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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第61話 『Nightmares linked to flame/忍び寄る『祝福』という名の恐怖』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー』

ラン「ドキッとスタートドキたまタイムっ! さて、本日のお話はっ!?」

ミキ「ついに動き出す事件と現実に恭文とあむちゃん達ガーディアンが直面するよ」

スゥ「事件の幕開けは雨。その雨の中、『祝福』という名のあの人は静かに動き出しますぅ」





(そうして画面に映るのは、『祝福』の名を冠する一つの存在。そして懐かしい方々)





ラン「ミッドチルダ・X編はここからが本番っ! 新たな事件を前に恭文とあむちゃん達はどうなっちゃうのっ!?」

ミキ「急転直下の新展開のスタートだよ。それじゃあいつもの通りに」

ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



雨は翌朝には降り止んでいた。そして、空は晴れ渡って・・・・・・でも問題がある。

どうも天候の急変化で、今週いっぱいはお天気が崩れやすくなっているらしい。

なので僕とお肌ツヤツヤなフェイトとリインとあむ達とディードとリースは、朝ごはんを食べてすぐに戻る事にした。





いつまた雨が降るかも分からないので、早め早めにである。なお、当然だけど海は無しになった。

一応フェイトとロードワークかてら見に行ったのよ。そうしたら、案の定波が高くなってたから。

さすがにこれは危ないと判断して、海水浴はまたの機会とした。というわけで、現在八神家の前。





まだまだ家族での休日を楽しむというみんなのお見送りを受けている間にも、太陽は更に昇っていたりする。










「じゃあみんな、また世話になる事もあると思うんやけど」

「あと、アタシも予定つけて定期的にそっち行くからな。ちょっとバージョンアップに協力してやるよ」

「我もだな。我も何気に自由が聞く身分でな。日奈森のストレッチの相手くらいは出来る」

「はい、その時はよろしくお願いします。というかあの、ありがとうございます」

「な、なんというか恐縮です。というかあの、マジでありがとうございます」



唯世とあむがはやてと師匠とザフィーラさんにペコペコ・・・・・・相当に頭が上がらない関係になったらしい。

なんというかザフィーラさん、あむに何したんだろ。普通に先生に対する態度になってるし。



「テスタロッサ、蒼凪、あとリインにディードにリースも気をつけてな。
それと海里・・・・・・良ければまた打ち合おう。昨日は結局雨だったしな」

「・・・・・・はい」

「ややちゃん、リインちゃんの事お願いね。あと、恭文くんがこれ以上他の子にフラグを立てないようにしっかりと」

「はいはーい。ややにおまか・・・・・え、後半はなんでですかっ!?」

「シャマ姉、そこまでかよ。てーか普通にそれをややに頼むってどうなんだ?」



はいはい、僕には聞こえない。とりあえず・・・・・・うん、聞こえないふりでファイナルアンサーだよ。



「あー、それと恭文」

「ん、どうしたのアギト?」



そして、いきなり腹部にストレートが叩き込まれた。僕は咄嗟に右に避ける。



「ヤスフミっ!? というかアギトっ!!」

「何すんじゃボケっ!!」

”うっせぇっ! 普通にてんこ盛りの後遺症黙ってやがって・・・・・・マジでムカつくしっ!!”



・・・・・・え? いやいや、なんで・・・・・・って、考えるまでもない。シャマルさんが話したんだ。



”お前、本気でバカだろっ! いいかっ!? アタシはお前を簡単に潰させるわけにはいかねぇんだよっ!!
旦那の仇討ちの肩代わりしてもらって、ルールーの事とかも色々助けてもらって・・・・・・それでこんなのダメだろうがっ!!”

”・・・・・・アギト”

”・・・・・・恭文、アタシはもうどんなに頼まれてもてんこ盛りは許可しねぇ。アタシにはお前の今を守る義務があるんだ。
いいや、アタシがそうするって決めた。大事なダチで、仲間で・・・・・・家族の旦那であるお前だからそうするんだ”



とりあえずアギトはコブシを引いて、僕を見上げる。なお、瞳は本気で怒ってた・・・・・・というか、涙目?



”いいか、ちゃんと覚えとけよ? 守るんなら、お前は最高のハッピーエンド目指す必要があんだからよ。
へらへら笑って自分貫くなら、そこを目指して突っ走るんだ。そうじゃなかったら、誰もお前のバカに付き合ったりしねぇよ”

”・・・・・・うん、そうだね。アギト、その・・・・・・ごめん”

”いいさ、別に。アタシも脳天気過ぎたしよ。とにかくアレだ、お前ももうちょいパワーアップだな。
てんこ盛りが封印である以上、それなりの手札は必要になってくるだろ”

”そうだね”



空が少し暗くなる。雨が降り始めたとかじゃなくて、太陽に雲が差し掛かった。

僕達はそれを見上げて・・・・・・もう一度はやて達の方を見る。



「それじゃあはやて、師匠にみんなも・・・・・・僕達そろそろ行くわ」

「はやて、シグナム達も家族の休日・・・・・・ゆっくり過ごしてね。というか泊めてくれてありがと」

『ありがとうございましたっ!!』



それであむ達も全員そこでお辞儀。なので、僕とフェイトも苦笑しつつ倣う。



「うんうん、えぇよ。ほなみんな、またなぁ。まぁこれから協力体制取ってくし・・・・・・お互い頑張っていこうな」

『はいっ!!』










そして僕達は、そのまま手を振りながらはやての家を後にした。

はやては僕達が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。もちろん師匠達も同じく。

雲に遮られた日差しは、その雲が途切れた事で再び世界を照らし始める。





そんな中僕は・・・・・・フェイトと手を繋ぎながら、みんなを先導するように家に戻った。

雨が降る一日の中で色々と見つけた答えだったり課題だったりも胸に抱きながら。

なお、家にたどり着いてから寂しがっていたなのはの相手が相当だったとヴィヴィオから聞かされた。





けど、ここはいいよね? うん、問題無し無しー♪




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第61話 『Nightmares linked to flame/忍び寄る『祝福』という名の恐怖』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・えっと、こっちの公式は」

『坊主、ちょっと失礼するぞっ!!』

「うわぁ、ビックリしたぁっ!! ・・・・・・って、レイオさん」





家に戻ってから、いつものように宿題をみんなで必死に頑張っていた。そこまではよかった。

そうるといきなり通信モニターが開いた。なお、それは白の教導隊制服を来たおっちゃん。

そこに映るのは、現在教導隊に居てヒロさんとサリさんの知り合いのレイオ・ガーランドさん。



ジンの師匠でもあるフィーネさんが想いを寄せていたとかなんとかって言う人。

なお、相当な凄腕でヒロさんとガチにやり合って相打ちに終わるという・・・・・・あ、僕も同じか。

魔導師ランクは、陸戦SSだっけ。あ、顔立ちはもう筋肉隆々なゴツイおっさんですよ。





「てか、どうしたんですか」



レイオさんとはヒロさん達やジン経由で知り合ったんだけど・・・・・・マジでどした?



『ガハハハハハハハッ! 何、ちょっとした挨拶だっ!!
今度の戦技披露会、実は俺も出場することになってよっ!!』

「へぇ、そうなんですか。・・・・・・あれ、今凄まじく嫌な予感が」



いつものパターンでコレだと・・・・・・こう、色々と目の前のおっちゃんが絡んできそうなんですけど。



『あぁ、その予感は的中だ。お前の相手は・・・・・・俺だ』



・・・・・・・・・・・・いやいや、ちょっと待とうよ。こんな筋肉隆々なおっちゃんとガチで殴り合い?

きゃー! そんな楽しくないイベントは嫌だー!! 普通に横馬と当たるとか思ってたのにー!!



『くくく、アイツらから少し聞いたが腕を上げてるらしいじゃねぇか。
最近だととんでもないロストロギアを封印したんだろ? いや、今から楽しみだな』

「そ、そうですね。楽しみ・・・・・・ですねぇ」





やばい、普通に冷や汗しか出ない。色々噂を聞いているから、色々やばい未来しか思いつかない。

具体的には・・・・・・暴れ過ぎてシャマルさんとかから怒られるとか? あぁ、ありえそうだから嫌だよ。

そして勘違いしてる。この人は普通に勘違いをかましている。あのね、違うから。



ブラックダイヤモンドは僕だけで封印したわけじゃないから。



フェイトとあむや唯世達が手伝ってくれなかったらアウトだったよ。





「と、というかそういうのって今の段階で言っていいんですか? ほら、機密とか」

『ガハハハハハハハッ! 安心しろっ!! 俺は教導隊だぞっ!?
そんなわけで戦技披露会を運営するスタッフの一人でもあるっ!!』



いや、だからこそ今こういう事を聞いてるんですよっ!?

普通にアンタ、僕の話とか趣旨とか分かってないでしょっ!!



