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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第50話 『Mariage/全力全開でだっしゅっ! だっしゅっ!! だぁぁぁぁぁぁぁぁっしゅっ!!』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ミキ「さぁ、ついに始まった『とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!』」

スゥ「あむちゃんと恭文さんとガーディアンの日常も、ついに2年目突入ですぅ」

ラン「今日から装いも新たに、全力全開フルパワーでぶっ飛ばしていくから、よろしくー」

ミキ「今回のお話は、あの人やあの人が再登場っ! さてはて、どうなるか楽しみだねっ!!」





(立ち上がる画面に映るのは、ドキたま初登場な方々だったり、懐かしい方だったり)





ラン「とにかくみんな、ドキたま2年目もよろしくねー」

ミキ「ボク達しゅごキャラも、恭文とあむちゃん達も、一生懸命頑張るから」

スゥ「というわけで、2年目一発目・・・・・・スタートですぅ。せーの」





(全員で、右手を大きく上にあげて・・・・・・声をあげる)





ラン・ミキ・スゥ『だっしゅっ!!』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・・・・もうすぐ。そう、もうすぐだ。

もうすぐ舞台の準備は整う。ここまで、本当に時間をかけた。

この世界には痛みが足りない。絶望が足りない。





飽和し尽くしている平和な時間にそれが積み重なるだけの日常。

そんなもの、もう必要ない。なぜならそれは、この世界の真実をそれは何一つ映していないから。

だから必要ない。だから、私が教えよう。世界の真実を。そして痛みを。





飽和し尽くしている平和と日常の中で生きている、寝ぼけた連中に鉄槌を下す。

私から言わせれば、現実味のない意味のない世界だ。私がそれを壊して教えてやる。

お前達は生きてなどいない。夢の世界の中で存在しているだけの、無意味な生物なのだと。





お前達が真に居るべき世界は、私が今居る痛みと死と、硝煙に彩られた世界。

許せない、許せない、許せない、許せない。嘘の世界でのうのうと生きている連中全てが。

そんな世界に、一時的にでも迎合して認めてしまった自分が許せない。許す事など出来ない。





・・・・・・大丈夫、きっと上手くいく。だって、これは私の夢なのだから。





私の夢と願いが詰まった一撃。それが世界を変える。そう、これは・・・・・・革命なんだ。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夜の静まり返った公園に存在するのは、巨大なワーム。もっと言っちゃえば巨大ミミズ。





全長は4メートル程で、僕の身長くらいの太さがある。そして、緑色と黒の混じり合った体色をしている。










「みんな、行くよ。・・・・・・僕のこころ」

「俺のこころ」

「私のこころ」

「ややのこころ」

「俺のこころ」

「あたしのこころ」



それを見据えながら、僕は右手で取り出したベルトを腰にセット。隣の空色の髪の女の子と顔を見合わせ頷き合う。

そしてベルトのバックルの青のボタンを押してから、パスをセタッチ。



「「変身っ!!」」

≪Vinculum Form≫



みんなも合わせるように鍵を開けた。そうして僕達の身体が光に包まれる。



『アンロックッ!!』



その子は蒼い光となり、僕の中に吸い込まれる。同時にベルトから音楽が鳴り響く。



≪The song today is ”UNCHAIN∞WORLD”≫





それを見て取ったのか、ワームはその身体の表面から次々と突起物を出す。太さは人の腕くらい。

それは緑と黒の触手へ一瞬で早変わり。十数本の触手が僕達へと襲いかかってくる。

だから僕達は、光に包まれながらも散開するように大きく跳ぶ。大体3メートル程の高さまで跳躍。



僕達の居た位置を、触手の先が貫くように突き刺さる。地面を砕きながらも、その先を素早く僕達に向けていく。





【「・・・・・・キャラなりっ! クラウンドロップッ!!」】

【「キャラなりっ! ディアベイビー!!」】



声を最初に上げたのは、二人の女の子。身を包んでいたキラキラに輝く光が弾ける。

さっきまで黒を基調とした上着に赤いスカートを履いていたのに、その姿はすっかり変わっていた。そしてそのまま行動開始。



「やや、私に合わせて」



その粒子の中に居ながら、一人が声をあげる。



【さぁ、まずはクスクス達からだよー!!】



そう言ったその子はピンクと白のラインがまぶしいピエロ服を着た、金色のウェーブ髪の女の子。

その子・・・・・・りまの周りにジャグリング用のピンが10数本発生。なお、ボーリングのピンに形状が似ている。



「うんっ! りまたんいくよー!!」

【赤ちゃんキャラの意地、見せてやるでちっ!!】



そう返したツインテールで赤ちゃん服を着た女の子は、両手の人差し指を立てる。

そして追撃をかけてくる触手達に向けて、その指を差した。



「ジャグリング・パーティー!!」



号令と共に、ジャグリングのピンが触手に向かって跳ぶ。光の粒子を撒き散らしながら軌跡を描く。



「ゴーゴーアヒルちゃんっ!!」





赤ちゃん服の子の周りには、突然に10数体のデフォルメされた黄色いアヒル達が出現。

その子達もその触手に向かって一気呵成に飛び込んで行く。まず、ジャグリングのピンが触手と衝突。

そうして相手の攻撃の勢いを削ぐ。その隙に触手と同じ数のアヒル達が触手に接近。



両の翼はデフォルメ的に手へと早変わりして、触手をしっかりと掴んで保持。必死な顔でその動きを止めてる。





「やったー! アヒルちゃん、そのままがんば」



その子の言葉は途中で遮られた。だって、着地に失敗して尻もちついたから。



「痛っ!! ・・・・・・ぐす」



そして思いっきり泣き出した。それはもう赤ちゃんみたいに。



「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! 痛い、痛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

