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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第54話 『Evolution during/進化し、加速し続けるこころの輝き』



ラン・ミキ・スゥ・『しゅごしゅごー♪』

ラン「今日もドキっとスタートドキたまタイムー! さぁ、今回のお話はー!?」

スゥ「ついに上陸したミッドチルダから、お話はスタートなのです」

ミキ「ミッドでも、夏休みは始まったばっかり。だけどだけど、せっかくだから・・・・・・って、また事件っ!?」





(現れるのは、某聖王陛下。そして・・・・・・?)





ラン「でもでも、ミッドに居たって事件はズバっと解決っ! あむちゃんと恭文におまかせあれっ!!」

スゥ「今度こそ・・・・・・今度こそ、スゥとのキャラなりをー!!」

ミキ「スゥ、そこまでエンジンかかってたのっ!? ・・・・・・とにかく、今日も行っちゃうよー。せーの」

ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして現在、僕達はザンクト・ヒルデ学院に着きました。

なお、ガーディアンメンバーはリインを除いてフル出動です。

フェイトとリイン、リースとディードはなのはと一緒に自宅。・・・・・・しかし驚いた。





普通にヴィヴィオが学校で飼育しているうさぎの餌やりに学校に行くのに、その餌を忘れるとは。










「でも、高町さんも大変だね。休日なのに自宅で上司の方とお話なんて」



唯世が歩きながらも心配そうな顔をしている。・・・・・・まぁ、大丈夫だって。

普通にあれでもベテランなんだし、軽く切り抜けるから。



「そう、ボク達がここに来たのはそれが理由。なのはさん、すぐに動けない状態だから」

「それで早速ですけど、ミッドの学校を見学に来たのですぅ」

「というかというか、すっごい楽しみー! ヴィヴィオちゃんにも会えるしー!!」



・・・・・・そこのキャンディーズは誰と話しているのだろう。僕、普通に気になるんだけど。



「あれでも教導官としては立場もあるしね。あと、ヴィヴィオのことがあるから」



ザンクト・ヒルデ魔法学院は坂の上にあり、聖王教会が母体となっている学校だ。

ミッション系で魔法学科と普通学科があって、ヴィヴィオは魔法学科の生徒。



「恭文、それどういうことだよ」

「ヴィヴィオがなのはさんの仕事になんか関係あるのかよ」



現在僕達はその坂を上り、校内に入った所。そして、ヴィヴィオが居ると思われる飼育小屋を探す。

どうやら空海とダイチは、僕の発言に色々と気になるところがあるようである。



「えっとね、多分今日のお話ってなのはに上司が説得をかまそうってことだと思うのよ」

「説得? また穏やかじゃないな」

≪あの人、普通に昇進の話を辞退したり、長期の教導出張を断ってますから≫





その原因はヴィヴィオ。出世どうこうはなのはが生涯現場に居たいからだから、違うの。

なのははヴィヴィオを養子にする前は平然と受けていた、泊り込みの教導の仕事を断ってる。

それで何度かそういうのを『勿体無い』と思っている別の隊の上司から、説得されてるのだ。



もちろんなのはは首を横に振る。ヴィヴィオが養子になって、色々価値観が変わったらしい。





「教導隊の出張教導ってね、2週間とか1ヶ月とか平気でそこの部隊とかに泊まり込む場合もあるのよ。場合によっては別世界」

「え、魔導師の先生ってそんなこともするのっ!?
あたし、部隊に通って授業みたいな事するだけだと思ってたのにっ!!」

「するの」



で、なのははこの仕事を現在はすべて断っている。教導をやるなら、全部ミッドの部隊。

だから今のなのはの仕事は、新技術や新戦術の開発作業が主だったりする。



「で、そうすると家にはヴィヴィオが一人っきりって状況になるしさ。
なのは、そこの辺りを気にして断ってるのよ。一応親しいハウスキーパーさんもいるけど、それでも」





六課で寮母をやってたアイナさんだね。アイナさんはあれから本職であるハウスキーパー業に復帰してる。

あくまでも緊急時のピンチヒッターとして依頼をするという形だけど、ヴィヴィオも懐いてるしなのはや僕の元々の知り合い。

そこの辺りでも安心出来るので、アイナさんの手が開いているようならお願いして・・・・・・という感じ。



さすがにヴィヴィオに僕みたいなソロプレイはさせたくないしなぁ。そんな事してたら、あっという間にスレちゃうって。





「でも、恭文やフェイトさんにリインも一緒に暮らして・・・・・・あ、そっか。
執務官の仕事で、あっちこっちの世界に行っちゃうのよね。現に今がそうだもの」

「まぁ、僕達もそんな長期出張なんて滅多にないよ?」



例えばヴェートルでのアレコレとか、最近出てるマリアージュとか、そういうのじゃない限りは基本平和だよ。

航海任務も、基本は巡回パトロールみたいな感じでそこまで長期じゃないしなぁ。



「ただそれでも、ヴィヴィオが一人になる時間は多い」

「それでなのはさんはヴィヴィオちゃんの生活に合わせて・・・・・・かぁ。なんか、難しいんだね」

「そうだよやや、色々と難しいの。子育てって、やっぱり色んな意味で大きいものだから」





ただ、フェイトやはやてだったりの昔馴染み的には安心してる。

だって、普通に自分の身を省みるようになったから。

その上で色々と新しい可能性を探してるようにも見える。



というか、探していってるみたいだね。なのは自身はそういう意識。



だからしゅごキャラ見えなくてショック受けたのかなとか、ちょっと思った。





「そう言えば恭文、アンタやフェイトさんはどうするの? ほら、遅かれ早かれ同じ状況になるしさ」

「えっとね、実は前々からフェイトと二人でシミュレーションってのを立ててたのよ。
子どもが出来て、そうしたらどうするかーって話。で、一応方針は決めてる」

「へぇ、どんな感じ?」

「基本はなのはと同じだよ。子どもが大きくなるまでは長期出張は断る。
で、多分ミッドの知り合いの部隊とかの仕事をやるかなーと」



108とか、普通に執務官欲しいって言い続けてるしね。そういうのもいいかなと話す事がある。



「ただそれも、子どもが物心付いてからだよ。多分2〜3年は子育てモードだね。
一応お金も貯めてるし、局は男女揃っての育児手当も出るから生活は大丈夫」

「恭文も?」

「うん、僕も出る。嘱託だけど、そこはちゃんとしてるの。
管理局は体制はともかく、福利厚生は本当にしっかりしてるから」



何気にエイミィさんもこんな感じだし・・・・・・あー、なんかドキドキするな。

やっぱり、もっとフェイトと話したいな。二人で親になっていきたいし。



「ね、恭文。指輪って何時買うのよ」

「あ、りまたんだけじゃなくてややも気になるー。だってだって、もう婚約でしょ?」

「・・・・・・僕、もうすぐ誕生日だからさ、その日に買うことにした」



8月1日。その日に普通に指輪も買って・・・・・・かな。



「そう。じゃあもうすぐね」

「でも、なぁ」

「何か問題があるの?」

「いやさ、フェイトが・・・・・・ちょっと」



フェイトと僕が結婚するということは、性名の問題が出てくるのだ。

一応確認。現在のフェイトの名前は『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』である。



「フェイトにとって、テスタロッサもハラオウンの性名もどっちも大事なのよ」



だから『フェイト・ハラオウン』にはならずに、ハラオウン性を付け足す形にしたくらいだから。



「それで僕と結婚したら蒼凪の性もそのまま付け足そうとか考えてて」

「えっと、それってつまり・・・・・・え?」



ややが頭を捻る。というか、隣のぺぺも撚る。



「・・・・・・それは色々おかしくないでちか?」

「蒼凪さん。つまりハラオウンさんは『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン・蒼凪』になるつもり・・・・・・なのでしょうか」