『とにかくそういう事だ。坊主、戦技披露会で俺をがっかりさせるなよ?
俺もギガシャウターも、楽しみにしてんだからよ。じゃあなー』

「いや、あの・・・・・レイオさんっ!? お願いだから話を」



そうして、突然に通信が切れた。・・・・・・・・・なんなの、あの人。



「あ、あの人は・・・・・・!!」

≪主様、あのおじさんって確か・・・・・・お父さんやヒロリスさんのお友達なの≫

「うん、すごい知ってる。てーかこれはなに? 僕に一体何を求めてるのさ。
基本全スルーでこっちの話を聞かない相手に、何しろと」

「・・・・・・恭文」



声がかかったのは隣から。そっちを見ると、唯世を筆頭にガーディアンのみんなが疑問顔だった。



「あの・・・・・・あのおじさんって誰? こう、ややの見る限りでは暑苦しそうな感じだったんだけど」

「蒼凪さんの戦技披露会での対戦相手なのは把握出来ましたが」

「・・・・・・レイオ・ガーランド。スカーレオンっていう二つ名を持った教導隊の魔導師だよ。
ヒロさんサリさんの同期でもあってさ。実力はヒロさんとガチに殴り合いをして気絶し合うくらい」

「ヒロリスさんとって・・・・・・それ、無茶苦茶強いって事じゃんっ!!」

「やや、そうなの?」

「そうだよー!!」



あ、りまと海里はヒロさんやサリさんの実力を知らないから今ひとつ疑問顔か。



「あのね、真城さんに三条君、二人もクロスフォードさんとエグザさんが魔導師で、蒼凪君の兄弟子というのは聞いてると思うんだけど」

「そこは知ってるけど、でも今は引退組だって」

「引退組だけど、無茶苦茶強ぇんだよ。俺がまだガーディアンに居る時に模擬戦を見学させてもらったんだけどな。
その時なんて恭文やティアナさんとガチにやり合って、相当大暴れしまくってすごいのなんのって。で、結局相打ちだった」

≪というか、現段階でもお父さんとヒロリスさんは、主様やティアナさんより格上なの≫

「・・・・・・見る限り相当な実力者だとは思っていましたが、そこまでとは」



そこまでなんだよ、海里。で、ここにはまだ不安要素がいくつかつきまとっている。



「でも、それならお前でもやってるし問題ねぇんじゃないのか?」

「ところがどっこい大有りなのよ。・・・・・・その時レイオさんがやり合ってたのは、全盛期のヒロさんだもの。
もうちょっと言うと、現在のヒロさんとその当時からずっと現場やらなんやらに出まくってるあのおっちゃんとじゃあ差があると思う」



やっぱ実戦とかを継続して経験していると、伸びる部分はあるしね。

数年は互いにそういうガチなぶつかり合いは無いって言うし、その当時からもっと強くなっていると見ていいでしょ。



「・・・・・・つまりアレか。普通にやり合ったら今のお前より相当な格上と」

「確実にね。てゆうか、レイオさんは数少ない現役でのマスタークラスだもの」

「マスター・・・・・・あぁ、お前の先生やその知り合いが持ってるって言う、最強クラスの魔導師の称号だよな」

「うん」



空海・・・・・・というか、海里とりま以外のみんなは、模擬戦の見学の時に色々教わったのか知ってるみたい。



「・・・・・・こりゃ、そうとう気合い入れないと瞬殺されるかも」

「また弱気ね。らしくないじゃないのよ」

「マスタークラス相手だしね。これならそこら辺の犯罪者を同時に10Dくらい相手にした方が気が楽」

「・・・・・・そこまでなの? でも恭文、言いながらも楽しそうな顔してるのはどうしてかしら」



どうやらりまには見抜かれてるらしい。ううん、他のみんなも同じか。

話聞いてから、頭痛くもなったけど同時に・・・・・・うん、楽しくなってきた。



「バレてた?」

「バレバレよ」

「いやさ、マスタークラス相手とケンカ出来るなんて滅多に無いもの」



僕は右手を上げて、視線を落として手の平を見る。そして、強く握り締める。



「聖夜小でみんなと過ごして・・・・・・色々あって、その中で見つけた答え。
その成果をぶつける相手としては、申し分ない。・・・・・・全力で、ぶっ潰す」










相手にとって不足はない。あとはどうするかだけど・・・・・・まぁ、ここは考えておくか。





ただ、恐らく小手先の技は通用しない。だったら・・・・・・あははは、我ながら無謀だなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文、燃えてるね」

「そうね。バトルマニアだから仕方ないのよ。あむ、やっぱり心配?」

「まぁそれなりにね。でも、それだけじゃないってのがあたしは嬉しいかな。
あたし達との時間の中で・・・・・・うん、前に進める答えが見つかってるんだから」





右手を開いて、またまた楽しそうに宿題に取りかかり始めた恭文君を右隣でシオンが見つめている。

シオンは嬉しそうに恭文君を見ていた。恭文君は・・・・・・自分の答えを見つけてるんだね。

僕はまだまだだな。リズムが生まれたのは嬉しかったけど、それでもだよ。僕の・・・・・・答えかぁ。



ごめん、まだ分からないよ。うぅ、これはもうちょっと色々考えないとダメかなぁ。



だって僕の探さなきゃいけない『答え』は一つじゃないんだから。





「・・・・・・ね、みんな」



そう思いながらも宿題に取りかかっていると、フェイトさんから声がかかった。

全員が視線を向ける。なお、一番嬉しそうなのは恭文君。



「明後日なんだけど、宿題は無しでまたまた観光がてら街の方に出ようと思うんだ」

「え?」

「ちょうど私の被保護者というか・・・・・・まぁ、子どもみたいな子達が来てね」

『子どもっ!?』



で、当然だけど恭文君を見る。



「恭文、どういう事っ!? 子どもってあの・・・・・・えぇぇぇぇっ! やや、聞いてないよー!!」

「あたしもだよっ! アンタマジでなにしてるっ!? 一応小学生なんだから自重しろー!!」



恭文君は少し呆けて・・・・・・あ、納得した顔になった。



「違うよ。ちょっと事情があって、フェイトが保護責任者をしてる子達なんだよ」

「ハラオウンさんが保護責任者・・・・・・なるほど。それで子どもと」

「うん」



三条君を筆頭に、色々疑問が解けたらしい。若干勘違いしていたあむちゃんとややちゃんは、軽く苦笑い。



「エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエっていう男の子と女の子です」



なんでも2年前まで動いていた機動六課という部隊の部隊員で、そこの同僚でもあったとか。

というか、局員で魔導師でストライカーと呼ばれるくらいに優秀とか。



「ちょうどあむさんやりまさん、唯世さんと同い年ですね」

「・・・・・・あたしや唯世くんとかと同い年の魔導師の子」



あむちゃん的には少し興味があるみたい。普通に食いついてきてる。



「というか、二人がこっちくるですか」

「うん。ヤスフミの戦技披露会の観戦に合わせて、ちょっと長いお休みをもらったんだって。
というか、地上部隊の方での研修とかも実は込みとか言ってたかな」

「えっと、とにかくそのエリオとキャロってのがこっち来て、せっかくだから遊ぼうってことっすよね」

「そうだよ。もちろん私も行くし・・・・・・どうかな。年も近いし、きっと話も合うと思うんだけど」



その言葉に全員・・・・・・うん、恭文君とリインちゃんも含めて、顔を見合わせてこう言うんだ。

だって僕達は年や環境は違えど、ガーディアンの仲間だから。



『さんせーいっ!!』










その様子を、一番嬉しそうに見ていたのは・・・・・・フェイトさんだった。もちろん、視線は恭文君に向いてる。





それをまた嬉しそうに見ていたなのはさんやディードさんと視線を合わせて、僕も笑った。















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今日も今日とて必死に捜査活動ですよ。雨はあがったけど・・・・・・やっぱり雲行きが怪しい。

そんな中でも地道にやっていくから、真実に迫っていく事が出来るんだよ。うん、こういうの大事だよな。

で、今日も俺はウエバー執務官の補佐役って感じで一緒に外回りだ。





なお、マグナス補佐官は108でギンガさんと行動してる。てーか別行動だな。





とにかくウエバー執務官が運転する車の中で、朝一番の素晴らしくないニュースを聞いた。










「・・・・・・服飾強盗っ!? マリアージュがですかっ!!」

「そうなんですよ。ミッド市内のブティックに深夜に押し入って、服飾を強奪です。
なお店内には当時誰も居なかったので、店の物以外は被害は無しです」



その言葉に、俺は少し胸をなで下ろす。つまりそれは、普通に人に被害が出ていないという事。

まぁ店の物が壊れたりしてるそうだから、万事OKには出来ないけどな。



≪お洒落に目覚めたのか? それにしてはまたアグレッシブだな≫

「アグレッシブ過ぎますよ。ただ、こうなると色々疑問が出てきますね」



車を運転しながらウエバー執務官がそう言う。で、俺も助手席で腕を組みながら考えて・・・・・・あぁそうなるよなぁ。



「ウエバー執務官、その強盗がマリアージュなのは」

「間違いありません。監視カメラに姿がくっきり映っていましたから」

「でもそうだとして、なんでそんな真似を? 普通にそんな事したら手がかり残すでしょうに」



まず一つの疑問がコレ。普通に金出して買うだけで充分だろ。わざわざ強盗する必要はない。

無人と言えど派手に強盗なんてしたら、足跡を残すし・・・・・・金が無かったのか?



