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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第52話 『Subjects to be taken over/とある魔導師とガーディアン達のこんな会議の様子』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「ドキッとスタートドキたまタイムー! さぁて、今日のお話はっ!?」

ミキ「ハッキリ言います。復習回というか、一種の総集編です」

スゥ「時には振り返る事も、必要ですからぁ。なお、映像は各自脳内補完でお願いしますぅ」

ラン「何、その無茶振りっ!?」





(そうして登場するのは、ついに帰って来たあの子)





ラン「復習回でも、素敵なドキドキがきっと沢山っ! さぁて、頑張るぞー!!」

ミキ「というわけで、合言葉はコレっ!!」





(当然のように、三人は右手を思いっ切り突き上げる)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



※ガーディアンメンバーの能力考察・その1 蒼凪恭文&アルトアイゼン・リインフォースU・シオン





「・・・・・・三条君、恭文君のページだけやけに多くない?」



あのね、目次まで作ってあるんだよ。そうしたらページの半分が恭文君の項目になってた。

まず一発目でそれが目についたので、苦笑いで僕は三条君の方を見る。



「・・・・・・元々俺は、イースターの人間でしたから。敵対していた時に1番警戒していたのは、蒼凪さんだったんです。
蒼凪さんの戦闘能力は、当然の事ながらガーディアンの中ではトップクラス。戦う事になった場合、強敵になるのは明白です」

「あぁ、そのために恭文君の事を研究していたんだね。・・・・・・恭文君、人気者だね」

「あははは、そうだね。おかげで色々大変だったよ」



とにかく、ページに目を通す。・・・・・・相当細かく書かれてるな。僕が知らないような何かの専門用語まであるし。



「リインちゃんと一纏めになってるから、余計にページ数が多いんだね」

「蒼凪さんとリインさんはパートナーでもありますし、一緒にした方がいいかと思いまして」

「つまりつまり、リインと恭文さんは何時だって一心同体なのです♪」

「はい、そこ黙れっ!? そういう意味で海里は絶対話してないからっ!!」





とにかく、恭文君は三条くんが今言ったように、ガーディアンの中では戦闘面での最強のカード。

僕達と同い年くらいの頃から培ってきた戦闘経験に、多彩な魔法と技。

リインちゃんやアギトさん、咲耶さんとのユニゾンによる能力強化も特筆事項。



氷属性の能力を操るヴィンクルムフォームに、炎属性のブレイズフォーム。そして、10秒限定の超高速形態のアクセルフォーム。

恭文君の魔法はこころの中にしゅごキャラが居たせいか、キャラなりしなくても×たまを浄化出来る能力がある。

なお、リインちゃんは魔導師ではあるけど浄化能力がない。なので、リインちゃんの戦闘での役割は補助が基本。



ユニゾンでの恭文君の能力の強化もそうだし、結界の展開による周辺被害の軽減や、フリジットダガーでの空間制圧も仕事の一つ。

また、戦闘経験で言えば恭文君と同じくらいのキャリアもあるので、その面から他のメンバーのサポートに回る事もある。

恭文君は×たまの浄化には魔法を活用していたんだけど、この能力には一つの不安定要素があった。



それは僕も『なでしこ』としてここに居たから知っている事。そして、多分恭文君がずっと気にしていた事。

恭文君の魔法による×たま・×キャラの浄化能力が、何時まで持続するか分からないというもの。

結局今もそれは大丈夫なんだけど、それでもその能力が無くなった場合、恭文君はもう戦えなくなる危険があった。





「それで、恭文君もキャラなり出来るようになったんだよね。というか、しゅごキャラが生まれた」

「はい。まぁ、私は最近登場したので、セイントブレイカーはほとんど出番が無いんですよね」



そう言いながら僕の前に出てきたのは黒いシスター服を着た女の子。この子が恭文君のしゅごキャラで、シオン。

えっと、キャラなりがセイントブレイカー・・・・・・はい? あの、気のせいかな。よし、ここは三条君に聞いてみよう。



「あの、三条君」

「はい」

「この特記事項って、ホント? なんか、シオンとキャラなりすると身体を乗っとられて、姿がシオンになるって書いてるんだけど」

「・・・・・・本当です。蒼凪さんのセイントブレイカーは、シオンが蒼凪さんの身体を使って戦う形になります」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



そして、恭文君が頭を抱え始めた。抱えて泣き出した。なお、声を全く殺さず思いっ切り泣いてる。



「ごめん、なぎひこ。そこツッコまないであげてくれない? さすがにあたし達も遠慮してるの」

「というか、しゅごキャラに身体を乗っ取られるキャラなりなんて見るの初めてで、僕達も何も言えないんだ」

「わ、分かったよ」



・・・・・・そりゃあなぁ。僕としては色々複雑だけど、あんまり言えないか。

だって僕は自分の意思で『なでしこ』をやってるけど、この場合は絶対違うだろうし。



「まぁ、お兄様はあんな感じなので、お兄様のキャラなりでの主なパートナーはミキさんです」

「うん。ボクと恭文とのキャラなりは、アルカイックブレード。剣術とカードコンボを駆使して戦う、魔法使いの姿の一つ」

「いやぁ、思い出すと色々あったよね。普通にキャラなり出来るまでにも苦労したし、名前決めるのも苦労したし」

「・・・・・・あむちゃん、僕すごく気になる事を聞いたんだけど。というか、キャラなりの名前って決める物なの?」





・・・・・・あぁ、これがミキの言ってたキャラなりだね。写真が載ってたよ。

アルカイックブレードは、あむちゃんのしゅごキャラとのキャラなりで、当初は滅多に使えなかった。

他の人のしゅごキャラとのキャラなりは、しゅごキャラもその人も体力を非常に消費するから。



しかもアルカイックブレードの場合、通常攻撃でも浄化能力を発揮するためか、その消耗度がハンパじゃない。

僕達よりずっと鍛えているはずの恭文君でさえ、キャラなりを解除した後は立てなくなっていたらしい。

でも、この問題はスゥが作った『パワーアップルジュース』を飲む事により解決。



以後は、普通にキャラなり出来るようになった・・・・・・え、なんなのこのジュース?