「そう、だね」



あむ達は全員揃って感嘆の息を吐いた。というか、普通に呆れてる感じがする。



「なぁ恭文、それはどこのじゅげむじゅげむナンタラカンタラだ? 長いって」

「俺、ぜってー噛むと思うんだよ。自己紹介の時に噛むと思うんだよ」



奇遇だね、空海にダイチ。僕も全く同じことを言ったよ。そして『ダメ?』って半泣きされたよ。

で、試しにさせたらいつぞやみたいに可愛く噛んだよ。噛んでさらに涙目になったから、フォローが大変だった。



「さすがに僕もそれは・・・・・・というか、文字にする時はTとかHとか略語になるからいいとしても」

「口で言ったら、絶対噛むよね。・・・・・・フェイト・テスタロッサ・ハラオン・・・・・・ほら、ややも噛んだー」

「うー、いっそ夫婦別姓にするってのも考えたのよ。やっぱ、長いでしょ?
でも、フェイトが頑として譲らないの。絶対これだって言ってて」

「ならフェイト・蒼凪・ハラオウンとか、フェイト・テスタロッサ・蒼凪・・・・・・これならまだいけるかな」



でも、そうするとまた討論が加熱しそうだなぁ。フェイト、今の調子を見るに納得しないし。



「四つ・・・・・・あぁ、もうそれでいいかも」

「え、いいのっ!?」

「だって、フェイトは強情だし」



面倒になるのは自己紹介の時とか相手方くらいで、僕は大丈夫と言えば大丈夫だしさ。

うん、それでもういいかも。ここもまた協議が必要だけど、僕は認める方向で行こうっと。



「いや、待てよ。僕が『蒼凪・ハラオウン・恭文』とかになるって方法もあるな」

「それはいいかも知れませんね。そうすればハラオウンさんも納得するかも知れません」

≪でも主様、フェイトさんは主様の性を名乗りたいのかもなの。そうしたらそれはダメなの≫



ジガンのツッコミによって、僕の希望は簡単に砕かれた。それはもう見事に。



「・・・・・・そ、そっか。ならいっそ夫婦別姓・・・・・・あぁだめだー! これも納得しそうにないー!!」

「フェイトさん、強情だしね。恭文、ボクはもう認めるしかないと思うな」

「やっぱり?」

「やっぱりだよ」



・・・・・・とにかく方針を決めつつも校舎の隅にある飼育小屋に来た。うん、デカイけどさ。

普通にうさぎだけじゃなくて他のものも飼ってるから、デカイのよ。近所の捨てフェレットとかも居るし。



「ヴィヴィオー!!」

「・・・・・・あ、恭文ー!!」





後ろから声をかけるとヴィヴィオが振り向く。そして僕を見て破顔する。

うさぎを見て困った顔をしていたヴィヴィオが、僕に飛びつく。

なので、僕は遠慮なくそれを右足で止める。というか、喧嘩キック。



ヴィヴィオは普通に右に身を捻ってそれを避けた。僕はそこから続けて回し蹴り。

それをジャンプで回避。そこに向かって、右足を引いて再度蹴る。

ヴィヴィオは左腕でガード。そのまま僕の足を取って、上に飛ぶ。



いや、足の上に乗った。乗って、僕の顔面目がけて飛び蹴り。なので、僕はしゃがむ。





「・・・・・・縞々のクマ」

「いやっ!!」





ヴィヴィオが足を塞ぐ。で、その間に僕は『荷物』を下ろして右腕を上に伸ばす。

ヴィヴィオの左足を掴み、そのままぶん投げる。ヴィヴィオの身体は宙を舞った。

ヴィヴィオは身を回転させて地面に着地。僕へと踏み込もうとする。でも、遅い。



その間に僕は後ろに回り込んでる。で、右の手刀を首筋に当てる。





「・・・・・・スパッツにしておくべきだね。そうすれば『パンツじゃないから恥ずかしくないもん』状態になる」

「うぅ、油断してたー。というか、恭文セクハラだよ。フェイトママともうすぐ結婚なのに」

「なに言ってるの。てーか学習しなさい。
前に先生が遊びに来た時にもこれやられて、半べそかいてたくせに」



そのまま手を引いて、後ろからヴィヴィオの後頭部に軽くチョップ。

ヴィヴィオはバツが悪そうな顔で、その箇所を左手で撫でる。



「うー、ヴィヴィオの師匠その2は相変わらず厳しいなぁ」

「当然だよ。だいたい荷物を両手で持ってるのに、抱きついてくる方が悪い」



で、僕は見る。両手で抱えないと持てないサイズのうさぎの餌を。お徳用で10キロ近くある。

・・・・・・ヴィヴィオ、これを一人で持ってくつもりだったんかい。てーか、これ忘れるってどんだけウキウキしてた?



「・・・・・・でも、いい反応と攻撃だった。うん、ちゃんと修練してたんだね」

「うん。なのはママと一緒に、無理しないでゆっくり頑張ってたよ。
ストライクアーツもスバルさんやギンガさんから色々教わってるし。というか、久しぶりー」



ヴィヴィオが抱きついてくる。なので、今度は抱きしめる。・・・・・・あぁ、この感触も久しぶりだなぁ。



「あ、ガーディアンのみなさんもお久しぶりです」

「あ、うん。お久しぶり」

「というかというか、初めましての人も居ますよね」



そう、居るのだ。海里とかりまとかなぎひことか。・・・・・・『なぎひこ』としては、初めてだしね。



「初めまして、高町ヴィヴィオです。えっと、三条海里さんと真城りまさんと・・・・・・あれ、なでしこさん?」

「あ、この子はなぎひこ。なでしこの双子のお兄さんなんだ」



なぎひこがまたタジタジモードだったので、僕が即座に説明を入れた。

それにヴィヴィオは頭の上からはてなマークを浮かべているけど、気にしない。



「初めまして。三条海里です」

「藤咲なぎひこです」

「真城りまよ。でも・・・・・・あなた、どうして私達のことを?」

「あ、恭文やフェイトママからのメールで。それでそれで、そっちの翠色の子が・・・・・・そっくりだね」



ヴィヴィオがシオンを見ながら、そう口にする。うん、そうだよね。分かってた。



「そのようですね。でも、私とお兄様の女装姿とは別ですから」

「あ、それもそうだね。シオンごめんね」

「いえ、問題ありませんよ」



だって、ヴィヴィオはシオンの事知ってるもの。もっと言うと、僕の女装姿見てるもの。



「ヴィヴィオちゃん、そこはツッコまないであげて?
あたし達も聞いてるから分かるけど、恭文がヘコむの」

「あー、大丈夫だよ。ほら、シオンって強くてカッコいいからこうなりたいって考えて」

「ヴィヴィオ、頼むからやめてやろうぜっ!? それ、コイツの傷口に塩と唐辛子を塗りこんでるだけだってっ!!」



みんなの生暖かい優しさにちょっと涙しつつも、僕は話を進めようと思う。

うん、頑張るよ? だって僕、主役だし。



「ガーディアンのみなさんっ! ようこそ、ミッドチルダへー!!」

「あはは、ありがと。・・・・・・でさ、恭文。あたしは非常に気になることがあるんだ」



で、みんながあっという間に鬼の顔になる。



「今のなにっ!? てゆうか、ヴィヴィオちゃんにいったい何してるのよっ!!」

「そうだよっ! 蒼凪君、そこの辺りをちゃんと説明してっ!!」

「え、えっと・・・・・・どうしようか」

「なぎひこ、ためらう必要はないわ。とりあえず、恭文を問い詰めればいいと思うわよ?」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第54話 『Evolution during/進化し、加速し続けるこころの輝き』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ストライクアーツ?」





で、うさぎに餌をやりつつあたし達は話を聞く事にした。

なんでも、恭文は普通にヴィヴィオちゃんの戦闘術の先生らしい。

さっきのも基本的には恒例。ああいうのをよくやるって、二人で笑ってた。



・・・・・・いやいや、いきなり過ぎだから。あたし達、マジでビックリしたし。





「はい。ヴィヴィオ、去年からそれ始めてて。
恭文や知り合いのお姉さん達にも、色々教わってるんです」

「ヴィヴィオさん、ストライクアーツというのはいったいどういうものでしょうか」

「拙者も気になる。少なくとも、地球の文化では無いと見たが」



そうだね、あたしはそういうの聞いたことないし。

唯世くん達も同じだから、いいんちょとムサシと同じく疑問顔。



「日奈森さん達にも分かるように簡単に言いましょう。まず、亀の甲羅を背負って牛乳配達をします。
そして街中に放り投げた『亀』と書かれた石を見つけて来るまで帰って来るなと言われ」