「マグナス補佐官とギンガ捜査官は『どこかしらに潜入するため』と見ているようです。
実際盗まれた服は、女物でいわゆる正装にも使えるような類だそうですし」

≪なるほど、確かに今まで目撃されている姿ではパーティー会場には入れないな。
かぼちゃの馬車や綺麗なドレスを出せる魔法使いも居ないなら、そうするしかないと≫

「えぇ。実際私もその可能性は高いと思います」



だとしたら、次の行き先は決まったな。そういう『正装』が必要なところに乗り込むつもりだ。

で、そういうところに居るのを狙ってるんだよ。そうすると・・・・・・どこだろうな。



「そういう正装でなければ怪しまれるというか目立つ・・・・・・いえ、入れないところでしょうか。
例えばそうですね。会員制のホテルや高級クラブにパーティー会場、それに準じるような場」

≪そしてその人物は本当につい最近・・・・・・ここ二〜三日中にそこに入っている。
少なくともマリアージュが、潜入のために服を用意しなくてはいけないと思うだけの時間はな≫

「ではやはりホテル関係でしょうか。クラブやパーティー会場で長時間の滞在は難しいですし」



あー、そうか。例えばクラブやパーティーとかだと、滞在出来ても数時間だろ? それで服用意はないだろ。

てゆうかアレだな、それだったらパーティーが終わった後を狙ってブスリとやればいいだけだしよ。



「じゃあその手のホテル関係に片っ端から当たって・・・・・・でしょうか」

「ですが問題もあります。その手のホテルのスタッフはそのシステム上、とても口が硬いです。
こちらが捜査協力を求めても、素直に協力してくれるかどうか。・・・・・・まぁ、ここは交渉次第ですか」

≪そうだな。ホテルのスタッフとて、自分の仕事場が火の海になるのは望まないだろう。
ではウエバー執務官、早速当たってみるか? ミッドで会員制のホテルとなると相当数だが≫

「もちろんですよ。せっかく得られた手がかりですし・・・・・・しっかり噛みついていきましょう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、ミッドの都心のターミナルのロータリー近く。

あたし達ガーディアンとフェイトさんとリースとディードさんとお出かけ。

あ、ヴィヴィオちゃんも居るんだ。夏休みだしせっかくだからって。





ただ・・・・・・なのはさんは残念だなぁ。お仕事でキャンセルだから。

とにかく集合場所で少し待っていると、まず二人来た。

その人はスバルさんと・・・・・・栗色の髪をショートカットにした人。





タンクトップに夏らしい爽やかな青のシャツを来たその人は、明るく私達に笑いかける。





乗っていたのは地球で言うとミニクーパーみたいな車。というか、普通に可愛い。










「えっと、みんな紹介するね。この人は私の大親友で」

「アルト・クラエッタです。あー、なぎ君やフェイトさんとは同じ部隊で働いてた事があるんだ」

『よろしくお願いします』





それで軽く自己紹介し合っているうちに、もう二人が来た。その子は私達と同い年くらいの男の子と女の子。

赤い髪でGジャンGパンの男の子と、白のロングスカートとピンクの上着を着た子。

というか、赤い髪の子が大体・・・・・・あれ、あたしより高い? スバルさんとちょっとしか変わらない。



とにかくその子達の外見は事前にフェイトさんと恭文から聞いてた通りだった。





「・・・・・・エリオー、キャロー、こっちこっちー」



フェイトさんが嬉しそうに呼びかけると、二人が嬉しそうにこちらを見て駆け寄ってくる。

少し人通りの多い駅の中を小走りに走って、こちらへ来た。



「フェイトさん、スバルさんにアルトさんもお久しぶりです。それにディードとリインさんと・・・・・・えっと、どちらさまで」

「あ、私の事はあとで説明しますからお気になさらずに」



リースが苦笑いしながらそう言って両手をぶんぶんと胸元で振る。

・・・・・・まぁ、この場で『未来から来ました♪』って説明は出来ないしなぁ。



「なぎさん・・・・・・は聞くまでもないよね。どうせ元気なんだろうし」

「そうだね、聞く必要な」



瞬間、恭文の両手が素早く動いて、デコピンが決まる。なお、あたし達が止める間はなかった。



「・・・・・・何か言った?」

「「・・・・・・ごめんなさい」」

「・・・・・・で、みんな。この失礼極まりないバカ二人がエリオとキャロだよ」

「え、えっと・・・・・・初めまして。日奈森あむです」

「辺里唯世です。えっと、ルシエさんとモンディアル君でいいかな」



そしてあたし達はそれぞれに自己紹介。まぁあんま長くやっちゃうと他の通行人の邪魔にもなるので、軽めにだね。




「・・・・・・ただ、みんなは仲良くしない方がいいな。ほら、バカが感染するかも知れないし。
つーわけで二人とも、とっとと帰れ。大丈夫、二人の事は気にせずに楽しく遊ぶから」

「「それはひどいんじゃないかなっ!?」」

「まぁまぁ、ヤスフミも落ち着いて? でも・・・・・・うん、久しぶり。
エリオ、随分背が伸びたね。私、来年には追い越されちゃうかな」

「そ、その・・・・・・恐縮です」



というか、恭文が敵意燃やしてるんですけど。具体的には自分より背が高いエリオ君に対して。

そしてフェイトさんはそれに気づいてるから、場を良くしようとひたすらに明るく振舞っている。



「エリオ、僕に模擬戦で一度でも勝ったら背を伸ばしてOKって約束をどうして破るのさ」

「そんな約束してないよねっ!? てゆうか、普通にこれはどうしようもないからっ!!」

「まぁそこはいいよ。海里と出会った時の衝撃に比べたら・・・・・・ぐす」










泣くなぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あぁ、なんかフェイトさんが慰め始めたしっ!!





てゆうかそこまでっ!? うん、知ってたけどそれでもちょっと落ち着こうよっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「まぁ恭文とフェイトさんは置いておこうぜ? てゆうか、なんか甘ったるいんだが」

「・・・・・・これ、いつもの事なのかな」



疑問を呟きながらもなぎひこ・・・・・・というか、みんなは二人を見る。

慰めてたはずなのに、いつの間にか固有結界で糖分を排出している恭文とフェイトさんを。



「基本いつもの事よ。なぎひこ、いい加減慣れなさい。慣れないと一緒に暮らしたりなんて出来ないわよ」

「・・・・・・りまちゃん、すごいね。私とエリオ君は未だに慣れないのに」

「僕、フェイトさんがこういうキャラだって知った時は衝撃的だったな」

「実は俺もです。蒼凪さんもハラオウンさん絡みだとキャラが外れるようでして」



まぁそこはいいか。とりあえずすぐに元に戻るだろうし、これからの行き先とかの話をしよう。



「でもキャロ」

「はい、アルトさんなんですか?」

「髪、かわいいねー。毛先が軽くカールして」

「ありがとうございます」



確かに桃色の髪の後ろ・・・・・・ひとまとめにして流している髪の先が巻いてる。



「あー、アルトさんもそう思ってました? ややも可愛いなーって思ってたんですー。
ねね、キャロちゃん。その髪ってパーマとかかけてるの? 結構柔らかい感じでかかってるけど」