『あぁぁぁぁぁっ! やっぱり泣いちゃったしっ!!』



僕は着地しながらもアヒルちゃんの方を見る。・・・・・・あ、ややの方を気にしながらも必死に抵抗。

だけど、当然ながらその隙を見逃すほどワームは甘くない。そのまま器用に突進してきた。



【・・・・・・はわわ、なんか飛び上がっちゃったですよっ!?】

≪なんというか、器用というか素早い子なの≫

≪言ってる場合ですか≫



そう、一瞬身を縮めたかと思うと、一瞬で数メートルの高さに飛び上がった。

つまり・・・・・・触手を発生させたまま、ややに飛びかかったのよ。



「やや、逃げてっ!!」

「ふぇ、あむちん? ・・・・・・はわわわっ! なんかデッカイの迫ってるー!!」



僕は慌ててややの方に走りこむ。ややは立ち上がろうとするけど、それじゃあ遅い。

ややは、あのままじゃ下敷きだ。ワームは大きく口を開けて、ややを飲み込もうとさえしていた。



【「・・・・・・キャラなり」】



だから即座にその間に割り込む影・・・・・・いや、光がある。光はその間に割り込むと弾けた。

そしてその中から姿を表したのは、白いフリフリが大量についている服を着た男の子。



【「プラチナロワイヤルッ!!」】



金色の王冠を頭にはめて、王冠型の片手用のロッドを持ったその子は、金色の髪をなびかせながら走る。

そして、僕よりも早く割り込んでロッドの先を襲いかかる怪物に向ける。



「ホーリークラウンッ!!」



生まれたのは金色の硬き障壁。それが襲い来る胸囲からややを守った。

その子・・・・・・唯世は歯を食いしばり、身体全体で衝撃に耐える。



「唯世っ!!」

【助かったでちー!!】

【全く・・・・・・お前達は本当に世話が焼けるな。唯世、大丈夫か?】

「大丈夫。蒼凪君の斬撃の方が・・・・・・ずっと重い」



怪物の歯が障壁を噛み砕こうと更に力を込める。そして・・・・・・歯が砕けた。

障壁の方が、あの鋭い白い牙よりも硬く強かった。だからこうなった。



【唯世、恭文との特訓の成果を見せてやれっ!!】

「うん。・・・・・・バーストッ!!」



そう声を上げた瞬間、障壁が派手に爆発した。それにより、ワームは数十メートル先に吹き飛ばされる。

そして吹き飛ばされるその刹那、唯世の右横から飛び出す影がある。



「さぁ、次は俺達だっ!!」

【久々の出番、ぶっ飛ばしていくぜー!!】



言いながらロケットが二つ装着されている飛行出来るボードに乗っているのは、一人の男の子。

緑色のフライトジャケットに暖色系のロングのパーカーパンツ、首元には白のスカーフに頭にはゴーグル。



【「キャラなりっ! スカイジャックッ!!」】



オレンジ色の髪を靡かせながら空海は、ボードからジャンプで跳び上がる。

飛び上がって、両手を身体の前にかざす。そしてその両手の間に、オレンジ色のエネルギー状のサッカーボール。



【「ゴールデンッ!」】



そのボールを右膝で軽くリフティングの要領で打ち上げる。そして空海は身を捻った。

身を捻って、頭を下に向けて・・・・・・落ちてくるボールに向かって、右足でそのまま蹴りを叩き込む。



【「ヴィクトリーシュートッ!!」】





いわゆるオーバーヘッドキックによって、オレンジ色のボールがシュートされた。

それは真っ直ぐに頭を起こしていたワームに向かって、身体の中程に直撃。

ワームは必死に力を込めて耐えようとするけど、無理。結局ボールの勢いに圧されてしまう。



巨大な身体が公園の地面を、砂場を超えて、ジャングルジムに衝突してようやく止まる。

公園の土の地面を砕きながらも転がったために、唯世達から更に距離を空ける。

当然『僕達』は追撃をかける。この機会を逃す理由・・・・・・あるはずがないでしょうが。





【「キャラなりっ! サムライソウルッ!!」】

「・・・・・・海里、行くよ」





僕は左側から同じように追撃をかけてくれる友達に声をかける。



その子はさっきまで身に纏っていた光を振り払いながら、ただ前に駆けていく。



色々な事情から命のやり取りまでしてしまったけど、それでも・・・・・・大事な友達で仲間。





「はいっ!! ・・・・・・ムサシ、飛び込むぞ」



その勢いで、さすがにアヒルが掴んでいた触手を離した。それにより、ワームは攻撃手段の一つを奪取。

走ってくる僕達に向かって、遠慮なく触手を突き立ててくる。



【心得た。リイン殿達もよろしいな】

【もちろんなのです。さぁ、気合い入れていくですよー】

≪それじゃあ海里君、前は任せたのー≫



そして、まず海里が前に出る。緑色の着物の裾と透明な羽衣をなびかせながら、速度を上げる。

両手には銀色の刃が鈍く輝く日本刀。海里は踏み込みながらも、両手の刃を振るう。



「邪魔だっ!!」





刃は銀色の閃光を夜の闇に刻み込みつつ、何かの盾のようにその触手による攻撃を防ぐ。

いや、次々と斬り裂いていく。触手の数が増えてもう20本程襲ってくるけど、それでも海里の足は止められない。

それに業を煮やしたワームは、頭ごと海里に飛び込んでくる。歯は無くなっても、その重量だけで武器になる。



そこが分かるだけの頭はあるらしい。巨体に似合わないスピードで海里に向かって突撃。



まだ10メートル近くあった距離が、一気にそれにより縮まった。





【「雷輝」】





海里の両手の刃に緑色の雷撃が迸る。そして一瞬で銀色の刃を緑色に変えた。



海里はワームの突撃を一瞬で見切って、その身体の左脇すれすれに進路を取る。



取りながらも両の刃を右薙に振るい、ワームの頭から刃を叩き込んだ。





【「双閃っ!!」】



薄く鋭い形で研ぎ澄まされた雷撃の刃は、その肉体をあっさりと斬り裂いていく。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





そうして交差法も活かした上でワームの巨体を海里はあっさりと三枚に下ろした。

海里の雷撃の刃によって、下ろされたワームの身体が焼かれて蒸発していく。その黒い煙が、上でひとつの形を取る。

それは黒い人型の存在。頭の上に赤い×をつけて、筋肉隆々の身体を僕達に見せつける。



開いた瞳は白一色で、鋭く釣り上がって僕達を睨みつける。





『ムリィィィィィィィィィィッ!!』

「最初に言っておく」

≪Axel Fin≫



ジガンのカートリッジを1発ロード。手首のドラム型のカートリッジマガジンが回転する。

そして背中に蒼い大きな二枚の翼が生まれた。僕は既にそれを羽ばたかせて、一気に飛び上がっている。



「僕達はかーなーりー・・・・・・・強いっ!!」

『ムリッ!?』



登場直後で悪いけど、早速退場願う事にする。僕はもう、コイツの左サイドを取っている。

青い髪と左肩の白いケープと腰の青いフードを靡かせながら、一気に3メートル以内に距離を詰めた。



≪ついでに言っておきます。・・・・・・私達はとっくにクライマックスですよ≫

【凍華一閃なのですっ!!】



右手には蒼い凍れる息吹に染まった大事な相棒。そして僕の中には大切なソウルパートナー。

アルトとリインと一緒になって戦ってる。それにみんなも居る。だから・・・・・・躊躇い無く前に踏み込める。



≪ちょっとちょっと主様っ!? ジガンを忘れないで≫

「私もです。お兄様、いくらなんでもちょっと冷た」



不敵に笑うと、×キャラは表情を険しくした。どうやら、普通にバカにされたように見えたらしい。



『ムリィィィィィィッ!!』



黒い人型・・・・・・×キャラは、僕に向かって右拳を振りかぶりながら突っ込んでくる。

でも、残念ながら遅い。僕はもうとっくに攻撃態勢に突入だ。だから×キャラに飛び込み交差する。



「飛天御剣流」



・・・・・・唐竹袈裟左薙左切上逆風右切上右薙逆袈裟刺突っ!!



「九頭龍閃もどきっ!!」



×キャラと交差しながら叩き込んだのは、最近ちょこちょこ訓練して出来るようになった技。

剣術の基本である九つの斬撃を、最大速度で同時に撃ちながらも突進すると言うもの。



≪無視しないで欲しいのー!!≫

「・・・・・・さすがはお兄様、ドSなだけはありますね」





普通であれば回避も防御も不可能なのがこの技の特徴。まぁ、やろうと思えば出来ない事はないけど。

とにかく僕の九つの斬撃は、×キャラに蒼い九つの斬撃の痕を同時に刻み込む。

そして一瞬で×キャラが氷に包まれ、僕の後ろで粉々に砕けた。その箇所から現れるものがある。



それは黒いたまご。白い×がついた、絶望に苛まれ続けているこころのたまご。×たまと呼ばれている。

今まで自らの身体を構築していた破片達が降り注ぐ中で、ようやく本体は登場してくれた。

僕は公園の地面を若干削りながらも滑るように着地。そうしながら、×キャラを見据え・・・・・・いや、訂正。



×キャラの向こう側、後ろに今まで控えていた一つの輝きに目を向けて、声をかける。





「あむ、今だっ!!」





僕は後ろで控えていた女の子に声をかける。そしてその子の身を包んでいたピンク色の光が弾けた。

その粒子が舞い散るなかに現れたその子の姿は変わっていた。

ピンク色のチアガールルックに、ところどころにハートの意匠。首元には152センチの身長と同じくらいの長さのチョーカー。



ピンク色のリボンが身体の動きを邪魔しないようにちょうちょ結びになっている。





【「・・・・・・キャラなりっ! アミュレットハートッ!!」】



服と同じ色の髪をポニーテールにして、金色の丸みを帯びた愛らしい瞳で×たまを見据える。

瞳こそ愛らしいけど、瞳の中には確かな強さ。だから、安心して後を任せられる。



「やっとボク達の出番だね」





なんて軽く言うのは一人の女の子。青い髪と瞳に、それとは色調の違う青い帽子をかぶっている。

その帽子にはそれよりも濃い目の青のスペードのアクセサリーを着けていて、ガチな妖精サイズ。

色々な経緯から僕のパートナーの一人になって・・・・・・それで、僕に夢と本当の意味で向き合う勇気をくれた子。



クールで冷静なキャラに見えるけど、それだけじゃなかったりするのが面白い。





「そうですねぇ。というわけで」



続くのは、白いエプロン姿に金色の髪がちょこっと見えている同じく小さな妖精みたいな女の子。

小さくてほわほわしてるけど、僕よりもずっと強くて優しい子。それで、いっつも応援してくれる温かい子。



【あむちゃん、張り切っていってみよー!!】

「うん。・・・・・・ネガティブハートに、ロックオンッ!!」



右手の人差し指を鋭く×たまに指差す。あむの両横に浮いていた女の子二人もそれに倣う。

それからすぐに両手の親指と人差し指でハートマークを作り、×キャラに向ける。



「オープン・・・・・・!」



あむが首にチェーンを通した上でかけている金色の上に、四つ葉のクローバーを模したクリスタルの装飾がある南京錠が輝く。

クリスタルがピンク色に輝いて光を放ち、あむが両手で作ったハートマークの中を通過する。



「ハートッ!!」





通過した光はハートの形をしたリングとなり、何個も連続して放出される。それが×たまに直撃。

その光の中で黒い×が少しずつ薄れて行く。ううん、×だけじゃなくて表面の黒色も変わっていく。

そうして姿を表したのは、光輝く白色のたまご。×の代わりに羽の装飾が描かれている。



・・・・・・うし、これで終わりと。いやぁ、なんつうか色々と手こずったね。





「・・・・・・よし。浄化かんりょ♪」



あむが言いながらも、僕を見上げながら軽く右目でウィンクしてくる。なお、すっごい可愛い子なキャラだ。



【うんうん、頑張った頑張ったー】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、みんなどうかなっ!?」





・・・・・・全員がそれを見て黙っている。僕もアルトもジガンもフェイトもリインもティアナもリースもだ。

当然だけどあむ達も黙ってる。なお、テンション高いのはそう言ったシャーリーだけ。

なお、僕とリインとあむ達が黙っている理由はたった一つ。別に不満があるとかじゃない。むしろ逆。



なにこれっ!? あんまりに完成度高過ぎだしっ! 僕達の予想を完全に飛び越えてるんですけどっ!!