『はぁっ!?』

「違うわボケっ! もうシオンはちょっと黙っててっ!? ・・・・・・ストライクアーツは、そんな亀仙流じゃない。
ミッドで近年流行っている万人向けの格闘術なの。あ、ただ試合するだけじゃなくて、いわゆるエクササイズ的な事も出来るんだけど」



いわゆるボクササイズとか、そういう感じでしている人も居るらしい。

それだけじゃなくて普通にどっかの武術みたいな段も作られていて、強い人も多いとか。



「手軽さも有りつつ上級者が突き詰められる奥深さもある。
それも手伝ってストライクアーツは、今競技人口が増えつつある競技なんだよ」

≪この学院にも専用の部活があるくらいですしね。一種の護身術も兼ねて、習わせてる親も多いそうです≫

「・・・・・・ということは、地球で言うところの護身道みたいな感じかな?
僕のおばあ様が元気な頃にやってたんだけど、同じ感じだったから」



あ、護身道っていうのは右手で短めの棒を持って、投げ技とか棒での打撃技とかで競う武術なの。

えっと、20年以上前から女子を中心に発達してる競技・・・・・・だっけ。テレビでこの間特集してた。



「そうだね。ストライクアーツは魔法資質あるなしに関わらず出来るから、そういうのも大きいの」

「あぁそういう事か。基本的に格闘術だから、あんまその辺りは関係ないんだな」

≪そうです。この調子で行けば、長く根付くのではないでしょうか≫



ストライクアーツは大会とかも結構頻繁に行われてるらしい。マジで大人気とか。

・・・・・・でも、ミッド特有の文化ってやつに触れられて嬉しいかも。うん、面白い。



「それで蒼凪君はヴィヴィオちゃんの先生もしてるんだね」

「だから唯世への教え方も板についていたのか」

「まぁね。でも、僕は大したことは教えてないよ? 僕、教導官でもなんでもないしさ。
剣術関係の相手をしたり、近接戦闘のコツを教えたり。全部実戦形式で叩き込んでるだけ」

「それは唯世や僕に対してと同じだな」



・・・・・・というか、恭文と唯世くんは訓練ちゃんとしてたんだ。

そう言えば朝に一緒に来る事とかも普通に増えたし、早朝にやってるのかな。



「え、唯世さんも恭文と訓練してるんですか?」

「そうなの。やや達も最近まで知らなかったんだけどさ。うぅ、二人ともやや達に内緒事なんてズルイよー」

「な、内緒ってわけじゃないんだ。それに始めたのは本当に最近だし」



だよねぇ。多分、まだ2週間経ってないんじゃないかと思うし。



「それですっごく厳しいんですよね」

「そうだね、蒼凪君は基本的に厳しく教える方だと思う」

「別に怒鳴ったりとかは無いんだけど、変な隙を見せると、容赦なく気絶させられたりとか」

「そうだ・・・・・・えっ!? ちょっと待ってっ! 僕はそこは無いんだけどっ!!」



あ、あははは・・・・・・普通に7歳の女の子にやることじゃないって。恭文、どんだけ容赦ないの?



「恭文、唯世はまぁ・・・・・・どうせ自分から言い出したんだろ?
でも、ヴィヴィオに対してそれはいいのかよ。まだ小さいのに」

「いいのよ。てーか、それくらいしないと技や戦闘センスは磨かれないって。
基本的にはトライアンドエラーなんだから。空海、サッカーとかバスケだってそうでしょ?」

「あー、そう言われると納得だな。実戦形式で教えるなら、そうなっちまうか」

「基礎を終えた段階であるなら、それくらいしなければ実戦で身につくものは出来ないでしょう。納得出来ます」



空海もいいんちょもそこ納得なのっ!? あたしもややもりまも、ちょっとビックリなんだけどっ!!

というか、なぎひこまでなんか『うんうん』って頷いてるー! あれかな、日舞の家元だからかなっ!!



≪この人も、基本的にグランド・マスターからそういう教えられ方をしたんですよ。実戦形式で痛い目を見ながらです≫

「・・・・・・思い出すなぁ。瞬(またたき)食らったり、瞬・極(またたき・きわみ)食らったり。
それをようやく止めたかと思ったら、断(たち)で吹き飛ばされたり」



恭文が、なんだか遠い目で語り出した。そして、空を見上げながら泣いている。



「九頭龍閃はさすがに死ぬかなぁって思ったなぁ。だってマジで同時で襲ってくるし」

「・・・・・・そういやお前使えたよな。そうだよな、それなら先生が使えても不思議ないよな」

「でも、天翔龍閃に比べたらまだ大丈夫だったかな。うん、あれも痛かった」

「そして最終奥義発動っ!? なんかお前の先生マジすごいなっ! よし、今度俺に紹介してくれっ!!」



・・・・・・恭文の先生がすごく強い人だって言うのは、あたし達も聞いてるのよ。でも、そこまで?

あと空海もなんで分かるのかな。あたし、ちょっと置いてけぼりだし。



「・・・・・・僕、蒼凪君に相当加減された上で教えてもらってたんだね」

「そ、そうだな。僕も今話を聞いて、非常にビックリしているぞ」

「当然でしょ。唯世はまず戦闘用の思考と身体が出来上がってないでしょうが」



『それで無茶なんて、させられないよ』と恭文は続ける。いつもとは違う、大人としての顔で。



「そして、僕は九頭龍閃はともかく天翔龍閃は撃てない。
・・・・・・打てたら実験台としてちょうどいいのに

「何をさりげなく怖いことを口走ってるっ! その残念そうな顔は僕達揃って怖くなるからやめろっ!!」

「とにかくよ」



なんでもそれで済ませようとするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーか、唯世くんを実験台にしたらタダじゃおかないしっ!!



「今やってるのは全部基礎の基礎から。だけど、唯世だけの話じゃない。
ヴィヴィオはこれでも小学校入学時から頑張ってるのよ? ね、ヴィヴィオ」

「はい。ヴィヴィオも、最初は簡単なところからですよ?
それでなのはママと相談の上で、頑張ってました」



なんでもなのはさんがヴィヴィオちゃんの訓練の総監督を務めているとか。

・・・・・・そりゃ、豪華だよねぇ。だってプロの教導官がだもの。一種の英才教育だって。



「あ、でもそのおかげで、ブレイドフォームで瞬(またたき)が出来るようになったんだよー?」

「そうなの? てーか、何時の間に」

「ふふー、恭文がガーディアンとして頑張ってる間、ヴィヴィオも頑張ってたの。
なのはママのお墨付き。恭文やヘイハチさんの域じゃないけど、それでも及第点だって」

「それはすごいですね。蒼凪さんの瞬(またたき)が、その年で出来るとは」



そうだねぇ。また瞬・極(またたき・きわみ)とかは無理だろうけど、それでも・・・・・・え、ブレイドフォーム?



「ヴィヴィオ、ブレイドフォームって何かしら。まぁ私はもうネーミングから察しは付くんだけど」

「りまちゃん、奇遇だね。僕も。というか、そのままだよね」



なぎひこ、多分アンタだけじゃない。私達全員、同じだから。



「あ、ヴィヴィオのバリアジャケットなんです。えっと、『SEI-Oベルト』ってデバイスがあって」

『SEI-Oベルト?』





それで、ヴィヴィオちゃんが実際に手元に出してくれた。それは・・・・・・え?

色はNew電王と同じシャンパンゴールド。だけど、バックルのクリスタル部分が星型になってる。

その星型の中に、時計をモチーフとしたデンオウベルトと同じ装飾がある。



バックルの左横には、青・金・紫・オレンジのボタン。それを見て、あたし達は唖然とした。



これ・・・・・・やっぱり電王のベルトじゃんっ! な、なにこれっ!?





「・・・・・・ヒロさんとサリさんが乗り気で作ったのよ。なお、四つのフォームに変化出来るの。
青が剣術使用のブレイドフォーム。金色が槍術を使う高機動戦闘用のランサーフォーム」

「紫がストライクアーツを使って戦う、地上戦闘特化型のナックルフォーム。
それで最後のオレンジが、二丁の銃を使って戦うガンナーフォームなんです」

「そ、それはあの・・・・・・ヴィヴィオちゃん、もしかしなくても電王・・・・・・かなぁ」

「はい♪」



きゃー、なんか言い切ったっ! すっごい笑顔で言い切ったよー!!

