっ!!」

【恭文さんがひどいのですー!!】

「おじいさんもリイン姉様も一体なにしてるんですかっ!?」

「・・・・・・やはりよく分からない人です」










言いながらも、僕達はひたすらに前進。こんな時間を終わらせるために、ひたすらに前に。

てーか、こうなると普通に全速力の方がいい。気を付ける必要はあるけど、それでもだよ。

スバルがあむ達はともかく、生体ユニットと一緒なのを他のマリアージュ達が気づいてないとは考え辛い。





下手すると、マリンガーデン中に居るマリアージュがスバル達狙いでわらわらと集まってくる可能性もある。


















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



目の前で行われるのは、本当にガチな戦い。あたし達がいつもやってるのとはレベルが違う。

そりゃあ恭文やフェイトさん達が、あたし達のバージョンアップが必要と思うのも納得よね。

いや、なんか場違いにも思ったのよ。とにかく炎に包まれる通路の中で、スバルさんが動く。





振るわれる刀を防御魔法で防ぎ、マッハキャリバーが変化したローラーブーツを走らせて避ける。

そうかと思うと高く跳んで相手の後ろを取り、右拳を振るう。

その度に轟音が響いて、マリアージュが動かなくなる。そして爆発が起きる。





スバルさんは怪我してて、あっちこっちから血も流れてて・・・・・・でも、動くのはやめない。

その背中からとても強い意志を感じる。『守りたい・助けたい』って強く思ってるのが分かる。

そうこうしている間に、マリアージュは残り一体。一番奥に控えていたのが、右手の刀を構えた。




幅で言うと40メートル程のそこそこの広さがある通路の中、燃え上がる炎がゆっくりとあたし達を焼いていく。











「・・・・・・すごい。10数体のマリアージュをこんなに短時間で」



イクスが驚きを込めて呟く。・・・・・・うん、本当にあっという間だった。

もしかしたら5分も経ってないかも。というかだめだ、なんか時間の感覚がおかしい。



「イクスちゃん、それってスゴイの? 確かにややから見てもスバルさん強いけど」

「凄いというか・・・・・・そうですね、強いんです」



炎の中、スバルさんは残り一体を見据えてローラーブーツで走る。

そして十数メートル開いていた距離を一気に詰めた。



「はぁぁぁぁぁぁっ!!」



顔面を狙って突き出した右拳が・・・・・・避けられた。というか、マリアージュの姿が消えた。

いや、後ろに回り込んだ。スバルさんの背中を狙って、マリアージュが刀を突き出す。



「く・・・・・・!!」



スバルさんは即座に左に跳んでそれを避けた。でも、そこから一気に薙ぎ払いが来る。

刀での左薙の斬撃を、スバルさんは空色の防御魔法で防ぐ。



≪Protection≫





えっと・・・・・・アレはバリア系、だったよね。迫り来る銀色の刃を、そのバリアが止めた。

スバルさんは斬撃の勢いで壁際まで吹き飛ばされる。でもその途中でローラーブーツが床を踏みしめる。

滑るようにしてそこまで下がって、顔を伏せていたスバルさんが視線を上げる。



その表情がすぐに驚きの色に染まった。目の前にマリアージュが居るんだから。





「な、なにあれ・・・・・・・さっきまでと全然違うじゃんっ!!」



あたしでも分かる。あのマリアージュ、他の奴と動きが違う。というか、すっかり防戦になってるし。



「まずい・・・・・・・防災士長、気をつけてっ! その子、分隊長ですっ!!」



スバルさんは右薙に打ち込まれた斬撃を、しゃがんで回避。

スバルさんの胴体を断ち切ろうとするような斬撃は壁を斬り裂き・・・・・・ううん、壁を衝撃で砕いた。



「イクスさん、分隊長ってなんですかぁ?」

「マリアージュのリーダータイプですっ! 分隊長は他の個体より能力が高めになってますっ!!」

「えっと、つまりつまり・・・・・・とっても強いって事っ!?」

「ラン、どうしてそういう簡単な解釈しか出来ないんでちか」





言っている間にもスバルさんが前に踏み込みつつも拳を叩き込む。

マリアージュは後ろに下がりつつも右手を引く。そして、刀を盾にした。

刀を自分の目の前で縦にかざして、峰の上の方に左手を添える。



刃と拳がぶつかり、衝撃が弾けた。でもマリアージュは・・・・・・嘘。

ほんの少しだけ、スバルさんが拳を突き出した分だけ下がったけど、それでも耐えた。

スバルさんがまた驚いたような表情になる。そしてマリアージュは、ずっと無表情。



バイザーで覆い隠されている瞳がどんな状態なのかも分からないから、余計にそんな印象が強まる。

スバルさんは即座に拳を引いて右に移動。でも、マリアージュが走り込んでその進路を先回りした。

袈裟、右薙、左切り上げと連続して斬撃が打ち込まれる。スバルさんはナックルを盾にしながらそれを防いだ。



防御魔法を展開する暇が無いのか、斬撃が打ち込まれる度に火花が上がる。