「あの、あむちゃん・・・・・・というかスゥ、このパワーアップルジュースってなに?」

「はい。スゥ特製の、スーパードリンクですぅ。あ、なぎひこさんも飲んでみますかぁ?」

「なぎひこ、マジでそれはやめた方がいいからっ! あたしも恭文もフェイトさんも、魂抜けかけたんだよっ!?」

「魂抜けかけるってなにっ!? というか、あむちゃん必死過ぎだからっ! 落ち着いてー!!」





とにかくその中で特筆すべきは、戦闘センスとノリと戦闘時の冷静さ。

恭文君はこと戦闘に関しては、高いセンスを発揮する。

この辺り、三条君は相当気になってたのか、かなり長く書いてるな。



本来であれば専門外である×たま狩りも、そのセンスを遺憾なく発揮して対応している。

そしてノリ。補助アイテムであるサウンドベルトに代表されるように、戦闘中に音楽を流すことがある。

本来であればあり得ない行動だけど、ノリの強化は恭文君の場合は確実に戦闘能力アップに繋がる。



それと同時に、敵の意表を突き戦意を低下、集中力を低下させる効果もあると見られる。

三条君、相当恭文君の事注意深く見てたんだな。凄い記述が細かいし。

あ、続き読まなくちゃ。・・・・・・ただ、そういう行動や普段の言動から甘く見ると、痛い目を見る。



三条君から見ると恭文君は、元々冷静な人間として映っているらしい。

特に戦闘になるとそれが顕著。普段の言動からは想像が出来ないほどに、冷静な判断を下す事がある。

確かに、二階堂先生にラン達が捕まった時、容赦なく叩き潰す事を選んだ。あれはビックリしたなぁ。



能力どうこうもそうだけど、特に注意すべきはこの辺り・・・・・・いやいや、文面が蒼凪君倒すこと前提だし。

総評としては、蒼凪君は戦闘面ではあらゆる状況に対応可能なまさしく切り札。

これから激化するイースターとの戦いの中で、鍵の一つになるのは間違いない・・・・・・と。



あ、それとリインちゃんにも触れられてるね。今後、キャラなりなどで浄化能力に目覚める可能性は、大。

リインちゃんがしゅごキャラを見えてるということは、リインちゃんの中にもたまごがある可能性がある。

もしも、もしもリインちゃんのたまごが生まれて・・・・・・ううん。



リインちゃんがキャラなりで浄化能力を使うことが出来たら、戦力が強化されると思われる。・・・・・なるほど。

あ、それで改善点というか注意事項もある。・・・・・・蒼凪君は非常に運が悪く、そして無茶も多い。

三条君、普通にフェイトさん達にも色々話を聞いて、ここだけは絶対注意した方がいいって書いてる。



蒼凪君の運の悪さというか、事件遭遇率は僕も知ってる。だって、最初が最初だったんだもの。

そのために単独での強敵との戦闘という状況になりやすい・・・・・・か。最近もなんかあったって書いてる。

結論から言うと蒼凪君はそのためにボス戦的な状況だと、ガーディアンの中で一番負傷しやすい。



とりあえず三条君は、人を見る目があると思う。ここは僕も何気に思ってたとこだから。

あむちゃんに負けないくらいに意地っ張りキャラだし、突っ走っちゃうタイプらしいしさ。

そしてそんな問題への解決策は・・・・・・蒼凪君を一人にさせないで、誰かブレーキ役をつける事。



ここは僕とかの役目かな。あむちゃんは浄化のために前に出ちゃうし。

一番いいのは、リインちゃんやフェイトさんの力を借りる事とは言うことなかれ。そこは僕も三条君も分かってる。

今話しているのは、二人の力が借りられない状況である事が前提だもの。



だから僕達の中の誰かが、ブレーキ役を出来なくちゃいけない。





「・・・・・・さすがに力入ってるね。ざっと目を通しただけでも、熱の入れようが伝わったよ」

「そこは三条君の情報収集と考察能力の高さ故だね。あとは蒼凪君とは仲良しだし、そのせいだよ」

「あ、ありがとうございます」

「でも、よく分かった。さすがにこの量を一気に頭に入れるのは無理だけど、何回も読ませてもらうね。
三条君、改めて言わせてもらうね。こんなすごい資料を作ってくれて、ありがと」



微笑みながらそう言うと、三条君は顔を赤くして俯き気味になる。



「きょ、恐縮です」



どうやら、結構照れ屋なキャラらしい。パッと見のクールで理性的なキャラとは、また違う。

というか、これはそうとう僕は頑張らないとだめだね。普通にやってたら、三条君に負けるよ。



「・・・・・・さて、次はあむちゃんか」

「え、あたしのもあるのっ!?」










いや、そりゃ当然あるでしょ。あむちゃんは、ジョーカーの一枚なんだから。





さて、この調子だとなんか凄いことになりそうだな。よし、覚悟しておこう。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第52話 『Subjects to be taken over/とある魔導師とガーディアン達のこんな会議の様子』




















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※ガーディアンメンバーの能力考察・その2 日奈森あむ&ラン・ミキ・スゥ・ダイヤ





「これはまた、恭文君に次いで量が多いね」

「ジョーカーに関しては特記すべき事項が増えたので、そうなってしまいました。すみません」

「ううん、大丈夫だから。よし、それじゃあ見ていこうか」



・・・・・・あむちゃんは、合計4つのキャラなりを活用して・・・・・・え、4つ?



「あむちゃん、4つのキャラなりってなに?」



今居るのは、ランとミキとスゥだけだから。4つ・・・・・・シオンや他の子とキャラなりしたのかな。



「あ、なぎひこは知らないよね。えっと、今はたまごの状態なんだけど、ダイヤって子が居るんだ」

「ダイヤともキャラなりしたことがあるですよ。アミュレットダイヤって言って、すっごくキラキラなのです」

「あぁ、そういうことか。納得した」





まず運動能力に優れ、空中での限定的な機動が可能なアミュレットハート(FA)。

カラフルキャンパスによる広範囲攻撃が得意なアミュレットスペード(GW)。

リメイクハニーによる『お直し』を活用した支援が得意なアミュレットクローバー(FB)。



そして今話に出た、アミュレットダイヤ(不明)。

あむちゃんはこの4つのキャラなりを活用して、×たま達を浄化する。

あ、ダイヤはたまごの中らしいから、基本は3つだね。えっと・・・・・・あれ?





「三条君、この『FB』とか『FA』とかって何かな」

「あぁ、それは1番最後に解説を入れていますが、魔導師の戦闘時のポジションです」

「ポジション?」

「はい。蒼凪さんやハラオウンさんのような魔導師は、潤滑なチーム戦と連携のために一種の専門職と言うべきポジション配置があるそうなんです」





三条君の説明に合わせて、僕は最後のページを・・・・・・あ、確かに用語解説が載ってる。

えっと、簡単に言うと前衛として敵の攻撃を受けたり攻撃したりするフロントアタッカー。

自由自在に動き、前衛や後衛のサポートをする中衛とも言うべきガードウィング。



後ろから射撃などを用いて前衛・中衛の援護を行うセンターガード。

最後方で回復やその他スキルを用いて味方を支援するフルバック。

この四つが、魔導師の戦闘時の基本的なポジションらしい。



・・・・・・あぁ、これの略字なんだね。納得したよ。



そっか。みんなのキャラなりの能力をこうやって分かりやすくしてるのか。





「でもこれだと、あむちゃんはかなり万能だよね」

「はい。ジョーカーの強さの一つは、ラン達とのキャラなりにより多様な能力を発揮出来ることです。
そして全ての形態でオープンハートという浄化技を使うことが出来ます」

「あと、スゥとのキャラなりのリメイクハニーでも、浄化は可能ですぅ」

「そうだね。でも、そう言われると・・・・・・あはは、なんか恥ずかしいな」





・・・・・・あ、これは特記事項だね。えっと、あむちゃんも恭文君と同じくガーディアンの切り札って書いてる。

恭文君のような卓越した戦闘センスはなくても、その言葉と行動は人の心を変えていく力に溢れてる。

そんな力に触れて、二階堂先生やほしな歌唄も変わっていった。それがあむちゃんの強さ。



うん、そこはよく分かる。あむちゃんはただしゅごたまを三つも産んだからジョーカーになったんじゃない。

そういう強くて優しい部分を持っているから、僕もそうだし辺里君達だってあむちゃんを認めてるんだもの。

きっと三条君も同じ。今目にしている文面から、そういう感情が見え隠れする。



・・・・・・あ、また特記事項だ。えっと、あむちゃんはなんだかんだで暴走し気味な恭文君のストッパーでもある。

蒼凪君の項目で解説した改善点の一つの解決法が、あむちゃんの存在。

強くて優しい言葉を持つあむちゃんだから、恭文君も止まるという選択を出来るって書いてる。



僕はなんとなしに二人を見てみる。なお、恭文君はようやく涙を拭いて復活した。





「・・・・・・あむ、このクッキー美味しいね」

「そうだね。うちから持ってきたのなんだけど、気に入ってくれてよかったよ」



とりあえず、そういう役割になったんだね。うん、知ってた。だって、すごい意気投合してるみたいだし。

僕が留学して4ヶ月とかそれくらいの間に、着実に絆を深めてたんだね。・・・・・・フェイトさん居るのに。



「うーん、このアミュレットダイヤがどうなるのかが気になるね」

「すみません。何分俺達も一回だけしか見ていないため、能力に不明点が多く」

「あぁごめん、別に三条君を責めてるとかじゃないんだ。
ただ、ダイヤの子とも会ってみたいから、それも含めてね」

「納得しました」










とにかく、あむちゃんのことは分かった。僕が居ない間に色々変化したのも理解したよ。





次は・・・・・・辺里君の項目だね。我らが王様が実質四番手なのは、どうしてだろ。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