「あ、これは天然なんだ。伸ばすと私の髪って、こうなっちゃうみたいで」

「そうなんだ。・・・・・・いいなぁ。ややとかあむちーは基本ストレートだし」

「あー、そうだね。カールつけるにしても、そんな柔らかくはちょっと無理かな」



あたしとややがそう言うと、キャロちゃんが照れたように軽く笑う。

・・・・・・可愛い子だよなぁ。でもなんだろ、さっき一瞬見えた黒い何かは・・・・・・幻覚かな。



「よし。じゃあお話はこれまでにして、そろそろ観光始めようか」

「それもそうだね。私の車となぎ君とフェイトさんの車をあんまここに長く停めてても迷惑だし」





なお、あたし達は恭文とフェイトさんが借りてきたワゴンでここまで来た。だからこの人数でもなんとか乗れた。



でも、アルトさんのミニクーパーもあるし・・・・・・うん、最初よりかは楽に乗れるかな。



まぁその前にまだイチャイチャしてる二人の目を覚まさないとだめだけど・・・・・・ここは良しとしよう。





「せっかくあむちゃん達も居るからマリンガーデンもいいんだけど、お天気模様がちょっと悪いしなぁ」



スバルさんの言うように、まだまだミッドの天気は不安定。いつ雨が降り出すか分からないとか言ってた。



「なら今日は軽めに、ミッド湾岸をアルトや恭文とフェイトさんの車でドライブして、美味しいもの食べちゃおうか」

『はいっ!!』

「ドライブかぁ。綺麗な景色とか見れるといいなぁ」

「はやてさん達のお家で見た海とはまた違うでしょうし、楽しみですねぇ」



ミキとスゥがそう言うと・・・・・・あれ、キャロちゃんがきょろきょろし出した。



「キャロ、どうしたの?」

「エリオ君、今声が聞こえなかった?」



・・・・・・キャロちゃんが不思議そうにそう言って、あたし達もスバルさんも少し胸が震えた。

感動とかそういうのじゃなくて、驚きで。えっと、もしかして・・・・・・・あぁ、そうだよね。



「声? 声ならそこら中に」

「ううん、違うよ。これからの『ドライブ楽しみだなー』って、女の子の声。それもすぐ近くだよ」

「僕には聞こえなかったけど・・・・・・みなさんはどうですか?」



とりあえずガーディアンメンバーとリースとディードさんとヴィヴィオちゃんはそろって首を横に振る。

というか、スバルさんもだね。アルトさんは私達に遅れる形で首を横に振る。



「キャロ、勘違いじゃないかな」

「おかしいなぁ。確かに聞こえたんだけど」



キャロちゃんが納得いかないという顔で首を傾げる。えっと、今の・・・・・・・間違いないよね。



「ミキとスゥ達の声が聞こえたのだろうな。僕達の姿までは見えてないようだが」

「ではルシエ殿の中にもこころのたまごがあるのか」

「間違いなくな。もしかしたら僕達のようなしゅごキャラが生まれる可能性もあるぞ」



キセキとムサシが声を潜めつつそう言った。声を潜めるのは、そうしないと普通にアウトだから。

とりあえずあたしはラン達を見て視線で『気を付けるように』とだけは合図しておく。ラン達は頷いて答えてくれた。



「じゃあじゃあ、早速出発だよっ! おー!!」

『おー!!』










というわけで、私達はそれぞれに車に乗り込んで早速ドライブとおいしいご飯の旅に出発した。





なお・・・・・・イチャイチャモードな二人を現実に引き戻すのに、ここからまた少しかかったりもした。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うぅ、私も行きたかったのにー。久々にスバル達にも会いたかったのにー。なぎひこ君やみんなとも遊びたかったのにー」

「済まないな、高町。だが仕事も大事だから頑張ってくれ。というより・・・・・・なぁ、一つ聞いていいか?」

「なんですか?」

「なぎひこって誰だよ」



オフィスで今日のお仕事の準備をしてると、班の先輩がそんな風に聞いてきた。

とりあえずどうしてなぎひこ君の事が気になったのか分からないけど、それでも答える事にした。



「えっと、私の幼馴染の新しいお友達で・・・・・・うーん、なんて言えばいいんだろうなぁ」



リズムともちゃんと『初めまして』って挨拶したいし、もっともっとしゅごキャラの事やあの子の事も知りたいんだよね。

力になっていくって自分にも約束してるし、それは絶対破りたくない。だから私は・・・・・・笑顔で答えた。



「これからすっごく仲良くなって、大好きになっていく予定の男の子・・・・・・ですかね」



な、なんか言っててちょっと照れくさいな。というかなぎひこ君の予定もあるんだし、これはダメかも。

年齢だって・・・・・・うーん、気にする必要ないか。だってお友達になるのに年齢は関係ないし。



「そ、そっか」

「はい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そう言えば恭文」

「ん、何?」



ワゴンの運転をフェイトに任せ(みんなと合流するまでは僕だった)、僕は助手席でそのナビ。

すると、いつの間にか横に着ていたミキが僕に話しかけてきた。



「さっきスバルさんやアルトさんが『行けたらいいねー』って言ってたマリンガーデンって何かな」

「・・・・・・あぁ、最近ミッドの湾岸部に出来た大型娯楽施設だよ」



ラトゥーアに対抗するために、某企業が建てた海沿いのレジャーランド。

とりあえず僕は別画面を立ち上げて、ネットを繋いで・・・・・・・お、出てきた出てきた。



「うわぁ、結構大きいんだね。というか・・・・・・海が綺麗」



画面の中に出たのは、昼と夜の二つのマリンガーデンの風景。

夜の風景だとそのすぐ側に、青くライトアップされた何かがある。



「海というよりは、海底遺跡が綺麗なんだよ」

「海底遺跡?」

「うん。マリンガーデン建設中に発見された海底遺跡でね。
調査して、局とかの許可をもらった上で施設の一部にしてあるんだ」





調査や許可が必要だったのには理由がある。それは海底遺跡とかでは古代遺物・・・・・・・ロストロギアなんてある可能性もあるから。

でも、結果的にだけどマリンガーデンの運営会社のものにはかなりすんなりした形でなった。

色々調査した結果、学術的には大した価値もないし、あくまでも海底にそういう建造物が眠っていたと結論付けられた。



そこに人の手をしっかり加えた上で、防災設備なんかもしっかり設置して運営してるってわけ。





「恭文、随分詳しいよね」

「スバルがね、1年以上前に私とヤスフミ・・・・・・あとティアにメールで送ってくれたんだ。ほら、スバルはレスキュー隊員だから」



運転しながら、フェイトが視線を前から外さずにそう言ってきた。ミキがそちらを振り返る。



「マリンガーデンのオープン前に防災設備の点検に仕事で向かってね、その時に色々見せてもらったらしいんだ。
その後もそこの辺りで何回か行って・・・・・・そう言えば、スバルが今暮らしてるマンションから花火とかも見えるんだ」

「え、花火もあるんですかっ!?」

「あるんだよ。私達で遊びに行って、そこから淡く光る海底遺跡や花火が綺麗に見えて・・・・・・素敵だったなぁ」



ちなみにそれがあったのは去年の・・・・・・あぁ、丁度1年くらい経つから普通にまた見れるじゃないのさ。



「あぁ、いいなぁ。というか、ロマンチックだろうなぁ。恭文、フェイトさん、それって」

「うん、丁度時期的には今頃だから見れると思うよ。・・・・・・みんなの宿題がちゃんと終わったら、スバルに頼んでみるのもいいかもね」

「夕涼みとしてはなかなか楽しめたしね。あ、でも海底遺跡は中から見るのも楽しいらしいんだよ?
学術的には大した価値は無いそうだけど、それでも一種の不思議空間になってるから」

「あぁ、楽しみだなぁ。これはやっぱりあむちゃん達には宿題を相当頑張ってもらわないと」










言いながら少し呆れ気味に、ミキは後ろでこっちに乗り込んでるキャロやエリオと話しているあむを見る。

・・・・・・あむも夏休み終了直前に宿題に追われるタイプらしいから、そこの辺りを危惧してるんでしょ。

でもマリンガーデンは行ってみたいな。なんだかんだで僕とフェイトも行った事がないんだよね。ついついラトゥーア行くし。





それでその・・・・・・ラトゥーアでお泊りして、仲良くしたり・・・・・・ね?





だから信号待ちでフェイトと顔を見合わせて、軽く頬を染めながらも笑ったりするのである。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・高町に男が出来たっ!? おい、それどういう事だっ!!」

「班長落ち着いてください。いや、なんつうか・・・・・・そうとしか思えないような発言をしたんですよ」



それでうちの若いのから詳しく聞いた。聞いて俺は・・・・・・愕然とした。一概には信じられない。

今は新装備の実験のためにオフィスに居ないが、あの仕事魔な高町に男? ありえないぞ。



「それがどうも藤咲なぎひこって言うらしいんですけど、最近自宅に泊まりっぱなしとか」

「はぁっ!? 待て待てっ! 確かアイツ子持ち」

「つまりはヴィヴィオちゃんもそれを認めるような仲なんですよ。しかし・・・・・・うらやましい。
あの高町を毎夜毎夜いじめにいじめ抜いて・・・・・・くぅ、なんて鬼畜だ。俺が変わりたい」

「お前、やたらと高町の仕事を手伝うと思ってたらそういう理由か。そしてそういう発想をするお前が鬼畜だからな?」



しかしあの高町に男・・・・・・あぁ、確かにここ数日は本当に楽しそうだった。

先日の休み前はもうこの世の終わりかって言うくらいに落ち込んでたのに、明けたらお肌艶々コースだよ。



「まぁそこは気にしないでください。ですが班長」

「・・・・・・あぁ。俺達はJS事件以来のとんでもない事態に遭遇しているのかも知れない。
あの高町に男・・・・・・それも数日泊まりっぱなし・・・・・・下手をすれば、歴史が変わるぞっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・なんて事になっているとは露知らず、僕達のドライブは楽しく進行。

