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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第28話 『きっかけなんて、ただ漫然と時を過ごしているだけでは掴めるわけがない』(加筆修正版)



・・・・・・朝日も昇り始めた中で、音が響く。木と木が小気味良くぶつかり合う音。

その瞬間、手から伝わるのはいい感じの手応え。・・・・・・いや、楽しいわこれ。

僕は、距離を取るために後ろに飛ぶ。だけど追撃は当然のようにくる。なので、それを迎え撃つ。





相手が両手に持った小太刀を模した木刀は、空気を斬り裂きながら僕へと迫る。

それを手にしている木刀で受ける。・・・・・・いや、流すようにして弾く。

だけどそれは一度じゃ済まない。相手は二刀流。嵐のような連撃が襲ってくる。





それを木刀で防御。もしくはステップで軸をずらして、斬撃を弾きながら避ける。

攻撃の隙・・・・・・ないな。ま、いいか。相手は僕より格上だ。この場合最優先は防御と回避。

そうして何度目かの斬撃が来る。右手からの斬り上げるような攻撃。持ち方は逆手。





胴を抉るかと思うような深い斬撃。それをなんとか防ぐ。だけど、重い。

僕は一瞬その衝撃に圧された。その次の瞬間に、また鋭い風が襲ってくる。

相手の姿が消えた。そう、消えたのだ。そして僕は考えるよりも速く反応。





木刀を背後に向かって、左から横一文字に打ち込んでいた。

身体全体を使い、周囲を360度斬り裂くような一撃は・・・・・・なにも捉えなかった。

そして上を見る。その人は上に跳んで、僕の反撃を避けていた。





そこから続けての攻撃体勢を取ってる。だから、こっちもそうする。










「飛天御剣流」



身体をかがめ、左を刃の峰に当てる。そして、そのまま飛び上がった。



「龍翔閃もどきっ!!」



木刀を斬り上げるようにして打ち込み、襲い来る二条の斬撃に対抗。斬撃は衝突し、空気が弾ける。

そして僕とその人は交差。でも、その人は着地と同時に僅かに体勢を崩した。だから続けていく。



「同じく」



斬り上げた刃を返し、狙うは肩口。このタイミングなら避け切れない。

だからこそ、唐竹に木刀を叩き込むのである。



「龍槌閃もどきっ!!」



だけど、その人が軽く口元で笑った。・・・・・・その次の瞬間に、木刀が根元から弾けた。

当然だけどそのために僕の斬撃は空振り。その人が僅かに身を逸らすだけで攻撃は回避された。



「・・・・・・残念。詰みだよ」



そう言いながらも、首元に木刀が当てられてる。・・・・・・く、くそぅ。普通に負けたー。



「くそ、徹はチートだ」

「いやいや。普通に恭文も使ってるよね? まぁ、得物がアルトアイゼンだったら分からなかったかな」



なんて言いながら、美由希さんが刃を引く。・・・・・・えー、早朝から組み手してました。うん、かなり激しくね。



「うーん、やっぱり心構えの問題かな。この間やった時よりもかなりいい感じになってる」

「ホントですか?」

「うん。自信持っていいと思うな」



美由希さんが言いながら、優しく左手で頭を撫でてくれる。なお、木刀は素早く右手で二本持ってる。

まぁ、御神の剣士のお墨付きだし、自信持っていいかも。とにかくクールダウンを終えてから歩き出す。だって、お腹ペコペコだし。



「ま、この調子なら大丈夫かな?」

「・・・・・・はい?」

「いや、サリエルさんやヴィータちゃんやシグナムさんから色々ね〜。これから何がしたいのかーとかさ」



その瞬間、顔が熱くなった。・・・・・・あの人達はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「まぁまぁ。いや、やっぱり私はもう現地妻じゃ居られないね。邪魔しちゃ悪いし」

「だから現地妻は止めてー! 普通にそんなの作った覚えないからー!!」



くそ、とりあえずフェイトどうこうの前に僕にはなんとかしなくちゃいけないフラグが沢山あるんじゃないのっ!?

具体的には現地妻っ! まずそこだってっ!! いや、真面目にそこからなんじゃないかなっ!?



「でも」

「でも?」

「恭文のお姉さんでは居ていいよね?」



瞳に見えるのは、どこか懇願するような感情。だから・・・・・・こう答える。



「当たり前じゃないですか」



うん、そこは変わんない。大事な、色んな事を相談出来るお姉さん。それが美由希さんだ。



「・・・・・・ありがと。なら、これからも抱きついていいよね」



あはははは、そんなの決まってる。



「ダメです」



当然だけど、僕は躊躇い無く即答で言い切った。すると、美由希さんがとても不満そうな顔になる。



「なんでっ!? 姉弟のコミュニケーションなんだからいいでしょっ!!」

「良いわけあるかっ! つーか女の子にあんまり優しくしないようにって言ったのあなたでしょっ!?」

「私は別だよっ!!」



いやいやっ! どんな理屈っ!? 色々おかしくなってるからー!!



「・・・・・・そういうこと言うなら分かったよ。
やっぱりこのまま現地妻で行く。恭文、私は3番目でいいから」

「お願いだからやめてくださいよっ! てーか3番目ってなにっ!? 2番目も居ないからっ!!」

「え? 2番目はリインちゃんだよ。つまり『恭文×フェイトちゃん+リインちゃん+私』になるわけだね。うん、納得だ」

「納得するなバカぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



どんなトンデモ方程式組み上げてるんですかっ!? お願いだからやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!



「・・・・・・楽しそうだな、やっさん」

「あれ、サリさん。てかヒロさんも」

「お二人とも、どうしたんですか?」

「とーぜん、美由希ちゃんとの楽しい組み手♪」



え、いやいや・・・・・・ついさっきクールダウンしたよ? 色々とタイミング遅いよ?

僕も美由希さんもそう言おうとしたけど、無理っぽかった。だって、二人とも目がうきうき過ぎて怖いくらいだし。



「つかやっさん、アンタ・・・・・・抜け駆けとは汚ないね」

「失礼なこと言わないでくださいよ。何時の間にそんな先約なお話が出来上がってるんですか」

「ま、そこはいいさ。・・・・・・美由希ちゃん、頼める?」

「・・・・・・じゃあ、軽めにで。あの、ご飯の時間も・・・・・・って、聞いてませんね」










早朝の隊舎の中庭は、こうして凄いことになった。





いや、本気の美由希さんが凄まじいのがよく分かった。ヒロさんとサリさんもね。





これがこの日の始まりだった。そう、ちょこっと大変な1日の始まりである。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第28話 『きっかけなんて、ただ漫然と時を過ごしているだけでは掴めるわけがない』





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



昨日の訓練の後、結局お姉ちゃんは隊舎に泊まった。

いや、楽しかったなぁ。久々に姉妹のコミュニケーションを取ってしまいました。

ただ、またもスバルやティアの私を見る目が微妙でした。





うぅ、そんなにお仕事モードな感じに見えるのかな?