※ガーディアンメンバーの能力考察・その3 辺里唯世&キセキ





「というか、今更だけどキャラなり出来ないのって、僕とリインちゃんだけ?」

「そうなるわね。歌唄と色々あった間に、唯世もややも、海里もキャラなり出来るようになったから」

「でも、藤咲君もリインさんもまだしゅごキャラ自体が生まれてないんだし、ここは仕方ないんじゃないかな」



辺里君が若干苦笑いでそう言うのは、当然の事だと思う。というか、ごめんね。

僕、てまりが居たしなぁ。というか、今も居るんだけどたまごの中だしなぁ。



「とにかく、辺里君とキセキのキャラなりは」

「プラチナロワイヤルだな。王足る僕にふさわしい姿だ」

「いや、あの・・・・・・あれは実は少し恥ずかしいんだ。白っぽくてフリフリだし」





とりあえず、色々置いてかれてる感は置いておく。・・・・・・僕、ユニゾンとかも無理だしなぁ。

プラチナロワイヤルは、浄化技のホワイトデコレーションとホーリークラウンが主な技。

ただし、弱点もある。辺里君の性格の問題で、『攻撃する』という行為への適性が低いらしい。



辺里君は王子様キャラじゃないと、基本温厚で優しい子だからなぁ。この辺りは仕方ないよ。

仕方ないんだけど、話はここでは終わらない。

攻撃に関してはサッパリなプラチナロワイヤルには・・・・・・辺里君には、一つの特化部分がある。



それはホーリークラウンを用いた高い防御能力。ホーリークラウンでの防御は、相当な硬度を有していた。

蒼凪君とフェイトさん達の見立てでは、辺里君はその性格上『守る』という事に関しては力を発揮しやすいらしい。

訓練の中で色々試した結果、キャラなり時のホーリークラウンは恭文君の本気の攻撃も防げたとか。



辺里君の生来の優しさや温厚さが、ホーリークラウンに強くて硬い力を与えている。・・・・・・あー、これも納得だ。

やっぱりキャラなりは、その人のなりたい自分の姿だもの。使える能力も、それに沿ったものなのが当然。

辺里君はきっと、傷ついた人をちゃんと守れる優しい王様になりたいとか思ってるんじゃないかな。だからこうなるんだよ。





「とにかく僕は攻撃関係が本当にさっぱりみたいなんだ。
補助や防御のために能力を使う事に関しては、適性があるらしいんだけど」

≪ですから訓練の方針としては、マスターやあむさんの前に出て敵の攻撃を全て防ぐフロントガードとしての基礎を身につけてもらっています≫

「文字通り、盾役ってこと?」

≪はい。でも、それだけではありません。防御だけでは、単独戦闘時には押し切られる事は明白です。
この辺り、マスターが主導で戦闘のコツを実地で叩き込んでいます≫





なんでも歌唄ちゃんとのあれこれで、件の月詠幾斗に四人がかりでそうとう好き勝手されたらしい。

恭文君ありきになるのがマズいと本格的に思い出したのは、そこかららしいんだよ。

とにかく、辺里君が現在目標としている事は三つ。一つは、全体的な防御能力の向上。



ホーリークラウンで防ぐ時、ただ腕を出してるだけじゃない。身体全体を使っている。

そういう時どういう風にすれば安全に攻撃を防げるかを、実地で覚えている最中とか。

二つ目は近距離での戦闘基礎。ここが恭文君が鍛えている所らしい。



ホーリークラウンが至近距離で破られた時に備えてって感じかな。

回避と防御の基礎の基礎を教えてるとか。・・・・・・へぇ。

恭文君が人に何かを教えるかぁ。なんというか、どんな心境の変化だろ。



僕の見立てでは、そういうの苦手そうなのに。とにかく、三つ目は・・・・・・あれ?





「ホーリークラウンの運用力の強化?」

「あー、それも僕が教えてるとこ。唯世のホーリークラウンって、色々な使い方出来るのよ。
攻撃はさっぱりでも、エネルギーで相手を包み込んで動けなくしたり」

≪主様が実験に付き合って、それをやられて脱出で苦労したの。
あとあとジガンは知らないけど、クッションみたいに使った事もあるって聞いてるの≫

「あぁ、歌唄とやり合った時のアレか。なぎひこ、唯世くん凄いんだよ?
ホーリークラウンで王冠を作って、それで落下するヘリをポスンって受け止めたの」

「落下してきたヘリを受け止めたのっ!? ・・・・・・辺里君、それは普通にすごいと思うんだけど」





でも、納得した。辺里君の性格のためにホーリークラウンが『守る』事に特化しやすいから、そうなるんだね。

そのヘリには当然人も乗ってたらしいから、それでだよ。だから、上空から落ちてくるヘリも無傷で受け止められた。

蒼凪君が言う運用力というのは、この辺りの話。そういう風に、色んな使い方が出来るようになれってことだね。



でも、辺里君に関してはハードルが高いような。これ、ちゃんと出来るのかな。





「とりあえず、僕とかフェイトが教えてるのは基礎の基礎なんだ。
そんなぶっちぎりですごい技術を教えてるとかじゃないの。てゆうかさ」

「うん?」

「唯世はガーディアンのキングだもの。チェスだって、キング取られたら負けでしょ?
なので、ちょっとは頑張ってもらわないと困る。どうも予想より時間ないみたいだし」

「・・・・・・そうだね。この間のシュライヤ皇太子の一件から考えても、イースターはまた動き出してる。蒼凪君、悪いんだけどお願い」

「うん、任せて。ミッドに行ったら、みっちりやるから・・・・・・まぁ、なんとかなるでしょ」










やっぱり、恭文君少し変わったかな。というより、馴染んだのかも。





僕の知っている頃より、ずっとガーディアンの中に馴染んでるんだ。なんだか微笑ましいかも。





さて、次は・・・・・・あの子、なんだよねぇ。あははは、やっぱりツッコんだの失敗だったかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



※ガーディアンメンバーの能力考察・その4 真城りま・クスクス





「りまたんとクスクスちゃんのキャラなりは、クラウンドロップ。もう可愛らしいんだよ。
初登場の時も、やや驚いちゃった。だって、普通にキャラなり出来るって聞いてなかったし」

「そうね。今となっては、キャラなり完了直後にストラグルバインドで縛られたのも、いい思い出よ」

「縛られたよねー。もうぐるぐる巻きで、体育館の床にベターって張り付けられたの。
それでそれで、次はブレイクハウトでコンクリの手に掴まれて、危うく串刺しになるところだったのー」



りまちゃんとクスクスの、妙にバイオレンスな発言を僕は聞き逃せなかった。

だから、当然のようにクッキーを食べている恭文君を僕は見る。



「・・・・・・恭文君、そんな事したんだ」

「だって、速攻で終わらせる必要あったし。それでみんなヒドイんだよ? 叩き潰すの無しだって言うの。
怪我させるなとか、玉のような状態で家に返せとか言うの。理不尽でしょ?」

「うん、全然理不尽じゃないねっ! 理不尽なのは君だからっ!! むしろ僕もみんなと同意見なんだけどっ!?」





りまちゃんとクスクスのキャラなりはクラウンドロップ(CG)。そして可愛いらしい。

使用する技はジャグリングパーティーとタイトロープダンサー。

ジャグリングパーティーは、ジャグリング用のピンを大量発射する技。



タイトロープダンサーは、複数本発生させた縄で相手を拘束する技。

りまちゃんはリインちゃんと同じく、空間制圧能力に長ける射撃タイプの能力持ち。

比較的りまちゃんと戦闘スタイルが近いティアナさんが、あれこれ教えてるとか。



りまちゃんのポジションは、中央で射撃援護をするセンターガードが妥当。

あ、特記事項があるな。えっと・・・・・・運動能力が低い?

そのためにキャラなり時でも、あまり激しく動いたりするのは苦手と書いてある。



基本は足を止めて、視野を広く持っての射撃戦。自分への攻撃は、撃ち落とすなりして対処。



・・・・・・うむぅ、これすごいな。パっと読みでも、大体の事が分かった感じがするから不思議だよ。





「ティアナさんから、色々教わってるよねー」

「そうね。おかげで助かった事もあったし、そこは本当に感謝しないと。でも、あとは何が出来るんだろ。
もちろんティアナさんから教わった基礎を高めていくのは当然としてよ?」

「うーん、りまの場合だと中央で腰を落ち着けるポジションだから・・・・・・やっぱり指揮能力や索敵能力とかじゃない?
視野を広く持って、隠れてる敵とかを探し出す。中央から前と後ろに的確な指示を飛ばす。実際、ティアナがそれだから」

「恭文君、そうなの?」



僕達は今ひとつその辺りが分からないから、恭文君に聞く。

恭文君はノンビリと紅茶を飲んで、それを味わってから頷いた。



「そうだよ。ティアナ、射撃と味方への指示やそういうので戦うタクティカルガンナーだから。
基本リーダー気質なのよ。多分現場での指揮適性は、フェイトより上じゃないかな」

「フェイトさんは結構恭文さんと前に出て対処って言うのが多いですし、戦闘指揮は弱いですしね。
執務官として、捜査関係の業務とかは大丈夫ですけど」

「フェイトは能力的にも高い分、結構自分で抱え込む方だしなぁ。指揮官適性は、そういうのもあるのよ」



あぁ、なるほど。指揮官って乱暴に言うなら、人に指示してお任せなポジションでもあるからなぁ。

辺里君も見てると結構自分だけで仕事を片付けようとするところがあるし、そういう人は指揮官としては弱いのか。



「りま、そういう癖はなくそうか。こういう部分も指揮適性に関わってくるから」

「そうね、そうするわ。なんだかそれはそれでダメそうだし。
でも指揮って事は、唯世とかと同じような立ち位置よね」



りまちゃんの言う事を、資料に目を通しながら考えてみる。・・・・・・あぁ、そうなるのか。

僕が×たま狩りに参加してる時も、大体辺里君が指示を出してたからなぁ。



「でも、サブリーダーって言うのかな。そういうのが居ると色々楽ではあるんだよね。
仮に唯世が動けない状態になっても、そのサブリーダーがチームをまとめればいいんだし」

