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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース31 『フィアッセ・クリステラとの場合 その1』



幾何学色の空の上、金色の髪の女の子と戦っているあの子は、ただ強く前を見据える。

見据えて、覚悟を決めて自分を貫き通す。あの子は、私よりも15歳も年下。だけど、凄く強い子。

ちょっとした事件がきっかけで知り合って、仲良くなって・・・・・・いっぱい繋がって。





それで将来を約束し合った。まぁ、色々な条件付きなんだけど。





でも、その前にあの子は・・・・・・向き合って立ち向かうべき障害を捉えた。










「・・・・・・・・・・・・認められて、どうするつもりさ」



言いながら、右手の刃を強く握り締める。握りしめて、言葉を続ける。



「組織や世界から認められるために頑張って、そうして認められたその先は?
みんなが認めてくれた『自分』が出来上がったその先は? フェイト、その先は考えてるわけ?」

「そんなの決まってるよ。もっともっと頑張る。沢山の人が私・・・・・・ううん、違う。
私の居場所を、私達の仕事を好きになってくれるように、一生懸命に」



あの子は答える。必死にあの男の子に向かって、伝わるように・・・・・・分かってくれるようにと願いながら。

だけど、伝わらない。そして一部の人を除いて全員が気づいた。あの子・・・・・・フェイトちゃんの言っている事がおかしいと。



「その先は」

「だから、もっと頑張って私達の世界を良くするために」

「ならその先は?」

「・・・・・・ヤスフミ、いい加減にして。なんの意味があるの?」



フェイトちゃん、意味ならあるよ。あなたの理想は・・・・・・夢は、歪んでいる。どうして自分で気づかないの?

そこにはあなた自身が何もない。あなたはそれを『自分の夢』と言うかも知れないけど、それは多分違うよ。



「フェイト、フェイトは強くなんてなってないよ。いいや、むしろダメになっている」

「え?」

「フェイトの夢は、理想は・・・・・・全部誰かに『認められる』事が前提だ。
それがなくちゃ、フェイトは何の理想も描けないし貫けない」



一部の人達が表情を変えて、あの子を糾弾するような視線を送る。でも、きっとすぐに気づく。

フェイトちゃんが今、何を『理想』として言ったのか・・・・・・すぐに気づく。



「そんなの当たり前だよ。組織や世界、周りの人達に認めてもらうことは、絶対必要なんだよ?
そうしてもらって、初めて正しい行動で理想を貫くことが出来る。ヤスフミ、子どもみたいな事言わないで」



フェイトちゃんはとても大きな大剣を引いて、構えた。そして・・・・・・足元には金色で円形の魔法陣。



「お願い、分かって。ヤスフミは私達と同じ道に行くべきなんだよ。そうしてヤスフミも認められるようになるの。
それが大人になる事なんだよ? 組織や世界と向き合って、理不尽な事にも歯を食いしばって頑張っていく」



それは確かに一つの形。でも、私は違うと思う。フェイトちゃんは絶対的な勘違いをしている。

誰かに認めてもらうために、大人になるんじゃない。少なくとも私はそんな大人のなり方なんてしたくない。



「そうして少しずつでも居場所を良くしていくの。みんなそうしてる。なのに・・・・・・どうしてかな。
どうして『認められなくていい』って言って、逃げるの? そんな事、もうやめて」

「執務官になって、自分と同じような人を助けたかったんじゃないの?」



その子は刃を納める。視線はただひたすらに、大好きだったあの子に向かってる。

その子の言葉を無視して、ただひたすらに打ち壊すべき対象を見据える。



「そんな人が泣いてるのなんて嫌で、そんな今を変えられるように。立ち上がれるまで支えられるように。
そのために執務官になったんじゃないの? ・・・・・・僕、これを前に聞いた時に本当に素敵な夢だと思った」



少しだけ声色が優しいものに変わる。それは、あの子が非情になり切れない証拠。

全てを振り切る覚悟を決めても、それでも・・・・・・あの子はやっぱり弱いから、少しだけ振り返る。



「その話をしてくれた時のフェイト、本当にキラキラしてた。
だから・・・・・・好きの気持ちが増えた。フェイト、マジでバカでしょ」

≪今のあなたはハッキリ言って、その夢に泥を塗ってますよ。それも思いっ切り。
大人になる事を理由に、自分が本当に何を通したかったのかを完全に見失ってる≫

「もうぶっちゃけるわ。僕は・・・・・・今のお前を絶対に認めない。今のお前の在り方なんて、認めない。
例え世界中がお前を認めても、受け入れて賞賛しても・・・・・・僕はこう言い続ける。お前は人形だと」



フェイトちゃんの表情が変わる。悲しげなものからそれは・・・・・・怒りに変わった。



「お前は人様から必要とされ、認められるという『餌』が無くちゃ生きていけないガラクタ。
昔から何一つ進歩していない、最低最悪な出来損ないの不良品」

「やめて」

「だから最もらしい夢を掲げながら、心の底でずっと・・・・・・ずっと求めている。
自分を否定しない世界を、自分を認めて受け入れるだけの緩い人間達を」



フェイトちゃんは首を横に振る。振りながら歯ぎしりをしている。そうとうイラついていると見ていい。



「知ってる? マジモンの夢ってのはね・・・・・・誰に認められなくても、否定されても拭えない願いの事を言うんだ」



その言葉には確かな説得力があった。だから、フェイトちゃんも否定出来ない。

それは当然だよ。あの子は、あなたの知っているあの子よりも少しだけ強くなってる。



「誰に罵られても、貫きたいと思えるそんな強さをくれる願いが、夢なんだ。
お前のそれは夢でも理想でもない。ただ誰かに認めてもらえる『いい子』をやろうとしてるだけだ」

「・・・・・・やめて」

「母親から、組織や助けた人達に仕える対象が変わっただけ。
お前は、その人達からただ餌をもらいたいだけ。大人になるならない以前の問題だ」



どんなに否定しても、今のあなたではその言葉を振り切る事なんて出来ないよ。

だって・・・・・・事実、だよね。私も恭文くんも、あなたと同じだから気づいたんだよ?



「その餌をくれるために、『認められる』事を、居場所や必要とされる事を望む。
お前は・・・・・・人間になんてなってない。プレシア・テスタロッサから否定された時と変わらない、ただの」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」



フェイトちゃんの姿が変わった。一瞬で黒いレオタードのような姿に変わり、両手の大剣が少し形を変える。



«Riot Zamber Form»



金色の刃の先が二股になると同時に、恭文君への一気に踏み込んだ。



「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そして、衝撃が生まれる。衝撃は・・・・・・フェイトちゃんの右の腕をへし折った。

フェイトちゃんの表情が驚愕に染まる。だけど恭文君は意に介さずに、追撃をかける。



「鉄輝・・・・・・一閃っ!!」





袈裟に振り下ろされた閃光がフェイトちゃんの左の腕をへし折った。

へし折りつつも蒼い斬撃はレオタードなバリアジャケットを斬り裂き、白い肌が線のように現れる。

そして、大剣が地面に落ちる。フェイトちゃんは・・・・・・涙を流しながら、空中で崩れ落ちる。



足元に金色の魔法陣が現れてその上に乗るけど、すぐさま恭文くんが魔法を一つ発動。





≪Struggle Bind≫



金色の魔法陣の上に蒼い三角形の魔法陣が生まれて、崩れ落ちたフェイトちゃんを縛り上げる。

折れている腕にも構わずに、キツく・・・・・・フェイトちゃんの表情が、苦悶の色に染まる。



「ヤスフミ・・・・・・どう、して? どうして・・・・・・違うよ。私はただ」

「・・・・・・僕は誰に認められなくてもいい。それだけを目指す事が大人になる事だって言うなら、そんなの間違いだ。
自分がかっこいいと、素敵だと強く惹かれた形を目指すのが、夢を・・・・・・なりたい形を追いかけるって事でしょうが」