恭文君が来てくれたお陰で、大分そういうのは改善出来たと思うのに。とにかく今は朝。

みんなでご飯を食べてから、恭文君はお姉ちゃんを自分の家へ送っていきました。





お姉ちゃん、ミッドは初めてだしね。こういうのは絶対に必要。





そして私は・・・・・・ちょっとした待ち合わせの最中です。










「なのは、お待たせ」



ここは隊員寮の入り口。その声は目の前に来たミニパトの運転席から。

それを運転するのはもちろん・・・・・・あの子。



「ううん、大丈夫。お姉ちゃんは?」

「ちゃんと送ってきたよ。・・・・・・でもだ、行動的過ぎるって」

「え?」

「だってマジで着いた途端にエイミィさんとハイタッチしてさ。クラナガン観光のために飛び出したもの」



にゃははは、そこは私も知ってたから同意見。・・・・・・改めて見るとすごい車だよね。

あ、これは恭文君所有の車なんだけど、トゥデイのミニパト仕様なの。こっちに来る時に、家から引き上げてたんだ。



「ま、そこはいいから、早く行こう?」

「うん」










そして私はそのまま助手席に乗る。それからトゥデイは恭文君の運転で動き出す。





これから、二人だけでちょっとしたドライブです。・・・・・・あ、デートとかじゃないんだよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文君」

「うん?」



うん、いい機会だから聞いておこうかな? お友達としては、色々気になるの。



「フェイトちゃんとは、本当になにも?」

「・・・・・・いかがわしい事は0だよ」



やっぱりか。まぁ、あっても大変だよね。気まずくなりそうだし。



「てーか、あっても大問題でしょうが。状況に流されてエッチしましたーなんて、明らかにバッドフラグだし」



恭文君は、良く『フラグ』的なものを結構気にします。それもかなり昔から。

特に死亡フラグと恋愛でのバッドフラグは相当に。フェイトちゃんやリインとの絡みがあるからなぁ。



「特にあれだよ、フェイトとお酒飲んでたんだけどね」

「お酒っ!? ・・・・・・あ、お食事の時に軽くだっけ」



そこはフェイトちゃんから聞いてたから、私も知ってる所。それでフェイトちゃん、軽く酔っ払ったって言ってた。

でも、恭文君が本当に気遣ってくれて凄く嬉しかったとも言ってたなぁ。それもすごく嬉しそうな顔で。



「そそ。お酒飲んで酔っ払って、いつもより色っぽくなった相手の女の子に欲情して、それに耐えきれずに襲う?
そんなの男のやる事じゃないでしょ。別にガチに恋人同士とかなら、まぁまぁ分かるけどさ」





そして恭文君は、外見が小さいし普段の言動がアレ過ぎるから誤解されがちだけど、意外と男の子してる。

こういう所の線引きは私も見ていてびっくりするくらいにちゃんとして・・・・・・まぁ、そこが裏目に出てる部分もあったりするけど。

でも、私は恭文君のこういう『古風』とか『時代遅れ』とかそういう言い方も出来る部分が好きだったりする。



うん、女の子としては好感が持てるんだ。恭文君はきっと、女の子をちゃんと守れる男の子だから。



まぁ、だから私も恭文君に女の子として扱って欲しいなーって思ったり。・・・・・・いっつも魔王って言うんだもん。





「恭文君、多分それは付き合っていても最低だよ。というか、本当に男の子のする事じゃないと思うな」

「やっぱり?」

「やっぱりだよ。そういうの、準強姦罪で犯罪になるんだから」



これでも今年20歳な女の子。そういうのには色々と理想もあるし厳しくもあるんです。



「でも、良く抑え切れたよね。そこはみんな信じられないみたいだけど」



フェイトちゃん、私から見ても美人だしスタイルいいもの。セックスアピールはすごくある。

女の子である私もたまに見てて『はぁ〜』ってため息吐きたくなるもの。だって、負けてるし。



「・・・・・・なんかね、エッチどうこうじゃなかったの。
こう、ただフェイトを独り占めにしたいなーって。身体じゃなくて・・・・・・心かな」

「独り占め・・・・・・あぁ、そっか。お泊りで同じ部屋なら、それだけで条件は満たせてるものね」

「まぁ、思春期の男の子として考えると最低限だろうけどね」



・・・・・・そこはその・・・・・・そうなのかなぁ。一応人並みに知識はあるから分かるけど、それだけなのもなぁ。

なんだろう、あんまり語っちゃいけない感じがする。なんかこう、私はその・・・・・・そうなんだよ?



「それでなのは、話は変わるけど帰りは何時だっけ?」

「うんとね・・・・・・5時くらいかな」

「りょーかい。こっちもそれくらいには終わると思う」










私達がこれから向かう所は、管理局本局。

私は教導隊のオフィスに顔を出して、解散後・・・・・・うん、そうなの。

機動六課解散後、春からの教導スケジュールの打ち合わせ。





そして恭文君は、ピンチヒッターなのです。もっと言うと、切り札登場?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕達はミッド地上の中央本部に到着。そこから転送ポートで本局へ。





着いてからなのはと別れたあと、僕はある場所へ向かっていた。










「あー、でも・・・・・・結構久しぶりだね」

≪そうですね。しかし、相変わらず忙しそうですね≫

「年中戦場だしね」



とにかく僕達はそこに着いた。入り口は、近代的な本局の内装とは合わないシックな色合いの木目の扉。

そこのインターホン・・・・・・というか、警備端末のスイッチを押す。聞こえてきたのは、女性の声。



『はい、こちら無限書庫です』

「ども、嘱託魔導師の蒼凪恭文です。書庫の手伝いに来ました」

『あぁ、蒼凪さんっ! 待ってましたよっ!! とにかく中へっ! ささ、早くっ!!』

≪・・・・・・これ、相当ですか? なんだか期待に打ち震える声でしたし≫

「そうだね。僕、ちょっとびっくりかも」





そして扉が開く。僕はその中に飛び出す。そこはそれまでと違う無重力の世界。

中は少し薄暗くて、上から下まで、360度本の数々。本好きにはきっと楽園に映る事だろう。

ここは時空管理局が誇る超巨大データベース『無限書庫』。



次元世界の知識と歴史の全てが存在しているとも言われている場所。





「恭文君っ!!」



聞こえてきたのは、僕のよく知る男の人の声。それは上の方から。

おぉ、またすごいなぁ。目の下のクマとか。



「ユーノ先生っ!!」



金色の長髪を後ろで一つに纏めて、局の制服では無く、スーツ姿の男性。

そう、この人がユーノ・スクライア。無限書庫の司書長さんだ。



「久しぶりっ!!」

「一体何徹したんですかっ!?」

≪初登場おめでとうございます≫



瞬間、場が凍りついた。え、なんで?



「えっと、アルトアイゼン?」

「アルト、空気読みなよ。ここはクマを突っ込むところだって。ほら、ユーノ先生ポカンとしてるし」

「そういう話じゃないよねこれっ! というか、君達いきなり何言ってるのっ!?」

≪いや、まずはそこでは無いかと。下手をすれば最終回まで出番なしだったんですから≫



・・・・・・あ、なるほど。確かにそうだよね。ユーノ先生、ずーっと無限書庫に引きこもってるし。



「ユーノ先生、登場おめでとうございます」

「君、それで納得しちゃうのっ!?」

≪当然でしょう≫

「断言しないでっ! なんか悲しくなってくるからねっ!?」



ユーノ、先生・・・・・・! よかったですねっ!! うぅ、なんか涙が止まらないよー! よーし、今日は祝杯だー!!