「・・・・・・シャーリー」

「はい、フェイトさん。なんでしょう」



映像が終わってクレジットが流れる中、フェイトが首から錆びた機械みたいな音をさせる。

そんな音に若干怖いものを感じるけど、フェイトはそれでもシャーリーの方を向く。



「もしかしてこの間、リースに結界を張ってもらったりとか、ガーディアンのみんなを合宿と称してお泊りコースにしたのって」

「はい。全部これのためです」



うん、そうだったね。海里がもうすぐ転校しちゃうし、夏休み中一緒に居ると言っても思い出作りは必要とか言われたもんね。

それでPVというか現メンバーの活躍とかを特撮風味で撮影して、形に残していこうと。で、僕達は了承したさ。



「でも、マジで俺とダイチも参加してよかったんっすか? 俺らもうガーディアンじゃないのに」

「あ、もちろんだよ。せっかくだし・・・・・・というか、空海君にそこを言う権利はないと思うな」

「そうだぜ。話聞いて、あむや唯世達差し置いてスッゲーノリノリだったくせに」

「ダイチ、それお前には言われたくない。お前も俺と同じくだっただろうが」



で、もうお分かりだろうけど空海とダイチも参加した。せっかくなので、フルメンバーにしたの。

そしてダイチが言ったように、二人は凄まじくノリノリだった。だからアドリブでオーバーヘッドキックだし。



「あ、リースとディードにはあの巨大ワームと中の×キャラを演じてもらいました」

「・・・・・・大変でした。操作はともかくとして、魔法でそれっぽいのを作るのが特に。
何度作っても、シャーリーさんとミキちゃんが『造形が甘い』ってダメ出しするんです」



あの怪物は、×たまを中核としていてなんやかんやであんな風になってしまったという設定。



「だって、ボクのデザイン・・・・・・はともかく、監督のシャーリーさんのリクエストから少しズレてたし」



で、クリーチャーデザインはミキがノリノリでシャーリーと相談しながらやったの。だからやたらと出来が良かった。



「私は胸を押さえるのが辛かったです。どうしてもスーツに収まらなくて。リースならぴったりだったんですが」

「それはアレですかっ! 普通に私に対しての挑戦と受け取ってOKなんですかねっ!?
うぅ、咲耶もそうだけどみなさんスタイル良過ぎですからっ!!」





あぁ、大変そうだったね。それでディードが『手伝っていただけますか?』とか言ってくるから、僕が逆に大変だったさ。

さすがにそれはアウトだから、リースやシャーリーにあむに協力してもらってなんとかしたのよ。

あと、ブレイクハウトでスーツのサイズを調整し直した。物質の理解・分解・再構築でちょちょいとね。



あの筋肉隆々なデザインは、ディードの胸のサイズを誤魔化すためでもあった。

ここのリクエストもシャーリーがこだわって大変だった。あと・・・・・・なぁ。

リースがヘコんだ。リース、スレンダーなモデル体型で胸は控えめだから。





「ですが、楽しかったですね。着ぐるみでのアクション、もっとしてみたかったです」

「あ、それは私もです。巨大生物の操作もだけど、造形も大変だったけどホントに面白かった。
うー、かえでちゃんにいい思い出話が出来たなぁ。あ、シャーリーさん、これコピーさせてもらっても」

「うんうん、問題ないよ。・・・・・・あ、でも『持って帰る』のに問題とかは」

「多分大丈夫と思います。そこもまた確認しますけど」



とりあえず妹コンビ的には問題はないようなので、それはいい。だって二人ともニコニコしてるし。

僕達ガーディアンメンバーも、問題はない。ただ・・・・・・フェイトとティアナ的には問題がある。



「シャーリーさん、何やってるんですかっ!? そこは私も聞いてなかったんですけどっ!!」

「ティアの言う通りだよっ! 全く説明されてないのはどういうことかなっ!?
いや、それで結界の許可出しちゃう私も私なんだけど、なんでこうなるのっ!!」

「いえ、海里君も転校になっちゃうので思い出作りをお手伝いしたいなーと。
あ、それでどうでした? BGMやSEに特撮的なCGエフェクトと映像処理にも相当力を入れて」