「あ、それあたしちょっと分かるかも。去年のガーディアンだと、丁度空海がそんな位置だったのかも」

「そうだね。相馬君は年長者だし、僕も随分助けられた」

「では、ガーディアンのサブリーダーを決める必要があるかも知れませんね」



三条君がそう言って、僕は一つ思いつく。それなら蒼凪君やリインちゃん・・・・・・あ、これはだめだな。



「それならまず、蒼凪君とリインさんは除かないとね」

「えー、どうしてー!? 恭文とリインちゃんならやや達より経験あるし、そういうのバッチリじゃんっ!!」

「エース、それではまた蒼凪さん達に頼りっ放しになってしまいます。意味がありません」

「あ、そっか」



今三条君が言ったみたいな問題があるから、訓練したり能力考察してるんだもの。だから、二人はダメ。

まぁサブリーダーって言うと大仰だけど、補佐役というかフォローや抑えに回る役割って事かな。



「当然だけど僕と三条君は除かれるし・・・・・・うーん、やっぱり真城さんがいいのかな」

「サブリーダーか。・・・・・・私に出来るかな。でも、楽しそうではあるわね」



言いながらりまちゃんが僕を冷たく見る。・・・・・・僕は気にしない事にした。



「騙される器量のない男を、徹底的にいじり倒すとか出来そうだし」










とりあえずこの子は、サブリーダーの意味を勘違いしているよ。そしてドS過ぎるから。





とにかく、最後だよ最後。最後はややちゃんか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



※ガーディアンメンバーの能力考察・その5 結木やや&ペペ





「いやぁ、ついにペペ達の時代でちね」

「そうだね、ペペちゃん。ふふふ、ややはすごいよー? フルバックなんだよー?」

「・・・・・・恭文君、僕はどう答えればいいのかな。ややちゃん、すごい自慢気なんだけど」

「遠慮なく無視しといていいよ? とにかく、ややとペペのキャラなりはディアベイビー。
ぶっちゃけ戦闘能力は皆無。だってややとペペだし。赤ちゃんキャラだし」



恭文君がクッキーを手に取りながら・・・・・・って、よく食べるよね。そのクッキーそんなに気に入った? でも、それには同意。

確かにややちゃんはキャラチェンジの時も、身の丈程もあるがらがら振り回してバランス崩してこけて、泣いたりしてたしなぁ。



「ただ、ディアベイビーの凄さはそこじゃないのよ。ディアベイビーは、後方支援に特化した能力だから」

「あぁ、そう言えばフルバックってそういうポジションだよね。・・・・・・えっと資料資料」



ディアベイビーが現在使える能力は、二つ。一つは×たまを眠らせるメリーメリー。



「・・・・・・あの、みんな。特記事項でこれを使うとややちゃんとペペも寝るって書いてるんですけど」

「・・・・・・すみません、事実です」

「だからメリーメリーは、僕の方から使用に制限付けてる。
単独行動の時には絶対使わないようにってさ。それで寝ちゃったら、どうしようもないもの」





よし、ここは気にしない。そしてもう一つは、ミニサイズの黄色いアヒルを呼び出す技。

その名もゴーゴーアヒルちゃん。・・・・・・そのまんまだよね。ややちゃん、これはいいの?

とにかくややちゃんは直接的に殴り合いとかは出来ないけど、これで味方を支援する事が出来る。



あぁそっか。フルバックって、アミュレットクローバーやディアベイビーを想像すればいいんだ。納得した。





「えっへんっ! なぎー、やや達の凄さが分かったかなー!?」

「分かったでちかー!?」

「うん、分かった。ややちゃんもペペもすごいね」

「「えっへんっ!!」」

「・・・・・・メリーメリー使って、自分も寝たりしなきゃもっとすごいけどね」



恭文君が容赦なくツッコむと、ややちゃんとペペの胸に大きな何かが突き刺さった。

それにより、二人が苦しげに右手で胸元を抑える。



「てゆうかやや、前にも説明したけどフルバックは基本単独で戦闘は出来ない人が多いのよ?
まぁ、サリさんみたいな四つのポジション何でもござれって人も居るけどさ」



春に僕が『なでしこ』として会ったサリエルさん・・・・・・あぁ、そう言えばそういう説明を受けてたっけ。

全部のポジションを瞬時に切り替えられる、スーパーオールラウンダー。だから、恭文君でも負け越しが多いとか。



「あぅ、分かってるよー。メリーメリーで寝ちゃうのもそうだけど、ややは恭文みたいに一人で戦う強さも唯世みたいな防御能力も無いもん」

「そうだよ。だからややが×たまだったり×ロットと浄化のために戦う場合は、単独戦闘は絶対アウト。
護衛役の人間が絶対必要になる。もしくは、ゴーゴーアヒルちゃんを上手く運用して凌ぐしかない」



恭文君の話を聞きながら、資料にもう一回目を向ける。・・・・・・あぁ、なるほど。

支援に特化したポジションだから、それ以外の事は不得手になりやすい傾向があるのか。



「うーん、それならアヒルちゃんとうまく頑張れるようになるのが、ややの目標かな。
こう、ただみんなにいけーって言うだけじゃなくて、色んな指示が出来るようになるの」

「そうだね。あとはメリーメリーで寝ないようにする事。それさえ無ければ、相当強力な手になるもの」

「ねー、恭文的にはどんな指示があると思う?」

「うーん、そうだなぁ。数は大量に出せるんだし、基本は物量戦法?
あとは・・・・・・ほら。実験であのアヒル達は何気に器用だって分かったじゃん」

「あ、そうだったそうだった。くちばしで物を咥えたり、羽で手を作って殴ったり物を持ったり」





そ、それはもうアヒルの領域超えてるんじゃ・・・・・・あれ?



くちばしで物を咥える? 手で殴ったり持ったり出来る?



・・・・・・あ、一つ思いついた。よし、これは機会があったら試してみようっと。





「そういう能力の活用方法も考えないと。あとは攻撃回避をしっかりだね。やや、何気に運動能力高いんだもの。
襲い来る攻撃をしっかりと避けて、アヒル達と協力してみんなを支援して、やられにくい赤ちゃんキャラになる」

「うん、そこも頑張ってるよー。あ、それでそれで、昨日体育でドッジボールやったんだけどね。
フェイトさんから教わった事思い出しながらやったら、球が全然当たらないのー」



ややちゃんが胸を張って自慢気にしている。でも、そんな自慢気なややちゃんをリインちゃんは冷たい目で見ていた。



「・・・・・・ややちゃん、その代わりボールも取れなくて、結局時間切れだったじゃないですか」

「う・・・・・・い、いいんだもんっ! だってボールは当たったら痛いんだよっ!? やや、あんな豪速球は捕れないもんっ!!」

「だからって、避けてばっかりじゃゲームにならないのですっ! 時には勇気を出して取る事も大事なのですっ!!」

「嫌だー! ややは赤ちゃんキャラだから、そういうの出来無くてもいいのー!!」

「・・・・・・やや、アンタさすがにそれはダメだって。ほら、見てみな? みんな呆れてるし」




あむちゃんの言うように、全員がややちゃんを見てため息を吐く。

・・・・・・あ、特記事項がまた有った。ややちゃんとペペは、とにもかくにも赤ちゃんキャラ。

そのために打たれ弱いところがあるので、フォローはしっかりしてあげて欲しい・・・・・・と。



そうだね、そこは絶対だよね。だって今、またキャラチェンジしちゃったし。





「やだやだー! 痛いの嫌いー!! ボール怖いもんっ! あんなの絶対捕れないもんー!!」



首元から白いよだれかけをかけて、思いっ切りダダをこねてる。・・・・・・変わって、ないなぁ。



「やや、ダメだね。そういう時こそアヒルちゃん達にお願いすればいいんだから」

≪主様の言う通りなの。アヒルちゃんを全面に展開してキャッチで解決なの≫

「あ、そっか。恭文もジガンちゃんも冴えてるー! よし、次の体育の授業はそれで」

「バカっ! ダメに決まってんでしょっ!? 体育の授業でキャラなりしてキャッチしたら、絶対アウトじゃんっ!!」





あむちゃんが居ると、僕がツッコミしなくて楽だよなぁ。色々お任せしちゃってるのが悪いけど。

とにかくこれで全員分は目を通した。もちろん今のはザッとだから、また何度も読む必要はある。

まぁ分からない所は書いた本人である三条君や、専門家である恭文君に聞けばいいか。



頬を膨らませて不満そうなややちゃんはともかくとして、僕は三条君の方をもう一度見て・・・・・・お礼を言う事にした。





「三条君、ありがと。これ、大事にするね」

「いえ。・・・・・・藤咲さん、ガーディアンの事、よろしくお願いします」

「うん」










こうして僕はこの日、三条君からJチェアの任を引き継いだ。

夏休みの間はずっと居るけど、それでも一区切り。

もうすぐ終業式で・・・・・・夏休み。なんだろ、楽しみだな。





異世界で夏休みを過ごすなんて、この先何度あるか分からないし、しっかり満喫しようっと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なんか、ちょっと寂しいね。いいんちょ、これでJチェアじゃなくなったんだよね」