それはあの子自身がここ最近のアレコレで感じた事。そして、私自身も改めて気づいた事。

それが多分、大人になる事の一つの形。誰かに認められるかどうかなんて、きっと二の次。



「僕はただ誰かに認められるためだけに生きるのなんて、嫌だ。そして今のフェイトみたいになりたくない」

「・・・・・・ヤスフミっ! どうして、どうして分かってくれないのっ!? ただ同じようにすればいいだけなのっ!!
普通にすれば、私達と同じようにすればみんな認めてくれるっ! もうヤスフミを誰も否定なんてしないっ!! ただそれだけで」

「ガタガタ抜かすな」



少なくとも私はそんな事のためにうたいたくなんてない。そういうのは大事だけど、それだけなんて嫌だ。



「今のフェイト、すごくカッコ悪い。他人有りきな生き方しか出来ない時点で、ダメ過ぎでしょうが。
そしてそんな生き方も同様だ。僕はそんな認められるだけの人間になんて、絶対になりたくない」

≪ただそれだけのために生きていく? それで満足出来るのなんて、人形だけでしょ。
あなた、それが本気で分かってないんですか? だったら・・・・・・もう色んな意味で手遅れですよ≫

「違う、違う違う違う違うっ! 私は人形なんかじゃないっ!! ちゃんとした人間だっ!!
母さんやクロノやアルフ、それになのは達だってそう言ってくれて」

「そう言われなくちゃ、お前は人間に・・・・・・『自分』になれないわけ?」



そして、フェイトちゃんはようやく気づいた。自分が恭文くんに本気で呆れられている事に。



「お前は、どんな自分になりたいの? 認められるだけの良い子? それもいいさ。お前の選択だからな。
でも、それだけってのはあり得ないでしょ。たったそれだけ・・・・・・それだけしかない未来なんて、ゴミ同然だ」



だから呆然とした顔で首を横に振る。涙を流しながら、恭文くんを見る。

何人か嗚咽を漏らしてるけど、誰も止めない。止められるはずが・・・・・・ない。



「惨めだね。お前は組織や人に依存しない形で未来を描けない。
いつまで経っても人形だから、自分の足一つで立って、新しいこと一つ始められない」

「違う・・・・・・・違う。私は、私は・・・・・・・ちゃんと始められてる。だからここに居る」

「だったらそれは錯覚だ。・・・・・・・そんな檻の中に僕も閉じ込めようって言うなら、それごと全部ぶち壊すわ。僕の勝手で・・・・・・僕の傲慢で」



あの子は刃を振り上げる。そして・・・・・・あの子の刃に、星の光が宿っていく。



「他者から認められる事を理由に、『自分』ってやつを捨てた。そして自分から『人形』になることを選んだ。
そして自分の中の大事な決意を、夢を、なのはの言葉達を・・・・・・・お前はドブに捨てた。それがお前の罪だ」



蒼い星の光は、あの時遠目に見えた光と同じ色をしていた。



「さぁ」

≪Starlight Blade≫

「お前の罪を・・・・・・・・・・・・数えろっ!!」










・・・・・・星の光は放たれた。あの子は呆然とした顔で、斬撃を受けて吹き飛ばされた。





そしてあの子は・・・・・・泣いていた。瞳からではなく、心から涙を流し続けていた。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先の事


ケース31 『フィアッセ・クリステラとの場合 その1』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



復活しかけた闇の書の一件から少し経った。ゆかなさんのライブから戻ってきて、季節は12月に突入した。





そして僕は・・・・・・現在家のベッド。なお、別に深夜でも眠る時間でもない。ハッキリ言えば、今はお昼。





なのに僕がベッドにグッスり寝ているハメになるかというと・・・・・・理由はとっても簡単。










「・・・・・・37度5分丁度か。こりゃあ明日また病院行った方がいいな」

「そ、そうしたいですけど、今は眠りたいです。なんか凄い眠い」



風邪、引きました。それも思いっ切り熱出してます。だから大人モードなアルフさんが困った顔してるのよ。



「しかし、お前ら仲良しだよなぁ。リインも同じ状態だって言うし、風邪引く時まで一緒かよ」

「正直、今回は全く嬉しくないですけどね」

「だよなぁ。もうそこは知ってるわ」



むしろ嬉しかったらどうするんだろうと二人で思いつつ、苦笑する。とりあえずそうするくらいの余裕はある。



「それで・・・・・・シャマルさんは」

「はやてに付き合って出張中だ。・・・・・・よかったな。あの料理は食べなくて済むぞ」

「それだけは救いです」



熱があっても、シャマルさんのあの料理の事がチラつくのはこれまでの付き合いからだと思う。



「そう言えば・・・・・・アルフさん」

「なんだ?」

「フェイトが進学辞めたの、どう思ってます?」



少しだけ最近、気になっていること。そして・・・・・・最近の心境の変化の原因。

ぼんやりとした意識で聞くと、アルフさんは少しだけ困った顔で答えてくれた。



「どう思ってるって、なんだ?」

「使い魔として、家族として、いいことと思っているのかなと」

「まぁ、フェイトも強くなったし・・・・・・大丈夫とは思ってる。お前は違うのか?」

「・・・・・・フェイトが選ぶ事ですから。僕にどうこう言う権利なんてないです。ただ」



熱が出ているし、何気にアルフさんは看病モードでいつもより優しいので、僕も漏らす。



「なんか、つまんないなって。上手く言えないけどそれでいいのかなって、考えてるんです」

「その理由は?」

「フェイト、進学の事とか話してる時は楽しそうでした。でも・・・・・・そういうの、最近見えなくなって」



アルフさんも心当たりがあったのか、ただ静かに頷いてくれた。さすがは使い魔、そういうの分かるらしい。



「だけど、なんかダメなんです。それがなんでかも分からないし、話すにしてもどう切り出したらいいのかとかさっぱりで。
・・・・・・リンディさん辺りは嬉しそうというか歓迎ムードですけど、僕は・・・・・・うーん、なんでだろう。うー・・・・・うーん」

「あぁ、考え込むなって。熱余計に上がるぞ? ・・・・・まぁアレだ、そこの辺りはまたアタシ達で協議する事にする。
ただ、そこまで心配しなくていいだろ。フェイトはフェイトなりに、大人のなり方ってのを考えただけなんだからさ」