その間に進行しつつ親交なんて深めて、海沿いのとあるビルにやってきた。

ここにはスバルとアルトさんがお薦めの中華レストランがあるのよ。





なので全員で一部屋取って、団体でお食事コースなんだけど・・・・・・軽く周りが引いてる。





なお、その引いている原因が一体何で誰がどうなっているのかとかは、もう予想するまでもない。










「・・・・・・スバルさん、こっちの八宝菜がいけますよ」

「え、そうなの? どれどれ・・・・・・あ、ホントだ。美味しいー。
あっさりしてるんだけど、それぞれの素材の味がちゃんと引き立ってるよね」

「はい」



そう、スバルとエリオだ。コイツらまたバカみたいに食いやがって・・・・・・遠慮全くしてないし。

おかげでガーディアンメンバーも昔馴染み連中もほぼ全員ドン引きだよ。



「・・・・・・あの、蒼凪さん。ナカジマさんとモンディアルさんのあれは」

「スバルさんが大食いなのは知ってたけど、こっちの子まで同じレベルって無いわよ。
別にスターライト使ったわけじゃないわよね? なのにこの食べっぷりは何よ」

「僕も同感。というかお腹・・・・・・壊さないかな」

「海里さん、りまさん、なぎひこさん・・・・・・気持ちは分かりますが、真実を受け入れましょう。
ちなみに、スバルさんのお姉さんも今の二人と全く同じ勢いですから」

「「「嘘っ!!」」」



三人がディードの言葉に否定の叫びを上げるのは無理もない。というか、二人ともパワーアップしてる感じがする。

あんまりに食べ過ぎなんだよ。見てるだけでお腹いっぱいレベルなんだよ。



「・・・・・・私、ちょっとトイレ行ってくるわ」

「あ、僕も」

「というかごめん・・・・・・あたしも」



そう言いながら、りまとなぎひこだけじゃなくてあむまで立ち上がってそそくさと部屋を出る。



「えっと・・・・・・ヤスフミ、リイン、私は色々止めるべきなのかな。ほら、りまやなぎひこ君達も唖然としてたし」

「止めても無駄だからいいよ」

「ですです。ここはスルースキルを鍛える場と考えるが正解ですよ」

「リイン姉様、強いですね。私はさすがにそこまで言えません」



なお、二人に付き合う形でガシガシ食べてるのも居る。それは空海とやや。



「うぅ、ややあんまり中華って趣味じゃなかったんだけど、ここのはおいしいねー」

「というか、ミッドで中華料理が食べられるのがびっくりでちよ」

「やや、恭文が頼んでる特製エビチリは相当美味いらしいから・・・・・・腹のスペースは空けとけよ」

「む、空海君もややちゃんも頑張ってるなー。よーし、私達も負けないように頑張ろうっ!!」

「はいっ!!」



頑張るなよっ! そしてエリオも同意するなっ!!

あぁもう、元々コイツらバカだと思ってたけどマジでパワーアップしてるしっ!!



「・・・・・・アルトさん、スバルと一緒に居て苦痛に思った事ってあります? 例えば今とか。
僕とフェイトはエリオと居て苦痛に思った事はないですけど、疑問を持った事はあります。例えば今とか」

「実は私もなぎさんには同意だったりするんですよね。
しかもエリオ君の食べっぷり、身体が大きくなる毎に増えていってますし」

「私は苦痛はないけど・・・・・・この食べっぷりをダブルで見るのは、色々台無しに感じるかなぁ。
・・・・・・やばいな昔の私。この光景を普通に捉えていたのって、もしかして色々間違い?」

「あ、あはは・・・・・・なんというか凄いですよね。あ、そう言えばナカジマさん」



唯世がスバルに対して声をかける。中華風ビーフンを大量にすすっていたスバルが、箸を一旦止めて唯世を見る。



「ん、なに?」

「ランスターさんがこちらに来るそうですけど、いつ頃に」

「あ、そう言えばヴィヴィオも気になるー。なんだかんだでしばらく会ってないし」



スバル、なんかティアナにもメール送ってたらしいのよ。で、合流とか言ってたけどまだ来ない。



「あー、さっきこっちに入る前にメールが来たんだ。ティア、渋滞に巻き込まれちゃって遅れるんだって。
そう言えば・・・・・・そろそろじゃないかな。あ、ちょっと取っておいてあげないと、ティアが食べる分なくなっちゃうね」

「そうですね。ティアさん、お腹空かせてるかも知れませんから」




あははは、コイツら何言ってんだろ。ほら、見てみてよ。僕もフェイトもヴィヴィオも唯世達も呆れて何も言えないよ?



「・・・・・・これだけ食べておいてどうしてそういう事が言えるっ!? おのれら自分を省みるって言葉の意味が分かってないでしょっ!!」

「まぁまぁ、ヤスフミ落ち着いて? これはその・・・・・・仕方ないんだよ」

≪フェイトさん、あなたも何気にひどい事言いますよね≫

「アルトアイゼン、それは仕方ないんだよ。フェイトママは天然だから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あー、失敗したっ! 普通にもうちょっと早く出れば良かったわっ!!

色々おみやげとか用意するのに時間かかって・・・・・・でもそれで渋滞に巻き込まれたら意味ないしっ!!

とにかく車を安全運転で飛ばしつつも、なんとか合流地点近辺に到着。いや、結構かかったわ。





でも、エリオやキャロとは久しぶりだなぁ。アルトさんも108に異動になったのは知ってたけど、会ってないし。

なお、スバルはどうでもいい。だって超・電王編で会って大暴れしたばっかりだしさ。

あとはあむ達か。そういや・・・・・・私、藤咲なぎひこってのとはあんま関わってないのよね。少し交流深めないと。





あぁ、それとヴィヴィオとも会うの久しぶりだなぁ。ちょっと楽し・・・・・・あれ?

運転しつつも、なんとか近辺まで来た。来たけど・・・・・・あれ、なんか交通規制かかってる?

とりあえず私はナビを見る。えっと、緊急速報が画面の中に・・・・・・え、火災発生?





緊急処置のために湾岸ライン方面の道路・・・・・・つまり、私が今走っている車線は規制がかかった。










「というか・・・・・・なによ、あれ」



遠目に見える目的地のビル。その隣にある更に高いお洒落なビルがある。ミッドでも結構有名なホテルよ。

そこの上が赤く染め上げられて、薄暗くなり始めた空を染め上げる。あ、窓から炎が噴き出した。



「・・・・・・って、あれ火災じゃないのよっ! クロスミラージュっ!!」

≪彼やスバルさんに連絡ですか?≫

「えぇっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



適度にスバルとエリオのバカにツッコんでいると、隣のビルの上層階が火災に見舞われたというアナウンスが流れた。





ただ、こちらへの延焼の危険性はないとの事で安心した時・・・・・・スバルが首を傾げた。










「上層階で火災? でもおかしいな。確かあそこの防災設備は5つ星のはずなのに」

「ナカジマさん、そうなんですか?」

「うん。あのね、会員制の宿泊階になっていて、そのせいで設備に相当力を入れてるんだ。
あ、仕事でそこの設備点検もしたことがあって・・・・・・ちょっと気になるな。マッハキャリバー」

≪了解です≫



それでスバルの前に画面が出てきた。そこに映るのは、防災士長であるが故にアクセス出来る今の火災状況のデータだね。



「えっと、近隣の防災隊や陸士隊がもう出動してるみたいだね。・・・・・・え、嘘」



それを見て・・・・・・スバルの顔色が一気に変わった。そして信じられないと言いたげな顔で声をあげる。



「火災レベル・・・・・・4っ!?」



それを聞いて僕とフェイトとリイン、ディードとリースにエリキャロとアルトさんは軽く立ち上がる。



≪マジですか?≫

≪アルトアイゼン、マジです。そのために災害担当の方々も対処が遅れてるとか。
というより、近隣の担当部隊は総出の大騒ぎになっています。・・・・・・相棒≫

「うん、まずいよ。それがあのビルのいくつものフロアに渡って・・・・・・大変だよ」



今は陽は暮れかけているけどまだ昼間。当然だけどホテルには宿泊客以外の人も居ると思われる。

もしも延焼などを食い止められなければ、下手をするとホテル全体が火の海になる可能性もある。



「あの、蒼凪さん。俺達にはそのレベルがどれほどのものか分からないのですが」

「うんうん。その4って、どれくらいの火災なの? やや達にもちゃんと」

「・・・・・・簡単に言えば大火災だよ。対処が遅れたら、ホテル全体が焼け落ちる」

「ホテル全体って・・・・・・えぇっ! あ、あのおっきいビルがっ!?」



なので僕達は顔を見合わせあって、頷き合う。さすがにこの状況でのんきにお食事は無理だ。

・・・・・・くそ、特製エビチリまだ来てなかったのに。絶対フェイトとまた来てやる。



「唯世、空海、海里、やや、悪い。お食事はキャンセルだわ」

「リイン達、ちょっと暴れてくるですよ」



僕は少し申し訳なくてみんなの方を見るけど・・・・・・みんなは力強く頷いてくれた。



「・・・・・・分かった。蒼凪君、リインさん、こっちの方は心配ないから頑張ってきて」

「そんな状況でのんきに飯もないだろ。俺らは俺らで上手くやっとくから、しっかりやってこい」

「でもでも、怪我とかダメだよ? やや達そんなの絶対嫌だもん」

「そこは蒼凪さんとリインさんだけではなく、ハラオウンさん達もです。・・・・・・どうかご無事で」

「ジョーカーUとV、心得たよ。王様や仲間の頼みならきっちり聞かなくちゃ。・・・・・・さて、全員ミッション開始だよ」



それは災害救助の専門家であるスバルの指示を聞きながら、消火と救助活動の手伝いをすること。



「スバル、私もヤスフミもみんなもスバルの指示で動くよ。
こういう状況に一番慣れてるのはスバルだし・・・・・・だから現場リーダー、頼める?」



僕やフェイトもそういうのは経験あるけど、それでも一番場数が多いのはスバルだもの。

そこの辺りは自然保護隊のエリオとキャロも同様。この場のリーダーはスバルが妥当でしょ。



「了解です。・・・・・・みんなも分かるだろうけど、火災レベル4の現場はかなり危険なの。
でも基本と応用を忘れずにしっかり対処すれば、絶対になんとかなる。みんな、いいね?」