「お願いっ! 泣くのも止めて欲しいんだけどなっ!? いやっ! 確かにこのままかなとか思ってたけどっ!!」

「まー、それはそれとして、僕とアルトはなにすりゃいいんですか」

「相変わらず切り替えが速いねっ! 速すぎてついていけないよっ!!」

「足りないよりマシですって」

「そういうことじゃないからっ!! ・・・・・・とにかく、早速で悪いんだけどこれをお願い」



ユーノ先生がそう言うと、僕の前に空間モニターが開く。その中には、僕の仕事内容がズラーっと映ってる。



「あぁ・・・・・・これ、かなりありますね」



えっと、裁判記録に魔法史にロストロギアの鑑定用資料か。

それも大量ですよ。普通にやったら結構時間かかるコースだね。



「まずこれを一気にお願い。発掘は司書のみんなに任せちゃっていいから」

「急ぎですか?」

「かなりね。まぁそこの辺りの事情はいつも通りって感じかな」

「・・・・・・また上層部は無茶振りを」



これを一気に検索したら、検索魔法の容量がバカみたいに重くなるのに。

つまり、検索プログラムがまともに動かなくなるのだ。



「分かりました。んじゃ、早速始めます」

「うん、お願い」





僕にはプログラム容量なんて関係ないんだけど。この量なら魔力も大丈夫だね。

切れかけても、ユーノ先生なり、回復魔法のカード使えばいいでしょ。

そんな思考を巡らせつつも、足元に青いベルカ式魔法陣が生まれる。



そうして発動するのは、検索魔法。書庫に存在しているこれらの資料の在りかを、これで探し出す。



そう無限書庫とはそれほどに巨大で、広大なんだ。





「アルト、サポートお願いね」

≪了解しました≫

「さぁ、一気にいくよ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



瞬間術式詠唱・処理能力。その名の通り、魔法プログラムの術式詠唱や処理を一瞬で行う能力。

その速度はデバイスの自動詠唱などよりも、圧倒的に速い。

本来魔法プログラムの詠唱・処理速度は、使用する魔力量やプログラムの容量の大きさに比例して遅くなる。





この辺りは個人の努力次第で縮められるけど、それでもどうしても時間のかかる魔法は出てくる。

だけどこの能力を保有する人間は、その常識の枠の中に当てはまらない。

分かりやすく言うと普通の術者なら詠唱や発動にすごく時間のかかる魔法があったとする。





でもこの能力保有者は一瞬でプログラムの詠唱と処理を終えて、発動させることが出来る。

そして、それの比例というか副産物というか能力の一部として、高い魔力運用能力が備わっている。

それも例外なくだよ。これも瞬間的な詠唱・処理を可能とする要因になる。





詠唱・処理だけじゃなくて魔力のコントロールもしっかりやらなきゃ、魔法って使えないしね。

まぁ瞬間発動が可能というだけで、消費魔力やなんかは変わらないんだ。

あくまでもこの能力保有者は、無茶苦茶魔力運用が上手くて大抵の術式は即時詠唱・発動が可能ってだけ。





あとはスターライトのような周囲の魔力を集める・・・・・・いわゆる集束砲だね。

そういう術式は即時発動出来ない。さすがに一瞬で魔力の集束なんて出来ないから。

そういうことも手伝って、局ではレアスキルには認定されていない。





だから局や学者的にこの能力は、少し珍しい能力という程度の扱いだったりする。

一般的な学者や魔導師の注目度も低い。でも、実際は相当に強力な特殊能力。

例えば恭文君が使ってるブレイクハウトやクレイモア。アレらは能力があること前提の魔法だったりする。





普通のデバイスや魔導師だと処理し切れないようなレベルにまで、プログラムを徹底的に作り込む。

ようするに、プログラム量を多くして複雑化してるんだね。そうして術の精度を圧倒的に上げてるんだ。

本来ブレイクハウトのようなレベルの物質の変換・操作を使うなら、儀式魔法だもの。





詠唱込みで魔法陣も展開して、10数秒以上の詠唱を行なった上でようやくあのレベルの魔法が使える。

クレイモアも同じくだね。そうして普通の魔導師では扱えないような・・・・・・クロノ曰く『異質』な魔法を組む事が出来る。

クロノは昔、恭文君の使っている魔法を見て自分達とは同じでありながら全く違う異質なものと例えた。





超々高速詠唱・処理とそれが可能にするプログラムの徹底的な作り込みによる、術式の効果の底上げ。

しかもそれが瞬間発動出来ると来てる。だからこそそう言い切ったんだ。

ただ、恭文君はこの能力を100%使いこなせていない。そうするには、恭文君の魔法資質が平均かつ歪過ぎた。





魔力量は並だから、魔力量任せの高火力・広範囲攻撃を瞬間発動なんて出来ない。

魔力弾の多弾生成・制御が出来ないから、誘導弾を瞬間的に大量生成して発射なんて事も出来ない。

それが出来ればかなり凶悪な能力になっちゃうんだけどね。なお、ここは実例がある。





それはJS事件中に出てきたフォン・レイメイ。彼も恭文君と同じ能力持ちだった。

彼は恭文君よりもずっと魔法資質に恵まれていた。だからその関係で、相当に大暴れしていた。

その彼が扱う『異質』な魔法に、一般的な魔導師は全く歯が立たなかった。





それこそなのはやフェイト達みたいにエース級と言われるようなオーバーSの魔導師も同じく。

彼を止めたのは、結局は彼と同じ能力を持った恭文君だけだった。

この辺りの話を受けても、この能力をレアスキル認定しないのがなんというかかんというか。





もしかしてアレなのかな。フォン・レイメイみたいな最悪な犯罪者が保有してた能力だからなのかな。

でも、だとしたらちょっとアレだよね。だってこの能力を保有しているのは、恭文君やフォン・レイメイだけじゃないんだから。

とにかく恭文君は、その珍しい能力の保有者。彼の能力はこの無限書庫では非常に重宝する。





例えば普通では何回かに分けて、慎重に探す必要のある量の探し物があったとする。

でもこの能力を保有する恭文君は彼の魔力量のキャパに収まる範囲でなら、一発で検索出来る。

そのため恭文君に資料検索を任せると、それに取られる時間と人員がとても大きく短縮出来る。





ヒットしたものを探して取り出す必要はあるけど、それは他の手の空いた人間がやればいい。

一応魔法でその資料を取り出すのも出来るんだけど、これは僕達の間では基本無しにしてる。

・・・・・・本気でとんでもない量の資料が飛んできて、危ないんだよ。





もうね、試しにやらせてみたら地獄だった。何十冊もの本が一挙に押し寄せてくるんだから。

まるでどこかのクラスター爆弾かって言いたくなるよ? 怖すぎだって。

とにかく恭文君に検索を全て任せるとこちらの手にも余裕ができて、結果的にスピードアップに繋がる。





ここまで言えばもう分かると思うけど、恭文君は言うなら超高速の検索エンジン。

その超高速検索エンジンの力を借りれば三徹した上にまた徹夜なんて悪夢は、避けることが出来る。

・・・・・・いや、あのね? 僕らもこれ以上はさすがに嫌なんだよ。





僕も司書長として、司書達への福利厚生の保証って、ちゃんとしないといけないし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文君、大丈夫? ごめんね、ちょっと飛ばしてもらっちゃって」