「そうだね。一区切り・・・・・・だもんね」



夕方、あむと一緒にいつもの川原を歩く。なお、リインとりまはティアナと一緒に私物の買い出し。

もちろん、シオンとキャンディーズも一緒に帰りの道を進んでる。そして・・・・・・暑い。



「ね、恭文」

「うん?」

「いっぱい、思い出作ろ?」



右隣を歩くあむが、僕を見ながら優しく微笑んだ。



「ミッドでいっぱい思い出作って・・・・・・離れてもあたし達が友達で仲間だって、忘れないようにしたいな。
変わっちゃう事もいっぱいかも知れないけど、変わらないものだってあるから。それをいっぱい作りたい」

「・・・・・・そうだね。うん、作ろうか。というか、きっと作れるよ。ミッドは何気に面白いことが沢山なのよ?」

「なら、楽しみだな。あー、でも荷物どうしよう。まだまとまらないんだ。
服を大量に持っていくと大変だって分かってるのに、削れないの」

「女の子は色々大変だしね。でもフェイト・・・・・・あぁ、帰郷だから着の身着のままでいいんだ」



夏休みまで、本当に目前。そんな中、新しい仲間が着たり総集編みたいな会議をしたり。

沈む太陽に照らされながら、僕とあむはゆっくりと家路を進む。二人とも笑顔なのは、当然の事だと思った。



「・・・・・・居た。恭文、あむ」



二人でノンビリ帰ってると、後ろから声。そちらをあむと二人見ると・・・・・・フェイトと歌唄がこっちに向かって走ってくる。



「歌唄っ! というかフェイトさんも一緒って、どうしたのっ!!」

「ちょっと時間取れたから、アンタ達に会いに来たの。
それでまだ帰って来てないって言うから、フェイトさんに探してもらった」

「・・・・・・フェイト、断れなかったの?」

「うん。殺し屋の目で見てくるから」



そっか。そこは・・・・・・うん、予測してた。して然るべきだと思う。歌唄、そういうキャラだし。



「エルとイルは? 居ないみたいだけど」

「あの子達は、うちでお昼寝よ。あれからちょっと忙しくて、それにずっと付き合ってくれてたから」

「そっか。それで何? 第三夫人になるために恭文にアプローチするなら、あたしいらないよね」

「歌唄、今すぐ帰ってくれないかなっ!? てゆうか、第三夫人無理だからっ! 僕はもう三人体制で限界なんだよっ!!」

「私も同じくだよっ! その・・・・・・だめっ!! ヤスフミは私とリインの婚約者なんだよっ!?」



とりあえずフェイトは抱きつかないでー! 嬉しいけど、それは違うと思うのー!!

このふかふかの胸の感触が幸せだけど、それはだめー!!



「違うわよ。ちょっとマジな話。まぁ、アンタ達にはその・・・・・・話しておかなきゃいけないって思ってさ。
ホントは明治時代の時に話せれば良かったんだけど、ちょっと覚悟決まらなくて」

「話?」

「私やイクトの事。もっと言うと・・・・・・私達の、両親の事」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕達は近くの芝生が生い茂る坂に座って、お話。





歌唄としては重い話なので、話すのに時間がかかっても、無理はないのよ。










「・・・・・・そう。恭文やフェイトさんは知ってたんだ」

「うん。あなたと敵同士だった時、イースターの動向を調べて・・・・・・ごめん」

「大丈夫よ。てゆうか、敵同士だったんだし、仕方ないじゃない。謝る必要ない」

「あのフェイトさん、歌唄と恭文もなんだけど・・・・・・その、歌唄とイクトの両親って」



僕達から話すのもアレなので、僕もフェイトも黙ってる。だから、歌唄が口を開いた。



「私達の両親は、月詠或斗あるとと星名奏子。母の実家である星名という家は、もともとイースターの創設者の家系なのよ」



歌唄と猫男の母親は、その家系の一人娘だった。つまり、月詠兄妹はその直属の血縁者になる。



「それで月詠或斗は・・・・・・まぁ、アンタは知らなくて当然よね。
ちょうどアンタが生まれた頃に有名だった人だから」



月詠或斗という人は、日本屈指の天才バイオリニスト。なお、僕は知ってた。



「その人のバイオリンね、すごく素敵な音色なんだ。
聞いてるだけで幸せになれる、強い輝きに満ちた演奏をするんだ」



そう言うと、歌唄もそうだしあむもびっくりした顔で僕を見る。



「・・・・・・アンタ、あの人の事知ってるの?」

「実際に会った事はないよ? ・・・・・・フィアッセさんが、前に一緒のステージを踏んだことがあるんだって。
フィアッセさんがその時のステージを録画したテープを持っててさ。見せてもらったことがあるんだよ」





フィアッセさんが、イギリスで知り合いに頼まれて、その人が経営している小さな食堂でうたった事があるらしい。

もう大分前・・・・・・フィアッセさんが海鳴で療養生活を送る前だから、10年以上も前。

僕がフィアッセさんの護衛をしていた時に、特別にって言って見せてもらったの。フィアッセさん、嬉しそうだった。



フィアッセさん曰く、月詠或斗のヴァイオリン演奏には、人を幸せにする力がある。



だからその演奏に圧されちゃいそうになったのが、辛かったって苦笑いで言ってたけ。





「その時は、僕は名前も聞いてなかったのよ。
ただただ、ヴァイオリンもフィアッセさんの歌も素敵だったから」



というか、フィアッセさんも話そうとしてなかった。それがどうしてか疑問に思わなかったのよ。

いや、答えなら分かってた。その時の映像を見ているフィアッセさんの瞳が、どこか寂しそうだったからだ。



≪今回の事であなたのお父さんの事を少し調べて、顔写真を見て・・・・・・それで分かったんですよ≫



何しろ8年近く前の事だったからなぁ。僕も何気に記憶の片隅だったのよ。

うー、でもちょっと反省かな。『月詠』って苗字を聞いて、ピンと来ても良さそうだったのに。



「そうだったの。あの人の演奏、そんなに素敵だったんだ」

「うん。それで歌唄」

「分かってる。・・・・・・それでね、父と母が結婚する時、周りは猛反対だったのよ。
当時の月詠或斗は、全くの無名で駆け出しのヴァイオリニストだったから」





月詠或斗が日本屈指のヴァイオリニストと呼ばれるようになったのは、丁度歌唄が生まれたくらいから。

イースターの創始者の家系である星名家としては、それは素直に頷ける状況じゃない。

やっぱり家族としてはイースターを立派に引き継げる、力のある人に結婚して欲しかったんでしょ。



でも、二人はそれを押し切って結婚した。・・・・・・月詠或斗に、ある条件を飲ませる事によって。





「星名の家は、父に時期が来たらヴァイオリンを止めて、経営に身を入れろと条件を突きつけたの。
そして、父はそれを飲んだ。飲んだ上で母と結婚して、ヴァイオリンを続けて、私とイクトが生まれた。でも」

「でも?」

「・・・・・・星名の家の祖父。イースターの前会長が亡くなった日の夜、父は失踪した。
愛用のヴァイオリン一つ持って、私とイクト、母を置き去りにしてね」





失踪には、もしかしたら何か事情があったかも知れない。でも、僕達の調査でもそこはさっぱりだった。

まぁそこの辺りの理由はどうあれ、星名の家はカンカン。だって、自分達との約束を反故にしたわけだし。

当然のように月詠或斗から置いていかれる形になった月詠母子への風当たりは、相当に強かった。



ただ、それでも歌唄のお母さんは帰りを待ったらしい。帰りを待って・・・・・・待って・・・・・・ダメだった。





「失踪から数年後。父が失踪当時持ち出したヴァイオリンだけが、海外で発見されたの。実質死亡扱いよ。
そして、それにより母の糸が切れた。・・・・・・一之宮一臣と、再婚したのよ。母まで私達を裏切った」