『了解っ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フェイトさん、お会計は私で済ませておきますから、魔導師チームはすぐに出てください。
あー、それとすみませんけど誰かここに置いておいてもらえますか? ガーディアンのみんなの事もありますし」

「えっと・・・・・・もしかして108から非番出動がかかるのかな?」

「えぇ。近隣の部隊や災害担当の手だけで足りないみたいですし、もしかしたら」

「分かった。じゃあリースとディードに残ってもらうよ。二人なら何かあってもすぐにカバー出来るし」



あー、とりあえず少し私から渡しておいた方がいいかな。

さすがにこの人数での料金だし、アルトのポケットマネーじゃ足りないかも。



「えぇ、お願いします。・・・・・・でも」

「何かな」

「なぎ君とあの子達、相当仲が良いんですか? なんかこう、すごい信頼関係が見えるんですけど」

「気づいた? ・・・・・・うん、相当仲良しなんだ。本当に色んな事があってね、その中で大事な繋がりを作ってきたから」

「なるほど。それなら納得です」



なんて言いつつも、私は出発前に財布ごと預けておく。アルトなら変なこともないだろうから安心出来る。

私もそんなには入ってないけど、それでも足しになるだろうから。



「・・・・・・恭文、ティアもすぐ近くに来てるから現場で合流するみたい。なら私達はこのまま」

「あー、悪いスバル。僕はちょっと別行動取るわ」

「え、どうしてっ!?」



その言葉に、全員が驚いた顔をする。でもヤスフミはそう言いながらもお店の入り口の方を見る。



「あむ達、まだ戻ってきてない」

『・・・・・あ』



確かおトイレだったよね? でも・・・・・・そうだよ、戻ってきてない。



「延焼の危険が無いとしても、隣で火事が起きてるわけだし何があるか分かんない。
とりあえず僕はあむ達見つけて、それからそっちに向かうよ。・・・・・・ごめん」

「ううん、大丈夫。でも恭文、気をつけてね。なんかこう、嫌な予感がするんだ」

「さすがは豆芝、実は僕もだよ。だからそっちもマジで気をつけなよ?」

「了解」










そうして私達はそれぞれに別行動で現状に対処する事になった。

でも、嫌な予感がするのはスバルだけじゃない。私も同じだよ。

バルディッシュに調べてもらったけど、ホテルの防災設備は本当にちゃんとしてた。





そんな所で火災レベル4越えの大火災が起きた。そこがどうにもクサい。





・・・・・・執務官としての経験から言わせてもらうと、人為的なアレコレの可能性があると思う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、あたしとりまとなぎひこはおトイレで軽くリフレッシュして戻る途中・・・・・・だった。





でもあの、普通に迷ったんですけどっ! てゆうか、ここどこっ!? お店何階だったっけっ!!










「・・・・・・全く、ミッドの建物ってみんなこうなの? 普通に広いし分かりにくいわよ」

「りまちゃん、多分このビルだとミッド語の案内ばかりだから分かりにくいだけだよ。ほら、僕達そこの辺り読めないから」



地球の英語には似てるんだけど、当然ながらあたしはそこの辺りがさっぱり。留学経験のあるなぎひこも苦労してる。

りまは・・・・・・まぁ、聞かないであげて? てゆうかあたし達小学生だし。異世界語なんて読めないし。



「うーん、困りましたねぇ。どうしましょうかぁ」

「やっぱりこういう時はなんとなくレーダーじゃないかな。ほら、私達も使えるんだし」

「いや、それでもこれは・・・・・・ねぇ? ボクはなんとかなる気がしないんだけど」

「・・・・・・アンタ達、普通に余裕あるよね。なんでそんな軽いわけ?」

「・・・・・・・・・・・・みんなっ!!」



なんて話しながらも通路頭を軽く抱えていると、後ろから声がかかった。それは・・・・・・恭文。

少し慌てた感じでこっちへ来てくれる。というか、もしかして探しに来てくれた?



「あーもう、探したよっ!? てゆうか、普通になんで5階も下の階に居るのさっ!!」

「・・・・・・仕方ないじゃないのよ。どこも埋まっててどんどん下に行くしかなかったんだから」



なお男女両方ともそれで、結局あたし達は一緒に行動して・・・・・・あははは、なんかおかしいなぁ。



「うんうんっ! クスクス達だって苦労してたんだよー!?」

「あぁ、それでか。納得したわ。とにかくみんな無事で良かったわ。
みんな、すぐにお店に戻るよ。で、アルトさんの指示に従っておとなしくしてて」

「おとなしくって・・・・・・恭文君、何があったの? というか慌ててるみたいだけど」

「そうだぜ。ナギナギ、どうしたってんだ」

「隣のビルで火災が起きてんのよ」



火災・・・・・・あ、そう言えばなんかそれっぽいアナウンスが流れてたっけ。

でもすごいよね。普通に日本語とミッド語や他の言葉で何回もやってたから。



≪今のところ延焼の危険はないけど、それでもちょっと危ない感じなの。
主様とジガン達もすぐに出なきゃいけないし、悪いけどお急ぎモードなの≫

「日奈森さん、みなさんもすみませんがそういうわけなのですぐに移動を。
ジガンの言うようにあまりゆっくりしている時間もありませんので」

「出るって・・・・・・恭文、アンタ出てどうす」





言いかけたあたしの言葉はある音で遮られた。それは・・・・・・爆発音。それもそうとうデカい。

当然だけどあたし達はそっちを見る。そして恭文が駆け出した。釣られるようにあたし達も追いかける。

爆発が起きたのは、この階の中枢フロア。イベント展示場みたいな結構な広さのエリア。



その中央で・・・・・・大きい、とても大きな炎が上がっていた。それが周辺を焼いている。

あたし達はそのフロアの一歩手前の通路の中で足を止めた。

恭文はあたしよりもう少し中に入ってて、でも驚いてるのはあたし達と同じ。



だからあたし達は全員で声を揃えて、その驚きを叫びにしていた。





『なんじゃこりゃっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『なんじゃこりゃっ!?』





・・・・・・トンネルを潜れば雪国だったと言うのは、有名な小説のフレーズの一つ。

で、今の僕達は通路を抜けたら、それなりの広さがあるフロアが全力全開で火災現場でした。

なので僕達みんな驚きまくっています。というか、唖然としてる。



おいおい、火災が起きたのはスバル達が向かったビルだけじゃないんかいっ!!





「な、何よこれっ!!」

「りまちゃん、あむちゃんも近づいちゃだめっ!!」

「・・・・・・熱っ!!」

「あむちゃんっ!!」



あ、そっか。あむは今のところ魔法が使えないから、こういう状況は辛いんだ。

それになぎひことりまもだよ。くそ、マジで嫌な予感的中かい。



「なぎひこ、あむとりまと一緒にすぐに下が」



言いかけて気づく。・・・・・・下がらせる余裕、無いかなと。僕達の真正面、炎の中から出てくる影がある。



「た、頼むっ! 助けてくれっ!!」



年頃は40代。暖色系のスーツの上下に、オールバックの黒色の髪。

でも、スーツや髪が焼け焦げて・・・・・・そのまま、また炎の中に戻った。



「い、いや・・・・・・やめてくれっ! うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





その声がしてからすぐ、また炎の中から出てくる影がある。それは顔面にバイザーを装着した女。

右手には刀。金色にも見えるタイツスーツを身に着けている。

炎に照らされているショートカットの髪は緑にもオレンジにも見えて、この中じゃ色が判別出来ない。



そして特筆すべきは・・・・・・その刀に、血が付いているという事。





『・・・・・・見られてしまいましたか。ですがちょうどいい、あなたも私達の糧になりなさい』

「ア、アンタ・・・・・・何よ。あの人に、一体何したのよっ!!」

『あの人? ・・・・・・あぁ、必要な情報を持ってないと判断したため、殺しました』



その言葉に、混乱気味に叫んだあむが息を飲む。

あまりにあっさりとそう言われて・・・・・・あむがその場に崩れ落ちた。



「あむちゃんっ!? ・・・・・・あぁ、腰抜かしてるっ!!」

「あむ、しっかりしなさいっ! 腰抜かしてる場合じゃないわよっ!!」



見なくても分かる。音がしたもの。それでなぎひことりまが必死に声をかけてる。



”ジガン、アルト、フェイト達に状況報告。それでアルトさんとみんなをすぐにここから脱出させるようにディード達に伝えて”

”もうやっていますよ。しかし・・・・・・こうなってくると向こうの火災も”

”もしかしたらコイツの仕業かも知れないの”



何のために火災を? もしかして今殺した奴を確実に捉えるための囮?