あぁ、うさぎがなんか首かしげてるっ! そうだよね、普通にかしげるよねっ!!



「・・・・・・恭文君、君が電王好きなのは知ってるけど、さすがにこれは」

「ヴィヴィオちゃんまで影響されるのは、色々おかしいんじゃないかな?
ほら、ヴィヴィオちゃんにだって『なりたい自分』があるわけだし」

「ややも唯世やなぎーに賛成ー! こういうのは、ダメだってー!!」

「何を勘違いしたっ!? 違うからっ!!
僕は普通にヴィヴィオがこれをもらって来た直後に知ったんだからっ!!」



でも・・・・・・ちょっと待てよ。恭文はモノホンの電王と友達なんだよね?

それでフェイトさんやディードさんにスバルさんも知ってたし、もしかしてヴィヴィオちゃんも友達とか。



「あの、恭文のせいとかじゃないですよ? 確かに初めは恭文が貸してくれたディスクのせいですけど」

『やっぱり』

「その冷たい視線はやめてくれないっ!?」

「だけど、ヴィヴィオは自分の意思で電王みたいに・・・・・・ううん、良太郎さんや侑斗さんみたいになりたいんです」



強く憧れている様子で話すヴィヴィオちゃん瞳を見て、あたしとりまと空海は顔を見合わせる。

あぁやっぱりだ。この子、本物の良太郎さんや侑斗さん、モモタロス達に会ってる。



「強くて、優しくて、真っ直ぐに大切な何かを守るために飛び込んで戦う。
そんな良太郎さん達みたいな、かっこいい大人になりたいなぁって」





だからヴィヴィオちゃんは身近な存在として、電王について話す。でも、それはちょっと納得かも。

良太郎さんも侑斗さんも、あと幸太郎とかも言い訳せずに真っ直ぐに飛び込んだから。

それにあたしの事を何度も『あんみつ』って間違えたあのバカモモや、他のイマジン達も。



あれがみんななりの現実との関わり方・・・・・・なのかな。恭文やフェイトさん達とは違うけど、それでも。





「だからヴィヴィオちゃんはそのベルトを使ってるのかな。
そんなヒーローみたいになるのが、ヴィヴィオちゃんの『なりたい自分』だから」



なぎひこが納得しながらも聞くと、ヴィヴィオちゃんは笑顔で頷いた。



「はい。形だけ似せてる感じですけど、それでも。
電王とゼロノスは、ヴィヴィオにとって二番目に大好きなヒーローですから」

「二番目? 一番じゃないの?」



ややが聞くとヴィヴィオちゃんはあたし達の視線を受け止めながら、胸を張って言い切った。



「一番はなのはママです。それで、三番目は恭文」

『・・・・・・納得しました』



でも、三番目が恭文なんだ。そこは、ちょっと意外かも。



「・・・・・・ヴィヴィオちゃん、恭文の『なりたい自分』に薄々気づいていたのかも知れないね。だから三番目なのかも」



ミキが納得したように仲良く話し出した二人を見ながら、呟いた。



「なるほどぉ。守りたいものを全部守れる『魔法』が使える魔法使いは、ある意味ではヒーローですからぁ」

「恭文もヒーローとか好きなのは、もしかしたらヴィヴィオちゃんと同じ理由かも知れないねー」

「それで恭文はヴィヴィオちゃんにとっては、先輩だね。あと良太郎さん達も」

「うん、そうだね。・・・・・・なんだろ。すごく大きくて、素敵な夢だよね」



ヴィヴィオちゃんにはちゃんとある。『なりたい自分』が。自分なりの、現実との関わり方が。

あたしは・・・・・・ちょっと負けてるな。ダメだなぁ、ヴィヴィオちゃんのお姉さんなのに。



「・・・・・・皆の者っ!!」

「あぁ、分かっている。この気配は」



キセキがいきなり声をあげる。それにしゅごキャラのみんなが反応した。というか、どうした?

いや、このパターンは非常に覚えがある。だから、みんなに緊張が走る。



「×たまのものだ。いや、×キャラに孵化したか?」

「・・・・・・みんなっ!!」










あたし達は、全員で頷いて、そのまま走り出した。





ただし、ヴィヴィオちゃんに道案内をさせて。だって、学校内はよく分からないんだものー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヴィヴィオ、なぜにこの状況? てゆうか、なんであの人が居るの」



なんか、普通にトレーニングウェアを来た子ども達が倒れてるんですけど。それも大量に。



『ムリィィィィィィィィッ!!』



そして、普通に×キャラ二体が出す衝撃波に吹き飛ばされたりしてるシスターが一人。

そう、いわゆるひとつのシスター・シャッハである。なお、セットアップ中。



「く・・・・・・なんですかこれはっ! あなた達、いったいどうしたと言うのですかっ!!」



どうやらシャッハさんには×キャラが見えてないらしい。うん、だろうね。

だってシャッハさん、大人だもんね。戸惑い気味に構えるけど、全然対処出来ない。



『ムリムリィィィィィィィィッ!!』

『ストライクゥゥゥゥゥゥゥゥアァァァァァァァァツッ!!』



×キャラは笑いながら、左右から衝撃波を飛ばす。



「そう言えば、シスター・シャッハが中等部の子達を対象に、組み手の相手をするとかなんとか」



シャッハさんはそれに挟まれて、両腕で持ったヴィンデルシャフトでガードすることしか出来ない。



「それでこれか。・・・・・・あ、なんかまた吹き飛ばされた」

「そうだね」

「ヴィヴィオちゃんも恭文君もずいぶん冷静だねっ!? あの、それはいいのかなっ!!」

「いいのよ。あの程度であの人がどうこうなんてなるわけがないし。見えてたら、絶対瞬殺だもの」



とは言え、このまま放置ってのもアウトだよね。シャッハさんはともかく、子ども達がまずい。



「というか恭文、アレって噂に聞く×キャラって言うのだよね。
恭文がこの間のお買い物の時、アギトさんと対処してたの」

「そうだよ。・・・・・・つーわけで、ミキ」



ミキは言いたいことをすぐに察してくれた。だから僕を見て強く頷いてくれた。あむとランも同じく。



「お兄様、私は・・・・・・ポイ捨てですか?」



後ろから聞こえた声に、僕はズッコケる。起きながら声の方を見ると、恨めしげに僕を見ていたシオンが居る。



「そんな嫌な言い方やめてくれるっ!? てーか、セイントブレイカーは使ったら僕が動けなくなるでしょっ!!」



精神的に潰れてしまう。女装で戦うのは、やっぱり辛いんだ。

慣れるべきかどうかとか、色々考えてしまってダメなんだ。だからごめん、許して。



「大丈夫です。キャラチェンジで家まで引っ張っていきますし」

「それはもっと嫌だっ!!」



それになにより、シャッハさんの前なんだよっ!? 昔馴染みにそこを見られるのは嫌なんだー!!