「「そういう話をしてるんじゃないからっ! そしてそんな嬉しそうな顔で迫らないでー!!」」



・・・・・・とりあえず、フェイトとティアナは大丈夫だろう。今はあれだけど、きっと落ち着く。



「でもでも、ややはリインちゃんにあんな妹さん・・・・・・でいいんだよね?」



ややだけじゃなくて、全員も楽しそうな顔のリースを見る。・・・・・・なにげにあの時が初対面だったからなぁ。

さすがに『はやての孫のパートナーです』とは説明出来ないので、リインの妹として新しく生まれたとだけ言っておいた。



「はいです。リインの妹なんです。リイン、いっつも『リイン姉様』って言われてるですよ?」

「リインと同じユニゾンデバイスで、リインフォースVでちたよね。・・・・・・なのに身長が」



あ、リインが唸って苦い顔になった。そしてそこに、空海がダメ押しをする。



「そうだよな。てゆうか、俺はリースと会った時マジでびっくりしたし」





さて、お気づきの方も多いだろうけど、今空海はリースを呼び捨てにした。これには事情がある。

・・・・・・超・電王編の関係で、空海にはリースの事もそうだけど恭太郎と咲耶の事も説明してあるからだよ。

一応は信じてくれようとしたけど、それでもどうしてもという感じだった。



なので、パスでデンライナーに引っ張ってみんなに顔合わせもしたりした。

それでなんとか納得してくれて・・・・・・早速モモタロスさんやリュウタと意気投合したのは、すごいと思う。

あとオーナーにも見立ててもらって・・・・・・うん、やっぱ特異点だった。大方の予測通りに。



どうやらそのせいで、月夜が原因の時間の歪みの中でも記憶を失わなかったらしい。

本人それで話を聞いて『え、それじゃあ俺電王になれんのっ!? よっしゃー!!』って喜んでたっけ。

なお、映像はみなさま脳内補完でよろしくお願いします。・・・・・・ペコリ。





「そこから考えると・・・・・・どう考えてもお前の方が妹」

「そこは言うなですー! リインも常々気にしてるのですー!!」

「あぁ、悪かったからポカポカ殴るなっ! 普通に痛いだろうがっ!!」



空海・・・・・・みんなもそこは本当に触れないであげて欲しい。

リイン、何気にお姉ちゃんなのが嬉しいのと同時に複雑らしいから。



「あー、でもでも・・・・・・やや、ちょっと感動しちゃったかも。
だってだって、やや達何かの映画の主人公みたいだったもん」



確かにすごかった。普通にシャーリーが編集の全てを請け負ってくれたんだけど、マジで力入り過ぎ出し。

あれだよ、どこのGAROかこのガーディアンのPVかっていうくらいよ? もうスゴイスゴイ。



「そうでちね。シャーリーさんの演技指導が厳しかったでちけど、ぺぺはまたやりたいでち」

「クスクスもー! それでそれで、今度はクスクスが主役ー!! ・・・・・・ほらー! 変な顔ー!!」

「クスクス、それをずっとやっても映画で主役にはなれないわよ?」

「ガーンッ!!」



とにかく、僕はデッキからブルーレイなシャーリーお手製のディスクを取り出す。



「なんというか・・・・・・フィニーノさんには改めてお礼をしなくては。俺はこのディスク、一生の宝にします」

「そうだな。海里・・・・・・本当に感謝しよう。我らは良い仲間に恵まれたぞ」

「ふ、当然だ。だが少し不満がある。・・・・・・それは、僕の出番が少ない事だっ!!
アレはどういう事だっ!? 本当にちょっとしかなかったではないかっ!!」

「キセキ、仕方ないよ。長編みたいな形にするには準備期間も足りなかったもの」



確かに足りなかった。シャーリーが唐突に思いついて一気に準備したのもあるけど、撮影期間の問題もあったから。



「というか・・・・・・蒼凪君、最後のあの技って、いつ使えるようになったの?」

「お、そうだそうだ。アレは漫画の技なのだろう? いつの間にあんなものを」



で、それを大事に『みんなの思い出ディスク♪』とシャーリーの字で表に書かれているケースにしまう。

しまいながら、疑問の顔を浮かべている唯世とキセキの方を振り返ってみる。



「あぁ、Pちゃん探しの時からちょくちょく練習してたんだよ。
元々出来てはいたからさ。・・・・・・てか唯世、アレはどうした」



あの『ホーリークラウン・バースト』は、普通にびっくりしたぞ。撮影前に実験したけど、それでもだよ。



「えっと、フェイトさんやランスターさんに防御魔法の事を自主勉強も兼ねて聞いたんだ。
それで数ある防御魔法の種類の中で、そういうのがあるって教えてもらって」

「・・・・・・あぁ、なるほど。プロテクション・バーストを参考にしたんだ」

「うん」



バリア系のプロテクションに、そういう魔法があるの。攻撃を防いでいるシールドを炸裂させて、相手との距離を取る。

爆発ダメージと同時にレンジを取って相手のクロスレンジでの追撃を避けるための魔法なんだけど、自分で考えたのか。



「あの、ダメだったかな。蒼凪君に相談無しでやっちゃったし」

「いや、いいよ? だいたい実戦でいきなりやらかしたらそりゃあちょっと叱るけどさ」



元々そういう約束してるもの。それもあるし・・・・・・まぁ、土壇場で思いついて『ついやっちゃった♪』なら仕方ないと思う。



「でも、唯世はちゃーんとそうなる前に教えてくれたもの。うん、だから問題無し。
というかアレはかなりいいと思う。あとは爆破のコントロールだね。ちょっと攻撃かぶってたし」





PVでは普通にそこから空海、そして更に僕と海里に焦点が移動したから、分からなかったと思う。

でもね、問題が一つあるのよ。・・・・・・唯世は爆発の衝撃を喰らっていた。

本当に若干だし大怪我ってレベルではないんだけど、服がちょっとダメージ受けてたもの。



なにより僕もそれでOK出したしね。ただ、自分に衝撃が襲っても踏ん張ったのは、さすがだと思う。



やっぱり唯世は心根が優しいから、誰かを『守る』という事に関して力を発揮しやすいんだよ。改めて感じた。





「あははは、そうなんだよね。うん、そこはまた訓練していくよ」

「辺里さん、頑張ってくださいね。それで・・・・・・やはり私の出番が少ないと思います。こういう時こそセイントブレイカーで」

「それは絶対嫌。そしてシオン、いきなりそれなんかい」



セイントブレイカーは原則的に封印だもの。だって・・・・・・だって、女装形態は辛いのー!!



≪なお、補足ですがグランド・マスターは飛天御剣流の全ての技を遠慮なく使えます≫

「ですです。ヘイハチさんはリインから見てもすごい人なのですよー」

≪ジガンは会った事ないけど、スターライトも魔力無しで真っ二つらしいの。それくらいはお茶の子さいさいなの≫

「・・・・・・以前に話を聞いても思ったが、お前の先生は一体何者なんだ。僕はかなり疑問だ。なぁ、唯世」

「そ、そうだね。・・・・・・あ、日奈森さんは」



言いながら唯世が今まで黙っていたあむを見る。あむは・・・・・・後ろの方で悶え苦しんでいた。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 最後のアレはなにっ!? マジ意味分かんないしっ!!
あんなのあたしの・・・・・・あたしのキャラじゃないー! なんであんなことしちゃったのー!!」



どうやら最後の『浄化かんりょ♪』が自分でも衝撃的で、ダメージを受けたらしい。

なお、アレは完全なアドリブ。シャーリーからの指示もなにも全くなかった。



「あむちゃん落ち着いてっ! 大丈夫、すっごく良かったからっ!!」

「なんて言うか、また状況に流されてやっちゃったんだね」

「可愛らしいヒロインへの道は、まだまだ遠いのですぅ」

「そんなのならなくていいからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ひ、日奈森さんっ!? あの、落ち着いてっ! 大丈夫、僕は可愛かったと思うからっ!!」



唯世の言葉が耳に入ったのか、普通に今度はゆでダコのように真っ赤になって蒸気を吹き上げ始めた。

それに唯世がオロオロし出す。なお、ややとりまと空海はニヤニヤで海里は・・・・・・察してください。



「・・・・・・恭文、どうしたの?」



その様子を見つつも、僕は右手のディスクに視線を移していた。すると、いつの間にか僕の右肩にミキがいた。

なお、シャーリーはまだフェイトとティアナに詰め寄られている。ここは・・・・・・察してください。



「ん? ・・・・・・いやね、このディスクは大事にしようと思って。ほら、なんだかんだで大変だったし」

「あー、そうだね。準備期間がほぼ三日とかだったし。でも、とっても楽しかった」



でしょ? 僕もすっごく楽しかった。ミキと同じくなのよ。



「でも・・・・・・うーん、アルカイックブレードになりたかったなぁ」

「ごめん。リインが『最近ヴィンクルムフォームの出番が少な過ぎですっ!!』って聞かなかったから」



確かにそうなんだよなぁ。最後に登場したの・・・・・・アレ、もしかして歌唄編の最後以来?

あ、そうだよそうだよ。アルカイックブレードとか超・てんこ盛りとかセイントブレイカーとかばっかりだから。



「あぁ言ってたね。・・・・・・恭文、もっとリインに気遣った方がいいんじゃないの? ボク、あの時敵意を感じたし」

「・・・・・・うん、そうする」










僕、蒼凪恭文。今年で一応20歳。職業、フェイトの騎士であり嘱託魔導師。だけど・・・・・・小学6年生。

顔を真っ赤にして照れまくっている意地っ張りで素直じゃない女の子との出会いが、そんな不思議な設定の始まり。

それをきっかけに、ドキドキなこころのたまご達と関わる不思議でちょっとファンタジーな日々の真っ最中。





そしてもうすぐ初めての小学生としての夏休み。・・・・・・これから何が起こるか、今からワクワクしている。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご/だっしゅっ!!


第50話 『Mariage/全力全開でだっしゅっ! だっしゅっ!! だぁぁぁぁぁぁぁぁっしゅっ!!』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