マリアージュが唐竹に刃を打ち込む。スバルさんは少しだけ後ろに下がって・・・・・・跳んだ。

飛び込みつつも右足で蹴りを入れる。マリアージュは左に転がって回避。



転がりつつも身を時計回りに捻って、右切上に斬撃を打ち込む。スバルさんは今度は防御魔法でそれを防いだ。

防ぎつつもマリアージュの胴体に向かってまた右足で蹴りを叩き込む。防御魔法は即座に解除。

マリアージュは刃を振り切った直後で反応出来ずに腹に叩き込まれた蹴りで、今度はマリアージュが壁に叩きつけられる。



もちろんスバルさんがすぐに動く。ローラーブーツで前進して、右手のナックルがガシャガシャと3回音を立てる。






「リボルバァァァァァァァァァァッ!!」



手首のタービンみたいなのが高速回転して、渦のようなものが見える。

そのまま拳がマリアージュに叩き込まれた。



「キャノンッ!!」



胸元に向かって叩き込まれた拳はとても力強くマリアージュを打ち抜く。そしてその背後の壁も大きく砕いた。

マリアージュの顔が上がる。上がるけど・・・・・・あたしは寒気が走った。あたし達の方から僅かに見えた物がある。



「スバルさん、逃げてっ!!」

「防災士長逃げてっ!!」



あたしとイクスが叫んだのは理由がある。・・・・・・向かい側にマリアージュが居る。

というか、おかしい。左手がまるで砲門みたいになっていて、まるで大砲を撃とうとしているような。



「え?」

『終わりです』










そう言ったのは、スバルさんと今まで戦っていたマリアージュ。

確かに終わりだった。スバルさんだけじゃなくて、自分という存在も含めて。

だって、別のマリアージュの左手の砲門から砲撃が撃たれたんだから。





魔法のような感じじゃなくて、本当に大砲の弾。それがスバルさんとマリアージュに向かって飛ぶ。

スバルさんは咄嗟に引こうとするけど、右拳を自分が戦っていたマリアージュに掴まれた。

自分が巻き込まれるかも知れないのに、それでもそうした。つまり・・・・・・そのまま死ぬ覚悟でやってる。





ただ、それでも・・・・・・スバルさんとマリアージュが爆発に巻き込まれた。




















(第66話へ続く)




















おまけ:ドキたま電話相談室




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



テディ「恭文おじい様、私はテディです」

幸太郎「テディ、お前いきなり何の話してんのっ!?」

テディ「いや、何か電波が来たんだ。・・・・・・さて、ドキたま電話相談室だが・・・・・・普通に恭文おじい様とあむ達が大変な状況になっている」

幸太郎「つーわけで、俺らが代理って事で呼ばれたんだよ。てゆうかいいのかよ。これ基本しゅごキャラが対象だろ?」

テディ「問題ないだろう。以前は虎がやっていたそうだしな。それで立派に悩みを解決したそうだ」

幸太郎「いや、出来ないだろっ!? 常識的に考えて虎がどうやって電話相談室でお悩み解決するんだよっ!!」





(『ガウガウガウ・・・・・・ガウガウッ!!』)





テディ「というわけで、もうすぐ私達がメインの映画が公開される。というか今日だ」






(なお、これの掲載日は平成22年6月5日です)





テディ「『超・電王TRILOGY・EPISODE BLUE 派遣イマジンはNEWトラル』、みんなぜひ見てくれ」

幸太郎「だから待てっ! 普通に宣伝すんなよっ!! なぁ、俺らは電話相談室やりに来たんだよなっ!?」

テディ「問題ない。というわけで予告映像をどうぞ」

幸太郎「ちょっと待てー!!」





(この後、このためだけに作った特別な予告映像が流れた。・・・・・・約5分)





テディ「・・・・・・素晴らしいな。いや、私達も撮影を頑張った甲斐があった」

幸太郎「あぁそうだな。でもよ、これで電話相談室で」

テディ「あと、私と幸太郎がうたう『Double Action Strike Form』もよろしく頼む。
二人で歌唄さんにあれこれ教わって練習してようやく出来たCDだ。出来れば12枚ほど買って」

幸太郎「だから宣伝するなっ! てゆうか、12枚は聞くけど6枚ってなんだよっ!!」

テディ「保存用と観賞用と布教用とそれぞれのスペアが3枚ずつだ。恭文おじい様が『これが世間の常識』と教えてくれたのだが」

幸太郎「そんなのデマだからっ! てーか、もう保存用買ってる時点でスペア成立してなくねっ!?」





(その通りだけど、誰もそこをツッコまない。それがとまとクオリティ)





テディ「というわけで、本邦初公開だ。先程の予告映像のあれこれも含めつつ、特別編集のPVを作ったので」

幸太郎「だからなんでそんなの作ってんだよっ! てーか相談を」

テディ「というわけで聞いてくれ。私と幸太郎がうたう『Double Action Strike Form』だ」

幸太郎「無視すんじゃないよっ! いいから俺の話を」





(そして、Movie Editな感じでPVが流れた。その時間、約3分)