「とにかく、シオンとはガチな緊急時以外はキャラなりしないからっ!!」

「・・・・・・お兄様が冷たいです。しくしくしくしくしくしく」

「わざとらしく口で『しくしく』言いながら泣くなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



よし、後でなぎひこに相談しよう。もしかしたら僕がダメなのかも知れないし、譲歩出来るとこは譲歩しよう。



「唯世、僕とあむがやる。みんなは他に×キャラがないか、警戒しておいてくれる?
あと、シオンが勝手に飛び出して僕とキャラなりしないように厳重に見張っててっ!!」

「分かった。・・・・・・あの、最後も一応ね。うん、分かってるから」

「じゃあヴィヴィオ、ここで唯世達の言う事を聞いて、ちゃんと待ってるのよ?
あと、ここ以外で何か出るようなら、唯世達をサポートしてあげて。そして、シオンを見張ってて」

「分かった。恭文も、気をつけてね。あと、そこまで念押ししなくていいって。ほら、シオン傷つくよ?」

「未だに『しくしく』言ってる奴に、傷つく権利などない」



そのまま、僕は右手を上げながらもあむと走り出す。走り出して、瞬間的にセットアップ。



「変身っ!!」

≪Riese Form≫



青い光に包まれて、僕は先行して踏み込む。そして、シャッハさんの前に出てきた。

そのままアルトを抜き放ち、放たれた黒い衝撃波を斬り裂く。



「・・・・・・恭文さんっ!?」



マントを靡かせながら、僕は×キャラ達の前に立ちふさがる。



「ども、シャッハさんお久しぶりです。相変わらず武闘派シスターしてますねー」



×キャラは、僕を忌々しそうに見る。だけど、その視線を受け止めつつ鼻で笑ってやる。



「で、早速ですけど下がっててください。アレの相手は僕と」



そのまま紺色のミニスカートを靡かせながらあむが走ってきた。で、僕の隣に来る。



「この子がやります」

「アレって・・・・・・あなた、普通に何も見えないんですよっ!? いったいどうするつもりですかっ!!」

「大丈夫、僕達は見えてますから。僕達、この異常事態の専門家なんです」

「はぁっ!?」



・・・・・・隣のミキを見る。ミキは変わらずに僕を見ててくれる。というか、背中を押してくれる。



「恭文、強く信じて? 自分の『なりたい自分』を。未来への可能性を。
恭文の夢は、信じ続ける限り絶対に消えない」

「うん」

「ずっと同じ形ではないかも知れないけど、それは夢が消えるからじゃない。夢の形は、常に進化していくんだ。
前に話したよね? ジャックフォームはただのパワーアップ形態じゃない。恭文の中にあるその可能性を、形にしたもの」

「・・・・・・うん」



僕は自分の両手を胸元に持っていく。それはあむも同じ。



「だから、鍵を開けて。その手で自分の可能性を掴んで。そして、証明して。
自分の可能性は常に進化して、加速し続けるって。そのための力は、もう恭文の中にある」

「・・・・・・大丈夫。僕はもう、未来を掴んでる。それはこれからも変わらない」



×キャラに視線を向けたまま僕は・・・・・・宣言する。僕はやっぱり僕だと。

何時だって飛び込んで、戦って、ありったけで今を・・・・・・覆す。



「これからも掴み続ける。全速力でダッシュしながらね」

「だったら思いっ切りやっちゃってっ! 男の子ならひたすらに有言実行っ!!
・・・・・・ボクも一緒に、ダッシュし続けるからっ!!」

「あいよっ!!」



んじゃま、心機一転で行きますかっ! 2年目だし、やっぱダッシュで行くべきでしょっ!!



「あたしのこころ・・・・・・!!」

「僕のこころ・・・・・・!!」



そして両手の指を動かし、僕とあむは鍵を開けた。



『アンロックッ!!』



『解錠』アンロック



『・・・・・・・・・・・・え?』





僕の身体が青い光に包まれる。あむは、当然のようにピンク色。

ミキがたまごに包まれて、僕の胸元にまるで溶け込むように吸い込まれる。

ランも同じようにあむの胸元に吸い込まれた。そして、次の変化が始まる。



光が螺旋を描き僕達の身体を包む。その回転速度は一気に上がり、弾けた。

弾けた光は蒼とピンクの粒子となり、僕達の周りに舞い散る。

・・・・・・青いジャケットに、各所にスペードの意匠。腰にはアルト、両手にはジガン。



首元から左右に流れるのは、白いマフラー。両手のジガンと両足の具足は、綺麗な流線型を描く。

あむも同じく。ピンク色のサンバイザーに、大きな赤いハートのブローチ。

ピンク色のスカートに、ノースリーブのシャツ。首元には、ちょうちょ結びの長いリボン。



胸元のハンプティ・ロックはピンク色に輝き、光を放つ。そして、声をあげる。





【【「「キャラなりっ!!」」】】



拳を強く握る。そして×キャラを指差す。指差しながら、願う。

今を覆し、未来へと繋ぐ。そんな魔法使いになりたいと、強く・・・・・・強く。



【「アミュレットハートッ!!」】

【「アルカイックブレードッ!!」】



そのまま、僕達は地面に降り立つ。それで自分達の姿を、両手を見る。



「・・・・・・恭文」

「うん」



月夜戦の時以来のキャラなりだけど、前とはまた違う。こう・・・・・・なんだろ。

いつもより力が溢れる感じがしてる。さっきも『解錠』ってなんか出てたし、えっと・・・・・・なんで?



【もしかして、ボク達のキャラなりがパワーアップしたんじゃ】

【パ、パワーアップっ!? ・・・・・・あぁ、でもすごいよっ! 今までよりも力がどんどん出てくるっ!!】

「まぁ、そこは後でもいいでしょ。・・・・・・あむ」

「うん、いくよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「わぁ、すごい。あむさんはともかく、恭文まで変身しちゃった」



あむさんはピンク色のチアガール。それで、恭文は青い剣士。

普段のジャケットと違うもっと強い輝きが、ヴィヴィオにも分かる。



「あとは二人に任せておけば大丈夫だね」

「俺達は周辺の警戒だな。ヴィヴィオ、なんか有った時は頼むぞ」

「は、はい。・・・・・・あの、あれ」

「あ、ヴィヴィオちゃんは見るの初めてなんだよね。あれが、あむちんと恭文のキャラなりだよ」

「キャラなりはしゅごキャラと一体化する事でその力を120%引き出して、変身した姿でち」



キャラなり・・・・・・なんかすごい。恭文、何時の間にかあんなこと出来るようになってたんだ。

あれ、いいかも。あぁ、ヴィヴィオの興味がピクピクしてるよー。というか、かっこいいよー。



「でもよ、日奈森もそうだし恭文も、なんかパワーアップしてねぇか? こう、演出がバーンって感じで」

「うん、そうだね。・・・・・・あれ、なんだろう。何かモヤモヤする」

「しくしくしくしくしくしく・・・・・・しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく」

「そしてお前はまだ泣いてんのかよっ! てーか、わざとらしいからそれやめろっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「バリア・・・・・・ジャケット。でも、魔力反応は全くない。あの、あなた達」



左手でカードを取り出す。取り出して、そのままスラッシュ。

当然のように使うカードはこれ。スペードの10である。



≪Sound≫



・・・・・・あぁ、これもいいなぁ。鳴り響くのはロックでテンポの激しい曲。それに×キャラが怪訝な顔をする。



≪The song today is ”Ride a firstway”≫



これ・・・・・・あ、RIDER CHIPSだ。パチンコの仮面ライダーのテーマ曲。

また楽しい曲がかかるねー。あれかな、パワーアップしたから?



「・・・・・・な、なんですかこれはっ! というか、彼女は誰ですかっ!!」

「この子は、通りすがりの現・魔法少女です。覚えておいてください」

≪砲撃とか撃たない、純粋な魔法少女なの。覚えておくのー≫

「なんですかそれはっ! そしてその知らないデバイスの声はなんですかっ!!」



言いながら、アルトを鞘から引き抜く。引き抜いた刃は『いつも通り』の虹色。

手が届くなら心も身体も想いも全部を守り、悲しい今を全て壊したいという願いの詰まった・・・・・・僕とアルトの力。



「いやいやっ! それ意味分かんないしっ!!
てーか、また魔法少女っ!? アンタ、まだ言うかっ!!」

「死ぬまで言い続けるけど、なにか問題ある? ほら、2年目なんだし初心に戻ろうよ」

「大ありだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! そして、アンタがあたしの初心を勝手に決めるなっ!!」