≪問題ありません。久しぶりで少し疲れただけみたいですから≫

「あと・・・・・・お腹空きました。もうペコペコですよ。あぁ、ポテトサラダがおいしい」



さて、お昼なので食堂に来ました。・・・・・・でもユーノ先生、お願いですから。



「でも、君が頑張ってくれたお陰で、みんなのお昼休みは確保出来たよ。
・・・・・・うぅ、食堂使うの何週間ぶりだろ。なんか幸せだなぁ」



泣きながらそういう事言うのはやめてください。いくらなんでも嫌過ぎますから。



「そこまでだったんですか」

「そこまでだったんだよ。もうあり得ないよ。おかげで発掘にも行けないし」





ユーノ先生が落ち込んだ顔で言うのには、理由がある。発掘はユーノ先生のライフワークなのよ。

前にも説明したかも知れないけど、ユーノ先生は司書の仕事と並行して遺跡発掘の活動も行っている。

いわゆる古代遺産やそれに関連した歴史の研究家・・・・・・考古学者でもある。なお、かなり有能。



学会にもいくつか論文を発表して、色んな学者さん達を唸らせている。

僕も発掘人員の護衛と警備と称して何回か付き合ったりしてるので、ユーノ先生が軽くストレス溜まってる理由も分かる。

だってユーノ先生、発掘の時は本当に楽しそうにしてて・・・・・・瞳も雰囲気もキラキラしてるもの。



本気で夢や自分の中の大事なものと向き合って、追いかけている人はみんなキラキラするらしい。



僕もそういう人、何人か知ってるから。うん、なんかそういう大人になりたいな。






「それに・・・・・・なのはとも会えないしさ」

≪・・・・・・そうでしたね≫



あー、これ辛い。なんか黒いオーラ出してきたし。

てゆうか、やっぱりそこもあったんだ。うん、僕は分かってたよ。



「時に先生、最近の横馬との付き合いはいかに?」

「えっと」



あのユーノ先生、なんで考え込む? 僕、そこまで難しい質問してないと思うんですけど。



「メールしたり」

「うん」

「メールの返事書いたり」



うんうん、そこは基本だよね。



「メールしたり」



・・・・・・うん。



「メールの返事書いたり」



・・・・・・・・・・・・まぁ、そうだよね。



「メールしたりメールの返事書いたりメールしたりメールの返事書いたり。
メールしたりメールの返事書いたりメールしたりメールの返事書いたり」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・全然ダメだよねっ! この人っ!!

つーか悪化してるっ!? 間違いなく悪化してるよっ!!



「あなた何やってますっ!? なんでメールでしか交流してないんですかっ!!
どんだけデジタルな関係に終始してるんですかっ!!」



なので、さすがに心配になってお母さんみたいにお説教をスタートしたりするわけですよ。あははは、展開おかしいなぁ。



「なんでリアルタイム通信とか送ってないんですかっ!!
どうせならそっちで顔見て話してくださいよっ!!」

「だってっ! 通信したら迷惑かもしれないだろっ!?」



力いっぱい力説したっ!? つか、本格的にダメな人じゃないのさっ!!

発言がすでに20歳間近の人間から出ているとは思えないしっ!!



≪・・・・・・そんなことは初等部の子どもも言いませんよ≫

「大丈夫、なのはと僕の間にはしっかりとした絆が」

「しっかりしてないからっ!!回線の使用料金滞納したらあっさり切れる絆ですよそれっ!!」



ここは『電話会社の都合』とでも解釈してもらえると、色々と楽しい事になると思われます。



「つーかなんてメル友っ!? いやもうメル友ですよそれっ!!」

「いいじゃないか別にっ! 返事はちゃんと来てるんだしっ!!」



・・・・・・いや、なんつうか・・・・・・ねぇ? 今年20歳でそれはアウトでしょ。

とりあえずアレだ。痛む頭を軽く右手で押さえて首を横に振りながらも、僕は聞いてみることにする。



「えー、ちなみに返事が来るのが徐々に遅くなってるとか、なんか文面が適当になってるとかは?」



今言ったのは、相手がメールを迷惑に思ってる危険サインなんだけど・・・・・・ユーノ先生は首を横に振った。

まぁ、横馬に限ってそれはないか。そう考えると、相手に恵まれていると思えるから不思議だよね。



「大体、君は人の事を言えるの?」

「というと?」

「フェイトとはどうなってるのさ。まぁ・・・・・・アレだとは思うけど」



・・・・・・あれ、もしかして知らない? なんか、本気で気の毒そうな顔してるし。



「まぁ、アレだよ。頑張ってね」

≪いや、それはむしろあなたですから。というか、マスターに負けてますよ?≫

「・・・・・・え?」

≪本気で知らなかったんですね≫



きっとこれは今のユーノ先生にとっては劇薬だよね。まぁ・・・・・・頑張ろうか。

劇薬なら、きっと状況を変える爆弾になるよ。うん、良い意味か悪い意味かは分からないけど。



「えっと、実はですね。かくかくしかじか・・・・・・というわけなんです」



そしてユーノ先生は、リアルに数分間『orz』な体勢になりました。

なお、テーブルには着席しているので机に突っ伏してそんな感じです。



「・・・・・・あー、ユーノ先生? そろそろ元気出してもらえませんか? ほら、人目って大事ですし」

「ね、世界なんてこんなはずじゃなかったことばかりだよね」

「なんですかいきなりっ!!」

≪そんなにショックですか≫



うーん、完全にダウナー入ってしまった。どーしよーかこれ。というかさ、アレなのよ。

僕に対して『裏切り者め』ってオーラ出してるのよ。ねぇ、これはやっぱり理不尽なんだよね。



「でも、どうしよう」

「・・・・・・そ、そうですね」





あー、どうすりゃいいのさ。普通にはアドバイス出来ないよ? 横馬は難攻不落な要塞も同然だし。

でも、それでも分かる事がある。ここで『じっくりやってください』とかはアウトなのよ。

そんな事言ったら、この人は今以上にじっくりいく。メル友どころか、元旦に年賀状貰っただけで安心しそうだし。



てゆうかさ、現時点でも『じっくりやってください』だよ? 言うなら『いのちをだいじに』だよ?