なお、第17話で説明したように、この結婚は政略結婚になる。

当時の一之宮専務は、婿入りして星名性になったのよ。そして、月詠兄妹の義父になった。

肝心要の歌唄達の母親である星名奏子さんだけど・・・・・・星名一臣のいいなりらしい。



現在の月詠母子は、星名一臣という暴君によって引っ掻き回されてるのも同じなのよ。





「じゃあ、あの・・・・・・イクトや歌唄がイースターの仕事をしていたのって」

「それが理由よ。これが罪滅ぼしであり、当然の義務だと言われてね。
まぁ、私は歌手になりたいって夢もあったから、利用してる気持ちだったけど」

「そんなの、おかしいよ。なんで・・・・・・なんで親のために、子どもがそんな目に」

「それが世の中だからよ。私達のような子どもや、母のような弱い人間は権力や数の暴力に潰されるだけ」



そこまで言って歌唄は自嘲の笑みを浮かべて、僕とフェイトに視線を向けた。



「まぁこの辺りは私なんかより、色んな事件に関わってる恭文やフェイトさんの方が良く知ってると思うから、これ以上は言わない」





僕はフェイトと顔を見合わせて、苦い顔をするしかなかった。まぁ、確かにその通りなのよ。

世の中ってのは、基準が定まってない何かで動いてる。そして、集団の都合が最優先される。

だから、その集団の意図からはぐれたり、存在を認めてもらえない人間は、潰される。



僕もそういうのは覚えがある。僕も局という組織のルールを絶対とするなら、そっち側の人間だし。





「だからさ、私は力が欲しかったの。弱い自分を切り捨ててでも、潰されないだけの力が。
だから、エンブリオが欲しかった。イクトを助けるために使って、イースターには渡さないつもりだった」



歌唄は、ゆっくりと顔を上げて空を見上げる。その空に映るのは、水平線に消え始めた赤い夕陽。



「それがあればイクトを助けられると思ってた。でも・・・・・・違ってたわ。私は、そんなに強くなかった。
弱い自分を切り捨てて、今度は自分の夢まで・・・・・・命や未来まで切り捨てる所だった」



歌唄は立てた右膝を両手で抱えながら、ジッと夕日を見てる。

僕達は、夕日に照らされている歌唄を見ている。



「自分を助けられない人間に、人を助けられるわけがないのよね。『守る』なら、その中には自分を入れなくちゃいけない。
どんなに大変でも、絶対にそうしなくちゃいけない。その事にね、ようやく気づいたの。アンタや・・・・・・恭文のおかげでね」

「・・・・・・歌唄」



あむが小さく呟きながら、歌唄を見る。歌唄は視線を落として、今は川を見てる。

頬が赤く染まってるのは、きっと夕日のせいじゃないと思った。



「あの、あたしは別にそんなつもりじゃ」

「歌唄、ようやく気づいてくれたんだね。いや、僕が初めて会った時から言ってる通り」



次の瞬間、裏拳が飛んできた。それを僕はモロに顔面に喰らい、後ろに倒れる。



「・・・・・・ヤスフミ、それは自業自得だと思うんだ」

≪主様は調子に乗らなければ、とってもいい子なの≫



はい、自分でもそう思います。でも、痛いの。

あのね、すごく痛いの。ちくしょお、歌唄の奴・・・・・・本気でやりやがった。



「うぅ、歌唄まで暴力的になってる。おかしい、あむに続いて歌唄までティアナの影響を」

「違うわよ。まぁ・・・・・・そのアレよ。アンタ達には変なパワーがある。・・・・・・いや、あむはあんま無いか」

「あたしをいきなり除外っ!?」

「周りを、世界を、常識すら簡単に変えちゃうだけのパワーが。私・・・・・・思うんだ」



あむは不満そうだけど、歌唄はこれで問題無いらしい。普通に話を続ける。



「そういう子は周りの人達を、悲しい今をどんどん変えなきゃいけない。そういう義務があるとさえ思う」



歌唄が僕の方を見る。さっき僕を殴った人間と同一人物とは思えない、優しい潤んだ瞳を僕に向けていた。



「それがアンタの中に確かにあって、あむが極微量持ってる輝きよ」

「普通にあたしを除外し続けるなー! しかも極微量って言うなー!!」

「だから、まぁ・・・・・・あれよ。私だって、少しは変わっていきたいの。だから」

『だから?』



鼻を押さえながら、僕は起き上がる。歌唄は視線を前に向けて、僕から目を逸らすように・・・・・・ポツリと呟いた。



「イクトを助ける権利、アンタに・・・・・・アンタにだったら、少しだけ分けてもいい。
てゆうか、私も一緒に戦うから。アンタに私の歌を、想いを届け続ける」



歌唄がまた視線を僕に戻した。さっきよりも強い瞳で、僕を見ていた。

というか、またフェイトが抱きついて・・・・・・ぐ、ぐるぢいです。



「アンタが戦い続けるなら、私のありったけでうたって背中を押し続ける。
明治時代でのアレコレを通じてね、色々考えて・・・・・・そうするって決めた」



フェイトの温かくて大きな胸の感触とか、柔らかい匂いとか味わえない。だって、首決まってるから。



「私さ、面と向かって言うのもアレだけど・・・・・・アンタの事、好きみたいなんだ。
第三夫人かどうかは別として、一生付き合い続けるから。そして狙い続けるから」



歌唄・・・・・・あの、えっとごめん。その前に僕を助けて。呼吸、出来ないの。



「フェイトさんやリインには勝てるかどうか分からないけど、やるだけはやってみたいの。いいわよね?」

「だ、だめっ! ヤスフミは私とリインの婚約者なんだからっ!!」

「答えは聞いてないわ」

「聞いてってばー!!」

「というか、あたしを置いてけぼりにするなー!!」



・・・・・・く、苦しい。真面目に呼吸が・・・・・・器官が、圧迫されてる。



”お兄様、楽しそうですね”

”楽しくないわボケっ! そんな微笑ましくしてないで、お願いだから僕を助けてー!?”










なお、この後顔が真っ青な僕にあむが気づくまで、解放してもらえなかった。





や、やばかった。新シリーズ始まって3話目でお亡くなりコースかと思ったもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・早速ですが、僕はあれから歌唄やあむと別れて家に戻って・・・・・・現在、とても頑張ってます。

だから自宅のベッドの上で運動なんてしつつ、うーんと唸っているのです。その原因は、ある女の子への申し訳なさ。

というか、感謝? 歌唄のあれこれでプレッシャーかけちゃってるしね。





だから・・・・・・ちょっと頑張ったりしてる。










「・・・・・・ヤスフミ、もっと・・・・・・もっと突いて」



息荒げにベッドの上でうつ伏せになりながらそう口にするのは、フェイト。

顔は赤く、息も荒い。どうやら、相当これが気持ちいいらしい。



「フェイト、突かれるの好きなの?」

「うん、好き」

「じゃあ、どんな風に突かれたいのかな。ちゃんと言って欲しいな」



フェイトは、僕の方を振り返りながら見る。困ったような顔で見てるので、にっこりと笑って上げた。



「ヤスフミに・・・・・・グリグリ突かれるのが好き。
グリグリされると、身体の奥まで当たってる感じがして、気持ちいいの」

「そっか」



僕はフェイトの背中をそっと撫でる。そうすると、フェイトの身体が少し震える。

指先でなぞるようにしてるから、くすぐったいんだと思う。



「じゃあフェイト、おねだりしてみようか。もっとしてくださいって。
身体の奥をグリグリ突いて、私を気持ちよくしてくださいってさ」

「い、いや。そんな恥ずかしい・・・・・・というか、エッチな言い方、禁止」

「じゃあ、もうしてあげない。フェイトは、今のままだよ?」

「それもいや。あの・・・・・・なら、頑張る。ヤスフミ、もっとして・・・・・・ください。
私の身体の奥を、グリグリ突きまくって・・・・・・私を、気持ちよくしてください」



だから、僕はその先をフェイトの身体に宛がって・・・・・・一気に押し込む。



「ふぁぁっ!! ・・・・・・や、やすふみ・・・・・・あうぅ、いきなりすぎ、だよぉ」

「いいの。だって、フェイトはちゃんとおねだり出来たんだもの。
フェイト、よく頑張ったね。偉いよ。うん、偉い」



僕は左手を伸ばしてフェイトの頭を撫でて上げる。フェイトは、嬉しそうに笑う。



「そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・・・・うぅ、私やっぱり、ヤスフミに調教されてるよね」