・・・・・・信じ続けろ。自分の可能性を。なりたい自分を。夢は、変わる。



僕が望むように、進化していく。だから、信じろ。進化し続ける自分を。



そんな自分が思い描く未来の形を、ありったけで・・・・・・信じ抜く。





「あぁもういいっ! 恭文、いくよっ!!」

「当然っ! 言っておくけど僕達は・・・・・・最初からクライマックスだよっ!!」

≪そしてジガン達の進化、見せてあげるのっ! それじゃあみんな・・・・・・突撃なのー!!≫



ジガンの言葉に合わせて、僕とあむは同時にダッシュした。

踏み込む方向は、当然前。その進行方向には・・・・・・×キャラ。



「こら、話を聞きなさいっ!!」



僕は、そのまま前に踏み込む。×キャラ二体も同じく。まぁ、一体はあむに任せる。

そして、×キャラの一つは僕に向かって飛び蹴りをかまして来た。



『ムリィィィィィィィィッ!!』





踏み込む僕達に向かって、一直線に×キャラが来る。そして目前に迫る。・・・・・・身を左に逸らした。

×キャラの飛び蹴りをそうして避ける。で、僕は普通に袈裟から刃を打ち込む。

虹色の斬撃を×キャラは両腕でガードする。・・・・・・同時に障壁を発生させるのはいい。



咄嗟に急停止してそれが出来るのは非常にいい。ただ甘い。





【「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」】



僕達はその程度じゃ止まらない。僕達は障壁ごと×キャラを斬る。

×キャラは斬撃を両腕で受けて吹き飛ぶ。ただ、それでも空中を踏みしめながらも受身。



【・・・・・・やっぱり、パワーが上がってる。すごい、これなら・・・・・・もっと行ける】

「なら、もっと行くしかないでしょ」



×キャラは即座に両腕をかざして、黒い弾丸を10数発放つ。それを僕はアルトを打ち込んで斬り払う。

生まれたのは虹色の閃光。そしてその閃光が、網の目のような線を描く。目の前で闇の粒子が舞い散る中、僕の姿が消える。



『ムリッ!?』

「・・・・・・驚く必要はないよ」



僕はその間に、×キャラの後ろに回り込んでる。そのままアルトを袈裟に打ち込む。



『ムリムリッ!?』



×キャラは振り向きながら逃げようとする。でも、左の肩口に斬撃が叩き込まれ・・・・・・後方へと吹き飛ぶ。

吹き飛びながらまたもや弾丸を放つけど、僕は先程と同じようにそれを全て斬り払う。



「言ったでしょ? 最初からクライマックスだってさ」

【僕達のスピード、こんなもんじゃないよ? 驚くなんて早過ぎ】



弾丸は全て黒い粒子となり消えていく。そのまま、×キャラは怒り心頭という顔で僕を睨んで・・・・・・接近。



『ムリィィッ!!』




右拳を一旦引いて、突き出しながら突撃してくる。周りには黒いフィールド。

僕はそれに右薙に刃を叩き込んだ。虹色のアルトの刃と、黒いフィールドが激突する。



(・・・・・・どうしてなんだ)



声が聞こえる。それは、向こうであむに突撃しまくっている×キャラも同じ。

あむはその突撃を見切って、左右に跳びながら追いかけてくる×キャラを回避。



(どんなに頑張っても強くなっても、誰も認めてくれない)

(試合にも出してもらえなくなった。何度やっても頑張っても・・・・・・どうして)










両腕をかざして撃ち込まれる弾丸を、あむは両手のピンク色のポンポンを前に突き出し防ぐ。





なお、前面にピンク色のキラキラと光っている防御障壁が発生しているので、あしからず。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「すごい、本当にパワーアップしてる。というか、力がどんどん溢れてくる」

【恭文とミキも同じ調子みたいだし、これすごいよっ! よーし、この調子でいっちゃえー!!】



・・・・・・障壁で攻撃を防ぎながら、あたし達は自分の力がマジでパワーアップしてるのを感じてた。

なんだろ、本当に何でも出来そうな感じがする。力が心の奥底から溢れてくる。



『ムリムリムリィィィィィィィィィィィッ!!』



×キャラは一旦両手を引いて、その手の平をあたしに向ける。

そこから砲撃みたいな黒いエネルギーの奔流が撃ち込まれた。あたしは・・・・・・それを防ぐ。



(何がいけないんだ。ワケが・・・・・・ワケが分からない。ただ強くなってバカにした奴らを見返してやりたいだけなのに。
それなのに『今のままじゃダメ』って言う。ただ相手を倒すだけじゃ強くなった事にはならないって言う。なんなの?)



音楽が鳴り響く中、あの子達の声が聞こえる。悲しい、苦しい・・・・・・でも、あたしも思った。

何かが決定的に抜けている。だから感じるのは、軽い苛立ち。



(ワケが・・・・・・ワケが分からない。強くなる事は、相手を徹底的に叩く事でしょ?
そうだ、大人だってそうだ。大人だって・・・・・・自分より弱い人達を踏みつけてるじゃないかっ!!)

「そんなの」



恭文はそのままアルトを振り抜く。振り抜いて、フィールドを斬り裂く。

あたしも同じように両手のポンポンを振り切って、衝撃波を弾き飛ばす。



「絶対違うよっ!!」



×キャラはそのまま吹き飛ばされた。また×キャラは受身を取って、こちらを見る。



「・・・・・・あたしもさ、そういう風に考えてた時があった。強さって、戦って相手を倒すためのものなのかなって。
でもきっとそれは違う。強さは・・・・・・力は、自分の心が大事なものを守りたいと思った何かを守るためのものなんだ」



そのために戦う事が必要な時だってある。悲しいけど、そういう仕事が必要なのが現実かも知れない。



「ただ殴ったりするだけじゃ、ただ相手を倒すだけじゃ掴めない時間だってあるんだよ?
例え戦う事が必要だとしても、そこだけは絶対に忘れたらいけないじゃん」



ここ数ヶ月、恭文と出会って・・・・・・月夜の事とかがあって、嫌になるくらいに痛感した。



「だからアンタ達は勘違いしてるっ! それはただ相手を殴ったり蹴ったりして勝ちたいだけの・・・・・・ただの暴力じゃんっ!!
そんなの、絶対に強さなんかじゃないっ! 強さは、強いって事は・・・・・・持ってる力だけじゃ絶対決まらないっ!!」



あたしは右手のポンポンを一旦収納してから、右手を自分の胸元に当てて言い放つ。



「自分の心・・・・・・アンタ達のキャラの根っこがどんだけぶっといかで決まるんだっ! 力鍛える前に、自分の心をしっかり鍛えろっ!!」

『『ム、ムリィ・・・・・・!!』』

「その調子じゃ、いつか後悔するよ」



恭文はその間に、左手でカードを取り出す。数は三枚。ううん、それだけじゃない。

あたしの言葉に乗っかって、続けていく。・・・・・・それがひどく、実感の篭ったものだった。



「本気で守りたいものが出来た時、それを自分の手で壊す事になる。・・・・・・賭けてもいいね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そのまま、僕はカードをスラッシュさせる。×キャラは怯んだまま、動かない。





きっと、あむのお説教が効いてるんでしょ。うーん、話術に関してもパワーアップですか?