そうなのかな。大人になるって・・・・・・今のフェイトみたいな感じなのかな。

それはなんだか違うような・・・・・・うーん。あぁもういい、やめとこ。今はぐっすり休んで後で考える。



「まぁ、後で考えます」

「そうだな。じゃあ、アタシはリビングに居るから。何かあったら呼んでくれていいからな」










こうして、僕はまた飲んでいた薬のおかげでグッスりと眠りについた。





最近起きている心境の変化に、色々と悩みつつもゆっくりと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



大人のなり方かぁ。まぁ、アタシはフェイトが幸せならそれで充分なんだ。

大事な仕事があって、居場所があって、家族が居る。もう何も言う事がないくらいだ。

だから高校に行かないのも納得はする。ただ・・・・・・アイツはちょっと違うみたいだ。





恋愛感情ってやつがあるせいなのかな。もしかしたらアタシに見えてないものが見えてるのかも。

・・・・・・これでも、一応認めてるんだぞ? お母さん達にあんま迷惑かけたくないから、厳しい事も言うけどさ。

でも『つまらない』・・・・・・確かに高校に入るかどうか、真剣に考えてる時の楽しそうな感じはなくなった。





でも、それが大人になるってことで・・・・・・うーん、アタシが使い魔だからかな。こういうのはよく分からないなぁ。

なんて考えていると、部屋の中で音が響く。それは我が家のインターホンの音。大人モードで一人でリビングに居たアタシは即座に反応。

ソファーから起き上がって、玄関にそそくさと行く前にインターホンと繋がっている端末で来客が誰かを確認。





玄関へ続く廊下に入る前に、装置があるからそれを操作して・・・・・・お、画面が出てきた。










「はい、ハラオウンですが」

『あのすみません、恭文くんのお見舞いに来ました』

「あ、はい。あのどなた様で」



言いかけて気づいた。金色の髪に空色の目に白いワンピースを着た女性には、見覚えがある。

直接の面識はないが、テレビとかで見た事がある。そうだ、世界的に有名な人だ。



「ま、まさかアンタ・・・・・・えぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



頭を撫でる感触が心地よくて・・・・・・目が覚めた。

ぼんやりとする頭を必死に働かせながら、まぶたを空ける。

そうするとそこに居たのは、僕の知っている女性の顔。





金色の髪の後ろの一部をポニーテールにして、青い優しい瞳で僕を見ていた。










「・・・・・・あ、ごめんね。起こしちゃったかな」

「・・・・・・・・・・・・ふぃあっせ、さん?」



ぼんやりとしてた頭が、一気に目を覚ます。そうだ、僕は見覚えがある。

というかこの人・・・・・・フィアッセさんだしっ!!



「フィアッセさん、何してるんですかっ!? あの、えっと・・・・・・えぇっ!!」



一気に起き上がろうとするけど、フィアッセさんに両手で優しく制された。

僕の両肩をそっと掴んで、動かないようにする。



「あぁ、ダメだよ。風邪引いてるのにいきなり動いちゃ」





いつも通りの優しい声でそう言われたので、僕はそのままの体勢になる。

ど、どういう事? これ夢じゃないよね。うん、間違いなく現実だ。

だって、フィアッセさんの感触が伝わってる。僕の知っている、優しい温かい感触。



それに、あの・・・・・・目の前のフィアッセさんの微笑みは、夢とは思えないくらいに綺麗。





≪・・・・・・フィアッセさん、少しだけ長いお休みをもらったそうなんですよ。
というか、充電期間ですか? ひと月くらいはこっちに居られるとか≫



僕が寝ながらも混乱してると、部屋の机の上に置いてあったアルトがそう言ってきた。



「あ、アルトアイゼンにはさっき挨拶して、事情説明したんだ。それで里帰りしてきたの。
恭文くんを驚かせたくて内緒で来てみたら、私がビックリだよ。風邪引いて倒れてるーって言うんだもの」

「そうだったんですか。あの、えっと・・・・・・それならあの」

「何かな?」

「帰ってください」



・・・・・・あぁ、泣きそうな顔しないでー! 違うのっ!! 色々事情があるんですからー!!



「うぅ、恭文くんが冷たいよ。婚約者なのに冷たいよー。アルトアイゼン、どう思う?」

≪最低ですね≫

「そうだよねー。本当に最低だよー」

「なんでそこでおのれも乗っちゃうっ!? 違うからっ! 風邪うつしちゃ悪いでしょうがっ!!」



フィアッセさんが『分かってるよー』とか言いながら頭を撫でてくれるけど・・・・・・まぁ、いいか。

とりあえずフィアッセさんは、ここで引くつもりはないらしい。普通にニコニコ顔で居座ってるし。



「とにかく私はしばらくこっちに居るし、アルフさんから看病の権利は横取りしちゃったから」

「はいっ!?」

「だって、婚約者として恭文くんの危機は見過ごせないよ。いっぱいいっぱい看病するね」

「えぇぇぇぇぇぇぇっ!? ・・・・・・ぐ、げほげほっ! の、喉が・・・・・・がふっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



学校が終わって家から帰ってくると、とってもいい匂いが漂っていた。そこまではいい。

アルフがワンコモードで幸せそうに、お肉を食べていた。そこまではいい。

風邪を引いてここ二〜三日寝込んでいるヤスフミが元気そうだった。そこまではいい。





でも、どうしても分からない事がある。それは・・・・・・あの、どうしてフィアッセさんがうちに居るのっ!?










「いやぁフェイト、フィアッセさんって良い人だよなぁ。アタシのために骨付き肉作ってくれたんだよ?」



そう言いながらアルフが食べているのは、ハンバーグ。というか、骨の周りにハンバーグがくっついている。

それで漫画みたいなお肉を作っていて・・・・・・いやいや、アルフもどうして手懐けられてるのっ!?



「フィアッセさん、アタシはもう婚約の事は認めました。てゆうか、アイツのことよろしくお願いします」

「うん、ありがとう。というかアルフさんは・・・・・・すごいね。こいぬ状態だとすっごく可愛い」

「あははは、ありがとうございます。あ、それとアタシはアルフって呼び捨てでいいですから。使い魔はそれがデフォなんです」

「そうなの? なら・・・・・・アルフ」

「はい、フィアッセさん」



お願いだから楽しそうに談笑しないでー! 私を置いてけぼりにしないで欲しいんですけどっ!?



「あ、フェイトちゃんの帰る時間も聞いてたから、おやつ作ってるんだ。クッキーなんだけど食べる?」

「あ、いただき・・・・・・って、違いますからっ! フィアッセさんどうして日本に居るんですかっ!!」

「なんかレコーディングとコンサートが一区切りついたんで、遅い夏休み・・・・・・じゃないな。
季節的には冬休みだな。とにかく、結構長めのお休みをもらったんだって」



お肉を味わいながら、アルフがそう補足を加えてきてくれた。・・・・・・あ、それで海鳴に来たんだ。

海鳴には幼馴染で家族としても付き合いのある恭也さん達、高町家があるから。



「大体ひと月だから、年が開けてからしばらくはこっちに居られるんだー。
それで恭文くんを驚かそうと思って内緒で帰国したら、風邪引いてるんだもの」

「で、恭文の看病するって言ってくれてさ。もうアタシもお任せしちゃってるわけ」

「お任せって・・・・・・アルフ、それいいのっ!? それだとフィアッセさんはお客さんも同然なのにっ!!」










こんな私の疑問はとっても無意味だった。フィアッセさんは本当に泊り込みかねない勢いでいた。

ただ、ヤスフミが嬉しそうなので・・・・・・そこはまぁ、安心してる。

やっぱり仲良しさんだから、病気の時の効果は大きいらしい。でも、ちょっとヤキモチを焼く。





ヤスフミ、フィアッセさんの前と私達の前とじゃあ全然キャラが違う。本当に子どもとしての自分を出してる。





私達の前ではそういう部分はあまり見せてくれないから、そこは・・・・・・かなり嫉妬してる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はい、すりりんご。美味しいよー」



と言いながらフィアッセさんが部屋に来たので、少し身体を起こしてすりりんごをいただく。

風邪を引いている時は、食欲も落ちがち。そしてこういう消化のいいものがとても嬉しいのだ。



「・・・・・・美味しいです」

「良かった。・・・・・・そう言えば恭文くん」

「はい?」

「フェイトちゃんとは・・・・・・どう?」



フィアッセさんが声を潜めて、部屋の外に聴こえないようにそう聞いてきた。

それで僕は、右手に持っていたスプーンがちょっとだけ止まる。



「実は、その・・・・・・えっと」

「うん?」



話しにくいけど・・・・・・・話しにくい事だったんだけど、それでも話した。

フィアッセさんは大事な人で、婚約者で、ちゃんと話しておかなきゃいけないから。



「フェイトの事、好きじゃなくなったんです」

「・・・・・・・・・・・・え?」










それがここ最近の一番の心境の変化。そして悩みのタネの一つ。





僕・・・・・・フェイトの事、もう恋愛対象として見ていないの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトちゃんの高校進学の事をアレコレ考えて、違和感があって」