もしくは『まほうはつかうな』だよ。そのために横馬というダンジョンボスの前にすら行けてないわけですよ。





「ここは作戦変更ですね。『いのちをだいじに』とか『じゅもんをせつやく』ではダメです。
『みんながんばれ』や『いろいろやろうぜ』でも、横馬の防御力の前には突破出来ない」

「・・・・・・なんでいきなりドラクエで例えちゃうのかなッ!? いや、分かりやすいけどっ!!」

「なので、ここは攻撃的に『ガンガンいこうぜ』がいいとは思います。でも・・・・・・うーん、ちょっと怖いなぁ」

≪そうですね。あんまりにしつこ過ぎると、今まで蓄積してきた友情ポイントというHPが一気に消耗される危険があります≫





ここが恋愛の難しいところなのよ。『ガンガンいこうぜ』ではメタルスライムの如く逃走してしまう。

悲しいことに現実ではRPGのモンスターと違ってこの世の全ての女性に『にげる』の選択肢が存在してるのよ。

つまり、メタルスライムのようにあっさり逃げられる事の方が多い。現実で言うとスルーだね。



そしてまた遭遇するために、その出現ポイントの近辺をうろうろうろうろするわけですよ。



ただ、しつこ過ぎると今度は『ストーカー度』というマイナスポイントが蓄積。それが一定量超えるとバッドエンドだよ。





「どくばりでもあればいいんだけどね。上手くいけば倒せる」

「・・・・・・そ、そういうものなの?」

「そういうものですよ。僕だってフェイトに対して8年に渡って徐々に徐々にアプローチという名のどくばりを打ち込んだんです」

「恭文君、その言い方やめない? 普通に犯罪チックだよ」

「それもそうですね」



でも、横馬の場合はどくばりの攻撃力を無効化するシールドがあるしなぁ。

それを破壊するところから始めないとダメか。うーん、でも・・・・・・どうすりゃいいの?



≪ここは発想の転換でしょ≫

「え?」

≪高町教導官のスルーバリアを私達が破壊するのではなく、向こうが破壊したくなるようにするんです≫



アルトの言った意味を考えて・・・・・・ユーノ先生と顔を見合わせながら、僕は気づいた。



「あ、なるほど。ユーノ先生に興味を持ってもらおうと」

「えっと、あの・・・・・・どういう事かな」

≪ようするに、あなた達は長い間一緒に居ることでマンネリ化してる部分があるんですよ。
互いに理解し合っているがゆえに、どこか相手の事を『知っていて当然』みたいに思っている≫





そこが横馬のバリアを強固にしている理由でもあるのよ。・・・・・・ここはフェイトもだったらしい。

フェイトもお話の中で教えてくれた。付き合いが長くて、これまで沢山話してきたからどこかでそう思ってたって。

でもそういうのが勘違いだって気づいて、それがあのお泊りでのアレコレに繋がったみたい。



僕とフェイト以上に付き合いのある横馬とユーノ先生がそうなってない理由は、実はあんまないのよ。





「まぁ簡単に言うと、横馬の知らないユーノ先生の魅力を見せつければいいんです」

「魅力って・・・・・・例えば?」

「イメチェンですね」

「イメチェンっ!?」



僕はユーノ先生の驚きに対して、頷いて強く肯定する。・・・・・・なんにしても爆弾は必要なのよ。

横馬の興味を今よりも惹きつけるだけの爆弾が。それがイメチェン・・・・・・イメージチェンジ。



「例えばユーノ先生が髪型を変えるだけでも、一つの変化じゃないですか。
その長い髪をバッサリ切ってショートにするとか。で、当然横馬は気づきます」

「ま、まぁ・・・・・・目立つしね」

「そうすると『ユーノ君、髪切っちゃったのっ!? えぇっ! あの・・・・・・どうしてっ!!』みたいな感じになる。
そこから『まぁ、ちょっとね。心境の変化ってやつかな。・・・・・・うん、色々あったんだ』みたいな話になる」

≪そこからまた色々話が発展していくわけでも。もちろんあなたの努力は必要ですけど≫



なお、ここにはユーノ先生の努力も必要なのを忘れてはいけない。

別に『ね、僕の事見てよ。僕ってこんな・・・・・・ね? すごいでしょ』ってひけらかす必要はないけど、それでもだよ。



≪あとは立ち位置ですね。もうちょっと作品的に目立つポジションに立たないとだめでしょ≫

「あー、それは言えるね。ユーノ先生、やっぱり距離感が開いちゃってるもの」

「いやいやっ! 作品的ってなにっ!? あの、話おかしくなってないかなっ!!」

「よし、ちょうど銀魂っていう参考資料を入手したばかりなんで、それを元にユーノ先生のリリカルなのはでの立ち位置を改善しましょう」

「参考資料ってなにーーーーー!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いいですか? ぶっちゃけちゃえば今のユーノ先生の立ち位置はYum chaです」

「や、やむ・・・・・・はい?」



いつの間にか始まってしまっていた講義の初っ端から、僕は軽く混乱する。

え、てゆうかなんで表記が英語? これはあれかな、一種の規制なのかな。



≪リリカルなのはではインフレの波はありませんでしたが、それでもですよ。
あなた、数あるキャラクターの中に埋もれちゃってるんですよ。だから影が薄い≫

「そ、そんな事ないよっ! そりゃあ出番は少ないけど、僕だって後ろで頑張って」

「・・・・・・ユーノ先生、受け入れてください」



恭文君が慰めるような顔で僕の右肩をポンと叩く。なんだろう、それが無性に腹立つんだけど。



「アニメとか漫画を見てて視覚的に、そして立ち位置的に前に出ていないキャラは、どうしても前に出るキャラに食われるんです。
そしてユーノ先生の場合、StSだと外見からしてキャラとしての印象が薄い。というか、もう見た目から目立っていない」

「いやいやっ! この髪とメガネっ!! これだけでも十分インパクトあるでしょっ!!」



なお、話が色々おかしい方向に進んでいるのとかは、僕は気づいていなかった。

だって、僕だって頑張ってるのに『印象が薄い』とか言われたら嫌だよ。



≪分かってませんね。・・・・・・では、図にしてみましょうか≫



アルトアイゼンがそう言うと、僕の目の前に空間モニターが立ち上がる。

そこに映るのは・・・・・・え、シルエットだけのみんな?



≪いいですか。この人が言ったのはこういう事ですよ。シルエットだけで誰が誰かとか分かるじゃないですか。
アニメでメインを張るキャラは基本こういう形になっています。まぁ例外もありますが≫



そして、映像の一番真ん中のシルエットの上に赤い点滅する矢印が生まれる。

その矢印は下・・・・・・つまり、そのシルエットの人物を指している。



≪ユーノ先生、今矢印が指している人が誰か分かりますか?≫

「えっと、なのはだよね」



うん、分かるよ。シルエットでも特徴的なサイドポニーが・・・・・・あれ?



≪正解です≫



そしてそのシルエットが影ではなくて一つの人物を明確に移す絵になる。

確かになのはだ。地上部隊の制服を着用しているなのはだった。



≪では次はどうでしょう≫



指されたのは、なのはの隣のシルエット。えっと・・・・・・あ、これも分かる。

シルエットだけでもグラマーだと分かる体型に、長い髪の下をリボンで結わえてる。



「フェイトだね」

≪正解です≫



そして、先程と同じようにフェイトの姿が浮かび上がってくる。・・・・・・あれれ?



「あのアルトアイゼン」

≪気づきましたか。つまりはそういう事です。・・・・・・つまりあなたは、シルエットにした場合全く目立たないんですよ≫

「えぇぇぇぇぇぇっ!? い、いやいやっ! だから髪とメガネ」

「ユーノ先生、シルエットだとメガネは映りにくいですよ。てゆうか、多分映らないでしょ」



・・・・・・そう言えばっ! え、じゃあこれはダメなんだっ!!

で、でも身長があるよっ!? 髪の流さもあるし、それで区別が付くんじゃないかなっ!!