≪Kick≫

「だから僕が、今からお前らの考えをぶち壊す。それがどんだけ狭い世界での視界なのかを突きつける」



まずはおなじみの5のカード。次は、これ。



≪Icicle≫



氷結属性付与の6のカード。最後は、これ。



≪Mach≫

「だから僕はこう言う。・・・・・・さぁ、お前達の罪を数えろ」



これはスペードの9のカード。なお、効果は高速移動。これで5+6+9のスリーコンボは完成した。

右手のガントレットのクリスタル部分から、青いエネルギー球が三つ射出される。



≪Beat Sonic≫

【・・・・・・いくよ、ボク達の新必殺技】

≪これも、一つの進化の形なのー≫





それらが僕の前に展開されて、三枚のカードの絵柄を模した大きなカードになる。

それは即座に粒子化して、僕の手の甲と両肩にあるスペードの装飾に吸い込まれる。

僕の身体が青い輝きに包まれる。そうしながら、右手で逆手にアルトを持つ。



高く掲げながらも、僕はアルトを地面に突き刺した。

僕は少ししゃがんで力を溜めてから、その場で高く跳躍する。

あむも当然のように動いている。もう一体の×キャラに向かって、右手で指差す。





「ネガティブハートに、ロックオンッ!!」



先に動くのは、僕。跳びながら僕は空中で縦に一回転しつつ、×キャラに向かって飛び込む。

青い冷たい息吹に包まれた右足を突き出すと、身体が一気に加速する。



【「ビートッ!」】



マフラーが青い光に包まれて、ブーストをかける。

まるで噴射口から出てくる炎のように光は揺らめき、僕はそのまま×キャラに突撃。



【「ソニックッ!!」】



僕達のキックは、見事に×キャラに直撃した。青い光と氷結の息吹が、×キャラを包み込む。



『ムリ・・・・・・ムリムリムリィィィィィィィィィッ!!』



・・・・・・あむの胸元のハンプティ・ロックから、ピンク色の光が放たれる。

それがあむが両手で作ったハートマークの中を通過し、大きな奔流と変わる。



「オープンッ!!」



ハートを形取り、諦めをこころのたまごから取るために力は直進する。それがもう一体の×キャラに直撃した。



「ハートッ!!」



あむのオープンハートの直撃を食らい、×キャラが声をあげる。



『ムリィィィィィィィッ!?』



僕のキック攻撃を食らい、こちらの×キャラも吹き飛びながら、氷に包まれる。



「・・・・・・お前らはゴールするにはちっとばっかし早い」



僕は地面にしゃがむようにして着地しながら、その光景を見る。



「まずは自分と向き合って・・・・・・そこからまた一歩、踏み出していこうか」

『『ム・・・・・・ムリィィィィィィィィッ!!』』





光の中で×キャラの×が壊れた。もう一体は氷に完全に包まれ、爆発するように×キャラが弾ける。

そして、二つの白いたまごが姿を表す。羽の装飾があるそのタマゴは、静かに降りてくる。

倒れていた子ども達の中、ショートカットで栗色の女の子の中にたまごの一個が吸い込まれる。



そして、その隣で女の子をかばうようにして倒れていた子が居る。

その青い髪の男の子に、たまごが吸い込まれた。・・・・・・浄化、完了っと。

僕はあむの方を見る。あむは、左手でサムズアップしていた。



で、僕も地面に突き刺さったアルトを抜きつつそれに返す。





≪・・・・・・らしくもなく、説教モードだったじゃないですか≫

【・・・・・・色々と考えちゃったの?】

「まぁ、そんなとこかね。とりあえずミキ、今の」



アルトを逆袈裟に一振りしてから、鞘に収める。



【うん、いい感じだった。あれだよね、息を合わせて力倍増って感じで】

「うし、この調子で次もいってみよー」



そして、キャラなり解除。あむも同じくなので、二人して安堵のため息を吐く。



「恭文、お疲れ様。あとは」

「あぁ、そうだね」



僕とミキ、そしてあむとランは、あの人を見る。呆然としている、某シスターを。



「あの人に事情説明だね。というか、知り合いなんだよね」

「一応ね。だから、面倒なことにはならないよ。口も固い人だから」

「そっか、なら安心だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あの二人は、部の中でもこう・・・・・・実力はあるんですが、メンタル面で少々問題があるんです。
コーチ曰く、元々いじめられっ子で家庭でも少し問題を抱えているらしくて」

≪それで察するに、自分達をバカにした連中を見返してやろうとかそういうアレですか≫

「アレですね。そのためにかなり際どい攻撃をする事もあって、危険と判断して最近は控えに回していたとか」



楽しそうに練習を再開した子ども達を遠巻きに見ながら、シャッハさんが呟く。

時刻はもう夕方。ほら、だからお空も夕焼け色に染まってるのよ。



「その上でコーチから少しずつ話して少しずつ改善していこうとしたそうですが、遅かったようですね。
その前にあなた達が説明してくれたこころのたまご・・・・・・でしたね。それに×が付いた」

「そうです。・・・・・・でも、ちょうど私達が来ていてよかったわよね。
この学校に私達みたいなキャラ持ちが居るかどうか、分からないし」

「というよりクイーン、そもそも現在は夏休み中です。居ない可能性の方が大きかったでしょう」



例の二人は・・・・・・アレ、なんか笑ってる。というか、他の子達と顔を見合わせて笑いが広がった。

・・・・・・あぁ、そういう事情だから他の部員とも距離が開いてたのか。それが改善されたって事かな。



「ですが、まだ信じられません。そのしゅごキャラという存在もそうですしそれと恭文さん・・・・・・いいえ、人が同化する能力まであるなど」

「だけど事実です。ガーディアンのみんなも同じく」

「まぁ、先程の現象を見るに信じるしかないのでしょう。
ですがそうなると、それはレアスキルに認定されるかも知れませんね」

「・・・・・・シャッハさん、そういうのにあむ達を巻き込みたくないんで、ここは内緒で」



僕が右手の人差し指で内緒のポーズを取ると、シャッハさんは頷いてくれた。



「分かっています。これでも神に仕える身。口は固い方ですから、安心してください。
とにかく日奈森あむさん・・・・・・でしたよね。あと、聖夜小ガーディアンのみなさん」

「は、はい」

「自己紹介が遅れました。私、聖王教会騎士のシャッハ・ヌエラと申します。
本日は私もそうですが、本校の生徒を助けていただいて本当に感謝しています」

「いえ。その・・・・・・あたしだけの力じゃないですし。というか、あの・・・・・・光栄です」



シャッハさんがあむに握手を求めてくる。あむは、差し出されたシャッハさんの右手を取る。



「あの、それであの子達は」

「大丈夫です。私も明日明後日はこちらで特別講師を務めますし、コーチとも相談の上で対処していきます。
・・・・・・もう二度と、同じことであの子達の中の可能性に×など付かないように。あなたと恭文さんの言葉が無駄にならないように」

「ならよかったです。あの、ありがとうございます」



それを見て、僕達は微笑ましくなった。・・・・・・というか、あむは内心すごい緊張してるな。普通に足震えてるし。



「聞けばみなさんは夏休みの間ミッドに滞在されるとか。
もし時間があるようでしたら、ぜひ聖王教会の方に。今日のお礼もしたいですし」

「聖王、教会?」

「あー、あむ。みんなもそこは後で説明するよ。・・・・・・シャッハさん、時間をとって必ず伺います」

「はい、お待ちしています。あ、騎士カリムもあなたと会いたがっていますから、必ず来てくださいね」

「了解です」





とにかくうさぎの餌やりも終わったので、僕達は帰路に付くことになった。



シャッハさんに見送られながら、ザンクト・ヒルデ魔法学院を後にするのである。



でも、帰郷初日からこれとは。・・・・・・波乱含みな休みの幕開けに、少しドキドキである。





「恭文」

「ミキ、どうした?」

「なんだかボク、楽しくなってきちゃったよ。知らない世界に知らない人達・・・・・・うーん、やっぱりドキドキだ。
・・・・・・もしかしたらキャラなりがパワーアップしたのってさ、そんなドキドキがボク達や恭文の中で強い形になってるからじゃないかな」

「そっか。それはありえるかも。なら、このドキドキをいっぱい楽しまないとね」

「うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そっか。学院に×キャラが・・・・・・いきなり大変だったね」

「まぁ、俺達は何もしてないっすよ? 日奈森と恭文がサクっと対処しましたし」

「というかというか、恭文もあむちーもズルイんですよー? キャラなり、パワーアップしてるしー」

「アレでちね、主人公キャラだからって調子に乗ってるでちよ」



現在、夜。自宅で僕達の帰郷とガーディアンの歓迎会を兼ねたお食事会を実施中。

なお、料理はフェイトとなのは、リインとリースにディードが頑張ってくれたのである。



「だけど、ミッドにも×キャラって出るんだよねー。ややびっくりしちゃったよ」

「エース、これは当然と言えば当然でしょう。子ども達のこころのたまごに世界は関係ありません」

「それもそうですね。それで、恭文さんはアルカイックブレードで頑張ったですか」



リインがチャーハンをほうばりながらも、僕を恨めしそうに睨む。え、えっと・・・・・・どうした?