なお、はやてから借りたエッチ小説で、こういう用語を覚えたらしい。

なんでもコミュニケーションの勉強のために頑張ったとか。



「だって、こういう時でもエッチな事を言わされちゃうんだもの」

「だめ?」

「・・・・・・だめじゃ、ない。私を物扱いは、絶対嫌だよ?
でもその・・・・・・愛情表現としての言葉攻めでいじめられるのなら、大丈夫」

「なら、よかった」



・・・・・・でも、柔らかいなぁ。温かいし・・・・・・こうしてるだけで、幸せ。

フェイトも瞳を閉じて突かれてるのを味わってるみたいだし、この光景は中々。



「でもフェイト、こってるって言ってたけど、すごく柔らかいよ?」

「そう? でも、ちょっとキツイんだ。うぅ、身体鈍ってるのかな」

「というか、一生懸命家事してくれてるしね」



一旦、背中を押し込む親指の力を少し緩めて、こちらを向いていたフェイトの右の頬にキスをする。



「・・・・・・ありがと」

「ううん。・・・・・・あぁ、でも気持ちいい。ヤスフミの手が温かいせいかな。余計にそう感じるよ」

「それなら、コリを温める効果もあるね」

「そうだね。あと、一杯触ってもらってるせいかな。すごく幸せ。・・・・・・ふぁ、そこ。
そこもっとグリグリして欲しい。うん、そうだよ。あぁ、ヤスフミ上手」





・・・・・・エッチなのは恥ずかしいと言っているのに、何故に声がこんな色っぽいんだろ。

あ、説明遅れたけど、僕は身体がコリコリでうつ伏せなフェイトの上に馬乗りになってマッサージしてます。

だからフェイトの背中のツボを、さっきから親指でグリグリ突いていたの。



フェイトはそれが気持ちいいらしくて、とっても幸せそう。うん、よかったよかった。





「フェイト、声がエッチだよ? そんな声出してると、抱きついちゃうから」

「ヤスフミの方がエッチだよ。だって、いきなりそんな事言い出すんだから」

「いいや、フェイトだよ。うん、絶対フェイトだね」



子作りしながらコミュニケーションしてる時も、どんどん大胆になって来てるし。

僕はマッサージを継続しながらも思った。エッチなのは、フェイトの方だと。うん、間違いない。



「違うよ。ヤスフミがエッチなんだよ。いっつも私の事いじめるし、楽しんでるし。
私がエッチだって言うなら、それはヤスフミのせいだよ。ヤスフミがエッチだから、私も影響を受けてエッチになったの」

「違うよ。フェイトは元々エッチだった。だから最初の時だって」



詳しくはFS37話を御覧下さい。そうすれば、最初の時のフェイトがドンダケ暴走してたのかよく分かると思う。



「それは言わないでっ!? と、というか結局私があの時言った事全部しちゃったんだから、ヤスフミに言う権利ないよっ!!」

「僕が強引にしたみたいな言い方、やめてくれるっ!? フェイトと二人で一緒に相談しながらでしょっ!!」

「それでもヤスフミの方がエッチなのっ!!」



フェイトは起き上がる。それで僕はベッドに後ろ向きに転げた。

すぐに起き上がるとフェイトはもう僕の前に迫っていた。



「絶対そうだよっ! ヤスフミがリードする事の方が、多いんだからっ!!」

「いいや、フェイトの方がエッチっ! 新しい事する時、ほぼフェイトの提案じゃないのさっ!!」



例えば、その・・・・・・そういうのは全部フェイトから『しよう』って提案された。

・・・・・・あとあと、お泊りデートした時のプレゼントプレイも、フェイトからだった。



「それでもヤスフミだよっ!!」

「いいや、絶対フェイトだからっ!!」

「ヤスフミっ!!」

「フェイトっ!!」



そのまま二人して膨れて睨み合う。睨み合って、僕達は気づいた。

このままでは答えは出ない。どっちがエッチか、証明する必要があると。



「ヤスフミ、それなら今から実験しようよ。どっちがエッチか、実際に試すの」

「いいよ。それでエッチだと思われる行動や反応を多くした方が負けって事でいいよね」

「うん、そうだよ。それで、ヤスフミの方がエッチだって分かってもらうんだから」

「それはこっちの台詞だよ。絶対フェイトの方が、エッチなんだから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・何の会話してるのよ」

「というか、普通にドアの前だと丸聞こえですね」



お風呂上がりに、フェイトさんとアイツの部屋の前を通りがかった。がかったら、そんな会話が聴こえた。

というか、なんか甘い感じの気配とかが放出され始めたんですけど。これ、どうするの?



「ランスターさん、すみませんけどお部屋一緒させてもらってもよろしいでしょうか。
さすがにこれは関わりたく・・・・・・あの、どうしました?」



あぁ、だめ。そうよ、いくら外見・性格・言動・声が同じだからって、この子はアイツの女装姿じゃないんだから。

お風呂上がりなのに強く感じてしまった寒気を頭を振って払いつつ、私はシオンに苦笑いを向ける。



「それもそうね。りまとクスクスのとこ・・・・・・も、マズいわよね。これがバレちゃうもの」



というか、バカげてるわ。どっちがエッチかを決めるなんて。しかも、そのためにエッチしてるのよね?

フェイトさんやアイツの出すいつもの甘い空気がここまで出てるの、そのせいよね? あははは、なんだろコレ。



「やっぱ執務官試験受けようかなぁ。この糖分は、正直堪えるわ」

「もしくは次元世界のオー人事に電話ではないでしょうか。
全く、この調子でミッドに行くのは色々不安です」

「そうね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・決着、つかなかった」



翌朝、出発前にアイツが靴を履いてからそんな事を呟いた。



「そうだね。ヤスフミ、また今日の夜に勝負だよ?」



そして、フェイトさんもこんな風に言う。なお、肌がすっごいツヤツヤ。



「ちょっとフェイトさん、なに出発間際にワケの分からない会話してるっ!? 頼むから自重してくださいっ!!」

「でも、ヤスフミはその・・・・・・やっぱり納得出来ないよっ!!」

「いいじゃないですか納得すればっ!!」



・・・・・・真面目に、オー人事に電話しようかしら。もしくは、クロノさんに相談とか。

あははは、これに首突っ込めるリインさんはすごいわ。私は正直、無理。



「とにかく、行ってらっしゃい。あ、みんなも気をつけてね。
暑くなってるし、水分補給とかもちゃんとして」

「クスクスクスクスー。フェイトさん、お母さんみたいー」

「実際、家長だから間違いないでしょ? ・・・・・・とにかく分かりました。それじゃあ行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい。あ、夕飯の買い物もお願いね」

『了解』



・・・・・・りま、アンタって強い子よね。フェイトさんとコイツの空気に耐えられるんだ。正直私には無理よ。



「恭文さん、リインにも行ってきますのキスを」

「だめ。だって、リインは僕と一緒に行ってきますじゃないのさ」










でもなんつうか・・・・・・例えばさ、こういう時に二回キスする必要性が分からないの。





なんで一つに纏められないわけ? 圧縮処理によるコンパクトさって、大事なのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・その、自分がエッチな事をよく迫ってるって言うのは自覚してる。

色々暴走して、とんでもない事口走ったりしてるのも、分かる。

でも、その・・・・・・ヤスフミと付き合う前は、こんなじゃなかったよ。





その、8年間スルーしてて、縛り付けてた負い目・・・・・・ううん、違う。これは感謝だ。

すずかやギンガも居たのに、それでもこんなダメな私を選んでくれた。

そのことがすごく嬉しくて・・・・・・だから、身体での繋がりも頑張りたいなと。





だから、その・・・・・・うん、頑張ってるよ? たくさん勉強して、初めてもその・・・・・・あげちゃったし。

もちろん恥ずかしいけど、ヤスフミが悦んでくれるのは嬉しいから。

なのに、いっつもエッチだエッチだっていじめるんだもの。昨日だってずっとそうだったし。





うぅ、絶対決着つけてやるんだから。私はその・・・・・・普通だもん。










「・・・・・・フェイトさん、全部口から漏れてます」

「え?」



現在、私とシャーリーとリースとディードと四人で家事。

ディードとリースがお昼を作って、私とシャーリーが洗濯とお掃除。



「いや、さっきのモノローグ・・・・・・私もシャーリーさんもディードさんも、聞いてましたから」

「・・・・・・その、恭文さんは基本いじめっ子なので、あまり気にする必要はないかと」



あれ、リースとディードが呆れた目で私を見てる。どうしてなのかな。何か私、ダメなのかな。



「というかですね、りまちゃんが受け入れてるのが若干気になるので、もうちょっと自重を」

「だって、ヤスフミがいっつもいじめるんだよっ!? 私だって仕返ししたっていいよねっ!!」

「そういう話じゃないですからっ! というか、フェイトおばあさん落ち着いてくださいー!!」










その後、三人になだめられて私は・・・・・・いわゆる『orz』と呼ばれる形になった。





その、えっと・・・・・・あぅ、ごめんなさーいっ! でも、その・・・・・・うぅ、ヤスフミのバカっ!!