≪きっと今あなたは身長や体型でどうにかなると思っているでしょうが≫

「なんか心読まれてるっ!?」

≪残念ながら、それは無理です。こちらをごらんください≫



そして映し出された映像は・・・・・・あれ、なんか似たような影が二つ。

髪が長くて、スーツを来て・・・・・・そこだけは分かるけど、あとはさっぱり。



「それ、ヴェロッサさんとユーノ先生です」

「僕とアコース査察官っ!? ・・・・・・あ、確かに体型が割合近いかも」



アコース査察官の方が背が高いし髪を結わえてはないんだけど、シルエットだけだとやっぱり分かりにくい。

・・・・・・あぁそうか。印象が薄くなるって、似たような外見の人が居るとそうなりやすいんだ。



「例えばフェイトだと髪の先を結わえるとか、体型とかそういう部分ですね。
はやてだとショートカットに僕より小さめな身長とか。なお」



あ、また映像が変わった。今度はツインテールの二人組。

えっと、右がなのはで左がフェイトかな。髪型は同じだけど、差異がある。



「ユーノ先生、どこで見分けました?」

「武装関係かな。まず二人ともデバイスの形状が違うし、あとはフェイトにはマントがあるから」

「そうです。まぁこういう言い方はバルディッシュ達に悪いですけど、その人物の身につけてるもの・・・・・・アクセサリー関係も、印象強化に繋がります」

≪つまり、単純に影にしちゃうとあなたは本気で誰が誰だか分からなくなるんですよ。
外見が全てではありませんが、外見から作っていくのは決して間違いではありません≫



そこがさっきのイメチェンになるんだね。こう、僕自身を変える勢いでイメチェンして・・・・・・印象を強くしようと。

結果的にそれでなのはの興味を引いて・・・・・・あぁ、それならなんとなくだけど分かるよ。



「というわけでユーノ先生、これを見てください」



恭文君がそう言ってから映し出されたのは、麦わら帽子を被ってノースリーブのシャツに膝までのパンツを履いた子。



「・・・・・・あ、これはワンピースのルフィだね」

「正解です。主役級だと、こういう風に奇抜な形ではないけど一目で分かるデザインになっています。
なのはのサイドポニーや子どもの頃のツインテールだってそれじゃないですか」

「じゃあ僕の目指す方向は」

「当然ですけど、クロノさんやヴェロッサさんに六課の男性隊員達にレジアス中将。
グレアムさんに恭也さんに士郎さん、スカリエッティにも被ってない形です」

≪ということで、次を見てください≫



弾けたような髪型に道着を来た男の人。なお、すっごく見覚えがある。

というか、この人は世界的に有名だもの。分からないはずがないよ。



「あ、これは分かるよ。GOKUだね」



あ、アレ? 僕も英語表記? いやいや、なんかおかしくないかな。



「違います」

「え、違うってなにっ!? だってこれごく・・・・・・あ、もしかして子どものGOTENかな」



僕だってこの作品についてはすごく知ってるもの。というか、なのはと地球に居た時に大好きで再放送を見てた。

でも、恭文君はまた首を横に振った。・・・・・・なら、劇場版とかテレビスペシャルに出てきた方々? でも服が違うし。



「いいですか、正解は」



そして、シルエットが一つの絵になった。そして・・・・・・僕は固まった。

だって髪が僕と同じで、顔が僕と同じで、なおかつ体型も僕と同じくらいだったんだから。



「次回からのユーノ先生です」

「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「・・・・・・なにか問題でも?」

「大ありだからっ! その、えっと・・・・・・確かに被ってないよっ!?
うん、リリカルなのはだと誰にも被ってないねっ! でも、それでもこれはダメだからっ!!」



だから首を傾げないでっ!? 普通にこれはアウトなんだからっ! 絶対だめなんだからっ!!



「これは他のにかぶっちゃってるんだよっ!? てゆうか、なのはもこれ知ってるからダメだよねっ!!
普通に僕は痛いコスプレした人になっちゃうしっ! てゆうか、こんなので継続登場なんて嫌だー!!」

≪大丈夫ですよ。知らないっていう風にしちゃえば≫

「そうそう。設定の矛盾や改変なんて、1年以上続く作品だったら普通にどこにでもある事ですよ。
それでいちいちガタガタ抜かすなんざ、ケツの穴が小さい証拠ですよ?」

≪その通りです。例えば≫

「例えなくていいからー! てゆうか、それは色んな意味でアウト発言だよねっ!?」



・・・・・・だからどうしてまた首を傾げるのっ!? しかも傾げ過ぎて頭が床と平行になってるしっ!!



「うーん、アルト・・・・・・どうしよう。ユーノ先生わがままだよね」

「え、僕が悪いのっ!? これは僕が悪いって事になってるのかなっ!?」

≪というか、これがダメならあとはいばらの道しかありませんよ? あなたには無理だと思いますけど≫

「これだって十分いばらの道だよねっ!? いいや、普通に針地獄も同然だしっ!! ・・・・・・てゆうか、他の手段があるの?」

≪あります。ここからあなたはパワーアップして、スーパーユーノになるんです≫



アルトアイゼンの言葉に合わせるようにして、画面の中でGOKUのコスプレをしていた僕が変化した。

・・・・・・というか、スーパーsaiya人っ!? ちょ、ちょっと待ってっ! 普通に僕はこんなのになれないからっ!!



「いいですか? ユーノ先生が後方に下がった事は、実は印象が薄くなる要因の一つになってるんです」

「・・・・・・どういう事?」

「例えばなのはとフェイトです」



あ、また画面に映像が出てきた。えっと、子ども時代のなのはとフェイトだね。



「なのはとフェイトは色々やり合って、結果的に和解してその後親友になりました。
そしてその後は師匠やシグナムさん達守護騎士メンバーやはやてです」


あ、そこにはやて達が追加された。それでまた次は・・・・・・このシルエットは、恭文君?



≪この人も同じパターンではありますね。最初の時にフェイトさんや高町教導官とやり合いましたから。
そして、これはジャンプやその他のバトル作品の王道とも言えるパターンです。いわゆるジャンプシステムですね≫



あ、画面に・・・・・・えっと、Yum chaにTenshinhanにPiccoloにVegetaだ。

とにかく恭文君やアルトアイゼンの言っている意味を考える。つまりその・・・・・・え、どういう事?



≪この場合、最初は敵だった存在が中盤または最終局面や次回作で味方として登場。
元々の主人公や仲間達と共闘していくというパターンです。あぁ、ポケモンもコレですよね≫

「それは絶対違うんじゃないかなっ!? アレはゲームシステム的にそうならざるを得ないでしょっ!!」

「ユーノ先生、細かい事は気にしちゃいけません」



気になるよっ!? ポケモンとジャンプシステムは絶対別問題になるんだからっ!!