それで気づいたら恭文くん、自分の中の『好き』の気持ちがなのはや他の子と同じになってるのに気づいたらしい。

私にはよく分からないけど、フェイトちゃんの変化の何かで気持ちが冷めちゃったのかな。



「はい。あ、もちろん嫌いになったとかじゃないです。それだけは絶対に」

「うん、分かってる」



そしてその変化は多分、恭文くんから見るととても悲しくて、耐えられない事なんだと思う。

こういう言い方をするとアレだけど、強かった気持ちが冷めちゃうくらいに強い違和感なんじゃないかな。



「・・・・・・なんか、ダメですね。フェイトは頑張ろうとしてるだけなのに、それなのにこれなんて」

「ダメじゃないよ」



ベッドに腰掛けて、左手で恭文くんの頭を撫でる。今は風邪だから、少し熱っぽい。

私が覚えている感触も温かかったけど、今はそれよりもずっとだよ。



「まぁ、その違和感が一体なんなのかは、きっとちゃんと考えなくちゃいけないよ?
恭文くんの中の強かった好きが、簡単に冷めちゃうくらいの衝撃なんだもの」

「・・・・・・はい」



いつもより歯切れが悪い感じの恭文くんの顔を私は覗き込む。

恭文くんは少し驚いた顔をするけど、それでも逃がさない。



「あとね、私との婚約は・・・・・・無理しなくていいよ? 7年」



言いかけて気づく。ゆっくりだけど、カウントダウンはしていっている事を。

それに少しだけ苦笑しつつも、私は言葉を続ける。



「・・・・・・6年後の約束だもの。ゆっくり、少しずつ決めてくれればいいから」

「・・・・・・フィアッセさん」



きっと私の事気にしてた。フェイトちゃんが好きじゃなくなったから、私と本当に結婚しなくちゃいけないって。

でも、そんな恭文くんを安心させるように笑いかける。笑顔で『大丈夫だよ』って伝える。



「フェイトちゃんがダメだから私ーって言うのじゃ、やっぱり嫌だもの。
遠距離恋愛みたいになっちゃうけど、ちょっとずつ考えて欲しいな」

「・・・・・・はい」

「うん、いいお返事だね。じゃあ・・・・・・ご褒美」





身体の正面を恭文くんに向けて、そっと右手を伸ばして恭文くんの左頬を触る。

そうして逃げられないようにして、身体を屈めて・・・・・・右頬に向かってキス。

唇から伝わるのは、熱い熱。というか、恭文くんの身体が凄く熱くなっちゃってる。



だから顔を離すと恭文くんの顔も真っ赤で・・・・・・蕩けた瞳で、私を見ている。





「恭文くん、I LOVE YOU・・・・・・♪」



私なりの想いと願いを込めて、精一杯に気持ちを伝える。

この子の笑顔を、幸せを守りたいと思った時の気持ち、嘘なんかじゃないから。



「あの、えっと・・・・・・やっぱりキスはその」

「ほっぺただから大丈夫だよ。あー、そう言えば」



・・・・・・言いかけて、私は膨れかけた頬を収めつつも恭文くんに笑いかける。



「ううん、なんでもない」










今は風邪を治す事を優先。だから、ここでは何も聞かないよ。





・・・・・・ゆうひから聞いた(聞き出した)アバンチュールのお話は病気が治ってからだね。





うぅ、やっぱり私もうちょっとアピールしようかなぁ。さすがに色々気になるよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてそれから五日後、僕の風邪はバッチリ完治。もう全開バリバリである。

フィアッセさんは高町家でしばらく宿泊する事になって、とっても楽しそう。

季節はもう12月の半ばで・・・・・・うん、そうなの。このままいけば、フィアッセさんと楽しく年越し。





というかあの、普通に僕はバイト復帰初日のアレコレが終了後の夕方、フィアッセさんとデートしてたりする。










「うーん、こうやって恭文くんと海鳴でノンビリするの、楽しいなぁ」

「そう言えば、こういうのは初めてですしね」



いつぞやのコンサートは、フィアッセさんもお仕事だったからそんな余裕無かったし。

僕は僕でお説教だったしなぁ。アレから・・・・・・もう、1年かぁ。



「というかあの、看病ありがとうございました。おかげでもう元気で」

「うん、良かったよ。でも、無理したらダメだよ? 病気も治りたてで、まだ完全復活じゃないんだから」

「はい」

「というか・・・・・・よし」



フィアッセさんが、ニコニコ笑いながら僕に抱きついてきた。もう恒例も恒例なので、特に抵抗もせずに受け入れる。

フィアッセさんは、何気にすごくグラマーでスタイルがいい。だから、ふかふかで柔らかい感触がしてとっても幸せ。



「恭文くんが寒くないように、いっぱい温めてあげるね」

「・・・・・・あの、ありがとうございます」

「ん」

「・・・・・・・・・・・・あの、えっと・・・・・・あなた達?」



楽しくイチャラブしている僕達に対して、呆れたような声を出してきたKYが居た。

それはリンディ・ハラオウンさん。当然だけど、僕の保護責任者。



「「はい?」」

「いやあの・・・・・・疑問な顔をされても困るんだけど。というよりフィアッセ・クリステラさん」

「はい」

「なぜあなた・・・・・・わざわざ我が家でデートを?」



ここはハラオウン家のリビングの中。僕とフィアッセさんは、ソファーに隣同士で座って手を繋いでラブラブしてました。



「あ、すみません。恭文くんはまだ治りたてですし、外を歩くのはダメだと思いまして。お邪魔ならもうお暇しますが」

「いえ、それはあの・・・・・・大丈夫なんですよ? えぇ、恭文君も嬉しそうですし」



言いながら、リンディさんがみんなを見る。なお『みんな』とは、フェイトにアルフさん。

全員さっきから失礼な事に、僕とフィアッセさんにそういう視線を向けていた。・・・・・・色々おかしい。



「まぁさっきまで夕飯の準備まで手伝っていただきましたし、あまり文句も言えないんですけど・・・・・・その、本気なんですか?」

「というと?」

「フェイトやアルフから聞きましたけど、恭文君と婚約しているとか」

「はい」



リンディさんの視線が厳しい。どうやらそこの辺りに色々と疑問や不満があるらしい。



「あなたは大人の女性ですし、恭文君はまだ12歳。その辺りは色々と問題があると思ってしまうんですが。
というより、普通に考えておかし過ぎます。もしこの子の事をからかっているのだとしたら、早急にやめていただけますか?」



そう言われてフィアッセさんはにこやかに笑う。でも気づいた。フィアッセさん、目が燃えてる。

というか、明らかに今のリンディさんの言葉に不快な色を示してる。や、やばい・・・・・・これはやばい。



「あ、大丈夫です。・・・・・・恭文くんとの事、遊びでも冗談でもなくて本気で考えています。
将来的にはそうなるつもりです。もちろん、恭文くんの意志を尊重する形にはしますけど」

「いえ、だからそういう事ではなくて、一般常識としてあなたの行動は」

「そんなの関係ありません。私が恭文くんに笑っていて欲しいから、そうしているだけです」



フィアッセさんの僕を抱きしめる力が強くなる。というか、フィアッセさんとリンディさんの間で火花が散る。

それに当然だけど全員が圧される。なお、僕も同じく。あ、あははは・・・・・・逃げる選択なんて当然無いよね。



”・・・・・・恭文、アタシ達は助けられないぞ。お前がどうにかしろ”
大体、婚約の話だって基本細かいとこはアタシらの知らないとこだし・・・・・・お前が頑張るしかないだろ”

”ヤスフミ、お願い。なんとかして? このままじゃ普通に母さんが不機嫌モードに突入だもの”



どうにかってどうやってっ!? てーか、マジで頼りにならない連中だねっ!!