テディ「・・・・・・うぅ、素晴らしいな。収録を頑張った甲斐が」

幸太郎「涙ぐむなよっ! てゆうかもう意味分かんないしっ!!」

テディ「幸太郎、何をそんなに怒ってるんだ?」

幸太郎「お前が空気読まないからだろっ!?」

テディ「何を言ってるんだ。『せっかくのメイン映画なんだからこれくらいはやって問題なし』と、未来の時間の歌唄さんやりまさんが」

幸太郎「あの二人の入れ知恵でこれかよっ!!」





(未来の電王、さすがにちょっとキレ気味。てゆうか、現時点で10分経とうとしている)





幸太郎「とりあえずもうそこはいいんだよっ! ほら、早く相談受けるぞっ!! そのためにわざわざこっちに」

スタッフA「・・・・・・あの、すみません」

幸太郎「なんだよ。てか、今収録中」

スタッフA「・・・・・・放送、もう終わりです」

幸太郎「・・・・・・はぁっ!?」

テディ「そんな・・・・・・なぜだっ! まだ私達は相談を」

幸太郎「お前のせいに決まってんだろうがっ! このバカっ!!」










(本日の結論:『宣伝は相談を受けてからにしましょう』。
ドキたま電話相談室、次回へ続く・・・・・・?)




















あとがき



歌唄「・・・・・・恭文、スバルさんマズくない?」

恭文「まずいね。でもこれでドラマCD通りですよ。・・・・・・というわけで、ドラマCDのディスク2も半分は超えた。
マリアージュ編もなんだかんだであと2話。果たして事件の犯人は? そこの辺りも気になりつつも本日のあとがきは蒼凪恭文と」

歌唄「月詠歌唄です。というわけで、何気にもうゼロノス編の公開が終わってるのよね」

恭文「とりあえず作者が行く劇場ではね。あー、でもNEW電王編楽しみだなぁ。ゼロノス編がホント良かったから、こっちも期待しちゃうよ」





(超・電王トリロジーのお話です)





歌唄「というわけで、一緒に見に行きましょうか。二人っきりで」

恭文「いや、なんで二人っきりっ!? 普通にフェイトと行くんだけどっ!!」

歌唄「だから、更に行くのよ。・・・・・・いいでしょ、デートくらい」

恭文「それアウトだよっ! 普通に浮気なんだからっ!!」





(婚約者二人居るしねー)





恭文「・・・・・・よし、分かった。それならみんなで行こう。これならまぁ問題・・・・・・ないはず」

歌唄「あ、いいの? 私、まさかOKされるとは思ってなかったのに」

恭文「・・・・・・まぁその、それなりに向き合うって決めたし」

歌唄「そっか。ありがと、私それだけで嬉しい」





(ドS歌姫、普通に嬉しそうだ。やっぱりデレている)





歌唄「でも本編の話だけど・・・・・・どうするのよ。普通にアウトな状況ばかりじゃないのよ。
犯人は分からないし、スバルさんはアレだしあむ達はコレだし」

恭文「まぁ僕とフェイトとあむ達だけならそうなるね。でも、そうはならないのがミソだよ。
そこの辺りもまた次回をお楽しみに。それでは本日のお相手は蒼凪恭文と」

歌唄「月詠歌唄でした。・・・・・・ね、私本編に出たいんだけど」

恭文「ミッドチルダ編終わってからだね。じゃないとさすがに無理だって」










(それでも寂しいのか、ドS歌姫は結構必死だったりする。
本日のED:UVERworld『GOLD』)




















フェイト「・・・・・・だめ、やっぱり中と連絡が取れない。あー、でも考え方次第なのかな。
ヤスフミ達までスバルと同じ状態という事は、ちゃんと遺跡内部に突入出来たのかも」

トーレ「というより、セッテやリインにその妹も居るのでしょう?
なら大丈夫な・・・・・・あぁ、一番にご心配なさっているのはスバルの方ですか」

フェイト「うん。ヤスフミ達もだけど、そっちの方が心配なんだ。あむ達・・・・・・違うな。
要救助者救出のために何か無茶するんじゃないかって、私だけじゃなくて防災司令も」

トーレ「確かに彼女は・・・・・・そこは蒼凪恭文に期待するしかないのでしょうか。
普通の方法では無理ですが、あいつのブレイクハウトやその他の魔法があれば」

フェイト「そうだね。なら、私達はヤスフミとスバル達が脱出しやすいように外だね」

トーレ「はい。・・・・・・ですが、やはり不思議なものです」

フェイト「何が?」

トーレ「こうやってお嬢様と共に空を飛んでいる事です。それも管理局側で。
こんな事、一生来るとは思っていませんでしたから」

フェイト「・・・・・・確かにね。ちょっと不思議。なら、その不思議ついでにトーレ」

トーレ「はい、お供します」










(おしまい)






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あきゅろす。
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