・・・・・・あ、なお僕はなのはが夢中になってたのを見てたから知ってるんだ。そこはよろしく。



「そしてその場合、以前より強大な敵でなくてはいけないんです。そうしないと話が盛り上がらないですから。
そしてその強大な敵が仲間になって、また強大な敵が出てきて戦って仲間になって」



そして、ぐるぐると画面の中で赤い縁が回転する。

でも・・・・・・あれ? なんだかYum chaとTenshinhanがハブられてる。



「バトル物でこのシステムを導入すると、どうしてもハブられて戦闘の解説役に回るしかない方々が出てくるんです。
劇的にパワーアップとかしない限りは、どんどん強くなる敵に全く太刀打ち出来ないですから。まさに居るだけの存在」

「というか恭文君、それ・・・・・・強さのインフレでもあるよね」

「そうです。ですから近年では、新しい敵が出てくる場合単純に前回の敵より強いとかではありません。
強さは同じくらいでも何か特殊なアイテムがないと、その敵に対応出来ないという方向性も模索されています」



そのアイテムがあって初めて対抗出来るしその相手を止められる・・・・・・と。まぁ、それならまだなぁ。

最終的にみんな地球とか壊せるようになるのは、さすがに怖いもの。



≪当然ですけどその中で解説役などしていては、印象は濃くなりません。
後方支援で濃くなるなら、また別のやり方が必要なんです≫

「例えば?」

≪機動六課のアレコレで言うなら、前線を支援するオペレーターをやるとかですね。
もしくは事件の裏で蠢く陰謀に、味方が戦っている最中に一人立ち向かうとか≫



なるほど、前線が手が届かない・・・・・・というか、前線以外のところでの見せ場が必要か。



「・・・・・・あれ、でもそれだと僕の検索ってそうじゃないの? ほら、色々見せ場だし」

≪いや、だからあなたの印象そのものが薄いせいですよ。そのせいで検索そのものの効果性も薄くなってるんです≫

「僕のせいなのっ!?」

≪「はい」≫



なんか即答されたっ!? あの、えっと・・・・・・お願いだからもうやめてー! 僕だってさすがに傷つくんだからっ!!



「あとは無限書庫に事情込みとは言え、ほとんど引きこもってるからですね。
・・・・・・やっぱり自分の仕事をもうちょっと減らしましょうよ。ちょくちょく顔見せに来るだけでも違いますから」

「・・・・・・そこを言われると辛いなぁ」



恭文君は、僕が他の人の分の仕事までやってると思っているらしい。そして・・・・・・それは事実。

なんというかこれでも司書長だからさ。司書達には僕みたいな無理とかはあんまさせたくないんだ。



「で、話を戻しますけどここでユーノ先生が再び前線に出るようになるのも、選択肢の一つなんですよ」

「僕が? ・・・・・・でも、僕はもう10年近く現場になんて出てないし」

「だからいばらの道って言ったじゃないですか。ぶっちゃけ次回から」



そして、画面に再びあの格好の僕が出た。ただし・・・・・・スーパーSaiya人3な僕になってる。



「コレになる方が遙かに楽ですよ? 外見のチェンジだけで済むんですから、変身魔法でもOKですし」

「それでも嫌だよっ! というか、どうして一気にパワーアップしてるのっ!?」



と、とにかく話を纏めよう。・・・・・・いやいや、どう纏めればいいのっ!? なんか主軸から外れてないかなっ!!

どうしたらなのはとそうなれるのかを聞いているのに、なんでこんなワケの分からない話になるのさっ!!



≪とにかくアレですよ、現状だと『ガンガンいこうぜ』だろうと『めいれいさせろ』だろうと無理です≫



僕が頭抱えて混乱している間に、なんかもう断言されてるっ!?



≪普通に今より距離感を詰める必要があります。あとはイメチェンは必須ですね。だからこれいきましょう≫



そしてまた画面の中の僕が切り替わる。というか、金色の体毛の大猿になった。



「だからどうしてこれっ!? もうこっちの方向はいいからっ!!」

「ユーノ先生、どうしてそうわがままなんですか。アレもだめコレもだめって、子どもですか?
それともお母さんですか? すっかりあの子のためにお母さんキャラが板についたんですか?」

「あの子って誰かなっ! あと、僕が悪いみたいな言い方はやめてくれないっ!?
これはね、当然の発言だからっ! ツッコんで当然なんだからっ!!」










・・・・・・だからまた首を傾げないでー! 普通に頭頂部が床に向いてるよっ!? 身体からすごい曲がってるからー!!





でもあの・・・・・・イメチェンや印象を濃くするというのは分かったけど、どうすればいいのっ!? 恭文君が言ったのは論外だしっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ユーノ先生がとても不満そうなので、僕は妥協案を出した。それは、別の人に相談するというもの。





なので、ちょうどお昼休みで外回り中に公園でハムサンドをかじっていたあの子に通信をかける。










「・・・・・・というわけなの。でさ、ユーノ先生が本当にわがままで困ってるんだよ。
スーパーユーノ人になるのも、地球割れるくらいに強くなるのもだめって言うんだよ? もうどうしろって言うのさ」

『・・・・・・あの、ユーノごめんね。ただあの・・・・・・その、スーパーユーノ人はいいんじゃないかな。かっこいいと思うし』

「フェイトも落ち着いてよっ! これ何か知ってるよねっ!? 絶対知ってる上で言ってるんだよねっ!!」



そう、フェイトである。フェイトが若干呆れ気味に僕を見るのはどうしてなんだろう。僕達、間違った事言ってないのに。



『とにかくイメチェンは私もいいと思うな。ほら、前線に出れるようになるのはその・・・・・・ちょっと大変だと思うの。
ユーノは後衛としては本当に優秀だけど、多分実戦での勘が相当に錆びついてると思うし。ヤスフミの言うように楽じゃないと思う』

「でも、イメチェンならすぐに出来るからOKって感じかな」

『そうだね。なのははユーノの事は良く知ってるし距離感も近いから、本当にちょっとした変化でもいいかも』



さすがはフェイト。なのはの親友だからこういう時に頼りになる。だからユーノ先生も『なるほど』という顔をする。

でも、ちょっと不満だなぁ。僕のアイディアだって中々だと思うのに。うーん、何がいけなかったんだろ。



「ちょっとした変化・・・・・・うーん、何がいいだろ」

『やっぱり断髪かな』

「そうだね。それしかないよね。丸坊主にしちゃいましょうよ」

『でも、丸坊主は冬だしちょっと寒いんじゃないかな』

「あの、二人ともっ!? なんでそう極端な方向行くのかなっ! さすがにそれはやり過ぎじゃっ!!」



いや、やり過ぎじゃないとどうにもならないでしょ。爆弾の火力は高ければ高いほどいいんだし。



『でも髪型を変えるのはいい方向だと思うんだ。ほら、ユーノはずっと伸ばしてたし』

「まぁ今までの話でそういう変化でなのはの興味を引きつけるのは僕も分かったけど・・・・・・そこまで?」



どうもユーノ先生はここの辺りで色々疑問があるらしい。なので、僕は通信画面の中のフェイトと顔を見合わせて、頷き合う。



「じゃあユーノ先生、自分の事じゃなくて他の人で想像してみてください」

「他の人?」

『例えばなのはみたいな元々髪の長い子が、突然にはやてくらいの長さに切ったらどう思う?
あとははやてが突然に今までのショートをロングにしようとか言い出したら』



フェイトにそう聞かれてユーノ先生が少し目を閉じて考える。

そして数秒後、瞳が勢い良く開いた。どうやら答えが出たらしい。



「気になるかも。というか・・・・・・あ、髪を切っただけなのになんか気になる」

『でしょ? 私も中学の時の同級生の子や知り合いの捜査官の人で経験あるんだけど、そういうものなんだよ。
特に女の子はそう。髪型を思いっきり変化させたい時って、失恋とかそういうのが原因で自分を『変えたい』って気持ちが強い時だから』