”あぁもう、分かってるよ。僕しかなんとか出来ないよね”

”そうだぞ。あ、なおアタシはもう認めてるから。フィアッセさんみたいな人なら、お前にはもったいなさ過ぎるだろ”

”・・・・・・お肉の効果って凄いですよね”

”当然だ。お肉は偉大なんだぞ?”



なので両手でフィアッセさんの肩を掴んで、優しく身体を離す。フィアッセさんは驚いた顔で僕の方を見る。

でも、すぐに微笑んでくれた。僕が拒絶のためにそうしたんじゃないって、すぐに察してくれたから。



「リンディさん」

「悪いんだけどちょっと黙っててくれないかしら。私はクリステラさんの一般常識に少し疑問が」

「黙ってるのはそっちだ。僕とフィアッセさんの間の事で、部外者のくせに外からゴチャゴチャ抜かすな」



あ、リンディさんよりフェイト達の視線が厳しくなった。というか、涙目になった。

アルフさんがジェスチャーで『お前は火に油を注いでどうするんだっ!?』って言ってるけど、もう気にしない。



「そうはいかないわ。大体、あなたは勘違いをしている。私は部外者じゃないわ。
私はあなたの保護責任者として、あなたの健全な成長を促す義務が」

「二言目にはまたそれですか? リンディさん、学習能力ないでしょ。
・・・・・・僕、フィアッセさんの事が好きなんです。だから婚約の話だってOKしたんです」



あっさりそう言い切ると、リンディさんが信じられないという目で僕の事を見出した。

フェイトもジェスチャーに加わって二人で『もうやめてー!!』とか言ってるけど、気にしない。



「将来的にだけど『そういう風になれるならなりたいね』って話して、決めて・・・・・・だから、ゴチャゴチャ抜かすな。
これは僕とフィアッセさんが自分達で考えて、通すと決めた大事な約束だ。誰であろうと、横から口出しなんて絶対にさせない」





僕は立ち上がって、フィアッセさんの左手を取る。そしてそのまま引っ張ってく。

フィアッセさんは立ち上がってついて来てくれる。で、まずは部屋に直行。お財布や端末、カード関係を持つ。

なお、カードは銀行の通帳カードね? 普通に僕管理で内緒で作っておいたもの。



コートを持って、そのまま部屋を出る。で、フィアッセさんも何気にコートを持っている。



だから躊躇うこと無く靴を履いて、一気にドアを開け放った。





「恭文君、待ちなさいっ! まだ話は」



だけど、当然のように待たなかった。僕はそのままフィアッセさんを連れて外に出た。

外では雪が降っていて・・・・・・吐く息がとても白かった。



「・・・・・・恭文君」

「すみません、嫌な思いさせちゃって」

”恭文君、戻ってきなさいっ! どうしてあなたはいつもそうなのっ!?
お願いだから少しは私の言う事を聞いてちょうだいっ!!”



念話をシャットアウト。うざったい保護責任者になど、介入させない。



「ううん、大丈夫。というかリンディさんの言っている事は正しいもの。普通なら・・・・・・ダメな事」

「そんな事ないです」



雪が降りしきる街の中、僕はフィアッセさんの方に振り返って・・・・・・そのまま抱きついた。

抱きしめる形じゃなくて、僕の身長だとフィアッセさんに抱きつく形になる。それがちょっと悔しい。



「・・・・・・フィアッセさんとの約束、本当に大事な約束だから。僕、本当に嬉しかったんです。
フィアッセさんがそこまで言ってくれて・・・・・・抱きしめてくれて」

「・・・・・・恭文くん」



フィアッセさんが、僕を抱き返してくれる。優しく温めるようにしながら・・・・・・優しく。

その温かさが心地良くて、幸せで・・・・・・僕は、もっとフィアッセさんを抱きしめた。



「あのね、私も嬉しかった」

「え?」

「さっきためらいも無く『好き』って言ってくれて。本当に・・・・・・嬉しかった」

「・・・・・・だって、事実ですし。あの、『あいらぶゆー』ですし」



フィアッセさんが、僕の頭の上でクスリと笑った。嘲笑う感じじゃなくて、嬉しそうに軽く。



「ふふふ、そっか。でも、発音がちょっと違うよ。・・・・・・I LOVE YOU・・・・・・だから」



う、そうなのか。くぅ、やっぱりまだまだ英語関係の勉強はさっぱりだなぁ。

恭也さんや美由希さんから教えてもらって、大分上達したと思ってたのに。



「・・・・・・練習しときます。いつでも言えるように」

「うん、期待してるね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それで我が家に駆け落ちしてきたのか。また大胆だな」

「ちょっとお父さんっ!? 普通に感心してる場合じゃないからっ!!」

「あ、私は応援してるわよ? フィアッセ、諦めたらそこで試合終了だから、しっかりね」

「お母さんも落ち着いてー! ここは二人を説得するところだからー!!」



いや、あの・・・・・・士郎さんに桃子さん? 僕達は別に駆け落ちのために来たんじゃないんですけど。

普通に勘違いしてるでしょ。そこで頭抱えて苦笑い気味の恭也さんや美由希さんと同じく。



「違います。フィアッセさんを送って来ただけですって」

「え? ・・・・・・恭文君、それはあまりにも冷たいわよ? ここまで来たらもうずっと逃避行を続けるつもりで」

「続けてどうするっ!? 普通にフィアッセさんの休暇を台無しにするだけでしょうがっ!!
・・・・・・とにかく、僕はこれから家に戻ります。で、徹底的に話し合います」

「あぁ、そういう事か」





士郎さんが納得してくれたようで、実に嬉しい。てゆうか、これは我が家の問題だもの。

あのご母堂様が今更ゴチャゴチャ抜かさないように、徹底的にぶちのめす事にする。

なお、士郎さんや桃子さんに恭也さんと美由希さんは、もうある点については何も言わない。



それは僕がフィアッセさんとの婚約をやめるということ。そして言わない理由はただ一つ。



僕達が絶対に折れないと気づいているから。だから、みんな普通にここは口に出さないのよ。





「・・・・・・いや、今日は君も泊まっていきなさい」

「お父さんっ!? あの、さすがにそれは」



なのはがそう言うと、普通に士郎さんは視線だけを向けてなのはを制した。

睨んだわけではなく、ただなのはの方を見ただけ。



「まぁ、親としてはリンディさんの言う事も確かに分かる。現在の年齢差は、とても大きいものだ。
なにより理論武装で叩き潰した所で遺恨を残すだけだろ? それでは意味がない」