でも、それにしちゃあやり口が雑過ぎる。わざわざ爆発とか起こす必要ないでしょ。



『大丈夫です。あなた達も彼と同じようになります』



僕がアレコレと思案している間に、女はそんな勝手な事を言う。・・・・・・色んな意味で大丈夫じゃないんですけど。



『・・・・・・あぁ、その前に』

「なにさ」

『戯れ程度に聞いておきましょう。あなた方・・・・・・イクスとトレディアの居場所に関しては知っていますか?』



イクス・・・・・・トレディア? そう言えばさっき、『必要な情報』どうこうって・・・・・・あ、そっか。

コイツ、多分その『イクス』と『トレディア』の居場所を探している。だからこれなんだ。



「知らないね。てーか、知っててもお前には教えない」



言いながら、僕は前に踏み出して女との距離を早足気味に縮めていく。

とりあえず、あむ達が狙われないように僕が前に出ないと。



「・・・・・・ヤンデレにも程があるでしょうが。好きな男追いかけるなら、もうちょい常識的に追いかけていけっつーの」

『何を言っているのか理解に苦しみますね。まぁ・・・・・・いいでしょう。
さぁ、あなた達もイクスの墓標にその身を捧げ』



僕はその間にも変わらずに歩いている。だから僕と女との距離は100メートルを切っていた。

そいつは僕達を見据えながら、踏み込むために軽く身をかがめる。



『我々と等しくなりなさい』



僕は・・・・・・一気に意識のスイッチを切り替えた。



「悪いがそりゃ無理だな」



声と同時に、魔力弾が飛ぶ。それは女の足元に着弾。女はそれで動きを止めた。

というかこの魔力弾・・・・・・待て待て、まさかっ!!



「・・・・・・しかし同時かよ。こりゃ色々的中か?」

≪だろうな。だがまさか調査に来た途端にこれとは・・・・・・タイミングが良いのか悪いのか≫



聞こえてきた声は後ろから。後ろで動けずに居たあむ達を守るように飛び込む影がある。

それは一気に僕の後ろに来て、あむ達の前に立ちながら両手に持ったライフルを構えた。



「・・・・・・ジンっ!!」

≪というか、バルゴラまで・・・・・・って、当然ですね≫



そいつは僕の友達のジン・フレイホーク。嘱託魔導師で、ヒロさんサリさんと同期の人の弟子。

で、僕とも色々な事情から友達付き合いをやっているけど・・・・・・なんでここにっ!!



「よう、ヤスフミ。久しぶりだな。
てか・・・・・・お前、またまた巻き込まれてんじゃねぇよっ!!」

「いきなりそれっ!? てーか僕にそこ言われても困るんですけどっ! 普通に知らない間にコレだしっ!!」



とりあえず話しながらも後ろを見る。ジンは僕を見ながら頷いてくれていた。

りまとなぎひこも同じ。僕達の会話から大体察したのか、僕を見ながら頷いた。



≪本当ですよ。・・・・・・あぁ、久しいな。我が下僕よ≫

≪だから私が何時古鉄殿の下僕になったっ! 色々おかしいだろっ!!≫

≪本当なの。下僕、久方振りにジガンの肩を揉むの≫

≪そしてお前は誰だっ! 私のデータベースにお前のような奴は居ないんだがっ!!≫



あむは・・・・・・うん、ジンがガードしてくれてる。これなら大丈夫だ。



「大体ジン、なんでそっちこそここに居るのっ!?」

「それはこっちのセリフだっ! お前こそなんでここにっ!?
あぁもう、爆発が起きたって思った時から嫌な予感がしてたんだよっ!!」

「まるで僕が爆発起こしたみたいに言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『・・・・・・隙だらけです』



女が一気に飛び込んでくる。そして僕を斬り裂くように、右薙に刃を叩き込んだ。



『・・・・・・・・・・・・な』



でも、それは空を斬るだけだった。僕はもう上に跳んでいた。

7時の方向に跳びつつも距離を取り、次のアクションにすぐに移行。



「隙だらけなのは」

「てめぇの方だぜっ!!」



僕は左手で砲弾を形成。ジガンのドラム型のマガジンから、カートリッジを3発ロード。

そのまま左手を向ける。もちろん、狙うのは色々と甘ちゃんな女。



≪バカでしょ≫

≪ヤスフミの力を甘く見過ぎだ≫

≪そんな攻撃じゃ、ジガンの出番なんて未来永劫来ないのー≫



ジンも同じく。バルゴラのカートリッジを3発ロードして、その銃口を女に向ける。

そして銃口の先に、太陽のような色合いの魔力スフィアが形成される。



「ストレイターレットッ!!」

「アイシクルキャノンッ!!」



そして僕達は互いの砲撃を攻撃直後で隙だらけな女の方へと叩き込んだ。

僕は砲弾タイプで。そしてジンは一般的な砲撃タイプで。



「「ファイアッ!!」」



二つの砲撃は、10メートルも離れていないような距離で放たれた。

そのために、刃を振りきった直後の女は回避も防御も出来ない。



『・・・・・・これまで、ですか』





女が小さく呟いた。なので僕はキャノンを撃ってから魔法の詠唱を始めた。

そして二つの砲撃が女に着弾。でも、その途端に爆発が起きた。

炎が舞い上がり、天井や床、周囲の物を焼いていく。僕は爆発が起きた瞬間に魔法を発動。



それはブレイクハウト。それによりジン達の方には爆炎が迫らないように壁を作りそれを遮る。

爆発ごと包み込むのも考えたけど、それで瓦礫がこちらに吹き飛んでも厄介。なのでこういう形にした。

僕は爆発の勢いに吹き飛ばされるように思いっきり後退したおかげで、なんとか無事。



そのまま滑るように床に着地。そして、燃え上がっている炎を見つめる。





「な、なによこれ・・・・・・! 恭文っ!! 恭文無事なのっ!?」

「恭文ー! アルトアイゼンもジガンもシオンも返事してー!!」



りまとクスクスが必死に・・・・・・あ、そっか。壁のせいで僕の事見えないのか。



「恭文君っ! 聴こえるっ!?」

「ナギナギっ! オレやナギーの声聴こえるかっ!!」



あ、なぎひことリズムまで・・・・・・うわ、相当心配してるな。



「・・・・・・恭文?」



げ、なんか1番まずい声が聴こえた。とりあえずすぐに返事を。



「恭文・・・・・・恭文どこっ!? マジでどこっ!! なんでもいいからすぐに返事しろっ!!
あたしやなぎひことりまの声、聴こえてんでしょっ!? 聴こえてないわけないよねっ!!」

「恭文、どこっ!? 嫌だ・・・・・・私こんなの嫌だよっ!!」

「恭文さんどこですかぁっ!? ジガンもアルトアイゼンもお返事してくださいですぅっ!!」

「恭文、ボク達の声聴こえないのっ!? ・・・・・・お願いだから返事してよっ!!」



や、やばい。返事する前に相当盛り上がってる。タイミングを色々逃した。



「こらっ! 危ないから近づくなっ!!」

「離してっ! だって・・・・・だって恭文のバカがっ!!」



あ、あむのバカ・・・・・・僕の事探すために近づこうとしてたな。それをジンが止めたんだ。



≪娘、いいから落ち着けっ! ヤスフミも古鉄殿もあの無礼なデバイスも無事だっ!!≫

「そうだよっ! あむ・・・・・・なぎひこもりまも、僕達は全員大丈夫だからっ!!」



なお、ずっと傍らに居たシオンも同じく。女が出てきてから、安全な異次元空間に入り込んでる。

・・・・・・え、ちょっと待ってっ!? なんでそんなの普通に入ってるのさっ! なんかおかしくないかなっ!!