ヤスフミがいじめっ子だからこうなっちゃうんだよっ! よし、絶対仕返しするんだからっ!!




















(第53話へ続く)




















おまけ:ドキたま電話相談室




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



クスクス「クスクスー! ドキたま電話相談室、今日はクスクスと」

ペペ「ペペと」

キセキ「ここでは初登場のこの僕・・・・・・キセキが担当したいと思う。
・・・・・・というか作者っ! 僕の出番が少な過ぎではないかっ!? もっと登場させろー!!」

ペペ「キセキたんは普通に出たがりでちね。王様キャラだからでちか?」

クスクス「というか、クスクスも出たかったのー。というわけで、本日の相談者は・・・・・・Sさんです」

ペペ「・・・・・・Sって、あの人でちか? 番組の趣旨を全く理解しないで相談してきた」

キセキ「僕が聞く所によると、実名をいくつもバラして、結果的に家族から大目玉を食らったとも言っていたな」





(誰経由の情報なのかとかは、とりあえず気にしないでいこう)





クスクス「ううん、なんか別のSさんらしいよー? とにかく、それでは言ってみよー。もしもしー?」

S『はいですぅ。うぅ、お願いしますぅ・・・・・・ス・・・・・・じゃなかった、わ、私のお悩みを解決してくださいですぅ』

ペペ「・・・・・・口調で誰か分かってしまうのが悲しいところでちね」

キセキ「ペペ、そこは言ってやるな。で、お前のお悩みはなんだ?」

S『あの、スゥはその・・・・・・すごく大好きな人が居るんですぅ。
スゥはその人のしゅごキャラではないですけど、それでもですぅ』





(この時点で色々バレてる事とかは、気にしない方向で)





S『それで、その人の夢を応援したくて・・・・・・具体的に言うと、キャラなりしたくて』

ペペ「そ、そうなんでちか。・・・・・・どこからそういう風に結びつくかが、ペペには疑問でちけど」

S『でもでも、全然私とキャラなりする気配が無いんですぅっ!!』





(何かこう、机を叩くような音が聴こえる)





S『スゥと同じ宿主のしゅごキャラの子は、とっくにキャラなりしてパワーアップ形態なんてあるんですぅっ!!
それでそれで、その宿主とその人のIFルートでは、別の子の方が先にキャラなりして・・・・・・どういう事ですかぁっ!?』

キセキ「いや、そこを僕達に言われても困るんだが・・・・・・なぁ?」

ペペ「そうでちよ。落ち着くでち。ようするに、どうしたらキャラなりしてもらえるかって事でちよね」

S『はい。このまま・・・・・・このままあの子とかその子に抜かれたら、私は現地妻7号失格で』

???『・・・・・・こらっ! アンタ何やってんのっ!?』





(アレ、なんか電話口に誰か出てきた)





S『あぁ、あむちゃんっ! どうしていきなり割り込んでくるですかぁっ!!』

A・H『当たり前じゃんっ! あたしテレビ見ててびっくりしたしっ!!
てーか、マジで自分があたしのしゅごキャラだって忘れてるでしょっ!!』

S『それでも・・・・・・それでもスゥは恭文さんの現地妻7号で』





(そこからガタガタと物音がして・・・・・・電話が切れた)





キセキ「・・・・・・おい、どうするんだ。このグダグダは一体どうしろと言うんだ」

ペペ「ペペに聞くなでち。と、とりあえず・・・・・・クスクス」

クスクス「えっとーえっとー・・・・・・変な顔ー!!」

キセキ「それでどうにか出来るわけがあるかっ! あー、なんなんだこれはっ!? なんなんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(本日の結論:『とりあえずあのバカにお説教が必要だと思った』。
ドキたま電話相談室、次回に続く・・・・・・?)




















あとがき



恭文「・・・・・・えー、みなさん。200万ヒット到達のお祝いの言葉、ありがとうございます。
一重にこれもみなさんの応援のおかげです。本当にありがとうございました」

りま「というわけで、本日のあとがきのお相手は現地妻8号の真城りまと」

恭文「あぁ、お願いだからやめてー! 普通に僕謝ったんだから、あてつけでそういう事言うのは勘弁してー!!」





(・・・・・・何気にこの子はドSだ。みんながそう思った)





りま「まぁ私はいいわよ。・・・・・・でも恭文、普通に歌唄はお嫁にもらった方がいいんじゃないの?」

恭文「無理だからー! 三人体制もアップアップなのに、四人とか無理だからー!!」

りま「大丈夫よ。そこは先輩で・・・・・・えっと、シャーリーさんが教えてくれたんだけど、伊藤誠って人が」

恭文「りま、その人は絶対参考にしちゃダメだからっ! した時点で、僕は死亡コースだよっ!!」





(悲しみのー向こうへとー♪)





恭文「というわけで、今回は拍手でいただいた考察なんかを元に構築しています。いや、二期目っぽいよね。アニメっぽいよね」

りま「それは暗に『アニメって、復習回とか多いよねー。アレかな、例えば種死とか?』・・・・・・って言いたいわけね」

恭文「はいそこ、具体名出さないでっ! 普通にアウトじゃないのさっ!!」

りま「もしくはバンクが多い?」

恭文「それもやめてあげてー! リュウタとかジンがその話をされるとヘコむんだからっ!!」





(そう、あの二人は種死で・・・・・・がふ)





恭文「そう言えばさ、種死のバンク抜きの戦闘シーン特集って動画を見た事があるのよ」

りま「某サイトで?」

恭文「うん、それで。・・・・・その時さ、最終話まで込みのはずなのに」





(子どものこーろの夢ーはー♪)





りま「・・・・・・それで、ガンダム00だけどすごいわよね。戦闘シーンほとんどバンク無しで」

恭文「そうだよねー。作画スタッフがどんどん『こうしていこう・ああしていこう』ってノリにノリまくった結果らしいけど。
でさ、多分次回でアレだよ。ミッドチルダに乗り込む・・・・・・はず。作者が追加シーンとか書き出さなければ」

りま「あぁ、その予定らしいわね。でも、ミッドチルダ・・・・・・楽しみだな。ほら、ミッドチルダは色々面白い物が多いみたいだし」

恭文「そうだね。アレだよ、ミッドのお笑い文化は日本とはまた違うから、楽しいかも」

りま「うん、そこもシャーリーさんから聞いてる。とにかく、本日はここまで。お相手は色々これからの事が楽しみな真城りまと」

恭文「蒼凪恭文でした。うーん、次回はどうなるんだろ」

りま「空海が幻想殺しを発揮すると思うわ」

恭文「そうだね。その通りだよ。つまり・・・・・・空海に期待?」










(200万ヒットを超えたその先にあるのは、幻想殺しへの期待らしい。それが結論。
本日のED:TM Revolution『Ignited』)




















りま「・・・・・・お母さん、かぁ」

クスクス「りまー、どうしたのー?」

りま「ん、なんでもない。てゆうか、今日の夕飯って私達が決めていいのよね」

ティアナ「そうね。買い物当番だから。うーん、何がいいかなぁ」

あむ(途中で合流した)「・・・・・・恭文、ティアナさんとりまが楽し気なんだけど」

恭文「ティアナはね、自分が料理出来ないのに要求が厳しいんだ。というか、食いしん坊なの」

ティアナ「そこ、聞こえてるわよ。てゆうか、私は別に食いしん坊じゃないし」

恭文「いや、食いしん坊でしょ。よく食べるせいで胸だって以前に比べると丸々と大きく」

ティアナ「・・・・・・アンタ、そのセクハラ癖はいい加減直さない?
聞くところによると、あむにも散々やってるらしいじゃないのよ」(むにー)

恭文「い、いひゃい・・・・・・ひはは、ひはいははははひへー」

あむ「・・・・・・恭文、あたしに対してだけじゃなかったんだ。普通にそこはびっくりだし」

りま「ご飯・・・・・・何がいいかな。自由に決めていいなら、アレとかいいかも」










(おしまい)




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あきゅろす。
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