「・・・・・・なるほど、冷静に分かり合うための協議をするべきだと」

「そうだな」



付き合いも2年目となると、さすがに僕の行動について色々と分かってくるらしい。普通に読まれてる。



「君の性格からして、確実にリンディさんを再起不能に追い込むレベルで口撃しかねん」

「嫌だなぁ。僕は普通にそんな事しませんって」



みんなの視線が厳しい。どうやら僕は信じてもらえてないようだ。

うぅ、悲しいなぁ。信頼されてないって悲しいなぁ。



「・・・・・・嘘。クロノ君やアルフさんを『生まれて来てごめんなさい』状態に追い込んだくせに」

「横馬、黙れ。というか空気読もうか」

「どうして私が空気読めてないみたいな言い方をするのっ!? 私、ちゃんと空気読んだ発言してるもんっ!!」

「あぁ、それは残念ながら錯覚だよ。横馬は空気を『くうけ』と読んでるから。読み間違えてるから」

「恭文君がヒドいよー!!」



失礼な事を言わないで欲しい。僕は普通だ。

ただ、横馬にとってヒドいというだけで、僕は世間的には普通なんだ。



「うぅ、フィアッセさんどう思いますっ!? 恭文君、いっつもなのはの事こんな風にいじめるんですよっ!!」

「なのは、楽しそうでよかったね。というか恭文君の事好きなのかな?」

「どうしてそうなるんですかっ!? わ、私は・・・・・・別に恭文君の事なんて、なんとも思ってないんですよっ!?」










とにかく今日・・・・・・いや、しばらくは僕もフィアッセさん同様に、高町家でお世話になることが決定した。

宿泊料代わりに家の家事手伝いも引き受ける事にして、僕とフィアッセさんは共同生活に入る。

そう考えると・・・・・・少し嬉しくて、ずっと右隣で僕の手を繋いでくれていたフィアッセさんの方を見る。




フィアッセさんは変わらずに微笑んでくれていて、それだけですごく嬉しかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・もうあの子の保護責任者をやめようかしら。私は正直ついていけない」



母さんがリビングのテーブルの上に両肘をついて、手で顔を抱えながらそう小さく漏らした。



「母さん、何言ってるのっ!? そんなの絶対だめだよっ!!」

「でもフェイト、婚約の話に問題があるのは確かなのよ? 現在の年齢差の問題もあるし、なにより」

「なにより?」



・・・・・・・・・・・・あれ、どうしてみんな私の顔を見ているのかな。そして呆れ気味にため息を吐くのかな。

私、何も悪いことしてないよね? なのになんでちょっと責められた感じになるんだろ。これ、おかしいよ。



「でも母さん、話を聞く限り今回のアレコレは母さんが悪いでしょ」



そう言ってきたのは、クロノ。だからクロノに対して母さんが睨み気味に視線を向ける。

なお、ヤスフミが出ていってすぐに家に戻ってきて、事情を聞いて頭を抱えてる。



「クロノ、私のどういうところが悪かったのか、具体的に教えて欲しいんだけど」

「全てですよ。・・・・・・ここ2年弱で、恭文がどういう性格なのかはよく知っているでしょ。
そしてアイツにとってフィアッセ・クリステラさんは、かけがえの無い存在。そこは疑いようのない事実」



そこは事実・・・・・・なんだよね。だからヤスフミ、フィアッセさんがこっちに来てから凄く嬉しそうだった。

毎日会って、凄く幸せそうで・・・・・・家族として、お姉さんとしてヤキモチを焼くくらいに仲良し。



「どんな事情があるかは知りませんが、僕の知る限りクリステラさんは聡明で頭のいい大人の女性です。
何の考えも無しに当時11歳の恭文と婚約など言い出すわけがない。恭文だってそこは薄々気づいている」



それはなのは・・・・・・あと、恭也さん達も言っていたような事だった。だから、みんなここは納得しているらしい。

魔導師組は全員衝撃を隠せなかったのに、フィアッセさんの人柄を良く知る人達は・・・・・・受け入れてる。



「つまり二人にとって成就するかどうかは別として、大事な約束であり繋がりの一つ。そこだけは間違いない。
それをそんな風に言われたら、それは恭文だってキレる。アイツは何より、クリステラさんの気持ちを思いやる」

「・・・・・・私達家族の気持ちも思いやって欲しいんだけど。というより、それが普通の行動よね」

「残念ながら、アイツはそんな枠に縛られるのを嫌う。もう母さんだって分かってるでしょ。
なにより、そんな真似をすればクリステラさんを傷つける」



そんなクロノの言葉を聞いて、胸がまた苦しくなる。



「あと、保護責任者をやめても無駄ですよ。それで反省を促そうと言うなら、アウトもいいところだ。
『それならそれでいい』と言って振り切るに決まっている。僕達はクリステラさんより『優先順位』が下ですから」



どうしてそうなるのかと、疑問に思ってしまう。



「この辺りはクリステラさんもさすがに止めるでしょうけど、それで聞くかどうかは微妙だ。
アイツ、ドSですから。こんな責め口で頭を下げるわけがない。結局母さんが損をするだけです」



私達は家族で仲間のはずなのに、どうしてフィアッセさんより下なのかと・・・・・・本当に疑問だよ。



「そう、みたいね。なんで・・・・・・なのかしら。この2年、私なりに頑張ってきたのよ?
それなのになぜワケの分からない『婚約者』の方が大事なのかしら。おかしいわよ、本当に」

「そうでしょうか。僕は春先の事件の時に話をさせてもらいましたが・・・・・・恭文が慕う理由がよく分かりましたが」



春先の事件でフィアッセさんに迷惑をかけてしまったから、その関係でそうなったらしい。



「もし分からないとしたら、それは母さんがクリステラさんの人柄や在り方を良く知ろうとしていないからですよ。
表面上の事だけで全てを判断して、分かったような顔をしている。それだけで人の心を動かすなど、不可能でしょ」

「・・・・・・クロノ」

「とにかく、僕は母さんの肩は持ちませんので。そこは了承しておいてください」










そしてヤスフミは結局帰ってこなかった。あ、でもこのすぐ後になのはから連絡が来た。

一応事情を聞いて母さんも士郎さん達と話したけど、サッパリだったらしい。

ヤスフミやフィアッセさんの説得も頼んだけど、きっぱりと断られてまた頭を抱えてた。





・・・・・・ヤスフミ、フィアッセさんの何がいいのかな。私・・・・・・分からないよ。

あの人はあんなに信じられて、私や私達の居場所がどうしてだめなのかな。ホントに分からない。

どうすれば認めてくれるの? 私、頑張るから・・・・・・なんでもするから、信じて欲しいよ。





ヤスフミが私達と違う道を選ぶ度に、母さんやみんなが傷ついている。

その事に、いい加減に気づいてくれないかな。

・・・・・・その、分かってるよ。それでも通したい理由があるって。それは教えてもらったから。





だけど、それ以外にも道はあるよ? 私達と同じ道なら・・・・・・きっとヤスフミの理想を、きっちり通していけるはずなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夜、まだお風呂禁止令の出ている僕は、身体を拭く事で入浴代わり。

頭は洗面台で洗わせてもらってるので、問題はない。だけど、あの・・・・・・うーん。

客間で身体を拭いてもらってるんだけど、結構恥ずかしい。





だけどあの人は、普通にニコニコしながら僕の身体をお湯で濡らしたタオルで拭いてくれる。










「恭文くん、少し大きくなったよね」

「ホントですか?」

「うん。あと、少し筋肉がついてきてる」



そう言いながら、お腹をさすって・・・・・・うぅ、くすぐったい。



「恭也と美由希達・・・・・・あとは香港の美沙斗さん達に、いっぱい鍛えてもらってる?」

「はい。あとは魔導師の訓練とかも並行ですから」

「いっぱい頑張ってるんだね。でも、外見からじゃ全く分からないね。体質のせいなのかな」





僕の後ろ側からかかる声が、気配と一緒に前に移動する。

それでフィアッセさんは僕の身体の前の方を拭いてくれる。

僕は自分で拭けるって言ったんだけど・・・・・・その、断り切れなかった。



迷惑かけたお詫びだとも言われた。・・・・・・迷惑なんかじゃないのに。





「ね、恭文くん」

「はい?」

「恭文くん、前に教えてくれたよね。強くなって・・・・・・言い訳しないで手を伸ばせる自分になりたいって」



フィアッセさんは、まず僕の右肩から拭いてくれる。



「誰に認められなくてもいい。ただそれでも、言い訳しないで目の前の何とかしたい事に飛び込める自分になりたい。
悲しいことがあるなら、私にあの時してくれたみたいにありったけで覆して・・・・・・そんな時間を壊していきたい」