「というかというか、最近リインの出番がなさすぎですっ! 49話ではシオン大活躍ですしっ!!
ヴィンクルムフォームのこと、忘れてないですかっ!? あれこそ基本形態ですよっ!!」

「おじいさん、サイクロンフォームもお忘れなく」

「リースまで一体何の話してるですかっ! 姉を差し置いて登場なんて、リインは許さないのですっ!!」



とりあえず、アレだ。僕はややと一緒にチキンにかぶり付く。リインの視線が痛いもん。



「あの、私は正直その×キャラとかしゅごキャラのことは、よく分からないんだけど」

「大丈夫。横馬が分からなくても、みんな分かってるから」

「・・・・・・うぅ、みんな聞いた? 恭文君、いっつもこうなんだ。私をいじめて楽しんでるの。もうね、最初の頃からこれなの」

「だって、横馬はいじめられると喜んじゃう子じゃないのさ」

「違うもんっ! 私、そんな変態さんじゃないよっ!?」



・・・・・・あ、あれ? なんかみんなの視線が痛いなぁ。もっと言うと、ガーディアンの面々が。



「恭文、なのはさんにもフラグ立ててるの? いや、あたしはこの前の様子を見てて気づいてたけど」

「蒼凪君、さすがに自重した方がいいんじゃないかな。ほら、フェイトさんとリインさんっていう奥さんも居るんだし」

「何を誤解してるっ!? 僕と横馬は、基本的にずっとこんなだからっ! いかがわしいことなんて、0だしっ!!」

「嘘よね」



りまっ! そう言い切れる根拠はなにっ!? 非常に疑問なんだけどっ!!

・・・・・・ま、まぁアレだよ。確かに『好きだったんだ』って言われたけど、ちゃんと友達同士になったし。



「ね、恭文。あたしちょっと気になってたんだけど」

「なに?」

「聖王教会やレアスキルってなに? あの大きな学校を運営してるとも言ってたけど」

「あ、そう言えばややも気になるー。あのシスター・シャッハって人も、そこのシスターさんだって言ってたし」



そう言えば後で説明するって、話してたっけ。・・・・・・よし、ご飯を食べながらだけど説明しよう。



「えっとね、聖王教会というのは、聖王という存在を信仰している宗教組織なの」

「聖王?」

「その昔、次元世界が新暦に突入するずっと前・・・・・・古代ベルカ時代と呼ばれていた時期があるの」

≪その時代では、覇権を争う形で血生臭い戦争が数百年レベルで行われていたの。
だけど、その戦争を終結に導いた人物が居るの。それが聖王なの≫



ゆりかごなんてアウト兵器を持ち出しているし、手段はそうとうエグイけどね。

とにかく聖王の活躍によって世界は平定され、長い戦乱は終りを告げた。



「もしかして、だから聖王教会なんてものが出来てるの? その、こっちの世界では聖王を英雄視しているから」



なぎひこが今言った通りである。何にしても、戦乱を聖王が終わらせたのは事実。

だからこそ、その偉業は讃えられ後世に伝わっているのだ。



「それで聖王教会は、管理局とも協力体制を結んでいるの。
シャッハさんのような魔導師の部隊・・・・・・教会騎士団を編成してね」

「恭文、それはまたどうしてだ? 今の話を聞くに、単なる宗教組織って感じだよな」

「その理由は聖王の遺産なんだ」



フェイトが少し箸を休めて、真剣な顔で言葉を続ける。



「聖王の遺産の中には、みんなも知ってるロストロギア級のものが幾つもあるとされていて、実際に発見もされている」



うん、いくつもあるのよ。ゆりかごはブッチギリだけど、聖王の遺産として考えると一例に過ぎない。

他にも聖王もそうだし、古代のベルカの王様関連では結構ロストロギア級な代物がこれまでに多く発見されている。



「聖王教会は管理局とは別の外部組織だけど、それでも戦力を保有しているのはそこが理由なんだ」

≪あ、それと一応補足なの。聖王以外にも古代ベルカには・・・・・・うーん、そうなの。
日本で言うところの戦国時代の武将みたいな感じで、有名な王様が何人か居るの≫



この辺り、戦乱の時代が王が軍勢を率いての覇権争いの図式だからだね。



「それじゃあジガン、もしかしてその『有名な王様』達にもそういうのがあるのか? それ絡みのロストロギアとかが」



空海が軽く苦笑いでそう聞く。そしてジガンは当然だけど肯定する。



≪そうなの。伝承に残ってるものだったり実際に見つかったものだったり・・・・・・古代ベルカ時代の遺産は相当な危険物が多いの。
それでそれで、聖王教会は聖王を信仰している関係で、古代ベルカの歴史関係にすごく詳しい組織でもあるの≫

「・・・・・・なるほど。管理局の目的の一つと重なっているからなんですね。
管理局も、ロストロギアの保守と管理が仕事だから。そして古代ベルカの時代の専門家でもあるから」

「そういうのが事件に絡む時には、知識面から頼れる組織でもあるんだね」



唯世となぎひこの言葉にフェイトが頷く。他のみんなも、納得しているみたい。



「というかジガン、あなたすごいわね。普通に生まれたばかりなのに詳しいじゃない」

「そうだよ。あたしもちょっとびっくりだし」

≪りまちゃん、あむちゃんもありがとうなの。あのね、お父さんがこういうのに詳しいから色々データを入れてもらったの≫



・・・・・・あぁ、サリさんの影響でコレなのか。サリさんも古代ベルカ関連の時代の事は詳しいしなぁ。

僕もあんまりにジガンの説明が流暢だからちょっとびっくりしてたけど・・・・・・うん、納得だ



「それでみんなが会ったシスター・シャッハは、その聖王教会の理事であるカリム・グラシアさんの護衛秘書。
だから、教会騎士の中でも結構立場のある人なんだ。私やなのはにヤスフミとヴィヴィオも、色々お世話になってる」

「うんうん、ヴィヴィオもお世話になってまーす」

『なるほど』



・・・・・・さて、こうなってくると早めに連絡して、みんなと聖王教会の見学に行かないと。

僕の試合自体は8月の後半だから、その調整もあるけどそれでもだよ。



「ミッドの聖王教会の本部は、結構敷地も広いし観光コースには入れてたんだ。
せっかくお誘いしておらったわけだし、みんなで早めに行ってきたらいいと思うな」

「あと、ディードも連れていくですよ」



あ、そうだね。ディードも連れていかないと、きっと寂しくなるだろうし。



「え、ディードさんもですか?」

「はい。・・・・・・実は私とは双子の子と姉が一人、聖王教会に務めているんです」

「姉の方がセイン。で、ディードと双子の方がオットーって言うの。
二人とも面白い子だから、きっとあむ達とも気が合うと思う」

「へぇ、ディードさんと双子かぁ。・・・・・・スタイル、いいんだろうなぁ」



・・・・・・あむ、ぺたぺたと胸を触るな。あと大丈夫だから。

セインもオットーも、きっとあむと気が合うから。いろんな意味で合うから。



「それじゃあ恭文、レアスキルってのは一体なんだ?」

「簡単に言えば、希少技能。通常の魔法なんかとは違う、特殊な能力全般を指すの。
まぁ簡単に言えば、僕やみんなの出来るキャラなりはそれに成り得るってこと」

≪ただ、レアスキルを持つということはマイナス要素も多いんです。
そういう珍しい力を違法に研究し、悪用しようとする人間もいますから≫

「だからお前は、あのシスター・シャッハに俺達の事、口止めしてたのか」



空海は、普通に察しが早いから助かる。正直、キャラなりの事とかが色々バレたらめんどいもの。

たまごのこともそうだし、エンブリオのこととかもバレる可能性があるしさ。



「まぁね。だから、みんなも気をつけてよ? 通常の魔法術式とは、全く違う力を行使出来る。
これだけでも次元世界では、レアスキル保持者と見られるんだから」

「そこはヤスフミだけじゃなくて、私もお願いしたいな。
どこで誰が見てるかも分からないしね。・・・・・・ただ、その前に」



フェイトが、ウキウキモードに突入したガーディアンに釘を刺す。

というか、僕も見ているのがちょっと理不尽だ。



「みんなは宿題を終わらせないとだめだね。とりあえず、7月中を目処に」

「そこは恭文さんとリインさんもですね。みなさんと同じで、学生なのですから」

『は、はい。頑張ります』

「ヴィヴィオも頑張ろうね? 宿題、いっぱい出てるんだから」

「うん、頑張る。でも・・・・・・あれ、7月中に終わるかなぁ」










というわけで、7月中のやるべき事は宿題と戦うことに決定した。





僕達、勝てるかな? というか、普通に強敵だって。




















(第55話へ続く)







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