『さぁ、早く答えてください。私はイクスの在処を知りたいだけです』



ビル・・・・・・というより、デパートの一階層の一角に、その影を見つける。



「し、知らねぇっ! 俺はマジで何も知らねぇんだっ!!」



影は二つ。一つはもう一つに怯えと恐れを隠し切れず、もう一つは・・・・・・ただ静かにその場に居る。

ただし、右手に銀色の刃を持って腰を抜かして床にへたり込む影に迫っているが。これは当然マトモな状況じゃない。



『ならば、イクスの在処を知っている人物に覚えは』

「動くなっ!! ・・・・・・管理局の者だ。両手を上げて投降しろ」



ゆっくりとこちらを向くのは、銀色のバイザーにオレンジ色のタイツスーツを身に着けた女。そして、手にはさっきも言ったが刀。

間違いない。コイツは、本局から連絡のあった『アレ』と風貌が似てる。くそ、まさか本当に来るとは。



『時を経て、兵士達もずいぶん様変わりしたようですね』



女はそう無機質に言いながらこちらへ突っ込んでくる。当然のように、自分達は対処。



「く、全員撃てっ!!」



ここに居るのは八人。それだけの人数で掃射すれば、大抵の連中は沈められる。

これが犯人確保の上での基本だ。だが・・・・・・コイツは違った。



『・・・・・・愚かな』



右手の刀が素早く動く。動いて、自分達が掃射した魔力弾を全て斬り裂いた。



「ば、バカな」



あれはただ迎撃して墜としたんじゃない。真っ二つに斬り裂かれてから爆発している。



「魔力弾を、剣で・・・・・・!?」





待て待て、あんなの自分達は出来ないぞ。魔力弾は本来接触したらダメージを与えるように出来ている。

そういうものなんだ。あんなの、一般レベルな魔導師は出来ない。普通に殴って潰すとかならいい。

それなら自分達でも出来る。だがアレは、斬撃のみで構築魔力を断ち切り真っ二つに・・・・・・ありえない。



例えばあの悪名高い局の評判を貶める悪魔・・・・・・『古き鉄』ならば出来るだろうが。

噂では集束砲も斬れるらしい。とにかくそんなエース級に近い存在なら、可能かも知れない。

いや、臆するな。こっちの方が数は上なんだ。一気に押せばいい。





「ならっ!!」





仲間の一人が砲撃に切り替えようとした。構えた共用デバイスの先に、砲弾が構築される。

いい判断だ。砲撃ならば斬る事など出来ない。そうだ、アレはおそらく何かのまぐれ。

動揺するな。砲撃を撃ち込んでノックダウン・・・・・・いや、動きを止めたところに一気に弾丸を掃射だ。



だが、それは最悪の答えでもある。まだ被害者が動けずに近くに居る。つまり、これは警告。

この状況を鑑みれば、こうすれば普通は動きを止める。それが自分達の常識だった。

そう、それが他人・・・・・・犯罪者にとっても常識だと、この時まで自分達は勘違いをし続けていた。



・・・・・・魔力による砲弾は構築されようとしていた。しかしそうはならなかった。





「・・・・・・ごふ」



砲弾の代わりに自分達の前に現れたのは、鮮血の飛沫。



『私はただ、目的を果たしたいだけです』



刀が仲間の一人の喉に突き刺さっていた。血が吹き出し、犯人の身体を赤く染める。

赤く染まった女と命を奪われた仲間。それが一気に自分達の思考を混乱に導く。



『そう、ただ夢を叶えたいだけ。ですから』



自分達はデバイスを構える。きっとすぐに反応出来たのは、日ごろの訓練の成果だと思う。



『イクスの墓標にその身を捧げ・・・・・・我々と一つになりなさい』










でも、それは無駄だった。なぜならその瞬間に、自分達は炎に包まれた。





赤い・・・・・・ただひたすらに赤い光景。それが、自分達の見た最期の光景になった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・ミッドチルダ、MBCニュースです。現場はここ、海岸沿いの大型デパート・フィリーズの27階。
被害状況はまだよくわかっていませんが、そこのイベントホールで爆発。現在、窓から煙が上がっています』



うん、上がってる。黒くて・・・・・・夜の闇の中でも分かる色。私が何度も見た色合い。

自然な火の色じゃない。何か魔法か、もしくは燃焼系の液体を使ってる炎の色。



『被害者は、27階ホールで行われていた古代美術展の関係者である男性一名と近くを巡回していた警ら隊員八名』



うそ、ここまで情報が? なんというか・・・・・・仕事が早いなぁ。



『あぁ、現場に武装隊のヘリが飛んでいます。やはり、事故ではないのでしょうか。
フォルスとヴァイゼンで発生した、一連のテロ事件との関連は未だ発表されていませんが』

「・・・・・・テレビ局、仕事早いのはいいけど、情報規制はちゃんと守ってるのかな」

「まぁ、彼らも自分の仕事を頑張っているだけですから」



現在私は、今テレビで言われているヘリの中。なお、操縦しているのは私の部隊のヘリパイロット。

名前はアルト・クラエッタ。元機動六課のオペレーターで、私とはそこから数えると2年ほどの付き合い。



「それでギンガさん、今回の事件ってどう思います?」

「報告されている被害状況や手口に目撃された犯人像。
それらを考えると、フォルスやヴァイゼンで起きた一連の事件と同じですね」

「あぁ、そうですか。・・・・・・今回も『一連の事件』で済んでくれると嬉しいんですけど。
正直、私は2年前みたいなとんでもない大事件はごめんですし」





アルトさんのウンザリと言う声に、私は苦笑で返すしかなかった。だって、私も同じだから。

本当にあんな事件はコリゴリ。私は何も出来なかったし、止められもしなかった。

それで思い出すのは、一人の男の子の顔。優しくて・・・・・・強くて、だけど危なっかしい子。



・・・・・・なぎ君、元気だって聞いてるけどやっぱり心配だな。だって、まだ好きだから。

別にもう告白とか付き合おうとかは考えてない。けど、それでもだよ。

新しい恋をするまではそれでいいんだって、父さんが教えてくれた。だから、これでいいの。





「そうならないように、しっかり解決しちゃいましょ。それでなぎ君の戦技披露会は、楽しく観戦出来るように」

「そうですね。・・・・・・まぁ、ギンガさんは頑張りますよね。愛しのなぎ君の活躍が見られるんだし」

「アルトさん、からかわないでくださいっ! というか、私となぎ君はもう友達なんですよっ!?」










・・・・・・カルタスさん、恨みますよ? 去年の年末、アルトさんの歓迎会の場で色々バラしてくれたの。




というか、他のみんなは全員知ってたってどういうことっ!? 私、振られた事も言ってないのにっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・エグザ、テレビ見てるか』

「見てますよ。全く、夕飯食べながら飯なんて食うもんじゃないですね」

『いや、色々こんがらってねぇか?』

「すみませんね。このバカに飯奢らされてるんで、ちょっとイライラ混じりなんですよ」



くそ、普通に賭けなんてするんじゃなかった。あぁ、あの時表って言ってれば・・・・・・!!

現在、俺達は開発局で絶賛残業中。それで休憩がてら夜食に弁当食べてテレビ見てたら、嫌なニュースが舞い込んだ。



「しかしマジで起きたんだね。予想通りというかなんというか・・・・・・まぁ、不謹慎だから言えないか」

『確かにな』



古代美術展が行われていたミッドのデパートで起きた爆発事件。被害者の一人はその美術展に関わっていた男。

これのニュースを悔し混じりに見ながら飯を食っていた時にピーンと来た。ついに来たかと。



『これで終わりじゃない。どんどんペースは早まってるし、続いてくぞ』



そう、続くんだ。だってこれは・・・・・・12件目なんだから。

フォルスで4件。ヴァイゼンでつい最近7件。そして、今日のミッドで1件。



『てーかよ、俺んとこが捜査担当になっちまったよ』

「はい? いやいや、アンタのとこは災害対策専門じゃないのさ」

『あぁ。だがやっこさんが派手にやってくれるせいで、被害状況がハンパじゃないだろ?
災害対策もキチンと取れる部隊じゃないと危ないって判断されたんだよ。で、俺も同意見だ』



スターレン司令の言葉を聞きながら、俺とヒロはもう一度テレビを見る。

・・・・・・見えるのは、一部の階層が燃え盛るデパート。確かにこれはなぁ。



『で、捜査の窓口はお前さん方も知ってるギンガ・ナカジマ陸曹長になったよ』

「ギンガちゃんが?」

『あぁ。今回のこれも108の担当地域だしな。いや、向こうさんは仕事が早いよ。
俺が上から連絡受けたと思ったら、もう担当決めて挨拶してくんだぜ?』



ナカジマ三佐やギンガちゃん、局の中では良識派で仕事出来る方だからなぁ。そりゃ当然ですよ。



「でも、それはまた・・・・・・大変ですね」

『捜査関係は全部向こうさんに任せるだろうし、それほどじゃねぇよ。俺達はマジで災害対策専門だ』





ようするに今回みたいな爆発だったり火災が起きたら、先陣を切って何とかするのが港湾警備隊の仕事。

で、その他の仕事・・・・・・事件捜査や聞き込みなんかは、ギンガちゃんと三佐達108に丸投げってことだな。

108部隊はロストロギアの密輸や密売の摘発が専門みたいな部署だから、今回の事件には丁度いいんだよ。



被害者は何度も言ってるけど、ロストロギアのバイヤーだからな。それも裏表問わず遠慮なしにだ。

そういうのも考えて、108が捜査に関わることになったんだろ。・・・・・・でも、動き早いなぁ。

これもJS事件なんてバカ騒ぎを乗り越えた成果だと思うと、色々と安心してしまうから不思議だ。





『なぁ、話は変わるがお前達の弟弟子はもうすぐこっちなんだよな。大丈夫なのか?』

「えぇ。一応上司だったり、俺から気を付けるようにとは言っています。
・・・・・・普通なら、これだけで大丈夫なんだよなぁ」

「大丈夫なんだけどねぇ。でも、やっさんって・・・・・・アレだしなぁ」

「アレなんだよなぁ」










とりあえず、俺は今度無限書庫に行って検索しようと思う。検索事項はこれ。





『運が良くなる方法』だ。・・・・・・やっさん、待ってろよ。





きっと俺がお前の悪運を解消してみせる。大丈夫、俺にいい考えがある・・・・・・だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・また事件ですか」

「そうです。そして、ついにというかようやくというか、現場はミッドチルダですよ」





えぇ、また事件ですよ。まったく、なんで俺こんなことに巻き込まれてんだ?