というかあの、されるがままというのは、意外と恥ずかしい。



「どこまでも強くて突き抜けていて、ハードボイルドな自分を通せるようになりたい。
・・・・・・そう言った時の気持ちは、今も変わらない?」

「・・・・・・はい。何も、変わってません」



あの一件の後、そういう話をした。見つけた答え・・・・・・フィアッセさんにも話した。



「私思うんだけど、フェイトちゃんに違和感を感じた理由、そこじゃないかな」

「え?」

「恭文くんが目指している形は、どんな大人に・・・・・・自分になりたいかだと思うんだ。
他人や組織、もしかしたら世界そのものにも依存しない、自分だけの願いであり夢」



右肩から右腕を拭きながら、フィアッセさんは真剣に話す。



「フェイトちゃんの選択は、それと同じように見えて全く違う。
何かに依存しきった上での選択だと感じたから・・・・・・気持ちが冷めちゃったんだよ」



そして僕を見る。座っている状態でも、フィアッセさんの方が背が高いのでやっぱり見下ろす感じ。



「無意識にそういう選択を選んじゃうフェイトちゃんに、愛想を尽かしたって言い方もあるかも。
・・・・・・あ、もちろんこれは私の意見だから、本当にこうとは限らないよ?」

「いえ、多分・・・・・・それで正解です」





フェイトが高校進学を辞めたり保護責任者を引き受けたりした時、何か嫌なものを感じた。

最初は単純に、ヤキモチかとも思った。どっちにしても距離が離れるのは確定だから。

でも違った。フェイト・・・・・・多分依存してる。ここ数日考えて、違和感というか嫌な予感の正体に気づいた。



認められて誰からも必要とされる事が絶対に必要だからとか、考えてる。理由? そんなの簡単だよ。

前にフェイト自身が、そういう風な話を僕にした事があるの。それもつい最近だよ。

自分なりの居場所に腰を落ち着けて、そこから自分なりに努力をして・・・・・・認めて欲しい。



僕みたいに局を嫌いな人間や、信用出来ないと思っている人の意識を変えていきたい。

高校進学を辞める話をした時、そうフェイトは言い切ったの。そしてそこから、気持ちが急激に冷めた。

その選択を取るフェイトの事、理解出来無くなっていった。本当に少しずつだけど、確実に。



だってそれって言いかえれば、自分の行動を、居場所を認めて欲しいがために頑張るってことだよ?

他人から『その行動は正しい・信頼に値する』と言われて、初めてフェイトの目的は達成される。

それ自体は悪い事じゃないかも知れないけど、フェイトを見てるとなにかこう・・・・・・それを絶対視し過ぎてる感じがする。



だから強烈に違和感感じてたのかも。・・・・・・なんつうか、色々ダメな姉だ。





「僕も同じこと、考えてたんです。それでそうするだけの理由が、フェイトにはあります」

「・・・・・・そっか」





フェイトはきっと、生まれの事を払拭なんて出来てないんだ。



だから・・・・・・『他人や組織から認められて必要とされる自分』を心の底から欲しがる。



そんな自分がないと、フェイトはフェイトで居られなくなるってどっかで思ってる。





「実はね、恭文くんの看病してる時にアレコレ話して感じたんだ。
重い過去があって、そのために誰かに認められ・・・・・・ううん、愛されて必要とされたがってる」

「そう、ですか」



フィアッセさんも、フェイトと同じように普通と・・・・・・人と違う部分がある。

だから自然と気づいたんだと思う。フェイトは、自分と同じ子なんだと。



「でも」

「でも?」

「大人になるって、難しいです」





フェイトが生まれの事を気にしてるかどうかなんて、正直確定じゃない。

フェイトをツツいてみなくちゃ・・・・・・あははは、これは荒れる方向だよなぁ。

でもそれを考えながら、色々と自分に当てはめてみると難しい。



だから僕は苦い顔でフィアッセさんを見る。フィアッセさんは、変わらずに笑ってくれていた。





「どんな大人になりたいかって、やっぱりその人のだけの形だと思うんです。
正直、フェイトの描いている形も一つの形なんじゃないかって考えると」

「だけど、それだけじゃあ納得出来ない部分もある。・・・・・・やっぱり、もう少し考えないと。
考えた上で・・・・・・しっかりとぶつかっていこうか。もうその覚悟は決まってるんだよね?」

「はい」

「うん、良い子だね」



そうして、身体をフィアッセさんはゆっくりと・・・・・・優しく拭いてくれる。

その感触が嬉しくて、僕はとっても幸せだった。



「あ、そう言えば歌のレッスンは」



ふと思い出した。ここには特に先生が居るわけでもないし、ずっと放置だと錆びつくんじゃ。



「こっちでも自首練習はもちろんしてるよ? そこは日課だもの。
あと、知り合いのボイトレの先生にも見てもらうように頼んでるから大丈夫」

「納得しました」










とりあえず、フィアッセさんは楽しそうなので良しとする。あと、問題が一つ。





客間の外に気配がする。あからさまなのが一人と、極薄にまで気配を消しているのが二人。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭ちゃん」

「何も言うな」



別に覗くつもりはない。ただ、普通に足を止めてしまった。

中からこう・・・・・・甘ったるい気配がするんだ。



「フィアッセさん、本当に恭文君と? でもでも、年齢差が・・・・・・うぅ、色々複雑だよ」

「というより二人っきりって・・・・・・まぁ、大丈夫だよね」

「あぁ。恭文はともかく、フィアッセは良識的な人間だ。12歳の男子といかがわしいことなどするわけがない」










まぁ、ハグや頬へのキスは問題ないだろ。アレはお国柄故のコミュニケーションだ。





俺や美由希になのはや忍さえされている。この辺りはフィアッセにとっては普通の事だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フィアッセさん、ありがとうございました」



フィアッセさんのおかげで、身体はすっきり。なお、大事な部分は自分で拭いた。

後で拭くと言ったんだけど、フィアッセさんが納得してくれないので、向こうを向いてもらってから拭いたの。



「ううん。・・・・・・でも、別に恥ずかしがらなくていいのに。私、見ても平気だよ?」

「いやいや、僕が平気じゃないんですけどっ! というか、婚約者としてそれはだめなのー!!」

「そうかな。婚約者だからこそ、そういう部分も見せ合えるようになるべきだと思うな」



笑顔でそういう事言わないでっ!? ほら、慎みを大事にしてっ! 色んな流れを大事にしてっ!!



「あと、私は大丈夫。恭文くんにだったら、全部見られてもいいと思ってるよ?」



そう言われて、すごく顔が真っ赤になる。つ、つまりその・・・・・・だ、だめ。それはだめだ。

普通にフィアッセさんの裸なんて見たら、もうしばらくフィアッセさんとまともに話せなくなる。



「というか、ゆうひの裸はよくて私のはダメなの?」

「・・・・・・え?」



凄まじい寒気を感じて、僕はフィアッセさんを見る。フィアッセさんは、頬を膨らませながら僕を軽く睨んでいた。



「夏にゆうひとお友達になった時に、ゆうひの裸見たんだよね?
それだけじゃなくて那美ちゃんや薫さんの裸も」

「・・・・・・・・・・・・ソ、ソンナコトアリマセンデシタヨ?
フィアッセサン、イッタイナニヲオッシャッテイラッシャッタリスルンデスカ?」

「隠してもだーめ。ゆうひの様子がちょっと変だったから、全部吐いてもらったんだから。
あとあと、ゆうひの胸に胸まくらとかして・・・・・・それと知佳さんとも仲良しになったんだよね」










きゃー! なんか全部バレてるっ!? 普通になのは達にも口止めしてたのにー!!