「恭文っ!? アンタ、マジで大丈夫なんだよねっ! また無理とかしてるんじゃないよねっ!!」

「してないよっ! ピンピンしてるっ!!」

≪ジガンが居る限り、この程度じゃどうにもなるわけないのー≫

≪あなたはカートリッジガシャガシャやっただけで、基本働いてませんけどね≫

≪うぅ、お姉様ひどいのー! というか、働いてないのはお姉様もなのっ!!≫



炎が遮ってて・・・・・・ここから直で移動は無理だな。壁の解除もアウトっぽいし。

消火・・・・・・いや、最悪延焼阻止か。というより、その前にあむ達を避難させないと



「悪いけどそいつの指示に従ってすぐに避難してっ! 僕はやることがあるっ!!」

「ちょっと待ってっ! コイツマジで誰っ!? それにやることってなにっ!!」

「僕の友達っ! で、ヒロさんサリさんとも昔馴染みな魔導師っ!!」



その場合はブレイクハウト・・・・・・いや、氷結系魔法で壁を作っておくか? それならまだなんとか。



「僕は魔法で延焼阻止の作業をしてからすぐにそっちと合流するっ! だからお願いっ!!」

「・・・・・・分かったっ! とにかく恭文君、気をつけてねっ!!」

「てゆうか、それならすぐに返事しなさいよっ! あむだけじゃなくて私だって・・・・・・このバカっ!!」

「ごめんっ! そこも後で聞くからっ!!」



とりあえず、無事なのはホント。怪我に関しても問題ない。そして目の前には・・・・・・炎。

というかこの燃え方は普通におかしいぞ。何かこう、燃焼系の燃料とか火薬でも使って・・・・・・アレ?



”・・・・・・ジン、バルゴラ、悪いんだけど”

”大丈夫だ。この子達は全員引っ張ってる。で、お前どうするつもりだ?”

”ならそのまま5階上の中華レストランにお願い。そこにディードとアルトさんともう一人居るから、合流して避難を”



とにかくここは安心だ。ジンならめったな事じゃどうにかなるわけないし、護衛役としては充分過ぎるくらい。



”いや、それはいいのだが・・・・・・・ヤスフミ、マスターの言うようにどうするつもりだ。
普通にやってもこの火の勢い、お前だけで消すのは難しいだろ”

”問題ない。消火用の魔法、スバルと一緒にいくつか作ってるのがあるしさ。鎮火は可能だよ”

”あぁ、そういう事か”





これはいつもの調子でブレイクハウトで壁を作ると、消火活動の妨げになるのでちょっとアウト。

なので消すしかない。それで実は・・・・・・・スバルに相談されてそれに乗る形で、消火用の魔法がいくつか手札にあるのよ。

一般的に使われてる魔法じゃなくて、災害救助のエキスパートであるスバルの経験を元に組んだオリジナル。



というか、スバルの魔力適正に合わせた形での魔法だね。作ったのは六課解散してから今までの間に。

なのはとフェイトを超える魔力運用のエキスパートと見込まれて、相談を受けて手伝ったの。

僕用に調整して、実際に訓練や現場で使用してスバルのお墨付きももらってる消火魔法だ。効果はある。





”それでジン、一応確認。殺傷設定には”

”いや。ヤスフミ、お前は・・・・・・まぁ、そこはしてないよな”

”まぁね。じゃあじゃあ、ちょっと待ってよ”



僕達は互いに非殺傷設定の攻撃を撃っていた。ある意味では現代に生きる魔導師故の行動だよ。

それなのにこんな爆発はありえない。だからこそ、僕は念話でこう言うのである。



”だったらこれはなにっ!? アイシクルキャノンもそうだけど、ストレイターレットだってこんな事になる魔法じゃないしっ!!”

”簡単だ。アイツは自爆しやがったんだ。多分捕縛されるのを嫌ったんだろうな”

”マスター、どうやらウエバー執務官の読みは当たったようだな。
マリアージュは・・・・・・特攻を目的とした自爆兵器だ。それも恐らくは量産型”

”はぁっ!? ちょ、ちょっと待てっ! マリアージュってまさか”

”あぁ。お前とこの子達が見たのが連続殺人犯・・・・・・マリアージュだ”










マリアージュ、本局が追っていた連続殺人犯。そして僕が何気に気にしていたKY。





ちょっと待ってっ! それが特攻を目的とした自爆兵器って・・・・・・それってなんかおかしくないっ!?




















(第62話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、事件という現実に直面した僕達。このあとどうなるかは次回以降です。
電王TRILOGY公開記念スペシャルの第2弾のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

ジン「ついに関わってしまったジン・フレイホークです。・・・・・・でよ、ヤスフミ。なんでお前あそこに居るんだよ」

恭文「もう一度最初から読み返して。そうしたら幸せになれるから。
てゆうかさジン、普通に僕もなんであの場にジンが居たのかがビックリだよ」

ジン「そこは前話冒頭を読み返してくれ。でも何気にタイミング悪いよな。食事中にあれだしよ」





(普通に運が悪いのはいつもの事だけど、今回は結構重い)





恭文「あむ達共々だしなぁ。で、そんな事件の裏側で更にとんでもない事が起きてるんだよ」

ジン「あぁ、藤咲なぎひこだな。てーかなのはさんはまた」

恭文「無自覚だからね。てゆうか、普通になぎひこは小学生だもの。
なのはは大人だから、普通に意識せずにそういう事は言うでしょ」

ジン「なのはさんだしなぁ。でも、周りはそう捉えないんだよなぁ」





(周りの認識:藤咲なぎひこという男が高町なのはと半同棲状態になって、ラブラブしてる)





ジン「アイツ、不憫だよな。特に悪いことしてないのに。てゆうか、ユーノ先生がそうとうなんだよ」

恭文「やっぱり?」

ジン「やっぱりだ。てゆうかヴィヴィオから好感度高めなメールが来たらしくて、そのせいで相当なんだよ」

恭文「・・・・・・ヴィヴィオ、どんどん強くなっていくなぁ。てゆうか、むしろ黒くなってきてるんじゃ」





(『むー、ヴィヴィオは黒くないよー。ただママに頑張って欲しくてプレッシャーかけてるだけだもん』





)ジン「お前の影響だな」

恭文「失礼な。むしろキャロの影響だね」

ジン「あぁ、それはありえそうな感じがするな。てか、なんでだろうな」





(『・・・・・・なぎさん、ジンさん、頭冷やす?』)





ジン「つーわけで、そんな黒くなったヴィヴィオのあれこれは置いておくとして・・・・・・次回も大荒れだよな」

恭文「大荒れだろうね。だって僕達、関わっちゃったし。とにもかくにも、本日はここまでです。
いよいよ本番突入なミッドチルダ・X編、ご期待いただければと思います。では、本日のお相手は蒼凪恭文と」

ジン「ジン・フレイホークでした。みんな、藤咲なぎひこに応援のメッセージをよろしくー」

恭文「これから大変だろうしね。なぎひこ、生き残っていけるかなぁ」

ジン「頑張れなぎひこ、お前ならきっと鬼いちゃんを倒せるさ」










(どうやら色々と危険な目にあって、対抗馬が出来て逆に安心しているらしい栄光の流星であった。
本日のED:田村直美『光と影を抱きしめたまま』)










スバル”エリオ、キャロ、フェイトさんとリインさんもそっちはどうですか?”

フェイト”・・・・・・かなりまずいよ、これ”

リイン”ですです。でも、避難誘導がほとんど済んでいるのは救いですよね”

エリオ”でもあっちこっちから火の手が上がってて・・・・・・これ、やっぱり自然火災じゃないです”

キャロ”それで廊下が竈の中みたいで・・・・・・爆破や崩落による二次災害の危険性、かなり高いです”

スバル”やっぱりかぁ。とにかく、辛かったら無理せずにジャケットの再構築を。
あとはキャロの言うような事が起こるかも知れないので、周辺の注意だけはしっかり”

フェイト・エリオ・キャロ・リイン”了解”

スバル「でもこれ・・・・・・あぁ、やっぱりフェイトさんやエリオの読み通りに自然発火じゃないよね。つまり放火の類だよ。
この僅かに感じる匂いは、燃料系か気化爆弾の類かな? もしかして犯人は、魔力か物理、もしくはその両方の複合型の炎熱能力の持ち主?」

ティアナ”スバル、聞こえるっ!?”

ジン”スバル、聞こえるかっ!!”

スバル”ティアっ! それに・・・・・・ジンっ!?”

バルゴラ”なんだ、ティアナまで来てるのか。なんというか、偶然は重なるな”

ティアナ”アンタ、なんでここにっ!?”

ジン”細かい事情説明は後だっ! いいか、簡潔に言うぞっ!! この火災を起こしているのはマリアージュだっ!!”

スバル”マリア・・・・・・噂の連続殺人犯っ!?”

ジン”そうだ。お前んとこの部隊と108に協力してもらって、俺が今一緒に居る執務官と執務官補が一緒に調査してるあれだ”

ティアナ”なるほど、だからこれか。ならスバル”

スバル”うん。もしかしたらマリアージュに狙われた人がこの中に残ってるかも。・・・・・・絶対、見つけ出すよ”










(おしまい)






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