普通に別世界での現場手伝いだけだったはずなのに。

こりゃミッドに戻っても事件解決するまでは、自宅にも帰れないしメイルにも会えないな。



・・・・・・あぁ頭痛い。うちの妹キャラは、非常にこういう所でうるさいしなぁ。





「被害者はコーレル・マクバード。学士院出身の古代文化研究者です」

≪ルネッサ殿、犯罪歴はないのか?≫

「えぇ。ただ、指定保護遺跡の盗掘や、ロストロギアの違法転売に関する疑惑がかかっています。
そのために、機動課の捜査対象になっていました。つい最近の話ですね」



今のところグレーゾーンだけど、実際の所は黒かも知れないと。まぁ、良くあるパターンだな。

俺は本局の廊下を歩きながら、ルネッサさんの話に納得した。確かに狙われる要因はあるよ。



「マグナス補佐官、それは先日のブラックダイヤモンドの一件の影響ですか?」

「そうです」

≪あれ以来、その手のバイヤーに対しての警戒はかなり厳しくなってるしな。当然か≫





局では現在、先日発見されたブラックダイヤモンドって言うロストロギアの話が、かなり広まってる。

なんでも、持ってるだけでその保有者の能力を上げて、人体改造するとかって言う至れり尽くせりなアイテムらしい。

量産された形跡もあるらしいから、本局では現存するものが他に無いかどうかを調べるために専門チームまで作った。



そのために現在、ロストロギアのバイヤーだったりその関係者への目は、バルゴラの言うように現在相当厳しい。

ロストロギア関連の事件を中心に扱う機動課や、その専門チームが頑張ってるからな。

もう逮捕者も何人か出たらしい。今回殺された奴も、そういう風潮のために運悪く目を付けられたってとこだろ。



もちろん疑わしいってだけでそうじゃない可能性もあるから、ここで犯罪者あつかいは絶対違うがな。





”・・・・・・それとマスター、あの噂は本当だと思うか?”

”あの噂? ・・・・・・あぁ、見つかったブラックダイヤモンドを確保したのが、ヤスフミだって噂だろ?”

”そうだ。それで完全に改造されてしまった保有者を、奇跡の力で浄化して元に戻したとか。
そのせいでフォン・レイメイの一件と合わせて、ヤスフミの風評がまた凄いことになってる”



どこからかそういう噂が立ってんだよ。でもアイツ、確か今は平和な出張任務のハズだぞ?

それがこんなとんでもアイテムに・・・・・・ありえる。アイツ、運悪いからすっげーありえる。



”ブラックダイヤモンドが見つかったのが地球だって言うのは確かな話だし・・・・・・ありえるな”



もちろん完全に人体改造されてしまった保有者を、そこからパーペキに戻したとかそういうのは無しだ。

つーか、さすがにそれはありえないし。・・・・・・この噂信じてる奴らの前では、言えないけどな。



「・・・・・・納得しました。つまり、今回も同じと」

「はい」



とにかく話を戻す。俺達全員、コーレルが白か黒かは別として、殺した奴が狙う理由はあると納得した。

だって犯人はこのコーレルって奴と同じような、ロストロギアのバイヤーを裏表問わず次々と殺害してるんだから。



「彼と周辺の警ら隊員達を殺害したのは、マリアージュで間違いないかと」



それで、この事件も今回で12件目。・・・・・・くそ、ウエバー執務官の言うように、ついにやって来ましたと?

マジふざけんじゃねぇぞ。こんなボンボン事件起こしやがって。おかげで俺は、巻き込まれてこれだっつーの。



「フレイホーク君、すみませんが」

「分かってますよ。ここまで来たら、最後まで付き合います。てーか、放置なんて出来ねぇし」





現在、俺ことジン・フレイホークは目の前に居る、ガタイがしっかりして金髪オールバックの執務官のアシスタント。

名前は、グラース・ウエバー。本局所属の執務官の一人で、ヒロさんとサリさんとは腐れ縁らしい。

ただ、この人は戦闘というより、捜査関係に強い人なんだよ。そして、今回のマリアージュ事件の担当。



その隣に居る黒い制服を着ているのが、ルネッサ・マグナス執務官補佐。

フォルスでの4件目の事件の検死を担当して、そこでウエバー執務官と遭遇。

その能力を見込まれて、臨時補佐官を頼まれたらしい。



俺はその後のヴァイゼンの事件にちょっと関わって・・・・・・同じように頼まれたんだよ。

ウエバー執務官は3年とか4年前にちょっとミスして、戦闘関係からは手を引いたらしい。

それからは基本的には戦闘現場に出ないで、捜査だけするようにしてるとか。



まぁアレだ。別にフェイトさんみたいに、戦闘もバシバシ出来る執務官ばかりじゃないってことだな。

執務官の仕事は、捜査人員を動かして事件捜査をする事。

だから戦闘技能は、近年では実はそれほど重要視されてなかったりする。



試験の時はともかく、実際の現場ではそんな感じだ。執務官が必ずしも現場に出る必要性はない。

ただ、どうしても執務官の権限で、独自に戦闘行動を取る必要が出てきた場合ってのもあったりする。

ウエバー執務官はそんな時には近隣の部隊の人間や、俺みたいな嘱託の力を借りるらしい。



・・・・・・うん、丁度良かったんだよ。俺も俺で、なんか見過ごせなかったしさ。

その対価が、サリさんの家で俺が出張とかしてる時は、居候って形になってるメイルのご機嫌だよ。

どうするかな。メイルも一応嘱託の資格は持ってるけど・・・・・・現場に連れてくの、ちょっと躊躇うんだよな。



今回みたいな血生臭い事件に関わると、特にそう思う。あんまりアイツに、こういうの見せたくない。





「マグナス補佐官、ミッドの方で捜査担当などは」

「はい。港湾警備隊ですが、窓口は現地の捜査官になっています」



ルネッサ補佐官が、歩きつつ画面を立ち上げる。そこに映るのは・・・・・・え?

青い髪に翠色の瞳。そして、とってもスタイルのいいお姉さん。



「陸士108部隊の、ギンガ・ナカジマ陸曹長です」



なお、六課解散の間に出世して陸曹長になってる。あれだよ、ヤスフミや俺とかと違ってちゃんとした人だから。



≪これは驚いた。ギンガ殿が捜査担当なのか≫

「なんか懐かしいな」

「・・・・・・奇縁というかなんというか、ですね」



俺とルネッサ補佐官、それに執務官も固まる。固まって、互いを見合う。



「フレイホーク君、もしかして君はナカジマ陸曹長の事を」

「あ、はい。俺の友達の友達なんです。何回か顔合わせた事もあって。というか、ウエバー執務官もですか?」

「えぇ。なんというか、色々醜態を見せてしまったことがありまして。
・・・・・・気恥ずかしいというかなんというか、顔を見せるのが辛いですよ」



少し曖昧な言い方をしているので、俺達は首を傾げる。

・・・・・・まぁ、色々あるんだろ。ここはツッコまないのが大人ってやつだ。



≪なるほど。昔の女なのだな≫

「違います」

「お前はツッコむんじゃないよっ! 色んな意味で最低な発言すんなっ!!」

「なら、顔合わせなどは私がやった方がよろしいでしょうか」



きゃー! なんかルネッサ補佐官がすっごい気を使ってるっ!?

ウエバー執務官が困った顔してるしっ! それで補佐官も目を逸らすのやめてあげましょうよっ!!