てゆうかゆうひさん、なんで吐いたっ!? いくらなんでもおかし過ぎるでしょうがっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文君、大丈夫やろうか」










現在ロスでレコーディング中の私、SEENAこと椎名ゆうひは、遠い日本に居るあの男の子の事を心配中。

フィアッセ、聞いた時には『へぇ、そうなんだ』って平気そうに言うてたけど、角生やしとったしなぁ。

婚約者としては色々不満があるらしい。なんか仕事のためにあんまり会えんのも、そこに拍車かけとるとか。





でもな、うちの言い分も聞いて欲しいんよ。もうフィアッセがすごい勢いで詰め寄るから、吐くしかなかったんよ。

うちはちゃんと普通の出会い方した言うたよ? うん、もちそう言うたもん。でも見抜かれたんよ。

うち、あの子があそこまで勘がえぇとは思わんかったわ。とりあえず恭文君・・・・・・ほんまごめんなぁ。





お詫びに今度出すうちのNEWアルバム、フラゲ出来るように送っておくから堪忍な〜。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ふーん、全部見たんだ。ゆうひ、綺麗だったよね?
私より胸も大きいし、スタイルもよかったよね。だから胸枕とかしちゃうんだもんね」

「・・・・・・ノーコメントで。すみません、薫さんとも映像は永久封印すると約束しておりまして」



正座で膨れ気味のフィアッセさんに事情説明中。というか、知佳さんとの事まで吐かされた。

や、やばい。IFルート始まって以来の大ピンチかも。僕、かなり追い詰められてる?



「そっか。ならそこはもう聞かない。納得するよ」

「そう言ってもらえると・・・・・・助かります」

「それじゃあ、一緒にお風呂と胸枕だね」

「今度は僕が納得出来ないんですけどっ!? てか、なんでそうなるんですかっ!!」



だあぁぁぁぁぁっ! どうしてそうなるっ!? 普通に色々おかしいからっ! 真面目におかしいですからっ!!



「あ、そうだ」

「今度はなんですか、一体っ!?」

「唐突に思い出したんだけど、恭文くんの口癖・・・・・・ほら。
『さぁ、お前の罪を数えろ』って言葉なんだけど」



そう言われて・・・・・・少し冷静になる。それは、僕が魔導師になる前から記憶に残っていた言葉。

だけど誰が言ったかとかは、全く覚えてないの。言葉と一緒に覚えているのは、大きい背中だけ。



「実はね、今日恭文くんの家に来る前にフィリスの所に寄ってて・・・・・・たまたま聞いたんだ。
フィリスの姉妹で恭文くんも知ってるリスティが、その言葉を言う人の事を知ってたの」

「・・・・・・え?」










本当に偶然とも言うべき状況で、話は進んで行く。そして僕は覚悟を決めた。





僕は・・・・・・僕のルーツを追いかける旅に出る事にした。





僕が聞いた言葉、そこから感じたものの正体と僕は、ここで向き合う事になった。




















(その2へ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、ゴールデンウィークスペシャルということで全三話を一挙掲載です。
というか、一種の劇場版と思っていただければ正解かと。本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文と」

やや「結木ややと」

ウェンディ「劇場版IFって聞くと豪華で羨ましいウェンディっス。で、今回はフィアッセさんルートっスね」





(説明しよう。フィアッセ・クリステラさんはとらいあんぐるハート3のメインヒロインなのだ。
なお、とらいあんぐるハートとリリカルなのはとの関連性に関しては、ググれ)





恭文「なお、今回のテーマは『大人のなり方?』です。で、そこにハラオウン家の問題点も出して・・・・・・え、これやめない?」

やや「そうだね。なんか嫌な予感がするんだけど」

ウェンディ「もう遅いっスよ。これを読者のみんなが読んでくれてる時点で、もう全話アップされてるっスから」

古鉄≪とにかく、1話を読んだ段階で大体の話の流れはお分かりでしょうから、こんな感じで進みます。
あとは、過去からスタートするIFルートの下地作りでもあります≫





(ようするに、Remixルートと同じバリエーション作りです。そのためにフィアッセさんルートを先に出しました)





恭文「というか、このプロットだとフィアッセさんがしっくり来たんだって。すずかさんとかはまたちょっと違うテーマで書く予定だから」

ウェンディ「というか、それで書くと長期化するからっスよね」

恭文「・・・・・・ウェンディ、良く分かったね」

ウェンディ「分かるっスよ。この調子でいくと、普通に次は20話とか行きそうっスから」





(というわけで、他のルートにも流用出来るとまとIFな下地作りを頑張っているわけです)





やや「でもでも、そう考えると純粋に本編からの波状はギンガさんだけになるね」

古鉄≪そうなんですよね。何気にティアナさんIFもあむさんIFも本編とはまた違うルートからですから≫

ウェンディ「でも、これはこれで『IFルート』って感じがして良くないっスか? ほら、楽しいっスよ」

恭文「バリエーションが出来るから、作者としては大助かりだけどね。飽きられる心配も少ないし」





(こらこら、そこ。内情をバラさないように)





ウェンディ「でも恭文・・・・・・フィアッセさんの前だとキャラ変わるっスよね」

古鉄≪気づきました?≫

ウェンディ「気づくっスよ。もう子どもキャラっスよね」

やや「あー、そこはややも気づいたー。恭文楽しそうだしねー」

恭文「ま、まぁ・・・・・・フィアッセさんは特別だから。・・・・・・うん、大事な人なんだ。
あの一件で仲良くなって、背中を押してもらって・・・・・・大好きになったから」





(蒼い古き鉄、とっても嬉しそうである。どうやら光の歌姫は色々特別らしい。
なお、蒼い古き鉄と光の歌姫のアレコレは『幕間そのろく』から『幕間そのじゅういち』を御覧下さい)





恭文「というわけで、僕が色々と楽出来るらしいと聞いているので、とっても楽しみなフィアッセさんルート、最後まで読んでってねー。
それでは本日はここまで。お相手はフィアッセさん大好きーな蒼凪恭文と」

やや「・・・・・・キャラチェンジしてるんじゃないかと思ってしまった結木ややと」

ウェンディ「ややちゃんに同感なウェンディと」

古鉄≪いつもの事だから気にしない方がいいですよと言いたい私でした。それでは、次回へページをレッツゴーです≫










(IFルート劇場版はまだまだ続く。そんな想いを込めながらも四人は笑顔で手を振るのであった。
本日のED:KOTOKO『涙の近い』)




















フィアッセ「うぅ、ついに私ルートだよー。なんというか、感慨深いなぁ。
えへへ、恭文くん大好きだよー。いっぱいラブラブしようねー」(ギュー)

恭文「え、えっとその・・・・・・はい」

フィアッセ「それならまずは、一緒にお風呂で洗いっこかな」

恭文「・・・・・・はぁっ!?」

フィアッセ「まずはそこだよ。うん、私だってゆうひやシャマルさんやリインちゃんに負けたくないんだ」

恭文「だからってまずそこは違うでしょっ!? もっとプラトニックラブな方向性をお願いしますー!!」

やや「恭文、大変だね」

ウェンディ「いや、ややちゃん・・・・・・あれは普通に嬉しそうッスよ? 大変じゃないッスから」










(おしまい)






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