「・・・・・・なるほど」



ただ、問題はあの砲撃バカにそこまでの知能があるかどうかだけど・・・・・・ここは僕は言わない事にしておく。

うん、空気を読むのよ? 空気を読むのって、とっても大事なんだから。



『私だってそうなんだから。なんだかこう、髪を思いっきり肩くらいまで切りたいなーって』

「「えぇっ!?」」



ユーノ先生と一緒に、驚きの声をあげる。だってその・・・・・・そこは聞いてないもの。



「えっとあの、フェイト・・・・・・どうしたのっ!? いや、恭文君と一緒に僕もびっくりしちゃったけどっ!!」

「そうだよっ! あの、なんでっ!?」

『うーん、ヤスフミとこれからまた0から初めていくって思ったからかな。
・・・・・・うん、そこが理由なんだ。気分を変えて、前に進みたいなーって』



画面の中のフェイトが僕を見て微笑んでくれる。というか、頬を染めて・・・・・・か、可愛い。

普通に破壊力が大きいよ。というかあの、素敵過ぎ。



『まぁ私の事は例え話として考えて欲しいな。でもほら、ユーノとヤスフミだって今本当に驚いたでしょ?』

「・・・・・・あ」

『そういう事だよ。もちろんここから話を発展させて頑張っていくのはユーノの努力次第。
だけど、ヤスフミの言うように爆弾にはなると言うのが、私の結論かな。ね、ヤスフミ』

「そうだね。というかフェイト、その質問はちょっと意地悪だよ。僕も一緒に驚いたから、もうそう言うしかない」

『あ、それもそうだね』



とにかく、ユーノ先生が納得してくれたのでこれでよし。いやぁ、フェイトの通信のおかげでようやくだよ。



『あとはどういう方向でイメチェンするかだね。今までのユーノのイメージに沿って、だけどインパクト重視。
あんまりにも変わり過ぎちゃったら、さすがになのはもびっくりし過ぎちゃってそれどころじゃないもの』

「まぁそうなるよね。・・・・・・あれ? あのフェイト、だったらさっきのアレコレは」

『・・・・・・え、スーパーユーノ人はだめなのかな。結構いいかと思ったのに』

「ダメに決まってるよっ! なんでそうなるのか僕は色々疑問なんだけどっ!!」





とにかくこれをきっかけとして、ユーノ先生はイメチェン計画を立てる事になった。

まぁアレだよ、やる気になってくれたのが一番の成果かも。

フェイトもユーノ先生のメールしかしてない現状を聞いて、ちょっと泣いたし。



ただ、僕達は気づいていなかった。僕達の計画には一つ、大きな難題が残っているのを。





≪・・・・・・イメチェンのための時間、取れるんですが? 現状でも相当忙しいのに≫

『「「・・・・・・あ」」』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



色々と楽しいお話も込みなお昼休みが終わって、私は改めて外回りを再開。





自分の車でハイウェイを進みながら・・・・・・ちょっと考えた。






なので、同行してくれている助手席のシャーリーにちょこっと聞いてみる。










「ね、シャーリー」

「はい、なんでしょ」

「私・・・・・・いきなり肩くらいまで髪を切ったら、変かな。もしくは真・ソニックはもう封印するの」

「はぁっ!? ど、どうしたんですかっ!!」



あれ、なんかすごい驚かれてる。・・・・・・あ、ちょっといきなり過ぎたかな。



「あのね、実はかくかくしかじか・・・・・・というわけなの」

「イメチェン・・・・・・あぁ、それでなんですか。察するに、自分がやるならどうなるかとか」

「うん」



本当に小さい頃からずっとこの長さをキープだから。自分でもこの髪は気に入ってるんだ。

でも・・・・・・なんだか少し考えた。思いっきり切るのも選択ではあるんだよね。



「でも、真・ソニックは?」

「・・・・・・ヤスフミが六課に来た時にね、言われたんだ。水着みたいだって。
それで母さんやアルフにクロノになのはにはやてにも聞いたんだ。そうしたら・・・・・・肯定されちゃって」



それで今年20歳なのにそれは『痛い』とまで言われた。正直ここはショックだった。

だからその、色々納得はし切れてないんだけど封印かなと。



「・・・・・・納得しました。ちなみにフェイトさん、私の意見・・・・・・聞きます?」

「やめておくよ。もうなんとなく答えが分かってるから」





分かってる。きっと私は『痛い』子なんだ。うぅ、ショックだよ。でもどうしよう。

真・ソニックの形状は私の速度を活かすためのものだし・・・・・・うーん、迷うなぁ。

この間の特別講習で、魔法以外の戦い方も本格的に勉強したくなった。



でも、それと同じくらいにこっちの方もなんとかしたくなった。だってあの・・・・・・アレ?



あの、私なんで真・ソニックを着るのが『恥ずかしい』とか考えてるんだろ。ちょっと前まで平気だったのに。





「ただフェイトさん、髪の事なんですけど」

「あ、うん」

「切るのは簡単ですけど、伸ばすのは時間かかりますよ?
特にフェイトさんの場合は長さが長さですし、年単位ですから」

「まぁそうなんだよね」



大体お尻くらいまであるもの。でも・・・・・・うーん、ちょっとやってみたいなぁ。

ヤスフミだってイメチェンに近いことをするんだし、私もそうしてみたい。



「切るならある程度長さを抑えて、様子を見つつ徐々にでいいんじゃないでしょうか。
切ってから後悔しても遅いわけですし。あ、ちなみに私は短くしたい時はそうしてます」

「あ、そう言えばそうだったね」



シャーリーとの付き合いももう4年になるから、よく知ってる。うん、確かにそうだ。

たまに背中の中程くらいまで短くなるの。そういうので女の子のおしゃれを楽しんでるらしい。



「あとはバリアジャケット時の状態ですか? 長さが中途半端だと、ツインテールも似合わなくなっちゃいますし」

「確かに・・・・・・ショートカットだとそのままでOKだけど、それより長いとそういうのも変わってくるんだ」

「はい。まぁ悩みどころですけど、ここは女の子の特権でもありますよねー」

「そうだね。うん、私達だけの特権だよ」










うーん、こう考えると色々楽しいなぁ。私、やっぱり女の子・・・・・・なんだよね。うぅ、やっぱり枯れてたのかな。

それはちょっと寂しいな。もうちょっとおしゃれとかも頑張りたいかも。・・・・・・次のデートの時までに、しっかりとだね。

またデート時間を使って水着とか私の服装関係の手入れももったいないもの。だから頑張りたい。





・・・・・・あの、えっと・・・・・・だ、だめじゃないけどその・・・・・・これはおかしくないかな。

だってあの、これだと私とヤスフミはその・・・・・・現段階で恋人同士も同然だよ?

それは迷惑だと思うんだ。私、まだちゃんと答えを出してないし。というか・・・・・・どうしよう。





ちゃんと気持ちに応えたいの。絶対に逃げたくない。断るという選択も出てこない。





でも、お付き合いというのもよく分からなくて・・・・・・私、あの子と本当にどうしたいんだろ。




















(第29話へ続く)






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