「その、色々辛い経験もあったでしょうし、こういうところで顔を合わせてゴチャゴチャになってしまっても問題だと」

「ですから、違います。彼女とは以前仕事で、一度だけ顔を合わせただけです」

≪つまり、その一度で燃え上がって≫

「もうお前黙れっ! あぁ、マジすみませんっ!! コイツには後でちゃんと言っておきますんで、頭抱えるのやめませんかっ!?」










こうして、俺達はミッドの首都にて捜査活動を開始する事になった。

なお、ルネッサ補佐官はずっと勘違いしたままだった。

俺はミッド到着してからギンガさんに会うまでの間、ずっと謝り倒す事になる。





バルゴラ、お前自由過ぎるって。アレか、この間サリさんが作ったゼロシステムを搭載しなかった事、まだ怒ってるのか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのはママ」

「お願い、言わないで? ヴィヴィオ、何も言わないで?」

「バスケ、出来ないの?」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



現在、ヴィヴィオとなのはママは近所のバスケコートに居ます。

今日、ママは仕事が早く終わったので、ちょっとお願いした。そして、ママは崩れ落ちた。



≪・・・・・・マスターの名誉のために言っておくと、こっちに来る前は出来てたんですよ?≫

「レイジングハート、そうなの?」

≪えぇ。彼やフェイトさんとも、何回も遊んでいました≫

「うーん、だったらやり方忘れてるのかな」



ヴィヴィオはもう一度、コートに崩れ落ちたなのはママを見る。・・・・・・しくしくと泣く声がする。



「ママ、泣かないで? 大丈夫だよ。ヴィヴィオはバスケが出来ないママも、全部受け入れるから」

「・・・・・・ヴィヴィオ、ごめん。ごめんね?
しゅごキャラも見えないし、バスケも出来ないママで、ごめんね」

「ママ、そんなに気にしてたんだ」

≪何気に私も気にしていますよ。アルトアイゼンもバルディッシュも見えると言うのに≫





・・・・・・えっと、もしかしなくても現状についての説明が必要? うん、必要だよね。

あのね、今日体育の時間で、バスケを初めてやったの。だけど、全然上手く出来なかった。

運動は得意な方なのに出来無くて悔しいから、夏休みの間に自主練習しようと考えた。



それでヴィヴィオは、なのはママと練習しようって考えたの。というか、教わろうかなーと。



その結果がどうなったかとかは・・・・・・もう、言う必要ないよね。





≪真面目な話をすると、彼やフェイトさんが帰って来てから聞いてみたらどうですか?≫

「・・・・・・そうだよね、私じゃダメだよね。だって私、しゅごキャラも見えないんだし」



とりあえず、落ち込むママは放置します。ヴィヴィオの今の最重要課題は、バスケの事だもん。



「そうだね。さすがに二人ともママみたいにやり方忘れてるからダメって事は、ないよね」

≪もしくは、一緒にこちらに来るガーディアンの面々に頼るという方法もありますよ?
相馬空海さんのように、スポーツが得意な人間も居ますから≫

「あ、そっか。レイジングハート、冴えてるー」

≪ありがとうございます≫



どっちにしても、ヴィヴィオのバスケは夏休みまでお預けかぁ。うぅ、悔しいなぁ。

一人で自主練習、ちょっとずつでもしておこうかな。ほら、ドリブルの練習だけなら、お庭でも出来るし。



「あと・・・・・・あむさんとか、スポーツ出来そうな感じしない?」

≪あぁ、しますね。なんでか意味も無くそう思ってしまいますよ≫

「そうだよね、私あむさんにも負けてるんだよね。うぅ、ダメだなぁ」



ダメだ。さすがにもう放置は出来ない。これ以上落ち込んだら、なのはママのこころのたまごに×が付いちゃうよ。



「・・・・・・ママ、もう大丈夫だから。フェイトママだって、最初は見えなかったそうだし」

「それでもショックなのー! ねぇヴィヴィオ、私これでいいのかなっ!?」



ママが、ヴィヴィオの両肩を掴んで前後に振る。そして、すがるような目でヴィヴィオを見る。



「私、夢を追いかけてるつもりだったけど、実は全然そんな事無かったのかもっ!!
どうしたらヴィヴィオみたいに見えるのっ!? お願い、教えてー!!」

「そんなのヴィヴィオにも分からないよー! ヴィヴィオ、自然と見えてたもんー!!
というか、泣かないでもらえるかなっ!? なのはママ、お願いだから落ち着いてー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夕方、今日は早めに帰れたので、家でグデーとしとったら通信がかかった。





相手はクロノ君や。仕事絡みの話らしいので、背筋正して家の自室でお話。





それで聞いた話は、恭文とフェイトちゃん、あとガーディアンのみんなの現状についてやった。










「・・・・・・なるほどなぁ。しゅごキャラに関連して、そないな事になってたんか」

『あぁ。・・・・・・というかはやて、知ってたのか?』

「この間、フェイトちゃんとうちらの同級生の結婚式、あったやんか。
その相手が偶然にもあむちゃんの従兄弟やったんよ。で、鉢合わせして色々な」



・・・・・・ショックやった。うち、結婚しても夢は追いかけてたつもりよ?

それやのに、それやのに・・・・・・見えないんよ。あははは、もうその日はやけ酒やったし。



『納得した。しかし偶然というかなんというか』

「それはうちらやのうてあむちゃんと恭文の話やな。二人はマジでビックリしてたし」





とにかく話は分かった。そやから、恭文達は5ヶ月もの間あの街に定住と。

イースターにエンブリオ・・・・・・また厄介な。どこぞのネガタロスが目指したくなるくらいに悪の組織やってるやないか。

しかも×がついたたまごは、浄化能力持った人間やないと対処出来んとは。



というか、ブラックダイヤモンドの事は噂に聞いてたけど、マジに恭文が事件に絡んで封印してたんかい。

なんやうちは知らん間に色々置いてけぼりにされてたんやなぁ。・・・・・・あれ、なんか悔しいわ。

でも、イースターがそないな悪の組織やったとは。うち、何気にイースターの製品気に入ってたのに。



うちの電化製品の大半、イースター電工のもんなんよ? もう性能もえぇし壊れにくいしで、グーや。





『それではやて。君に頼みたいのは、万が一の場合のフェイト達へのフォローだ。
事情が事情なので、局の正規な人員は動かせない。そうなると』

「嘱託か、うちみたいなフリーの捜査官やっとる人間だけって事やな。
それも口が固くて、しゅごキャラの事とかも黙ってられる人間」

『そうだ』





クロノ君が言うとるのは、別に今すぐ向こうに行って常駐しろ言う話やない。

もしも局の事情とかで、フェイトちゃんとかがもう動けなくなったとする。

恭文とリインはきっと誰がなんと言おうと最後まで関わるやろうから、ここから省く。



で、もしも本当にそんな時が来たら、フェイトちゃんの代わりにフォローよろしくな言う話や。





『最初の段階でガーディアンのみんなには、僕達絡みで不利益は出さないようにと確約している』



この場合の『不利益』はこっちが情報を下手にバラして、事件に巻き込まれたりなんて絶対に無いようにするっちゅうことや。

例えばそうやなぁ。しゅごキャラの能力をどっかの悪人に知られて、モルモットにされたりとかな。



「そりゃ当然やろ。ちゅうか、別にそれはレアスキルでもなんでもないやんか」



確かにあの恭文が苦戦するくらいの能力を出せるんなら、そういう見方もある。

でも、もっと純粋でこう・・・・・・あぁ、うちはやっぱ何かを無くしてもうてるなぁ。



「それでクロノ君、どっちにしてもうちらは前出られんよ? その・・・・・キャラなりやったっけ?
しゅごキャラと一体化する能力。それやってる連中はともかく、うちはまずしゅごキャラから見えてへんし」



だからこそ現状の戦力は、なぜか浄化能力持っててしゅごキャラの宿主もやっとる恭文。

そしてそんな恭文とユニゾンして、一緒に戦えるリイン。あとはガーディアンのみんなだけや。



「てーか、アンタがそこまでビビってるっちゅうことは・・・・・・イースターの連中の作戦、マジでヤバいん?」

『ヤバいな。さっき話した月詠歌唄を使った作戦の危険度など、ダントツだ』

「そやなぁ。だって、そのウィルスがマジで発売されとったら、世界中の人間はこころが空っぽやったんやろ?」



こころが空っぽになると、一種の無気力状態っちゅうか、人生に疲れた人になってまうらしい。

世界中の人間がそないになったら、色んな意味でお先真っ暗や。・・・・・・マジで世界の危機やないか。



『イースターはエンブリオを見つけるのに、手段を全く選んでいない。先日も一悶着あったくらいだ。
そしてこのままだと更に凶悪な事件の渦中に、ガーディアンのみんなを送り続けることになる』

「そやから、せめて後ろ盾や万が一の対処だけはちゃんとしておこうと」

『正解だ。・・・・・・本当はここからは僕達だけで対処というのも、かなり考えた。
×たまの浄化にこだわらければ、それは可能だ』



なるほど。×の付いたたまごは見捨てて、エンブリオの確保とイースターの計画の阻止にだけ力を注ぐと。でも、ダメやな。



「そりゃあかんよ。うちらがここで手の平返したら、恭文やリインにフェイトちゃん達の今までの頑張りがパーになってまうよ?」



ここまで恭文やリイン、後ろに居るフェイトちゃん達がガーディアンの子達の考えに共感して、頑張ってたから強い信頼関係が生まれた。

でも、ここからいきなり方針変えて、みんなしてたまご壊しまくったらどないなる? その信頼関係は全部おじゃんや。



『・・・・・・そうなんだ』



クロノ君も分かってたから、うちの目の前の通信画面の中で、めっちゃ苦い顔する。

だけど、そうなるとうちらがあの子達の身の安全を保証出来ない問題は解決出来ん。そやからなんや。



『もちろんガーディアンのみんなは自分達のためにエンブリオを探しているし、イースターの邪魔もするし×たまを助けると言う』

「そやけど、大人としては今ひとつ聞けんよなぁ」

『だから、最近実に胃が痛い。特に彼らの親に本当に申し訳が立たないんだ。
もしもあの子達の親がコレを知ったらと思うと・・・・・・本当に辛い』



うわ、これ相当来てるな。やっぱり子どもの親として、こういうのは響くんやろ。

多分、落ち込んで頭を抱えるクロノ君はこう思うてるな。もしこれが、カレルやリエラだったら・・・・・・と。



「まぁ、アレよ。実際にうちが動く状況は、多分来ないと思うんよ」





誰かに妙な勘ぐりされるとかがなければ、そこは問題ないと思う。



フェイトちゃんはある程度自由な部分が多い仕事やもん。



長期出張かて、全くないと言えば嘘になるしな。そやから、ここは大丈夫なはず





「ただ、このままじゃアンタが持たんやろ。愚痴くらいは聞いたるから、たまには通信かけてきてえぇよ」

『・・・・・・すまない。ただ、お互いに既婚者だ。浮気と疑われない程度に、話すことにしよう』

「そやな。そこは大事よ」










・・・・・・てゆうか、わざわざ咲耶まで来てたから変やとは思うてたんよ。

それで最近やと恭太郎とかも居たらしいしなぁ。その原因は全部エンブリオと。

うーん、でもうちも改めて考えると、ちょお心配になってきてもうたわ。





うし、近い内にガーディアンのみんなとちょお話しようかな。ちょうどこっち来る言うし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ね、ティアナは夏休みの間は実家に戻るんだっけ?」

「まぁね。まぁ、実家って言っても両親はもう居ないんだけど」



現在、学校帰りに陽子と淳(同じクラスの友達)と一緒にお茶。場所は帰り道の喫茶店。

ケーキとコーヒーが中々美味しくて、私はウキウキ。ここのモンブラン、好きなのよ。



「イギリス・・・・・・だったわよね。ランスターさん一人で?」

「うちの同居人達も一緒に。そう考えると、結構大所帯になるなぁ」





ただ、実は私は別行動だったりする。・・・・・・久々に兄さんの墓参り、行きたいしね。

あぁ、教導隊のなのはさんも訪ねないと。訓練してくれるって約束取り付けてるし。

試験まであと2ヶ月・・・・・・私はまだ迷っている。今この瞬間が、この時間が大事だから。



大事だから、迷ってる。この穏やかで優しい時間が好きになったから。





「二人はどうすんの?」

「私は避暑地に旅行。というか、母方の実家でノンビリ」

「私も同じ感じだね。・・・・・・でも、もうすぐ夏休みかぁ」

「楽しくなるといいわよね」

「そうね、ホント楽しくなるといいわね」










少し一人でぶらぶらして考えようかな。これからどうするのか、どうしたいのか。

諦めるのでもなければ、言い訳するのでもない。私が選びとるの。

何も諦めない私が、今という時間の中で一番どうしたいのかを・・・・・・ちゃんと。





・・・・・・こう考えられるのは私が恵まれた状況だからだと突きつけられる事になるとは、この時は知らなかった。

世界の色は、真実は、その人の心というフィルターを通して決まる。

だからその人がその世界を嘘だと、偽りだと思ってしまえば、世界は途端に価値を無くす。だからなんだと思う。





世界には哀しい夢を抱き続ける人も居るという現実と、あの子達と一緒に直面する事になった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・もうすぐだね」



現在、あたしは自室で色々準備中。てゆうか、間近だって言うのに結構大変。

昨日上映会をやったPVの撮影とかでも色々あったしなぁ。急がないと、これ間に合わないかも。



「そうですねぇ」

「だから、あむちゃんも準備が大変なんだねー」





いや、だって・・・・・・これも持ってあれも持って・・・・・・って考えるとマジで荷物多くなるし。

洗濯とかは大丈夫だけど、それでも服は色々変えたいし・・・・・・あー、悩むなぁ。

唯世くんとずっと一緒なんだし、ずーっと同じ服着てる女だって思われたくないじゃん。



恭文、ありがと。戦技披露会の事どうこうもそうだけど、唯世くんと仲良くなれるチャンスをくれて。





「よし、お礼に明日の帰りに牛乳を奢ってあげよう。それで一気飲みだよ」

「あむちゃん、一気飲みはヒロインのすることじゃないよー」

「いいの。てゆうか、牛乳は身体にいいんだよ?」

「・・・・・・ボクが思うに、そういう問題じゃないような」

「ヒロインとしての自覚0ですぅ」



とりあえず持ってく服は、色々組み合わせられてバリエーションが作れるようにする。

あぁ、でもどうしよう。異世界でいきなり告白とかされて・・・・・・きゃー!!



「あむちゃんがベッドの上で悶絶してるっ!?」

「あむちゃん、ちょっと妄想激し過ぎないかなっ!!」

「ヒロインとして、それはどうなのですかぁっ!?」



・・・・・・や、やばいやばい。あたしちょっと落ち着け? 流石にテンションおかしいから。

てゆうか、遊びに行くだけが全部じゃないし。ミッドチルダを見て、色々考えていくんだし。



「そういえば、恭文の戦技披露会って何時あるの?」

「8月の末だって。あー、恭文もその辺り調整しなくちゃいけないとかって言ってたっけ」

「言ってましたぁ。あ、スゥも現地妻7号としてお手伝いを」



あたしとミキとはまたズッコケる。理由は嬉しそうな顔でそう言い切ったスゥ。



「ちょっとスゥっ! お手伝いはいいけど、アンタマジでその称号は捨てないっ!?」

「ダメですぅ。この間、現地妻2号のすずかさんにも認定されたんですよぉ? どうして捨てなくちゃいけないんですかぁ」



嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうか、現地妻2号って・・・・・・スゥより前が居たっ!?

恭文、アンタマジで何やってんのよっ! あんなきれいな人現地妻なんて、ありえないじゃんっ!!



「すずかさんも前に恭文さんに助けられた事があって、それで恭文さんを応援したいって言ってましたぁ。スゥと同じなんですぅ」

「そ、そうですか。へぇ、それは知らなかったなぁ」

「恭文、フラグ立てるのってそのパターン多いよね」

「ボクの見た感じ、歌唄も同じ感じだったしね。
あれかな、トラブルに巻き込まれるとそうなるのかな」



ただしそれは、トラブルの場に女の子が居る事前提なのが嫌だけどね。

アイツの周り、どんだけ女性比率高いのかな。



「でもあむちゃん、夏休み・・・・・・楽しみだねー」

「知らない世界や知らない人達に沢山触れられるしね。あぁ、ボクもドキドキしてきた」

「ミッドチルダの美味しいお料理、いっぱい覚えるですよぉ」



嬉しそうに笑うのは、あたしのしゅごキャラ三人。その様子を見てあたしも笑う。

だってあたしも同じだから。色々な心配もあるけど、それでも・・・・・・楽しみ。



「うん、楽しみだよね」










あたしは、部屋の床に直置きな机の上に置いてあるバスケットの中の・・・・・・ダイヤのたまごに視線を移す。

・・・・・・そうだよね、楽しみだよね。というか、みんなと一緒にずっと夏休みだもん。

楽しくならないはずがないよ。きっと想像出来ないくらいにドキドキすることやワクワクする事、沢山待ってる。





その中で少しだけでも見つけられるかな。あたしなりの現実との、こんなはずじゃなかった時間との関わり方。





本当に少しだけでもいいから、見つけていきたいな。・・・・・・よし、頑張るぞー! おー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・もう、やめて。お願いだから、やめて。もう私達は必要ないの。生きていてはいけないの。





戦っても、何も変わらない。曇った空も・・・・・・燃え上がる業火も。なのに、どうして?





どうしてあなた達は私を求めるの? 私はただ・・・・・・夢の中で朽ちていたいだけなのに。




















(第51話へ続く)





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